(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770035
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】逆流防止ゲート
(51)【国際特許分類】
E02B 7/44 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
E02B7/44
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-156885(P2011-156885)
(22)【出願日】2011年7月15日
(65)【公開番号】特開2013-23834(P2013-23834A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】591039698
【氏名又は名称】開成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋士
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−252043(JP,A)
【文献】
実開昭62−190724(JP,U)
【文献】
実開昭50−040024(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20〜7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が一定方向に流れる流路の底面に起伏自在に軸支され前記流路の下流側の液体が増加すると浮力によって起立して前記流路を閉止する扉体と、前記流路の内側面に貼着された戸当り部材と前記扉体の側縁部との間の漏液を防ぐため前記扉体の両側縁部に付設された側部密閉部材と、前記流路の底面と前記扉体の下縁部との間の漏液を防ぐため前記扉体の軸支部分を前記流路の上流側から覆った状態で前記流路を横断する方向に配置され前記扉体の起立動作に伴って褶曲可能な可撓性の下部密閉部材と、を備え、前記側部密閉部材の側縁部には、平板状の固定部からそれぞれ斜め上方、斜め下方に突出する上突縁部、下突縁部が固定部と一体形成され、前記下部密閉部材の側縁部に、前記流路の内側面に当接した状態で摺動可能な閉止手段を設けたことを特徴とする逆流防止ゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川管理施設として、樋門や樋管などに設置される逆流防止ゲート、詳しくは、漏水防止機能を有する逆流防止ゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
台風や集中豪雨などによって河川が増水したときの逆流を防止するための河川管理施設として、樋門や樋管などには、逆流防止ゲートが設置されている。従来の逆流防止ゲートとしては、水量の増減に応じて扉体を上下方向にスライドさせることによって水路を開閉する方式あるいは河川の水量の増減に応じて起伏する扉体によって水路を開閉する方式(例えば、特許文献1〜3参照。)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−152827号公報
【特許文献2】特開平10−252043号公報
【特許文献3】特開2007−146609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3などに記載されている起伏式ゲートは、河川の水量の増減に対応して扉体が起伏する機能を有し、増水時は自動的に扉体が起立して水路を閉止して逆流を防止することができる点において優れている。しかしながら、扉体閉止時の漏水防止機能に対する要請は年々高まっており、特に、扉体の軸支部分を覆う可撓性密閉部材と流路の内側面との間の漏水防止機能に関しては、従来の起伏式ゲートは不完全であるのが実状である。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、扉体の軸支部分を覆う下部密閉部材と流路の内側面との間の漏液防止機能に優れた逆流防止ゲートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の逆流防止ゲートは、液体が一定方向に流れる流路の底面に起伏自在に軸支され前記流路の下流側の液体が増加すると浮力によって起立して前記流路を閉止する扉体と、
前記流路の内側面に貼着された戸当り部材と前記扉体の側縁部との間の漏液を防ぐため前記扉体の両側縁部に付設された側部密閉部材と、前記流路の底面と前記扉体の下縁部との間の漏液を防ぐため前記扉体の軸支部分を前記流路の上流側から覆った状態で前記流路を横断する方向に配置され前記扉体の起立動作に伴って褶曲可能な可撓性の下部密閉部材と、を備え、
前記側部密閉部材の側縁部には、平板状の固定部からそれぞれ斜め上方、斜め下方に突出する上突縁部、下突縁部が固定部と一体形成され、前記下部密閉部材の側縁部に、前記流路の内側面に当接した状態で摺動可能な閉止手段を設けたことを特徴とする。
【0007】
このような構成とすれば、扉体の軸支部分を覆う下部密閉部材が、扉体の起立動作に伴って褶曲したときの下部密閉部材の側縁部と流路の内側面との密閉性を高レベルで維持することができるので、優れた漏液防止機能を発揮する。
【0008】
ここで、前記閉止手段として、前記下部密閉部材の褶曲面と交差する方向に突出する突縁部を設けることが望ましい。このような構成とすれば、簡素な形状でありながら、高度の漏液防止機能を得ることができる。
【0009】
前記下部密閉部材の褶曲面の内側に突出するように突縁部を設けることが望ましい。このような構成とすれば、扉体が起立して下部密閉部材が褶曲したとき、その褶曲面の内側が流路下流側の液体に面するため、逆流方向の液圧によって突縁部が流路の内側面に押圧された状態となって密閉性が高まる結果、漏液が発生せず、漏液防止機能を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、扉体の軸支部分を覆う下部密閉部材と流路の内側面との間の漏液防止機能に優れた逆流防止ゲートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態である逆流防止ゲートを示す垂直断面図である。
【
図2】
図1に示す逆流防止ゲートの扉体付近の一部拡大図である。
【
図3】
図1に示す逆流防止ゲートの軸支部分の一部拡大図である。
【
図4】
図3における矢線A方向から見た一部省略斜視図である。
【
図5】
図1に示す逆流防止ゲートの扉体に付設される下縁密閉部材及び側縁密閉部材を一部省略して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1〜
図4に示すように、本実施形態の逆流防止ゲート10は、液体である水が一定方向Uに流れる流路11の底面12に支承部材13を介して起伏自在に軸支され流路11の下流側の水量が増加すると浮力によって起立して流路11を閉止する扉体14と、流路11の内側面15に貼着された戸当たり部材16と扉体14の側縁部14aとの間の漏水を防ぐため扉体14の両側縁部14aに付設された側部密閉部材17と、流路11の底面12と扉体14の下縁部14bとの間の漏水を防ぐため扉体14の軸支部分18を流路11の上流側から覆った状態で流路11を横断する方向に配置された可撓性の下部密閉部材19と、を備えている。
【0013】
また、流路11の内側面15に貼着された戸当たり部材16と下部密閉部材19の側縁部20との間の漏水防止機能を高めるため、流路11の内側面15の戸当たり部材16に当接した状態で摺動可能な閉止手段である突縁部21が、下部密閉部材19の側縁部20に設けられている。
【0014】
平常時は、扉体14は流路11の下流側に傾斜した状態にあり、流路11内の水は上流側から下流側に向かって扉体14の上縁部14cを越流しながら一定方向Uに流れる。一方、台風や集中豪雨などにより流路11の下流側が増水して逆流Rが生じると、
図1に示すように、浮力によって起立した扉体14によって流路11が閉止される。前述した側部密閉部材17及び下部密閉部材19は、扉体14が流路11を閉止した状態にあるとき、下流側からの逆流Rによる漏水を防止するために設けられている。
【0015】
ここで、
図5〜
図8に基づいて、側部密閉部材17及び下部密閉部材19について説明する。
図5示すように、可撓性を有する板状ゴム材で形成された下部密閉部材19の両側縁部20に、それぞれ同材料で形成された一対の側部密閉部材17を略同一平面をなすように接着して一体化することによってコ字状の部材が形成されている。
図2〜
図4に示すように、扉体14の上流側面の側縁部14a、下縁部14bに沿ってそれぞれ側部密閉部材17、下部密閉部材19を配置し、側部密閉部材17及び下部密閉部材19の上縁部19aの上面にそれぞれ押圧部材22,23をネジNで締め付けることにより扉体14に固定されている。また、下部密閉部材19の下縁部19bは流路11の底面12に配置され、下縁部19bの上面に押圧部材24をネジNで締め付けることによって底面12に固定されている。
【0016】
図6,
図7に示すように、側部密閉部材17の側縁部17aには、平板状の固定部17bからそれぞれ斜め上方、斜め下方に突出する上突縁部17c、下突縁部17dが固定部17bと一体形成され、その断面形状は略Y字状をなしている。
【0017】
図3,
図4及び
図8に示すように、下部密閉部材19の側縁部20には、下部密閉部材19の褶曲面と交差する方向に突出するような形状、即ち、扉体14が起立して下部密閉部材19が褶曲したとき、その褶曲面の内側に突出するような形状の突縁部21が下部密閉部材19の褶曲部19cと一体的に形成されている。
【0018】
逆流防止ゲート10において、
図1〜
図3に示すように、流路11の下流側の増水により扉体14が起立して流路11が閉止されたとき、扉体14の軸支部分18を覆う下部密閉部材19の突縁部21が、扉体14の起立動作に伴って褶曲したときの下部密閉部材19の側縁部20と流路11の内側面15の戸当たり部材16との密閉性を高レベルで維持するので、優れた漏水防止機能を発揮する。
【0019】
突縁部21は、下部密閉部材19の褶曲面と交差する方向である、褶曲面の内側に突出方向に形成されているため、扉体14が起立して下部密閉部材19が褶曲したとき、その褶曲面の内側が流路11下流側の水に面するため、逆流R方向の液圧によって突縁部21が戸当たり部材16に押圧された状態となって密閉性が高まり、漏水防止機能を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の逆流防止ゲートは、樋門や樋管などに設置される河川管理施設として、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0021】
10 逆流防止ゲート
11 流路
12 底面
13 支承部材
14 扉体
14a,20 側縁部
14b 下縁部
14c 上縁部
15 内側面
16 戸当たり部材
17 側部密閉部材
18 軸支部分
19 下部密閉部材
21 突縁部
22,23,24 押圧部材
N ネジ
R 逆流
U 一定方向