(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または2に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、少なくとも1つのKIR2DL1、KIR2DL2およびKIR2DL3の、HLA-CクラスI分子への結合をブロックする単離された単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
請求項1〜3の何れか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメント体であって、HLA-Cw4分子のKIR2DL1への結合、およびHLA-Cw3分子の少なくとも1つのKIR2DL2およびKIR2DL3への結合をブロックする単離された単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
請求項1〜4の何れか1項に記載の単離された単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、HLA-CクラスI分子を発現しているヒト標的細胞に対するNK細胞の溶解活性を増強する単離された単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
請求項6記載の単離された単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、KIR2DL1、KIR2DL2およびKIR2DL3の各々との結合において、配列番号15で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と配列番号17で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域とを具備する抗体と競合する単離された抗体またはそのフラグメント。
請求項1〜7の何れか1項記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、KIR2DL1、KIR2DL2およびKIR2DL3の各々との結合において、配列番号15で表されるアミノ酸配列に少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と配列番号17で表されるアミノ酸配列に少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域とを具備する抗体と競合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
請求項1〜12の何れか1項に記載の単離された単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、KIR2DL1、KIR2DL2およびKIR2DL3の少なくとも一つの結合において、配列番号39で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域と配列番号41で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域とを具備する抗体と競合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
請求項1〜15の何れか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、KIR2DL1に対して0.45nM以下の解離定数(Kd)を有する単離された抗体またはそのフラグメント。
請求項1〜16の何れか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、KIR2DL3に対して0.025nM以下のKdを有する単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
請求項1〜17の何れか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、アミノ酸残基L38, R41, M44, F45, N46, D47, T48, L49, R50, I52, F64, D72, Y80, P87, およびY88を含んでいるKIR2DL1エピトープと結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
請求項1〜18の何れか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号23で表されるアミノ酸配列を有するKIR2DL1ポリペプチドの細胞外部分の残基M44、F45、およびD72へのHLA-Cw4分子の結合をブロックする単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
請求項1〜19の何れか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記抗体がモノクローナル抗体である単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
請求項1〜20の何れか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記抗体がIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体である単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
請求項1〜21の何れか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、前記抗体がIgG4抗体である単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
KIR抗体またはそのKIR結合フラグメントを産生する方法であって、前記抗-KIR抗体またはその抗原結合フラグメントの発現に適切な条件下で請求項25に記載の細胞を培養することを備える方法。
請求項1〜22の何れか1項に記載の単離された抗体またはその抗原結合フラグメントの患者におけるNK細胞の細胞毒性を検出可能な程度に増強するために効果的な量、および薬学的に許容される担体または賦形剤を含んでいる薬学的組成物。
請求項30に薬学的組成物であって、癌が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、偏平上皮過形成、白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫、バーキット(Burketts)リンパ腫、間葉起源の腫瘍、横紋筋肉腫、黒色腫、精上皮腫、奇形癌、神経芽細胞腫、神経膠腫、星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、神経鞘腫、繊維肉腫、骨肉腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、膀胱、乳房、大腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、頚部、甲状腺及び皮膚の癌腫、他のリンパ系の造血系腫瘍、他の骨髄系の造血系腫瘍、他の間葉起源の腫瘍または他の中枢神経系または末梢神経系の腫瘍から選択される薬学的組成物。
請求項30に記載の薬学的組成物であって、前記腫瘍は、T前リンパ球性白血病(T−PLL);小細胞及び脳細胞タイプのT−PLL;T細胞タイプの大型顆粒リンパ球白血病(LGL);;セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/d T−NHL肝脾リンパ腫;多形性及び免疫芽球性サブタイプの末梢/後胸腺T細胞リンパ腫;血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心性(鼻)T細胞リンパ腫;未分化(Ki 1+)大細胞リンパ腫;腸T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球型;及びリンパ腫/白血病(T−Lbly/T−ALL)から選ばれる薬学的組成物。
請求項29に記載の薬学的組成物であって、前記被験者は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、単純疱疹ウイルスI(HSV−1)、単純疱疹ウイルス2(HSV−1)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パピローマウイルス、パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、エキノウイルス、アルボウイルス、ハンタウイルス(huntavirus)、コクサッキーウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、ヒト免疫不全症候群ウイルスI型およびヒト免疫不全症候群ウイルス2型(HIV−1、HIV−2)から選ばれるウイルスにより引き起こされる感染症を罹患している患者である薬学的組成物。
請求項29に記載の薬学的組成物であって、前記被験者は、過形成、繊維症、血管形成、乾癬、アテローム性動脈硬化、血管形成術後の狭窄又は再狭窄及び血管中の平滑筋により特徴づけられる他の疾患を罹患している患者である薬学的組成物。
請求項29に記載の薬学的組成物であって、前記被験者は、ブドウ球菌(Staphylococcus);連鎖球菌(Streptococcus yogenesを含む);腸球菌(Enterococcl);棹菌(Bacillus anthracis)、ラクトバシルス(Lactobacillus);リステリア菌(Listeria);ジフテリア菌(Corynebacteriumdiphtheriae);ガルドネレラ属(Gardnerella vaginalis);ノカルジア菌(Nocardia);ストレプトミセス(Streptomyces);サーモアクチノミセス・ブルガリス(Thermoactinomycesvulgaris);トレポネーマ(Treponema);カンピロバクター菌(Camplyobacter)ラエルジノーザ(Raeruginosa);レジオネラ(Legionella);ナイセリアゴノロエア(Neisseria gonorrhoea)、ナイセリアメニンジチデス(Neisseria meningitides);フラボバクテリウムメイゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)、フラボバクテリウムオドラターン(Flavobacterium odoraturn);ブルセラ(Brucella);ボルデテラペルツシス(Bordetella pertussis、ボルデテラブロンチセプチカ(Bordetella bronchiseptica);エシェリキアコリEscherichia coli)、クレブシエラ菌(Klebsiella);エンテロバクター(Enterobacter)、セラチアマルセセン(Serratia marcescen)、セラチアリケファシエン(Serratia liquefaciens);エドワードシエラ属(Edwardsiella);プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウスバルガリス(Proteus vulgaris);ストレプトバシラス属(Streptobacillus);リケッチアフィケッツフィ(Rickettsiacea fickettsfi)、クラミジアプシタッチ(Chlamydia psittaci)、クラミジアトラコルナチス(Chlamydia trachornatis);マイコバクテリウムツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)、マイコバクテリウムイントラセルラレ(Mycobacterium intracellulare)、マイコバクテリウムフォルチターン(Mycobacterium folluiturn)マイコバクテリウムラプラエ(Mycobacterium laprae)、マイコバクテリウムアビウム(Mycobacterium avium)、マイコバクテリウムボビス(Mycobacterium bovis)、マイコバクテリウムアフリカヌム(Mycobacterium africanum)、マイコバクテリウムカンサッシ(Mycobacterium kansasii)、マイコバクテリウムイントラセルラレ(Mycobacterium intracellulare)およびマイコバクテリウムレプラルニウム(Mycobacterium lepraernuriumを含む)、他のブドウ球菌(Staphylococcus)、他の棹菌(Bacillus)、他の棹菌(Bacillus)、他のガルドネレラ属(Gardnerella)、他のシュードモナス(Pseudomonas)、他のナイセリア(Neisseria)、他のフラボバクテリウム(Flavobacterium)、他のボルデテラ(Bordetella)、他のエシェリキア属(Escherichia)、他のセラチア(Serratia)、他のプロテウス属(Proteus)、他のリケッチア科(Rickettsiaceae)、他のクラミジア(Chlamydia)、他のマイコバクテリウム(Mycobacterium)、リーシュマニア、コクジディオア(kokzidioa)、トリパノソーマ(Trypansome)および リケッチア(Rickettsia)により引き起こされる感染症を罹患している患者である薬学的組成物。
異なるKIR2DL遺伝子産物と交叉反応しKIRの阻害活性を減少または中和する単離された抗KIR抗体またはその抗原結合フラグメントを産生する方法であって、以下の工程を備える方法;
(a)KIR2DLポリペプチド含む免疫原で、ヒト以外の哺乳動物を免疫する工程;
(b)前記免疫された動物から、前記KIR2DLポリペプチドを結合する抗体を調製する工程;
(c)少なくともKIR2DL1、KIR2DL2およびKIR2DL3遺伝子産物と交叉反応する、(b)の抗体を選択する工程と;
(d)NK細胞を増強する(c)の抗体を選択する工程であって、;免疫された哺乳動物が、ヒト抗体レパートリーを発現するように操作された、ヒト以外のトランスジェニック動物であるならば、選択された抗体は、ヒト抗体である、工程;および
(e)免疫された哺乳動物が、ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されたトランスジェニック動物でないならば、工程(d)で選択された前記抗体のキメラ抗体またはヒト化抗体バリアントを産生する工程。
【発明を実施するための形態】
【0049】
[発明の記載]
本発明は、阻害性のKIRsに結合する新規の交差反応性の中和抗体の産生に基づくものであり、前記抗体はヒト集団中の大抵の又は全ての個体中のNK細胞の効果的な活性化を認容する。
【0050】
本明細書中に記載されるものは、例えば、KIR2DL1、KIR2DL2、およびKIR2DL3の全てに結合し、これらのKIRsとHLA−Cとの間の相互作用をブロックすることによってNK細胞の溶解活性を増強する抗体である。係る抗体は、本明細書中で「交差反応性で中和する抗KIR mAbs(cross-reactive and neutralizing anti-KIR mAbs)」と称される。
【0051】
特定の側面において、本発明は、新規の交差反応性、中和性、又は交差反応性で且つ中和性の両方の全体的にヒトの抗−KIR抗体、同様に係る抗体を含んでいる組成物、並びに係る抗体または組成物を用いた方法に関する。これらの抗体はヒト抗体1-7F9および1-4F1であり、2004年7月1日に出願されたPCT/DK2004/000470に記載されている(該文献は、本明細書中に参照によって、その全体が援用される)。
【0052】
本明細書中に記載された抗体、組成物、および方法は、とりわけ、KIRの療法上の変調(modulation)に、及び療法上のNK細胞の活性化に関連する現行の制限を克服し、付加的に有利な特性および利益を提供しえる。例えば、前記抗体は、複数の阻害性KIR群と交差反応し、それらの阻害性シグナルを減少させる又は中和することが可能であり、これによって係る阻害性KIRレセプターを発現しているNK細胞によるNK細胞の細胞毒性の増強を生じる。複数のKIR遺伝子産物と交差反応する能力によって、本発明の抗体を効率的に使用し、大抵の又は全てのヒトの被験者におけるNK細胞活性を、前記被験者のKIRまたはHLAタイプを事前に決定する負荷または費用をようすることなく増加させることが認容される。一態様において、前記抗体はKIR2DS4と結合しないので、活性化KIR2DS4レセプターの中和に関連するであろう刺激性ポテンシャルの減少が避けられる。付加的に又は代替的に、前記抗体は、KIR2DS3と結合しない。
【0053】
係る抗体から、様々な抗体断片および誘導体をも産生し、本発明の抗体に関して本明細書中で記載したことと同じ又は類似する目的のために使用することが可能である。また、抗体と関連して記載された本発明の側面は、他で記載しない限り又は文脈上明らかに矛盾しない限り、抗体断片および誘導体に同等(equally)に適用される。換言すれば、抗体に関連して本明細書中で記載される本発明の特徴は、他で記載しない限り、特異性の点に関して類似する機能性を有している抗体断片または誘導体に関連して、類似する特徴を記載すると暗示的(implicitly)に理解されるべきである。しかしながら、次の事項を認識すべきである;その事項とは、「完全長(full-length)」抗体および抗体「断片」は、彼等の生物学的および物理化学的な特性が有意に異なる限りは、本発明の別個の側面として特徴付けられることである。
【0054】
本発明の幾つかの抗体は「ヒト」と特徴付けられる。典型的には、これは前記抗体に対する、それらが投与されたヒト被験者による免疫応答に関するリスクが低い。一つの典型的な側面において、事実上全てのヒトにおいて、ヒトNK細胞の活性化を促進する単離された抗体が記載される。典型的な態様において、前記抗体は、ヒト抗体1-7F9またはヒト1-7F9-様抗体である。
【0055】
抗体、断片、又はそれらのうち何れかの誘導体は、NK細胞の表面で少なくとも2つの阻害性KIRレセプターと交差反応し、前記NK細胞の阻害性シグナルを減少または中和し、そして前記NK細胞の活性を増強させることができる。例えば、抗体、抗体断片、又は誘導体は、ヒトKIR2DLレセプターの共通の決定基と結合しえる場合、前記抗体、抗体断片、又は誘導体は少なくともKIR2DL1、KIR2DL2、およびKIR2DL3レセプターと結合する。本発明において、「KIR2DL2/3」という用語は、KIR2DL2及びKIR2DL3レセプターの一方又は両方を表す。
【0056】
本明細書中に記載したとおり、抗-KIR mAbsの1-7F9および1-4F1は、以前に作製された抗-KIR抗体に対して幾つかの利点を有している。例えば、1-7F9および1-4F1は完全にヒトであるので、被験者に一度投与された抗体に対する任意の免疫応答が減少される又は最小化される。さらにまた、1-7F9および1-4F1の双方は、以下に記載されたとおり、治療的な抗-KIR抗体に対する適切なアイソタイプのものである(それぞれ、IgG4およびIgG2)。また、1-7F9は、KIR2DL1、-2、および/または-3の何れかを発現するNK細胞による殺傷の誘導において、マウスのmAbs EB6、GL183、DF200、およびNKVSF1(Pan2D)よりもより効果的である。例えば、
図5および6に記載のとおり、1-7F9は、HLA-Cw4を発現した標的細胞のKIR2DL1発現NK細胞による特異的な溶解を、EB6、DF200またはNKVSF1(Pan2D)によるよりも高レベルで誘導する。1-7F9は、以前から知られた抗-KIR mAbsと比較して、KIRに高い親和性を有する。例えば、1-7F9は、KIR2DL1およびKIR2DL3に、それぞれ0,43nMおよび0.025nMの解離定数(Kd's)で結合する。この結果は、DF200などよりも両抗体に関して高い親和性を示している(例3および8を参照されたい)。マウス抗体NKVSF1(Pan2D)、A210、およびA208gとは対照的に、1-7F9および1-4F1はKIR2DS4に結合せず、これによって彼等を治療目的により適したものとなしている。NKVSF1(Pan2D)およびDF200のように、1-7F9および1-4F1もKIR2DS1およびKIR2DS2に結合するが、しかし、KIR2DS1およびKIR2DS2は抗白血病の有効性に重要であると信じられてはいない。本発明による特定の抗体は、1-7F9および/または1-4F1と同じ又は類似する抗原特異性を有している。例えば、1-7F9と同じ又は類似するVHおよびVL領域を具備している抗体は、1-7F9と同じ又は類似する抗原結合および/またはNK刺激特性を有しえる;また、1-4F1と同じ又は類似するVHおよびVL領域を具備している抗体は、1-4F1と同じ又は類似する抗原結合特性を有しえる。
【0057】
図14に示されるとおり、1-7F9のVLおよびVH領域のアミノ酸配列が決定された、即ち: 1-7F9 VL領域(配列番号15):
EIVLTQSPVTLSLSPGERATLSCRASQSVSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYDASNRATGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCQQRSNWMYTFGQGTKLEIKRT
1-7F9 VH領域(配列番号17):
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSFYAISWVRQAPGQGLEWMGGFIPIFGAANYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSDDTAVYYCARIPSGSYYYDYDMDVWGQGTTVTVSS
1-4F1 VLおよびVH領域のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号39および41に提供される。また、1-4F1 VLおよびVH領域をコード化しているヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号40および42に提供される。特定の態様において、配列番号39の残基3, 4, 9, 24, 32, 41, 47, 50, 55, 71, および74は、それぞれQ, L, S, R, A, G, L, D, E, F, およびAである。別の特定の態様において、配列番号39の残基3, 4, 9, 24, 32, 41, 47, 50, 55, 71, および74は、それぞれR, M, F, W, Y, A, F, Y, Q, Y, およびTである。
【0058】
図15に示されるとおり、1-7F9 CDRsのアミノ酸配列は、次のように同定された、即ち:軽鎖CDR1アミノ酸配列は、配列番号15の残基24〜34に対応する;軽鎖CDR2アミノ酸配列は、配列番号15の残基50〜56に対応する;軽鎖CDR3アミノ酸配列は、配列番号15の残基89〜97に対応する;重鎖CDR1アミノ酸配列は、配列番号17の残基31〜35に対応する;重鎖CDR2アミノ酸配列は、配列番号17の残基50〜65に対応する;および重鎖CDR3アミノ酸配列は、配列番号17の残基99〜112に対応する。1-4F1 CDRsのアミノ酸配列は、次のように同定された、即ち:軽鎖CDR1アミノ酸配列は、配列番号39の残基24〜34に対応する;軽鎖CDR2アミノ酸配列は、配列番号39の残基50〜56に対応する;軽鎖CDR3アミノ酸配列は、配列番号39の残基89〜97に対応する;重鎖CDR1アミノ酸配列は、配列番号41の残基31〜35に対応する;重鎖CDR2アミノ酸配列は、配列番号41の残基50〜66に対応する;および重鎖CDR3アミノ酸配列は、配列番号41の残基99〜113に対応する。
【0059】
1-7F9の軽および重鎖の全体に対するアミノ酸配列は、それぞれ配列番号36および37に提供される。
【0060】
従って、例えば、様々なヒト抗体サブクラス;抗体断片、抗体誘導体、および他のKIR結合ペプチド類の付加的な抗体は、この情報に基づいて、組換え技術などによって容易に作出することができる。例えば、一側面において、本発明は、それぞれ配列番号15および配列番号17から本質的になるVLおよびVH配列を有している抗体、および/または、それぞれ配列番号39および配列番号41から本質的になるVLおよびVH配列を有している抗体を提供する。別の側面において、本発明は、上記の1-7F9または1-4F1のVH CDR1〜3およびVL CDR1〜3から本質的になるCDR領域を具備している抗体を提供する。別の側面において、本発明は、次のCDR領域を具備している抗体を提供する:配列番号15の残基およそ24〜34に対応している軽鎖CDR1アミノ酸配列;配列番号15の残基およそ50〜56に対応している軽鎖CDR2アミノ酸配列;配列番号15の残基およそ89〜97に対応している軽鎖CDR3アミノ酸配列;配列番号17の残基およそ31〜35に対応している重鎖CDR1アミノ酸配列;配列番号17の残基およそ50〜65に対応している重鎖CDR2アミノ酸配列;配列番号17の残基およそ99〜112に対応している重鎖CDR3アミノ酸配列。別の側面において、本発明は、次のCDR領域を具備している抗体を提供する:配列番号39の残基およそ24〜34に対応している軽鎖CDR1アミノ酸配列;配列番号39の残基およそ50〜56に対応している軽鎖CDR2アミノ酸配列;配列番号39の残基およそ89〜97に対応している軽鎖CDR3アミノ酸配列;配列番号41の残基およそ31〜35に対応している重鎖CDR1アミノ酸配列;配列番号41の残基およそ50〜66に対応している重鎖CDR2アミノ酸配列;配列番号41の残基およそ99〜113に対応している重鎖CDR3アミノ酸配列。別の側面において、本発明は、次のアミノ酸配列を具備している抗体を提供する:配列番号15の残基24〜34から本質的になる軽鎖CDR1アミノ酸配列;配列番号15の残基50〜56から本質的になる軽鎖CDR2アミノ酸配列;配列番号15の残基89〜97から本質的になる軽鎖CDR3アミノ酸配列;配列番号17の残基31〜35から本質的になる重鎖CDR1アミノ酸配列;配列番号17の残基50〜6
5から本質的になる重鎖CDR2アミノ酸配列;配列番号17の残基99〜112から本質的になる重鎖CDR3アミノ酸配列。別の側面において、本発明は、次のCDR領域を具備している抗体を提供する:配列番号39の残基24〜34から本質的になる軽鎖CDR1アミノ酸配列;配列番号39の残基50〜56から本質的になる軽鎖CDR2アミノ酸配列;配列番号39の残基89〜97から本質的になる軽鎖CDR3アミノ酸配列;配列番号41の残基31〜35から本質的になる重鎖CDR1アミノ酸配列;配列番号41の残基50〜66から本質的になる重鎖CDR2アミノ酸配列;配列番号41の残基99〜113から本質的になる重鎖CDR3アミノ酸配列。
【0061】
本発明は、1-7F9または1-4F1のVHまたはVL配列と又はその中のCDR-領域と実質的に同一の少なくとも1つのバリアントのアミノ酸配列を含んでいる、抗KIR抗体、抗体断片、または抗体誘導体、またはKIR結合ポリペプチドをも包含する。バリアントのアミノ酸配列は、1-7F9または1-4F1のCDR、VH、またはVL領域と、少なくとも約 50, 80, 90, 95, 98,または99(例えば、約50〜99, 約65〜99, 約75〜99, または約85〜99)パーセント同一のアミノ酸配列、を含む又はから本質的になっていてもよい。バリアントのアミノ酸配列は、1-7F9または1-4F1のCDRsと、少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を含む又はからなる1、2、または3つのCDRsを、さらに(also)又は代替的(alternatively)に含んでいてもよい。以上より、一側面において、本発明は、配列番号15または配列番号39の残基24〜34と少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%同一である軽鎖CDR1アミノ酸配列;配列番号15または配列番号39の残基50〜56と少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%同一である軽鎖CDR2アミノ酸配列;配列番号15または配列番号39の残基89〜97と少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%同一である軽鎖CDR3アミノ酸配列;配列番号17または配列番号41の残基31〜35と少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%同一である重鎖CDR1アミノ酸配列;配列番号17の残基50〜65と又は配列番号41の残基50〜66と少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%同一である重鎖CDR2アミノ酸配列;配列番号17の残基99〜112と又は配列番号41の残基99〜113と少なくとも約80%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%同一である重鎖CDR3アミノ酸配列;を具備しているヒト抗体を提供する。係るバリアントのアミノ酸配列中に保持される1-7F9-又は1-4F1-由来KIR-結合アミノ酸配列(1-7F9- or 1-4F1-derived KIR-binding amino acid sequences)の基礎的な特性には、望ましくは1以上のKIRsに対する1-7F9又は1-4F1配列の特異性および/またはアビディティー(avidity)が含まれる。また、該特性には、KIR/HLA-C相互作用をブロックすること及びNK細胞の溶解活性を増強することにおける1-7F9の能力が、さらに又は代替的に含まれていてもよい。
【0062】
別の側面において、本発明は、1-7F9または1-4F1のKIR結合配列から、1以上のアミノ酸残基(例えば、少なくとも2, 3, 5, 少なくとも約10, 少なくとも約15, 少なくとも約20,少なくとも約25, 少なくとも約30, 少なくとも約35, 少なくとも約40, 少なくとも約50以上のアミノ酸残基)において、1以上の残基の挿入、欠失、および/または置換の様式により異なったKIR結合アミノ酸配列を含む、抗KIR抗体、抗体断片、又は抗体誘導体、又はKIR結合ポリペプチドを提供する。一態様において、係るバリアントKIR結合配列は、高い親和性;高い又は異なる特異性;低い免疫原性(前記配列に対する宿主応答の点で);高いインビボ安定性;および/または本来(native)の1-7F9又は1-4F1配列を具備している本質的に同一のアミノ酸配列に対するバリアント配列に他の有益な特性を与える。適切な配列バリエーションは、本明細書中の他でさらに記載される。抗KIR抗体、抗体断片、もしくは抗体誘導体、またはKIR結合ポリペプチドのKIR結合部分は、KIR結合を促進する及び/又は他の有利な物理化学的または免疫学的な特性を提供する、任意の適切な数の非アミノ酸成分または置換基(例えば、非アミノ酸有機成分)をも含んでもよい。
【0063】
本発明の幾つかの抗体は、1以上のKIRsに対する彼等の結合親和性によって、さらに又は代替的に特徴付けられてもよい。例えば、例3および8に示されるとおり、2価の結合に関して、DF200はKIR2DL1に関して約11nMのKd、およびKIR2DL3に関して約2.0nMのKd、並びに1-7F9はKIR2DL1に関して約0.43 nMのKd、およびKIR2DL3に関して約0,025nMのKdを有する。従って、一側面において、本発明は、KIR2DL1への2価結合が約20nM以下、約11nM以下、約5nM以下、約1nM以下、約0.5nM以下、約0.43nM以下のKdを有しているヒトまたは非ヒト(例えば、マウス、キメラ、またはヒト化)抗体を提供する。付加的に又は代替的に、本発明のヒトまたは非ヒト(例えば、マウス、キメラ、またはヒト化)抗体は、KIR2DL3に関して、約20nM以下、約2nM以下、約1nM以下、約0.1nM以下、または約0.05nM以下、または約0.025nM以下のKdを有していてもよい。特定の側面において、前記抗体は、KIR2DL1およびKIR2DL3に対する2価の結合に関して、1-7F9とほぼ同じKd値を有する。例13に示されるとおり、1価の結合に関して、1-7F9および1-4F1は、KIR2DL3に対してそれぞれ約3.5および7nMのKd-値を有する。従って、一側面において、本発明は、KIR2DL3への1価の結合が約20nM以下、約10nM以下、約7nM以下、約3.5nM以下のKdを有しているヒトまたは非ヒト(例えば、マウス、キメラ、またはヒト化)抗体を提供する。
【0064】
抗KIR抗体、抗体断片、もしくは抗体誘導体、またはKIR結合ポリペプチドは、選択的に及び/又は特異的に(典型的には、特異的に)少なくとも1つのKIR(より具体的には、少なくとも1つのKIRの抗原性決定領域またはエピトープ)に、適切な条件下(例えば、正常またはNK細胞関連の疾患状態において及び前記配列または組合せを含んでいる適切なタンパク質の背景において、ヒトの生理学的なコンディションに反映される、温度、pH、などに関して)で結合する。例えば、一側面において、本発明は、1-7F9、1-4F1もしくは1-7F9-または1-4F1-様抗体と競合する能力において(とりわけ)特徴付けることができる抗体、および同じものが関与する様々な方法に関する。本発明の他の抗体(および/または、本明細書中に記載される発明の方法の実施に有用であるもの)は、1以上の抗体DF200、抗体NKVSF1、抗体EB6、および抗体GL183と競合する能力を有していることにおいて、さらに又は代替的に特徴付けることができる。
【0065】
交差反応性および中和性の本発明の抗-KIR抗体、抗体断片、または誘導体は、KIRの阻害性活性を、MHCおよび/またはHLA分子の少なくとも2つの阻害性KIRレセプターへの結合を特異的に阻害すること及びNK細胞活性を促進することによって減少又は中和させる。この事項は、係る抗体、断片、または誘導体が、NK細胞の表面上に阻害性KIRを発現することを認容させて、その特定の阻害性KIRレセプターに関して対応しているHLAリガンド(例えば、特定のHLA抗原)を発現する細胞を溶解する能力を獲得することを意味している。1つの側面において、本発明は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3レセプターへのHLA−C分子の結合を特異的に阻害する抗体を提供する。別の側面において、本発明は、KIR2DL1および/またはKIR2DL2/3がHLA-Cに結合することを阻害する抗体を提供する。なお別の側面において、本発明は、インビボおよび/またはインビトロでのNK細胞活性を促進する抗体を提供する。
【0066】
少なくとも1つのKIR2DL1またはKID2DL2/3が、少なくとも約90%以上のヒト集団中に存在する。また、本発明のより好適な抗体は、これらのKIRの何れか又は両方を発現しているNK細胞の活性を増強する能力を有する。このため、本発明の組成物は、ほとんどのヒト個体において、典型的には、約90%以上のヒト個体において、NK細胞を効果的に活性化し、又は増強するために使用することができる。従って、本発明による単一の抗体組成物を、大抵のヒト被験者を治療するために使用することができ、KIR-またはHLA-対立遺伝子群を決定する又は2以上の抗-KIR mAbsの混合物またはカクテルを使用する必要はめったにない。
【0067】
一側面において、前記抗体は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3ヒトレセプターの双方に特異的に結合し、これらのKIRsによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を逆転させる。また、前記抗体は、ヒトであってもよく、モノクローナル抗体1-7F9および/または1-4F1と競合してもよい。「競合する(competes with)」という用語は、特定のペアの抗体(例えば、DF200、NKVSF1(Pan2D)、1-7F9、EB6、およびGL183から選択される1以上の抗体)に対して言及する場合、第1の抗体が、組換えKIR分子又は表面に発現されたKIR分子の何れかを用いた結合アッセイにおいて、第2の抗体(又は、他の分子)と検出可能に競合することを意味する。例えば、一側面において、特定の抗体ペアに関する阻害のパーセンテージが、どの抗体が第1の抗体として使用されたかにかかわらず約20%以上、約30%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上である場合、前記抗体は競合する。或いは、特定の抗体ペアに関する阻害のパーセンテージが少なくとも約29%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%に平均(average)される場合、前記抗体は競合する。第2の抗体のKIR2Dタンパク質への結合の第1の抗体による阻害のパーセンテージは、100*(1-(第2の抗体の検出された結合)/(第1の抗体の検出された結合))として計算することができる。同じ事項は、抗体断片および抗体誘導体に適用される。他で特定されない限り、1-7F9、1-4F1または1-7F9-または1-4F1-様抗体と「競合(competes)」する抗体は、ヒトKIR2DL1、ヒトKIR2DL2/3、またはヒトKIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方への結合に対し、1-7F9、1-4F1または1-7F9-または1-4F1-様抗体と競合しえる。例えば、前記抗体DF200は、KIR2DL3への結合に関して、1-7F9および1-4F1と競合する。
【0068】
必要に応じて、1-7F9または1-4F1と競合する抗体は、それぞれ1-7F9または1-4F1自身ではない(即ち、本発明は、これらのKIRsの1つ又は両方に結合することにおいて、1-7F9および/または1-4F1と競合する能力によって、とりわけ、特徴付けられる1-7F9および1-4F1以外の抗体を提供する)。
【0069】
別の側面において、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3ヒトレセプターの両方に結合し、これらのKIRsによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を減少させ又は中和させ又は逆転させ、KIR2DL1ヒトレセプター、KIR2DL2/3ヒトレセプター、又はKIR2DL1及びKIR2DL2/3ヒトレセプターの両方への結合に関して、1−7F9と競合する。必要に応じて、前記抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0070】
別の側面において、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3ヒトレセプターの両方に結合し、これらのKIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を減少させ、中和させ、又は逆転させ、並びにKIR2DL1ヒトレセプターへの結合についてEB6と競合し、又はKIR2DL2/3ヒトレセプターへの結合についてGL183および/またはDF200と競合し、又はKIR2DL1ヒトレセプターへの結合についてEB6と競合し且つKIR2DL2/3ヒトレセプターへの結合についてGL183および/またはDF200と競合する。一態様において、前記抗体は、NKVSF1(Pan2D)ではなく、A210ではなく、A803gではなく、および/または、DF200ではない。前記抗体は、例えば、マウスの、キメラの、ヒトの、又はヒト化された抗体である。
【0071】
別の側面において、前記抗体は、1-7F9または1-4F1のVHおよび/またはVL領域と少なくとも実質的に同一であるVH、VL、またはVHおよびVL領域両方を具備する。前記抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む任意のサブクラスのものであってもよい。特定の側面において、前記抗体は、ヒトIgG4抗体である。別の特定の側面において、前記抗体はヒトIgG2抗体である。前記抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0072】
別の側面において、前記抗体は、ヒト抗体であり、1-7F9または1-4F1と競合し、モノクローナル抗体1-7F9または1-4F1と、少なくとも部分的に同じ、又は同じ、KIR分子上のエピトープ又は「エピトープ部位」、を認識し、結合し、又は、に対して免疫特異性を有する。好ましくは、前記KIR分子は、ヒトKIR2DL1又はKIR2DL2/3レセプターである。
【0073】
別の側面において、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3ヒトレセプターの両方に存在する共通の決定基に結合し、これらのKIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を減少させる、中和する、又は逆転させる。前記抗体は、より具体的には、KIR上のモノクローナル抗体1-7F9と、少なくとも部分的に同じ、実質的に同じ、又は同じエピトープに結合することができる。
【0074】
特定の側面において、前記抗体は、1以上の上記の特性を呈示するモノクローナル抗体である。
【0075】
別の側面において、本明細書中に記載される抗体の機能的な断片および誘導体を、調製することが可能であり、これは実質的に類似する抗原結合、特異性および/または活性を有し、限定されることなく、Fab断片、Fab'2断片、イムノアドヘシン、ディアボディー、ラクダ抗体、ヤヌシン(Janusins)、ミニボディー(minibodies)、CDRs、およびScFv断片が含まれる。
【0076】
他で特定されない限り、抗体又はその2価の断片もしくは誘導体は、単一特異的(monospecific)である〔即ち、前記抗体、断片、又は誘導体の両方の「腕(arms)」は、同じ抗原(s)に結合する〕。
【0077】
なお、別の側面において、毒素、放射性核種、検出可能部分(例えば、蛍光)又は固相支持体に抱合され又は共有結合された本発明の抗体を含む抗体誘導体を、調製することができる。
【0078】
本発明は、上述されているような抗体、それらの断片、又はそれら何れかの誘導体を含んでいる薬学的組成物も包含する。従って、本発明は、医薬を製造するための方法における、本明細書に開示されている抗体の使用にも関する。好ましい態様において、前記医薬又は薬学的組成物は、癌若しくはその他の増殖性障害、感染症の治療用であり、又は移植に使用するためのものである。
【0079】
一側面において、本発明は、組成物〔例えば、薬学的な投与のために製剤化された組成物、係る組成物を調製するためのキット、アッセイのキットまたは培地、精製培地(purification media)、など〕に関し、該組成物は、少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIRレセプター遺伝子産物に結合し、少なくとも1つの前記2つの異なるヒト阻害性KIRレセプターを発現しているNK細胞による細胞毒性のKIR媒介性の阻害を中和する能力を有する(ここで、前記抗体は、リポソームに導入されている)。前記リポソームは、例えば、遺伝子治療のために遺伝子を送達するための核酸分子;NK細胞中の遺伝子を抑制するためのアンチセンスRNA、RNAi若しくはsiRNAを送達するための核酸分子;又はNK細胞を標的として殺傷させるための毒素若しくは薬物を含んでいてもよい。
【0080】
本明細書中に同様に記載されるものは、インビトロ、エキソビボ又はインビボで、ヒトNK細胞活性を制御する方法であって、効果的な量の本発明の抗体、係る抗体の断片、これらのうち何れかの誘導体又はこれらの何れかの少なくとも一つを含む薬学的組成物に、ヒトNK細胞を接触させることを備える方法である。好ましい方法は、効果的な量の本発明の薬学的組成物を投与することを備え、癌、感染性疾患又は免疫疾患を有している患者において、最も好ましくは、エキソビボ又はインビボで、ヒトNK細胞の細胞毒性活性を増加させることを目的する。例えば、投与は、適切な緩衝液中の前記抗体を静脈を介して、癌または感染性疾患(例えば、ウイルス疾患)を有する患者に輸液することによって達成することができる。
【0081】
本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIRレセプター遺伝子産物を結合する抗体と薬学的に許容される担体又は賦形剤とを含み、前記抗体が、前記2つの異なるヒト阻害性KIRレセプターのうち少なくとも一つを発現しているNK細胞において、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができ、前記抗体が、患者又はNK細胞を含む生物学的試料において、NK細胞の細胞毒性を検出可能に増強するのに有効な量で存在する、組成物も提供する。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基に結合する。本発明の抗体を含んでいる組成物は、必要に応じて、第2の治療剤〔前記抗体が投与されるコンディションまたは障害(例えば、癌、移植、感染性の疾患、ウイルス感染、などに関連するコンディション)に関連する宿主において、治療効果を誘導する、促進する、および/または強化する薬剤〕を更に含んでいてもよい。一側面において、係る組合せ組成物において、本発明の抗体と共投与することができる第2の治療剤は、例えば、免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管原性剤(anti-angiogenic agent)、アポトーシス剤、非-KIR抗原に特異的な第2の抗体、必要に応じて、阻害性KIRを結合する及び阻害する及び中和する又は阻害性KIRからのシグナリングを減少させる第2の抗体、抗感染剤、標的誘導因子、または補助剤(adjunct compound)から選択されえる。有利な免疫調節剤は、IL-1alpha, IL-1beta, IL-2, IL-3, IL-4, IL-5, IL-6, IL-7, IL-8, IL-9, IL-10, IL-11, IL-12, IL-13, IL-15, IL-21, TGF-beta, GM-CSF, M-CSF, G-CSF, TNF-alpha, TNF-beta, LAF, TCGF, BCGF, TRF, BAF, BDG, MP, LIF, OSM, TMF, PDGF, IFN-alpha, IFN-beta, またはIFN-gammaから選択され得る。前記化学療法剤の例には、アルキル化剤、代謝拮抗物質、細胞毒性抗生物質、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、マイトマシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、タキソール、タキソテール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシル(5FU)、シトシン アラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、メトトレキセート、カンプトテシン、アクチノマイシン−D、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、アミノプテリン、コンブレタスタチン、他のビンカアルカロイド及びそれらの誘導体またはプロドラッグが含まれる。ホルモン剤の例には、リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、タモキシフェン、トレミフェン、フルタミド、ニルタミド、シプロテロン、ビカルタミド アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、ファドロゾール メドロキシ、クロルマジノン、メゲストロール、他のLHRHアゴニスト、他の抗エストロゲン、他の抗アンドロゲン、他のアロマターゼ阻害剤及び他のプロゲスターゲンが含まれる。好ましくは、阻害性KIRレセプターに結合して、これを阻害する前記第二の抗体は、少なくとも二つの異なるヒト阻害性KIRレセプター遺伝子産物上に存在する共通の決定基を結合する前記抗体によって結合されるエピトープとは異なる阻害性KIRレセプターのエピトープに結合する抗体又は抗体の誘導体若しくは断片である。別の側面において、第2の抗体は、本発明の抗体の投与によって少なくとも部分的に治療可能である疾患状態(例えば、癌関連抗原、ウイルス関連抗原、など)に関連する標的に向けられたものであってもよい。
【0082】
本発明は、さらに、NK細胞活性を検出可能に増強することが必要とされる患者に、本発明の組成物を投与する工程を含む、NK細胞活性を検出可能に増強する方法を提供する。NK細胞活性の増強を必要とする患者は、このような増強が、治療効果を促進し、強化し、及び/又は誘導し得る(又は、疾患若しくは障害を有し、患者と実質的に同じような特徴を有する(例えば、臨床試験によって決定し得る)患者の少なくともかなりの割合において、このような効果を促進し、強化し、及び/又は誘導する)疾患又は障害を有すると診断された任意の患者であり得る。このような治療を必要とする患者は、例えば、癌、別の増殖性疾患、感染性疾患又は免疫障害に罹患し得る。好ましくは、前記方法は、免疫調節剤、ホルモン剤、化学療法剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、KIRとは異なる抗原に特異的な第2の抗体、必要に応じて、阻害性KIRレセプターに結合する及び阻害する及び中和する又は阻害性KIRからのシグナル伝達を減少させる第2の抗体、抗感染剤、標的誘導因子又は補助化合物から選択される、適切な付加的な治療剤を前記患者に投与する付加的な工程を備え、前記付加的な治療剤は、前記抗体ともに単一剤形(single dosage form)として、又は別個の剤形として、前記患者に投与される。抗体(又は抗体断片/誘導体)の投薬と追加の治療剤の投薬は、両者で、NK細胞活性の増強を含む前記患者における治療応答を検出可能に誘導し、促進し、及び/又は強化するのに十分である。別個に投与される場合、前記抗体、断片又は誘導体と前記付加的な治療剤は、検出可能な総合的な治療的有用性を患者にもたらす条件下で(例えば、タイミング、投薬の数に関して)、望ましく投与される。
【0083】
さらに、本発明によって包含されるのは、ヒト以外の霊長類、好ましくはサルのNK細胞及び/又はKIRレセプターを特異的に結合できる抗体である。候補医薬である本発明の抗体の毒性、投与量及び/又は活性又は効力を評価する方法も、包含される。一側面において、本発明は、NK細胞を有するヒト以外の霊長類レシピエンド動物に、本発明の抗体を投与し、前記動物に対する、又は、好ましくは標的組織に対する、前記薬剤の有毒な、又は有害な、又は不利な何らかの効果を評価することによって、動物又は標的組織に対して毒性がある抗体の用量を決定する方法を包含する。別の側面において、本発明は、NK細胞を有するヒト以外の霊長類レシピエンド動物に、本発明の抗体を投与し、前記動物に対する、又は、好ましくは標的組織に対する、前記薬剤の有毒な、又は有害な、又は不利な何らかの効果を評価することによって、動物又は標的組織に対して毒性がある抗体を同定する方法である。別の側面において、本発明は、感染、疾病又は癌の、ヒト以外の霊長類モデルに、本発明の抗体を投与し、前記感染、疾病若しくは癌又はそれらの症候を軽減する抗体を同定することによって、感染された疾病又は腫瘍の治療に有効である抗体を同定する方法である。1つの態様において、本発明の前記抗体は、(a)ヒトNK細胞の表面に存在する少なくとも2つの阻害性ヒトKIRレセプターと交叉反応し、及び(b)ヒト以外の霊長類のNK細胞又はKIRレセプターと交叉反応する抗体である。
【0084】
さらに、本発明によって包含されるのは、生物学的試料又は生物中で、細胞表面上に阻害性KIRを有するNK細胞の存在を検出する方法であって、
a)検出可能な部分に抱合され、又は共有結合されている本発明の抗体に、前記生物学的試料又は生物を接触させることと;
b)前記生物学的試料又は生物における前記抗体の存在を検出することと;を含む方法である。
【0085】
本発明は、細胞表面上に阻害性KIRを有するNK細胞を試料から精製する方法であって、
a)細胞表面上に阻害性KIRを有する前記NK細胞が前記抗体に結合できる条件下で、固相支持体(例えば、ビーズ、マトリックスなど)に抱合され、又は共有結合された本発明の抗体を前記試料に接触させることと;
b)固相支持体に抱合され、又は共有結合された前記抗体から、前記結合されたNK細胞を溶出することと;を含む方法も提供する。
【0086】
抗体NKVSF1(Pan2D)は、カニクイザルから得られたNK細胞にも結合することが明らかとなった(例10を参照されたい)。
【0087】
従って、本発明は、ヒトNK細胞の表面に存在する少なくとも2つの阻害性ヒトKIRレセプターと交叉反応し、さらにカニクイザル由来のNK細胞にも結合する抗体、並びにその断片及び誘導体を提供する。その一態様において、前記抗体は、NKVSF1ではなく、A210ではなく、および/または、A802gではない。本発明は、ヒトNK細胞の表面に存在する少なくとも2つの阻害性ヒトKIRレセプターと交叉反応する抗体並びにその断片及び誘導体の毒性を検査する方法であって、カニクイザルにおいて前記抗体を検査することを含む、方法も提供する。
【0088】
さらなる側面において、本発明は、抗体1-7F9または1-4F1の軽鎖可変領域又は一以上の軽鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又は抗体若しくは抗体断片の誘導体を提供する。さらに別の側面において、本発明は、1-7F9または1-4F1の軽鎖可変領域配列の全部又は実質的に全部と高度に類似している配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体若しくは抗体断片の誘導体を提供する。
【0089】
さらなる側面において、本発明は、抗体1-7F9または1-4F1の重鎖可変領域又は一以上の重鎖可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片又は抗体若しくは抗体断片の誘導体を提供する。さらに別の側面において、本発明は、1-7F9または1-4F1の重鎖可変領域配列の全部又は実質的に全部と高度に類似している配列を含む、抗体、抗体断片又は抗体若しくは抗体断片の誘導体を提供する。
【0090】
抗体
本発明は、ヒト阻害性KIRレセプター間で保存された共通の決定基(好ましくは、少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物上に存在するが、KIR2DS4上に存在しない決定基を含む)に結合し、これらのKIRレセプターのうち少なくとも1つを発現しているNK細胞の増強を引き起こす、新規抗体及びそれらの断片又は誘導体を提供する。本発明は、予想外の結果を示し、特にヒト対象において、NKをベースとした新規且つ効果的な療法に対する道筋を開く、このような交叉反応する中和抗体を作製し、NK細胞活性の変調に効果的に使用できることを初めて開示する。
【0091】
本発明において、「共通の決定基(common determinant)」とは、ヒト阻害性KIRレセプターの複数の遺伝子産物によって共有される決定基又はエピトープを表す。好ましくは、共通の決定基は、KIR2DLレセプターグループの少なくとも2つのメンバーによって共有される。より好ましくは、前記決定基は、少なくともKIR2DL1及びKIR2DL2/3によって共有される。本発明の幾つかの抗体は、KIR2DLタイプの複数の遺伝子産物を認識することに加えて、KIR3DLレセプターグループ(例えば、KIR3DL1および/またはKIR3DL2)の遺伝子産物など、他の阻害性KIR上に存在する決定基も認識する。決定基又はエピトープは、前記メンバーによって共有されるペプチド断片又はコンフォメーションエピトープを表し得る。より具体的な態様において、本発明の抗体は、モノクローナル抗体DF200によって認識されるエピトープと実質的に同じエピトープに特異的に結合する。この決定基は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3双方上にともに存在する。別の好適な態様において、本発明の抗体は、ヒトmAb 1-7F9によって認識される実質的に同じエピトープに、又はヒトmAb 1-4F1によって認識されるエピトープに特異的に結合する。該エピトープは、KIR2DL1、-2および-3上に存在するが、KIR2DS4上には存在しない。
【0092】
本明細書において使用される「抗体」という用語は、ポリクローナル及びモノクローナル抗体を表す他、特段の記載がなければ、又は明確に反対の記載がなければ、前記ポリクローナル及びモノクローナル抗体の断片及び誘導体も表す。重鎖中の定常ドメインの種類に応じて、完全長の抗体は、典型的には、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの1つに割り当てられる。これらのうち幾つかは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのように、サブクラス又はアイソタイプにさらに分けられる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ「α」、「δ」、「ε」、「γ」及び「μ」と称される。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配置は周知である。IgG及び/又はIgMは、生理的な状況において最も一般的な抗体であり、且つ実験室条件で最も簡単に作製されるので、本発明で使用される抗体の好ましいクラスである。典型的には、本発明において「抗体」は、モノクローナル抗体、より好ましくは「ヒト」モノクローナル抗体を意味する。
【0093】
本発明の一態様は、阻害性KIRとその対応しているHLAリガンドとのインビボでの相互作用を、治療目的でブロックする方法を提供し、これには内在性のNK細胞の活性化が関与する。係るセッティングにおいて、NK細胞の枯渇を避けることが有利であろう。というのも、枯渇させた場合、前記NK細胞は彼等の治療的に有用な効果を発揮することができないだろうからである。従って、抗体のアイソタイプ、IgG4およびIgG2などのFcレセプターへ若干の結合を呈示し、補体系を活性化しないものが、典型的には好適である。1-7F9のアイソタイプは、IgG4である。また、IgG2抗体は、一般的に非枯渇(non-depleting)であると考えられており、IgG4抗体よりもより安定な分子でありえる、このようなことからインビボでの長い半減期が付与される。1-4F1は、IgG2アイソタイプである。
【0094】
抗体産生
本発明の抗体は、当該技術で公知の様々な技術によって作製することができる。典型的には、本発明の抗体は、ヒト以外の動物、好ましくはマウスを、阻害性KIRポリペプチド、好ましくはKIR2DLポリペプチド、より好ましくはヒトKIR2DLポリペプチドを含む免疫原で免疫することによって作製される。前記阻害性KIRポリペプチドは、ヒト阻害性KIRポリペプチドの完全長配列、又はそれらの断片若しくは誘導体、典型的には免疫原性断片(すなわち、阻害性KIRレセプターを発現している細胞の表面上に暴露されるエピトープを含むポリペプチドの一部)を含み得る。このような断片は、典型的には、成熟したポリペプチド配列の少なくとも約7個、さらに好ましくは成熟したポリペプチド配列の少なくとも約10個の連続するアミノ酸を含有する。断片は、典型的には、レセプターの細胞外ドメインに実質的に由来する。さらに好ましいのは、完全長KIRDLポリペプチドの細胞外Igドメインの少なくとも一つ、より好ましくは両方を含み、KIR2DLレセプター中に存在する少なくとも一つのコンフォメーションエピトープを模倣することができるヒトKIR2DLポリペプチドである。他の態様において、前記ポリペプチドは、KIR2DL1ポリペプチドのアミノ酸ポジション1〜224の細胞外Igドメインの、少なくとも約8つの連続するアミノ酸を含む〔本明細書中にその全体が参照によって援用されるWagtmannら(Wagtmann et al., Immunity 1995;2:439-449)にしたがった、又は、World Wide Web(www)アドレスncbi.nlm.nih.gov/prow/guide/1326018082.htmで見つけられるPROWインターネットウェブサイトにしたがったアミノ酸の付番〕。
【0095】
一態様において、前記免疫原は、脂質膜中に、典型的には細胞の表面に、野生型KIR2DLポリペプチドを含む。具体的な態様において、前記免疫原は、無傷(intact)のNK細胞、特に無傷のヒトNK細胞を含む。別の態様において、前記細胞は、無傷のものでないように溶解されるか又は処理される。前記免疫原は、例えば、緩衝液(必要に応じて、完全フロイントアジュバントなどのアジュバント)中に、非ヒト哺乳類(例えば、マウス, ウサギ, ヤギ, ウマ, イヌ, ヒツジ, モルモット, ラット, ハムスター, など)への投与前に懸濁又は溶解することができる。
【0096】
ヒト以外の哺乳動物を抗原で免疫化する工程は、マウスでの抗体の産生を刺激するために、当該技術で周知の任意の様式で実施することができる(例えば、E. Harlow and D. Lane, Antibodies: A Laboratory Manual., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (1988)を参照されたい)。次いで、必要に応じて、完全フロイントアジュバントなどのアジュバントとともに、緩衝液中に、免疫原を懸濁し、又は溶解する。免疫原の量、緩衝液の種類及びアジュバントの量を決定する方法は、当業者に周知であり、いかなる意味においても、本発明を限定するものではない。これらのパラメータは、異なる免疫原については異なる場合があり得るが、容易に解明される。
【0097】
同様に、抗体の産生を刺激するのに十分な免疫化の位置及び頻度の選択に関する原理も、当該技術において周知である。例示的な免疫化プロトコールでは、1日目に、ヒト以外の動物に抗原を腹腔内注射し、約1週後に再度抗原を腹腔内注射する。この後、必要に応じて、不完全フロイントアジュバントなどのアジュバントとともに、20日目前後に、抗原のリコール注射(recall injections)を行う。リコール注射は、静脈内に行われ、連続数日間、反復することができる。その後、通例、アジュバントなしに、静脈内又は腹腔内の何れかで、40日目にブースター注射を行う。このプロトコールによって、約40日後に、抗原特異的抗体産生B細胞が産生される。免疫化に使用される抗原に対して誘導される抗体を発現するB細胞の産生をもたらす限り、他のプロトコールも使用することができる。
【0098】
ポリクローナル抗体の調製の場合、免疫されたヒト以外の動物から血清を得て、その中に存在する抗体を周知の技術によって単離する。阻害性KIRレセプターと反応する抗体を得るために、固相支持体に連結された上記免疫原の何れかを用いて、血清をアフィニティー精製することもできる。
【0099】
別の実施形態では、免疫化されていないヒト以外の哺乳動物からリンパ球を単離し、インビトロで増殖し、次いで、細胞培養において免疫原に曝露する。次いで、リンパ球を採集し、以下に記載された融合工程を実施する。
【0100】
モノクローナル抗体の場合、次の工程は、免疫されたヒト以外の哺乳動物から脾細胞を単離した後、これらの脾細胞を不死化された細胞と融合して、抗体を産生するハイブリドーマを形成させる。ヒト以外の哺乳動物からの脾細胞の単離は当該技術において周知であり、典型的には、麻酔されたヒト以外の哺乳動物から脾臓を取り出し、脾臓を小片に切断し、脾臓カプセル(splenic capsule)から細胞ろ過器のナイロンメッシュを通して、脾細胞を適切な緩衝液中に絞り取り、単一細胞の懸濁液を得る。細胞を洗浄し、遠心し、全ての赤血球を溶解する緩衝液中に再懸濁する。この溶液を再び遠心し、最後に、ペレット中に残存するリンパ球を新鮮な緩衝液中に再懸濁する。
【0101】
一旦単離され、単一の細胞懸濁液中に存在した時点で、リンパ球は不死化細胞株に融合することができる。これは、典型的には、マウスのミエローマ細胞株であるが、ハイブリドーマの作製に有用な他の多くの不死化細胞株も、当該技術において公知である。好ましいマウスのミエローマ株には、MOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍(Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, Calif. U.S.Aから入手可能)、又はX63、Ag8653及びSP−2細胞株(American Type Culture Collection, Rockville, Maryland U.S.Aから入手可能)から由来するものが含まれるが、これらに限定されるものではない。細胞融合は、ポリエチレングリコールなどを用いて行われる。次いで、得られたハイブリドーマを、融合されていない親ミエローマ細胞の増殖又は生存を阻害する1以上の物質を含有する選択培地中で増殖させる。例えば、親ミエローマ細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシル転移酵素(HGPRT又はHPRT)を欠如していれば、ハイブリドーマに対する培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の増殖を抑える物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含むであろう。
【0102】
ハイブリドーマは、典型的には、マクロファージの支持細胞上で増殖される。マクロファージは、脾細胞を単離するために使用されるヒト以外の哺乳動物の同腹仔から得ることが好ましく、典型的には、ハイブリドーマを播種する数日前に、不完全フロイントアジュバントなどで刺激される。融合法は、Goding(Monoclonal Antibodies: Principles and Practice," pp. 59-103 (Academic Press, 1986)に記載されており、参照により、その開示内容は本明細書に援用される。
【0103】
前記細胞は、コロニー形成と抗体産生に十分な時間、選択培地中で増殖させる。これは、通常、約7日から約14日の間である。次いで、複数の阻害性KIRレセプター遺伝子産物と交叉反応する抗体の産生について、このハイブリドーマコロニーをアッセイする。前記アッセイは典型的な比色定量的なELISAタイプのアッセイであるが、幾つかの他のタイプのアッセイで実施されてもよく、これには免疫沈降およびラジオイムノアッセイ、またはFACS、Biacore、シンチレーション近接アッセイ(SPA;Scintillation-proximity assays)、又は当該技術分野において既知の他のタイプのアッセイが含まれる。1以上の異なるハイブリドーマ細胞コロニーが存在するかどうかを決定するために、所望の特異性の抗体を含有しているウェルを調べる。二以上のコロニーが存在すれば、細胞を再度クローニングし、単一の細胞のみが、所望の抗体を産生するコロニーを確実に生じるように増殖させ得る。モノクローナル抗体が唯一つ検出され、産生されることが保証されるために、典型的には、単一の明白なコロニーを有する陽性細胞を再クローニングし、再アッセイする。
【0104】
好ましい実施形態において、本発明の適用可能な方法に従って抗体を作製するために使用される、ヒト以外の動物は、げっ歯類(例えば、マウス、ラットなど)、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどの哺乳動物である。また、ヒト以外の哺乳動物は、以下に記載されるとおり、XenomouseTM(Abgenix)又はHuMAb−MouseTM(Medarex)などの、「ヒト」抗体を産生するように、遺伝的に改変し、又は操作することができる。
【0105】
また、抗体は、所望の免疫グロブリンの重鎖および軽鎖配列に関するトランスジェニックである脊索動物(例えば、哺乳類または鳥)または植物の作出を介して及びそこから回収可能な形態で抗体を産生することを介してトランスジェニック的に産生されてもよい〔例えば、植物における抗体および抗体様タンパク質の産生に関して、Ma et al., Nature Rev. Genetics 4:794-805 (2003); Nolke et al., Expert Opin Biol Ther. 2003 Oct;3(7):1153-62; Schillberg et al., Cell Mol Life Sci. 2003 Mar;60(3):433-45; Tekoah et al., Arch Biochem Biophys. 2004 Jun 15;426(2):266-78; Fischer et al., Eur. J. of Biochem., 262(3):810 (1999); 及び米国特許出願20030084482を参照されたい〕。哺乳類におけるトランスジェニック作出に関連して、抗体及び他のタンパク質は、ヤギ、ウシ、または他の哺乳類のミルク中に産生され、そこから回収することができる。米国特許第5,827,690, 5,756,687, 5,750,172, および5,741,957号を参照されたい。また、抗体は、トリの卵で産生され、そこから回収されてもよい。例えば、Tiniら(Tini et al., Comp Biochem Physiol A Mol Integr Physiol. 2002 Mar; 131(3):569-74)および米国特許第4,550,019号を参照されたい。
【0106】
抗体は、例えば、Wardら(Ward et al., Nature, 341 (1989) p. 544)に開示されているように、免疫グロブリンのコンビナトリアルライブラリーを選択することによって作製することもできる。
【0107】
別の実施形態によれば、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIRレセプター遺伝子産物上に存在する決定基を結合して、前記レセプターの阻害性活性を中和することができる抗体を産生する、ヒト以外の宿主から得られるB細胞に由来するハイブリドーマを提供する。より好ましくは、本発明の該側面のハイブリドーマは、モノクローナル抗体NKVSF1、A210、および/またはA802gを産生するハイブリドーマではない。本発明の該側面に係るハイブリドーマは、ヒト以外の免疫された哺乳動物から得られる脾細胞を不死化細胞株と融合させることによって、上述のように作製することができる。この融合によって産生されたハイブリドーマは、本明細書の他の箇所に記載されているように、このような交叉反応抗体の存在に関してスクリーニングすることができる。好ましくは、前記ハイブリドーマは、少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物上に存在する決定基を認識し、これらのKIRレセプターのうち少なくとも一つを発現しているNK細胞の増強を引き起こす抗体を産生する。より好ましくは、前記ハイブリドーマは、1-7F9と実質的に同じエピトープ又は決定基に結合し、NK細胞活性を増強する又は1-4F1と実質的に同じエピトープと結合する抗体を産生する。最も好ましくは、前記ハイブリドーマは、モノクローナル抗体1-7F9を産生するハイブリドーマ 1-7F9であるか、又はモノクローナル抗体1-4F1を産生するハイブリドーマ 1-4F1である。
【0108】
本発明のモノクローナル抗体を産生することが確認されているハイブリドーマは、DMEM又はRPMI−1640などの、適切な培地中で、さらに大量に増殖させることができる。或いは、ハイブリドーマ細胞は、動物内の腹水癌として、インビボで増殖させることができる。
【0109】
所望のモノクローナル抗体を産生するまで十分に増殖させた後、モノクローナル抗体を含有している増殖培地(又は腹水液)を、細胞から分離することができ、そしてモノクローナル抗体が精製される。典型的には、精製は、プロテインA若しくはプロテインG−セファロース、又はアガロース又はセファロースビーズなどの固相支持体に連結された抗マウスIgを用いたクロマトグラフィーによって(全て、例えば、「Antibody Purification Handbook, Amersham Biosciences, publication No. 18-1037-46, Edition AC」に記載されており、その開示内容は、参照により、本明細書に援用される)、又はゲル電気泳動または透析などの他の既知の技術によって達成される。結合された抗体は、典型的には、低pH緩衝液(pH3.0以下のグリシン又は酢酸緩衝液)を使用することによって、プロテインA/プロテインGカラムから溶出され、抗体含有画分を直ちに中和する。必要に応じて、これらの画分をプールし、透析し、濃縮することができる。
【0110】
ヒト抗体
一側面において、本発明は、ヒト抗-KIR抗体を提供する。「ヒト(Human)」抗体は、「ヒト化(humanized)」抗体から区別することができる(これらは以下で別々に記載される)。係る「ヒト」抗体は、例えば、CDR3などのCDRsにおける、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列によってコード化されないアミノ酸残基を含み得る(例えば、ランダムな又は部位特異的な突然変異誘発をインビトロで又は体細胞突然変異をインビボで行うことによって導入される変異)。しかしながら、本明細書中で使用される「ヒト抗体(human antibody)」の用語は、ヒト化抗体またはヒト/マウスキメラ抗体であって、別の哺乳類種(例えば、マウス)の生殖系列から由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された該抗体を含まないことが意図される。
【0111】
ヒトIg遺伝子を保持するトランスジェニック動物を開発することができ、免疫に際して、マウスの免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体の完全なレパートリーを産生する。係るヒトIg-トランスジェニックマウスを用いて、ヒト抗体を産生することができる。係るヒト抗体を、ヒト免疫グロブリン遺伝子座および本来の免疫グロブリン遺伝子欠失を具備しているヒトIg-トランスジェニック動物(例えば、マウス, ラット, ヒツジ, ブタ, ヤギ, ウシ, ウマ, など)中で産生することができる〔例えば、XenoMouse TM(Abgenix- Fremont, CA, USA)中で〕〔例えば、Green et al. Nature Genetics 7:13-21 (1994); Mendez et al. Nature Genetics 15:146-156 (1997); Green and Jakobovits J. Exp. Med. 188:483-495 (1998); 欧州特許第EP0463151B1号; 国際特許出願番号WO94/02602, WO96/34096; WO98/24893, WO99/45031, WO99/53049, およびWO00/037504; および米国特許5,916,771, 5,939,598, 5,985,615, 5,998,209, 5,994,619, 6,075,181, 6,091,001, 6,114,598 および6,130,364を参照されたい〕、或いは、ヒトIg-コード化遺伝子のミニ遺伝子座(minilocus)を具備しているトランスジェニック動物〔例えば、HuMab-mouse TM (Medarex-Princeton, NJ, USA)〕中で産生することができる〔例えば、EP 0546073, EP0546073;米国特許第5,545,807, 5,545,806, 5,625,825, 5,625,126, 5,633,425, 5,661,016, 5,770,429, 5,789,650, 5,814,318, 5,591,669, 5,612,205, 5,721,367, 5,789,215, 5,643,763号; および国際特許出願番号WO 92/03918, WO 92/22645, WO 92/22647, WO 92/22670, WO 93/12227, WO 94/00569, WO 94/25585, WO 96/14436, WO 97/13852, およびWO 98/24884を参照されたい〕。係るトランスジェニックマウスからの脾細胞を使用して、本明細書中に記載される、周知の技術によりヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを産生することができる。類似する技術および原理は、例えば、Jakobovits等およびBruggemann等〔Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551-255 (1993); Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993);およびBruggemann et al., Year in Immuno., 7:33 (1993)〕に記載されている。
【0112】
更に、ヒト抗体又は他の種からの抗体は、当該技術分野において既知の方法を用いた、ファージディスプレイ、レトロウイルスディスプレイ、リボソームディスプレイ、および他の関連する技術を含む限定されないディスプレータイプの技術を介して作製することができる、そして結果的に得られた分子は、アフィニティーマチュレーションなどの付加的な成熟方法(maturation method)に供試しえる、係る技術も周知である〔例えば、(Hoogenboom et al ., J. Mol. Biol. 227: 381 (1991) (ファージディスプレイ); Vaughan, et al., Nature Biotech 14:309 (1996) (ファージディスプレイ); Hanes and Plucthau PNAS USA 94:4937-4942 (1997) (リボソームディスプレイ), Parmley and Smith Gene 73: 305-318 (1988) (ファージディスプレイ), Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991), Scott TIBS 17:241-245 (1992), Cwirla et al. PNAS USA 87:6378-6382 (1990), Russel et al. Nucl. Acids Research 21:1081-1085 (1993), Hoganboom et al. Immunol. Reviews 130:43-68 (1992), Chiswell and McCafferty TIBTECH 10:80-84 (1992), および米国特許第5,733,743号を参照されたい〕。ディスプレイ技術が利用されて、ヒトではない抗体が産生された場合、係る抗体はヒト化することができる(例えば、本明細書の他で記載したように)。
【0113】
従って、本明細書に記載したとおり、抗-KIR mAbsは、癌およびウイルス感染および他の疾患および障害の治療に関して有望な薬剤である。抗-KIR mAbsは、マウスのmAbsのヒト化、又はヒトIg-トランスジェニックマウス(XenoMouse, またはHuMabマウス)からの脾細胞の融合によって、ファージディスプレイによって、又はヒトAb-産生性B細胞の不死化によって、又は他の方法などの様々なアプローチによって作出しえる。何れの場合においても、前記抗体を、細胞株で産生し、そして製剤化、パッケージング、及び、それを必要とする患者への注射のために、適切な量で精製することが可能である。
【0114】
組換え型の産生
また、抗-KIR抗体を、酵母;または細菌の細胞培養(例えば、E. coli);又は真核生物の細胞培養(例えば、哺乳類細胞の培養)などの単細胞生物体中で、標準的な技術を用いて、組換え型を発現させることによって調製することができる。
【0115】
従って、別の態様によれば、少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIR上に存在する決定基に結合し、交差反応する及び中和する抗KIR抗体の重鎖および軽鎖をコード化しているDNAが、本発明のハイブリドーマから単離され、適切な宿主にトランスフェクションするために、適切な発現ベクター中に配置される。次いで、抗体、又はそれらのバリアント(ヒト化された様式のモノクローナル抗体、抗体の活性断片、又は抗体の抗原認識部分を含むキメラ抗体など)を組換え産生するために、宿主を使用する。好ましくは、本態様で使用されるDNAは、少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物上に存在するが、KIR2DS3または-4上には存在しない決定基を認識し、これらのKIRレセプターのうち少なくとも一つを発現するNK細胞の増強を引き起こす抗体をコードする。より好ましくは、前記DNAは、1-7F9と実質的に同じエピトープ又は決定基に結合して、NK細胞活性を増強する抗体をコードする。最も好ましくは、このDNAは、モノクローナル抗体1-7F9をコードする。
【0116】
本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて(例えば、マウスまたはヒトの抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定される。DNAを単離したら、DNAは発現ベクター中に配置することができ、次いで、発現ベクターを宿主細胞(トランスフェクションが行われていない状態で、免疫グロブリンタンパク質を産生しない、大腸菌細胞、サルのCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞など)中にトランスフェクションして、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成を得る。抗体の断片をコードするDNAの細菌中での組換え発現は、当該技術で周知である〔例えば、Skerra et al., Curr. Opinion in Immunol., 5, pp. 256 (1993);およびPluckthun, Immunol. Revs. 130, pp. 151 (1992)を参照〕。
【0117】
更に、既知の可変重(VH)および可変軽(VL)鎖およびヒト定常領域からの抗体の組換え型の産生は、例えば、次の著者等によって記載されている〔Ruker et al.(Annals of the New York Academy of Sciences. 1991;646:212-219), 彼はヒトモノクローナル抗HIV-1抗体のCHO細胞における発現を報告している;Bianchi et al.(Biotechnology and Bioengineering. 2003;84:439-444), 彼は完全長抗体の高レベル発現を、トランス補完性(trans-complementing)の発現ベクターを用いて行ったことを記載している;No Soo Kim et al.(Biotechnol. Prog. 2001;17:69-75), 彼はジヒドロ葉酸還元酵素が媒介する遺伝子増幅の間の、CHO細胞のヒト化抗体発現におけるクローン変動(clonal variation)の発生における重要な決定因子を記載している;King et al.(Biochemical Journal.1992;281:317-323), 彼はマウス―ヒトキメラ抗体およびキメラFab'断片の発現、精製、および特性決定を報告している;WO 2003064606は、ヒト重鎖およびヒト軽鎖可変領域を具備し、両者がFR1, CDR1, FR2, CDR2, FR3, CDR3 およびFR4配列を含む、単離されたヒトモノクローナル抗体を記載している;並びにWO2003040170は、ヒトCD40に特異的に結合し、活性化する、キメラ又はヒトモノクローナル抗体および抗原結合部分を記載している〕。
【0118】
ヒトIgGの定常領域をコード化している全cDNA配列は、2005年1月6日にアクセスされた以下のGenBankエントリー(その各々はその全体が参照によって援用される)中にみつけることができる:
ヒトIgG1定常重鎖領域:GenBankアクセッション#:J00228
ヒトIgG2定常重鎖領域:GenBankアクセッション#:J00230
ヒトIgG3定常重鎖領域:GenBankアクセッション#:X04646
ヒトIgG4定常重鎖領域:GenBankアクセッション#:K01316
ヒトカッパー軽鎖定常領域:GenBankアクセッション#:J00241
例示的な態様において、1-7F9または1-4F1のVHおよびVL配列から組換え型のmAb産生を生じさせるために、以下のプロトコールを適用することができる。工程1〜3は、1-7F9または1-4F1を産生しているハイブリドーマまたは他の細胞からのVHおよびVL領域の検索(retrieval)を記載している。対して、1-7F9または1-4F1のVHおよびVL配列(又はその変異体または誘導体)をコード化しているcDNA(工程4で使用される)は、
図14または15に提供される配列情報から、cDNA断片を合成するための樹立された技術を用いて用意することができる。或いは、1-7F9または1-4F1のVHおよびVL断片又はその突然変異体又は誘導体は、完全長の抗体を発現するために、所望のIgサブクラスの定常領域を含んでいる、幾つかの科学的な文献に記載された発現ベクター又は商業的に利用可能な発現ベクターの何れか1つにクローン化されてもよい。付加的に、1-7F9または1-4F1のVHおよびVL断片、又はその突然変異体又は誘導体は、抗体断片(例えば、Fab断片)を発現するために、切断型(truncated)の定常領域をコード化しているベクターにクローン化することができる。商業的に利用可能なベクターの一例は、ATCC(American Type Culture Collection, catalog number 87094)から商業的に利用可能なpASK84である。
【0119】
(1)トータルRNAのハイブリドーマ細胞からの単離:
ヒトKIRに対する抗体を分泌している、4x106のハイブリドーマ細胞(例えば、1-7F9または1-4F1)が、トータルRNAの単離に使用される。この操作はQiagenからのRNeasy Mini Kitを用いて製造者の説明書にしたがって行われ、その概要が以下に説明される:
前記細胞を、5min、1000rpmの遠心分離で沈殿させ、10μl/mlのβ-メルカプトエタノールを含有している350μlのRLT緩衝剤の添加によって破壊する。そのライセートを、QiagenからのQIAshredderカラムに移し、最高速度で2min遠心分離する。フロースルーを、等容量の70%エタノールと混合する。RNeasyスピンカラム(Qiagen)ごとに、700μlまでサンプルを適用し、14000rpmで遠心分離し、フロースルーを廃棄する。カラムを洗浄するために15s間、14000rpmで遠心されたカラムごとに、700μlのRW1緩衝剤を適用する。前記カラムは、500μlのRPE緩衝剤で2回洗浄され、14000rpmで15s遠心される。前記カラムを乾燥させるため、付加的に2min、14000rpmで遠心される。前記カラムは、新しい収集チュウブに移される。RNAは50μlのヌクレアーゼ フリーの水で溶出され、そして1min、14000rpmで遠心される。RNA濃度を、OD=260nmでの吸光度によって測定した。RNAは、必要とされるまで-80゜Cで保存される。
【0120】
(2)cDNA合成:
1μgのRNAを、SMART RACE cDNA Amplification Kit(Clontech)を用いた第1鎖のcDNA合成に使用した。5'-RACE-Ready cDNAの調製に関して、反応混合物が調製され、上記のとおり単離されたRNA、リバースプライマー5'-CDSプライマーバック(reverse-primer 5'-CDS primer back)、およびSMART II Aオリゴを含有している。そして、この混合液を、72゜Cで約2minインキュベートし、次に氷上で約2min冷却し、1xFirst-Strand緩衝剤、DTT(20mM)、dNTP(10mM)およびPowerScript逆転写酵素を添加した。反応混合物を、42゜Cで1.5時間インキュベートする。そして、トリシン-EDTA緩衝剤を添加し、72゜Cで7minインキュベーションした。このポイントで、サンプルを-20゜Cで保存することができる。
【0121】
(3)ヒト可変軽鎖(VL)およびヒト可変重鎖(VH)のPCR増幅およびクローニング:
1xAdvantage HF 2 PCR緩衝剤、dNTP(10mM)および1xAdvantage HF 2ポリメラーゼ混合物を含有しているPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)の反応混合物は、上記のとおり作出されたcDNAからのVLおよびVH双方の可変領域の別々の増幅に関して達成される。
【0122】
VLの増幅に関して、以下のプライマーが使用される:
UPM(ユニバーサル プライマー 混合物):
5'-CTAATACGACTCACTATAGGGCAAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT-3'(配列番号26)
5'-CTAATACGACTCACTATAGGG-3'(配列番号27)
VK RACE2:
5'-GCAGGCACACAACAGAGGCAGTTCCAGATTTC-3'(配列番号28)
VHの増幅に関して、以下のプライマーが使用される:
UPM(ユニバーサル プライマー 混合物):
5'-CTAATACGACTCACTATAGGGCAAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT-3'(配列番号29)
5'-CTAATACGACTCACTATAGGG-3'(配列番号30)
AB90RACE:
5'-GTGCCAGGGGGAAGACCGATGGG-3'(配列番号31)
PCRは、3ラウンド実施された。ラウンド1: PCRは、94゜Cで5sおよび72゜Cで3minを5サイクル実施された。ラウンド2: PCRは、94゜Cで5s、70゜Cで10s、および72゜Cで1minを5サイクル実施された。ラウンド3: PCRは、94゜Cで5s、68゜Cで10s、および72゜Cで1minを28サイクル実施された。
【0123】
前記PCR産物が1%アガロースゲル上での電気泳動法によって分析され、DNAがQIAEX11アガロースゲル抽出キット(Qiagenより)を用いてゲルから精製された。
【0124】
精製されたPCR産物は、TOPO TAクローニングキット(インビトロゲンより)を用いてPCR4-TOPOへと導入され、TOP10コンピテント細胞の形質転換のために使用された。
【0125】
コロニーの適切な量は、Taqポリメラーゼ、1xTaqポリメラーゼ緩衝剤、dNTP(10mM)および以下のプライマーおよびPCRプログラムを用いて、コロニーPCRによって分析された: M13フォワードプライマー:5'-GTAAAACGACGGCCAG-3'(配列番号32)
M13リバースプライマー:5'-CAGGAAACAGCTATGAC-3'(配列番号33)
PCRプログラム:
25サイクルを、94゜Cで30s、55゜Cで30s、および72゜Cで1min行った。
【0126】
各々、VLおよびVHの挿入物を具備しているクローンからのプラスミドDNAが、抽出され、上記のプライマーM13フォワードおよびM13リバースを用いて配列決定された。ヒト抗-KIR mAb 1-7F9の場合において、重鎖および軽鎖の可変領域をコード化している配列は、
図15に示される。
【0127】
(4)抗体遺伝子の哺乳類発現ベクターへのサブクローニング
前記mAbの重鎖および軽鎖の可変領域をコード化しているcDNAsに関する配列データに基づいて、プライマーがそれぞれ可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)遺伝子の増幅に関してデザインされた。可変領域は、PCRでフォーマットされて、コザック配列、リーダー配列およびユニークな制限酵素部位が含まれる。前記VLに関して、この事項は、5'PCRプライマーを、HindIII部位、コザック配列を導入し、可変軽鎖領域のリーダー配列の5'端に相同性であるように、デザインすることによって達成された。3'プライマーは、可変領域の3'末端と相同性であり、可変領域の3'境界(boundary)にBsiWI部位が導入された。前記VH領域は類似の様式で作製された。但し、NotIおよびNheI部位が、各々5'および3'端にHindIIIおよびBsiWIの代わりに導入された。
【0128】
増幅された遺伝子は、軽鎖および重鎖の定常領域を含有している真核生物の発現ベクターへと、標準の技術を用いて各々がクローン化された。VLのDNA断片は、HindIIIおよびBsiWIで消化され、アンピシリン抵抗性をコード化しているベータラクタマーゼ遺伝子および大腸菌複製開始点(pUC)を含んでいる真核生物性発現ベクターへと結合され;結果的に生じたプラスミドはVLCLと命名された。前記VHのDNA断片は、NotIおよびNheIで消化され、上記のVL断片の導入で生じたVLCLベクターへと導入された。結果的に生じたプラスミドは、同じプラスミド上に前記抗体の重鎖および軽鎖の双方をコード化している機能的な発現カセットを含んでいる。結合されたプラスミドを使用して、大腸菌が形質転換された。プラスミドDNAが、これらのアンピシリン耐性の細菌集団から調製され、チャイニーズハムスター卵巣細胞、又は他の哺乳類細胞株へのトランスフェクションに使用された。トランスフェクションおよび細胞培養は、例えば、Sambrookら("Molecular Cloning", Sambrook et al.)に記載の標準的な方法で行った。1-7F9もしくは1-4F1 ヒト抗-KIR mAb又は1-7F9もしくは1-4F1のVHおよびVL領域を含んでいるmAb、又は別のヒト抗-KIR mAbなどの所望の抗体を安定的に発現し、分泌するトランスフェクションされた細胞株が結果的に得られた。
【0129】
抗体のバリアントを、容易に作出することができる。例えば、それぞれ1-7F9または1-4F1と正確に同じ特異性を有するが、IgG4またはIgG2とは異なるアイソタイプの抗体は、1-7F9または1-4F1のVLおよびVHをコード化しているcDNAを、IgG1またはIgG2またはIgG3またはIgG4の定常重鎖領域から選択されるカッパ軽鎖定常領域および重鎖定常領域を含んでいるプラスミドへサブクローニングすることによって取得することができる。従って、作製された抗体は、任意のアイソタイプを有してもよい。また、前記抗体は、当該技術における通常の技術を用いて、アイソタイプをスイッチすることができる。係る技術には、直接的な組換え技術(例えば、米国特許4,816,397を参照されたい)、細胞―細胞融合技術(例えば、米国特許5,916,771を参照されたい)、および当該技術において既知の他の適切な技術の使用が含まれる。従って、本発明によって提供される抗体のエフェクター機能は、親抗体のアイソタイプに関して、治療的なものを含む様々な使用のために、例えば、IgG1, IgG2, IgG3, IgG4, IgD, IgA, IgE, 又はIgM抗体へのアイソタイプスイッチングによって「変化(changed)」されてもよい。
【0130】
さらなる側面において、本発明は、阻害性KIRポリペプチド上に存在するエピトープを含む抗原で免疫化された哺乳類宿主(典型的には、ヒト以外の哺乳動物宿主)から得られ、(b)不死化された細胞(例えば、ミエローマ細胞)に融合された(a)B細胞を含むハイブリドーマを提供し、該ハイブリドーマは、少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIRレセプターを結合し、且つ、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIRレセプターを発現するNK細胞の集団において、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を少なくとも実質的に中和することができるモノクローナル抗体を産生する。一態様において、前記哺乳類の宿主は、ヒト抗体を産生する能力のあるトランスジェニック動物である。必要に応じて、前記ハイブリドーマは、モノクローナル抗体のNKVSF1を産生しない、A210を産生しない、および/または、A802gを産生しない。多様な態様において、前記抗体は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3レセプターと又はKIR2DL1およびKIR2DL2/3の双方に存在する共通の決定基と結合する。前記ハイブリドーマは、ポジション80にLys残基を有するHLA−C対立遺伝子分子の、ヒトKIR2DL1レセプターへの結合及びポジション80にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子の、ヒトKIR2DL2/3レセプターへの結合を阻害する抗体を産生しえる。例えば、前記ハイブリドーマは、KIR2DL1又はKIR2DL2/3又はKIR2DL1及びKIR2DL2/3の両方の何れかの上の、モノクローナル抗体1-7F9または1-4F1と実質的に同じエピトープに結合する抗体を産生しえる。
【0131】
本発明は、複数のKIR2DL遺伝子産物と交叉反応し、かかるKIRの阻害性活性を減少させる又は中和する抗体を作製する方法であって、以下の工程を備える方法も提供する:
(a)KIR2DLポリペプチド含む免疫原で、ヒト以外の哺乳動物を免疫する工程と;
(b)前記免疫された哺乳動物から、前記KIR2DLポリペプチドを結合する抗体を調製する工程と;
(c)少なくとも2つの異なるKIR2DL遺伝子産物と交叉反応する、(b)の抗体を選択する工程と;
(d)NK細胞を増強する(c)の抗体を選択する工程。一態様において、前記ヒト以外の哺乳動物は、ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されたトランスジェニック動物である〔例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子座と固有の免疫グロブリン遺伝子の欠失を有するヒト以外の哺乳動物、XenomouseTM(Abgenix−Fremont,CA,USA)など、又はヒトIgをコードする遺伝子の微小遺伝子座(minilocus)を有するヒト以外の哺乳動物、HuMab−マウスTM(Medarex−Princeton,NJ,USA)など〕。必要に応じて、工程aおよびbは、抗-KIR mAbsを取得する代替的な方法によって置換されてもよく、これには限定されることなく、ファージディスプレイまたはヒトB細胞のウイルス導入の使用、又は当該技術において既知の他の方法が含まれる。必要に応じて、前記方法は、霊長類、好ましくはカニクイザルにおけるKIR、NK細胞又はKIRポリペプチドに結合する抗体を選択することをさらに含む。必要に応じて、本発明は、さらに、抗KIR抗体を評価する方法であって、上記方法に従って作製された抗体が、霊長類、好ましくはカニクイザルに投与され、好ましくは、前記サルが前記抗体の毒性の指標の有無について観察される方法を含む。
【0132】
本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIRレセプター遺伝子産物を結合する抗体を作製する方法であって、前記抗体が、前記少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIRレセプター遺伝子産物を発現しているNK細胞の集団による細胞毒性のKIRによって媒介される阻害を中和する(又は、NK細胞毒性を増強する)能力を有し、該方法は以下の工程:
a)阻害性KIRポリペプチド含む免疫原で、ヒト以外の哺乳動物を免疫する工程と;
b)前記免疫された動物から、前記KIRポリペプチドを結合する抗体を調製する工程と;
c)少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIRレセプター遺伝子産物と交叉反応する、(b)の抗体を選択する工程と;
前記少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIRレセプター遺伝子産物を発現しているNK細胞の集団に対する、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができる、(c)の抗体を選択する工程と;を備え、工程(c)及び(d)の順序が必要に応じて逆転され、任意の数の前記工程が必要に応じて一回もしくは複数回反復される、方法も提供する。免疫化に使用される阻害性KIRポリペプチドは、一態様において、1以上のKIR2DLポリペプチドおよび少なくともKIR2DL1及びKIR2DL2/3と交叉反応する工程(c)で選択される抗体であってもよい。好ましくは、前記抗体は、少なくとも2つの異なるKIRレセプター遺伝子産物上に存在する共通の決定基を認識し、最も好ましくは、前記KIRは、KIR2DL1及びKIR2DL2/3である。一態様において、工程(c)は、少なくとも1つのKIR2DL及び1つのKIR3DLレセプター遺伝子産物と反応する抗体を選択することを備える。例えば、選択された抗体は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3と、同様にKIR3DL1および/またはKIR3DL2と反応できるだろう。必要に応じて、前記方法は、霊長類、好ましくはカニクイザルのNK細胞又はKIRポリペプチドを結合する抗体を選択することをさらに含む。必要に応じて、本発明は、さらに、抗体を評価する方法であって、上記方法に従って作製された抗体が、霊長類、好ましくはカニクイザルに投与され、好ましくは、前記サルが前記抗体の毒性の指標の有無について観察される、方法を含む。
【0133】
必要に応じて、上記方法では、工程c)又はd)で選択される抗体はNKVSF1ではなく、A210ではなく、および/または、A802gではない。好ましくは、上記方法の工程(b)で調製される抗体は、モノクローナル抗体である。好ましくは、上記方法の工程(c)で選択される抗体は、80位にLys残基を有する1以上のHLA−Cアロタイプの、ヒトKIR2DL1受容体への結合及び80位にAsn残基を有する1以上のHLA−Cアロタイプの、ヒトKIR2DL2/3受容体への結合を阻害する。好ましくは、上記方法の工程(d)で選択される抗体は、NK細胞障害性における増強、又はNK細胞障害性のKIR媒介性の阻害の中和を生じる。好ましくは、前記抗体は、モノクローナル抗体1-7F9と実質的に同じ、KIR2DL1及び/又はKIR2DL2/3上のエピトープに結合する。必要に応じて、前記方法は、前記工程に加えて又は前記工程に代えて、選択されたモノクローナル抗体の断片を作製し、(例えば、放射性核種、細胞毒性剤、レポーター分子などに抱合することによって)選択されたモノクローナル抗体の誘導体を作製し、又はこのようなモノクローナル抗体の配列に対応する配列から生成され、若しくはこのようなモノクローナル抗体の配列に対応する配列を含む抗体断片の誘導体を作製する追加の工程を含む。別の側面において、係る抗体のバリアントは、上記の方法によって取得された抗体からのバリアントのアミノ酸配列(例えば、投与される宿主に関して、前記抗体の結合特性を変化させる、前記抗体の安定性を増加または減少させる、前記抗体の精製を強化する、前記抗体の検出を強化する、および/または前記抗体の免疫学的な特性を変化させる、ように修飾された配列)を含む抗体を、既知の遺伝的な操作方法を使用して調製することによって産生することができる。
【0134】
更に、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIRレセプター遺伝子産物を結合する抗体を作製する方法であって、前記抗体は、少なくとも1つの異なるヒト阻害性KIRレセプター遺伝子産物を発現しているNK細胞の集団における、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和する(又は、によるNK細胞毒性を増強する)ことができ、該方法は以下の工程:
(a)少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIR2DLレセプター遺伝子産物と交叉反応するモノクローナル抗体又は抗体断片を、ライブラリー又はレパートリーから選択する工程と;
(b)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIR2DLレセプター遺伝子産物を発現するNK細胞の集団における、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができる、(a)の抗体を選択する工程と;を備える方法をさらに提供する。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基に結合する。必要に応じて、工程(b)で選択される前記抗体は、NKVSF1でない。好ましくは、工程(b)で選択される抗体は、ポジション80にLys残基を有するHLA−C対立遺伝子分子の、ヒトKIR2DL1レセプターへの結合及びポジション80にAsn残基を有するHLA−C対立遺伝子分子の、ヒトKIR2DL2/3レセプターへの結合を阻害する。好ましくは、工程(b)で選択される前記抗体は、NK細胞毒性における増強を生じる。好ましくは、前記抗体は、モノクローナル抗体1-7F9と実質的に同じ、KIR2DL1及び/又はKIR2DL2/3上のエピトープに結合する。或いは、前記抗体は、モノクローナル抗体1-4F1と実質的に同じエピトープに結合する。必要に応じて、前記方法は、選択されたモノクローナル抗体の断片を作製する工程、選択されたモノクローナル抗体の誘導体を作製する工程、又は選択されたモノクローナル抗体断片の誘導体を作製する工程をさらに含む。
【0135】
さらに、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIRレセプター遺伝子産物を結合する抗体を作製する方法であって、前記抗体は、前記2つの異なるヒト阻害性KIRレセプター遺伝子産物の少なくとも1つを発現しているNK細胞の集団において、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができ、以下の工程:
a)前記モノクローナル抗体の産生が可能な条件下で、本発明のハイブリドーマを培養する工程と;
b)前記モノクローナル抗体を前記ハイブリドーマから分離する工程と;を備える方法を提供する。必要に応じて、前記方法は、前記モノクローナル抗体の断片を作製する工程、前記モノクローナル抗体の誘導体を作製する工程、又はかかるモノクローナル抗体断片の誘導体を作製する工程をさらに含む。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基に結合する。
【0136】
また、本発明は、少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIRレセプター遺伝子産物を結合する抗体を作製する方法であって、前記抗体が、前記2つの異なるヒト阻害性KIRレセプター遺伝子産物の少なくとも1つを発現しているNK細胞の集団において、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができ、以下の工程:
a)前記モノクローナル抗体をコードする核酸を、本発明のハイブリドーマから単離する工程と;
b)前記核酸を修飾して、前記モノクローナル抗体の機能的配列に対応するアミノ酸配列又は該アミノ酸配列に実質的に類似する(例えば、このような配列と少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%(約70から99%など)同一である)アミノ酸配列を含み、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、抗体の免疫反応性断片、又はこのような免疫反応性断片を含む融合タンパク質から選択される、修飾され又は誘導体化された抗体をコードする配列を含む修飾された核酸を取得する、必要に応じて実施される工程と;
c)前記核酸又は修飾された核酸(すなわち、同じアミノ酸配列をコードする関連核酸)を発現ベクター中に挿入し、適切な条件下で増殖された宿主細胞中に前記発現ベクターが存在するときに、前記コードされる抗体又は抗体断片が発現されることが可能である、工程と;
d)トランスフェクションがなければ、免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞に、前記発現ベクターをトランスフェクションする工程と;
e)前記抗体又は抗体断片の発現を引き起こす条件下で、前記トランスフェクションされた宿主細胞を培養する工程と;
f)前記トランスフェクションされた宿主細胞によって産生された抗体又は抗体断片を単離する工程と;を含む、方法が提供される。好ましくは、前記抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3上に存在する共通の決定基に結合する。
【0137】
抗体のスクリーニングおよび選択
本発明の特定の抗体は、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害、具体的には、KIR2DLレセプターによって媒介される阻害、より具体的には、少なくともKIR2DL1及びKIR2DL2/3媒介性阻害の両方による阻害を、減少させる又は中和することができる。このように、これらの抗体は、MHCクラスI分子と相互作用したときに、少なくとも部分的に且つ検出可能に、KIRレセプターによって媒介される阻害性シグナル伝達経路を、減少させる、中和する、および/またはブロックするという意味で、「中和(neutralizing)」、「ブロッキング(blocking)」又は「阻害性(inhibitory)」抗体である。より重要なことは、これらの抗体が高い効力で大抵の又は全てのヒト対象に使用できるように、この中和活性が、幾つかのタイプの阻害性KIRレセプター、好ましくは幾つかのKIR2DLレセプター遺伝子産物、より好ましくは少なくともKIR2DL1とKIR2DL2/3の両方に対して表される。KIRによって媒介される、NK細胞の細胞毒性の阻害の中和は、本明細書中に記載される、標準のインビトロの細胞毒性アッセイなど、様々なアッセイ又は試験によって評価することができる。
【0138】
複数の阻害剤KIRレセプターと交叉反応する抗体がいったん同定されると、無傷のNK細胞中のKIRレセプターの阻害性効果を減少させる又は中和する能力について、抗体を検査することができる。特定のバリアントにおいて、HLA-Cを発現している標的のKIR2DL発現NK細胞による溶解を再構成する前記抗体の能力によって、中和活性を表すことができる。別の特定の実施形態では、抗体の中和活性は、KIR2DL1及びKIR2DL3(又は密接に関連するKIR2DL2)レセプターへのHLA−C分子の結合をブロックする又は減少させる抗体の能力によって定義され、さらに好ましくは、Cw1、Cw3、Cw7及びCw8から選択されるHLA−C分子の(又はポジション80にAsn残基を有する別のHLA−C分子の)、KIR2DL2/3への結合、および/または、Cw2、Cw4、Cw5及びCw6から選択されるHLA−C分子の(又はポジション80にLys残基を有する別のHLA−C分子の)、KIR2DL1への結合を変化させる抗体の能力として定義される。
【0139】
別のバリアントでは、本発明の抗体の中和活性は、本明細書に記載されている例に開示されているように、細胞に基づいた細胞毒性アッセイにおいて評価することができる。
【0140】
別のバリアントでは、NK細胞のサイトカイン産生(例えば、IFN−γ及び/又はGM−CSF産生)を刺激するために、試験抗体、及びNK集団のKIR分子によって認識される一つのHLA−C対立遺伝子を発現する標的細胞株とともに、NK細胞がインキュベートされるサイトカイン放出アッセイにおいて、本発明の抗体の中和活性を評価することができる。典型的なプロトコールでは、PBMCからのIFN−γ産生は、培養から約4日後に、フローサイトメトリーによる細胞表面及び細胞質内の染色及び分析によって、評価される。簡潔に述べると、Brefeldin A(Sigma Aldrich)は、少なくとも約4時間の培養の間、約5μg/mLの最終濃度で添加することができる。次いで、透過処理(IntraPrepTM、Beckman Coulter)及びPE−抗−IFN−γ又はPE−IgG1(Pharmingen)による染色の前に、抗CD3及び抗CD56 mAbとともに細胞をインキュベートすることができる。ポリクローナル活性化されたNK細胞からのGM−CSF及びIFN−γ産生は、ELISA (GM-CSF:DuoSet Elisa, R&D Systems, Minneapolis, MN;IFN-γ:OptE1A set, Pharmingen)を用いて、上清中で測定することができる。
【0141】
本発明の抗体は、KIRによって媒介される、NK細胞の細胞毒性の阻害を部分的に(即ち、減少)又は完全に中和し得る。例えば、本発明の好ましい抗体は、HLA-マッチ又はHLA-適合性の、又は自家の標的細胞集団(すなわち、前記抗体の不存在下で、NK細胞によって効果的に溶解されないと思われる細胞集団)の溶解を誘導または増大(augment)することができる。従って、本発明の抗体は、インビボおよび/またはインビトロでNK細胞活性を促進すると定義することもできる。
【0142】
特定の実施形態において、前記抗体は、モノクローナル抗体DF200(ハイブリドーマDF200によって産生される)、1-7F9、または1-4F1と実質的に同じエピトープを結合する。係る抗体は、本明細書中でそれぞれ「DF200様抗体」、「1-7F9-様抗体」、及び「1-4F1-様抗体」と称される。さらに好ましい態様において、前記抗体はモノクローナル抗体である。より好ましくは、本発明の「DF200様抗体」は、モノクローナル抗体NKVSF1以外の抗体である。最も好適なものは、モノクローナル抗体1-7F9または1-4F1、並びに1-7F9または1-4F1のVHおよび/またはVL領域を含んでいる抗体である。
【0143】
本明細書に記載されているモノクローナル抗体と実質的に又は本質的に同じエピトープに結合する一又は複数の抗体を同定は、抗体の競合を評価することができる様々な免疫学的スクリーニングアッセイのうち任意の一つを用いて、容易に決定することができる。このような多数のアッセイは、一般的に実施され、当該技術で周知である(例えば、米国第5,660,827号を参照、1997年8月26日に付与、参照により、本明細書に明確に援用される)。本明細書に記載されているモノクローナル抗体と同じ又は実質的に同じエピトープに結合する抗体を同定するために、本明細書に記載されている抗体が結合するエピトープを実際に決定することは、全く必要でないことが理解されるであろう。
【0144】
例えば、検査すべき試験抗体が、異なる採取源の動物から取得されるか又は異なるIgアイソタイプの抗体である場合には、対照抗体(例えば、DF200)が試験抗体と混合され、KIR2DL1および/またはKIR2DL2/3(何れも、DF200によって結合されることが知られている)の何れか又は両方を含有する試料に与えられる、単純な競合アッセイを使用することができる。ELISA、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロッティングに基づくプロトコール、及びBIACOREの使用(例えば、本明細書の例の部に記載されているように)は、このような単純な競合研究での使用に適している。
【0145】
ある種の実施形態では、KIR抗原試料に与える前に、ある期間にわたって、様々な量の試験抗体(例えば、約1:1、1:2、1:10又は約1:100)を対照抗体(例えば、1-7F9または1-4F1)と予め混合するであろう。別の実施形態では、KIR抗原試料への曝露の間、対照抗体及び様々な量の試験抗体を単純に別々に添加し、混合することができる。結合した抗体を遊離抗体と区別することができ(例えば、非結合抗体を除去するために、分離又は洗浄技術を使用することによって)、及び対照抗体を試験抗体から区別することができる限り(例えば、種特異的若しくはアイソタイプ特異的二次抗体を用いることによって、又は検出可能な標識で特異的に標識されている対照抗体によって)、試験抗体が異なるKIR2DL抗原への対照抗体の結合を減少させるかどうかを決定することができ、このことから試験抗体が1-7F9と実質的に同じエピトープを認識することが示唆されるであろう。完全に無関係な抗体(KIRに結合しない)の存在下での(標識された)対照抗体の結合は、対照の高値としての役割を果たすことができる。対照の低値は、同じだが、非標識の対照抗体とともに、標識対照抗体をインキュベートすることによって取得することができ、この場合、競合が起こり、標識抗体の結合を減少させるであろう。試験アッセイでは、試験抗体の存在下において、標識された抗体の反応性が有意に減少することが、試験抗体が実質的に同じエピトープを認識する(すなわち、標識された対照抗体と競合する)ことの指標となる。例えば、約1:1または1:10から約1:100の間の任意の比の1-7F9:試験抗体または1-4F1:試験抗体で、1-7F9または1-4F1のKIR2DL1およびKIR2DL2/3抗原への結合を、少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、又は、より好ましくは少なくとも約70%(例えば、約65から100%)まで減少させる任意の試験抗体は、それぞれ1-7F9または1-4F1と実質的に同一のエピトープ又は決定基に結合する抗体と考えられる。好ましくは、係る試験抗体は、1-7F9の少なくとも1つの他のもの(好ましくは、KIR2DL抗原の各々)への結合を、前記試験抗体の非存在下で観察された1-7F9または1-4F1の結合の好ましくは少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約80%または少なくとも約90%(例えば、約95%)に減少させる。勿論、係る方法を適用して、他の抗体および/またはKIR抗原と競合する抗体を、同定および/または評価することができる。
【0146】
競合は、例えば、フローサイトメトリー試験によって、さらに又は代替的に評価することができる。このような試験では、所与のKIRを有する細胞は、最初に対照抗体(例えば、1-7F9または1-4F1)と、次に蛍光色素又はビオチンで標識された試験抗体とともにインキュベートすることができる。飽和量の対照抗体とともにプレインキュベーションを行った際に得られた結合が、対照抗体とのプレインキュベーションを行わない試験抗体によって得られる結合(蛍光を用いて測定される)の約80%、好ましくは約50%、約40%以下(例えば、約30%)であれば、抗体は、対照抗体と競合すると呼ばれる。あるいは、飽和量の試験抗体とともにプレインキュベーションを行った細胞に対して、(蛍光色素又はビオチンによって)標識された対照抗体を用いて得られた結合が、試験抗体とのプレインキュベーションを行わずに得られた結合の約80%、好ましくは約50%、約40%以下(例えば、約30%)であれば、抗体は、対照抗体と競合すると呼ばれる。
【0147】
試験抗体を予め吸着し、KIR2DL1もしくはKIR2DL2/3の何れか、又は両方が固定化されている表面に、飽和濃度で与えられる単純な競合アッセイも、有利に使用することができる。単純な競合アッセイにおける表面は、好ましくは、BIACOREチップ(又は表面プラズモン共鳴分析に適した他の媒体)である。対照抗体(例えば、1-7F9または1-4F1)のKIR-コートされた表面への結合が測定された。対照抗体単独のKIR含有表面への本結合を、試験抗体の存在下における、対照抗体の結合と比較する。試験抗体の存在下において、対照抗体によるKIR2DL1及びKIR2DL2/3含有表面の結合が有意に減少することが、試験抗体が対照抗体と「競合する」ように、試験抗体が対照抗体と実質的に同一のエピトープを認識することを示す。KIR2DL1及びKIR2DL2/3抗原の両方への対照抗体(例えば、1-7F9または1-4F1)の結合を、少なくとも約20%以上、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約70%以上まで減少させる任意の試験抗体は、対照抗体(例えば、1-7F9または1-4F1)と実質的に同じエピトープ又は決定基に結合する抗体と考えることができる。好ましくは、このような試験抗体は、KIR2DL抗原の各々への対照抗体(例えば、1-7F9または1-4F1)の結合を、少なくとも約50%(例えば、少なくとも約60%、少なくとも約70%以上)減少させるであろう。対照抗体と試験抗体の順序は入れ替えることができることが理解されるであろう。 すなわち、まず対照抗体を表面に結合することができ、次に試験抗体は、その後、競合アッセイにおいて、前記表面と接触される。第二の抗体(抗体は競合すると仮定する)について見られた結合の減少の程度がさらに大きくなると予想されるので、KIR2DL1およびKIR2DL2/3抗原に対してさらに高い親和性を有する抗体は、まず、KIR2DL1及びKIR2DL2/3含有表面に結合することが好ましい。このようなアッセイのさらなる例は、本明細書中の例、及び、例えば、「SaunalおよびRegenmortel(Saunal and Regenmortel, (1995) J. Immunol. Methods 183: 33-41)(参照により、その内容が本明細書に援用される)」に記載されている。
【0148】
例示のために、1-7F9または1-4F1に関して記載されているが、上記スクリーニングアッセイは、1以上のNKVSF1, DF200, EB6, GL183及び本発明による他の抗体、抗体断片、および抗体誘導体と競合する抗体を同定するために使用できることも理解されるであろう。
【0149】
脊椎動物又は細胞中で免疫化及び抗体の産生が行われたら、抗体を単離するために、特許請求の範囲に記載されているように、具体的な選択工程を実施することができる。この点に関して、具体的な実施形態において、本発明は、係る抗体を作製する方法にも関し、該方法は以下を備える:
a)阻害性KIR2ポリペプチド含む免疫原で、ヒト以外の哺乳動物を免疫する工程と;
b)前記免疫された動物から、前記KIR2DLポリペプチドを結合する抗体を調製する工程と;
c)少なくとも2つの異なる阻害性KIR遺伝子産物と交叉反応する、(b)の抗体を選択する工程と;
d)前記2つの異なるヒト阻害性KIRレセプター遺伝子産物の少なくとも1つを発現するNK細胞の集団に対して、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができる、(c)の抗体を選択する工程。
【0150】
特定の態様において、付加的な工程が、上記の工程(c)および(d)間で実施されて、KIR2DS4と反応しない抗-KIR mAbsが選択される。
【0151】
少なくとも2つの異なる阻害性KIR遺伝子産物と交叉反応する抗体の選択は、2以上の異なる阻害性KIR抗原に対する抗体をスクリーニングすることによって達成することができる。さらに好ましい実施形態において、工程(b)で調製される抗体はモノクローナル抗体である。このように、本明細書において使用される「前記免疫された動物から抗体を調製する」という用語には、免疫された動物からB細胞を取得すること、及び抗体を発現するハイブリドーマを産生するためにこれらのB細胞を使用すること、並びに免疫された動物の血清から抗体を直接取得することが含まれる。別の好ましい実施形態において、工程(c)で選択される抗体は、少なくともKIR2DL1及びKIR2DL2/3と交叉反応する抗体である。
【0152】
さらに別の好ましい実施形態では、工程(d)で選択された抗体は、同族のHLAクラスI分子を発現する標的細胞に対して、標準的なクロム放出アッセイで測定した場合に、抗-KIR mAbの非存在下での特異的溶解と比較して、前記抗体によって認識される少なくとも1つのKIRを呈示しているNK細胞によって媒介される少なくとも約10%多い特異的な溶解を、好ましくは少なくとも約40%多い特異的溶解、少なくとも約50%多い特異的溶解、又はより好ましくは、少なくとも約70%増加した特異的溶解(例えば、約60から100%増加した特異的溶解)を引き起こす。或いは、一若しくは数個の阻害性KIRを発現するNK細胞クローンと、NKクローン上のKIRの一つによって認識されるHLA対立遺伝子を少なくとも1つ発現する標的細胞とを使用するクロムアッセイで使用したときに、前記抗体を用いて得られた細胞毒性のレベルは、DF200の同じ濃度で又はブロッキング抗MHCクラスI抗体を同じエフェクター:標的細胞比で得られた特異的細胞毒性の、少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%以上となるべきである。
【0153】
直前に記載されている方法の工程(c)と(d)の順序は、変更することができる。必要に応じて、前記方法は、前記工程に加えて又は前記工程に代えて、例えば、本明細書の他の部分に記載されているように、前記モノクローナル抗体の断片を作製する工程又は前記モノクローナル抗体若しくはこのような断片の誘導体を作製する追加の工程をさらに含み得る。
【0154】
別のバリアントにおいて、本発明は、抗体を取得する方法をさらに提供し、該方法は以下を備える:
(a)少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIR2DLレセプター遺伝子産物と交叉反応するモノクローナル抗体、モノクローナル抗体の断片、又はそれらのうち何れかの誘導体を、ライブラリー又はレパートリーから選択する工程と;
(b)前記少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIR2DLレセプター遺伝子産物を発現するNK細胞の集団に対して、KIRによって媒介されるNK細胞の細胞毒性の阻害を中和することができる、(a)の抗体、断片又は誘導体を選択する工程。
【0155】
前記レパートリーは、任意の適切な構造(例えば、ファージ、細菌、合成複合体など)によって必要に応じて提示される、抗体又はその断片のあらゆる(組換え)レパートリーであり得る。阻害性抗体の選択は、上記に開示されているように、及び例においてさらに説明されているように、実施することができる。
【0156】
それらの公表されている結晶構造〔Maenaka et al. Structure with Folding and design 1999;7:391-398; Fan et al., Nature immunology 2001;2:452-460; Boyington et al. Nature, 2000;405:537-543〕に基づく、KIR2DL1、−2及び−3(KIR2DL1−3)の細胞外ドメインのコンピュータモデリングは、これらのKIRと抗KIR2DL交叉反応性マウスモノクローナル抗体DF200およびNKVSF1との間の相互作用において、特定の領域又はKIR2DL1、−2及び−3が関与していることを示した。このため、一実施形態において、本発明は、アミノ酸残基(105, 106, 107, 108, 109, 110, 111, 127, 129, 130, 131, 132, 133, 134, 135, 152, 153, 154, 155, 156, 157, 158, 159, 160, 161, 162, 163, 181, および192)によって規定される領域内で、KIR2DL1に専ら結合する抗体を提供する。別の実施形態において、本発明は、アミノ酸残基(105, 106, 107, 108, 109, 110, 111, 127, 129, 130, 131, 132, 133, 134, 135, 152, 153, 154, 155, 156, 157, 158, 159, 160, 161, 162, 163, 181, および192)によって規定される領域外のアミノ酸残基で相互作用することのない、KIR2DL1およびKIR2DL2/3に結合する抗体を提供する。
【0157】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1に結合し、及びR131(即ち、KIR2DL1変異体のポジション131でのArg残基)がAla(即ち、Alaで置換される)であるKIR2DL1の変異体に結合しない抗体を提供する。
【0158】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1に結合し、及びR157がAlaであるKIR2DL1の変異体に結合しない抗体を提供する。
【0159】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1に結合し、及びR158がAlaであるKIR2DL1の変異体に結合しない抗体を提供する。
【0160】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1残基に結合する抗体(131,157,および158)を提供する。
【0161】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DS3(R131W)に結合し、野生型KIR2DS3に結合しない抗体を提供する。
【0162】
特定の態様において、前記抗体は、Wagtmannら(Wagtmann et al., Immunity 1995;2:439-449)に記載されたナンバリングシステムによる、アミノ酸残基L38, R41, M44, F45, N46, D47, T48, L49, R50, I52, F64, D72, Y80, P87,およびY88〔アミノ酸を表記する文字は、1文字表記され、番号はKIR2DL1(配列番号23)における残基のポジションである〕によって規定される領域内でのみKIR2DL1と結合する。これらの残基は、1-7F9 KIR2DL1エピトープと同定された(例11を参照されたい)。
【0163】
別の態様において、前記抗体は、配列番号23のL38からY88の断片からなるKIR2DL1配列中の抗原エピトープに結合する。なお別の態様において、前記抗体は、配列番号23のL38からY88の断片を含むKIR2DL1配列中の抗原エピトープに結合する。
【0164】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1およびKIR2DL2/3と結合し、残基L38, R41, M44, F45, N46, D47, T48, L49, R50, I52, F64, D72, Y80, P87, およびY88で規定される領域の外側のアミノ酸残基と相互作用することのない抗体を提供する。
【0165】
別の態様において、前記抗体は、アミノ酸残基L38, R41, M44, F45, N46, D47, T48, L49, R50, I52, F64, D72, Y80, P87, および Y88の少なくとも10%, 20%, 30%, 40%, 50%, 60%, 70%, 80%, 90%以上を含んでいる領域内でKIR2DL1と結合する。特定の態様において、前記抗体に対するKIR2DL1エピトープは、アミノ酸残基M44およびF45を含む(例9および11を参照されたい)。
【0166】
別の態様において、前記抗体は、アミノ酸残基L38, R41, M44, F45, N46, D47, T48, L49, R50, I52, F64, D72, Y80, P87, およびY88の少なくとも1, 2, 4, 6, 8, 10, または12または全てを含んでいる領域内でKIR2DL1と結合する。特定の態様において、前記領域は、アミノ酸残基M44およびF45を含む、必要に応じて、L38, R41, N46, D47, T48, L49, R50, I52, F64, D72, Y80, P87, およびY88の少なくとも 1, 2, 4, 6, 8, 10または全てを含む。別の特定の態様において、前記領域は、1-7F9エピトープおよびHLA-C結合部位がオーバーラップするKIR2DL1領域中の、少なくともアミノ酸残基M44, F45, およびD72を含む。
【0167】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1, KIR2DL2/3, およびKIR2DS4に結合する抗体を提供する。
【0168】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3の両方に結合するが、KIR2DS4には結合しない抗体を提供する。
【0169】
別の実施形態において、本発明は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3の両方に結合するが、KIR2DS3に又はKIR2DS4には結合しない抗体を提供する。
【0170】
ある抗体、抗体断片、または抗体誘導体が、上記定義のエピトープ領域の一つの中で結合するかどうかの決定は、当業者に公知の方法で実施することができる。例えば、例9および11を参照されたい。このようなマッピング/性質決定法の別の例において、抗KIR抗体に対するエピトープ領域は、KIR2DL1又はKIR2DL2/3タンパク質中の露出したアミン/カルボキシルの化学的な修飾を用いた、エピトープ「フットプリンティング」によって決定され得る。このようなフットプリンティング技術の一つの具体例は、HXMS(質量分析法によって検出される、水素−重水素交換)の使用であり、HXMSにおいては、レセプター及びリガンドタンパク質のアミドプロトンの水素/重水素交換、結合及び逆交換が起こり、タンパク質結合に関与している骨格アミド基は、逆交換から保護されるので、重水素化されたままとなるであろう。この時点で、ペプシンによるタンパク質分解、高速小孔高性能液体クロマトグラフィー分離及び/又はエレクトロスプレイイオン化質量分析によって、該当する領域を同定することができる。例えば、Ehring〔Ehring H, Analytical Biochemistry, Vol. 267 (2) pp. 252-259 (1999)〕および/またはEngenら〔Engen, J.R. and Smith, D.L. (2001) Anal. Chem. 73, 256A-265A〕を参照されたい。適切なエピトープ同定技術の別の例は、核磁気共鳴エピトープマッピング(NMR)である。核磁気共鳴エピトープマッピング(NMR)においては、典型的には、遊離抗原及び抗原結合ペプチド(抗体など)と複合体を形成した抗原の、二次元NMRスペクトルのシグナルの位置が比較される。抗原は、典型的には、抗原に対応するシグナルのみが、NMRスペクトルに観察され、抗原結合ペプチドからのシグナルが観察されないように、15Nで選択的に同位体標識されている。抗原結合ペプチドとの相互作用に関与するアミノ酸から生じる抗原シグナルは、典型的には、遊離抗原のスペクトルと比べて、複合体のスペクトルにおける位置がシフトしており、このようにして、結合に関与するアミノ酸を同定することができる。例えば、文献〔Ernst Schering Res Found Workshop. 2004; (44):149-67; Huang et al, Journal of Molecular Biology, Vol. 281 (1) pp. 61-67 (1998); およびSaito and Patterson, Methods. 1996 Jun; 9(3):516-24〕を参照されたい。
【0171】
エピトープマッピング/特定は、質量分析法を用いて実施することも可能である。一般に文献(Downward, J Mass Spectrom. 2000 Apr; 35(4):493-503およびKiselar and Downard, Anal Chem. 1999 May 1; 71(9):1792-801)を参照されたい。
【0172】
エピトープマッピング及び同定においては、プロテアーゼ消化技術も有用であり得る。抗原性決定基関連領域/配列は、プロテアーゼ消化(例えば、37℃及びpH7から8でのo/n消化において、トリプシンをKIR2DL1又はKIR2DL2/3に対して約1:50の比率で使用することによって)の後に、ペプチド同定のため質量分析(MS)を行うことによって決定することができる。抗KIR抗体によってトリプシン切断から保護されたペプチドは、続いて、トリプシン消化を行った試料と、抗体とともにインキュベートされ、次いで、例えばトリプシンによる消化を行った試料(これにより、抗体に対するフットプリントが明らかとなる)とを比較するによって同定することができる。類似のエピトープ特定法では、キモトリプシン、ペプシンなどの他の酵素も使用することができ、又は他の酵素を代わりに使用することができる。さらに、酵素消化によって、KIR結合ポリペプチドに関して、潜在的な抗原決定基配列がKIR2DL1の領域内に存在するかどうかを分析するための簡易な方法を提供することができる。前記ポリペプチドが表面に暴露されない場合、免疫原性/抗原性に関連性がない可能性が高い。同様の技術の論述については、例えば、Manca(Manca, Ann Ist Super Sanita. 1991;27(1):15-9)を参照されたい。
【0173】
部位特異的突然変異誘発は、結合エピトープの解明に有用な別の技術である。例えば、「アラニンスキャンニング」において、タンパク質セグメント内の各残基は、アラニン残基で置換され、結合親和性に関する結果が測定された。前記変異によって結合親和性における有意な再吸引(resuction)が誘導される場合、結合に関与する可能性が高い。構造上のエピトープに特異的なモノクローナル抗体(即ち、未フォールドのタンパク質に結合しない抗体)を使用して、アラニン置換が前記タンパク質の全体的なフォールドに影響しないことを証明することができる。例えば、文献(Clackson and Wells, Science 1995; 267:383-386;およびWells, Proc Natl Acad Sci USA 1996; 93:1-6)を参照されたい。
【0174】
電子顕微鏡は、エピトープの「フットプリント法(foot-printing)」にも使用することができる。例えば、Wangら(Wang et al., Nature 1992;355:275-278)は、凍結電子顕微鏡(cryoelectron microscopy)、3次元イメージ再構成、およびX線結晶学を協調的に適用(coordinated application)することによって、本来のササゲモザイクウイルスのキャプシド表面上のFab断片の物理的なフットプリントを決定した。
【0175】
エピトープ評価に関する他の形態の「標識フリー(label-free)」アッセイには、表面プラズモン共鳴(SPR, BIACORE)および反射干渉分光学(RifS;reflectometric interference spectroscopy)が含まれる。例えば、文献(Fagerstam et al., Journal Of Molecular Recognition 1990;3:208-14; Nice et al., J. Chromatogr. 1993; 646:159-168; Leipert et al., Angew. Chem. Int. Ed. 1998; 37:3308-3311; Kroger et al., Biosensors and Bioelectronics 2002; 17:937-944)を参照されたい。
【0176】
抗体の断片および誘導体
本発明の抗体、好ましくは、1-7F9-または1-4F1様抗体の断片及び誘導体(別段の記載又は明確に反対の記載がなければ、本願で使用される「抗体」という用語に包含される)は、当該技術で公知である技術によって作製することができる。「免疫反応性断片(Immunoreactive fragments)」は、無傷の抗体の一部(一般的には、抗原結合部位又は可変領域)を含む。抗体断片の例には、「カッパーボディー(kappa bodies)」(例えば、Ill et al., Protein Eng 10: 949-57 (1997)を参照されたい)および「ヤヌシン(janusins)」(本明細書中の他にさらに記載される).Fab, Fab', Fab'-SH, F(ab)2, F(ab')2, dAb (Ward et al., (1989) Nature 341:544-546); VHドメインから本質的になる), Fd(VHおよびCH1ドメインから本質的になる), およびFv(VLおよびVHドメインから本質的になる)断片;ディアボディー;カッパーボディー;およびヤヌシンが含まれる。例えば、抗体断片には、連続するアミノ残基の一つの連続配列からなる一次構造を有するポリペプチド(本明細書において、「一本鎖抗体断片」又は「一本鎖ポリペプチド」と称される)、(1)一本鎖Fv(scFv)分子、(2)軽鎖可変ドメインを一つだけ含有する一本鎖ポリペプチド、又は軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有し、付随する重鎖部分を伴わないそれらの断片、及び(3)重鎖可変領域を一つだけ含有する一本鎖ポリペプチド、又は重鎖可変ドメインの3つのCDRを含有し、付随する軽鎖部分を伴わないそれらの断片が含まれるが、これらには限定されることない;並びに抗体断片から形成される多重特異性抗体(multispecific antibodies)が含まれる。例えば、Fab又はF(ab’)2断片は、従来の技術に従って、前記単離された抗体をプロテアーゼ消化することによって作製することができる。
【0177】
免疫反応性断片を、例えば、インビボでのクリアランスを遅らせ、より望ましい薬物動態特性を得るために、公知の方法を用いて修飾することが可能であることを理解できるであろう。例えば、前記断片は、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリオキシエチル化ポリオールで修飾されてもよい。PEGをFab’断片に連結し、部位特異的に抱合する方法は、例えば、「Leong et al, Cytokine 16(3):106-119 (2001) およびDelgado et al, Br. J. Cancer 73(2):175-182 (1996)」(その開示内容は、参照により、本明細書に援用される)に記載されている。
【0178】
特定の側面において、本発明は、
図14に示されている、1-7F9または1-4F1の軽鎖および/または重鎖の可変領域配列を含んでいる抗体、抗体断片、および抗体誘導体を提供する。別の側面において、本発明は、
図15に又は上記記載に示されている、1-7F9または1-4F1の一又は複数の軽鎖および/または重鎖の可変領域CDRを含む、抗体、抗体断片、及びその誘導体を提供する。係る配列の機能的なバリアント(variants)/アナログ(analogs)は、これらの開示されたアミノ酸配列中に、標準的な技術を用いて、適切な置換、付加及び/又は欠失を行うことによって作製することが可能であり、これには配列の比較が役に立つ場合がある。1-7F9/KIR2DL1複合体およびKIR2DL1/MHCクラスI複合体の結晶構造(Fan et al., Nat. Immunol. 2001; 2: 452-460)のスーパーインポーズ(superimposition)から(PDB-code 1IM9)、1-7F9のscFv誘導体がKIR2DL1へのMHCクラスI結合をブロックできることが結論づけられる。また、1-7F9の単一のL-鎖または1-7F9の単一のVLドメイン単独は、KIR2DL1に結合する場合に、MHCクラスI結合をブロックするだろう。
【0179】
係る配列の機能的なバリアント(variants)/アナログ(analogs)は、これらの開示されたアミノ酸配列中に、標準的な技術を用いて、適切な置換、付加及び/又は欠失を行うことによって作製することが可能であり、これには配列の比較が役に立つ場合がある。別の側面では、これらの抗体の一つの配列中に残基が存在するが、別の抗体には残基が存在しない位置は、欠失、置換及び/又は挿入に適切であり得る。
【0180】
あるいは、本発明の抗体(例えば、1-7F9-または1-4F1-様抗体)をコード化しているDNAは、本発明の断片をコードするように修飾しえる。次いで、本明細書中の他でさらに記載されるとおり、修飾されたDNAは発現ベクター中に挿入され、適切な細胞を形質転換し、又はトランスフェクションするために使用され、次いで、前記細胞が所望の断片を発現する。
【0181】
別の実施形態において、本発明のマウス抗体(例えば、DF−200様抗体)を産生するハイブリドーマのDNAは、例えば、相同な非ヒト配列に代えて、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインに対するコード配列を置換することによって〔Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81, pp. 6851 (1984)〕、発現ベクター中に挿入する前に修飾することができる。別の態様において、本発明の抗体をコード化している可変領域は、組換えDNA技術によって、免疫グロブリンコード配列全部へと又は非-免疫グロブリンポリペプチドのために前記コード配列の部分へと連結されてもよい。このように、元の抗体の結合特異性を有する「キメラ(chimeric)」又は「ハイブリッド(hybrid)」抗体が調製される。典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインの代用とされる。
【0182】
このように、別の実施形態によれば、本発明の抗体、好ましくはDF−200様抗体は、ヒト化される。本発明の抗体の「ヒト化された」形態は、特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又は、マウス免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、それらの断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2又は抗体の他の抗原結合部分配列など)である。通例、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、元の抗体の望ましい特異性、親和性及び能力を維持しつつ、元の抗体(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の事例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換されることができる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又は導入されたCDR若しくはフレームワーク配列中の何れにも存在しない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体性能をさらに改良し、最適化するために施される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には二つの可変ドメインの実質的に全てを含むであろう。ヒト化抗体中では、元の抗体のCDR領域に対応する全て又は実質的に全てのCDR領域及び全て又は実質的に全てのFR領域は、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、最適には、通例ヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も含むであろう。更なる詳細に関しては、文献〔Jones et al., Nature, 321, pp. 522 (1986); Reichmann et al., Nature, 332, pp. 323 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2, pp. 593 (1992)〕を参照のこと。
【0183】
本発明の抗体をヒト化する方法は、当該技術で周知である。一般的に、本発明のヒト化抗体は、元の抗体からヒト化抗体中に導入されたアミノ酸残基を一又は複数有する。これらのマウス又は他の非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、「移入(import)」残基と称され、通例、「移入」可変ドメインから採取される。ヒト化は、本質的に、Winter及び共同研究者の方法に従って、実施することができる〔Jones et al., Nature, 321, pp. 522 (1986); Riechmann et al., Nature, 332, pp. 323 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239, pp. 1534 (1988)〕。従って、このような「ヒト化」抗体は、元のマウス抗体由来の対応する配列によって、無傷のヒト可変ドメインが僅かに置換されているキメラ抗体である(Cabilly et al., U.S. Pat. No. 4,816,567)。実際、本発明のヒト化抗体は、典型的には、幾つかのCDR残基と、おそらくは幾つかのFR残基とが、元のマウス抗体中の類似の部位から得られる残基によって置換されているヒト抗体である。
【0184】
ヒト化抗体の製造に使用すべきヒト可変ドメインの選択(軽鎖及び重鎖ドメインの両方)は、抗原性を減少させるのに極めて重要である。いわゆる「ベストフィット(best-fit)」法によれば、本発明の抗体の可変ドメインの配列は、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに対してスクリーニングされる。次いで、マウスの配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体に対するヒトフレームワーク(FR)として受容される〔Sims et al., J. Immunol., 151, pp. 2296 (1993); Chothia and Lesk, J. Mol. Biol., 196, pp. 901 (1987)〕。別の方法は、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列から得られるフレームワークを使用する。同じフレームワークを、幾つかの異なるヒト化抗体に対して使用することができる〔Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89, pp. 4285 (1992); Presta et al., J. Immunol., 51, pp. 1993)〕。
【0185】
さらに、複数の阻害性KIR受容体に対する高親和性と他の好ましい生物特性とを保持しながら、抗体をヒト化することが重要である。この最終目標を達成するために、好ましい方法に従い、親配列及びヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列及び様々な概念上のヒト化産物の分析プロセスによって、ヒト化抗体が調製される。三次元免疫グロブリンモデルは、一般的に利用可能であり、当業者に周知である。選択された候補免疫グロブリン配列の予想三次元立体構造を描き、表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることによって、候補免疫グロブリン配列の機能において、残基が果たしていると思われる役割の解析、すなわち、候補免疫グロブリンの抗原への結合能に影響を与える残基の分析が可能となる。このように、所望の抗体特性(標的抗原に対する増加した親和性など)が達成されるように、コンセンサス配列及び移入配列から、FR残基を選択し、合体させることができる。一般に、CDR残基は、抗原結合に影響を与える上で、直接且つ最も大きく関与している。
【0186】
上記のとおり、「ヒト化」モノクローナル抗体を作製する方法には、XenoMouse(登録商標)(Abgenix, Fremont, CA)を使用する方法がある。XenoMouseは、機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子によって、マウスの免疫グロブリン遺伝子が置換されている、本発明にしたがったマウス宿主である。このため、本マウスによって産生される抗体、又は本マウスのB細胞から作製されるハイブリドーマ中で産生される抗体は、すでにヒト化されている。XenoMouseは、米国特許第6,162,963号(参照により、その全体が本明細書に援用される)に記載されている。HuMAb−MouseTM(Medarex)を用いて、類似の方法を行うことが可能である。
【0187】
ヒト抗体は、例えば、ヒト抗体レパートリーを発現するように操作された他のトランスジェニック動物を免疫化のために使用することによる〔Jakobovitz et al., Nature 362 (1993) 255〕、又はファージディスプレイ法を使用して抗体レパートリーを選択することによるなどの、様々な他の技術に従って作製することもできる。このような技術は当業者に公知であり、本願に開示されているモノクローナル抗体から出発して、実施することができる。
【0188】
本発明の抗体、好ましくは1-7F9-または1-4F1-様抗体は、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)(キメラ抗体においては、重鎖及び/又は軽鎖の一部は元の抗体中の対応する配列と同一又は相同であるが、鎖の残りは別の種に由来し、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一若しくは相同である)に誘導化することも可能であり、所望の生物活性を発揮する限りにおいて、かかる抗体の断片に誘導化することも可能である〔Cabilly et al., supra; Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81, pp. 6851 (1984)〕。
【0189】
本発明の範囲に属する他の誘導体には、機能化された抗体が含まれる、つまり、トキシン(リシン、ジフテリアトキシン、アブリン及びシュードモナスのエキソトキシンなど)に、又は治療的な放射性核種(例えば、90Yまたは131I)に;検出可能な部分(蛍光部分、診断上の放射性同位体又は造影剤など)に;又は固相支持体(アガロースビーズなど)などに抱合され又は共有結合されている抗体が含まれる。これらの他の因子を抗体に抱合又は共有結合させる方法は、当該技術で周知である。
【0190】
トキシンへの抱合は、その細胞表面上の交叉反応性KIR受容体の一つを提示するNK細胞を標的として殺傷させるのに有用である。本発明の抗体が、このような細胞の細胞表面に結合すると、抗体は内部に取り込まれて、細胞の内部でトキシンが放出され、その細胞を選択的に殺傷させる。このような使用は、本発明の別の実施形態である。
【0191】
本発明の抗体を診断目的で使用する場合には、検出可能な部分との抱合が有用である。このような目的には、その細胞表面上に交叉反応性KIRを有するNK細胞の存在について、生物学的試料をアッセイすること、及び交叉反応性KIRを有するNK細胞の存在を生物中に検出することが含まれるが、これらに限定されるものではない。このようなアッセイ法及び検出法も、本発明の別の実施形態である。
【0192】
固相支持体への本発明の抗体の抱合は、その細胞表面上に交叉反応性KIRを有するNK細胞を、生体液などの採取源からアフィニティー精製するためのツールとして有用である。この精製法は、本発明の別の実施形態であり、得られたNK細胞の精製集団も同様である。
【0193】
薬学的組成物および適用
本発明は、NK細胞の表面に存在する少なくとも2つの阻害性KIRレセプターと交叉反応し、それらの阻害性シグナルを減少させ又は中和し、これらの細胞の活性を増強するヒトまたはヒト化抗体、又はその断片及び誘導体を、任意の適切なビヒクル中に、患者又はNK細胞を含む生物試料中でNK細胞の細胞毒性を検出可能に増強するのに有効な量で、含む薬学的組成物も提供する。必要であれば、別の活性因子と共に使用される、本発明による使用のための、ヒトまたはヒト化抗-KIR mAbを含んでいる薬学的組成物は、薬学的に許容される担体または希釈剤で、同様に任意の他の既知のアジュバントおよび賦形剤で、従来技術〔例えば、Remington(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995)〕に開示された技術に従って処方し得る。前記組成物は、カプセル、錠剤、エアロゾル(aerosols)、溶剤または懸濁剤、又は凍結乾燥粉末としてなどの通常の形態であってもよい。
【0194】
以上のように、本発明の1つの課題は、ヒトまたはヒト化抗体又はその断片または誘導体(これは1mg/ml〜500mg/mlの濃度で存在する)を含んでいる薬学的製剤を提供することであり、該製剤は2.0〜10.0のpHを有している。前記製剤は、さらに緩衝系、保存剤、張性剤(tonicity agent)、キレート剤、安定化剤(stabilizer)および界面活性剤を具備してもよい。本発明の一態様において、薬学的製剤は水性製剤(即ち、水を含む製剤)である。係る製剤は、典型的には溶液または懸濁物である。本発明の更なる態様において、前記薬学的製剤は、水溶液である。本明細書において使用される、「水性製剤(aqueous formulation)」の用語は、少なくとも50% w/wの水を含んでいる製剤である。同様に、「水溶液(aqueous solution)」の用語は、少なくとも 50 %w/wの水を含んでいる溶液である。また「水性懸濁物(aqueous suspension)」の用語は、少なくとも 50 %w/wの水を含んでいる懸濁物である。
【0195】
別の態様において、前記薬学的製剤は、医師または患者によって使用前に溶媒および/または希釈剤が添加されるフリーズドライ製剤(freeze-dried formulation)である。
【0196】
別の態様において、前記薬学的製剤は、事前に溶解することなく使える状態の乾燥製剤(例えば、フリーズドライまたはスプレードライ)である。
【0197】
更なる側面において、本発明は、本明細書中に記載された抗体および緩衝剤の水溶液を含んでいる薬学的製剤に関し、該抗体は1mg/ml以上の濃度で存在し、該製剤は約2.0〜約10.0のpHを有する。
【0198】
別の態様において、前記製剤のpHは2.0, 2.1, 2.2, 2.3, 2.4, 2.5, 2.6, 2.7, 2.8, 2.9, 3.0, 3.1, 3.2, 3.3, 3.4, 3.5, 3.6, 3.7, 3.8, 3.9, 4.0, 4.1, 4.2, 4.3, 4.4, 4.5, 4.6, 4.7, 4.8, 4.9, 5.0, 5.1, 5.2, 5.3, 5.4, 5.5, 5.6, 5.7, 5.8, 5.9, 6.0, 6.1, 6.2, 6.3, 6.4, 6.5, 6.6, 6.7, 6.8, 6.9, 7.0, 7.1, 7.2, 7.3, 7.4, 7.5, 7.6, 7.7, 7.8, 7.9, 8.0, 8.1, 8.2, 8.3, 8.4, 8.5, 8.6, 8.7, 8.8, 8.9, 9.0, 9.1, 9.2, 9.3, 9.4, 9.5, 9.6, 9.7, 9.8, 9.9, および10.0からなるリストから選択される。
【0199】
更なる態様において、前記緩衝剤は、酢酸ナトリウム, 炭酸ナトリウム, シトレート,グリシルグリシン, ヒスチジン, グリシン, リジン, アルギニン, リン酸二水素ナトリウム(sodium dihydrogen phosphate), リン酸水素二ナトリウム(disodium hydrogen phosphate), リン酸ナトリウム, およびトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン, ビシン, トリシン, リンゴ酸, スクシナート, マレイン酸, フマル酸, 酒石酸, アスパラギン酸又はその混合物からなる群から選択される。これらの特定の緩衝剤の各々は、本発明の代替的な態様を構成する。
【0200】
更なる態様において、前記製剤は、さらに薬学的に許容される保存剤を含む。別の態様において、前記保存剤は、フェノール, o-クレゾール, m-クレゾール, p-クレゾール, メチル p-ヒドロキシルベンゾアート, プロピル p-ヒドロキシルベンゾアート, 2-フェノキシエタノール, ブチル p-ヒドロキシルベンゾアート, 2-フェニルエタノール, ベンジルアルコール, クロロブタノール, およびチメロサール(thiomerosal), ブロノポール,安息香酸, イミド尿素(imidurea), クロロヘキシジン(chlorohexidine), デヒドロ酢酸ナトリウム, クロロクレゾール, エチル p-ヒドロキシルベンゾアート, 塩化ベンゼトニウム, クロルフェネシン(3p-クロルフェノキシプロパン-1,2-ジオール)又はその混合物からなる群から選択される。一態様において、前記保存剤は、0.1 mg/ml〜20 mg/mlの濃度で存在する。別の態様において、前記保存剤は、0.1 mg/ml〜5 mg/mlの濃度で存在する。なお別の態様において、前記保存剤は、5 mg/ml〜10 mg/mlの濃度で存在する。さらに別の態様において、前記保存剤は、10 mg/ml〜20 mg/mlの濃度で存在する。リストされた特定の保存剤の各々は、本発明の代替的な態様を構成する。薬学的組成物における保存剤の使用は、当業者に周知であるが;文献〔Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995〕を参照されたい。
【0201】
更なる態様において、前記製剤は、等張化剤(isotonic agent)も含む。一態様において、前記等張化剤は、塩(例えば、塩化ナトリウム), 糖, 糖アルコール, アミノ糖, アミノ酸(例えば、L-グリシン, L-ヒスチジン, アルギニン, リジン, イソロイシン, アスパラギン酸, トリプトファン, スレオニン), アルジトール(例えば、グリセロール(グリセリン), 1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール), 1,3-プロパンジオール, 1,3-ブタンジオール), およびポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、又はその混合物からなる群から選択される。任意の適切な糖を使用してもよく、これは次のものを含むが、限定はされない;モノ-、ジ-、またはポリサッカライド;および水溶性のグルカン、例えば次のものが含まれる、果糖、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性のデンプン、ヒドロキシエチルスターチおよびカルボキシメチルセルロース-Na。一態様において、糖添加物は、スクロースである。糖アルコールは、少なくとも1つの-OH基を有しているC4-C8炭化水素と規定され、これには、例えば、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクティトール、ズルシトール(dulcitol)、キシリトール、およびアラビトールが含まれる。一態様において、糖アルコール添加物は、マンニトールである。上記の糖または糖アルコールは、個々に(individually)又は組み合わせて使用してもよい。糖または糖アルコールが液体調製中で可溶性で、本発明の方法を用いて達成された安定化効果に不利に影響しないかぎり、使用される量に定められた限度はない。一態様において、糖または糖アルコール濃度は、約 1 mg/mlおよび約150 mg/mlの間である。別の態様において、等張化剤は、1 mg/ml〜50 mg/mlの濃度で存在する。別の態様において、等張化剤は、1 mg/ml〜7 mg/mlの濃度で存在する。別の態様において、等張化剤は、8 mg/ml〜24 mg/mlの濃度で存在する。別の態様において、等張化剤は、25 mg/ml〜50 mg/mlの濃度で存在する。上記のリストの特定の等張化剤の各々は、本発明の代替的な態様を構成する。薬学的組成物における等張化剤の使用は、当業者に周知であるが;文献〔Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995〕を参照されたい。
【0202】
更なる態様において、前記製剤は、キレート剤(chelating agent)も含む。一態様において、前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、およびアスパラギン酸の塩、並びにその混合物から選択される。別の態様において、前記キレート剤は、0.1mg/ml〜5mg/mlの濃度で存在する。別の態様において、前記キレート剤は、0.1 mg/ml〜2 mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる態様において、前記キレート剤は、2 mg/ml〜5 mg/mlの濃度で存在する。これらの特定のキレート剤の各々は、本発明の代替的な態様を構成する。薬学的組成物におけるキレート剤の使用は、当業者に周知である。便宜のため、文献(Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995)を参照されたい。
【0203】
更なる態様において、前記製剤は、安定化剤(stabilizer)も含む。薬学的組成物における安定化剤の使用は、当業者に周知であるが;文献〔Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995〕を参照されたい。
【0204】
本発明の組成物は、例えば、安定化された液体薬学的組成物(liquid pharmaceutical compositions)であって、治療的に活性な成分が液体薬学的製剤中での貯蔵の間に凝集物形成を呈する可能性のあるポリペプチドを含む安定化された液体薬学的組成物であってもよい。「凝集物形成(aggregate formation)」は、オリゴマー(可溶性が残存しえる)、または溶液から沈殿した大きな可視の凝集物の形成を生じるポリペプチド分子間の物理的な相互作用を意図している。「貯蔵される間(during storage)」は、一度調製された液体薬学的組成物または製剤が被験者に即座に投与されないことを意図している。むしろ、調製に引続いて、それは被験者への投与に適切な、後の液体形態または他の形態への再構成のために、液体形態、凍結状態、又は乾燥形態への何れかでの貯蔵のためにパッケージされる。「乾燥形態(dried form)」は、液体薬学的組成物または製剤が、フリーズドライ(即ち、凍結乾燥;例えば、Williams and Polli (1984) J. Parenteral Sci. Technol. 38:48-59を参照されたい)、スプレードライ(Masters (1991) in Spray-Drying Handbook (5th ed; Longman Scientific and Technical, Essez, U.K.), pp. 491-676; Broadhead et al. (1992) Drug Devel. Ind. Pharm. 18:1169-1206; およびMumenthaler et al. (1994) Pharm. Res. 11:12-20を参照されたい)、又は空気乾燥(Carpenter and Crowe (1988) Cryobiology 25:459-470; およびRoser (1991) Biopharm. 4:47-53)の何れかにより乾燥されることを意図している。液体薬学的組成物の貯蔵間のポリペプチドによる凝集物形成は、そのポリペプチドの生物活性に不利に影響しえるものであり、前記薬学的組成物の治療上の有効性の欠損を生じる。さらにまた、凝集物形成は、ポリペプチド含有薬学的組成物が輸液システムを用いて投与されるときのチュービング(tubing)、膜、又はポンプの閉塞などの他の問題の原因となりえる。
【0205】
本発明の薬学的組成物は、前記組成物の貯蔵間のポリペプチドによる凝集物形成を減少させるために十分なアミノ酸塩基の量をさらに含んでもよい。「アミノ酸塩基(amino acid base)」は、任意の所与のアミノ酸が、その遊離塩基の形態(its free base form)又はその塩の形態(its salt form)の何れかで存在する、アミノ酸又はアミノ酸の組合わせを意図している。アミノ酸の組合わせが使用される場合、全てのアミノ酸は、それらの遊離塩基の形態で存在してもよい、全てがそれらの塩の形態で存在してもよい、又は幾つかがそれらの遊離塩基の形態で存在し、他方で他はそれらの塩の形態で存在してもよい。一態様において、本発明の組成物を調製することに使用するアミノ酸は、例えば、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸などの荷電側鎖を保持しているものである。特定のアミノ酸(メチオニン, ヒスチジン, イミダゾール, アルギニン, リジン, イソロイシン, アスパラギン酸, トリプトファン, スレオニン及びその混合物)の任意の立体異性体(即ち、LまたはD異性体、又はその混合物)又はこれらの立体異性体の組合わせは、特定のアミノ酸がその遊離塩基の形態又はその塩の形態の何れかで存在するかぎり、本発明の薬学的組成物に存在してもよい。一態様において、L-立体異性体が使用される。また、本発明の組成物は、これらのアミノ酸のアナログと処方されてもよい。「アミノ酸アナログ(amino acid analogue)」は、本発明の液体薬学的組成物の貯蔵間のポリペプチドによる凝集物形成を減少させる所望の効果を生じせしめる天然アミノ酸の誘導体(derivative)を意図している。適切なアルギニンアナログには、例えば、アミノグアニジン(aminoguanidine)、オルニチンおよびN-モノエチルL-アルギニンが含まれる、適切なメチオニンアナログには、エチオニンおよびブチオニン(buthionine)が含まれる、並びに適切なシステインアナログには、S-メチル-Lシステインが含まれる。他のアミノ酸と同様に、アミノ酸アナログは、それらの遊離塩基の形態又はそれらの塩の形態の何れかで前記組成物に導入される。本発明の更なる態様において、前記アミノ酸またはアミノ酸アナログは、前記タンパク質の凝集を阻止する又は遅延(delay)させるのに十分な濃度で使用される。
【0206】
更なる態様において、メチオニン(または他の硫黄性のアミノ酸またはアミノ酸アナログ)は、治療薬として作用する前記ポリペプチドが次の酸化に感受性の少なくとも1つのメチオニン残基を具備しているポリペプチドである場合、メチオニン残基のメチオニンスルホキシドへの酸化を阻害するために添加されてもよい。「阻害(inhibit)」は、メチオニン酸化型種の、時間経過に対し蓄積が最小であることを意図している。メチオニン酸化を阻害することによって、前記ポリペプチドを、その適切な分子形態によりよく保持することとなる。メチオニン(LまたはD)の任意の立体異性体又はその任意の組合わせを使用することができる。添加すべき量は、メチオニン残基の酸化を阻害するために十分な量にすべきであり、メチオニンスルホキシドの量が管理機関(regulatory agencies)に認可されるような量にすべきである。典型的には、この事項は、前記組成物が約 10%〜約 30%のメチオニンスルホキシド以下を含有することを意味している。一般に、この事項は、メチオニンのメチオニン残基に添加される比率が約 1:1〜約 1000:1(例えば、10:1〜約 100:1)の範囲であるようにメチオニンを添加することで達成することができる。
【0207】
更なる態様において、前記組成物は、高分子量ポリマーまたは低分子化合物からなる群から選択される安定化剤も含む。一態様において、前記安定化剤は、ポリエチレングリコール(例えば、PEG 3350)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシル-/ヒドロキシセルロース(hydroxycellulose)又はその誘導体(例えば、HPC, HPC-SL, HPC-LおよびHPMC)、シクロデキストリン、モノチオグリセロール、チオグリコール酸および2-メチルチオエタノールのようなイオウ含有物質、並びに異なる塩(例えば、塩化ナトリウム)から選択される。これらの特定の安定化剤の各々は、本発明の代替的な態様を構成する。
【0208】
また、薬学的組成物は、そのなかの治療的に活性なポリペプチドの安定性をさらに増強する付加的な安定化剤を具備する。本発明に特に重要な安定化剤には、メチオニンおよびEDTA(メチオニン酸化に対して前記ポリペプチドを防御する)、および非イオン性界面活性剤(凍結融解または機械的剪断に関連する凝集に対して前記ポリペプチドを防御する)が含まれるが、これらに限定されない。
【0209】
更なる態様において、前記製剤は、界面活性剤(surfactant)も含む。一態様において、前記界面活性剤は、洗剤(detergent), エトキシル化ヒマシ油(ethoxylated castor oil), ポリグリコール化グリセリド(polyglycolyzed glycerides), アセチル化モノグリセリド, ソルビタン脂肪酸エステル, ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(例えば、ポロキサマー、例えば、Pluronic(登録商標) F68, ポロキサマー 188 および407, トリトン X-100), ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル, ポリオキシエチレンおよびポリエチレン誘導体(例えば、アルキル化およびアルコキシル化誘導体(tweens, 例えば、 Tween-20, Tween-40, Tween-80 およびBrij-35), モノグリセリド又はそのエトキシル化誘導体, ジグリセリド又はそのポリオキシエチレン誘導体, アルコール, グリセロール, レクチンおよびリン脂質(例えば、ホスファチジルセリン, ホスファチジルコリン, ホスファチジルエタノールアミン, ホスファチジルイノシトール, ジホスファチジルグリセロールおよびスフィンゴミエリン), リン脂質の誘導体(例えば、ジパルミトイルホスファチジン酸)およびリゾリン脂質の誘導体(例えば、パルミトイルリゾホスファチジル-L-セリンおよびエタノールアミン, コリン, セリンまたはスレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-リン酸エステル)およびリゾホスファチジルおよびホスファチジルコリンのアルキル, アルコキシル (アルキルエステル), アルコキシ (アルキルエーテル)-誘導体、例えば、リゾホスファチジルコリンのラウロイルおよびミリストイル誘導体, ジパルミトイルホスファチジルコリン, および, 極性の頭部基(head group)の修飾体, 該頭部基はコリン, エタノールアミン, ホスファチジン酸, セリン, スレオニン, グリセロール, イノシトール, および陽性荷電のDODAC, DOTMA, DCP, BISHOP, リゾホスファチジルセリンおよびリゾホスファチジルスレオニン, およびグリセロリン脂質(例えば、セファリン), グリセロ糖脂質 (例えば、ガラクトピラノシド), スフィンゴ糖脂質 (例えば、セラミド, ガングリオシド), ドデシルホスホコリン, ニワトリ卵リゾレシチン, フシジン酸誘導体-(例えば、タウロ-フシジン酸ナトリウムなど), 長鎖脂肪酸及びその塩, C6-C12 (例えば、オレイン酸およびカプリル酸), アシルカルニチンおよび誘導体, リジン, アルギニンまたはヒスチジンのNα-アシル化誘導体, またはリジンまたはアルギニンの側鎖アシル化誘導体(side-chain acylated derivatives), リジン, アルギニンまたはヒスチジンおよび中性または酸性アミノ酸の何れかの組合わせを具備しているジペプチドのNα-アシル化誘導体, 中性アミノ酸および2荷電化アミノ酸(two charged amino acids)の何れかの組合わせを具備しているトリペプチドのNα-アシル化誘導体, DSS (ドキュセートナトリウム, CAS登録番号[577-11-7]), ドキュセートカルシウム, CAS登録番号[128-49-4]), ドキュセートカリウム, CAS登録番号[7491-09-0]), SDS (ドデシル硫酸ナトリウムまたはラウリル硫酸ナトリウム), カプリル酸ナトリウム, コール酸又はその誘導体, 胆汁酸及びその塩およびグリシンまたはタウリン結合体, ウルソデオキシコール酸, コール酸ナトリウム, デオキシコール酸ナトリウム, タウロコール酸ナトリウム, グリココール酸ナトリウム, N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホナート, 陰イオン性(アルキル-アリール-スルホナート)一価 界面活性剤, 双性イオン性界面活性剤(例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート, 3-コラミド(cholamido)-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート, 陽イオン性界面活性剤(四級アンモニウム塩基)(例えば、セチル-トリメチルアンモニウム ブロミド, 塩化セチルピリジニウム), 非イオン性界面活性剤(例えば、ドデシルβ-D-グルコピラノシド), ポロキサミン(例えば、 Tetronic’s), これはプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドをエチレンジアミンに順次付加することから派生する四官能性ブロック コポリマーである,
又はイミダゾリン誘導体, 又はその混合物からなる群から選択されえる界面活性剤、から選択される。これらの特定の界面活性剤の各々は、本発明の代替的な態様を構成する。
【0210】
薬学的組成物における界面活性剤の使用は、当業者に周知であるが;文献〔Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995〕を参照されたい。
【0211】
更なる一態様において、前記製剤は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)およびベンザミジンHClなどのプロテアーゼインヒビターも含むが、他の商業的に利用可能で適切なプロテアーゼインヒビターも使用しえる。プロテアーゼインヒビターの使用は、自己触媒を阻害するために、プロテアーゼの酵素原を含んでいる薬学的組成物中で特に有用である。
【0212】
他の構成成分も、本発明の薬学的製剤中に存在しえる。係る付加的な構成成分は、湿潤剤, 乳化剤, 抗酸化剤, バルキング剤(bulking agents), 張性修飾剤(tonicity modifiers), キレート剤, 金属イオン, 油性ビヒクル(oleaginous vehicles), タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン, ゼラチンまたはタンパク質)および双性イオン(例えば、アミノ酸、例えば、ベタイン, タウリン, アルギニン, グリシン, リジン および ヒスチジン)を含んでもよい。係る付加的な構成成分は、本発明の薬学的製剤の全体の安定性に不利に影響しない。
【0213】
本発明による抗体を含有している薬学的組成物は、係る治療を幾つかの部位、例えば、局所的部位(例えば、皮膚および粘膜部位)、吸収をバイパスする部位(例えば、動脈における、静脈における、心臓における投与)、吸収が関与する部位(例えば、皮膚における、皮膚下における、筋肉における又は腹部における投与)で必要としている患者に投与しえる。
【0214】
本発明による薬学的組成物の投与は、係る治療を必要とする患者に、舌(lingual),舌下(sublingual), 頬, 口内(in the mouth), 経口(oral), 胃および腸中(in the stomach and intestine), 経鼻(nasal), 肺(例えば, 細気管支および肺胞又はその組み合わせを介して), 上皮(epidermal), 真皮(dermal), 経皮(transdermal), 膣(vaginal), 直腸, 眼球(例えば, 結膜を介して), 尿管(uretal), および非経口などの幾つかの投与経路を介するものであってもよい。
【0215】
当該発明の組成物は、溶液, 懸濁物, エマルジョン剤, マイクロエマルジョン剤, 複合エマルジョン, 泡剤(foams), 軟膏剤(salves), ペースト剤(pastes), プラスター, 軟膏(ointments), 錠剤, 被覆錠剤, リンス剤(rinses), カプセル, 例えば, 硬いゼラチンカプセルおよび柔らかいゼラチンカプセル, 坐剤, 直腸カプセル, ドロップ剤(drops), ゲル, スプレー, 粉末剤, エアロゾル, 吸入剤(inhalants), 点眼液, 眼軟膏,眼のリンス剤(ophthalmic rinses), 膣のペッサリー, 膣のリング, 膣軟膏, 注射溶液, インサイチュー転換溶液(in situ transforming solutions)、例えば、インサイチューゲル化剤, インサイチュー硬化剤(in situ setting), インサイチュー沈殿剤, インサイチュー結晶化剤, 輸液溶液, およびインプラントなどの幾つかの剤形で投与しえる。
【0216】
本発明の組成物は、例えば、共有結合性、疎水性及び静電気的な相互作用を介して、薬担体、薬物送達システムおよび高度な薬物送達システムに、抗体の安定性をさらに増強させる、バイオアベイラビリティーを増加させる、溶解度を増加させる、有害な作用を減少させる、当業者に周知の時間療法(chronotherapy)を達成する、および患者のコンプライアンスを増加させる、又はその任意の組み合わせのために、さらに配合され(compounded)又は付属(attached)されてもよい。担体(carriers)、薬物送達システムおよび高度な薬物送達システムの例には、ポリマー, 例えば、セルロースおよび誘導体, ポリサッカライド, 例えば、デキストランおよび誘導体, デンプンおよび誘導体, ポリ(ビニルアルコール), アクリラートおよびメタクリレートポリマー, ポリ乳酸およびポリグリコール酸及びそのブロックコポリマー, ポリエチレングリコール, 担体タンパク質, 例えば、アルブミン, ゲル, 例えば、サーモジェリング(thermogelling)システム, 例えば、当業者に周知のブロックブロックコポリマーシステム, ミセル, リポソーム, ミクロスフェア, ナノ微粒子(nanoparticulates), 液体結晶(liquid crystals)及びその分散剤,脂質-水システムにおける相行動(phase behaviour)の当業者に周知のL2相及びその分散剤, ポリマー性ミセル, 複合エマルジョン剤, 自己乳化(self-emulsifying), 自己ミクロ乳化, シクロデキストリン及びその誘導体, およびデンドリマー(dendrimers)が含まれるが、これらに限定されない。
【0217】
当該発明の組成物は、定量吸入器(a metered dose inhaler)、乾燥粉末吸入器(dry powder inhaler)およびネブライザー(全て当業者に周知の装置である)などを用いて、抗体を肺投与するための、固体、半固体(semisolids)、粉末および溶液の製剤に有用である。
【0218】
現行の発明の組成物は、制御性(controlled)、持続性(sustained)、遅延性(protracting)、遅滞性(retarded)、および緩徐性(slow)に放出させる薬物送達系に特に有用である。より具体的な限定されない、組成物は、当業者に周知の、非経口の制御性放出および持続性放出システム(双方のシステムは幾つかの投与における何倍もの減少に至る)の製剤に有用である。なおより好ましいものは、皮下に投与される制御性放出および持続性放出システムである。本発明の範囲を限定することなく、有用な制御性放出システムおよび組成物の例は、ヒドロゲル、油性の(oleaginous)ゲル、液体結晶(liquid crystals)、重合体ミセル(polymeric micelles)、ミクロスフェア、ナノ粒子(nanoparticles)である。
【0219】
当該発明の組成物に有用な制御性放出システムを産生する方法には、結晶化, 凝縮, 共結晶化(co-crystallization), 沈殿, 共沈殿, 乳化, 分散剤, 高圧均質化(high pressure homogenisation), カプセル化(encapsulation), スプレードライ, マイクロカプセル化(microencapsulating), コアセルベーション, 相分離(phase separation), 溶媒蒸発によるミクロスフェアの産生, 押出し成形(extrusion)および超臨界流体プロセス(supercritical fluid processes)が含まれるが、これらに限定されない。一般的に、薬学的な制御放出のハンドブック〔Wise, D.L., ed. Marcel Dekker, New York, 2000〕および〔Drug and the Pharmaceutical Sciences vol. 99: Protein Formulation and Delivery (MacNally, E.J., ed. Marcel Dekker, New York, 2000〕を参照されたい。
【0220】
非経口投与は、皮下、筋肉内、腹腔内、または静脈内の注射で、注射器(自由選択で、ペン様の注射器)の手段によって実施し得る。或いは、非経口投与は、輸液ポンプの手段で実施することができる。さらなるオプションは、抗体を、経鼻または肺スプレー(nasal or pulmonal spray)の形態で投与するための溶液剤または懸濁剤である組成物である。別のオプションとして、抗体を含有している薬学的組成物は、経皮投与〔例えば、針なし注射(needle-free injection)による又はパッチ、任意でイオントフォレーシス性パッチ(iontophoretic patch)からの〕、又は経粘膜(例えば、頬投与)に適用することもできる。
【0221】
前記抗体は、ビヒクル中で溶液剤、懸濁液または乾燥粉末として、肺の薬物送達のために適切な任意の既知のタイプの装置を用いて肺の経路を介して投与することができる。これらの例には、肺薬物送達のための3つの一般型のエアロゾル発生が含まれ、これにはジェットまたは超音波のネブライザー、計量式吸入器、または乾燥粉末吸入器(Yu J, Chien YW. Pulmonary drug delivery: Physiologic and mechanistic aspects. Crit Rev Ther Drug Carr Sys 14(4) (1997) 395-453を参照されたい)が含まれえるが、これらに限定されない。
【0222】
標準的な試験方法に基づき、粒子の空気力学直径(da;aerodynamic diameter)は、参照標準球状粒子の単位密度(1g/cm3)の幾何等価直径(geometric equivalent diameter)と規定される。最も単純なケースにおいて、球状粒子に関して、daは、以下の式に示す密度比の平方根の関数として、参照直径(d)と関係する:
【数1】
【0223】
この関係への修正は、非球形粒子に関して発生する〔Edwards DA, Ben-Jebria A, Langer R. Recent advances in pulmonary drug delivery using large, porous inhaled particles. J Appl Physiol 84(2) (1998) 379-385を参照されたい〕。「MMAD」および「MMEAD」の用語は、当該技術に関して詳細に記載され、知られている〔Edwards DA, Ben-Jebria A, Langer R and represents a measure of the median value of an aerodynamic particle size distribution. Recent advances in pulmonary drug delivery using large, porous inhaled particles. J Appl Physiol 84(2) (1998) 379-385を参照されたい〕。空気動力学的中央粒子径(MMAD;Mass median aerodynamic diameter)および有効空気動力学的中央粒子径(MMEAD;mass median effective aerodynamic diameter)は、互換的に使用される統計的なパラメータであり、肺へ沈着する可能性に関しエアロゾル粒子のサイズを、実際の形状、サイズ、又は密度とは独立に経験的に記載する〔Edwards DA, Ben-Jebria A, Langer R. Recent advances in pulmonary drug delivery using large, porous inhaled particles. J Appl Physiol 84(2) (1998) 379-385を参照されたい〕。MMADは、インパクター(空気中での慣性性の行動を測定する機器)でなされる測定から通常計算される。
【0224】
更なる態様において、前記製剤は、任意の既知のエアロゾル技術〔例えば、噴霧(nebulisation)〕でエアロゾル化して、10μm未満(より好ましくは1〜5μmの間、最も好ましくは1〜3μmの間)のエアロゾル粒子のMMADを達成することができるだろう。好適な粒子サイズは、タンパク質が至適に吸収される、肺深部(deep lung)への薬物送達に最も好適なサイズに基づく〔Edwards DA, Ben-Jebria A, Langer A, Recent advances in pulmonary drug delivery using large, porous inhaled particles. J Appl Physiol 84(2) (1998) 379-385を参照されたい〕。
【0225】
前記抗体を含んでいる肺製剤の肺深部への沈着は、必要におうじて、吸入技術〔例えば、緩徐な吸入流(例えば、30L/min)、息こらえ(breath holding)および作動のタイミング(timing of actuation)であるが、これらに限定されない〕の修飾法を用いることによって、さらに至適化されえる。
【0226】
「安定化製剤(stabilized formulation)」の用語は、増加した物理的な安定性、増加した化学的な安定性または増加した物理的および化学的な安定性を有する製剤を意味する。
【0227】
本明細書中に使用されるタンパク質製剤の「物理的な安定性(physical stability)」の用語は、タンパク質の熱機械的ストレス(thermo-mechanical stresses)への暴露の及び/又は不安定な界面(interfaces)および表面(例えば、疎水性の表面および界面)との相互作用の結果として、タンパク質の生物学的に不活性および/または不溶性の凝集物を形成するタンパク質の傾向を意味する。水性のタンパク質製剤の物理的な安定性は、適切なコンテナ(例えば、カートリッジまたはバイアル)に充填した前記製剤を、機械的/物理的なストレス(例えば、撹拌)に異なる温度で様々な時間で暴露した後で、視覚的な点検および/または濁度測定の手段によって評価される。前記製剤の視覚的な点検(Visual inspection)は、暗い背景で焦点を絞った光源(a sharp focused light)において行われる。前記製剤の濁度は、濁度の度合を、例えば、0から3のスケール(濁りを呈していない製剤は視覚スコア0に対応し、昼光中で視覚的な濁りを呈している製剤は視覚スコア3に対応する)で、視覚的にスコアをつけることによって特徴づけられる。製剤が昼光中で視覚的な濁度を呈した場合、タンパク質凝集に関して物理的に不安定であると分類される。或いは、製剤の濁度は、当業者に周知の単純な濁度測定によって評価することができる。また、水性のタンパク質製剤の物理的な安定性は、タンパク質のコンホメーション状態の分光学的な薬剤またはプローブを用いることによって評価することができる。前記プローブは、好ましくは、タンパク質の非天然コンフォーマー(non-native conformer)へと優先的に結合する小分子である。タンパク質構造の小分子の分光学的なプローブの一例は、チオフラビンTである。チオフラビンTは、アミロイドフィブリルの検出に広く使用されている蛍光色素である。フィブリルの存在下(おそらく他のタンパク質配置も同様)で、チオフラビンTは、フィブリルタンパク質形態に結合した場合に、新たな最大励起を約 450 nmで及び増強した発光を約 482 nmで発生する。非結合型のチオフラビンTは、前記波長で基本的に非蛍光性(non-fluorescent)である。
【0228】
他の小分子は、タンパク質構造における天然から非天然の状態への変化のプローブとして使用することができる。一例を挙げると、「疎水性パッチ(hydrophobic patch)」プローブは、タンパク質の暴露した疎水性パッチに優先的に結合する。一般的に、疎水性パッチは、天然の状態においてタンパク質の三次構造内で埋没しているが、タンパク質がアンフォールドする又は変性しはじめると暴露される。これらの小分子、分光学的なプローブの例は、芳香族の、疎水性色素、例えば、アントラセン(antrhacene)、アクリジン、フェナントロリンなどである。他の分光学的なプローブは、金属アミノ酸複合体(metal-amino acid complexes)、例えば、疎水性アミノ酸(例えば、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、およびバリンなど)のコバルト金属複合体である。
【0229】
本明細書中に使用されるタンパク質製剤の「化学的な安定性(chemical stability)」の用語は、タンパク質構造における化学的な共有結合性の変化であって、天然のタンパク質構造と比較して、潜在的に低い生物学的な作用強度および/または潜在的に増加した免疫原性の特性を有する化学的なデグラデーション産物の形成に至る変化を意味する。様々な化学的なデグラデーション産物は、天然タンパク質のタイプおよび性質に並びに前記タンパク質が暴露される環境に依存して形成されえる。化学的なデグラデーションの除去は、完全に避けることは多分不可能である。そして、化学的なデグラデーション産物の量の増加は、当業者に周知のように、タンパク質製剤の貯蔵および使用の間にしばしば認められる。大抵のタンパク質は、脱アミド(グルタミニルまたはアスパラギニル残基中の側鎖アミド基が加水分解されて、遊離カルボン酸を形成するプロセス)する傾向がある。他のデグラデーション経路には、高分子量転換産物(high molecular weight transformation products)の形成が関与する。ここでは2以上のタンパク質分子がアミド基転移および/またはジスルフィド相互作用を介して互いに共有結合で結合されて、共有結合性のダイマー、オリゴマーおよびポリマーのデグラデーション産物の形成に至る(Stability of Protein Pharmaceuticals, Ahern. T.J. & Manning M.C., Plenum Press, New York 1992)。酸化(一例を挙げると、メチオニン残基の)を、化学的なデグラデーションの別のバリアントとして言及することができる。タンパク質製剤の化学的な安定性は、異なる環境条件(デグラデーション産物の形成は、一例を挙げると、温度を増加させることによってしばしば促進させることができる)に暴露後に、化学的なデグラデーション産物の量を様々な時点で測定することによって評価することができる。各々の個々のデグラデーション産物の量は、分子サイズおよび/または電荷に依存した様々なクロマトグラフィー技術(例えば、SEC-HPLCおよび/またはRP-HPLC)を用いて、デグラデーション産物を分離することによって度々決定される。
【0230】
以上、上記で概説したとおり「安定化製剤(stabilized formulation)」は、増加した物理的な安定性、増加した化学的な安定性または増加した物理的および化学的な安定性を有する製剤を意味する。一般的に、製剤は、有効期限に達するまでの、使用および貯蔵(推奨される使用および貯蔵条件にしたがって)の間に安定でなければならない。
【0231】
本発明の一態様において、抗体を含んでいる薬学的製剤は、6週以上の使用の間に及び3年以上の貯蔵の間に安定である。
【0232】
本発明の別の態様において、抗体を含んでいる薬学的製剤は、4週以上の使用の間に及び3年以上の貯蔵の間に安定である。
【0233】
本発明の更なる態様において、抗体を含んでいる薬学的製剤は、4週以上の使用の間に及び2年以上の貯蔵の間に安定である。
【0234】
本発明のなお更なる態様において、抗体を含んでいる薬学的製剤は、2週以上の使用の間に及び2年以上の貯蔵の間に安定である。
【0235】
上記のとおり、これらの組成物に使用することができる薬学的に許容される担体には、イオン交換体;アルミナ;ステアリン酸アルミニウム;レシチン;ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質;リン酸(phosphates)およびグリシンなどの緩衝物質;ソルビン酸;ソルビン酸カリウム;飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物;水;硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、および亜鉛塩などの塩または電解質;コロイダル・シリカ;三ケイ酸マグネシウム;ポリビニルピロリドン;セルロースをベースとした物質;ポリエチレングリコール;カルボキシメチルセルロースナトリウム;ポリアクリル酸塩;蝋(waxes);ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー;ポリエチレングリコール;及び羊毛脂(wool fat)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0236】
本発明の組成物は、患者又は生物試料中のNK細胞の活性を増強する方法で使用することができる。本方法は、前記組成物を前記患者又は生物試料と接触させる工程を含む。このような方法は、診断目的と治療目的の両方に対して有用であろう。
【0237】
生物試料とともに使用する場合、前記抗体組成物は、試料の性質に応じて(液体又は固体)、前記試料と単純に混合し、又は前記試料に直接加えることによって投与することができる。前記生物試料は、任意の適切な装置(プレート、袋、フラスコなど)中で、前記抗体と直接接触させることができる。患者とともに使用する場合、前記組成物は、患者に投与するために調合されなければならない。
【0238】
上記のとうり、本発明の組成物は、経口、非経口、吸入スプレー、局所、直腸、経鼻、口腔、経膣、又は埋め込まれた容器を介して、投与され得る。本明細書において「非経口」という用語には、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下内、肝臓内、病変部内及び頭蓋内注射又は注入技術が含まれる。好ましくは、前記組成物は、経口、腹腔内又は静脈内に投与される。
【0239】
本発明の前記組成物の無菌注射可能形態は、水性又は油性懸濁液とすることができる。これらの懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて、当該技術において公知の方法に従って調合し得る。無菌の注射可能な調製物は、非毒性で非経口的に認容される希釈剤または溶媒(例えば、1,3-ブタンジオール中での溶液剤)中での、無菌の注射可能な溶液剤または懸濁液であってもよい。使用することができる許容されるビヒクル及び溶媒としては、水、リンゲル溶液及び等張の塩化ナトリウム溶液が挙げられる。さらに、無菌の不揮発性油が、溶媒又は懸濁媒体として、都合よく使用される。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドなど、任意の無刺激性不揮発性油を使用することができる。オレイン酸及びそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、オリーブ油又はひまし油(特に、ポリオキシエチル化された様式)などの、薬学的に許容される天然油と同様に、注射剤の調製において有用である。これらの油溶液又は懸濁液は、エマルジョン及び懸濁液などの薬学的に許容される剤形の調合において一般的に使用されているカルボキシメチルセルロース又は類似の分散剤など、長鎖アルコール希釈剤又は分散剤も含有することができる。Tweens、Spansなどの一般的に使用される他の界面活性剤、及び薬学的に許容される固体、液体又はその他の剤形の製造において一般的に使用されるその他の乳化剤又は生物学的利用度の増強剤も、製剤の目的に対して使用することができる。
【0240】
本発明の組成物は、カプセル、錠剤、水性懸濁液又は溶液などの経口的に許容される任意の剤形(これらに限定されない)で経口的に投与され得る。経口用の錠剤の場合、一般的に使用される担体には、ラクトース及びコーンスターチが含まれる。典型的には、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤も添加される。カプセル形態での経口投与の場合、有用な希釈剤には、ラクトース及び乾燥されたコーンスターチが含まれる。経口用途のために水性懸濁液が必要とされる場合には、活性成分が乳化剤及び懸濁剤と混合される。所望であれば、ある種の甘味剤、着香剤又は着色剤も添加し得る。
【0241】
あるいは、本発明の組成物は、直腸投与するために、坐薬の形態で投与することもできる。これらは、室温で固体であるが、直腸の温度では液体であり、従って、直腸内で溶けて薬物を放出し得る、適切な非刺激性賦形剤と、薬剤を混合することによって調製することができる。このような物質には、ココアバター、蜜蝋及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0242】
特に、眼、皮膚又は下部消化管の疾病など、治療の標的が局所適用によって容易に近づきやすい領域又は臓器を含む場合には、本発明の組成物は、局所的に投与することもできる。適切な局所製剤は、これらの領域又は臓器の各々に対して、容易に調製される。
【0243】
下部消化管に対する局所適用は、直腸坐剤調合物(上記参照)又は適切な浣腸調合物で実施することができる。局所経皮パッチも使用することができる。
【0244】
局所適用の場合、前記組成物は、一又は複数の担体中に懸濁され、又は溶解された活性成分を含有する適切な軟膏中に調合することができる。本発明の化合物の局所投与用の担体には、ミネラル油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋および水が含まれるが、これらに限定されるものではない。あるいは、前記組成物は、薬学的に許容される一又は複数の担体中に懸濁され、又は溶解された活性成分を含有する適切なローション又はクリーム中に調合することができる。適切な担体には、ミネラル油、ソルビタンモノステアリン酸、ポリソルベート60、セチルエステル蝋、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0245】
眼科用途の場合には、前記組成物は、PH調整された等張無菌生理的食塩中の微粉化された懸濁液として、又は、好ましくは、塩化ベンジルアルコニウムなどの防腐剤を加えた、又は加えない、PH調整された等張の無菌生理的食塩中の溶液として、調合することができる。あるいは、眼科用途の場合、前記組成物は、ワセリンなどの軟膏中に調合することができる。
【0246】
本発明の組成物は、経鼻エアロゾル又は吸入によって、投与することもできる。このような組成物は、薬学的製剤の分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコール又は他の適切な防腐剤、生物的利用可能性を増強するための吸収促進物質、過フッ化炭素及び/又は従来の可溶化又は分散剤を用いて、生理的食塩水中の溶液として調製し得る。
【0247】
Rituxan(Rituximab)、Herceptin(Trastuzumab)又はXolair(Omalizumab)など、幾つかのモノクローナル抗体が、臨床現場において有効であることが示されており、同様の投与計画(すなわち、調剤及び/又は投与量及び/又は投与プロトコール)を、本発明の抗体とともに使用することができる。本発明の薬学的組成物中の抗体の投与に関するスケジュール及び投与量は、例えば、製造業者の指示書を用いて、これらの製品に対して公知の方法に従って決定することができる。例えば、本発明の薬学的組成物中に存在する抗体は、100mg(10mL)又は500mg(50mL)の使い捨てバイアル中に、10mg/mLの濃度で与えることができる。前記製品は、静脈内投与のために、9.0mg/mL 塩化ナトリウム、7.35mg/mL クエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mL ポリソルベート 80、及び注射用無菌水の中に調合される。pHを6.5に調整する。本発明の薬学的組成物中の抗体に対する典型的な適切な投与量範囲は、約10mg/m2から500mg/m2の間であり得る。しかしながら、これらのスケジュールは典型的なものであり、薬学的組成物中の具体的な抗体の親和性と許容性(これらは、臨床試験において決定しなければならない)を考慮しながら、最適なスケジュール及び投薬計画を適合できることが理解されるであろう。24時間、48時間、72時間又は一週間又は一ヶ月間、NK細胞を飽和させる、本発明の薬学的組成物中の抗体の注入量及びスケジュールは、ヒトおよび非ヒト哺乳動物中での抗体の親和性及び抗体の薬物動態的なパラメータを考慮しながら決定されるであろう。
【0248】
別の実施形態に従えば、本発明の抗体組成物は、前記抗体が投与される具体的な治療目的のために通常使用される薬剤を含む、別の治療剤をさらに含み得る。追加される治療剤は、治療されている当該疾病又は症状に対する単剤療法において、その治療剤に対して典型的に使用される量で、前記組成物中に存在するのが通常であろう。このような治療剤には、癌の治療に使用される治療剤、感染性疾患を治療するために使用される治療剤、他の免疫療法に使用される治療剤、サイトカイン(IL−2又はIL−15など)、他の抗体及び他の抗体の断片が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0249】
別の実施形態において、少なくとも2つの異なるヒト阻害性KIR受容体遺伝子産物上に存在する共通の決定基を結合し、前記二つの異なるヒト阻害性KIR受容体の少なくとも一つを発現するNK細胞に対するNK細胞の細胞毒性の、KIRによって媒介される阻害を中和することができる本発明の抗体を、単独で、又はヒトおよび他の非ヒト哺乳動物中での腫瘍または炎症部位に誘導して送達するための別の物質とともに、リポソーム(イムノリポソーム)中に取り込むことができる。このような他の物質には、遺伝子治療のために遺伝子を送達するための核酸;又はNK細胞中の遺伝子を抑制するためのアンチセンスRNA、RNAi若しくはsiRNAを送達するための核酸;又はNK細胞を標的として殺傷させるための毒素若しくは薬物が含まれる。
【0250】
例えば、癌の治療に対して、多数の治療剤を使用することができる。本発明の抗体組成物及び方法は、特定の疾病、特に、腫瘍、癌疾患、又は患者が発病するその他の疾病又は疾患の治療で一般的に使用される他の任意の方法とともに組み合わせることができる。ある治療的アプローチが、それ自体で、患者の症状に対して有害であることが知られておらず、本発明の薬学的組成物中の抗体の活性を著しく打ち消さない限り、本発明との併用が想定される。
【0251】
固形腫瘍(solid tumor)の治療に関していえば、本発明の薬学的組成物は、手術、放射線療法、化学療法などの、古典的なアプローチとともに使用することができる。従って、本発明は、手術若しくは放射線治療と同時に、手術若しくは放射線治療の前に若しくは後に、本発明の薬学的組成物が使用され;又は従来の化学療法、放射線療法若しくは抗血管新生剤、若しくは標的に誘導される免疫毒素若しくは凝固リガンド(coaguligand)とともに、それらの前に若しくは後に患者に投与される、併用療法を提供する。
【0252】
治療計画において、本発明の抗体含有組成物とともに、一又は複数の薬剤を使用する場合には、併用した結果が、各治療が別個に実施されたときに観察される効果を加算したものである必要はない。少なくとも加算的な効果が一般に望ましいが、単剤療法の一つを上回る何らかの増加した抗癌効果は有益であろう。また、相乗効果を発揮することは可能であり、有利であるが、併用治療が相乗効果を発揮することは必要ではない。
【0253】
併用抗癌療法を実施するためには、併用された抗癌作用を動物内にもたらすのに有効な様式で、別の抗がん剤とともに、本発明の抗体組成物を患者に単に投与すればよいであろう。従って、前記薬剤は、それらが腫瘍脈管構造内に同時に存在し、腫瘍環境中で併合作用をもたらすのに有効な量及び期間で、与えられるであろう。この目標を達成するために、本発明の抗体組成物と抗癌剤は、単一の併用組成物中に入れて、又は同じ若しくは異なる投与経路を用いる2つの別個の組成物として、患者に同時に投与し得る。
【0254】
あるいは、本発明の抗体組成物の投与は、例えば、分から週及び月単位にわたる間隔を置き、抗癌剤治療の前又は後に行うことができる。抗癌剤と本発明の抗体組成物中の抗体が、癌に対して、有利に併用効果を発揮することを確保するであろう。例として、本発明のmAbsは、非ホジキンリンパ腫(NHL)を有する患者に投与されえる。係る患者は、典型的には、リツキシマブ(Rituximab)との組合せ及びCHOPとして知られる化学療法剤との組合せで治療される。従って、本発明の抗-KIR抗体を使用して、リツキシマブ及びCHOPでの治療を経験しているNHL患者を、前記薬剤が同日に又は異なる日に、より長い治療期間で与えられる治療スケジュールで全ての薬剤の投与を組合せることによって、治療しえる。
【0255】
他の抗癌剤は、本発明の抗KIR抗体組成物の前に、と同時に、又は、の投与に続いて与えられてもよい。しかしながら、抗体の免疫抱合体を本発明の抗体組成物に使用するときには、様々な抗癌剤を同時又は順次に投与することができる。
【0256】
幾つかの状況では、治療のための期間を著しく延長することが望ましい場合さえあり得、この場合、抗癌剤又は抗癌治療と本発明の抗体組成物の各投与との間には、数日(2、3、4、5、6又は7)、数週(1、2、3、4、5、6、7又は8)、又は数ヶ月(1、2、3、4、5,6、7又は8)が経過する。これは、抗癌治療が腫瘍を実質的に破壊することを目的とし、本発明の抗体組成物の投与が微小転移又は腫瘍の再増殖を抑えることが目的とされる状況(手術又は化学療法など)において有利であろう。
【0257】
本発明の抗KIR抗体をベースとした組成物又は抗癌剤のうち何れかを2回以上投与することも想定される。これらの薬剤は、隔日若しくは隔週に、交互に投与してもよく、又は、本発明の抗KIR抗体組成物を用いた治療を繰り返した後、抗癌剤療法を繰り返してもよい。何れにしろ、併用療法を用いて、腫瘍の退化を達成するために必要なものは、投与の回数にかかわらず、抗腫瘍効果を発揮するのに有効な併合量(combined amount)で、両薬剤を送達することだけである。
【0258】
手術に関しては、任意の外科的介入を、本発明と組み合わせて実施することができる。放射線療法に関しては、ガンマ線照射、X線、UV照射、マイクロ波、さらには電子放射など、DNAの損傷を癌細胞内に局所的に誘導するための任意の機序が想定される。放射線同位体を癌細胞へ誘導して送達することも想定され、これは、標的誘導抗体又はその他の標的誘導手段と組み合わせて使用することができる。
【0259】
他の側面では、免疫調節化合物又は療法を、本発明の抗体組成物と組み合わせて、又は本発明の抗体組成物の一部として、投与することができる。免疫調節化合物の好ましい例には、サイトカインが含まれる。このような併用アプローチでは、様々なサイトカインを使用することができる。本発明によって想定される、前記組み合わせにおいて有用なサイトカインの例には、IL-1alpha IL-1beta, IL-2, IL-3, IL-4, IL-5, IL-6, IL-7, IL-8, IL-9, IL-10, IL-11, IL-12, IL-13,IL-15, IL-21, TGF-beta, GM-CSF, M-CSF, G-CSF, TNF-alpha, TNF-beta, LAF, TCGF, BCGF, TRF, BAF, BDG, MP, LIF, OSM, TMF, PDGF, IFN-alpha, IFN-beta, IFN-gammaが含まれる。本発明の併用治療又は組成物に使用されるサイトカインは、患者の症状及びサイトカインの相対的毒性などの臨床的指標に合わせて、標準的な投薬計画に従って投与される。本発明の抗体組成物と組合わせて、又はその一部として投与されえる、他の免疫調節化合物(immunomodulatory compounds)には、抗-CTLA4抗体又は抗-CD94/NKG2A抗体(例えば、米国公開特許公報第20030095965号を参照されたい)などの抗体を限定されることなく含む、リンパ球上の他の阻害性のレセプターに特異的に結合する抗体が含まれる。当該技術分野において既知の、これらの分子のバリアントおよび誘導体を、係る方法において、さらに又は代替的に使用すること、および適切に本発明の組成物に導入することができる。
【0260】
一部の実施形態において、交叉反応性、ブロッキング、および/または阻害性の抗KIR抗体を含む本発明の治療用組成物は、化学療法剤若しくはホルモン治療剤とともに投与することができ、又は化学療法剤若しくはホルモン治療剤をさらに含むことができる。様々なホルモン療法剤及び化学療法剤は、本明細書に開示されている併用治療法において使用することができる。典型的なものとして想定される化学療法剤の例には、アルキル化剤、代謝拮抗物質、細胞毒性抗生物質、ビンカアルカロイド、例えば、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、マイトマシン、カルミノマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、タモキシフェン、タキソール、タキソテール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシル(5FU)、シトシン アラビノシド、シクロホスファミド、チオテパ、メトトレキセート、カンプトテシン、アクチノマイシン−D、マイトマイシンC、シスプラチン(CDDP)、アミノプテリン、コンブレタスタチン、並びにそれらの誘導体及びプロドラッグが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0261】
ホルモン剤には、例えば、リュープロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン及びブセレリンなどのLHRHアゴニスト;タモキシフェン及びトレミフェンなどの抗エストロゲン;フルタミド、ニルタミド、シプロテロン及びビカルタミドなどの抗アンドロゲン;アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール及びファドロゾールなどのアロマターゼ阻害剤;並びにメドロキシ、クロルマジノン及びメゲストロールなどの黄体ホルモンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0262】
当業者であれば自明であるように、化学療法剤の適切な用量は、化学療法剤が単独で投与され、又は他の化学療法剤と組み合わせて投与される、臨床療法で既に使用されている用量に近いであろう。単なる例示であるが、シスプラチンなどの薬剤及びその他のDNAアルキル化剤を使用することができる。シスプラチンは、癌を治療するために広く使用されており、臨床用途で使用される有効用量は、計三つの治療単位にわたって、三週ごとに、5日間、20mg/m2である。シスプラチンは、経口で吸収されず、従って、静脈内、皮下、腫瘍内又は腹腔内注射によって、送達されなければならない。
【0263】
さらなる有用な化学療法剤には、DNAの複製、有糸分裂及び染色体分離を妨害する化合物、並びにポリヌクレオチド前駆体の合成及び忠実度を乱す薬剤が含まれる。併用療法のための典型的な数多くの化学療法剤が、米国特許6,524,583号の表Cに列記されており、薬剤及び適応症の開示内容は、参照により、本明細書に明確に援用される。列記されている薬剤の各々は典型例であり、限定的なものではない。当業者は、文献〔"Remington's Pharmaceutical Sciences" 15th Edition, chapter 33, in particular pages 624-652〕を参照されたい。投薬量の変動は、治療されている症状に応じて、起こり得るであろう。治療を施す医師は、各対象者に対する適切な用量を決定することができるであろう。
【0264】
本発明の交叉反応性、ブロッキング、および/または阻害性の抗KIR抗体組成物は、一若しくは複数のあらゆる抗血管新生療法とともに使用することができ、又は抗血管新生剤をさらに含むことができる。このような薬剤の例には、各々VEGF又はVEGF受容体に対して誘導された中和抗体、アンチセンスRNA,siRNA、RNAi、RNAアプタマー及びリボザイムが含まれる(米国特許第6,524,583号、その開示内容は、参照により、本明細書に組み込まれる)。WO98/16551号(参照により、本明細書に明確に組み込まれる)に記載されているように、アンタゴニスト特性を有するVEGFのバリアントを使用することもできる。併用療法とともに使用される典型的な抗血管新生剤が、さらに、米国特許6,524,583号の表Dに列記されており、薬剤及び適応症の開示内容は、参照により、本明細書に明確に援用される。
【0265】
本発明の抗KIR抗体組成物は、アポトーシスを誘導するための方法と組み合わせて有利に使用することもでき、又はアポトーシス剤を含むこともできる。例えば、アポトーシス(すなわち、プログラムされた細胞死)を阻害する多数の癌遺伝子が同定されている。このカテゴリーに属する典型的な癌遺伝子には、bcr−abl、bcl−2(bc−1、サイクリンD1とは異なる;GenBank受託番号M14745、X06487;米国特許第5,650,491号;及び第5,539,094号、それぞれ、参照により、本明細書に援用される)、Bcl−x1、Mcl−1、Bak、A1及びA20を含むファミリーメンバーが含まれるが、これらに限定されない。bcl−2の過剰発現は、T細胞リンパ腫で初めて発見された。癌遺伝子bcl−2は、Bax(アポトーシス経路中のタンパク質)に結合し、Baxを不活化させることによって機能する。bcl−2機能の阻害は、Baxの不活化を抑制し、アポトーシス経路を進行させる。このクラスの癌遺伝子の阻害は、例えば、アンチセンスヌクレオチド配列、RNAi、siRNA又は小分子化学化合物を用いて、アポトーシスの強化を得るために、本発明に使用することが想定される(米国特許第5,650,491号;5,539,094号;及び5,583,034号、それぞれ、参照により、本明細書に組み込まれる)。
【0266】
本発明の抗KIR抗体組成物は、標的細胞(例えば、標的腫瘍細胞)における特異的マーカーに対して誘導される、標的誘導部分(例えば、抗体、リガンド、又はそれらの抱合体)を含む分子(「標的誘導因子」)も含むことができ、又は前記分子とともに使用することができる。一般的に言えば、本発明のこのような追加の側面において使用するための標的誘導因子は、好ましくは、腫瘍部位で、優先的に又は特異的に発現される、接近可能(accessible)な腫瘍抗原を認識するのが好ましいであろう。一般的に、標的誘導因子は、表面に発現された、表面に接近可能な、又は表面に限局された腫瘍細胞の成分に結合するであろう。標的誘導因子は、高親和性特性を発揮することも好ましく、心臓、腎臓、脳、肝臓、骨髄、大腸、乳房、前立腺、甲状腺、胆嚢、肺、副腎、筋肉、神経線維、膵臓、皮膚、又はヒトの身体で生命を支えるその他の臓器若しくは組織から選択される一以上の組織など、生命を支える正常な組織に対して、インビボで著しい副作用を発揮しないことが好ましいであろう。本明細書において使用される「著しい副作用を発揮しない」という用語は、インビボに投与したときに、標的誘導因子が、化学療法中に通常遭遇されるような副作用を、無視できる程度に又は臨床的に管理可能なようにのみ生じ得る事実を表す。
【0267】
腫瘍の治療において、本発明の抗体組成物は、補助化合物をさらに含むことができ、又は補助化合物とともに使用することができる。補助化合物には、一例として、セロトニンアンタゴニストなどの制吐剤、並びにフェノチアジン、置換されたベンズアミド、抗ヒスタミン、ブチロフェノン、コルチコステロイド、ベンゾジアゼピン及びカンナビノイドなどの治療;ゾレドロン酸及びパミドロン酸などのビスフォスフォネート;並びにエリスロポエチン及びG−CSFなどの造血系増殖因子、例えば、フィルグラスチム、レノグラスチム及びダルベポエチンが含まれ得る。
【0268】
別の実施形態では、可能な限り多くのKIR遺伝子産物の阻害性効果を、減少させる又は中和するために、異なるエピトープ又は決定基を認識する本発明の二以上の抗体(NKVSF1, DF200, 1-4F1および/または1-7F9を含む)を、単一の組成物中に組み合わせることができる。本発明の交叉反応性阻害性KIR抗体又はそれらの断片若しくは誘導体の組み合わせを含む組成物は、単一の交叉反応抗体によって認識される各阻害性KIR遺伝子産物を欠如することがある、僅かなパーセントのヒト集団が存在する可能性があるので、さらに広く使用することが可能であろう。同様に、本発明の抗体組成物は、単一の阻害性KIRサブタイプを認識する一又は複数の抗体をさらに含み得る。このような組み合わせも、治療的な場面で、さらに広い用途を提供するであろう。従って、本発明の抗体は、1以上のKIR2DL1, KIR2DLK2, KIR2DL3, KIR3DL1, KIR3DL2, および KIR3DL3などと結合する別の抗KIR抗体と組合せることができる。
【0269】
本発明は、NK細胞活性を増強することが必要とされる患者に、本発明の組成物を投与する工程を含む、前記患者中のNK細胞活性を増強する方法も提供する。本方法は、より具体的には、増加したNK細胞活性が有益であり、NK細胞による溶解に対して感受性のある細胞によって生じ、影響を受け、若しくは引き起こされ、又は不十分なNK細胞活性によって引き起こされ、若しくは不十分なNK細胞活性を特徴とする疾病(癌、その他の増殖性疾患、感染性疾患又は免疫疾患など)を有する患者中のNK細胞活性を増加させることに向けられる。より具体的には、本発明の方法は、癌腫(膀胱、乳房、大腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、前立腺、膵臓、胃、頚部、甲状腺及び皮膚の癌腫を含み、扁平上皮癌を含む);リンパ系の造血系腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫及びバーキット(Burketts)リンパ腫を含む);骨髄細胞系列の造血系腫瘍(急性及び慢性骨髄性白血病及び前骨髄球性白血病を含む);間葉起源の腫瘍(繊維肉腫及び横紋筋肉腫を含む);他の腫瘍(黒色腫、精上皮腫、奇形癌、神経芽細胞腫及び神経膠腫を含む);中枢神経系及び末梢神経系の腫瘍(星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫及び神経鞘腫を含む);間葉起源の腫瘍(繊維肉腫、横紋筋肉腫及び骨肉腫を含む);並びにその他の腫瘍(黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌及び奇形癌を含む)を含む(これらに限定されない)、様々な癌及び他の増殖性疾患の治療のために使用される。
【0270】
本発明によって治療することができる他の好ましい疾患には、リンパ系統の造血系腫瘍(例えば、小細胞及び脳細胞タイプのものを含む、T前リンパ球性白血病(T−PLL);大型顆粒リンパ球白血病(LGL)、好ましくはT細胞タイプのもの;セザリー症候群(SS);成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL);a/d T−NHL肝脾リンパ腫;末梢/後胸腺T細胞リンパ腫(多形性及び免疫芽球性サブタイプ);血管免疫芽球性T細胞リンパ腫;血管中心性(鼻)T細胞リンパ腫;未分化(Ki 1+)大細胞リンパ腫;腸T細胞リンパ腫;Tリンパ芽球型;及びリンパ腫/白血病(T−Lbly/T−ALL)などのT細胞疾患を含む(これらに限定されない)、T細胞及びB細胞腫瘍)が含まれる。
【0271】
例えば、過形成、繊維症(特に肺繊維症、腎繊維症などその他の種類の繊維症)、血管形成、乾癬、アテローム性動脈硬化、及び血管中の平滑筋増殖(血管形成術後の狭窄又は再狭窄など)を含む、その他の増殖性疾患も、本発明に従って治療することができる。本発明の交叉反応性阻害性KIR抗体は、好ましくはウイルス、細菌、原虫、カビ又は真菌によって引き起こされる任意の感染症を含む、感染性疾患を治療又は予防するために使用することができる。このようなウイルス性感染性生物には、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、水痘、アデノウイルス、単純疱疹ウイルスI(HSV−1)、単純疱疹ウイルス2(HSV−1)、牛疫、ライノウイルス、エコーウイルス、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パピローマウイルス、パピローマウイルス、サイトメガロウイルス、エキノウイルス、アルボウイルス、ハンタウイルス(huntavirus)、コクサッキーウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、ポリオウイルス、エボラウイルス、及びヒト免疫不全症候群ウイルスI型又は2型(HIV−1、HIV−2)が含まれるが、これらに限定されない。
【0272】
本発明に従って治療することができる細菌性感染症には、以下のもの:ブドウ球菌(Staphylococcus);連鎖球菌(Streptococcus)(S.yogenesを含む);腸球菌(Enterococcl);棹菌(Bacillus)(Bacillus anthracis及びLactobacillusを含む);リステリア菌(Listeria);ジフテリア菌(Corynebacteriumdiphtheriae);ガルドネレラ属(Gardnerella)(G.vaginalisを含む);ノカルジア菌(Nocardia);ストレプトミセス(Streptomyces);サーモアクチノミセス・ブルガリス(Thermoactinomycesvulgaris);トレポネーマ(Treponema);カンピロバクター菌(Camplyobacter)、シュードモナス(Pseudomonas)(Raeruginosaを含む);レジオネラ(Legionella);ナイセリア(Neisseria)(N.gonorrhoea及びN.meningitidesを含む);フラボバクテリウム(Flavobacterium)(F.meningosepticum及びF.odoraturnを含む);ブルセラ(Brucella);ボルデテラ(Bordetella)(B.pertussis及びB.bronchisepticaを含む);エシェリキア属(Escherichia)(E.coliを含む)、クレブシエラ菌(Klebsiella);エンテロバクター(Enterobacter)、セラチア(Serratia)(S.marcescens及びS.liquefaciensを含む);エドワードシエラ属(Edwardsiella);プロテウス属(Proteus)(includingP.mirabilis及びP.vulgarisを含む);ストレプトバシラス属(Streptobacillus);リケッチア科(Rickettsiaceae)(R.fickettsfiを含む)、クラミジア(Chlamydia)(C.psittaci及びC.trachornatisを含む);マイコバクテリウム属(Mycobacterium)(M.tuberculosis,M.intracellulare、M.folluiturn、M.laprae、M.avium、M.bovis、M.africanum、M.kansasii、M.intracellulare及びM.lepraernuriumを含む); 及びノカルジア(Nocardia)によって引き起こされる感染症が含まれるが、これらに限定されない。
【0273】
本発明に従って治療され得る原虫感染症には、リーシュマニア、コクジディオア(kokzidioa)及びトリパノソーマによって引き起こされる感染症が含まれるが、これらに限定されるものではない。感染性疾患の完全なリストは、疾病対策センター(CDC)にある国立感染症センター(NCID)のホームページ上に記載されており(World Wide Web (www) at cdc.gov/ncidod/diseases/)、このリストは、参照により、本明細書に組み込まれる。前記疾病の全てが、本発明の交叉反応性阻害性KIR抗体を用いた治療の候補である。
【0274】
様々な感染性疾患を治療するこのような方法は、単独で、又は他の処置及び/又はこのような疾病を治療することが知られている治療剤(抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗菌剤、抗生物質、抗寄生虫剤及び抗原虫剤を含む)と組み合わせて、本発明の抗体組成物を使用することができる。これらの方法が、追加の治療剤を用いた追加の処置を含む場合には、これらの治療剤は、単一剤形として、又は別個の複数剤形として、本発明の抗体とともに投与することができる。別個の剤形として投与されるときには、前記追加の治療剤は、本発明の抗体の投与の前、同時、後に投与することができる。
【0275】
本発明のさらなる側面及び利点は、以下の実験の部に開示されている。以下の実験の部は例示であり、本願の範囲を限定すると解釈してはならない。
【0276】
[例]
例1: PBLsの精製及びポリクローナル又はクローナルNK細胞株の作製
PBLsは、Ficoll-Hypaqueグラジエント及びプラスチック接着細胞を枯渇させることによって、健康なドナーから得た。濃縮されたNK細胞を得るために、抗CD3、抗CD4及び抗HLA-DR mAb(4℃で30分)とともにPBLsをインキュベートし、次にヤギ抗マウス磁気ビーズ(Dynal)(4℃で30分)とともにインキュベートし、当該技術で公知の方法によって免疫磁気選択を行った(Pende et al., J Exp Med 1999;190:1505-1516)。放射線照射されたフィーダー細胞及び100U/mL インターロイキン2(Proleukin, Chiron Corporation)、及び1.5ng/mLフィトヘマグルチニンA(GibcoBRL)でCD3-、CD4-、DR-細胞を培養し、ポリクローナルNK細胞集団を得た。NK細胞を限界希釈によってクローニングし、NK細胞のクローンを細胞表面レセプターの発現に関してフローサイトメトリーで特性を決定した。
【0277】
使用したmAbは、JT3A(IgG2a、抗CD3)、EB6及びGL183(それぞれ、IgG1、抗KIR2DL1及びKIR2DL3)、XA−141(IgM、EB6と同じ特異性を有する抗KIR2DL1)、抗CD4(HP2.6)及び抗DR(D1.12、IgG2a)であった。JT3A、HP2.6、及びDR1.12の代わりに、同じ特異性を有する他の商業的に利用可能なmAbを使用することができる。EB6及びGL183は、商業的に利用可能である(Beckman Coulter Inc., Fullerton,CA)。XA−141は市販されていないが、mAb EB6は、本願の例および図面に示されるとおり、Moretta等(Moretta et al., J Exp Med 1993;178:597-604)に記載のように、溶解の対照の再構成のために使用することができる。
【0278】
適切な抗体(4℃で30mns)により細胞を染色し、次にPE又はFITC抱合ポリクローナル抗マウス抗体(Southern Biotechnology Associates Inc)によって染色した。FACScan装置(Becton Dickinson, Mountain View, CA)での細胞蛍光測定分析(フローサイトメトリー)によって、試料を分析した。
【0279】
本研究では、以下のNK細胞クローンを使用した。CP11、CN5及びCN505は、KIR2DL1陽性クローンであり、EB6(IgG1、抗KIR2DL1)又はXA−141(EB6抗体と比べて同じ特異性を有するIgM、抗KIR2DL1)によって染色される。CN12及びCP502は、KIR2DL3発現NKクローンであり、GL183抗体(IgG1、抗KIR2DL/3)によって染色される。
【0280】
NKクローンの細胞溶解活性は、HLA-Cw3または-Cw4を発現している標的細胞(NK細胞溶解に対して感受性があることが知られているHLA陽性細胞株)を殺傷する彼等の能力に関してエフェクターNK細胞を検査する、標準的な4時間の51Cr放出アッセイによって評価した。全ての標的は、マイクロタイター96-ウェルプレート中、5000細胞/ウェルで使用した。エフェクター:標的の比は、図に記されている(通常は、4エフェクター/標的細胞)。1/2(1:1)希釈の表記モノクローナル抗体のハイブリドーマ上清を加えて又は加えずに、細胞溶解アッセイを行った。手順は、Moretta等(Moretta et al., J Exp Med 1993;178:597-604)に記載されているものと基本的に同じであった。
【0281】
例2: 新規のmAbの作製
Moretta等(Moretta et al., J Exp Med 1990;172:1589-1598)に記載されているように、活性化されたポリクローナル又はモノクローナルなヒトNK細胞株で、5週齢のBalb/Cマウスを免疫することによって、mAbを作製した。異なる細胞融合の後、まず、EB6及びGL183陽性NK細胞株及びクローンと交差反応する能力について、mAbsを選択した。さらに、それぞれ、Cw4又はCw3陽性標的のEB6陽性又はGL183陽性NKクローンによって、溶解を再構成(reconstitute)する能力について、陽性モノクローナル抗体のスクリーニングを行った。
【0282】
細胞の染色は、以下のように行った。抗体のパネル(1μg/mL又は50μL上清、4℃で30mns)で細胞を染色し、続いて、PE抱合ヤギF(ab’)2断片 抗マウスIgG(H+L)又はPE抱合ヤギF(ab’)2断片 抗ヒトIgG(Fcガンマ)抗体(Beckman Coulter)で染色した。細胞蛍光測定分析は、Epics XL.MCL装置(Beckman Coulter)で行った。
【0283】
モノクローナル抗体のうちの一つ、DF200 mAbは、KIR2DL1、およびKIR2DL2/3を含む、KIRファミリーの様々なメンバーと反応することが明らかとなった。KIR2DL1−陽性及びKIR2DL2/3陽性のNK細胞の両方が、DF200mAbで明るく染色された(
図1)。
【0284】
これらのHLAクラスI特異的な阻害性レセプターの一方又は他方(又は、ある場合には両方)を発現するNKクローンを、1または複数のHLA−C対立遺伝子を発現する標的細胞に対するエフェクター細胞として使用した。細胞毒性アッセイは、以下のように行った。YTS−KIR2DL1又はYTS−Eco(KIR-ネガティブ)細胞株の細胞溶解活性は、標準的な4時間の51Cr放出アッセイによって評価した。標的細胞は、HLA−Cw4陽性又は陰性B-EBV細胞株、またはHLA−Cw4をトランスフェクトされた721.221細胞であった。全ての標的は、マイクロタイタープレート中、3000細胞/ウェルで使用した。エフェクター/標的比は、図に記されている。モノクローナルマウス又はヒト抗体の表記の完全長又はF(ab’)2断片を加えて又は加えずに、細胞溶解アッセイを行った。予想通り、KIR2DL1陽性(KIR2DL1+)NKクローンは、細胞溶解活性が存在する場合でも、HLA−Cw4を発現する標的細胞に対して細胞溶解活性をほとんど示さず、KIR2DL3+ NKクローンは、Cw3陽性標的に対して、殆ど又は全く活性を示さなかった。しかしながら、DF200mAb(彼等のKIR2DL受容体をマスクするために使用された)の存在下では、NKクローンはそれらのHLA−Cリガンドを認識することが不可能となり、Cw3-またはCw4-を発現する標的に対して強い細胞溶解活性を示した(結果の例は、
図2〜6に示される)。
【0285】
例えば、C1R細胞株(CW4+ EBV細胞株、ATCC No. CRL -1993)は、HLA-Cw4を発現し(しかし、グループ1 HLA-Cアロタイプはしない)、KIR2DL1陽性NKクローン(CN5/CN505)によって殺傷されなかった。しかし、この阻害は、DF200又は従来の抗KIR2DL1 mAbのうち何れかの使用によって、効率的に元に戻すことができた。これに対して、KIR2DL2/3+ KIR2DL1−表現型を発現するNKクローン(CN12)は、C1R細胞を効率的に殺傷させ、この殺傷は、DF200mAbによって影響を受けなかった(
図2)。Cw3陽性標的に対してKIR2DL2−又はKIR2DL3−陽性NKクローンを用いた場合にも、同様の結果が得られる。
【0286】
同様に、Cw4+221 EBV細胞株は、KIR2DL1+トランスフェクトNK細胞によって殺傷されなかったが、DF200 mAb、DF200のFab断片、又は従来の抗KIR2DL1 mAb EB6若しくはXA141を使用することによって、効率的に阻害を元に戻すことができた。また、Cw3陽性721.221トランスフェクタントは、KIR2DL2+NK細胞によって殺傷されなかったが、この阻害は、DF200又はDF200 Fab断片のうち何れかを使用することによって元に戻すことができた。最後に、Cw3+721.221トランスフェクタントは、KIR2DL3+NK細胞によって殺傷されなかったが、この阻害は、DF200 Fab断片又は従来の抗KIR2DL3 mAb GL183若しくはY249の何れかを使用することによって、元に戻すことができた。結果を
図3に示す。
【0287】
Cw4陽性標的の溶解を再構成する能力について、F(ab’)2断片も検査した。DF200及びEB6 AbsのF(ab’)2断片は何れも、Cw4をトランスフェクトされた221細胞株及びCw4+ TUBO EBV細胞株の、KIR2DL1−トランスフェクトNK細胞による溶解の阻害を回復させることができた。結果を
図4に示す。
【0288】
例3: DF200 mAb/KIR2DL1およびDF200 mAb/KIR2DL3相互作用のBiacore分析
組換えタンパク質の作製と精製KIR2DL1及びKIR2DL3組換えタンパク質を、大腸菌で作製した。以下のプライマーを用いて、それぞれ、pCDM8クローン47.11ベクター(Biassoni et al, Eur J Immunol. 1993;23:1083-7)及びRSVS(gpt)183クローン6 ベクター(Wagtmann et al, Immunity 1995;2:439-49 and 1995;3: 801-809)から、KIR2DL1(配列番号23)及びKIR2DL3(配列番号25)の細胞外ドメイン全体をコードするcDNAを、PCRによって増幅した。
【0289】
センス:5'-GGAATTCCAGGAGGAATTTAAAATGCATGAGGGAGTCCACAG-3'(配列番号13)
アンチセンス:5'-CGGGATCCCAGGTGTCTGGGGTTACC-3'(配列番号14)
ビオチン化シグナルをコードしている配列とともに、それらをpML1発現ベクター中にインフレームにクローン化した(Saulquin et al, J Exp Med. 2003;197:933-8)。
【0290】
タンパク質発現は、BL21(DE3)細菌株(Invitrogen)の中で行った。アンピシリン(100μg/mL)を補充した培地中にて、37℃で、OD600=0.6になるまで、トランスフェクトされた細菌を増殖させ、1mM IPTGで発現を誘導した。
【0291】
変性条件下(8M尿素)で、タンパク質を封入体から回収した。組換えタンパク質の再折り畳みは、6段階の透析で尿素濃度を減少させることによって(それぞれ、4、3、2、1、0.5 及び0Mの尿素)、室温で、L−アルギニン(400 mM, Sigma)及びβ−メルカプトエタノール(1mM)を含有する20 mM Tris, pH 7.8、NaCl 150 mM緩衝液中において行った。0.5及び0Mの尿素透析工程の間に、還元されたグルタチオン及び酸化されたグルタチオン(それぞれ、5mM及び0.5mM、Sigma)を添加した。最後に、10mM Tris, pH 7.5、NaCl 150mM緩衝液に対して、タンパク質を徹底的に透析した。再折り畳みされた可溶性タンパク質を濃縮し、次いで、Superdex 200サイズ排除カラム(Pharmacia; AKTA system)上で精製した。
【0292】
表面プラズモン共鳴測定は、Biacore装置(Biacore)によって行った。全てのBiacore実験では、0.05%の界面活性剤P20を補充したHBS緩衝液が、ランニングバッファーとしての役割を果たした。
【0293】
タンパク質の固定上記のように作製された組換えKIR2DL1及びKIR2DL3タンパク質を、Sensor Chip CM5(Biacore)上にあるデキストラン層中のカルボキシル基に共有結合により固定した。センサーチップの表面を、EDC/NHS(N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドハイドロクロライド及びN−ヒドロキシスクシンイミド、Biacore)で活性化した。カップリング緩衝液(10mM 酢酸塩、pH4.5)中のタンパク質を注入した。残存する活性化された基の不活性化は、100mM エタノールアミン pH8(Biacore)を用いて実施した。
【0294】
親和性測定。速度論の測定のために、様々な濃度の可溶性抗体(1×10−7から4×10−10M)を、前記固定された試料上に与えた。測定は、20μL/分の継続的な流速で実施した。各サイクルについて、センサーチップの表面を、5μL注入の10mM NaOH pH11によって再生した。データ解析には、BIAlogue Kinetics Evaluation program (BIAevaluation 3.1, Biacore)を使用した。可溶性検体(様々な濃度で40μL)を、20μL/分の流速で、HBS緩衝液中、それぞれ、500又は540反射ユニット(RU)及び1000又は700RUのKIR2DL1及びKIR2DL3を含有するデキストラン層上に注入した。データは、6つの独立した実験を代表するものである。結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0295】
例4: 新規のヒト抗KIR mAbの作製
ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されたトランスジェニックマウスを、組換え可溶性KIRタンパク質で免疫することによって、ヒトモノクローナル抗KIR Abを作製した。ハイブリドーマを樹立するための異なる細胞融合の後、まず、固定化されたKIR2DL1及びKIR2DL3タンパク質(上記の例3に記載のとおり産生された)と交叉反応する能力について、mAbsを選択した。1−7F9、1−4F1、1−6F5及び1−6F1を含む幾つかのヒトモノクローナル抗体は、KIR2DL1及びKIR2DL2/3と交差反応されることが見出された。
【0296】
陽性モノクローナル抗体を、Cw4陽性標的細胞に対するKIR2DL1陽性NKトランスフェクタントによる溶解を再構成する能力について、さらに選抜を行った。HLAクラスI特異的な阻害性レセプターを発現しているNK細胞を、1または複数のHLA−C対立遺伝子を発現する標的細胞に対するエフェクター細胞として使用した(
図5及び6)。細胞毒性アッセイは、上記のように行った。エフェクター/標的比は、図面に記されており、抗体は10μg/mL又は30μg/mLの何れかで使用した。
【0297】
予想通り、KIR2DL1+ NK細胞は、細胞溶解活性が存在する場合でも、HLA−Cw4を発現する標的細胞に対する細胞溶解活性を若干しか示さなかった。しかしながら,1−7F9 mAbの存在下では、NK細胞はそれらのHLA−Cを認識することが不可能となり(即ち、もはやHLA-C分子によって阻害されない)、そしてCw4陽性標的に対して強い細胞溶解活性を示した。例えば、検査した2つの細胞株(HLA−Cw4トランスフェクト721.221及びCW4+EBV細胞株)は、KIR2DL1+ NKクローン細胞によって殺傷されなかったが、この阻害は、mAb 1−7F9又は従来の抗KIR2DL1 mAb EB6のうち何れかを使用することによって、効率的に元に戻すことができた。マウスのmAbs DF200およびPan2D(NKVSF1)をヒトmAb 1-7F9と比較した。そして、全ての実験において、1-7F9は、NK細胞による細胞障害性の誘導に関して試験された任意の他のmAbsよりもより強力であった。これに対して、抗体1−4F1、1−6F5及び1−6F1は、Cw4陽性標的に対する、NK細胞による細胞溶解を再構成することができなかった。
【0298】
例5: マウス及びヒトの抗KIR抗体のBiacore競合結合分析
以前に記載された方法(Gauthier et al., Journal of Immunology 1999;162:41-50; Saunal and van Regenmortel, Journal of Immunology 1995;183:33-41)にしたがって、固定化されたKIR2DL1(900 RU), KIR2DL3(2000 RU)およびKIR2DS1(1000 RU)に対して、マウス抗-KIR2D抗体 DF200, NKVSF1(Pan2D), gl183 およびEB6,およびヒト抗-KIR2D抗体1-4F1, 1-6F1, 1-6F5および1-7F9でエピトープマッピング分析を行った。
【0299】
全ての実験は、15μg/mLで様々な抗体を2分間注入し、HBS緩衝液中、5μL/分の流速で行った。抗体の各ペアに対して、競合結合分析を2段階で実施した。第一段階では、第一のモノクローナル抗体(mAb)をKIR2D標的タンパク質上に注入し、次に(第一のmAbを除去せずに)第二のmAbを注入し、第二のmAbのRU値(RU2)をモニターした。第二段階では、まず、第二のmAbを裸(nude)のKIR2Dタンパク質上に直接注入し、mAb RU値(RU1)をモニターした。第一のmabによる、KIR 2Dタンパク質への第二のmAbの結合のパーセント阻害を、100*(1−RU2/RU1)によって計算した。
【0300】
結果を表2、3及び4に示す。表2、3及び4において、「第一の抗体」と表記される抗体が縦の欄に列記されており、「第二の抗体」が横の欄に列記されている。検査した各抗体の組み合わせについて、チップへの抗体の直接結合レベル(RU)の値が表中に列記されている。表中では、第二の抗体のKIR2Dチップへの直接結合が欄の上部に列記されており、第一の抗体が存在する際の、KIR2Dチップへの第二の抗体の結合に対する値が欄の下部に列記されている。各欄の右側に列記されているのは、第二の抗体結合のパーセント阻害である。表2は、KIR2DL1チップ上への結合を示しており、表3は、KIR2DL3チップへの抗体の結合を示しており、表4は、KIR2DS1チップへの抗体の結合を示している。
【0301】
固定されたKIR2DL1、KIR2DL2/3及びKIR2DS1への、マウス抗体DF200、NKVSF1及びEB6並びにヒト抗体1−4F1、1−7F9及び1−6F1の競合結合を評価した。KIR2DL1への抗KIR抗体の結合を用いた実験から得られたエピトープマッピング(
図7)は、(a)抗体1−7F9がEB6及び1−4F1と競合するが、NKVSF1及びDF200とは競合しないこと、(b)次に、抗体1−4F1は、EB6、DF200、NKVSF1及び1−7 F9と競合すること;(c)NKVSF1は、DF200、1−4F1及びEB6と競合するが、1−7F9とは競合しないこと;並びに(d)DF200は、NKVSF1、1−4F1及びEB6と競合するが、1−7F9とは競合しないことを、示した。KIR2DL3への抗KIR抗体の結合を用いた実験から得られたエピトープマッピング(
図8)は、(a)1−4F1がNKVSF1、DF200、gl183及び1−7F9と競合すること;(b)1−7F9がDF200、gl183及び1−4F1と競合するが、NKVSF1とは競合しないこと;(c)NKVSF1は、DF200、1−4F1及びGL183と競合するが、1−7F9とは競合しないこと;並びに、(d)DF200は、NKVSF1、1−4F1及び1−7F9と競合するが、GL183とは競合しないことを、示した。KIR2DS1への抗KIR抗体の結合を用いた実験から得られたエピトープマッピング(
図9)は、(a)抗体1−4F1がNKVSF1、DF200及び1−7F9と競合すること;(b)1−7F9は、1−4F1と競合するが、DF200及びNKVSF1とは競合しないこと;(c)NKVSF1は、DF200及び1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しないこと;並びに、(d)DF200は、NKVSF1及び1−4F1と競合するが、1−7F9とは競合しないことを、示した。
【表2】
【表3】
【表4】
【0302】
例6: カニクイザルNK細胞を用いた抗KIR mAb滴定
カイクイザルから得られたNK細胞への結合能について、抗KIR抗体NKVSF1を検査した。
【0303】
サルPBMCの精製及びポリクローナルNK細胞バルクの作製カニクイザルのPBMCを Sodium citrate CPTチューブ(Becton Dickinson)から調製した。NK細胞の精製は、陰性の枯渇によって行った(Macaque NK細胞 enrichment kit, Stem Cell Technology)。NK細胞を、放射線照射されたヒト支持細胞に300U/mL インターロイキン2(Proleukin, Chiron Corporation)、及び1ng/mL フィトヘマグルチニンA(Invitrogen, Gibco)を伴うもので培養し、ポリクローナルNK細胞集団を得た。
【0304】
カニクイザルNK細胞を用いたPan2D mAb滴定カニクイザルNK細胞(NKバルク16日)を異なる量のPan2D mAbとともにインキュベートし、続いて、PE抱合されたヤギ(Fab’)2断片抗マウスIgG(H+L)抗体とともにインキュベートした。陽性細胞のパーセントは、アイソタイプ対照(精製されたマウスIgG1)を用いて決定した。試料は、二つ組み(duplicate)で行った。平均蛍光強度=MFI。
【0305】
サルのNK細胞への抗体の結合が
図10に示されている。
【0306】
例7: ヒト抗-KIR mAbsのスクリーニング
ヒト抗体レパートリーを発現するように操作されたトランスジェニックマウスを、組換えKIRタンパク質で免疫することによって、ヒトモノクローナル抗KIR Absを作製した(例4に記載のとおり)。交差反応性の抗-KIR抗体を作出するために、異なるKIRsを例3に記載の可溶化型で又は細胞の表面で発現させて、動物を順番に免疫した。
【0307】
次に、異なる細胞を融合させた後、まず、固定化されたKIR2DL1及びKIR2DL3タンパク質と交叉反応する能力について、ELISAで標準的な方法を用いてmAbsを選択した。1-7F9、1-4F1、1-6F5および1-6F1を含む幾つかのヒトモノクローナル抗体は、KIR2DL1、KIR2DL2およびKIR2DL3の全てとELISAで反応することが見出された。KIR2DL1およびKIR2DL2/3の両方と反応するmAbsは、「KIR2DL交差反応性 mAbs(KIR2DL-crossreactive mAbs)」と命名された。
【0308】
前記KIR2DL交差反応性 mAbsを、次にKIRと細胞の表面で反応する能力に関して、フローサイトメトリーで検査した。簡単に説明すると、ヒト抗-KIR mAbsの結合を、それらを、安定的にKIRsを過剰発現している(例えば、YTS-2DL1, BWZ-KIR2DL2 and BWZ-KIR2DS4)又はKIRsを発現していない(例えば、YTSおよびBWZ) 様々な細胞株とインキュベーションして検査した。簡単に説明すると、細胞を、2%FCSを含有しているDMEM培地中にヒト抗-KIR mAb1-7F9を様々な濃度(典型的には、0〜50μg/ml)で有するものでインキュベーションした。インキュベーション後、細胞を、洗浄し、ヒトIgGに特異的なAPC抱合二次抗体でインキュベーションした。全てのインキュベーションおよび洗浄の工程は、0〜4゜Cで実施した。引き続いて、細胞を、洗浄し、PBS中に再懸濁し、FACScaliburまたはFACScanto(双方ともBeckton Dickinsonより)を用いたフローサイトメトリーで分析した。典型的な例を、
図16に示す。例えば、1-7F9および1-4F1は、KIR2DS4でトランスフェクトされた細胞に結合しないこと、他方でNKVSF1(Pan2D)は結合したことが見出された(
図16)。
【0309】
次に、ヒト抗-KIR mAbsがKIRとそのHLA-Cリガンドとの間の相互作用をブロックする能力を、1)生化学的な、直接的な結合実験、および2) 溶解アッセイの機能的な再構成によって試験した。
【0310】
生化学的な結合実験において、ヒト抗-KIR mAbs(1-7F9を含む)が、HLA-CとKIR-分子との間の相互作用をブロックする能力を、可溶性の組換え型KIR-Fc融合タンパク質をHLA-Cを発現している細胞との結合と競合させることによって評価した。KIR-Fcタンパク質を、Wagtmann等(Wagtmann et al., Immunity 1995; 3(6):801-9)に記載のとおり産生した(但し、ヒトFcを、マウスIgG1 Fcで置換した)。可溶性KIR-Fcは、特定のHLA-Cアロタイプ(これはKIR2DL1によって認識される)を発現している細胞に結合する。そして、この結合は、KIR-Fcタンパク質のマウスFc部分に特異的な二次的な蛍光色素結合Abを用いたフローサイトメトリーによって視覚化することができる。例えば、KIR2DL1-Fcは、HLA-Cw*0402(LCL 721.221-Cw4 トランスフェクタント) (Litwin et al., J Exp Med. 1993; 178:1321-36)でトランスフェクションされた細胞に結合した。しかし、トランスフェクションされなかったLCL721.221細胞へは結合しなかった(
図11Aを参照されたい)。抗-KIR mAbsがKIR2DL1-FcとHLA-Cw4との間のこの相互作用を阻止するかどうかを試験するために、KIR2DL1-FCタンパク質を抗-KIR mAbsの濃度を増加させたものとプレインキュベーションし、次にLCL 721.221-Cw4細胞に添加し、4゜Cでインキュベーションし、洗浄し、APC-結合抗マウスIgG1 Fcでインキュベーションし、洗浄し、そしてFACScaliburまたはFACScanto(Beckton Dickinson)を用いたフローサイトメトリーで標準的な方法で分析した。幾つかのマウス抗-KIR mAbs(例えば、DF200)および幾つかのヒト抗-KIR mAbs(すなわち1-7F9および1-4F1)は、KIR2DL1-FcがHLA-Cw4を発現している細胞へ結合することを阻止し、これによってこれらのmAbsがKIR2DL1およびHLA-Cw4間の相互作用をブロックすることが示された。例として、
図17AはDF200がKIR2DL1-FcがHLA-Cw4を発現している細胞へ結合することを阻止することを示す。
図17Bは、1-7F9 mAbsが、KIR2DL1のHLA-Cw4への結合を阻止(prevented)することを示している。同時に、抗-KIR mAbsを、KIR2DL2のHLA-Cw3への結合を阻止する能力に関して試験した。KIR2DL-FcのHLA-C-発現細胞への結合を用量依存的に阻止する抗体(
図17に例示されたとおり)は、「ブロッキング mAbs(blocking mAbs)」と称され、以下に記す機能的な細胞毒性アッセイでさらに試験された。
【0311】
ヒト抗-KIR mAbsの治療上の有用性は、KIR発現NK細胞による腫瘍細胞の殺傷を、KIRを介した阻害性シグナルを阻止することによって誘導する能力と関連している。従って、ヒトKIR2DL交差反応性及びブロッキング mAbsが、HLA-Cを発現している標的細胞の溶解を、KIR2DLを発現しているNK細胞によって誘導できるかどうかを評価することは重要であった。この目的のために、以下に記載する実験が実施された:
51Cr-放出細胞障害性アッセイにおいて、KIR2DL1-発現YTS細胞(YTS-2DL1)は、LCL 721.221-Cw3を殺傷することが可能であるが、LCL721.221-Cw4細胞は不可能である(
図18A)。対照的に、KIRsを欠損しているYTSエフェクター細胞(YTS)は、両細胞株を効果的に殺傷した。以上のように、YTS-2DL1エフェクター細胞は、LCL 721.221-Cw4細胞を殺傷することはできなかった(この結果は、KIR2DL1を介したHLA-Cw4-誘導阻害性シグナリングによるものである)。YTS-2DL1細胞が1-7F9と51Cr放出細胞毒性アッセイにおいてプレインキュベーションされたとき、LCL721.221-Cw4細胞は1-7F9の濃度依存的な様式で殺傷された(
図18B)。3-1F13(KIR2DL1と高親和性で結合するが、KIR2DL1およびHLA-Cw4の間の相互作用を阻止することができない、ヒト交差反応性の抗-KIR mAb)は、YTS-2DL1細胞によるLCL721.221-Cw4細胞の殺傷を誘導することができない。従って、1-7F9は、標的細胞のNK媒介性の殺傷を、NK-および標的細胞の間のKIR-HLA-C相互作用を阻止することによって誘導する。
【0312】
例8: 1-7F9の親和性測定
KIR2DL1およびKIR2DL3への結合に対する1-7F9の親和性を、Biacore分析によって、例3に記載のとおり産生させた可溶性の組換え型KIRタンパク質を用いて測定した。Biacore実験を例3に記載のとおり実施した(但し、使用した抗体は、ヒトmAb 1-7F9であった)。
【0313】
1-7F9によるKIR2DL1および-3への結合の親和性決定の結果を、表5に示す。
【表5】
【0314】
例9: KIR2DL1における1-7F9のエピトープマッピング
所与のモノクローナル抗体の所与の抗原におけるエピトープマッピングは、インシリコ法で、(適切な場合には)、抗体および抗原の双方の存在するX線構造/相同性モデルに、タンパク質間ドッキングを実施することによって得ることができる。
【0315】
抗体の相同性モデルは、それぞれ軽鎖および重鎖の配列と3D構造が存在する抗体の選択物とを整列させることによって得ることができる。6つの相補性決定領域(CDRs)の長さを計算することが可能であり、最適な鋳型は同じCDR長を有する抗体から選択される。標準の技術を用いて、相同性モデルを選択された鋳型から構築することができる。
【0316】
タンパク質間ドッキングのアプローチにおいて、〔最近、論評された(Schneidman-Duhovny et al., Curr Med Chem 2004;11:91-107)〕、2つの表面が表面上の特徴によって表される。特徴には、水素結合の可能性、荷電、および疎水性が含まれる。格子に基づく方法(a grid based method)において、空間は立方体へと分離され、各立方体は表面(内部、表面、外部)に関して自身のポジションに応じた値を与えられ、関連する特徴のセットを割当られる。スコアリング機能による表面の強制的マッチング(Brute force matching)は、3つの並進(translational)および3つの回転角(rotational degree)の全体の自由度を検索することによって現在実施することができる。並進角は高速フーリエ変換によって操作され、回転角は回転空間の標準的な離角(discretization)内で個々の計算値として処理される。トップにスコアリングされた複合体から、特定の方法〔例えば、形状の相補性、ファンデルワールス相互作用、疎水性、静電性(electrostatics)、脱溶媒(desolvation)、水素結合、原子接触エネルギー、残基間ペアリングの統計(residue-residue pairing statistics)および親水基ペアリング〕によって、結果をフィルターし、スコアをつけることができる。トップにスコアリングされた複合体(top-scoring complexes)を詳細に評価することが可能であり、相互作用している残基及びこれによって前記エピトープを同定することができる。
【0317】
方法および分析
KIRsに関する残基およびドメインの命名は、Fan等(Nature 1997;389:96-100)にしたがった;つまり、ドメイン1は残基6〜101を具備し、ドメイン2はアミノ酸残基105〜200を具備する)。
【0318】
1-7F9の相同性モデルを、1OM3を鋳型として用いて構築した。1OM3構造〔Calarese等(Science 2003;300:2065, et seq.)によって作製された〕は、PDB 〔Protein Data Bank, at World Wide Web (WWW) address rcsb.org/pdb/; 1OM3 VL配列:配列番号34; 1OM3 VH配列:配列番号35〕から得られた。カバット ナンバリングおよびCDR割当が使用された。全体のアラインメントは良好であった。そして、CDR長は同一であったので、相同性モデルは、タンパク質間ドッキング実験に使用するのに十分正確であろう。
【0319】
1-7F9抗体相同性モデルをKIR2DL1構造へタンパク質間ドッキングさせることによって、1NKR.pdb 2000の解答が得られた。それらは、D183(原子 <6Å CDから)およびR131(原子 <12Å CZから)への近接性に関してフィルターされ、そして結果的に133の解答が詳細に分析された。
【0320】
形成された最高とスコアリングされた複合体を、分析し、R131 (KIR)およびD100C(重鎖)間の可能な相互作用を同定し、そして拘束(restrained)した。F181に関する新しい回転異性体(rotamer)を選択し、エネルギーを最小化させた。このモデルによって、次の事項が予測された;その事項とは、前記抗体がKIR2DL1(配列番号23)上で次に記す残基、即ち:S20 (Hyd, CB) (Hydアクセプター, OG), E21 (Hyd, CB, CG), M44 (Hyd, SD, CE), F45 (Hyd, CD1, CD1, CZ, CE2), R68 (Hydドナー, NH2), T70 (Hyd, CB, CG2), Q71 (Hyd, CG), L104 (Hyd, CB, CG, CD1, CD2), Y105 (Hyd, CG, CD2, CE2), R131 (Ion, NH2) (Hydドナー, NH2), S133 (Hyd, CA, CB) (Hydドナー/アクセプター, OG), Y134 (Hyd, CD1, CE1), F181 (Hyd, CB, CG, CD1, CD2, CE1, CE2, CZ), およびD183 (Hyd, CB)と相互作用することである。
【0321】
例10: マウス及びヒト抗KIR抗体のBiacore競合結合分析
1-7F9、Pan2D (NKVSF1)、およびDF200の競合的な結合を、例5に記載された方法と同じ方法によって評価した。
【0322】
結果を表6および7に示す。表6および7において、「第一の抗体(first antibody)」と表記される抗体が縦の欄に列記されており、「第二の抗体(second antibody)」が横の欄に列記されている。試験された各抗体の組合せに対して、第二の抗体のパーセンテージ阻害(percentage inhibition)が列記される。特定の抗体ペアに対する阻害のパーセンテージが40%を超える場合、どの抗体が第一の抗体として使用されたかにかかわらず、前記抗体は競合的であると考えた。表6はKIR2DL1チップへの結合を示す。そして、表7は抗体のKIR2DL3チップへの結合を示す。
【0323】
簡単に説明すると、KIR2DL1結合に関して、結果は次の事項を示している;その事項とは、DF200およびPan2Dは競合的であり、1-7F9はDF200またはPan2Dの何れかと競合的ではないことである。KIR2DL3結合に関して、DF200およびPan2Dは競合的であり、1-7F9はPan2Dと競合的ではないが、DF200とは競合的であった。
【表6】
【表7】
【0324】
例11: HuKIR1-7F9-Fab'との複合体における、KIR2DL1の結晶構造
1-7F9のFab'断片との複合体におけるKIR2DL1の結晶構造は、X線結晶学で解析され、2.35Åの解像度で示された。結果は、前記抗体が、KIR2DL1と結合した場合に、MHCクラスI分子との結合をブロックすることができることを確認した(
図19)。
【0325】
材料および方法
細胞外KIR2DL1(配列番号23のアミノ酸1〜223、残基16はアルギニン(R)であり、残基114はロイシン(L)であり、付加的なN末端メチオニン(M)残基を含んでいる)およびHuKIR1-7F9 Fab'(配列番号36の軽鎖配列および配列番号37の残基1〜221の重鎖配列を有する)が、若干過剰な量のKIR2DL1と混合された。そして、この複合体は、ゲル濾過カラム上で精製された。前記複合体は、次に約13.5mg/mlまで濃縮された。結晶を、ハングドロップ法で10%PEG6000および500mMクエン酸緩衝剤(pH4.2)中で成長させた。結晶を、液体N2中で瞬間凍結(flash frozen)した。そして、結晶データを、2.35Åの解像度で100Kでビーム・ライン(BL711I, MAX-lab, Lund, Sweden)を用いて収集した。データを、XDSプログラム(Kabsch, J. Appl. Crystallogr. 1993; 26:795-800)で統合した。構造決定分子置換に関して、CCP4スートのMOLREPプログラム(Bailey, Acta Crystallogr. Sect. D-Biol. Crystallogr. 1994; 50:760-763)およびPDBに登録された構造1RZJ(Fab part1)および1NKR(KIR)を使用した。位相改善(Phase improvements)は、ARP/WARPプログラム(Lamzin and Wilson, Acta Crystallogr. Sect. D-Biol. Crystallogr. 1993;49:129-147)で作製された。そして、X線由来構造モデルへのマニュアルでの修正は、QUANTAプログラム(Accelrys Inc., San Diego, CA, USAから利用可能)で作製された。リファインメントを、CCP4スート(CCP4 suite)のREFMAC5コンピュータプログラムで実施した。水分子を、ARP/WARPプログラムによって付加した。前記モデルには、KIR2DL1の残基6〜114および124〜200、1-7F9軽鎖の1〜212および1〜7F9重鎖の1〜136と共に143〜224が含まれる。加えて、330の水分子が配置された。前記モデルに関して、R-およびR-フリーは、それぞれ0.191および0.253であった。
【0326】
結 果
接触は、CCP4スートのCONTACTコンピュータプログラムによって、Fab'およびKIR2DL1分子間の4.0Åのカットオフ距離を用いて同定された。ヒト1-7F9に関する結果的に得られたKIR2DL1エピトープは、KIR2DL1(配列番号23)の残基:L38, R41, M44, F45, N46, D47, T48, L49, R50, I52, F64, D72, Y80, P87, およびY88を含むことが見出された(表8および9)。KIR2DL1との相互作用に関与する1-7F9の残基には、1-7F9可変軽(VL)鎖(配列番号15, 表8)のS28, V29, S30, Y32, S92, N93, およびW94並びに可変重(VH)鎖(配列番号17)のT28, F29, S30, F31, I54, F55, E74, S77, G102, S103, Y105, Y106, D107, およびY108が含まれていた。また、KIR2DL1エピトープ(及び水素結合に関与する残基)は、
図20におけるKIR2DL1のアミノ酸配列中に指摘される。座標リファインメント(coordinate refinement)から得られた等方性(isotropic)の置き換え因子(「温度因子」または「B値」とも称される)は、KIR2DL1のN末端ドメインおよび1-7F9抗体Fab'断片の可変ドメインに関して比較的低い値を示し、全てのドメインは分子間結合に直接的に関与していた。これによって次の事項が示された;その事項とは、結晶の複合体における2つの分子間の結合力は強く安定であること、また結晶構造は安定なKIR2DL1/1-7F9 Fab'複合体を示していることを支持していることが示された。
【0327】
1-7F9 Fab'分子は、ドメインD1のC'CFGA' βシートの一方の側におけるKIR2DL1分子と結合するが、加えて、同じドメインの1つのE βストランド残基側鎖にも触れている。D1ドメインのループ残基へのコネクションも、結合に重要である〔トポロジーの命名規則に関して、Fan等(Fan et al., Nature 1997; 389:96-100)を参照されたい〕。より具体的には、コネクションは、KIR2DL1の次のトポロジー部分;βストランドC (アミノ酸L38およびR41), βストランドCおよびC'間のループ, L2(M44, F45およびN46), βストランド C'(D47, T48, L49, R50およびI52), βストランド E(F64), EおよびF βストランド間のループ, L3(D72), βストランド F(Y80)およびFおよびG βストランド(P87およびY88)間のループに対してなされる。
【0328】
HLA-Cw4分子は、KIR2DL1分子のD1およびD2 ドメインの双方へ結合するが(Fan et al. Nat. Immunol. 2001; 2: 452-460)、1-7F9抗体はKIR2DL1 D1ドメインのみと結合する。しかしながら、結合した1-7F9と結合したHLA-Cw4との間に空間的なオーバーラップが存在し、1-7F9抗体がHLA-Cw4と首尾よく置き換わるために十分大きい。KIR2DL1のHLA-Cw4との複合体における公開された構造(PDBアクセッションコード 1IM9)を用いて、KIR2DL1およびHLA-Cw4の間の接触残基をCONTACTプログラムで計算できる。4.0Åのカットオフの距離を用いた計算において、次の事項が認められる;その事項とは、HLA-Cw4残基との接触に関与する3つのKIR2DL1残基が、1-7F9/KIR2DL1複合体における接触残基と共通であることである(表8および9)。これらの3つのKIR2DL1残基は、M44、F45およびD72である。
【0329】
如何なる特定の理論に限定されることなく、結晶学による結果は、1-7F9が活性化NKレセプターKIR2DS4と結合しないことをも指摘する〔KIR2DS4配列(配列番号38)の細胞外部分におけるアミノ酸N47およびV72のため〕。
【表8】
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【0330】
例12: 1-7F9の物理的な安定性
ヒト抗体1-7F9の生物物理学的な特性および安定性を試験した。タンパク質の折りたたみおよび二次構造を、円二色性(CD)および動的光散乱(DLS;dynamic light scattering)によるオリゴマー形成および凝集によって試験した。保存条件(2年間、5℃)を模倣するために、タンパク質を37゜Cで14日間撹拌してインキュベーションした。
【0331】
材料および方法
サンプル調製2mg/ml 1-7F9を、(a)50mM Na-リン酸, 0.001%ポリソルベート80(シグマ, P8074), pH7.0;(b)50mM Na-リン酸塩, 0.001% ポリソルベート80, pH7.0, 0.5mMスクロース;(c)50mMクエン酸, 0.001%ポリソルベート80, pH3.0;および(d)50mM Tris, 0.001%ポリソルベート80, pH 8.5中で調製した。
【0332】
円二色性(CD)。CD測定を、25゜Cで2.0mg/mlのタンパク質濃度で、Chirascan円二色性分光計(Applied Photophysics)に温度制御のためのペルティエ素子を備えた機器で実施した。1-7F9サンプルを、0.1mm光路長を有する円柱状の石英セル中に存在させた。緩衝液のスキャンを記録し、各サンプルのスペクトルに関して差し引いた。
【0333】
動的光散乱(DLS)。DLSを、25゜Cで2.0mg/mlのタンパク質濃度で、Dynapro99温度制御DLS機器(Protein Solutions Inc.)を用いて実施した。データ分析を、前記機器に提供されたDynamicsソフトウェアを用いて実施した。
【0334】
結 果
他方では、分子サイズは、DLSによって評価された14日インキュベーション後のpH7.0でのサンプルに関して変化しなかった。サンプルの双方は、pH3.0で製剤化され、pH8.5は14日間で非常に凝集した。
【0335】
CD測定は、全てベータ構造の特徴を示し、また次の事項を明らかとした;その事項とは、pH7.0で製剤化されたサンプルは、加速試験(accelerated study)を通じて彼等の二次構造を保持したが、賦形剤としてポリソルベート80のみを含有しているサンプルに関するシグナルは若干降下した。これは、おそらくサンプルの弱い沈殿によるものであろう(というのも、スペクトルの全体の形態は、変化しなかったので)。スクロースを含有しているサンプルは、係る減少を示していない。pH3.0および8.5で製剤化したサンプルのCD測定は、超過時間(over time)のスペクトラム特性において強い変化を示し、これはおそらく未フォールディングまたは他のコンホメーション変化の結果であろう。これによって非機能的な1-7F9タンパク質を生じるだろう。前記変化は、即座に観察され、pH3.0で最も顕著であった。
【0336】
全般的に言えば、1-7F9はその物理的な特性を維持し、ストレス条件下(37゜Cで撹拌)、pH7.0でポリソルベート80およびスクロースを賦形剤として伴う際に安定性を維持する。
【0337】
例13: 1-7F9および1-4F1の親和性決定(一価の結合)
KIR2DL1およびKIR2DL3抗原に対する一価の結合における1-7F9および1-4F1の親和性は、(例3および8における二価結合親和性に対して)、Biacore3000を用いた表面プラズモン共鳴技術によって決定し得る。
【0338】
簡単に説明すると、抗-ヒトIgG(Dako RAHIgG, # 0423)を、20μL/minの流速でHBS-EP緩衝液と共に使用した。精製抗体を、10μg/mLまで希釈した。各抗体に対して、KIR2DL1またはKIR2DL3および緩衝液を注入した。前記抗原を、2000、500、200、50または20nMの濃度で試験した。流速を、20μL/minに維持した。表面の再生は、グリシン-HCl(pH1.8)の単回30sの注入で達成された。
【0339】
結果を表10に示す。1-4F1のKIR2DL1に対する結合に関して、ベースラインにおいて顕著なシフトが存在した。任意の特定の理論に限定されることなく、この事項は、マトリックスによる緩衝効果を、又は実際には2段階(例えば、前記抗原のコンホメーション変化のため)が関与する結合反応を表すものであろう。
【表10】
【0340】
[発明の例示的な側面]
1. 配列番号15または配列番号39と少なくとも50%同一のアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変領域、および/または配列番号17または配列番号41と少なくとも50%同一のアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変領域を具備している抗体。
【0341】
2. 配列番号15または配列番号39と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変領域、および/または配列番号17または配列番号41と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変領域を具備している抗体。
【0342】
3. 配列番号15または配列番号39と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変領域、および/または配列番号17または配列番号41と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変領域を具備している抗体。
【0343】
4. 配列番号15または配列番号39と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変領域、および/または配列番号17または配列番号41と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変領域を具備している抗体。
【0344】
5. 配列番号15または配列番号39と少なくとも98%同一のアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変領域、および/または配列番号17または配列番号41と少なくとも98%同一のアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変領域を具備している抗体。
【0345】
6. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、前記軽鎖可変領域が少なくとも1つの保存されたアミノ酸置換を含み、各アミノ酸置換が配列番号15または配列番号39中の対応するポジションでのアミノ酸と比較して、保存されている抗体。
【0346】
7. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、前記重鎖可変領域が少なくとも1つの保存されたアミノ酸置換を含み、各アミノ酸置換が配列番号17または配列番号41中の対応するポジションでのアミノ酸と比較して、保存されている抗体。
【0347】
8. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、次の(a)〜(f)のうち少なくとも1つを具備する抗体:
(a)配列番号15の残基24〜34と少なくとも90%同一の軽鎖CDR1のアミノ酸配列;
(b)配列番号15の残基50〜56と少なくとも90%同一の軽鎖CDR2のアミノ酸配列;
(c)配列番号15の残基89〜97と少なくとも90%同一の軽鎖CDR3のアミノ酸配列;
(d)配列番号17の残基31〜35と少なくとも90%同一の重鎖CDR1のアミノ酸配列;
(e)配列番号17の残基50〜65と少なくとも90%同一の重鎖CDR2のアミノ酸配列;および (f)配列番号17の残基99〜112と少なくとも90%同一の重鎖CDR3のアミノ酸配列。
【0348】
9. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、次の(a)〜(f)のうち少なくとも1つを具備する抗体:
(a)配列番号15の残基24〜34に対応している軽鎖CDR1のアミノ酸配列;
(b)配列番号15の残基50〜56に対応している軽鎖CDR2のアミノ酸配列;
(c)配列番号15の残基89〜97に対応している軽鎖CDR3のアミノ酸配列;
(d)配列番号17の残基31〜35に対応している重鎖CDR1のアミノ酸配列;
(e)配列番号17の残基50〜65に対応している重鎖CDR2のアミノ酸配列;および
(f)配列番号17の残基99〜112に対応している重鎖CDR3のアミノ酸配列。
【0349】
10. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、次の(a)〜(f)のうち少なくとも1つを具備する抗体:
(a)配列番号15の残基24〜34から本質的になる軽鎖CDR1のアミノ酸配列;
(b)配列番号15の残基50〜56から本質的になる軽鎖CDR2のアミノ酸配列;
(c)配列番号15の残基89〜97から本質的になる軽鎖CDR3のアミノ酸配列;
(d)配列番号17の残基31〜35から本質的になる重鎖CDR1のアミノ酸配列;
(e)配列番号17の残基50〜65から本質的になる重鎖CDR2のアミノ酸配列;および
(f)配列番号17の残基99〜112から本質的になる重鎖CDR3のアミノ酸配列。
【0350】
11. 側面8〜10の何れかに記載の抗体であって、(a)〜(f)のうち少なくとも2つを具備する抗体。
【0351】
12. 側面8〜10の何れかに記載の抗体であって、(a)〜(f)のうち少なくとも3つを具備する抗体。
【0352】
13. 側面8〜10の何れかに記載の抗体であって、(a)〜(f)のうち少なくとも4つを具備する抗体。
【0353】
14. 側面8〜10の何れかに記載の抗体であって、(a)〜(f)のうち少なくとも5つを具備する抗体。
【0354】
15. 側面8〜10の何れかに記載の抗体であって、(a)〜(f)の全てを具備する抗体。
【0355】
16. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、配列番号15のアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変領域と、配列番号17のアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変領域とを具備する抗体。
【0356】
17. 側面1〜7の何れかに記載の抗体であって、次の(a)〜(f)のうち少なくとも1つを具備する抗体:
(a)配列番号39の残基24〜34と少なくとも90%同一の軽鎖CDR1のアミノ酸配列;
(b)配列番号39の残基50〜56と少なくとも90%同一の軽鎖CDR2のアミノ酸配列;
(c)配列番号39の残基89〜97と少なくとも90%同一の軽鎖CDR3のアミノ酸配列;
(d)配列番号41の残基31〜35と少なくとも90%同一の重鎖CDR1のアミノ酸配列;
(e)配列番号41の残基50〜66と少なくとも90%同一の重鎖CDR2のアミノ酸配列;および (f)配列番号41の残基99〜113と少なくとも90%同一の重鎖CDR3のアミノ酸配列。
【0357】
18. 側面1〜7および17の何れかに記載の抗体であって、次の(a)〜(f)のうち少なくとも1つを具備する抗体:
(a)配列番号39の残基24〜34に対応している軽鎖CDR1のアミノ酸配列;
(b)配列番号39の残基50〜56に対応している軽鎖CDR2のアミノ酸配列;
(c)配列番号39の残基89〜97に対応している軽鎖CDR3のアミノ酸配列;
(d)配列番号41の残基31〜35に対応している重鎖CDR1のアミノ酸配列;
(e)配列番号41の残基50〜66に対応している重鎖CDR2のアミノ酸配列;および
(f)配列番号41の残基99〜113に対応している重鎖CDR3のアミノ酸配列。
【0358】
19. 側面1〜7および17〜18の何れかに記載の抗体であって、次の(a)〜(f)のうち少なくとも1つを具備する抗体:
(a)配列番号39の残基24〜34から本質的になる軽鎖CDR1のアミノ酸配列;
(b)配列番号39の残基50〜56から本質的になる軽鎖CDR2のアミノ酸配列;
(c)配列番号39の残基89〜97から本質的になる軽鎖CDR3のアミノ酸配列;
(d)配列番号41の残基31〜35から本質的になる重鎖CDR1のアミノ酸配列;
(e)配列番号41の残基50〜66から本質的になる重鎖CDR2のアミノ酸配列;および
(f)配列番号41の残基99〜113から本質的になる重鎖CDR3のアミノ酸配列。
【0359】
20. 側面17〜19の何れかに記載の抗体であって、(a)〜(f)のうち少なくとも2つを具備する抗体。
【0360】
21. 側面17〜19の何れかに記載の抗体であって、(a)〜(f)のうち少なくとも3つを具備する抗体。
【0361】
22. 側面17〜19の何れかに記載の抗体であって、(a)〜(f)のうち少なくとも4つを具備する抗体。
【0362】
23. 側面17〜19の何れかに記載の抗体であって、(a)〜(f)のうち少なくとも5つを具備する抗体。
【0363】
24. 側面17〜19の何れかに記載の抗体であって、(a)〜(f)の全てを具備する抗体。
【0364】
25. 側面1〜7および17〜24の何れかに記載の抗体であって、配列番号39のアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変領域と、配列番号41のアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変領域とを具備する抗体。
【0365】
26. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、少なくとも1つのKIR2DS4およびKIR2DS3と結合しない抗体。
【0366】
27. 側面1〜15および26の何れかに記載の抗体であって、KIR2DL1およびKIR2DL2/3のHLA-CクラスI分子への結合をブロックする抗体。
【0367】
28. 側面1〜15および26〜27の何れかに記載の抗体であって、HLA-CクラスI分子を発現しているヒト標的細胞に対するNK細胞の溶解活性を増強する抗体。
【0368】
29. 側面1〜15および26〜28の何れかに記載の抗体であって、HLA-CクラスI分子を発現しているヒト標的細胞に対するNK細胞の溶解活性を増強することにおいて、DF200よりもより効率的である抗体。
【0369】
30. 側面1〜15および26〜28の何れかに記載の抗体であって、HLA-CクラスI分子を発現しているヒト標的細胞に対するNK細胞の溶解活性を増強することにおいて、DF200よりもより効率的である抗体。
【0370】
31. 側面1〜15および26〜28の何れかに記載の抗体であって、HLA-CクラスI分子を発現しているヒト標的細胞に対するNK細胞の溶解活性を増強することにおいて、EB6よりもより効率的である抗体。
【0371】
32. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、ヒトまたはヒト化抗体。
【0372】
33. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である抗体。
【0373】
34. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、ヒトIgG4である抗体。
【0374】
35. 側面1〜34の何れかに記載の抗体であって、ヒトIgG2である抗体。
【0375】
36. 配列番号15のアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変領域と、配列番号17のアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変領域とを具備するヒトIgG4抗体。
【0376】
37. 配列番号39のアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変領域と、配列番号41のアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変領域とを具備するヒトIgG2抗体。
【0377】
38. KIR2DL1またはKIR2DL2/3との結合において1-7F9と競合する抗体であって、1-4F1, DF200, gl183, A210, A803(g), またはEB6ではない抗体。
【0378】
39. KIR2DL1またはKIR2DL2/3との結合において1-4F1と競合する抗体であって、1-7F9, DF200, gl183, A210, A803(g), またはEB6ではない抗体。
【0379】
40. 側面38に記載の抗体であって、前記抗体が1-4F1ではない抗体。
【0380】
41. 側面39に記載の抗体であって、前記抗体が1-7F9ではない抗体。
【0381】
42. 側面38〜39の何れかに記載の抗体であって、前記抗体がDF200ではない抗体。
【0382】
43. 側面38〜39の何れかに記載の抗体であって、前記抗体がgl183ではない抗体。
【0383】
44. 側面38〜39の何れかに記載の抗体であって、前記抗体がEB6ではない抗体。
【0384】
45. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、KIR2DL1に対して約20nM以下のKdを有する抗体。
【0385】
46. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、KIR2DL1に対して10.9nM以下のKdを有する抗体。
【0386】
47. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、KIR2DL1に対して0.45nM以下のKdを有する抗体。
【0387】
48. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、KIR2DL3に対して約20nM以下のKdを有する抗体。
【0388】
49. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、KIR2DL3に対して2.0nM以下のKdを有する抗体。
【0389】
50. 先行する側面の何れかに記載の抗体であって、KIR2DL3に対して0.025nM以下のKdを有する抗体。
【0390】
51. 先行する側面の何れかに記載のヒト抗体。
【0391】
52. KIR2DL1との結合において1-7F9と競合するヒトまたはヒト化抗体。
【0392】
53. KIR2DL1との結合において1-4F1と競合するヒトまたはヒト化抗体。
【0393】
54. KIR2DL2との結合において1-7F9と競合するヒトまたはヒト化抗体。
【0394】
55. KIR2DL2との結合において1-4F1と競合するヒトまたはヒト化抗体。
【0395】
56. KIR2DL3との結合において1-7F9と競合するヒトまたはヒト化抗体。
【0396】
57. KIR2DL3との結合において1-4F1と競合するヒトまたはヒト化抗体。
【0397】
58. KIR2DL1およびKIR2DL2/3との結合において1-7F9と競合するヒトまたはヒト化抗体。
【0398】
59. KIR2DL1およびKIR2DL2/3との結合において1-4F1と競合するヒトまたはヒト化抗体。
【0399】
60. 側面52〜59の何れかに記載のヒトまたはヒト化抗体であって、少なくとも1つのKIR2DS4およびKIR2DS3と結合しない抗体。
【0400】
61. 側面52〜60の何れかに記載のヒトまたはヒト化抗体であって、KIR2DL1およびKIR2DL2/3のHLA-CクラスI分子への結合をブロックする抗体。
【0401】
62. 側面52〜47の何れかに記載のヒトまたはヒト化抗体であって、HLA-CクラスI分子を発現しているヒト標的細胞に対するNK細胞の溶解活性を増強する抗体。
【0402】
63. 側面52〜62の何れかに記載のヒトまたはヒト化抗体であって、配列番号15と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変領域、及び配列番号17と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変領域、又は配列番号39と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含んでいる軽鎖可変領域、及び配列番号41と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含んでいる重鎖可変領域を具備する抗体。
【0403】
64. 側面52〜63の何れかに記載のヒトまたはヒト化抗体であって、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4である抗体。
【0404】
65. 側面64に記載のヒトまたはヒト化抗体であって、IgG4である抗体。
【0405】
66. 側面64に記載のヒト抗体であって、IgG2である抗体。
【0406】
67. KIR2DL1、-2、および-3の各自(each one)に結合するヒトまたはヒト化抗体であって、KIR2DL1、-2、および-3のHLA-CクラスI分子への結合をブロックする抗体。
【0407】
68. KIR2DL1の残基M44およびF45と相互作用する抗体。
【0408】
69. 側面68に記載の抗体であって、1以上のKIR2DL1残基 L38, R41, N46, D47, T48, L49, R50, I52, F64, D72, Y80, P87, およびY88とさらに結合する抗体。
【0409】
70. KIR2DL1と、アミノ酸残基 L38, R41, M44, F45, N46, D47, T48, L49, R50, I52, F64, D72, Y80, P87, およびY88で規定される領域内のみで結合する抗体。
【0410】
71. KIR2DL1およびKIR2DL2/3と結合し、残基 L38, R41, M44, F45, N46, D47, T48, L49, R50, I52, F64, D72, Y80, P87, およびY88で規定される領域の外側のアミノ酸残基で相互作用することのない抗体。
【0411】
72. 側面67〜71の何れかに記載の抗体であって、ヒト抗体の1-7F9である抗体。
【0412】
73. 先行する側面の何れかに記載の抗体の少なくとも1つの軽鎖CDRを具備している、抗体断片または抗体誘導体。
【0413】
74. 先行する側面の何れかに記載の抗体の少なくとも2つの軽鎖CDRsを具備している、抗体断片または抗体誘導体。
【0414】
75. 先行する側面の何れかに記載の抗体の少なくとも3つの軽鎖CDRsを具備している、抗体断片または抗体誘導体。
【0415】
76. 先行する側面の何れかに記載の抗体のVL領域を具備している、抗体断片または抗体誘導体。
【0416】
77. 先行する側面の何れかに記載の抗体の少なくとも1つの重鎖CDRを具備している、抗体断片または抗体誘導体。
【0417】
78. 先行する側面の何れかに記載の抗体の少なくとも2つの重鎖CDRsを具備している、抗体断片または抗体誘導体。
【0418】
79. 先行する側面の何れかに記載の抗体の少なくとも3つの重鎖CDRsを具備している、抗体断片または抗体誘導体。
【0419】
80. 先行する側面の何れかに記載の抗体のVH領域を具備している、抗体断片または抗体誘導体。
【0420】
81. 先行する側面の何れかに記載の抗体の全てのCDRsを具備している、抗体断片または抗体誘導体。
【0421】
82. 先行する側面の何れかに記載の抗体のVHおよびVL領域を具備している、抗体断片または抗体誘導体。
【0422】
83. 先行する側面の何れかに記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【0423】
84. 側面1〜82の何れかに記載の抗体または抗体断片をコード化している核酸。
【0424】
85. 側面84に記載の核酸を具備しているベクター。
【0425】
86. 側面85に記載のベクターを具備している細胞。
【0426】
87. 側面86に記載の細胞であって、サルCOS細胞、CHO細胞、およびヒトミエローマ細胞から選択される細胞。
【0427】
88. 抗-KIR抗体または抗体断片を産生する方法であって、抗-KIR抗体、抗体断片、それぞれの発現に適切な条件下で側面86に記載の細胞を培養することを備える方法。
【0428】
89. 抗-KIR抗体または抗体断片を産生する方法であって、抗-KIR抗体または抗体断片を提供することと、少なくとも1つの誘導体成分をそれに結合させることを備える方法。
【0429】
90. 被験者における癌を治療する方法であって、癌を罹患している被験者に、側面1〜82の何れかに記載の抗体または抗体断片もしくは誘導体の効果的な量を投与することを備える方法。
【0430】
91. 側面90に記載の方法であって、化学療法剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、免疫調節剤、およびホルモン剤から選択される薬剤を患者に投与することをさらに備える方法。
【0431】
92. 被験者におけるウイルスに起因する疾患または障害を治療する方法であって、ウイルスに起因する疾患または障害を罹患している被験者に、側面1〜82の何れかに記載の抗体または抗体断片もしくは誘導体の効果的な量を投与することを備える方法。
【0432】
93. 側面1〜82の何れかに記載の抗体または抗体断片もしくは誘導体の、癌を治療するための医薬の調製における使用。
【0433】
94. 側面1〜82の何れかに記載の抗体または抗体断片もしくは誘導体の、ウイルスに起因する疾患または障害を治療するための医薬の調製における使用。
【0434】
95. 側面1〜82の何れかに記載の抗体または抗体断片もしくは誘導体、並びに薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物。
【0435】
96. ポリソルベート80を含んでいる、側面95に記載の組成物。
【0436】
97. スクロースを含んでいる、側面95に記載の組成物。
【0437】
98. ポリソルベート80およびスクロースを含んでいる、側面95に記載の組成物。
【0438】
99. 側面95〜98の何れかに記載の組成物であって、化学療法剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、免疫調節剤、およびホルモン剤から選択される薬剤をさらに含む組成物。
【0439】
100. 側面95〜99の何れかに記載の組成物であって、前記抗体、抗体断片、または抗体誘導体が、腫瘍標的誘導因子に共有結合性に結合された組成物。
【0440】
101. 側面95〜99の何れかに記載の組成物であって、前記抗体、抗体断片、または抗体誘導体が、リポソームに封入(encapsulated)された組成物。
【0441】
102. 側面95〜99の何れかに記載の組成物であって、KIRに結合する抗体をさらに含み、前記KIRがKIR2DL1、KIR2DL2、KIR2DL3、KIR2DS1、またはKIR2DS2ではない組成物。
【0442】
103. リンパ球およびNK細胞から選択される細胞の溶解活性を増加させる方法であって、前記細胞を側面1〜82の何れかに記載の抗体、抗体断片または誘導体と接触させることを備える方法。
【0443】
104. リンパ球、T細胞、およびNK細胞から選択される細胞によって発現されたKIRと、標的細胞によって発現されたHLA-CクラスI分子との間の相互作用を減少させる方法であって、前記細胞を側面1〜82の何れかに記載の抗体または抗体断片もしくは誘導体と接触させることを備える方法。
【0444】
105. NK細胞によって発現されたKIRの阻害性活性を中和する方法であって、前記NK細胞を側面1〜82の何れかに記載の抗体または抗体断片もしくは誘導体と接触させることを備える方法。
【0445】
106. KIR2DL1、KIR2DL2、およびKIR2DL3の各自に結合するヒト抗体であって、HLA-Cw4分子のKIR2DL1への結合、およびHLA-Cw3分子の少なくとも1つのKIR2DL2またはKIR2DL3への結合をブロックする抗体。
【0446】
107. 前記KIR2DL1が配列番号23のアミノ酸配列を含み、前記KIR2DL2が配列番号24のアミノ酸配列を含み、および/または前記KIR2DL3が配列番号25のアミノ酸配列を含む、側面1〜82の何れかによる抗体または抗体断片もしくは誘導体。
【0447】
108. 側面1〜82の何れかに記載の抗体、抗体断片、または抗体誘導体と実質的に同じKIR2DL1エピトープに結合する化合物。
【0448】
109. 側面1〜82の何れかに記載の抗体、抗体断片、または抗体誘導体と基本的に同じKIR2DL1エピトープに結合する化合物。
【0449】
110. 配列番号36の配列を含んでいる軽鎖を具備する抗体または抗体誘導体。
【0450】
111. 配列番号37の配列を含んでいる重鎖を具備する抗体または抗体誘導体。
【0451】
112. 側面109の軽鎖および側面110の重鎖を具備する抗体または抗体誘導体。
【0452】
113. 配列番号36の配列を含んでいる軽鎖と配列番号37の配列からなる重鎖とからなる抗体。
【0453】
* * *
公報、特許出願及び特許を含む、本明細書に引用された全ての参考文献は、各参考文献が個別的且つ具体的に参照により援用され、その全体が本明細書に記載されている場合と同じ程度に、参照により本明細書に援用される。
【0454】
本明細書で使用されている全ての見出し及び小見出しは、便宜的に使用されているものにすぎず、いかなる意味においても、本発明を限定するものと解釈してはならない。
【0455】
本明細書に別段の記載がなく、又は明確に反対の記載がなければ、考えられる全ての変形における上記要素のあらゆる組み合わせが、本発明によって包含される。
【0456】
本発明を記載する際に使用される「a」及び「an」及び「the」という用語及び類似の指示記号(referents)は、本明細書に別段の記載がなく、又は明確に反対の記載がなければ、単数及び複数の両方を包含するものと解釈しなければならない。
【0457】
本明細書において値の範囲を引用することは、当該範囲に含まれる各個別の値を個別的に表すための簡略法としての役割を果たすことを意図しているにすぎず、本明細書中に別段の記載がなければ、各個別の値は、本明細書に個別的に記載されている場合と同様に、本明細書中に取り込まれる。別段の記載がなければ、本明細書に記載されている全ての正確な値(exact values)は、対応する近似値(approximate values)を代表している(例えば、具体的な因子又は測定に関して記載されている全ての正確な典型値は、適宜、「約」と修飾される、対応する近似的測定も表すと考えることができる)。
【0458】
本明細書に別段の記載がなく、又は明確に反対の記載がなければ、本明細書に記載されている全ての方法は、任意の適切な順序で実施することができる。
【0459】
本明細書中で記載される、任意の及び全ての例又は例示的な用語(「例えば」など)は、単に本発明をよりよく説明することを意図しており、他で指摘しない限り本発明の範囲を限定しない。明示の記載がなければ、本明細書中の言語(language)は、何らかの要素が本発明の実施に不可欠であることを示唆するものと解釈すべきでない。
【0460】
本明細書での特許文書(patent documents)の引用(citation)および援用(incorporation)は、便宜上の目的でのみなされ、係る特許文書の有効性(validity)、特許性(patentability)、および/または強制力(enforceability)の如何なる見解(view)をも反映するものではない。
【0461】
本明細書に別段の記載がなく、又は明確に反対の記載がなければ、ある要素に関して「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」又は「含有する(containing)」などの用語を用いて、本発明の任意の側面又は態様を本明細書で記載することは、当該要素「からなる(consists of)」、「〜から本質的になる(consists essentially of)」、「実質的に〜を含む(substantially comprises)」本発明の類似の側面又は態様に対する支持を与えることを意図するものである(例えば、特定の要素を含むと本明細書に記載されている組成物は、本明細書に別段の記載がなく、又は明確に反対の記載がなければ、その要素からなる組成物も記載するものとして理解すべきである)。
【0462】
本発明は、本明細書に提示されている前記側面又は特許請求の範囲に記載されている主題のあらゆる修飾及び均等物を、適用可能な法律によって許容される最大限度まで含む。