特許第5770034号(P5770034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770034
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】扉体開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   E02B7/20 102
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-156884(P2011-156884)
(22)【出願日】2011年7月15日
(65)【公開番号】特開2013-23833(P2013-23833A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】591039698
【氏名又は名称】開成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(72)【発明者】
【氏名】井出 正義
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋士
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−059963(JP,A)
【文献】 特開平10−338475(JP,A)
【文献】 実開昭62−133594(JP,U)
【文献】 特開昭60−178193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20〜7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定構造体に取り付けられた手動キャプスタン式ウインチと、前記固定構造体から前進後退可能に配置された扉体と、前記扉体の移動方向に沿って離れた当該扉体の複数位置に設けられたブラケットと、前記ブラケット間に張設された索条体と、を備え、前記ブラケット間に位置する前記索条体の一部を前記手動キャプスタン式ウインチの回転ドラムに少なくとも1周巻回させ、前記ブラケットと前記索条体との間に前記索条体の長手方向に伸縮可能な弾性体を介在させたことを特徴とする扉体開閉装置。
【請求項2】
前記手動キャプスタン式ウインチの操作により前記索条体の張力が増大する側に位置する前記弾性体の弾性変形可能距離が、前記索条体の張力が減少する側に位置する前記弾性体の弾性変形可能距離より小である請求項記載の扉体開閉装置。
【請求項3】
前記手動キャプスタン式ウインチの回転ドラムの周囲に前記索条体同士の摺接を回避するためのガイド部材を設けた請求項1または2記載の扉体開閉装置。
【請求項4】
前記ガイド部材として、前記ブラケット間で直線状をなす索条体及び前記回転ドラムと立体交差するように配置された支軸と、前記支軸に回転自在に取り付けられた回転体と、を設けた請求項記載の扉体開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防波堤や防潮堤の一部に設けられた横引き開閉ゲートあるいは学校や公共施設などの敷地への出入門に設置された横引き開閉扉などを手動で開閉する扉体開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
防波堤の一部に設けられた開口部を開閉する横引き扉の開閉装置については、従来、様々な方式が開発されているが、本願発明に関連するものとして、例えば、特許文献1記載の「横引き式防波堤設備」がある。
【0003】
この「横引き式防波堤設備」は、ウインチと輪体との間に巻回された索体を、駆動装置である当該ウインチで巻き取り、繰り出しすることによって水平移動する台車を介して扉体の開閉動作を行う機構を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−59963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の「横引き式防波堤設備」は、駆動装置(ウインチ)によって扉体の開閉動作が行われるため、開閉操作は容易であるが、駆動装置の動力源となる電動機や原動機などが必要である。
【0006】
一方、手動式のラック・ピニオン機構によって扉体を開閉する方式も提案されているが、長大なラックギアや減速機構などを必要とし、構造も複雑である。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、電動機や原動機などの駆動源なしで容易に開閉操作を行うことができ、構造も簡素な扉体開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の扉体開閉装置は、固定構造体に取り付けられた手動キャプスタン式ウインチと、前記固定構造体から前進後退可能に配置された扉体と、前記扉体の移動方向に沿って離れた当該扉体の複数位置に設けられたブラケットと、前記ブラケット間に張設された索条体と、を備え、前記ブラケット間に位置する前記索条体の一部を前記手動キャプスタン式ウインチの回転ドラムに少なくとも1周巻回させ、前記ブラケットと前記索条体との間に前記索条体の長手方向に伸縮可能な弾性体を介在させたことを特徴とする。
【0009】
このような構成において、固定構造体に取り付けられた手動キャプスタン式ウインチを操作して回転ドラムを回転させると、回転ドラムに巻回された状態で複数のブラケット間に張設された索条体の片方のブラケット側が巻き取られるとともに、他方のブラケット側が繰り出されるので、巻き取られる側の索条体による引張力がブラケットを介して扉体に伝わり、扉体が引張力方向へ移動する。即ち、手動キャプスタン式ウインチの回転ドラムを正転・逆転させることにより、扉体を固定構造体から前進・後退させることができるため、電動機や原動機などの駆動源なしで容易に扉体の開閉操作を行うことができる。
【0010】
また、本発明の扉体開閉装置は、扉体の複数位置に設けられたブラケット間に張設された索条体と、手動キャプスタン式ウインチとによって構成することができるので、構造も簡素である。さらに、本発明の扉体開閉装置は、既設の横引き扉体に対して、索条体及び手動キャプスタン式ウインチなどを後付け施工することによって形成することもできる。
【0011】
また、本発明の扉体開閉装置においては、前記ブラケットと前記索条体との間に前記索条体の長手方向に伸縮可能な弾性体を介在させている。このような構成とすれば、索条体に、常時、適切な張力を付与することができるので、手動キャプスタン式ウインチの回転ドラムと索条体との間のスリップを抑制することができる。
【0012】
また、前記手動キャプスタン式ウインチの操作により前記索条体の張力が増大する側に位置する前記弾性体の弾性変形可能距離を、前記索条体の張力が減少する側に位置する前記弾性体の弾性変形可能距離より小とすることが望ましい。このような構成とすれば、手動キャプスタン式ウインチを操作したときに索条体が緩んだり、撓んだりすることを防ぐことができるので、手動キャプスタン式ウインチの回転ドラムと索条体との間のスリップ防止に有効である。
【0013】
一方、前記手動キャプスタン式ウインチの回転ドラムの周囲に前記索条体同士の摺接を回避するためのガイド部材を設けることもできる。このような構成とすれば、手動キャプスタン式ウインチを操作したときに、回転ドラムに巻き取られる側の索条体と、回転ドラムから繰り出される側の索条体との摩擦損傷を防ぐことができる。
【0014】
この場合、前記ガイド部材として、前記索条体の直線部分及び前記回転ドラムと立体交差するように配置された支軸と、前記支軸に回転自在に取り付けられた回転体と、を設けることが望ましい。このような構成とすれば、回転ドラムに巻き取られる側の索条体と、回転ドラムから繰り出される側の索条体との摩擦損傷防止に有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、電動機や原動機などの駆動源なしで容易に開閉操作を行うことができ、構造も簡素な扉体開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態である扉体開閉装置を示す一部省略正面図である。
図2図1に示す扉体開閉装置の一部省略平面図である。
図3図1に示す扉体開閉装置の一部拡大図である。
図4図2に示す扉体開閉装置の一部拡大図である。
図5図1のA−A線における断面図である。
図6図1のB−B線における断面図である。
図7図1のC−C線における断面図である。
図8図3のD−D線における拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1図4に示すように、本実施形態の扉体開閉装置10は、固定構造体である防波堤11に取り付けられた手動キャプスタン式ウインチ12と、防波堤11の一部に設けられた開口部13を開閉するため防波堤11から開口部13に向かって前進後退可能に配置された扉体14と、扉体14の移動方向Rに沿って離れた当該扉体14の複数位置に設けられたブラケット15,16と、ブラケット15,16間に張設された索条体であるワイヤ17と、を備え、ブラケット15,16間に位置するワイヤ17の一部が、手動キャプスタン式ウインチ12の回転ドラム18に5周巻回されている。ここで、回転ドラム18に対するワイヤ17の巻回数は5周に限定するものではないので、施工条件に応じて増減することができる。
【0018】
図1及び図5図7に示すように、扉体14の下縁部の複数箇所に水平軸19h周りに回動自在な車輪19が設けられ、扉体14の上縁部の複数箇所に垂直軸20v周りに回動自在な車輪20が設けられている。防波堤11の開口部13付近の地表面S上に防波堤11と略平行に付設されたレール21上に複数の車輪19を載せた状態で扉体14が設置され、レール21の長手方向に沿って扉体14は移動可能である。防波堤11の上縁部には、扉体14が配置されている側に突出する複数のブラケット22が設けられ、断面コ字状のガイドレール23が開口部分を下に向けた状態で、複数のブラケット22によって防波堤11と略平行をなすように固定されている。扉体14をレール21に沿って移動させたとき、扉体14の上縁部の車輪20がガイドレール23内をその長手方向に沿って移動する。
【0019】
図3図4及び図6に示すように、手動キャプスタン式ウインチ12は、防波堤11上に取り付けられた基台24上に設置され、手動式のクランクハンドル25と、クランクハンドル25の回転軸26の回転力を回転ドラム18に伝達するウインチ本体27、とを備え、回転ドラム18を挟んで対向するように一対のガイド部材29,30が立設されている。ガイド部材29,30は、ブラケット15,16間で直線状をなすワイヤ17及び回転ドラム18と立体交差するように配置された支軸29a,30aと、支軸29a,30aにそれぞれ回転自在に取り付けられた円筒状の回転体29b,30bと、で形成されている。
【0020】
回転軸26は軸カバー28a内に収納され、ウインチ本体27、回転ドラム18及びガイド部材29,30などはウインチカバー28b内に収納されている。図6に示すように、クランクハンドル25は蝶番部25aを中心に回動可能であるため、不使用時は折り畳みが可能であり、ウインチカバー28bは蝶番部28cを中心に回動可能であるため、メンテナンス時などは必要に応じて、ウインチ本体27、ガイド部材29,30及び回転ドラム18などを露出させることができる。
【0021】
手動キャプスタン式ウインチ12のクランクハンドル25を回転させると、回転軸26及びウインチ本体27を介して回転ドラム18が回転し、その回転方向に応じて回転ドラム18に巻回されたワイヤ17の片方の側が巻き取られ、他方の側が繰り出される。
【0022】
ワイヤ17の両端部はそれぞれブラケット15,16を介して扉体14の上縁部に固定されているが、ブラケット15,16に対するワイヤ17の両端部の係止構造は互いに鏡面対称な構造であるため、以下、図8に基づいて、ブラケット15に対するワイヤ17の端部の係止構造及び機能について説明する。
【0023】
図8に示すように、垂直断面が倒立L字状のブラケット15とワイヤ17との間に、ワイヤ17の長手方向に伸縮可能な弾性体31が介在されている。ブラケット15を構成する二つの垂直壁体15a,15bの間に配置された弾性体31は、片方の端部32a寄りにフランジ32fを有する円筒状のガイド部材32と、片方の端部33aをフランジ32fに当接させた状態でガイド部材32の外側に配置されたコイルバネ33と、ガイド部材32の他方の端部32bとの間に隙間34を設けた状態でコイルバネ33の他方の端部33bに当接して配置されたバネ座35と、を備えている。
【0024】
弾性体31は、垂直壁体15bに設けられた貫通孔15cに、ガイド部材32の片方の端部32aを挿通し、フランジ31fを垂直壁体15に当接させた状態で垂直壁体15a,15bの間に配置されている。ワイヤ17の端部に係止されたエンドクランプネジ36が、ガイド部材32、バネ座35及び垂直壁15aの貫通孔15dを挿通した状態で配置され、エンドクランプネジ36とバネ座35とが一体的に固着されている。コイルバネ33がその長手方向に伸展しようとする弾性復元力がバネ座35及びエンドクランプネジ36を介してワイヤ17に伝わり、ワイヤ17に適切な張力を付与している。
【0025】
扉体開閉装置10において、防波堤11に取り付けられた手動キャプスタン式ウインチ12のクランクハンドル25を回転操作して回転ドラム18を時計回りに回転させると、回転ドラム18に巻回された状態でブラケット15,16間に張設されたワイヤ17の片方のブラケット16側が巻き取られるとともに、他方のブラケット15側が繰り出されるので、巻き取られる側(ブラケット16側)のワイヤ17による引張力がブラケット16を介して扉体14に伝わり、扉体14が開口部13を閉止する方向へ移動する。
【0026】
一方、クランクハンドル25を逆回転操作して回転ドラム18を反時計回りに回転させると、回転ドラム18に巻回された状態でブラケット15,16間に張設されたワイヤ17の片方のブラケット15側が巻き取られるとともに、他方のブラケット16側が繰り出されるので、巻き取られる側(ブラケット15側)のワイヤ17による引張力がブラケット15を介して扉体14に伝わり、扉体14が開口部13を開放する方向へ移動する。
【0027】
このように、手動キャプスタン式ウインチ12のクランクハンドル25を時計回り・反時計回りに回転操作すると、回転ドラム18が正転・逆転し、扉体14を防波堤11の開口部13に向かって前進・後退させることができるため、電動機や原動機などの駆動源なしで容易に扉体14の開閉操作を行うことができる。
【0028】
また、扉体開閉装置10は、扉体14の複数位置に設けられたブラケット15,16間に張設されたワイヤ17と、手動キャプスタン式ウインチ12とによって構成することができるので、構造も簡素である。さらに、扉体開閉装置10は、既設の横引き扉体に対して、ブラケット15,16、ワイヤ17及び手動キャプスタン式ウインチ12などを後付け施工することによって形成することができるので、汎用性にも優れている。
【0029】
一方、ブラケット15,16とワイヤ17の両端部との間にそれぞれワイヤ17の長手方向に伸縮可能な弾性体31を介在させることにより、ワイヤ17に、常時、適切な張力を付与しているため、手動キャプスタン式ウインチ12の回転ドラム18とワイヤ17との間のスリップを抑制することができる。
【0030】
また、ガイド部材32の端部32bとバネ座35との間に隙間34を設けることにより、手動キャプスタン式ウインチ12の操作によりワイヤ17の張力が増大する側(例えば、開口部13の開放操作中のブラケット15側)に位置する弾性体31の弾性変形可能距離(縮み代)が、ワイヤ17の張力が減少する側(例えば、開口部13の開放操作中のブラケット16側)に位置する弾性体31の弾性変形可能距離(伸び代)より小となるように設定している。従って、手動キャプスタン式ウインチ12を操作したときにワイヤ17が緩んだり、撓んだりすることを防ぐことができ、手動キャプスタン式ウインチ12の回転ドラム18とワイヤ17との間のスリップを確実に防止することができる。
【0031】
さらに、図3図4に示すように、手動キャプスタン式ウインチ12の回転ドラム18の周囲に、ワイヤ17同士の摺接を回避するためのガイド部材29,30を立設しているため、手動キャプスタン式ウインチ12を操作したときに、回転ドラム18に巻き取られる側のワイヤ17と、回転ドラム18から繰り出される側のワイヤ17との摩擦損傷を防止することができる。
【0032】
本実施形態の扉体開閉装置10の場合、ガイド部材29,30として、ワイヤ17の直線部分及び回転ドラム18と立体交差するように配置された支軸29a,30aと、支軸29a,30aに回転自在に取り付けられた円筒状の回転体29b,30bと、を設けているため、回転ドラム18に巻き取られる側のワイヤ17と、回転ドラム18から繰り出される側のワイヤ17との摩擦損傷を確実に防止することができる。
【0033】
なお、図1図8に基づいて説明した扉体開閉装置10は、本発明の一例を示すものであり、本発明に係る扉体開閉装置はこれに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の扉体開閉装置は、防波堤や防潮堤の一部に設けられた横引き開閉ゲートあるいは学校や公共施設などの敷地への出入門に設置された横引き開閉扉などの手動開閉手段として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10 扉体開閉装置
11 防波堤
12 手動キャプスタン式ウインチ
13 開口部
14 扉体
15,16,22 ブラケット
15a,15b 垂直壁体
15c,15d 貫通孔
17 ワイヤ
18 回転ドラム
19,20 車輪
19h 水平軸
20v 垂直軸
21 レール
23 ガイドレール
24 基台
25 クランクハンドル
25a,28c 蝶番部
26 回転軸
27 ウインチ本体
28a 軸カバー
28b ウインチカバー
29,30,32 ガイド部材
29a,30a 支軸
29b,30b 回転体
31 弾性体
32a,32b 端部
32f フランジ
33 コイルバネ
34 隙間
35 バネ座
36 エンドクランプネジ
S 地表面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8