特許第5770145号(P5770145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5770145サービス報告書電子システム及びモバイル端末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770145
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】サービス報告書電子システム及びモバイル端末
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20150806BHJP
   G06Q 10/10 20120101ALI20150806BHJP
【FI】
   G06Q50/10 130
   G06Q10/10 120N
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-212837(P2012-212837)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-67270(P2014-67270A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2013年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】300050367
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクフィールディング
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 法男
(72)【発明者】
【氏名】植村 昌一
(72)【発明者】
【氏名】福井 理恵
【審査官】 阿部 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−240675(JP,A)
【文献】 特開2006−252262(JP,A)
【文献】 特開2011−158973(JP,A)
【文献】 特開2012−069027(JP,A)
【文献】 特開2005−352716(JP,A)
【文献】 特開2010−165317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 50/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の保有する機器に関する検査・保守等のサービスに関する情報が記載されるサービス報告書と、
報告書データベースを有するサーバと、
検索機能及びGUI画面を有し、前記サーバにネットワークを介して接続されるモバイル端末、とで構成されたサービス報告書電子システムであって、
前記報告書データベースは、過去に作成された前記サービス報告書、及び顧客の保有する機器に関する、少なくとも製造番号を含む基本情報が記入された該サービス報告書の下書きのデータが保持されており、
前記サーバは、前記顧客の製品に関するデータに地図情報提供者から提供される位置情報を加えた顧客・位置情報データベースを備え、
前記モバイル端末は、該端末自身の現在位置の情報を取得する機能と、前記現在位置情報に基づき前記顧客・位置情報データベースを検索し、前記基本情報の記入欄に必要な顧客名を絞り込む機能とを備え、
前記モバイル端末は、現在作成しようとしている特定の前記顧客に関する検索の入力を受け付け、該特定顧客に対する前記サービス報告書下書きが前記報告書データベースに保持されていれば、該報告書データベースから該サービス報告書下書きのデータを取得し、
サービス報告書作成のための表示画面を前記GUI画面に表示し、
前記報告書データベースに、該特定顧客に対する前記サービス報告書下書きが無い場合、前記サービス報告書のフォーマットを前記モバイル端末の前記GUI画面に表示し、
前記モバイル端末は、前記顧客・位置情報データベースを用いて、前記現在位置情報と一致する位置情報を有する顧客名を特定し、特定した前記顧客名に対応する納入製品情報と、前記顧客の作業現場で確認された納入製品情報とが一致するか、作業者の判定を受け付ける
ことを特徴とするサービス報告書電子システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記サービス報告書のフォーマットは、作業者による作業・サービス情報の記入欄と、
前記顧客の責任者のサイン・捺印欄とを有し、
前記モバイル端末は、前記GUI画面に表示した前記サービス報告書作成のための表示画面に対する、前記作業・サービス情報の記入欄及び前記責任者のサイン・捺印欄への入力を受付けて、前記サービス報告書の電子データを生成し、該生成されたサービス報告書の電子データを、前記サーバにアップロードし、
前記サーバは、該アップロードされた前記サービス報告書の電子データに基づいて、対応する前記特定の顧客が保有する機器に関する前記サービス報告書の下書きを作成し、前記報告書データベースに保持する
ことを特徴とするサービス報告書電子システム。
【請求項3】
サービス報告書作成機能、検索機能及びGUI画面を有し、報告書データベースを備えるサーバにネットワークを介して接続されるモバイル端末であって、
前記サービス報告書は、顧客の保有する機器に関する検査・保守等のサービスに関する情報が記載されるものであり、
前記サーバの前記報告書データベースには、過去に作成された前記サービス報告書、及び顧客の保有する機器に関する、少なくとも製造番号を含む基本情報が記入された該サービス報告書の下書きのデータが保持されており、
前記モバイル端末は、
該端末自身の現在位置の情報を取得する機能と、
前記サーバから、前記顧客の製品に関するデータに位置情報を加えた顧客・位置情報データベースの情報をダウンロードする機能と、
前記現在位置情報に基づき前記顧客・位置情報データベースを検索し、前記基本情報の記入欄に必要な顧客名を絞り込む機能とを備え、
現在作成しようとしている特定の前記顧客に関する検索の入力を受け付け、該特定顧客に対する前記サービス報告書下書きが前記報告書データベースに保持されていれば、該報告書データベースから該サービス報告書下書きのデータを取得し、サービス報告書作成のための表示画面を前記GUI画面に表示し、
前記報告書データベースに、該特定顧客に対する前記サービス報告書下書きが無い場合、前記サービス報告書のフォーマットを前記モバイル端末の前記GUI画面に表示し、
前記顧客・位置情報データベースを用いて、前記現在位置情報と一致する位置情報を有する顧客名を特定し、特定した前記顧客名に対応する納入製品情報と、前記顧客の作業現場で確認された納入製品情報とが一致するか、作業者の判定を受け付ける
ことを特徴とするモバイル端末
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サービス報告書電子システム及びモバイル端末に係り、特に、保守作業を行う者がGPS機能付きのモバイル端末を利用して電子データであるサービス報告書の作成を行う、サービス報告書電子システムに関する。
【背景技術】
【0002】
保守サービス会社が、共通する部品を有する複数の精密な機器を含むシステムを対象として、検査・保守等のサービスを提供する場合において、これらの機器の検査・保守等の作業に関する作業者からの情報を、保守管理サーバのデータベースにサービス報告書の電子データとして蓄積・管理する、保守最適化システムが開発されつつある。保守管理サーバに蓄積されたこれらの電子データは、保守サービスの対象である各機器の予防保守に活用されるものであり、CRM(Customer Relationship Management)の観点で重要なものである。
【0003】
図9に、従来のサービス報告書の発行の流れの一例を示す。作業者が顧客の機器に関する検査・保守等のサービス(初回)を行う場合は、作業が終了した時点で、作業者は、サービス報告書(白紙のフォーマット)7100に、住所、納入製品情報など、サービス報告書に必要な基本情報を所定の欄に手書きし、さらに、現場での検査・保守等の作業内容等(作業・サービス情報)を記入したサービス報告書(手書き)7180を作成し、これに顧客の責任者のサイン・捺印をもらって一次サービス報告書(紙)7200を完成させ、控えの報告書(紙)7210を現場で顧客に手渡し、一次サービス報告書(紙)7200を保守サービス会社に持ち帰り、その報告書に必要事項が追記された二次報告書(紙)7220となり、これについて上長による内容確認を受けて正式なサービス報告書(紙)7230となり、そのデータの一部、例えば、顧客名、顧客の住所、納入製品情報等の基本情報が抽出され端末からの手入力で電子化され(7240)、CRMシステムに登録されるとともに報告書(紙)は保管される。(7250)また、CRMシステムに登録された情報を利用して、サービス(作業)計画に基づく次回以降の検査・保守等の作業において使用するためのサービス報告書(下書)715が電子データとして作成され、CRMシステムに登録される。
【0004】
作業者が検査・保守等のサービス(2回目以降)を行う場合は、報告書印刷システムを利用してCRMシステムのサービス報告書(下書)715の電子データ7150を印刷し、基本情報が予め記載された紙のサービス報告書(下書)7160を作成する。そして、作業者は、現場に持参した紙のサービス報告書(下書)7160に現場での検査・保守等の作業内容等(サービス情報)を記入したサービス報告書(手書き)7180を作成する。
【0005】
一方、営業員等の業務支援のために、GPS(Global Positioning System)機能付きのモバイル端末を利用することが、特許文献1に開示されている。特許文献1には、GPS機能を有するモバイル端末を用いて情報をモバイル端末とコンピュータとの間で送受信する営業支援方法において、営業員がモバイル端末を用いることにより、現在位置を検索して位置情報を位置情報データベースに保存し、新規顧客の場合には顧客名とその位置情報をデータベースに登録し、検索できるようにしたものが開示されている。
【0006】
また、特許文献2にも、同様に、GPS機能を有するモバイル端末を用いて保守員が作業を開始した時の位置情報を取得して保守対象機器の位置情報を保守管理に利用する、顧客情報管理システムが開示されている。
【0007】
さらに、特許文献3にも、顧客DB、保守DB、地図DBと、表示部に地図を表示して顧客位置を指し示す目印を地図上に表示する情報表示部とを備えた保守業務支援システムが、GPS機能を有するモバイル端末からの位置情報を利用して業務支援を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−72981号公報
【特許文献2】特開2009−187499号公報
【特許文献3】特開2011−128997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
サービス報告書(紙)には、作業者の作業内容等に関する詳細な記述や保守サービス会社の関係者のコメントを多く含んでいるが、電子データ化されるのは、顧客の住所、納入製品情報等の基本情報のみであり、報告書に記載の他の多くの技術情報が保守サービス会社で共有され活用されることは無い。また、エンジニア(作業者)のサービス報告書発行に係る負担が大きく、報告書の社内回覧や顧客への報告発行にも時間を要する。電子データ化された情報のみでは、保守サービスに関する顧客からの問い合わせに対しても、適切に応答できない。そのため、サービス報告書の電子化が重要である。
【0010】
サービス報告書の電子化のために、サービス報告書はiPad(登録商標)等のモバイル端末を使用して発行し、保守管理サーバに蓄積できるシステムにするのが望ましい。図9に示したようなサービス報告書(紙)の流れを電子化するためには、顧客名、住所、納入製品の品名や型式等の基本情報について、(1)作業者がサービス報告書(白紙)7100にモバイル端末から手打ち入力する、(2)保守管理サーバに登録されている顧客マスタの報告書(電子データ)7250を検索して必要な顧客データを抽出する、(3)CRMシステムで事前に作成された下書きデータ7150を作業者のモバイル端末にダウンロードしたものを引用する、の何れかにて行なう必要がある。
【0011】
作業者がサービス報告書を新規に作成する際、上記(3)は利用できない。上記(1)は作業者の入力効率が悪い。そこで、上記(2)を行うことが考えられる。すなわち、保守管理サーバ保管され、あるいは作業者のモバイル端末にダウンロードされている顧客データから、サービス報告書に必要な顧客名を検索し、顧客名リストから特定の顧客名を選択することで、サービス報告書に関する基本情報の入力効率を上げることができる。
【0012】
しかし、作業者の検索キーの入力操作の不備等により、マスタデータから該当顧客を検索するのに手間取ることや、類似の名称の近隣の顧客を誤って選択してしまう等のリスクがある。特に、現地で顧客と面会できる時間に制約がある場合には、モバイル端末から即座に顧客を特定する必要があり、作業者が間違った顧客を選択する可能性がある。また、GPSによる位置検出には、誤差を含んでいる場合があり、GPSの情報のみで顧客を特定すると、近隣の類似名称の別顧客を誤って選択する可能性もある。また、作業者の事前の準備不足で上記(3)を利用できない場合も、同様な問題がある。
【0013】
特許文献1〜3には、サービス報告書に関し、上記各課題についての開示はない。
本発明の目的は、サービス報告書の電子化を行い、上記各課題を解決することにより、検索性を向上し、顧客満足度を高め、かつ、誤った顧客を選択することで不具合を生ずることがないようにした、サービス報告書電子システム及びモバイル端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明のサービス報告書電子システムは、次のような構成を備えている。
顧客の保有する機器に関する検査・保守等のサービスに関する情報が記載されるサービス報告書と、報告書データベースを有するサーバと、検索機能及びGUI画面を有し、前記サーバにネットワークを介して接続されるモバイル端末、とで構成されたサービス報告書電子システムであって、前記報告書データベースは、過去に作成された前記サービス報告書、及び顧客の保有する機器に関する、少なくとも製造番号を含む基本情報が記入された該サービス報告書の下書きのデータが保持されており、前記モバイル端末は、現在作成しようとしている特定の前記顧客に関する検索の入力を受け付け、該特定顧客に対する前記サービス報告書下書きが前記報告書データベースに保持されていれば、該報告書データベースから該サービス報告書下書きのデータを取得し、サービス報告書作成のための表示画面を前記GUI画面に表示し、前記報告書データベースに、該特定顧客に対する前記サービス報告書下書きが無い場合、前記サービス報告書のフォーマットを前記モバイル端末の前記GUI画面に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、サービス報告書の電子化を行うことで、情報の共有化や顧客満足度の向上、業務負担の軽減を図ることができる。また、作業者のモバイル端末のGPS機能を使って、地図情報提供者から提供される精度の高い位置情報を含んだサーバの顧客・位置情報データベースを検索することで、作業者自身が訪ねている顧客を正確に、かつ即座に効率良く特定できるので、近隣の類似名称の別顧客を誤って選択してサービス報告書を作成してしまう可能性もなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例に係る、サービス報告書電子システムの全体的な構成を示す図である。
図2】本発明の一実施例における、モバイル端末の機能を説明する図である。
図3】サービス報告書電子システムの具体的な構成例を示す図である。
図4A】サービス報告書フォーマットの例を示す図である。
図4B】サービス報告書下書きの例を示す図である。
図4C】サービス報告書(電子)の例を示す図である。
図5】顧客・位置情報データベースの例を示す図である。
図6】サービス報告書発行・登録の処理の流れを示すフローチャートである。
図7】サービス報告書電子システムにおける、新規にサービス報告書(電子)を作成する場合の処理の流れを示す図である。
図8】既に作成済みのサービス報告書下書きを利用して、サービス報告書(電子)を作成する場合の処理の流れを示す図である。
図9】従来の紙発行による、サービス報告書発行の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のサービス報告書電子システム及びモバイル端末の一実施例を、以下、図面を参照しながら説明する。
まず、図1は、本発明の一実施例に係る、サービス報告書電子システムの全体的な構成を示す図である。保守サービス会社のサービス報告書電子システムは、CRMシステム(保守管理サーバ)100、報告書システムサーバSRS110、及び、これらに通信ネットワークを介して接続される作業者のモバイル端末300とで構成される。保守管理サーバ100には、サービス報告書の指示明細に関する情報が蓄積されており、この情報が、サービス報告書700や来歴チェックシート800としてSRS110を経て、モバイル端末300にダウンロードされサービス報告書の作成に利用される。また、モバイル端末300で作成されたサービス報告書700は、SRS110にアップロードされ、保守管理サーバ100に自動登録される。サービス報告書の電子化を行うことで、情報の共有化や顧客満足度の向上を図ることができる。
【0018】
次に、図2で、モバイル端末の機能を説明する。モバイル端末300は、無線通信機能、演算処理機能、サービス報告書の書式などに関するデータを保持する記憶手段及びGUI表示画面等を備えている。また、サービス報告書700の電子データを生成するためのサービス報告書生成機能と、GPS衛星502を利用したGPS機能も備えている。モバイル端末300は、サービス報告書電子システムに組み込まれ、一方、CRMシステム100からは、顧客・製品マスタのデータに顧客の位置情報を付加したマスタデータを、報告書700を発行するモバイル端末300へ配信する。モバイル端末300は、サービス報告書700を発行する際、CRMシステム(保守管理サーバ)100からダウンロードされモバイル端末300に保管されているマスタデータ134を検索する機能、GPS機能で得られた位置情報135に基づき地図データを含む顧客リストの対象を絞り込む機能も備えている。
【0019】
顧客200が保有する機器に関して検査・保守等のサービスを提供した作業者がサービス報告書700を発行する際、モバイル端末300に保管されているマスタデータ134から、顧客名、住所、納入製品情報を検索し、これらの情報を利用してサービス報告書作成のために表示画面にセットすることで、サービス報告書の電子化に必要なデータの入力効率を上げることができる。作業者が、モバイル端末で報告書を発行する際、配信されているマスタデータ134を一覧表示し検索を行って、該当顧客を特定する。その際、GPS位置情報135を使用すると、現在の自身の位置に近い順に顧客一覧136が表示される。作業者は、GPS位置情報135とCRMシステム100から取得した近辺の顧客一覧の情報136と、作業現場で確認した納入製品情報とを用いて、短時間に正確な顧客名を選択し、この顧客名に対応する納入製品情報を取得する。
【0020】
これにより、作業者がモバイル端末300で顧客名を検索する際、検索キーの入力操作の不備等により、顧客名が正しく表示されないことや、類似した名称の近隣の顧客名が多数リストアップされ、作業者が顧客を誤って選択するリスクが解消される。そのために、サービス報告書に記載する顧客名の検索性の向上と、誤選択を防止することができる。
【0021】
次に、本発明のより具体的な実施例の構成及びその作用、効果を、図3図8を用いて説明する。
図3は、本発明が適用される、サービス報告書電子システムの構成例を示す図である。保守サービス会社の基幹システムである保守管理サーバ100(CRMシステム)は、報告書システムサーバSRS110とウェブサーバ160とを備えている。保守管理サーバ100はネットワーク600を介して、顧客Aの装置サイトや管理部門(200A)、顧客Bの装置サイトや管理部門(200B)、顧客Nの管理部門及びその装置サイト(200N)に接続されている。各装置サイトA、B、−、Nには、保守サービス対象の顧客装置(個別装置)として、多機種少量生産タイプの機器であって部品が共通する装置、例えば型式が同じ、生化学分析装置、医療用DNA解析装置、走査型電子顕微鏡などの医療用機器が設置されている。保守管理サーバ100は、さらに、地図情報提供者のサイト400、GPS衛星502のデータ等を利用して位置情報を提供する無線通信事業者の基地局500や中継局等、装置メーカのサイト、部品メーカのサイトとも接続されている。
【0022】
モバイル端末300は、GUIの画面を作業者が操作して、保守管理サーバ(CRMシステム)100及び近隣の各装置サイト(顧客)との間で、無線通信による情報の送受が可能に構成された端末である。モバイル端末300はそのサービス報告書生成機能を実現するために、サービス報告書のフォーマットと、該フォーマットの各項目に所定の事項を記載してサービス報告書の電子データを生成する機能を備えている。モバイル端末300はコンピュータを備えており、メモリに保持された所定のプログラムをCPUで実行することで、コンピュータにサービス報告書作成のための上記各種の機能を実現させる。
【0023】
CRMシステム100の報告書システムサーバSRS110は、演算処理部120、メモリ(図示略)や、マスタデータベース130、顧客・位置情報データベース131、報告書データベース132、入出力部140、及び通信制御部150を備えている。SRS110はコンピュータにより構成され、演算処理部120で所定のプログラムを実行することで、コンピュータに保守管理のための各種の機能を実現させる。CRMシステム100も、同様にコンピュータにより構成されている。
【0024】
マスタデータベース130には、基幹システムである保守管理サーバによる顧客の機器の保守管理に必要な各種の情報が保持されている。例えば、作業テンプレートDB、サービス(作業)計画DB、装置稼働情報DB、作業来歴DB、各種伝票用のDB、部品マスタDB、及び顧客情報DB等がある。各種伝票用のDBに保持される各種伝票には、計画伝票、提案伝票、見積伝票、受注伝票、来歴伝票等がある。部品マスタDBに保持される情報には、部品詳細情報として部品価格や部品納期情報がある。
【0025】
顧客・位置情報データベース131に保持される地図情報としては、国土地理院から提供される、地図の各地点の緯度・経度の情報のように、精度の高い地図情報を利用する。顧客・位置情報データベース131の位置情報には、各モバイル端末300が本来保有している位置情報の提供機能、例えば、Wifi、Bluetooth(登録商標)などとGPSを組み合わせたもの等を利用しても良いことは言うまでもない。
報告書データベース132には、過去に作成されたサービス報告書(電子)が、顧客名、装置型式等の種々の観点で検索可能に保持されている。
【0026】
図4Aは、作業者のモバイル端末の画面に表示される、サービス報告書のフォーマット710の一例である。このフォーマットには、保守サービス会社の名前を除き、全ての記入欄が空白である。このサービス報告書のフォーマット710は、本実施例のサービス報告書電子システムを実現するためのプログラムと共に、作業者の全てのモバイル端末に標準装備されているものとする。
【0027】
図4Bは、作業者のモバイル端末の画面に表示される、サービス報告書下書き715であり、サービス報告書のフォーマット上に、サービス報告書の基本情報が記入されている。この基本情報には、「顧客名」、「面会者」、「顧客の住所」、「受注番号」「報告書番号」、「注文番号」、「品名」、「型式」、「製造番号」、「製造年月」等が含まれている。
【0028】
図4Cは、作業者がモバイル端末に入力することで生成される、サービス報告書(電子データ)720であり、作業者が顧客の機器に関して実際に作業した事項及びそれに関連する事項を含む作業・サービス情報、すなわち、「依頼内容」、「作業内容」「約束事項」、「使用部品」、「パーツ番号」、「受付け日時」、「技術者内訳」が記入され、かつ、顧客の責任者のサイン・捺印欄にも記入(電子サイン)がある。
【0029】
図5は、顧客・位置情報データベース131の構成例を示す図である。
顧客・位置情報データベース131は、顧客名と、その住所、及びそれに対応する緯度・経度の情報を含んでいる。顧客・位置情報データベース131は、さらに、顧客の製品に関する情報として、少なくとも、品名、型式、製造番号の各情報を含んでいる。この装置の製造番号は、顧客名、住所、電話番号、装置型式、納入日等とセットになっており、例えば製造番号から、顧客名や住所を検索できる。また、このデータベースは、同じ顧客名に対して複数の製品がある場合には、それらを個別に検索できるように、細分化されている。また、特定の地域(作業エリア)単位でも検索できるように、構成されている。この顧客・位置情報データベース131をもとに、顧客一覧の情報136を生成することができる。
【0030】
以下、図6図8により、保守サービス会社のサービス報告書電子システムにおける、サービス報告書(電子)の作成、登録及び利用について説明する。図6は、作業者のモバイル端末及びサーバにおける処理のフローチャートである。図7は、サービス報告書電子システムにおける、新規にサービス報告書(電子)を作成する場合の処理の流れを示す図であり、図8は、既に作成済みのサービス報告書下書きを利用して、サービス報告書(電子)を作成する場合の処理の流れを示す図である。なお、作業者のモバイル端末において何らかの事情で、作成済みのサービス報告書下書きを利用できない場合は、図7の流れになる。
作業者がモバイル端末を用いてサービス報告書を作成する場合、最初に、サービス報告書下書き715をモバイル端末の画面に表示する。このとき、既に作成済みのサービス報告書下書き715を利用可能である場合には(図8参照)、モバイル端末の画面にこの下書き715が表示される。この場合(図6のS601でYES)には、それを利用したサービス報告書の作成(S613、図8の718)を開始し、サービス報告書の入力・編集作業に進む。
【0031】
一方、新規に作成する際(図7参照)等、サービス報告書の下書き715が画面に表示されない場合(S601でNO)には、サービス報告書のフォーマット(電子)710をモバイル端末の画面に表示する(S602)。作業者は、このフォーマットに、顧客名等の基本情報を手入力してサービス報告書の下書き715を作成する(S603、図7の715)。顧客名が不確かな場合、作業者は、保守管理サーバに保管されあるいは作業者のモバイル端末にダウンロードされている顧客データから、サービス報告書に必要な顧客名を検索し、顧客名リストから特定の顧客名を選択することもできる。もし、作業者が、顧客名の特定について、サポートが必要であると判断した場合(S604)には、保守管理サーバ100から作業エリアの顧客・位置情報データベース131をダウンロードする(S605)。保守管理サーバ100では、予め、顧客・製品マスタに、位置情報を付加して作成された、顧客・位置情報データベース(エリア別、製品別等)を保持している(S620)。モバイル端末では、GPS機能等により現在位置情報を取得し(S606)、この現在位置情報に基づき、顧客・位置情報データベースを検索する(S607)。現在位置情報と一致する位置情報を有する顧客名が抽出された場合には、それに基づいて顧客名を特定する(S608)。そして、特定した顧客について顧客・位置情報データベース131を検索し、製品の製造番号を含む基本情報を抽出する(S609)。そして、作業を行った現場の製品の製造番号と顧客・位置情報データベース131から抽出した製品の製造番号とが一致するか、作業者の判定を受け付ける(S610)。もし、不一致の場合(S610でNO)は、類似名称の別顧客を選択しているか、データベースの情報が古いものであったり誤りがあったりする可能性がある。そこで、現在位置情報に基づき、顧客・位置情報データベース131から、近隣の類似名称の顧客を再度検索し(S611)、製品の製造番号が一致する顧客名を抽出する。このようにして、作業者は、実際に作業した顧客の製品の製造番号と、顧客・位置情報データベースから提供された顧客の製品の製造番号とが一致した場合に、現在位置における顧客名と顧客・位置情報データベースの顧客名とが同一のものであることを正しく判定できる。
【0032】
なお、「製品の製造番号」に代えて、顧客名を、他と混同せずに正しく抽出できる他のデータ、例えば作業者が「装置型式」と「電話番号」を知っていた場合には、これらの情報を使用して顧客・位置情報データベース131を検索しても良い。
【0033】
もし再検索の結果、現在位置情報に対応する顧客・位置情報データベース131の情報に誤りが有ったことが明確になった場合には、保守管理サーバに顧客・位置情報データベース131の更新要求を送り(S612)、保守管理サーバにおいて更新処理がなされる(S621)。
【0034】
正しい顧客名を抽出できた場合(S610でYES)には、サービス報告書の作成(S613、図7の718)を開始し、サービス報告書の入力・編集作業に進む。
【0035】
サービス報告書の作成を終えたら、作業者はモバイル端末の画面上のサービス報告書の所定の欄に顧客の責任者の電子サインをもらい(S614、図7の720、図8の720)、顧客に問い合わせて顧客へのサービス報告書の送信方法を決定し(S615)、保守サービス会社の保守管理サーバにサービス報告書(電子)をアップロードする(S616)。保守サービス会社内では、関係者にサービス報告書(電子)が回覧され(S622)、決定された方法で顧客に自動送信され(S623)、サービス報告書(電子)の審査・登録の処理がなされ(S624)、審査・承認を経て最終的なサービス報告書(電子)722として報告書システムサーバSRSに登録される(図7図8の722)。顧客が受信したサービス報告書(電子)の控え(図7図8の730)は、顧客側で保管される。保守管理サーバ(CRMシステム)100では、最終的なサービス報告書(電子)722をもとに、サービス報告書の下書き715を作成し(図7図8の715)、次回の利用に供する。
【0036】
本発明によれば、報告書に記載の全ての技術情報が電子データ化され、保守サービス会社で共有され、その情報が活用される。また、サービス報告書発行に係る業務の負担が軽減され、かつ、報告書の社内回覧や顧客への報告発行も迅速に行われる。全ての技術情報が電子データ化され、関係者に回覧されるので、作業者の作業内容を正確に把握でき、顧客の問い合わせに対して迅速・適切に応答できるので、顧客満足度の向上を図ることもできる。
【0037】
さらに、本発明によれば、サービス報告書下書きが存在せず、作業者がモバイル端末で、サービス報告書のフォーマットに、特定の顧客名と製品名を入力せざるを得ない場合、作業者が、顧客名の特定について保守管理サーバのサポートを受けることができる。そのため、検索キーの入力操作の不備等により、マスタから該当顧客を検索するのに手間取ることや、類似の名称の近隣の顧客を誤って選択・入力してしまう等のリスクを解消できる。現地で顧客と面会できる時間に制約がある場合にも、モバイル端末から即座に顧客を特定でき、作業者が間違った顧客を選択する可能性を排除できる。また、GPSによる位置検出に誤差を含んでいる場合であっても、近隣の類似名称の別顧客を誤って選択する可能性が排除される。
【符号の説明】
【0038】
100…保守管理サーバ(CRMシステム)、110…SRS、120…演算処理部、130…マスタデータベース、131…顧客・位置情報データベース、132…報告書データベース、134…マスタデータ、135…GPS位置情報、136…顧客一覧、160…ウェブサーバ、200…顧客、300…モバイル端末、400…地図情報提供者のサイト、500…無線通信事業者の基地局、502…GPS衛星、700…サービス報告書、710…サービス報告書のフォーマット、715…サービス報告書下書き、720…サービス報告書(電子データ)。
図1
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図4A
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図9