(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770212
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】自動車用ホイール
(51)【国際特許分類】
B60B 3/10 20060101AFI20150806BHJP
B60B 3/02 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
B60B3/10
B60B3/02
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-556673(P2012-556673)
(86)(22)【出願日】2011年2月7日
(86)【国際出願番号】JP2011052496
(87)【国際公開番号】WO2012107989
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2013年5月29日
【審判番号】不服2014-16449(P2014-16449/J1)
【審判請求日】2014年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】391006430
【氏名又は名称】中央精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(72)【発明者】
【氏名】後藤 祥文
【合議体】
【審判長】
氏原 康宏
【審判官】
出口 昌哉
【審判官】
櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−509552(JP,A)
【文献】
特開2010−132277(JP,A)
【文献】
特開2010−132278(JP,A)
【文献】
特開2010−132279(JP,A)
【文献】
特開2009−113799(JP,A)
【文献】
特開2009−113798(JP,A)
【文献】
特開2010−241413(JP,A)
【文献】
特表2009−525191(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1790499(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 3/00 - 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤが装着されるホイールリムと、
車軸に取り付けられるハブ取付部と、前記ホイールリムに内嵌するディスクフランジ部と、ハブ取付部とディスクフランジ部とを連結する複数のスポーク部とを備えたホイールディスクと
を備えた自動車用ホイールにおいて、
前記スポーク部は、半径方向に沿って裏側に凹む中央溝部と、半径方向に沿って該中央溝部の両側縁から表側へ夫々隆起する隆起側部とを備えると共に、各隆起側部が、表側へ最も突出する頂側部と、該頂側部の側縁から裏側へ延成された鍔部とを備えてなり、
前記ディスクフランジ部は、表裏方向に沿うように設けられ且つホイールリムと嵌合する連結部と、該連結部の表縁から延出されて径方向内側へ折曲し且つスポーク部の隆起側部の頂側部に比して裏方へ窪む円弧状の表側縁部とを備えてなり、
前記鍔部は、ホイールディスクの径方向外端まで設けられ、
表側縁部は、隣り合うスポーク部間に夫々形成されており、その周方向両側でスポーク部の鍔部に滑らかに連成され、
隣り合うスポーク部の鍔部とディスクフランジ部の表側縁部とにより飾り孔が画成されていることを特徴とする自動車用ホイール。
【請求項2】
スポーク部を構成する隆起側部の鍔部が、ディスクフランジ部の表側縁部の表裏方向高さ位置まで延成しているものであることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ホイール。
【請求項3】
スポーク部を構成する隆起側部の鍔部が、ディスクフランジ部の表側縁部よりも裏側へ延成されているものであることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ホイール。
【請求項4】
スポーク部を構成する中央溝部が、その外端部の表裏方向高さ位置を、ディスクフランジ部の表側縁部の表裏方向高さ位置と略同じとしているものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の自動車用ホイール。
【請求項5】
ディスクフランジ部の表側縁部は、スポーク部の隆起側部の頂側部に比して裏方へ段差状に窪むように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動車用ホイール。
【請求項6】
頂側部と表側縁部とが鍔部を介して連成されていることから、鍔部の外側端部が、頂側部と表側縁部とを段差状とするための段部を構成していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の自動車用ホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤを装着するホイールリムと、車軸に取り付けられるホイールディスクとを備えた自動車用ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用ホイールには、略円筒状のホイールリムと略円盤状のホイールディスクとを嵌合して溶接してなる、いわゆる2ピースタイプのものがある。この2ピースタイプの自動車用ホイールを構成するホイールリムは、タイヤのビードを支持するビードシート部とフランジ部とを表裏に備え、さらに、表裏のビードシート部の間に内方へ窪むウエル部を備えた構成が知られている。一方、ホイールディスクは、車軸のハブに取り付けられる円板状のハブ取付部と、該ハブ取付部の外周縁から外方へ放射状に設けられた複数のスポーク部と、該スポーク部の外端と連成された円環状のディスクフランジ部とを備えた構成が知られている。ここで、ホイールディスクには、隣り合うスポーク部間に、該スポーク部とディスクフランジ部とにより画成された飾り孔が複数形成されている。ホイールディスクのディスクフランジ部を、ホイールリムのウエル部に内嵌して、両者を溶接することによって、自動車用ホイールが形成される。
【0003】
上述した自動車用ホイールとしては、例えば特許文献1のように、ホイールディスクが、ほぼ軸方向に延成された平坦な円筒状のディスクフランジ部を備え、該ディスクフランジ部と隣り合うスポーク部とによって飾り孔が画成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009 −525191号公報(
図1、
図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の構成は、そのホイールディスクのディスクフランジ部が平坦な円筒状に形成されていることから、飾り孔が半径方向外側へ比較的大きく形成され、意匠性に優れるという利点を有している。ところで、前記ディスクフランジ部には、当該自動車用ホイールを取り付けた自動車の走行中に、ホイールリムを介して径方向の負荷が作用すると共に、ハブ取付部からスポーク部を介して曲げやねじり等の負荷が作用する。特許文献1のディスクフランジ部は平坦な円筒状であることから、前記した負荷が作用することによって変形し易く、該変形によってホイールリムとホイールディスクとを溶接した接合部に応力集中を生じ易くなるおそれがある。そして、この応力集中によって、疲労寿命の低減も懸念される。
【0006】
本発明は、上記した問題点を解決できるように、優れた強度と剛性とを発揮し得る自動車用ホイールを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動車用ホイールは、タイヤが装着されるホイールリムと、車軸に取り付けられるハブ取付部と、前記ホイールリムに内嵌するディスクフランジ部と、ハブ取付部とディスクフランジ部とを連結する複数のスポーク部とを備えたホイールディスクとを備えた自動車用ホイールにおいて、前記スポーク部は、半径方向に沿って裏側に凹む中央溝部と、半径方向に沿って該中央溝部の両側縁から表側へ夫々隆起する隆起側部とを備えると共に、各隆起側部が、表側へ最も突出する頂側部と、該頂側部の側縁から裏側へ延成された鍔部とを備えてなり、前記ディスクフランジ部は、表裏方向に沿うように設けられ且つホイールリムと嵌合する連結部と、該連結部の表縁から延出されて径方向内側へ折曲し且つスポーク部の隆起側部の頂側部に比して裏方へ窪む円弧状の表側縁部とを備えてなり、隣り合うスポーク部の鍔部とディスクフランジ部の表側縁部とにより飾り孔が画成されていることを特徴とする。尚ここで、表側とは、自動車用ホイールの意匠面側を表し、裏側とは、自動車用ホイールの背面側を表す。
【0008】
ここで、ディスクフランジ部は、スポーク部と連成していない部位に表側縁部を備える構成であり、該表側縁部が周方向に沿って間欠的に複数設けられている。この表側縁部が飾り孔の孔周縁を構成することから、本発明では、飾り孔がホイールディスクの最外周まで形成されていない。また、スポーク部の鍔部とディスクフランジ部の表側縁部とが滑らかに連成する構成が好適であり、これにより、飾り孔が滑らかな孔周縁を有するものとなり、一層高い意匠性を発揮できる。
【0009】
本発明の構成は、スポーク部が、その中央溝部と隆起側部との形状効果によって、当該ホイールディスクに作用する曲げやねじり負荷に耐する高い強度と剛性とを発揮できる。特に、鍔部を備えた隆起側部の形状効果により、前記した高い強度と剛性とを発揮する効果が一層向上する。一方、ディスクフランジ部の表側縁部が、連結部から径方向内側に折曲した形状による形状効果と、スポーク部の隆起側部の頂側部に比して裏方へ窪む形状による形状効果とによって、当該ディスクフランジ部に作用する径方向への負荷と曲げやねじり負荷とに耐する高い強度と剛性とを発揮できる。このようなスポーク部による形状効果とディスクフランジ部による形状効果との相乗効果によって、自動車の走行中に当該自動車用ホイールに作用する負荷に耐する強度と剛性とが向上する。これに伴って、自動車走行中に生ずるディスクフランジ部の変形を抑制することができることから、ホイールディスクとホイールリムとが接合する接合部に作用する応力集中を緩和できる。
【0010】
また、スポーク部の鍔部が裏側へ延成されていることから、該鍔部の端面が表側(意匠面側)から視認され難い。そのため、当該自動車用ホイールの意匠性を向上することができる。さらに、スポーク部の鍔部とディスクフランジ部の表側縁部とにより、飾り孔がスポーク部の頂側部に比して裏側に形成されることから、スポーク部が表側へ浮き上がっているように見せる効果が高い。そのため、スポーク部と飾り孔とによる凹凸形態が顕著となり、前記意匠性の向上効果がさらに高まる。このように、本構成にあっては、強度と剛性とを向上しつつ、優れた意匠性を発揮できるものである。
【0011】
また、本発明の構成は、その表側を覆うように取り付けるホイールキャップの設計自由度を高めることができる。例えば、飾り孔の孔周縁を覆うように開口部を設けたホイールキャップを用いる場合に、該開口部の開口周縁部を裏方へ大きく傾斜させた形状として形成できる。これは、飾り孔の孔周縁を構成するディスクフランジ部の表側縁部とスポーク部の鍔部とが、スポークの頂側部に比して裏側に設けられていることに因る。そして、ホイールキャップは、その開口部の開口周縁部を背方へ傾斜させる角度の設計範囲が広がり、これに応じて、ホイールキャップの意匠性を様々に変えた構成を設計可能となる。特に、前記開口周縁部を背方へ大きく傾斜させることにより、開口部を大きく形成できるため、高い意匠性を発揮できる。
【0012】
上述した本発明の自動車用ホイールにあって、スポーク部を構成する隆起側部の鍔部が、ディスクフランジ部の表側縁部の表裏方向高さ位置まで延成しているものである構成が提案される。
【0013】
かかる構成は、スポーク部の鍔部とディスクフランジ部の表側縁部との表裏方向高さ位置が同じとなることから、上述した曲げやねじり負荷に耐する高い強度と剛性とを発揮する両者の相乗効果が一層効率的に発揮され易い。ここで、鍔部の表裏方向幅が長くなることにより、スポーク部の剛性が向上することから、ホイールディスクの強度と剛性との向上効果がさらに向上する。
【0014】
さらに、スポーク部の鍔部とディスクフランジ部の表側縁部とが滑らかに連成して、飾り孔の孔周縁が滑らかに湾曲する形状に形成され得る。これにより、意匠性を向上することができる。さらに、鍔部が表側縁部の表裏方向高さまで延成されていることにより、該鍔部の端面が一層視認され難くなる。
【0015】
また、上述した本発明の自動車用ホイールにあって、スポーク部を構成する隆起側部の鍔部が、ディスクフランジ部の表側縁部よりも裏側へ延成されているものである構成が提案される。
【0016】
かかる構成は、鍔部の表裏方向幅が長くなることにより、スポーク部の剛性が一層向上し、ホイールディスクの強度と剛性との向上効果がさらに向上する。さらに、鍔部の端面が一層視認され難くなるため、意匠性がさらに向上する。
【0017】
上述した本発明の自動車用ホイールにあって、スポーク部を構成する中央溝部が、その外端部の表裏方向高さ位置を、ディスクフランジ部の表側縁部の表裏方向高さ位置と略同じとしているものである構成が提案される。
【0018】
かかる構成は、中央溝部が比較的深く形成されることから、スポーク部の剛性向上効果が大きい。また、中央溝部の外端部とディスクフランジ部の表側縁部とを略同じ高さ位置となるようにすることにより、その間に設けられるスポーク部の頂側部が表側へ突出しているように見え、該スポーク部を表側に浮き上がって見せるという効果が一層向上する。これにより、意匠性を向上できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の自動車用ホイールは、上述したように、スポーク部が、裏側に凹む中央溝部と、該中央溝部の両側に設けられ、表側へ突出する頂側部の側縁から裏側へ延成された鍔部を備える隆起側部とを備える一方、ディスクフランジ部が、表裏方向に沿った連結部と、該連結部の表縁から径方向内側へ折曲し、前記隆起側部の頂側部に比して裏方へ窪む表側縁部とを備える構成であるから、スポーク部による形状効果とディスクフランジ部による形状効果との相乗効果によって、当該自動車用ホイールに作用する径方向への負荷と曲げやねじり負荷とに耐する強度と剛性とが向上する。これにより、自動車の走行中に生じ得るディスクフランジ部の変形を抑制することができ、ホイールディスクとホイールリムとの接合部に作用する応力集中を緩和できる。これに伴って、当該自動車用ホイールは、自動車の走行中に作用する負荷に対して優れた耐久性を発揮できる。また、隣り合うスポーク部の鍔部とディスクフランジ部の表側縁部とにより画成される飾り孔が、スポーク部の頂側部に比して裏側に形成されることから、該スポーク部との凹凸形態を際立たせることができる。これにより、当該自動車用ホイールの意匠性を向上できる。さらにまた、前記鍔部と表側縁部とが頂側部に比して裏側に設けられていることから、当該自動車用ホイールにホイールキャップを装着する場合に、該ホイールキャップの設計自由度が向上するため、意匠性に優れたデザインのホイールキャップを採用することができるという利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明にかかる実施例の自動車用ホイール1の平面図である。
【
図2】同上の自動車用ホイール1の縦断面図である。
【
図4】同上の自動車用ホイール1のホイールディスク3の斜視図である。
【
図10】別例3のスポーク部74の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施例を、添付図面を用いて詳述する。
本実施例の自動車用ホイール1は、
図1〜3のように、ホイールリム2のウエル部13に、ホイールディスク3のディスクフランジ部25を内嵌して、ウエル部13とディスクフランジ部25とを隅肉溶接により接合して一体化してなる、所謂2ピースタイプの構成である。ここで、ホイールリム2とホイールディスク3とは、それぞれスチール製平板を成形加工してなるものであり、本実施例の自動車用ホイール1はスチール製ホイールである。また、前記隅肉溶接により、ホイールリム2とホイールディスク3とを溶接した接合部9が形成される。
【0022】
尚、本実施例の構成では、ホイールディスク3の背面側から意匠面側へ向かう方向を表方向とし、逆向きを裏方向としている。また、ホイール径方向(半径方向)に沿って、自動車用ホイール1の中心軸線L(
図2参照)へ向かう方向を内方とし、逆向きを外方としている。
【0023】
上記したホイールリム2は、異形断面の円筒状を成し、その表裏両側の開口端縁に図示しないタイヤのサイドウォール部を支持するリムフランジ部11a,11bが夫々形成されており、各リムフランジ部11a,11bに夫々に連成されて、タイヤのビードを着座させる表裏のビードシート部12a,12bが夫々に形成されている。さらに、表側のビードシート部12aと裏側のビードシート部12bとの間には、内方へ突出するウエル部13が設けられており、タイヤ装着時にタイヤのビードを該ウエル部13に落とし込むことによって、その装着を容易に行うことができる。
【0024】
このホイールリム2は、所定寸法とした長方形状のスチール製平板を成形加工することにより得られる。詳述すると、長方形状のスチール製平板を、その短辺同士を突き当てるように湾曲させ、短辺同士をアプセットバット溶接により突き合わせ接合して円筒体(図示省略)とする。その後、この円筒体の内外両側から所定の金型を回動しながら挟み込むロール加工を行うことにより、所望のホイールリム形状に成形する。尚、この長方形平板からホイールリム2を成形する製造方法は、従来から公知の方法を用いることができ、詳細については省略する。
【0025】
また、上記したホイールディスク3は、
図2,4のように、略円盤状を成し、中央にハブ孔22が開口された略円板状のハブ取付部21が設けられており、該ハブ取付部21の外周縁から外方へ放射状に複数のスポーク部24が設けられている。そして、各スポーク部24の外端に、円環状のディスクフランジ部25が連成されている。すなわち、ハブ取付部21とディスクフランジ部25とが、複数のスポーク部24によって連結されている。各スポーク部24は、周方向に均等間隔で設けられており、隣り合うスポーク部24,24間に飾り孔27が形成されている。尚、本実施例にあっては、五本のスポーク部24を備え、五個の飾り孔27を備えている。
【0026】
ハブ取付部21には、ハブ孔22の周囲にナット座を備えた複数のボルト孔23が同一円周上に等間隔で穿設されている。このハブ取付部21とディスクフランジ部25とは、ホイールディスク3の中心軸線Lを中心とする同心状に設けられている。
【0027】
このホイールディスク3は、略正方形状のスチール製平板を、その四つ角を円弧状に切り落とした後に、プレス加工することにより得られる。詳述すると、四つ角を円弧状に切り落としたスチール製平板を、その中央を円形窪部とする受け皿状に形成した後、絞り加工によりハブ取付部21やスポーク部24の形状を形成し、ボルト孔23や飾り孔27を穿設する加工を行う。さらに、リストライク加工によりディスクフランジ部25を形成し、ホイールディスク3を成形する。このようにホイールディスク3を成形する製造方法にあっては、従来と同様の方法により行うことができるため、その詳細については省略する。
【0028】
次に、本発明の要部について説明する。
上記したホイールディスク3のスポーク部24は、
図1〜5のように、半径方向に沿って裏側に凹む中央溝部31と、該中央溝部31の両側に設けられた隆起側部32,32とを備えてなる。ここで、中央溝部31は、半径方向に湾曲し且つ周方向に平坦な湾曲板状に形成されている(
図2参照)。一方、隆起側部32は、中央溝部31の周方向両側縁から表側(意匠面側)に隆起する形状を成し、最も突出する頂側部33と、該頂側部33の周方向側縁から裏側へ延成された鍔部34とを備える。この頂側部33は、所定幅で周方向に平坦な形状に形成されている。そして、隣り合うスポーク部24,24同士は、両者の頂側部33と鍔部34とが夫々の内側端部同士を滑らかに連続するように形成されている。
【0029】
各隆起側部32の鍔部34は、その端面34aが中心軸線Lと直交する方向に沿うように形成されている(
図2参照)。そして、端面34aの表裏方向高さ位置が、後述するディスクフランジ部25の表側縁部36に比して表側となるように、当該鍔部34が形成されている(
図6参照)。
【0030】
このようなスポーク部24は、その中央溝部31と隆起側部32,32との形状効果によって、高い強度と剛性とを発揮することができる。ここで、隆起側部32が、頂側部33と鍔部34との形状効果によって、前記強度と剛性との向上効果に大きく寄与する。そして、このスポーク部24により、当該ホイールディスク3は曲げやねじり負荷に耐する強度と剛性とが向上する。ここで、鍔部34は、上記した平坦な頂側部33に対する角度δ(
図6参照)が0度より大きくかつ120度以下とする構成が好適である。本実施例では、前記角度δを略90度としている。これにより、前記した鍔部34の形状効果によるスポーク部24の強度と剛性との向上効果を一層高め得る。
【0031】
尚、仮にスポーク部が鍔部を備えていない構成とした場合には、隆起側部32,32による形状効果が、本実施例の構成に比して低減し、中央溝部の形状効果との相乗効果も低減する。そのため、本実施例の構成が発揮するレベルの強度と剛性とを発揮できない。すなわち、スポーク部に作用する曲げやねじり負荷に対して、スポーク部24に鍔部34を備える意義が高い。
【0032】
一方、ディスクフランジ部25は、表裏方向に沿った円環状の連結部35と、該連結部35の表縁から径方向内側へ折曲して延成された円弧状の表側縁部36とを備えている。ここで、表側縁部36は、隣り合うスポーク部24間に夫々形成されており、その周方向両側でスポーク部24,24の鍔部34,34に滑らかに連成されている。そして、隣り合うスポーク部24,24の鍔部34,34と該スポーク部24,24間の表側縁部36とにより、飾り孔27が画成されており、鍔部34,34および表側縁部36が飾り孔27の孔周縁を構成している。
【0033】
上記の表側縁部36は、周方向で間欠的に設けられており、中心軸線Lを中心とする同心状に形成されている。各表側縁部36は、スポーク部24の頂側部33に比して裏方へ段差状に窪むように形成されており、前記頂側部33と表側縁部36とが鍔部34を介して連成されていることから、該鍔部34の外側端部が両者を段差状とするための段部を構成している。
【0034】
表側縁部36は、連結部35に対する折曲角度θが135度以下となるように設定する。すなわち、
図7のように、表側縁部36は連結部35の表縁から裏方へ前記折曲角度θが135度よりも大きくならないように折り曲げられている。ここで、前記折曲角度θは、45度以上かつ90度以下とする構成が好適である。これにより、後述するディスクフランジ部25の強度と剛性との向上効果が高く発揮され易い。
【0035】
さらに、この表側縁部36は、上述したスポーク部24の中央溝部31の外端部31aと表裏方向高さ位置が略同じとなるように形成されている(
図2参照)。ここで、表側縁部36は、その折曲角度θに応じて表裏方向に幅があり、同様に、中央溝部31の外端部31aもその半径方向の湾曲形状により表裏方向に幅がある。そのため、両者の各表裏方向幅内で重なるように設定されることによって、前記した表裏方向高さ位置が略同じであるものとして定めている。このように表側縁部36と中央溝部31の外端部31aとの表裏方向高さ位置を略同じとすることにより、後述するように、スポーク部24の隆起側部32が表側に浮き上がって見え易くなることから、当該自動車用ホイール1の意匠性を向上できる。
【0036】
このようなディスクフランジ部25は、隣り合うスポーク部24,24間に設けた表側縁部36の形状効果によって、当該ディスクフランジ部25の強度と剛性とを向上することができる。ここで、表側縁部36の形状効果としては、連結部35の表縁から径方向内側へ折曲された形状による効果と、頂側部33に比して裏方へ段差状に窪む形状による効果とによって発揮されるものであり、いずれか一方の形状のみの効果に比して著しく高い効果を発揮し得る。そして、表側縁部36の形状効果により、ディスクフランジ部25の変形抑制効果が向上することから、該ディスクフランジ部25とホイールリム2のウエル部13との接合部9に作用する応力集中を緩和することができる。
【0037】
本実施例の構成は、当該自動車用ホイール1を取り付けた自動車の走行中に、ホイールリム2を介して作用する径方向の負荷と、車軸に取り付けられるハブ取付部21を介して作用する曲げ/ねじり負荷とに対して、各スポーク部24とディスクフランジ部25とが高い耐力を発揮できる。これは、上述したスポーク部24の形状効果とディスクフランジ部25の形状効果との相乗効果によるものであり、どちらか一方の形状効果のみに比して著しく高く発揮される。そして、曲げ/ねじり負荷に対する耐力が向上することにより、ディスクフランジ部25の変形抑制効果が向上することから、前記接合部9の応力集中を緩和する効果が向上し、これに伴って、当該自動車用ホイール1の強度と剛性とを向上することができる。
【0038】
さらに、スポーク部24が裏側に延成された鍔部34を有していることから、該鍔部34の端面34aが表側から視認し難く、当該自動車用ホイール1の意匠性を高めることができる。特に、本実施例の構成では、鍔部34の端面34aを中心軸線Lと直交する方向に沿って形成していることから、前記意匠性を高める効果に優れている。
【0039】
また、上述したように、隣り合うスポーク部24,24の鍔部34,34とディスクフランジ部25の表側縁部36とにより飾り孔27の孔周縁が構成されていることから、該飾り孔27がスポーク部24に比して裏側に位置するように見える。これは、スポーク部24の鍔部34が頂側部33から裏側へ延成されていること、およびディスクフランジ部25の表側縁部36が頂側部33に比して裏側に形成されていることに因る。これにより、スポーク部24を表方へ浮き上がっているように見せることができ、スポーク部24と飾り孔27とによる凹凸形態を際立たせることができるため、当該自動車用ホイール1の意匠性を高めることができる。ここで、この意匠性の向上効果は、前記鍔部34と表側縁部36との両者の相乗効果によって生じるものであり、いずれか一方のみの場合に比して優れている。
【0040】
さらにまた、本実施例の構成は、飾り孔27の孔周縁を構成する表側縁部36が裏方に窪んでおり且つ鍔部34が裏側に延成されていることから、例えば、当該自動車用ホイール1にホイールキャップを装着する場合に、該ホイールキャップの形状の設計自由度が向上する。ここで、ホイールキャップが各飾り孔27の孔周縁を覆う開口部を備えた構成とすれば、該開口部は飾り孔の孔周縁に近接する形状に形成される。これは、開口部の開口面積を可及的に大きく形成して、意匠性を向上させるためである。そして、本実施例では表側縁部36が頂側部33に比して裏方へ段差状に窪む形状となっていることから、例えば、表側縁部が表裏方向において頂側部と同じ位置となるように構成した自動車用ホイールに比して、前記開口部を裏方へ大きく傾斜するように形成することができ、これに伴って該開口部の開口面積を大きくできる。このように開口部を大きく設計できることによって、ホイールキャップの設計自由度が向上する。
【0041】
一方、上述した実施例の別例1として、
図8のように、スポーク部24の鍔部54がその端面54aを飾り孔27に臨むように傾斜させたものである構成が提案される。この別例1の構成は、鍔部54の形状のみ上述した実施例と異なる。この別例1では、鍔部54の角度δを略30度としている。かかる構成は、鍔部54を備えたスポーク部24により、上述した実施例と同様、曲げやねじり負荷に対する耐久性が向上すると共に、鍔部54の端面54aが表側から視認し難いことから、意匠性を向上することができる。このように別例1の構成は、上述した実施例と同様の作用効果を奏する。尚、実施例と同じ構成要素には同じ符号を付し、その説明を省略している。
【0042】
また、上述した実施例の別例2として、
図9のように、スポーク部24の鍔部64が、その端面64aの表裏方向高さ位置をディスクフランジ部25の表側縁部36の表面と同じ高さ位置となるように形成されているものである構成が提案される。ここで、鍔部64の端面64aは、実施例と同様に、中心軸線Lと直交する方向に沿うように形成されている。そして、このような鍔部64を備える以外は、上述した実施例と同じであり、該実施例と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略している。この別例2の構成は、実施例に比して、鍔部64の表裏方向長さが長くなっていることから、曲げやねじり負荷に対する強度と剛性とを一層向上することができ、これに伴って耐久性が向上する。さらに、鍔部64の端面64aと表側縁部36の表面との表裏方向高さ位置が同じであることから、両者が滑らかに連成された形態に形成され易い。これにより、飾り孔27の意匠性が一層向上する。このように別例2の構成は、上述した実施例と同様の作用効果を奏する。尚、別例2の構成は、鍔部64の端面64aとディスクフランジ部25の表側縁部36の表面とを同じ高さ位置としたものであるが、該端面64aを表側縁部36の裏面と同じ高さ位置としても良い。
【0043】
また、上述した実施例の別例3として、
図10のように、スポーク部24の鍔部74の端面74aがディスクフランジ部25の表側縁部36の裏面よりも裏側まで延成されているものである構成が提案される。ここで、鍔部74の端面74aは、実施例と同様に、中心軸線Lと直交する方向に沿うように形成されている。そして、このような鍔部74を備える以外は、上述した実施例と同じであり、該実施例と同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略している。この別例3の構成は、実施例に比して、鍔部74の表裏方向長さが長くなっていることから、曲げやねじり負荷に耐する強度と剛性とを一層向上することができ、これに伴って耐久性が向上する。このように別例3の構成は、上述した実施例と同様の作用効果を奏する。
【0044】
一方、上述した実施例および別例1〜3の構成は、スポーク部の中央溝部とディスクフランジ部の表側縁部との表裏方向高さ位置を略同じとしたものであるが、その他の構成として、中央溝部を表側縁部よりも表側となるようにした構成や、中央溝部を表側縁部よりも裏側となるようにした構成としても良い。
【0045】
また、上述した本実施例および別例1〜3の構成は、五本のスポーク部を有する構成であるが、これに限らず、三本、四本、六本、七本など複数のスポーク部を備える構成としても良い。
【0046】
また、上述した本実施例および別例1〜3の構成は、スチール製平板を成形加工したホイールリムとホイールディスクとを接合した構成であるが、アルミニウム合金製平板を用いてホイールリムとホイールディスクとを成形加工した構成としても良い。さらに、マグネシウム合金やチタン合金などの平板を用いて成形加工することもできる。また、ホイールリムとホイールディスクとを、異なる種類の金属製平板から成形加工するものであっても良い。
【0047】
本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜実施可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 自動車用ホイール
2 ホイールリム
3 ホイールディスク
21 ハブ取付部
24 スポーク部
25 ディスクフランジ部
27 飾り孔
31 中央溝部
32 隆起縁部
33 頂側部
34,54,64,74 鍔部
35 連結部
36 表側縁部