(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
探触子を介して被検体に超音波信号を送受信する送受信処理部と、受信された前記超音波信号に基づいて弾性値の分布を示す弾性フレームデータを求めて2次元弾性像を生成する2次元弾性像構成部と、複数の前記弾性フレームデータに基づいて3次元弾性像を生成する3次元弾性像構成部と、前記2次元弾性像と前記3次元弾性像の少なくとも1つを表示する表示部とを備えた超音波診断装置において、
複数の前記弾性フレームデータにおける弾性値の変動を検出し、該弾性値の変動の安定性に基づいて前記送受信処理部の送受信条件を切り替える切替部を設けたことを特徴とする超音波診断装置。
探触子を介して被検体の断層面に超音波ビームを走査し、該断層面からの超音波信号を受信して受波ビーム信号を生成する送受信処理部と、前記受波ビーム信号に基づいて前記断層面における生体組織の弾性値の分布を示す弾性フレームデータを求めて2次元弾性像を生成する2次元弾性像構成部と、前記弾性フレームデータを前記断層面に交差する方向の位置が異なる複数の断層面について収集して弾性ボリュームデータを生成する弾性ボリュームデータ生成部と、前記弾性ボリュームデータをレンダリングして3次元弾性像を生成する3次元弾性像構成部と、少なくとも前記3次元弾性像を表示する表示部とを備えた超音波診断装置において、
前記送受信処理部は、設定された第1の精細度で前記弾性フレームデータを取得する第1の送受信条件と、前記第1の精細度よりも高い第2の精細度で前記弾性フレームデータを取得する第2の送受信条件とを切り替え可能に形成され、
さらに、前記送受信処理部の第1と第2の送受信条件を、それぞれ設定された時間ごとに交互に切り替える切替部を設けたことを特徴とする超音波診断装置。
探触子を介して超音波信号を送受信するステップと、受信された超音波信号に基づいて弾性値の分布を示す複数の弾性フレームデータにおける弾性値の変動を検出するステップと、該弾性値の変動の安定性に基づいて送受信条件を切り替えるステップとを有することを特徴とする超音波送受信方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、超音波診断において、益々高精細な3次元弾性像を生成することが要請されている。ここで、本明細書において高精細の3次元弾性像とは、分解能が高く、かつ弾性分布の表示階調がきめ細かい画像をいう。このような高精細な3次元弾性像を生成するには、弾性ボリュームデータを構成する複数の2次元弾性フレームデータの分解能が高く、かつフレームレートが高いことが要求される。しかし、このような高精細な2次元弾性フレームデータを取得するためには、探触子による押し引き操作が安定していること、あるいは均等であることが要求される。また、フレームレートを高くすることに加えて、探触子を断層面(スキャン面)に交差する方向への移動をできるだけ低速で、かつ等速で行って、フレーム間隔が密な弾性フレームデータを収集することが要求される。一方、高精細な2次元弾性像を見ながら、狙いとする関心部位(診断対象部位)を探すと、探索に時間がかかり所望の関心部位の高精細な弾性ボリュームデータを収集する時間が長くなり、超音波診断装置の使い勝手が悪いという問題がある。
【0008】
そこで、関心部位を探すときは、分解能が粗く、かつフレームレートが粗い探索モードで2次元断層像(又は、2次元弾性像)を取得し、関心部位を画像内に捉えたときに、分解能が高く、かつフレームレートが高い高精細モードで2次元断層像(又は、2次元弾性像)を取得することが望ましい。
【0009】
特許文献1に記載の従来技術では、関心部位の探索モードと高精細モードとを切り替えて、速やかに関心部位を探すとともに、高精細の弾性ボリュームデータを収集して高精細な3次元弾性像を生成することについては配慮されていない。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、高精細な3次元弾性像を取得でき、かつ使い勝手に優れた超音波診断装置と超音波送受信方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の超音波診断装置は、探触子を介して被検体に超音波ビームを走査し、該被検体からの超音波信号を受信する送受信処理部と、前記超音波信号に基づいて弾性値の分布を示す弾性フレームデータを求めて2次元弾性像を生成する2次元弾性像構成部と、複数の前記弾性フレームデータに基づいて3次元弾性像を生成する3次元弾性像構成部と、前記2次元弾性像と前記3次元弾性像の少なくとも1つを表示する表示部とを備えた超音波診断装置において、複数の前記弾性フレームデータにおける弾性値の変動を検出し、該弾性値の変動の安定性に基づいて前記送受信処理部の送受信条件を切り替える切替部を設けたことを特徴とする。
【0012】
すなわち、複数の弾性フレームデータの弾性値の変動が安定していれば、手技又は機械的方
法、拍
動、あるいは超音波等により、生体組織に圧力を加えるいずれの方法の場合であっても、適正な弾性フレームデータを取得できる。そこで、弾性値の変動が安定していることを検知した場合に、送受信処理部の送受信条件を例えば高精細な3次元弾性画像を取得可能な送受信条件に切替えることにより、高精細な3次元弾性像を自動的に取得できるから、使い勝手に優れた超音波診断装置を実現できる。
【0013】
この場合において、前記送受信処理部の送受信条件は、設定された第1の精細度で前記弾性フレームデータを取得する第1の送受信条件と、前記第1の精細度よりも高い第2の精細度で前記弾性フレームデータを取得する第2の送受信条件とすることが好ましい。そして、前記切替部は、前記2次元弾性像構成部から前記第1の送受信条件で取得された連続する複数の前記弾性フレームデータを取り込んで、前記弾性値の変動の安定性を評価する構成とする。
【0014】
すなわち、検者は送受信処理部を粗い第1の精細度の第1の送受信条件に設定して、探触子を被検体の体表に当接させて超音波を送受信して第1の精細度の2次元弾性像(及び/又は、2次元断層像)を表示部に表示させる。このとき、探触子を断層面に交差する方向(例えば、ほぼ直交する方向)に移動することにより、異なる断層面における2次元弾性像が順次表示部に表示されるので、検者は2次元弾性像を観察して所望の関心部位を探索することができる。ここで、第1の精細度を粗く設定することにより、2次元弾性フレームデータの計測時間を短くできる。また、フレームレートが粗いので探触子を速く移動でき、所望の関心部位を速やかに探索できる。なお、関心部位の探索は、2次元断層像によることができるが、後述するように、弾性ボリュームデータの取得開始を弾性値の変動に基づいて自動的に検知することから、探索モードの場合も2次元弾性像を生成して表示する。
【0015】
ここで、探触子を断層面に交差する方向に移動する操作は、手技により行うことができる。機械的に行う場合は、例えば、探触子を断層面に交差する方向に遥動(スイング)させるモータ駆動の治具に取り付けることにより実現できる。さらに、振動子を2次元配列してなる電子走査式の2次元アレイ型の探触子を用い、電子走査により超音波ビームを断層面に交差する方向に遥動させるようにすることができる。
【0016】
このようにして関心部位を探索した位置で、検者が3次元弾性像の取得を開始する場合、例えば、被検体の体表に当接させた探触子を押し引き操作すると、関心部位における第1の精細度の2次元弾性像が表示部に表示される。この2次元弾性像に表れる弾性値は、探触子の押し引き操作に応じて変動する。そこで、切替部は、第1の精細度における2次元弾性像の弾性値の変動パターンを求め、その変動パターンが安定していれば、検者が高精細な3次元弾性像の取得を開始したものと判断できる。この判断に基づいて、第2の精細度の第2の送受信条件に切り替える指令を送受信処理部に出力することにより、高精細の弾性ボリュームデータが取得されるから、高精細な3次元弾性像を取得することができる。
【0017】
言い換えれば、切替部から出力される切替え指令は、高精細弾性像の取得を開始するトリガ信号ということができる。このようにして、本発明によれば、精細度の粗い超音波像(2次元弾性像及び/又は2次元断層像)で関心部位を高速で探索できる。そして、関心部位を捉えた位置で検者が弾性ボリュームデータの取得を開始すると、2次元弾性フレームデータの弾性値の変動に現れる。そこで、切替部により、弾性値の変動に基づいて高精細の弾性ボリュームデータの取得に自動的に切り替えることにより、使い勝手に優れた超音波診断装置を実現することができる。つまり、超音波像から検出された変位等の弾性値の変動から、自動的に高精細な弾性フレームデータを取得するための切り替えタイミングを得ることができ、簡便性が増すと同時にクオリティの高い3次元弾性像が得られる。
【0018】
上記の説明では、弾性像を得るために被検体の生体組織に圧迫を加える操作を手技により行う例で説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、被検体の体表に当接させた探触子を機械的に押し引き操作する場合は、探触子を取り付けた遥動治具の手元スイッチを操作すると、機械的な押し引き操作が弾性値の変動に現れる。そこで、機械的な押し引き操作が開始されたことを弾性値の変動パターンに基づいて検知し、自動的に高精細モードに切り替えることができる。また、同様に、拍動に伴う生体組織に加わる圧力を利用する場合、又は、探触子から照射する超音波により生体組織に圧力を加える場合でも、探索モードにおける探索速度が不規則に変動するから、2つのRFフレームデータの間隔(ピッチ)が不規則に変動する。したがって、弾性値の変動パターンが不規則に変動するから、規則的に安定した変動に変わったことを検知して、自動的に高精細モードに切り替えることができる。このように、いかなる圧迫方法であっても、弾性値の変動パターンが安定したときに弾性ボリュームデータの取得開始を検知して、自動的に高精細モードに切り替えることができる。
【0019】
なお、前記弾性フレームデータは、第1又は第2の精細度で取得された前記RF信号フレームデータに基づいて、それぞれ演算することができる。また、第1又は第2の精細度は、送受信ビームの密度及びフレームレートの少なくとも1つにより設定することができる。また、前記弾性値は、前記生体組織の変位、歪み、弾性率、粘性、参照領域に対する歪み比、弾性に相関するその他の物理量(パラメータ)のいずれかを用いることができる。
【0020】
上記のいずれかの超音波診断装置において、前記弾性値の変動の安定性は、検出した前記弾性値の変動パターンに基づいて評価することができる。弾性値の変動パターンの安定性は、前記変動パターンが繰り返し増減する変動サイクルを有する場合、前記変動サイクルの連続する2つの1/2サイクル又は1サイクルの変動パターン特徴量に基づいて評価することができる。例えば、時間的に連続する2つの変動パターン特徴量の差を求め、その差が設定範囲内のときに安定性があると評価する。また、前記切替部は、前記変動サイクルの安定性に加えて、その安定性が設定サイクル数連続する連続性に基づいて、前記送受信条件を第1の精細度から第2の精細度に切り替えるようにすることができる。
【0021】
さらに、上記のいずれかの超音波診断装置において、前記第1の精細度のとき、前記表示部に前記2次元弾性像又は前記3次元弾性像を表示することができる。
【0022】
さらにまた、上記のいずれかの超音波診断装置において、3次元弾性像構成部は、複数の弾性ボリュームデータをそれぞれ複数のフレームブロックに分け、弾性値が一定の許容範囲にあるフレームブロックを結合して1つの弾性ボリュームデータを作成し、この弾性ボリュームデータをレンダリングして3次元弾性像を構成することができる。これにより、適正な弾性値を有する弾性ボリュームデータのブロックにより3次元弾性像を構成できるから、一層高精細な3次元弾性像を構成することができる。
【0023】
上記いずれかの切替部は、前記第2の送受信条件に切り替えた後、前記変動パターンの安定性がくずれたとき、前記第1の送
受信条件にリセットし、再度前記変動パターンの安定性の評価に基づいて前記第2の送
受信条件に切替えることができる。
【0024】
上記いずれかの2次元弾性像構成部は、拍動に伴う圧迫を受けて変位する生体組織の弾性値の分布を示す前記弾性フレームデータを求めるものとし、前記切替部は、連続する複数の前記弾性フレームデータを取り込み、前記拍動に伴う前記弾性値の変動パターンのピークを検出し、前記ピーク周期の安定性に基づいて前記送受信処理部の送受信条件を切り替えることができる。この場合において、前記探触子が、モータによって前記断層面に交差する方向に遥動される治具に取付られているときは、前記切替部は、前記ピークを検出したときに前記モータを設定時間停止する信号を出力し、該設定時間の経過後、前記ピークの周期に合わせて前記探触子の断層面位置を設定角度遥動させるように前記モータを駆動するようにすることができる。
【0025】
また、上記いずれかの超音波診断装置において、前記3次元弾性像構成部は、複数の弾性ボリュームデータをそれぞれ複数のフレームブロックに分け、弾性値が一定の許容範囲にあるフレームブロックを結合して1つの弾性ボリュームデータを作成し、この弾性ボリュームデータをレンダリングして3次元弾性像を構成するものとすることができる。
【0026】
前記弾性値の変動の安定性は、前記第1の送受信条件で取得された前記弾性ボリュームデータを構成する隣り合う2つの弾性フレームデータ間の相関値又はノイズ比とそれらの設定値とを比較して評価することができる。この場合、隣り合う2つの弾性フレームデータの相関値又はノイズ比のボリュームデータ全体の平均値に基づいて評価することが好ましい。さらに、前記弾性値の変動の安定性は、前記第1の送受信条件で取得された複数の前記弾性ボリュームデータを取り込み、連続する2組の弾性ボリュームデータの類似度で評価することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高精細な3次元弾性像を取得でき、かつ使い勝手に優れた超音波診断装置を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に、本発明に係る超音波診断装置の一実施形態の全体のブロック構成図を示す。図示のように、超音波診断装置は、本体部100と、被検体101の体表に当接させて用いる超音波探触子(以下、探触子と略称する。)102と、本体部100の各構成要素を制御する制御部103と、制御部103に各種の指令入力を行なう操作部104を備えている。操作部104は、キーボードやトラックボール等のポインティングデバイスを備えている。探触子102は、複数の振動子を矩形又は扇形に配列して形成されており、被検体101に振動子を介して超音波を送受信する機能を有している。本実施の形態では、
振動子を振動子の配列方向と直交する方向(短軸方向)に機械的に遥動させて、超音波を3次元領域に送受信することができるようになっている。例えば、
振動子を断層面に交差(例えば、直交)する方向に遥動(スイング)させる治具に取り付け、治具に取り付けたモータにより
振動子をスイングさせることができる。いわゆるメカニカル3次元プローブと称されるものである。なお、本発明は
振動子を機械的にスイングすることに代えて、手技により探触子102をスイングさせることができる。また、複数の振動子を2次元配列した探触子102を用い、超音波の送受信を電子的に制御して3次元領域に送受信するようにしてもよい。
【0030】
超音波診断装置の本体部100は、探触子102を介して被検体101の断層面に所定の時間間隔をおいて超音波を繰り返し送信する送信部105と、被検体101に送信された超音波に対応する生体組織からの反射エコー信号を探触子102を介して受信する受信部106と、送信部105と受信部106を制御する送受信制御部107を備えている。
【0031】
送信部105は、探触子102の振動子を駆動して超音波を発生させるための送波パルスを生成する。送信部105は、送信される超音波の収束点をある深さに設定する機能を有している。また、受信部106は、探触子102で受信した反射エコー信号について所定のゲインで増幅してRF信号すなわち受波信号を生成する。送受信制御部107は、送信部105や受信部106を制御するためのものである。整相加算部108は、受信部106で増幅されたRF信号の位相を制御し、1点又は複数の収束点に対し超音波の受波ビームを生成する。整相加算部108から出力される受波ビームのRF信号は断層面に対応するRF信号フレームデータとしてデータ記憶部109に記憶される。
【0032】
データ記憶部109に記憶されたRF信号フレームデータは2次元断層像構成部113に順次取り込まれて、2次元断層フレームデータが生成される。2次元断層画像構成部113は、制御部103により設定された条件に基づいて、データ記憶部109から出力されるRF信号フレームデータを入力して、ゲイン補正、ログ圧縮、検波、輪郭強調、フィルタ処理等の信号処理を行ない、2次元断層フレームデータを生成する。2次元断層像構成部113で生成された2次元断層フレームデータは、断層ボリュームデータ生成部114に出力される。断層ボリュームデータ生成部114は、順次入力される複数の2次元断層フレームデータに3次元空間座標を付して3次元断層ボリュームデータを生成してメモリに記憶するようになっている。2次元断層フレームデータに3次元空間座標を付す方法は、周知の方法を適用することができる。例えば、探触子102は、超音波の送受信と同時に送受信方向(θ、φ)を計測することができるようになっている。ここで、θは断層面に沿って扇形に走査する超音波ビームの走査角度であり、φは断層面に交差する方向に振られるRF信号フレームの遥動角度である。断層ボリュームデータ生成部114は、2次元断層フレームデータの取得位置に相当する送受信方向(θ、φ)に基づいて、複数の2次元断層フレームデータを3次元座標変換して、断層ボリュームデータを生成する。
【0033】
3次元断層像構成部115は、断層ボリュームデータ生成部114により生成された3次元断層ボリュームデータの輝度と不透明度に基づいて、以下に述べる周知のレンダリングにより、3次元断層フレームデータを生成するようになっている。すなわち、レンダリングは、次式(1)〜(3)を用いて行なう。
【0034】
Cout(i)=Cout(i-1)+(1−Aout(i-1))・A(i)・C(i)・S(i) (1)
Aout(i)=Aout(i-1)+(1−Aout(i-1))・A(i) (2)
A(i)=Opacity[C(i)] (3)
C(i)は作成される2次元投影面上のある点から3次元断層画像を見た場合、視線上i番目に存在するボクセルの輝度値である。Cout(i)は、出力されるピクセル値である。例えば、視線上にNボクセルの輝度値が並んだとき、i=0〜(N-1)までを積算した輝度値Cout(N-1)が最終的に出力されるピクセル値となる。Cout(i-1)は(i-1)番目までの積算値を示す。
【0035】
また、A(i)は視線上i番目に存在する輝度値の不透明度であり、式(3)に示すとおり、0〜1.0の値をとる断層不透明度テーブル(断層オパシティテーブル)である。断層不透明度テーブルは、輝度値から不透明度を参照することによって、出力する2次元投影面(3次元断層像)上への寄与率を決定する。
【0036】
S(i)は、輝度C(i)とその周辺の画素値より求めた勾配より算定される陰影付けのための重み成分で、例えば、光源とボクセルiを中心とした面の法線が一致する場合、もっとも強く反射するため1.0が与えられ、光源と法線が直交する場合には0.0が与えられるなどの強調効果を指し示す。
【0037】
Cout(i)
、Aout(i) は、共に0を初期値としている。式(2)に示されるように、Aout(i)はボクセルを通過するたびに積算され1.0に収束される。よって、式(1)に示されるように(i-1)番目までの不透明度の積算値Aout(i-1)が約1.0となった場合、i番目以降の輝度値C(i)は出力画像に反映されない。
【0038】
他方、データ記憶部109に記憶されたRF信号フレームデータは2次元弾性像構成部116に順次取り込まれて、2次元弾性フレームデータが生成される。つまり、2次元弾性像構成部116は、データ記憶部109に記憶された取得時間が異なる、つまり圧迫状態が異なる複数のRF信号フレームデータに基づいて、関心部位の各部の変位を求める。
【0039】
そして、求めた変位に基づいて弾性値を演算し、2次元弾性フレームデータを生成する。ここで、弾性値とは、変位、歪み、弾性率、粘性、設定された参照領域に対する歪み比、弾性に相関するその他の物理量(パラメータ)のいずれか1つを用いることができる。2次元弾性像構成部116で順次生成された複数の2次元弾性フレームデータは、弾性ボリュームデータ生成部117に出力される。弾性ボリュームデータ生成部117は、順次入力される複数の2次元弾性フレームデータに3次元空間座標を付して3次元弾性ボリュームデータを生成してメモリに記憶するようになっている。2次元弾性フレームデータに3次元空間座標を付す方法は、上述した2次元断層フレームデータの場合と同様である。
【0040】
3次元弾性像構成部118は、弾性ボリュームデータ生成部117により生成された3次元弾性ボリュームデータに基づいて、上述した3次元断層像の場合と同様に、周知のレンダリングにより、3次元弾性像を生成するようになっている。このとき、3次元弾性像構成部118は、特許文献1に記載されているように、関心部位を撮像した複数の弾性ボリュームデータのそれぞれを複数のフレームに分け、弾性値が一定の許容範囲にあるフレームブロックを結合して1つの弾性ボリュームデータを作成し、この弾性ボリュームデータをレンダリングして3次元弾性像を構成することができる。これにより、適正な弾性値を有する弾性ボリュームデータのブロックにより3次元弾性像を構成できるから、一層高精細な3次元弾性像を構成することができる。
【0041】
3次元断層像構成部115で生成された3次元断層フレームデータと、3次元弾性像構成部118で生成された3次元弾性フレームデータは、制御部
103を介して操作部104から入力される指令に応じて合成処理部119に適宜取り込まれる。合成処理部119は、制御部103等から入力される指令に応じて、3次元断層像と3次元弾性画像を並べて、又は加算等の合成画像を生成して表示部120に表示する。
【0042】
ここで、本実施の形態の特徴部について説明する。第1の特徴は、送信部105と受信部106と送受信制御部107から構成される送受信処理部にある。送受信処理部は、予め設定された第1の精細度で2次元断層フレームデータ及び2次元弾性フレームデータを取得する第1の送受信条件と、第1の精細度よりも高い第2の精細度で2次元断層フレームデータ及び2次元弾性フレームデータを取得する第2の送受信条件とを切り替え可能に形成されている。また、第2の特徴は、切替部121を設けたことにある。
【0043】
切替部121は、2次元弾性像構成部116で順次生成される第1の送受信条件で取得された複数の2次元弾性フレームデータを取り込み、2次元弾性フレームデータの弾性値の変動を検出する。そして、弾性値の変動パターンに基づいて、つまり、検者が高精細モードによる弾性ボリュームデータの取得を開始したと推定できる変動パターンが検出されたとき、送受信処理部を第2の送受信条件に切替える高精細モード切替え指令を制御部103に出力する。制御部103は高精細モード切替え指令に基づいて、送受信制御部107を制御して送受信処理部の送受信条件を第1から第2に切り替えるようになっている。以下、切替部121の詳細構成及び動作について、実施例に基づいて説明する。送受信処理部は、少なくとも送信部105と受信部106とからなる。
【実施例1】
【0044】
図2に、切替部121の一実施例の詳細構成を示す。切替部121は、弾性値の変動に基づいて高精細な弾性ボリュームデータの取得開始を自動的に検知して、高精細モードのトリガ信号である切替え指令を出力する。すなわち、切替部121は、経時グラフ作成部122、区間検出部124、変動パターン特徴量取得部126、変動パターン特徴量比較部128、高精細モードトリガ発生部130により構成される。
【0045】
経時グラフ作成部122は、2次元弾性像構成部116で取得された、弾性値(歪み、弾性率、変位、粘性、歪み比)、圧力等の情報を経時的に保存し、表示を行う。本実施例では、遥動角度φを固定して任意の探索速度で探触子102を移動して、第1の精細度のフレームレートで2つのRF信号フレームデータFr.0、Fr.1を取得しながら、表示部120に表示される2次元弾性像を観察して関心部位を探索する。このとき、手技によって探触子102を被検体101に押し引き操作(以下、適宜、圧迫操作という。)して2次元弾性像を取得する。これにより、生体組織に加えられる圧迫の強さと周期に応じた生体組織の弾性値が、経時グラフに反映される。
図3(c)に経時グラフの一例を示す。
【0046】
同図は、弾性値の一例として変位を用いた例である。変位の検出は、
図3(a)に示すように、計測時間が異なる一対のRFフレームデータFr.0、Fr.1に基づいて、周知のように、局所的なトラッキングによる変位検出、もしくは、2フレーム間の自己相関による変位検出によることができる。
【0047】
なお、経時グラフは、2次元弾性フレームデータ全領域の変位の平均値等に基づいて作成してもよいが、これに代えて、例えば脂肪層等の特定領域の局所2点間の変位もしくは脂肪層等の特定領域の変位画像の平均値の経時グラフを作成することが好ましい。これにより、グラフ作成時間を短縮できるだけでなく、安定して変位の経時グラフを得ることができる。
【0048】
関心部位を探索する探索モードの時間帯T1においては、送受信制御部107は、送信部105と受信部106を探索モードに対応して設定された粗い精細度の第1の送受信条件で制御する。例えば、第1の送受信条件は、断層面に走査する超音波ビームの本数の密度を粗く、かつフレームレートを低い値(すなわちボリュームレートが低い値)に設定される。そして、検者は、
図3(a)に示すように、探触子102の遥動角度φを固定したままで表示部120に表示される2次元断層像又は2次元弾性像を観察しながら関心部位を探索する。この探索モードの間は意識的な圧迫操作は行われないので、
図3(c)の時間帯T1に示すように、比較的小さな変位が検出される。関心部位を捉えると、時間帯T2において、検者は意識的に圧迫操作を行って弾性ボリュームデータの取得を開始しようとする。これにより、
図3(c)の時間帯T2においては、探触子102の押し引き操作に応じた大きな変位の変動が周期的に現れる。
【0049】
区間検出部124は、経時グラフ作成部122で作成された変位のグラフを取り込み、変位の変動サイクルを半サイクルごとに分割する。この区間分割は、押し引き操作の変位幅の中位を基準(ゼロ)として変動サイクルのゼロクロス点を区間の折り返しとすることができる。しかし、押し引き操作の切り替え点である変位の極大点と極小点に挟まれる半サイクルごとに分割してもよい。変動パターン特徴量取得部126は、区間検出部124において分割された半サイクルごとの変位の変動パターン特徴量を算出して、変動パターン特徴量比較部128に出力する。ここで、変動パターン特徴量は、変動サイクルのパターン(形状)の特徴を表現できる量である。変動サイクルを半サイクルごとに区分した2つの変動パターン同士の近似度、均等度、等を判断できるパターン特徴量であり、例えば、平均値、平均偏差等が適用できる。ここで、平均偏差とは、計測値のバラツキの度合いであり、時間軸の各計測点における変位の絶対値を、その平均値×計測点数で割った値の平方根である。
【0050】
変動パターン特徴量比較部128は、連続する2つの区間の変動パターン特徴量の差を評価パラメータとして順次求める。そして、評価パラメータを予め定めた評価範囲と比較し、評価範囲内であれば「安定性有り」と評価して、高精細モードトリガ発生部130を介して高精細モード切替え指令(トリガ信号)を出力する。この場合、変動パターン特徴量比較部128は、さらに、評価パラメータが「安定性有り」と評価した変動パターンが予め定めた複数区間連続したことを検知して、「連続性有り」と評価し、変動パターン特徴量の連続性を安定性に加えて、高精細モード切替え指令を出力する加重要件とすることができる。
【0051】
高精細モードトリガ発生部130から高精細モード切替え指令が出力されると、制御部103を介して送受信制御部107に送受信条件の切替え指令が出力される。送受信制御部107は、送信部105と受信部106を探索モードの第1の送受信条件から高精細モードの第2の送受信条件に切り替え制御する。これにより、探索モードよりも高い精細度で2次元弾性フレームデータを取得する高精細モードに切り替えられる。また、制御部103は、高精細モード切替え指令に合わせて、探触子102の図示していない遥動治具のモータに遥動指令を出力する。これにより、
図3(b)に示すように、遥動治具の例えば遥動アームに取り付けられた
振動子の超音波走査面が遥動され、その遥動角度φが制御される。
【0052】
このようにして、
図3(c)の時間帯T3に示すように圧迫操作が安定して、かつ連続的に繰り返されるとともに、超音波走査面の遥動角度φが設定範囲内で可変される。これにより、2次元弾性像構成部116により高精細モードで、関心部位を中心とした一定の3次元領域の2次元弾性フレームデータが連続して取得され、弾性ボリュームデータ生成部117により高精細の弾性ボリュームデータが生成される。遥動角度φが設定範囲内で往復される場合は、関心部位を含む3次元領域の高精細の弾性ボリュームデータが、複数生成されることになる。なお、
図3(b)において、前フレーム(Pre-frame)と後フレーム(Post-frame)は、弾性フレームデータの演算に係る取得時間が異なる、言い換えれば圧迫量が異なる一対のRFフレームデータ(Fr.0、Fr.1)、・・・、(Fr.n-1、Fr.n)であり、一対のRFフレームデータごとに2次元弾性フレームデータが求められる。このようにして、高精細モードの弾性ボリュームデータを取得する。
【0053】
取得された高精細な弾性ボリュームデータに基づいて、レンダリングにより高精細な3次元弾性像を生成することができる。
図4に、本実施例の探索モードから高精細モードへの切り替え及び高精細3次元弾性像を作成するまでの超音波診断装置における処理フローを、ステップS1〜S7に分けて示す。
【0054】
図5に、
図3の変形例を示す。
図5の実施例が
図3に実施例と異なる点は、探索モードの時間帯T1及び時間帯T2において、
振動子を遥動させていること、及び時間帯T2を長くして安定性及び連続性の評価を行うようにしたことにある。本実施例によれば、
振動子を遥動させて弾性ボリュームデータを取得しているから、リアルタイムにレンダリングして作成された3次元弾性像を観察して関心部位を探索することができる。このときの3次元弾性像の精細度は、第1の送受信条件による粗いモードである。なお、検者は操作部104を介して、切替部121に評価させる時間帯の長さを設定することもできる。切替部121は、設定された時間帯において、安定性又は連続性の評価を行う。
【0055】
つまり、
図5(a)に示すように、リアルタイムに3次元的なスキャンを行って、3次元弾性像を表示部120に表示して、関心部位を探索する。この際に、2次元弾性像を取得した際の、弾性値の変動パターンを取得し、
図5(c)に示すように、弾性ボリュームデータにおける弾性値の変動の安定性及び連続性を評価可能である。弾性値の変動の安定性及び連続性が確保されていれば、関心部位を捉えて安定した圧迫操作が開始されたものと判断できる。この判断に基づいて、
図3と同様に、高精細モードに切り替えて、高精細な弾性ボリュームデータの取得を行う。これにより、診断用に適した高精細3次元弾性像を取得することができる。
【0056】
本実施例によれば、探触子102を介して被検体101に超音波信号を送受信する送受信処理部105,106と、受信された超音波信号に基づいて弾性値の分布を示す弾性フレームデータを求めて2次元弾性像を生成する2次元弾性像構成部116と、複数の弾性フレームデータに基づいて3次元弾性像を生成する3次元弾性像構成部118と、2次元弾性像と3次元弾性像の少なくとも1つを表示する表示部120とを備えた超音波診断装置において、複数の弾性フレームデータにおける弾性値の変動を検出し、該弾性値の変動の安定性に基づいて送受信処理部105,106の送受信条件を切り替える切替部121を設けた。送受信処理部105,106の送受信条件は、設定された第1の精細度で弾性フレームデータを取得する第1の送受信条件と、第1の精細度よりも高い第2の精細度で弾性フレームデータを取得する第2の送受信条件であり、切替部121は、2次元弾性像構成部から第1の送受信条件で取得された連続する複数の弾性フレームデータを取り込んで、弾性値の変動の安定性を評価する。超音波送受信方法では、探触子102を介して超音波信号を送受信するステップと、受信された超音波信号に基づいて弾性値の分布を示す複数の弾性フレームデータにおける弾性値の変動を検出するステップと、該弾性値の変動の安定性に基づいて送受信条件を切り替えるステップを有している。
【0057】
また、表示部120は、複数の弾性フレームデータにおける弾性値の変動の安定性を3次元弾性像とともに表示することができる。よって、検者は、弾性値の変動の安定性に基づいて、現在の表示されている3次元弾性像は安定した状態で生成されているのか、第1の精細度と第2の精細度のどちらのモードで生成されたのかを確認することができる。
【実施例2】
【0058】
図6を用いて、本発明の切替部121に係る他の実施例を説明する。本実施例が実施例1と異なる点は、探触子102による押し引き操作に代えて、拍動に伴う生体組織に加わる圧力を利用して弾性ボリュームデータ及び3次元弾性像を生成する実施例である。
図6(a)は、実施例1と同様、関心部位を探し出す操作モードであり、遥動角度φを固定して任意の探索速度で探触子102を移動して、第1の精細度のフレームレートで2つのRF信号フレームデータFr.0、Fr.1を取得しながら、表示部120に表示される2次元弾性像を観察して関心部位を探索する。これにより、拍動に伴う圧迫の強さと周期に応じた生体組織の弾性値の経時グラフが得られる。
【0059】
ここで、拍動の圧力を利用する場合は、弾性値の変動パターンは例えば心電波形に相当するパターンになる。しかし、探索モードにおいては探索速度が不規則に変動して、弾性フレームデータを求める2つのRFフレームデータの間隔(ピッチ)が不規則に変動することがある。この場合、弾性値の変動パターンが不規則に変動するから、規則的に安定した変動に変わったことを検知して、自動的に高精細モードに切り替えることができる。つまり、検者が高精細の3次元弾性像の取得を開始すると、弾性値の変動パターンは、
図6(c)に示すように、拍動のピークに合わせて変位が周期的に安定して大きく振れるグラフになる。そこで、本実施例の切替部121は、実施例1と同様に、弾性値の変動パターンを検出し、その変動パターンの安定性及び連続性の評価を行う。そして、評価結果に基づいて高精細モード切替え指令を出力することにより、高精細な弾性ボリュームデータの取得に自動的に切り替えられる。
【0060】
特に、本実施例の切替部121は、弾性値のピークを検出し、弾性値のピークのタイミングで、高精細モード切り替え指令を出力すると同時に、探触子102の遥動モータに指令を送り、少なくとも2つの2次元弾性フレームデータを取得するのに必要な期間ΔT、遥動を停止させる。さらに、切替部121は、ピークの周期を検出し、1周期毎に予め定めた遥動角度のアドレス位置(φ0〜φN)に
振動子を間欠遥動させる。アドレス位置の間隔は、高精細モードのフレームレートに合わせて、一定の遥動角度Δφに設定する。これにより、拍動に伴う圧迫を利用して、適切な圧迫状態における高精細モードの弾性ボリュームデータを収集することがきるので、高精細な3次元弾性像を生成することができる。
【実施例3】
【0061】
切替部121の実施例3について、
図7を用いて説明する。本実施例は、高精細モードに切り替えられ、高精細な2次元弾性フレームデータを取得している途中で、圧迫操作の安定性が低下した場合に、自動的に高精細な弾性ボリュームデータを取り直すようにしたものである。つまり、
図7(a)に示すように、一対の高精細モードの2次元断層フレームデータ(Fr.0、Fr.1)を、
振動子を遥動させながら、関心領域を含むボリューム領域について連続的に
取得するとともに、複数の2次元弾性フレームデータを取得する。
【0062】
その過程では、
図7(d)の左側に示すように、高精細モードにおける弾性値の変動が経時的に演算される。
【0063】
その際に、弾性値の変動の安定性がデータ取得の途中で壊れてしまった場合、本実施例の切替部121は、高精細モード切替え指令をリセットするリセット指令を出力する。これにより、制御部103は、送受信制御部107に探索モードの送受信条件に切替えるリセット指令を出力する。送受信制御部107はリセット指令が入力されると、探触子102を最初の2次元断層フレームデータ(Fr.0、Fr.1)を取得する開始位置に戻し、探索モードの送受信条件に切替える。そして、切替部121は、実施例1と同様に、圧迫操作の安定性と連続性が検出されたときに、
図7(c)に示すように、高精細モードによる2次元弾性フレームデータの取得に再度切り替える。これにより、
図7(d)に示すように、高精細モードによる弾性ボリュームデータを取得できるから、高精細3次元弾性像を生成することができる。
【0064】
例えば、関心部位の領域の弾性ボリュームデータを取得した後に、その弾性ボリュームデータの取得時の圧迫操作の安定性がくずれていることが判明した場合、取得した弾性ボリュームデータの全てが無駄になってしまう。そして、結果的に、再度全体の弾性ボリュームデータを取得するために時間的なコストがかかってしまうことになる。これに対し、本実施例によれば、弾性値の変動の安定性が途中で壊れたことを検出して、自動的に弾性ボリュームデータを再取得するようにしているから、弾性ボリュームデータの取得時間の増大を抑制できる。
【実施例4】
【0065】
切替部121の実施例4について、
図8を用いて説明する。実施例1では、探索モードにおいて連続して取得される複数フレームの2次元弾性フレームデータの特定領域の弾性値の変動パターンに基づいて、圧迫操作の安定性及び連続性を評価した。そして、その評価に基づいて弾性ボリュームデータの取得開始を判断して、高精細度モード切替え指令を出力して、高精細な弾性ボリュームデータを取得した。これに対し、本実施例は、探索モードにおいて取得される複数フレームの2次元弾性フレームデータからなる粗い探索モードの弾性ボリュームデータに基づいて、圧迫操作の安定性及び連続性を評価して、弾性ボリュームデータの取得開始を判断するようにしたことが相違する。つまり、本実施例では、弾性値の変動の安定性を、弾性ボリュームデータを構成する隣り合う2つの2次元弾性フレームデータ間の相関値又はノイズ比と、それらの設定値と比較して評価するようにしたことを特徴とする。
【0066】
ここで、隣り合う2つの2次元弾性フレームデータ間の相関値又はノイズ比をボリューム全体にわたって求めて、それらのボリューム平均を算出し、そのボリューム平均とその閾値(設定値)と比較して評価することが有効である。すなわち、弾性ボリュームデータを構成する隣り合う2つの2次元弾性フレームデータ間の相関値のボリューム平均が、予め設定された閾値と比較して大きい場合は、圧迫操作が安定していると評価することができる。また、隣り合う2つの2次元弾性フレームデータ間のノイズ比のボリューム平均が予め設定された閾値と比較して小さい場合に、圧迫操作が安定していると判断することができる。
【0067】
そこで、
図8(a)に示すように探触子102を関心領域の範囲で往復させて遥動して得られる弾性ボリュームデータV0〜V4の相関値又はノイズ比のボリューム平均VQを、
図8(c)に示すように、リアルタイムで求める。そして、そのボリューム平均VQが閾値より大きい(又は、小さい)ときに、検者が高精細の弾性ボリュームデータの取得を開始したと判断して、高精細モード切替え指令を出力するようにする。これにより、
図8(b)に示すように、送受信条件が高精細モードに切り替えられ、
図8(c)に示すように、高精細な弾性ボリュームデータが取得される。
【実施例5】
【0068】
切替部121の実施例5について、
図9を用いて説明する。本実施例は、実施例4の変形例である。
図9(a),(b)に示すように、探索モードにおいて取得される複数フレームの2次元弾性フレームデータからなる精細度が粗い探索モードの複数の弾性ボリュームデータV0〜V4を連続して取得する。このとき、取得された複数の弾性ボリュームデータV0〜V4に基づいて3次元弾性像をレンダリングして、表示部120に表示することもできる。そして、取得時間が隣り合う2組の弾性ボリュームデータ(例えば、V0とV1、V1とV2、)の類似度(例えば、相関係数C)を順次求める。順次求めた類似度(例えば、V3とV4の類似度)が予め設定された閾値を超えたときに、圧迫操作の安定性が有ると評価し、検者が高精細の弾性ボリュームデータの取得を開始したと判断して、高精細モード切替え指令を出力するようにする。これにより、
図9(c)に示すように、送受信条件が高精細モードに切り替えられ、
図9(b)に示すように、高精細な弾性ボリュームデータが取得される。すなわち、本実施例は、実施例4の相関値又はノイズ比に代えて、隣り合う2組の弾性ボリュームデータの類似度を用いたことが異なる。
【実施例6】
【0069】
切替部121の実施例6について、
図10を用いて説明する。実施例1〜5では、弾性値の変動の安定性が有ることが検知されたとき、あるいは弾性ボリュームデータの品質が閾値以上(又は、以下)であることを検知したときに、弾性ボリュームデータを高精細モードによる取得に自動的に切替えるようにした。これに対して、本実施例6は、実施例5と同様に、探索モードにより2次元断層像、あるいは圧迫操作を行って3次元弾性像を表示部120に表示して探索する。本実施例では、探索モードにより関心部位を捉えたときに、操作部104等から高精細モード切替え指令をマニュアルで切替部121に入力する。これにより、切替部121は、予め定めた待ち時間Tw(例えば、10秒)を表示部120に表示するとともに計時し、Twが満了した時に制御部103を介して送受信制御部107に高精細モード切替え指令を出力して、高精細モードに切り替える。すなわち、本実施例では、検者が関心部位を捉えたときに操作部104等から高精細モード切替え指令をマニュアルで入力する。この際に、探触子102の走査位置が関心部位からずれても、また、圧迫操作が不安定になっても、待ち時間Twの間に関心領域を捉えて、かつ、安定した圧迫操作を行うことにより、高精細な弾性ボリュームデータを取得することができる。その結果、他の実施例と同様に、高精細な3次元弾性像を生成することができる。
【実施例7】
【0070】
切替部121の実施例7について、
図11を用いて説明する。本実施例は、粗い精細度の3次元弾性像と高精細の3次元弾性像を一定時間ごとに交互に取得して、表示部120に表示するようにしたことを特徴とする。すなわち、切替部121は、一定時間(例えば、60秒)毎に高精細モード切替え指令を出力した後、リセットする。これにより、送受信制御部107は、第1の送受信条件と第2の送受信条件を交互に切替えて送信部105と受信部106を制御する。その結果、探索モードで圧迫操作を行って粗い精細度の弾性ボリュームデータが取得され、リアルタイムで粗い精細度の3次元弾性像が表示部120に表示される。また、高精細モードで圧迫操作を行って高精細な弾性ボリュームデータを取得され、リアルタイムで高精細度の3次元弾性像が表示部120に表示される。つまり、リアルタイムの探索モードの3次元弾性像と高精細モードの3次元弾性像を交互に取得して表示される。したがって、本実施例によれば、探索モードの3次元弾性像により関心部位を探索し、次の周期に高精細モードの高精細度の3次元弾性像を観察することができる。
【0071】
本実施例において、探索モードと高精細モードの弾性ボリュームデータの取得数は同じでなくてもよく、例えば、探索モードで10弾性ボリュームデータ、高精細モードで1弾性ボリュームデータを取得するようにすることができる。また、例えば、探索モードは30秒、高精細モードの弾性ボリュームデータを1ボリューム取得するように切り替えてもよい。また、
図11(c)に示すように、表示部120にプログレスバー(進捗状況バー)等のインジケータを表示することにより、次の高精細モードまでの時間が認識しやすくなる。また、高精細の弾性ボリュームデータを取得した際には、自動的にファイリングデータや生(RAW)データとして保存することが好ましい。
【0072】
図12に、本実施例における待ち時間Tw、タイムスケジュールTsによる高精細3次元弾性像を取得する際に表示するプログレスバーの例を示す。
図12(a)に示すプログレスバーは、ハッチ部分が表示されなくなったタイミングで、高精細3次元弾性像の取得開始を表している。したがって、時間経過とともに同図下段のプログレスバーに変化して、ハッチ部分の占有割合がゼロになったタイミングで、高精細3次元弾性像の取得を開始する。なお、プログレスバーは、弾性値の変動の安定性、或いは安定性の連続性、又は、弾性ボリュームデータの品質等の評価値を、閾値に比較して表すようにすることにも用いることができる。