(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態に基づき本開示を説明する。本開示は実施形態に限定されるものではなく、実施形態における種々の数値や材料は例示である。以下の説明において、同一要素または同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示に係る液晶表示装置、全般に関する説明
2.参考例に係る液晶表示装置の説明
3.第1の実施形態(その他)
【0011】
[本開示に係る液晶表示装置、全般に関する説明]
上述したように、本開示の液晶表示装置にあっては、通常の観察方向から観察した状態における液晶印加電圧−反射率曲線の極値が、通常の観察方向から外れた方向から観察した状態における液晶印加電圧−反射率曲線の極値よりも低電圧側にシフトするように光学設計が施されている。このような光学設計は、例えば、液晶表示装置に用いる位相差板等の光学部材の仕様や、液晶材料層を構成する液晶分子の配向状態を決定する配向膜の表面処理の仕様を適宜設定することで実現することができる。
【0012】
本開示の液晶表示装置において、異方性散乱体の面内方向の領域は、低屈折率領域と高屈折率領域とが混在する領域として形成されている構成とすることができる。異方性散乱体は、外部から入射する外光が異方性散乱体を透過する際に光が散乱するように配置されている構成とすることもできるが、背面基板側で反射した外光が異方性散乱体に入射して外部に出射する際に散乱するように配置されている構成とすることが好ましい。後者の構成のほうが光の反射率がより高くなるので、通常の観察方向から外れた方向から観察される画像は相対的により暗くなり、外れた方向から観察する際のフリッカがより目立たなくなる。
【0013】
上述した各種の好ましい構成を含む本開示の液晶表示装置において、異方性散乱体は、複数の散乱部材が積層されて成る構成とすることができる。
【0014】
あるいは又、上述した各種の好ましい構成を含む本開示の液晶表示装置は、面積階調方式により階調表示を行う構成とすることができる。例えば、各画素(カラー表示の場合は副画素)は面積が略2倍づつ増大する画素電極の組を備え、画素電極の組に印加する電圧を画素電極毎に制御することによって表示に供する領域の面積を可変するといった構成とすることができる。
【0015】
異方性散乱体は、光反応性の化合物を含む組成物などを用いて構成することができる。例えば、光重合の前後で或る程度の屈折率変化を示す組成物から成る基材に、所定の方向から紫外線などの光を照射することによって、異方性散乱体を得ることができる。組成物を構成する材料は、ラジカル重合性やカチオン重合性の官能基を有するポリマー等といった公知の光反応性の材料から、光反応をした部分とそうでない部分とで或る程度の屈折率変化を生ずる材料を適宜選択して用いればよい。
【0016】
あるいは又、例えば、光反応性の化合物と光反応性のない高分子化合物とを混合した組成物から成る基材に、所定の方向から紫外線などの光を照射することによって、異方性散乱体を得ることもできる。光反応性のない高分子化合物は、例えば、アクリル樹脂やスチレン樹脂などといった公知の材料から適宜選択して用いればよい。
【0017】
上記の組成物から成る基材は、例えば、高分子材料から成るフィルム状の基体の上に、組成物を公知の塗布方法などにより塗布することで得ることができる。
【0018】
上述した組成物等から成る異方性散乱体の面内方向の領域は、低屈折率領域と高屈折率領域とが混在する領域として形成される。通常、異方性散乱体の厚み方向に対して低屈折率領域と高屈折率領域との境界が所定の角度を成すように形成される。場合によっては、この角度は、面内方向において連続的に変化するように構成されていてもよい。
【0019】
低屈折率領域と高屈折率領域における屈折率の差は、通常、0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.10以上であることが更に好ましい。
【0020】
異方性散乱体を構成する材料や製造方法にもよるが、光反応をした部分とそうでない部分とは、例えば、後述する
図9の(C)に示すようにそれぞれルーバー状の領域を形成する構成であってもよいし、あるいは又、
図9の(D)に示すように、柱状領域とそれを取り巻く周辺領域を形成する構成であってもよい。
【0021】
本開示に係る液晶表示装置は、モノクロ表示であってもよいし、カラー表示であってもよい。画素電極自体が反射電極として光を反射する構成であってもよいし、透明画素電極と反射膜の組み合わせによって、反射膜が光を反射するといった構成であってもよい。液晶表示装置の動作モードは、反射型としての表示動作に支障がない限り特に限定するものではない。例えば、所謂VAモードやECBモードで駆動される構成とすることができる。
【0022】
例えば、画素内に反射型の表示領域と透過型の表示領域の両方を有する半透過型の液晶表示装置が周知である。場合によっては、このような半透過型の液晶表示装置であってもよい。即ち、「反射型」には「半透過型」も含まれる。
【0023】
液晶表示装置の形状は特に限定するものではなく、横長の矩形状であってもよいし縦長の矩形状であってもよい。液晶表示装置の画素(ピクセル)の数M×Nを(M,N)で表記したとき、例えば横長の矩形状の場合には(M,N)の値として、(640,480)、(800,600)、(1024,768)等の画像表示用解像度の幾つかを例示することができ、縦長の矩形状の場合には相互に値を入れ替えた解像度を例示することができるが、これらの値に限定するものではない。
【0024】
液晶表示装置を駆動する駆動回路は、種々の回路から構成することができる。これらは周知の回路素子などを用いて構成することができる。
【0025】
本明細書に示す各種の条件は、厳密に成立する場合の他、実質的に成立する場合にも満たされる。設計上あるいは製造上生ずる種々のばらつきの存在は許容される。
【0026】
[参考例に係る液晶表示装置の説明]
先ず、本開示の理解を助けるため、参考例に係る液晶表示装置について説明する。
【0027】
図1の(A)は、参考例に係る液晶表示装置の模式的な斜視図である。
図1の(B)は、参考例に係る液晶表示装置の模式的な断面図である。
【0028】
参考例に係る液晶表示装置901は、画素12が配列された表示領域11を有する反射型の液晶表示装置である。液晶表示装置901は、図示せぬ駆動回路などにより駆動される。表示領域11には、例えば太陽光や照明光などの外光が入射する。説明の都合上、表示領域11はX−Y平面と平行であり、画像を観察する側が+Z方向であるとする。外光は、方位角90度の方向から、所定の極角(例えば30度)を成して表示領域11に入射するとして説明するが、これは例示に過ぎない。
【0029】
液晶表示装置901は矩形状であり、辺を参照番号13A,13B,13C,13Dで表す。辺13Cは手前側の辺であり、辺13Aは辺13Cに対向する辺である。例えば、辺13A,13Cは約12[cm]、辺13B,13Dは約16[cm]といった値であるが、これに限るものではない。
【0030】
図1の(B)に示すように、液晶表示装置901は、前面基板18、背面基板14、及び、前面基板18と背面基板14との間に配置されている液晶材料層17を含む。符号17Aは、液晶材料層17を構成する液晶分子を模式的に示す。液晶材料層17は、図示せぬスペーサ等によって、所定の厚さに設置されている。
図1の(B)に示す符号10は、液晶表示装置901のうち、前面基板18、背面基板14、及び、前面基板18と背面基板14との間に配置されている液晶材料層17を含む部分を示す。同様に、
図1の(B)に示す符号20は、液晶表示装置901のうち、1/4波長板21、1/2波長板22、及び、偏光板23を含む部分を示す。液晶表示装置901は、例えばECBモードで駆動される。
【0031】
例えばガラス材料から成る背面基板14の上には、アクリル樹脂等の高分子材料から成る平坦化膜15が形成されており、その上に、アルミニウム等の金属材料から成る画素電極(反射電極)16が形成されている。
【0032】
画素電極16は、その表面が鏡面状に形成されている。例えば映像信号を供給する信号線と画素電極16との電気的な接続を制御するために、画素電極16にはTFT等の素子が接続されている。尚、
図1の(B)においては、TFT、信号線やTFTの導通状態を制御する走査線といった種々の配線、前面基板18等に設けられる共通電極やカラーフィルター、及び、液晶材料層17の初期配向状態を規定するための配向膜などの図示を省略した。
【0033】
外部から入射する外光は、偏光板23によって所定の方向の直線偏光となった後に、1/2波長板22によって偏光面が90度回転し、その後、1/4波長板21によって円偏光となる。円偏光となった外光は、液晶材料層17を透過して画素電極16によって反射する。反射した外光は、液晶材料層17を透過し、更に、1/4波長板21及び1/2波長板22を透過して偏光板23に達し、外部に向けて出射する。画素電極16などに印加する電圧を制御して、液晶材料層17における液晶分子17Aの配向状態を制御することにで、画素電極16によって反射した外光が偏光板23を透過する量を制御することができる。
【0034】
図2の(A)は、画素の構造を説明するための模式的な平面図である。
図2の(B)は、画素電極に印加する電圧の制御方法を説明するための模式図である。
【0035】
図2の(A)に示すように、画素12は、赤色表示副画素12R、緑色表示副画素12G、及び、青色表示副画素12Bの組から成る。液晶表示装置901は、面積階調方式により階調表示を行う。このため、各副画素の画素電極16は、面積が略2倍づつ増大する電極の組から成る。
図2の(A)には、5つの電極16A,16B,16C,16D,16Eの組から成る場合の例を示した。電極16A,16B,16C,16D,16Eに印加される電圧は、例えば、デジタル信号化された映像信号の対応ビットの値に応じて制御される。
【0036】
図2の(B)を参照して、例えば5ビットの映像信号に基づいて制御する場合の構成について説明する。面積の一番大きい電極16Eは、映像信号のMSBに基づいて制御され、面積が小さくなるについて、下位のビットに基づいて制御される。面積の一番小さい電極16Aは、映像信号のLSBに基づいて制御される。具体的には、各電極には、映像信号における対応ビットの値に応じて、駆動回路100から、例えば共通電極に印加される電圧と同じ値の電圧V
com、正極性側の電圧V
com+V
d、負極性側の電圧V
com−V
dのいずれかが印加される。これによって、例えばフレーム毎の極性反転駆動が行われる。
【0037】
電極16A,16B,16C,16D,16E毎に印加する電圧を制御することによって、表示に供する領域の面積を制御することができる。尚、以下の説明において、電極16A,16B,16C,16D,16Eを区別する必要がない場合には、これらを単に画素電極16と表す。尚、液晶表示装置901はノーマリーホワイトモードの構成であるとして説明するが、これは例示に過ぎない。
【0038】
次いで、
図3を参照して、液晶印加電圧−反射率曲線と、フリッカの関係について説明する。
【0039】
図3の(A)は、反転駆動に伴う共通電極と画素電極との間の電位差の差分を説明するための模式的な波形図である。
図3の(B)は、液晶材料層に印加される電圧(液晶印加電圧)と反射率の関係、及び、液晶印加電圧の変動と反射率の変動との関係を説明するための模式的なグラフである。
【0040】
液晶表示装置901を例えば長時間外光に晒すことなどによって共通電極の電位がV
comからV
com’に変動すると、黒表示を行うときにフリッカが発生する。即ち、
図3の(A)に示すように、正極性側の駆動における液晶印加電圧V
1と、負極性側の駆動における液晶印加電圧V
2が異なる値となり、液晶印加電圧の差分ΔVが生ずる。
【0041】
図3の(B)の上段のグラフは、液晶印加電圧−反射率曲線の模式的なグラフである。上述した液晶印加電圧の差分ΔVによる反射率の変化は、電圧V
dを液晶印加電圧−反射率曲線の極値に近い値とするほど小さくすることができる。
【0042】
図3の(B)の下段のグラフは、電圧V
dを液晶印加電圧−反射率曲線の極値付近の値V
d_1に設定した場合と、極値から離れた値V
d_2に設定した場合とにおける、差分ΔVに起因する反射率変化を示す。グラフから明らかなように、電圧V
dを値V
d_2に設定した場合の反射率変化ΔRE
2に対し、電圧V
dを値V
d_1に設定した場合の反射率変化ΔRE
1は小さい。このように、同じ差分ΔVが生じたとしても、電圧V
dを液晶印加電圧−反射率曲線の極値付近の値に設定することで、反転駆動に伴うフリッカの発生を軽減することができる。特に、MIP(Memory In Pixel)で一般的な面積階調方式では液晶材料層17に中間調表示のための電圧を印加する必要がないので、フリッカは一層目立ち難くなる。尚、本開示における液晶表示装置は、面積階調方式のものに限定されるものではない。
【0043】
次いで、参考例に係る液晶表示装置の光学設計について説明する。先ず、
図4及び
図5を参照して一般的な光学設計の例を説明し、その後、
図6及び
図7を参照して、液晶印加電圧−反射率曲線の極値を低電圧側にシフトする光学設計の例について説明する。
【0044】
図4は、光学部材等を或る設計条件とした液晶表示装置を回転させたときに、液晶印加電圧と反射率の関係がどのように変化するかを説明するための模式的なグラフである。
図5は、液晶表示装置の光学設計を説明するための模式図である。
【0045】
光学設計の詳細について説明する。
図5に示すように、X軸に対し、偏光板23の偏光軸は35度、1/2波長板22は50度、1/4波長板21は−70度の角度を成すように設定されている。また、背面基板14側の図示せぬ配向膜におけるラビング方向は、X軸に対し−128.5度の角度を成す。そして、観察者側から見て、液晶分子17Aが時計回りに63度ツイストするように、前面基板18側の図示せぬ配向膜におけるラビング方向が設定されている。
図4は、上述した光学設計が施された液晶表示装置901についてのグラフである。
【0046】
図4においては、
図1に示すようにZ軸を中心として液晶表示装置901を回転させたときの液晶印加電圧−反射率曲線を示した。具体的には、0度回転させたときの液晶印加電圧−反射率曲線と、15度回転させたときの液晶印加電圧−反射率曲線と、30度回転させたときの液晶印加電圧−反射率曲線と、50度回転させたときの液晶印加電圧−反射率曲線とを示した。
【0047】
グラフから明らかなように、この光学設計例では、液晶表示装置901を回転させても液晶印加電圧−反射率曲線が極値となる値は余り変化しない。また、液晶印加電圧を比較的高い値(図に示す例では、約4.3ボルト)にしないと、液晶印加電圧−反射率曲線の極値付近とはならない。従って、
図4に示すような設計条件では、電圧V
dを液晶印加電圧−反射率曲線の極値付近の値に設定しようとすると、消費電極が増加してしまう。また、例えば液晶印加電圧を比較的低い値(図に示す例では、約3.3ボルト)とすると、極性反転駆動に伴う液晶印加電圧の差分ΔVに起因する反射率変化が大きくなる。尚、
図4に示す差分ΔVは模式的に示したものであって例示に過ぎない。後述する
図6においても同様である。
【0048】
図6は、光学部材等を
図4とは異なる或る設計条件とした液晶表示装置を回転させたときに、液晶印加電圧と反射率の関係がどのように変化するかを説明するための模式的なグラフである。
図7は、液晶表示装置の光学設計を説明するための模式図である。
【0049】
光学設計の詳細について説明する。
図7に示すように、X軸に対し、偏光板23の偏光軸は26度、1/2波長板22は40度、1/4波長板21は−84度の角度を成すように設定されている。また、背面基板14側の図示せぬ配向膜におけるラビング方向は、X軸に対し−158.5度の角度を成す。そして、観察者側から見て、液晶分子17Aが時計回りに70度ツイストするように、前面基板18側の図示せぬ配向膜におけるラビング方向が設定されている。
図6は、上述した光学設計が施された液晶表示装置901についてのグラフである。
【0050】
尚、
図6では、Z軸を中心として液晶表示装置901を70度および90度回転させたときの液晶印加電圧−反射率曲線も加えて示した。
【0051】
図4に示す特性と対比して明らかなように、
図6に示す特性にあっては、液晶印加電圧−反射率曲線が極値となる液晶印加電圧の値が液晶表示装置901の回転角を変えることによって変化する。また、回転角が小さいときの液晶印加電圧−反射率曲線の極値が低電圧側にシフトしていることがわかる。例えば、回転角15度のときの液晶印加電圧−反射率曲線に注目すれば、液晶印加電圧を比較的低い値(図に示す例では、約3.3ボルト)に設定しても、極性反転駆動に伴う液晶印加電圧の差分ΔVに起因する反射率変化は小さい。
【0052】
例えば、
図6に示す回転角15度のときの液晶印加電圧−反射率曲線で示す特性が液晶表示装置を回転させないで現れるように、光学設計を全体として15度シフトした構成とすれば、通常の観察方向(例えば、極角0度の方向)から観察した状態における液晶印加電圧−反射率曲線の極値を低電圧化することができる。このように構成された液晶表示装置では、電圧V
dを液晶印加電圧−反射率曲線の極値付近の値に設定しつつ、低消費電力化を図ることができる。しかしながら、例えば
図6に示す回転角70度における特性が回転角55度のときに現れることになる。従って、通常の観察方向とは異なる方向、例えば、液晶表示装置を斜め横方向から観察するような場合にフリッカが目立つといった課題が残る。次いで、上述した課題を解決する第1の実施形態に係る液晶表示装置について説明する。
【0053】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、本開示に係る表示装置に関する。
【0054】
図8は、第1の実施形態に係る液晶表示装置を説明するための、模式的な分解斜視図である。
【0055】
第1の実施形態に係る液晶表示装置1は、基本的には、参考例で説明した液晶表示装置901に、異方性散乱体を加えた構成である。具体的には、
図6に示す回転角15度のときの液晶印加電圧−反射率曲線で示す特性が液晶表示装置を回転させないで現れるように光学設計をシフトした構成の液晶表示装置の前面基板側に、更に異方性散乱体が設けられている構成である。
【0056】
図8に示す符号10Aは、上述のような光学設計がなされた液晶表示装置を構成する前面基板18、背面基板14、及び、前面基板18と背面基板14との間に配置されている液晶材料層17を含む部分を示す。同様に、
図8に示す符号20Aは、上述のような光学設計がなされた液晶表示装置を構成する1/4波長板21、1/2波長板22、及び、偏光板23を含む部分を示す。異方性散乱体30は、前面基板18側、より具体的には、後述する
図11に示すように、前面基板18と1/4波長板21との間に配置される。
【0057】
このように、液晶表示装置1は、前面基板18、背面基板14、及び、前面基板18と背面基板14との間に配置されている液晶材料層17を含む反射型の液晶表示装置である。そして、通常の観察方向(例えば、極角0度の方向)から観察した状態における液晶印加電圧−反射率曲線の極値が、通常の観察方向から外れた方向から観察した状態における液晶印加電圧−反射率曲線の極値よりも低電圧側にシフトするように光学設計が施されている。
【0058】
図9の(A)は、液晶表示装置の構造を説明するための模式的な斜視図である。
図9の(B)は、第1の実施形態に係る異方性散乱体の構造を説明するための模式的な断面図である。
図9の(C)及び(D)は、異方性散乱体における低屈折率領域と高屈折率領域の配置を説明するための模式的な斜視図である。
【0059】
図8や
図9の(A)に示す異方性散乱体30は、例えばその厚さが0.02〜0.5[mm]程度のシート状(フィルム状)である。後述する
図12を参照して後で詳しく説明するが、異方性散乱体30は、散乱特性が最大となる方向を通常の観察方向に揃えるように配置されている。
【0060】
図9の(B)に示すように、異方性散乱体30の面内方向の領域は、低屈折率領域31と高屈折率領域32とが例えばミクロンオーダーで混在する領域として形成されている。尚、ミクロンオーダー以下で混在する構成であってもよい。また、図示の都合上、
図9等においては、異方性散乱体30の下地となる透明なフィルム等の表示を省略した。
【0061】
異方性散乱体30は、光反応性の化合物を含む組成物などを用いて構成されている。異方性散乱体30は、例えば、
図9の(C)に示すように、低屈折率領域31と高屈折率領域32がルーバー状に形成されている構成であってもよいし、
図9の(D)に示すように、低屈折率領域31と高屈折率領域32とが、柱状領域とそれを取り巻く周辺領域を形成する構成であってもよい。
図9の(D)では、例えば光反応をした組成物の部分が柱状領域状に高屈折率化する場合の例を示した。
【0062】
図9の(C)では、各低屈折率領域31の厚み方向の幅や、各高屈折率領域32の厚み方向の幅が一定であるように表したが、これは例示に過ぎない。同様に、
図9の(D)においても、各柱状領域の形状が同一であるように表したが、これも例示に過ぎない。
【0063】
図9の(B)乃至(D)に示すように、異方性散乱体30の内部において、低屈折率領域31及び高屈折率領域32は、異方性散乱体30の厚み方向(Z方向)に対して低屈折率領域31と高屈折率領域32との境界が角度θを成すように、斜め方向に形成されている。角度θは、異方性散乱体30の仕様等に応じて適宜好適な値に設定される。
【0064】
説明の都合上、ここでは、低屈折率領域31と高屈折率領域32とは
図9の(C)に示すようにルーバー状に形成されており、それらルーバー状の領域が延びる方向はX方向に平行であるとする。また、高屈折率領域32は基材が光反応を生じた領域であるとして説明するが、これは例示にすぎない。基材が光反応を生じた領域が低屈折率領域31となる構成であってもよい。
【0065】
ここで、異方性散乱体における入射光と散乱光の関係について、
図10を参照して説明する。
【0066】
図10に示すように、異方性散乱体30において、低屈折率領域31と高屈折率領域32との境界が延びる方向に概ね倣う方向から光が入射した場合、光は散乱して出射する。一方、低屈折率領域31と高屈折率領域32との境界が延びる方向と略直交する方向から光が入射した場合、光はそのまま透過する。
【0067】
尚、異方性散乱体30の散乱中心軸S(それを中心として、入射する光の異方性散乱特性が略対称性となる軸をいう。換言すれば、最も散乱する光の入射方向に延びる軸である。)は、Z軸方向に対して斜めに傾斜しているが、定性的には、その軸方向は低屈折率領域31と高屈折率領域32の延在方向に概ね倣う方向にあると考えられる。更に、この場合、散乱中心軸SをX−Y平面上に投影した方位は、
図9の(C)に示す場合には、ルーバー状の領域が延びる方向に直交する方向、
図9の(D)に示す場合には、柱状領域をX−Y平面に投影したときにその影が延びる方向にあると考えられる。散乱中心軸Sを含む面は、Y−Z平面に平行である。
【0068】
異方性散乱体30は、背面基板14側で反射した外光が異方性散乱体30に入射して外部に出射する際に散乱するように配置されている(以下、「出射散乱の構成」と呼ぶ場合がある)。
【0069】
液晶表示装置1における光の挙動について、
図11及び
図12を参照して説明する。
【0070】
図11は、第1の実施形態に係る液晶表示装置の模式的な断面図である。
図12の(A)乃至(C)は、異方性散乱体の特性を説明するための模式図等である。
【0071】
異方性散乱体30は光の散乱について異方性を示す。従って、異方性散乱体30を含む液晶表示装置1は、異方性散乱体の散乱中心軸Sを含む面内で光が入射する場合と、そうでない場合とで、光の反射特性が大きく異なる。
【0072】
例えば、液晶表示装置1を全白表示とした状態で、
図12の(A)に示すように方位角90度、極角30度で光1が入射し、極角0度の観察位置で出射する光の強度を観察した場合、
図12の(B)のような特性を示す。尚、
図12の(B)では、値を正規化して示している。これに対し、方位角を変えて(例えば0度)光2が入射した場合には、
図12の(C)のような特性を示す。
【0073】
このように、異方性散乱体30を用いた液晶表示装置1は光の散乱特性に角度依存性を持つので、所定の方向(
図12に示す例では紙面に垂直な面内方向)に向かう光を強くすると共に、所定の方向から外れた方向に向かう光を弱めるといった特性を示す。これによって、通常の観察方向とは異なる他の方向から液晶表示装置1を観察したときのフリッカが低減される。以下、
図13と
図14とを参照して説明する。
【0074】
図13の(A)は、異方性散乱体を省略した構成の液晶表示装置を通常の観察方向から観察する場合と他の方向から観察する場合との位置関係を説明するための模式的な斜視図である。
図13の(B)は、異方性散乱体を省略した液晶表示装置における液晶印加電圧−反射率曲線の模式的なグラフである。
【0075】
液晶表示装置1から異方性散乱体30を省略した構成の液晶表示装置1’は、通常の観察方向(例えば、極角30度,方位角270度の方向)とは異なる他の方向(例えば、極角30度,方位角0度の方向)から観察する場合にフリッカが目立つ。即ち、
図13の(B)に示すように、他の方向から観察したときの液晶印加電圧の差分ΔVによる反射率の変化ΔRE
2’は、通常の観察方向から観察したときの変化ΔRE
1’に対して非常に大きい。
【0076】
図14の(A)は、第1の実施形態に係る液晶表示装置を通常の観察方向から観察する場合と他の方向から観察する場合との位置関係を説明するための模式的な斜視図である。
図14の(B)は、第1の実施形態に係る液晶表示装置における液晶印加電圧−反射率曲線の模式的なグラフである。
【0077】
異方性散乱体30は、所定の観察位置に向かう方向の光を強くすると共に、所定の観察位置から外れた方向に向かう光を弱めるといった特性を示す。基本的には、異方性散乱軸Sに近い程、また、異方性散乱軸Sを含む平面(
図12に示す例では、Y−Z平面に平行な平面)に近い程、光の強度が強くなる。従って、他の方向(例えば横方向)から観察したときの液晶印加電圧の差分ΔVによる反射率の変化ΔRE
2は、
図14に示すΔRE
2’に比べて小さくなる。これによって、他の方向から観察したときのフリッカが軽減される。また、通常の観察方向から観察する場合の液晶印加電圧−反射率曲線は、
図14に示す液晶印加電圧−反射率曲線よりも上方にシフトする。従って、所定の観察位置から観察される画像の輝度も高めることができる。
【0078】
上述したように、異方性散乱体30は、背面基板14側で反射した外光が異方性散乱体30に入射して外部に出射する際に散乱するように配置されている。これに対し、外部から入射する外光が異方性散乱体30に入射して背面基板14側に向かう際に散乱するようにした構成(以下、「入射散乱の構成」と呼ぶ場合がある)とすることもできるが、画像が若干暗くなる。以下、
図15の(A)及び(B)を参照して説明する。
【0079】
図15の(A)は、異方性散乱体30の配置を変えて、外部からの外光が異方性散乱体30に入射する際に光が散乱するといった構成の液晶表示装置1”の断面図である。
【0080】
液晶表示装置1”にあっては、散乱した光が画素電極16に入射して前面基板側に向かって反射する。従って、
図11に示す液晶表示装置1に比べて、光はより広範囲に散乱する。
【0081】
図15の(B)は、
図11に示す液晶表示装置と
図15の(A)に示す液晶表示装置との反射率の特性を比較したグラフである。
【0082】
このグラフから明らかなように、
図11に示す出射散乱の構成の液晶表示装置1は、入射散乱の構成の液晶表示装置1”に対して、反射率がより高くなっている。従って、出射散乱の構成の液晶表示装置1は、表示される画像の輝度をより高くすることができる利点を備えている。
【0083】
尚、散乱範囲の拡大や虹色の色づきの軽減を図るために、異方性散乱体を複数の散乱部材が積層されて成る構造とすることもできる。
図16に、上述した構成の異方性散乱体を備えた液晶表示装置の模式的な分解斜視図を示す。
【0084】
図16では、異方性散乱体130は、散乱部材30A,30Bが積層されて成る。散乱部材30A,30Bは、基本的には、異方性散乱体30と同様の構成である。例えば、散乱部材30A,30Bの散乱中心軸の方向に若干の差を持たせるようにすることで、光の拡散範囲を調整することができる。
【0085】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0086】
例えば、上述した実施形態にあっては、異方性散乱体を、前面基板18と1/4波長板21との間に配置したが、これは例示に過ぎない。異方性散乱体を配置する場所は、液晶表示装置の設計や仕様に応じて適宜決定すればよい。
【0087】
なお、本開示の技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)前面基板、背面基板、及び、前面基板と背面基板との間に配置されている液晶材料層を含む反射型の液晶表示装置であって、
通常の観察方向から観察した状態における液晶印加電圧−反射率曲線の極値が、通常の観察方向から外れた方向から観察した状態における液晶印加電圧−反射率曲線の極値よりも低電圧側にシフトするように光学設計が施されており、
前面基板側に、散乱特性が最大となる方向を通常の観察方向に揃えるように配置された異方性散乱体が設けられている液晶表示装置。
(2)異方性散乱体の面内方向の領域は、低屈折率領域と高屈折率領域とが混在する領域として形成されている請求項1に記載の液晶表示装置。
(3)異方性散乱体は、背面基板側で反射した外光が異方性散乱体に入射して外部に出射する際に散乱するように配置されている請求項2に記載の液晶表示装置。
(4)背面基板側で反射した外光は、低屈折率領域と高屈折率領域との境界付近における屈折率の変化の程度が相対的に大きい面側から異方性散乱体に入射し、低屈折率領域と高屈折率領域との境界付近における屈折率の変化の程度が相対的に小さい面側から出射する請求項3に記載の液晶表示装置。
(5)異方性散乱体は複数の散乱部材が積層されて成る請求項1に記載の液晶表示装置。
(6)面積階調方式により階調表示を行う請求項1に記載の液晶表示装置。