(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶融めっき合金には、銅、マンガン、ケイ素、カルシウム、チタン、ホウ素、錫の中から選ばれる1種類若しくは2種類以上を組み合わせた添加物を総添加量2重量%以下の範囲で添加したことを特徴とする請求項1に記載の自動車配管用金属管。
前記溶融めっき合金には、銅、マンガン、ケイ素、カルシウム、チタン、ホウ素、錫の中から選ばれる1種類若しくは2種類以上を組み合わせた添加物を総添加量2重量%以下の範囲で添加したことを特徴とする請求項5に記載の自動車配管用金属管の表面処理方法。
前記加熱還元工程を経た金属管は、加熱された温度を保持した状態のまま溶融めっき処理工程に投入することを特徴とする請求項5に記載の自動車配管用金属管の表面処理方法。
【背景技術】
【0002】
自動車の床下やエンジン回りに用いられるブレーキ配管や燃料配管には、耐食性に関して特に高い性能が要求される。従来から、この種の金属管では、その表面に亜鉛めっきを施した上にさらに塗装を施し、耐食性の強化を図っている。
【0003】
従来、金属管に施すめっきの主流は電気亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融ガルファンやガルバリウムと呼ばれる亜鉛−アルミ系合金めっきなどである。通常は、めっき被膜単層だけでは耐食性が不足するため、フッ素樹脂等で塗装をすることが行われている。この場合には、密着性と耐食性を向上させるためにめっき被膜の上にクロメート化成処理を施したり、さらに、その上にプライマーを介在させて押出成形によりポリアミド樹脂等を被覆している。特に、塩害地域向けの金属管では、めっき被膜の耐食性を補強するためにポリアミド樹脂による厚膜押出被覆が必須となっている。
【0004】
また、この種の自動車配管は、車体の下側で車体の外に露出して延びるのが一般的であり、走行中に跳ねた小石などが当たってめっき被膜が毀損してしまうことがある。
【0005】
一般にめっき被膜の上にフッ素をはじめとする塗装を施した金属管は、塩害地域を除く地域では十分な耐食性を有しているが、小石などが当たったときに受ける衝撃に対しては弱い。また、電気亜鉛めっきでは、厚い被膜の生成が難しく、耐チッピング性を強化する必要のある金属管の場合、めっき被膜の膜厚がどうしても不足してしまう。これを防止するために、金属管の最外層には比較的厚い樹脂被覆層を設けることが多い。
【0006】
他方、溶融めっきを施した自動車配管用金属管も従来から知られているが、この種の金属管は、あらかじめ溶融めっきを施してある鋼板を管に成形するものが主流である。これに対して、管を成形した後に溶融めっきを施すようにした従来技術としては、特許文献1を挙げることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の電気亜鉛めっきによる被膜を形成した金属管では、めっき被膜単層の耐食性能がどうしても不足するために、塗装は必須となる。特に、近年では耐食性能要求がますます厳しくなってきているため、塗装の厚膜化が進展しており、塗装の種類によっては、膜厚が20〜200μmにも及ぶことがある。
【0009】
自動車配管で使用される金属管の場合、端末部同士の締結にはフレア継手が用いられるのが一般的であり、金属管の端末部では塗装膜や樹脂被膜を除去する必要がある。また、燃料配管では、燃料が流れることで金属管が帯電することがあるので、スパークの発生を防止するため、アースを取る必要がある。ところが、樹脂被膜や塗装膜が厚い金属管では、アースをするために、その樹脂被膜や塗装膜を除去しなければならなくなる。
【0010】
他方、溶融めっきをした鋼板から管成形した金属管では、管の継ぎ目の溶着部ではめっきが消失してしまうので、この溶着部分での耐食性能の低下を補うため、部分的な補修が必要となり、製造工程が複雑化するという問題がある。また、めっきした鋼板から管成形する場合、加工時の変形により表面のめっきにダメージを与えてしまうため、外径が4〜10mmの細い管は作りにくいという欠点がある。
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、塗装や樹脂被膜で耐食性能を補強することなく、既に成形された管に対して溶融めっきを適用することにより、溶融めっき被膜による高い耐食性能を発揮する自動車配管用金属管を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、溶融めっきを自動車配管用金属管に適用するにあたり、溶融めっきの高い耐食性能を十二分に確保できるようにする自動車配管用金属管の表面処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明は、管成形後の金属管の表面にめっき被膜を形成した自動車配管用金属管において、前記金属管の表面に、溶融めっきによるめっき被膜を有し、前記めっき被膜は、Alが3重量%以上、Mgが1〜15重量%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融めっき合金からなることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明は、金属管の表面にめっき被膜を形成する自動車配管用金属管の表面処理方法であって、管成形された金属管を真直に矯正するとともに該金属管を真円にかつ表面を平滑に修正する矯正工程と、前記金属管を加熱し、加熱された金属管を水素と不活性ガスの混合還元ガスを充填した加熱還元炉に投入し、前記金属管の表面に生成した酸化物被膜を除去する加熱還元工程と、Alが3重量%以上、Mgが1〜15重量%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融めっき合金からなるめっき被膜を前記金属管の表面に形成する溶融めっき工程と、からなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、塗装や樹脂被膜で耐食性能を補強することなく、管に対して溶融めっきを適用することにより、溶融めっき被膜による高い耐食性能を発揮する自動車配管用金属管とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による自動車配管用金属管の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態による自動車配管用金属管の横断面を示す。金属管1の表面は、溶融めっき被膜2によって被覆されている。この自動車配管用金属管は、自動車の燃料配管やブレーキ配管に用いられる金属管である。
【0017】
金属管1には、表面に溶融めっきの施されていない鋼板を巻いて管状に成形した一重巻き鋼管、表面に銅めっきを施した鋼板を二重巻きにして管状に成形した二重巻き鋼管が素管として用いられる。鋼板ではなく、引き抜き管などの継ぎ目無し鋼管にも適用可能である。
【0018】
自動車の燃料配管やブレーキ配管に用いる場合には、金属管1の材料としては、鋼が好適であるが、これに限定されるものではなく、鉄合金、アルミニウム合金等の各種合金を材料とする金属管であってもよい。
【0019】
金属管1の表面に形成される溶融めっき被膜2の合金組成は、Alが3重量%以上、Mgが1〜15重量%、残部がZnおよび不可避的不純物である。
【0020】
Al、Mg、Znを混合して溶融することで、合金全体としての融点は、個々の金属単体の融点(Al:660℃、Mg:650℃、Zn:419℃)よりも降下する。例えば、Alが6(重量%)、Mgが3(重量%)、Znが(91重量%)の組成である場合、合金全体としての融点は380°以下までさがる。
【0021】
仮に、金属管1を融点の高い合金からなる溶融めっき浴に浸漬すると、一般に、溶融した他の金属が金属管1の金属結晶中に拡散浸透しやすくなる。金属の拡散浸透が進むと金属管1の機械的性質を低下させ、最悪の場合には、浸透した部分から亀裂が発生し破断に至るおそれも生じる。
【0022】
このため、溶融めっき合金の融点は、金属管1の材料の金属の融点よりも大きく下回るほうが金属管1の材料の金属の浸透が少なく有利である。
【0023】
金属管1が表面に銅めっきが施されている二重巻き鋼管からなる金属管である場合、銅の融点は1083℃で鉄よりかなり低いので、溶融めっき合金の融点が高いと溶けた銅が鉄の結晶中に浸透していくことになる。
【0024】
これに対して、銅めっきが施されている金属管1を上記組成の溶融めっき浴に浸漬すると、銅の融点に対して、溶融めっき合金の融点が大きく下回るようになるので、銅の浸透を効果的に抑えることができる。
【0025】
溶融めっき合金には、添加物として、銅、マンガン、ケイ素、カルシウム、チタン、ホウ素、錫の中から選ばれる1種類若しくは2種類以上を組み合わせた添加物を総添加量2重量%以下の範囲で添加することが好ましい。
【0026】
添加物は、素地金属とめっき被膜との接着性を高める働きをし、製品の端末加工性を向上させる。添加物の総添加量が2重量%を越える過剰な添加は、接着性の向上が望めないだけでなく、合金自体の伸びや加工性を低下させたり、溶融めっき工程におけるめっき浴の酸化反応を促進させ、生成した酸化物がめっき被膜の表面に付着してめっき被膜の外観を損なうので、総添加量が2重量%以下の範囲内で必要とされる接着性との相関で適当量が添加されることが好ましい。
【0027】
なお、めっき被膜2の膜厚は、1〜50μm、より好ましくは10〜30μmである。
【0028】
次に、
図2を参照しながら、本実施形態による自動車配管用金属管の表面処理工程について説明する。
図2は、表面処理の工程ラインを示す。参照番号10は、すでに管成形されてコイル状に巻かれた金属管コイルから金属管を引き出すアンコイラーを示す。アンコイラー10の下流側には、金属管を真っ直ぐに矯正する直線矯正機12と、金属管の横断面形状を真円に矯正する真円矯正機14とが配置されている。参照符合16は、金属管を所定の速度で送るための送り装置を示す。
【0029】
参照番号18は、金属管に高周波をあてて加熱する高周波加熱装置を示す。この高周波加熱装置18で加熱された金属管は水素と窒素の混合還元ガスで満たされた還元炉20に送られる。還元炉20の下流には、溶融めっき槽22が配置されている。溶融めっき槽2
2の下流には、外径測定器23、冷却槽24、送り装置26、コイルリング装置28が設置されている。
次に、各工程について説明する。
【0030】
矯正工程
この矯正工程は、別途管成形されてコイル状に巻かれている金属管を真っ直ぐに矯正するとともに、この金属管を真円にかつ表面を平滑に修正する工程である。
図2では、直線矯正機12と真円矯正機14が矯正工程を担当している。
【0031】
自動車配管用金属管の素材となる金属管が二重巻き鋼管である場合、銅めっき鋼板を二重巻きにして管状に成形される。成形後、加熱炉に投入したり、高周波あるいは直接通電方式により加熱し、表面の銅めっきを溶解し、重なっている鋼板同士を接着させる。この段階では、二重巻き鋼管は、完全な真円でないばかりか、表面も平滑でなく数μm〜数10μmの大きさの凹凸が形成されているのが普通である。
【0032】
二重巻き鋼管に溶融めっきを施す場合、表面に凹凸があると、めっき被膜の膜厚にバラツキを生じさせる原因となる。そこで、この矯正工程では、まず、直線矯正機12により二重巻き鋼管を真っ直ぐに矯正してから真円矯正機14に投入し、二重巻き鋼管の表面を平滑に修正している。この場合、真直度の誤差は1メートルあたり10mm以下であることが好ましい。
【0033】
真円矯正機14は、真っ直ぐに矯正された二重巻き鋼管をスキンパスロールの間に通し、スキンパスロールで表面の凹凸を20μm以下に修正していく。このとき、管の外径は公差±0.02mmの範囲内に収まるように修正される。
【0034】
自動車配管用金属管の素材となる金属管が一重巻き鋼管である場合は、
図3に示すように、管の表面には、ビードカット部30と呼ばれる平らな部分が生じている。このビードカット部30は、鋼板の端部同士を抵抗溶接やレーザ溶接により接合した後にできるビードを削った痕である。そして一重巻き鋼管では、このビードカット部30の他、表面に凹凸があるのが普通である。
【0035】
このような一重巻き鋼管を素材にした場合でも、直線矯正機12により真っ直ぐに矯正してから真円矯正機14に投入し、一重巻き鋼管の表面のビードカット部30を修正すると同時に凹凸を20μm以下に修正している。
【0036】
加熱還元工程
この加熱還元工程は、金属管を高周波加熱装置18で500〜700℃まで加熱して、加熱された金属管を水素と不活性ガスの混合還元ガスが充填されている還元炉20に投入し、金属管の表面に生成した酸化物被膜を除去する工程である。還元炉20には、水素が5〜20(vol%)で混合された窒素ガスが高周波加熱装置18から送り込まれるようになっている。この還元炉20では、空気中の酸素と反応して金属管の表面に生成した酸化物被膜が除去される。酸化物被膜が金属管の表面にあると、めっきの接着力を阻害し、めっき被膜に割れ、剥がれを引き起こす原因となるからである。
【0037】
溶融めっき工程の前工程に加熱還元工程を実施することで、単に洗浄効果が得られるというだけにとどまらず、次のような利点がある。第1に、溶融めっき被膜の接触性が高まることである。溶融めっき被膜と金属管との接着性を確保するためには、両者の間に薄い合金層が生成されることが必要不可欠である。
【0038】
溶融めっき工程の前に、金属管を加熱還元することで金属管の温度を溶融めっき槽24の合金温度と同等の300〜700℃の温度帯に維持したまま、溶融めっき槽24に連続投入することができるので、溶融めっき被膜と金属管の母材との接着性を高める合金層の生成が促進される。しかも、連続投入により、改めて加熱する必要がないことから、省エネルギーにもなる。
【0039】
また、従来の電気亜鉛めっきを施した金属管では、汚れや酸化物被膜を除去するためにアルカリ性の薬品や酸で金属管の表面を洗浄していたのに対して、本実施の形態では、水素などの還元ガスを使って還元炉20で汚れや酸化物被膜を除去する方式であるため、廃液処理の設備が不要となる。
【0040】
なお、還元ガスとして用いる混合ガスには、金属管の材料によっては、水素とアルゴンなどに代表される希ガス(不活性ガス)などの混合ガスであってもよい。
【0041】
溶融めっき工程
次に、溶融めっき工程について説明する。
溶融めっき槽22には、Alが3重量%以上、Mgが1〜15重量%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融めっき合金が300〜700℃に加熱されて溶解している。このような組成のAl、Mg、Znを混合して溶融することで、合金全体としての融点は、個々の金属単体の融点(Al:660℃、Mg:650℃、Zn:419℃)よりも降下させることができる。
【0042】
なお、溶融めっき合金には、添加物として、銅、マンガン、ケイ素、カルシウム、チタン、ホウ素、錫の中から選ばれる1種類若しくは2種類以上を組み合わせた添加物を総添加量2重量%以下の範囲で添加することが好ましい。
溶融めっき槽22の上流側には、外気との接触を遮断するカバーの中に、金属管の送る方向を転換するプーリ29が設けられている。還元炉20を出た金属管は、プーリ29で方向を90°変えられて鉛直上方に送られ、金属管は、還元炉20で加熱された状態を維持したま溶融めっき槽22に投入されることになる。
【0043】
図4は、溶融めっき槽22の断面を示す。この溶融めっき槽22は、溶融めっき合金が溜まっている貯留部22aと、金属管40が通過する底浅部22bに区画されている。底浅部22aの底には、金属管40が通過する穴41が形成されており、この穴41に重ねるようにして金属管40が通過可能なシール部材42が設けられている。例えば、金属管40の外径が4.0mmの管である場合、底浅部22bに溜まっている溶融めっき合金の深さは、10〜30mm程度である。
【0044】
シール部材42に連結するように、めっき厚調整用ブロー装置43が設置されている。このめっき厚調整用ブロー装置43は、通過する金属管40の表面に付着する溶融合金の表面酸化を防止すると同時にめっき付着量を調整できる内部構造を有している。
【0045】
金属管40は、溶融めっき槽22の底浅部22bに設置しためっき厚調整用ブロー装置43を通る過程で表面に溶融めっき被膜が形成される。底浅部22bにある溶融めっき合金は浅く、金属管40は鉛直方向に通っていくので、金属管40が溶融めっき合金をごく短時間で通過しながらめっき被膜が形成されていく。したがって、金属管40が溶融めっき合金の高温にさらされる時間は少なくなり、しかも表面の酸化がなく、膜厚の管理された高品質のめっき被膜を形成することができる。
【0046】
その後、外径測定機23で金属管の外径が測定される。その後、プーリ30により金属管を送る方向を変えて、冷却槽24に垂直に投入される。
【0047】
こうして溶融めっき槽22で溶融めっきが施された金属管は、送り装置26で送りながら水をかけて冷却され、コイリング装置28でコイル状に巻き取られる。
【0048】
その他の工程
溶融めっき工程の後の工程としては、クロメートによる化成処理工程や、塗装工程、押出成形により樹脂層を被覆する押出成形工程がある。
【0049】
上記した組成の溶融めっき合金は、自動車配管用の金属管として必要かつ十分な耐食性を有しているので、めっき被膜の上に化成処理被膜や塗装による有機被膜がなくても、通常の使用条件であれば自動車配管に使用可能である。より高い耐食性能を付加するには、次のような化成処理工程、塗装工程を実施するようにしてもよい。
【0050】
化成処理工程では、クロメートに代表される化成処理被膜が好適である。また、塗装工程で用いられる材料としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フッ素樹脂、フタル酸系樹脂などがある。塗装工法としては、吹き付け塗装、ディッピング塗装、粉体塗装などいずれでもよい。
【0051】
また、タイヤで跳ねた小石が当ったときに毀損しないように、特に高い耐チッピング性能が要求される場合には、
図5に示すように、さらに、最上層の樹脂層として、押出成形によりポリオレフィン系樹脂層31を0.1〜1mm程度の厚さで被覆してもよい。ポリオレフィン系の熱収縮チューブを最上層に焼き付けるようにしてもよい。
次に、実施例および比較例について行った耐食性試験について説明する。
【0052】
中性塩水噴霧試験
鋼管にAl:6重量%、Mg:3重量%、Zn:91重量%の組成の亜鉛合金を15μmの厚さに溶融めっきした実施例を試験片として、JASO規格 M104に準じて中性塩水噴霧試験を行った。
【0053】
厚さ13μmに電気亜鉛めっきしたものを比較例として、同じ条件で中性塩水噴霧試験を実施した。
【0054】
白錆と呼ばれる白い粉状の亜鉛水酸化物や酸化亜鉛が発生し始める時間は、実施例、比較例とも240時間経過後で、両者に顕著な差異は認められなかった。ところが、鉄の酸化物である赤錆が発生し始めるのは、比較例では、480時間経過後であったのに対して、実施例では、5500時間を経過しても赤錆の発生は見られなかった。赤錆が発生したということは、めっき被膜からさらに管の母材まで腐食が進行したということを意味しており、単純に比較しても、実施例は比較例の10倍の耐食性能をもっていることがわかる。
【0055】
複合サイクル腐食試験
複合サイクル腐食試験は、湿潤、塩水噴霧、乾燥、湿潤、乾燥、送風を順次1サイクル24時間で繰り返し、腐食の発生を調べる試験である。
【0056】
鋼管にAl:6重量%、Mg:3重量%、Zn:91重量%の組成の亜鉛合金を15μmの厚さに溶融めっきした実施例を試験片として、厚さ22μmに電気亜鉛めっきしたものを比較例として複合サイクル腐食試験を実施した。
【0057】
電気亜鉛めっきを施した比較例では、30サイクルでかなりの赤錆びの発生がみられたのに対して、溶融めっきを施した実施例では、30サイクルで白錆の発生はみられたものの、実施例と同程度の赤錆が発生するには120サイクルの経過を要した。この複合サイクル腐食試験によれば、実施例は、比較例の約4倍近い耐食性能を発揮することがわかる。
【0058】
飛び石試験+複合サイクル腐食試験
飛び石試験は、JASO規格 M104に準じて砕石850グラムを空気圧0.4MPaの圧力をかけて試験片にぶつける試験である。
【0059】
鋼管にAl:6重量%、Mg:3重量%、Zn:91重量%の組成の亜鉛合金を15μmの厚さに溶融めっきした実施例を試験片として、厚さ22μmに電気亜鉛めっきをし、化成処理層、接着層を介してさらにフッ素樹脂を塗装したものを比較例として、飛び石試験を複合サイクル腐食試験のサイクル(1サイクル:24時間)の中に入れて試験を実施した。
【0060】
飛び石試験を複合サイクル腐食試験を組み入れることにより、日常的に小石等があたって配管が傷つくという自動車の床下での使用環境に近い条件下で、耐食性能を比較することができる。
【0061】
試験の結果によれば、溶融めっきだけの実施例と、電気亜鉛めっきに重ねて化成処理層、フッ素樹脂を塗装した比較例とでは、赤錆の発生状況はほぼ同等であり、ともに130サイクル経過後に赤錆が発生した。
【0062】
このことから、実施例のように溶融めっきを施した管は、実際の使用環境下では、比較例のように最外層にフッ素樹脂による塗装を施したものと同等の耐食性能を有し、樹脂等の塗装を必要としないことがわかる。