特許第5770082号(P5770082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5770082-マクロ抽出器を備えるOLED装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770082
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】マクロ抽出器を備えるOLED装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/02 20060101AFI20150806BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20150806BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   H05B33/02
   H05B33/14 A
   G02B5/08 A
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-502480(P2011-502480)
(86)(22)【出願日】2009年3月31日
(65)【公表番号】特表2011-517030(P2011-517030A)
(43)【公表日】2011年5月26日
(86)【国際出願番号】IB2009051352
(87)【国際公開番号】WO2009122358
(87)【国際公開日】20091008
【審査請求日】2012年3月16日
(31)【優先権主張番号】08103373.0
(32)【優先日】2008年4月4日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ボエルネル ヘルベルト エフ
【審査官】 素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−189237(JP,A)
【文献】 特開2000−148032(JP,A)
【文献】 特開2004−146122(JP,A)
【文献】 特開2005−038837(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/065817(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
H05B 33/02
G02B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光有機層、陰極層及び透明な陽極層を有するスタックを備えるOLED装置であって、前記発光有機層は、前記陰極層と前記陽極層との間に配されており、前記スタックは透明基板内に配されており、マクロ抽出器層は、前記透明基板の上部に配されており、前記マクロ抽出器は、前記透明基板と光学的に接触しており、前記マクロ抽出器層は、前記マクロ抽出器層の内部に、前記マクロ抽出器層の底部から上部への方向に延在する複数のミラー表面を有し、前記ミラー表面が不規則な表層構造を有し、前記マクロ抽出器層がクラッシュガラス装置を有する、OLED装置。
【請求項2】
前記ミラー表面が異なる法線方向を有している請求項1に記載のOLED装置。
【請求項3】
前記ミラー表面の法線方向と前記マクロ抽出器層の平面の法線とは、90°以下であり、かつ、45°よりも大きい鋭角を有している、請求項2に記載のOLED装置。
【請求項4】
前記ミラー表面は、異なる材料により充填されている前記マクロ抽出器層の材料内の空間を有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載のOLED装置。
【請求項5】
互いに隣接しているミラー表面の距離は15mm以下である、請求項1乃至4の何れか一項に記載のOLED装置。
【請求項6】
前記クラッシュガラス装置は、好ましくは空気充填されているクラックを好ましくは備えているプリストレストクラッシュガラスペインを有する、請求項に記載のOLED装置。
【請求項7】
前記クラッシュガラスペインは、上方の安定化層と下方の安定化層との間に挟まれている、請求項に記載のOLED装置。
【請求項8】
一方の前記安定化層は、薄膜層であり、他方の前記安定化層は、ガラスペインを有する、請求項に記載のOLED装置。
【請求項9】
前記クラッシュガラスペインの厚さは、8mm以下である、請求項乃至の何れか一項に記載のOLED装置。
【請求項10】
前記クラッシュガラスペインが低吸収ガラスを有する、請求項乃至の何れか一項に記載のOLED装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OLED装置の分野に関し、特に、OLED装置からの光抽出の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機LED(OLED)は、電気伝導性を有するが光学的に透明な酸化物(通常、酸化インジウムスズ(ITO))によって覆われているガラス基板上の有機物質の非常に薄い層(約100nm)から成る。ITOが陽極を形成しており、有機層のスタック上に蒸着されているアルミニウムの層(約100nm)が陰極を形成している。典型的には2〜10ボルトの電圧が、陽極と陰極との間に印加された場合、この有機スタックが光を発する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記OLED内で生成される光の殆どは、有機層内又はガラス内の導波路により、基板から空気中に漏出することができない。従って、より良好な光抽出が、OLEDの効率的な動作のために必須である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、より良好な光抽出フィーチャを有するOLED装置を提供することにある。
この目的は、発光有機層と陰極層と透明な陽極層とを有するスタックであって、前記有機層は、前記陰極層と前記陽極層との間に配されているスタックを備えるOLED装置であって、前記スタックは、透明基板上に配されており、マクロ抽出器層が、前記透明基板上に配されており、前記マクロ抽出器層は、前記基板と光学的に接触しており、前記マクロ抽出器層は、前記マクロ抽出器層の底部から上部への方向に延在している複数のミラー表面を有している、OLED装置により達成される。
【0005】
1つの層が、他の層の「上部」に又は2つの他の層「間」に配されるというフィーチャは、必ずしも、これらの層が互いに直接的に接触していることを意味するわけではない。更に、前記有機層は複数の有機層を有することができ、一般に、更なる層が、上述の層間に設けられることが可能である。
【0006】
更に、前記ミラー表面が、前記マクロ抽出器層の底部から上部までの方向に延在するという事実は、前記ミラー表面が底部から上部まで延在しなければならないことを意味しているわけではない。しかしながら、本発明の好ましい実施例によれば、前記ミラー表面は、実際に、前記マクロ抽出器層の底部表面から上部表面まで延在している。
【0007】
好ましくは、前記ミラー表面は、前記基板の屈折率に等しい又は近い屈折率を有する透明な媒体内に埋め込まれている。この屈折率の整合は、基板とマクロ抽出器との間の光学的結合に役立つ。
【0008】
前記ミラー表面のために、より多くの光が、当該OLED装置から抽出される。この状況において、発見されたことは、有機層、金属陰極、ITO陽極、光ガイド及びガラス基板を備える典型的な従来技術OLED装置内で生成される光は、
− 当該光の約30%は、前記有機層及び前記ITOにより形成される光ガイド内に閉じ込められ、
− 約20%は、前記金属陰極との相互作用において損失され、
− 約50%は、前記ガラス基板内に入射し、
− 前記ガラス基板からは、20%だけが空気中に漏出する、
というように分割されることである。
【0009】
更に、前記ガラス基板に入射する光は、ガラスと空気との界面における内部反射によって部分的に閉じ込められることが分かっている。この光は、基本的には、前記ガラス板によって導波される。本発明による抽出器は、導波された前記光を反射するために上述のミラー表面を使用し、従って、前記ガラス板内の伝導の抑制をもたらし、前記光のより良好な抽出が達成される。
【0010】
本発明の好ましい実施例によれば、前記ミラー表面は、不規則な表面構造を有する。更に、本発明の好ましい実施例によれば、前記ミラー表面は、異なる法線方向を有する。このことに関して、本発明の好ましい実施例によれば、前記ミラー表面の法線方向と前記マクロ抽出器層の平面の法線とが、90°以下であり、かつ、45°よりも大きく、好ましくは70°より大きく、最も好ましくは80°よりも大きい鋭角を含んでいる。即ち、前記ミラー表面は、前記マクロ抽出器層の平面に対してほぼ垂直に延在することが好ましい。
【0011】
更に、本発明の好ましい実施例によれば、前記ミラー表面は、より低い屈折率を有する異なる材料により充填されている前記マクロ抽出器層の材料内の空間を有する。このことに関して、前記空間は、ガス充填されており、特に空気を充填されているのが好ましい。更に、本発明の好ましい実施例によれば、隣接するミラー表面の互いからの距離は、15mm以下、好ましくは10mm以下、最も好ましくは8mm以下である。
【0012】
本発明の好ましい実施例によれば、前記マクロ抽出器層は、クラッシュガラス装置(crash glass device)を含んでいる。本発明の状況において、クラッシュガラス装置とは、クラッシュガラス(即ち、このガラスがクラッシュ構造を示している領域)の少なくとも1つの領域を有する装置であると理解されるべきである。このようなクラッシュ構造は、ガス充填されている(典型的には空気を充填されている)クラックによって、互いから分離されている壊れていないガラスの一部を有する。このようなクラッシュガラス装置は、一般に、本発明の好ましい実施例の上述のフィーチャの全てを有することができるガラスペイン(glass pane)を有している。特に、前記ミラー表面は、前記ガラスペインの壊れていない部分を互いから分離する空気が充填されているクラックにより形成されている。
【0013】
このことに関して、本発明の好ましい実施例によれば、前記クラッシュガラス装置は、上下の安定化層間に挟まれている、好ましくはプレストレスを与えられた、クラッシュガラスペインを有する。この安定化層は、好ましくは、前記クラッシュガラスペイン、及びこのペインとこの層とを接着するために使用される材料の屈折率に整合する屈折率を有している。
【0014】
更に、本発明の好ましい実施例によれば、一方の前記安定化層は、薄膜層(特に薄い可塑性の薄膜層)であり、他方の前記安定化層はガラスペイン(好ましくは安全ガラスペイン)を有する。このように、前記OLED側の前記安定化層は、非常に薄く作られることができ、前記より高い角度の下で発される光線が当該ガラス内の最小経路長によって、前記クラッシュガラスに入射するという事実に関して有利である。
【0015】
更に、前記クラッシュガラスペインの厚さは、好ましくは8mm以下、好ましくは6mm以下、最も好ましくは4mmである。更に、本発明の好ましい実施例によれば、前記クラッシュガラスペインは、低吸収ガラス、即ち好ましくは、前記OLEDの波長に対して低い吸収性を示すガラスを有する。
【0016】
即ち、本発明の好ましい実施例によれば、前記OLED基板に対する光学的接触におけるクラッシュプリストレストガラスシートは、前記表面に対しておおよそ垂直である前記クラックにおいて、導波された光を反射するように設けられる。このようなクラッシュガラスの場合、前記クラックはまっすぐではなく、光線をランダム化する小さい変化を有しており、前記ガラス板内の光の伝導の本質的に完全な抑制、従って、空気中へのより良好な抽出をもたらす。
【0017】
本発明の好ましい実施例のために使用される前記クラッシュガラスペイン内の前記クラックは、このペインを、小さいセクション(好ましくは10mm未満の、最も好ましくは数mm未満の長さ)に分割する。空気を充填されている前記クラックは、前記ガラスの前記平面に沿って進行する光に対する100%のミラーを提供することでき、このペイン内の光の伝搬を効率的に禁止する。前記クラックを有さないガラスペインは、内部反射のために前記光を前記エッジへ導く。
【0018】
このクラックは、好ましくは、多かれ少なかれ前記ガラスの表面に対して垂直であるが、前記クラックは、好ましくは、光線をランダム化する波形の形態におけるかなりの不規則性を示している。このランダム化は、常に、光線を漏出円錐(内部全反射の角度よりも大きい角度において、当該基板と空気との界面に当たる前記基板内の全ての光線により形成される円錐)内にずらすので、全ての光線が前記ガラスペインから漏出することを可能にするのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の好ましい実施例によるマクロ抽出器を備えるOLED装置を模式的に示している。
図2】本発明の好ましい実施例によるOLED装置のクラッシュガラスペイン内の光路の原理を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のこれら及び他の見地は、以下に記載される実施例を参照して、明らかになり、説明されるであろう。
【0021】
図1は、本発明の好ましい実施例によるOLED装置を、模式的な描写において示している。図1から分かるように、本発明の好ましい実施例によるOLED装置は、底部から上部へと、金属陰極1、発光有機層2、ITOでできている透明な陽極3及びガラス基板4を備えているスタックを有する。このスタックは、本質的に、従来技術のOLED装置から知られているものと同じである。
【0022】
しかしながら、このスタックの上部において、前記スタックと光学的に接触して、底側における薄い可塑性の薄膜7とより厚い安定化上部ペイン8との間に挟まれているクラッシュガラスペイン6を有するマクロ抽出器5が、設けられている。この安定化上部ペイン8は、マクロ抽出器5を安定させるために設けられ、安全ガラスでできている。クラッシュガラスペイン6、壊れていない安全ガラスの複数の領域内にクラッシュガラスペインを分離する空気を充填されているクラック9を有するプリストレスト安全ガラスが、使用される。
【0023】
これらの空気を充填されているクラック9は、クラッシュガラスペイン6の平面に沿って進行する光線に対してミラーとして振る舞い、このペイン内の光の伝搬を効果的に禁止する。前記クラックを有さないガラスペインは、内部反射のため前記光を前記エッジへ導く。これとは対照的に、本発明の好ましい実施例によれば、このような光は、依然として抽出されることができる。
【0024】
クラック9は、クラッシュガラスペイン6の表面に対してほぼ垂直であり、光線をランダム化する波形の形態におけるかなりの不規則性を示している。このランダム化は、常に、光線を漏出円錐内にずらすので、全ての光線がクラッシュガラスペイン6から漏出するのを可能にするのに役立つ。
【0025】
このことは、図2において、更に詳細に示される。図2から分かるように、有機層2の平面に対して正確な角度の下に発される光線は、クラック9において反射され、部分的には反射されて金属陰極1上に戻されもし、クラッシュガラスペイン6の上部表面上への入射角が本質的に垂直である場合に、当該装置から出る。結果として、全反射による光線の捕獲は、回避され、生成された光の非常により良好な抽出をもたらす。
【0026】
本発明は、添付図面及び上述において、詳細に説明され記載されたが、このような説明及び記載は、限定的なものではなく、説明的又は例示的なものであるとみなされるべきであり、本発明は、開示されている実施例に限定されるものではない。
【0027】
開示されている実施例に対する他の変化は、前記添付図面、本明細書及び添付請求項の熟慮により、添付請求項に記載の本発明を実施する際に当業者により理解され、行われることができる。「有する」という語は、他の構成要素又はステップの存在を排除するものではなく、単数形の構成要素は、複数のこのような構成要素を排除するものではない。特定の手段が、相互に異なる従属請求項において、引用されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利になるように使用されることができないと示すものではない。添付請求項における如何なる符号も、当該範囲を制限するものとして解釈されてはならない。
図1
図2