(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電圧生成部は、前記第1の傾きで上昇後の電圧値、又は前記第2の傾きで下降後の電圧値の少なくとも一方が、予め決められた所定期間だけ維持される前記交流電圧を生成し、
前記信号生成部は、前記交流電流に基づいて、前記所定期間で前記振幅が維持される前記検知用信号を生成する
請求項1に記載の検知装置。
前記信号生成部は、前記受信電極からの前記交流電流に基づいて、前記交流電流と同じ大きさの他の交流電流を抵抗に供給することにより、前記抵抗の抵抗値と前記他の交流電流の電流値を用いて、前記抵抗で発生する電圧を、前記検知用信号として生成する
請求項2に記載の検知装置。
導電体の接近を検知する検知装置であって、送信電極と、前記送信電極に交差して配置された受信電極とを有し、前記送信電極と前記受信電極とが交差する交点に対する前記導電体の接近を検知するためのセンサ部を含む検知装置のコンピュータを、
第1の傾きにより電圧値が上昇する期間と、一定の第1電位を維持した第1期間と、前記第1の傾きとは異なる第2の傾きにより電圧値が下降する期間と、前記第1電位とは異なる第2電位を維持した第2期間とが繰り返される台形波状の交流電圧を生成する電圧生成部と、
前記送信電極に前記交流電圧を印加することにより、前記交流電圧の電圧値が上昇中であるときには前記第1の傾きに応じた一定の電流値とされ、前記交流電圧の電圧値が下降中であるときには前記第2の傾きに応じた一定の電流値とされる交流電流を、前記受信電極に生成する電流生成部と、
前記受信電極に生成された交流電流に基づいて、前記交点と前記導電体との距離に応じた振幅で振動する検知用信号を生成する信号生成部と、
前記検知用信号の振幅に基づいて、前記交点に対する前記導電体の接近を検知する検知部と
して機能させるためのプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示における実施の形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(積分回路を用いて検知用信号を検出するときの一例)
2.第2の実施の形態(ボルテージフォロア回路を用いて検知用信号を検出するときの一例)
3.第3の実施の形態(カレントミラー回路を用いて検知用信号を検出するときの一例)
4.変形例
【0028】
<1.第1の実施の形態>
[表示装置1の構成例]
図1は、第1の実施の形態である表示装置1の構成例を示している。
【0029】
この表示装置1は、パルス生成部21、表示部22、タッチパネル23、信号検出部24、及び制御部25から構成される。なお、表示装置1としては、例えば、テレビジョン受像機やパーソナルコンピュータ等を採用することができる。また、表示装置1において、パルス生成部21、タッチパネル23、信号検出部24、及び制御部25は、表示部22へのユーザの指等の接近を検知する検知装置として機能する。
【0030】
パルス生成部21は、制御部25からの制御に従い、タッチパネル23を駆動させる駆動電圧として、例えば三角波信号v
in(t)(
図3)を生成する。そして、パルス生成部21は、制御部25からの制御に従い、複数の送信電極Tx
1乃至Tx
Nのうち、任意の送信電極Tx
i(i=1,2,…,N)を選択し、選択した送信電極Tx
iに、生成した三角波信号v
in(t)を印加(供給)する。
【0031】
表示部22は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などであり、制御部25からの制御にしたがって、所定の画像を表示する。
【0032】
タッチパネル23は、例えば表示部22の表示面に設けられており、表示部22と一体的に構成される。また、タッチパネル23は、図中水平方向に配置された複数の送信電極Tx
1乃至Tx
Nと、図中垂直方向に配置された複数の受信電極Rx
1乃至Rx
Mを有している。
【0033】
タッチパネル23は、複数の送信電極Tx
1乃至Tx
Nと、複数の受信電極Rx
1乃至Rx
Mとの各交点において、ユーザの指等の接近を検知するためのセンサ部として機能する。
【0034】
また、送信電極Tx
1乃至Tx
Nと、受信電極Rx
1乃至Rx
Mとは、それぞれ交差する各交点で容量Cを介して接続されている。表示装置1では、ユーザの指等の接近により生じる、容量Cの静電容量の変化に応じて、ユーザの指等の接近が検知される。
【0035】
すなわち、容量Cの静電容量の変化は、静電容量と反比例する電圧の変化として、信号検出部24により、電圧としての検知用信号v
out(t)(
図3)が検出される。そして、制御部25において、検知用信号v
out(t)に基づいて、ユーザの指等の接近が検知される。
【0036】
なお、
図1では、タッチパネル23を表示部22の表示面に設けるようにして、複数の送信電極Tx
1乃至Tx
N及び複数の受信電極Rx
1乃至Rx
Mを、表示部22の外側に設けるようにした。
【0037】
しかしながら、その他、例えば、複数の送信電極Tx
1乃至Tx
N及び複数の受信電極Rx
1乃至Rx
Mを、表示部22に内蔵することにより、タッチパネル23と表示部22とを一体的に構成するようにしてもよい。
【0038】
ここで、送信電極Tx
1乃至Tx
Nと受信電極Rx
1乃至Rx
Mを表示部22に内蔵する方法としては、例えば、表示部22に内蔵されたカラーフィルタ基板と偏光板の間に、送信電極Tx
1乃至Tx
Nと受信電極Rx
1乃至Rx
Mを形成するオンセルと呼ばれる方法を用いることができる。
【0039】
また、例えば、表示部22の表示面に表示される画素として発光する画素部の中に、送信電極Tx
1乃至Tx
Nと受信電極Rx
1乃至Rx
Mを組み込むインセルと呼ばれる方法を用いるようにしてもよい。
【0040】
送信電極Tx
1乃至Tx
Nと受信電極Rx
1乃至Rx
Mを表示部22に内蔵する場合、タッチパネル23を表示部22の表示面に設ける場合と比較して、表示装置1の薄型化を実現できる。
【0041】
また、送信電極Tx
1乃至Tx
Nと受信電極Rx
1乃至Rx
Mを表示部22に内蔵する場合、例えば、表示部22の表示面に送信電極Tx
1乃至Tx
Nと受信電極Rx
1乃至Rx
Mを設けるためのシート等を省略できるので、表示装置1の軽量化を実現できる。
【0042】
信号検出部24は、制御部25からの制御に従い、複数の受信電極Rx
1乃至Rx
Mのうち、任意の受信電極Rx
j(j=1,2,…,M)を選択する。また、信号検出部24は、選択した受信電極Rx
jに生成される交流電流i(t)(
図3)を、タッチパネル23に対するユーザの指等の接近を検知するための電圧である検知用信号v
out(t)に変換する。
【0043】
さらに、信号検出部24は、変換後の検知用信号v
out(t)を、予め決められたサンプリング周波数でサンプルホールドする。そして、信号検出部24は、サンプルホールドしたアナログ信号としての検知用信号v
out(t)を、デジタル信号としての検知用信号v
out(t)にAD(analog/digital)変換して、制御部25に供給する。
【0044】
制御部25は、パルス生成部21、表示部22、及び信号検出部24を制御する。また、制御部25は、信号検出部24からの検知用信号v
out(t)の振幅に基づいて、送信電極Tx
iと受信電極Rx
jとの交点における、ユーザの指等による接近を検知する。
【0045】
ここで、検知用信号v
out(t)の振幅とは、検知用信号v
out(t)が振動する幅の1/2の大きさを表す。
【0046】
また、検知用信号v
out(t)の振幅は、送信電極Tx
iと受信電極Rx
jとの交点から、ユーザの指等の導電体までの距離が近い程に、小さなものとなる。なお、検知用信号v
out(t)の振幅は、送信電極Tx
iと受信電極Rx
jとの交点に接近する導電体が大である程に、小さなものとなる。
【0047】
したがって、制御部25は、信号検出部24からの検知用信号v
out(t)の振幅に基づいて、ユーザの指等の接近を検知する。すなわち、例えば、制御部25は、検知用信号v
out(t)の振幅が第1の閾値以下である場合、ユーザの指等の近接を検知し、検知用信号v
out(t)の振幅が、第1の閾値よりも小さな第2の閾値以下である場合、ユーザの指等の接触を検知する。
【0048】
なお、ここでいう第1の閾値及び第2の閾値は、背景技術に記載の第1の閾値及び第2の閾値とは無関係の値である。
【0049】
以下では、説明を簡単にするために、制御部25は、信号検出部24からの検知用信号v
out(t)の振幅が、予め決められた閾値(例えば、後述する閾値TH'や閾値TH)以下であるか否かに基づいて、ユーザの指等の接近を検知するものとして説明する。
【0050】
すなわち、例えば、予め決められた閾値が第1の閾値に対応する場合、制御部25は、信号検出部24からの検知用信号v
out(t)の振幅が、予め決められた閾値以下であるか否かに基づいて、ユーザの指等の近接を検知するものとなる。
【0051】
また、例えば、予め決められた閾値が第2の閾値に対応する場合、制御部25は、信号検出部24からの検知用信号v
out(t)の振幅が、予め決められた閾値以下であるか否かに基づいて、ユーザの指等の接触を検知するものとなる。
【0052】
さらに、第1の実施の形態では、ユーザの指等の接近の検知は、例えば、表示部22に画像が表示されたときから、次の画像が表示されるまでの垂直ブランキング期間毎に行われるものとするが、ユーザの指等の接近の検知が行われる期間は、これに限定されない。
【0053】
すなわち、ユーザの指等の接近の検知は、任意の期間に行われるようにすることができる。具体的には、例えば、ユーザの指等の接近の検知は、垂直ブランキング期間、又は画像を構成する所定の行が表示されたときから次の行が表示されるまでの水平ブランキング期間の少なくとも一方の期間に行われるようにすることができる。
【0054】
さらに、ユーザの指等の接近の検知は、垂直ブランキング期間毎に行われるようにする他、例えば、奇数番目の垂直ブランキング期間にのみ行われるようにしてもよい。このことは、水平ブランキング期間についても同様である。
【0055】
制御部25は、信号検出部24からの検知用信号v
out(t)の振幅に基づく検知結果に応じた処理を行う。すなわち、例えば、制御部25は、表示部22に表示された所定のアイコンに、タッチパネル23を介してユーザの指等が接触したことを検知した場合、所定のアイコンに対応付けられたアプリケーションを起動する。そして、制御部25は、起動したアプリケーションの起動画面を、表示部22に表示させる。
【0056】
本開示では、パルス生成部21は、矩形波の波形からなる矩形波信号v
in(t)'(
図2)ではなく、例えば三角波の波形からなる三角波信号v
in(t)を、送信電極Tx
iに印加する点がポイントである。
【0057】
したがって、
図2及び
図3を参照して、パルス生成部21が、送信電極Tx
iに、矩形波信号v
in(t)'を印加したときと、三角波信号v
in(t)を印加したときとを比較しながら、三角波信号v
in(t)を印加することによる利点を説明する。
【0058】
なお、矩形波信号v
in(t)'には、三角波信号v
in(t)と区別するために、プライム(ダッシュ)"'"を付加するようにしている。このことは、後述する交流電流i(t)'及び検知信号v
out(t)'などについても同様である。
【0059】
次に、
図2は、パルス生成部21が、送信電極Tx
iに矩形波信号v
in(t)'を印加したときの一例を示している。
【0060】
図2Aは、送信電極Tx
iに印加される矩形波信号v
in(t)'の一例を示している。この矩形波信号v
in(t)'は、パルス幅T0毎に、HighとLowを交互に繰り返す。
【0061】
図2Bは、
図2Aに示される矩形波信号v
in(t)'が送信電極Tx
iに印加されたことに対応して、受信電極Rx
jに流れる交流電流i(t)'の一例を示している。交流電流i(t)'において、パルス幅T0のうち、パルス幅T0よりも短い期間T1で電流が流れ、その後、電流値は一定とされる。
【0062】
図2Cは、
図2Bに示される交流電流i(t)'を時間tで積分することにより得られる電圧としての検知用信号v
out(t)'=∫i(t)'dtの一例を示している。
【0063】
パルス生成部21は、
図2Aに示されるような矩形波信号v
in(t)'を生成し、電気的に接続されている送信電極Tx
iに印加する。
【0064】
これにより、受信電極Rx
jには、
図2Bに示されるような交流電流i(t)'が生成されることとなる。受信電極Rx
jは、パルス生成部21により、受信電極Rx
jに生成された交流電流i(t)'を、信号検出部24に供給する。
【0065】
信号検出部24は、受信電極Rx
jから供給される電流i(t)'を時間tで積分することにより、
図2Cに示されるような検知用信号v
out(t)'を生成する。そして、信号検出部24は、生成した検知用信号v
out(t)'から、その最大値としての電圧値v
max'(検知用信号v
out(t)'の振幅)をサンプリングして、制御部25に供給する。
【0066】
制御部25は、信号検出部24からの電圧値v
max'が予め決められた閾値TH'以下であるか否かに基づいて、送信電極Tx
iと受信電極Rx
jとの交点付近で、ユーザの指等の接近を検知する。
【0067】
すなわち、例えば、制御部25は、信号検出部24からの電圧値v
max'が予め決められた閾値TH'以下である場合、送信電極Tx
iと受信電極Rx
jとの交点付近で、ユーザの指等の接近が行われたことを検知する。また、制御部25は、信号検出部24からの電圧値v
max'が予め決められた閾値TH'以下ではない場合、送信電極Tx
iと受信電極Rx
jとの交点付近で、ユーザの指等の接近が行われなかったことを検知する。
【0068】
ここで、
図2Cにおいて、期間T1とは、交流電流i(t)'を積分することにより、検知用信号v
out(t)'が一定の電圧値v
max'に安定するまでに要する期間であり、表示装置1の時定数、特に、受信電極Rx
jの時定数が大である程に長いものとなる。
【0069】
したがって、受信電極Rx
jの時定数が比較的大きい場合に、矩形波信号v
in(t)'を送信電極Tx
iに印加させるようにしたときには、期間T1が長いものとなってしまう。このため、短時間で、ユーザの指等の接近を検知できないことが生じ得る。
【0070】
また、矩形波信号v
in(t)'のパルス幅T0(>T1)も、期間T1に応じて広く設定する必要があるため、所定の時間において、ユーザの指等の接近を検知する検知回数も少なくなってしまう。
【0071】
そこで、パルス生成部21は、矩形波信号v
in(t)'ではなく、例えば三角波信号v
in(t)を、送信電極Tx
iに印加するようにしている。
【0072】
これにより、受信電極Rx
jに生成される交流電流i(t)(
図3)は、送信電極Tx
iと受信電極Rx
jとの交点における容量Cの静電容量(静電容量C)に比例した一定の電流i=C×(dV/dt)とされる。よって、信号検出部24は、受信電極Rx
jの配線抵抗に拘らず、一定の期間で検知用信号v
out(t)を生成できるようになる。したがって、比較的、短時間でユーザの指等の接近を検知できるようになる。
【0073】
また、信号検出部24は、受信電極Rx
jの配線抵抗に拘らず、検知用信号v
out(t)を一定の期間で生成できるため、パルス生成部21は、矩形波信号v
in(t)'を印加する場合と比較して、三角波信号v
in(t)を構成する三角波のパルス幅を自由に設定できるようになる。
【0074】
このため、パルス生成部21において、三角波信号v
in(t)を印加する場合、三角波信号v
in(t)を構成する三角波のパルス幅を狭くすることにより、所定の時間における検知回数を増加させることができる。
【0075】
この場合、制御部25は、検知用信号v
out(t)の振幅に基づいて、ユーザの指等の接近を短時間で検知できるとともに、ユーザの指などの接近を検知する検知回数を増加させることができる。
【0076】
次に、
図3は、パルス生成部21が、送信電極Tx
iに三角波信号v
in(t)を印加したときの一例を示している。
【0077】
図3Aは、送信電極Tx
iに印加される三角波信号v
in(t)の一例を示している。この三角波信号v
in(t)は、例えば、矩形波信号v
in(t)'のパルス幅T0よりも狭いパルス幅T0/2の三角波で構成される。
【0078】
また、
図3Aにおいて、三角波信号v
in(t)は、期間T0/4の周期で、予め決められた一定の傾きa(>0)での上昇と、一定の傾き-aでの下降とを交互に繰り返す。
【0079】
図3Bは、
図3Aに示される三角波信号v
in(t)が送信電極Tx
iに印加されたことに対応して、受信電極Rx
jに生成される交流電流i(t)の一例を示している。
【0080】
図3Bにおいて、交流電流i(t)は、三角波信号v
in(t)の電圧値が傾きaで変化している場合、その傾きaに応じた一定の電流値x(a)(>0)とされ、三角波信号v
in(t)の電圧値が傾き-aで変化している場合、その傾き-aに応じた一定の電流値x(-a)とされる。
【0081】
図3Cには、
図3Bに示される交流電流i(t)を時間tで積分することにより得られる電圧としての検知用信号v
out(t)=∫i(t)dtの一例を示している。
図3Cにおいて、検知用信号v
out(t)の電圧値は、点線で示される電圧値0を基準として、期間T0/4の周期で、交互に最大値v
maxと最小値v
min(=-v
max)をとる。したがって、最大値v
maxは、検知用信号v
out(t)の振幅となる。
【0082】
パルス生成部21は、
図3Aに示されるような三角波信号v
in(t)を生成し、電気的に接続されている送信電極Tx
iに印加する。
【0083】
これにより、受信電極Rx
jには、
図3Bに示されるような交流電流i(t)が生成されることとなる。受信電極Rx
jは、受信電極Rx
jに生成された交流電流i(t)を、信号検出部24に供給する。
【0084】
信号検出部24は、受信電極Rx
jから供給される交流電流i(t)を時間tで積分することにより、
図3Cに示されるような検知用信号v
out(t)を生成する。そして、信号検出部24は、生成した検知用信号v
out(t)に基づいて、その最大値としての電圧値v
max(検知用信号v
out(t)の振幅)をサンプルホールドしてAD(Analog/Digital)変換した後、制御部25に供給する。
【0085】
制御部25は、信号検出部24からの電圧値v
maxが予め決められた閾値TH(>0)以下であるか否かに基づいて、送信電極Tx
iと受信電極Rx
jとの交点における、ユーザの指等の接近を検知する。
【0086】
なお、信号検出部24が、生成した検知用信号v
out(t)に基づいて、その最小値としての電圧値v
min(=-v
max)をサンプルホールドしてAD変換した後、制御部25に供給するようにしてもよい。この場合、制御部25は、例えば、信号検出部24からの電圧値v
minが閾値-TH以上であるか否か、又は電圧値v
minの負値v
max(=-v
min)が閾値TH以下であるか否かに基づいて、ユーザの指等の接近を検知する。
【0087】
パルス生成部21は、
図3Aに示されるような、一定の傾きで変化する三角波信号v
in(t)を、送信電極Tx
iに印加するようにしたので、受信電極Rx
jに生成される交流電流i(t)は、
図3Bに示されるような、電流値が一定の変位で変化する定変位電流となる。
【0088】
このため、信号検出部24は、受信電極Rx
jの配線抵抗に拘らず、一定の期間T0/2毎に、
図3Cに示されるような、検知用信号v
out(t)の最大値としての電圧値v
maxを、サンプルホールドできる。信号検出部24は、サンプルホールドした電圧値v
maxをAD変換して、制御部25に供給する。
【0089】
よって、制御部25は、信号検出部24から一定の期間T0/2毎に供給される電圧値v
maxが閾値TH以下であるか否かに基づいて、ユーザの指等の接近を短時間で検知できるようになる。
【0090】
これに対して、パルス生成部21が、
図2Aに示されるような矩形波信号v
in(t)'を、送信電極Tx
iに印加するようにした場合、電圧値v
max'を信号検出部24でサンプルホールドするまでに要する期間T1が、受信電極Rx
jの時定数、つまり、例えば、受信電極Rx
jの配線抵抗に応じて長くなってしまう。
【0091】
すなわち、この場合、信号検出部24は、
図2Cに示されるように、受信電極Rx
jの時定数に応じて変化する期間T1だけ待って電圧値v
max'をサンプルホールドするので、受信電極Rx
jの時定数によっては、ユーザの指等の接近を短時間で検知することができない。
【0092】
次に、
図4は、タッチパネル23に内蔵された送信電極Tx
1乃至Tx
N及び受信電極Rx
1乃至Rx
Mの詳細な構成例を示している。
【0093】
図4において、送信電極Tx
1乃至Tx
Nと受信電極Rx
1乃至Rx
Mとの間には、それぞれ、スイッチSWを介して2個の容量C
1,C
2が並列に接続された並列回路が設けられている。なお、実際には、送信電極Tx
1乃至Tx
Nと受信電極Rx1乃至RxMとの間には、それぞれ、1個の容量Cのみが設けられることとなる。そして、ユーザの指等が、交点に接近したときには、その交点における容量Cの静電容量が増加する。
【0094】
すなわち、
図4では、ユーザの指等が接近していないときの容量Cを、容量C
2として表し、ユーザの指等が接近することにより増加する容量を、容量C
1として表すようにしている。
【0095】
このため、
図4において、ユーザの指等が所定の交点に接近すると、所定の交点に設けられた並列回路のスイッチSWはオン状態とされ、所定の交点の容量Cが、容量C
2から、互いに並列に配置された容量C
1,C
2とされる。
【0096】
また、ユーザの指等が所定の交点に接近していない状態では、所定の交点に設けられた並列回路のスイッチSWはオフ状態とされ、所定の交点の容量Cは、容量C
2とされる。
【0097】
図4では、
図4に示される複数のスイッチSWのうち、送信電極Tx
1と受信電極Rx
1との交点に設けられた並列回路のスイッチSWのみがオン状態とされている。したがって、
図4は、送信電極Tx
1と受信電極Rx
1との交点に、ユーザの指等が接近したときの様子を表す。
【0098】
第1の実施の形態では、ユーザの指等の接近の検知は、例えば、表示部22に表示させる画像の垂直ブランキング期間に行われるものとして説明する。なお、ユーザの指等の接近の検知は、上述したように、垂直ブランキング期間以外の、例えば水平ブランキング期間などで行われるようにすることができる。
【0099】
すなわち、例えば、制御部25は、パルス生成部21に送信電極Tx
i(i=1,2,…,Nの整数)を選択させ、信号検出部24に受信電極Rx
j(j=1,2,…,Mの整数)を選択させる。
【0100】
パルス生成部21は、複数の送信電極Tx
1乃至Tx
Nのうち、制御部25からの制御に従って選択した送信電極Tx
iを電気的に接続し、残りの送信電極Tx
i'(i'≠i)を、予め決められた固定電圧とする。なお、パルス生成部21は、例えば、残りの送信電極Tx
i'を接地することにより固定電圧にすることができる他、残りの送信電極Tx
i'を接地する方法とは異なる方法で、残りの送信電極Tx
i'を固定電圧とすることができる。
【0101】
そして、パルス生成部21は、電圧として、例えば三角波信号v
in(t)を生成し、生成した三角波信号v
in(t)を送信電極Tx
iに印加する。
【0102】
信号検出部24は、複数の受信電極Rx
1乃至Rx
Mのうち、制御部25からの制御に従って選択した受信電極Rx
jのみを自身と電気的に接続する。そして、信号検出部24は、接続済みの受信電極Rx
jから供給される交流電流i(t)に基づいて、検知用信号v
out(t)を生成し、生成した検知用信号v
out(t)の電圧値v
maxをサンプルホールドしてAD変換し、制御部25に供給する。
【0103】
制御部25は、信号検出部24からの電圧値v
maxに基づいて、送信電極Tx
iと受信電極Rx
jとが交差する交点における、ユーザの指等の接近を検知する。
【0104】
次に、制御部25は、複数の受信電極Rx
1乃至Rx
Mのうちの新たな受信電極Rx
j+1を、信号検出部24に選択させる。
【0105】
そして、制御部25は、パルス生成部21及び信号検出部24を制御して、上述した場合と同様に、送信電極Tx
iと受信電極Rx
j+1とが交差する交点における、ユーザの指等の接近を検知する。
【0106】
制御部25は、パルス生成部21に送信電極Tx
iを選択させた状態で、信号検出部24に、順次、受信電極Rx
1,Rx
2,…,Rx
Mを選択させ、ユーザの指等の接近を検知する。
【0107】
制御部25は、パルス生成部21に送信電極Tx
iを選択させた状態で、受信電極Rx
1,Rx
2,…,Rx
Mを全て選択した場合、パルス生成部21に新たな送信電極Tx
i+1を選択させる。
【0108】
そして、制御部25は、パルス生成部21に送信電極Tx
i+1を選択させた状態で、信号検出部24に、順次、受信電極Rx
1,Rx
2,…,Rx
Mを選択させ、ユーザの指等の接近を検知する。
【0109】
その後、制御部25は、パルス生成部21にさらに新たな送信電極Tx
i+2を選択させ、以降同様の処理を、パルス生成部21に送信電極Tx
Nを選択させ、送信電極Tx
Nを選択させた状態で、信号検出部24に、順次、受信電極Rx
1,Rx
2,…,Rx
Mを選択させ、ユーザの指等の接近を検知するまで行う。
【0110】
なお、制御部25は、各交点における検知結果に基づいて、ユーザの指等の動き等を判別し、その判別結果に応じた処理を行う。制御部25は、それ以降に到来する各垂直ブランキング期間毎に同様の処理を繰り返す。
【0111】
また、制御部25は、全ての送信電極Tx
1乃至Tx
Nと、全ての受信電極Rx
1乃至Rx
Mとを用いる他、例えば、偶数番目の送信電極Tx
2,Tx
4,…と、偶数番目の受信電極Rx
2,Rx
4,…とのみを用いて、ユーザの指等の接近を検知するようにしてもよい。
【0112】
次に、
図5は、パルス生成部21に送信電極Tx
1が接続され、信号検出部24に受信電極Rx
1のみが電気的に接続されているときの一例を示している。
【0113】
すなわち、
図5は、
図4に示したように、送信電極Tx
1乃至Tx
Nと受信電極Rx
1乃至Rx
Mとの間にそれぞれ設けられた並列回路のうち、送信電極Tx
1と受信電極Rx
1との間に設けられた並列回路のスイッチSWのみがオン(ユーザの指等の接近がある場合)され、残りの並列回路のスイッチSWはオフ(ユーザの指等の接近が無い場合)されたときの一例を示している。
【0114】
つまり、
図5は、送信電極Tx
1乃至Tx
Nと受信電極Rx
1乃至Rx
Mとの各交点のうち、送信電極Tx
1と受信電極Rx
1との交点にのみ、ユーザの指等が接近したときの一例を示している。
【0115】
また、
図5において、容量C
x,C
0は、それぞれ、送信電極Tx
1と受信電極Rx
1との間に設けられた並列回路の容量C
1,C
2(
図2)である。
【0116】
なお、
図5では、図面が煩雑になるのを避けるため、タッチパネル23に内蔵された送信電極は、11本の送信電極Tx
1乃至Tx
11のみであるものとして説明する。従って、送信電極Tx
2乃至Tx
11は、それぞれ、一端が容量Cp
1乃至Cp
10と接続され、他端が接地されている。
【0117】
また、
図5では、パルス生成部21に送信電極Tx
1が、信号検出部24に受信電極Rx
1がそれぞれ接続された場合のみを説明し、それ以外の、送信電極と受信電極との組合せについては、送信電極Tx
1と受信電極Rx
1との組合せの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0118】
さらに、10個の抵抗Rs
1乃至Rs
10は、受信電極Rx
1の分布抵抗を表す。ここで、抵抗Rs
1乃至Rs
10は、いずれも同一の抵抗値を有し、容量Cp
1乃至Cp
10は、いずれも同一の静電容量を有するとともに、一端が接地されている。
【0119】
パルス生成部21は、主に、波形発生器41、積分回路42、及びボルテージフォロア回路43から構成される。
【0120】
なお、波形発生器41の一端は接地されている。また、波形発生器41の他端は、接続端子61を介して、一端が接地された抵抗62の他端と接続され、抵抗63,抵抗64、容量65、オペアンプ66、及び抵抗67から構成される積分回路42と接続されている。
【0121】
積分回路42において、抵抗63の一端は、接続端子61と接続され、その他端は、オペアンプ66の反転入力端子と接続されている。抵抗64及び容量65は、並列に接続された状態で、オペアンプ66の反転入力端子と出力端子に接続されている。
【0122】
オペアンプ66の非反転入力端子は、一端が接地された抵抗67の他端と接続されている。また、オペアンプ66の出力端子は、ボルテージフォロア回路43として機能するオペアンプ68の非反転入力端子と接続されている。
【0123】
オペアンプ68の出力端子は、接続端子69と接続されている。また、オペアンプ68の反転入力端子は、オペアンプ68の出力端子と接続されている。
【0124】
波形発生器41は、制御部25からの制御に従い、例えば、電圧としての矩形波信号v
0(t)を発生し、接続端子61を介して、積分回路42に供給する。
【0125】
積分回路42は、例えば、
図6に示されるように、波形発生器41から接続端子61を介して供給される矩形波信号v
0(t)を時間tで積分することにより、電圧としての三角波信号v
in(t)を生成し、ボルテージフォロア回路43に出力する。なお、
図6において、横軸は時間tを表し、縦軸は信号のレベル(電圧値)を表している。
【0126】
ここで、波形発生器41は、矩形波の振幅が大きい矩形波信号v
0(t)を発生し、接続端子61を介して積分回路42に供給すれば、積分回路42において、三角波の傾きが急な三角波信号v
in(t)を生成することができる。
【0127】
すなわち、制御部25は、波形発生器41を制御して、波形発生器41から出力される矩形波信号v
0(t)の振幅(の大きさ)を変更することにより、積分回路42から出力される三角波信号v
in(t)の三角波の傾き(a又は-aの少なくとも一方の傾き)を調整することができる。
【0128】
これにより、例えば、制御部25は、三角波信号v
in(t)の三角波の傾きを調整することで、検知回数を増減させることができる。このため、ユーザの指等の接近を検知する際の検知感度を任意に設定することができる。
【0129】
なお、制御部25は、送信電極Tx
iと受信電極Rx
jとの交点におけるユーザの指等の接近を、複数の検知回数で検知する場合、検知回数が多いほど、ノイズが検知回数の1/2乗で低減するため、検出感度が向上する。
【0130】
例えば、制御部25は、送信電極Tx
1乃至Tx
N及び受信電極Rx
1乃至Rx
Mの全てを用いて、タッチパネル23に対するユーザの指等の接近を検知する場合、三角波信号v
in(t)の三角波の傾きを緩やかにして、検知感度を低く設定することができる。
【0131】
また、例えば、制御部25は、送信電極Tx
1乃至Tx
N及び受信電極Rx
1乃至Rx
Mを間引いた形で用いることにより、タッチパネル23に対するユーザの指等の接近を検知する場合、三角波信号v
in(t)の三角波の傾きを急峻にして、検知感度を高く設定できる。
【0132】
さらに、例えば、制御部25は、積分回路42から出力される三角波信号v
in(t)において、電圧が上昇するときの傾きa(>0)と電圧が下降するときの傾き-aとで、傾きの大きさaを異なる大きさに調整するようにしてもよい。
【0133】
すなわち、制御部25は、電圧が上昇するときの傾きをaとし、電圧が下降するときの傾きを-b(b≠a)とするようにしてもよい。
【0134】
また、例えば、制御部25は、波形発生器41を制御して、波形発生器41から出力される矩形波信号v
0(t)の周波数を変更することにより、積分回路42から出力される三角波信号v
in(t)の周波数を調整することができる。
【0135】
したがって、例えば、制御部25は、表示部22から生じるノイズや、表示装置1と商用交流電源を接続するAC(Alternating Current)アダプタから生じるノイズによる干渉を避けるように、三角波信号v
in(t)の周波数を調整できる。
【0136】
すなわち、例えば、制御部25は、三角波信号v
in(t)の周波数を、ノイズの周波数とは異なる周波数に調整することにより、ノイズによる干渉を防止することができる。
【0137】
この場合、送信電極Tx
iに印加される三角波信号v
in(t)の波形が、ノイズにより歪むことは(殆ど)ないので、信号検出部24で検出される検知用信号v
out(t)に、ノイズによる歪みが生じることはない。
【0138】
なお、信号検出部24は、三角波信号v
in(t)の印加により生成される交流電流i(t)を積分することにより、検知用信号v
out(t)を検出する。このため、送信電極Tx
iに印加される三角波信号v
in(t)の波形が、ノイズにより歪んでいたとしても、信号検出部24は、三角波信号v
in(t)に生じたノイズに起因する歪みが、積分により抑制(平滑化)された検知用信号v
out(t)を検出できる。
【0139】
さらに、信号検出部24は、検出した検知用信号v
out(t)を、ノイズの周波数(ノイズ周波数)とは異なる周波数でサンプルホールドすれば、歪みが生じている、検知用信号v
out(t)の歪み部分を避けて、電圧値vをサンプルホールドできる。
【0140】
すなわち、信号検出部24は、検知用信号v
out(t)の歪み部分を避けて、検知用信号v
out(t)の振幅としての電圧値vを、比較的、精度良く得ることができる。
【0141】
よって、制御部25は、表示部22やACアダプタから生じるノイズに拘らず、信号検出部24により検出された検知用信号v
out(t)の振幅に基づいて、ユーザの指等の接近を精度良く検知することが可能となる。
【0142】
図5のボルテージフォロア回路43は、積分回路42からの三角波信号v
in(t)を低出力インピーダンスに変換し、接続端子69を介して、ボルテージフォロア回路43と接続されている送信電極Tx
1に印加する。
【0143】
これにより、受信電極Rx
1には、ボルテージフォロア回路43により、
図5に示されるような交流電流i=i(t)が生成される。そして、受信電極Rx
1において、抵抗Rs
1から出力された交流電流iは分流し、交流電流iのうち、交流電流ip(pは0以上1未満の値)が容量Cp
1に供給され、残りの交流電流i-ipが抵抗Rs
2に供給されることとなる。
【0144】
同様にして、抵抗Rs
2から出力された交流電流i-ipは分流し、交流電流i-ipのうち、交流電流ipが容量Cp
2に供給され、残りの交流電流i-2ipが抵抗Rs
3に供給されることとなる。
【0145】
抵抗Rs
3及び容量Cp
3以降についても同様にして、交流電流の分流が行われる。したがって、抵抗Rsxには交流電流i-(x-1)ipが供給され、容量Cpxには電流ipが供給されることとなる。なお、
図5では、x=1,2,…,10である。
【0146】
このため、抵抗Rs
9から抵抗Rs
10に供給され、抵抗Rs
10から出力される交流電流i-9ipは分流し、交流電流i-9ipのうち、交流電流ipが容量Cp
10に供給され、残りの交流電流i-10ipが信号検出部24に供給される。
【0147】
信号検出部24は、主に、積分回路81、サンプルホールド回路82、及びAD変換回路83から構成される。
【0148】
なお、積分回路81は、
図5に示されるように、接続端子101を介して受信電極Rx
1と電気的に接続されており、抵抗102、容量103、及びオペアンプ104から構成される。
【0149】
積分回路81において、抵抗102及び容量103は、オペアンプ104の反転入力端子と出力端子の間に、並列に接続されている。オペアンプ104の反転入力端子には、抵抗102及び容量103の一端の他、接続端子101が接続されている。また、オペアンプ104の非反転入力端子は接地されており、その出力端子には、抵抗102及び容量103の他端の他、接続端子105が接続されている。
【0150】
積分回路81は、受信電極Rx
1から接続端子101を介して供給される電流i-10ipを時間tで積分することにより、電圧としての検知用信号v
out(t)を生成し、接続端子105を介してサンプルホールド回路82に供給する。
【0151】
サンプルホールド回路82は、積分回路81から接続端子105を介して供給される検知用信号v
out(t)を、予め決められたサンプリング周波数でサンプルホールドし、サンプルホールドにより得られる電圧値v
maxを、AD変換回路83に供給する。
【0152】
AD変換回路83は、サンプルホールド回路82から供給される、アナログ信号としての電圧値v
maxを、デジタル信号としての電圧値v
maxにAD変換し、制御部25に供給する。
【0153】
制御部25は、信号検出部24のAD変換回路83からの電圧値v
maxが、予め決められた閾値TH以下であるか否かに基づいて、ユーザの指等の接近を検知する。そして、制御部25は、送信電極Tx
1乃至Tx
Nと受信電極Rx
1乃至Rx
Mとの各交点での検知結果に基づいて、ユーザの指等の動きを判別し、その判別結果に基づく処理を行う。
【0154】
次に、
図7は、検知用信号v
out(t)の位相が、受信電極Rxの時定数、すなわち、受信電極Rx
1の抵抗Rs
1乃至Rs
10や寄生容量Cp
0乃至Cp
10に起因して、三角波信号v
in(t)よりも遅れるときの一例を示している。
【0155】
なお、三角波信号v
in(t)の位相の遅延は、受信電極Rx
1の抵抗Rs
1乃至Rs
10や寄生容量の他、表示部22に内蔵される容量の静電容量や寄生容量などにも起因して生じる。
【0156】
図7には、検知用信号v
out(t)の位相が、三角波信号v
in(t)よりも、約ΣR×ΣC/2だけ遅延している様子の一例が示されている。
【0157】
ここで、ΣRとは、受信電極Rx
1の抵抗Rs
1乃至Rs
10それぞれの抵抗値Rの総和を表し、ΣCとは、容量Cp
1乃至Cp
10それぞれの静電容量Cの総和を表す。
【0158】
また、検知用信号v
out(t)は、受信電極Rx
1の時定数、すなわち、受信電極Rx
1の抵抗Rs
1乃至Rs
10や寄生容量Cp
0乃至Cp
10に起因して、
図7に示されるように、正弦波に近似した波形となる。検知用信号v
out(t)は、受信電極Rx
1の時定数が大きい程に、正弦波に近似した波形とされる。
【0159】
サンプルホールド回路82は、積分回路81から接続端子105を介して印加される検知用信号v
out(t)を、予め決められたサンプリング周波数でサンプルホールドする。
【0160】
すなわち、例えば、サンプルホールド回路82は、下矢印(↓)で示されるタイミング(三角波信号v
in(t)の極大値を過ぎた付近)で、検知用信号v
out(t)をサンプルホールドし、その結果得られる電圧値を、AD変換回路83に供給する。
【0161】
図7に示されるように、検知用信号v
out(t)の位相に遅延が生じている場合でも、位相による遅延量ΣR×ΣC/2が非常に小であるときには、サンプルホールド回路82は、電圧値v
maxに近い電圧値v(≒v
max)を、サンプルホールドできる。
【0162】
このため、制御部25は、AD変換回路83によりAD変換後の電圧値vが閾値TH以下であるか否かに基づいて、比較的、精度良く、ユーザの指等の接近を検知することができる。
【0163】
しかしながら、遅延量ΣR×ΣC/2が無視できない程度に大きい場合、サンプルホールド回路82において、電圧値v
maxとは程遠い電圧値v(<v
max)が、サンプルホールドされることが生じ得る。
【0164】
この場合、制御部25は、AD変換回路83によりAD変換後の電圧値vが閾値TH以下であるか否かに基づいて、ユーザの指等の接近を、精度良く検知できない。遅延量ΣR×ΣC/2が大であるときでも、ユーザの指等の接近を、精度良く検知できることが望ましい。
【0165】
次に、
図8及び
図9を参照して、遅延量ΣR×ΣC/2が大であるときでも、ユーザの指等の接近を、精度良く検知できるようにする方法の一例を説明する。
【0166】
図8は、パルス生成部21の波形発生器41及び積分回路42が行う処理の他の一例を示している。
【0167】
図8は、波形発生器41から発生される階段状の波形を有する矩形波信号v
o(t)"と、その矩形波信号v
o(t)"を積分することにより生成される台形波信号v
in(t)"との一例を示している。
【0168】
波形発生器41は、制御部25からの制御に従い、
図8に示されるような階段状の矩形波信号v
o(t)"を発生し、接続端子61を介して、積分回路42に供給する。
【0169】
積分回路42は、
図8に示されるように、波形発生器41から接続端子61を介して供給される矩形波信号v
0(t)"を時間tで積分することにより、電圧としての台形波信号v
in(t)"を生成し、ボルテージフォロア回路43に出力する。
【0170】
ボルテージフォロア回路43は、積分回路42からの台形波信号v
in(t)"をインピーダンス変換し、接続端子69を介して、ボルテージフォロア回路43と接続されている送信電極Tx
1に印加する。
【0171】
これにより、三角波信号v
in(t)を送信電極Tx
1に印加させた場合と同様にして、信号検出部24の積分回路81には、受信電極Rx
1から接続端子101を介して、交流電流i-10ipが供給される。
【0172】
次に、
図9は、台形波信号v
in(t)"が送信電極Tx1に印加された場合に、信号検出部24が行う処理の一例を示している。
【0173】
図9には、送信電極Tx
1に印加された台形波信号v
in(t)"とともに、台形波信号v
in(t)"よりも、約ΣR×ΣC/2だけ遅延している検知用信号v
out(t)"の一例が示されている。なお、検知用信号v
out(t)"の位相は、
図7の場合と同様に、台形波信号v
in(t)"よりも、約ΣR×ΣC/2だけ遅延している。また、検知用信号v
out(t)"の振幅は、台形波信号v
in(t)"において振幅が維持された期間と同一の長さで維持される。すなわち、検知用信号v
out(t)"の最大値(又は最小値)は、台形波信号v
in(t)"において最大値(又は最小値)が維持された期間と同一の長さで維持される。
【0174】
積分回路81は、受信電極Rx
1から接続端子101を介して供給される交流電流i-10ipを時間tで積分することにより、検知用信号v
out(t)"を生成し、接続端子105を介してサンプルホールド回路82に供給する。
【0175】
サンプルホールド回路82は、積分回路81から接続端子105を介して印加される検知用信号v
out(t)"を、予め決められたサンプリング周波数でサンプルホールドする。
【0176】
すなわち、例えば、サンプルホールド回路82は、
図9に示されるように、下矢印(↓)で示されるタイミング(台形波信号v
in(t)"の上底の右端部分)で、検知用信号v
out(t)"をサンプルホールドし、その結果得られる電圧値を、AD変換回路83に供給する。
【0177】
図9に示されるように、検知用信号v
out(t)"の位相に遅延が生じている場合でも、検知用信号v
out(t)"の波形は、台形状の波形となっているので、比較的、遅延量ΣR×ΣC/2が大であるときでも、サンプルホールド回路82は、検知用信号v
out(t)"の最大値である電圧値v
maxを、サンプルホールドできる。
【0178】
このため、遅延量ΣR×ΣC/2が大であるときでも、制御部25では、AD変換回路83によりAD変換後の電圧値v
maxが閾値TH以下であるか否かに基づいて、比較的、精度良く、ユーザの指等の接近を検知することができる。
【0179】
[表示装置1の動作説明]
次に、
図10のフローチャートを参照して、表示装置1が行う検知処理の動作説明の一例を説明する。
【0180】
この検知処理は、例えば、垂直ブランキング期間が到来したときに開始される。このとき、制御部25は、パルス生成部21及び信号検出部24を制御して、以下に示すような処理を行わせる。
【0181】
すなわち、ステップS21において、制御部25は、複数の送信電極Tx
1乃至Tx
Nのうち、所定の送信電極Tx
i(i=1,2,…,Nの整数)を選択する。そして、制御部25は、複数の送信電極Tx
1乃至Tx
Nのうち、選択した送信電極Tx
iと、パルス生成部21の接続端子69とを電気的に接続させ、残りの送信電極を固定電圧に設定する。なお、パルス生成部21は、例えば、残りの送信電極を接地することにより、所定の固定電圧に設定することができる。
【0182】
ステップS22において、制御部25は、複数の受信電極Rx
1乃至Rx
Mのうち、所定の受信電極Rx
j(j=1〜Mの整数)を選択する。そして、制御部25は、選択した受信電極Rx
jと、信号検出部24の接続端子101とを電気的に接続させる。
【0183】
ステップS23において、パルス生成部21の波形発生器41は、制御部25からの制御に従い、例えば、電圧としての矩形波信号v
0(t)を発生し、接続端子61を介して、積分回路42に供給する。
【0184】
ステップS24において、積分回路42は、制御部25からの制御に従い、波形発生器41から接続端子61を介して供給される矩形波信号v
0(t)を時間tで積分することにより、電圧としての三角波信号v
in(t)を生成し、ボルテージフォロア回路43に出力する。
【0185】
なお、ステップS23では、波形発生器41は、制御部25からの制御に従い、矩形波信号v
0(t)に代えて、階段状の矩形波信号v
0(t)"を生成する。そして、ステップS24では、積分回路42は、ステップS23で生成された階段状の矩形波信号v
0(t)"を時間tで積分することにより、台形波信号v
in(t)"を生成し、ボルテージフォロア回路43に出力するようにしてもよい。
【0186】
しかしながら、ここでは、積分回路42は、生成した三角波信号v
in(t)を、ボルテージフォロア回路43に出力するものとして、以下説明する。
【0187】
ステップS25では、ボルテージフォロア回路43は、積分回路42からの、電圧としての三角波信号v
in(t)をインピーダンス変換し、接続端子69を介して接続されている送信電極Tx
iに印加する。これにより、受信電極Rx
jには、ユーザの指等の非接近時には容量C2を、ユーザの接近時には並列回路としての容量C
1及びC
2を介して、送信電極Tx
iから交流電流iが流れることとなる。
【0188】
この交流電流iは、受信電極Rx
jに接続された各容量Cp
1乃至Cp
10に、それぞれ、交流電流ipだけ分流しながら、信号検出部24に供給される。これにより、信号検出部24の積分回路81には、受信電極Rx
jから接続端子101を介して交流電流i-10ipが供給される。
【0189】
ステップS26において、信号検出部24の積分回路81は、受信電極Rx
jから接続端子101を介して供給される電流i-10ipを時間tで積分することにより、電圧としての検知用信号v
out(t)を生成し、接続端子105を介してサンプルホールド回路82に印加する。
【0190】
ステップS27において、サンプルホールド回路82は、積分回路81から接続端子105を介して印加される検知用信号v
out(t)を、予め決められたサンプリング周波数でサンプルホールドし、サンプルホールドにより得られた電圧値を、AD変換回路83に供給する。
【0191】
ステップS28において、AD変換回路83は、サンプルホールド回路82からのアナログ信号としての電圧値を、デジタル信号としての電圧値に変換するAD変換を行い、AD変換後の電圧値を、制御部25に供給する。
【0192】
ステップS29において、制御部25は、AD変換回路83からの電圧値が、予め決められた閾値TH以下であるか否かに基づいて、送信電極Tx
iと受信電極Rx
jとの交点における、ユーザの接近を検知する。
【0193】
ステップS30では、制御部25は、複数の受信電極Rx
1乃至Rx
M全てを選択したか否かを判定し、まだ全てを選択していないと判定した場合、処理をステップS22に戻す。
【0194】
ステップS22では、制御部25は、複数の受信電極Rx
1乃至Rx
Mのうち、まだ選択していない受信電極Rx
jを新たに選択する。そして、制御部25は、複数の受信電極Rx
1乃至Rx
Mのうち、新たに選択した受信電極Rx
jと、信号検出部24の接続端子101とを電気的に接続させ、処理はステップS23に進められ、それ以降同様の処理が行われる。
【0195】
また、ステップS30では、制御部25は、複数の受信電極Rx
1乃至Rx
M全てを選択したと判定した場合、処理はステップS31に進む。ステップS31では、制御部25は、複数の送信電極Tx
1乃至Tx
N全てを選択したか否かを判定し、まだ全てを選択していないと判定した場合、処理をステップS21に戻す。
【0196】
ステップS21では、制御部25は、複数の送信電極Tx
1乃至Tx
Nのうち、まだ選択していない送信電極Tx
iを新たに選択する。そして、制御部25は、複数の送信電極Tx
1乃至Tx
Nのうち、新たに選択した送信電極Tx
iと、パルス生成部21の接続端子69とを電気的に接続させ、残りの送信電極を例えば接地させることにより、所定の固定電圧とし、処理はステップS22に進められ、それ以降同様の処理が行われる。
【0197】
また、ステップS31において、制御部25は、複数の送信電極Tx
1乃至Tx
N全てを選択したと判定した場合、処理をステップS32に進む。ステップS32では、制御部25は、送信電極Tx
1乃至Tx
Nと受信電極Rx
1乃至Rx
Mとの各交点での検知結果に基づいて、ユーザの指等の動きを判別し、その判別結果に基づく処理を行う。すなわち、例えば、制御部25は、その判別結果に基づいて、表示部22の表示内容などを変更させる。以上で、
図10の検知処理は終了される。
【0198】
以上説明したように、
図10の検知処理によれば、パルス生成部21が、例えば三角波信号v
in(t)や台形波信号v
in(t)"を送信電極Tx
iに印加するようにした。このため、受信電極Rxjの配線抵抗に拘らず、短時間で検知を行うことができるとともに、所定の時間における検知回数を増加させることができる。
【0199】
したがって、例えば、表示部22に表示される画像のフレームレートが高いため、ユーザの指等の検知が行われる期間(例えば、垂直ブランキング期間)が短い場合でも、ユーザの指等の接近を精度良く検知することが可能となる。
【0200】
さらに、
図10の検知処理によれば、タッチパネル23が一体的に構成された表示装置1の配線等による抵抗(特に、受信電極Rx
jの配線抵抗)等に拘らず、短時間で検知を行うことができるとともに、所定の時間における検知回数を増加させることができる。よって、より多くの長い配線等を必要とする大型のディスプレイ等にも、本技術を適用することができる。
【0201】
また、
図10の検知処理によれば、矩形波信号v
in(t)'と比較して、低電圧で高調波成分の少ない三角波信号v
in(t)や台形波信号v
in(t)"を送信電極Txiに印加するようにした。このため、表示装置1では、高電圧や高調波による電波障害(EMI:Electro Magnetic Interference)が生じる事態を抑制できる。
【0202】
さらに、三角波信号v
in(t)や台形波信号v
in(t)"は、矩形波信号v
in(t)'と比較して、低電圧であるため、矩形波信号v
in(t)'を送信電極Tx
iに印加する場合と比較して、ユーザの指等の接近の検知を、低消費電力で行うことができる。
【0203】
ところで、第1の実施の形態では、制御部24は、パルス生成部21に、受信電極Rx
jを1つずつ個別に選択させるようにした。しかしながら、信号検出部24の処理回路によっては、制御部25は、パルス生成部21に、複数又は全数の受信電極Rx
jを同時に選択させるようにしてもよい。これにより、ユーザの指等の接近を検知する検知時間の短縮を図ることができ、特に、高精細な画像を表示部22に表示するときに有効である。
【0204】
また、第1の実施の形態では、信号検出部24の積分回路81が、例えば受信電極Rx
jから接続端子101を介して供給される電流i-10ipを時間tで積分することにより、検知用信号v
out(t)を生成するようにした。しかしながら、検知用信号V
out(t)の生成方法はこれに限定されない。
【0205】
すなわち、例えば、ボルテージフォロア回路等を用いて、直接に、電圧としての検知用信号v
out(t)を検出するようにしてもよい。
【0206】
<2.第2の実施の形態>
[ボルテージフォロア回路を用いるときの一例]
次に、
図11は、信号検出部24に代えて、ボルテージフォロア回路等が設けられた信号検出部24'を用いて、直接に検知用信号v
out(t)を検出するときの一例を示している。
【0207】
なお、
図11において、
図5の信号検出部24に代えて、信号検出部24'が設けられている他は、
図5の場合と同様に構成される。
【0208】
また、
図11の信号検出部24'において、
図5の信号検出部24と同様に構成される部分について、同一の記号を付すようにしているので、それらの説明は、以下、適宜省略する。
【0209】
すなわち、
図11の信号検出部24'では、
図5の積分回路81に代えて、抵抗121及びオペアンプ122が設けられている他は、
図5の場合と同様に構成される。
【0210】
抵抗121は、その一端が接地されており、他端が、オペアンプ122の非反転入力端子と接続されている。また、抵抗121は、受信電極Rx
1と直列に接続されている。
【0211】
オペアンプ122は、その出力端子が、その反転入力端子に接続され、ボルテージフォロア回路141として機能する。また、オペアンプ122の出力端子は、接続端子105とも接続されている。
【0212】
すなわち、ボルテージフォロア回路141としてのオペアンプ122は、受信電極Rx
1から接続端子101を介して供給される交流電流i-10ipに基づいて、抵抗121に発生する電圧を、検知用信号v
out(t)として検出する。そして、オペアンプ122は、検出した検知用信号v
out(t)を、接続端子105を介してサンプルホールド回路82に印加する。
【0213】
また、ボルテージフォロア回路141としてのオペアンプ122は、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低いため、インピーダンス変換器として用いられる。
【0214】
<3.第3の実施の形態>
[カレントミラー回路を用いるときの一例]
その他、例えば、信号検出部24の積分回路81に代えて、
図12に示されるようなカレントミラー回路161を設けるようにしてもよい。この場合、カレントミラー回路161が、検知用信号v
out(t)を検出し、接続端子105を介してサンプルホールド回路82に供給することとなる。
【0215】
すなわち、例えば、カレントミラー回路161には、受信電極Rx
1から接続端子101を介して、交流電流i-10ipが、
図12に示される交流電流I
refとして供給される。カレントミラー回路161は、そこに供給される交流電流I
refに基づいて、交流電流I
refと同じ大きさの交流電流I
outを生成し、例えば、既知の抵抗値R[Ω]を有する抵抗(図示せず)に供給する。これにより、抵抗値Rと交流電流I
out(=I
ref)との乗算結果R×I
outを、図示せぬ抵抗に発生する電圧としての検知用信号v
out(t)として算出(検出)することができる。なお、カレントミラー回路161において、検知用信号v
out(t)の算出は、図示せぬ算出用回路により算出される。
【0216】
なお、カレントミラー回路161では、受信電極Rx
jから接続端子101を介して供給される交流電流I
refと同じ大きさの交流電流I
outを生成するために必要なバイアス電流が、数10mAと大きくなってしまい、消費電力が増加する。
【0217】
このため、検知用信号v
out(t)の検出には、比較的、低消費電力の積分回路81(
図5)やボルテージフォロア回路141(
図11)を用いることが望ましい。
【0218】
[実際の計測結果]
次に、
図13乃至
図17は、実際の計測結果を示している。
【0219】
図13は、
図5に示される各回路から計測された計測結果を示している。
【0220】
図13Aには、パルス生成部21の波形発生器41から発生した矩形波信号v
0(t)の計測結果が示されている。
【0221】
図13Bには、パルス生成部21の積分回路42により生成された三角波信号v
in(t)の計測結果が示されている。なお、
図13Bに示される三角波信号v
in(t)の波形は、
図6に示した三角波信号v
in(t)とは逆になっている。これは、積分回路42において、実際には、矩形波信号v
0(t)を時間tで積分した積分結果の負値が出力されることによる。このことは、
図14以降の図面についても同様である。
【0222】
図13Cには、受信電極Rx
1に流れる交流電流iの計測結果が示されている。
【0223】
図13Dには、信号検出部24の積分回路81により生成された検知用信号v
out(t)の計測結果が示されている。なお、
図13Dにおいて、振幅が大きい検知用信号v
out(t)は、ユーザの指等の接近がないときの検知用信号を表しており、振幅が小さい検知用信号v
out(t)は、ユーザの指等の接近があったときの検知用信号を表している。
【0224】
図13Dに示されるように、ユーザの指等が近づくほどに、検知用信号v
out(t)の振幅は小さなものとなる。
【0225】
図14は、
図11に示される各回路から計測された計測結果を示している。
【0226】
図14Aには、パルス生成部21の波形発生器41から発生した矩形波信号v
0(t)の計測結果が示されている。
図14Bには、パルス生成部21の積分回路42により生成された三角波信号v
in(t)の計測結果が示されている。
図14Cには、受信電極Rx
1から、信号検出部24'の抵抗121に印加された電圧としての三角波信号v
in(t)の計測結果が示されている。
【0227】
図14Dには、信号検出部24'のボルテージフォロア回路141により検出された検知用信号v
out(t)の計測結果が示されている。なお、
図14Dにおいて、振幅が大きい検知用信号v
out(t)は、ユーザの指等の接近がないときの検知用信号を表しており、振幅が小さな検知用信号v
out(t)は、ユーザの指等の接近があったときの検知用信号を表している。
【0228】
図14Dに示されるように、ユーザの指等が近づくほどに、検知用信号v
out(t)の振幅は小さなものとなる。
【0229】
次に、
図15は、受信電極Rx
1の時定数によって、検知用信号v
out(t)の位相が遅延する様子の一例を示している。
【0230】
図15Aには、パルス生成部21の波形発生器41から発生した矩形波信号v
0(t)の計測結果が示されている。
図15Bには、パルス生成部21の積分回路42により生成された三角波信号v
in(t)の計測結果が示されている。
【0231】
図15Cにおいて、振幅が1番目に大きな波形は、
図5のスイッチSWと抵抗Rs
1との接続点における電圧の波形を表しており、振幅が2番目に大きな波形は、
図5の抵抗Rs
6と抵抗Rs
7との接続点における電圧の波形を表している。
【0232】
また、
図15Cにおいて、振幅が3番目に大きな波形は、
図5の抵抗Rs10と接続端子101との接続点における電圧(抵抗121に印加される電圧)の波形を表している。
【0233】
図15Cに示されるように、受信電極Rx
1の時定数(分布定数)により、検知用信号v
out(t)として検出される電圧の振幅が小さくなるとともに、電圧の位相が遅延していくことがわかる。
【0234】
次に、
図16は、
図5の受信電極Rx
1の抵抗成分を増加させたときに、
図5に示される各回路から計測された計測結果を示している。
【0235】
図16Aには、パルス生成部21の波形発生器41から発生した矩形波信号v
0(t)の計測結果が示されている。
図16Bには、パルス生成部21の積分回路42により生成された三角波信号v
in(t)の計測結果が示されている。
図16Cには、受信電極Rx
1に生成された交流電流iの計測結果が示されている。
【0236】
図16Dには、信号検出部24の積分回路81から出力される検知用信号v
out(t)が示されている。なお、
図16Dにおいて、検知用信号v
out(t)として、複数の波形が存在するのは、周囲のノイズの影響で揺れが発生しているためである。この点、
図5において、サンプルホールド回路82でサンプルホールド後に、積分回路81の容量103をOVに放電するリセット(図示せず)を行うことにより、検知用信号v
out(t)の揺れを抑制することができる。
【0237】
このため、サンプルホールド回路82は、検知用信号v
out(t)の揺れが抑制されない場合と比較して、検知用信号v
out(t)の振幅を表す電圧値を正確にサンプルホールドできるようになる。したがって、制御部25は、サンプルホールドされてAD変換後の電圧値に基づいて、ユーザの指等の接近を精度良く検知できるようになる。
【0238】
また例えば、受信電極Rx
1の抵抗成分が大きいため、受信電極Rx
1の時定数も大きくなっている場合、
図16Dに示されるように、
図5の積分回路81から出力される検知用信号v
out(t)は正弦波に近い波形となる。
【0239】
次に、
図17は、
図11の受信電極Rx
1の抵抗成分を増加させたときに、
図11に示される各回路から計測された計測結果を示している。
【0240】
図17Aには、パルス生成部21の波形発生器41から発生した矩形波信号v
0(t)の計測結果が示されている。
図17Bには、パルス生成部21の積分回路42により生成された三角波信号v
in(t)の計測結果が示されている。
【0241】
図17Cには、受信電極Rx
1から接続端子101を介して、信号検出部24'の抵抗121に印加される電圧の計測結果が示されている。複数の波形のうち、振幅が最も大きな波形は、ユーザの指等が接近していないときの電圧を表しており、その他の波形は、ユーザの指等が接近したときの電圧を表す。
【0242】
図17Dには、信号検出部24'のボルテージフォロア回路141から出力される検知用信号v
out(t)が示されている。すなわち、
図17Dにおいて、複数の波形のうち、振幅が最も大きな波形は、ユーザの指等が接近していないときの検知用信号v
out(t)を表しており、その他の波形は、ユーザの指等が接近したときの検知用信号v
out(t)を表す。
【0243】
例えば、受信電極Rx
1の抵抗成分が大きいため、受信電極Rx
1の時定数も大きくなっている場合、
図17Dに示されるように、
図11のボルテージフォロア回路141から出力される検知用信号v
out(t)は、やはり、正弦波に近い波形となる。
【0244】
<4.変形例>
第1の実施の形態において、制御部25は、信号検出部24からの電圧値が閾値TH以下であるか否かに基づいて、ユーザの指等の接近を検知するようにした。しかしながら、信号検出部24において、サンプルホールド回路82に代えて、コンパレータを設けるようにし、コンパレータからの出力に基づいて、ユーザの指等の接近を検知してもよい。
【0245】
なお、コンパレータは、
図5の積分回路81から供給される検知用信号v
out(t)の電圧値を、予め決められた比較値と比較する。そして、コンパレータは、その比較結果に基づいて、検知用信号v
out(t)の電圧値が比較値以上である場合、Highとされた信号を出力し、検知用信号v
out(t)の電圧値が比較値未満である場合、Lowとされた信号を出力する。
【0246】
また、第1の実施の形態において、積分回路42は、
図8に示されるような台形波信号v
in(t)"を生成してもよいことを説明したが、その他、例えば、台形波信号v
in(t)"において、信号のレベル(電圧値)が下降した後、下降後の電圧値がそのまま維持される期間を省略した台形波信号v
in(t)'''を生成するようにしてもよい。
【0247】
つまり、積分回路42は、第1の傾きa'で上昇し、上昇後の電圧値を一定期間だけ維持した後、第2の傾き-a'で下降し、下降後の電圧値から第1の傾きa'で再上昇して、それ以降同様にして電圧値が変化する台形波信号v
in(t)'''を生成するようにしてもよい。
【0248】
また、例えば、積分回路42は、第2の傾き-a'で下降し、下降後の電圧値を一定期間だけ維持した後、第1の傾きa'で上昇し、上昇後の電圧値から第2の傾き-a'で再下降して、それ以降同様にして電圧値が変化する台形波信号v
in(t)''''を生成してもよい。
【0249】
この場合、サンプルホールド回路82では、台形波信号v
in(t)''''と同様の波形とされる検知用信号v
out(t)''''のうち、振幅が一定期間だけ維持される最小値を電圧値v(<0)としてサンプルホールドして、AD変換回路83に供給する。
【0250】
AD変換回路83は、サンプルホールド回路82からの電圧値vをAD変換し、制御部25に供給する。制御部25は、例えば、AD変換回路83からの電圧値vに-1を乗算した乗算結果-v(>0)が閾値TH以下であるか否か、又は電圧値vが閾値-TH以上であるか否かに基づいて、ユーザの指等の接近を検知する。
【0251】
ところで、本技術は、以下の構成をとることができる。
(1)導電体の接近を検知する検知装置において、送信電極と、前記送信電極に交差して配置された受信電極とを有し、前記送信電極と前記受信電極とが交差する交点に対する前記導電体の接近を検知するためのセンサ部と、第1の傾きによる電圧値の上昇と、前記第1の傾きとは異なる第2の傾きによる電圧値の下降とが交互に繰り返される交流電圧を生成する電圧生成部と、前記送信電極に前記交流電圧を印加することにより、前記交流電圧の電圧値が上昇中であるときには前記第1の傾きに応じた一定の電流値とされ、前記交流電圧の電圧値が下降中であるときには前記第2の傾きに応じた一定の電流値とされる交流電流を、前記受信電極に生成する電流生成部と、前記受信電極に生成された交流電流に基づいて、前記交点と前記導電体との距離に応じた振幅で振動する検知用信号を生成する信号生成部と、前記検知用信号の振幅に基づいて、前記交点に対する前記導電体の接近を検知する検知部とを含む検知装置。
(2)前記電圧生成部は、前記第1の傾きで上昇後の電圧値、又は前記第2の傾きで下降後の電圧値の少なくとも一方が、予め決められた所定期間だけ維持される前記交流電圧を生成し、前記信号生成部は、前記交流電流に基づいて、前記所定期間で前記振幅が維持される前記検知用信号を生成する前記(1)に記載の検知装置。
(3)前記信号生成部は、前記受信電極に生成された交流電流を積分することにより得られる前記検知用信号を生成し、前記検知部は、前記検知用信号の振幅と予め決められた閾値との比較に基づいて、前記導電体の接近を検知する前記(1)又は(2)に記載の検知装置。
(4)矩形波により構成される矩形波信号を発生する波形発生部をさらに含み、前記電圧生成部は、前記波形発生部から発生した前記矩形波信号を積分することにより、前記交流電圧を生成する前記(1)乃至(3)に記載の検知装置。
(5)前記波形発生部を制御して、前記矩形波信号を構成する矩形波の振幅を変更させることにより、前記第1の傾き又は前記第2の傾きの少なくとも一方を調整する制御部をさらに含む前記(4)に記載の検知装置。
(6)前記電圧生成部は、外部から発生するノイズの周波数とは異なる周波数の前記交流電圧を生成する前記(1)乃至(5)に記載の検知装置。
(7)前記送信電極と前記受信電極は、画像を表示する表示部に内蔵されている前記(1)乃至(6)に記載の検知装置。
(8)前記信号生成部は、前記受信電極からの前記交流電流に基づいて、前記受信電極と直列に接続された抵抗で発生する電圧を、前記検知用信号として生成する前記(1)又は(2)に記載の検知装置。
(9)前記信号生成部は、前記受信電極からの前記交流電流に基づいて、前記交流電流と同じ大きさの他の交流電流を抵抗に供給することにより、前記抵抗の抵抗値と前記他の交流電流の電流値を用いて、前記抵抗で発生する電圧を、前記検知用信号として生成する前記(1)又は(2)に記載の検知装置。
(10)導電体の接近を検知する検知装置の検知方法において、前記検知装置は、送信電極と、前記送信電極に交差して配置された受信電極とを有し、前記送信電極と前記受信電極とが交差する交点に対する前記導電体の接近を検知するためのセンサ部を含み、前記検知装置による、第1の傾きによる電圧値の上昇と、前記第1の傾きとは異なる第2の傾きによる電圧値の下降とが交互に繰り返される交流電圧を生成する電圧生成ステップと、前記送信電極に前記交流電圧を印加することにより、前記交流電圧の電圧値が上昇中であるときには前記第1の傾きに応じた一定の電流値とされ、前記交流電圧の電圧値が下降中であるときには前記第2の傾きに応じた一定の電流値とされる交流電流を、前記受信電極に生成する電流生成ステップと、前記受信電極に生成された交流電流に基づいて、前記交点と前記導電体との距離に応じた振幅で振動する検知用信号を生成する信号生成ステップと、前記検知用信号の振幅に基づいて、前記交点に対する前記導電体の接近を検知する検知ステップとを含む検知方法。
(11)導電体の接近を検知する検知装置であって、送信電極と、前記送信電極に交差して配置された受信電極とを有し、前記送信電極と前記受信電極とが交差する交点に対する前記導電体の接近を検知するためのセンサ部を含む検知装置のコンピュータを、第1の傾きによる電圧値の上昇と、前記第1の傾きとは異なる第2の傾きによる電圧値の下降とが交互に繰り返される交流電圧を生成する電圧生成部と、前記送信電極に前記交流電圧を印加することにより、前記交流電圧の電圧値が上昇中であるときには前記第1の傾きに応じた一定の電流値とされ、前記交流電圧の電圧値が下降中であるときには前記第2の傾きに応じた一定の電流値とされる交流電流を、前記受信電極に生成する電流生成部と、前記受信電極に生成された交流電流に基づいて、前記交点と前記導電体との距離に応じた振幅で振動する検知用信号を生成する信号生成部と、前記検知用信号の振幅に基づいて、前記交点に対する前記導電体の接近を検知する検知部として機能させるためのプログラム。
(12)表示部に対する導電体の接近を検知する表示装置において、送信電極と、前記送信電極に交差して配置された受信電極とを有し、前記送信電極と前記受信電極とが交差する交点に対する前記導電体の接近を検知するためのセンサ部と、第1の傾きによる電圧値の上昇と、前記第1の傾きとは異なる第2の傾きによる電圧値の下降とが交互に繰り返される交流電圧を生成する電圧生成部と、前記送信電極に前記交流電圧を印加することにより、前記交流電圧の電圧値が上昇中であるときには前記第1の傾きに応じた一定の電流値とされ、前記交流電圧の電圧値が下降中であるときには前記第2の傾きに応じた一定の電流値とされる交流電流を、前記受信電極に生成する電流生成部と、前記受信電極に生成された交流電流に基づいて、前記交点と前記導電体との距離に応じた振幅で振動する検知用信号を生成する信号生成部と、前記検知用信号の振幅に基づいて、前記交点に対する前記導電体の接近を検知する検知部と、前記センサ部と一体的に構成され、画像を表示する表示部とを含む表示装置。
【0252】
上述した一連の処理は、例えばハードウェアにより実行することもできるし、ソフトウェアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータに各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0253】
[コンピュータの構成例]
図18は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータとしての制御部25のハードウェアの構成例を示している。
【0254】
CPU(Central Processing Unit)201は、ROM(Read Only Memory)202、又は記憶部208に記憶されているプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM(Random Access Memory)203には、CPU201が実行するプログラムやデータ等が適宜記憶される。これらのCPU201、ROM202、及びRAM203は、バス204により相互に接続されている。
【0255】
CPU201にはまた、バス204を介して入出力インタフェース205が接続されている。入出力インタフェース205には、キーボード、マウス、マイクロホン等よりなる入力部206、ディスプレイ、スピーカ等よりなる出力部207が接続されている。CPU201は、入力部206から入力される指令に対応して各種の処理を実行する。そして、CPU201は、処理の結果を出力部207に出力する。
【0256】
入出力インタフェース205に接続されている記憶部208は、例えばハードディスクからなり、CPU201が実行するプログラムや各種のデータを記憶する。通信部209は、インターネットやローカルエリアネットワーク等のネットワークを介して外部の装置と通信する。
【0257】
また、通信部209を介してプログラムを取得し、記憶部208に記憶してもよい。
【0258】
入出力インタフェース205に接続されているドライブ210は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等のリムーバブルメディア211が装着されたとき、それらを駆動し、そこに記録されているプログラムやデータ等を取得する。取得されたプログラムやデータは、必要に応じて記憶部208に転送され、記憶される。
【0259】
コンピュータにインストールされ、コンピュータによって実行可能な状態とされるプログラムを記録(記憶)する記録媒体は、
図18に示すように、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini-Disc)を含む)、もしくは半導体メモリ等よりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア211、又は、プログラムが一時的もしくは永続的に格納されるROM202や、記憶部208を構成するハードディスク等により構成される。記録媒体へのプログラムの記録は、必要に応じてルータ、モデム等のインタフェースである通信部209を介して、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線又は無線の通信媒体を利用して行われる。
【0260】
なお、本明細書において、上述した一連の処理を記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0261】
さらに、本開示は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。