特許第5770106号(P5770106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5770106熱硬化性複合材料の落雷および電磁妨害遮蔽用共硬化性導電性表面フィルム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770106
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】熱硬化性複合材料の落雷および電磁妨害遮蔽用共硬化性導電性表面フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20150806BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20150806BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20150806BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20150806BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20150806BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20150806BHJP
   C09J 179/08 20060101ALI20150806BHJP
   C09J 161/04 20060101ALI20150806BHJP
   C09J 163/02 20060101ALI20150806BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20150806BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20150806BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20150806BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20150806BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20150806BHJP
   C08L 79/04 20060101ALI20150806BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20150806BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20150806BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20150806BHJP
   C08K 5/315 20060101ALI20150806BHJP
   H01B 5/02 20060101ALI20150806BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20150806BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   C08J5/18CFC
   C09J7/00
   C09J201/00
   C09J11/06
   C09J11/04
   C09J163/00
   C09J179/08
   C09J161/04
   C09J163/02
   C08L101/00
   C08K3/08
   C08K3/04
   C08L61/06
   C08L63/00 C
   C08L79/04 Z
   C08J5/04
   C08K3/38
   C08K5/42
   C08K5/315
   H01B5/02 Z
   H01B1/22 A
   H01B13/00 501Z
【請求項の数】16
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2011-550179(P2011-550179)
(86)(22)【出願日】2010年2月9日
(65)【公表番号】特表2012-518056(P2012-518056A)
(43)【公表日】2012年8月9日
(86)【国際出願番号】US2010023555
(87)【国際公開番号】WO2010093598
(87)【国際公開日】20100819
【審査請求日】2012年12月5日
(31)【優先権主張番号】61/152,939
(32)【優先日】2009年2月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594060532
【氏名又は名称】サイテク・テクノロジー・コーポレーシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サング,ジユンジー・ジエフリー
(72)【発明者】
【氏名】コーリ,ダリプ・クマー
【審査官】 深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−277262(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/127032(WO,A1)
【文献】 特開平05−239317(JP,A)
【文献】 特表2003−502461(JP,A)
【文献】 特開2009−269976(JP,A)
【文献】 特開2007−091900(JP,A)
【文献】 特開2007−091901(JP,A)
【文献】 特開2007−204669(JP,A)
【文献】 特開2006−049147(JP,A)
【文献】 特開2002−161123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00− 5/24
B29B 11/16, 15/08− 15/14
B32B 1/00− 43/00
B29C 43/00− 43/58
B29C 70/00− 70/88
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
C09J 7/00, 11/04, 11/06
C09J 161/04,163/00,163/02
C09J 179/08,201/00
H01B 1/22, 5/02, 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
落雷防護および電磁妨害遮蔽をもたらす能力を有する導電性表面フィルムであって、実質的に相互連結した層状形態でフィルム全体に渡って実質的に均一に分布している銀フレークを含有して成りかつ
少なくとも1種のエポキシ樹脂、
芳香族第一級アミン、ビス尿素、三フッ化ホウ素錯体およびジシアンジアミドから成る群より選択される少なくとも1種の硬化剤、
組成物の他の成分と反応する能力を有するエポキシ基、カルボン酸基、アミノ基およびヒドロキシル基から選択される官能基を有する少なくとも1種の強化剤、
組成物の総重量を基準にして35重量%以上の量の銀フレーク、
セラミック微小球、および
ヒュームドシリカ、
を含有して成る硬化し得る熱硬化性組成物から生じさせた、電気抵抗率が500mΩ/sq未満であり、フィルム重量が0.01−0.15psf(1平方フィート当たりのポンド)の範囲内であり、かつ硬化した外表面が露出されている、表面フィルム。
【請求項2】
落雷防護および電磁妨害遮蔽をもたらす能力を有する導電性フィルムであって、実質的に相互連結した層状形態でフィルム全体に渡って実質的に均一に分布している銀フレークを含有して成りかつ
(a)ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、テトラグリシジルエーテルメチレンジアニリン、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル、4−グリシジルオキシ−N,N’−ジグリシジアニリンおよびノボラックエポキシから成る群より選択される
少なくとも1種のエポキシ樹脂、
(b)ジシアンジアミド、ビス尿素、4,4’−メチレンビス−(フェニルジメチル尿素
)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4−DDS)およびBF3錯体から成る
群より選択される少なくとも1種の硬化剤、
(c)カルボキシル化ニトリル、カルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリル(CTBN)、カルボキシル末端ポリブタジエン(CTB)、アミン末端ポリスルホン、アミン末端ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、液状ゴムおよびコア/シェルゴム粒子から成る群より選択される少なくとも1種の強化剤、
(d)組成物の総重量を基準にして35重量%以上の量の銀フレーク、
(e)セラミック微小球、および
(f)ヒュームドシリカ、
を含有して成る硬化し得る熱硬化性組成物から生じさせた、硬化後の抵抗率が100mΩ/sq未満であり、フィルム重量が0.01−0.15psfの範囲内でありかつ硬化した外表面が露出されている導電性フィルム。
【請求項3】
前記強化剤がアミン末端ポリエーテルスルホンである請求項2記載のフィルム。
【請求項4】
最外層として複合プレプレグレイアップの上に生じさせた導電性表面フィルムを含有して成る複合構造物であって、前記プレプレグレイアップは繊維のシートにマトリックス材料を染み込ませることで生じさせた複数のプレプレグ層で構成されており、前記表面フィルムはフィルム全体に渡って実質的に均一に分布しているフレークを含有して成りかつ少なくとも1種のエポキシ樹脂、
芳香族第一級アミン、ビス尿素、三フッ化ホウ素錯体およびジシアンジアミドから成る群より選択される少なくとも1種の硬化剤、
組成物の他の成分と反応する能力を有するエポキシ基、カルボン酸基、アミノ基およびヒドロキシル基から選択される官能基を有する少なくとも1種の強化剤、および
組成物の総重量を基準にして35重量%以上の量のフレーク、
を含有して成る硬化し得る熱硬化性組成物から生じさせたものであって、500mΩ/sq未満の電気抵抗率、0.01−0.15psf(1平方フィート当たりのポンド)の範囲内のフィルム重量、および1重量%未満の揮発物含有量を有している、複合構造物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂がエピクロロヒドリンもしくはエピブロモヒドリンとポリフェノールの反応生成物であるポリグリシジルエーテル、ポリアルコールもしくはジアミンのポリグリシジルエーテル、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステルおよびノボラックエポキシから成る群より選択される請求項4記載の複合構造物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂がビスフェノールAのジグリシジルエーテル、テトラグリシジルエーテルメチレンジアニリン、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル、4−グリシジルオキシ−N,N’−ジグリシジアニリンから成る群より選択される請求項4の
いずれか記載の複合構造物。
【請求項7】
前記強化剤が前記組成物の総重量を基準にして1−30重量%の範囲で存在しかつカルボキシル化ニトリル、カルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリル(CTBN)、カルボキシル末端ポリブタジエン(CTB)およびアミン末端ポリエーテルスルホンから成る群より選択される請求項4記載の複合構造物。
【請求項8】
前記強化剤がアミン末端ポリエーテルスルホンである請求項4記載の複合構造物。
【請求項9】
前記熱硬化性組成物が更にブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、3,5−ジ−t−
ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、n−ヘキサデシルエステル、二酸化チタン、超微細酸化亜鉛およびカーボンブラックから成る群より選択される紫外線安定剤も前記組成物の総重量を基準にして0.1から5重量%含有して成る請求項4記載の複合構造物。
【請求項10】
更に銀ナノワイヤー、炭素ナノチューブ、導電性カーボンブラック、銀被覆銅フレークおよび銀被覆ガラスバルーンの中の少なくとも1種も含有して成る請求項4記載の複合構造物。
【請求項11】
表面フィルムの抵抗率が15mΩ/sq未満である請求項4記載の複合構造物。
【請求項12】
前記硬化し得る熱硬化性組成物が更に最大寸法が12−150μmの範囲内の非導電性充填材も前記熱硬化性組成物の総重量を基準にして5から30重量%含有して成る請求項4記載の複合構造物。
【請求項13】
前記硬化し得る熱硬化性組成物が更にビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、ビスフェノールZ、テトラメチルビスフェノールA(TMBP−A)およびビスフェノールフッ素から成る群より選択される鎖延長剤も含有して成る請求項4記載の複合構造物。
【請求項14】
前記フレークの平均サイズが3μmから36μmである請求項4記載の複合構造物。
【請求項15】
落雷防護および電磁妨害遮蔽を提供するために請求項2の導電性表面フィルムを使用する方法であって、前記表面フィルムを複合構造物の上に、硬化後に前記表面フィルムが露出された外表面を有するように、最外層として適用し、硬化させることからなる方法。
【請求項16】
複合構造物を製造する方法であって、
(a)i. 少なくとも1種のエポキシ樹脂、
ii. 芳香族第一級アミン、ビス尿素、三フッ化ホウ素錯体およびジシアンジアミドから成る群より選択した少なくとも1種の硬化剤、
iii. 組成物の他の成分と反応する能力を有するエポキシ基、カルボン酸基、アミノ基およびヒドロキシル基から選択した官能基を有する少なくとも1種の強化剤、および
iv. 組成物の総重量を基準にして35重量%以上の量のフレーク、
を含有して成る硬化し得る熱硬化性組成物から導電性フィルムを生じさせ、
(b)繊維のシートにマトリクス材料を染み込ませることで生じさせた複数のプレプレグ層で構成させた硬化し得る複合プレプレグレイアップを準備し、
(c)前記導電性フィルムを前記複合プレプレグレイアップに最外層として接着させ、そして
(d)前記導電性フィルムと前記複合プレプレグレイアップを250度Fから350度Fの範囲内の温度で共硬化させる、
ことを含んで成り、斯くして、前記導電性フィルムは露出された外表面および500mΩ/sq未満の抵抗率を有しかつ前記フレークは実質的に相互連結した層状形態で導電
性フィルムの全体に渡って実質的に均一に分布される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様は、導電性重合体組成物、特に熱硬化性重合体組成物に導電性添加剤を組み込むことで生じさせた表面フィルムおよび接着性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
重合体マトリクス複合構造物(PMC)が航空宇宙用途で益々用いられるようになってきている。例えば、PMCは商業的航空機の中の約50%に及ぶ量で用いられている。PMCでは、選択的に配向させた繊維を組み合わせてそれらを取り巻く重合体マトリクス材料の中に封じ込めている。そのような複合構造物は重量に関して良好な機械的特性(例えば強度、剛性、じん性)を示すばかりでなく幅広い使用温度範囲および製造の容易さも示すことで、それらは航空宇宙用途に良好に適する。
【0003】
航空宇宙用途に要求される表面品質を有する複合材料を生じさせる目的で、しばしば、表面フィルム、例えばエポキシが基になったフィルムなどを重合体複合材料の中に組み込むことが行われている。例えば、表面フィルムをプレプレグと一緒に共硬化させることによって、実質的に間隙のない表面を生じさせて基礎複合材料を防護することが可能になると同時に複合材料を製造する時の労力、時間および費用を軽減することも可能になる。
【0004】
しかしながら、エポキシが基になった表面フィルムは、絶縁特性を有することが理由で、電磁エネルギー(EME)事象、例えば落雷(LS)、静電放電(ESD)および電磁妨害(EMI)などに対して示す抵抗が劣る。そのようにエポキシが示す抵抗率が比較的高いことで、落雷のエネルギーが充分に消散することが邪魔され、その結果として基礎複合構造物のスキン層の穴開きおよび剥離が生じてしまう。更に、当該複合材料の表面に生じた電荷が長時間残存する可能性があることで、湿度が比較的低い環境下でESDが起こる危険性が高まり、それによって電子装置に損傷が生じる可能性がありかつ燃料タンクの蒸気空間の中に火花が発生する危険があり得る。加うるに、エポキシが基になった表面フィルムが示す導電性が劣ることで電荷担体の移動が抑制させる可能性があり、それによって当該複合構造物がEMI遮蔽をもたらす能力が悪化する可能性がある。
【0005】
落雷が複合構造物に対して示す影響を最小限にする目的で、航空機の複合部品にLS/ESD/EMI防護を与えようとして、複合構造物の導電性を高くする様々な方法が用いられてきた。そのような方策の例には、固体状またはセグメント化ダイバータ、アーク溶射もしくはフレーム溶射金属、織ワイヤーメッシュ、固体/拡張/穴開き箔、金属被覆繊維布、織り合わされたワイヤー布(IWWF)高導電性繊維および金属含有導電性塗料が含まれる。さらなる例として、落雷に対する防護を行う目的でそのような事象によって被るエネルギーを消散させようとして複合材料の表面に取り付ける表面フィルムの中に拡張金属スクリーン(例えば銅、アルミニウムメッシュ)を埋め込むことが行われた。
【0006】
しかしながら、金属スクリーンが埋め込まれた表面フィルムシステム(例えばファイバーグラス絶縁層を伴う銅もしくはアルミニウム)は有害に航空機全体の重量を有意に増加させてしまう。その上、そのような表面フィルムシステムを複合材料の中に一体化するとその複合部品を製造する時の材料費および労賃が有意に高くなってしまう可能性がある。加うるに、そのような表面フィルムの相互連結を数多くの表面フィルムを横切る導電性が実質的に均一になるような様式で実施するのは困難であり得、その結果として導電性が不連続になることで、LSもしくはESD中に損傷が起こりそして/またはEMI遮蔽の悪化が起こる可能性が高くなってしまう可能性がある。特に、金属スクリーンは更に腐食、
熱膨張によるマトリクスとのミスマッチの結果として起こる微細亀裂およびマトリクスとの接着の悪化も起こし、それらの各々によって更に当該表面フィルムが与えるLS/ESD/EMI防護が低下してしまう可能性もある。
【0007】
要約
1つの態様では、導電性表面フィルムを提供する。この表面フィルムは熱硬化性重合体組成物[これは、
少なくとも1種の熱硬化性樹脂、および
銀フレークの含有量が組成物の総重量を基準にして約35重量%以上である少なくとも1種の導電性添加剤、
を含有して成る]
を含有して成り、この表面フィルムが示す抵抗率は約500mΩ/sq未満である。
【0008】
別の態様でも導電性表面フィルムを提供する。この表面フィルムは熱硬化性重合体組成物[これは
少なくとも1種の熱硬化性樹脂、および
導電性カーボンブラックを約2−8重量%、
含有して成る]
を含有して成り、この表面フィルムが示す抵抗率は約50Ω/sq未満である。
【0009】
さらなる態様では、本表面フィルムを含有して成る複合材料を提供する。
【0010】
追加的態様では、導電性組成物を提供する。この組成物は、
1種以上の熱硬化性樹脂を約10−60重量%、
1種以上の硬化剤を約0.5−30重量%、および
1種以上の導電性添加剤を約2−70重量%、
含有して成り、ここで、前記の濃度は前記組成物の総重量を基にして決めた濃度であり、かつ前記導電性添加剤の濃度は当該導電性組成物が示す抵抗率が約1x10−6Ω/sqから1x10Ω/sqの範囲になるように選択した濃度である。
【0011】
1つの態様では、前記組成物を含有して成る表面フィルムを提供する。別の態様では、前記表面フィルムを含有して成る複合材料を提供する。さらなる態様では、前記組成物を含有して成る導電性接着性フィルムを提供する。
【0012】
追加的態様では、導電性表面フィルムを生じさせる方法を提供する。この方法は、
前記導電性組成物を準備し、そして
前記導電性組成物を担体に加える、
ことを含んで成る。
【0013】
さらなる態様では、複合材料を生じさせる方法を提供する。1つの態様では、前記方法に、前記表面フィルムと複合材料プレプレグを共硬化させることを含める。別の態様では、前記方法に、前記表面フィルムを複合材料に接着させることを含める。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、導電性熱硬化性組成物およびこれを用いた製品を生じさせる方法の1つの態様を示す流れ図である。
図2図2は、1つの態様の導電性熱硬化性組成物から複合材料を生じさせる方法の1つの態様を示す流れ図である。
図3図3は、1つの態様の導電性熱硬化性組成物から生じさせた表面フィルムを一体化するプレプレグレイアップの概略図である。
図4A図4Aは、銀フレークの導電性添加剤を含有する表面フィルムの断面図を撮った走査電子顕微鏡(SEM)写真であり、これは、前記銀フレークが層状形態を取っていることを示している。
図4B図4Bは、銀フレークを含有して成る1つの態様の導電性重合体組成物から生じさせた表面フィルムの破壊表面を撮ったSEM写真である。
図5A図5Aは、導電性熱硬化性組成物の態様から生じさせた表面フィルムが示した抵抗率を導電性添加剤の関数としてプロットした図である。
図5B図5Bは、導電性カーボンブラックおよび炭素ナノチューブを含有させた導電性熱硬化性組成物の態様から生じさせた表面フィルムが示した抵抗率を濃度の関数としてプロットした図である。
図6図6は、導電性熱硬化性組成物の態様から生じさせた表面フィルムが示した抵抗率を異なる2種類の銀フレークの濃度の関数としてプロットした図である。
図7図7は、導電性熱硬化性組成物の態様から生じさせた表面フィルムが示した抵抗率を銀フレーク単独および他の導電性添加剤(銀ナノワイヤー、炭素ナノチューブおよび金属被覆バルーン)の濃度の関数としてプロットした図である。
図8A-8B】図8A−8Bは、表面フィルムを組み込んだ複合パネルにゾーン1Aの落雷試験を受けさせた後の正面図である:(A)未塗装対照表面フィルム、(B)銀フレーク含有未塗装表面フィルム。
図9A-9B】図9A−9Bは、表面フィルムを組み込んだ複合パネルにゾーン1Aの落雷試験を受けさせた後の正面図である:(A)塗装対照表面フィルム、(B)銀フレーク含有塗装表面フィルム。
図10A-10B】図10A−10Bは、表面フィルムを組み込んだ複合パネルにゾーン2Aの落雷試験を受けさせた後の正面図である:(A)銀フレーク含有未塗装表面フィルム、(B)銀フレーク含有塗装表面フィルム。
【0015】
詳細な説明
本明細書で用いる如き用語「ほぼ」、「約」および「実質的に」は、ある量が示した量に近いことを表し、その量でも所望の機能が実施されるか或は所望の結果が達成される。例えば、用語「ほぼ」、「約」および「実質的に」は、示した量の10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満および0.01%未満の量を指し得る。
【0016】
本明細書で用いる如き用語「室温」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには約16℃(60度F)から32℃(90度F)の範囲内の温度が含まれ得る。
【0017】
本明細書で用いる如き用語「繊維」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには複合材料の強化に適応した1種以上の繊維材料が含まれ得る。繊維が取り得る形態はホイスカ、短繊維、連続繊維、フィラメント、トウ、束、シート、層およびこれらの組み合わせであり得る。連続繊維は更に1方向、多次元(例えば二次元または三次元)、不織、織り、編み、縫合、巻きおよび編組み形態ばかりでなく渦巻きマット、フェルトマットおよび細断マット構造のいずれかであり得る。織り繊維構造物は、フィラメント数が約1000未満、フィラメント数が約3000未満、フィラメント数が約6000未満、フィラメント数が約12000未満、フィラメント数が約24000未満、フィラメント数が約48000未満、フィラメント数が約56000未満およびフィラメント数が約125000未満の多数の織トウを含有して成り得る。さらなる態様では、そのようなトウをクロストウステッチ、横糸挿入編みステッチまたは少量の樹脂、例えば熱可塑性樹脂などで適当な場所に保持してもよい。
【0018】
繊維の組成を必要に応じて変えることができる。繊維組成の態様には、これらに限定するものでないが、ガラス、炭素、アラミド、石英、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ−p−フェニレン−ベンゾビスオキサゾール(PBO)、ホウ素、ポリアミド、炭素および
グラファイト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、Astroquartz(商標)、Tyranno(商標)、Nextel(商標)およびNicalon(商標)およびこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0019】
本明細書で用いる如き用語「樹脂」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、熱硬化性および/または熱可塑性材料を包含する1種以上の化合物が含まれ得る。例には、これらに限定するものでないが、エポキシ、エポキシ系硬化剤、フェノール樹脂、フェノール、シアン酸エステル、ポリイミド(例えばビスマレイミド(BMI)およびポリエーテルイミド)、ポリエステル、ベンゾオキサジン、ポリベンゾオキサジン、ポリベンゾオキサゾン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、シアネート、シアン酸エステルおよびポリエーテルケトン(例えばポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)など)、これらの組み合わせおよびそれらの前駆体が含まれ得る。
【0020】
エポキシ樹脂には更にエポキシ基を1分子当たり少なくとも約2個有するポリエポキシドも含まれ得る。そのようなポリエポキシドは飽和、不飽和、環式もしくは非環式、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式であってもよい。適切なポリエポキシドの例にはポリグリシジルエーテルが含まれ、これの調製は、エピクロロヒドリンもしくはエピブロモヒドリンとポリフェノールの反応をアルカリの存在下で起こさせることで実施される。それに適したポリフェノールは、例えばレゾルシノール、ポリカテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA(ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン)、ビスフェノールF(ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタンおよび1,5−ヒドロキシナフタレンであろう。ポリグリシジルエーテル用基礎として適した他のポリフェノールは、フェノールとホルムアルデヒドもしくはアセトアルデヒドの公知縮合生成物(ノボラック樹脂型の)である。
【0021】
他のポリエポキシドには、ポリアルコールもしくはジアミンのポリグリシジルエーテルが含まれ得る。ポリアルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールまたはトリメチロールプロパンなどを用いてそのようなポリグリシジルエーテルを生じさせる。
【0022】
追加的ポリエポキシドには、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル、例えばグリシドールもしくはエピクロロヒドリンと脂肪族もしくは芳香族ポリカルボン酸、例えばしゅう酸、こはく酸、グルタル酸、テレフタル酸または脂肪酸二量体などの反応生成物などが含まれ得る。
【0023】
他のエポキシドには、オレフィン系不飽和脂環式化合物のエポキシ化生成物または天然油脂のエポキシ化生成物から生じさせたエポキシドが含まれ得る。
【0024】
他のエポキシドには、ビスフェノールAもしくはビスフェノールFとエピクロロヒドリンの反応で生じさせた液状エポキシ樹脂が含まれ得る。室温で液状であるそのようなエポキシ樹脂のエポキシ当量は一般に150から約480である。
【0025】
別法としてか或はまた室温で固体のエポキシ樹脂を用いることも可能であり、それらも同様にポリフェノールとエピクロロヒドリンから得ることができ、例えばビスフェノールAもしくはビスフェノールFが基になった融点が45から130℃、好適には50から80℃のエポキシ樹脂である。それらは分子量がより高い結果として室温で固体になる点で
液状のエポキシ樹脂とは実質的に異なる。固体状エポキシ樹脂のエポキシ当量は一般に400に等しいか或はそれ以上である。
【0026】
本明細書で用いる如き用語「硬化する」または「硬化」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、重合および/または架橋過程が含まれ得る。硬化は、これらに限定するものでないが、加熱、紫外線暴露および放射線暴露などを包含する工程で実施可能である。特定の態様では、硬化をマトリクス内で起こさせてもよい。硬化前のマトリクスに更に1種以上の化合物を含有させることも可能であり、そのような化合物はほぼ室温で液体、半固体、結晶性固体およびこれらの組み合わせである。さらなる態様では、プレプレグの中のマトリクスをある程度硬化させることでそれが選択した粘着性または粘性を示すようにすることも可能である。特定の態様では、強化と硬化を単一の工程として実施してもよい。
【0027】
本明細書で用いる如き用語「強化」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、樹脂もしくはマトリクス材料が繊維内および隣接する繊維の間の空隙をなくすように流れ込む工程が含まれ得る。例えば、「強化」には、これらに限定するものでないが、マトリクスが繊維およびプレプレグの間およびそれらの中に存在する空隙の中に流れ込むこと、等々が含まれ得る。更に、「強化」を熱、真空および圧力をかけることの中の1つ以上の作用の下で起こさせることも可能である。
【0028】
本明細書で用いる如き用語「含浸」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、マトリクス材料を1本以上の繊維の間またはそれらに隣接させて導入することが含まれ得る。そのようなマトリクスが取り得る形態はフィルム、粉末、液体およびこれらの組み合わせである。熱、圧力および溶媒の中の1つ以上を加えることで含浸を助長することができる。
【0029】
本明細書で用いる如き用語「プレプレグ」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、マトリクス材料による含浸を受けた繊維のシートもしくは層が含まれ得る。また、そのようなマトリクスもある程度硬化した状態で存在させてもよい。
【0030】
本明細書で用いる如き用語「レイアップ」および「プレプレグレイアップ」は、当業者に公知の如き通常の意味を有し、それには、互いに隣接して位置する1つ以上のプレプレグ層が含まれ得る。特定の態様では、そのようなレイアップの中のプレプレグ層を互いに関して選択した配向に位置させてもよい。例えば、プレプレグレイアップは、繊維がレイアップの最大寸法方向、例えば長さ方向などに関して0゜、90゜、選択した角度θおよびこれらの組み合わせの方向に配向している1方向繊維構造を有するプレプレグ層を含有して成り得る。更に、特定の態様では、繊維構造のいずれかの組み合わせ、例えば1方向および多次元などの組み合わせを有するプレプレグを組み合わせることでプレプレグレイアップを生じさせることができることも理解され得るであろう。
【0031】
さらなる態様では、プレプレグ層が選択した配向から相対的に動かないようにする目的で、場合により、縫い合わせ材料を用いてそれらを一緒に縫い合わせることも可能である。レイアップの製造は、これらに限定するものでないが、ハンドレイアップ、自動化テープレイアップ(ATL)、最新型繊維配置(AFP)およびフィラメント巻き取りなどを包含し得る技術を用いて実施可能である。
【0032】
本開示の態様では、表面フィルムおよび接着剤で用いるに適した導電性熱硬化性組成物ばかりでなく相当する製造方法も提供する。本組成物から生じさせた表面フィルムは、金属のスクリーンまたは箔を用いて埋め込むことを行わなくても金属に匹敵する向上した導電性を示す。そのような表面フィルムを複合構造物(例えばプレプレグ、テープおよび布
)の中に最外表面層として例えば共硬化などで組み込むことができる。このように、前記表面フィルムを航空機構成要素などの如き用途で用いるとそれは導電性最外層として落雷防護(LSP)および電磁妨害(EMI)遮蔽を与え得る。
【0033】
特定の態様では、熱硬化性重合体を導電性添加剤、例えば金属フレークおよび/または導電性ナノ粒子などと組み合わせてそれらをフィルムの上または全体に渡って実質的に均一に分散させることで、そのような表面フィルムの向上した導電性を達成することができる。有益には、そのような組成物を用いると、表面フィルムの導電性を向上させようとして比較的重い金属スクリーンを用いる必要性が実質的に低くなり得ることで、重量が実質的に低くなる。例えば、金属スクリーンが埋め込まれている導電性表面フィルムに比べて約50から80%の軽量化を達成することができる。本明細書に開示する表面フィルムの態様にはそのようなスクリーンおよび箔を存在させていないことから、更に、本表面フィルムを用いて生じさせる複合部品の製造の容易さが助長されかつコストも低くなり得る。
【0034】
特に、銀フレークの導電性添加剤を含有させた重合体組成物の態様は有意に向上した導電性を示すことを見いだした。以下に考察するように、理論で範囲を限定するものでないが、銀フレークを選択した濃度、例えば約35重量%以上の濃度にするとそれは当該組成物全体に渡って実質的に相互連結した層状形態を取ると考えている。そのような層状形態によって、実質的に均一な連続した導電通路および比較的高い導電率/低い抵抗率を有する表面フィルムがもたらされる。例えば、平面における抵抗率値が約10から50mΩ/sqの桁の表面フィルムを達成することができる。他の導電性添加剤、例えば銀ナノワイヤーなどを添加することによって、そのような表面フィルムが示す抵抗率を更に低くして約0.2から15mΩ/sqの桁の値にすることも可能である。注目すべきは、そのような抵抗率は金属、例えばアルミニウムなどが示すそれ(例えば約0.2mΩ/sq)に匹敵し、このことは、本明細書に開示する導電性組成物の態様を用いて生じさせた表面フィルムを重いスクリーン含有表面フィルムの代わりに用いることができることを示している。
【0035】
また、そのような導電性添加剤の種類および/または量を調整することによって、本導電性組成物の態様がいろいろな用途の要求に合致するように注文に合わせることも可能である。例えば、そのような導電性添加剤の濃度を表面抵抗率が約1Ω/sqから1x10Ω/sqの範囲内の組成物がもたらされるに充分な濃度にすることで静電放電(ESD)防護を向上させることができる。別の例として、前記導電性添加剤の濃度を表面抵抗率が約1x10−6から1x10Ω/sqの範囲内の組成物がもたらされるに充分な濃度にすることで電磁妨害(EMI)遮蔽防護を向上させることができる。さらなる例として、前記導電性添加剤の濃度を表面抵抗率が約1x10−6から1x10−3Ω/sqの範囲内の組成物がもたらされるに充分な濃度にすることで落雷防護(LSP)を向上させることができる。
【0036】
さらなる態様では、また、表面フィルムを複合材料の中に組み込むことも可能である。例えば、プレプレグとの共硬化、例えばプレプレグを約250度Fから350度Fで硬化させて良好な表面仕上げと高い導電率を示す複合構造物を生じさせることなどで、表面フィルムを複合材料の中に組み込むことができる。代替態様では、既に約160度Fから350度Fの範囲の温度で硬化させておいた複合材料に二次的に表面フィルムを接着させることも可能である。そのように製造に有利に柔軟性があることから、表面フィルムを複合構造物の中に組み込むことができる時期は複合材料を製造している間または製造した後であってもよい。また、表面フィルムの態様の硬化温度もプレプレグのオートクレーブを用いない低温(約140度Fから360度Fの範囲内)硬化の注文に合わせることも可能である。この開示した態様の前記および他の利点を以下に詳細に考察する。
【0037】
図1に、導電性熱硬化性重合体組成物を含有して成る表面フィルムが組み込まれている複合材料を製造する方法100の1つの態様を例示する。方法100は、ブロック102で熱硬化性重合体を形成し得る1種以上の樹脂を混合槽に添加し、ブロック104で1種以上の導電性添加剤を混合槽に添加し、ブロック106で1種以上の非導電性充填材、流れ制御剤、鎖延長剤および/または顔料を混合槽に添加し、ブロック110で1種以上の紫外線安定剤を混合槽に添加し、ブロック112で前記樹脂用の1種以上の硬化剤および/または触媒を混合槽に添加しそしてブロック114で前記組成物の濾過および脱気を行う操作を包含する。この方法100に、更に、前記組成物からブロック116で表面フィルムまたはブロック120で接着剤の中の1つを生じさせることも含めてもよい。この方法100に、更に、前記表面フィルムをブロック122で複合材料の中に組み込むことも含めてもよい。
【0038】
以下に詳細に考察するように、方法100では、前記組成物の成分をこれらの成分の混合、加熱および/または冷却に適するように装備されている混合槽に添加してもよい。その上、必要ならば、また、前記成分の混合を助長させる目的で1種以上の溶媒をその混合物に添加することも可能である。そのような溶媒の例には、これらに限定するものでないが、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジメチルアセトアミド(DMAc)およびN−メチルピロリドン(NMP)が含まれ得る。方法100に含める段階はより多いか或は少なくてもよくかつ必要ならば方法100の段階をいずれかの順で実施してもよいことは理解され得るであろう。
【0039】
図1に例示するように、ブロック102で熱硬化性樹脂を混合槽に添加する。熱硬化性樹脂の態様には、これらに限定するものでないが、この上で考察した如き樹脂が含まれ得る。好適な態様における熱硬化性樹脂には、エポキシ、ビスマレイミド(BMI)、シアン酸エステル、フェノール樹脂、ベンゾオキサジンおよびポリイミドの中の1種以上が含まれ得る。別の態様における熱硬化性樹脂には、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル、テトラグリシジルエーテルメチレンジアニリン、4−グリシジルオキシ−N,N’−ジグリシジアニリンおよびこれらの組み合わせが含まれ得る。そのような熱硬化性樹脂に更に鎖延長剤および強化剤を含有させることも可能である。1つの態様では、そのような熱硬化性樹脂を当該組成物の総重量を基準にして約5から95重量%の範囲の濃度で存在させてもよい。他の態様では、そのような熱硬化性樹脂を約20から70重量%の範囲の濃度で存在させてもよい。
【0040】
また、当該組成物の粘着性およびドレープ性を調整する目的で追加的熱硬化性樹脂を混合槽に添加することも可能である。そのような樹脂の態様には、これらに限定するものでないが、多官能エポキシ樹脂が含まれ得る。二官能および多官能エポキシ樹脂の例には、これらに限定するものでないが、商標名MY 0510、MY 9655、Tactix
721、Epalloy 5000、MX 120、MX 156の下で販売されている如き市販樹脂が含まれ得る。そのような追加的エポキシ樹脂を当該組成物の総重量を基準にして約0から20重量%の範囲の量で存在させてもよい。
【0041】
前記熱硬化性樹脂もしくは重合体を混合槽に添加した後、その混合物の混合を高速せん断混合装置を用いて実施してもよい。混合を前記熱硬化性樹脂が実質的に均一に混ざり合うまで実施してもよい。例えば、1つの態様では混合を約1000から5000rpmの速度で約50から70分間実施してもよい。
【0042】
他の態様では、また、本表面フィルムのフィルム剛性および表面硬度を調整する目的でブロック102で強化剤を本組成物に添加することも可能である。特定の態様における強化剤は性質がポリマーもしくはオリゴマー状であり、20℃未満(より好適には0℃未満、または−30℃未満、または−50℃未満)のガラス転移温度を示しそして/または本
組成物を加熱して硬化させる時に本発明の組成物の他の成分と反応し得る官能基、例えばエポキシ基、カルボン酸基、アミノ基および/またはヒドロキシル基などを有していてもよい。特定の態様における強化剤はエラストマー状強化剤を含有して成っていてもよい。他の態様の強化剤はコア−シェルゴム粒子または液状ゴムを含有して成っていてもよい。強化剤の例を米国特許第4,980,234号、米国特許出願公開番号2008/0188609および国際特許公開番号WO/2008/087467(これらは全体が引用することによって本明細書に組み入れられる)に見ることができる。そのような強化剤の濃度を当該組成物の総重量を基準にして約5から40重量%の範囲にしてもよい。更に、その強化剤の濃度を約1から30重量%の範囲にすることも可能である。
【0043】
エラストマー状強化剤のさらなる例には、これらに限定するものでないが、カルボキシル化ニトリル(例えばNipol 1472、Zeon Chemical)、カルボキシル末端ブタジエンアクリロニトリル(CTBN)、カルボキシル末端ポリブタジエン(CTB)、ポリエーテルスルホン(例えばKM 180 PES−Cytec)、PEEK、PEKK熱可塑性プラスチックおよび/またはコア/シェルゴム粒子(例えばKanekaのMX 120、MX 156、および前以て分散させておいたコア/シェルゴムナノ粒子を伴う他のMX樹脂)が含まれ得る。
【0044】
ブロック104で導電性添加剤を混合槽に添加してもよい。そのような導電性添加剤の態様には、これらに限定するものでないが、金属および金属合金、金属被覆粒子、表面官能化金属、導電性ベール、非金属、重合体およびナノ規模の材料が含まれ得る。そのような導電性添加剤の形態には、フレーク、粉末、粒子、繊維などの中の1つ以上が含まれ得る。1つの態様では、あらゆる導電性添加剤の総濃度を本組成物の総重量を基準にして約0.1から80重量%の範囲にしてもよい。代替態様では、あらゆる導電性添加剤の濃度を約0.5から70重量%の範囲にしてもよい。
【0045】
金属および金属合金は比較的高い導電性を有することが理由で有効な導電性添加剤として使用可能である。本開示の態様で用いるに適した金属および合金の例には、これらに限定するものでないが、銀、金、ニッケル、銅、アルミニウムおよびこれらの合金および混合物が含まれ得る。特定の態様における導電性金属添加剤の形態には、フレーク、粉末、繊維、ワイヤー、微小球およびナノ球の中の1つ以上(単独または組み合わせ)が含まれ得る。
【0046】
特定の態様では、貴金属、例えば金および銀などを安定性(例えば耐酸化性)および有効性が理由で用いてもよい。他の態様では、金よりも銀の方が低コストであることが理由で銀を用いてもよい。しかしながら、銀の移行が問題になり得るシステムでは代わりに金を用いてもよいことは理解され得るであろう。有益には、以下に考察するように、銀充填および金充填エポキシは約20mΩ/sq未満の抵抗率を達成する可能性がある。
【0047】
他の態様における導電性添加剤は金属被覆粒子を含有して成り得る。金属被覆粒子の例には、金属被覆ガラスバルーン、金属被覆グラファイトおよび金属被覆繊維が含まれ得る。基質または被膜として使用可能な金属の例には、これらに限定するものでないが、銀、金、ニッケル、銅、アルミニウムおよびこれらの混合物が含まれ得る。
【0048】
さらなる態様における導電性添加剤は導電性ベールを含有して成り得る。そのような導電性ベールの例には、これらに限定するものでないが、金属で覆われている不織ベール、金属スクリーン/箔、炭素マットまたは金属被覆炭素マットが含まれ得る。使用可能な金属の例には、これらに限定するものでないが、銀、金、ニッケル、銅、アルミニウムおよびこれらの混合物が含まれ得る。
【0049】
本開示の態様で導電性添加剤として用いるに適した非金属の態様には、これらに限定するものでないが、導電性カーボンブラック、グラファイト、酸化アンチモン、炭素繊維が含まれ得る。
【0050】
本開示の態様で導電性添加剤として用いるに適したナノ材料の態様には、炭素ナノチューブ、炭素ナノ繊維、金属被覆炭素ナノ繊維、金属ナノワイヤー、金属ナノ粒子、グラファイト(例えばグラファイトナノプレートレット)およびナノストランドが含まれ得る。特定の態様におけるナノ材料の最大平均寸法は100nm未満であり得る。
【0051】
炭素ナノチューブには、単一壁炭素ナノチューブ(SWNT)、二重壁炭素ナノチューブ(DNT)および多重壁炭素ナノチューブ(MWNT)が含まれ得る。また、場合により、炭素ナノチューブの表面に官能化を受けさせることも可能である。炭素ナノチューブの官能化で使用可能な官能基の例には、これらに限定するものでないが、ヒドロキシ、エポキシおよびアミン官能基が含まれ得る。官能化炭素ナノチューブのさらなる例には、NanoledgeのNano−In−Resin、CNTをエポキシマトリクスの中に前以て分散させておいたCNT/エポキシ濃縮物が含まれ得る。
【0052】
本開示の態様で導電性添加剤として用いるに適した炭素ナノ繊維の例には、裸の炭素ナノ繊維(CNF)、金属被覆CNFおよびNanoBlack II(Columbian Chemical,Inc.)が含まれ得る。金属被膜には、これらに限定するものでないが、銅、アルミニウム、銀、ニッケル、鉄およびこれらの合金が含まれ得る。
【0053】
本開示の態様で導電性添加剤として用いるに適したナノワイヤーの例には、これらに限定するものでないが、ニッケル、鉄、銀、銅、アルミニウムおよびこれらの合金が含まれ得る。そのようなナノワイヤーの長さは約1μm以上、約5μm以上、約10μm以上および約10から25nmであってもよい。そのナノワイヤーの直径は約10nm以上、約40nm以上、約70nm以上、約150nm以上、約300nm以上、約500nm以上、約700nm以上および約900nm以上であってもよい。銀ナノワイヤーの例には、Filigree Nanotech,Inc.のSNW−A60、SNW−A90、SNW−A300およびSNW−A900が含まれ得る。
【0054】
好適な態様の導電性添加剤は銀フレークを含有して成り得る。以下に詳細に考察するように、銀フレークを使用、特に銀フレークを銀ナノワイヤーと組み合わせて使用すると熱硬化性組成物の導電率が金属のそれにほぼ等しいか或はそれ以上のレベルまで有意に高くなることを識別した。その上、銀フレークを本明細書で考察した如き他の導電性添加剤と組み合わせると当該熱硬化性組成物の導電性が更に向上する可能性もある。例には、これらに限定するものでないが、ナノワイヤー(例えば銀ナノワイヤー)、炭素ナノチューブ、金属被覆ガラスバルーン(例えば銀被覆ガラスバルーン)が含まれる。
【0055】
銀フレークを含有させた本組成物の態様が示す抵抗率は、例えば充填率が当該組成物(銀ナノワイヤーを約3重量%添加した)の総重量を基準にして約63重量%の時の約0.2mΩ/sqの如き低い値から銀フレークを単独で約18重量%用いた時の約4500mΩ/sq以上の範囲であり得る。本組成物が示す抵抗率をそのような幅広い範囲内で注文に合わせることができることは重要なことである、と言うのは、本組成物に入れる導電性添加剤の充填率をESD、EMIおよびLSP用途のいずれに関しても調整することができるからである。
【0056】
図4A−4Bに、銀フレーク(明るい領域、図4A)がエポキシマトリクスの中に含まれている表面フィルムの態様を包含する表面フィルムの研磨断面および破壊表面を検査するSEM写真を示す。図4Aを検査することで、銀フレークの断面は一般に細長く、高い
アスペクト比を示しかつ当該組成物の全体に渡って実質的に均一に分布していることが観察され得るであろう。更に、その銀フレークは互いに接触していて実質的に連続した網状組織を形成している。表面フィルム破壊表面(図4B)を検査することでそのように相互連結している層様構造であることが立証された。その代表的な顕微鏡写真は、銀フレークが破壊表面の実質的に全体に渡って破壊表面に存在しているか或はそれから外側に突き出ていることを示している。
【0057】
特定の態様では、以下の本実施例で詳細に考察するように、平均サイズが約3μmから36μmの銀フレークを約30重量%以上、例えば約39から65重量%の濃度で用いた時にそのような層様形態を達成することができる。理論で範囲を限定するものでないが、そのような導電通路が本導電性表面フィルムが実質的に均一な高い導電率を達成する理由になっていると考えている。フレークの大きさが約30μmに及んで大きいことと銀フレークの表面積が相対的に大きいことで、本組成物のX−Y方向およびZ方向の両方の全体に渡って連続した良好な導電率を達成するに充分な表面領域の接触がもたらされる。
【0058】
銀フレークが層状形態を有することと極めて良好な導電性を示すことは両方とも予想外であった。以下の実施例で考察するように、本導電性熱硬化性組成物を落雷防護用表面フィルムの如き用途で用いようとする時、そのような金属の如き導電性によって良好な性能が確保される。
【0059】
ブロック106で非導電性充填材を混合槽に添加してもよい。特定の態様における充填材の最大寸法は約12から150μmの範囲であり得る。更に、そのような充填材を本組成物の総重量を基準にして約0から40重量%の範囲の量で存在させてもよい。他の態様では、そのような充填材を約5から30重量%の範囲の濃度で存在させてもよい。
【0060】
非導電性充填材の例には、粉砕もしくは沈澱チョーク、石英粉末、アルミナ、ドロマイト、ガラス繊維、重合体繊維、二酸化チタン、溶融シリカ、酸化カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、バライト、特にケイ酸アルミニウムの種類のケイ酸塩様充填材が含まれ得る。充填材のさらなる考察を米国特許第4,980,234号に見ることができる。
【0061】
他の態様における非導電性充填材には、これらに限定するものでないが、セラミック微小球(例えばZeeosheres−3M)、ガラスバルーン(例えばiM30K、A16、H20−3M Corp、SID−230Z−S2−Emersion & Cummings)およびヒュームドシリカが含まれ得る。そのような充填材は固体であってもよく、フレーク、粉末、繊維、微小球またはガラスバルーンの形態で供給してもよくかつ必要ならば固体もしくは中空構造物であってもよい。1つの態様における充填材にはZEESPHERES 200(商標)、即ちシリカ−アルミナセラミック組成を有する中空の厚壁球が含まれ得る。
【0062】
また、鎖延長剤を当該組成物に添加することでその組成物の分子量を高くすることも可能である。そのような鎖延長剤の濃度を当該組成物の総重量を基準にして約1から30重量%の範囲にしてもよい。鎖延長剤の例には、米国特許第4,983,672号の中で考察されているように、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、ビスフェノールZ、テトラメチルビスフェノールA(TMBP−A)および他のビスフェノールフッ素が含まれ得る。
【0063】
顔料を当該組成物に添加することで表面フィルムの色および外観を調整することも可能である。1つの態様における顔料には、二酸化チタン、カーボンブラック、黒色顔料および他の色の染料が含まれ得る。そのような顔料をフレーク、粉末、繊維、色濃縮液の形態
で供給してもよい。あらゆる顔料の総量が当該組成物の総重量を基準にして約0から20重量%の範囲になるようにしてもよい。
【0064】
また、ブロック106で流れ制御剤を混合槽に添加することも可能である。そのような流れ制御剤を用いて当該組成物の流動特性を変えることも可能である。流れ制御剤の態様には、これらに限定するものでないが、ヒュームドシリカ、微小球および金属粉末が含まれ得る。流れ制御剤をフレーク、粉末、繊維、球またはペレットの形態で供給してもよい。流れ制御剤の最大寸法が約0.5から10μmの範囲になるようにしてもよい。そのような流れ制御剤を当該組成物の総重量を基準にして約0から40重量%、より好適には約0.1から10重量%の範囲の量で存在させてもよい。
【0065】
前記導電性添加剤ばかりでなく充填材、顔料、鎖延長剤および/または流れ制御剤のいずれかを混合槽に添加した後、その混合物を混合することで前記成分を当該組成物の中に実質的に分布させてもよい。特定の態様では、混合を約500から5000rpmの速度で約60から120分間実施してもよい。この混合工程中、また、当該組成物の温度を約160度F未満か或は好ましくない化学反応が起こる可能性のある温度より低い温度に保持してもよい。
【0066】
場合により、ブロック110で紫外線安定剤を当該混合物に添加してもよい。そのような紫外線安定剤の態様には、紫外線吸収剤、抗酸化剤、顔料、遮蔽剤および充填材が含まれ得る。紫外線安定剤の例には、これらに限定するものでないが、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン(UV−9)、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン[CYASORB(商標)UV−1164光吸収剤]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸、n−ヘキサデシルエステル[CYASORB(商標)UV−2908光安定剤]、二酸化チタンおよびカーボンブラックが含まれ得る。そのような紫外線安定剤を固体または液体の形態で供給してもよい。1つの態様では、紫外線安定剤の各々を当該組成物の総重量を基準にして約0.1から5重量%の範囲の量で存在させてもよい。他の態様では、紫外線安定剤の各々を当該組成物の総重量を基準にして約0.5から3重量%の範囲の量で存在させてもよい。
【0067】
前記紫外線安定剤である改質剤を混合槽に添加した後、その混合物を約500から2000rpmの速度で約30から60分間混合してもよい。また、その組成物の温度を約160度F未満に保持してもよい。
【0068】
ブロック112で硬化剤および場合により触媒を当該混合物に添加してもよい。特定の態様における硬化剤は当該組成物のエポキシを約250度Fから350度Fの範囲の温度で硬化させる能力を有し得る。1種以上の硬化剤を当該組成物の総重量を基準にして約0.1から40重量%、好適には約0.5から10重量%の範囲の量で存在させてもよい。
【0069】
硬化剤および触媒の例には、これらに限定するものでないが、脂肪族および芳香族第一級アミン、脂肪族および芳香族第三級アミン、三フッ化ホウ素錯体、グアニジンおよびジシアンジアミドが含まれ得る。硬化剤および触媒の追加的例を米国特許第4,980,234号および米国特許出願公開番号2008/0188609の中に見ることができる。
【0070】
アミン系硬化剤および触媒のさらなる例には、これらに限定するものでないが、ジシアンジアミド、ビス尿素(例えば2,4−トルエンビス−(ジメチル尿素)、[Omicure U−24またはCA 150]、4,4’−メチレンビス−(フェニルジメチル尿素)、[CVC Chemicalsが販売しているOmicure U−52またはCA152]および4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4−DDS)およびBF
が含まれ得る。
【0071】
特定の態様では、そのような硬化剤および触媒を添加している間の当該組成物の温度を触媒の分解および反応が当該樹脂の中であまりにも早期に始まることによって樹脂の増進が起こることのないように選択した値より低い温度に維持してもよい。その選択するレベルは約75から150度Fの範囲、例えば約130度F未満であってもよい。他の態様では、せん断混合を約500から2000rpmの範囲の速度で実施する。
【0072】
表1に、この上で考察した如く表面フィルムおよび接着剤として用いるに適するように選択態様の導電性重合体組成物を示す。
【0073】
【表1】
【0074】
ブロック114における組成物は使用の準備ができている可能性がある。1つの態様では、その組成物の濾過を行うことで、その組成物の中にいくらか存在する不純物および大きさが過剰な粒子を濾別してもよい。特定の態様では、外来屑および大きさが過剰な粒子が当該組成物から除去されるように選択した穴寸法を有するメッシュに通す濾過を前記組成物に受けさせてもよい。
【0075】
さらなる態様では、当該組成物に脱気を真空下で受けさせることで当該組成物の大部分
の中に入り込んでいる可能性のある気泡を実質的に除去してもよい。1つの態様では、当該組成物に約26から30インチの水銀の真空度をかけてもよい。この脱気工程中にまた当該組成物に含まれている揮発物の選択した部分も除去されることは理解され得るであろう。特定の態様では、脱気をこの脱気を受けさせた組成物の固体含有量がこの組成物の総体積を基準にして約55から100重量%になるように実施してもよい。
【0076】
その後、そのようにして調製した組成物を様々な用途で用いることができる。非限定例には、表面フィルム(ブロック116)、表面フィルムが組み込まれている複合材料(ブロック120)および接着剤(ブロック122)が含まれ得る。
【0077】
その後、ブロック114で当該組成物に成形を受けさせて表面フィルムを生じさせる。特定の態様では、当該組成物に被覆をフィルムとしてホットメルトコーティングまたは溶媒和フィルムコーティング方法を用いて受けさせてもよい。その結果として生じるフィルムのフィルム重量は約0.01から0.15psfの範囲、例えば約0.035psfであり得る。
【0078】
その表面フィルムの態様を更に支持構造物、例えば担体などに付着させることで前記表面フィルムの取り扱いを助長することも可能である。支持構造物の例には、金属のスクリーンもしくは箔、不織マット、ランダムマット、ニット担体、金属被覆炭素ベールなどが含まれ得る。その支持構造物の形状を必要に応じて変えることも可能である。例えば、その担体の厚みは約0.5から5ミルの範囲であってもよい。また、担体に関する他のパラメーター、例えば単位面積当たりの開口部の数、ストランドの幅およびパターンなども必要に応じて変えることができる。
【0079】
金属のスクリーンもしくは箔の例には、拡張金属スクリーンもしくは箔および金属被覆ベールが含まれ得る。そのようなスクリーンおよび箔には銅、アルミニウム、銀、ニッケルおよびこれらの合金が含まれ得る。
【0080】
不織マット担体の例には、炭素マット、重合体マットおよび金属被覆炭素、ガラスまたは重合体ガラスベールが含まれ得る。そのような不織マット担体に銅、アルミニウム、銀、ニッケルおよび合金およびそれらの合金を用いた被覆を受けさせることも可能である。
【0081】
次に、そのようにして生じさせたフィルムを乾燥させることで揮発物を除去してもよい。特定の態様では、そのフィルムの揮発物含有量がフィルムの総重量を基準にして約0.1から0.99重量%の範囲になるようにしてもよい。例えば、乾燥後の表面フィルムが示す揮発物含有量が約1重量%未満になるようにしてもよい。
【0082】
また、そのようにして生じさせた表面フィルムが必要になるまで貯蔵を行うことも可能である。例えば、その表面フィルムの硬化が抑制されて有効寿命が延びるように前記表面フィルムを冷貯蔵所に貯蔵してもよい。その表面フィルムを意図した用途で使用する前に表面への不慮の付着が起こることがないように、裏地フィルムもしくは紙を表面フィルムの1つ以上の表面に付着させておくことも可能である。
【0083】
その表面フィルムを更にブロック116で複合構造物の中に一体化してもよい。この工程を図2および3に関して以下により詳細に考察する。図2に、本開示の1つの態様の表面フィルムを含有する複合材料を生じさせる方法200の1つの態様を例示する。この複合材料の相当する概略図を図3に示す。
【0084】
表面フィルム310および複合プレプレグレイアップ304を受け取る鋳型または工具314(図3)の調製をブロック202で実施する。その鋳型314の形態を選択した形
状を持つ形態にしてもよく、それに更に模様付けおよび/または他の表面を含めてもよくかつ必要ならば厚み方向の造作全体に渡って含めてもよい。以下に考察する如く複合材料の硬化が鋳型314の選択した形状で起こり得るように、そのプレプレグレイアップ304および/または表面フィルム310が鋳型314の少なくとも一部と接触するようにそれらを位置させてもよい。表面の屑が除去されて実質的に滑らかな表面になるように研磨剤を当該工具に当てておいてもよい。更に、加工が完了した後に複合部品を鋳型314から取り出すのが容易になるように、離型剤を鋳型314に付着させておくことも可能である。
【0085】
ブロック204で表面フィルム310を鋳型314に取り付ける。その表面フィルム310を冷貯蔵所から取り出して温めることでほぼ室温にしてもよい。次に、その表面フィルム310を所望形状に切断した後、その表面フィルム310の樹脂が豊富な側に付着させておいた裏地フィルムを取り外す。次に、その露出させたフィルムを鋳型314の綺麗にした表面に前記表面フィルム310にしわも気泡も実質的に存在しないように注意を払いながら取り付ける。そのような様式の表面フィルム310取り付けは手動または自動化した装置(例えば自動テープレイアップ(ATL)、自動繊維配置(AFP))を用いて達成可能である。
【0086】
ブロック206でプレプレグレイアップ304と前記表面フィルムの共硬化を起こさせることで表面フィルム310と複合材料を合体させる。1つの態様では、1つ以上のプレプレグ層をプレプレグレイアップ304として組み立ててもよく、それを表面フィルム310に隣接させて位置させる。代替態様では、プレプレグレイアップ304を組み立てた後に表面フィルム310に隣接させて位置させてもよい。そのプレプレグに持たせる形態は必要に応じて不織布またはテープの形態であってもよい。
【0087】
場合により、1つ以上のコア320をプレプレグレイアップ304が有する層と層の間に位置させることも可能である。そのようなコアには発泡構造物、ハニカム構造物などが含まれ得る。更に、接着性フィルム326をプレプレグレイアップ304とコア320の間に位置させることでコア320とプレプレグレイアップ304の接着を促進させることも可能である。
【0088】
更に、FEPフィルム330をプレプレグレイアップ304の表面(表面フィルム310が位置する側と反対側)に隣接させて位置させることも可能である。そのFEPフィルム330は絶縁および部品の剥離を与えるものである。
【0089】
また、通気性マット332をFEPフィルム330の表面に隣接させて位置させることも可能である。通気性マット332はプレプレグレイアップ304から余分な樹脂の少なくとも一部を吸収する働きをする。示してはいないが、また、当該技術分野で公知の如き通気性布をその組み立てる構造物に加えることも可能である。
【0090】
そのようにして生じさせたアセンブリ308を袋詰め材料(かける真空を支える能力を有する)の中に封じ込めそして囲い300の中に位置させてもよい(表面フィルム310の態様と一緒にプレプレグレイアップの硬化および/または強化を行う時に用いる目的で)。特定の態様では、囲い300の形態を熱308、圧力302、真空316およびこれらの組み合わせをもたらす形態、例えばオーブンおよびオートクレーブなどの形態にしてもよい。
【0091】
アセンブリ308を加熱する態様では、囲い300の加熱を使用するプレプレグ樹脂の意図した硬化温度に応じて約180から350度F、好適には約250から350度Fの範囲の温度になるように行ってもよい。特定の態様では、加熱速度を約1から5度F/分
の範囲にしてもよい。
【0092】
さらなる態様における囲い300は真空をアセンブリ308にかける能力を有していてもよい。例えば、袋詰め材料312が囲い300の真空源と連通した状態でほぼ気密領域を形成するようにしてもよい。硬化および/または強化中に囲い300によってかける真空度を変えてもよいか或は一定に維持してもよい。例えば、約40から50psiの範囲またはそれ以下の真空をアセンブリ308にかけてもよい。
【0093】
さらなる態様における囲い300は圧力302をアセンブリ308にかける能力を有していてもよい。そのかける圧力302を囲い300と連通した状態の圧力源によって与えてもよい。更に、硬化および/または強化中にかける圧力302を変えてもよいか或は一定に維持してもよい。例えば、部品のデザインおよび構造一体性に応じて約14から100psiの範囲の圧力をかけてもよい。
【0094】
ブロック210で表面フィルムに対して仕上げ操作を実施してもよい。一例として、表面フィルム310の表面に選択した度合の粗度または滑らかさが与えられるように表面フィルム310の表面にいくらか存在する屑(例えば離型剤)を実質的に除去する目的で微細な研磨剤(例えば約240から320グリット)を前記表面フィルムに当てることも可能である。その表面仕上げを受けさせた複合構造物に塗料下塗り剤およびトップコートエナメルを用いた上塗りを受けさせてもよい。
【実施例】
【0095】
以下の実施例では、本開示の導電性熱硬化性組成物の態様から生じさせる表面フィルムを詳細に考察する。特に、様々な導電性添加剤を添加した表面フィルムが示す導電率および/または抵抗率およびそれらが示す落雷防護性能を調査して、他のシステムが示すそれと比較する。注目すべきは、銀フレークを単独または他の導電性添加剤と組み合わせて含有させた組成物が金属に匹敵する非常に低い抵抗率値を示すことを見いだした。本実施例は例示の目的で考察するものであり、開示する態様の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0096】
実施例1−表面フィルムの調製
表面フィルムで用いるに適した熱硬化性導電性組成物の調製を以下の表2に示す成分を用いて実施した。これらの組成物の各々にエポキシ樹脂、エラストマー状強化剤、非導電性添加剤、流れ制御剤、紫外線安定剤、溶媒および導電性添加剤を含有させた。試験1−6の各々では、導電性添加剤が表面フィルムの抵抗率に対して示す効果を調査した。
【0097】
【表2-1】
【0098】
【表2-2】
【0099】
導電性表面フィルムの調製では、この上に概略を示した成分を混合槽に添加した後に実験室の高速せん断混合装置を用いて前記成分の混合を行うことを通して調製を実施した。その混合槽にエポキシ樹脂[ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DER 331−Dow Chemical)とテトラグリシジルエーテルメチレンジアニリン(MY9655−Huntsman)とテトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DER 542−Dow Chemical)を約60:40:10の比率で含有]を約100重量部添加した後、約1000rpmで約30分間撹拌した。MEKを必要に応じて前記エポキシ樹脂と一緒に溶媒として添加することで組成物の流動性および固体含有量を調整した。
【0100】
その後、そのエポキシ樹脂にエラストマー系強化剤であるNipol 1472(Zeon Chemical)を約1.5重量%およびCTBN(またはCTB)型のエラストマー(Hycar CTBN 1300X13−Noveon)を1.5重量%添加した。また、導電性充填材も前記混合槽に約46−56重量%の濃度で添加した。更に、前記混合槽にセラミック微小球(Zeeosheres G−200−3M)を約10重量%、流れ制御剤である非晶質ヒュームドシリカを約2重量%および紫外線安定剤であるBHTおよび2−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノンの各々を約1%添加した。前記混合物の粘度を調節する必要に応じてMEK溶媒を添加することで固体量を約80重量%にした後、この組成物の成分を約1000−3000rpmで約50−70分間混合した。この組成物の温度を約160度F未満に維持した。その混合物が混合軸をよじ登らないようにする必要に応じて追加的MEKを添加した。
【0101】
その後、前記混合物を約120度F未満にまで冷却した後、その組成物に潜在的硬化剤であるジシアンジアミド(Dicy)およびビス尿素[トルエンジアミンが基になっている(CA−150−Omicure U24)またはCA 152−Omicure U−52−CVC Chemical]の各々を約1重量%添加した。次に、その組成物の混合をほぼ均一になるまで約5−10分間実施した。前記硬化剤を添加している間の混合物の温度を約130度F未満に維持した。
【0102】
前記組成物から表面フィルムを生じさせる目的で各組成物の濾過および脱気を行った後、それをフィルムとして付着させた。濾過を濾過媒体EP−15に通して実施した。脱気を前記組成物の固体含有量が約80重量%になるように実施した。次に、その濾過と脱気を受けさせた組成物に被覆をフィルムコーターを用いてフィルム重量が約0.035psfのフィルムとして受けさせた後、乾燥を揮発物の量が約1重量%未満になるように受けさせた。選択した不織ポリエステルまたはガラスランダムマット担体をフィルムに軽い圧力下で押し付けることで前記マットを前記フィルムに埋め込んだ。
【0103】
表面フィルムを取り込んでいる複合部品の製造では、前記表面フィルムを工具の上に取り込ませた後にプレプレグのレイアップをプレプレグの製造業者の指示に従って取り込ませることで製造を実施した。次に、その複合部品に硬化をプレプレグシステムの意図した硬化温度に応じて約180度Fから350度Fの範囲の温度で約60から180分間、例えば約90から120分間受けさせた。硬化をオートクレーブ条件下で起こさせている間
、その複合部品にこの部品のデザインおよび構造密度に応じて約14から100psiの圧力を約60から180分間かけた。
【0104】
実施例2−様々な導電性添加剤を含有させた表面フィルムが示す導電率の測定
2層の硬化表面フィルムを切断して約6x5インチの試験片を生じさせた後、4点探針AVO(商標)Ducter(商標)DLRO10X Digital Low Resistivity Ohmmeterを用いて導電率または表面抵抗率(オーム/squareまたはミリオーム/squareで表す)の測定を実施した。表面抵抗率の測定をBMS 10−21K仕様(Boeing)に従って探針と探針の間の距離を約4インチにして実施した。
【0105】
試験1−銀フレークを導電性添加剤として含有して成る表面フィルムが示す導電率の測定
試験1の組成物では銀フレーク(例えばMetalor TechnologiesのAB 0022)を導電性添加剤として用いた。そのAB 0022銀フレークが示した粒径分布は下記である:約13.4μm(D50)、約28.5(D90)および約64.5(D100)。前記組成物から生じさせた導電性表面フィルムが示す抵抗率は約12.5mΩ/sqであることを確認した。
【0106】
試験2−銀フレークを導電性添加剤として含有して成る表面フィルムが示す導電率の測定
試験2の組成物では銀フレーク(例えばEA 0295−Metalor Technologies)を導電性添加剤として用いた。そのEA 0295銀フレークが示した粒径分布は下記:約5.2μm(D50)、約13.34(D90)および約32.5(D100)であり、これはAB 0022銀フレークの大きさの約半分である。前記組成物から生じさせた導電性表面フィルムが示す抵抗率は約152mΩ/sqであることを確認した。
【0107】
試験3−銀被覆銅を導電性添加剤として含有して成る表面フィルムが示す導電率の測定
試験3の組成物では銀被覆銅(Ferro)を導電性添加剤として用いた。その銀被覆銅粒子の平均直径は約45μmであった。前記組成物から生じさせた導電性表面フィルムが示す抵抗率は約125から137mΩ/sqであることを確認した。
【0108】
試験4−銀被覆アルミニウムを導電性添加剤として含有して成る表面フィルムが示す導電率の測定
試験4の組成物では銀被覆アルミニウム(AEE、Micron Metals,Inc.)を導電性添加剤として用いた。前記組成物から生じさせた導電性表面フィルムが示す抵抗率は4500mΩ/sqであることを確認した。
【0109】
試験5−ニッケル被覆グラファイトを導電性添加剤として含有して成る表面フィルムが示す導電率の測定
試験5の組成物ではニッケル被覆グラファイト(AEE、Micron Metals,Inc.)を導電性添加剤として用いた。前記組成物から生じさせた導電性表面フィルムが示す抵抗率は3100mΩ/sqであることを確認した。
【0110】
試験6−銀被覆ニッケルを導電性添加剤として含有して成る表面フィルムが示す導電率の測定
試験6の組成物では銀被覆ニッケル(AEE、Micron Metals,Inc.)を導電性添加剤として用いた。前記組成物から生じさせた導電性表面フィルムが示す抵抗率は約6100mΩ/sq未満であることを確認した。
【0111】
試験7−カーボンブラックを導電性添加剤として含有して成る表面フィルムが示す導電率
の測定
試験7の組成物では導電性カーボンブラック(Printex XE2−Degussa)を導電性添加剤として用いた。実験した充填度合は約2.5から7.5重量%の範囲であった。図5Bに示すように、前記組成物から生じさせた導電性表面フィルムが示す抵抗率は約17,000から47,000Ω/sqの範囲であることを確認した。
【0112】
試験8−炭素ナノ繊維を導電性添加剤として含有して成る表面フィルムが示す導電率の測定
試験8の組成物では炭素ナノ繊維を導電性添加剤として用いた。実験した充填度合は約4から16重量%の範囲であった。図5Bに示すように、前記組成物から生じさせた導電性表面フィルムが示す抵抗率は約20,000から200,000Ω/sqの範囲であることを確認した。
【0113】
選別試験の要約
各組成物が示した抵抗率測定値を図6に要約する。注目すべきは、銀フレーク添加剤を含有させた組成物(例えば試験1および2)の方が他の導電性添加剤を用いた時(例えば試験4−8)に比べて導電性添加剤の充填度合を同じした時に非常に低い抵抗率値を示した。そのように低い抵抗率値は銅金属スクリーンが組み込まれている表面フィルムのそれ(約15ミリオーム/sq)に匹敵するか或はそれよりも良好である。そのような組成物は落雷防護の目的で用いられる表面フィルムに有用であり得る。
【0114】
カーボンブラックおよび炭素ナノ繊維を用いた試験7および8が示した抵抗率値の方が試験1−6のそれに比べて比較的高かった。そのような添加剤は落雷防護の目的で用いられる表面フィルムにはあまり適さないが、表面EMI遮蔽およびESD用途には有用であり得る。
【0115】
実施例2−銀フレークの種類および充填率が表面フィルムの導電率に対して示す効果
実施例1に示したように、銀フレークを含有して成る導電性添加剤は電気抵抗率が非常に低い表面フィルムの態様をもたらすことを確認した。銀フレークが電気特性に対して示す効果をより良好に理解する目的で、異なる3種類の銀フレーク(AB 0022およびEA 0295)および銀−銅フレークが充填率の関数として示す導電率に関する系統的研究を実施した。その他の組成はこの上で考察した通りである。得た導電率の結果を以下の表3に要約する。
【0116】
【表3】
【0117】
表3および図6に示すように、表面フィルムが示す抵抗率は銀フレークの濃度を高くするにつれて有意に低下する。例えば、AB 0022銀フレークを含有させた表面フィルム組成物が示す抵抗率は充填率が約18重量%の時の約4640mΩから充填率が約56重量%の時の約12.5mΩそして充填率が約63重量%の時の約10mΩにまで低下した。同様に、EA 0295銀フレークを含有させた表面フィルム組成物が示す抵抗率は銀フレークの濃度を約56から63重量%の充填率にまで高くするにつれて約152から27mΩにまで低下した。
【0118】
その上、充填度合を等しくした時、AB 0022銀フレークが示した導電率値の方がEA 0295が示したそれよりも低いことも確認した。理論で範囲を限定するものでないが、そのような観察は、その2種類のフレークの粒径分布および表面積の差によって説明可能である。AB 0022銀フレークが示す粒径分布の方がEA 0295のそれよりも大きいことで、詰め込み効率がより高くなる可能性があり、それによって銀フレーク間の接触が助長される。
【0119】
また、銀フレークAB 0022の濃度が約40重量%を超えるとその組成物の抵抗率が顕著に低下することを観察することも可能である。以下に考察するように、そのような結果は銀フレークが実質的に連続した相互連結層状網状組織を形成したことによるものであると考えている。そのような結果は、更に、特定の態様では組成物内の銀フレーク濃度を約40重量%以上にすることが可能性であることも示唆している。他の好適な態様では、金属に匹敵した抵抗率値を示す表面フィルムがもたらされるように、銀フレークの濃度を約46%以上にすることも可能である。
【0120】
実施例4−SEMを用いた表面フィルム微小構造試験
銀フレークが表面フィルムの導電性で果たす役割をより良好に理解する目的で、銀フレーク(AB 0022)を含有させた複合表面フィルムの微小構造を更に検査した。その複合材料の製造を表面フィルムに関するBoeing BMS 8−341仕様に従って実施した。そのようにして調製した複合積層物の微小構造を検査する目的で、サンプルを小さなサイズ、即ち約10mmx20mmに切断した後、エポキシ硬化樹脂系の中に入れた。検査表面にBuehler Metaserv 2000グラインダー/研磨機を用いた研磨を研磨剤の大きさを下記のように順次小さくして受けさせた:約320グリット/約1200グリット/約0.3μmのアルミナスラリー/約0.05μmのアルミナスラリー。フィルムの微小構造を検査する目的で、表面を白金で被覆した後、Hitachi S−2700走査電子顕微鏡(SEM)を用いて分析し、図4に示す如くであった。
【0121】
そのように高い導電性を示す表面フィルムをSEMで検査することで、エポキシマトリクスの中に無作為に分散している微細な銀フレークで構成されている連続的に相互連結した層状導電通路構造(明るい領域、図4A)が形成されていることが分かる。そのような導電通路が前記導電性表面フィルムが実質的に均一な高い導電率を示すことの一因になっていると考えている。銀フレークAB 0022が有する約30μmに及ぶ大きなフレークサイズおよび比較的大きな表面積は、マトリクス全体にわたる連続した良好な導電率をもたらすに充分な表面領域接触を与えるものである。その金属フレークはマトリクスの中で実質的に平行な配向で互いに密に詰まっており、それによって電子の通行が助長される。
【0122】
実施例6−銀フレークおよび他の導電性添加剤を組み込んだ表面フィルム組成物
銀フレークを含有させた組成物の態様が示した測定導電率が高かったことから、表面フィルム組成物が示す導電率を更に高める目的で、銀フレークが他の導電性添加剤と組み合わされた時に示す性能を検査するさらなる導電率試験を実施した。それらの組成は、その新しい導電性添加剤を除き、この上で表1に関して考察した組成とほぼ同じであった。表4に、銀フレークと他の導電性添加剤、即ち銀フレーク単独(ベースライン)、銀フレークと銀ナノワイヤー、銀フレークと炭素ナノチューブおよび銀フレークと銀被覆ガラスバルーンを含有させた導電性添加剤を要約する。
【0123】
【表4】
【0124】
試験12−銀フレークと銀ナノワイヤー(SNW)を導電性添加剤として含有して成る表面フィルムが示す導電率の測定
試験12の組成物では銀フレーク(AB 0022)および銀ナノワイヤー(SNW−A30、SNW−A60、SNW−A300、SNW−A900−Filigree Nanotech,Inc.)を導電性添加剤として用いた。銀ナノワイヤーの長さおよび直径は、選択したSNWの大きさおよび種類に応じて約1から25μmおよび30から900nmであった。銀フレークの濃度を約46から56重量%の範囲で変えながら更に銀ナノワイヤーの濃度を約3重量%に一定に保持した。銀フレーク含有量を高くするにつれて組成物が示す抵抗率が有意に低下、即ち濃度が約46重量%の時の約15mΩ/sqから濃度が約56重量%の時の約0.2mΩ/sqにまで低下したことを観察した。
【0125】
試験13−銀フレークと炭素ナノチューブを導電性添加剤として含有して成る表面フィルムが示す導電率の測定
試験13の組成物では銀フレーク(例えばAB 0022)および炭素ナノチューブ(NanoledgeのCNT/エポキシ濃縮物NP−W1M2、NP−A1M2、NP−A3M2またはNP−A2M2)を導電性添加剤として用いた。CNTの長さおよび直径は、使用するCNTに応じて多様であった。試験13では銀フレークおよびCNTの各々の濃度を変えた、即ちCNTの濃度を約0.3から1.2重量%の範囲で変える一方、銀フレークの濃度を約51から56重量%の範囲で変えた。銀フレーク含有量を高くするにつれて組成物が示す抵抗率が低下、即ち濃度が約51重量%の時の約50mΩ/sqから濃度が約56重量%の時の約15mΩ/sqにまで低下したことを観察した。
【0126】
試験14−銀フレークと銀被覆ガラスバルーンを導電性添加剤として含有して成る表面フィルムが示す導電率の測定
試験14の組成物では銀フレーク(例えばAB 0022)および銀被覆ガラスバルーン(NanoledgeのCNT/エポキシ濃縮物NP−W1M2、NP−A1M2、NP−A3M2またはNP−A2M2)を導電性添加剤として用いた。銀被覆ガラスバルーンの濃度を約51から56重量%の範囲で変えながら更に銀被覆ガラスバルーンの濃度を約5重量%に一定に保持した。銀フレーク含有量を高くするにつれて組成物が示す抵抗率が低下、即ち濃度が約51重量%の時の約60mΩ/sqから濃度が約20重量%の時の約15mΩ/sqにまで低下したことを観察した。
【0127】
銀フレークおよび他の導電性添加剤を含有させた組成物の要約
図7では、各組成物が示した抵抗率測定値を互いに対して比較する。1つの面として、銀フレークを含有させた組成物の各々が示した抵抗率は銀フレークの濃度が高くなるにつれて低下する。これらの組成物が示す性能を互いに対して更に比較したところ、銀フレークと銀ナノワイヤーを含有させた組成物が最良の性能を示し、そして銀フレークの充填率が決まっている時の最も低い抵抗率を基にして、銀フレーク単独そして銀フレークとCNT(1.2重量%の充填率)がそれに続いた。その上、そのような表面フィルム組成物が示した抵抗率は約60mΩ/sqを超えることはなく、その値でも金属のそれに匹敵する。
【0128】
実施例7−落雷防護
本明細書に開示する表面フィルムの態様が示した金属様の高い導電率は、金属のスクリーンも箔も用いることなく達成したものであり、それらは落雷防護(LSP)用途で用いるに適する。そのような表面フィルムが複合材料のLSPに対して示す性能を評価する目的で、銀フレークを約56−63重量%の範囲の充填率で含有させた導電性組成物(例えば試験1の組成物)から生じさせた表面フィルムを組み込んだ複合材料に対して落雷試験を実施した。そのようなシステムがLSPに関して示す性能を同じ複合材料を含有する対照および金属スクリーンが重合体組成物の中に埋め込まれている表面フィルムが示すそれと比較した。
【0129】
試験用複合パネルの製造では、この上で考察したように6から9層のプレプレグを多角レイアップの状態にして、導電性表面フィルムを最外層として用いた。次に、そのレイアップと表面フィルムをオートクレーブの中で共硬化させることで前記表面フィルムを前記複合材料の中に組み込んだ。そのパネルに落雷試験を受けさせる前に更に塗料下塗り剤およびエナメルトップコートを用いた上塗りも受けさせた。
【0130】
航空機の様々なゾーンの中で用いられる複合材料が示す性能を評価する目的で電光直接効果試験を用いた。この落雷試験をRTCA/DO−160F、即ちRadio Technical Commission for Aeronauticsの「Environmental Conditions and Test Procedures for Airborne Equipment」に従って実施する。簡単に述べると、表面フィルム/積層パネルを適当な場所に固定した後、電流戻り素子と電気接触した状態に置く。電極を試験パネルに隣接させてほぼ中心に位置させる。開始ワイヤーを前記電極からサンプル表面上の落雷開始点に至らせる。
【0131】
航空機のゾーン1A、即ちレードームおよび航空機のゾーン2A、即ち機体部分の大部分に落ちる落雷を模擬する試験を実施した。この試験は、試験パネルに以下の表5に記述する高電流試験波形を受けさせることで落雷を模擬する。表5に示すように、そのかける波形には様々な成分が含まれている可能性があり、それらは、当該パネルが代表例である
ことを意図する航空機部分に応じて変わる。
【0132】
【表5】
【0133】
例えば、ゾーン1Aの落雷を模擬する試験では成分A、BおよびCを包含する波形を用いる一方、ゾーン2Aの落雷を模擬する試験では成分B、CおよびDを包含する波形を用いることになるであろう。
【0134】
図8A−8Bに、銅スクリーンが埋め込まれている対照表面フィルムを組み込んだ未塗装複合パネルおよび本開示の1つの態様の銀フレーク含有表面フィルムを組み込んだ未塗装複合パネルのそれぞれにゾーン1Aを模擬する落雷試験を受けさせた後のパネルを例示する。図9A−9Bに、同様な複合パネルに試験を受けさせる前に塗装を受けさせておいた時のゾーン1Aの試験性能を例示する。図10A−10Bに、本開示の1つの態様の銀フレーク含有表面フィルムを組み込んだ塗装および未塗装複合パネルのそれぞれにゾーン2Aを模擬する落雷試験を受けさせた後のパネルを例示する。
【0135】
一般に、銀フレークを含有させた表面フィルム/複合積層パネルが示した落雷防護は金属銅スクリーンを有する対照パネルの性能に匹敵しており、貫通する穴の証拠は全くなかった。その上、表面の損傷も非常に限られていた。
【0136】
塗装および未塗装試験パネルに関して観察した表面損傷は、メッシュの焼け、表面の斑点および表面層の剥離から繊維破壊に及ぶ範囲で多様であった。表面フィルム/複合材料の形態が同じ場合、一般に、塗装パネルが示した損傷度合の方が未塗装パネルが示したそれよりも大きかった。このような差は、塗装パネルではアーク分散部位の数が少なくなりかつ攻撃が局所的領域に集中したことによるものである。
【0137】
そのような結果は、銀フレークを含有させた表面フィルム/複合積層パネルの態様は有意な落雷防護機能を有しかつゾーン1Aおよび2Aの両方の電光直接効果試験に合格したことを示している。その表面フィルム/複合積層パネルが示すLSPは有益に金属スクリーンを伴う対照パネルのそれに匹敵しており、約50%に及ぶ軽量に加えて匹敵するLSPをもたらす。
【0138】
実施例8−接着性試験
また、熱硬化性導電性組成物の態様に接着剤用途における性能を評価する試験も受けさ
せた。この実施する試験に広域ラップせん断強度試験および浮遊式ローラー剥離強度試験を含めた。
【0139】
ラップせん断試験では、接着剤によって接着させた接着面に張力負荷がかかった時にその接着剤が示すせん断強度に関する情報がもたらされる。広域ラップせん断試験をASTM 3165の「Standard Test Method for Strength Properties of Adhesives in Shear by Tension Loading of Single−Lap−Joint Laminated Assemblies」に従ってほぼ室温、180度Fおよび250度Fで実施した。
【0140】
浮遊式ローラー剥離試験では、一方の接着面が軟質でありそしてそれを硬質であるもう一方の接着面からほぼ一定の角度で剥がした時に接着剤が示す強度に関する情報がもたらされる。浮遊式ローラー剥離試験をASTM D3167の「Standard Test Method for Floating Roller Peel Resistance of Adhesives」に従ってほぼ室温、225度Fおよび250度Fで実施した。
【0141】
銀フレークを約42重量%の濃度で用いた試験1の組成物に評価を受けさせた。その組成物に混合および脱気を上述した如く受けさせた後、それに被覆をホットメルトフィルムとしてフィルム重量が約0.06psfになるように受けさせた。不織ランダムマット担体を前記フィルムの中に軽い圧力下で押し込むことで前記マットを前記フィルムに接着させた。導電性組成物を不織炭素ベールまたはアルミニウムスクリーンのいずれかと組み合わせた。
【0142】
導電性添加剤を添加しない以外は同じ組成を用いて対照サンプルを同様な様式で調製した。その対照サンプルには更にアルミニウムスクリーンも含有させた。各接着剤が示した試験結果を以下の表6に示す。
【0143】
【表6】
【0144】
試験15−銀フレークを導電性添加剤として含有して成る接着性フィルムが炭素マットに
対して示す接着特性の測定
表6の結果を検査することで、試験15の組成物を広域ラップせん断および浮遊式ローラー剥離で測定した時にそれらが示した接着強度は試験した温度範囲全体に渡ってほぼ一定であることが分かるであろう。一例として、ラップせん断強度はほぼ室温から約250度Fに及ぶ200度F以上の温度範囲に渡って変化した度合は約10%のみ、即ち約3000から3286psiの範囲である。剥離強度も前記とほぼ同じ温度に渡って変化した度合は5%未満、即ち約26から27pliの範囲である。
【0145】
試験16−銀フレークを導電性添加剤として含有して成る接着性フィルムがアルミニウムスクリーンに対して示す接着特性の測定
表6の結果を検査することで、試験16の組成物を広域ラップせん断および浮遊式ローラー剥離で測定した時にそれらが示した接着強度は試験した温度範囲全体に渡って変化した度合は僅かであることが分かるであろう。一例として、ほぼ室温から約250度Fにした時にラップせん断強度が変化した度合は約20%、即ち約3078から3714psiの範囲である。剥離強度も前記とほぼ同じ温度に渡って変化する度合は約5pli未満である。
【0146】
試験17−対照接着性フィルムがアルミニウムスクリーンに対して示す接着特性の測定
表6の結果を検査することで、試験17の組成物を広域ラップせん断および浮遊式ローラー剥離で測定した時にそれらが示した接着強度は試験した温度範囲全体に渡って変化した度合は僅かであることが分かるであろう。一例として、ほぼ室温から約250度Fにした時にラップせん断強度が変化した度合は約20%、即ち約4130から4813psiの範囲である。剥離強度は前記とほぼ同じ温度に渡って変化する。
【0147】
要約−接着性試験
試験12−14の結果を比較したところ、試験15−16の銀フレーク含有導電性接着剤をラップせん断強度および剥離強度で測定した時にそれらは良好な導電率である約250mΩ/sqおよび良好な接着特性の両方を示した。注目すべきは、そのような接着特性は非導電性対照接着剤のそれに匹敵しており、このことは、接着強度が犠牲にならない組成物を用いて導電性を達成することができることを示している。そのような結果は、更に、容量電位を低下させるための戻り電流用通路または導電性固定具として特定の航空宇宙EME用途、例えばLS表面修復など用の導電性接着剤として潜在的に適することを示している。
【0148】
この上で行った説明で本教示の新規な基本的特徴を示し、記述しそして指摘してきたが、当業者は本教示の範囲から逸脱することなくその示した如き装置ばかりでなくそれの使用の詳細な形態に関して様々な省略、置換、変更および/または付加を行うことができることは理解されるであろう。従って、本教示の範囲をこの上で行った考察に限定すべきでなく、添付請求項によって限定すべきである。
図1
図2
図3
図5A
図5B
図6
図7
図4A
図4B
図8A-8B】
図9A-9B】
図10A-10B】