(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770168
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】呼吸可能なガスの加圧流を対象物に供給する回路の漏れを制御するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
A61M16/00 305A
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-513691(P2012-513691)
(86)(22)【出願日】2010年5月11日
(65)【公表番号】特表2012-528647(P2012-528647A)
(43)【公表日】2012年11月15日
(86)【国際出願番号】IB2010052089
(87)【国際公開番号】WO2010140072
(87)【国際公開日】20101209
【審査請求日】2013年5月1日
(31)【優先権主張番号】61/183,622
(32)【優先日】2009年6月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ピットマン ステフェン ダルトン
(72)【発明者】
【氏名】ヒューサー ローレン エリザベス
【審査官】
鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−506833(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0056284(US,A1)
【文献】
特開2005−103311(JP,A)
【文献】
特表2004−512065(JP,A)
【文献】
特開平8−19608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の気道に呼吸可能なガスの加圧流を供給するよう構成されるシステムであって、
入口、出口及び前記出口とつながるよう前記入口を配置するルーメンを形成するガス回路であって、前記出口が、前記対象物の気道に前記呼吸可能なガスの加圧流を供給するよう構成される、ガス回路と、
前記回路内部から大気へとガスを解放するよう構成される弁と、
前記ガス回路内の1つ又は複数のガスパラメータに関連付けられる情報を搬送する1つ又は複数の出力信号を生成するよう構成される1つ又は複数のセンサであって、前記1つ又は複数のガスパラメータが、前記回路内から大気へのガス漏れに関する、1つ又は複数のセンサと、
前記回路内部から大気へ解放されるガスの量が、前記1つ又は複数のセンサにより生成される前記1つ又は複数の出力信号に基づき調整されるよう、前記弁を制御するよう構成されるプロセッサとを有する、システム。
【請求項2】
前記回路内から大気へのガス漏れが閾値を超えて上昇したことを前記1つ又は複数のセンサにより生成される前記1つ又は複数の出力信号が示す場合、前記回路内部から前記弁を介して解放されるガス流が減らされる又は止められるべく、前記プロセッサが、前記弁を制御するよう構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記閾値が、動的であり、前記回路内の1つ又は複数のガスパラメータの関数として変化する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記回路が、前記回路の前記出口を形成する対象物インタフェース機器と、
前記入口と前記出口との間の前記ルーメンの少なくとも一部を形成する導管であって、前記対象物インタフェース機器に接続される、導管とを有し、
前記弁は、前記対象物インタフェース機器に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ又は複数のセンサの前記1つ又は複数の出力信号が、前記回路内の圧力及び/又は流量の一方又は両方に関連付けられる情報を搬送する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
対象物の気道に呼吸可能なガスの加圧流を供給するシステムの作動方法において、
圧生成器が、前記対象物の気道とのインタフェースとなる回路を通して前記対象物の気道に呼吸可能なガスの加圧流を供給するステップと、
1つ又は複数のセンサが、前記呼吸可能なガスの加圧流の1つ又は複数のガスパラメータに関連付けられる情報を搬送する1つ又は複数の出力信号を生成するステップであって、前記1つ又は複数のガスパラメータが、前記回路内から大気への前記呼吸可能なガスの加圧流におけるガス漏れに関する、ステップと、
プロセッサが、前記1つ又は複数のセンサにより生成される前記1つ又は複数の出力信号に基づき、制御された割合で前記回路内のガスを大気へと解放するよう弁を制御するステップとを有する、作動方法。
【請求項7】
前記弁を制御するステップが、前記回路内から大気へのガス漏れが閾値を超えて上昇したことを前記1つ又は複数のセンサにより生成される前記1つ又は複数の出力信号が示す場合、前記回路内のガスが解放される割合を減らすよう弁を制御するステップを有する、請求項6に記載の作動方法。
【請求項8】
前記閾値が動的であり、前記方法は更に、
前記回路内の1つ又は複数のガスパラメータの関数として、前記閾値を決定するステップを有する、請求項7に記載の作動方法。
【請求項9】
前記回路が、
前記対象物の気道とのインタフェースとなる対象物インタフェース機器と、
前記対象物インタフェース機器に前記呼吸可能なガスの加圧流を供給する導管とを有し、
前記ガスが、前記対象物インタフェース機器に配置される弁を通して制御された割合で前記回路内から大気へと解放される、請求項6に記載の作動方法。
【請求項10】
前記1つ又は複数の出力信号が、前記回路内の圧力及び/又は流量の一方又は両方に関連付けられる情報を搬送する、請求項6に記載の作動方法。
【請求項11】
対象物の気道に呼吸可能なガスの加圧流を供給するよう構成されるシステムであって、
前記対象物の気道に呼吸可能なガスの加圧流を供給する手段であって、前記対象物の気道とのインタフェースとなる、手段と、
前記呼吸可能なガスの加圧流の1つ又は複数のガスパラメータに関連付けられる情報を搬送する1つ又は複数の出力信号を生成する手段であって、前記1つ又は複数のガスパラメータが、前記供給手段内から大気への前記呼吸可能なガスの加圧流におけるガス漏れに関する、手段と、
前記生成手段により生成される前記1つ又は複数の出力信号に基づき、前記供給手段内のガスを大気へと制御された割合で解放する手段とを有する、システム。
【請求項12】
前記ガスを解放する手段が、前記供給手段内から大気へのガス漏れが閾値を超えて上昇したことを前記生成手段により生成される前記1つ又は複数の出力信号が示す場合、前記供給手段内のガスが解放される割合を減らす手段を有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記閾値が動的であり、前記システムは更に、
前記供給手段内の1つ又は複数のガスパラメータの関数として、前記閾値を決定する手段を有する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記供給する手段が、
前記対象物の気道とのインタフェースとなる対象物インタフェース機器と、
前記対象物インタフェース機器に前記呼吸可能なガスの加圧流を供給する導管とを有し、
前記解放する手段が、前記対象物インタフェース機器に配置される弁を有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記1つ又は複数の出力信号が、前記供給手段内の圧力及び/又は流量の一方又は両方に関連付けられる情報を搬送する、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路内部から大気へのガス漏れを動的に制御すると共に、回路を通して対象物に呼吸可能なガスの加圧流を供給することに関する。
【背景技術】
【0002】
自己呼吸する対象物の気道に治療目的で呼吸可能なガスの加圧流を供給するよう構成されるシステムが知られている。例えば、気道陽圧システムは一般に、睡眠障害の呼吸症状を減らすために、睡眠の間加圧気道支援を対象物に与えるために用いられる。これらのシステムは、再呼吸を防止するため大気にガスを漏らす機構を含む回路を通して、呼吸可能なガスの加圧流を供給する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの機構は一般に、構造的に固定され、静的な態様で回路内からガスを漏らす。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの側面は、呼吸可能なガスの加圧流を対象物の気道に供給するよう構成されるシステムに関する。ある実施形態では、上記システムは、ガス回路、弁、1つ又は複数のセンサ及びプロセッサを有する。上記ガス回路は、入口、出口及び上記出口とつながるよう上記入口を配置するルーメンを形成する。上記出口が、上記対象物の気道に上記呼吸可能なガスの加圧流を供給するよう構成される。上記弁が、上記回路内部のガスを大気へと解放するよう構成される。上記1つ又は複数のセンサが、
上記ガス回路内の1つ又は複数のガスパラメータに関連付けられる情報を搬送する1つ又は複数の出力信号を生成するよう構成される。
上記1つ又は複数のガスパラメータは、上記回路内から大気へのガス漏れに関する。上記プロセッサが、上記回路内部から大気へ解放されるガスの量が、上記1つ又は複数のセンサにより生成される上記1つ又は複数の出力信号に基づかれるよう、上記弁を制御するよう構成される。
【0005】
本発明の別の側面は、上記対象物の気道に呼吸可能なガスの加圧流を供給する
システムの作動方法に関する。ある実施形態では、上記方法は、
圧生成器が、上記対象物の気道とのインタフェースとなる回路を通して上記対象物の気道に呼吸可能なガスの加圧流を供給するステップと、
1つ又は複数のセンサが、上記呼吸可能なガスの加圧流の1つ又は複数のガスパラメータに関連付けられる情報を搬送する1つ又は複数の出力信号を生成するステップ
であって、上記1つ又は複数のガスパラメータが、上記回路内から大気への上記呼吸可能なガスの加圧流におけるガス漏れに関する、ステップと、
プロセッサが、上記1つ又は複数のセンサにより生成される上記1つ又は複数の出力信号に基づき、制御された
割合で上記回路内のガスを大気へと解放する
よう弁を制御するステップとを有する。
【0006】
本発明の別の側面は、対象物の気道に呼吸可能なガスの加圧流を供給するよう構成されるシステムに関する。ある実施形態では、上記対象物の気道に呼吸可能なガスの加圧流を供給する手段であって、上記対象物の気道とのインタフェースとなる、手段と、
上記呼吸可能なガスの加圧流の1つ又は複数のガスパラメータに関連付けられる情報を搬送する1つ又は複数の出力信号を生成する手段
であって、上記1つ又は複数のガスパラメータが、上記供給手段内から大気への上記呼吸可能なガスの加圧流におけるガス漏れに関する、手段と、上記生成手段により生成される1つ又は複数の出力信号に基づき、上記供給手段内のガスを大気へと制御された
割合で解放する手段とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つ又は複数の実施形態による、呼吸可能なガスの加圧流を対象物の気道に供給するよう構成されるシステムを示す図である。
【
図2】本発明の1つ又は複数の実施形態による、漏れ対インタフェース機器内の圧力に関連付けられるパラメータのプロットである。
【
図3】本発明の1つ又は複数の実施形態による、漏れ、インタフェース機器内の圧力、及び弁の作動モードに関連付けられるパラメータのプロットを含む図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のこれら及び他の目的、特徴及び特性が、この構造の関連要素及び部品の組合せにおける動作方法及び機能、並びに製造コストと共に、対応する図面を参照して以下の明細書及び添付の特許請求の範囲を考慮することにより、一層明らかになるだろう。図面、明細書及び特許請求の範囲はすべて、この明細書の一部を形成する。同様な参照符号は、さまざまな図面における対応する部品を表す。図面は、説明及び記載のためだけに存在し、本発明を限定するものではない点を明確に理解されたい。更に、本書における任意の実施形態において、図示又は説明される構造的特徴は、他の実施形態においても同様に用いられることが可能である点を理解されたい。しかしながら、図面が図示及び説明のためにだけあること、及び本発明の範囲を規定するものとして意図されないことは、明示的に理解されたい。明細書及び請求項において、用いられる単数形の「a」「an」及び「the」は、文脈上他の意図が明示的に示されない限り複数形の参照を含むものである。
【0009】
図1は、呼吸可能なガスの加圧流を対象物12の気道に供給するよう構成されるシステム10を示す。特に、システム10は、治療レジームの一部として呼吸可能なガスの加圧流を対象物12の気道に供給するよう構成される。呼吸可能なガスの加圧流を対象物12の気道に供給する際、システム10は、対象者12によるガスの再呼吸を防止するため、「意図せずに」大気に漏らされるガスの量に基づき、大気に漏らされるガスの量を最適に及び/又は動的に調整する。ある実施形態において、システム10は、圧生成器14、回路16、1つ又は複数のセンサ18、1つ又は複数の弁20及びプロセッサ22を含む。
【0010】
圧生成器14は、回路16により対象物12の気道に供給される呼吸可能なガスの加圧流を生成するよう構成される。圧生成器14により生成される呼吸可能なガスの加圧流の1つ又は複数のパラメータは、治療レジームのパラメータに基づき制御されることができる。治療レジームは、例えば、就寝時刻の間、自己呼吸する対象物12に気道陽圧支援を与えるよう設計された圧治療アルゴリズムを含むことができる。対象物12に与えられるこの気道陽圧支援は、対象物12により経験される睡眠障害の呼吸症状を減らす治療利点を対象物12に与えることになる。圧治療アルゴリズムは、biPAPアルゴリズム、CPAPアルゴリズム、自動滴定CPAP、サーボ呼吸、バックアップ呼吸、例えばC―Flexといった快適さ機能、初期呼気の間の低減圧、及び/又は他の圧治療アルゴリズムの1つ又は複数を含むことができる。治療レジームに基づき制御される呼吸可能なガスの加圧流の1つ又は複数のパラメータは、呼吸可能なガスの加圧流の圧、流量、組成、ボリューム、温度、湿度及び/又は他のパラメータの1つ又は複数を含むことができる。ある実施形態において、圧生成器14は、ガス供給源24及び圧力支援デバイス26を含む。
【0011】
ガス供給源24は、ガス体を含む。この源から、圧力支援デバイス26が、対象物12に対して供給される呼吸可能なガスの加圧流を生成する。ガス供給源24は、例えば、環境大気といった呼吸ガスの任意の供給源、加圧ガスのタンク、壁ガス供給源及び/又は呼吸可能な他のガス体を含むことができる。ガス供給源24からの呼吸ガスは、ガスの形(例えば酸化窒素、霧状等)の例えば空気、酸素、酸素混合、呼吸ガス及び薬物の混合といった任意の呼吸可能なガス、及び/又は他の呼吸可能なガスとすることができる。
【0012】
圧力支援デバイス26は、圧力支援デバイス26から回路16に解放される呼吸可能なガス流の1つ又は複数のパラメータ(例えば、圧、流れ等)を制御する1つ又は複数の機構を含む。例えば、圧力支援デバイス26は、呼吸可能なガス流の1つ又は複数のパラメータを制御する弁、ブロワー、ピストン、送風装置及び/又は他の機構の1つ又は複数を含むことができる。圧力支援デバイス26は、睡眠の間、対象物12により経験される睡眠障害の呼吸症状を減らすよう設計された治療レジームに基づき、対象物12に供給される呼吸可能なガスの加圧流を生成するよう構成される気道陽圧支援デバイスを含むことができる。
【0013】
回路16は、圧生成器14及び対象物12の気道の間のガス流路を定める。そのようなものとして、回路16は、圧生成器14から対象物12の気道へとガスの加圧流を供給するよう構成される。ある実施形態において、回路16は、インタフェース機器28及び導管30の1つ又は複数を含む。
【0014】
インタフェース機器28は、対象物12の気道及び回路16の間でガスをやり取りするよう構成される。インタフェース機器28は、回路16及び対象物12の気道の間でガスをやり取りする侵襲的又は非侵襲的機器を含むことができる。例えば、インタフェース機器28は、鼻マスク、鼻/口マスク、全顔マスク、鼻カニューレ、気管内チューブ(endotracheal tube)、LMA、気管チューブ(tracheal tube)及び/又は他のインタフェース機器を含むことができる。
【0015】
導管30は、圧力支援デバイス18につながる回路16の入口とインタフェース機器28により形成される回路16の出口との間のルーメンを形成する。ある実施形態において、導管30は、柔軟である。導管30は、インタフェース機器28と一体的に形成されることができる。又は、導管30は、インタフェース機器28から分離して形成されることができる。導管30及びインタフェース機器28が分離して形成されるある実施形態において、導管30及びインタフェース機器28は、選択的に着脱可能である。
【0016】
図1において、回路16は、対象物12の気道と呼吸可能なガスの加圧流をやり取りする単一の手足の回路として示されるが、これは限定を意図するものではない。ある実施形態において、回路16は、対象物12の気道から離れてガスを運搬するよう構成される別々の部分(例えば、導管30の別々の手足)を持つ2つの手足の回路である。
【0017】
一般に、インタフェース機器28及び対象物12の気道の間のインタフェースは、完全でない。例えば、インタフェース機器28が対象物12の鼻及び/又は口にわたり適合するマスクを含む場合、マスクと対象物12の顔との間の密封は完全でないことがあり、マスク内のいくらかのガスが環境大気に漏らされることを可能にすることができる。インタフェース機器28のインタフェースと対象物12の気道との間のこの種の漏れは、他のタイプのインタフェース機器においても同様に共通である。同様に、ある実施形態において、回路16は、回路16内から大気への他の漏洩源も含む。例えば、インタフェース機器28及び導管30の間の接続で、及び/又は導管30及び圧力支援デバイス26の間の接続で、ガスが大気に漏れることがある。更に、インタフェース機器28及び/又は導管30には、回路16内のガスが環境大気に漏らされることを可能にする漏れ口がある。これらの漏れ口は、インタフェース機器28及び/又は導管30内で故意に形成されることができ、及び/又は使用を通して(例えば、典型的な摩滅により)、インタフェース機器28及び/又は導管30において形成されることができる。
【0018】
呼吸可能なガスの加圧流を対象物12に供給する間の回路16内のガスの大気への漏れは、システム10内で利点を与えることができる。回路16が呼吸可能なガスの加圧流を対象物12の気道に供給する使用の間、対象物12による呼気が回路16に強制的に戻される。呼気ガスの回路16へのこの誘導は、回路16内の圧を増加させ、回路16内のガスの二酸化炭素成分を増加させる傾向がある。タイダル呼吸の間、回路16に誘導される呼気ガスの一部が回路16から大気へ漏らされない場合、対象物12は、再呼吸が原因で呼吸可能なガスの加圧流から充分な酸素を受けることができない。
【0019】
回路16内のガスの少なくとも一部の大気への漏れが、システム10内でいくらか有益ではあるが(特に、対象物12と二酸化炭素成分がより高いであろう回路16との間のインタフェースの近くのガス漏れ)、過剰な漏れは、システム10により対象物12に与えられる処置の快適さ、効果、効率及び/又は利便性を低下させる場合がある。例えば、回路16内から大気への過剰な漏れは、システム10により生成される音声ノイズの量を増加させ、回路16内の圧調節を危うくし、(例えば、圧生成器14に関連付けられるプロセッサによる)回路16内のガスパラメータに基づく呼吸イベントの検出を危うくし、回路16内の適切な圧を維持するのに必要とされる圧生成器14への負荷を増加させ、及び/又は、システム10により対象物12に与えられる処置の快適さ、効果、効率及び/又は利便性を他の態様で阻害する。
【0020】
センサ18は、対象物12の気道に供給される呼吸可能なガスの加圧流の1つ又は複数のパラメータを監視するよう構成される。例えば、センサ18は、呼吸可能なガスの加圧流の圧、流量、組成、ボリューム、温度、湿度及び/又は他のパラメータの1つ又は複数に関連付けられる情報を伝達する出力信号を生成するよう構成される1つ又は複数のセンサを含むことができる。斯かるセンサは、例えば、圧センサ、流量計、カプノメータ、及び/又は、呼吸可能なガスの加圧流の1つ又は複数のパラメータに関連付けられる情報を伝達する出力信号を生成するよう構成される他のセンサの1つ又は複数を含む。センサ18は、圧力支援デバイス26内部、インタフェース機器28内部、及び/又は導管30により形成されるルーメン内の呼吸可能なガスの加圧流とやり取りがあるよう、システム10に配置されることができる。例えば、1つ又は複数のセンサ18が、圧力支援デバイス26、インタフェース機器28及び/又は導管30を含む気道陽圧支援システムに配置されることができる。
【0021】
1つ又は複数の弁20は、回路16内のガスを大気へと解放するよう構成される。ガスが回路16内から大気へと解放されるレートが制御可能であるよう、1つ又は複数の弁20は構成される。回路16内から大気へとガスを解放するレートを1つ又は複数の弁20が制御することは、回路16から大気に漏らされる量が(例えば、以下に更に説明されるように)制御されることを可能にする。
【0022】
ある実施形態では、1つ又は複数の弁20は、2つのモードで作動する2状態バイナリ弁を含む。第1のモードにおいて、弁は、第1のレートで回路16からガスを解放する。第2のモードにおいて、弁は、第2のレートで回路16からガスを解放する。第1のモードは、弁により形成される開口部を通りガスが比較的自由に進むのを許される「オープン」モードとすることができる。第2のモードは、第2のレートがゼロ又はほぼゼロであるよう、弁により形成される開口部が効果的に閉ざされる「クローズド」モードとすることができる。
【0023】
ある実施形態では、1つ又は複数の弁20は、回路16内から大気に弁を通して複数のレートでガスが進むことを可能にするよう制御されることができる弁を含む。これを実現するために、弁は、サイズにおいて、段々に調整されることができる開口部、ガスが大気に解放されるレートを調整するため個別に又はグループで、選択的に開かれる又は閉じられることが可能である複数の開口部、及び/又はガスが大気に解放されるレートを調整する他の機構を提供することができる。
【0024】
図1に示される実施形態において、1つ又は複数の弁20は、インタフェース機器28に配置される弁を含む。これは、再呼吸を防止するため、(例えば、高濃度の二酸化炭素を持つ)呼気ガス漏れを容易にすることができる。これは、限定を意図するものではない点を理解されたい。ある実施形態では、1つ又は複数の弁20は、導管30に配置される弁を含む。ある実施形態では、1つ又は複数の弁20は、インタフェース機器28及び導管30に配置される弁を含む。
【0025】
プロセッサ22は、システム10における情報処理能力を提供するよう構成される。そのようなものとして、プロセッサ2は、デジタルプロセッサ、アナログプロセッサ、情報を処理するよう設計されたデジタル回路、情報を処理するよう設計されたアナログ回路、及び/又はシステム10内の制御要素、状態機械、及び/又は電子的に情報を処理する他の機構の1つ又は複数を含むことができる。
図1では、プロセッサ22が単一のエンティティとして示されるが、これは説明するためだけにそうなっている。いくつかの実現において、プロセッサ22は、複数の処理ユニットを含むことができる。これらの処理ユニットは、物理的に同じデバイス内に配置されることができるか、又はプロセッサ22は、協調して作動する複数のデバイスの処理機能を表すことができる。プロセッサ22は、1つ又は複数のコンピュータプログラムモジュールを実行することにより、以下に説明される機能を提供するよう構成されることができる。プロセッサ22は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェアにより、ソフトウェア、ハードウェア及び/又はファームウェアのいくつかの組合せにより、及び/又はプロセッサ22における処理能力を構成する他の機構により、モジュールを実行するよう構成されることができる。プロセッサ22は、圧生成器14、インタフェース機器28及び/又は導管30に一体的に配置される、及び/又はこれら上で搬送される1つ又は複数の要素を含むことができる。
【0026】
上述されたように、システム10による対象物12への呼吸可能なガスの加圧流の供給の間、ガスは、回路16内から大気へと漏らされることになる。これは、(例えば、再呼吸を防止するため)意図的に漏らされるガス、及び/又は、(例えば、装置摩耗、気道インタフェース漏洩等により)意図せず漏れされるガスを含むことができる。プロセッサ22は、呼吸可能なガスの加圧流を通してシステム10により対象物12に提供される治療の効果、効率、快適さ及び/又は利便性を強化するため、回路16内から大気への漏れを制御するべく1つ又は複数の弁20を制御するよう構成される。特に、プロセッサ22は、回路16内から大気への漏れを安定させるよう構成される。
【0027】
1つ又は複数の弁20を制御することにより、回路16内から大気への漏れを安定させるため、プロセッサ22は、センサ18により生成される1つ又は複数の出力信号に基づき、1つ又は複数の弁20を制御する。より詳細には、プロセッサ22は、回路16から大気へのガス漏れに関連付けられる回路16内のガスパラメータに関する情報を搬送するセンサ18により生成される出力信号に基づき弁20を制御する。非限定的な例を用いて、弁20の制御の基礎となる回路16内のガスパラメータは、回路16内のガスの流量又は大気に漏らされる回路16内のガスの推定された流量を含むことができる。
【0028】
ある実施形態では、センサ18により生成される出力信号が漏れが増加していることを示すとき、プロセッサ22は、回路16内から大気へとガスが漏らされるレートを徐々に低下させるよう弁20を制御する。例えば、回路16内から大気へとガスを漏らすことができる弁20の開口部の面積は、回路16内の漏れに関連付けられるガスパラメータの(例えばこれに比例する)関数として決定されることができる。この種の動的な調整は、回路16内から大気へのガスの意図されない漏れの量が増加するにつれ、弁20を通して大気に漏らされるガスの量を減少させることになる。逆もまた同じである。
【0029】
いくつかの実施形態において、弁20は、第1のモード及び第2のモードにおいて動作可能である、バイナリ2状態弁を含む。弁20が第1のモードで作動される場合、弁20は、回路16内のガスが漏らされる第1のサイズの開口部を提供する。弁20が第2のモードで作動される場合、弁20は、第1の開口部より小さい開口部を提供するか、又は開口部を全く提供しない。第2のモードにおける開口部が閉じられる又は実質的に閉じられるよう弁20が構成される場合、弁20は、第2のモードにおいて、効果的に閉ざされる。
【0030】
これらの実施形態において、センサ18により生成される出力信号が1つ又は複数の閾値を超える漏れの量を示すかどうか上に基づき、弁20が第1のモードと第2のモードとの間でプロセッサ22により切り替えられるよう、プロセッサ22は弁20を制御できる。例えば、ある実施形態において、センサ18により生成される出力信号は、回路16内から大気へのガス漏れに関連付けられる第1のガスパラメータに関する情報を搬送する。第1のガスパラメータは例えば、回路16内の流量及び/又は漏れの推定流量を含むことができる。第1のガスパラメータが上位閾値レベルより上昇する(例えば、出力信号が対応する閾値レベルより上昇する)ことをセンサ18により生成される出力信号が示す場合、プロセッサ22は、弁20を第1のモードから第2のモードへと切り替えるよう制御する。これにより、漏れの量が減らされる。
【0031】
一旦弁20が第2の動作モードに切り替わると、プロセッサ22は、弁20を第1の動作モードへ戻すよう最終的に制御することができる。例えば、プロセッサ22は、所定の時間期間後、第1の動作モードへ弁20を切り替えることができる。別の例として、第1のガスパラメータが下位閾値レベル以下に落ちるまで、プロセッサ22は、第2の動作モードに弁20を維持することができる。一旦第1のガスパラメータが下位閾値レベル以下に下がる(例えば、出力信号が、対応する閾値レベル以下に落ちる)ことをセンサ18により生成される出力信号が示すと、プロセッサ22は、弁20を第2の動作モードから第1の動作モードへ切り替えるよう制御する。これにより、弁20を通してガスが大気に漏らされるレートが上昇される。
【0032】
ある実施形態では、弁20を制御するのに用いられる第1のガスパラメータに関する閾値レベルは、静的かつ固定される少なくとも1つの閾値レベルを含む。ユーザは、この少なくとも1つのレベルを設定することができるか、又はこの少なくとも1つのレベルは、製造時にセットされることができる。ある実施形態では、弁20を制御するのに用いられる第1のガスパラメータに関する閾値レベルが、適応的及び動的である少なくとも1つの閾値レベルを含む。この少なくとも1つの閾値レベルは、センサ18により生成される出力信号に基づき決定されることができる。例えば、センサ18により生成される出力信号は、回路16に含まれるガスの第2のガスパラメータに関する情報を搬送することができ、及び少なくとも1つの閾値レベルは、第2のガスパラメータに基づき決定されることができる。第2のガスパラメータは、例えば、回路16内の圧力、インタフェース機器28内の圧力、回路30内の圧力等、及び/又は他のガスパラメータを含むことができる。
【0033】
図示を用いて、
図2は、漏洩に関連付けられるパラメータ(例えば、上述される第1のガスパラメータ)対インタフェース機器(例えば、
図1及び上述のインタフェース機器28)内の圧力のプロットを示す。
図2におけるプロットは、漏洩に関連付けられるパラメータに関する上位閾値レベル32と、漏洩に関連付けられるパラメータに関する下位閾値レベル34とを含む。
図2に示される実施形態において、上位閾値レベル32及び下位閾値レベル34はそれぞれ、インタフェース機器内の圧力の関数として変化する。
【0034】
このプロットは、3つのデータポイント36、38及び40を含み、(
図1及び上述の)弁20と同じ又は類似する弁が、上位閾値レベル32及び下位閾値レベル34に基づき制御される態様を示す。データポイント36は、上位の閾値レベル32と下位閾値レベル34との間に配置される。漏洩に関連付けられるパラメータがデータポイント36にある場合、弁は、その現在のモードで作動し続ける。例えば、呼吸可能なガスの加圧流がデフォルトの第1モード(例えば、上述の「オープン」モード)にある弁で最近開始された場合、弁は、データポイント36でもこのモードのままである。
【0035】
データポイント38は、上位の閾値レベル32を越える。そのようなものとして、漏洩に関連付けられるパラメータがデータポイント36からデータポイント38へ進む場合、弁は、第1の動作モードから、弁を介したガス漏れを減らす又は実質的に止めさえする第2の動作モード(例えば、上述の第2のモード)に切り替えられる。これは、漏洩に関連付けられるパラメータの値を減らす傾向がある。例えば、第1のモードから第2のモードへの弁の切り替えは、漏洩に関連付けられるパラメータがデータポイント36に戻る(又は近づく)よう動くことをもたらす。データポイント36に戻る(又は近づく)際、弁は、第2の動作モードのまま残る。
【0036】
データポイント40は、下位閾値レベル34より下にある。そのようなものとして、漏洩に関連付けられるパラメータが(弁が第2の動作モードに切り替えられたあと)データポイント36又はその近くからデータポイント40へと進む場合、弁は第1の動作モードへ戻るよう切り替えられる。これは、漏洩に関連付けられるパラメータのレベルを増加させる傾向がある。例えば、第1のモードへ弁を切り替えることは、漏洩に関連付けられるパラメータがデータポイント36に戻る(又は近づく)よう動くことをもたらす。
【0037】
図3は、(
図1及び上述の)弁20と同じ又は類似する弁を制御するのに動的な閾値が使用される態様を示す。ある実施形態では、
図3に示されるプロットにより示される制御が、例えば(
図1及び上述の)プロセッサ22といった弁を制御するプロセッサにより実現される。
図3は、3つのプロット42、44及び46を含む。プロット42は、漏洩に関連付けられるパラメータ対時間のプロットである。プロット44は、インタフェース機器内の圧力対時間のプロットである。プロット46は、弁の作動モード(例えば、第1のオープンモード又は第2のクローズドモード)のプロットである。
【0038】
漏洩に関連付けられるパラメータに関する上位の閾値レベル48及び下位閾値レベル50が、プロット42と同じ時間軸上に示される。
図3から分かるように、上位の閾値レベル48及び下位閾値レベル50は、インタフェース機器内の圧力に依存する。特に、
図3は、インタフェース機器内の圧力(プロット44を参照)が時間D及びGでそれぞれ低下するとき、上位の閾値レベル48及び下位閾値レベル50が対応する低下をどのように経験するかを示す。
【0039】
図3は、弁が所与の時間で動作するモードが、漏洩に関連付けられるパラメータ並びに閾値レベル48及び50によりどのように表されるかも示す。特に、時間Aにおいて、弁は第1の作動モードであり、漏洩に関連付けられるパラメータのレベルは、上位の閾値レベル48と下位閾値レベル50との間にある。時間B及びFにおいて、漏洩に関連付けられるパラメータのレベルは、上位の閾値レベル48を超える。それに応じて、弁のモードは第1のモードから第2のモードへと切り替えられる。これにより、漏れが減らされ、漏洩に関連付けられるパラメータのレベルが閾値レベル48及び50の間に戻るよう低下される。時間E及びGにおいて、漏洩に関連付けられるパラメータのレベルは、下位閾値レベル50を超える。これは、弁のモードが第2のモードから第1のモードへ戻るよう切り替えられることをもたらす。これにより、パラメータが再度閾値レベル48及び50の間にあるよう、漏れが増加され、漏洩に関連付けられるパラメータのレベルが増加される。
【0040】
最も実際的かつ好ましい実施形態であると現在考慮されるものに基づき、本発明が説明目的で詳述されたが、斯かるその詳細は、単に説明目的のためだけにあること、及び本発明は、開示された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内にある修正及び均等な構成を覆うよう意図されることを理解されたい。例えば、可能な限り、任意の実施形態の1つ又は複数の特徴が、任意の他の実施形態の1つ又は複数の特徴と結合されることができる点を本発明は想定していることを理解されたい。