(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770186
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】自発呼吸する被験者における肺コンプライアンスを定量化するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
A61M16/00 320B
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-526147(P2012-526147)
(86)(22)【出願日】2010年7月30日
(65)【公表番号】特表2013-503657(P2013-503657A)
(43)【公表日】2013年2月4日
(86)【国際出願番号】IB2010053490
(87)【国際公開番号】WO2011027242
(87)【国際公開日】20110310
【審査請求日】2013年7月22日
(31)【優先権主張番号】61/238,780
(32)【優先日】2009年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
(74)【代理人】
【識別番号】100087789
【弁理士】
【氏名又は名称】津軽 進
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】バロア ウェルジエン レオナルド アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】オコナー ネイサン フランシス
【審査官】
大町 真義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−000436(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/039525(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に自発呼吸している被験者の肺コンプライアンスを定量化するシステムであって、
少なくとも部分的に自発呼吸している被験者の気道に供給されるべき加圧呼吸ガス流を発生させる圧支持装置と、
前記加圧呼吸ガス流の1つ以上のパラメータについての情報を伝える1つ以上の出力信号を生成する1つ以上のセンサと、
前記圧支持装置及び前記1つ以上のセンサと動作可能に接続される1つ以上のプロセッサであって、1つ以上のコンピュータプログラムモジュールを実行する1つ以上のプロセッサとを有し、前記1つ以上のコンピュータプログラムモジュールが、
前記被験者の一連の連続吸気中に前記加圧呼吸ガス流の圧力を調節するように前記圧支持装置を制御する制御モジュールと、
第1の吸気に対して圧力が第1の圧力に調節され、第1の吸気に時間的に隣接する第2の吸気に対して圧力が第1の圧力と異なる第2の圧力に調節されるように、前記一連の連続吸気中の前記被験者の吸気中に前記制御モジュールによって前記加圧呼吸ガス流が調節されるべき圧力を決定する圧力モジュールであって、前記圧力モジュールは(i)前記一連の吸気内の第1の吸気及び第2の吸気の位置、(ii)第1の圧力、(iii)第2の圧力、若しくは(iv)第1の圧力と第2の圧力の圧力差のうちの1つ以上をランダムに若しくは疑似ランダムに決定する、圧力モジュールと、
第1の圧力と第2の圧力の差と、第1の吸気及び第2の吸気中に前記1つ以上のセンサによって生成される前記1つ以上の出力信号に基づいて前記被験者の肺コンプライアンスを定量化するコンプライアンスモジュールとを有する、
システム。
【請求項2】
第1の圧力と第2の圧力が固定され、前記圧力モジュールが、前記一連の連続吸気中の吸気毎に圧力が第1の圧力若しくは第2の圧力のいずれかになるよう前記圧力モジュールによって決定されるように、前記一連の連続吸気中の前記被験者の吸気中に前記制御モジュールによって前記加圧呼吸ガス流が調節されるべき圧力を決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記圧力モジュールがさらに、前記一連の連続吸気の間の前記被験者の呼気中に前記制御モジュールによって前記加圧呼吸ガス流が調節されるべき圧力が第1の圧力よりも低いこと、及び第2の圧力よりも低いことを決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ以上のモジュールがさらに、前記1つ以上のセンサの前記1つ以上の出力信号に基づいて、前記一連の連続吸気中の前記被験者の1つ以上の呼吸パラメータを決定する呼吸パラメータモジュールを有し、前記コンプライアンスモジュールが、第1の圧力と第2の圧力の差と、第1の吸気及び第2の吸気中に前記呼吸パラメータモジュールによって決定される前記1つ以上の呼吸パラメータとに基づいて前記被験者の肺コンプライアンスを定量化する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記被験者の肺コンプライアンスを定量化するために前記コンプライアンスモジュールによって実現される、前記呼吸パラメータモジュールによって決定される前記1つ以上の呼吸パラメータが一回換気量を有する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
少なくとも部分的に自発呼吸している被験者の肺コンプライアンスを定量化するシステムの作動方法であって、前記システムが、圧支持装置と、1つ以上のセンサと、前記圧支持装置及び前記1つ以上のセンサと動作可能に接続される1つ以上のプロセッサとを有し、前記1つ以上のプロセッサが、圧力モジュールと、制御モジュールと、コンプライアンスモジュールとを有する1つ以上のコンピュータプログラムモジュールを実行する、方法において、
前記圧支持装置が、少なくとも部分的に自発呼吸している被験者の気道に加圧呼吸ガス流を供給するステップと、
前記1つ以上のセンサが、前記加圧呼吸ガス流の1つ以上のパラメータについての情報を伝える1つ以上の出力信号を生成するステップと、
前記圧力モジュールが、前記被験者の一連の連続吸気中に前記加圧呼吸ガス流が調節されるべき圧力を決定するステップであって、第1の吸気に対する第1の圧力を決定し、第1の吸気に時間的に隣接する第2の吸気に対する第2の圧力を決定し、(i)前記一連の吸気内の第1の吸気及び第2の吸気の位置、(ii)第1の圧力、(iii)第2の圧力、若しくは(iv)第1の圧力と第2の圧力の圧力差のうちの1つ以上がランダムに若しくは疑似ランダムに決定されるようにするステップを含む、ステップと、
前記制御モジュールが、前記圧支持装置を制御して、前記一連の連続吸気中に前記決定された圧力へ前記加圧呼吸ガス流の圧力を調節するステップと、
前記コンプライアンスモジュールが、第1の圧力と第2の圧力の差と、第1の吸気及び第2の吸気中に生成された前記1つ以上の出力信号とに基づいて前記被験者の肺コンプライアンスを定量化するステップとを有する、方法。
【請求項7】
第1の圧力と第2の圧力が固定され、前記被験者の一連の連続吸気中に前記加圧呼吸ガス流が調節されるべき圧力を決定するステップが、前記一連の連続吸気中の吸気毎に第1の圧力と第2の圧力の間で選択するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記一連の連続吸気の間の前記被験者の呼気中に前記加圧呼吸ガス流の圧力を第1の圧力よりも低い、及び第2の圧力よりも低い圧力に調節するステップをさらに有する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の出力信号に基づいて、前記一連の連続吸気中の前記被験者の1つ以上の呼吸パラメータを決定するステップをさらに有し、第1の圧力と第2の圧力の差と、第1の吸気及び第2の吸気中に生成された前記1つ以上の出力信号とに基づいて前記被験者の肺コンプライアンスを定量化するステップが、第1の圧力と第2の圧力の差と、第1の吸気及び第2の吸気中に決定された前記1つ以上の呼吸パラメータとに基づいて前記被験者の肺コンプライアンスを定量化するステップを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の呼吸パラメータが一回換気量を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも部分的に自発呼吸している被験者の肺コンプライアンスを定量化するシステムであって、
少なくとも部分的に自発呼吸している被験者の気道に加圧呼吸ガス流を供給するための手段と、
前記加圧呼吸ガス流の1つ以上のパラメータについての情報を伝える1つ以上の出力信号を生成するための手段と、
前記被験者の一連の連続吸気中に前記加圧呼吸ガス流が調節されるべき圧力を決定するための手段であって、第1の吸気に対する第1の圧力を決定し、第1の吸気に時間的に隣接する第2の吸気に対する第2の圧力を決定し、(i)前記一連の吸気内の第1の吸気及び第2の吸気の位置、(ii)第1の圧力、(iii)第2の圧力、若しくは(iv)第1の圧力と第2の圧力の圧力差のうちの1つ以上がランダムに若しくは疑似ランダムに決定されるようにするための手段を含む、手段と、
前記一連の連続吸気中に前記決定された圧力へ前記加圧呼吸ガス流の圧力を調節するための手段と、
第1の圧力と第2の圧力の差と、第1の吸気及び第2の吸気中に生成された前記1つ以上の出力信号とに基づいて前記被験者の肺コンプライアンスを定量化するための手段とを有する、システム。
【請求項12】
第1の圧力と第2の圧力が固定され、前記被験者の一連の連続吸気中に前記加圧呼吸ガス流が調節されるべき圧力を決定するための手段が、前記一連の連続吸気中の吸気毎に第1の圧力と第2の圧力の間で選択するための手段を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記一連の連続吸気の間の前記被験者の呼気中に前記加圧呼吸ガス流の圧力を第1の圧力よりも低い及び第2の圧力よりも低い圧力に調節するための手段をさらに有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記1つ以上の出力信号に基づいて、前記一連の連続吸気中の前記被験者の1つ以上の呼吸パラメータを決定するための手段をさらに有し、第1の圧力と第2の圧力の差と、第1の吸気及び第2の吸気中に生成された前記1つ以上の出力信号とに基づいて前記被験者の肺コンプライアンスを定量化するための手段が、第1の圧力と第2の圧力の差と、第1の吸気及び第2の吸気中に決定された前記1つ以上の呼吸パラメータとに基づいて前記被験者の肺コンプライアンスを定量化する、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記1つ以上の呼吸パラメータが一回換気量を有する、請求項14に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自発呼吸する被験者における肺コンプライアンスの定量化に関する。
【背景技術】
【0002】
被験者において肺コンプライアンスを定量化する(例えば測定する、推定するなど)ためのシステムが知られている。こうしたシステムは完全に被験者に機械的に酸素供給するように構成される人工呼吸器システムを含む。これらのシステムは例えば自発呼吸ができない被験者で実施され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自発呼吸する被験者における肺コンプライアンスの定量化は、呼吸中の横隔膜筋圧に一部依存する。そのため、自発呼吸している被験者における肺コンプライアンスを定量化するように構成される一部のシステムは、横隔膜筋圧の直接測定を提供する力ベルト、若しくは何か他のセンサの実装を要する。自発呼吸している被験者における肺コンプライアンスを定量化するように構成される他のシステムは、被験者が横隔膜筋圧を手動で制御するように指示及び/又は指導されることを要する。しかしながら、これは典型的には被験者及び/又は医師が特殊な手順を実行することを必要とし、これは正確に実行されない場合、肺コンプライアンスの推定の正確さ及び/又は精度に悪影響を及ぼし得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、少なくとも部分的に自発呼吸している被験者の肺コンプライアンスを定量化するように構成されるシステムに関する。一実施形態において、システムは圧支持装置、1つ以上のセンサ、及び1つ以上のプロセッサを有する。圧支持装置は少なくとも部分的に自発呼吸している被験者の気道に供給されるべき加圧呼吸ガス流を生じるように構成される。1つ以上のセンサは加圧呼吸ガス流の1つ以上のパラメータについての情報を伝える1つ以上の出力信号を生成するように構成される。1つ以上のプロセッサは圧支持装置及び1つ以上のセンサと動作可能なように接続され、1つ以上のコンピュータプログラムモジュールを実行するように構成される。1つ以上のコンピュータプログラムモジュールは、制御モジュール、圧力モジュール、及びコンプライアンスモジュールを有する。制御モジュールは被験者の一連の連続吸気中に加圧呼吸ガス流の圧力を調節するように圧支持装置を制御するように構成される。圧力モジュールは、第1の吸気に対して圧力が第1の圧力に調節され、第1の吸気に時間的に隣接する第2の吸気に対して圧力が第1の圧力と異なる第2の圧力に調節されるように、一連の連続吸気中の被験者の吸気中に制御モジュールによって加圧呼吸ガス流が調節されるべき圧力を決定するように構成され、圧力モジュールは、(i)一連の吸気内の第1の吸気及び第2の吸気の位置、(ii)第1の圧力、(iii)第2の圧力、若しくは(iv)第1の圧力と第2の圧力の圧力差のうちの1つ以上をランダムに若しくは疑似ランダムに決定する。コンプライアンスモジュールは、第1の圧力と第2の圧力の差と、第1の吸気及び第2の吸気中に1つ以上のセンサによって生成される1つ以上の出力信号とに基づいて被験者の肺コンプライアンスを定量化するように構成される。
【0005】
本発明の別の態様は少なくとも部分的に自発呼吸している被験者の肺コンプライアンスを定量化する方法に関する。一実施形態において、方法は、少なくとも部分的に自発呼吸している被験者の気道に加圧呼吸ガス流を供給するステップ;加圧呼吸ガス流の1つ以上のパラメータについての情報を伝える1つ以上の出力信号を生成するステップ;被験者の一連の連続吸気中に加圧呼吸ガス流が調節されるべき圧力を決定するステップであって、第1の吸気に対する第1の圧力を決定し、第1の吸気に時間的に隣接する第2の吸気に対する第2の圧力を決定し、(i)一連の吸気内の第1の吸気及び第2の吸気の位置、(ii)第1の圧力、(iii)第2の圧力、若しくは(iv)第1の圧力と第2の圧力の圧力差のうちの1つ以上がランダムに若しくは疑似ランダムに決定されるようにするステップを含む、ステップ;一連の連続吸気中に決定された圧力へ加圧呼吸ガス流の圧力を調節するステップ;並びに、第1の圧力と第2の圧力の差と、第1の吸気及び第2の吸気中に生成された1つ以上の出力信号とに基づいて被験者の肺コンプライアンスを定量化するステップとを有する。
【0006】
本発明の別の態様は、少なくとも部分的に自発呼吸している被験者の肺コンプライアンスを定量化するように構成されるシステムに関する。一実施形態において、システムは、少なくとも部分的に自発呼吸している被験者の気道に加圧呼吸ガス流を供給するための手段;加圧呼吸ガス流の1つ以上のパラメータについての情報を伝える1つ以上の出力信号を生成するための手段;被験者の一連の連続吸気中に加圧呼吸ガス流が調節されるべき圧力を決定するための手段であって、第1の吸気に対する第1の圧力を決定し、第1の吸気に時間的に隣接する第2の吸気に対する第2の圧力を決定し、(i)一連の吸気内の第1の吸気及び第2の吸気の位置、(ii)第1の圧力、(iii)第2の圧力、若しくは(iv)第1の圧力と第2の圧力の圧力差のうちの1つ以上がランダムに若しくは疑似ランダムに決定されるようにするための手段を含む、手段;一連の連続吸気中に決定された圧力へ加圧呼吸ガス流を調節するための手段;並びに、第1の圧力と第2の圧力の差と、第1の吸気及び第2の吸気中に生成された1つ以上の出力信号とに基づいて被験者の肺コンプライアンスを定量化するための手段を有する。
【0007】
本発明のこれらの及び他の目的、機能、及び特徴、並びに、構造の関連要素の操作方法と機能、及び部品と生産の経済性との組み合わせは、その全てが本明細書の一部を成す添付の図面を参照して以下の記載及び添付の請求項の考察の上でより明らかとなり、同様の参照数字は様々な図中の対応する部分を示す。図面は例示及び説明の目的に過ぎず本発明の限定ではないことが明確に理解されるものとする、加えて、本明細書の任意の一実施形態に表示若しくは記載された構造的特徴は、他の実施形態においても同様に使用されることができることが理解されるべきである。しかしながら、図面は例示及び説明の目的に過ぎず本発明の制限の定義の意図ではないことが明確に理解されるものとする。明細書及び請求項において使用される通り、単数形の"a"、"an"及び"the"は文脈が他に明確に指示しない限り複数の指示対象を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の1つ以上の実施形態にかかる、少なくとも部分的に自発呼吸している被験者の肺コンプライアンスを定量化するように構成されるシステムを図示する。
【
図2】本発明の1つ以上の実施形態にかかる、時間に対する加圧呼吸ガス流の圧力のプロットを図示する。
【
図3】本発明の1つ以上の実施形態にかかる、肺‐呼吸器回路の略図である。
【
図4】本発明の1つ以上の実施形態にかかる、吸気中の時間に対する体積差のプロットを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は少なくとも部分的に自発呼吸している被験者12の肺コンプライアンスを定量化するように構成されるシステム10を図示する。肺コンプライアンスの定量化は、推定、測定、及び/又は近似測定であり得る。システム10による肺コンプライアンスの定量化は、システム10が横隔膜筋圧を直接測定する力ベルト若しくは他の外部検出装置無しに比較的正確に肺コンプライアンスを定量化し得る点で、自発呼吸している被験者の肺コンプライアンスを定量化するための従来システムよりも改良され得る。肺コンプライアンスの定量化は、進行性急性鬱血性心不全に伴う体液貯留の検出を含む、被験者12の心臓の評価における有益な手段であり得る。一実施形態において、システム10は圧支持装置14、電子記憶装置16、ユーザインターフェース18、1つ以上のセンサ20、プロセッサ22、及び/又は他の部品のうちの1つ以上を含む。
【0010】
一実施形態において、圧支持装置14は被験者12の気道への供給のための加圧呼吸ガス流を発生させるように構成される。圧支持装置14は治療目的、若しくは他の目的で加圧呼吸ガス流の1つ以上のパラメータ(例えば流速、圧力、体積、湿度、温度、組成など)を制御し得る。限定されない例として、圧支持装置14は被験者12の気道に圧支持(プレッシャーサポート)を提供するように加圧呼吸ガス流の圧力を制御するように構成され得る。圧支持装置14は、例えば引用によって本明細書に全体として組み込まれる米国特許6,105,575に記載の装置などの陽圧支持装置を含み得る。
【0011】
圧支持装置14は1つ以上のモードに従って加圧呼吸ガス流を発生させるように構成され得る。こうしたモードの1つの限定されない例は持続的気道陽圧(CPAP)である。CPAPは長年使用されており、規則的呼吸を促すのに役立つことが証明されている。加圧呼吸ガス流を発生させるための別のモードは吸気陽圧(IPAP)である。IPAPモードの一例は二相性陽圧モード(BIPAP(登録商標))である。二相性陽圧モードでは、2つのレベルの陽圧(HIとLO)が患者に供給される。加圧呼吸ガス流を発生させる他のモードが考えられる。一般に圧力のHI及びLOレベルのタイミングは、吸気中にHIレベルの陽圧が被験者12に供給され、呼気中にLOレベルの圧力が被験者12に供給されるように制御される。
【0012】
加圧呼吸ガス流は被験者インターフェース24を介して被験者12の気道に供給される。被験者インターフェース24は圧支持装置14によって生成された加圧呼吸ガス流を被験者12の気道に伝えるように構成される。そのため、被験者インターフェース24は導管26とインターフェース装置28を含む。導管は加圧呼吸ガス流をインターフェース装置28へ伝え、インターフェース装置28は被験者12の気道に加圧呼吸ガス流を供給する。インターフェース装置28のいくつかの例は、例えば気管内チューブ、鼻カニューレ、気管切開チューブ、鼻マスク、鼻/口マスク、フルフェイスマスク、トータルフェイスマスク、若しくはガス流を被験者の気道に伝える他のインターフェース装置を含み得る。本発明はこれらの実施例に限定されず、任意の被験者インターフェースを用いる被験者12への加圧呼吸ガス流の供給を考慮する。
【0013】
一実施形態において、電子記憶装置16は情報を電子的に記憶する電子記憶媒体を有する。電子記憶装置16の電子記憶媒体は、システム10と一体化して設けられる(すなわち実質的に取り外しができない)システム記憶装置、及び/又は、例えばポート(例えばUSBポート、ファイヤーワイヤーポートなど)若しくはドライブ(例えばディスクドライブなど)を介してシステム10に取り外しできるように接続可能なリムーバブル記憶装置の一方若しくは両方を含み得る。電子記憶装置16は、光学読取可能記憶媒体(例えば光ディスクなど)、磁気読取可能記憶媒体(例えば磁気テープ、磁気ハードドライブ、フロッピードライブなど)、電荷ベース記憶媒体(例えばEEPROM、RAMなど)、固体記憶媒体(例えばフラッシュドライブなど)、及び/又は他の電子読取可能記憶媒体のうちの1つ以上を含み得る。電子記憶装置16はソフトウェアアルゴリズム、プロセッサ22によって決定される情報、ユーザインターフェース18を介して受信される情報、及び/又はシステム10が正常に機能できるようにする他の情報を記憶し得る。電子記憶装置16は(全部又は一部において)システム10内の個別部品であり得るか、又は電子記憶装置16は(全部又は一部において)システム10の1つ以上の他の部品(例えば装置14、ユーザインターフェース18、プロセッサ22など)と一体化して設けられ得る。
【0014】
ユーザインターフェース18はシステム10と被験者12の間のインターフェースを提供するように構成され、それを通して被験者12はシステム10へ情報を供給し、システム10から情報を受信し得る。これはデータ、結果、及び/又は命令、及び任意の他の伝達可能な項目(まとめて"情報"と呼ばれる)が、被験者12と、装置14、電子記憶装置16、及び/又はプロセッサ22のうちの1つ以上との間で伝達されることを可能にする。ユーザインターフェース18への包含に適したインターフェース装置の例は、キーパッド、ボタン、スイッチ、キーボード、ノブ、レバー、ディスプレイスクリーン、タッチスクリーン、スピーカ、マイクロホン、表示灯、警報音、プリンタ、及び/又は他のインターフェース装置を含む。一実施形態において、ユーザインターフェース18は複数の個別インターフェースを含む。一実施形態において、ユーザインターフェース18は装置14と一体化して設けられる少なくとも1つのインターフェースを含む。
【0015】
他の通信技術(有線若しくは無線のいずれか)もまたユーザインターフェース18として本発明によって考慮されることが理解されるものとする。例えば、本発明はユーザインターフェース18が電子記憶装置16によって提供される取り外し可能な記憶インターフェースと一体化され得ることを考慮する。この実施例において、ユーザがシステム10の実装をカスタマイズできるようにする情報がリムーバブル記憶装置(例えばスマートカード、フラッシュドライブ、リムーバブルディスクなど)からシステム10にロードされ得る。ユーザインターフェース18としてシステム10との使用に適した他の例示的な入力装置及び技術は、限定されないが、RS‐232ポート、RFリンク、IRリンク、モデム(電話、ケーブルその他)を含む。要するに、システム10と情報を通信するための任意の技術がユーザインターフェース18として本発明によって考慮される。
【0016】
1つ以上のセンサ20は加圧呼吸ガス流の1つ以上のパラメータに関連する情報を伝える1つ以上の出力信号を生成するように構成される。1つ以上のパラメータは例えば流速、体積、圧力、組成(例えば1つ以上の構成成分の濃度)、湿度、温度、加速度、速度、音響特性、呼吸を示すパラメータの変化、及び/又は他のガスパラメータのうちの1つ以上を含み得る。センサ20はこうしたパラメータを直接(例えば圧支持装置14における若しくは被験者インターフェース24における加圧呼吸ガス流との流体連通を通して)測定する1つ以上のセンサを含み得る。センサ20は間接的に加圧呼吸ガス流の1つ以上のパラメータに関する出力信号を生成する1つ以上のセンサを含み得る。例えば、センサ20のうちの1つ以上は圧支持装置14の運転パラメータ(例えばモータ電流、電圧、回転速度、及び/又は他の運転パラメータ)、及び/又は他のセンサに基づく出力を生成し得る。センサ20は圧支持装置14における若しくはその付近の単一場所に図示されるが、これは限定する意図ではない。センサ20は例えば圧支持装置14内、導管26内(若しくは導管26と連通する)、インターフェース装置28内(若しくはインターフェース装置28と連通する)、及び/又は他の場所など、複数の場所に配置されるセンサを含み得る。
【0017】
プロセッサ22はシステム10において情報処理能力を提供するように構成される。そのため、プロセッサ22はデジタルプロセッサ、アナログプロセッサ、情報を処理するように設計されたデジタル回路、情報を処理するように設計されたアナログ回路、ステートマシン、及び/又は情報を電子的に処理するための他の機構のうちの1つ以上を含み得る。プロセッサ22は
図1に単一の媒体として示されるが、これは例示目的に過ぎない。一部の実施例において、プロセッサ22は複数の処理ユニットを含み得る。これらの処理ユニットは物理的に同じ装置(例えば圧支持装置14)内に位置し得るか、又はプロセッサ22は協調して動作する複数の装置の処理機能をあらわし得る。
【0018】
図1に示される通り、プロセッサ22は1つ以上のコンピュータプログラムモジュールを実行するように構成され得る。1つ以上のコンピュータプログラムモジュールは、呼吸パラメータモジュール30、制御モジュール32、圧力モジュール34、コンプライアンスモジュール36、及び/又は他のモジュールのうちの1つ以上を含み得る。プロセッサ22は、ソフトウェア;ハードウェア;ファームウェア;ソフトウェア、ハードウェア、及び/又はファームウェアの一部の組み合わせ;及び/又はプロセッサ22上で処理能力を構成するための他の機構によってモジュール30,32,34及び/又は36を実行するように構成され得る。
【0019】
モジュール30,32,34及び36は単一処理ユニット内に共同設置されているように
図1に図示されるが、プロセッサ22が複数の処理ユニットを含む実施例において、モジュール30,32,34及び/又は36のうちの1つ以上が他のモジュールから離れて位置し得ることが理解されるべきである。下記の異なるモジュール30,32,34及び/又は36によって提供される機能の説明は例示目的であって限定する意図はなく、モジュール30,32,34及び/又は36のいずれも、記載されたもの以上若しくは以下の機能を提供してもよい。例えば、モジュール30,32,34及び/又は36のうちの1つ以上が省略されてもよく、その機能の一部若しくは全部がモジュール30,32,34及び/又は36の他のものによって提供されてもよい。別の実施例として、プロセッサ22はモジュール30,32,34及び/又は36のうちの1つによる機能の一部若しくは全部を実行し得る1つ以上の追加モジュールを実行するように構成され得る。
【0020】
呼吸パラメータモジュール30は被験者の1つ以上の呼吸パラメータを決定するように構成される。1つ以上の呼吸パラメータはセンサ20によって生成される1つ以上の出力信号に基づいて決定される。1つ以上の呼吸パラメータは、例えば一回換気量、最大流量、流速、圧力、組成、タイミング(例えば吸気の開始及び/又は終了、呼気の開始及び/又は終了など)、持続時間(例えば吸気の、呼気の、一呼吸周期の、など)、呼吸速度、呼吸数、及び/又は他のパラメータを含み得る。一実施形態において、呼吸パラメータモジュール30は吸気及び/又は呼気当たりベースで1つ以上の呼吸パラメータを決定する。限定されない例として、呼吸パラメータモジュール30は一連の連続呼気中に呼気毎に少なくとも1つの所定呼吸パラメータを決定し得る。少なくとも1つの所定呼吸パラメータは、例えば一回換気量、最大流量、及び/又は他の呼吸パラメータを含み得る。
【0021】
制御モジュール32は加圧呼吸ガス流の1つ以上のパラメータを調節するように圧支持装置14を制御するように構成される。例えば、制御モジュール32は流速、圧力、体積、湿度、温度、組成、及び/又は加圧呼吸ガス流の他のパラメータを調節するように圧支持装置14を制御し得る。一実施形態において、制御モジュール32は被験者12によって圧力が吸気中にHIレベルへ上げられ呼気中にLOレベルへ下げられる二相性陽圧モードで動作するように圧支持装置14を制御する。制御モジュール32は呼吸パラメータモジュール30による呼吸遷移の検出に基づいてHIからLOへ及びその逆の変化を引き起こすときを決定し得る。
【0022】
圧力モジュール34は加圧呼吸ガス流が制御モジュール32によって調節されるべき圧力を決定するように構成される。加圧呼吸ガス流の圧力は、肺コンプライアンスの定量化を可能にするため、及び/又は他の目的のために治療レジメに基づいて(例えば気道陽圧支持のため)圧力モジュール34によって決定され得る。加圧呼吸ガス流が調節されるべき圧力を決定することは、二相性陽圧モードのためのHI及びLO圧力レベルを決定することを含む。
【0023】
以下にさらに論じられる通り、肺コンプライアンスの定量化を可能にするために、加圧呼吸ガス流の圧力は時間的に互いに隣接した吸気のペア間で変化されるべきである。本明細書で使用される通り、時間的に互いに隣接した吸気のペアは、真隣の(すなわち介在する吸気無く連続した)吸気のペア、又は時間的に互いに適度に近い(例えば約2分以内、約1分以内、約30秒以内、約15秒以内など)吸気のペアを含み得る。こうした決定を容易にするために、圧力モジュール34は、第1の吸気中に加圧呼吸ガス流が調節されるべき第1の圧力と、第1の吸気に時間的に隣接する第2の吸気中に加圧呼吸ガス流が調節されるべき第2の圧力(第1の圧力と異なる)を決定するように構成される。一部の実施形態において、肺コンプライアンスの定量化は時間的に隣接していない2呼吸においてとられる測定結果に基づき得ることが理解される。これは定量化の精度及び/又は正確さを低下させ得る(2呼吸中の患者生理及び/又は呼吸状態についてなされる仮定のため)が、こうした低下は定量化の有用性にとって重大ではないかもしれない。
【0024】
システム10が二相性陽圧モードで動作している実施形態において、制御モジュール32は第1の吸気に対するHI圧力として第1の圧力を、第1の吸気と第2の吸気の間の呼気に対してLO圧力(圧力モジュール34によって決定される)を、第2の吸気に対するHI圧力として第2の圧力を実現する。システム10がCPAPモードで動作している実施形態において、制御モジュール32は第1の吸気と第1の吸気後の呼気との間の呼吸遷移において、第1の吸気と第2の吸気の間の時点において、又は第2の吸気前の呼気と第2の吸気との間の呼吸遷移において、第1の圧力と第2の圧力の間で遷移する。
【0025】
以下にさらに論じられる通り、システム10による肺コンプライアンスの定量化において、被験者12の横隔膜筋圧は第1の吸気と第2の吸気に対して同じであると仮定される。しかしながら、一部の例において、遷移タイミング、圧力レベル、及び/又は圧力差のうちの1つ以上が、第1の圧力及び第2の圧力に対して規則的、周期的な方法でなされる場合、被験者12はこの遷移を無意識に予測し始めるかもしれない。この予測に応じて、被験者12は第1の吸気と第2の吸気の間の呼吸努力(及び横隔膜筋圧)をうっかり調節してしまうかもしれない。この影響を避けるために、圧力モジュール34は、(i)一連の連続呼吸中の第1の吸気及び/又は第2の吸気の位置、(ii)第1の圧力、(iii)第2の圧力、及び/又は(iv)第1の圧力と第2の圧力の差のうちの1つ以上がランダムな若しくは疑似ランダムな方法で決定され得るように、第1の吸気と第2の吸気を含む一連の連続呼吸中に制御モジュール32によって加圧呼吸ガス流が調節されるべき圧力を決定し得る。
【0026】
本明細書で使用される通り、"疑似ランダム"という語は被験者12による予測を抑制する目的で乱数の特性を近似する上記パラメータのうちの1つ以上の決定をあらわす。これは、パラメータが繰り返される期間が被験者12による無意識の予測を防ぐために十分大きいという条件で、疑似ランダムに決定されたパラメータがいくらかの周期性及び/又は再現性を伴って決定されるスキームを含み得る。
【0027】
例示として、
図2は圧力モジュール34と同様の若しくは同じ圧力モジュールによって決定される圧力対一連の連続呼吸にわたる時間のプロットを図示する。一連の連続呼吸中、圧力モジュール34は圧力が呼気中にLOレベル38へ下げられる二相性陽圧モードに従って加圧呼吸ガス流の圧力を決定する。
図2に示したプロットにおいて、上記の第1位及び第2の吸気として見られる真隣の吸気のペアが複数ある。これらのペアは
図2において参照数字40でラベルされる。それに関連する個別の圧力値を持つこれらの吸気ペアの位置及び/又はタイミングはランダム若しくは疑似ランダム、被験者予測を抑制するように設計された分布である。
図2には描かれないが、上記から、ランダム及び/又は疑似ランダムな方法で
図2に示したもののような一連の連続呼吸内の第1及び/又は第2の吸気の位置及び/又はタイミングを決定することに加えて、第1の吸気及び/又は第2の吸気中の圧力のうちの1つ以上、及び/又は第1の吸気及び/又は第2の吸気の圧力差がランダム及び/又は疑似ランダムな方法で決定され得ることが理解されるべきである。
【0028】
図1に戻り、コンプライアンスモジュール36は第1の圧力と第2の圧力の差と、第1及び第2の吸気中にセンサ20によって生成される1つ以上の出力信号とに基づいて被験者2の肺コンプライアンスを定量化するように構成される。一実施形態において、コンプライアンスモジュール36は第1の吸気及び第2の吸気中の被験者12の呼吸系をモデル化する入出力方程式から横隔膜筋圧を除去することによって被験者12の肺コンプライアンスを決定する。
【0029】
一実施形態において、コンプライアンスモジュール36による肺コンプライアンスの定量化は
図3に示される単一コンパートメント肺及び人工呼吸器の回路を実現する。
図3において、P
dは装置圧力(例えば圧支持装置14によって生成される加圧呼吸ガス流の圧力)をあらわし、Rは被験者の呼吸系の抵抗をあらわし、P
alvは肺胞内圧をあらわし、Cはコンプライアンスをあらわし、P
musは横隔膜筋圧をあらわし、Q
pは被験者流量をあらわす。このモデルにおいて、呼気ポート(例えば
図1におけるインターフェース装置28における呼気ポート)の抵抗はホース(例えば
図1における導管26)の抵抗よりもかなり大きいと仮定される。従って、被験者内の圧力はおよそ装置圧力と同じである。従って、被験者圧力は単純に
図3に示される回路内の装置圧力としてあらわされる。さらに、患者流量及び患者体積は測定された系の総流量と推定された(若しくは測定された)漏れ流量の差を用いることによって推定されることができる。
【0030】
肺コンプライアンスの決定の説明における単一コンパートメント肺モデルの実現は限定する意図ではないことが理解される。被験者の呼吸系の機能をモデル化する方程式からの横隔膜筋圧の除去はこのモデルに依存しないが、より複雑なモデルよりも計算コストが低く、説明を簡略化するので本明細書で使用される。
【0031】
図3の回路に対する被験者の横隔膜及び装置の圧力に患者流量を関連付けるs領域における伝達関数は次式によって与えられる。
【数1】
【数2】
【0032】
加えて、患者体積は次の方程式によって与えられる。
【数3】
【0033】
従って、圧力を患者体積に関連付ける伝達関数は次の方程式によって与えられ、
【数4】
P
musへの応答は次の方程式によって与えられ、
【数5】
外部応答は次式によって与えられる。
【数6】
【0034】
ここで、P
d(s)が圧支持装置によって生成される加圧呼吸ガス流の圧力をあらわし、吸気中の圧力が、時間的に隣接する(例えば真隣の)第1の吸気と第2の吸気の間で変化する場合、方程式(4)は第1の吸気及び第2の吸気に対して次式で書かれることができる。
【数7】
【数8】
添字1及び2はそれぞれ第1の吸気と第2の吸気に対応する。
【0035】
P
musがわからないので、内部応答に関連する総応答の部分もわからない。しかしながら、P
musが第1の吸気と第2の吸気の間で比較的一定である(第1及び第2の吸気が時間的に隣接するため)という仮定がなされる場合、P
mus1(s)はP
mus2(s)に等しいと仮定されることができる。
【0036】
方程式(5)及び(6)における体積応答の間の差をとり、P
mus1(s)がP
mus2(s)に等しいという仮定を用いて、未知の内部応答が除去され以下の方程式(7)及び(8)の組み合わせをもたらすことができる。
【数9】
ΔV(s)はV
1(s)とV
2(s)の差であり、ΔP
d(s)はP
d1(s)とP
d2(s)の差である。
【0037】
2つの吸気に対する圧力及び体積(及び/又はそれらの間の瞬間的差)がわかるので、様々な既知の数値的推定法の任意のものが抵抗R及びコンプライアンスCを決定するために使用されることができる。限定されない例として、最小二乗誤差の方法が実施されることができる。
【0038】
図1に戻り、コンプライアンスモジュール36は(センサ20によって生成された出力信号から決定される)呼吸パラメータモジュール30によって決定される呼吸パラメータと、第1の圧力、第2の圧力、及び/又は第1の圧力と第2の圧力の差の既知の値とに基づいて、上記の方法で肺コンプライアンスを定量化し得る。そしてこの定量化は様々な異なる用途及び/又は様々な異なる背景のうちの1つ以上に対して実施され得る。例えば肺コンプライアンスの定量化は鬱血性心不全を早期診断するために、治療を処方するために、及び/又は他の目的で実施され得る。
【0039】
本発明は現在最も実用的で好適な実施形態とみなされるものに基づいて例示目的で詳細に記載されているが、こうした詳細は単にその目的のためであり、本発明は開示された実施形態に限定されず、それどころか添付の請求項の精神及び範囲内にある変更及び均等な装置を包含する意図であることが理解されるものとする。例えば、本発明は可能な限り任意の実施形態の1つ以上の特徴が任意の他の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わされることができることを考慮することが理解されるものとする。