特許第5770041号(P5770041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ブイ・テクノロジーの特許一覧

<>
  • 特許5770041-フォトマスク及び露光装置 図000002
  • 特許5770041-フォトマスク及び露光装置 図000003
  • 特許5770041-フォトマスク及び露光装置 図000004
  • 特許5770041-フォトマスク及び露光装置 図000005
  • 特許5770041-フォトマスク及び露光装置 図000006
  • 特許5770041-フォトマスク及び露光装置 図000007
  • 特許5770041-フォトマスク及び露光装置 図000008
  • 特許5770041-フォトマスク及び露光装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770041
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】フォトマスク及び露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/38 20120101AFI20150806BHJP
   G03F 1/68 20120101ALI20150806BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   G03F1/38
   G03F1/68
   G03F7/20 501
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2011-166995(P2011-166995)
(22)【出願日】2011年7月29日
(65)【公開番号】特開2013-29749(P2013-29749A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2014年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168608
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 大樹
(72)【発明者】
【氏名】野村 義昭
(72)【発明者】
【氏名】竹下 琢郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和重
【審査官】 佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−221757(JP,A)
【文献】 特開2008−060576(JP,A)
【文献】 特開2002−231607(JP,A)
【文献】 特開昭61−271816(JP,A)
【文献】 特開昭62−157035(JP,A)
【文献】 特開昭63−262652(JP,A)
【文献】 特開2008−310217(JP,A)
【文献】 特開2007−256581(JP,A)
【文献】 特開平02−310559(JP,A)
【文献】 特開2013−004700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00 − 1/86、 7/20 − 7/24 、
9/00 − 9/02 、
H01L21/027、21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク基板上に複数のマスクパターンを少なくとも1列に並べて形成したパターン領域を有するフォトマスクであって、
前記複数のマスクパターンの並び方向と交差する方向にて、前記パターン領域の中心軸から一定距離はなれた位置に長手中心軸が前記中心軸に平行となるように設けられた細長状の開口部と、
前記開口部内に、前記マスクパターンを他のマスク基板に形成された別種のマスクパターンと識別するために、前記パターン領域の中心軸に沿って配列されたマスクパターンの配列ピッチの整数倍のピッチで、前記開口部の長手中心軸と交差させて設けられた複数本のスリットから成る識別マークとを備え、
前記識別マークを前記開口部の長手中心軸上の、前記他のマスク基板に設けられた他の識別マークとは相対的に異なる位置に設けたことを特徴とするフォトマスク。
【請求項2】
同一のマスク基板上にマスクパターンが異なる複数種のパターン領域をその中心軸が互いに平行となるように並べて設けたフォトマスクであって、
前記各パターン領域の前記中心軸と交差する方向にて、各中心軸から一定距離はなれた位置に夫々、長手中心軸が前記中心軸に平行となるように設けられた細長状の複数の開口部と、
前記各開口部内に、夫々、異なる前記マスクパターンを識別するために、前記各パターン領域の中心軸に沿って配列された前記各マスクパターンの配列ピッチの整数倍のピッチで、前記各開口部の各長手中心軸と交差させて設けられた複数本のスリットから成る識別マークと、を備え、
前記各開口部内の各識別マークを夫々、前記各開口部の長手中心軸上の相対的に異なる位置に設けたことを特徴とするフォトマスク。
【請求項3】
前記各開口部内のスリットは、前記長手中心軸方向の幅が夫々異なることを特徴とする請求項2記載のフォトマスク。
【請求項4】
被露光体に対向して設けられ、同一のマスク基板上にマスクパターンが異なる複数種のパターン領域をその中心軸が互いに平行となるように並べて設け、前記各パターン領域の前記中心軸と交差する方向にて、各中心軸から一定距離はなれた位置に夫々、長手中心軸が前記中心軸に平行な細長状の複数の開口部を形成し、該各開口部内に、夫々、異なる前記マスクパターンを識別するために、前記各パターン領域の中心軸に沿って配列された前記各パターン領域のマスクパターンの配列ピッチの整数倍のピッチで、前記各開口部の各長手中心軸と交差させて設けられた複数本のスリットから成る識別マークを前記長手中心軸上の相対的に異なる位置に設けたフォトマスクを保持して、前記複数種のパターン領域の並び方向に移動可能なマスクステージと、
前記フォトマスクの複数種のパターン領域のうち、選択された1つのパターン領域に光源光を照射して該選択されたパターン領域のマスクパターンを前記被露光体上に転写する露光光学系と、
前記選択された1つのパターン領域に対応する前記開口部の長手中心軸に細長状の受光部の長手中心軸を合致させて配置され、前記識別マークの位置を検出するための検出手段と、
入力手段を操作して入力されたマスクパターンの選択情報に基づいて前記マスクステージの移動を制御して前記複数種のパターン領域から1つのパターン領域を選択させると共に、露光レシピを保存する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記露光レシピに記録された設計値に基づいて算出された識別マークの位置情報と、前記選択されたパターン領域に対応して前記検出手段により検出された前記識別マークの位置情報とを比較し、前記選択されたパターン領域の正否を判定することを特徴とする露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク基板上にマスクパターンを形成したフォトマスクに関し、特に狙いと異なるパターンが露光されるのを防止しようとするフォトマスク及び露光装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のフォトマスクは、同一のマスク基板上にマスクパターンが異なる複数種のパターン領域を並べて設けており、基板上に異種のパターンを露光する場合には、シャッタの開閉動作により複数種のパターン領域から露光されるパターンのパターン領域を選択して露光するものとなっていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−310217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来のフォトマスクは、露光装置に備える制御手段のプログラムに基づいて制御されるシャッタの開閉動作により、上記複数種のパターン領域から露光されるパターンのパターン領域を選択するもので、パターン領域が正しく選択されたか否かを確認する手段を備えていなかった。したがって、人為的なミスにより上記複数種のパターン領域の選択情報を間違って入力設定してしまったり、露光しようとするフォトマスクと異なるフォトマスクをセットしてしまったりした場合には、上記ミスを検出することができず、正規のパターンと異なるパターンを露光してしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、狙いと異なるパターンが露光されるのを防止しようとするフォトマスク及び露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明によるフォトマスクは、マスク基板上に複数のマスクパターンを少なくとも1列に並べて形成したパターン領域を有するフォトマスクであって、前記複数のマスクパターンの並び方向と交差する方向にて、前記パターン領域の中心軸から一定距離はなれた位置に長手中心軸が前記中心軸に平行となるように設けられた細長状の開口部と、前記開口部内に、前記マスクパターンを他のマスク基板に形成された別種のマスクパターンと識別するために、前記パターン領域の中心軸に沿って配列されたマスクパターンの配列ピッチの整数倍のピッチで、前記開口部の長手中心軸と交差させて設けられた複数本のスリットから成る識別マークとを備え、前記識別マークを前記開口部の長手中心軸上の、前記他のマスク基板に設けられた他の識別マークとは相対的に異なる位置に設けたものである。
【0007】
このような構成により、マスクパターンを形成したパターン領域の中心軸から一定距離はなれた位置に設けられた細長状の開口部内に、上記パターン領域の中心軸に沿って配列されたマスクパターンの配列ピッチの整数倍のピッチで、開口部の長手中心軸と交差させて設けられた複数本のスリットから成る識別マークの位置により、該識別マークと相対的に異なる位置に識別マークを設けた他のマスク基板と識別する。
【0008】
また、第2の発明によるフォトマスクは、同一のマスク基板上にマスクパターンが異なる複数種のパターン領域をその中心軸が互いに平行となるように並べて設けたフォトマスクであって、前記各パターン領域の前記中心軸と交差する方向にて、各中心軸から一定距離はなれた位置に夫々、長手中心軸が前記中心軸に平行となるように設けられた細長状の複数の開口部と、前記各開口部内に、夫々、異なる前記マスクパターンを識別するために、前記各パターン領域の中心軸に沿って配列された前記各マスクパターンの配列ピッチの整数倍のピッチで、前記各開口部の各長手中心軸と交差させて設けられた複数本のスリットから成る識別マークと、を備え、前記各開口部内の各識別マークを夫々、前記各開口部の長手中心軸上の相対的に異なる位置に設けたものである。
【0009】
このような構成により、同一のマスク基板上に並べて設けられマスクパターンが異なる複数種のパターン領域の中心軸から一定距離はなれた位置に夫々、長手中心軸が前記中心軸に平行となるように設けられた細長状の複数の開口部内夫々、各パターン領域の中心軸に沿って配列された各マスクパターンの配列ピッチの整数倍のピッチで上記各開口部の各長手中心軸と交差させて設けられた複数本のスリットから成り、相対的に異なる位置に設けられた識別マークの位置により、各パターン領域のマスクパターンを識別する。
【0011】
そして、前記各開口部内のスリットは、前記長手中心軸方向の幅が夫々異なる。これにより、各開口部内のスリットの、長手中心軸方向の幅の違いから各パターン領域のマスクパターンを識別する。
【0012】
また、第3の発明による露光装置は、被露光体に対向して設けられ、同一のマスク基板上にマスクパターンが異なる複数種のパターン領域をその中心軸が互いに平行となるように並べて設け、前記各パターン領域の前記中心軸と交差する方向にて、各中心軸から一定距離はなれた位置に夫々、長手中心軸が前記中心軸に平行な細長状の複数の開口部を形成し、該各開口部内に、夫々、異なる前記マスクパターンを識別するために、前記各パターン領域の中心軸に沿って配列された前記各パターン領域のマスクパターンの配列ピッチの整数倍のピッチで、前記各開口部の長手中心軸と交差させて設けられた複数本のスリットから成る識別マークを前記長手中心軸上の相対的に異なる位置に設けたフォトマスクを保持して、前記複数種のパターン領域の並び方向に移動可能なマスクステージと、前記フォトマスクの複数種のパターン領域のうち、選択された1つのパターン領域に光源光を照射して該選択されたパターン領域のマスクパターンを前記被露光体上に転写する露光光学系と、前記選択された1つのパターン領域に対応する前記開口部の長手中心軸に細長状の受光部の長手中心軸を合致させて配置され、前記識別マークの位置を検出するための検出手段と、入力手段を操作して入力されたマスクパターンの選択情報に基づいて前記マスクステージの移動を制御して前記複数種のパターン領域から1つのパターン領域を選択させると共に、露光レシピを保存する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記露光レシピに記録された設計値に基づいて算出された識別マークの位置情報と、前記選択されたパターン領域に対応して前記検出手段により検出された前記識別マークの位置情報とを比較し、前記選択されたパターン領域の正否を判定するものである。
【0013】
このような構成により、被露光体に対向して設けられたマスクステージにより、同一のマスク基板上にマスクパターンが異なる複数種のパターン領域をその中心軸が互いに平行となるように並べて設け、各パターン領域の中心軸と交差する方向にて、各中心軸から一定距離はなれた位置に夫々、長手中心軸が上記中心軸に平行な細長状の複数の開口部を形成し、該各開口部内に、夫々、異なる上記マスクパターンを識別するために、各パターン領域の中心軸に沿って配列された各パターン領域のマスクパターンの配列ピッチの整数倍のピッチで、各開口部の長手中心軸と交差させて設けられた複数本のスリットから成る識別マーク長手中心軸上の相対的に異なる位置に設けたフォトマスクを保持し、制御手段により入力手段を操作して入力されたマスクパターンの選択情報に基づいて上記マスクステージの移動を制御してフォトマスクを上記複数種のパターン領域の並び方向に移動させ、該複数種のパターン領域から1つのパターン領域を選択し、該選択されたパターン領域に露光光学系により光源光を照射して該パターン領域のマスクパターンを被露光体上に転写する。その際、選択された1つのパターン領域に対応する開口部の長手中心軸に細長状の受光部の長手中心軸を合致させて配置された検出手段により、上記選択されたパターン領域に対応する識別マークの上記長手中心軸上の位置を検出し、制御手段により、露光レシピに記録された識別マークの位置情報と、上記選択されたパターン領域に対応して検出手段により検出された識別マークの位置情報とを比較し、選択されたパターン領域の正否を判定する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、開口部内に設けられた複数本のスリットから成る識別マークの位置から、他のマスク基板と識別すると共に、露光に使用するパターン領域の正否を判定することができる。これにより、人為的ミスにより異なるフォトマスクがセットされて狙いと異なるパターンが露光されるのを防止することができる。
【0015】
また、請求項2又は4に係る発明によれば、複数種のパターン領域に対応して夫々設けられた開口部内の複数本のスリットから成る各識別マークの位置から、選択されたパターン領域の正否を判定することができる。したがって、人為的なミスにより上記複数種のパターン領域の選択情報を間違って入力設定してしまったり、露光しようとするフォトマスクと異なるフォトマスクをセットしてしまったりした場合にも、その人為的ミスを検知して狙いと異なるパターンが露光されるのを防止することができる。
【0017】
さらに、請求項3に係る発明によれば、スリットの位置、スリットの間隔及びスリットの幅に基づいて選択されたパターン領域の正否を判定することができる。これにより、パターン領域の正否判定をより一層確実に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による露光装置の実施形態の概略構成を示す正面図である。
図2】本発明による露光装置の要部を拡大して示す平面図である。
図3】本発明によるフォトマスクの一構成例を示す平面図である。
図4】上記フォトマスクの開口部内に設けられたスリットの一構成例を示す平面図である。
図5】上記スリットの別の構成例を示す平面図である。
図6】本発明の露光装置に使用する制御手段の構成を示すブロック図である。
図7】本発明の露光装置の動作を説明するフローチャートである。
図8】本発明の露光装置の別の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による露光装置の実施形態の概略構成を示す正面図である。この露光装置は、同一のマスク基板上にマスクパターンが異なる複数種のパターン領域を並べて設けたフォトマスクを使用し、上記複数種のパターン領域から選択されたパターン領域のマスクパターンを被露光体上に転写して露光するもので、搬送手段1と、マスクステージ2と、露光光学系3と、検出手段4と、照明手段5と、制御手段6(図6参照)とを備えて構成されている。なお、以下の説明においては、被露光体が例えば液晶表示用基板7の場合について述べる。
【0020】
上記搬送手段1は、図示省略の搬送機構により、感光材を塗布した液晶表示用基板7の両端縁部を保持して図1に示す矢印A方向に搬送するものであり、例えば液晶表示用基板7の搬送方向(以下「X方向)という)に一定間隔で並べられた複数のステージ8の上面に複数のエア噴出口とエア吸引口とを備え、該エア噴出口及びエア吸引口から噴出及び吸引されるエアの圧力をバランスさせて液晶表示用基板7をステージ8上に一定量だけ浮上させた状態で搬送するようになっている。また、液晶表示用基板7の移動距離を計測する図示省力の位置センサー及びを液晶表示用基板7の搬送速度を検出する図示省略の速度センサーを備えている。
【0021】
上記搬送手段1の上面に対向してマスクステージ2が設けられている。このマスクステージ2は、フォトマスク9の縁部を吸着して保持し、図示省略のステージ移動機構によりX方向にステップ移動するものであり、ステージ8の上面に平行な面内にてX方向と略直交する方向(以下「Y方向」という)に複数のフォトマスク9を保持する図2に示すような第1のマスクステージ2Aと第2のマスクステージ2BとをX方向に一定距離だけ離して備えた構成となっている。そして、上記第1及び第2のマスクステージ2A,2Bは、保持した複数のフォトマスク9がY方向に一定の配列ピッチで互い違いに並ぶように設けられている。さらに、第1及び第2のマスクステージ2A,2Bは、保持した各フォトマスク9を個別にX,Y方向に微動させると共にXY面内で回動させて、各フォトマスク9を予め定められた所定位置に位置付けるための図示省略のマスクアライメント機構も備えている。
【0022】
ここで、上記フォトマスク9は、図3に示すように、同一のマスク基板10上にマスクパターンが異なる複数種(例えば4種類)のパターン領域11をその長手中心軸が互いに平行となるように並べて設けている。なお、図3は、図が煩雑になるのを避けるために、マスクパターンは図示省略されているが、各パターン領域11内には、その長軸方向に少なくとも1列に並べて複数のマスクパターンが形成されている。さらに、フォトマスク9は、各パターン領域11の長手中心軸と交差する方向にて、各長手中心軸から一定距離はなれた位置に夫々、長手中心軸がパターン領域の長手中心軸に平行な細長状の複数の開口部12を形成し、該各開口部12内に、夫々、マスクパターンを識別するための長手中心軸と交差する少なくとも1本の細長パターン(以下「スリット」という)13を該長手中心軸上の相対的に異なる位置に設けてる。そして、上記複数種のパターン領域11の並び方向がX方向と合致するように上記マスクステージ2に保持される。また、各パターン領域11を間にしてその長手中心軸上には、フォトマスク9のX方向に平行な中心軸から等距離の位置にフォトマスク9を後述の露光光学系3に予め設定された基準位置に対して一定の位置関係となるように位置付けるためのマスク用アライメントマーク14が設けられている。なお、露光光学系3の照射領域IA内に位置付けられたパターン領域11のマスク用アライメントマーク14に対向して搬送手段1の隣接するステージ8の隙間には、上記マスク用アライメントマーク14を撮影する図示省略の一対の2次元カメラが設けられている。
【0023】
上記各開口部12内のスリット13の一構成例は、図4に示すように、各パターン領域11の長手中心軸に沿って配列された各マスクパターンの配列ピッチP1,P2と同ピッチで夫々例えば3本のスリット13から成る識別マーク各開口部12の長手中心軸上の相対的に異なる位置に形成されたものとなっている。又は、図5に示すように、各マスクパターンの配列ピッチP1,P2の2倍のピッチで複数本のスリット13が夫々各開口部12の長手中心軸方向に一定寸法だけずれて、開口部12内の全体に亘って設けられてもよい。また、上記各開口部12内のスリット13は、長手中心軸方向の幅が夫々異なっていてもよい。なお、各開口部12内のスリット13の位置情報は、各パターン領域11a〜11dのマスクパターンのパターン情報、例えば40インチパネルのカラーフィルタ用マスクパターン(パターン領域11a)、40インチパネルのTFT用マスクパターン(パターン領域11b)、50インチパネルのカラーフィルタ用マスクパターン(パターン領域11c)、又は50インチパネルのTFT用マスクパターン(パターン領域11d)等のマスクパターン情報を含むものである。この場合、予め設定して後述のメモリ24に保存される上記スリット13の位置情報は、例えば図4に示すように、複数本のスリット13の左から2番目のスリット13とフォトマスク9のX方向に平行な中心軸Mcとの間の距離Ya,Yb,Yc,Ydであり、設計値である。
【0024】
上記マスクステージ2の上方には、露光光学系3が設けられている。この露光光学系3は、マスクステージ2上に保持された各フォトマスク9の複数種のパターン領域11から選択された1つのパターン領域11に光源光を照射して該選択されたパターン領域11のマスクパターンを液晶表示用基板7上に転写するものであり、紫外線を含む光源光を放射する光源15と、光源光を上記フォトマスク9まで導くと共に、光源光の輝度分布を均一化し平行光にして上記フォトマスク9に照射させるカップリング光学系16と、光源光の光路を開閉するシャッタ17とを含んで構成されており、各フォトマスク9に対応して設けられた複数の単位露光光学系から成っている。
【0025】
上記マスクステージ2の上方にて、上記選択された1つのパターン領域11に対応する開口部12の長手中心軸に細長状の受光部の長手中心軸を合致させて検出手段4が配設されている。この検出手段4は、Y方向に複数の受光素子を一直線に並べて有するラインカメラであり、上記開口部12を透してフォトマスク9の下側を通過する液晶表示用基板7のピクセルを撮影すると共に、開口部12内に設けられた複数のスリット13を撮影するものである。
【0026】
上記検出手段4の撮影領域に対向して搬送手段1の隣接するステージ8の隙間には、照明手段5が設けられている。この照明手段5は、検出手段4の撮影領域を液晶表示用基板7の下側から基板を透して照明するものであり、可視光を照射する例えばハロゲンランプ等である。そして、ランプの光射出側には、紫外線カットフィルタを設けて、照明光に含まれる紫外線によって液晶表示用基板7の感光材が露光されるのを防止している。
【0027】
上記搬送手段1と、マスクステージ2と、光源15と、シャッタ17と、検出手段4とに電気的に接続して制御手段6が設けられている。この制御手段6は、マスクステージ2の移動を制御して複数種のパターン領域11から1つのパターン領域11を選択させるものであり、予め設定して保存されている露光レシピから読み出したマスクパターン情報(例えば、パターン番号)と、上記各スリット13の位置に対応して予め保存されているマスクパターン情報(例えば、パターン番号)のうち、上記検出手段4により検出されたスリット13の位置に対応したマスクパターン情報とを比較し、選択されたパターン領域11の正否を判定するようになっている。そして、図6に示すように、搬送手段駆動コントローラ18と、マスクステージ駆動コントローラ19と、光源駆動コントローラ20と、シャッタ駆動コントローラ21と、画像処理部22と、演算部23と、メモリ24と、データ入力部25と、制御部26とを備えて構成されている。
【0028】
ここで、搬送手段駆動コントローラ18は、搬送手段1の移動機構を制御して液晶表示用基板7を矢印A方向に予め定められた速度で移動させるものである。また、マスクステージ駆動コントローラ19は、ステージ移動機構の駆動を制御してフォトマスク9をX方向に所定量だけ移動させてフォトマスク9の複数種のパターン領域11から選択された一つのパターン領域11を露光光学系3の照射領域IA(図2参照)内に位置付けると共に、マスクステージ2に設けられた図示省略のアライメント機構の駆動を制御してフォトマスク9をX及びY方向並びに回転(θ)方向に微動させてフォトマスク9を露光光学系3の基準位置Hsに対して一定の位置関係となるように位置合わせさせるものである。さらに、光源駆動コントローラ20は、光源15の点灯及び消灯を制御するものである。さらにまた、シャッタ駆動コントローラ21は、シャッタ17の開閉を制御するものである。そして、画像処理部22は、各検出手段4により取得された3本のスリット13の画像を入力して画像処理し、Y方向の輝度変化から各スリット13のY方向の位置を検出するものである。また、演算部23は、画像処理部22で検出された3本のスリット13の位置に基づいてスリット13の配列ピッチ及び例えば左から2番目のスリット13と検出手段4の中心位置Ccとの間の距離を演算すると共に、該スリット13と液晶表示用基板7に予め設定された基準位置との間の距離を演算し、該距離と予め設定して保存され目標値とのずれ量を演算するものである。さらに、メモリ24は、上記演算部23における演算結果を一時的に保存すると共に後述のデータ入力部25により入力されたデータを保存するものであり、露光レシピを記録した記録媒体を含むものである。さらにまた、データ入力部25は、フォトマスク9の複数種のマスクパターン(パターン領域11)から一つのマスクパターン(パターン領域11)を選択するための選択情報、例えばパターン領域11のX方向の位置情報を入力するためのものであり、例えばキーボードやテンキー等である。そして、制御部26は、上記各構成要素が適切に駆動するように全体を統合して制御するものである。
【0029】
次に、このように構成された露光装置の動作について、図7のフローチャートを参照して説明する。ここでは、図4に示すように、各開口部12内にY方向の位置が相対的に異なる3本のスリット13を設けた場合について説明する。
先ず、ステップS1においては、第1及び第2のマスクステージ2A,2Bに夫々フォトマスク9を開口部12が対応するパターン領域11に対して矢印Aで示す基板搬送方向の手前側となるようにセットし、さらに、露光レシピを制御手段6のメモリ24、例えばHDD等の記録媒体に記録すると共に、第1及び第2のマスクステージ2A,2Bにセットされたフォトマスク9の例えば4種のパターン領域11から選択されるパターン領域11の選択情報、例えばX方向の位置情報xa,xb,xc,xdを、データ入力部25を操作して入力しメモリ24に保存して露光開始の準備が行われる。
【0030】
なお、上記露光レシピは、液晶表示用基板7のサイズやセルサイズ等のパネル情報、露光中の液晶表示用基板7の搬送速度や露光開始位置情報及び露光終了位置情報や露光エネルギー等の露光情報、マスクパターン情報としての使用するマスクパターンのY方向の配列ピッチP1又はP2及び上記マスクパターンに対応するスリット13の位置情報を含むものである。この場合、露光レシピに記録されるマスクパターン情報としてのスリット位置情報は、例えば図4に示す検出手段4の中心Ccと左から2番目のスリット13との間の距離であり、フォトマスク9のY方向の中心Mcと上記2番目のスリット13との間の距離Ya,Yb,Yc又はYd、露光光学系3に予め設定された基準位置Hsとフォトマスク9の中心Mcとの間の距離My、上記基準位置Hsと検出手段4の中心Ccとの間の距離Cyの設計値に基づいて予め算出されてメモリ24に保存されている。なお、以下の説明においては、選択しようとするパターン領域11が例えばパターン領域11bである場合について述べる。
【0031】
ステップS2においては、液晶表示用基板7を搬送手段1のステージ8上に位置決めして載置した後、図示省略の露光開始スイッチが押下されると、入力して設定された使用するマスクパターンのパターン領域11bに対応する位置情報xbに従ってフォトマスク9がX方向にステップ移動され、パターン領域11bが露光光学系3の照射領域IA内に位置付けられる。
【0032】
ステップS3において、フォトマスク9のアライメントが実行される。このアライメントの具体的手順は、先ず、露光光学系3の照射領域IA内に位置付けられたパターン領域11bに対応する図3に示す一対のマスク用アライメントマーク14を図示省略の一対の2次元カメラで撮影し、例えば各マスク用アライメントマーク14の中心が夫々各2次元カメラの視野中心に合致するようにマスクアライメント機構を駆動してフォトマスク9のアライメントを行う。これにより、フォトマスク9の中心Mcは、図4に示すように、露光光学系3に予め設定された基準位置Hsから一定距離Myだけ離れた位置に位置付けられることになる。
【0033】
ステップS4においては、上記選択されたパターン領域11bに対応する3本スリット13を検出手段4により撮影し、これを画像処理部22で画像処理して各スリット13のY方向の位置を検出し、隣接するスリット13間の間隔P1を演算部23で算出する。さらに、3本スリット13のうち例えば左から2番目のスリット13の位置に基づいて該スリット3と検出手段4の中心Ccとの間の距離ybを演算し、これをスリット位置情報として取得する。
【0034】
ステップS5においては、上記算出されたスリット13の間隔P1をメモリ24に保存された露光レシピのマスクパターンの配列ピッチP1と制御部26において比較し、両者が一致するか否かを判定する。さらに、露光レシピに記録された設計値に基づいて算出されメモリ24に保存されたスリット位置情報(Yb+My−Cy)と、検出手段4により撮影して取得されたスリット位置情報ybとを比較し、両者が一致するか否かを判定する。これにより、選択されたマスクパターン(パターン領域11)が露光に使用するマスクパターンとして正しいか否かを判定する。ここで、検出手段4により取得されたスリット間隔及びスリット位置情報のいずれもがメモリ24に保存されているマスクパターンの配列ピッチ及びスリット位置情報と一致したときには、ステップS5は“YES”判定となってステップS6に進み、液晶表示用基板7を移動させながら露光が実施される。
【0035】
一方、スリット間隔及びスリット位置情報のうち、いずれか一つでもメモリ24に保存されているマスクパターンの配列ピッチ及びスリット位置情報と一致しないときには、ステップS5は“NO”判定となってステップS7に進み、警告灯の点灯や警報音等によりエラーを報知して露光を中止する。
【0036】
これにより、人為的な設定ミスにより異なるパターンが露光されるのを防止することができる。例えば、露光領域10bに対応する40インチパネルのTFTパターンを露光しようとしているとき、データ入力部25の操作ミスにより、露光領域10bの位置情報としてxbを入力すべきところを誤ってxaを入力してしまった場合、露光領域10aに対応する40インチパネルのカラーフィルタパターンが選択される。この場合、40インチパネルのTFTパターンとカラーフィルタパターンの各パターンの配列ピッチP1は同じであるため、3本スリット13のスリット間隔だけでは選択された露光領域10の正否を判断することができない。
【0037】
しかしながら、本発明によれば、スリット間隔及びスリット位置情報のいずれもがメモリ24に保存されているマスクパターンの配列ピッチ及びスリット位置情報と一致したときにのみ、選択された露光領域10は正しいと判定するようにしているので、この場合、検出手段4により取得されるスリット位置情報は、図4に示すようにyaとなり、露光レシピの設計値に基づいて算出されるスリット位置情報(Yb+My−Cy)と一致せず、選択されたマスクパターン(パターン領域11a)は正しくないと判定される。このように、本発明によれば、人為的ミスにより異なるパターンが露光されるのを防止することができ、大量の不良発生を防止することができる。
【0038】
図8は、本発明による露光装置の別のマスクパターン選択動作について説明するフローチャートである。図8に示すマスクパターン選択動作は、フォトマスクをX方向にステップ移動させ、その都度スリット間隔を算出すると共にスリット位置情報を取得して、メモリ24に保存されているマスクパターンの配列ピッチ及びスリット位置情報と比較し、選択されたマスクパターン(パターン領域11)が正しいか否かを判定しながら、使用するマスクパターンを探索するものである。
【0039】
先ず、ステップS11においては、上記ステップS1と同様にして露光開始の準備が行われる。
【0040】
ステップS12においては、最初の露光領域10aを露光光学系3の照射領域IA内に位置付けた後、上記ステップS2と同様に該露光領域10aに対応するマスク用アライメントマーク14を使用してマスクアライメントを実行する。
【0041】
ステップS13においては、上記選択されたパターン領域11aに対応する3本スリット13を検出手段4により撮影し、これを画像処理部22で画像処理して各スリット13のY方向の位置を検出し、隣接するスリット13間の間隔を演算部23で算出する。さらに、3本スリット13のうち例えば左から2番目のスリット13の位置に基づいて該スリット3と検出手段4の中心Ccとの間の距離を演算し、これをスリット位置情報として取得する。
【0042】
ステップS14においては、上記算出されたスリット13の間隔をメモリ24に保存されているマスクパターンの配列ピッチと制御部26において比較し、両者が一致するか否かを判定する。さらに、メモリ24に保存されているスリット位置情報と検出手段4により取得されたスリット位置情報とを比較し、両者が一致するか否かを判定する。これにより、選択されたマスクパターン(パターン領域11)が露光に使用するマスクパターンとして正しいか否かを判定する。ここで、検出手段4により取得されたスリット間隔及びスリット位置情報のいずれもがメモリ24に保存されているマスクパターンの配列ピッチ及びスリット位置情報と一致したときには、ステップS14は“YES”判定となってステップS15に進み、液晶表示用基板7を移動させながら露光が実施される。
【0043】
一方、スリット間隔及びスリット位置情報のうち、いずれか一つでもメモリ24に保存されているマスクパターンの配列ピッチ及びスリット位置情報と一致しないときには、ステップS14は“NO”判定となってステップS16に進む。
【0044】
ステップS16においては、フォトマスク9の移動は、移動限界に達したか否かが判定される。ここで、フォトマスク9の移動が未だ移動限界内であるときには、ステップS16は“NO”判定となってステップS17に進む。
【0045】
ステップS17においては、フォトマスク9をステップ移動して次のパターン領域11bを選択する。そして、ステップS12に戻り、次に選択されたパターン領域11bに対応するマスク用アライメントマーク14を使用してマスクアライメントを行った後、ステップS13において次のパターン領域11bに対応するスリット13の間隔を算出すると共に、スリット13の位置情報を取得する。このようにして、ステップS16において“YES”判定となるまでステップS12〜ステップS17を繰り返し実行する。
【0046】
この場合、ステップS12〜ステップS17を繰り返し実行しても、ステップS14が“YES”判定とならず、且つステップS16においてフォトマスクの移動が限界に達したときには、人為的ミスにより異なるフォトマスクがセットされたことを意味し、ステップS16は、“YES”判定となってステップS18に進み、警告灯の点灯や警報音等によりエラーを報知して露光を中止する。
【0047】
ここで、露光は、露光レシピに記録された露光情報に基づいて行われる。例えば、液晶表示用基板7が露光開始位置に到達するまでは、液晶表示用基板7が高速度で搬送される。そして、液晶表示用基板7が露光開始位置に到達し、露光領域の先頭領域が露光光学系3の露光位置に達すると、基板の搬送速度は露光のために適切に設定された速度に変わる。同時に、シャッタ17が開かれ光源光がフォトマスク9の選択されたパターン領域11に照射し、該パターン領域11のマスクパターンが液晶表示用基板7の露光領域に転写される。こうして、液晶表示用基板7を一定速度で搬送しながら露光領域に対する露光が実行される。
【0048】
そして、液晶表示用基板7が露光終了位置に到達し、露光領域の後尾領域が露光光学系3の露光位置に達すると、シャッタ17が閉じるのと同時に基板の搬送速度を高速にして液晶表示用基板7を搬出する。
【0049】
上記露光動作中は、検出手段4によりフォトマスク9の開口部12を透して液晶表示用基板7に形成されたパターンに予め設定された基準位置(例えば、TFT基板のX方向に平行な中心線に近接した同方向に延びる配線の縁部)を検出し、該基準位置と検出手段4の中心Ccとの間の距離が予め設定してメモリ24に保存された目標値と合致するようにマスクステージ2のマスクアライメント機構を駆動してフォトマスク9をY方向に微動させ、フォトマスク9を移動中の液晶表示用基板7に対して位置合わせする。これにより、Y方向に振れながら搬送されている液晶表示用基板7にフォトマスク9を追従させることができ、露光位置精度を向上することができる。
【0050】
なお、上記実施形態においては、同一のマスク基板10に複数種のパターン領域11が形成されたフォトマスク9を使用して露光する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、フォトマスク9には一つのパターン領域11が形成されたものであってもよい。この場合、スリット13の相対的な形成位置の違いから別種のフォトマスク9と識別することができる。
【0051】
また、上記実施形態においては、被露光体が液晶表示用基板7である場合について説明したが、本発明はこれに限られず、被露光体は、プラズマディスプレイ表示用基板や、有機EL表示用基板等、如何なる基板であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
2…マスクステージ
3…露光光学系
4…検出手段
6…制御手段
7…液晶表示用基板(被露光体)
9…フォトマスク
10…マスク基板
11,11a〜11d…パターン領域
12…開口部
13…スリット
25…データ入力部(入力手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8