(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被牽引物を牽引するベルトが巻き掛けられるドラムと、当該ドラムを回転させるメインモータとを有する電動ウィンチ、および前記電動ウィンチを制御するコントローラを備えた電動ウィンチの制御装置であって、
前記電動ウィンチに設けられ、前記コントローラにより前記メインモータとは個別に回転駆動自在であって、前記ドラムを前記ベルトの巻き取り方向へ回転させるサブモータと、
前記ドラムの回転を検出する回転センサと、
前記コントローラに設けられ、前記電動ウィンチを操作する操作部材からのスタンバイ信号の入力に基づき前記サブモータを回転駆動する駆動制御部と、
前記コントローラに設けられ、前記スタンバイ信号が入力されると計時を開始し、所定時間経過後に前記駆動制御部にサブモータ停止信号を出力するとともに、所定時間経過前に前記回転センサの信号が前記駆動制御部に入力されると計時をリセットするタイマー部と、
を有することを特徴とする電動ウィンチの制御装置。
請求項1または2記載の電動ウィンチの制御装置において、前記操作部材は、前記コントローラに配線を介して電気的に接続された操作パネルであり、前記スタンバイ信号は、前記操作パネルに設けられた主電源スイッチのオン操作信号であることを特徴とする電動ウィンチの制御装置。
請求項1または2記載の電動ウィンチの制御装置において、前記操作部材は、前記コントローラと無線により通信自在なリモコンであり、前記スタンバイ信号は、前記リモコンに設けられて当該リモコンを使用可能状態とするリモコン電源スイッチのオン操作信号であることを特徴とする電動ウィンチの制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1(a),(b)は車両に搭載された電動ウィンチの基本動作を説明する説明図を、
図2は
図1の車両を上方から見た本発明のシステム構成を説明する説明図を、
図3(a)は車両に設置された操作パネルを示す平面図,(b)は介助者により車外から操作可能なリモコンを示す平面図を、
図4は電動ウィンチの詳細構造を示す斜視図を、
図5は
図4の電動ウィンチの内部構造(一部)を示す斜視図を、
図6は
図4の電動ウィンチを構成する部材の接続関係を模式的に示す図を、
図7はコントローラの内部構造を示すブロック図をそれぞれ表している。
【0019】
図1および
図2に示すように、車両10は福祉車両であり、当該車両10の後方側(図中右側)には、被牽引物としての車椅子20を搭載可能な車椅子搭載スペース11が形成されている。車椅子搭載スペース11の車両前方側(図中左側)には、車両10の車幅方向(
図2における上下方向)に所定間隔を持って一対の電動ウィンチ30が設置されている。各電動ウィンチ30は、先端側にフック31が装着されたベルト32を備えており、ベルト32は車椅子20を牽引するようになっている。具体的には、各電動ウィンチ30から各ベルト32を引き出して、各フック31を車椅子20の左右側にある一対の前フレーム21にそれぞれ引っ掛け、その状態のもとで各電動ウィンチ30を同期動作させて各ベルト32を引き込むことにより、図中矢印M1に示す方向に車椅子20が移動する。
【0020】
車椅子搭載スペース11の車両後方側には、地面Gと車両10の床面Fとを緩やかな傾斜角度で接続するスロープ12が設置されている。スロープ12は、車両10の走行時においては、床面Fに形成された格納部(図示せず)に格納されている。一方、車両10を停車させてかつバックドア13を開いた状態とし、図示しないスロープ操作スイッチをオン操作することにより、スロープ12は格納部から車外に向けて延出されるようになっている。
【0021】
各電動ウィンチ30を同期動作させて各ベルト32を引き込むことで、
図1(b)に示すように車椅子20はスロープ12上を移動していき、やがて車椅子20は、図中破線に示すように床面F上に到達して車椅子搭載スペース11内に搭載される。また、各電動ウィンチ30により各ベルト32を送り出すことで、
図1(b)のように車椅子搭載スペース11内に搭載された車椅子20を床面Fから地面Gへ移動される。このようにスロープ12を設けることで、車椅子20の地面Gと床面Fとの間の移動を容易に誘導できるようにしている。ここで、各電動ウィンチ30は図示しない介助者(操作者)により操作され、各電動ウィンチ30の操作中においては、介助者は車椅子20の後方から当該車椅子20を支持するようにする。
【0022】
各電動ウィンチ30を制御する制御装置40は、
図2に示すように構成されている。つまり制御装置40は、各電動ウィンチ30,コントローラ50,操作パネル60およびリモコン70から構成されている。各電動ウィンチ30とコントローラ50との間、および操作パネル60とコントローラ50との間には、通信線および電源線よりなる配線14が電気的に接続して設けられている。なお、リモコン70はワイヤレス式で無線によりコントローラ50と通信自在であり、リモコン70を車外に持ち出すことで、各電動ウィンチ30を車外から操作できるようになっている。
【0023】
ここで、
図2に示すように、車両10の床面Fにはフック15を備えた一対の固定ベルト16が設置されており、各固定ベルト16の各フック15は、車椅子搭載スペース11に搭載された車椅子20の左右側にある一対の車輪22にそれぞれ引っ掛けられるようになっている。これにより、車椅子搭載スペース11に搭載された車椅子20は、各ベルト32の各フック31および各固定ベルト16の各フック15の合計4箇所で固定され、ひいては車両10内で車椅子20が移動したりがたついたりするのを抑制している。
【0024】
操作部材としての操作パネル60は、
図3(a)に示すようにパネル本体61を備えている。パネル本体61は車椅子搭載スペース11の中央から後方側に設けられ、操作パネル60は車両10の後方から操作可能となっている。パネル本体61には、主電源スイッチ62,ベルトフリースイッチ63,速度切替スイッチ64およびブザー(スピーカ)65が設けられている。
【0025】
主電源スイッチ62は、制御装置40のシステム電源をオン状態とするために操作するものである。主電源スイッチ62をオン操作することで、各電動ウィンチ30を回転駆動する前のスタンバイ信号が操作パネル60からコントローラ50に送出され、これによりシステム電源がオン状態になる。このとき、主電源スイッチ62のインジケータ62aが点灯するようになっている。また、主電源スイッチ62は、制御装置40をシステムリセット(初期化)する際にも操作され、例えば、3秒以上の長押しをすることでシステムリセットされるよう設定されている。
【0026】
ベルトフリースイッチ63は、各電動ウィンチ30のロック状態を解除するために操作するもので、ベルトフリースイッチ63をオン操作することで、各ベルト32を引き出したり収納したりできるようになっている。つまり、ベルトフリースイッチ63をオン操作し、各ベルト32を引き出して車外にある車椅子20に引っ掛けたり、各電動ウィンチ30からそれぞれ引き出した各ベルト32の長さを揃えたりできるようにしている。ここで、ベルトフリースイッチ63をオン操作すると、ベルトフリースイッチ63のインジケータ63aが点灯するようになっている。
【0027】
速度切替スイッチ64は、車椅子20を車椅子搭載スペース11に搭載したり車椅子搭載スペース11から降ろしたりする際に、各ベルト32の移動速度、つまり引き込み速度や送り出し速度を、低速(LOW)または高速(HIGH)に切り替えるのに操作するものである。また、ブザー65は、各ベルト32の引き込み作動時や送り出し作動時,各電動ウィンチ30の動作不良時(故障発生時)等において、電子音等の警告音を発生するようになっている。ここで、警告音としては電子音に限らず、音声によるアナウンスであっても良い。
【0028】
操作部材としてのリモコン70は、乾電池駆動のワイヤレスリモートコントロールユニットで、操作パネル60の主電源スイッチ62が操作され、制御装置40のシステム電源がオン状態のときに使用可能となる。リモコン70は、
図3(b)に示すようにリモコン本体71を備えており、リモコン本体71は、リモコン電源スイッチ72,入スイッチ73および出スイッチ74を備えている。リモコン70は、さらにインジケータ75を備え、当該インジケータ75は、リモコン70の操作時等に点灯するようになっている。また、インジケータ75の点灯が暗くなったら乾電池(図示せず)を交換するようにする。
【0029】
主電源スイッチ62がオン状態で、かつリモコン電源スイッチ72をオン操作することにより、リモコン70は使用可能となる。具体的には、まず、リモコン電源スイッチ72をオン操作して、各電動ウィンチ30を回転駆動する前のスタンバイ信号がリモコン70からコントローラ50に送出されると、その後、リモコン70を用いて各電動ウィンチ30を操作できるようになる。ここで、リモコン70の操作は介助者によって行うようにする。介助者によりリモコン電源スイッチ72をオン操作し、その後、入スイッチ73を押すと、各電動ウィンチ30が各ベルト32を巻き取る動作を開始する。そして、入スイッチ73を押している間は、各電動ウィンチ30による各ベルト32の巻き取り動作が継続され車椅子搭載スペース11への車椅子20の搭載が各電動ウィンチ30によってアシストされる。
【0030】
一方、出スイッチ74を押すと、今度は各電動ウィンチ30が逆方向に作動し、各ベルト32を送り出す動作を開始する。そして、出スイッチ74を押している間は、車椅子搭載スペース11からの車椅子20の降ろし動作が各電動ウィンチ30によってアシストされる。ここで、介助者は、リモコン70の操作中においては、車椅子20のグリップGR(
図1参照)を把持し、車椅子20を支持するとともに、その移動を誘導するようにする。このように、制御装置40は、各電動ウィンチ30を駆動制御することで、介助者による車椅子20の移動をアシストするようになっている。
【0031】
車両10の右側(一方側)および左側(他方側)に設けられる各電動ウィンチ30は、何れも同じ形状かつ同じ構造のものを採用している。
図4ないし
図6においては、何れか一方の電動ウィンチ30のみを示しており、以下、何れか一方の電動ウィンチ30を代表して、その詳細構造について説明する。
【0032】
電動ウィンチ30は、
図4および
図6に示すように、電動モータ部80とドラム部90とを備えている。これらの電動モータ部80およびドラム部90は、図示しない複数の締結ネジにより一体化(ユニット化)されている。
【0033】
電動モータ部80は、モータ部(メインモータ)81とギヤ部82とを備えている。モータ部81の内部には、回転軸(図示せず)が回転自在に設けられ、ギヤ部82の内部には、回転軸の回転を減速して高トルク化するためのウォームおよびウォームホイールよりなる減速機構(図示せず)が設けられている。ウォームホイールには出力軸83(
図6参照)が一体に設けられ、当該出力軸83はドラム部90に向けて突出し、ドラム部90を形成するドラム92(
図5参照)を回転させるようになっている。
【0034】
ギヤ部82(ウォームホイール)と出力軸83との間には、
図6に示すように電磁クラッチ84が設けられ、当該電磁クラッチ84は、コントローラ50により締結状態または開放状態に制御されるようになっている。電磁クラッチ84を締結状態とすることで、ギヤ部82と出力軸83とは動力伝達可能に接続され、電磁クラッチ84を開放状態とすることで、ギヤ部82と出力軸83とが切り離される。
【0035】
なお、電磁クラッチ84は、ウォームホイールと一体回転する第1プレート(図示せず),出力軸83と一体回転する第2プレート(図示せず)およびステータコイル(図示せず)を備えている。そして、ステータコイルに駆動電流を供給することでステータコイルは電磁力を発生し、当該電磁力により各プレートは吸引されて締結される。一方、ステータコイルへの駆動電流の供給を停止することで各プレートは切り離される。
【0036】
ドラム部90は、ケーシング91を備えている。ケーシング91は略箱形状に形成され、その内部には、
図5に示すドラム92,ラチェット機構93および弛み取り機構94が収納されている。ケーシング91の外部には、ドラム92に巻き掛けられるベルト32の弛みを取り除く弛み取りモータ(サブモータ)95,ドラム92の回転を検出する回転センサ96,電動モータ部80や弛み取りモータ95等に駆動電流を供給するための外部コネクタ(図示せず)が接続されるコネクタ接続部97等が設けられている。ここで、弛み取りモータ95は、モータ部81とは個別に、コントローラ50により回転駆動自在となっている。
【0037】
ケーシング91の側部には、開口部91aが形成されており、当該開口部91aからは、ベルト32が出入り自在となっている。ベルト32は、ケーシング91の開口部91aの近傍に設けられた案内部材98によって出入りが案内され、これによりベルト32の捻れを防止している。また、案内部材98はフック31の通過を許さず、これによりベルト32の全てがケーシング91内に引き込まれてしまうのを防止している。
【0038】
ここで、
図4の符号STは、電動ウィンチ30を車両10の床面F(
図2参照)に固定するための一対の取付ステーであり、これらの各取付ステーSTは、図示しない複数の締結ボルトによって床面Fに強固に固定されている。これにより電動ウィンチ30は、車両10に対してがたつくこと無く強固に固定されている。
【0039】
ケーシング91の内部には、
図5に示すように、ドラム92,ラチェット機構93および弛み取り機構94が収納されている。ただし、
図5に示す弛み取りモータ95,案内部材98およびフック31については、
図4に示すようにケーシング91の外部に設けられている。
【0040】
ドラム92にはベルト32が巻き掛けられ、当該ドラム92の回転中心には、ドラム軸92aが一体回転可能に取り付けられている。ドラム軸92aには、電動モータ部80の出力軸83(
図6参照)の回転が伝達されるようになっており、ドラム軸92aおよびドラム92は、電動モータ部80の正逆方向への回転駆動に伴って正逆方向に回転駆動される。これにより、ベルト32をケーシング91内に引き込んだり、ケーシング91外に送り出したりすることができる。
【0041】
ドラム92とドラム軸92aとの間には、
図6に示すようにワンウェイクラッチ92bが設けられている。ワンウェイクラッチ92bは、ドラム軸92aがベルト32の巻き取り方向(
図5において反時計方向)に向かって回転する際、そのままこの回転をドラム92に伝達するよう構成されている。一方、ドラム軸92aよりも先にドラム92がベルト32の巻き取り方向に向かって回転すると、ドラム92の回転がドラム軸92aに伝達されず、ドラム92が空回りする。すなわち、ワンウェイクラッチ92bは、ドラム軸92aに対するドラム92のベルト32の送り出し方向への回転力の伝達を許可するとともに、ドラム軸92aに対するドラム92のベルト32の巻き取り方向への回転力の伝達を遮断するよう構成されている。
【0042】
ラチェット機構93は、ドラム92に一体回転可能に設けられたラッチギヤ93aと、ラッチギヤ93aのベルト32の巻き取り方向への回転を許容し、ベルト32の送り出し方向(
図5において時計方向)への回転を阻止する揺動自在な歯止め93bと、歯止め93bを揺動駆動するソレノイド駆動部材93cとを備えている。
【0043】
ソレノイド駆動部材93cは駆動ピン93dを備えており、コントローラ50の制御によりソレノイド駆動部材93cに駆動電流を供給することで、駆動ピン93dはピンの軸方向に移動し、引っ込むようになっている。これにより、ラッチギヤ93aと歯止め93bとの係合が解かれて、ベルト32の送り出し方向に向けてドラム92が回転可能となり、ひいては車椅子20を車椅子搭載スペース11から降ろせるようになる。一方、コントローラ50の制御によりソレノイド駆動部材93cへの駆動電流の供給を停止することで、図示しない内蔵バネのバネ力により駆動ピン93dは突出するようになっている。これにより、ラッチギヤ93aに歯止め93bが係合されて、ベルト32の送り出し方向へのドラム92の回転が阻止され、スロープ12上での車椅子20の後退が防止される。
【0044】
弛み取り機構94は、ドラム92に一体回転可能に設けられたスパーギヤ94aと、スパーギヤ94aと噛み合う小径ギヤ94bと、弛み取りモータ95により回転駆動される減速ギヤ機構94cとを備えている。弛み取りモータ95は、ドラム92がベルト32を巻き取る方向の回転力を発生し、この弛み取りモータ95の回転力は、減速ギヤ機構94c,トルクリミッタ94d,小径ギヤ94bおよびスパーギヤ94aを介してドラム92に伝達される。また、小径ギヤ94bと減速ギヤ機構94cとの間には、
図6に示すようにトルクリミッタ94dが設けられ、当該トルクリミッタ94dは一定以上のトルクの伝達をカットするようになっている。これにより弛み取りモータ95への過負荷を防止し、弛み取りモータ95を保護するようにしている。つまり、弛み取りモータ95としては、ベルト32の弛みを取ることができる程度のトルクを発生し得る小型モータを採用できるようになっている。
【0045】
図7に示すように、コントローラ50は、駆動制御部51およびタイマー部52を備えている。コントローラ50には、操作パネル60およびリモコン70から、それぞれ有線または無線で種々の操作情報(操作信号)が入力されるようになっている。また、コントローラ50には、電動ウィンチ30を構成するモータ部81,電磁クラッチ84,ソレノイド駆動部材93c,弛み取りモータ95および回転センサ96が電気的に接続されている。そして、コントローラ50の駆動制御部51は、操作パネル60およびリモコン70から出力された操作信号や、回転センサ96から出力された検出信号に基づき、上述した電動ウィンチ30を構成する駆動系部品(81,84,93c,95)を、一対の各電動ウィンチ30で同期するよう駆動制御するようになっている。
【0046】
ここで、回転センサ96はホール素子よりなり、回転センサ96と対向するドラム92の部分には、当該ドラム92の回転に伴って回転するリングマグネット(図示せず)が設けられている。これにより、回転センサ96はドラム92とともにリングマグネットが回転するとリングマグネットの磁極の切り替わりに応じて「オン」または「オフ」を示す矩形波信号(パルス信号)を発生するようになっている。そして、駆動制御部51は、入力された各パルス信号の立ち上がり回数または立ち下がり回数をそれぞれカウントし、これによりベルト32に掛かる負荷やベルト32の移動速度等を算出する。ここで算出した種々のデータは、電動ウィンチ30のきめ細かな駆動制御に反映させるようになっている。
【0047】
タイマー部52は、操作パネル60からのスタンバイ信号Stdが入力されると、タイマーをスタートさせ、これと同時に弛み取りモータ95を回転駆動させるための弛み取りモータ駆動信号Drvを駆動制御部51に出力するようになっている。つまり、操作パネル60の主電源スイッチ62がオン操作されることにより、システム電源がオン状態となり、かつ弛み取りモータ95が回転駆動されるようになっている。
【0048】
タイマー部52には所定の時間しきい値Th(例えば、10〜30sec)が予め格納されており、タイマー部52は、操作パネル60からのスタンバイ信号Stdが入力されてからの経過時間δTと時間しきい値Thとを比較するようになっている。そして、経過時間δTが時間しきい値Thよりも大きくなると、弛み取りモータ95の回転駆動を停止させるための弛み取りモータ停止信号(サブモータ停止信号)Stpを駆動制御部51に出力するようになっている。
【0049】
次に、以上のように形成した制御装置40の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0050】
図8は本発明に係る制御装置の制御内容を示すフローチャートを、
図9(a),(b)はベルトに弛みがある状態を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0051】
図8に示すように、ステップS1において、操作パネル60の主電源スイッチ62(
図3(a)参照)がオン操作されると、これによりシステム電源がオン状態となり、さらに操作パネル60からコントローラ50のタイマー部52に向けてスタンバイ信号(オン操作信号)Stdが出力される。
【0052】
続くステップS2では、タイマー部52がスタンバイ信号Stdの入力に基づいてタイマーをスタートさせ、さらに駆動制御部51に向けて弛み取りモータ駆動信号Drvを出力する。これにより駆動制御部51は、弛み取りモータ駆動信号Drvの入力に基づいて弛み取りモータ95を回転駆動する。
【0053】
駆動制御部51はさらに、モータ部81を停止状態,電磁クラッチ84を開放状態,ソレノイド駆動部材93cをオン状態(アンラッチ状態)とする制御を実行する。これにより、ドラム92のラチェット機構93によるロック状態が解除されて、当該ドラム92はベルト32の送り出し方向に回転可能となる。ここで、
図9(a),(b)に示すように、介助者は、ベルト32のフック31を車椅子20の前フレーム21に引っ掛ける。フック31を車椅子20の前フレーム21に引っ掛けると、予め回転駆動している弛み取りモータ95によりベルト32の弛みを取り除く動作が開始される。このとき、ワンウェイクラッチ92b(
図6参照)の作用により、ドラム軸92aは非回転の状態で、ドラム92のみがベルト32の巻き取り方向に向かって回転でき、ドラム92の回転はドラム軸92aに伝達されず、弛み取りモータ95が回転する際の抵抗を小さくすることができる。
【0054】
続くステップS3では、タイマー部52のタイマーをリセットし、ステップS4では、タイマー部52のタイマーをインクリメントする処理を実行する。続くステップS5では、介助者によりリモコン70のリモコン電源スイッチ72(
図3(b)参照)が操作されたか否かを判定し、リモコン電源スイッチ72が未だ操作されていないと判断(no判定)した場合にはステップS6に進み、リモコン電源スイッチ72がオン操作されたと判断(yes判定)した場合には、操作パネル60からコントローラ50のタイマー部52に向けてスタンバイ信号(オン操作信号)Stdを出力してステップS9に進む。
【0055】
ステップS6では、ドラム92の回転が有るか否か、つまりは回転センサ96によるパルスの検出が有るか否かを判定し、パルスの検出が無いと判断(no判定)した場合にはステップS7に進み、パルスの検出が有ると判断(yes判定)した場合には、ベルト32が巻き取られた、あるいは引き出されたと判断してその上流側のステップS3に戻りタイマーをリセットし、弛み取りモータ95の駆動を継続する。
【0056】
ステップS7では、タイマー部52によって、ステップS2でスタートさせたタイマーの経過時間δTが時間しきい値Thよりも大きいか否か、つまりスタンバイ信号Stdの入力から所定時間経過したか否かを判定する。経過時間δTが時間しきい値Th以下である場合(no判定)には、その上流側のステップS4に戻り、経過時間δTが時間しきい値Thよりも大きい(所定時間経過した)場合(yes判定)には、ステップS8に進む。なお、ステップS6とステップS7とによって、主電源スイッチ62をオン操作した後も、回転センサ96によるパルスを検出している限り弛み取りモータ95の駆動が継続されるため、フック31を車椅子20に引っ掛ける最中に弛み取りモータ95が停止することを防ぐことができる。
【0057】
ステップS8では、タイマー部52が弛み取りモータ95の回転駆動を停止させるための弛み取りモータ停止信号Stpを駆動制御部51に出力し、駆動制御部51は、弛み取りモータ停止信号Stpの入力に基づいて弛み取りモータ95の回転駆動を停止させる。これによりベルト32の弛みを取り除く動作を終了して、その上流側のステップS5に戻る。
【0058】
ステップS9では、弛み取りモータ95が停止しているか否かを判定し、弛み取りモータ95が停止していない(no判定)場合にはステップS11に進み、弛み取りモータ95が停止している(yes判定)場合にはステップS10にて弛み取りモータ95を駆動した後、ステップS11に進む。
【0059】
ステップS11では、タイマー部52のタイマーをリセットし、ステップS12では、タイマー部52のタイマーをインクリメントする処理を実行する。
【0060】
ステップS13では、介助者によりリモコン70の作動スイッチ、つまり入スイッチ73(
図3(b)参照)が操作されたか否かを判定し、入スイッチ73が未だ操作されていないと判断(no判定)した場合にはステップS14に進み、入スイッチ73がオン操作されたと判断(yes判定)した場合にはステップS17に進む。
【0061】
ステップS14では、ドラム92の回転が有るか否か、つまりは回転センサ96によるパルスの検出が有るか否かを判定し、パルスの検出が無いと判断(no判定)した場合にはステップS15に進み、パルスの検出が有ると判断(yes判定)した場合には、ベルト32が巻き取られた、あるいは引き出されたと判断してその上流側のステップS11に戻りタイマーをリセットし、弛み取りモータ95の駆動を継続する。
【0062】
ステップS15では、スタンバイ信号Stdの入力から所定時間経過したか否かを判定する。経過時間δTが時間しきい値Th以下である場合(no判定)には、その上流側のステップS12に戻り、経過時間δTが時間しきい値Thよりも大きい場合、つまり所定時間経過した場合(yes判定)には、ステップS16に進む。なお、ステップS6およびステップS7と同様に、ステップS14とステップS15とによって、リモコン電源スイッチ72をオン操作した後も、回転センサ96によるパルスを検出している限り弛み取りモータ95の駆動が継続されるため、例えばフック31が引っ掛けられた車椅子20を介助者がベルト32を巻き取りやすい位置に動かす等、介助者が車椅子20を動作させている最中に弛み取りモータ95が停止することを防ぐことができる。
【0063】
ステップS16では、タイマー部52が弛み取りモータ95の回転駆動を停止させるための弛み取りモータ停止信号Stpを駆動制御部51に出力し、駆動制御部51は、弛み取りモータ停止信号Stpの入力に基づいて弛み取りモータ95の回転駆動を停止させる。これによりベルト32の弛みを取り除く動作を終了する。なお、リモコン70にはタイマー部52とは別に動作するリモコンタイマー(図示せず)が設定されており、このリモコンタイマーは、弛み取りモータ95が停止する前に、リモコン70の電源をオフとする。そのため、ステップS16にて弛み取りモータ95を停止した後、上流側のステップS5に戻る。
【0064】
ステップS17では、タイマー部52およびリモコンタイマーとは別に動作し、弛み取りモータ95の駆動開始からタイマーをスタートさせる弛み取りタイマー(図示せず)によって、弛み取りモータ95の駆動から所定時間経過したか否かを判定する。経過時間が時間しきい値以下である場合(no判定)には、経過時間が時間しきい値よりも大きくなるまで(所定時間経過するまで)ステップS17およびステップS18を繰り返す。経過時間が時間しきい値よりも大きい(所定時間経過した)場合(yes判定)には、ステップS19に進む。
【0065】
なお、弛み取りタイマーの時間しきい値は、弛み取りモータ95が駆動を開始してからベルト32の弛みが完全に除去されるまでに必要な時間に設定されるため、
図9の破線で示すようにベルト32を真っ直ぐに緊張した状態とすることができる。
【0066】
ステップS19では、駆動制御部51により電動ウィンチ30のスロースタート制御を実行する。
【0067】
また、介助者がリモコン70の操作を止めて、電動ウィンチ30を途中で停止させる場合には、駆動制御部51は、モータ部81を停止状態,電磁クラッチ84を締結状態,ソレノイド駆動部材93cをオフ状態(ラッチ状態),弛み取りモータ95を停止状態とする制御を実行するようになっている。
【0068】
以上詳述したように、本実施の形態に係る電動ウィンチ30の制御装置40によれば、電動ウィンチ30に、コントローラ50によりモータ部81とは個別に回転駆動自在であって、ドラム92をベルト32の巻き取り方向へ回転させる弛み取りモータ95を設け、コントローラ50に、電動ウィンチ30を操作する操作パネル60からのスタンバイ信号Stdの入力に基づき弛み取りモータ95を回転駆動する駆動制御部51と、スタンバイ信号Stdの入力から所定時間経過後に駆動制御部51に弛み取りモータ停止信号Stpを出力するタイマー部52とを設けた。
【0069】
したがって、操作パネル60からのスタンバイ信号Stdの入力に基づいて弛み取りモータ95が回転駆動されて、電動ウィンチ30を作動させる前にベルト32の弛みを取ることができる。よって、スロースタート制御を有効に作用させることができ、ひいては車椅子20に衝撃を加えるようなことを防止できる。また、タイマー部52によって、スタンバイ信号Stdの入力から所定時間(時間しきい値Th)経過後に弛み取りモータ停止信号Stpを出力することで、弛み取りモータ95を停止させることができ、弛み取りモータ95の不要な回転駆動による電力消費を削減できる。さらに、操作パネル60からのスタンバイ信号Stdの入力に基づいて弛み取りモータ95が回転駆動されるので、主電源をオン操作した段階からベルト32の弛みを取ることができる。
【0070】
また、リモコン70のリモコン電源スイッチ72のオン操作により、リモコン70からスタンバイ信号Stdを出力するので、介助者は車椅子20の近傍に居ながら弛み取りモータ95を駆動することができる。よって、介助者や車椅子20の搭乗者に対して不安感を与えるのを抑制できる。
【0071】
さらに、リモコン電源スイッチ72のオン操作や、リモコン70の作動スイッチ、つまり入スイッチ73(
図3(b)参照)の操作が無く、かつ回転センサ96によるパルスの検出が無い場合には、スタンバイ信号Stdの入力から所定時間(時間しきい値Th)経過した後に、タイマー部52によって、弛み取りモータ停止信号Stpを出力することで、弛み取りモータ95を停止させることができ、弛み取りモータ95の不要な回転駆動による電力消費を削減できる。
【0072】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。