(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770165
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】ケイ酸塩系青色発光蛍光体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 11/59 20060101AFI20150806BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
C09K11/59CPR
C09K11/08 B
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-510686(P2012-510686)
(86)(22)【出願日】2011年4月14日
(86)【国際出願番号】JP2011059272
(87)【国際公開番号】WO2011129397
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2013年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2010-93117(P2010-93117)
(32)【優先日】2010年4月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000119988
【氏名又は名称】宇部マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074675
【弁理士】
【氏名又は名称】柳川 泰男
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 徹
(72)【発明者】
【氏名】山内 正人
(72)【発明者】
【氏名】野口 誠司
(72)【発明者】
【氏名】福田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】植木 明
【審査官】
馬籠 朋広
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/091603(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/135926(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/139014(WO,A1)
【文献】
特開2005−060670(JP,A)
【文献】
特開平07−101722(JP,A)
【文献】
特開2009−256596(JP,A)
【文献】
特開2008−031422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00−11/89
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MeO源粉末、MgO源粉末、EuO源粉末及びSiO2源粉末を含む粉末混合物を焼成する工程を含む下記式(I)の組成式で表されるケイ酸塩系青色発光蛍光体の製造方法であって:
3(Me1-x,Eux)O・aMgO・bSiO2 ・・・(I)
(但し、式中、MeはSr、もしくはCaとSrとの混合物、xは0.001〜0.110の範囲の数、aは0.9〜1.1の範囲の数、bは1.8〜2.2の範囲の数である。)
MeO源粉末が、炭酸ストロンチウム粉末と塩化ストロンチウム粉末との混合物、もしくは炭酸ストロンチウム粉末、塩化ストロンチウム粉末及び炭酸カルシウム粉末の混合物であって、MgO源粉末が、金属マグネシウム蒸気と酸素とを接触させて、金属マグネシウム蒸気を酸化させる方法により得られた、純度が99.9質量%以上で、かつBET比表面積が3〜60m2/gの範囲にある酸化マグネシウム粉末であることを特徴とするケイ酸塩系青色発光蛍光体の製造方法。
【請求項2】
上記のMeO源粉末、MgO源粉末、EuO源粉末及びSiO2源粉末を含む粉末混合物が、粉末混合物中のマグネシウム量を1モルとしたときに、塩素量に換算して0.02〜0.5モルの範囲の量となるように塩化ストロンチウムを含有する請求項1に記載のケイ酸塩系青色発光蛍光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に蛍光灯の青色発光源として有用なケイ酸塩系青色発光蛍光体と、そのケイ酸塩系青色発光蛍光体を製造するのに有利な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光灯などの水銀蒸気の放電により生成する紫外線(波長:254nm)により蛍光体を励起させて可視光を発光させる発光装置において、青色光の発光源には(Ba,Eu)O・MgO・5Al
2O
3の一般式で表されるアルミン酸塩系のBAM青色発光蛍光体が広く利用されている。しかし、BAM青色発光蛍光体は、経時的な発光強度の低下が大きいという問題がある。
【0003】
一方、経時的な発光強度の低下が小さい青色発光蛍光体として、3(Me,Eu)O・aMgO・bSiO
2(但し、Meは、Ca、Sr及びBaからなる群より選ばれる一種以上のアルカリ土類金属、aは0.9〜1.1の範囲の数、bは1.8〜2.2の範囲の数)の一般式で表されるケイ酸塩系の青色発光蛍光体が知られている。しかしながら、ケイ酸塩系青色発光蛍光体は一般に発光強度がアルミン酸塩系のBAM青色発光蛍光体よりも低いとされている。
【0004】
特許文献1には、母体中にCu、Ga、Ge、As、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Au、Hg、Tl、Pb、Biなどの元素を添加元素として含有させたケイ酸塩系青色発光蛍光体は、波長147nmの真空紫外線で励起させたときの発光強度が高くなる旨の記載がある。なお、この特許文献1の実施例では、MeO源にSrCO
3を、MgO源にMgCO
3を、SiO
2源にSiO
2を、EuO源にEu
2O
3を、そして熔融助剤(フラックス)にNH
4Brを用いた粉末混合物を焼成することによってケイ酸塩系青色発光蛍光体を製造している。
【0005】
特許文献2には、Mgの一部を、5族及び6族の元素からなる群より選ばれる金属に置換したケイ酸塩系青色発光蛍光体は、波長146nmの真空紫外線を1時間及び24時間照射したときの発光強度が向上する旨の記載がある。なお、この特許文献2の実施例では、MeO源に炭酸バリウムと炭酸ストロンチウムを、MgO源に塩基性炭酸マグネシウムを、SiO
2源に二酸化ケイ素を、EuO源に酸化ユウロピウムを用いた粉末混合物を焼成することによってケイ酸塩系青色発光蛍光体を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−70187号公報
【特許文献2】特開2007−314644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通り、ケイ酸塩系青色発光蛍光体の発光強度の向上を目的として種々の検討がなされているが、本発明者の検討によると、これまでに知られているケイ酸塩系青色発光蛍光体は、特に波長254nmの紫外線で励起させたときの発光強度が、BAM青色発光蛍光体と比較すると、充分に高いレベルにあるとは言えない。
従って、本発明の目的は、波長254nmの紫外線で励起させたときの青色光の発光強度が向上したケイ酸塩系青色発光蛍光体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、MeO源粉末、EuO源粉末、MgO源粉末及びSiO
2源粉末を含む粉末混合物を焼成してケイ酸塩系青色発光蛍光体を製造するに際して、MgO源に金属マグネシウム蒸気と酸素とを接触させて、金属マグネシウム蒸気を酸化させる方法により得られた、高純度で微細な酸化マグネシウム粉末を用いるか、あるいはMgO源に高純度で微細な塩基性炭酸マグネシウム粉末を用いて、更に粉末混合物にフラックスとして塩素化合物を所定の量にて添加することによって、得られるケイ酸塩系青色発光蛍光体の波長254nmの紫外線で励起させたときの発光強度が向上すること、特にはアルミン酸塩系のBAM青色発光蛍光体よりも波長254nmの紫外線で励起させたときの発光強度が1.1倍以上である新規なケイ酸塩系青色発光蛍光体を得ることが可能となることを見出して本発明を完成させた。
【0009】
従って、本発明は、純度が99.9質量%以上であって、BET比表面積が3〜60m
2/gの範囲にある、金属マグネシウム蒸気と酸素とを接触させて、金属マグネシウム蒸気を酸化させる方法により得られた酸化マグネシウム粉末、MeO源粉末、EuO源粉末及びSiO
2源粉末を含む粉末混合物を焼成することを特徴とする下記式(I)の組成式で表されるケイ酸塩系青色発光蛍光体の製造方法にある。
3(Me
1-x,Eu
x)O・aMgO・bSiO
2 ・・・(I)
(但し、式中、MeはSr、もしくはCa及びBaのうちの一方又は両方とSrとの混合物、xは0.001〜0.110の範囲の数、aは0.9〜1.1の範囲の数、bは1.8〜2.2の範囲の数である。)
【0010】
上記本発明の製造方法の好ましい態様は、次の通りである。
(1)粉末混合物が、粉末混合物中のマグネシウム量を1モルとしたときに、塩素量に換算して0.02〜0.5モルの範囲の量となるように塩素化合物を含有する。
(2)粉末混合物が、粉末混合物中のマグネシウム量を1モルとしたときに、塩素量に換算して0.02〜0.5モルの範囲の量となるように塩化ストロンチウムを含有する。
【0011】
本発明は更に、下記式(I)の組成式で表されるケイ酸塩系青色発光蛍光体であって、
3(Me
1-x,Eu
x)O・aMgO・bSiO
2 ・・・(I)
(但し、式中、MeはSr、もしくはCa及びBaのうちの一方又は両方とSrとの混合物、xは0.001〜0.110の範囲の数、aは0.9〜1.1の範囲の数、bは1.8〜2.2の範囲の数である)
波長254nmの紫外線で励起させたときに発光する430〜490nmの波長範囲にある可視光の最大発光強度が、(Ba
0.976,Eu
0.024)O・MgO・5Al
2O
3の組成式で表される平均粒子径が6.5μmの青色発光蛍光体を波長254nmの紫外線で励起させたときに発光する430〜490nmの波長範囲にある可視光の最大発光強度に対して1.1倍以上であるケイ酸塩系青色発光蛍光体にもある。
【0012】
上記本発明のケイ酸塩系青色発光蛍光体の好ましい態様は、次の通りである。
(1)前記式(I)中のMeがSrである。
(2)平均粒子径が1.0〜20μmの範囲にある。
(3)上記本発明の製造方法により得られたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法を利用することによって、波長254nmの紫外線で励起させたときの青色光の発光強度が顕著に向上したケイ酸塩系青色発光蛍光体を工業的に有利に製造することができる。
本発明のケイ酸塩系青色発光蛍光体は、波長254nmの紫外線で励起させたときの青色光の発光強度が高いので、蛍光灯の青色光の発光源として有利に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の製造方法により得られるケイ酸塩系青色発光蛍光体は、下記式(I)の組成式で表される。
3(Me
1-x,Eu
x)O・aMgO・bSiO
2 ・・・(I)
但し、式中、MeはSr、もしくはCa及びBaのうちの一方又は両方とSrとの混合物、xは0.001〜0.110の範囲の数、aは0.9〜1.1の範囲の数、bは1.8〜2.2の範囲の数である。
【0015】
Meは、Srであるか、BaとSrの混合物であることが好ましく、Srであることが特に好ましい。BaとSrの混合物はBaの含有量を1モルとしたときにSrの含有量が3〜6モルの範囲にあることが好ましい。
【0016】
xは、0.010〜0.070の範囲の数であることが好ましい。aは0.97〜1.03の範囲の数であることが好ましい。bは1.97〜2.03の範囲の数であることが好ましい。
【0017】
本発明のケイ酸塩系青色発光蛍光体の製造方法には、ケイ酸塩系青色発光蛍光体のMgO源粉末に酸化マグネシウム粉末を用いる方法と、塩基性炭酸マグネシウム粉末を用いる方法とがある。先ず、MgO源粉末に酸化マグネシウム粉末を用いる方法について説明する。
【0018】
MgO源粉末として用いる酸化マグネシウム粉末は、純度が99.9質量%以上で、BET比表面積が3〜60m
2/gの範囲にある、金属マグネシウム蒸気と酸素とを接触させて、金属マグネシウム蒸気を酸化させる方法(気相法)で得られた酸化マグネシウム粉末である。すなわち高純度で、かつ下記の計算式により求められるBET径が0.028〜0.56μmの範囲にある微細な酸化マグネシウム粉末である。酸化マグネシウム粉末のBET比表面積は、5〜45m
2/gの範囲にあることが好ましく、5〜20m
2/gの範囲にあることが特に好ましい。
【0019】
BET径(μm)=6/[BET比表面積(m
2/g)×3.58(g/cm
3)]
上記計算式において、6は表面形状係数であり、3.58g/cm
3は酸化マグネシウム粉末の真密度である。
【0020】
気相法により得られた酸化マグネシウム粉末は、一次粒子の形状が立方体状で、凝集粒子を形成しにくい。このため、MgO源粉末に気相法により得られた酸化マグネシウム粉末を用いることによって、均一に酸化マグネシウム粉末が分散した組成の均一性が高い粉末混合物とすることができ、その組成の均一性が高い粉末混合物を焼成することによって、組成が均一で発光強度の高いケイ酸塩系青色発光蛍光体を得ることができる。
【0021】
MgO源粉末以外の原料粉末、すなわちMeO源粉末、EuO源粉末及びSiO
2源粉末は、酸化物の粉末であってもよいし、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硝酸塩及びシュウ酸塩などの加熱により酸化物を生成する化合物の粉末であってもよい。これらの原料粉末は、純度が99質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上であることがより好ましい。また、平均粒子径は、0.1〜50μmの範囲にあることが好ましい。なお、本明細書において、平均粒子径はレーザー回折散乱法により測定した値である。
【0022】
粉末混合物には、得られるケイ酸塩系青色発光蛍光体の最大発光強度を更に高めるために、W、Pb、Pなどの元素を添加していてもよい。これらの元素の添加量は、MgO源中のマグネシウム量を1モルとしたときに0.01〜0.2モルの範囲の量にあることが好ましい。
【0023】
粉末混合物は、平均粒子径が10〜80μmの範囲にある粒状体とした後、焼成することが好ましい。粉末混合物の粒状体は、各原料粉末を水中で混合して、粉末混合物のスラリーとした後、スラリーを噴霧乾燥する方法を用いて製造することができる。
【0024】
粉末混合物は、フラックスが添加されていることが好ましい。フラックスは塩素化合物であることが好ましい。塩素化合物の添加量は粉末混合物中のマグネシウム量を1モルとしたときに、塩素量に換算して0.02〜0.5モルの範囲にあることが好ましく、0.1〜0.5モルの範囲にあることがより好ましく、0.2〜0.5モルの範囲にあることが特に好ましい。
【0025】
塩素化合物は、ケイ酸塩系青色発光蛍光体を構成する金属(Me、Eu、Mg)の塩化物であることが好ましい。塩素化合物の例としては、塩化ストロンチウム、塩化マグネシウム、塩化ユウロピウムを挙げることができる。塩素化合物は塩化ストロンチウムであることが好ましい。
【0026】
粉末混合物の焼成は、還元性ガス雰囲気下にて行なうことが好ましい。還元性ガスの例としては、0.5〜5.0体積%の水素ガスと99.5〜95.0体積%の不活性ガスの混合ガスを挙げることができる。不活性ガスの例としては、アルゴンガス及び窒素ガスを挙げることができる。焼成温度は、一般に900〜1300℃の範囲、好ましくは1050〜1250℃の範囲、特に好ましくは1100〜1230℃の範囲である。焼成時間は、一般に0.5〜100時間の範囲である。
【0027】
原料粉末に加熱により酸化物を生成する化合物の粉末を用いる場合には、還元性ガス雰囲気下で焼成する前に、粉末混合物を大気雰囲気下にて、600〜850℃の温度で0.5〜100時間仮焼することが好ましい。
【0028】
焼成により得られたケイ酸塩系青色発光蛍光体は、必要に応じて分級処理、塩酸や硝酸などの鉱酸による酸洗浄処理、ベーキング処理を行なってもよい。
【0029】
次に、MgO源粉末に塩基性炭酸マグネシウム粉末を用いる方法について説明する。
MgO源粉末として用いる塩基性炭酸マグネシウム粉末は、純度が99質量%以上であって、平均粒子径が1〜20μmの範囲にある。MgO源粉末に塩基性炭酸マグネシウム粉末を用いる場合にはフラックスに塩素化合物を用い、原料粉末の粉末混合物に塩素化合物を、マグネシウム量を1モルとしたときに、塩素量に換算して0.2〜0.5モルの範囲となる量にて添加することが好ましい。これ以外の点は、MgO源粉末に酸化マグネシウム粉末を用いる場合と同様である。
【0030】
上記の製造方法を用いることによって、アルミン酸塩のBAM青色発光蛍光体よりも波長254nmの紫外線で励起させたときに発光強度が大きいケイ酸塩系青色発光蛍光体、特には、波長254nmの紫外線で励起させたときに発光する430〜490nmの波長範囲にある可視光の最大発光強度が、(Ba
0.976,Eu
0.024)O・MgO・5Al
2O
3の組成式で表される平均粒子径が6.5μmのBAM青色発光蛍光体を波長254nmの紫外線で励起させたときに発光する430〜490nmの波長範囲にある可視光の最大発光強度に対して1.1倍以上である新規なケイ酸塩系青色発光蛍光体を得ることが可能となる。このケイ酸塩系青色発光蛍光体のBAM青色発光蛍光体に対する最大発光強度の倍率は、好ましくは1.3倍以上であり、通常は2.0倍以下、特には1.8倍以下である。なお、本明細書において、最大発光強度は、430〜490nmの波長範囲にある可視光の発光ピークのうちで最も高い発光ピークの高さを意味する。
【0031】
上記ケイ酸塩系青色発光蛍光体は、平均粒子径(レーザー回折散乱法により測定した値)が1.0〜20μmの範囲にあることが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例と比較例により説明する。なお、実施例及び比較例において、最大発光強度は、(Ba
0.976,Eu
0.024)O・MgO・5Al
2O
3の組成式で表される平均粒子径が6.5μmのアルミン酸塩系のBAM青色発光蛍光体を波長254nmの紫外線で励起させたときに発光する430〜490nmの波長範囲にある可視光の最大発光強度に対する倍率である。
【0033】
[実施例1]
炭酸ストロンチウム粉末[SrCO
3:純度99.99質量%、平均粒子径2.73μm]、塩化ストロンチウム粉末[SrCl
2:純度99.99質量%]、酸化マグネシウム粉末[MgO:気相法により製造したもの、純度99.98質量%以上、BET比表面積8m
2/g(BET径0.20μm)]、酸化ケイ素粉末[SiO
2:純度99.9質量%、平均粒子径3.87μm]、酸化ユウロピウム粉末[Eu
2O
3:純度99.9質量%、平均粒子径2.71μm]の各原料粉末を、モル比で2.860:0.125:1.000:2.000:0.0150(=SrCO
3:SrCl
2:MgO:SiO
2:Eu
2O
3)の割合となるように秤量した。
【0034】
秤量した各原料粉末を純水と共にボールミルに投入し、24時間湿式混合して、粉末混合物のスラリーを得た。得られたスラリーをスプレードライヤーにより噴霧乾燥して、平均粒子径が40μmの粉末混合物粒状体を得た。得られた粉末混合物粒状体をアルミナ坩堝に入れて、大気雰囲気下にて800℃の温度で3時間仮焼し、次いで、室温まで放冷した後、2体積%水素−98体積%アルゴンの還元性ガス雰囲気下にて1200℃の温度で3時間焼成して、組成式が3(Sr
2.995,Eu
0.005)O・MgO・SiO
2で表されるケイ酸塩系青色発光蛍光体を得た。得られたケイ酸塩系青色発光蛍光体を、目開き20μmのポリアミド製篩にて湿式で篩分けし、粗大粒子を除去した後、乾燥した。粗大粒子を除去した後のケイ酸塩系青色発光蛍光体の平均粒子径は7μmであった。
【0035】
得られたケイ酸塩系青色発光蛍光体を層状に形成して、このケイ酸塩系青色発光蛍光体に波長254nmの紫外線を照射したところ、最大ピークの波長が460nmの青色光の発光を示し、その最大ピークから求めた最大発光強度は1.35倍であった。
【0036】
[実施例2]
粉末混合物粒状体の還元性ガス雰囲気下での焼成温度を1100℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてケイ酸塩系青色発光蛍光体を得た。得られたケイ酸塩系青色発光蛍光体は平均粒子径が4μmであった。このケイ酸塩系青色発光蛍光体に実施例1と同様にして波長254nmの紫外線を照射したところ、最大発光ピークの波長が460nmの青色光の発光を示し、その最大ピークから求めた最大発光強度は1.32倍であった。
【0037】
[実施例3]
粉末混合物粒状体の還元性ガス雰囲気下での焼成温度を1220℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてケイ酸塩系青色発光蛍光体を得た。得られたケイ酸塩系青色発光蛍光体は平均粒子径が9μmであった。このケイ酸塩系青色発光蛍光体に実施例1と同様にして波長254nmの紫外線を照射したところ、最大発光ピークの波長が460nmの青色光の発光を示し、その最大ピークから求めた最大発光強度は1.34倍であった。
【0038】
[実施例4]
酸化マグネシウム粉末の代わりに、塩基性炭酸マグネシウム[4MgCO
3・Mg(OH)
2・4H
2O:アルドリッチ社製、純度:99質量%、平均粒子径:13.5μm]を用いて、炭酸ストロンチウム粉末、塩化ストロンチウム粉末、塩基性炭酸マグネシウム粉末、酸化ケイ素粉末及び酸化ユウロピウム粉末の各原料粉末を、モル比で2.860:0.125:1.00:0.20:0.0150(=SrCO
3:SrCl
2:4MgCO
3・Mg(OH)
2・4H
2O:SiO
2:Eu
2O
3)としたこと以外は、実施例1と同様にしてケイ酸塩系青色発光蛍光体を得た。得られたケイ酸塩系青色発光蛍光体は平均粒子径が9μmであった。このケイ酸塩系青色発光蛍光体に実施例1と同様にして波長254nmの紫外線を照射したところ、最大発光ピークの波長が460nmの青色光の発光を示し、その最大ピークから求めた最大発光強度は1.15倍であった。
【0039】
[比較例1]
炭酸ストロンチウム粉末、塩基性炭酸マグネシウム粉末、酸化ケイ素粉末及び酸化ユウロピウム粉末の各粉末の混合量を、モル比で2.985:1.00:2.00:0.015(=SrCO
3:MgO:SiO
2:Eu
2O
3)とし、塩化ストロンチウム粉末を使用しなかったこと以外は実施例4と同様にして、ケイ酸塩系青色発光蛍光体を得た。得られたケイ酸塩系青色発光蛍光体は平均粒子径が8μmであった。このケイ酸塩系青色発光蛍光体に実施例1と同様にして波長254nmの紫外線を照射したところ、最大発光ピークの波長が460nmの青色光の発光を示したが、その最大ピークから求めた最大発光強度は0.9倍であり、基準のBAM青色発光蛍光体よりも低い値であった。