【文献】
J. B. C., 2010, 285(27), pp.20964-20974
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、癌の診断および治療を含む医学の分野に関する。本発明の一態様は、疾患進行の指標および治療作用物質の標的としてのLOXおよびLOXL2に関する。
本発明は、リシル・オキシダーゼ(LOX)またはリシル・オキシダーゼ様(LOXL)タンパク質の活性形態または成熟形態を特異的に認識する作用物質を用いることにより、異常な細胞増殖、血管新生、および線維症と関連する各種の疾患を診断またはモニタリングするための新規の方法および関連する組成物ならびにキットを提供する。
対象における癌転移を診断またはモニタリングする方法であって、血液または腫瘍中における活性のLOXまたはLOXL2のレベルまたは活性を評価するステップを含み、基準試料と比較した、血液または腫瘍中における活性のLOXまたはLOXL2のレベルまたは活性の変化により、転移性腫瘍増殖の存在が示される方法が提供される。
以下でより詳細に説明される通り、活性のLOXまたはLOXL2のレベルは、LOXまたはLOXL2の活性形態または成熟形態に特異的に結合する抗体を用いることにより、免疫組織化学法を含むがこれに限定されない各種の方法により評価することができる。活性のLOXまたはLOXL2の酵素活性は、発色アッセイおよび蛍光測定アッセイを含むがこれらに限定されない各種の方法を用いることにより測定することができる。
また、本明細書では、LOXまたはLOXL2の活性形態を特異的に認識する抗体またはその抗原結合フラグメント、LOXまたはLOXL2の活性形態に対する抗体を作製する方法、ならびに該抗体を用いて異常な細胞増殖、血管新生、および線維症を治療する方法も提供される。
【0016】
I.一般的な定義
別段に定義しない限り、本明細書で用いられるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当技術分野の当業者により一般的に理解される場合と同じ意味を有する。本明細書で言及されるすべての特許、出願、出願公開、および他の刊行物は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる。本節で記載される定義が、参照により本明細書に組み込まれる特許、出願、出願公開、および他の刊行物で記載される定義に反するかまたはこれらと別の形で符合しない場合、本節で記載される定義が、参照により本明細書に組み込まれる定義に対して優先される。本明細書で記載される見出しは便宜上だけのものであり、いかなる形であれ本発明を限定するものではない。
本明細書で用いられる「ある(a)」、または「ある(an)」は、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味する。
「保存的なアミノ酸置換」という表現は、特定の共通の特性に基づくアミノ酸の群分けを指す。個々のアミノ酸間における共通の特性を定義する機能的な方法は、相同的な生物の対応するタンパク質間におけるアミノ酸変化の標準化された頻度を解析することである(Schulz,G.E.およびR.H.Schirmer、「Principles of Protein Structure」、Springer−Verlag社)。このような解析によれば、アミノ酸群とは、群内のアミノ酸が相互に優先的に交換され、したがって、全般的なタンパク質構造に対するそれらの影響において最も相互に類似する群と定義することができる(Schulz,G.E.およびR.H.Schirmer、「Principles of Protein Structure」、Springer−Verlag社)。このようにして定義されるアミノ酸群の例は、
(i)GluおよびAsp、Lys、Arg、およびHisからなる荷電群、
(ii)Lys、Arg、およびHisからなる正荷電群、
(iii)GluおよびAspからなる負荷電群、
(iv)Phe、Tyr、およびTrpからなる芳香族群、
(v)HisおよびTrpからなる窒素環群、
(vi)Val、Leu、およびIleからなる高分子脂肪族非極性群、
(vii)MetおよびCysからなる弱極性群、
(viii)Ser、Thr、Asp、Asn、Gly、Ala、Glu、Gln、およびProからなる低分子残基群、
(ix)Val、Leu、Ile、Met、およびCysからなる脂肪族群、ならびに
(x)SerおよびThrからなる低分子ヒドロキシル群
を含む。
上記で示した群に加え、各アミノ酸残基は固有の基を形成することがあり、個々のアミノ酸により形成される基は、上記で記載した通り、当技術分野で一般に用いられる、そのアミノ酸に対する1文字および/または3文字の略記法により簡潔に言及することができる。
【0017】
「保存残基」とは、類似タンパク質の範囲を通じて比較的不変なアミノ酸である。保存残基は、「保存的アミノ酸置換」について上記で説明した類似のアミノ酸により置換されることだけによって変化することが多い。
本明細書のアミノ酸配列で用いられる「x」または「xアミノ酸」という表記は、別段に特記されない限り、20種類の標準的なアミノ酸のいずれかをこの位置に配置しうることを示すことを意図する。ペプチド模倣剤を設計する目的の場合、アミノ酸配列内の「x」または「xアミノ酸」を、標的配列内に存在する該アミノ酸の模倣体により置換することもでき、ペプチド模倣剤の活性に干渉しない基本的に任意の形態のスペーサーにより該アミノ酸を置換することもできる。
「相同性」または「同一性」または「類似性」とは、2つのペプチド間または2つの核酸分子間における配列の類似性を指す。相同性および同一性は、各々、比較を目的に整列しうる各配列内における位置を比較することにより決定することができる。比較される配列内における同等の位置が同じ塩基またはアミノ酸により占められている場合、該分子はその位置において同一であり;同等の位置が同じであるかまたは類似のアミノ酸残基(例えば、立体的性質および/または電子的性質において類似する)によって占められている場合、該分子はその位置において相同(類似)であると称する。相同性/類似性または同一性の百分率としての表現とは、比較された配列により共有される位置における同一であるかまたは類似のアミノ酸数の関数を指す。「類縁でない」かまたは「非相同」の配列とは、40%未満しか同一性を有さない配列であるが、本発明の配列とは25%未満しか同一性を有さないことが好ましい。2つの配列を比較する場合、残基(アミノ酸または核酸)の不在または余分の残基の存在もまた、同一性および相同性/類似性を低下させる。
「相同性」という用語は、類似の機能またはモチーフを有する遺伝子またはタンパク質を同定するのに用いられる配列類似性に対する数学に基づく比較を説明する。本発明の核酸(ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド)配列およびアミノ酸(タンパク質)配列は、公開データベースに対する検索を実施して、例えば、他のファミリー・メンバー、類縁配列、または相同体を同定する「クエリー配列」として用いることができる。このような検索は、Altschulら(1990年)、J.Mol.Biol.、第215巻、403〜10頁のNBLASTプログラムおよびXBLASTプログラム(バージョン2)を用いて実施することができる。NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12によりBLAST核酸検索を実施して、本発明の核酸分子に対して相同な核酸配列を得ることができる。XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3によりBLASTアミノ酸検索を実施して、本発明のタンパク質分子に対して相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較を目的としてギャップを含むアライメントを得るためには、Altschulら(1997年)、Nucleic Acids Res.、第25巻、第17号、3389〜3402頁で説明される通りに、Gapped BLASTを用いることができる。BLASTプログラムおよびGapped BLASTプログラムを用いる場合、各プログラム(例えば、XBLASTおよびBLAST)のデフォルト・パラメータを用いることができる(www.ncbi.nlm.nih.govを参照されたい)。
【0018】
本明細書で用いられる「同一性」とは、2つ以上の配列を整列して配列のマッチングを最大化する、すなわち、ギャップおよび挿入を考慮する場合における、該配列内の対応する位置における同一のヌクレオチド残基またはアミノ酸残基の百分率を意味する。同一性は、「Computational Molecular Biology」、Lesk,A.M.編、ニューヨーク、Oxford University Press社、1988年;「Biocomputing:Informatics and Genome Projects」、Smith,D.W.編、ニューヨーク、Academic Press社、1993年;「Computer Analysis of Sequence Data」、第I部、Griffin,A.M.およびGriffin,H.G編、ニュージャージー州、Humana Press社、1994年;「Sequence Analysis in Molecular Biology」、von Heinje,G.、Academic Press社、1987年;ならびに「Sequence Analysis Primer」、Gribskov,M.およびDevereux,J.編、ニューヨーク、M Stockton Press社、1991年;ならびにCarillo,H.およびLipman,D.、SIAM J.、Applied Math.、第48巻、1073頁(1988年)において説明される方法を含むがこれらに限定されない既知の方法により容易に計算することができる。同一性を決定する方法は、調べる配列の間で最大のマッチがもたらされるように設計される。さらに、同一性を決定する方法は、市販のコンピュータ・プログラムでコードされる。2つの配列間における同一性を決定するコンピュータ・プログラムによる方法は、GCGプログラム・パッケージ(Devereux,J.ら、Nucleic Acids Research、第12巻、第1号、387頁(1984年))、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul,S.F.ら、J.Molec.Biol.、第215巻、403〜410頁(1990年);およびAltschulら、Nuc.Acids Res.、第25巻、3389〜3402頁(1997年))を含むがこれらに限定されない。BLAST Xプログラムは、NCBIおよび他の販売元から市販されている(「BLAST Manual」、Altschul,S.ら、NCBI NLM NIH、Bethesda、Md.20894;Altschul,S.ら、J.Mol.Biol.、第215巻、403〜410頁(1990年))。よく知られるSmith Watermanによるアルゴリズムもまた、同一性を決定するのに用いることができる。
【0019】
「実質的に同一の」という用語は、第1および第2のアミノ酸配列が共通の構造ドメインおよび/または共通の機能活性を有するように、i)第2のアミノ酸配列内における整列されたアミノ酸残基に対して同一であるか、またはii)該残基の保存的置換である、十分であるかまたは最小限の数のアミノ酸残基を含有する第1のアミノ酸配列の同一性を意味する。例えば、LOXに対して実質的に同一なアミノ酸配列は、LOXに対して少なくとも約60%、または65%の同一性を有し、75%の同一性を有する可能性が高く、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する可能性がさらに高い共通の構造ドメインを含有する。例えば、LOX2に対して少なくとも約60%、または65%の同一性を有し、75%の同一性を有する可能性が高く、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する可能性がさらに高い共通の構造ドメインを含有するアミノ酸配列は、十分に同一であるかまたは実質的に同一であると称する。ヌクレオチド配列の場合、本明細書において、「実質的に同一の」という用語は、第1および第2のヌクレオチド配列が共通の機能活性を有するポリペプチドをコードするか、または共通のポリペプチド構造ドメインもしくは共通のポリペプチド機能活性をコードするように、第2の核酸配列内における整列されたヌクレオチドに対して同一の、十分であるか最小限の数のヌクレオチドを含有する第1の核酸配列を指すのに用いる。例えば、本明細書で提供される核酸配列に対して少なくとも約60%、または65%の同一性を有し、75%の同一性を有する可能性が高く、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する可能性がさらに高いヌクレオチド配列は、実質的に同一であると称する。
【0020】
II.リシル・オキシダーゼ(LOX)またはリシル・オキシダーゼ様(LOXL)タンパク質
充実性腫瘍は、低酸素圧(低酸素状態)の領域を含有することが典型的である。低酸素細胞は、高度に侵襲性、転移性であり、治療に対して耐性であるため、癌治療において大きな問題を提示する。これらの特徴の一因となる基礎的な機構は、ほとんど理解されていない。検出可能な転移性乳癌を有する大半の患者に対しては有効な治療が存在しないため、乳癌においては、転移が特別な問題を提示する(Steeg,PS.、Br.Can.Res.、第2巻、第6号、396〜9頁(2000年))。
細胞外マトリックス(ECM)は、腫瘍細胞に対して大きな影響を及ぼしうる(ChangおよびWerb、Trends Cell.Biol.、第11巻、S37〜43頁(2001年);ならびにRadiskyら、Semin.Cancer Bio.、第11巻、87〜95頁(2001年))。低酸素状態に曝露されたマウスは、ECMの形成および維持において基礎的な役割を果たすアミン・オキシダーゼである、リシル・オキシダーゼ(LOX)活性の組織特異的な上昇を示す(Brodyら、Am.Rev.Respir.Dis.、第120巻、1289〜95頁(2001年))。近年のマイクロアレイ研究により、LOXが、各種の細胞株における低酸素状態誘導遺伝子であることが確認された(Denko,NC.、Oncogene、第22巻、5907〜14頁(2003頁))。しかし、低酸素状態下におけるLOXの生物学的役割は同定されなかった。LOXは、ECM中におけるコラーゲンおよびエラスチンの共有結合による架橋形成を引き起こし、不溶性マトリックスの沈着および引張強度を増大させる(KaganおよびLi.、J.Cell.Biochem.、第88巻、660〜72頁(2003年))。LOX発現は、創傷治癒および正常な結合組織機能にとって不可欠であり、ノックアウト・マウスは、心血管の不安定性により、出産直後に死亡する(Hornstraら、J.Biol.Chem.、第278巻、14387〜93頁(2003年))。LOX活性の低下は、エーラー−ダンロス症候群などの疾患と関連する(Pinnell,SR.、J.Invest.Dermatol.、第79巻(付録第1号)、90S〜92S頁(1982年);Royceら、Biochem.J.、第192巻、579〜86頁(1980年);ならびにKhakooら、Clin.Genet.第51巻、109〜14頁(1997年))。LOX活性の上昇は、肝硬変などの線維性疾患および組織リモデリング疾患の一因となる(Kagan,HM.、Pathol.Res.Pract.、第190巻、910〜0頁(1994年);Chankiら、Br.J.Dermatol.、第133巻、710〜5頁(1995年);ならびにOoshimaおよびMidorikawa、Jpn.Circ.J.、第41巻、1337〜40頁(1977年))。
【0021】
LOX発現の上昇は、腎細胞癌における病期の進行と相関し(Stassarら、Br.J.Cancer、第85巻、1372〜82頁(2001年))、LOX発現の上昇は、高度に転移性および/または侵襲性である乳癌細胞株において観察される(Kirschmannら、Breast Cancer Res.Treat.、第55巻、127〜36頁(1999年);ならびにKirschmannら、Cancer Res.、第62巻、4478〜83頁(2002年))。これに対し、ras形質転換線維芽細胞の非腫瘍原性の復帰突然変異体において、LOXは、腫瘍抑制因子として作用する(Smith−MungoおよびKagan.、Matrix Biol.、第16巻、387〜98頁(1998年))。LOXの喪失は、胃癌、結腸癌、および前立腺癌など、複数種の癌における腫瘍原性と関連する(Renら、Cancer Res.、第58巻、1285〜90頁(1998年);Cxiszarら、Int.J.Cancer、第97巻、636〜42頁(2002年);ならびにKanedaら、Cancer Res.、第64巻、6410〜5頁(2004年))。こうして、LOXの腫瘍抑制性の役割は、細胞の種類および形質転換の状態に依存すると考えられる。該プロペプチド・ドメイン(であり、活性酵素ではない)は近年、腫瘍抑制活性の一因となることが示された。乳癌において、LOX発現の上昇は、早期の間質反応と関連し(Decitreら、Lab.Invest.、第78巻、143〜51頁(1998年))、この種の癌におけるアンチセンスLOXによる処理は、in vitroにおける浸潤を防止する(Kirschmannら、Cancer Res.、第62巻、4478〜83頁(2002年))。
【0022】
LOXL2のアミノ酸配列は、LOXおよびLOXLの両方の保存的な銅結合ドメインおよび触媒ドメインとの広範にわたる配列相同性を共有する。これらの保存的ドメインは、エキソン−イントロン構造の保存もまた維持する、LOX遺伝子、LOXL遺伝子、およびLOXL2遺伝子内における5つの隣接するエキソンによりコードされる。LOXL2、LOX、およびLOXLのカルボキシル末端内におけるヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列の保存は、リシル・オキシダーゼ・タンパク質に対して特異的な銅配位錯体に窒素配位子を供給する、4つのヒスチジンを伴う、LOXおよびLOXLにおける銅結合ドメイン(WEWHSCHQHYH)およびLOXL2におけるWIWHDCHRHYHを含む(KrebsおよびKrawetz、Biochim.Biophys.Acta、第1202巻、7〜12頁(1993年))。LOXにおける活性部位(DIDCQWWIDITDVXPGNY)およびLOXL2における活性部位(DIDCQWVDITDVPPPGDY)は各々、COOH末端においてTyr残基(Y)を含有し、これが、Lys残基と共に、これらのタンパク質中に存在するキノン補因子の形成に関与する。LOXおよびLOXLに特徴的な10個のシステインは、LOXL2においても同様に保存される(Kaganら(1994)、「Molecular Biology and Pathology of Elastic Tissue」(Mecham,R.P.およびRoberts,L.編)、Ciba Foundation Symposium Series、Wiley、チチェスター、UK)。LOXおよびLOXLタンパク質において存在する成長因子およびサイトカインの受容体ドメインもまた、LOXL2に由来するアミノ酸配列内で同定されている。スカベンジャー受容体のシステインに富むドメインの4つの反復配列もまた、LOXL2由来で存在する(Saitoら、J.Biol.Chem.、第272巻、8157〜8160頁(1997年);Resnickら、Trends Biochem.Sci.、第19巻、5〜8頁(1994年))。
LOXL2 cDNAの3’−UTRドメイン内では、3つの主要な転写終結部位が注目されている。第1の終結部位は終止コドンから3’側に690bpであり、第2の部位は740bpであり、最後の転写終結部位は、終止コドンから3’側に900bpである。これらのmRNAは、すべて、サイズが若干異なる3’−UTRを有する。LOXL2遺伝子の大半のエキソン−イントロン境界部は、(C/T)AG−エキソン−GT(A/G)のコンセンサス配列を示す。LOXL2遺伝子の11のエキソンのサイズは、112〜940bpの範囲である。LOXL2遺伝子は11のエキソンを有するが、銅結合ドメインおよび触媒ドメインをコードする5つの隣接するエキソン(エキソン6〜10)は、84%の配列類似性を示し、エキソン・サイズは、LOX遺伝子およびLOXL遺伝子の対応するエキソンに極めて類似する。LOXL2遺伝子内における他のすべてのエキソンは、配列およびサイズ共に不一致である。LOXL2は、血液の白血球を例外とするすべての組織において同定されている。LOXL2 mRNAは、心臓、肝臓、および膵臓において検出されており、脳、肺、骨格筋、胸腺、および腎臓におけるより低度の発現(0.5未満の比率)と比較して、胎盤、前立腺、子宮、および膵臓では著明に高度の発現(2〜3の比率)である(Jourdan−Le Sauxら、J.Biol.Chem.、第274巻、第18号、12939〜12944頁(1999年))。
【0023】
LOXおよび異なるLOXLタンパク質の発現は、疾患が異なれば異なる。これは、タンパク質間における組織分布、プロセッシング、ドメイン、活性の調節の違いの他、他の違いなど、多数の理由による場合がある。例えば、LOXおよびLOXLは、両者共に線維性領域周囲の筋線維芽細胞において高度に発現するので、線維性疾患に関与する(Kagen、Pathol.Res.Pract.、第190巻、910〜919頁(1994年);Murawakiら、Hepatology、第14巻、1167〜1173頁(1991年);Siegelら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第75巻、2945〜2949頁(1978年);Jourdan Le−Sauxら、Biochem.Biophys.Res.Comm.、第199巻、587〜592頁(1994年);Kimら、J.Cell Biochem.、第72巻、181〜188頁(1999年))。LOXおよび各種のLOXLはまた、多数の癌にも関与する。例えば、LOXLおよびLOXL4は、エピジェネティックにサイレンシングされることが示されており、ヒト膀胱癌において、ras/細胞外シグナル調節キナーゼによるシグナル伝達経路を阻害しうる(Wuら、Cancer Res.、第67巻、4123〜4129頁(2007年))。他の研究者は、頭頚部扁平上皮細胞癌におけるLOXL4遺伝子の選択的な上方調節および増幅を示している(Goroughら、J.Pathol.、第212巻、74〜82頁(2007年))。LOXおよびLOXL2はまた、結腸癌および食道癌など、多数の腫瘍にも関与している(Csiszar、Prog.Nucl.Acid Res.、第70巻、1〜32頁(2001年))。乳癌では、LOXおよびLOXLのファミリー・メンバーが癌に連関している(Kirschmannら、Cancer Res.、第62巻、448〜4483頁(2002年))。
リシル・オキシダーゼは、コラーゲン中のペプチジル・リシン残基およびヒドロキリシン残基、ならびにエラスチン中のペプチジル・リシン残基の酸化的脱アミノ反応を触媒する。結果として生じるペプチジル・アルデヒドは、自発的に縮合し、酸化反応を受け、細胞外マトリックスの正常な構造的完全性に必要な、リシン由来の共有結合架橋を形成する。リシル・オキシダーゼのその基質との反応では、ペプチジル・アルデヒド生成物と共に、過酸化水素(H2O2)およびアンモニウムが化学量論的量において放出される。例えば、Kaganら、J.Cell.Biochem.、第88巻、660〜72頁(2003年)を参照されたい。
【0024】
リシル・オキシダーゼは、細胞外環境内に分泌され、次いで、そこにおいて、タンパク質分解的切断により、30kDaの機能的な酵素と、18kDaのプロペプチドとにプロセッシングされる。30kDaのリシル・オキシダーゼが酵素的に活性であるのに対し、50kDaのプロ酵素は活性でない。BmpI遺伝子、TII1遺伝子、およびTII2遺伝子の産物であるプロコラーゲンCプロテイナーゼが、プロリシル・オキシダーゼをその活性形態にプロセッシングする。該酵素の局在化はおもに細胞外であるが、プロセッシングされたリシル・オキシダーゼはまた、細胞内および核内にも局在化する。LOXおよびLOXLタンパク質間では、プロペプチドをコードする配列の保存が中程度(60〜70%)であるのに対して、活性部位が位置するプロ酵素の30kDaのC末端領域をコードする配列の保存は高度(約95%)である。Kaganら、J.Cell Biochem.、第59巻、329〜38頁(1995年)を参照されたい。LOXは、TGF−β、TNF−α、およびインターフェロンなど、多数の成長因子およびステロイドにより誘導される(Csiszar、Prog.Nucl.Acid Res.、第70巻、1〜32頁(2001年))。
LOXおよび4種のLOX類縁タンパク質またはLOX様タンパク質(LOXL、LOXL2、LOXL3、LOXL4)である、5種の異なるリシル・オキシダーゼが、ヒトおよびマウスのいずれにおいても存在することが知られている。LOXおよびLOX様タンパク質は、本開示の目的では、まとめて「LOX/LOXL」と称する。リシル・オキシダーゼの5つの形態は、5種の異なる染色体上に存在する。これらのファミリー・メンバーは、構造および機能において何らかの重複を示すが、異なる機能も有すると考えられる。例えば、LOXの主要な活性は細胞外のコラーゲンおよびエラスチン中における特定のリシン残基の酸化であるが、遺伝子発現を調節しうる場合、それはまた、細胞内でも作用しうる。加えて、LOXは、単球、線維芽細胞、および平滑筋細胞の走化性を誘導する。さらに、ノックアウト・マウスにおけるLOXの欠失が出産時において致死的であると考えられる(Hornstraら、J.Biol.Chem.、第278巻、14387〜14393頁(2003年))のに対し、LOXLの欠損は重篤な発達表現型をもたらさない(Bronsonら、Neurosci.Lett.、第390巻、118〜122頁(2005年))。
【0025】
LOXの主要な活性は細胞外のコラーゲンおよびエラスチン中における特定のリシン残基の酸化であるが、遺伝子発現を調節しうる場合、それはまた、細胞内でも作用しうる(Liら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第94巻、12817〜12822頁(1997年);Giampuzziら、J.Biol.Chem.、第275巻、36341〜36349頁(2000年))。加えて、LOXは、単球、線維芽細胞、および平滑筋細胞の走化性を誘導する(Lazarusら、Matrix Biol.、第14巻、727〜731頁(1995年);Nelsonら、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.、第188巻、346〜352頁(1988年))。LOX自体は、TGF−β、TNF−α、およびインターフェロンなど、多数の成長因子およびステロイドにより誘導される(Csiszar、Prog.Nucl.Acid Res.、第70巻、1〜32頁(2001年))。近年の研究から、LOXには、発生の調節、腫瘍の抑制、細胞の運動性、および細胞の老化などの多様な生物学的機能における他の役割があると考えられる。LOXおよびその近年発見されたアミノ・オキシダーゼ・ファミリーであるLOX様(LOXL)ファミリーは、それらの細胞内および細胞外における局在化により、重要な役割を果たしうる。
本明細書で用いられる「リシル・オキシダーゼ」という用語は、以下の反応:ペプチジル−L−リシル−ペプチド+O2+H2O→ペプチジル−アリシル−ペプチド+NH3+H2O2を触媒する酵素を指す。リシル・オキシダーゼの他の同義語(EC 1.4.3.13)は、タンパク質−リシン6−オキシダーゼおよびタンパク質−L−リシン:酸素6−オキシドレダクターゼ(脱アミノ反応性)を含む。例えば、Harrisら、Biochim.Biophys.Acta、第341巻、332〜44頁(1974年);Raytonら、J.Biol.Chem.、第254巻、621〜26頁(1979年);Stassen、Biophys.Acta、第438巻、49〜60頁(1976年)を参照されたい。その活性中心においてチロシル・キノンのリシル付加物を伴う銅含有キノタンパク質であるLOXは、ペプチジル・リシンの酸化を触媒する結果、ペプチジルアルファ−アミノアジピン酸−デルタ−セミアルデヒドの形成をもたらす。形成されると、このセミアルデヒドは、近傍のアルデヒドまたは他のリシル基と共に自発的に縮合して、鎖内および鎖間の架橋を形成しうる。例えば、Ruckerら、Am.J.Clin.Nutr.、第67巻、996S〜1002S頁(1998年)を参照されたい。
【0026】
「LOX」という用語は、以下の配列:EMBL/GenBank受託番号:M94054(配列番号10);AAA59525.1(配列番号11)−mRNA;S45875(配列番号12);AAB23549.1(配列番号13)−mRNA;S78694(配列番号14);AAB21243.1(配列番号15)−mRNA;AF039291(配列番号16);AAD02130.1(配列番号17)−mRNA;BC074820(配列番号18);AAH74820.1(配列番号19)−mRNA;BC074872(配列番号20);AAH74872.1(配列番号21)−mRNA;M84150(配列番号22);AAA59541.1(配列番号23)−ゲノムDNAの1つから発現または翻訳されたポリペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を有する酵素を指す。LOXの一実施形態は、あるアミノ酸配列(配列番号7)を有するヒト・リシル・オキシダーゼ(hLOX)プレプロタンパク質、シグナル・ペプチド切断後における配列番号8などの分泌hLOX、またはタンパク質分解的プロセッシング後における配列番号9などの成熟hLOXである。
LOXは、ヒト、マウス、ラット、ニワトリ、魚類、およびショウジョウバエ(Drosphila)を含む複数の動物種において保存される、高度に保存的なタンパク質ドメインを有する。ヒトLOXファミリーは、205アミノ酸のLOX触媒ドメインを含有する高度に保存的なC末端領域を有する。保存的な領域は、銅結合(Cu)領域、保存的なサイトカイン受容体様ドメイン(CRL)、およびリシル−チロシル・キノン補因子部位(LTQ)を含有する。予測される細胞外シグナル配列は、斜線を付した枠囲い(参照により本明細書に組み込まれる米国仮出願第60/963,249号の
図7を参照されたい)により表される。12のシステイン残基もまた同様に保存されるが、そのうちの2残基はプレプロペプチド領域内に存在し、10残基がLOXの触媒的に活性なプロセッシングされた形態である(Csiszar、Prog.Nucl.Acid Res.、第70巻、1〜32頁(2001年))。保存的な領域はまた、フィブロネクチン結合ドメインも含む。
【0027】
LOXのプレプロペプチド領域はシグナル・ペプチドを含有し、切断されて(切断部位は、Cys21〜Ala22間であると予測される)、シグナル配列ペプチドと、未だ不活性であるLOXの48kDaのアミノ酸プロペプチド形態とを生成する。該プロペプチドは、ゴルジ体を通過する際にN−グリコシル化され、これが細胞外環境内へと分泌され、そこで、該プロ酵素またはプロペプチドは、Bmp1遺伝子、TII1遺伝子、およびTII2遺伝子の産物であるメタロエンドプロテアーゼのプロコラーゲンCプロテイナーゼにより、Gly168〜Asp169間で切断される。BMP I(骨形成タンパク質I)は、該プロペプチドをプロセッシングして、機能的な30kDaの酵素と18kDaのプロペプチドとをもたらすプロコラーゲンCプロテイナーゼである。プロペプチドをコードする配列の保存が中程度(60〜70%)であるのに対して、活性部位が位置するプロ酵素の30kDaのC末端領域をコードする配列の保存は高度(約95%)である(KaganおよびLi.、J.Cell.Biochem.、第88巻、660〜672頁(2003年);Kaganら、J.Cell Biochem.、第59巻、329〜38頁(1995年))。N−グリコシルユニットもまた、これに続いて除去される。LOXは、プロセッシングされていない形態および/またはプロセッシングされた(成熟)形態で存在する。LOXの成熟形態は活性であることが典型的であるが、一部の実施形態では、プロセッシングされていないLOXもまた活性である。
LOXL酵素またはタンパク質の具体例は、そのすべてが参照により本明細書に組み込まれるMolnarら、Biochim Biophys Acta、第1647巻、220〜24頁(2003年);Csiszar、Prog.Nucl.Acid Res.、第70巻、1〜32頁(2001年);および2001年11月8日に公開されたWO01/83702において説明されている(これら3つの刊行物が「LOXL1」を「LOXL」と称したのに対し、本発明では、「LOXL」が、LOXL1だけでなく、リシル・オキシダーゼ様タンパク質一般を指すのに用いられることに注意されたい)。これらの酵素は、GenBank/EMBL BC015090、AAH15090.1で寄託されるmRNAによりコードされるLOXL1;GenBank/EMBL U89942で寄託されるmRNAによりコードされるLOXL2;GenBank/EMBL AF282619、AAK51671.1で寄託されるmRNAによりコードされるLOXL3;およびGenBank/EMBL AF338441、AAK71934.1で寄託されるmRNAによりコードされるLOXL4を含む。
【0028】
LOXについて上記で説明されたシグナル・ペプチドと同様の潜在的なシグナル・ペプチドが、LOXL、LOXL2、LOXL3、およびLOXL4のアミノ末端において予測されている。予測されるシグナル切断部位は、LOXLの場合がGly25〜Gln26間であり、LOXL2の場合がAla25〜Gln26間であり、LOXL3の場合がGly25〜Ser26間である。プロコラーゲンおよびプロLOXにおけるBMP−1切断のコンセンサス部位はAla/Gly〜Asp間であり、酸性残基または荷電残基が後続することが多い。活性LOXLを生成する潜在的な切断部位はGly303〜Asp304間であるが、次いで、これには異種のProが後続する。LOXL3はまた、Gly447〜Asp448間においても潜在的な切断部位を有し、これにはAspが後続し、この部位におけるプロセッシングにより、活性LOXと同様のサイズの活性ペプチドがもたらされることがある。BMP−1の潜在的な切断部位はまた、LOXL4内でも、残基Ala569〜Asp570間において同定された(Kimら、J.Biol.Chem.、第278巻、52071〜52074頁(2003年))。LOXL2もまた、LOXLファミリーの他のメンバーと類似の形でタンパク質分解的に切断され分泌されることがある(Akiriら、Cancer Res.、第63巻、1657〜1666頁(2003年))。
LOXおよびLOXL酵素は、ミカエリス−メンテン反応速度論により説明されうるピンポン機構を介して作用する(
図1を参照されたい)。
LOXまたはLOXLタンパク質の例は、以下の配列:EMBL/GenBank受託番号:M94054;AAA59525.1−mRNA;S45875;AAB23549.1−mRNA;S78694;AAB21243.1−mRNA;AF039291;AAD02130.1−mRNA;BC074820;AAH74820.l−mRNA;BC074872;AAH74872.1−mRNA;M84150;AAA59541.1−ゲノムDNAの1つから発現または翻訳されたポリペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を有する酵素を含む。
【0029】
「LOX」および「LOXL」という用語はまた、リシル残基の脱アミノ反応を触媒する酵素活性を実質的に保持する機能的なフラグメントまたは誘導体も包含する。機能的なフラグメントまたは誘導体は、そのリシル・オキシダーゼ活性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%を保持することが典型的である。LOXまたはLOXL2タンパク質が、その活性を実質的に変化させない保存的なアミノ酸置換を含みうることもまた意図される。アミノ酸の適切な保存的置換は当業者に知られており、一般に、結果として得られる分子の生物学的活性を変化させることなく作製することができる。当業者は、一般に、ポリペプチドの必須でない領域における単一のアミノ酸置換は、生物学的活性を実質的に変化させないことを認識する。例えば、Watsonら、「Molecular Biology of the Gene」、第4版、1987年、The Benjamin/Cummings社、224頁を参照されたい。保存的および非保存的なアミノ酸置換は、上記で説明されている。
LOXおよびLOXLタンパク質の間で共通することが知られない特徴は、スカベンジャー受容体のシステインに富む(SRCR)ドメインである。LOXおよびLOXLがSRCRドメインを欠くのに対し、LOXL2、LOXL3、およびLOXL4は各々、N末端において4つのSRCRドメインを有する。SRCRドメインは、分泌タンパク質、膜貫通タンパク質、または細胞外マトリックス・タンパク質において見出される。SRCRドメインはまた、多数の分泌タンパク質および受容体タンパク質におけるリガンド結合を媒介することも知られている(Hohenesteら、Nat.Struct.Biol.、第6巻、228〜232頁(1999年);Sasakiら、EMBO J、第17巻、1606〜1613頁(1998年))。LOXLに固有の別のドメインは、プロリンに富むドメインの存在である(Molnarら、Biochimica Biophysica Acta、第1647巻、220〜224頁(2003年))。
【0030】
組織分布もまた、LOXおよび各種LOXLの間では異なりうる。LOXは、心臓、胎盤、精巣、肺、腎臓、および子宮において高度に発現するが、脳および肝臓では限定的に発現するにすぎない。LOXL1は、胎盤、腎臓、筋肉、心臓、肺、および膵臓において発現するが、LOXと同様、脳および肝臓における発現ははるかに低度である(Kimら、J.Biol.Chem.、第270巻、7176〜7182頁(1995年))。LOX2は、子宮、胎盤、および他の臓器において高度に発現するが、LOXおよびLOXLと同様、脳および肝臓における発現は低度である(Jourdan−Le Sauxら、J.Biol.Chem.、第274巻、12939〜12944頁(1999年))。LOXL3が、精巣、脾臓、および前立腺において高度に発現し、胎盤においては中程度に発現し、肝臓においては発現しないのに対し、LOXL4は、肝臓において高度に発現する(Huangら、Matrix Biol.、第20巻、153〜157頁(2001年);MakiおよびKivirikko、Biochem J.、第355巻、381〜387頁(2001年);Jourdan Le−Sauxら、Genomics、第74巻、211〜218頁(2001年);Asuncionら、Matrix Biol.、第20巻、487〜491頁(2001年))。
疾患におけるLOXおよび異なるLOXLタンパク質の発現または関与もまた異なりうる。これは、タンパク質間における組織分布、プロセッシング、ドメイン、活性の調節の違いの他、他の違いなど、多数の理由による場合がある。例えば、LOXおよびLOXLは、両者共に線維性領域周囲の筋線維芽細胞において高度に発現するので、線維性疾患に関与する(Kagen、Pathol.Res.Pract.、第190巻、910〜919頁(1994年);Murawakiら、Hepatology、第14巻、1167〜1173頁(1991年);Siegelら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第75巻、2945〜2949頁(1978年);Jourdan Le−Sauxら、Biochem.Biophys.Res.Comm.、第199巻、587〜592頁(1994年);Kimら、J.Cell Biochem.、第72巻、181〜188頁(1999年))。LOXおよび各種のLOXLはまた、多数の癌にも関与する。例えば、LOXLおよびLOXL4は、エピジェネティックにサイレンシングされることが示されており、ヒト膀胱癌において、ras/細胞外シグナル調節キナーゼによるシグナル伝達経路を阻害しうる(Wuら、Cancer Res.、第67巻、4123〜4129頁(2007年))。他の研究者は、頭頚部扁平上皮細胞癌におけるLOXL4遺伝子の選択的な上方調節および増幅を示している(Goroughら、J.Pathol.、第212巻、74〜82頁(2007年))。LOXおよびLOXL2はまた、結腸癌および食道癌など、多数の腫瘍にも関与している(Csiszar、Prog.Nucl.Acid Res.、第70巻、1〜32頁(2001年))。乳癌では、LOXおよびLOXLのファミリー・メンバーが癌に連関している(Kirschmannら、Cancer Res.、第62巻、448〜4483頁(2002年))。
【0031】
III.上皮間葉移行
上皮間葉移行(EMT)とは、上皮細胞の遺伝子発現/表現型特性(すなわち、特定のタンパク質、因子、および分子を発現する)を有する細胞が、遺伝子またはその発現レベルを変化させ(changeまたはalter)、その結果、発現される遺伝子の変化(alterationまたはchange)により示される細胞の表現型の変化がもたらされる過程を指す。
上皮細胞および間葉細胞は、異なる系列を代表し、各々が、各細胞型に特異的な属性を付与する、固有の遺伝子発現プロファイルを有する。上皮細胞の間葉細胞への転換には、形態、細胞の構造、接着、および/または移動能の変化が必要とされる。進行性腫瘍細胞は、上皮マーカーの顕著な下方調節および細胞内結節の喪失を示す結果、上皮極性の喪失および細胞間接着の低下をもたらすことが多い。上皮特徴の喪失は、細胞運動性の増大および間葉遺伝子の発現を伴うことが多い。EMTは、接触阻害の喪失、増殖制御の変化、および/または侵襲性の増強を含みうる(ChristiansenおよびRajasekaran、Cancer Res.、第66巻、第17号、8319〜8326頁(2006年);ならびにThieryら、Curr.Opin.Cell.Biol.、第15巻、740〜6頁(2003年))。EMTを示す分子的および形態的な特徴は、低度の組織学的分化、組織完全性の破壊、および転移と相関する。EMTは、上皮細胞が、細胞間結合によりそれらに対して賦与される物理的な制約を打破し、運動性の表現型を帯びる機構をもたらす(Burdsalら、Development、第118巻、829〜44頁(1993年);およびNietoら、Mech.Dev.、第105巻、27〜35頁(2001年))。
【0032】
EMTに対して一般的に用いられる分子マーカーは、N−カドヘリンおよびビメンチンの発現上昇、β−カテニンの核内局在化、およびE−カドヘリン生成を阻害するSnail1(Snail)、Snai12(Slug)、Twist、EF1/ZEB1、SIP1/ZEB2、および/またはE47などの転写因子の生成増大を含む。EMTに対する表現型マーカーは、遊走能および三次元的な浸潤能の増大の他、アポトーシスに対する耐性を含むがこれらに限定されない。これらのマーカーは、EMTの誘導および癌性表現型との関連とさらに相関している。
腫瘍の進行時におけるEMTの発生は、腫瘍細胞が周囲の組織に浸潤し、最終的には遠隔の部位に転移する能力を獲得することを可能とする。腫瘍細胞内における遺伝子発現の変化は、上皮または上皮様の遺伝子発現パターンから間葉または間葉様の遺伝子発現パターンへの進行を示しうる。例として述べると、E−カドヘリンの喪失の同定は、転移性悪性上皮腫瘍の他、EGFR阻害剤およびIGF−R1阻害剤などの癌治療に対する耐性とも相関する。多くの異なる種類の癌の解析により、循環する腫瘍細胞、または微小転移として見出される腫瘍細胞が、一連のマーカーにおける発現の変化に基づき、間葉への転換を裏付けていることが明らかになっている。これらのマーカーは、EGFR、E−カドヘリン、ErbB3、RAB25、インテグリン・ベータ6、カドヘリン−2、線維芽細胞増殖因子結合タンパク質1、遠位欠失ホメオ・ボックス1、ZEB1(転写因子8)、SIP1、およびビメンチンを含むがこれらに限定されない。
例として述べると、上皮様の遺伝子発現プロファイルは、E−カドヘリン、ErbB3、またはEGFRなどの遺伝子の発現または発現上昇を含む。上皮様の遺伝子発現プロファイルは、これらの遺伝子の1つまたは複数、これらの遺伝子の少なくとも2つ、または少なくとも3つの発現を含みうる。
【0033】
前出で説明された治療耐性癌と同様、E−カドヘリン、ErbB3、RAB25、インテグリン・ベータ6、カドヘリン−2、線維芽細胞増殖因子結合タンパク質1、遠位欠失ホメオ・ボックス1、ZEB1(転写因子8)、SIP1、TGF−β、FOXC2、GSK−3β、Smad−3、Pez、Snail1、Snai12、およびILK、ならびにビメンチンの発現レベルは、EMTの特性に共通する遺伝子の他、それら各々の治療に対する耐性を発現する、上皮に基づく腫瘍細胞/癌と共通する遺伝子も代表する。本発明はまた、一般に、癌および特に、EMTを経た癌を有する患者を治療する方法にも関する。本発明者らは、EMTを経たか、または上皮様の遺伝子発現パターンから間葉様の遺伝子発現パターンへと切り替わった癌が、LOX/LOXL阻害剤に応答することを発見した。
腫瘍細胞の上皮または間葉のバイオマーカー発現を評価する場合、腫瘍細胞、またはこれらの腫瘍細胞により生成されるタンパク質もしくは核酸を含有する患者試料を、例えば、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第20070065858号において説明される方法で用いることができる。略述すると、腫瘍細胞試料、例えば、患者から得られる腫瘍生検、または腫瘍に由来する物質を含有する他の患者試料(例えば、血液、血清、尿、または本明細書の上記で説明した他の体液もしくは分泌物)中におけるマーカーの量(例えば、絶対量または濃度)を評価することにより、バイオマーカーの発現レベルを評価することができる。当然ながら、試料中におけるマーカー量を評価する前に、細胞試料を、各種のよく知られた採取後の調製法および保管法(例えば、核酸および/またはタンパク質の抽出、固定、保管、凍結、限外濾過、濃縮、蒸留、遠心分離など)にかけることができる。同様に、腫瘍生検もまた、採取後の調製法および保管法、例えば、固定にかけることができる。
それを発現する腫瘍細胞の表面上に提示される少なくとも1種のタンパク質を有するバイオマーカー・タンパク質の発現を検出することができる。マーカー・タンパク質またはその一部が細胞表面上に露出されているかどうかを判定するのは、当業者にとって簡単なことである。例えば、免疫学的方法を用いて、全細胞上におけるこのようなタンパク質を検出することもでき、よく知られたコンピュータ・ベースの配列解析法を用いて、少なくとも1つの細胞外ドメイン(すなわち、分泌タンパク質および少なくとも1つの細胞表面ドメインを有するタンパク質を含む)の存在を予測することもできる。それを発現する細胞の表面上に提示される少なくとも1つの部分を有するマーカー・タンパク質の発現は、必ずしも腫瘍細胞を溶解させることなく検出することができる(例えば、タンパク質の細胞表面ドメインと特異的に結合する標識抗体を用いる)。
【0034】
バイオマーカーの発現は、転写された核酸またはタンパク質の発現を検出する、多種多様な既知の方法のいずれかにより評価することができる。このような方法の非限定的な例は、例えば、分泌タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞質タンパク質、または核タンパク質の検出のための免疫学的方法、タンパク質精製法、タンパク質の機能アッセイまたは活性アッセイ、核酸ハイブリダイゼーション法、核酸逆転写法、および核酸増幅法を含む。
バイオマーカーの発現は、抗体(例えば、放射性標識抗体、発色団標識抗体、フルオロフォア標識抗体、または酵素標識抗体)、抗体誘導体(例えば、基質またはタンパク質−リガンド対(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン)のタンパク質もしくはリガンドとコンジュゲートさせた抗体)、または腫瘍細胞においてはそれを受けることが通常である翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化、メチル化など)の全部もしくは一部を受けたバイオマーカー・タンパク質を含む、バイオマーカー・タンパク質もしくはそのフラグメントと特異的に結合する抗体フラグメント(例えば、一本鎖抗体、単離抗体超可変ドメインなど)を用いて評価することができる。
バイオマーカーの発現はまた、患者試料中における細胞に由来するmRNA/cDNA(すなわち、転写されたポリヌクレオチド)を調製し、該mRNA/cDNAを、バイオマーカー核酸の相補体またはそのフラグメントである基準ポリヌクレオチドとハイブリダイズさせることによっても評価することができる。cDNAは、場合によって、基準ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの前に、各種のポリメラーゼ連鎖反応法のいずれかを用いて増幅することもできる。1種または複数種のバイオマーカーの発現はまた、定量的PCRを用いて、(1種または複数種の)バイオマーカーの発現レベルを評価することで検出することもできる。あるいは、バイオマーカーの変異または変異体(例えば、一塩基多型、欠失など)を検出する多くの既知の方法のいずれかを用いて、患者におけるバイオマーカーの発現を検出することができる。
【0035】
試料から得られる転写されたポリヌクレオチドの混合物は、バイオマーカー核酸の少なくとも一部(例えば、少なくとも7、10、15、20、25、30、40、50、100、500、またはそれ以上のヌクレオチド残基)に対して相補的であるかまたはこれと相同的なポリヌクレオチドをそこへ固定させた基質と接触させることができる。相補的であるかまたは相同的なポリヌクレオチドが基質上において異なる形で検出される(例えば、異なる発色団もしくはフルオロフォアを用いて検出できるか、または選択された異なる位置に固定される)場合、単一の基質(例えば、選択された位置に固定されるポリヌクレオチドの「遺伝子チップ」マイクロアレイ)を用いて、複数種のバイオマーカーの発現レベルを同時的に評価することができる。1つの核酸の別の核酸とのハイブリダイゼーションを伴う、バイオマーカー発現を評価する方法を用いる場合、ハイブリダイゼーションは、厳密なハイブリダイゼーション条件下で実施することができる。
本発明の方法において本発明の複数種のバイオマーカーを用いる場合、単一の反応混合物(すなわち、各バイオマーカーに対して、異なる蛍光プローブなどの試薬を用いる)または1種もしくは複数種のバイオマーカーに対応する個別の反応混合物において、患者試料中における各バイオマーカーの発現レベルを、同じ種類の非癌性試料中における複数種のバイオマーカー各々の正常な発現レベルと比較することができる。
正常な(すなわち、非癌性の)ヒト組織内におけるバイオマーカーの発現レベルは、各種の方法で評価することができる。この正常な発現レベルは、非癌性であると考えられる細胞部分におけるバイオマーカーの発現レベルを評価し、次いで、該正常な発現レベルを腫瘍細胞部分における発現レベルと比較することにより評価することができる。本明細書に記載の方法の日常的な実施の結果として得られるさらなる情報として、バイオマーカーの正常な発現の集団平均値を用いることができる。あるいは、バイオマーカーの正常な発現レベルは、癌に罹患しない患者から採取した患者試料中におけるバイオマーカーの発現、患者における癌の推定される発症以前に該患者から採取した患者試料に由来するバイオマーカーの発現、保管された患者試料に由来するバイオマーカーの発現等を評価することにより決定することができる。
【0036】
生物学的試料中におけるバイオマーカー・タンパク質または核酸の存在または不在を検出する例示的な方法は、被験対象から生物学的試料(例えば、腫瘍に関連する体液)を採取するステップと、該生物学的試料を、ポリペプチドまたは核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA、またはcDNA)を検出可能な化合物または作用物質と接触させるステップとを含む。こうして、検出法を用いて、例えば、in vitroにおける生物学的試料の他、in vivoにおいても、mRNA、タンパク質、cDNA、またはゲノムDNAを検出することができる。mRNAの検出のためのin vitroにおける技法は、例えば、ノーザン・ハイブリダイゼーションおよびin situハイブリダイゼーションを含む。バイオマーカー・タンパク質の検出のためのin vitroにおける技法は、酵素免疫測定法(ELISA)、ウェスタン・ブロット、免疫沈降法、および免疫蛍光法を含むがこれらに限定されない。ゲノムDNAの検出のためのin vitroにおける技法は、例えば、サザン・ハイブリダイゼーションを含む。mRNAの検出のためのin vivoにおける技法は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ノーザン・ハイブリダイゼーション、およびin situハイブリダイゼーションを含む。さらに、バイオマーカー・タンパク質の検出のためのin vivoにおける技法は、該タンパク質またはそのフラグメントに対する標識抗体を対象内に導入するステップを含む。例えば、対象内におけるその存在および位置が標準的な造影法により検出されうる、放射性マーカーにより抗体を標識することができる。
【0037】
このような診断アッセイおよび予後診断アッセイの一般原理は、適切な条件下において、バイオマーカーとプローブとが相互作用および結合するのに十分な時間にわたり、バイオマーカーおよびプローブを含有しうる試料または反応混合物を調製するステップと、これにより、反応混合物中における取り出しおよび/または検出が可能な複合体を形成するステップとを含む。これらのアッセイは、各種の方法で実施することができる。
例えば、このようなアッセイを実施する1つの方法は、基質とも称する固相支持体上にバイオマーカーまたはプローブを固定するステップと、反応終了時において固相上に固定された標的バイオマーカー/プローブ複合体を検出するステップとを含む。このような方法の一実施形態では、バイオマーカーの存在および/または濃度についてアッセイされる対象に由来する試料を、担体または固相支持体上に固定することができる。別の実施形態では、逆の状況も可能であり、この場合、プローブを固相に固定し、対象に由来する試料をアッセイの非固定成分として反応させることもできる。
固相にアッセイ成分を固定するための複数の確立された方法が存在する。これらは、限定なしに述べると、ビオチンおよびストレプトアビジンのコンジュゲーションにより固定化されるバイオマーカー分子またはプローブ分子を含む。このようなビオチン化されたアッセイ成分は、当技術分野で知られる技法(例えば、イリノイ州、ロックフォード、Pierce Chemicals社製、ビオチン化キット)を用いてビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製し、ストレプトアビジンでコートした96ウェルプレート(Pierce Chemicals社製)のウェル内に固定化することができる。特定の実施形態において、固定化されたアッセイ成分を有する表面は、あらかじめ調製し保管することができる。このようなアッセイに適する他の担体または固相支持体は、バイオマーカーまたはプローブが帰属する分子クラスに結合可能な任意の材料を含む。よく知られた支持体または担体は、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然セルロースおよび改変セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩、マグネタイトを含むがこれらに限定されない。上述の手法によりアッセイを実施するために、第2の成分が固定される固相に非固定の成分を付加する。反応完了後、形成される任意の複合体が固相上に固定化されて残るような条件下において、複合しなかった成分を除去する(例えば、洗浄により)ことができる。固相に固定されたバイオマーカー/プローブ複合体の検出は、本明細書で概括される多数の方法において達成することができる。一実施形態において、プローブは、それが非固定のアッセイ成分である場合、本明細書で論じられ、当業者によく知られる検出可能な標識で直接的または間接的に、アッセイの検出および読み取りの目的で標識することができる。
【0038】
例えば、蛍光エネルギー移動(すなわち、FET、例えば、Lakowiczら、米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulosら、米国特許第4,868,103号を参照されたい)法を用いることにより、いずれの成分(バイオマーカーまたはプローブ)をさらに操作または標識することもなしに、バイオマーカー/プローブ複合体の形成を直接に検出することもまた可能である。第1のドナー分子上におけるフルオロフォア標識は、適切な波長の入射光により励起されると、その蛍光発光エネルギーが第2のアクセプター分子上における蛍光標識により吸収され、この標識が、吸収されたエネルギーにより蛍光発光できるように選択される。あるいは、ドナー・タンパク質分子は、単に、トリプトファン残基の天然蛍光エネルギーを用いることもできる。アクセプター分子標識がドナーの標識から差別化されうるように、異なる波長の光を発する標識を選択する。標識間におけるエネルギー移動の効率は、分子を隔てる距離に関連するので、分子間の空間的な関係を評価することができる。分子間で結合が生じる状況において、アッセイにおけるアクセプター分子標識の蛍光発光が最大となるものとする。FETでの結合事象は、当技術分野でよく知られる標準的な蛍光測定検出手段により(例えば、蛍光光度計を用いて)簡便に測定することができる。
別の実施形態において、実時間の生体分子間相互作用解析(BIA)(例えば、Sjolander,S.およびUrbaniczky,C.、1991年、Anal.Chem.、第63巻、2338〜2345頁;ならびにSzaboら、1995年、Curr.Opin.Struct.Biol.、第5巻、699〜705頁を参照されたい)などの技法を用いることにより、いずれのアッセイ成分(バイオマーカーまたはプローブ)を標識することもなしに、プローブがバイオマーカーを認識する能力の決定を達成することができる。本明細書で用いられる「BIA」または「表面プラズモン共鳴」とは、いずれの相互作用体も標識することなしに、実時間で生体特異的な相互作用を調べるための技法(例えば、BIAcore法)である。結合表面における質量の変化(結合事象を示す)の結果、表面近傍における光の屈折率の変化(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)が生じ、生体分子間における実時間反応の指標として用いうる検出可能なシグナルが結果としてもたらされる。
【0039】
あるいは、別の実施形態では、液相中における溶質としてのバイオマーカーおよびプローブにより、類似の診断アッセイおよび予後診断アッセイを実施することもできる。このようなアッセイでは、分画遠心法、クロマトグラフィー、電気泳動、および免疫沈降法を含むがこれらに限定されない多くの標準的な技法のいずれかにより、複合体化しない成分から複合体化したバイオマーカーおよびプローブを分離する。分画遠心法では、異なるサイズおよび密度に基づく、複合体の異なる沈降平衡による一連の遠心分離ステップを介して、複合しなかったアッセイ成分からバイオマーカー/プローブ複合体を分離することができる(例えば、Rivas,G.およびMinton,A.P.、1993年、Trends Biochem Sci.、第18巻、第8号、284〜7頁を参照されたい)。標準的なクロマトグラフィー法もまた、複合しなかった分子から複合分子を分離するのに用いることができる。例えば、ゲル濾過クロマトグラフィーでは、サイズに基づき、また、カラム・フォーマット内における適切なゲル濾過樹脂の使用により分子が分離され、例えば、比較的低分子の複合しなかった成分から比較的高分子の複合体を、分離することができる。同様に、複合しなかった成分と比較して比較的異なるバイオマーカー/プローブ複合体の電荷特性を利用して、例えば、イオン交換クロマトグラフィー樹脂の使用により、複合しなかった成分から複合体を差別化することができる。このような樹脂およびクロマトグラフィー法は、当業者によく知られている(例えば、Heegaard,N.H.、1998年冬季、J.Mol.Recognit、第11巻、第1−6号、141〜8頁;Hage,D.S.およびTweed,S.A.、J.Chromatogr B Biomed Sci Appl、1997年10月10日、第699巻、第1−2号、499〜525頁を参照されたい)。ゲル電気泳動もまた、結合しなかった成分から複合したアッセイ成分を分離するのに用いることができる(例えば、Ausubelら編、「Current Protocols in Molecular Biology」、ニューヨーク、John Wiley & Sons社、1987〜1999年を参照されたい)。この技法では、例えば、サイズまたは電荷に基づいて、タンパク質または核酸の複合体を分離する。電気泳動過程における結合相互作用を維持するためには、還元剤の不在下において、非変性ゲルマトリックス材料および条件を用いるのが典型的である。特定のアッセイおよびその成分に適する条件は、当業者によく知られているであろう。
【0040】
別の実施形態では、当技術分野で知られる方法を用いる生物学的試料中におけるin situフォーマットおよびin vitroフォーマットの両方により、バイオマーカーのmRNAレベルを決定することができる。「生物学的試料」という用語は、対象から単離される組織、細胞、体液、およびこれらの単離物の他、対象内に存在する組織、細胞、および体液を含むことが意図される。多くの発現検出法では、単離RNAを用いる。in vitroにおける方法の場合、mRNAの単離に対しては最適でない任意のRNA単離法を腫瘍細胞からのRNAの精製に用いることができる(例えば、Ausubelら編、「Current Protocols in Molecular Biology」、ニューヨーク、John Wiley & Sons社、1987〜1999年を参照されたい)。加えて、例えば、Chomczynski(1989年、米国特許第4,843,155号)の単一ステップによるRNA単離工程など、当業者によく知られる技法を用いて、多数種の組織試料を容易に処理することができる。
単離mRNAは、サザン解析またはノーザン解析、ポリメラーゼ連鎖反応解析、およびプローブ・アレイを含むがこれらに限定されないハイブリダイゼーション・アッセイまたは増殖アッセイで用いることができる。mRNAレベルの検出のための1つの診断法は、単離mRNAを、検出される遺伝子によりコードされる該mRNAにハイブリダイズしうる核酸(プローブ)と接触させるステップを含む。核酸プローブは、例えば、長さが少なくとも7、15、30、50、100、250、または500ヌクレオチドで、厳密な条件下において本発明のバイオマーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAに特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチドなど、全長cDNAまたはその一部でありうる。本明細書では、本発明の診断アッセイにおける使用に適する他のプローブが説明される。mRNAのプローブとのハイブリダイゼーションは、問題のバイオマーカーが発現しつつあることを示す。
【0041】
1つのフォーマットでは、例えば、単離mRNAをアガロース・ゲル上で移動させ、該mRNAをゲルからニトロセルロースなどの膜へと転写することによりmRNAを固体表面上に固定化し、プローブと接触させる。代替的なフォーマットでは、(1種または複数種の)プローブを固体表面上に固定化し、例えば、Affymetrix遺伝子チップ・アレイにおいて、mRNAを(1種または複数種の)プローブと接触させる。当業者は、本発明のバイオマーカーによりコードされるmRNAのレベルを検出するのに用いる、既知のmRNA検出法を容易に適用することができる。
試料中におけるmRNAバイオマーカーレベルを決定する代替的な方法は、例えば、RT−PCR(Mullis、1987年、米国特許第4,683,202号において記載される実験実施形態)、リガーゼ連鎖反応(Barany、1991年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第88巻、189〜193頁)、自家持続配列複製(Guatelliら、1990年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第87巻、1874〜1878頁)、転写増幅システム(Kwohら、1989年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第86巻、1173〜1177頁)、Q−ベータレプリカーゼ(Lizardiら、1988年、Bio/Technology、第6巻、1197頁)、ローリング・サークル複製(Lizardiら、米国特許第5,854,033号)、または他の任意の核酸増幅法による核酸増幅の工程を伴い、その後、当業者によく知られる技法を用いて、増幅された分子の検出を行う。これらの検出スキームは、このような分子が極めて少数で存在する場合の核酸分子の検出に特に有用である。本明細書で用いられる増幅プライマーは、遺伝子の5’側または3’側の領域にアニールしうる核酸分子の対(それぞれ、正方向鎖および負方向鎖、またはその逆)であるものとして定義され、中間に短い領域を含む。一般に、増幅プライマーは、約10〜30ヌクレオチド長であり、約50〜200ヌクレオチド長の領域を挟む。適切な条件下において、適切な試薬により、このようなプライマーは、該プライマーにより挟まれるヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅を可能とする。
in situにおける方法の場合、mRNAは、検出前に腫瘍細胞から単離する必要がない。このような方法では、既知の組織学的方法を用いて、細胞試料または組織試料を調製および/または処理する。次いで、該試料を支持体、典型的にはスライドガラス上に固定化し、次いで、バイオマーカーをコードするmRNAにハイブリダイズしうるプローブと接触させる。
【0042】
バイオマーカーの絶対発現レベルに基づき決定を行うことへの代替法として、バイオマーカーの標準化された発現レベルに基づく決定も可能である。その発現を、バイオマーカーではない遺伝子、例えば、構成的に発現されるハウス・キーピング遺伝子の発現と比較することでバイオマーカーの絶対発現レベルを補正することにより、発現レベルを標準化することができる。標準化に適する遺伝子は、アクチン遺伝子または上皮細胞に特異的な遺伝子などのハウス・キーピング遺伝子を含む。この標準化により、1つの試料、例えば、患者試料中における発現レベルを別の試料、例えば、非腫瘍試料と比較するか、または異なる供給源に由来する試料間における発現レベルを比較することが可能となる。
あるいは、発現レベルは、相対発現レベルとしても提供することができる。バイオマーカー(例えば、間葉バイオマーカー)の相対発現レベルを決定するには、問題の試料に対する発現レベルの決定前に、10種以上、20種以上、30種以上、40種以上、または50種以上の癌細胞単離物試料に対する同正常細胞単離物試料について、バイオマーカーの発現レベルを決定する。より多数種の試料においてアッセイされる各遺伝子の平均発現レベルを決定し、これをバイオマーカーのベースラインの発現レベルとして用いる。次いで、被験試料について決定されたバイオマーカーの発現レベル(発現の絶対レベル)を、そのバイオマーカーについて得られた平均発現値により除する。これにより、相対発現レベルが得られる。
本発明の別の実施形態では、バイオマーカー・タンパク質を検出する。本発明のバイオマーカー・タンパク質を検出するための試薬の1つの種類は、例えば、検出可能な標識抗体など、このようなタンパク質またはそのフラグメントに結合可能な抗体である。抗体は、ポリクローナル抗体の場合もあり、モノクローナル抗体の場合もある。完全抗体を用いることもでき、その抗原結合フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、一本鎖結合ポリペプチド)を用いることもできる。プローブまたは抗体に関する「標識された」という用語は、プローブまたは抗体に対して検出可能な物質を結合させる(すなわち物理的に連結する)ことによるプローブまたは抗体の直接的な標識化の他、直接に標識された別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的な標識化も包含することを意図する。間接的な標識化の例は、蛍光標識された二次抗体を用いる一次抗体の検出、およびビオチンによりDNAプローブを末端標識化することで、蛍光標識されたストレプトアビジンによりそれを検出できるようにすることを含む。
腫瘍細胞に由来するタンパク質は、当業者によく知られる技法を用いて単離することができる。用いられるタンパク質単離法は、例えば、HarlowおよびLane(HarlowおよびLane、1988年、「Antibodies:A Laboratory Manual」、ニューヨーク州、コールド・スプリング・ハーバー、Cold Spring Harbor Laboratory Press社)において説明される方法などでありうる。
【0043】
各種のフォーマットを用いて、試料が所与の抗体に結合するタンパク質を含有するかどうかを決定することができる。このようなフォーマットの例は、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウェスタン・ブロット解析、および酵素免疫測定法(ELISA)を含むがこれらに限定されない。当業者は、腫瘍細胞が本発明のバイオマーカーを発現するかどうかを判定するのに用いる既知のタンパク質/抗体検出法を容易に適用することができる。
1つのフォーマットでは、抗体、抗体フラグメント、または抗体誘導体を、ウェスタン・ブロット法または免疫蛍光法などの方法において用いて、発現タンパク質を検出することができる。このような使用では、抗体またはタンパク質を、固体支持体上に固定化することができる。適切な固相支持体または担体は、抗原または抗体に結合可能な任意の支持体を含む。よく知られた支持体または担体は、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然セルロースおよび改変セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩、マグネタイトを含む。当業者は、抗体または抗原に結合する他の多くの適切な担体を知り、本発明による使用にこのような支持体を適用することができるであろう。例えば、腫瘍細胞から単離されたタンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動で泳動し、ニトロセルロースなどの固相支持体上に固定化することができる。次いで、該支持体を適切な緩衝液により洗浄した後、検出可能な標識抗体により処理することができる。次いで、緩衝液により固相支持体を再び洗浄し、結合しなかった抗体を除去する。次いで、従来の手段により、固体支持体上における結合した標識の量を検出することができる。
ELISAアッセイの場合、特異的な結合対は、免疫型である場合もあり、非免疫型である場合もある。免疫特異的結合対は、抗原−抗体系またはハプテン/抗ハプテン系により例示される。フルオレセイン/抗フルオレセイン系、ジニトロフェニル/抗ジニトロフェニル系、ビオチン/抗ビオチン系、ペプチド/抗ペプチド系などを挙げることができる。特異的な結合対の抗体メンバーは、当業者に知られる慣例的な方法により作製することができる。このような方法は、特異的な結合対の抗原メンバーにより動物を免疫感作するステップを含む。特異的な結合対の抗原メンバーが免疫原性でない、例えば、ハプテンである場合、それを担体タンパク質に共有結合させて、それを免疫原性とすることができる。非免疫結合対は、2つの成分が互いに対する天然の親和性を有するが抗体ではない系を含む。例示的な非免疫対は、ビオチン−ストレプトアビジン、内因性因子−ビタミンB12、葉酸−葉酸結合タンパク質などである。
【0044】
特異的な結合対メンバーで抗体を共有結合により標識する各種の方法が用いられる。特異的な結合対メンバーの性質、所望の結合の種類、および各種のコンジュゲーション化学反応に対する抗体の耐性に基づき、方法を選択することができる。市販の活性誘導体を用いることにより、抗体にビオチンを共有結合させることができる。これらの一部は、タンパク質上におけるアミン基に結合するビオチン−N−ヒドロキシ−スクシンイミド;カルボジイミド結合を介して炭水化物部分、アルデヒド、およびカルボキシル基に結合するビオチンヒドラジド;ならびにスルフヒドリル基に結合するビオチンマレイミドおよびヨードアセチルビオチンである。フルオレセインは、イソチオシアン酸フルオレセインを用いて、タンパク質のアミン基に結合させることができる。ジニトロフェニル基は、2,4−ジニトロベンゼンスルフェートまたは2,4−ジニトロフルオロベンゼンを用いてタンパク質アミン基に結合させることができる。他の標準的なコンジュゲーション法を用いて、ジアルデヒド、カルボジイミド結合、ホモ官能性架橋形成、およびヘテロ二官能性架橋形成を含む特異的な結合対メンバーにモノクローナル抗体を結合させることができる。カルボジイミド結合は、1つの物質上におけるカルボキシル基を、別の物質上におけるアミン基に結合させる有効な方法である。市販の試薬である1−エチル−3−(ジメチル−アミノプロピル)−カルボジイミド(EDAC)を用いることにより、カルボジイミド結合を促進することができる。
二官能性イミドエステルおよび二官能性N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを含むホモ二官能性架橋形成剤が市販されており、1つの物質上におけるアミン基を別の物質上におけるアミン基に結合させるのに用いられる。ヘテロ二官能性架橋形成剤は、異なる官能基を保有する試薬である。最も一般的な市販のヘテロ二官能性架橋形成剤は、1つの官能基としてアミン反応性のN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを有し、第2の官能基としてスルフヒドリル反応基を有する。最も一般的なスルフヒドリル反応基は、マレイミド、ピリジルジスルフィド、および活性ハロゲンである。官能基の1つは、照射すると各種の基と反応する、光反応性アリールニトレンでありうる。
検出可能な標識抗体または特異的な結合対の検出可能な標識メンバーは、放射性同位体、酵素、蛍光原性物質、化学発光物質、または電気化学物質でありうるレポーターに結合させることにより調製する。2つの一般的に用いられる放射性同位体は、125Iおよび3Hである。標準的な放射性同位体による標識化手順は、125Iの場合がクロラミンT法、ラクトペルオキシダーゼ法、およびボルトン−ハンター法を含み、3Hの場合が還元的メチル化を含む。「検出可能な形で標識された」という用語は、標識の内因的な酵素活性によるか、またはそれ自体が容易に検出されうる別の成分の標識に結合することによって容易に検出されうる形で標識された分子を指す。
【0045】
本発明での使用に適する酵素は、西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ、アルカリ・ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコース・オキシダーゼ、ホタルおよびウミシイタケを含むルシフェラーゼ、β−ラクタマーゼ、ウレアーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、およびリゾチームを含むがこれらに限定されない。酵素標識化は、抗体を特異的な結合対メンバーと結合させるための、上記で説明されたジアルデヒド、カルボジイミド結合、ホモ二官能性架橋形成剤、およびヘテロ二官能性架橋形成剤を用いることにより促進される。
選択される標識化法は、標識される酵素および材料上において結合可能な官能基、ならびにコンジュゲーション条件に対する両者の耐性に依存する。本発明で用いられる標識化法は、EngvallおよびPearlmann、Immunochemistry、第8巻、871頁(1971年);AvrameasおよびTemynck、Immunochemistry、第8巻、1175頁(1975年);Ishikawaら、J.Immunoassay、第4巻、第3号、209〜327頁(1983年)ならびにJablonski、Anal.Biochent、第148巻、199頁(1985年)により説明される方法を含む、現在用いられる任意の従来の方法の1つでありうるがこれに限定されない。
標識化は、スペーサーまたは他の特異的な結合対メンバーを用いるなどの間接的な方法により達成することができる。この例は、ストレプトアビジンおよびビオチン化酵素を逐次または同時に添加する、非標識ストレプトアビジンおよびビオチン化酵素によるビオチン化抗体の検出である。こうして、本発明により、レポーターにより直接的に、または第1の特異的な結合対メンバーにより間接的に、検出に用いられる抗体を検出可能な形で標識することができる。抗体が第1の特異的な結合対メンバーに結合される場合、抗体−第1の特異的な結合メンバー複合体を、上述の通りに標識または非標識の第2の結合対メンバーと反応させることにより検出を実施する。
さらに、非標識検出抗体は、該非標識抗体を、該非標識抗体に対して特異的な標識抗体と反応させることにより検出することができる。この場合、上記で用いられる「検出可能な形で標識された」とは、それにより非標識抗体に対して特異的な抗体が結合しうるエピトープを含有することを意味すると理解される。このような抗体は、上記で論じられた手法のいずれかを用いて直接的または間接的に標識することができる。例えば、抗体は、上記で論じられたストレプトアビジン−西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ系と反応させることにより検出されるビオチンに結合させることができる。こうして、一実施形態では、ビオチンが用いられる。ビオチン化抗体は、次に、ストレプトアビジン−西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ複合体と反応させる。発色検出には、オルトフェニレンジアミン、4−クロロ−ナフトール、テトラメチルベンジジン(TMB)、ABTS、BTS、またはASAを用いることができる。
本発明を実施するための1つのイムノアッセイ・フォーマットでは、従来の技法を用いて捕捉試薬が支持体表面上に固定された、順方向サンドイッチ・アッセイが用いられる。アッセイにおいて用いられる適切な支持体は、ポリプロピレン、ポリスチレン、置換ポリスチレン、例えば、アミン化もしくはカルボキシル化されたポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリビニルクロリドなどの合成ポリマー支持体、ガラスビーズ、アガロース、またはニトロセルロースを含む。
【0046】
IV.抗LOX抗体および抗LOXL2抗体
本明細書では、血管新生および関連疾患、線維症および関連疾患、腫瘍または転移を診断するのに用いうる抗体が提供される。本明細書では、血管新生および関連疾患を阻害する抗体、線維症および関連疾患を阻害する抗体、腫瘍または転移を治療する抗体が提供される。本明細書では、本出願全体で説明され、当技術分野で知られる治療レジメンおよび治療プロトコールなどの有効性をモニターするのに用いうる抗体が提供される。このような方法において有用な抗体および抗原結合フラグメントは、例えば、LOXまたはLOXL2に特異的に結合する抗体および抗原結合フラグメントである。
開示はまた、抗体またはその機能的フラグメントを生成する細胞株、該細胞株を作製する方法、および抗体またはその機能的フラグメントを作製する方法も説明する。
本明細書において、各種の文法形における「抗体」または「抗体分子」という用語は、免疫グロブリン分子および/または免疫グロブリン分子の免疫学的な活性部分、すなわち、抗体結合部位またはパラトープを含有する分子の集団を指す集合名詞として用いられる。こうして、「抗体」への言及はまた、抗体の任意の抗原結合フラグメントへの言及も含む。
本明細書で用いられる「免疫反応性の」とは、アミノ酸残基の配列(「結合部位」または「エピトープ」)に特異的な抗体またはそれらのフラグメントを指すが、他のペプチド/タンパク質に対して交差反応性であっても、それらがヒトへの使用のために調合されるレベルでは毒性でない。「エピトープ」とは、抗体またはその抗原結合フラグメントと結合相互作用を形成することが可能な抗原部分を指す。このような結合相互作用は、CDRの1つまたは複数のアミノ酸残基との分子間接触として発現されうる。抗原結合は、CDR3またはCDR3の対を伴いうる。エピトープは、線状のペプチド配列(すなわち、「連続的」)である場合もあり、非隣接的なアミノ酸配列(すなわち、「立体構造的」または「不連続的」)からなる場合もある。「優先的に結合する」という用語は、結合作用物質が、無関係のアミノ酸配列に結合するよりも大きな親和性で結合部位に結合することを意味する。
本明細書で用いられる「親和性」という用語は、2つの作用物質の可逆的結合の平衡定数を指し、解離定数(Kd)として表される。親和性は、無関係のアミノ酸配列に対する抗体の親和性の少なくとも1倍以上、少なくとも2倍以上、少なくとも3倍以上、少なくとも4倍以上、少なくとも5倍以上、少なくとも6倍以上、少なくとも7倍以上、少なくとも8倍以上、少なくとも9倍以上、少なくとも10倍以上、少なくとも20倍以上、少なくとも30倍以上、少なくとも40倍以上、少なくとも50倍以上、少なくとも60倍以上、少なくとも70倍以上、少なくとも80倍以上、少なくとも90倍以上、少なくとも100倍以上、または少なくとも1000倍以上でありうる。標的タンパク質に対する抗体の親和性は、例えば、約100ナノモル(nM)〜約0.1nM、約100nM〜約1ピコモル(pM)、または約100nM〜約1フェムトモル(fM)以上でありうる。本明細書で用いられる「結合力」という用語は、希釈後における2種以上の作用物質複合体の解離に対する耐性を指す。本明細書において、「免疫反応性の」および「優先的に結合する」という用語は、抗体および/または抗原結合フラグメントについて互換的に用いられる。
【0047】
「抗体」という用語はまた、必要とされる特異性により特定の抗原またはアミノ酸配列に結合する能力を有する限りにおいて、天然分子の一部だけを含むように分子生物学的技法の使用により操作された分子も含む。このような代替的な抗体分子は、抗体分子の従来から知られた部分、一本鎖抗体、および一本鎖結合分子を含む。
「抗体結合部位」とは、抗原に特異的に結合する重鎖および軽鎖の可変領域および超可変領域を含む抗体分子の構造部分である。
本明細書で用いられる「CDR」または「相補性決定領域」という用語は、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチド両方の可変領域内において見出される非隣接的な抗原結合部位を意味することを意図する。これらの具体的な領域は、そこでの定義が、互いと比較した場合のアミノ酸残基の重複またはサブセットを含む、Kabatら、J.Biol.Chem.、第252巻、6609〜6616頁(1977年);Kabatら、米国保健福祉省、「Sequences of proteins of immunological interest」(1991年);Chothiaら、J.Mol.Biol.、第196巻、901〜917頁(1987年);ならびにMacCallumら、J.Mol.Biol.、第262巻、732〜745頁(1996年)により説明されている。しかしながら、抗体もしくは移植抗体またはこれらの変異体のCDRを指すいずれの定義の適用も、本明細書で定義され用いられる用語の範囲内にあることを意図する。比較として、上記で引用された参考文献の各々により定義されるCDRを包含するアミノ酸残基を下記の表1に示す。
【0048】
【表1】
抗体可変領域に関して本明細書で用いられる「フレームワーク」という用語は、抗体の可変領域内にあるCDR領域外のすべてのアミノ酸残基を意味することを意図する。可変領域のフレームワークは、一般に、約100〜120アミノ酸長の不連続的なアミノ酸配列であるが、CDR以外のアミノ酸だけを指すことを意図する。本明細書で用いられる「フレームワーク領域」という用語は、CDRにより分離されるフレームワークの各ドメインを意味することを意図する。
「LOX活性の阻害剤」または「LOXL2活性の阻害剤」は、遺伝子発現、翻訳後修飾、酵素的プロセッシングもしくは切断、LOX/LOXL2の調節物質に対する結合、LOX/LOXL2の酵素活性、または本明細書に記載の他の任意の活性を含むがこれらに限定されない、リシル・オキシダーゼ活性を直接的または間接的に阻害する、抗体またはその抗原結合フラグメントでありうる。
【0049】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、抗原エピトープに特異的に結合するのに必要な可変領域配列を含む、単離または組換えの結合作用物質を指す。したがって、抗体は、所望の生物学的活性、例えば、特異的な標的抗原への結合を示す抗体またはそのフラグメントの任意の形態である。こうして、該用語は、それらが所望の生物学的活性を示す限りにおいて最も広い意味で用いられ、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および一本鎖結合ポリペプチド、VH、VL、Fv、scFv、Fab、およびFab2などを含むがこれらに限定されない抗体フラグメントを具体的に包含する。したがって、「ヒト抗体」という用語は、可能な非ヒトCDR領域を除き、ヒト起源の配列を含有する抗体を指し、Ig分子の全構造が存在することは含意せず、該抗体がヒトにおける最小限の免疫原性を有することだけを含意する。
「結合」という用語は、例えば、共有結合的相互作用、静電的相互作用、疎水的相互作用、ならびに塩架橋および水架橋などの相互作用を含むイオン的相互作用および/または水素結合的相互作用による2分子間の直接的な結合を指す。「特異的結合」という用語は、抗体またはその抗原結合フラグメントが、そのエピトープ以外の分子に対して著明な結合を示さない状況に適用される。一実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、約4℃、25℃、37℃、または42℃の温度で測定される、約100nM以下、約10nM未満、約1nM未満、約0.5nM未満、約0.1nM未満、約0.01nM未満、約0.005nM未満の解離定数Kdにより、ヒトLOXまたはヒトLOXL2に特異的に結合する。
抗体の調製には、従来の方法を用いることができる。例えば、ペプチドまたは全長リシル・オキシダーゼ・タンパク質を用いることにより、標準的な方法を用いてポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を作製することができる。哺乳類において抗体応答を引き起こすペプチドの免疫原性形態により、哺乳類(例えば、マウス、ハムスター、またはウサギ)を免疫感作することができる。ペプチドに対する免疫原性の増強を付与する技法は、担体へのコンジュゲーションまたは当技術分野でよく知られる他の技法を含む。例えば、タンパク質またはペプチドは、アジュバントの存在下で投与することができる。免疫感作の進行は、血漿または血清中における抗体力価の検出によりモニタリングすることができる。抗原としての免疫原と共に標準的なELISAまたは他のイムノアッセイ手順を用いて、抗体レベルを評価することができる。免疫感作後には、抗血清を得ることができ、所望の場合、該血清からポリクローナル抗体を単離することができる。
【0050】
抗体は、細胞培養物、ファージ、またはウシ、ウサギ、ヤギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ヒツジ、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、類人猿を含むがこれらに限定されない各種動物において作製することができる。したがって、本方法において有用な抗体は、哺乳類抗体であることが典型的である。ファージ法を用いて、初期抗体を単離するか、または特異性もしくは結合力特性が改変された変異体を作製することができる。このような技法は日常的であり、当技術分野でよく知られている。一実施形態において、抗体は、当技術分野で知られる組換え法により作製される。例えば、組換え抗体は、宿主細胞に、該抗体をコードするDNA配列を含むベクターをトランスフェクトすることにより作製することができる。1種または複数種のベクターを用いて、宿主細胞内において少なくとも1つのVL領域および1つのVH領域を発現するDNA配列をトランスフェクトすることができる。組換えによる抗体の生成法および作製法についての例示的な説明は、Delves、「Antibody Production:Essential Techniques」(Wiley社、1997年);Shephardら、「Monoclonal Antibodies」(Oxford University Press社、2000年);およびGoding、「Monoclonal Antibodies:Principles and Practice」(Academic Press社、1993年)を含む。
抗体はまた、Kenneyら(「Production of monoclonal antibodies using a secretion capture report web」、Biotechnology、第13巻、787〜790頁、1995年)に記載のプロトコールに従っても作製することができる。略述すると、アジュバント製剤中における抗原をマウスに皮下(s.c.)注射する。ペプチド抗原の場合、免疫感作前に、ペプチドをウシ血清アルブミンにコンジュゲートさせ、フロイントのアジュバント(FA)中で調合する。タンパク質抗原の場合、該タンパク質をアルヒドロゲル−ムラミル・ジペプチド(ALD/MDP)アジュバント中で調合する。マウスの脾臓およびリンパ節に由来する細胞を単離し、適切な細胞と融合させ、培養する。HAT選択細胞のハイブリドーマライブラリーを単離し、クローニングする。細胞を分類し、抗体の存在について血清および上清をスクリーニングする。
「抗体フラグメント」は、完全抗体の部分を含み、完全抗体の抗原結合領域または可変領域を含みうる。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、scFvフラグメント、ダイアボディ、線状抗体(Zapataら、Protein Eng.、第8巻、第10号、1057〜1062頁(1995年))、一本鎖抗体分子、一本鎖結合ポリペプチド、および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体を含む。抗体のパパイン消化では、各々が単一の抗原結合部位を有する、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一な抗原結合フラグメントと、呼称により容易に結晶化する能力が表される、残りの「Fc」フラグメントとがもたらされる。ペプシン処理では、2つの抗原結合部位を有し、抗原の架橋がさらに可能であるF(ab’)2フラグメントがもたらされる。
【0051】
「一本鎖結合ポリペプチド」とは、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、および、場合によって免疫グロブリンFc領域を有するポリペプチドを指す。このような分子は、場合によって、免疫グロブリンFc領域の存在によりエフェクター機能を有する一本鎖可変フラグメントである。一本鎖結合ポリペプチドを調製する方法は、当技術分野で知られている(米国特許出願第2005/0238646号)。
「Fv」とは、完全な抗原認識部位および抗原結合部位を含有する抗体フラグメントを指す。この領域は、密接に非共有結合される1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとの二量体からなる。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH−VL二量体の表面上において抗原結合部位を規定するのは、この立体構造においてである。6つのCDR総体で、抗原結合特異性が抗体に賦与される。しかし、全結合部位よりも低度の親和性においてではあるが、単一の可変ドメイン(または抗原に対して特異的な3つのCDRだけを含むFvの半分)であっても、抗原を認識し結合する能力を有する。
「Fab」フラグメントは「Fv」を含有し、また、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fabフラグメントは、抗体ヒンジ領域に由来する1つまたは複数のシステインを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における数個の残基の付加により、Fab’フラグメントとは異なる。Fab’−SHが、定常ドメインの(1つまたは複数の)システイン残基が遊離チオール基を保有するFab’の本明細書における呼称である。F(ab’)2抗体フラグメントは、元は、それらの間にヒンジのシステインを有するFab’フラグメント対として作製された。抗体フラグメント他の化学結合もまた知られている。
任意の脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパおよびラムダと呼ばれる2つの明確に異なる種類の1つに割り当てることができる。
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じ、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分類することができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメイン(Fc)は、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元立体構造はよく知られている。
任意の脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(または「κ」)およびラムダ(または「λ」)と呼ばれる2つの明確に異なる種類の1つに割り当てることができる。
【0052】
「一本鎖Fv」または「sFv」抗体フラグメントは、1本のポリペプチド鎖内に存在する抗体のVHドメインおよびVLドメインを含む。Fvポリペプチドは、必要な場合、sFvが抗原結合に所望の構造を形成することを可能とする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチド・リンカーをさらに含みうる。sFvの総説については、Pluckthun、「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies」、第113巻、RosenburgおよびMoore編、ニューヨーク、Springer−Verlag社、269〜315頁(1994年)を参照されたい。
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小型の抗体フラグメントを指し、該フラグメントは、同じポリペプチド鎖(VH−VL)内において軽鎖可変ドメイン(VL)に結合させた重鎖可変ドメイン(VH)を含有する。短すぎるために同じ鎖上における2つのドメイン間における対合が可能とならないリンカーを用いることにより、該ドメインは、別の鎖の相補的なドメインと対合させられ、2つの抗原結合部位を創出する。ダイアボディは、例えば、EP404,097;WO93/11161;およびHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第90巻、6444〜6448頁(1993年)においてより詳細に説明されている。
抗体はまた、二重特異性抗体でもありうる。二重特異性抗体は、少なくとも2種の異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、またはヒト化抗体である。本件の場合、結合特異性の1つは、例えば、LOXまたはLOXL2であり、他の1つは、例えば、細胞表面タンパク質または受容体もしくは受容体サブユニットなど、他の任意の抗原に対するものである。さらなる実施形態において、二重特異性抗体は、LOXおよびLOXL2に対して特異性である。
【0053】
二重特異性抗体を作製する方法は、当技術分野で知られている。従来、二重特異性抗体の組換えによる作製は、2本の重鎖が異なる特異性を有する、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づく(MilsteinおよびCuello、Nature、第305巻、537〜539頁(1983年))。免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の無作為的な取り合わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種の異なる抗体分子の潜在的な混合物をもたらすが、そのうちの1種だけが適正な二重特異性構造を有する。適正な分子の精製は通常、アフィニティー・クロマトグラフィー・ステップにより達成される。同様の手順は、1993年5月13日に公開されたWO93/08829;およびTrauneckerら、EMBO J.第10巻、3655〜3659頁(1991年)において開示されている。
当技術分野で知られる従来の方法を用いて、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)を、免疫グロブリンの定常ドメイン配列に融合させることができる。該融合体は、一般に、少なくとも、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域の一部を含有する免疫グロブリンの重鎖定常ドメインとの融合体である。一実施形態では、軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)が、該融合体の少なくとも1種において存在する。免疫グロブリン重鎖の融合体および、所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを別個の発現ベクター内に挿入することができ、これを適切な宿主生物内に同時にトランスフェクトすることができる。二重特異性抗体を作製するさらなる詳細については、例えば、Sureshら、Methods in Enzymology、第121巻、210頁(1986年)を参照されたい。
【0054】
WO96/27011で説明される別の手法により、抗体分子対の間におけるインターフェースを操作して、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合を最大化することができる。該インターフェースは、抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含みうる。この方法では、第1の抗体分子のインターフェースに由来する1種または複数種の低分子のアミノ酸側鎖を、より高分子の側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)により置換する。高分子のアミノ酸側鎖をより低分子の側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)により置換することにより、第2の抗体分子のインターフェース上に(1種または複数種の)高分子側鎖と同一であるかまたは類似のサイズの代補的な「くぼみ」を作製する。これにより、ヘテロ二量体の収量を、ホモ二量体など、他の所望されない最終生成物を超えて増加させるための機構がもたらされる。
二重特異性抗体は、全長抗体としても、抗体フラグメント(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)としても調製することができる。抗体フラグメントから二重特異性抗体を作製する技法は、文献において説明されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を用いて調製することができる。Brennanら、Science、第229巻、81頁(1985年)は、完全抗体をタンパク質分解により切断し、F(ab’)2フラグメントを作製する手順について説明している。ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下でこれらのフラグメントを還元して隣接ジチオールを安定化させ、分子間のジスルフィド形成を阻止する。次いで、生成されたFab’フラグメントを、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に転換する。次いで、メルカプトエチルアミンを伴う還元により、Fab’−TNB誘導体の1つをFab’−チオールに再転換し、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合して、二重特異性抗体を形成する。作製された二重特異性抗体は、酵素の選択的な固定化のための作用物質として用いることができる。
Fab’フラグメントを大腸菌(E.coli)から直接に回収し、化学的に結合させて二重特異性抗体を形成することができる。Shalabyら、J.Exp.Med.、第175巻、217〜225頁(1992年)は、完全ヒト化二重特異性抗体であるF(ab’)2分子の作製について説明している。各Fab’フラグメントを大腸菌から個別に分泌させ、in vitroにおける方向づけされた化学結合形成にかけて二重特異性抗体を形成した。このようにして形成された二重特異性抗体は、ErbB2受容体および正常なヒトT細胞を過剰発現する細胞に結合する他、ヒト乳癌標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を誘発することが可能であった。
【0055】
組換え細胞培養物から直接に二重特異性抗体フラグメントを作製および単離するための各種の技法もまた説明されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシン・ジッパーを用いて作製されている(Kostelnyら、J.Immunol.第148巻、5号、1547〜1553頁(1992年))。遺伝子融合により、Fosタンパク質およびJunタンパク質に由来するロイシン・ジッパー・ペプチドを、2種の異なる抗体のFab’部分に連結した。抗体のホモ二量体をヒンジ領域で還元して単量体を形成し、次いで、これを再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法はまた、抗体ホモ二量体の作製にも用いることができる。Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第90巻、6444〜6448頁(1993年)により説明される「ダイアボディ」法は、二重特異性抗体フラグメントを作製する代替的な機構を提供している。該フラグメントは、短すぎるために同じ鎖上における2つのドメイン間における対合が可能とならないリンカーにより軽鎖可変ドメイン(VL)に結合させた重鎖可変ドメイン(VH)を含有する。したがって、1つのフラグメントのVHドメインおよびVLドメインは、別のフラグメントの相補的なVLドメインおよびVHドメインと対合させられ、これにより、2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(sFv)二量体の使用により二重特異性抗体フラグメントを作製する別の戦略もまた報告されている。Gruberら、J.Immunol.、第152巻、5368頁(1994年)を参照されたい。
2価を超える結合価を有する抗体が意図される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる(Tuftら、J.Immunol.、第147巻、60頁(1991年))。
例示的な二重特異性抗体は、本明細書における所与のLOXポリペプチドまたはLOXL2ポリペプチド上における2つの異なるエピトープに結合しうる。あるいは、特定の標的ポリペプチドを発現する細胞に対する細胞防御機構に焦点を絞るように、抗LOXまたは抗LOXL2のポリペプチド・アームを、T細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28、またはB7)など、白血球上における誘発分子、またはFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、およびFcγRIII(CD16)など、IgGのFc受容体(FcγR)に結合するアームと組み合わせることもできる。二重特異性抗体はまた、特定の標的ポリペプチドを発現する細胞に対する細胞傷害剤を局在化させるのにも用いることができる。これらの抗体は、標的結合アームと、EOTUBE、DPTA、DOTA、またはTETAなどの、細胞傷害剤または放射性核種キレート剤に結合するアームとを保有する。別の対象の二重特異性抗体は、標的ポリペプチドに結合し、組織因子(TF)にさらに結合する。
【0056】
抗LOX抗体または抗LOXL2抗体はまた、ヘテロコンジュゲート抗体でもありうる。ヘテロコンジュゲート抗体は、共有結合した2つの抗体からなる。このような抗体は、例えば、望ましくない細胞に対する免疫系細胞の標的化(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染の治療(WO91/00360およびWO92/200373)のために提起されている。抗体は、架橋形成剤を伴う化学反応を含む合成タンパク質化学反応における既知の方法を用いて、in vitroにおいて調製することができる。例えば、ジスルフィド交換反応を用いるか、またはチオエーテル結合を形成することによって、抗毒素を構築することできる。この目的に適する試薬の例は、イミノチオレートおよびメチル−4−メルカプトブチルイミデート、ならびに、例えば、米国特許第4,676,980号で開示される試薬を含むがこれらに限定されない。
例えば、癌転移の治療または予防における抗体の有効性を増強するように、エフェクター機能に関して抗LOX抗体または抗LOXL2抗体を改変することが望ましい場合がある。例えば、Fc領域に(1つまたは複数の)システイン残基を挿入し、これにより、この領域における鎖間ジスルフィド結合の形成を可能とすることができる。このようにして生成されるホモ二量体抗体は、内部化能を改善し、ならびに/または補体媒介性殺細胞作用および抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)を増大させることが可能である。Caronら、J.Exp Med.、第176巻、1191〜1195頁(1992年);およびShopes、J.Immunol.、第148巻、2918〜2922頁(1992年)を参照されたい。Wolffら、Cancer Research、第53巻、2560〜2565頁(1993年)で説明される通り、ヘテロ二官能性架橋形成剤を用いると、抗腫瘍活性が増強されたホモ二量体抗体もまた調製することができる。あるいは、二重のFc領域を有し、これにより、補体溶解およびADCC能が増強されうる抗体も加工することができる。Stevensonら、Anti−Cancer Drug Design、第3巻、219〜230頁(1989年)を参照されたい。
【0057】
「単離抗体」とは、同定され、その天然環境の成分から分離および/または回収された抗体である。その天然環境の夾雑物成分とは、抗体の診断的または治療的使用に干渉する物質であり、例えば、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を含みうる。一実施形態において、抗体は、(1)ローリー法により決定される抗体重量で80%、85%、90%、95%、または99%を超えるまで、(2)スピニング・カップ型整列装置の使用によりN末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、および/または(3)クーマシー・ブルーもしくは銀染色を用いる還元的または非還元的条件下におけるSDS−PAGEによる同質性まで精製される。「単離抗体」という用語は、該抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないために、組換え細胞内のin situにおける抗体をその範囲内に含む。一般に、抗体またはその抗原結合フラグメントの単離は、少なくとも1つの精製ステップを含む。
抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体でありうる。非ヒト(例えば、マウス)抗体のヒト化形態は、例えば、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、同免疫グロブリン鎖、またはそれらのフラグメント(Fv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖結合ポリペプチド、抗体のVH、VL、または他の抗原結合配列など)を含む。キメラ抗体は、重鎖および軽鎖の可変領域がヒト定常領域(Fc)と組み合わされる抗体を含む。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト動物種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基により置換されるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を含む。一部の場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基により置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体にも、移入されるCDR配列またはフレームワーク配列にも見出されない残基も含みうる。一般に、ヒト化抗体は、すべてであるかまたは実質的にすべてのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、すべてであるかまたは実質的にすべてのFR領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である、少なくとも1つであり典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含む。
【0058】
ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの該領域の少なくとも一部も含有しうる(Jonesら、Nature、第321巻、522〜525頁(1986年);Riechmannら、Nature第332巻、323〜329頁(1988年);およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.、第2巻、593〜596頁(1992年))。
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当技術分野でよく知られている。一般に、ヒト化抗体は、その中に、非ヒトの供給源に由来する1つまたは複数のアミノ酸残基が導入されている。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」可変ドメインまたは「ドナー」可変ドメインから採取されることが典型的な「移入」残基または「ドナー」残基と称することが多い。ヒト化は、基本的に、Winterおよび共同研究者の方法(Jonesら、Nature、第321巻、522〜525頁(1986年);Riechmannら、Nature、第332巻、323〜327頁(1988年));Verhoeyenら、Science、第239巻、1534〜1536頁(1988年))に従い、ヒト抗体の対応する配列を、げっ歯類のCDRまたはCDR配列に置換することにより実行することができる。したがって、このような「ヒト化」抗体は、実質的に完全未満のヒト可変ドメインが、非ヒト動物種に由来する対応する配列により置換されたキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)を含む。実際、ヒト化抗体は、一部のCDR残基およびおそらくは一部のFR残基が、げっ歯類抗体における同様の部位に由来する残基により置換されるヒト抗体であることが典型的である。
ヒト抗体はまた、ファージ・ディスプレイ・ライブラリー(HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.、第227巻、381頁(1991年);Marksら、J.Mol.Biol.第222巻、581頁(1991年))を含む、当技術分野で知られる各種の技法を用いても作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の調製には、ColeらおよびBoemerらの技法もまた用いられる(Coleら、「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、Alan R.Liss社、77頁(1985年);およびBoemerら、J.Immunol.、第147巻、第1号、86〜95頁(1991年))。同様に、ヒト抗体は、トランスジェニック動物、例えば、内因性の免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されたマウスに、ヒト免疫グロブリンの遺伝子座を導入することによっても作製することができる。感作時において、遺伝子再配列、構築、および抗体レパートリーを含むすべての点において、ヒトで見られる場合に酷似するヒト抗体の生成が観察される。この手法は、例えば、米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、および以下の科学刊行物:Marksら、Bio/Technology、第10巻、779〜783頁(1992年);Lonbergら、Nature、第368巻、856〜859頁(1994年);Morrison、Nature、第368巻、812〜13頁(1994年);Fishwaldら、Nature Biotechnology、第14巻、845〜51頁(1996年);Neuberger、Nature Biotechnology、第14巻、826頁(1996年);LonbergおよびHuszar、Intern.Rev.Immunol.、第13巻、65〜93頁(1995年)において説明されている。
LOXまたはLOXL2に結合し、その酵素活性を遮断する、マウス・モノクローナル抗体が開発されている。本明細書に記載のヒト化抗体およびそれらの抗原結合フラグメントは、マウス・モノクローナル抗LOXおよび抗LOXL2抗体のVLおよびVH配列のヒト化により作製される。
【0059】
ヒト化抗体を含むヒト化免疫グロブリンは、遺伝子操作により構築されている。前出で説明された大半のヒト化免疫グロブリンは、特定のヒト免疫グロブリン鎖(すなわち、アクセプターまたはレシピエント)のフレームワークと同一のフレームワークと、非ヒト(ドナー)免疫グロブリン鎖に由来する3つのCDRとを含んでいる。本明細書に記載の通り、ヒト化はまた、ヒト化免疫グロブリン鎖を含む抗体の親和性を増大させるため、ヒト化免疫グロブリン鎖のフレームワーク内における限定された数のアミノ酸が、アクセプター内ではなくドナー内のこれらの位置におけるアミノ酸と同じとなるように同定および選択される基準を含む。
本発明は、ヒト化抗体を作製する先行の方法(例として、マウス抗体をCDRの供給源として用いる)における親和性喪失に寄与する以下の2つの原因がある、というモデルに部分的に基づいている:(1)マウスCDRがヒト・フレームワークと組み合わされる場合、CDRに近接するフレームワーク内のアミノ酸は、マウス由来ではなくヒト由来となる。理論に拘束される意図なしに述べると、これらのアミノ酸の変化は、CDRを若干歪める場合がある(例えば、これらのアミノ酸変化は、ドナー・マウス抗体の場合とは異なる静電力または疎水性力をもたらし、歪んだCDRは、ドナー抗体における場合と同様に有効な抗原との接触をもたらせない場合がある);(2)また、CDRに近接するがその一部ではない(すなわち、やはりフレームワークの一部である)元のマウス抗体中のアミノ酸は、親和性に寄与する抗原との接触をもたらしうる。一般に、すべてのフレームワーク・アミノ酸はヒト由来であるため、抗体がヒト化される場合、これらのアミノ酸は失われる。これらの問題を回避し、所望の抗原に対する極めて強力な親和性を有するヒト化抗体を作製するため、以下の1つまたは複数の原理を用いて、ヒト化抗体およびそれらの抗原結合フラグメントを構築することができる。
【0060】
1つの原理は、ヒト化されるドナー免疫グロブリンに対して異例に相同な、特定のヒト免疫グロブリンに由来するフレームワークをアクセプターとして用いるか、または多くのヒト抗体に由来するコンセンサス・フレームワークをアクセプターとして用いることである。例えば、データ・バンク(例えば、米国立生物医学研究財団タンパク質同定情報源または米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のタンパク質配列データベース)内のヒト重鎖(または軽鎖)可変領域配列に対するマウス重鎖(または軽鎖)可変領域配列の比較により、異なるヒト領域に対する相同性の程度は、極めて大幅に、例えば、約40%〜約60%、約70%、約80%、またはそれ以上変化しうることが示される。ドナー免疫グロブリンの重鎖可変領域に対して最も相同なヒト重鎖可変領域の1つをアクセプターの免疫グロブリンとして選択することにより、ドナー免疫グロブリンからヒト化免疫グロブリンへの移行において変化するアミノ酸が少なくなる。ドナー免疫グロブリンの軽鎖可変領域に対して最も相同なヒト軽鎖可変領域の1つをアクセプターの免疫グロブリンとして選択することにより、ドナー免疫グロブリンからヒト化免疫グロブリンへの移行において変化するアミノ酸が少なくなる。一般に、このような技法を用いることで、それらの立体構造を歪める、1つまたは複数のCDRに近接するアミノ酸を変化させる可能性が低減される。さらに、ヒト化免疫グロブリン鎖を含むヒト化抗体の正確な全体的形状をドナー抗体の形状により酷似させ、これによってもまた、CDRを歪める可能性を低減することができる。
また、同じヒト抗体に由来する軽鎖および重鎖をアクセプター配列として用いて、ヒト化軽鎖および重鎖が、互いとの好ましい接触をもたらす可能性を増大させることもできる。また、あるいは、異なるヒト抗体生殖細胞系列配列に由来する軽鎖および重鎖をアクセプター配列として用いることもでき、このような組合せを用いる場合、従来のアッセイ(例えば、ELISA)を用いて、VHおよびVLが、対象のエピトープに結合するかどうかを容易に決定することができる。一例では、軽鎖および重鎖の可変領域配列が、これらをまとめると、ドナーの軽鎖および重鎖の可変領域配列に対して全体として最も相同となるヒト抗体を選択する。重鎖配列により大きく重みづけする場合もある。アクセプターの免疫グロブリンがどのようにして選択されるかにかかわらず、ヒト化免疫グロブリン鎖のフレームワーク内における少数のアミノ酸が、アクセプター内ではなくドナー内のこれらの位置におけるアミノ酸と同じとなるように選択することにより、より高度の親和性が達成される場合もある。親和性成熟の方法は、当技術分野で知られている。
【0061】
ヒト化抗体は、一般に、ヒト治療において用いるマウス抗体またはキメラ抗体を上回る、少なくとも3つの潜在的な利点を有する。抗体のエフェクター部分がヒト由来であるため、それは、ヒト免疫系の他の部分とより良好に相互作用する(例えば、補体依存性細胞傷害作用(CDC)または抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)により、より効果的に標的細胞を破壊する)と考えられる。加えて、ヒト免疫系は、ヒト化抗体のフレームワーク領域または定常領域を異物として認識しないとされ、したがって、このような注射された抗体に対する抗体応答は、完全な異物であるマウス抗体または部分的に異物であるキメラ抗体に対する場合よりも小さいとされる。最後に、マウス抗体は、ヒト循環内において、ヒト抗体の半減期よりもはるかに短い半減期を有することが知られている。ヒト化抗体は、おそらく、天然のヒト抗体により近似の半減期を有することが可能であり、これにより投与量および投与回数を減らすことが可能となる。
抗体およびそれらの抗原結合フラグメントのヒト化は、当技術分野で知られ、本明細書に記載の各種の方法により達成することができる。同様に、ヒト化抗体の作製もまた、当技術分野で知られ、本明細書に記載の各種の方法により達成することができる。
フレームワーク領域の改変法は当技術分野で知られており、本明細書でも意図されている。1つまたは複数の変更に関連するフレームワークのアミノ酸位置の選択は、各種の基準に依存する。変化に関連するフレームワーク・アミノ酸を選択する1つの基準は、ドナー分子とアクセプター分子との間におけるフレームワーク・アミノ酸残基の相対的な違いでありうる。この手法を用いる変更に関連するフレームワーク位置の選択は、残基決定における主観的なバイアス、または残基によるCDR結合親和性への寄与におけるバイアスを回避する利点を有する。
変化に関連するアミノ酸位置を決定するのに用いうる別の基準は、例えば、CDRの立体構造にとって重要であるかまたはこれに寄与することが知られるフレームワーク残基の選択でありうる。例えば、標準的なフレームワーク残基は、CDRの立体構造および/または構造にとって重要である。変化に関連する位置としての標準的なフレームワーク残基の標的化を用いて、その関連するドナーCDR配列との関連でより適合的なアミノ酸残基を同定することができる。
【0062】
特定のフレームワーク位置におけるアミノ酸残基の頻度が、変化に関連するフレームワークのアミノ酸位置を選択するのに用いうる別の基準である。例えば、選択されたフレームワーク配列をそのサブファミリー内の他のフレームワーク配列と比較することにより、ある特定の位置または複数の特定の位置においてわずかな頻度で現れる残基を明らかにすることができる。より少数の残基が現れる位置は、アクセプターの可変領域フレームワークにおける変更位置としての選択にも同様に適する。
変化に関連するアミノ酸位置はまた、例えば、CDRに対する近接性に基づいても選択することができる。特定の関連において、FR残基は、CDRの立体構造および/または抗原の結合に関与しうる。さらに、この基準は、本明細書に記載の他の基準により選択される関連位置に優先順位を付けるのにも同様に用いることができる。したがって、1つまたは複数のCDRに対する近位の残基と遠位の残基との間における差別化は、変化に関連する位置の数を低減する1つの方法を表す。
変更に関連するアミノ酸フレームワーク位置を選択する他の基準は、例えば、抗原−CDR間インターフェース近傍の三次元空間に存在することが知られるかもしくは予測されるか、またはCDR活性を調節することが予測される残基を含む。同様に、重(V
H)鎖可変領域インターフェースと軽(V
L)鎖可変領域インターフェースとの間における接触を形成することが知られるかまたは予測されるフレームワーク残基も選択することができる。このようなフレームワーク位置は、CDR結合ポケット、抗原(エピトープ)相互作用、またはV
HとV
Lとの間の相互作用を調節することにより、CDRの立体構造および/または親和性に影響しうる。したがって、結合活性のスクリーニングのための多様な集団の構築にこれらのアミノ酸位置の選択を用いて、CDRの立体構造に対して有害な影響を有する残基を置換するフレームワーク変化を同定するか、または該フレームワーク内の別の位置に現れる残基の有害な影響を相殺することができる。
【0063】
変更のために選択しうる他のフレームワーク残基は、溶媒の到達できないアミノ酸位置を含む。このような残基は、一般に、可変領域内に埋め込まれ、したがって、CDRの立体構造またはV
HとV
Lとの間の相互作用に影響を及ぼすことが可能である。溶媒の到達可能性は、例えば、ポリペプチドのアミノ酸側鎖によりもたらされる環境の相対的な疎水性および/または既知の三次元構造データにより予測することができる。
ドナーCDR内における関連アミノ酸位置の他、変化が所望されるフレームワーク領域内における任意の関連アミノ酸位置の選択後、選択された位置の一部または全部におけるアミノ酸の変化を、アクセプターの可変領域フレームワークおよびドナーCDRをコードする核酸内に組み込むことができる。変更されたフレームワーク配列またはCDR配列は、個別に作製して調べることもでき、逐次的または同時的に組み合わせて調べることもできる。
任意またはすべての変更位置における可変性は、20種すべての天然アミノ酸またはそれらの機能的な同等物および類似物を含む、少数〜多数の異なるアミノ酸残基の範囲に及びうる。一部の場合では、非天然のアミノ酸もまた考慮することができ、当技術分野において知られている。
変化させるアミノ酸位置の数および配置の選択は順応性があり、使用目的およびドナー可変領域と比較して実質的に同じであるかまたはより大きな結合親和性などの所望の活性を有する変更可変領域の同定に所望される効率に依存しうる。この点において、変更可変領域集団に組み込まれる変化の数が大きくなるのに応じて、所望の活性、例えば、ドナーと実質的に同じであるかまたはより大きな結合親和性を示す少なくとも1種の分子種の同定がより効率的となる。あるいは、使用者が、特定のアミノ酸残基または位置の結合親和性に対する寄与が不均等であるという旨の経験的または実際的なデータを有する場合は、これらの同定された残基または位置の内部または周囲における変化に焦点を絞る、変更可変領域の限定的な集団を作製することが望ましい場合がある。
【0064】
例えば、CDR移植可変領域が所望される場合、変更可変領域の大規模で多様な集団は、ドナー・フレームワークとアクセプター・フレームワークとの間で同一でないすべてのフレームワーク領域の位置と、単一のCDRにおけるすべてのアミノ酸位置の変化とを含みうる。あるいは、中程度の多様性を有する集団は、例えば、単一のCDRにおけるすべてのアミノ酸位置の変化と共に組み込まれて、例えば、ヒト化抗体または抗原結合フラグメントの親和性を増大させる、近接する同一でないフレームワーク位置だけのサブセットを含みうる。上記の集団の多様性は、例えば、対をなすCDRにおけるすべてのアミノ酸位置の変化をさらに含むことにより、さらに増大しうる。これに対し、変更される抗体可変領域のスクリーニングおよび同定のために、1つのフレームワークおよび/または1つのCDRのアミノ酸位置と同程度に少数の変異残基を組み込む所定の残基または位置に焦点を絞る集団を構築することも同様に可能である。上記の集団と同様に、このような焦点を絞った集団の多様性は、フレームワーク領域およびCDR領域の一方または両方における他の関連する位置を含むように、変化のために選択される位置をさらに拡張することにより、さらに増大させることができる。さらに用いうるフレームワーク領域およびCDRの一方または両方における少数の変化〜多数の変化に及ぶ他の多数の組合せが存在し、これらのすべてにより、所望の活性、例えば、LOX/LOXL2に対する結合活性を有する、少なくとも1つのCDRを移植される変更可変領域の同定のためにスクリーニングされうる、変更可変領域集団が結果としてもたらされる。本明細書で提供される教示および指針を踏まえるなら、当業者は、フレームワークまたはドナーCDRにおいて選択されるどの残基位置もしくはそれらのサブセットを変化させれば本発明の変更抗体のスクリーニングおよび同定のための集団を作製することができるかを知るか、またはこれを決定することができる。アミノ酸をコードするコドンは、当技術分野で知られている。
ヒト化抗体および抗原結合フラグメントは、当技術分野で知られる従来の技法を用いて作製することができる。加えて、組換えにより調製される抗体は、特に、高レベルの発現ベクターを用いる場合、大量に作製しうることが多い。
【0065】
抗体は、当技術分野で知られる従来の技法を用いて整列することができ、相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を決定することができる。一態様では、1つまたは複数のCDRのアミノ酸配列を、例えば、ヒト抗体(またはその抗原結合フラグメント)フレームワークの合成配列内に挿入して、非ヒト抗体によりヒト患者を治療することの有害な副作用を制限しうるヒト抗体を作製する。また、1つまたは複数のCDRのアミノ酸配列を、例えば、Avimer(商標)などの結合タンパク質の合成配列内に挿入して、ヒト患者への投与のための構築物を作製することもできる。このような技法は、治療される動物種に応じて改変することができる。例えば、脊椎動物に用いる場合、抗体、抗原結合フラグメント、または結合タンパク質を、霊長類、ウシ、ウマなどに対する投与のために合成することができる。
別の態様では、本明細書で提供されこれに組み込まれる技法などの当技術分野で認められる技法を用いて、例えば、組換え法により、1つまたは複数のCDRのアミノ酸配列をコードするヌクレオチドを、抗体、抗原結合フラグメント、または結合タンパク質をコードする既存のポリヌクレオチドの制限エンドヌクレアーゼ部位に挿入することができる。
高レベルの作製の場合、最も広く用いられる哺乳類発現系は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損(「dhfr−」)チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞により提供される遺伝子増幅手順を用いる発現系である。該発現系は、当業者によく知られている。該発現系は、ジヒドロ葉酸のテトラヒドロ葉酸への転換を触媒するDHFR酵素をコードするジヒドロ葉酸レダクターゼの「dhfr」遺伝子に基づく。高量の作製を達成するため、所望のタンパク質をコードする遺伝子と共に、機能的なdhfr遺伝子を含有する発現ベクターをdhfr−CHO細胞にトランスフェクトする。この場合、所望のタンパク質は、組換えの抗体重鎖および/または軽鎖である。
競合的なDHFR阻害剤であるメトトレキサート(MTX)の量を増加させることにより、組換え細胞は、dhfr遺伝子を増幅することによる耐性を発現する。標準的な場合において、用いられる増幅単位はdhfr遺伝子のサイズよりもはるかに大きく、結果として、抗体重鎖が同時増幅される。
【0066】
抗体鎖などのタンパク質の大スケールでの作製が所望される場合、用いられる細胞の発現レベルおよび安定性の両方が考慮される。長時間に及ぶ培養の場合、組換えCHO細胞集団は、それらが単一の親クローンから派生する場合であっても、増幅時において、それらの特異的な抗体生成能に関する均質性を失う。
本出願は、本明細書に記載の抗体または抗原結合フラグメントをコードする単離ポリヌクレオチド(核酸)、このようなポリヌクレオチドを含有するベクター、およびこのようなポリヌクレオチドをポリペプチドへと転写および翻訳するための宿主細胞および発現系を提供する。
本出願はまた、上記のような少なくとも1種のポリヌクレオチドを含むプラスミド、ベクター、転写または発現用のカセットの形態における構築物も提供する。
本出願はまた、上記のような1種または複数種の構築物を含む組換え宿主細胞も提供する。本明細書に記載の任意の抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする核酸は、コードする核酸からの発現を含む、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの作製法と同様に、提供されるそれ自体として本出願の態様を形成する。発現は、該核酸を含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することにより、簡便に達成することができる。発現による作製後、任意の適切な技法を用いて抗体または抗原結合フラグメントを単離および/または精製し、次いで、適切な形で用いることができる。
本明細書に記載の特異的な抗体、抗原結合フラグメント、ならびにコードする核酸分子およびベクターは、例えば、実質的に純粋であるかまたは均質な形態でそれらの天然の環境から単離および/もしくは精製するか、または、核酸の場合、必要とされる機能を有するポリペプチドをコードする配列以外の核酸もしくは遺伝子の起源を含まないかもしくは実質的に含まずに提供することができる。核酸は、DNAもRNAも含むことがあり、合成が全面的なことも部分的なこともある。
【0067】
各種の異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニング系および発現系はよく知られている。適切な宿主細胞は、細菌系、哺乳類細胞系、酵母系、およびバキュロウイルス系を含む。異種ポリペプチドの発現のために当技術分野で用いうる哺乳類細胞株は、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビー・ハムスター腎細胞、NSOマウス黒色腫細胞、および他の多くの細胞を含む。一般的な細菌宿主は大腸菌である。
大腸菌などの原核細胞における抗体および抗体フラグメントの発現は、当技術分野で十分に確立されている。総説としては、例えば、Plueckthun,A.、Bio/Technology、第9巻、545〜551頁(1991年)を参照されたい。培養される真核細胞における発現もまた、本明細書に記載の抗体および抗原結合フラグメントの作製のための選択肢として当業者に用いられ、近年の総説としては、例えば、それらの各々が参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Raff,M.E.(1993年)、Curr.Opinion Biotech.、第4巻、573〜576頁;Trill J.J.ら(1995年)、Cur.Opinion Biotech、第6巻、553〜560頁を参照されたい。
プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、および他の適切な配列を含む適切な調節配列を含有する適切なベクターを選択または構築することができる。ベクターは、適切なプラスミド、ウイルス、例えば、ファージ、またはファージミドでありうる。さらなる詳細については、例えば、「Molecular Cloning:a Laboratory Manual」、第2版、Sambrookら、1989年、Cold Spring Harbor Laboratory Press社を参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、配列決定、細胞内へのDNAの導入、および遺伝子発現における核酸操作ならびにタンパク質の分析のための多くの既知の技法およびプロトコールは、「Short Protocols in Molecular Biology」、第2版、Ausubelら編、John Wiley & Sons社、1992年において詳細に説明されている。SambrookらおよびAusubelらの開示は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれている。
【0068】
こうして、さらなる態様は、本明細書で開示される核酸を含有する宿主細胞を提供する。またさらなる態様は、このような核酸を宿主細胞に導入するステップを含む方法を提供する。該導入では、任意の適用可能な技法を用いうる。適切な技法は、真核細胞なら、例えば、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、DEAEデキストラン、電気穿孔、微粒子銃、リポソームを介するトランスフェクション、およびレトロウイルスもしくは他のウイルス、例えば、ワクシニアウイルスや、昆虫細胞なら、バキュロウイルスを用いる形質導入を含むこともある。適切な技法は、細菌細胞なら、例えば、塩化カルシウムによる形質転換、電気穿孔、および細菌ファージを用いるトランスフェクションを含むこともある。
導入の後には、例えば、遺伝子発現のための条件下において宿主細胞を培養することにより、核酸からの発現を引き起こすかまたは可能とするステップが後続しうる。
一実施形態では、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)内に核酸を組み込む。組込みは、標準的な技法に従い、ゲノムの組換えを促進する配列の組入れにより促進することができる。
本出願はまた、上記のような抗体または抗原結合フラグメントを発現するために、発現系において上記のような構築物を用いるステップを含む方法も提供する。
本出願はまた、本明細書に記載の、LOXまたはLOXL2に結合する抗体または抗原結合配列をコードする組換えDNA分子もしくはクローニングされた遺伝子、またはこれらの縮重変異体、突然変異体、類似体、あるいはこれらのフラグメントなどの単離核酸にも関する。
一態様において、本出願は、本明細書に記載の、LOXまたはLOXL2に結合する抗体または抗原結合フラグメントをコードする核酸を提供する。
さらなる実施形態では、本明細書に記載の、抗体または抗原結合フラグメントの組換えDNA分子もしくはクローニングされた遺伝子の完全なDNA配列を、適切な宿主内に導入しうる発現制御配列に作動的に連結することができる。したがって、本出願は、該抗体のV
Hおよび/もしくはV
Lまたはそれらの一部をコードするDNA配列を含む、クローニングされた遺伝子または組換えDNA分子により形質転換された、単細胞宿主へと拡張される。
【0069】
別の特徴は、本明細書で開示されるDNA配列の発現である。当技術分野でよく知られる通り、DNA配列は、それらを適切な発現ベクター内における発現制御配列に作動的に連結し、その発現ベクターを用いて適切な単細胞宿主を形質転換することによって発現させることができる。
発現制御配列へのDNA配列のこのような作動的な連結は、当然ながら、既に該DNA配列の一部であるわけではないにせよ、該DNA配列の上流における適正なリーディングフレームにおける開始コドンであるATGの供給を含む。
ポリヌクレオチドおよびベクターは、単離および/または精製形態において(例えば、必要とされる機能を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド以外の元のポリヌクレオチドを含まないかまたは実質的に含まずに)提供することができる。本明細書で用いられる「実質的に純粋な」および「実質的に含まない」とは、例えば、20%以下の異種物質、10%以下の異種物質、5%以下の異種物質、4%以下の異種物質、3%以下の異種物質、2%以下の異種物質、または1%以下の異種物質を含有する溶液または懸濁液を指す。
本発明のDNA配列の発現では、多種多様な宿主/発現ベクターの組合せを用いることができる。有用な発現ベクターは、例えば、染色体配列、非染色体配列、および合成DNA配列のセグメントからなることが可能である。適切なベクターは、SV40誘導体ならびに既知の細菌プラスミド、例えば、大腸菌プラスミドであるcol E1、Pcr1、Pbr322、Pmb9、およびこれらの誘導体、RP4などのプラスミド;ファージDNA、例えば、ファージλの多くの誘導体、例えば、NM989、ならびに他のファージDNA、例えば、M13および繊維状一本鎖ファージDNA;2uプラスミドまたはその誘導体などの酵母プラスミド;昆虫細胞または哺乳類細胞において有用なベクターなど、真核細胞において有用なベクター;ファージDNAまたは他の発現制御配列を用いるように改変されたプラスミドなど、プラスミドおよびファージDNAの組合せに由来するベクターなどを含む。
また、本明細書では、1つまたは複数のポリヌクレオチド構築物を含む組換え宿主細胞も提供される。本明細書で提供される抗体または抗原結合フラグメントをコードするポリヌクレオチドは、該ポリヌクレオチドからの発現を含む抗体または抗原結合フラグメントの作製法と同様に、本発明の態様を形成する。発現は、例えば、該ポリヌクレオチドを含有する組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することにより達成することができる。次いで、任意の適切な技法を用いて抗体または抗原結合フラグメントを単離および/または精製し、適切な形で用いることができる。
【0070】
これらのベクターにおいて、多種多様な発現制御配列−それに作動的に連結されるDNA配列の発現を制御する配列−のいずれかを用いて、DNA配列を発現させることができる。このような有用な発現制御配列は、例えば、SV40、CMV、ワクシニアウイルス、ポリオーマまたはアデノウイルスの早期または後期プロモーター、lac系、trp系、TAC系、TRC系、LTR系、ファージλの主要なオペレーター領域およびプロモーター領域、fd被覆タンパク質の制御領域、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素のためのプロモーター、酸ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母接合因子のプロモーター、ならびに原核細胞もしくは真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子発現を制御することが知られる他の配列、ならびにこれらの多様な組合せを含む。
各種の異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニング系および発現系はよく知られている。適切な宿主細胞は、細菌系、哺乳類細胞系、酵母系、およびバキュロウイルス系を含む。異種ポリペプチドの発現のために当技術分野で用いうる哺乳類細胞株は、チャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビー・ハムスター腎細胞、NSOマウス黒色腫細胞、および他の多くの細胞を含む。一般的な細菌宿主は、例えば、大腸菌でありうる。
【0071】
大腸菌などの原核細胞における抗体および抗体フラグメントの発現は、当技術分野で十分に確立されている。総説としては、例えば、Plueckthun,A.、Bio/Technology、第9巻、545〜551頁(1991年)を参照されたい。培養される真核細胞における発現もまた、当業者に用いられる(Raff,M.E.(1993年)、Curr.Opinion Biotech.、第4巻、573〜576頁;Trill J.J.ら(1995年)、Cur.Opinion Biotech、第6巻、553〜560頁)。
多種多様な単細胞性宿主細胞もまた、DNA配列の発現に有用である。これらの宿主は、大腸菌、シュードモナス属(Pseudomonas)、バチルス属(Bacillus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、酵母などの真菌、ならびに組織培養されるCHO細胞、YB/20細胞、NSO細胞、SP2/0細胞、R1.1細胞、B−W細胞、およびL−M細胞、アフリカ・ミドリザル腎細胞(例えば、COS1、COS7、BSC1、BSC40、およびBMT10)、昆虫細胞(例えば、Sf9)、およびヒト細胞などの動物細胞ならびに植物細胞の細胞株など、よく知られた真核および原核の宿主を含む。
すべてのベクター、発現制御配列、および宿主が、同じく良好に機能してDNA配列を発現するわけではないことが理解される。同じ発現系により、すべての宿主が同じく良好に機能するわけでもない。しかし、当業者は、本出願の範囲から逸脱することなしに所望の発現を達成するのには適さない実験を行うことなく、適正なベクター、発現制御配列、および宿主を選択することが可能である。例えば、ベクターは宿主内で機能しなければならないので、ベクターの選択においては、宿主を考慮しなければならない。ベクターのコピー数、該コピー数を制御する能力、および抗生剤マーカーなど、ベクターによりコードされる他の任意のタンパク質の発現もまた考慮される。当業者は、適正なベクター、発現制御配列、および宿主を選択して、本出願の範囲から逸脱することなしに所望の発現を達成することができる。例えば、ベクターは宿主内で機能しなければならないので、ベクターの選択においては、宿主を考慮しなければならない。ベクターのコピー数、該コピー数を制御する能力、および抗生剤マーカーなど、ベクターによりコードされる他の任意のタンパク質の発現もまた考慮することができる。
【0072】
本出願はまた、上記のような少なくとも1種のポリヌクレオチドを含む、本明細書の他の箇所に記載されるようなプラスミド、ベクター、転写または発現用のカセットの形態における構築物も提供する。プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、選択マーカー、および他の適切な配列を含む適切な調節配列を含有する適切なベクターを選択または構築することができる。ベクターは、適切なプラスミド、ウイルス、例えば、ファージ、またはファージミドでありうる。さらなる詳細については、例えば、「Molecular Cloning:a Laboratory Manual」、第2版、Sambrookら、1989年、Cold Spring Harbor Laboratory Press社を参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、配列決定、細胞内へのDNAの導入、および遺伝子発現における核酸操作ならびにタンパク質の分析のための多くの既知の技法およびプロトコールは、「Short Protocols in Molecular Biology」、第2版、Ausubelら編、John Wiley & Sons社、1992年において詳細に説明されている。SambrookらおよびAusubelらの開示は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれている。
発現制御配列の選択では、通常、各種の因子が考慮される。これらは、例えば、系の相対的な強度、その制御可能性、および、特に、潜在的な二次構造に関して、発現される特定のDNA配列または遺伝子とのその適合性を含む。適切な単細胞宿主は、例えば、選択されるベクターとのそれらの適合性、それらの分泌特性、それらがタンパク質を適正に折りたたむ能力、およびそれらの発酵要件の他、発現されるDNA配列によりコードされる産物の該宿主に対する毒性、ならびに発現産物の精製の容易さの考慮により選択される。
【0073】
さらなる態様は、本明細書で開示される1つまたは複数のポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を提供する。またさらなる態様は、このような1つまたは複数のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するステップを含む方法である、任意の適用可能な技法を提供する。適切な技法は、真核細胞なら、例えば、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、DEAEデキストラン、電気穿孔、リポソームを介するトランスフェクション、およびレトロウイルスもしくは他のウイルス(例えば、ワクシニアウイルス)や、昆虫細胞なら、バキュロウイルスを用いる形質導入を含むこともある。適切な技法は、細菌細胞なら、例えば、塩化カルシウムによる形質転換、電気穿孔、および細菌ファージを用いるトランスフェクションを含むこともある。
導入の後には、例えば、1つまたは複数のポリヌクレオチドからの1つまたは複数のポリペプチドの発現のための条件下において宿主細胞を培養することにより、1つまたは複数のポリヌクレオチドからの発現を引き起こすかまたは可能とするステップが後続しうる。誘導可能な系を用いて、活性化剤の添加により発現を誘導することができる。
一実施形態では、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)内に該ポリヌクレオチドを組み込むことができる。組込みは、標準的な技法に従い、ゲノムの組換えを促進する配列の組入れにより促進することができる。別の実施形態において、該核酸は、宿主細胞内のエピソームベクター上において維持される。
本明細書では、特定のポリペプチドを発現するために、発現系において上述の構築物を用いるステップを含む方法が提供される。
これらおよび他の因子を考慮して、当業者は、発酵または大規模な動物細胞培養においてDNA配列を発現する、各種のベクター/発現制御配列/宿主の組合せを構築することができる。
【0074】
抗体、抗原結合フラグメント、または結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、クローニングに加え、またはクローニングではなく、組換え/合成により調製することができる。該ポリヌクレオチドは、該抗体、抗原結合フラグメント、または結合タンパク質に適切なコドンにより設計することができる。一般に、配列を発現に用いる場合、意図される宿主に好ましいコドンを選択する。完全なポリヌクレオチドは、標準的な方法により調製されるオリゴヌクレオチドを重複させるステップから構築し、完全なコード配列へと構築することができる。例えば、Edge、Nature、第292巻、756頁(1981年);Nambairら、Science、第223巻、1299頁(1984年);Jayら、J.Biol.Chem.、第259巻、6311頁(1984年)を参照されたい。
タンパク質への非天然アミノ酸の部位特異的な組込みの一般的な方法は、Christopher J.Noren、Spencer J.Anthony−Cahill、Michael C.Griffith、Peter G.Schultz、Science、第244巻、182〜188頁(1989年4月)において説明されている。この方法を用いて、非天然アミノ酸による類似体を作製することができる。
上述の通り、抗体またはその抗原結合フラグメントをコードするDNA配列は、クローニングではなく合成により調製することができる。DNA配列は、抗体または抗原結合フラグメントのアミノ酸配列に適切なコドンにより設計することができる。一般に、配列を発現に用いる場合、意図される宿主に好ましいコドンを選択する。完全な配列は、標準的な方法により調製されるオリゴヌクレオチドを重複させるステップから構築し、完全なコード配列へと構築することができる。例えば、その各々が参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Edge、Nature、第292巻、756頁(1981年);Nambairら、Science、第223巻、1299頁(1984年);Jayら、J.Biol.Chem.、第259巻、6311頁(1984年)を参照されたい。
【0075】
「アジュバント」という用語は、特に、抗原に対する免疫応答を増強する化合物または混合物を指す。アジュバントは、抗原をゆっくりと放出する組織デポ剤として、かつまた、免疫応答を非特異的に増強するリンパ系活性化剤としても用いることができる(Hoodら、「Immunology」、第2版、1984年、カリフォルニア州、メンロパーク、Benjamin/Cummings社、384頁)。アジュバント不在下における抗原のみによる初期感作は、体液性または細胞性の免疫応答を引き起こせないことが多い。既に知られ用いられているアジュバントは、完全フロイント・アジュバント(CFA)、不完全フロイント・アジュバント(IFA)、サポニン、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル、リソレシチンなどの界面活性物質、プルロニック・ポリオール、多価陰イオン、ペプチド、油または炭化水素のエマルジョン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメット−ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)などの潜在的に有用なヒト用アジュバントを含むがこれらに限定されない。無機塩によるアジュバントは、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、水酸化亜鉛、および水酸化カルシウムを含むがこれらに限定されない。アジュバント組成物は、約10%(重量)の植物油および約1〜2%(重量)のリン脂質を含む脂肪エマルジョンの脂質をさらに含むことが好ましい。アジュバント組成物は、場合によって、連続水相中に分散する油性粒子を有するエマルジョン形態をさらに含み、約0.2%(重量)〜約49%(重量)の量におけるエマルジョン形成ポリオール、場合によって、15%(重量)までの量のエマルジョン形成ポリオール中における代謝可能な油、また、場合によって、5%(重量)までの量のエマルジョン安定化ポリオール中におけるグリコールエーテルベースの界面活性剤を有することが好ましい。
抗体はまた、上記で説明した既知の選択法および/または突然変異誘発法を用いて、親和性成熟させることもできる。親和性成熟した抗体は、そこから成熟抗体を調製する出発抗体(一般に、マウス抗体、ウサギ抗体、ニワトリ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体)よりも2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、またはそれ以上大きな親和性を有しうる。見かけの親和性は、酵素免疫測定法(ELISA)または当業者に知られる他の任意の技法などの方法により決定することができる。結合力は、スキャッチャード解析または当業者に知られる他の任意の技法などの方法により決定することができる。見かけの結合親和性を測定するための、当業者に知られる別の技法は、表面プラズモン共鳴法(BIACORE 2000システムにおいて解析する)である(Liljebladら、Glyco.J.、2000年、第17巻、323〜329頁)。標準的な測定および従来の結合アッセイは、Heeley,R.P.、Endocr.Res.、2002年、第28巻、217〜229頁により説明されている。
【0076】
一実施形態において、抗体は、ヒトLOXのプレプロタンパク質、分泌ヒトLOX、または他のリシル・オキシダーゼ様タンパク質もしくはリシル・オキシダーゼ関連タンパク質(例えば、LOXL1、LOXL2、LOXL3、およびLOXL4)の少なくとも1種に対する結合親和性よりも大きな結合親和性(例えば、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍大きい)により、タンパク質分解的プロセッシング後におけるLOXの成熟または活性形態に特異的および選択的に結合する。一実施形態において、抗体は、プロセッシングされていない形態および/またはプロセッシングされた(成熟)形態におけるLOXに特異的および選択的に結合する。一部の実施形態では、プロセッシングされていないLOXもまた活性であるが、LOXの成熟形態が活性であることが典型的である。
別の実施形態において、抗体は、ヒトLOXのプレプロタンパク質、成熟もしくは活性のヒトLOX、または他のリシル・オキシダーゼ様タンパク質もしくはリシル・オキシダーゼ関連タンパク質(例えば、LOXL1、LOXL2、LOXL3、およびLOXL4)の少なくとも1種に対する結合親和性よりも大きな結合親和性(例えば、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍大きい)により、シグナル・ペプチドの切断後における分泌ヒトLOXなど、LOXの分泌形態に特異的および選択的に結合する。
さらに別の実施形態において、抗体は、プロセッシングされていない生成物、成熟生成物、活性生成物、および/または分泌生成物中におけるヒトLOX、成熟もしくは活性のヒトLOX、LOXの分泌形態、または他のリシル・オキシダーゼ様(LOL)タンパク質もしくはリシル・オキシダーゼ関連タンパク質(例えば、LOXL1、LOXL3、およびLOXL4)の少なくとも1種に対する結合親和性よりも大きな結合親和性(例えば、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍大きい)により、LOXL2に特異的および選択的に結合する。一実施形態において、抗体は、プロセッシングされていない形態および/またはプロセッシングされた(成熟)形態におけるLOXL2に特異的および選択的に結合する。一部の実施形態では、プロセッシングされていないLOXL2もまた活性であるが、LOXL2の成熟形態が活性であることが典型的である。
【0077】
抗体は、他のリシル・オキシダーゼ様タンパク質もしくはリシル・オキシダーゼ関連タンパク質(例えば、LOXL1、LOXL3、およびLOXL4)の少なくとも1種に対する結合親和性よりも大きな結合親和性(例えば、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍大きい)により、ヒトLOXまたはひとLOXL2の両方に対して結合しうる。
酵素に結合する抗体は、競合的阻害剤の場合もあり、不競合的阻害剤の場合もあり、非競合的阻害剤の場合もある。競合的阻害の場合、阻害剤は通常、基質に対する構造的類似性を保有する。低基質濃度では阻害が認められるが、高基質濃度では圧倒される場合がある。不競合的阻害の場合、阻害剤は、基質が活性部位に結合した後で結合可能となる部位に結合する。高基質濃度において、阻害は最もよく認められる。非競合的阻害の場合、阻害剤は、基質結合部位から離れた部位で結合する。相対的阻害は、一般に、すべての基質濃度で同一である。競合的阻害剤、不競合的阻害剤、および非競合的阻害剤として作用する抗体の作用機構を、
図4に示す。本明細書に記載の抗体は、競合的阻害剤の場合もあり、不競合的阻害剤の場合もあり、非競合的阻害剤の場合もある。一態様において、本明細書に記載の抗体は、非競合的阻害剤でありうる。
一態様において、本明細書に記載の抗体は、非競合的阻害剤、すなわち、酵素が基質(コラーゲン)に結合しているかどうかにかかわらず、LOXまたはLOXL2の酵素活性を遮断する抗体である。
LOX/LOXL2に対する抗体の結合は、(1)LOX/LOXL2の取込みもしくは内部化(例えば、インテグリン・ベータ1または他の細胞受容体もしくはタンパク質を介する)を低下させるかもしくは阻害すること、および/または(2)LOXもしくはLOXL2の酵素活性を低下させるかもしくは阻害することが可能である。このような抗体は、EMTを軽減することが可能であり、これにより、本明細書で開示される適用に有用であると考えられる。本明細書に記載の抗体は、LOXまたはLOXL2のタンパク質分解的切断部位に結合し、これにより、LOXまたはLOXL2のプロセッシングを効果的に遮断(阻害)して、活性LOXまたは活性LOXL2のレベルを低下させることが可能である。このような阻害は、LOXまたはLOXL2への直接的結合によるか、あるいは立体障害、LOXもしくはLOXL2の酵素的変更、転写もしくは翻訳の阻害、mRNA転写物の不安定化、LOXもしくはLOXL2の移出、プロセッシング、または局在化の低減などを含む間接的な干渉により生じることがある。
【0078】
ECMタンパク質の代わりに細胞レポーター(例えば、取込みレポーターであるインテグリン・ベータ1)、BTK(バートン無ガンマグロブリン血症チロシン・キナーゼ)、または他のインテグリンが用いられる前出のアッセイを用いて、細胞レポーター(例えば、取込みレポーターであるインテグリン・ベータ1)、BTK(バートン無ガンマグロブリン血症チロシン・キナーゼ)、または他のインテグリンなどの他のタンパク質とのLOX/LOXL2の結合もまた行われる。
ECMタンパク質、細胞レポーター、およびインテグリンに対するLOX/LOXL2の結合を阻害するこれらの抗LOX/LOXL2抗体が、さらなる開発のための候補物質として選択される。一実施形態において、ECMタンパク質、細胞レポーター、およびインテグリンに対するLOX/LOXL2の結合を阻害する抗LOX/LOXL2抗体は、非競合的阻害剤である。
一実施形態において、本明細書に記載の抗体は、LOXの触媒ドメインに特異的に結合する。C末端領域内におけるこのドメインは、触媒活性に必要とされるエレメント(銅結合部位、カルボニル補因子に寄与するチロシル残基およびリシル残基、ならびに10個のシステイン残基)を含有する。さらなる詳細については、Thomassinら、「The Pro−regions of lysyl oxidase and lysyl oxidase−like 1 are required for deposition onto elastic fibers」、J Biol.Chem、2005年12月30日、第280巻、第52号、42848〜55頁を参照されたい。
【0079】
本明細書では、LOXに結合し、かつ/またはLOXの活性を阻害する抗体またはそれらの抗原結合フラグメントが提供される。LOXに結合し、かつ/またはこれを阻害する抗LOX抗体およびそれらの抗原結合フラグメントは、本明細書に記載の精製法、診断法、および治療法において用いられる。抗体は、全長のLOX/LOXL2および/またはプロセッシングされたLOX/LOXL2の両方に結合しうる。
本明細書では、配列番号3として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、配列番号4または5として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む、単離抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
一態様において、本明細書では、配列番号3として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域を含む、単離抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。別の態様において、本明細書では、配列番号4または5として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む、単離抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
本明細書では、LOXに対する結合について、本明細書に記載の抗LOX抗体またはその抗原結合フラグメントと競合するか、またはこれに特異的に結合する、抗体またはそれらの抗原結合フラグメントがさらに提供される。一実施形態において、本明細書に記載の抗LOX抗体は、非競合的阻害剤である。
そのような抗体または抗原結合フラグメントのいずれかは、LOXL1、LOXL2、LOXL3、またはLOXL4の少なくとも1種に対する場合よりも少なくとも2、5、10、50、100、500、または1000倍大きな結合親和性で、LOXに特異的に結合しうる。
【0080】
一実施形態において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントは、全長のLOXおよびプロセッシングされたLOXの両方に結合しうる。一態様において、全長のLOXおよびプロセッシングされたLOXは共に、該酵素の活性形態である。
本明細書では、LOXL2に結合し、かつ/またはLOXL2の活性を阻害する抗体またはそれらの抗原結合フラグメントが提供される。LOXL2に結合し、かつ/またはこれを阻害する抗LOXL2抗体およびそれらの抗原結合フラグメントは、本明細書に記載の精製法、診断法、および治療法において用いられる。
本明細書では、配列番号6として示されるアミノ酸配列を有するエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。該抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号1として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、配列番号2として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含みうる。
また、本明細書では、配列番号1として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域と、配列番号2として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域とを含む、単離抗体またはその抗原結合フラグメントも提供される。
【0081】
一態様において、本明細書では、配列番号1として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する重鎖可変領域が提供される。別の態様において、本明細書では、配列番号2として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域が提供される。
本明細書では、LOXL2に対する結合について、前出の抗体またはそれらの抗原結合フラグメントのいずれかと競合するか、またはこれらに特異的に結合する、抗体または抗原結合フラグメントがさらに提供される。
このような抗体または抗原結合フラグメントのいずれかは、LOX、LOXL1、LOXL3、またはLOXL4の少なくとも1種に対する場合よりも少なくとも2、5、10、50、100、500、または1000倍大きな結合親和性で、LOXL2に特異的に結合しうる。
一実施形態において、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントは、LOXL2のSRCR3〜4領域に特異的に結合し、これにより、全長のLOXL2およびプロセッシングされたLOXL2の両方に結合しうる。一態様において、全長のLOXL2およびプロセッシングされたLOXL2は共に、該酵素の活性形態である。抗体は、例えば、配列番号6として示されるアミノ酸配列を有するエピトープに特異的に結合する。このような抗体は、in vitroにおいて、酵素活性の不競合的な部分的阻害剤として用いることができ、1,5−ジアミノペンタン基質に対する酵素活性の約半分を、20〜30nMの見かけのIC
50により阻害する。このような抗体は、非競合的阻害剤としても用いることができる。
【0082】
抗体をヒト化する場合、例えば、組換え合成および化学合成を含む、当業者に知られる各種の方法により、FRおよび/またはCDRをコードするすべての核酸および選択されたすべてのアミノ酸位置の変化の同時的な組込みを達成することができる。例えば、ドナーCDRをコードする核酸と共に融合された、アクセプターの可変領域に対応するヌクレオチド配列を化学合成し、変化するアミノ酸残基が現れる選択された位置において複数の対応するアミノ酸コドンを組み込むことにより、例えば、同時的な組込みを達成することができる。
本明細書では、LOXまたはLOXL2に結合する抗体およびそれらの抗原結合フラグメントが提供される。LOXまたはLOXL2に結合する抗体およびそれらの抗原結合フラグメントにより、異常なLOXまたはLOXL2の発現と関連する症状、および/またはこれにより引き起こされる症状を(部分的または完全に)阻害するか、または(部分的または完全に)管理/治療することができる。本出願はまた、該抗体を作製するのに用いうる細胞株、該細胞株を作製するための方法、抗体または抗原結合フラグメントを発現してこれを精製するための方法も提供する。
本明細書に記載の方法を用いて作製される、LOXまたはLOXL2に特異的に結合する抗体およびそれらの抗原結合フラグメントは、LOXまたはLOXL2に対する結合能(例えば、ELISA)の他、親和性(例えば、Biacoreまたは表面プラズモン共鳴)についての、本明細書で提供されるかまたは当技術分野で知られるアッセイを用いて調べうると認めることができる。
【0083】
抗LOX抗体および抗LOXL2抗体のヒト化形は、以下の特性:マウス・モノクローナル抗体の阻害機能の保持、緩徐な解離速度(例えば、Kd=0.1〜1nM)を有する同等以上の結合親和性、全長LOX/LOXL2および/またはプロセッシングされたLOX/LOXL2に対する結合、酵素活性の非競合的な部分的阻害、同等以上のIc50(例えば、約30nM)、細胞ベースの遊走/浸潤アッセイにおける阻害活性、腫瘍細胞の条件培地中において分泌LOX/LOXL2により誘導されるEMT様変化の阻害、ヒト腫瘍生細胞により生成されるマトリックスに関連するLOX/LOXL2に対する結合、ヒトLOX/LOXL2に対する結合のマウスLOX/LOXL2に対する結合との交差反応性、治療的有効性(例えば、腫瘍サイズおよび/または腫瘍症状の部分的または軽減)、毒性の軽減および免疫原性の軽減の1つまたは複数を有する。
本明細書では、hLOXに結合するヒト化抗体、hLOXおよびmLOX(マウスLOX)に結合するヒト化抗体、hLOXL2に結合するヒト化抗体、hLOXL2およびmLOXL2(マウスLOXL2)に結合するヒト化抗体が提供される。一態様において、ヒト化抗体は、非競合的阻害剤である。
一実施形態において、ヒト化抗LOXL2抗体は、配列番号25、配列番号26、配列番号27、または配列番号28のアミノ酸配列を有するVH鎖を有する。抗体の親和性成熟のために、1つまたは複数のCDRまたはフレームワーク領域において、本明細書に記載の方法を用いて、保存的アミノ酸改変を作製しうることが理解されるであろう。このような方法により改変された抗体は、本明細書で説明されるかまたは当技術分野で知られる任意のアッセイを用いて、機能について調べることができる。
別の実施形態において、ヒト化抗LOXL2抗体は、配列番号30、配列番号31、または配列番号32のアミノ酸配列を有するVL鎖を有する。抗体の親和性成熟のために、1つまたは複数のCDRまたはフレームワーク領域において、本明細書に記載の方法を用いて、保存的アミノ酸改変を作製しうることが理解されるであろう。このような方法により改変された抗体は、本明細書で説明されるかまたは当技術分野で知られる任意のアッセイを用いて、機能について調べることができる。
【0084】
本明細書では、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む、LOXL2に結合するヒト化抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
前記重鎖可変領域が、
(i)配列番号33のアミノ酸配列、または
(a)位置24におけるバリン(V)によるグルタミン(Q)の置換もしくはその保存的置換、
(b)位置30におけるバリン(V)によるロイシン(L)の置換もしくはその保存的置換、
(c)位置31におけるリシン(K)によるバリン(V)の置換もしくはその保存的置換、
(d)位置32におけるリシン(K)によるアルギニン(R)の置換もしくはその保存的置換、および
(e)位置35におけるアラニン(A)によるトレオニン(T)の置換もしくはその保存的置換
からなる群から選択される1つまたは複数の置換、ならびにアミノ酸残基1〜19の欠失を除いて配列番号33のアミノ酸配列を有する重鎖FR1と、
(ii)配列番号34のアミノ酸配列、または
(a)位置3におけるアルギニン(R)によるリシン(K)の置換もしくはその保存的置換、および
(b)位置5におけるアラニン(A)によるアルギニン(R)の置換もしくはその保存的置換
からなる群から選択される1つまたは複数の置換を除いて配列番号34のアミノ酸配列を有する重鎖FR2と、
(iii)配列番号35のアミノ酸配列、または
(a)位置1におけるアルギニン(R)によるリシン(K)の置換もしくはその保存的置換、
(b)位置2におけるバリン(V)によるアラニン(A)の置換もしくはその保存的置換、
(c)位置4におけるイソロイシン(I)によるロイシン(L)の置換もしくはその保存的置換、
(d)位置10におけるトレオニン(T)によるセリン(S)の置換もしくはその保存的置換、
(e)位置16におけるグルタミン酸(E)によるグルタミン(Q)の置換もしくはその保存的置換、
(f)位置21におけるアルギニン(R)によるトレオニン(T)の置換もしくはその保存的置換、
(g)位置23におけるグルタミン酸(E)によるアスパラギン酸(D)の置換もしくはその保存的置換、
(h)位置25におけるトレオニン(T)によるセリン(S)の置換もしくはその保存的置換、および
(i)位置29におけるチロシン(Y)によるフェニルアラニン(F)の置換もしくはその保存的置換
からなる群から選択される1つまたは複数の置換を除いて配列番号35のアミノ酸配列を有する重鎖FR3と、
(iv)配列番号36のアミノ酸配列、または位置7におけるバリン(V)によるリシン(K)の置換もしくはその保存的置換を除いて配列番号36のアミノ酸配列を有する重鎖FR4と
を含み;
前記軽鎖可変領域が、
(i)配列番号49のアミノ酸配列、または
(a)位置27におけるトレオニン(T)によるアラニン(A)の置換もしくはその保存的置換、
(b)位置28におけるプロリン(P)によるアラニン(A)の置換もしくはその保存的置換、
(c)位置29におけるロイシン(L)によるプロリン(P)の置換もしくはその保存的置換、
(d)位置31におけるロイシン(L)によるバリン(V)の置換もしくはその保存的置換、
(e)位置37におけるグルタミン(Q)によるグルタミン酸(E)の置換もしくはその保存的置換、
(d)位置38におけるプロリン(P)によるセリン(S)の置換もしくはその保存的置換、および
(f)位置39におけるアラニン(A)によるバリン(V)の置換もしくはその保存的置換
からなる群から選択される1つまたは複数の置換、ならびにアミノ酸残基1〜20の欠失を除いて配列番号49のアミノ酸配列を有する軽鎖FR1と、
(ii)配列番号50のアミノ酸配列、または
(a)位置2におけるチロシン(Y)によるフェニルアラニン(F)の置換もしくはその保存的置換、および
(b)位置5におけるリシン(K)によるアルギニン(R)の置換もしくはその保存的置換
からなる群から選択される1つまたは複数の置換を除いて配列番号50のアミノ酸配列を有する軽鎖FR2と、
(iii)配列番号51のアミノ酸配列、または
(a)位置14におけるアスパラギン酸(D)によるアラニン(A)の置換もしくはその保存的置換、および
(b)位置18におけるリシン(K)によるアルギニン(R)の置換もしくはその保存的置換
からなる群から選択される1つまたは複数の置換を除いて配列番号51のアミノ酸配列を有する軽鎖FR3と、
(iv)配列番号52のアミノ酸配列、または位置7におけるバリン(V)によるロイシン(L)の置換もしくはその保存的置換を除いて配列番号52のアミノ酸配列を有する軽鎖FR4と
を含むヒト化抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0085】
一実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号33、37、または44で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域FR1;配列番号34、38、または45で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域FR2;配列番号35、39、46、47、または48で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域FR3;配列番号36または40で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域FR4;配列番号49または53で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域FR1;配列番号50、54、または60で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域FR2;配列番号51、55、または61で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域FR3;および配列番号52または56で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域FR4を含む。
本明細書に記載の重鎖可変領域および軽鎖可変領域と少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%まで同一の重鎖可変領域および軽鎖可変領域が、本出願の範囲内に包含される。
保存的置換は、これらのヌクレオチド配列および/またはアミノ酸のわずかな改変であり、重鎖および軽鎖をコードする核酸ならびにそれらの機能的フラグメントとして組入れることを意図する。このようなわずかな改変は、例えば、遺伝子コードの縮重によりコードされるアミノ酸配列を変化させない改変の他、コードされるアミノ酸配列の保存的置換だけを結果としてもたらす改変、または抗体の結合能を実質的に変化させない改変を含む。コードされるアミノ酸の保存的置換は、例えば、以下の群:(1)非極性アミノ酸(Gly、Ala、Val、Leu、およびIle)、(2)極性の中性アミノ酸(Cys、Met、Ser、Thr、Asn、およびGln)、(3)極性の酸性アミノ酸(AspおよびGlu)、(4)極性の塩基性アミノ酸(Lys、Arg、およびHis)、および(5)芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr、およびHis)内に帰属するアミノ酸を含む。核酸またはコードされるポリペプチドが、本明細書に記載のそれらの機能の一部または全部を保持し、それらが本明細書に記載の方法において用いられる限りにおいて、他のわずかな改変が、本発明の重鎖および軽鎖のポリペプチドをコードする核酸内に組入れられる。非保存的置換は、保存的置換として同定されない置換である。本明細書に記載の方法を用いると、フレームワークのアミノ酸残基を非保存的アミノ酸に置換し、本明細書の別の箇所で説明されるアッセイを用いて改変された抗体の機能を調べることが可能であるかどうかを確認することができる。
【0086】
改変された重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、当技術分野で知られ、本明細書に記載の方法を用いて、結合および活性についてスクリーニングすることができる。
可変ドメインの実質的な部分は、それらに介在するフレームワーク領域と共に、3つのCDR領域を含む。該部分はまた、第1および第4のフレームワーク領域の一方または両方の少なくとも約50%も含む場合があり、この50%は、第1のフレームワーク領域のC末端の50%および第4のフレームワーク領域のN末端の50%である。該可変ドメインの実質的部分のN末端またはC末端における付加的な残基は、天然の可変ドメイン領域とは通常関連しない残基でありうる。例えば、組換えDNA法により作製される、本明細書に記載のヒト化抗LOX抗体またはヒト化抗LOXL2抗体および抗原結合フラグメントの構築の結果、クローニングまたは他の操作ステップを容易化するために導入されるリンカーによりコードされるN末端残基またはC末端残基が導入される。他の操作ステップは、免疫グロブリン重鎖、他の可変ドメイン(例えば、ダイアボディの作製における)、または以下でより詳細に論じられるタンパク質レベルを含むさらなるタンパク質配列に可変ドメインを連結するリンカーの導入を含む。
例えば、本明細書に記載の可変重鎖または可変軽鎖に対して少なくとも50%の同一性を有する可変重鎖または可変軽鎖を有する抗体を含む、本出願内に包含される抗体を、抗LOX活性または抗LOXL2活性について評価することができる。
本明細書では、転移性腫瘍細胞増殖を阻害する抗体を同定する方法であって、LOXもしくはLOXL2またはLOXもしくはLOXL2を発現する細胞を候補抗体と接触させるステップと、LOXまたはLOXL2の発現または活性を判定するステップとを含み、該抗体の不在下において検出される発現または活性と比較して、LOXまたはLOXL2の発現または活性を低下させる候補抗体が、転移性腫瘍細胞増殖を阻害する化合物として同定される方法が提供される。特定の実施形態において、低酸素状態下で抗体をLOXもしくはLOXL2またはLOXもしくはLOXL2を発現する細胞と接触させる。一態様において、本明細書に記載の抗体は非競合的阻害剤でありうる。
【0087】
また、本明細書では、化学療法剤の有効性を増大させる抗体を同定する方法であって、LOXもしくはLOXL2またはLOXもしくはLOXL2を発現する細胞を候補抗体と接触させるステップと、LOXまたはLOXL2の発現または活性を判定するステップとを含み、該抗体の不在下において検出される発現または活性と比較して、LOXまたはLOXL2の発現または活性を低下させる候補抗体が、転移性腫瘍細胞増殖の阻害または軽減において化学療法剤の有効性を増大させる抗体として同定される方法も提供される。
LOXまたはLOXL2の任意の適切な供給源を、本方法における抗体標的として用いることができる。該酵素は、検出可能な試薬を生成しうる適切な生成物の作製を可能とするか、または適切なアッセイにおいて生物学的に活性である、酵母、細菌、および哺乳類を含む、当技術分野で知られる任意の供給源に由来するか、該供給源から単離するか、もしくは該供給源から組換えにより作製することができる。
LOXまたはLOXL2の酵素活性は、本明細書で説明されるかまたは当技術分野で知られる任意の適切な方法により評価することができる。LOXまたはLOXL2の活性を評価する例示的な方法は、Trackmanら、Anal.Biochem.、第113巻、336〜342頁(1981年);Kaganら、Methods Enzymol.、第82A巻、637〜49頁(1982年);Palamakumburaら、Anal.Biochem.、第300巻、245〜51頁(2002年);Albiniら、Cancer Res.、第47巻、3239〜45頁(1987年);Kamathら、Cancer Res.、第61巻、5933〜40頁(2001年);米国特許第4,997,854号;および米国特許出願第2004/0248871号の方法を含む。例えば、酵素活性は、H
2O
2生成物などの「リシル・オキシダーゼ副生成物」;コラーゲンのピリジニウム残基、アンモニウム生成物;アルデヒド生成物の生成;リシルの酸化、デオキシピリジノリン(Dpd)−以下で論じる−の検出および/または定量化により評価することができる。また、in vitroにおける細胞浸潤能;in vitroにおける細胞の接着および増殖;ならびにin vivoにおける転移成長を検出および定量化することもできる。in vivoモデルは、適切な同系モデル、ヒト腫瘍異種移植モデル、同所モデル、転移モデル、トランスジェニック・モデル、および遺伝子ノックアウト・モデルを含むがこれらに限定されない(例えば、Teicher、「Tumors Models in Cancer Research」(Humana Press社、2001年)を参照されたい)。
【0088】
低酸素状態は、誘導も自然発生も可能である。低酸素領域は、充実性腫瘍の内部において生じることが多い。低酸素状態はまた、腫瘍への動脈血流の低下もしくは途絶、または血管収縮化合物の投与を用いて、特に、実験動物モデルにおいて、in vivoで誘導することもできる。米国特許第5,646,185号を参照されたい。例示的な血管収縮化合物は、ノルエピネフリン、エピネフリン、フェニレフリン、およびコカインなどの、直接的および間接的なアドレナリン作用アゴニストを含む。対象において存在する充実性腫瘍内における低酸素領域の存在は、核磁気共鳴(NMR)および酸素電極pO
2ヒストグラフィーを含む、当技術分野で現在知られる多数の方法により観察することができる。このような方法を本発明との関連(以下で説明する)で用いて、低酸素の治療標的領域を同定し、このような領域への治療用組成物の投与を導くことができる。in vitroにおいて、低酸素状態は任意の適切な方法を用いて誘導することができる。例えば、嫌気性チャンバー内における37℃の無酸素(<0.1%O
2)状態下、またはN
2で平衡化した5%CO
2および1〜2%O
2で満たされたモジュラー・インキュベーター・チャンバー内における37℃の低酸素(1〜2%O
2)状態下で細胞を維持することができる。例えば、Eulerら、Mol.Cell.Biol.、第24巻、2875〜89頁(2004年)を参照されたい。
任意の適切な長さの時間にわたり、任意の適切な方法で、LOX酵素もしくはLOXL2酵素またはLOXもしくはLOXL2を発現する細胞を化合物(例えば、抗体などのLOX/LOXL2阻害剤)と接触させることができる。作用物質の皮下送達で到達可能な腫瘍領域の場合、低酸素領域内に直接化合物を注射することが望ましい場合がある。インキュベーションまたは治療時においては、細胞を複数回にわたり化合物と接触させることができる。抗体に必要とされる用量は、約1マイクロg/ml〜1000マイクロg/mlの範囲であることが典型的であり、約100μg/ml〜約800μg/mlの範囲であることがより典型的である。正確な用量は、細胞のin vitro培養物および各用量の化合物に対する細胞の曝露から容易に決定することができる。細胞を化合物と接触させる時間の長さは、約5分間、約15分間、約30分間、約1時間、約4時間、約12時間、約36時間、約48時間〜約3日間以上であることが典型的であり、またより漠然に述べると、約24時間にわたることがより典型的である。in vitroにおける浸潤アッセイには、任意の適切なマトリックスを用いることができる。一実施形態において、該マトリックスは、再構成された基底膜であるMatrigel(商標)マトリックス(BD Sciences社製)である。
【0089】
スクリーニング法はまた、FAKレベルを測定するステップも含みうる。以下で説明する通り、FAK(焦点接着キナーゼ[p125FAK])は、細胞運動過程の一部として活性化される。LOXが阻害されると、低酸素状態下でFAKのリン酸化が上昇しない。化合物スクリーニングアッセイにおいて、第2のステップは、被験抗体の添加を伴う場合および伴わない場合の両方によるホスホFAKレベルの検出を含みうる。被験阻害抗体もまた、ホスホFAKレベルを低下させるであろう。
抗体の不在下において観察される場合と比べてLOXまたはLOXL2の発現または活性を低下させる場合、抗体は、LOXまたはLOXL2の発現または生物学的活性に対する阻害剤である。一実施形態において、抗体の不在下において観察される場合と比べて転移の発症を低下させ、さらなる試験において、転移性腫瘍増殖を阻害する場合、抗体は、LOXまたはLOXL2の阻害剤である。一態様において、本明細書に記載の抗体は、非競合的阻害剤である。腫瘍の阻害は、任意の簡便な測定法を用いて定量することができる。転移の発症は、相対播種(例えば、関与する臓器系の数)およびこれらの部位における相対全身腫瘍組織量を検査することにより評価することができる。転移成長は、適切な顕微鏡解析または肉眼解析により確認することができる。腫瘍の転移は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上軽減されうる。一部の実施形態では、抗体を、LOXまたはLOXL2の発現または生物学的活性に影響を及ぼさない他の抗体または化合物と比べて評価することができる。被験抗体は、腫瘍接種時、原発腫瘍の増殖確立後、または局所および/もしくは遠隔の転移確立後において投与することができる。被験抗体の単回または複数回の投与は、静脈内、腹腔内、腫瘍内、皮下、および皮内を含むがこれらに限定されない任意の簡便な投与方式を用いて行うことができる。
本方法と共に、LOXまたはLOXL2を発現する任意の適切な細胞を用いることができる。本明細書で用いられる「細胞」という用語は、生体細胞(例えば、CHO細胞、HeLa細胞など)を含む。細胞は、ヒト細胞でも非ヒト細胞でもありうる。細胞は、新たに単離する場合もあり(すなわち、初代細胞)、短期的または長期的に確立された細胞株に由来する場合もある。例示的な生体細胞株は、MDA−MB 231ヒト乳癌細胞、MDA−MB 435ヒト乳癌細胞、U−87 MG神経膠腫細胞、SCL1扁平上皮細胞癌細胞、CEM細胞、HeLa上皮癌細胞、およびチャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞を含む。このような細胞株は、例えば、American Type Culture Collection(ATCC、メリーランド州、ロックビル)の「細胞株カタログ」において説明されている。
【0090】
細胞は、LOXもしくはLOXL2またはそのプロモーターを内因的または外因的(例えば、遺伝子の安定的な導入の結果として)に発現することが可能である。本明細書で提供される、細胞による内因的な発現は、内因的遺伝子の構成的発現または誘導性発現から生じうる。
本明細書で提供される細胞による外因的発現は、LOXもしくはLOXL2またはこれらの生物学的に活性なフラグメントをコードする核酸、あるいはLOXまたはLOXL2のプロ−モーター核酸配列の導入から生じうる。形質転換は、ウイルス・ベクター、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、電気穿孔、微粒子銃、陽イオン脂質試薬、または当技術分野で知られる従来の他の任意の技法を用いて達成することができる。本発明において有用な形質転換の方法は従来のものであり、「Current Protocols in Molecular Biology」(Ausubelら編、2000年)において例示されている。リシル・オキシダーゼまたはそのプロモーターの外因的発現は、一過性発現、安定的発現、またはこれらの何らかの組合せでありうる。酵素の外因的発現は、当技術分野で知られる構成的プロモーター、例えば、SV40プロモーター、CMVプロモーターなど、および誘導性プロモーターを用いて達成することができる。適切なプロモーターは、対象の細胞において機能するプロモーターである。
本明細書に記載の方法は非限定的であり、当技術分野で知られる他の任意の方法もまた、抗LOX抗体および抗LOXL2抗体の活性を調べるのに用いることができる。さらなるアッセイは、以下の実施例で説明される。
場合によっては、本発明の標識と抗体部分との間に、構造化されないポリペプチド・リンカー領域を導入することも必要でありうる。リンカーは、可撓性の増強を容易化し、かつ/または任意の2つのフラグメント間における立体障害を軽減することができる。リンカーはまた、各フラグメントが適当なフォールディングを行うことを容易にすることもできる。リンカーは、タンパク質の2つのドメイン間のランダムコイルにおいて存在することが決定される配列など、天然起源でありうる。例示的なリンカー配列は、RNAポリメラーゼaサブユニットのC末端ドメインとN末端ドメインの間において見出されるリンカーである。天然リンカーの他の例は、lC1Iタンパク質およびLexAタンパク質において見出されるリンカーを含む。
【0091】
リンカー内におけるアミノ酸配列は、経験的に決定されるかまたはモデル化により明らかにされるリンカーの好ましい特性に基づき変化させることができる。リンカーを選択する際の考慮点は、リンカーの可撓性、リンカーの電荷、および天然のサブユニットにおけるリンカーの一部のアミノ酸の存在を含む。リンカーはまた、リンカー内における残基がDNAに接触し、これにより、結合の親和性もしくは特異性に影響を及ぼすか、または他のタンパク質と相互作用するようにも設計することができる。一部の場合において、特に、サブユニット間におけるより長い距離にわたる必要がある場合か、またはドメインが特定の立体構造において保持されなければならない場合、リンカーは、場合によって、折りたたまれた付加的ドメインを含有することがある。
一部の実施形態において、リンカーの設計は、リンカーが比較的短い距離、好ましくは、約10オングストローム(Å)未満にわたることを必要とするドメインの配置を伴うことが好ましい。しかし、特定の実施形態において、リンカーは、約50Åの距離にわたる。
本明細書において、抗体は、治療用部分および/または造影/検出可能部分にコンジュゲートまたは連結されるように提供される。抗体をコンジュゲートまたは連結する方法は、当技術分野でよく知られている。抗体と標識との間における結合は、共有結合および非共有結合による相互作用を含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られる任意の手段を含む。
非限定的な一実施形態において、抗体は、癌細胞に送達された場合に毒性である毒素、放射性核種、鉄類縁化合物、色素、造影試薬、蛍光標識、または化学療法剤と結合させることができる。
【0092】
あるいは、抗体は、標的抗原の免疫検出のための放射性核種、鉄類縁化合物、色素、造影剤、蛍光剤などの検出可能標識と結合させることができる。
放射性標識の非限定的な例は、例えば、
32P、
33P、
43K、
52Fe、
57Co、
64Cu、
67Ga、
67Cu、
68Ga、
71Ge、
75Br、
76Br、
77Br、
77As、
77Br、
81Rb/
81MKr、
87MSr、
90Y、
97Ru、
99Tc、
100Pd、
101Rh、
103Pb、
105Rh、
109Pd、
111Ag、
111In、
113In、
119Sb、
121Sn、
123I、
125I、
127Cs、
128Ba、
129Cs、
131I、
131Cs、
143Pr、
153Sm、
161Tb、
166Ho、
169Eu、
177Lu、
186Re、
188Re、
189Re、
191Os、
193Pt、
194Ir、
197Hg、
199Au、
203Pb、
211At、
212Pb、
212Bi、および
213Biを含む。
毒素の非限定的な例は、例えば、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、エキソトキシンA鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン・タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロミン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、トリコテセン、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)ホスホリパーゼC(PLC)、ウシ膵臓リボヌクレアーゼ(BPR)、抗ウイルスタンパク質(PAP)、アブリン、コブラ毒因子(CVF)、ゲロニン(GEL)、サポリン(SAP)、ビスクミンを含む。
鉄類縁化合物の非限定的な例は、例えば、磁性酸化鉄粒子、第二鉄または第一鉄粒子であるFe
203およびFe
304を含む。鉄類縁化合物ならびにポリペプチド、タンパク質、およびペプチドを標識する方法は、例えば、それらのすべてが参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第4,101,435号および同第4,452,773号、ならびに米国公開出願第20020064502号および同第20020136693号において見出すことができる。
【0093】
特定の実施形態において、対象抗体は、細胞毒素または他の細胞増殖阻害化合物の送達を腫瘍細胞に局在化させるために、該作用物質に共有結合または非共有結合させることができる。例えば、該作用物質は、作用物質、酵素阻害剤、増殖阻害剤、溶解作用物質、DNAまたはRNAの合成阻害剤、膜透過性改変剤、DNA代謝物、ジクロロエチルスルフィド誘導体、タンパク質生成阻害剤、リボソーム阻害剤、アポトーシス誘導剤、および神経毒素からなる群から選択することができる。
特定の実施形態において、対象抗体は、腫瘍の造影に有用な作用物質と結合させることができる。このような作用物質は、金属;金属キレート剤;ランタニド;ランタニドキレート剤;放射性金属;放射性金属キレート剤;陽電子放出核種;マイクロバブル(超音波用);リポソーム;リポソームまたはナノスフェア内にマイクロ封入される分子;単結晶酸化鉄ナノ化合物;磁気共鳴造影剤;光吸収剤、光反射剤、および/または光散乱剤;コロイド粒子;近赤外線フルオロフォアなどのフルオロフォアを含む。多くの実施形態において、このような二次的官能基/部分は、比較的大型、例えば、少なくとも、25amuのサイズであり、多くの場合、少なくとも、50、100、または250amuのサイズである。
特定の実施形態において、二次的官能基は、金属をキレート化するキレート部分、例えば、放射性金属または常磁性イオンのキレート剤である。さらなる実施形態において、それは、放射線療法または造影の手順に有用な放射性核種のためのキレート剤である。
【0094】
本発明内において有用な放射性核種は、治療用に好ましいベータ放射体またはアルファ放射体を伴う、ガンマ線放射体、陽電子放射体、アウガー電子放射体、X線放射体、および蛍光放射体を含む。放射線療法における毒素として有用な放射性核種の例は、
32P、
33P、
43K、
52Fe、
57Co、
64Cu、
67Ga、
67Cu、
68Ga、
71Ge、
75Br、
76Br、
77Br、
77As、
77Br、
81Rb/
81MKr、
87MSr、
90Y、
97Ru、
99Tc、
100Pd、
101Rh、
103Pb、
105Rh、
109Pd、
111Ag、
111In、
113In、
119Sb、
121Sn、
123I、
125I、
127Cs、
128Ba、
129Cs、
131I、
131CS、
143Pr、
153Sm、
161Tb、
166Ho、
169Eu、
177Lu、
186Re、
188Re、
189Re、
191Os、
193Pt、
194Ir、
197Hg、
199Au、
203Pb、
211At、
212Pb、
212Bi、および
213Biを含む。好ましい治療用法放射性核種は、
188Re、
186Re、
203Pb、
212Pb、
212Bi、
109Pd、
64Cu、
67Cu、
90Y、
125I、
131I、
77Br、
211At、
97Ru、
105Rh、
198Au、および
199Ag、
166Ho、または
177Luを含む。その下でキレート剤が金属に配位結合する条件は、例えば、それらの各々が参照により本明細書に組み込まれる、Gasnowら、米国特許第4,831,175号、同第4,454,106号、および同第4,472,509号により説明されている。本発明内において、「放射性核種」と「放射性標識」とは互換的である。
99Tcは、すべての核医学部門で容易に用いられ、廉価であり、患者に与える放射線量が最小限であり、理想的な核造影特性を有するので、診断的適用にとって特に好適な放射性同位体である。
99Tcの半減期は6時間であり、これは、テクネシウム標識抗体の迅速な標的化が望ましいことを意味する。したがって、特定の好ましい実施形態において、改変抗体は、テクネシウム用のキレート剤を含む。
【0095】
さらに他の実施形態において、二次的官能基は、放射性増感剤、例えば、放射線に対する細胞の感受性を増大させる部分でありうる。放射性増感剤の例は、ニトロイミダゾール、メトロニダゾール、およびミソニダゾールを含む(参照により本明細書に組み込まれるDeVita,V.T.、「Harrison’s Principles of Internal Medicine」、68頁、ニューヨーク、McGraw−Hill Book社、1983年を参照されたい)。活性部分として放射性増感剤を含む改変抗体は、標的細胞に投与されて局在化される。放射線に対する個体の曝露時において、放射性増感剤は「励起され」、細胞の死滅を引き起こす。
キレート剤として用いることができ、本発明の抗体に対して誘導体化しうる多様な部分が存在する。例えば、キレート剤は、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンテトラ酢酸(DOTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、および1−p−イソチオシアナート−ベンジル−メチル−ジエチレントリアミンペンタ酢酸(ITC−MX)の誘導体でありうる。これらのキレート剤は、それにより該キレート剤を対象アンタゴニストに対する付着に用いうる側鎖上の基を有することが典型的である。このような基は、それにより、例えば、アミノ基にDOTA、DTPA、またはEDTAを結合させうる、例えば、ベンジルイソチオシアン酸を含む。
一実施形態において、キレート部分は、「NxSy」キレート部分である。本明細書で定義される「NxSyキレート」は、金属または放射性金属に配位結合する能力がある二官能性キレート剤を含み、好ましくは、N2S2コアまたはN3Sコアを有する。例示的なNxSyキレートは、例えば、Fritzbergら(1998年)、PNAS、第85巻、4024〜29頁;およびWeberら(1990年)、Chem.、第1巻、431〜37頁、およびこれらで引用される参考文献において説明されている。
【0096】
Jacobsenら(PCT出願第WO98/12156号)は、金属原子に結合する化合物を同定するための方法および組成物、すなわち結合部分の合成ライブラリーを提供している。該刊行物において説明される手法を用いて、後で抗体に付加して改変抗体を誘導しうる結合部分を同定することができる。
放射線診断法への適用におけるコンジュゲート・タンパク質の使用でしばしば遭遇する1つの問題は、腎臓における放射性標識部分断片の潜在的に危険な蓄積である。酸または塩基に不安定なリンカーを用いてコンジュゲートを形成する場合、該タンパク質からの放射性キレートの切断が生じることが有利である。大半の対象改変抗体、抗原結合フラグメント、およびペプチドがそうであると予測される通り、キレートが比較的低分子量である場合、キレートは腎臓内に貯留せず、尿中に排出され、これにより、放射能に対する腎臓の曝露が軽減される。しかし、特定の場合において、対象配位子中において酸または塩基に不安定なリンカーを用いることは、それらが標識タンパク質において用いられている同じ理由で有利でありうる。
したがって、当技術分野における標準的な方法により、特定の対象標識/改変抗体を合成して、例えば、配位子のカルボニル基と共に酸に不安定な結合を形成しうる反応性官能基を提供することができる。適切な酸に不安定な結合の例は、ヒドラゾン官能基およびチオセミカルバゾン官能基を含む。これらは、酸化炭水化物を、それぞれ、ヒドラジド、チオセミカルバジド、および官能基を保有するキレートと反応させることにより形成される。
あるいは、腎臓からの放射性標識クリアランスの増強に用いられている、塩基切断も用いることができる。例えば、Weberら、1990年、Bioconjg.Chem.、第1巻、431頁を参照されたい。ヒドラジド結合により抗体に二官能性キレートを結合させることにより、塩基感受性エステル部分をリンカーのスペーサー・アーム内に組み込むことができる。このようなエステル含有リンカー・ユニットは、それらの各々が、2つのアルキルエステルにより単一のエチレングリコール部分に連結される、2つの1,4−二酪酸ユニットの末端の2つのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル誘導体を有する、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)(EGS;イリノイ州、ロックフォード、Pierce Chemical社から市販される)により例示される。適切なアミン含有BFC(例えば、2−アミノベンジルDTPA)により1つのNHSエステルを置換しうる一方、他のNHSエステルは限定的な量のヒドラジンと反応する。結果として得られるヒドラジドは、アンタゴニストへの結合、2つのアルキルエステル官能基を含有する配位子−BFC間結合の形成に用いられる。このようなコンジュゲートは、生理的pHでは安定であるが、塩基性pHでは容易に切断される。
【0097】
放射性同位体のキレート化により標識された抗体は、放射線に誘導されるキレート剤の切断、および配位錯体の解離による放射性同位体の喪失を受ける。一部の場合において、該錯体から解離した金属は再錯化して、非特異的に局在化した同位体のより迅速なクリアランスと、したがって、非標的組織に対するより低い毒性とをもたらしうる。例えば、EDTAまたはDTPAなどのキレート剤化合物を患者に注入して、放出された放射性金属に結合するキレート剤のプールを供給し、遊離放射性同位体の尿中への排出を促進することができる。
さらに他の実施形態では、カルボランなどのホウ素アデンドに抗体を結合させる。例えば、カルボランは、当技術分野でよく知られる通り、ペンダント側鎖上におけるカルボキシル官能基により調製することができる。アミン・ペプチドへのこのようなカルボランの結合は、カルボランのカルボキシル基の活性化、およびアミノ基との縮合によるコンジュゲートの生成により達成することができる。このような改変抗体は、中性子捕捉療法で用いることができる。
本発明はまた、例えば、治療において有用であり、適切な非イオン化放射線と共に用いられる色素による対象アンタゴニストの改変も意図する。本発明の方法における光およびポルフィリンの使用もまた意図され、癌治療におけるそれらの使用は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、van den Bergh、Chemistry in Britain、第22巻、430〜437頁(1986年)により総説されている。
本発明の一実施形態は、蛍光標識で標識されたアンタゴニストを含む。一般的な蛍光標識は、例えば、FITC、PE、テキサス・レッド、サイトクロームcなどを含む。本明細書に記載の技法など、ポリペプチドおよびそれらのフラグメントを標識する技法は、当技術分野でよく知られている。
【0098】
「抗癌剤」という用語はまた、以下で説明される化学療法剤も含む。抗癌剤という用語はまた、このような作用物質がLOX阻害剤と組み合わされる場合、細胞内における低酸素状態を軽減する物質による治療も含む。このような物質は、例えば、p53を含みうる。例えば、2006年5月24日にインターネットで公表された、Matobaら、「p53 Regulates Mitochondrial Respiration」、Science、第312巻、2006年6月16日、1650〜1653頁、および該文献に引用された参考文献を参照されたい。この場合、LOXを上方調節しない限りにおいて、癌細胞を呼吸経路へと動員し、解糖経路から除去する物質が、LOX阻害剤と共に有利に用いられる。
本発明のアンタゴニストにコンジュゲートされると細胞に特異的に送達される活性部分として有用な化学療法剤は、化学合成により作製される低分子の化学的実体であることが典型的である。化学療法剤は、細胞傷害薬および細胞増殖抑制薬を含む。化学療法剤は、形質転換状態から分化状態への可逆化など、細胞に対する他の効果を及ぼす化学療法剤、または細胞複製を阻害する化学療法剤を含みうる。本発明において有用な既知の細胞傷害剤の例は、例えば、Goodmanら、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、第6版、A.B.Gilmanら編、ニューヨーク、Macmillan Publishing社、1980年において挙げられている。これらは、パクリタキセルおよびドセタキセルなどのタキサン;メクロレタミン、メルファラン、ウラシル・マスタード、およびクロラムブシルなどの窒素剤;チオテパなどのエチレンイミン誘導体;ブスルファンなどのスルホン酸アルキル;ロムスチン、セムスチン、およびストレプトゾシンなどのニトロソウレア;デカルバジンなどのトリアゼン;メトトレキサートなどの葉酸類似体;フルオロウラシル、シタラビン、およびアザリビンなどのピリミジン類似体、メルカプトプリンおよびチオグアニンなどのプリン類似体;ビンブラスチンおよびビンクリスチンなどのビンカ・アルカロイド;ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、およびマイトマイシンなどの抗生剤;などの酵素;シスプラチンなどの白金配位錯体;ヒドロキシウレアなどの置換尿素;プロカルバジンなどのメチルヒドラジン誘導体;ミトタンなどの副腎皮質抑制剤;副腎皮質ステロイド(プレドニゾン)、プロゲスチン(カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸ヒドロキシプロゲステロン、および酢酸メゲストロール)、エストロゲン(ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオール)、およびアンドロゲン(プロピオン酸テストステロンおよびフルオキシメステロン)などのホルモンおよびアンタゴニストを含む。
【0099】
タンパク質の合成に干渉する薬剤もまた用いることができ、このような薬剤は当業者に知られており、ピューロマイシン、シクロヘキシミド、およびリボヌクレアーゼを含む。
癌の治療で現在用いられる大半の化学療法剤は、本発明の作用物質のアミン基またはカルボキシル基と直接に化学架橋形成しやすい官能基を保有する。例えば、メトトレキサート、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シトシンアラビノシド、ブレオマイシン、フルダラビン、およびクラドリビン上では遊離アミノ基が用いられる一方、メトトレキサート、メルファラン、およびクロラムブシル上では遊離カルボン酸基が用いられる。
これらの官能基、すなわち、遊離アミノ基および遊離カルボン酸基は、これらの薬剤をアンタゴニストの遊離アミノ基に直接架橋しうる、各種のホモ二官能性およびヘテロ二官能性の化学架橋形成剤のための標的である。
本発明により意図される化学療法剤はまた、市販される他の化学療法薬も含む。例示のためだけに述べると、化学療法剤は、クロマチン機能の阻害剤、阻害剤、阻害薬、DNA損傷剤、代謝拮抗剤(葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体、および糖修飾類似体など)、DNA合成阻害剤、DNA相互作用剤(挿入剤など)、DNA修復阻害剤でありうる。
【0100】
化学療法剤は、それらの作用機構により、例えば以下の群:ピリミジン類似体(フロクスウリジン、カペシタビン、およびシタラビン)およびプリン類似体、葉酸アンタゴニストおよびビンカ・アルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン)などの天然生成物を含む類縁の抗増殖/抗有糸分裂剤などの代謝拮抗剤/抗癌剤、ならびにタキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン、およびナベルビンなどの微小管阻害剤、エピポドフィロトキシン(エトポシド、テニポシド)、DNA損傷剤(アクチノマイシン、アムサクリン、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イホスファミド、メルファラン、メクロレタミン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホルアミド、およびエトポシド);ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、およびマイトマイシンなどの抗生剤;酵素(L−アスパラギンを全身的に代謝し、それら自身のアスパラギンを合成する能力を有さない細胞を除去するL−アスパラギナーゼ);抗血小板剤;ナイトロジェン・マスタード(シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、ならびにヘキサメチルメラミンおよびチオテパ、アルキル・ニトロソウレア(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン、トラゼン−ダカルバジニン(DTIC)などの抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤;葉酸類似体(メトトレキサート)などの抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗剤;白金配位錯体(シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド)、およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール);抗凝血剤(ヘパリン、ヘパリンの合成塩、およびトロンビンの他の阻害剤);線溶剤(組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼ、およびウロキナーゼなど)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル;抗遊走剤;抗分泌剤(ブレベルジン);免疫抑制剤(タクロリムス、シロリムス、アザチオプリン、マイコフェノール酸);化合物(TNP−470、ゲニステイン)および成長因子阻害剤(血管内皮成長因子阻害剤、線維芽細胞増殖因子阻害剤);アンジオテンシン受容体遮断剤、一酸化窒素供与体;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ、リツキシマブ);細胞周期阻害剤および分化誘導剤(トレチノイン);阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカンおよびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、およびプレドニゾロン);成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;機能不全誘導剤、コレラ・トキシン、リシン、シュードモナス属エキソトキシン、百日咳菌(Bordetella pertussis)アデニル酸シクラーゼ・トキシン、またはジフテリア・トキシンなどの毒素、およびカスパーゼ活性化因子;ならびにクロマチンに類別することができる。化学療法剤の好ましい用量は、現在処方される用量と符合する。
【0101】
加えて、ビオチンに続く、ストレプトアビジン・アルカリ・ホスファターゼ(AP)、西洋ワサビ・ペルオキシダーゼなどの他の標識も、本発明により意図される。
本明細書で用いられる「核酸損傷治療」および「核酸損傷剤」という用語は、核酸(例えば、DNA、cDNA、ゲノムDNA、mRNA、tRNA、またはrRNA)を直接的または間接的に損傷する任意の治療レジメンを指す。このような作用物質の例は、アルキル化剤、ニトロソウレア、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、植物抽出物、および放射性同位体を含む。作用物質の例はまた、核酸損傷剤、例えば、5−フルオロウラシル(5−FU)、カペシタビン、S−1(テガフール、5−クロロ−2,4−ジヒドロキシピリジン、およびオキソニン酸)、5−エチニルウラシル、アラビノシルシトシン(ara−C)、5−アザシチジン(5−AC)、2’,2’−ジフルオロ−2’−デオキシシチジン(dFdC)、プリン代謝拮抗剤(メルカプトプリン、アザチオプリン、チオグアニン)、塩酸ゲムシタビン(Gemzar)、ペントスタチン、アロプリノール、2−フルオロ−アラビノシル−アデニン(2F−ara−A)、ヒドロキシウレア、硫黄マスタード(ビスクロロエチルスルフィド)、メクロレタミン、メルファラン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、チオテパ、AZQ、マイトマイシンC、ジアンヒドロガラクチトール、ジブロモズルシトール、スルホン酸アルキル(ブスルファン)、ニトロソウレア(BCNU、CCNU、4−メチルCCNU、またはACNU)、プロカルバジン、デカルバジン、レベッカマイシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン;ADR)、ダウノルビシン(Cerubicine)、イダルビシン(Idamycin)、およびエピルビシン(Ellence)などのアントラサイクリン、ミトキサントロンなどのアントロサイクリン類似体、アクチノマイシンD、エピポドフィロトキシン(エトポシド=VP16、テニポシド=VM26)、ポドフィロトキシンなどの非挿入型トポイソメラーゼ阻害剤、ブレオマイシン(Bleo)、ペプレオマイシン、白金誘導体(例えば、シスプラチン(CDDP)、シスプラチンのトランス類似体、カルボプラチン、イプロプラチン、テトラプラチン、およびオキサリプラチン)を含む、核酸と共に付加体を形成する化合物、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン(CPT−11)、およびSN−38も含む。核酸損傷治療の具体例は、放射線(例えば、集中マイクロ波、紫外線(UV)、赤外線(IR)、またはアルファ放射、ベータ放射、もしくはガンマ放射)および環境ショック(例えば、温熱療法)を含む。
【0102】
本明細書で用いられる「抗増殖治療」および「抗増殖剤」という用語は、該治療または作用物質が核酸を損傷するかどうかにかかわらず、細胞、ウイルス、細菌、または他の単細胞もしくは多細胞生物の増殖を直接的または間接的に阻害する任意の治療レジメンを意味する。抗増殖剤の具体例は、細胞増殖またはウイルスの増殖もしくは複製を阻害する、抗腫瘍薬および抗ウイルス薬である。例は、とりわけ、シクロホスファミド、アザチオプリン、シクロスポリンA、プレドニゾロン、メルファラン、クロラムブシル、メクロレタミン、ブスルファン、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、チオグアニン、シトシンアラビノシド、タキソール、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾトシン、ヒドロキシウレア、シスプラチン、ミトタン、プロカルバジン、ダカルバジン、およびジブロモマンニトールを含む。核酸複製のエラーを引き起こすか、または核酸複製を阻害する抗増殖剤は、ヌクレオシド類似体およびヌクレオチド類似体(例えば、AZTまたは5−AZC)などの抗増殖剤である。
別の実施形態では、腫瘍のプレターゲッティングで用いるために、抗LOX抗体を「受容体」(ストレプトアビジンなどの)にコンジュゲートすることができ、この場合、抗体−受容体コンジュゲートを患者に投与した後で、清澄剤を用いて循環から結合しなかったコンジュゲートを除去し、次いで、細胞傷害剤(例えば、放射性核種)にコンジュゲートされた「リガンド」(例えば、アビジン)を投与する。
本明細書で提供される方法を含むがこれらに限定されないポリペプチドおよびそれらのフラグメントを標識する方法は、当技術分野でよく知られている。本発明の抗体を放射性標識または毒素で標識する場合、患者の治療的処置に有用な医薬組成物として該抗体を調製することができ、この場合、該医薬組成物を有効量で患者に投与する。本発明の抗体を可視化しうる標識で標識する場合、患者の診断に有用な医薬組成物として該抗体を調製することができ、この場合、in vivoでの造影に有効な量で該医薬組成物を患者に投与するか、または、in vitroアッセイにおいて該医薬組成物を調べる。
【0103】
V.組成物
本発明の各抗体は、薬学的に許容される担体または賦形剤と組み合わせる場合、組成物として用いることができる。このような医薬組成物は、例えば、in vivoもしくはex vivoにおける対象への投与、ならびに開示される抗体による対象の診断および/または治療に有用である。
薬学的に許容される担体は、投与される患者に対して生理学的に許容され、それと共に投与される抗体またはペプチドの治療特性を保持する。薬学的に許容される担体およびそれらの製剤は、一般に、例えば、「Remington’s pharmaceutical Sciences」(第18版、A.Gennaro編、ペンシルベニア州、イーストン、Mack Publishing社、1990年)において説明されている。例示的な薬学的担体の1つは、生理的食塩液である。本明細書で用いられる「薬学的に許容される担体」という表現は、1つの臓器または身体部分の投与部位から別の臓器または身体部分への対象抗体またはペプチドの移送または移動に関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料などの、薬学的に許容される材料、組成物、または媒体を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合的であり、患者に対して傷害性でないという意味において「許容され」なければならない。また、薬学的に許容される担体は、アンタゴニストの特異的活性も変化させないものとする。例示的な担体および賦形剤は、本明細書の別の箇所で提供されている。
一態様において、本発明は、医薬投与と適合する溶媒(水性または非水性)、溶液、エマルジョン、分散媒、被覆、等張剤および吸収促進剤または吸収遅延剤を含む薬学的に許容されるかまたは生理学的に許容される担体を提供する。したがって、医薬組成物または医薬製剤とは、対象における医薬使用に適する組成物を指す。医薬組成物および医薬製剤は、ある量の発明化合物、例えば、有効量の本発明のアンタゴニスト、および薬学的または生理学的に許容される担体を含む。
【0104】
医薬組成物は、全身または局所である特定の投与経路と適合するように調合することができる。こうして、医薬組成物は、各種の経路による投与に適する担体、希釈剤、または賦形剤を含む。
さらなる発明において、本発明の組成物は、組成物中におけるアンタゴニストの安定性を改善し、かつ/または該組成物の放出速度を制御するために、薬学的に許容される添加剤をさらに含む。本発明の薬学的に許容される添加剤は、対象アンタゴニストの特異的活性を変化させない。薬学的に許容される好ましい添加剤は、マンニトール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、トレハロース、ソルボース、スクロース、ガラクトース、デキストラン、デキストロース、フルクトース、ラクトース、およびこれらの混合物などの糖である。本発明の薬学的に許容される添加剤は、デキストロースなどの、薬学的に許容される担体および/または賦形剤と組み合わせることができる。あるいは、薬学的に許容される好ましい添加剤は、ペプチドの安定性を上昇させ、医薬溶液のゲル化を低下させる、ポリソルベート20またはポリソルベート80などの界面活性剤である。界面活性剤は、溶液の0.01%〜5%の量で組成物に添加することができる。このような薬学的に許容される添加剤は、保管される組成物の安定性を上昇させ、半減期を延長する。
製剤および送達法は、一般に、治療される部位および疾患に応じて適合させる。例示的な製剤は、ミセル、リポソーム、または薬剤放出カプセル内に封入された製剤(徐放用に設計された生体適合的被覆内に組み込まれた活性作用物質)を含む、非経口投与、例えば、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、または皮下投与に適する製剤;摂取用製剤;クリーム、軟膏、ゲルなどの局所用製剤;および吸入剤、エアゾール、および噴霧剤などの他の製剤を含むがこれらに限定されない。本発明の化合物の用量は、治療に対する必要の程度および重症度、投与される組成物の活性、対象の全般的な健康、ならびに当業者によく知られる他の考慮点に応じて変化する。
【0105】
腸内(経口)投与用製剤は、錠剤(被覆されるかまたは被覆されない)、カプセル(硬質または軟質)、マイクロスフェア、エマルジョン、粉末、顆粒、結晶、懸濁液、シロップ、またはエリキシル剤中に含有されうる。例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムを含む、従来の非毒性固体担体を用いて、固体製剤を調製することができる。補充の活性化合物(例えば、防腐剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、および抗真菌剤)もまた、製剤中に組み込むことができる。液体製剤もまた、腸内投与に用いることができる。担体は、石油、動物油、植物油、または合成油、例えば、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油を含む各種の油から選択することができる。適切な医薬賦形剤は、例えば、デンプン、セルロース、滑石、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールを含む。
腸内送達、非経口送達、または経粘膜送達用の医薬組成物は、例えば、水、生理食塩液、リン酸緩衝生理食塩液、ハンクス液、リンゲル液、デキストロース/生理食塩液、およびグルコース液を含む。製剤は、緩衝剤、等張性調整剤、保湿剤、洗浄剤など、生理学的条件を近似する補助物質を含有しうる。添加剤はまた、殺菌剤または安定化剤などのさらなる活性成分も含みうる。例えば、溶液は、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、またはトリエタノールアミンオレエートを含有しうる。さらなる非経口製剤および方法は、Bai(1997年)、J.Neuroimmunol.、第80巻、65〜75頁;Warren(1997年)、J.Neurol.Sci.、第152巻、31〜38;およびTonegawa(1997)、J.Exp.Med.、第186巻、507〜515頁において説明されている。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブルのシリンジ、または複数回投与用バイアル内に封入することができる。
【0106】
皮内投与または皮下投与用の医薬組成物は、水、生理食塩液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸、グルタチオン、または二亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミンテトラ酢酸などのキレート剤;酢酸、クエン酸、またはリン酸などの緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性調整剤を含みうる。
注射用の医薬組成物は、水溶液(水溶性である場合)または分散液および滅菌注射溶液または分散液の即時調製用滅菌粉末を含む。静脈内投与の場合、適切な担体は、生理食塩液、静菌水、Cremophor EL(商標)(ニュージャージー州、パーシパニー、BASF社製)、またはリン酸緩衝生理食塩液(PBS)を含む。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体のポリエチレングリコールなど)、およびこれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒でありうる。流体性は、例えば、レシチンなどの被覆の使用、分散液の場合に必要とされる粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用により維持することができる。抗菌剤および抗真菌剤は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサールを含む。等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール、および塩化ナトリウムを組成物中に組入れることができる。結果として得られる溶液は、そのまま用いるために包装するか、または乾燥凍結させることができ、乾燥凍結された調製物は、後日、投与前に滅菌溶液と組み合わせることができる。
【0107】
薬学的に許容される担体は、吸収またはクリアランスを安定化、増大、または遅延させる化合物を含有しうる。このような化合物は、例えば、グルコース、スクロース、またはデキストランなどの炭水化物;低分子量タンパク質;ペプチドのクリアランスまたは加水分解を低下させる組成物;あるいは賦形剤または他の安定化剤および/もしくは緩衝液を含む。吸収を遅延させる作用物質は、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含む。医薬組成物の吸収を安定化させるかまたは上昇もしくは低下させるのに、リポソーム担体を含む洗浄剤もまた用いることができる。消化から保護するために、化合物を組成物と複合化させて、それを酸および酵素による加水分解に対して耐性とすることもでき、化合物をリポソームなどの適切な耐性の担体中で複合体化させることもできる。消化から化合物を保護する手段は、当技術分野で知られている(例えば、Fix(1996年)、Pharm Res.、第13巻、1760〜1764頁;Samanen(1996)、J.Pharm Pharmacol.、第48巻、119〜135頁;および治療作用物質の経口送達のための脂質組成物について説明する米国特許第5,391,377号を参照されたい)。
経粘膜投与または経皮投与の場合、透過される障壁に適する透過剤が製剤中において用いられる。このような透過剤は一般に当技術分野で知られており、例えば、経粘膜投与の場合、洗浄剤、胆汁塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻腔内噴霧剤または坐剤により可能となる(例えば、Sayani(1996年)、「Systemic delivery of peptides and proteins across absorptive mucosae」、Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.、第13巻、85〜184頁を参照されたい)。経皮投与の場合、活性化合物は、当技術分野で一般に知られる軟膏(ointments、salves)、ゲル、またはクリーム中に調合することができる。経皮送達系はまた、パッチ剤を用いても達成することができる。
【0108】
吸入投与の場合、医薬組成物は、エアゾール剤またはミスト剤の形態で投与することができる。エアゾール投与の場合、製剤は、界面活性剤および高圧ガスと共に、微粉化された形態で供給することができる。別の実施形態において、呼吸組織へと製剤を送達する機器は、その中で該製剤が気化する機器である。当技術分野で知られる他の送達システムは、乾燥粉末エアゾール、液体送達システム、吸入器、空気ジェット式噴霧器、および高圧ガス・システム(例えば、Patton(1998年)、Biotechniques、第16巻、141〜143頁;カリフォルニア州、サンディエゴ、Dura Pharmaceuticals社;カリフォルニア州、ヘイワード、Aradigm社;カリフォルニア州、サンタクララ、Aerogen社;およびカリフォルニア州、サンカルロス、Inhale Therapeutic Systems社を参照されたい)。
エチレンビニルアセテート、ポリアンハイドライド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生体分解性ポリマー、生体適合性ポリマーを用いることができる。このような製剤の調製法は、当業者に知られている。材料はまた、Alza社およびNova Pharmaceuticals社からも市販されている。リポソーム懸濁液(抗体またはウイルス被覆タンパク質を用いて細胞または組織を標的とするリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として用いることができる。これらは、例えば、米国特許第4,235,871号;同第4,501,728号;同第4,522,811号;同第4,837,028号;同第6,110,490号;同第6,096,716号;同第5,283,185号;同第5,279,833号;Akimaru(1995年)、Cytokines Mol.Ther.、第1巻、197〜210頁;Alving(1995年)、Immunol.Rev.、第145巻、5〜31頁;およびSzoka(1980年)、Ann.Rev.Biophys.Bioeng.、第9巻、467頁において説明される通り、当技術分野で知られる方法に従って調製することができる。ペプチドを含む低分子の持続的送達が可能な生体分解性マイクロスフェアもしくはカプセルまたは他の生体分解性ポリマー形態は、当技術分野で知られている(例えば、Putney(1998年)、Nat.Biotechnol.、第16巻、153〜157頁を参照されたい)。本発明の化合物は、ミセル内に組み込むことができる(例えば、Suntres(1994年)、J.Pharm.Pharmacol.、第46巻、23〜28頁;Woodle(1992年)、Pharm Res.第9巻、260〜265頁を参照されたい)。アンタゴニストは、脂質の単層または二重層の表面に結合させることができる。例えば、アンタゴニストは、ヒドラジド−PEG−(ジステアロイルホスファチジル)エタノールアミンを含有するリポソームに結合させることができる(例えば、Zalipsky(1995年)、Bioconjug.Chem.、第6巻、705〜708頁を参照されたい)。あるいは、平面脂質膜または完全細胞、例えば、赤血球の細胞膜など、脂質膜の任意の形態も用いることができる。リポソーム製剤および脂質含有製剤は、例えば、静脈内投与、経皮投与(例えば、Vutla(1996年)、J.Pharm.Sci.、第85巻、5〜8頁を参照されたい)、経粘膜投与、または経口投与を含む任意の手段により送達することができる。
【0109】
本発明の組成物は、本明細書で提供される他の治療用部分または造影/診断用部分と組み合わせることができる。治療用部分および/または造影用部分は、別個の組成物としてもコンジュゲートされた部分としても供給することができる。必要なコンジュゲートされた部分のためにリンカーを組入れることができ、これは、本明細書の別の箇所で説明されている。
本明細書で開示される抗体はまた、免疫リポソームとしても調合することができる。抗体を含有するリポソームは、Epsteinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第82巻、3688頁(1985年);Hwangら、Proc.Natl Acad.Sci.USA、第77巻、4030頁(1980年);ならびに米国特許第4,485,045号および同第4,544,545号において説明されるなど、当技術分野で知られる方法により調製される。循環時間が延長されたリポソームは、米国特許第5,013,556号で開示されている。
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG誘導ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を伴う逆相蒸発法により作製することができる。リポソームは、規定の細孔サイズのフィルターを介して押出すことで、所望の直径を有するリポソームをもたらすことができる。本発明の抗体のFab’フラグメントは、Martinら、J.Biol.Chem.、第257巻、286〜288頁(1982年)において説明される通り、ジスルフィド交換反応により、リポソームにコンジュゲートすることができる。化学療法剤(ドキソルビシンなど)は、場合によって、リポソーム内に含有される。Gabizonら、J.National Cancer Inst.第81巻、第19号、1484頁(1989年)を参照されたい。
【0110】
リポフェクションまたはリポソームはまた、細胞内に抗LOX抗体または抗体フラグメントを送達するのにも用いることができる。抗体フラグメントを用いる場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の阻害フラグメントを用いることができる。例えば、抗体の可変領域配列に基づき、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するペプチド分子を設計することができる。このようなペプチドは、化学合成および/または組換えDNA法による作製が可能である。例えば、Marascoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第90巻、7889〜7893頁(1993年)を参照されたい。本明細書における製剤はまた、例えば、互いに対して有害作用を及ぼし合わない相補的活性を有する活性化合物を含む、治療される特定の適応に必要な複数種の活性化合物も含有しうる。あるいは、または加えて、組成物は、例えば、細胞傷害剤、サイトカイン、化学療法剤、または増殖阻害剤など、その機能を増強する作用物質を含みうる。このような分子は、意図される目的に有効な量で組み合わされて存在するのに適する。有効成分はまた、例えば、コアセルベーション法または界面重合法によって調製されるマイクロカプセル、例えば、それぞれ、コロイド薬剤送達系(例えば、リポソーム、アルブミン・マイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中における、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン製のマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)製マイクロカプセル内にも封入することができる。このような技法は、前出の「Remington’s Pharmaceutical Sciences」において開示されている。
in vivo投与用の製剤は無菌である。滅菌は、無菌濾過膜を介する濾過により容易に達成することができる。
【0111】
持続放出調製物を調製することができる。持続放出調製物の適切な例は、抗体を含有する固体の疎水性ポリマーの半透性マトリックスを含み、これらのマトリックスは、成型品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例は、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−ビニルアセテート、LUPRON DEPOT(登録商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーと酢酸レウプロリドとからなる注射用マイクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン−ビニルアセテートおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーが、100日を超える期間にわたる分子の放出を可能とするのに対し、ある種のハイドロゲルは、より短い期間にわたってタンパク質を放出する。封入された抗体が長期間にわたって体内にとどまる場合、それらは、37℃の水分に対する曝露の結果として、変性または凝集することがあり、結果として、生物学的活性の喪失および免疫原性における変化の可能性がもたらされる。関与する機構に応じて、安定化のための合理的な戦略を講じることができる。例えば、凝集機構が、チオ−ジスルフィド交換反応による、分子間におけるS−S結合の形成であることが発見される場合、スルフィドリル残基の改変、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含量の制御、適切な添加剤の使用、および特定のポリマー・マトリックス組成物の開発により安定化を達成することができる。
本開示に照らした各種の他の医薬組成物およびそれらの調製法および使用は、当業者に知られている。適切な薬理学的組成物および関連する投与法の詳細な列挙については、本明細書における詳細な教示を参照することができ、これは、Remington、「The Science and Practice of Pharmacy」、第20版(Lippincott、Williams & Wilkins社、2003年)などの教科書によりさらに補うことができる。
【0112】
本発明により意図される医薬組成物を上記で説明してきた。本発明の一実施形態において、医薬組成物は、それらがヒト患者への投与に許容されるように、発熱物質を含まないように調合される。発熱物質についての医薬組成物の検査、および発熱物質を含まない医薬組成物の調製は、当業者によく理解されている。
本発明の一実施形態は、本発明の任意の医薬組成物の使用により、本発明の障害を治療する薬剤を作製することを意図する。薬剤は、治療を必要とする患者/対象の身体特性に基づき調合することができ、癌性組織の病期に基づき、単一または複数の製剤に調合することができる。本発明の薬剤は、病院および診療所への販売に適切な表示を伴う適切な医薬品パッケージに包装することができ、該表示は、対象における本明細書に記載の障害の治療適応についての表示である。薬剤は、単一または複数のユニットとして包装することができる。以下に説明される医薬品パッケージおよびキットと共に、本発明の医薬組成物の用量および投与についての指示書を組入れることができる。
【0113】
VI.アフィニティー精製
本明細書に記載の抗LOX抗体および抗LOXL2抗体は、組換え細胞培養物、天然の供給源、または組織生検試料(組織および/または血清)からのLOXまたはLOXL2のアフィニティー精製に有用である。この工程では、当技術分野でよく知られる方法を用いて、Sephadex樹脂または濾紙などの適切な支持体上に、LOXまたはLOXL2に対する抗体を固定化させる。次いで、固定化された抗体を、精製されるLOXまたはLOXL2を含有する試料と接触させ、その後、固定化された抗体に結合したLOXまたはLOXL2以外の、試料中における実質的にすべての物質を除去するのに適する溶媒により支持体を洗浄する。最後に、抗体からLOXまたはLOXL2を放出するのに適する別の溶媒により支持体を洗浄する。
【0114】
VII.パッケージおよびキット
本出願の一実施形態は、本明細書で提供される方法に有用な医薬品パッケージまたはキットを含む。このような医薬品パッケージまたはキットの一実施形態は、本明細書で提供されるアンタゴニストの調製物(組成物)を含む。
本発明の一態様は、LOX/LOXL2阻害剤の投与を実行するためのキットに関する。本発明の別の態様は、1種または複数種の他の治療作用物質と組み合わせたLOX/LOXL2阻害剤の投与を実行するためのキットに関する。一実施形態において、キットは、医薬担体または賦形剤中に調合されたLOX/LOXL2阻害剤と、1種または複数種の別個の医薬調製物中において適切な形で調合された、前記LOX/LOXL2阻害剤ではない、少なくとも1種の治療作用物質とを含む。
医薬品パッケージまたはキットは、医薬調製物中に、賦形剤、担体、緩衝剤、防腐剤、または安定化剤をさらに含みうる。キットの各成分は、個別の容器内に封入することができ、各容器のすべては、単一のパッケージ内に収めることが可能である。発明のキットは、室温または低温での保管用に設計されている。
加えて、調製物は、キットの保管寿命を延長する安定化剤を含有し、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)または他の既知の従来の安定化剤を含みうる。組成物を凍結乾燥させる場合、キットは、調製物を再構成するための溶液調製物をさらに含有しうる。許容される溶液は当技術分野でよく知られており、例えば、薬学的に許容されるリン酸緩衝生理食塩液(PBS)を含む。
【0115】
加えて、本明細書で提供されるパッケージまたはキットは、例えば、他の箇所でより詳細に説明される化学療法剤など、本明細書で提供される他の任意の部分をさらに含みうる。
本発明の医薬品パッケージおよびキットは、例えば、ELISAアッセイなど、本明細書で提供されるアッセイのための成分をさらに含みうる。あるいは、キットの調製物は、患者の生検切片を調べる免疫組織化学法などのイムノアッセイにおいても用いられる。本発明の医薬品パッケージおよびキットは、試料採取用の成分をさらに含みうる。
本発明の医薬品パッケージおよびキットは、例えば、製品の説明、投与方式、および治療適応を詳述する表示をさらに含みうる。本明細書で提供される医薬品パッケージは、本明細書に記載の組成物のいずれかを含みうる。本明細書で提供される医薬品パッケージは、本明細書に記載の任意の疾患適応を予防するか、その危険性を低下させるか、またはそれを治療するための表示をさらに含みうる。
「包装材料」という用語は、キットの成分を収納する物理的構造を指す。包装材料は、該成分を無菌状態に維持することが可能であり、このような目的に一般に用いられる材料(例えば、紙、段ボール、ガラス、プラスチック、ホイル、アンプルなど)から作製することができる。表示または添付文書は、適切な指示書を含みうる。したがって、本発明のキットは、本発明の任意の方法においてキット成分を用いるための表示または指示書をさらに含みうる。キットは、本発明の方法において化合物を投与するための指示書と共に、パックまたはディスペンサー内における発明化合物を含みうる。
【0116】
指示書は、治療法、検出法、モニタリング法、または診断法を含む、本明細書に記載の本発明の任意の方法を実施するための指示書を含みうる。指示書は、満足できる臨床評価項目もしくは発症しうる任意の有害症状の適応、または米国食品医薬品局などの規制機関により必要とされるヒト対象に対する使用についてのさらなる情報をさらに含みうる。
指示書は、例えば、キット内に添付されるかもしくはキットに貼り付けられた紙もしくはカード上であるか、あるいはキットもしくは包装材料に貼り付けられるか、またはキット成分を含有するバイアルもしくはチューブに貼り付けられたラベル上における「印刷物」上に存在しうる。指示書は、ディスク(フレキシブル・ディスクまたはハード・ディスク)などのコンピュータにより読取り可能な媒体、CD−ROM/RAMまたはDVD−ROM/RAMなどの光学CD、磁気テープ、RAMおよびROMなどの電子的保存媒体、ICチップ、ならびに磁気的/光学的保存媒体など、これらのハイブリッド上にさらに組入れることができる。
本発明のキットの組成物は、単回の検査または複数回の検査のための単一または複数のユニット内に調合することができる。
好ましい実施形態において、キットの調製物は、発熱物質を含まない。発熱物質の存在および/またはその特定のレベルについての検査法は当技術分野において日常的であり、このような目的のためのキットは市販されている。
【0117】
本明細書では、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと、薬学的に許容される担体または賦形剤との組成物を含有する、LOXまたはLOXL2と関連する状態を治療するためのキットが提供される。LOXまたはLOXL2と関連する状態は、例えば、腫瘍、転移、血管新生、または線維症でありうる。一実施形態において、このようなキット中における抗体は、検出可能標識、治療用標識、またはその両方を含みうる。別の実施形態において、このようなキット中における抗体は、乾燥凍結させることができる。
本発明の別の態様は、他の治療作用物質と組み合わせたLOXまたはLOXL2の阻害剤の投与を実行するためのキットに関する。一実施形態において、キットは、医薬担体中に調合されたLOXまたはLOXL2の阻害剤と、1種または複数種の別個の医薬調製物中において適切な形で調合された、少なくとも1種の細胞傷害剤とを含む。
【0118】
VIII.診断法
本発明はまた、異なる形態のLOXまたはLOXL2を認識する作用物質を用いることにより、上記で説明した疾患を診断するか、モニタリングするか、病期分類するか、または検出する方法も提供する。例えば、上記で説明した通り、異なる形態のLOXまたはLOXL2に対する抗体、プレプロタンパク質、分泌形態、成熟形態、または活性形態をこれらの目的に用いることができる。異なる形態のLOXまたはLOXL2を認識する作用物質を用いることにより、上記で説明した疾患を診断するか、モニタリングするか、病期分類するか、または検出する方法は、本明細書に記載のすべての疾患および適応を包含することを意図する。
上記で説明した通り、活性のLOXまたはLOXL2は切断され、免疫組織化学法(IHC)など、各種の検出法を用いることによる細胞局在化と共に、その分子量の変化(免疫ブロット)によるか、またはLOX/LOXL2の切断形態に対する同非切断形態を検出する抗体の使用により検出することができる。
細胞外マトリックスおよび条件培地がタンパク質分解処理された活性のLOXまたはLOXLを含有すると考えられるのに対し、切断されない不活性のLOX/LOXLは細胞内に局在化すると考えられる。細胞外空間からの取込みの結果として、一部の活性で切断されたLOX/LOXLもまた、細胞内で検出することができる。
【0119】
個体に由来する試料を採取し、不活性または活性のLOXレベルを決定することによりこれを解析することができる。リシル・オキシダーゼ特異療法を用いる治療の開始前にこの解析を実施することで、活性LOX/LOXLの発現または活性を上昇させた腫瘍を同定することができる。このような診断解析は、細胞、タンパク質もしくは細胞の膜抽出物、痰、血液、血清、血漿、もしくは尿などの体液、または組織試料、ホルマリンで固定されるかもしくは凍結された組織切片などの生体試料を含むがこれらに限定されない任意の試料を用いて実施することができる。
不活性および/または活性のLOX/LOXLの検出および解析に適する任意の方法を用いることができる。本明細書で用いられる「試料」という用語は、ヒト、動物に由来する試料、または研究用試料、例えば、細胞、組織、臓器、体液、気体、エアゾール、スラリー、コロイド、もしくは凝固物質を指す。試料はまた、本明細書に記載の抗体を用いる、タンパク質もしくは細胞の膜抽出物、痰、血液、血清、血漿、もしくは尿などの体液、またはホルマリンで固定されるかもしくは凍結された組織切片などの生体試料を含むがこれらに限定されない。「試料」という用語はまた、ヒトもしくは動物から新たに採取した細胞、組織、臓器、または体液を指すこともあり、処理されるかまたは保管された細胞、組織、臓器、または体液を指すこともある。試料は、in vivoにおいて、例えば、ヒトまたは動物から取り出すことなしに検査することもあり、in vitroにおいて検査することもある。試料は、例えば、組織学的方法による処理後において検査することができる。
【0120】
競合的結合アッセイ、直接的または間接的なサンドイッチ・アッセイ、および不均一相または均一相において実行される免疫沈降アッセイなど、当技術分野で知られる各種の診断アッセイ法を用いることができる(Zola、「Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques」、CRC Press社(1987年)、147〜158頁)。診断アッセイにおいて用いられる抗体は、検出可能部分により標識することができる。検出可能部分は、直接的または間接的に、検出可能なシグナルを生成する。例えば、検出可能部分は、例えば、
3H、
14C、
32P、
35S、または
125Iなどの放射性同位体、イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)、テキサス・レッド、シアニン、フォトシアン、ロダミン、もしくはルシフェリンなどの蛍光化合物もしくは化学発光化合物、またはアルカリ・ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、もしくは西洋ワサビ・ペルオキシダーゼなどの酵素など、本明細書に記載の任意の検出可能部分でありうる。Hunterら、Nature、第144巻、945頁(1962年);Davidら、Biochemistry、第13巻、1014頁(1974年);Painら、J.Immunol.Meth.、第40巻、219頁(1981年);およびNygren、J.Histochem.and Cytochem.、第30巻、407頁(1982年)により説明される方法を含む、抗体を検出可能部分にコンジュゲートさせる、当技術分野で知られる任意の方法を用いることができる。
本明細書では、LOXまたはLOXL2と関連する状態を診断する方法であって、対象の試料中におけるLOXおよび/またはLOXL2レベルを評価するステップを含み、基準試料と比較した、該試料中におけるLOXおよび/またはLOXL2レベルの変化により、腫瘍または転移の存在または増大が示される方法が提供される。一態様において、LOXまたはLOXL2と関連する状態は、腫瘍、転移、血管新生、または線維症である。基準試料と比較した、試料中におけるLOXおよび/またはLOXL2レベルの上昇により、腫瘍もしくは転移の存在、または腫瘍もしくは転移性増殖の増大を示すことができる。基準試料は、早期の時点における対象から採取された試料であるか、または別の個体に由来する試料でありうる。試料中におけるLOXおよび/またはLOXL2レベルは、試料を本明細書に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させることにより検出することができる。一実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントは、検出可能な形で標識される。
【0121】
一実施形態では、対象における癌転移を診断する方法であって、血中における活性のLOXまたはLOXL2のレベルまたは活性を評価するステップを含み、基準試料と比較した、血中における活性のLOXまたはLOXL2のレベルまたは活性(例えば、遺伝子発現活性、酵素活性など)の変化により、転移性腫瘍増殖の存在が示される方法が提供される。一部の場合において、血中における活性のLOXまたはLOXL2のレベルまたは活性は、早期に測定されたレベルまたは活性よりも低い場合があり、これは、該対象が癌転移のより大きな危険性を示すこと、癌が転移したこと、または癌転移が増大したことを示す場合がある。基準試料は、異なる時点において同じ腫瘍から採取されるかまたは身体の他の部位から採取される、同じ対象に由来する場合もあり、別の個体に由来する場合もある。
別の実施形態では、腫瘍を有する対象における癌転移を診断する方法であって、腫瘍中における活性のLOXまたはLOXL2のレベルまたは活性を評価するステップを含み、基準試料と比較した、腫瘍中における活性のLOXまたはLOXL2のレベルまたは活性の変化により、転移性腫瘍増殖の存在が示される方法が提供される。一部の場合において、腫瘍中における活性のLOXまたはLOXL2のレベルまたは活性は、早期に測定されたレベルまたは活性よりも高い場合があり、これは、該対象が癌転移のより大きな危険性を示すこと、癌が転移したこと、または癌転移が増大したことを示す場合がある。基準試料は、異なる時点において同じ腫瘍から採取されるかまたは身体の他の部位から採取される、同じ対象に由来する場合もあり、別の個体に由来する場合もある。
また、本明細書では、対象における腫瘍増殖または転移を病期分類する方法であって、対象の腫瘍中におけるLOXおよび/またはLOXL2(例えば、hLOXまたはhLOXL2)のレベルを評価するステップを含み、基準試料と比較した、腫瘍中におけるLOXおよび/またはLOXL2のレベル(例えば、遺伝子発現活性、酵素活性など)の変化により、転移性腫瘍増殖の存在が示される方法も提供される。一部の場合において、腫瘍中におけるLOXおよび/またはLOXL2のレベルまたは活性は、同じ対象について早期に測定されたレベルまたは活性よりも高い場合もあり、正常組織から採取された基準試料におけるレベルまたは活性より高い場合もあり、これは、患者が癌転移のより大きな危険性を示すこと、癌が転移したこと、または癌転移が増大したことを示す場合がある。
【0122】
充実性腫瘍癌の病期分類は、よく知られている。TNMシステムは、最も一般的に用いられる病期分類システムの1つである。このシステムは、国際対癌連合(UICC)および米国癌病期分類合同委員会(AJCC)により容認されている。大半の医療施設では、それらが癌を報告するための主要な方法として、TNMシステムを用いている。NCIの総合的な癌データベースであるPDQ(登録商標)でもまた、TNMシステムを用いている。本明細書で「病期分類」と称するTNMシステムは、腫瘍の程度、リンパ節への拡大の程度、転移の存在に基づく。
また、本明細書では、癌、腫瘍、および線維性疾患の治療としてのLOX/LOXL2調節剤を含む療法に対する対象の応答をモニタリングする方法も提供される。該方法は、対象へのLOXまたはLOXL2調節剤の投与後の対象におけるC反応性タンパク質レベルの変化を検出するステップを含み、該変化により、LOXまたはLOXL2調節剤が対象に対して治療効果を及ぼしたことが示される。C反応性タンパク質は、全身の炎症についての重要な薬力学マーカーである。LOXまたはLOXL2の阻害剤の投与前におけるレベルと比較したC反応性タンパク質レベル(例えば、対象の血液試料中における)の低下は、LOXまたはLOXL2の阻害剤を用いる療法に対する対象の応答を示すと考えられる。
活性のLOXまたはLOXL2レベルの測定は、タンパク質に対する抗体、好ましくは、活性のLOXまたはLOXL2に特異的に結合する抗体により、活性のLOXまたはLOXL2タンパク質の存在を検出する、免疫学的アッセイの形態をとりうる。抗LOX/LOXL抗体の抗原結合フラグメントもまた用いることができる。
【0123】
イムノアッセイはまた、レーザー誘導蛍光法と共に用いることもできる(例えば、それらの各々が参照により本明細書に組み込まれる、SchmalzingおよびNashabeh、Electrophoresis、第18巻、2184〜93頁(1997年);ならびにBao、J.Chromatogr.B.Blamed.Sci.、第699巻、463〜80頁(1997年)を参照されたい)。フロー・インジェクション・リポソーム・イムノアッセイおよびリポソーム・イムノセンサーなどのリポソーム・イムノアッセイもまた、本発明の方法に従い、活性のLOXまたはLOXLのレベルを決定するのに用いることができる(Rongenら、J.Immunol.Methods、第204巻、105〜133頁(1997年))。酵素免疫測定法(ELISA)などのイムノアッセイが、本発明の方法においては特に有用でありうる。ラジオイムノアッセイもまた、試料が活性のLOXもしくはLOXL2について陽性であるかどうかを決定するか、または活性のLOXもしくはLOXL2のレベルを決定するのに有用でありうる。例えば、ヨウ素125で標識された二次抗体を用いるラジオイムノアッセイを用いることができる。
加えて、活性のLOXまたはLOXL2の活性を測定し、これにより不活性酵素の量を無視することができる。活性のLOXまたはLOXL2の酵素活性は、標識されたリシンを基質とする可溶性エラスチンまたは可溶性コラーゲンを用いる多数の方法で測定することができる。活性アッセイの詳細は、Royceら、「Copper metabolism in mottled mouse mutants. The effect of copper therapy on lysyl oxidase activity in brindled(Mohr)mice」、Biochem J.、1982年2月15日、第202巻、第2号、369〜371頁で与えられている。例示的なアッセイは、Palamakumburaら、「A fluorometric assay for detection of lysyl oxidase enzyme activity in biological samples」、Anal Biochem.、2002年1月15日、第300巻、第2号、245〜51頁により説明されているアッセイなどの発色アッセイである。
【0124】
血(または尿)中におけるLOXまたはLOXL2レベルの測定に加え、LOXまたはLOXL2の活性の二次生成物を測定することもできる。例えば、リシル・オキシダーゼのリシン残基に対する酵素活性により、デオキシピリジノリン(Dpd)が形成される。Dpdは、骨の破骨細胞分解の結果として循環中に放出される。Dpdは、再利用が不可能であり、腎臓によりクリアランスされ、未変化状態で尿中に排出される。こうして、抗Dpdモノクローナル抗体を用いてコートされたチューブによるRIAを用いる、Immunodiagnostic Systms(IDS)社製のGamma BCTによるDpdアッセイに基づく検査を用いて、酵素活性を測定することができる。
本明細書に記載の抗LOX抗体および抗LOXL2抗体はまた、各種の線維化状態、例えば、肺線維症の他、増殖性硝子体網膜症、手術による瘢痕、全身性硬化症、強皮症、創傷収縮、肥厚性瘢痕、線維腫症(特に、デュピュイトラン病)、およびケロイドなどの各種の線維化状態など、異常なコラーゲン代謝と関連する疾患または状態の診断にも用いることができる。
【0125】
IX.治療法
本発明による医薬製剤を用いて、例えば、癌、転移、線維症、および異常な血管新生など、多種多様な疾患および障害を治療することができる。
本明細書では、試料または細胞組織を、本明細書に記載の任意の抗LOXL2抗体またはそれらの抗原結合フラグメントと接触させることによりLOXL2を阻害する方法が提供される。LOXL2に対する前記抗体またはその抗原結合フラグメントの結合により、LOXL2の酵素活性が阻害される。
本明細書ではまた、試料または細胞組織を、本明細書に記載の任意の抗LOX抗体またはそれらの抗原結合フラグメントと接触させることによりLOXを阻害する方法も提供される。LOXに対する前記抗体またはその抗原結合フラグメントの結合により、LOXの酵素活性が阻害される。
このような方法のいずれにおいても、接触は、in vitro、in vivo、またはex vivoで生じうる。
【0126】
LOXまたはLOXL2の阻害は、例えば、腫瘍増殖の減少、血管新生の軽減、線維性疾患の軽減、および/または細胞外マトリックス形成の低下など、対象における1種または複数種の効果を有しうる。線維性疾患は、肝線維症、肺線維症、腎線維症、心筋線維症、および強皮症を含むがこれらに限定されない。
本明細書では、LOXまたはLOXL2の異常な発現と関連する疾患および障害を治療する方法が提供される。疾患および障害は、腫瘍(例えば、原発または転移性)、血管新生に関連する状態、および線維化状態を含むがこれらに限定されない。
本明細書で用いられる「防止」とは、予防、症状発症の防止、線維症と関連するかまたはLOX/LOXL2活性と相関する疾患または障害の進行の防止を指す。本明細書で用いられる「治療する」または「治療」とは、本明細書に記載の疾患または障害と関連する症状の発生の鎮静または遅延を意味する。該用語は、既存の制御不能であるかまたは望ましくない症状の改善、さらなる症状の防止、および症状の基礎をなす代謝性原因の改善または防止をさらに含む。こうして、該用語は、疾患もしくは症状を有するかまたはこのような疾患もしくは症状を発生させる潜在性を有する哺乳類対象に対して有益な結果が付与されたことを示す。応答は、患者が部分的であるかもしくは完全な緩和、または疾病の徴候もしくは症状の軽減を経験する場合に達成され、限定なしに述べると、生存の延長を特に含む。進行なしの予測生存期間は、再発回数、病期、および他の因子を含む予後診断因子に応じて、数カ月間〜数年間で測定することができる。生存の延長は、限定なしに述べると、少なくとも1カ月間、少なくとも約2カ月間、少なくとも約3カ月間、少なくとも約4カ月間、少なくとも約6カ月間、少なくとも約1年間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、またはそれ以上の期間を含む。総生存期間もまた、数カ月間〜数年間で測定することができる。患者の症状は、小康を保つかまたは軽減されうる。
【0127】
本発明の医薬組成物は、任意の医学的治療に適用される妥当な有益性/危険性比で何らかの所望の治療効果を生成するのに有効な治療有効量で投与される。ヒト患者に対する本医薬組成物の投与の場合、本発明の医薬組成物は、それらが炎症反応を誘導しないように、発熱物質を実質的に含まないことが当業者により知られる方法により調合することができる。
本明細書で用いられる「治療的有効量」または「有効量」という用語は、単独または細胞、組織、もしくは対象に対する別の治療作用物質との組合せで投与される場合に、疾患状態または疾患の進行を防止または改善するのに有効な治療作用物質の量を指す。治療有効用量は、症状の改善、例えば、関連する医学的状態の治療、治癒、防止、もしくは改善、またはこのような状態の治療、治癒、防止、もしくは改善の速度の上昇を結果としてもたらすのに十分な量の化合物をさらに指す。単独で投与される個別の有効成分に適用される場合、治療有効用量は該成分だけを指す。組合せに適用される場合、治療有効用量は、組み合わせて投与されるのであれ、逐次投与されるのであれ、または同時投与されるのであれ、結果として治療効果をもたらす有効成分を組み合わせた量を指す。例えば、抗LOX/抗LOXL2抗体のin vivo投与を用いる場合、通常の投与量は、投与経路に応じて、哺乳類体重に対して1日当たり約10ng/kg〜100mg/kg以上、好ましくは、約1μg/kg/日〜50mg/kg/日、場合によって、約100μg/kg/日〜20mg/kg/日、500μg/kg/日〜10mg/kg/日、または1mg/kg/日〜10mg/kg/日変化しうる。
本発明の有効応答は、患者が部分的であるかもしくは完全な緩和、または疾病の徴候もしくは症状の軽減を経験する場合に達成され、限定なしに述べると、生存の延長を特に含む。進行なしの予測生存期間は、再発回数、病期、および他の因子を含む予後診断因子に応じて、数カ月間〜数年間で測定することができる。生存の延長は、限定なしに述べると、少なくとも少なくとも1カ月間、少なくとも約2カ月間、少なくとも約3カ月間、少なくとも約4カ月間、少なくとも約6カ月間、少なくとも約1年間、少なくとも約2年間、少なくとも約3年間、またはそれ以上の期間を含む。総生存期間もまた、数カ月間〜数年間で測定することができる。患者の症状は小康を保ち、または腫瘍組織量は増大しない可能性がある。
【0128】
当技術分野の医師または獣医師は、必要とされる医薬組成物の有効量(ED50)を容易に決定および処方することができる。例えば、医師または獣医師は、所望の治療効果を達成するために必要とされるレベルよりも低レベルにおける医薬組成物中で用いられる本発明の化合物の用量から始め、所望の効果が達成されるまで用量を漸増することができる。
本明細書で用いられる「対象」という用語は、哺乳類対象を意味する。例示的な対象は、ヒト、サル、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ヤギ、およびヒツジを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態において、対象は癌を有し、以下で説明される本発明の作用物質により治療することができる。
選択される投与経路にかかわらず、適切な水和形態で用いられる本発明の化合物、および/または本発明の医薬組成物は、以下で説明される形態などの薬学的に許容される投与形態に調合されるか、または当業者に知られる他の従来の方法により調合される。
患者に対して毒性であることなしに特定の患者、組成物、および投与方式に所望の治療応答を達成するのに有効な量の有効成分を得るために、本発明の医薬組成物中における有効成分の実際の投与レベルを変化させることができる。
選択される用量レベルは、医療技術分野でよく知られる、用いられる本発明の特定の化合物の活性、投与経路、投与時間、用いられる特定の化合物の排出速度、治療の持続期間、他の薬剤、用いられる特定の組成物と組み合わせて用いられる化合物および/または物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康状態、および既往歴ならびに医療技術分野でよく用いられる類似の因子を含む各種の因子に依存する。
【0129】
本明細書で提供される一態様では、抗体の投与の結果、対象の状態の改善がもたらされる。別の態様では、抗体の投与により、対象の状態の悪化が防止され、かつ/または患者の生存が延長される。
患者は、ヒトまたは非ヒトなどの哺乳類でありうる。このような患者は、有症状の場合もあり、無症状の場合もある。
組成物は、本明細書で提供される任意の適切な経路により、局所投与、領域投与、または全身投与することができる。
一態様では、患者の症状が改善される。改善は、例えば、疼痛の軽減、腫瘍サイズの縮小、腫瘍の除去、腫瘍サイズの増大もしくは疾患の進行の防止、転移の形成の防止、または転移成長の阻害、線維症の阻害、血管新生の阻害、あるいはこれらの組合せとして発現されうる。
癌治療で必要な場合、方法は、手術による癌の除去および/または抗癌剤の投与もしくは抗癌治療の実施をさらに含みうる。このような抗癌剤の投与または抗癌治療の実施は、本明細書で開示される組成物の投与と同時でありうる。抗癌剤は、本明細書の別の箇所で提供されている。
一態様では、本明細書で提供される任意の抗体の投与により、患者が手術または1種もしくは複数種の抗癌剤もしくは抗癌治療による治療を受ける必要が軽減または除去される。
本発明の医薬製剤を用いて治療しうる適応は、望ましくないかまたは制御不能の細胞増殖を伴う適応を含む。このような適応は、良性腫瘍、原発腫瘍および腫瘍転移などの各種の癌、再狭窄(例えば、冠動脈、頸動脈、および脳病変)、血液学的障害、内皮細胞の異常な刺激(アテローム性動脈硬化)、手術による身体組織に対する損傷、異常な創傷治癒、異常な血管新生、組織の線維化をもたらす疾患、黄斑変性、緑内障;加齢黄斑変性症(湿潤AMDおよび乾燥AMD)、アテローム性動脈硬化、関節リウマチ、多発性硬化症、肝線維症、腎線維症、肺線維症、強皮症、アテローム性動脈硬化、およびアルツハイマー病、反復運動障害、高度な血管形成を受けない組織障害、および臓器移植と関連する増殖反応を含む。
【0130】
肝線維症は、肝硬変、および慢性ウイルス性肝炎などの関連する状態、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、アルコール性脂肪性肝炎(ASH)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、胆汁性肝硬変、および自己免疫肝炎を含むがこれらに限定されない。
肺線維症は、特発性肺線維症(IPF)または特発性線維化性肺胞炎、慢性線維化性間質性肺炎、間質性肺疾患(ILD)、びまん性実質性肺疾患(DPLD)、肺気腫および慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ならびに慢性喘息を含むがこれらに限定されない。
心筋線維症は、うっ血性心不全、心筋症、および心機能の心筋梗塞後欠損を含むがこれらに限定されない。
腎線維症は、糖尿病性腎症、膀胱尿管逆流、尿細管間質性腎線維症;巣状分節状糸球体硬化症および膜性糸球体腎炎、ならびに膜性増殖性糸球体腎炎を含む糸球体腎炎(glomerulonephritisまたはglomerular nephritis)を含むがこれらに限定されない。
一般に、良性腫瘍中の細胞はそれらの分化特徴を保持し、完全に制御不能な形では分裂しない。良性腫瘍は通常局在化し、非転移性である。本発明を用いて治療しうる特定の種類の良性腫瘍は、血管腫、肝細胞腺腫、海綿状血管腫、限局性結節性過形成、聴神経腫、神経芽腫、胆管腺腫、胆管嚢胞腺種、線維腫、脂肪腫、平滑筋腫、中皮腫、奇形腫、粘液腫、結節性再生性過形成、トラコーマ、化膿性肉芽腫、ほくろ、子宮筋腫、甲状腺腫、副腎皮質腺腫、および下垂体腺腫を含む。
【0131】
悪性腫瘍において、細胞は未分化状態となり、身体の増殖制御シグナルに応答せず、制御不能な形で増殖する。悪性腫瘍は侵襲性であり、遠隔の部位への拡大(転移)が可能である。悪性腫瘍は、一般に、原発および続発の2つのカテゴリーに分類される。原発腫瘍は、それらが見出される組織から直接に生じる。続発腫瘍または転移は、体内の別の場所に由来するが、現在は遠隔の臓器に拡大した腫瘍である。転移の一般的な経路は、隣接する構造内への直接の増殖、血管系またはリンパ系を介する拡大、ならびに組織平面および体内腔(腹腔内液、髄腔内液など)に沿っての跡付けである。
本発明を用いて治療しうる、特定の種類の原発または続発の癌または悪性腫瘍は、肺癌(肺腺癌、扁平上皮細胞癌、大細胞癌、細気管支肺胞上皮癌、非小細胞癌、小細胞癌、中皮腫を含む);乳癌(乳管癌、小葉癌、炎症性乳癌、明細胞癌、粘液癌を含む);結腸直腸癌(結腸癌、直腸癌);肛門癌;膵臓癌(膵臓腺癌、膵島細胞癌、神経内分泌腫瘍を含む);前立腺癌;卵巣癌(漿液性腫瘍、類内膜腫瘍、および粘液性嚢胞腺腫瘍を含む卵巣上皮癌または表層上皮性−間質性腫瘍、性索−間質性腫瘍);肝癌および胆管癌(肝細胞癌、胆管癌、肝血管腫を含む);食道癌(食道腺癌および扁平上皮細胞癌を含む);非ホジキンリンパ腫;膀胱癌;子宮癌(子宮内膜腺癌、子宮乳頭状漿液性癌、子宮明細胞癌、子宮肉腫および子宮平滑筋肉腫、ミュラー管混合腫瘍を含む);神経膠腫、神経膠芽腫、髄芽腫、および他の脳腫瘍;腎癌(腎細胞癌、明細胞癌、ウィルムス腫瘍を含む);頭頚部癌(扁平上皮細胞癌を含む);胃癌(胃腺癌、消化管間質腫瘍);多発性骨髄腫;精巣癌;胚細胞腫瘍;神経内分泌腫瘍;子宮頚癌;消化管、乳房、他の臓器のカルチノイド;印環細胞癌;肉腫、線維肉腫、血管腫、血管腫症、血管外皮腫、偽血管腫様間質過形成、筋線維芽腫、線維腫症、炎症性筋線維芽細胞腫瘍、脂肪腫、血管脂肪腫、顆粒細胞腫、神経線維腫、神経鞘腫、血管肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、平滑筋腫、または平滑筋肉腫を含む間葉系腫瘍を含むがこれらに限定されない。
【0132】
「転移」という用語は、腫瘍細胞が宿主組織に浸潤し、遠隔でありしばしば特異的な臓器部位へと転移する能力を意味する。知られる通り、これが致死性の腫瘍増殖の顕著な特徴である。転移の形成は、腫瘍細胞と正常な宿主組織および細胞との間における一連の複雑な固有の相互作用を介して生じる。本発明の関連において、リシル・オキシダーゼ活性は腫瘍の転移成長、すなわち、特に低酸素状態下における転移成長において極めて重要である。低酸素性腫瘍はまた、従来の化学療法に対して最も侵襲性および耐性でもあるため、リシル・オキシダーゼの発現および/または機能を調節する作用物質は、転移性腫瘍、特に、化学療法耐性腫瘍に対する新規の治療を提供する。「転移」は、浸潤から区別される。インターネットのサイト:cancer.gov/cancertopics/understandingcancer/cancerの「Understanding Cancer Series:Cancer」において説明される通り、浸潤は、癌細胞による近傍組織内への直接の遊走および透過を指す。
血液学的障害は、血球の異形成性変化および各種の白血病などの血液学的悪性腫瘍をもたらしうる血球の異常な増殖を含む。血液学的障害の例は、急性骨髄性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、および鎌状血球貧血症を含むがこれらに限定されない。
急性骨髄性白血病(AML)は、成人において生じる最も一般的な種類の急性白血病である。いくつかの生得的な遺伝性障害および免疫欠損状態が、AMLの危険性の増大と関連している。これらは、ブルーム症候群、ファンコニー貧血、リー−フラウメニー症候群の家系、毛細血管拡張性運動失調症、およびX連鎖無ガンマグロブリン血症など、無作為的な染色体の切断をもたらす、DNAの安定性における欠損を伴う障害を含む。
【0133】
急性前骨髄球性白血病(APML)は、AMLの異なる亜群を代表する。この亜型は、15;17染色体転座を含有する前骨髄球性芽球を特徴とする。この転座により、レチノイン酸受容体および配列PMLを含む融合転写物の生成がもたらされる。
急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、各種の亜型により示される異なる臨床症状を伴う不均一な疾患である。ALLでは、再発性の細胞遺伝学的異常が示されている。最も一般的な細胞遺伝学的異常は、9;22転座である。結果として生じるフィラデルフィア染色体は、患者の予後不良を表す。
慢性骨髄性白血病(CML)は、多能性幹細胞のクローン性の骨髄増殖性障害である。CMLは、第9染色体と第22染色体との転座を伴い、フィラデルフィア染色体をもたらす特異的な染色体異常を特徴とする。電離放射線が、CMLの発生と関連する。
骨髄異形成症候群(MDS)は、骨髄系、赤血球系、および巨核球系の異形成性変化を含む、造血系における1種または複数種の異形成性変化の存在のためにひとまとめに群別される、多様なクローン性の造血幹細胞障害である。これらの変化の結果、該3系列の1つまたは複数における血球減少症がもたらされる。MDSに罹患する患者は、貧血、好中球減少症(感染症)、または血小板減少症(出血)に関連する合併症を発生させることが典型的である。一般に、MDSを有する患者の約10%〜約70%が、急性白血病を発生させる。
【0134】
LOXまたはLOXL2の阻害剤の投与は、既存の腫瘍サイズを減少させ、転移を防止し、既存の転移のサイズを減少させる(さらにまたは除去する)ことが分かっている(例えば、Molnarら(2003年)、Biochim Biophys Acta、第1647巻、220〜224頁を参照されたい)。
本明細書では、本明細書に記載の抗LOX抗体もしくは抗LOXL2抗体またはこれらの抗原結合フラグメントのいずれかを投与することにより、対象における腫瘍増殖を減少させる方法が提供される。一実施形態において、腫瘍は原発腫瘍である。別の実施形態において、腫瘍は転移性腫瘍である。対象の全身転移性腫瘍組織量は、本明細書に記載の抗体を投与することにより安定化させることができる。対象における腫瘍は、治療前の対象における腫瘍と比較して、少なくとも10%、25%、50%、70%、90%、または95%、またはそれ以上退縮させることができる。
抗体またはその抗原結合フラグメントがLOXL2に特異的に結合する場合、腫瘍の例は、結腸癌、食道癌、乳癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、または紡錘細胞癌を含むがこれらに限定されない。
抗体またはその抗原結合フラグメントがLOXに結合する場合、腫瘍の例は、乳癌、肺癌、腎臓癌、子宮癌、肝臓癌、または頭頚部癌を含むがこれらに限定されない。
【0135】
本明細書では、in vivoで対象における腫瘍増殖、転移性腫瘍増殖を防止するかまたは減少させる方法であって、それを必要とする対象に有効量のLOXまたはLOXL2の阻害剤、および場合によっては薬学的に許容される担体または賦形剤を投与するステップと、これにより、治療される対象において、例えば、少なくとも25%、50%、75%、90%、または95%だけ腫瘍増殖を防止するかまたは減少させるステップとを含む方法が提供される。本治療法における使用に適する組成物についての詳細な説明は、上記で与えられている。このような方法は、例えば、腫瘍が低酸素性である場合に有用である。低酸素性腫瘍は、当技術分野における日常的な方法を用いて容易に同定することができる。例えば、米国特許第5,674,693号を参照されたい。
また、本明細書では、in vivoで癌を有する対象における転移を治療する方法であって、それを必要とする対象に有効量のLOXまたはLOXL2の阻害剤を投与するステップと、これにより、治療される対象において、例えば、少なくとも25%、50%、75%、90%、または95%だけ転移を阻害するステップとを含む方法も提供される。一実施形態において、阻害剤は、ヒトLOXまたはヒトLOXL2を特異的に阻害する。これらの方法において用いられる抗体は、上記において説明されている。該抗体は、LOXまたはLOXL2ファミリーの他のメンバーとの交差反応を最小化し、これにより、合併症および正常組織毒性による潜在的な有害副作用を軽減するのに望ましい場合がある。
【0136】
また、本明細書では、転移性腫瘍を有する対象の生存機会を増大させるかまたは増強する方法であって、それを必要とする対象に有効量の抗LOX抗体または抗LOXL2抗体を投与するステップと、これにより、治療される対象の生存機会を特定の期間だけ、例えば、少なくとも10日間、1カ月間、3カ月間、6カ月間、1年間、1.5年間、2年間、3年間、4年間、5年間、8年間、10年間、またはそれ以上増大させるかまたは増強するステップとを含む方法も提供される。対象の生存の延長は、例えば、本発明の方法により治療されない対照の動物モデル(同じ種類の転移性癌を有する)よりも特定期間だけ、例えば、少なくとも10日間、1カ月間、3カ月間、6カ月間、もしくは1年間だけ、または少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、8倍、もしくは10倍だけ長い、癌転移の前臨床動物モデル(例えば、転移性癌を有するマウス)の生存の延長として定義することができる。あるいは、哺乳類の生存の延長はまた、例えば、同じ種類の転移性癌を有するが本発明の方法により治療されない患者よりも特定期間だけ、例えば、少なくとも10日間、1カ月間、3カ月間、6カ月間、1年間、1.5年間、2年間、3年間、4年間、5年間、8年間、または10年間だけ長い、癌転移を有する患者の生存の延長としても定義することができる。対照患者はプラセボの場合もあり、療法の一部として本発明の方法を含まない化学療法、生物学的製剤、および/または放射線などの標準的な支持療法により治療される場合もある。
また、本明細書では、対象の全身転移性腫瘍組織量を安定化させる方法であって、それを必要とする対象に有効量の抗LOX抗体または抗LOXL2抗体を投与するステップと、これにより、対象の全身転移性腫瘍組織量を特定の期間にわたり、例えば、少なくとも10日間、1カ月間、3カ月間、6カ月間、1年間、1.5年間、2年間、3年間、4年間、5年間、8年間、10年間、またはそれ以上にわたり安定化させるステップとを含む方法も提供される。対象の全身転移性腫瘍組織量の安定化は、例えば、本発明の方法により治療されない対照の動物モデル(同じ種類の転移性腫瘍を有する)よりも長い特定の期間にわたる、例えば、少なくとも10日間、1カ月間、3カ月間、6カ月間、または1年間長い期間にわたる、全身転移性腫瘍組織量を有する前臨床動物モデル(例えば、転移性腫瘍を有するマウス)の全身転移性腫瘍組織量の安定化として定義することができる。
【0137】
本治療法はまた、化学療法剤の有効性を増大させる方法であって、それを必要とする対象に有効量の抗LOX抗体または抗LOXL2抗体、および場合によっては薬学的に許容される担体または賦形剤を投与するステップと、これにより、化学療法剤(上記においてより詳細に説明した)の有効性を増大させるステップとを含む方法も含む。また、放射線療法と組み合わせたLOX阻害製剤の送達を伴う方法も意図される。放射線療法は、脳腫瘍、乳癌、子宮頚癌、喉頭癌、肺癌、膵臓癌、前立腺癌、皮膚癌、脊椎腫瘍、胃癌、子宮癌、または軟部組織肉腫を含むほぼあらゆる種類の充実性腫瘍を治療するのに用いることができる。放射線はまた、白血病およびリンパ腫(それぞれ、造血細胞およびリンパ系の癌)を治療するのにも用いることができる。各部位に対する放射線量は、癌の種類および放射線により損傷されうる組織および臓器が近傍に存在するかどうかを含む多数の因子に依存する。放射線はX線として送達されることが典型的であり、この場合、線量は、治療される組織に依存する。放射性核種としても知られる放射性医薬物質もまた、甲状腺癌、胸壁内において再発する癌、および癌の骨への拡大(骨転移)により引き起こされる疼痛を含む癌の治療に用いることができる。放射性核種については、上記でより詳細に説明している。
本方法により治療または診断される対象は、転移性腫瘍増殖を有するかまたはこれを有する危険性を示す対象を含む。一態様において、腫瘍は、例えば、肺癌(肺腺癌、扁平上皮細胞癌、大細胞癌、細気管支肺胞上皮癌、非小細胞癌、小細胞癌、中皮腫を含む);乳癌(乳管癌、小葉癌、炎症性乳癌、明細胞癌、粘液癌を含む);結腸直腸癌(結腸癌、直腸癌);肛門癌;膵臓癌(膵臓腺癌、膵島細胞癌、神経内分泌腫瘍を含む);前立腺癌;卵巣癌(漿液性腫瘍、類内膜腫瘍、および粘液性嚢胞腺腫瘍を含む卵巣上皮癌または表層上皮性−間質性腫瘍、性索−間質性腫瘍);肝癌および胆管癌(肝細胞癌、胆管癌、肝血管腫を含む);食道癌(食道腺癌および扁平上皮細胞癌を含む);非ホジキンリンパ腫;膀胱癌;子宮癌(子宮内膜腺癌、子宮乳頭状漿液性癌、子宮明細胞癌、子宮肉腫および子宮平滑筋肉腫、ミュラー管混合腫瘍を含む);神経膠腫、神経膠芽腫、髄芽腫、および他の脳腫瘍;腎癌(腎細胞癌、明細胞癌、ウィルムス腫瘍を含む);頭頚部癌(扁平上皮細胞癌を含む);胃癌(胃腺癌、消化管間質腫瘍);多発性骨髄腫;精巣癌;胚細胞腫瘍;神経内分泌腫瘍;子宮頚癌;消化管、乳房、他の臓器のカルチノイド;印環細胞癌;肉腫、線維肉腫、血管腫、血管腫症、血管外皮腫、偽血管腫様間質過形成、筋線維芽腫、線維腫症、炎症性筋線維芽細胞腫瘍、脂肪腫、血管脂肪腫、顆粒細胞腫、神経線維腫、神経鞘腫、血管肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、平滑筋腫、または平滑筋肉腫を含む間葉系腫瘍である。非限定的な一実施形態において、腫瘍は、乳癌、膵臓癌、肺癌、子宮頚癌、結腸癌、または頭頚部癌である。
【0138】
本発明はまた、対象における腫瘍転移を防止するかまたはその危険性を低下させる方法であって、それを必要とする対象に有効量の抗LOX抗体または抗LOXL2抗体、および場合によっては薬学的に許容される担体または賦形剤を投与するステップと、これにより、腫瘍転移を防止するかまたはその危険性を低下させるステップとを含む方法も提供する。該阻害剤は、抗体またはその抗原結合フラグメントでありうる。このような予防剤を必要とする対象は、癌の遺伝的素因を有するかまたは癌の家族歴および発癌性環境などの様々な理由により癌を発生させる高い危険性を示す個体でありうる。
癌の発症または発生に関与するヒト遺伝子の例は、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、Santiniら(2001年)、Ann.of Intern.Med.、第134巻、573〜586頁において説明される通り、VHL(腎細胞癌に関与するフォン・ヒッペル・リンドウ遺伝子);P16/INK4A(リンパ腫に関与する);E−カドヘリン(乳癌、甲状腺癌、胃癌の転移に関与する);hMLH1(結腸癌、胃癌、および子宮内膜癌におけるDNA修復に関与する);BRCA1(乳癌および卵巣癌におけるDNA修復に関与する);LKB1(結腸癌および乳癌に関与する);P15/INK4B(AMLおよびALLなどの白血病に関与する);ER(乳癌、結腸癌、および白血病に関与するエストロゲン受容体);06−MGMT(脳腫瘍、結腸癌、肺癌、およびリンパ腫におけるDNA修復に関与する);GST−pi(乳癌、前立腺癌、および腎癌に関与する);TIMP−3(結腸癌、腎癌、および脳腫瘍の転移に関与する組織メタロプロテアーゼ);DAPK1(B細胞リンパ腫細胞のアポトーシスに関与するDAPキナーゼ);P73(リンパ腫細胞のアポトーシスに関与する);AR(前立腺癌に関与するアンドロゲン受容体);RAR−ベータ(前立腺癌に関与するレチノイン酸受容体−ベータ);エンドセリン−B受容体(前立腺癌に関与する);Rb(網膜芽腫の細胞周期調節に関与する);p53(重要な腫瘍抑制遺伝子);P14ARF(細胞周期の調節に関与する);RASSF1(シグナル伝達に関与する);APC(シグナル伝達に関与する);カスパーゼ−8(アポトーシスに関与する);TERT(老化に関与する);TERC(老化に関与する);TMS−1(アポトーシスに関与する);SOCS−1(肝癌の成長因子応答に関与する);PITX2(肝癌、乳癌);MINT1;MINT2;GPR37;SDC4;MYOD1;MDR1;THBS1;PTC1;およびpMDR1を含むがこれらに限定されない。これらの遺伝子のヌクレオチド配列は、米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のウェブサイトから検索することができる。
【0139】
白血病は血液の癌であるが、他の臓器に影響を及ぼすか、または、実際に転移する可能性があることに注意されたい。急性白血病の場合、異常な細胞は、中枢神経系、精巣、皮膚、および体内における他の任意の臓器に集約されうる。白血病は、体内における全骨髄に既に関与し、多くの場合、肝臓、脾臓、およびリンパ節などの他の臓器に拡大しているので、白血病の病期分類は、患者の生存見込みを反映する他の情報に依存する。白血病は、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、および有毛細胞白血病(HCL)を含む。異なる種類の慢性白血病には、異なる病期分類システムが用いられる。病期分類システムを有さない種類もある。病期分類の方法は、以下でより詳細に説明される。
手術時における身体への損傷による異常な細胞増殖の治療は、関節手術、腸手術を含む各種の外科手術、およびケロイド瘢痕に対して可能でありうる。線維性組織をもたらす疾患は、肺気腫を含む。本発明を用いて治療しうる反復運動傷害は、手根管症候群を含む。本発明を用いて治療しうる細胞増殖障害の例は、骨腫瘍である。本明細書では、対象において手術時における身体組織に対する損傷または線維性組織をもたらす疾患による異常な細胞増殖を防止するかまたはその危険性を低下させる方法であって、それを必要とする対象に有効量の抗LOX抗体または抗LOXL2抗体、および場合によっては薬学的に許容される担体または賦形剤を投与するステップと、これにより、手術時における身体組織に対する損傷による異常な細胞増殖を防止するかまたは低下させるステップとを含む方法が提供される。該阻害剤は、抗体またはその抗原結合フラグメントでありうる。このような予防剤を必要とする対象は、癌の遺伝的素因を有するかまたは癌の家族歴および発癌性環境などの様々な理由により癌を発生させる高い危険性を示す個体でありうる。一実施形態において、該疾患は、例えば、関節手術、腸手術、ケロイド瘢痕、線維性組織をもたらす疾患、骨腫瘍の反復運動障害でありうる。
【0140】
本発明を用いて治療しうる、臓器移植と関連する増殖反応は、潜在的な臓器拒絶または関連する合併症の一因となる増殖反応を含む。具体的に、これらの増殖反応は、心臓、肺、肝臓、腎臓、および他の体内臓器または臓器系の移植時において生じうる。本明細書では、臓器移植と関連する異常な増殖反応を治療する方法であって、それを必要とする対象に有効量の抗LOX抗体または抗LOXL2抗体、および場合によっては薬学的に許容される担体または賦形剤を投与するステップと、これにより、臓器移植による異常な細胞増殖を防止するかまたは低下させるステップとを含む方法が提供される。移植は、例えば、心臓、肺、肝臓、腎臓、および他の体内臓器または臓器系の移植を含みうる。
本発明組成物の適応はまた、線維症を含む。線維症は、損傷組織における創傷治癒過程の一部として生じうる線維性組織の異常な蓄積である。このような組織損傷は、物理的傷害、炎症、感染症、毒素への曝露、および他の原因から生じうる。線維症の例は、肝線維症、肺線維症、腎線維症、心筋線維症、および強皮症を含む。説明される発明の化合物および作用物質はまた、線維化状態の治療、防止、および/または改善のためであることも意図される。
線維性組織は、高血圧、高血圧性心疾患、アテローム性動脈硬化、および心筋梗塞の結果として、心臓および血管において蓄積される。高血圧(high blood pressureまたはhypertension)は、各種の因子により引き起こされ、心停止および心筋梗塞へと進行する高血圧性心疾患(HHD)の発生をもたらすことが多い。同様に、アテローム性動脈硬化および他の虚血性心疾患もまた、結果として心停止をもたらすことが多い。これらの心血管疾患はすべて、血管系の硬化および心筋組織自体の硬化を結果としてもたらす細胞外マトリックスの蓄積および線維性沈着を示す。この線維性物質の沈着は、高血圧状態および/または動脈硬化状態により誘導される損傷に対する応答であるが、この応答の影響はまた、結果として、血管および心筋の硬化の他、心室肥大という負の影響ももたらす。加えて、心血管疾患においてみられる心筋線維症の増大は、心臓の組織骨格を介して心筋細胞へと伝達されるシグナルを途絶させるかまたは変化させ、さらにこれにより、効果的な心機能の破壊をもたらし、心停止および心筋梗塞を促進すると考えられる。心筋線維症における細胞外マトリックス沈着の増大について同定される役割を踏まえれば、本発明の化合物は、LOX/LOXL2の阻害による心筋線維症の防止、治療、および/または改善に有用である。
【0141】
本発明はまた、高血圧性心疾患(HHD)、心筋梗塞(MI)、アテローム性動脈硬化、再狭窄(例えば、冠動脈、頸動脈、および脳動脈の病変)などの心血管疾患と関連する心筋線維症、および虚血性心事象と関連する心疾患の治療または防止のための組成物、方法、システム、医療機器またはキットも提供する。
MI治癒後反応は、LOX/LOXL2の発現を誘導しうるが、この過程が無検査のまま継続される場合、過剰な架橋形成により、結果として心機能不全をもたらす細胞外マトリックスのリモデリングまたは線維症がもたらされる。マトリックスおよび架橋されたコラーゲンまたはエラスチンを分解する酵素は、より緩徐であるかまたはより低い効率で機能すると考えられ、架橋形成事象の方が急速である。LOX/LOXL2はまた、上皮間葉移行(EMT)においても役割を果たすので、これは、マトリックスのリモデリングに加え、さらに心筋細胞のリモデリングおよび心筋細胞の肥大の一因ともなる。
MIにより誘導される初期の修復性線維症は有用であり(例えば、動脈瘤および関連する損傷を防止する)、妨害なしに促進することができる。しかし、特定の理論または作用機構に束縛されることは望まないが、本発明者らは、この修復性線維症期後に開始される抗LOX/LOXL2治療により、心機能不全をもたらす反応性(不適合性)線維症が緩和されうると考える。例えば、抗LOX/LOXL2治療は、間のすべての整数を含む、MIの2、4、6、8、10、12、14、16、16、20、22、24、36、または48時間後に開始することができる。加えて、抗LOX/LOXL2治療は、MIの2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日後に開始することもできる。同様に、血圧上昇(高血圧)の結果、心筋組織内におけるコラーゲン沈着の増大およびタンパク質分解の低下ももたらされる(Berkら、J.Clin.Invest.、第117巻、第3号、568〜575頁(2007年))。高血圧性心疾患または高血圧の診断および/または確立後において開始される抗LOX/LOXL2治療は、高血圧と関連する線維症を防止、軽減、または改善しうる。このような抗LOX/LOXL2治療は、高血圧または全身血圧の上昇が診断または検出された2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日後において開始される。
【0142】
別の例として述べると、バイオマーカーを用いて、不適切なレベルの架橋形成がいつ生じうるかを決定することができる:例えば、LOXレベルは、一般に用いられるバイオマーカーであるC反応性タンパク質(CRP)と相関することが示されており、CRPレベルが適切な正常レベルを超えて上昇する場合に治療を開始しうる。より直接的に、尿または血中におけるコラーゲン架橋テロペプチドの放出を測定する方法および試験キットが存在する。これらのコラーゲン・フラグメント・レベルの上昇により、修復性線維症から反応性(不適合性)線維症への移行を示しうる。加えて、心室の効果的な収縮と関連する測定を含む、心機能および心拍出量の測定も行うことができる。
LOX/LOXL2阻害剤は、高血圧、高血圧性心疾患(HHD)、心筋梗塞(MI)、アテローム性動脈硬化、再狭窄などの病理学的心状態または心疾患の前であるか、それと同時であるか、またはその後に対象に送達して、このような病理学的な心状態または心疾患と関連する病理学的線維症の発症を防止するか、その危険性を低下させるか、またはそれを再治療することができる。例えば、LOX/LOXL2阻害剤は、このような病理学的心状態または心疾患の発症後少なくとも1時間、2時間、3時間、5時間、もしくは10時間後、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14日後に投与することができる。
加えて、限定的な持続期間の治療が意図される。治療は、反応性線維症を防止または緩和して、心機能不全を防止または軽減するのに十分な長さに限り持続するものとする。例えば、より短期間の治療が所望される場合は、半減期の短いFAB抗体フラグメントが用いられる。あるいは、その間のすべての日数を含む1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12週間にわたる限定的な投与を伴う、血清中におけるより長い半減期を有する全長抗体も用いることができる。上記で論じた関連するバイオマーカーの評価と共に、標準的な心機能検査を用いて、必要に応じて進行をモニタリングし、用量を調整することができる。限定的な期間の治療は、本手法の安全性を増大させる。
【0143】
肝線維症は、多くの肝疾患病態に関与する。既に注意した通り、線維症は、ヘモクロマトーシス、ウィルソン病、アルコール依存症、住血吸虫症、ウイルス性肝炎、胆管閉塞、毒素への曝露、および代謝障害の合併症として生じる。無検査のまま放置されると、肝線維症は、肝硬変(封入された小節の存在により定義される)、肝不全、および死へと進行する。寄生虫およびウイルス感染(例えば、HBV、HCV、HIV、住血吸虫症)などの供給源に由来する肝臓への慢性的な損傷またはアルコール摂取に由来する長期にわたるストレスの結果、おそらく、損傷領域を封入し、損傷から残存する肝組織を保護するために、肝臓のリモデリングが不可避的に生じる(LiおよびFriedman、Gastroenterol.Hepatol.、第14巻、618〜633頁、1999年)。肝線維症の結果、総コラーゲン含量の3〜10倍の増加と高密度マトリックスによる低密度基底膜の置換とを含む細胞外マトリックスの変化が生じ、これにより、肝細胞、肝星細胞、および内皮細胞の代謝および合成の機能が損なわれる(Girogescu,M.、「Non−invasive Biochemical Markers of Liver Fibrosis」、J.Gastrointestin.Liver Dis.、第15巻、第2号、149〜159頁(2006年))。こうして、本発明の化合物は線維性肝疾患の防止、治療、および/または改善に有用であり、本明細書では、LOX/LOXL2の阻害によるこのような使用が意図される。
肝線維症と同様、腎線維症も、腎臓に対する各種の疾患および損傷から生じうる。このような疾患および損傷の例は、慢性腎疾患、メタボリック・シンドローム、糖尿病、および結果として生じる糸球体腎炎を含む。メタボリック・シンドロームは、インスリン耐性の他、中心性肥満または内臓性肥満および高血圧などの糖尿病の特徴を含む異常群であることが認識されている。ほとんとすべての場合において、グルコースの調節異常の結果、サイトカイン放出の刺激および細胞外マトリックス沈着の上方調節がもたらされる。慢性腎疾患、糖尿病、メタボリック・シンドローム、および糸球体腎炎の一因となるさらなる因子は、そのすべてが腎臓に対してさらなる損傷をもたらし、細胞外マトリックス沈着をさらに刺激する、高脂血症、高血圧症、およびタンパク質血症を含む。こうして、一次的な原因にかかわらず、腎臓に対する損傷の結果、腎線維症および腎機能の付随的な喪失がもたらされる(Schena,F.およびGesualdo,L.、「Pathogenic Mechanisms of Diabetic Nephropathy」、J.Am.Soc.Nephrol.、第16巻、S30〜33頁(2005年);Whaley−Connell,A.およびSower,J.R.、「Chronic Kidney Disease and the Cardiometabolic Syndrome」、J.Clin.Hypert.、第8巻、第8号、546〜48頁(2006年))。こうして、本発明の化合物は線維性腎疾患(慢性腎疾患、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、メタボリック・シンドローム)の防止、治療、および/または改善に有用であり、本明細書ではこのような使用が意図される。
【0144】
肺線維症は、多くの症候群および疾患を含む。例示的な疾患は、特発性肺線維症(IPF)、特発性間質性肺炎、および急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む。前出の疾患を含む大半の肺線維症の病因はよく理解されていないが、すべては、炎症細胞の流入と、その後のコラーゲンに富む細胞外マトリックスの合成および沈着の増大とを特徴とする(Chuaら、Am J.Respir.Cell.Mol.Biol.、第33巻、9〜13頁(2005年);Tzortzakiら、J.Histochem.& Cytochem.、第54巻、第6号、693〜700頁(2006年);Armstrongら、Am.J.Respir.Crit.Care Med.、第160巻、1910〜1915頁(1999年))。肺線維症におけるコラーゲンおよび細胞外マトリックスの沈着の増大について同定される役割を踏まえれば、本発明の化合物は、LOX/LOXL2の阻害による肺線維症の防止、治療、および/または改善に有用である。
強皮症は、異常なコラーゲンの過剰生成が見られる自己免疫障害である。この過剰なコラーゲンは全身に蓄積され、硬化(硬化症)、瘢痕化(線維症)、および他の損傷を引き起こす。損傷は、皮膚の外見に影響を及ぼす場合もあり、内臓だけに関与する場合もある。強皮症の症状および重症度は、人によって異なる。強皮症におけるコラーゲンの増大について同定される役割を踏まえれば、本発明の化合物は、LOX/LOXL2の阻害による強皮症の防止、治療、および/または改善に有用である。
【0145】
本発明を用いることにより治療または防止されうる異常な血管新生は、関節リウマチ、虚血再灌流に関連する脳浮腫および脳外傷、大脳皮質虚血、卵巣過形成および卵巣血管過剰増生(多嚢胞性卵巣症候群)、子宮内膜症、乾癬、糖尿病性網膜症、および未熟児網膜症(後水晶体線維増殖性)、筋変性、角膜移植拒絶、新生血管性緑内障およびOster Webber症候群など、他の眼血管新生性疾患を伴う異常な血管新生を含む。
異常な血管新生と関連する疾患は、血管の増殖を必要とするかまたはこれを誘導する。例えば、角膜血管新生は、前血管潜在期、活発な新血管形成、ならびに血管の成熟および退縮という3つの段階を伴う。白血球、血小板、サイトカイン、およびエイコサノイド、または同定されない血漿構成物質などの炎症反応エレメントを含む各種の血管新生因子の同定および機構は、いまだ明らかにされていない。
本明細書に記載の抗LOX抗体および抗LOXL2抗体は、望ましくないかまたは異常な血管新生と関連する疾患の治療に用いることができる。該方法は、望ましくないかまたは異常な血管新生を患う患者に、LOX/LOXL阻害剤ではない抗新生物剤または抗血管新生剤と組み合わせて、前記LOX/LOXL阻害剤を投与するステップを含む。血管新生および/または血管新生性疾患を阻害する(部分的または完全に)のに必要とされるこれらの作用物質の具体的な用量は、該状態の重症度、投与経路、および主治医により決定されうる関連因子に依存しうる。一般に、許容される有効な毎日の用量が、血管新生および/または血管新生性疾患を有効に阻害するのに十分な量である。
本実施形態によれば、本発明の医薬製剤を用いて、網膜/脈絡膜新血管形成および角膜新血管形成などの望ましくない血管新生と関連する各種の疾患を治療することができる。網膜/脈絡膜新血管形成の例は、ベスト病、近視、視窩、スターガート病、パジェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、鎌状血球貧血症、サルコイド、梅毒、弾性線維性仮性黄色腫、頸動脈閉塞疾患、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎、マイコバクテリア感染、ライム病、全身性エリテマトーデス、未熟児網膜症、イールズ病、糖尿病性網膜症、黄斑変性、ベーチェット病、網膜炎または脈絡膜炎を引き起こす感染症、推定眼ヒストプラズマ症、扁平部炎、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラズマ症、外傷およびレーザー術後合併症、ルベオーシス(隅角の新血管形成)と関連する疾患、ならびに増殖性硝子体網膜症のすべての形態を含む、線維血管性組織または線維性組織の異常な増殖により引き起こされる疾患を含むがこれらに限定されない。角膜新血管形成の例は、流行性角結膜炎、ビタミンA欠損症、コンタクト・レンズ疲労、アトピー性角膜炎、上方輪部角膜炎、翼状片、乾燥性角膜炎、シェーグレン症候群、酒さ性挫瘡、フリクテン症、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、角膜移植拒絶、モーレン潰瘍、テリエン周辺角膜変性、辺縁潰瘍性角膜炎、多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、強膜炎、類天疱瘡放射状角膜切開、新血管緑内障および後水晶体線維形成症、梅毒、マイコバクテリア感染、脂質変性、化学熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、帯状疱疹感染、原虫感染、およびカポジ肉腫を含むがこれらに限定されない。
【0146】
さらに別の実施形態において、本発明の医薬製剤は、異常な血管新生と関連する慢性炎症性疾患の治療に用いることができる。該方法は、異常な血管新生と関連する慢性炎症性疾患を患う患者に、LOX/LOXL2阻害剤ではない抗新生物剤または抗血管新生剤と組み合わせて、前記LOX/LOXL2阻害剤を投与するステップを含む。該慢性炎症は、炎症細胞の流入を維持する毛細血管芽の持続的な形成に依存する。炎症細胞の流入および存在により肉芽腫がもたらされ、これにより、慢性炎症状態が維持される。本明細書に記載の化合物を用いる血管新生の阻害により、該肉芽腫の形成を防止し、これにより、該疾患を緩和することができる。慢性炎症性疾患の例は、クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、乾癬、サルコイドーシス、ならびに関節リウマチを含むがこれらに限定されない。
クローン病および潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は、消化管の各部位における慢性炎症および血管新生を特徴とする。例えば、クローン病は、遠位回腸および結腸に影響を及ぼすことが最も一般的であるが、口腔から肛門および肛門周囲領域までの消化管の任意の部分においても生じうる、慢性の貫壁性炎症疾患として生じる。クローン病を有する患者は、一般に、腹痛、発熱、食欲不振、体重の減少、および腹部膨満と関連する慢性の下痢を有する。潰瘍性大腸炎もまた、結腸粘膜において生じる、慢性、非特異性、炎症性、および潰瘍性の疾患であり、出血性下痢の存在を特徴とする。これらの炎症性腸疾患は、一般に、円筒状の炎症細胞により取り囲まれた新規の毛細血管芽を伴う、消化管全体にわたる慢性の肉芽腫性炎症により引き起こされる。本発明の医薬製剤による血管新生の阻害は、該血管芽の形成を阻害し、肉芽腫の形成を防止するものとする。炎症性腸疾患はまた、皮膚病変などの腸外症状も示す。このような病変は炎症および血管新生を特徴とし、消化管以外の多くの部位で生じうる。本発明の医薬製剤による血管新生の阻害は、炎症細胞の流入を低下させ、病変の形成を防止するものとする。したがって、本明細書では、それを必要とする対象に有効量の抗LOX抗体または抗LOXL2抗体、および場合によっては薬学的に許容される担体または賦形剤を投与するステップを含む、炎症性腸疾患を治療する方法が提供される。
【0147】
別の慢性炎症性疾患であるサルコイドーシスは、多系肉芽腫性障害として特徴づけられる。本疾患の肉芽腫は、体内の任意の場所における形成が可能であり、これにより、症状は、肉芽腫部位および疾患が活性であるかどうかに依存する。肉芽腫は、一定の炎症細胞の供給をもたらす血管新生性毛細血管芽により創出される。血管新生を阻害する本発明の医薬製剤を用いることにより、このような肉芽腫の形成を阻害することができる。これもまた慢性で再発性の炎症性疾患である乾癬は、多様なサイズの丘疹および斑紋を特徴とする。本発明の医薬製剤を用いる治療は、特徴的な病変を維持するのに必要な新血管の形成を防止し、患者に症状の緩和を提供するものとする。したがって、本明細書では、特徴的な病変を維持するのに必要な新血管の形成を防止し、患者に症状の緩和を提供する方法であって、それを必要とする対象に有効量の抗LOX抗体または抗LOXL2抗体、および場合によっては薬学的に許容される担体または賦形剤を投与するステップを含む方法が提供される。
関節リウマチ(RA)もまた、末梢関節の非特異的な炎症を特徴とする慢性炎症性疾患である。関節の滑膜表層における血管が血管新生を受けると考えられる。新血管網の形成に加えて、内皮細胞により、パンヌスの増殖および軟骨の破壊をもたらす因子および反応性酸素種が放出される。血管新生に関与する因子は、関節リウマチの慢性炎症状態に活発に寄与し、これを維持する一助となりうる。単独であるかまたは他の抗RA剤と組み合わされた本発明の医薬製剤を用いる治療により、慢性炎症を維持するのに必要な新血管の形成を防止し、RA患者に症状の緩和を提供することができる。他の抗RA剤は従来のものであり、当技術分野で知られている。したがって、本明細書では、それを必要とする対象に有効量の抗LOX抗体または抗LOXL2抗体、および場合によっては1種または複数種の他の抗RA剤を投与するステップを含む、RAを防止または治療する方法が提供される。
上記で説明された適応の治療における単独での抗LOX抗体または抗LOXL2抗体の使用に加え、本明細書では組合せ療法もまた意図される。本明細書で提供される方法は、抗癌剤または抗癌治療を患者に投与するステップをさらに含みうる。
【0148】
本明細書では、抗LOX抗体または抗LOXL2抗体を投与することによる、上記で説明された任意の適応を治療する方法が提供される。
一態様において、本発明は、細胞を、少なくとも1種の細胞傷害剤および少なくとも1種の抗LOX抗体または抗LOXL2抗体と接触させることによって、腫瘍細胞の浸潤性および転移を阻害する方法を特徴とする。一般に、該方法は、転移性腫瘍細胞を、組み合わせると該細胞の浸潤性または転移の潜在能力を低下させるかまたは阻害するのに有効な、ある量の少なくとも1種の細胞傷害剤および少なくとも1種の抗LOX抗体または抗LOXL2抗体と接触させるステップを含む。あるいは、本発明によれば、抗LOX抗体または抗LOXL2抗体を化学療法剤と組み合わせて腫瘍細胞を感作し(例えば、EMT状態からMET状態への移行)、化学療法剤によりこれを死滅させ、これにより、腫瘍の浸潤および転移を防止または阻害するだけでなく、原発腫瘍の増殖も阻害することができる。
任意の適切な抗癌剤もまた、本方法で用いることができる。
【0149】
本明細書で用いられる「化学療法剤」または「化学療法薬」(または、化学療法剤による治療の場合は「化学療法」)という用語は、癌の治療において有用な、任意の非タンパク質性(すなわち、非ペプチド性)化合物を包含することを意図する。化学療法剤の例は、チオテパおよびシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、およびトリメチローロメラミンを含むエチレンイミンおよびメチラメラミン;アセトゲニン(とりわけ、ブラタシン、ブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体であるトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1165(そのアドゼレシン、カルゼレシン、およびビゼレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体であるKW−2189およびCBI−TMIを含む);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベムビシン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシル・マスタードなどのナイトロジェン・マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォレムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロウレア;エネジイン抗生剤などの抗生剤(例えば、カリケアマイシン、とりわけ、カリケアマイシン・ガンマ1Iおよびカリケアマイシン・ファイ1I(例えば、Agnew、Chem.Intl.Ed.Engl.、第33巻、183〜186頁(1994年)を参照されたい;ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラマイシンの他;ネオカルジノスタチン発色団および類縁の色素タンパク質であるエネジイン抗生剤発色団);アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アウトラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン(商標))(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)などの代謝拮抗剤;デモプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗アドレナール;フロリニン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アモールブルミン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;メイタンシンおよびアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリニン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(商標);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾニン酸;トリアジコン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(とりわけ、T−2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA、およびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオペタ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(ニュージャージー州、プリンストン、Bristol Myers Squibb社腫瘍部門製、TAXOL(商標))およびドセタキセル(フランス、アントニー、Rhone−Poufenc Rorer社製、TAXOTERE(商標));クロラムブシル;ゲムシタビン(Gemzar(商標));6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;バンクリスチン;ビノレルビン(Navelbine(商標));ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤であるRFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体を含む。また、例えば、タモキシフェン(Nolvadex(商標))、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、およびトレミフェン(Fareston(商標))を含む抗エストロゲンおよび選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM);例えば、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲステロール(Megace(商標))、エキセメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、ボロゾール(Rivisor(商標))、レトロゾール(Femara(商標))、およびアナストロゾール(Arimidex(商標))など、副腎におけるエストロゲン生成を調節する酵素であるアロマターゼの阻害剤;ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、レウプロリド、およびゴセレリンなどの抗アンドロゲンなど、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する、抗ホルモン剤;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体も「化学療法剤」の定義に含まれる。
【0150】
非限定的な一例において、本発明は、細胞を、少なくともシスプラチンおよび少なくとも1種の抗LOX抗体と接触させることにより、腫瘍細胞の浸潤性および転移を相乗作用的に阻害する方法を含む(
図18を参照されたい)。本明細書に記載の実施のための1つの方法は、このような方法で抗LOXL2抗体を用いうることを理解する。
一実施形態において、LOX/LOXL調節剤と組み合わされる抗新生物剤は、チロシン・キナーゼ阻害剤である。例えば、ZD1893(AstraZeneca K.K.社製のIressa(商標))は、EGFR(上皮成長因子受容体)チロシン・キナーゼのATP結合部位中におけるATPに対する競合作用を示し、チロシン・キナーゼの自己リン酸化を阻害することによりチロシン・キナーゼ活性を阻害する。結果として、増殖、浸潤、分化、および転移と関連するEGFRを備えるシグナル伝達(上皮成長因子(EGF)などのリガンドがEGFRの細胞外ドメインに結合した後、細胞内ドメイン内におけるEGFRチロシン・キナーゼの活性化により、EGFRの自己リン酸化だけでなく、各種の細胞内標的タンパク質のリン酸化もまた引き起こされ、次いで、癌細胞表面から核への増殖シグナルが伝達され、結果として、癌細胞の増殖、浸潤、転移、血管新生がもたらされる)を遮断することにより、抗癌作用が発現される。EGFRを標的とするモノクローナル抗体であるIMC−C225またはセツキシマブ(Erbitux(商標))は、細胞膜表面上におけるEGFRの受容体部分を認識し、EGFRの自己リン酸化を阻害し、これにより、チロシン・キナーゼ活性を阻害する。ハーセプチンは、EGFRと相同なHer2/Neuに対するモノクローナル抗体であり、メシル酸イマチニブ(以前のSTI−571であるGLEEVEC(商標))は、BCR−Ablおよびc−kit両方のチロシン・キナーゼ活性を阻害しうる(非特許文献2)。ソラフェニブ(Nexavar(商標))は、Rarキナーゼ、PDGF(血小板由来成長因子)、VEGF受容体2および3キナーゼ、ならびにc−kitの低分子阻害剤である。
【0151】
本明細書で用いられる通り、腫瘍抗原に対するモノクローナル抗体は、腫瘍および白血病細胞により発現される抗原、好ましくは腫瘍特異性抗原に対して誘発される抗体である。モノクローナル抗体は、完全なヒト抗体およびヒト化抗体も含む。
癌治療のための治療用抗体の他の例は、トラスツズマブ(HERSEPTIN(商標);臨床において、HER2タンパク質の過剰発現は、より侵襲的な疾患およびより不良な予後と関連する);リンパ球上のCD20に対して生成され、正常および悪性のCD20+プレB細胞および成熟B細胞を選択的に枯渇させる、リツキシマブ(RITUXAN(商標));Bリンパ球およびTリンパ球上において見出されるCD52抗原を特異的に標的とし、慢性リンパ球性白血病(CLL)およびリンパ腫の治療に用いられるモノクローナル抗体である、アレムツズマブ(CAMPATH(商標));およびCD33に対する特異的な抗体を化学療法剤(ゾガマイシン)と組み合わせ、成人の再発性急性骨髄性白血病の治療に適応である、抗体コンジュゲートのゲムツズマブゾガマイシン(MYLOTARG(商標))を含む。
別の実施形態では、抗血管新生剤をLOX/LOXL阻害剤と組み合わせて、癌および異常であるかまたは望ましくない血管新生と関連する他の疾患を治療する。抗血管新生剤の例は、レチノイド酸およびその誘導体、2−メトキシエストラジオール、ANGIOSTATIN(商標)、ENDOSTATIN(商標)、スラミン、スクアラミン、メタロプロテイナーゼ−1の組織阻害剤、メタロプロテイナーゼ−2の組織阻害剤、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−1、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤−2、軟骨由来阻害剤、パクリタキセル、血小板因子4、硫酸プロタミン(クルペイン)、硫酸化キチン誘導体(ズワイガニの殻から調製される)、硫酸化多糖ペプチドグリカン複合体(sp−pg)、スタウロスポニン;例えば、プロリン類似体(1−アゼチジン−2−カルボン酸(LACA)、シスヒドロキシプロリン、d,1−3,4−デヒドロプロリン、チアプロリン)、α−ジピリジル、β−アミノプロピオニトリルフマレート、4−プロピル−5−(4−ピリジニル)−2(3h)−オキサゾロンを含むマトリックス代謝の調節物質;メトトレキサート、ミトキサントロン、ヘパリン、インターフェロン、2マクログロブリン血清、chimp−3、キモスタチン、β−シクロデキストリンテトラデカスルフェート、エポネマイシン;フマギリン、金チオリンゴ酸ナトリウム、d−ペニシラミン(CDPT)、ベータ−1−抗コラゲナーゼ血清、アルファ2−抗プラスミン、ビスアントレン、ロベンザリット二ナトリウム、n−2−カルボキシフェニル−4−クロロアントラニル酸二ナトリウムまたは「CCA」、サリドマイド;血管新生抑制ステロイド、カルボキシアミノイミダゾール;BB94などのメタロプロテイナーゼ阻害剤を含むがこれらに限定されない。他の抗血管新生剤は、これらの血管新生性成長因子:bFGF、aFGF、FGF−5、VEGFアイソフォーム、VEGF−C、HGF/SF、およびAng−1/Ang−2に対する抗体、好ましくはモノクローナル抗体を含む(Ferrara N.およびAlitalo,K.、「Clinical application of angiogenic growth factors and their inhibitors」(1999年)、Nature Medicine、第5巻、1359〜1364頁)。
【0152】
例示的な抗線維化剤は、β−アミノプロプリオニトリル(BAPN)の他、参照により本明細書に組み込まれる、リシル・オキシダーゼ阻害剤およびコラーゲンの異常な沈着に関連する疾患および状態の治療におけるそれらの使用に関し、「Inhibitors of lysyl oxidase」という名称で1990年10月23日に公表された、Palfreymanらによる米国特許第4,965,288号;各種の病理学的線維状態の治療のためにLOXを阻害する化合物に関し、「Anti−fibrotic agents and methods for inhibiting the activity of lysyl oxidase in situ using adjacently positioned diamine analogue substrate」という名称で1991年3月5日に公表された、KaganらによるU.S.4,997,854において開示される化合物などの化合物を含むがこれらに限定されない。さらなる例示的な阻害剤は、参照により本明細書に組み込まれる、2−イソブチル−3−フルオロ−、同クロロ−、または同ブロモ−アリルアミンなどの化合物に関し、「Inhibitors of lysyl oxidase」という名称で1990年7月24日に公表された、PalfreymanらによるU.S.4,943,593の他;例えば、(2−(1−ナフチルオキシメチル)−3−フルオロアリルアミンに関する)U.S.5,021,456;U.S.5,5059,714;U.S.5,120,764;U.S.5,182,297;U.S.5,252,608;および米国特許出願第2004/0248871号において説明されている。例示的な抗線維化剤はまた、以下の第一アミン:エチレンジアミン、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、およびそれらの誘導体、セミカルバジド、および尿素誘導体、ベータ−アミノプロピオニトリル(BAPN)、または2−ニトロエチルアミンなどのアミノニトリル、2−ブロモ−エチルアミン、2−クロロエチルアミン、2−トリフルオロエチルアミン、3−ブロモプロピルアミン、p−ハロベンジルアミンなどの不飽和ハロアミンまたは飽和ハロアミン、セレノホモシステインラクトンなど、リシル・オキシダーゼの活性部位のカルボニル基と反応する第一アミン、およびより具体的に、該カルボニル基との結合後において、共鳴により安定化される生成物を生成する第一アミンも含む。別の実施形態において、抗線維化剤は、細胞を透過するかまたは透過しない銅キレート剤である。さらなる例示的な化合物は間接的阻害剤を含み、このような化合物は、チオールアミン、特に、D−ペニシラミン、または、2−アミノ−5−メルカプト−5−メチルヘキサン酸、D−2−アミノ−3−メチル−3−((2−アセトアミドエチル)ジチオ)ブタン酸、p−2−アミノ−3−メチル−3−((2−アミノエチル)ジチオ)ブタン酸、ナトリウム−4−((p−1−ジメチル−2−アミノ−2−カルボキシエチル)ジチオ)ブタンスルフィネート、2−アセトアミドエチル−2−アセトアミドエタンチオールスルファネート、ナトリウム−4−メルカプトブタンスルフィネートトリヒドレートなどのその類似体、リシル・オキシダーゼによるリシル残基およびヒドロキシリシル残基の酸化的脱アミノ反応に由来するアルデヒド誘導体を阻害する。
本方法は、培養される細胞上において、例えば、in vitroまたはex vivoでも実施することができ、対象内に存在する細胞上において、例えば、in vivoの治療プロトコールの一部としても実施することもできる。治療レジメンは、ヒトまたは他の動物対象上において実行することができる。本明細書で提供される抗LOX抗体または抗LOXL2抗体は、化学療法剤に対する任意の順序で投与することができる。場合により、抗LOX抗体または抗LOXL2抗体および化学療法剤は、同時または逐次に投与される。これらは、異なる部位において、異なる投与レジメンにより投与することができる。本発明の組合せ療法の治療効果の増強は、従来の抗癌剤の毒性の高いレジメンに対する有望な代替法を代表する。このような方法において用いられる化学療法剤は、上記においてより詳細に説明されている。
【実施例】
【0153】
本出願は、本出願の例示的な実施形態として提供される以下の非限定的な実施例を参照することにより、よりよく理解することができる。以下の実施例は、本発明の実施形態をより完全に説明するために示されるものであるが、いかなる形であれ、本出願の広範な範囲を限定するものとして理解すべきではない。本明細書では、本出願の特定の実施形態を示し、説明してきたが、このような実施形態が例だけを目的として提供されることは明らかであろう。いまや、本発明から逸脱することなしに、多くの変更、変化、および置換が当業者に生じることであろう。本明細書に記載の実施形態に対する各種の代替法を、本明細書に記載の方法の実施において用いうることを理解されたい。
【0154】
(実施例1)
マウス・モノクローナル抗LOX抗体および抗LOXL2抗体を作製する方法
2〜3週間に5回の間隔で、マウス(BALB/c(00467))にアジュバント製剤中0.05mgの抗原(Ag)を皮下(s.c.)注射した。ペプチドAgの場合は、免疫感作前に、ウシ血清アルブミンにペプチドをコンジュゲートさせ、フロイント・アジュバント(FA)中で調合した。タンパク質Agの場合は、アルヒドロゲル−ムラミル・ジペプチド(ALD/MDP)アジュバント中でタンパク質を調合した。
0.05〜0.1mg/経路の皮下経路、腹腔内(i.p.)経路、および静脈内(i.v.)経路の組合せにより、3日間にわたり毎日、PBS中で調合されたAgをマウスに注射した。
マウスの脾臓およびリンパ節に由来する細胞を単離し、50%のポリエチレングリコールを用いて、P3X63−Ag8.653骨髄腫細胞と融合させた。
基本的にKenneyら(「Production of monoclonal antibodies using a secretion capture report web」、Biotechnology、第13巻、787〜790頁、1995年)において説明される通りに細胞を培養し、HAT選択細胞のハイブリドーマライブラリーを単離した。
【0155】
自動式細胞沈着ユニットを有する蛍光活性型セルソーターを用いて、ハイブリドーマライブラリーをクローニングした。
Kenneyらにより説明される前方散乱光、側方散乱光、およびヨウ化プロピジウム蛍光の解析基準に基づき、単一生細胞を96ウェル・プレート内にソーティングする。
Agでコートされたマイクロ滴定プレート・ウェルを用いる酵素免疫測定法(ELISA)により血清および上清をスクリーニングし、次いで、マウス血漿またはハイブリドーマ上清に続き、ヤギマウスIgG(Fc特異的)抗体−HRPコンジュゲートの後、TMB基質溶液および反応停止試薬と共にインキュベートした。
すべてのインキュベーション間において、プレート・ウェルを洗浄し、結合しなかった抗体または抗原を除去し、結果を判定した。
説明される方法を用いて同定される抗LOXL2マウス・モノクローナル抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列を、それぞれ、
図6Aおよび
図6Bに示す。各可変領域について、シグナル・ペプチドはイタリック体で示し、CDRには下線を付し、定常フレームワークの始点は太字体で示す。
説明される方法を用いて同定される抗LOXマウス・モノクローナル抗体のVHアミノ酸配列を
図7Aに示す。説明される方法を用いて同定される抗LOXマウス・モノクローナル抗体の2つのVLアミノ酸配列を
図7Bおよび
図7Cに示す。各可変領域について、シグナル・ペプチドはイタリック体で示し、CDRには下線を付す。
【0156】
(実施例2)
最新型タンパク質スクリーンBを用いて、抗LOXL2抗体をスクリーニングし、LOXL2の酵素活性を評価した。
まず、ELISAポイント試験に基づき抗体候補物質を選択した。複数種の抗原に対するELISAはAntibody Solutions社により実施され、酵素アッセイにおけるさらなる特徴づけのために、対象の抗原において強力なELISAシグナルを示す抗体を選択した。LOXL2は、基質である1,5−ジアミノペンタンを脱アミノ化して酵素が再生成されるときに、過酸化水素を生成する。
過酸化物の生成物(LOXL2により遊離される)をHRPに結合させる生化学的アッセイを用い、また、アンプレックス・レッドの蛍光生成物への転換を測定することで、酵素活性を阻害する能力について抗体を評価した。抗体ハイブリドーマの上清(10μL)を40μLの酵素混合物(pH8.0の62.5mMホウ酸ナトリウム、5ユニット/mLのHRP、125nMのLOXL2、10ppmの消泡剤)に添加し、96ウェル・フル・エリア黒色プレート内において、室温で1時間にわたりインキュベートした。50μLの基質溶液(50mMのホウ酸ナトリウム、100μMのアンプレックス・レッド試薬、20mMの1,5−ジアミノペンタン(DAP)、10ppmの消泡剤)の添加により酵素反応を開始し、37℃でMolecular Devices社製のM5プレート・リーダーにより測定した。プレート・リーダーは、反応速度モードで1時間にわたり蛍光(ex=544nm、em=590nM)を測定するよう構成した。時間に対する蛍光反応の傾きとしてデータを記録した。これらの傾きを、酵素混合物にハイブリドーマ培地を添加した対照と比較した。対照よりも傾きが小さければ、阻害剤であると考えられた。
陽性対照としてのBAPN(LOXL2の競合的阻害剤)および陰性対照としてのLOXL2に対して、抗体M1(腹水)、M4、M11、M1、M13、M22、M16、M19、M20、M20(腹水)、およびM25試験抗体を調べた(
図8を参照されたい)。
1つの抗LOXL2抗体を、AB0023と名付けた。抗LOXL2抗体は、酵素アッセイの10ml調製物質中において観察される阻害活性を再現した。阻害は、細胞ベースのアッセイでも再現された(以下を参照されたい)。配列解析により、M01、M16、M19、およびM20のアミノ酸配列が同一であることが確認された。
【0157】
(実施例3)
抗LOXL2抗体AB0023と酵素活性
抗LOXL2抗体の酵素活性を評価し、IC50を決定することができる。
抗体濃度を増加させながら、25nM LOXL2および15mM 1,5DAPの存在下において、M1、M1(腹水)、M20、およびM20(腹水)を評価した。
IC50の決定
上記で説明した酵素アッセイを併用し、LOXL2に対して選択された抗体についての用量反応曲線を作製した。PBST(0.01%のTween−20)中で抗体の希釈系列を作製し、このうちの10μLを40μLの酵素混合物(pH8.0の62.5mMホウ酸ナトリウム、5ユニット/mLのHRP、125nMのLOXL2、10ppmの消泡剤)に添加し、96ウェル・フル・エリア黒色プレート内において、室温で1時間にわたりインキュベートした。50μLの基質溶液(50mMのホウ酸ナトリウム、100μMのアンプレックス・レッド試薬、20mMの1,5−ジアミノペンタン(DAP)、10ppmの消泡剤)の添加により酵素反応を開始し、上記で説明した条件を用いるM5プレート・リーダーにより測定した。時間の関数としての蛍光反応の傾きを抗体濃度に対してプロットし、GraFitを用いて4パラメータの近似曲線に近似した。このプロットの中点が見かけのIC50であり、全反応の50パーセントが阻害される濃度である。
Ab0023は、見かけのIC50が約30nMである、LOXL2酵素活性の部分的な阻害剤であることが分かった(
図9を参照されたい)。
臨床における治療的処置のための部分的阻害剤(すなわち、Spenceら(1995年)、Science、第267巻により説明される承認済みのHIV−1薬であるネビラピン)の使用に基づき、LOXL2の部分的阻害剤もまた、治療的適用において用いることができる。
【0158】
(実施例4)
抗LOXL2抗体AB0023は非競合的阻害剤である
1,5DAPの濃度を増加させ、抗体濃度を増加させながら(1μM、0.005μM、0.050μM、および0.300μM)、抗LOXL2抗体AB0023の活性を評価した。
阻害方式
以下で説明されるモデルを用いて、LOXL2に対する抗体の阻害方式を実施した。これらの実験では、増大する抗体濃度下における、1,5−ジアミノペンタンの濃度に対する定常状態速度の依存がモニタリングされた。目的は、抗体の存在下で、基質のK
m、k
cat、またはこれらの両方が変化するかどうかを評価することであった。収集されたデータは、以下の図に示されるモデルを用いて、Grafitにより全般的に解析された。Eは酵素を表し、Sは基質を表し、Aは抗体を表し、Pは生成物を表す。パラメータαは、基質の親和性に対する化合物の効果を説明する。1に等しいαの値は、化合物が遊離酵素および酵素−基質複合体に同じく良好に結合する状況(非競合的阻害様)を説明する。1未満の値は、化合物が酵素−基質複合体に結合する相互作用(不競合的阻害様)を説明する。1を超える値は、酵素−基質複合体よりも遊離酵素により良好に結合する化合物(競合的阻害様)に対応する。βの値は、酵素の速度に対する調節物質の効果を説明する。阻害剤は1未満の値(完全な阻害剤に対してはβ=0)を有し、活性化剤は1を超える値を有する。K
Aは化合物の解離定数であり、K
sは基質のミカエリス定数であり、kは酵素の触媒速度である。定常状態速度は、上記で説明した時間の関数としての蛍光反応の傾きから決定した(IC50の決定)。データは、抗体のいくつかの固定濃度における、基質(1,5−ジアミノペンタン)濃度に対する定常状態速度の依存としてプロットし、GraFitにより解析した。
【化1】
以下の結果:α=1、K
i=0.067、およびβ=0.5に基づき、抗LOXL2抗体AB0023は、非競合的阻害剤であることが決定された。
【0159】
(実施例5)
表面プラズモン共鳴によるLOXL2に対するAB0023抗体の結合についての反応速度の測定
表面プラズモン共鳴(SPR)により、AB0023の結合親和性および解離速度を評価した。
25℃に温度調節されたBio−Rad社製のProteOn測定器を用いて、結合親和性を測定した。アミン結合を用いる2つの方法:抗体を固定化して抗原(LOXL2)を添加する方法と、抗原(LOXL2)を固定化して抗体を添加する別の方法とを用いて結合親和性を決定した。抗体または抗原は、ProteOn固定化キットにより提供されるEDCに対するNHSの1:1の比を用いて、GLCチップ上に固定化した。まず、NHS/EDC混合物によりチップを活性化させ、次いで、pH4.5の酢酸緩衝液中1μg/mLの抗原または抗体を活性化された表面上に流して結合させた。これにより、約500RUの結合がもたらされることが典型的である。次いで、1Mのエタノールアミンの添加により活性化されたチップ表面をコートした。結合したチップは4℃で保管し、50mMの水酸化ナトリウムにより再生した。
結合したチップをPBST(0.05%のTween−20)中における抗体または抗原の希釈系列によりプローブすることで解離定数を決定した。非結合チャネルを基準として用いる、ProteOn上で得られる6つのチャネルすべてにおいてデータを収集した。Bio−Rad社製のProteOnマネージャー・ソフトウェアを用いて、収集されたデータを解析した。
AB0023はLOXL2に強く結合し、ゆっくりと放出されることが分かった。Kdは、0.1〜1.0nMであると推定された。さらに、AB0023は、以下の特性:k
on=1.68×10
6M
−1秒
−1、k
off=1.17×10
−4秒
−1、K
D=0.69nM、およびt
1/2=98.7分を有することが分かった。
図11を参照されたい。
【0160】
(実施例6)
ドメイン・マッピングを実施したところ、AB0023は、SRCR3〜4ドメインに結合することが分かった。
材料と方法
すべてのプレートは、Corning社から購入した。二次抗体およびPico基質は、Pierce社から購入した。西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)は、Sigma社から購入した。すべてのProteOn試薬は、Bio−Rad社から購入した。LOXL2は、R&D systems社から購入した。本試験で用いた抗体は、Antibody Solutions社製であるか、またはArgagen Biosciences社製の腹水によった。他のすべての試薬も、可能な最高品質であった。
ELISAによる結合
発光ベースのELISAを用いて、LOXL2に対する抗体の結合を決定した。4℃で一晩にわたり、50mMのホウ酸緩衝液(pH8.0)中に0.1μg/mLのLOXL2または対象抗原によりCorning社製の白色プレートをコートした。BioTek社製のプレート洗浄器を用いてプレートを洗浄し、PBST(0.05%のtween−20)中に5%の脱脂粉乳により、室温で1時間にわたりブロックした。PBST(0.05%のtween−20)でプレートを洗浄し、次いで、即座に用いるか、または後日の使用のために、デシケーター中において4℃で保管した。調べる抗体をPBST(0.01%のtween−20)中で系列希釈し、ウェル当たり100μLの各希釈液を添加した。プレートを被験物質と共に室温で1時間にわたりインキュベートし、次いで、PBST(0.05%のTween−20)で洗浄した。検出用抗体(抗マウス抗体HRPコンジュゲート)をPBST(0.05%のTween−20)中5%の脱脂粉乳で16,000倍に希釈し、ウェル当たり100μLずつ添加した。プレートを検出抗体と共に1時間にわたりインキュベートし、次いで、PBST(0.05%のPBST)により洗浄した。製造元の指示書に従い、Pierce社製のSuperSignal ELISA pico化学発光基質を用いてシグナルを検出した。すべての波長を捕捉する500ミリ秒の積分時間によるMolecular Devices社製M5プレート・リーダーを用いて発光を測定した。データはバックグラウンド補正し、GraFitプログラムを用いるラングミュアの等温吸着式を用いて、抗体濃度に対する発光シグナルの依存を近似した。抗原濃度が解離定数に近似する場合においては、強い結合の二次方程式を用いた。報告される解離値は、これらの式に対する近似から得られる[式中、PLは結合複合体のシグナルを表し、B
maxは該結合最大値であり、K
Dは解離定数であり、Lはリガンド濃度である]。
ラングミュアの等温吸着式:
【数1】
強い結合の式:
【数2】
MCD−LOXL2、LOXL2(R&D社製)、SRCR1〜2、およびSRCR1〜4に対してAB0023を調べた。AB0023は、SRCR3〜4ドメインに結合することが分かった(
図12を参照されたい)。
【0161】
(実施例7)
コラーゲンIおよびコラーゲンIVにおける遊走/浸潤の阻害ならびに細胞増殖の阻害
細胞ベースのアッセイを行って、基質(すなわち、コラーゲン)に結合するAB0023の結合を評価した。
略述すると、試験前に各試料からAB0023をスケール・アップした。
抗血清/抗体上清のスクリーニングのために、Cultrex96ウェル・コラーゲンIおよびコラーゲンIV細胞浸潤キット(メリーランド州、ゲイサーズバーグ、Trevigen社製)を用いた。アッセイ開始の24時間前に、MDA MB231細胞から血清除去した。開始日には、浸潤アッセイ開始の少なくとも4時間前に(8時間より長く前ではなく)、コラーゲンIおよびコラーゲンIVでコートされたプレートを作製した。製造元の指示書に従い、コラーゲンIプレートおよびコラーゲンIVプレートをコートした。細胞は、プレートの上側チャンバー内において、95μlの無血清培地中にウェル当たりの細胞20,000個で播種した。10%のFBSおよび1倍濃度のL−グルタミンを含有する150μlの培地を、プレートの下側チャンバー内に分注した。マルチチャネル型ピペットを用いて、5μlの各抗血清をプレートの上側チャンバー内に入れた。抗血清および細胞の混合物をピペットにより上下に1回注意深く混ぜ合わせた。5%のCO
2と共に37℃で48時間にわたりプレートをインキュベートした。
48時間後、プレートは読み取りの準備ができた。製造元の指示書に従い、カルセインAMを含有する細胞解離溶液を作製した。プレートの洗浄および分解もまた、製造元の指示書に従った。カルセインAMを含有する125μlの細胞解離溶液をウェルの下側チャンバー内に添加し、37℃で30分間にわたりプレートを静置した。30分後、プレートの側面を叩いて細胞を解放し、プレートを37℃でさらに30分間にわたりインキュベーター内に静置した。次いで、プレートを分解し、蛍光、485〜520nMの発光波長、トップリード、黒色の不透明プレート、感度30の設定により、下側プレートをプレート・リーダー(カリフォルニア州、サニーベール、Molecular Devices社製、SpectraMax M5型)内に入れた。
10mLの調製物質およびスケール・アップされた100mLの調製物質および腹水による上清に由来する、コラーゲンI(
図13)およびコラーゲンIVにおける遊走/浸潤の一貫した阻害が観察された。
【0162】
細胞接着アッセイ
アッセイ日にコンフルエントとなるように、MDA−MB231細胞を15cm
2のプレートに播種し、DMEM(10%のFBSおよび2mMのL−グルタミン)を含有する4.5g/Lのグルコース中で増殖させた。培地を吸引し、プレート当たり10mlの1mM EDTA PBSにより2回洗浄した。バイオセイフティー・キャビネット内において37℃で5分間にわたり、さらに10mlの1mM EDTA PBSと共にインキュベートすることにより、プレートから細胞を除去し、その後、EDTA PBS溶液中において、ピペットでプレートから細胞を除去した。細胞濃度を決定し、アッセイに十分な細胞(5万個/ウェルにピペッティング分を加える)を15mlの円錐管内でスピン・ダウンする。あらかじめ加熱した無血清DMEM中に細胞ペレットを分散させて細胞50万個/mlとし、CuCl
2を添加して1μMの最終濃度とした。100μl/ウェルの細胞懸濁液を、10μlの適切なmAb希釈液を含有するU型底の96ウェル組織培養プレート内にピペットで分注した。暗所において室温で10分間にわたり、細胞懸濁液/mAb混合物を放置しインキュベートした。次いで、100μl/ウェルの再懸濁細胞/mAb混合物をコラーゲンIVでコートした96ウェル・プレート(BD Biosciences社製、BD Biocoat)に移した。バイオセイフティー・キャビネット内において、37℃で1時間にわたりプレートをインキュベートした。次いで、ウェルを吸引し、200μlのDPBS(Mediatech社製)により静かに2回洗浄し、付着しなかった細胞を除去した。次いで、各ウェルにDPBS中における最終濃度10μMのカルセイン−AM(BD Biosciences社製)100μlを添加し、残った細胞を染色した。バイオセイフティー・キャビネット内において、37℃で1時間にわたりプレートをインキュベートした。494/517(励起/発光)のMolecular Devices社製M5プレート・リーダー上においてプレートを読み取った。PBSまたは非類縁抗体の対照に対する標準化により、付着パーセント(%)を計算した。
このアッセイを用いて、AB0023抗体に対する細胞の曝露時において、付着の部分的な阻害が観察された。
細胞増殖
抗LOXL2抗体により、4種類の細胞株の細胞増殖が阻害された:231は乳癌細胞株であり、BT549は乳癌細胞株であり、HT1080は線維肉腫細胞株であり、BxPC3は前立腺癌細胞株である(
図17)。こうして、該抗体は、起源の異なる癌の増殖の阻害において有効である。
【0163】
(実施例8)
AB0023によるEMT様変化の阻害
免疫組織化学法を用いて、上皮間葉変化を評価した。
細胞がEMT状態または間葉上皮移行(MET)状態のいずれにあるかを検出するために、E−カドヘリン、ビメンチン、フィブロネクチン、およびF−アクチンを検出するファロイジンなど、上皮状態または間葉状態の細胞タンパク質マーカーに特異的な抗体により細胞を染色した。
ロダミン・ファロイジン染色プロトコール
染色日の24時間前に細胞を播種したところ、24時間後の8チャンバー型スライドにおいて、細胞は約80%コンフルエントであった。翌日、培地を吸引し、1倍濃度のPBSでチャンバーをすすいだ。次いで、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)により室温で20分間にわたり細胞を固定し、次いで、1倍濃度のリン酸緩衝生理食塩液(PBS)ですすいだ。透過性のために、室温で5分間にわたり、PBS中0.5%のサポニン(ニュージャージー州、フィリップスバーグ、JT Baker社製)により細胞を処理した。1倍濃度のPBSによりチャンバーを注意深く1回すすぎ、PBS中に希釈率1:100のロダミン・ファロイジン(カリフォルニア州、カールスバード、Invitrogen社製)を細胞に添加して、室温で15分間にわたりインキュベートした。1倍濃度のPBSによりチャンバーを2回すすぎ、Vectashield(カリフォルニア州、バーリンガム、Vector Laboratories社製)によりスライドをマウントした。
【0164】
E−カドヘリン染色プロトコール
染色日の24時間前に細胞を播種したところ、翌日の8チャンバー型スライドにおいて、細胞は約80%コンフルエントであった。翌日、培地を吸引し、1倍濃度のPBSでチャンバーをすすいだ。次いで、氷冷メタノールにより細胞を固定し、次いで、−20℃で2分間にわたりインキュベートした。1倍濃度のPBSにより細胞を1回すすぎ、スライドチャンバーに1μg/mlのE−カドヘリンAb(ニュージャージー州、ギブスタウン、Calbiochem社製)を添加した。次いで、37℃で1時間にわたりスライドをインキュベートした。1倍濃度のPBSにより注意深く1回チャンバーをすすいだ後で、二次Ab(ペンシルベニア州、ウェスト・グローブ、Jackson Immuno Research社製、cy3コンジュゲート抗マウスIgG)を添加し、室温で30〜45分間にわたりインキュベートした。1倍濃度のPBSによりチャンバーを2回すすぎ、Vectashield(カリフォルニア州、バーリンガム、Vector Laboratories社製)によりスライドをマウントした。
HS−578t細胞(LOXL2が高度)に由来する条件培地を、MCF−7細胞(LOXL2が低度/陰性)に適用した。ロダミン・ファロイジン(F−アクチン、赤色)およびDapi(核、青色)により細胞を染色した。
AB0023は、LOXL2を発現する腫瘍細胞に由来する条件培地により誘導されたEMT様変化を阻害することが分かった(データは示さない)。
【0165】
(実施例9)
抗LOXL2抗体AB0023は、マトリックスと関連するLOXL2に結合する。
Hs578t細胞における内部化試験およびAb取込み試験
10%のFBSおよび1倍濃度のグルタミンを含有するDMEM中においてHs578t細胞を培養した。8チャンバーのスライドガラス(ニュージャージー州、フランクリン・レーク、BD Falcon社製)内に細胞を播種し、一晩にわたり付着させた。コンフルエンシーを低くする場合は、スライド当たりの細胞30〜40,000個で細胞を播種した。低コンフルエンシーは、24時間後の細胞質ゾル中におけるLoxの検出に用いた。コンフルエンシーを高くする場合は、スライド当たりの細胞100,000個で細胞を播種した。高コンフルエンシーは、約48〜72時間後のマトリックスおよびコラーゲンと関連するLoxの検出に用いた。
翌日、1μg/ml(通常の増殖培地中における最終濃度)の抗LOX M64モノクローナルAbまたは抗Loxl2 M20モノクローナルAb(mAb)をチャンバーに添加した。持続的な取り込みのために、異なる時点:例えば、3時間、8時間、または24時間(一晩)において、mAbを細胞と共にインキュベートした。適切な量の持続的な取込みの後、培地を除去し、1倍濃度のPBSによりチャンバーをすすいだ。4%のPFA(パラホルムアルデヒド)中において、室温で20分間にわたり細胞を固定した。固定後、1倍濃度のPBSにより室温で5分間にわたり細胞を洗浄し、次いで、50mMの塩化アンモニウム中において、室温で10分間にわたりクエンチした。1倍濃度のPBSにより、室温で5分間にわたり細胞を再度洗浄した。
【0166】
サポニン緩衝液(PBS中に0・5%のSaponin/1%のBSA)を添加することにより、室温で20分間にわたり細胞を透過化した。室温でサポニン緩衝液中に二次検出Ab(カリフォルニア州、カールスバード、Invitrogen社製、Alexa Fluor 488ロバ抗マウスIgG)を添加し、30〜45分間にわたり細胞をインキュベートした。次いで、サポニン緩衝液中で細胞を3回洗浄した。vectashield(カリフォルニア州、バーリンガム、Vector Laboratories社製)によりスライドをマウントした。
コラーゲン検出の場合、4%のPFAにより細胞を固定する1時間前に、抗コラーゲン抗体(ニュージャージー州、ギブスタウン、Calbiochem社製の抗コラーゲンI型ウサギポリクローナル抗体、1:50)と共に細胞をインキュベートした。コラーゲンに用いられる二次Abは、ロバ抗ウサギCy3抗体(ペンシルベニア州、ウェスト・グローブ、Immuno Jackson Labs社製)である。
免疫ブロット法および免疫蛍光法による解析(データは示さない)により、LOXL2は、低密度ではおもに細胞内に存在したが、高細胞密度(コンフルエント細胞)では分泌されることが示された。LOXL2は、コンフルエント細胞の培地内で検出され、また、細胞外マトリックス上でも検出された。生細胞上における免疫蛍光法により、AB0023は、コラーゲンマトリックスと関連するLOXL2に結合することが示された。
【0167】
(実施例10)
抗LOX抗体M64はLOXに結合する
1,5DAPの濃度を上昇させ、抗体濃度を上昇させながら、抗LOX抗体M64の活性を評価した(
図15を参照されたい)。
材料と方法
すべてのプレートは、Corning社から購入した。二次抗体およびPico基質は、Pierce社から購入した。アンプレックス・レッド試薬は、Invitrogen社から購入した。西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)、1,5−ジアミノペンタン、消泡剤は、Sigma社から購入した。すべてのProteOn試薬は、Bio−Rad社から購入した。LOXは、Arresto Biosciences社内で作製した。本試験で用いた抗体は、Antibody Solutions社製であるか、またはArgagen Biosciences社製の腹水(asc)によった。他のすべての試薬も、可能な最高品質であった。
ELISAによる結合
発光ベースのELISAを用いて、LOXに対する抗体の結合を決定した。50mMのホウ酸緩衝液(pH8.0)中に0.1ug/mLのLOXまたは対象抗原により、4℃で一晩にわたりCorning社製の白色プレートをコートした。BioTek社製のプレート洗浄器を用いてプレートを洗浄し、PBST(0.05%のtween−20)中に5%の脱脂粉乳により、室温で1時間にわたりブロックした。PBST(0.05%のtween−20)でプレートを洗浄し、次いで、即座に用いるか、または後日の使用のために、デシケーター中において4℃で保管した。調べる抗体をPBST(0.01%のtween−20)中で系列希釈し、ウェル当たり100uLの各希釈液を添加した。プレートを被験物質と共に室温で1時間にわたりインキュベートし、次いで、PBST(0.05%のtween−20)で洗浄した。検出用抗体(抗マウスHRPコンジュゲート)をPBST(0.05%のtween−20)中5%の脱脂粉乳で16,000倍に希釈し、ウェル当たり100uLずつ添加した。プレートを検出抗体と共に1時間にわたりインキュベートし、次いで、PBST(0.05%のPBST)により洗浄した。製造元の指示書に従い、Pierce社製のSuperSignal ELISA pico化学発光基質を用いてシグナルを検出した。すべての波長を捕捉する500ミリ秒の積分時間によるMolecular Devices社製M5プレート・リーダーを用いて発光を測定した。データはバックグラウンド補正し、GraFitプログラムを用いるラングミュアの等温吸着式を用いて、抗体濃度に対する発光シグナルの依存を近似した。抗原濃度が解離定数に近似する場合においては、強い結合の二次方程式を用いた。報告される解離値は、これらの式に対する近似から得られる[式中、PLは結合複合体のシグナルを表し、B
maxは該結合最大値であり、K
Dは解離定数であり、Lはリガンド濃度である]。
ラングミュアの等温吸着式:
【数3】
強い結合の式:
【数4】
3つのバッチにおいて抗LOX抗体M64を調べたところ、バッチ3、バッチ4、およびバッチ5に対してそれぞれ6.6nM、5.0nM、および5.7nMのKDを有することが分かった(
図15)。
【0168】
(実施例11)
表面プラズモン共鳴によるLOXに対するM64抗体結合の反応速度の測定
M64の結合親和性を表面プラズモン共鳴(SPR)により評価した。
25℃に温度調節されたBio−Rad社製のProteOn測定器を用いて、結合親和性を測定した。アミン結合を用いる2つの方法:抗体を固定化して抗原(LOX)を添加する方法と、抗原(LOX)を固定化して抗体を添加する別の方法とを用いて結合親和性を決定した。抗体または抗原は、ProteOn固定化キットにより提供されるEDCに対するNHSの1:1の比を用いて、GLCチップ上に固定化した。まず、NHS/EDC混合物によりチップを活性化させ、次いで、pH4.5の酢酸緩衝液中1μg/mLの抗原または抗体を活性化された表面上に流して結合させた。これにより、約500RUの結合がもたらされることが典型的である。次いで、1Mのエタノールアミンの添加により活性化されたチップ表面をコートした。結合したチップは4℃で保管し、50mMの水酸化ナトリウムにより再生した。
結合したチップをPBST(0.05%のtween−20)中における抗体または抗原の希釈系列によりプローブすることで解離定数を決定した。非結合チャネルを基準として用いる、ProteOn上で得られる6つのチャネルすべてにおいてデータを収集した。Bio−Rad社製のProteOnマネージャー・ソフトウェアを用いて、収集されたデータを解析した。
M64は、7nMのK
Dを有することが分かった(
図16)。
【0169】
(実施例12)
以下は、本明細書全体で説明される配列の一覧である。
【表2】
【0170】
本明細書では、本発明の好ましい実施形態を示し、説明してきたが、このような実施形態が例だけを目的として提供されることは明らかであろう。いまや、本発明から逸脱することなしに、多くの変更、変化、および置換が当業者に生じることであろう。本明細書に記載の実施形態に対する各種の代替法を、本発明の実施において用いうることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義することを意図し、これらの特許請求の範囲内における方法および構造ならびにそれらの同等物が特許請求の範囲により対象とされることを意図する。
【0171】
実施形態
1. 配列番号6として示されるアミノ酸配列を有するエピトープに特異的に結合する単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
2. 配列番号1として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変重鎖と、配列番号2として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変軽鎖とを含む、実施形態1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
3. 配列番号1として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変重鎖と、配列番号2として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変軽鎖とを含む、単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
4. 配列番号1として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変重鎖を含む、抗体またはその抗原結合フラグメント。
5. 配列番号2として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変軽鎖を含む、単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
6. LOXL2に対する結合について、実施形態1から5のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと競合するか、またはこれに特異的に結合する、単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
7. LOX、LOXL1、LOXL3、またはLOXL4の少なくとも1種に対する場合よりも少なくとも2、5、10、50、100、500、または1000倍大きな結合親和性でLOXL2に特異的に結合する、前記実施形態のいずれかに記載の抗体。
8. 配列番号6として示されるアミノ酸配列を有するエピトープに特異的に結合する、ヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント。
9. 配列番号25、26、27、または28として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変重鎖と、配列番号30、31、または32として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変軽鎖とを含む、実施形態8に記載のヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント。
10. 配列番号25、26、27、または28として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変重鎖と、配列番号30、31、または32として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変軽鎖とを含む、ヒト化単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
11. 配列番号25、26、27、または28として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変重鎖を含む、ヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント。
12. 配列番号30、31、または32として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変軽鎖を含む、ヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント。
13. LOXL2に対する結合について、実施形態8から12のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと競合するか、またはこれに特異的に結合する、ヒト化抗体またはその抗原結合フラグメント。
14. 配列番号3として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変重鎖と、配列番号4または5として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変軽鎖とを含む、単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
15. 配列番号3として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変重鎖を含む、単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
16. 配列番号4または5として示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する可変軽鎖を含む、単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
17. LOXに対する結合について、実施形態14から16のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと競合するか、またはこれに特異的に結合する、単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
18. LOX1、LOXL2、LOXL3、またはLOXL4の少なくとも1種に対する場合よりも少なくとも2、5、10、50、100、500、または1000倍大きな結合親和性で、LOXに特異的に結合する、実施形態14から17のいずれか一項に記載の抗体。
19. 検出可能標識、治療用標識、またはこれらの両方により標識される、実施形態1から18のいずれか一項に記載の単離抗体またはその抗原結合フラグメント。
20. 可変重鎖、可変軽鎖、Fv、scFv、Fab、F(ab’)
2、遺伝子操作抗体、モノクローナル抗体、またはヒト化抗体である、前記実施形態のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
21. 前記実施形態のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、および薬学的に許容される担体または賦形剤の組成物を含む、LOXまたはLOXL2と関連する状態を治療するためのキット。
22. 前記LOXまたはLOXL2と関連する状態が、腫瘍、転移、血管新生、または線維症である、実施形態21に記載のキット。
23. 検出可能標識、治療用標識、またはこれらの両方をさらに含む、実施形態21に記載のキット。
24. 抗体またはその抗原結合フラグメントの、検出可能標識、治療用標識、またはこれらの両方とのコンジュゲートの仕方を説明する指示書をさらに含む、実施形態23に記載のキット。
25. 抗体またはその抗原結合フラグメントの投与の仕方を説明する指示書をさらに含む、実施形態21に記載のキット。
26. 前記組成物が発熱物質を含有しない、実施形態21に記載のキット。
27. 前記組成物が凍結乾燥される、実施形態21に記載のキット。
28. LOXまたはLOXL2と関連する状態を診断する方法であって、対象の試料を前記実施形態のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させることにより、前記試料中におけるLOXおよび/またはLOXL2レベルを評価するステップを含み、基準試料と比較した、該試料中におけるLOXおよび/またはLOXL2レベルの変化により、腫瘍または転移の存在または増大が示される方法。
29. 前記LOXまたはLOXL2と関連する状態が、腫瘍、転移、血管新生、または線維症である、実施形態28に記載の方法。
30. 基準試料と比較した、試料中におけるLOXおよび/またはLOXL2レベルの上昇により、腫瘍もしくは転移の存在、または腫瘍もしくは転移性増殖の増大が示される、実施形態28または29に記載の方法。
31. 基準試料が、早期の時点における対象から採取された試料であるか、または別の個体由来の試料である、実施形態28から30のいずれか一項に記載の方法。
32. 試料中におけるLOXおよび/またはLOXL2レベルが、試料を実施形態1から14のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させることにより検出される、実施形態28に記載の方法。
33. 前記抗体またはその抗原結合フラグメントが検出可能な形で標識される、実施形態32に記載の方法。
34. 試料または細胞組織を実施形態1から13のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させることによりLOXL2を阻害する方法。
35. LOXL2に対する前記抗体またはその抗原結合フラグメントの結合によりLOXL2の酵素活性が阻害される、実施形態34に記載の方法。
36. 試料または細胞組織を実施形態14から20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させることによりLOXを阻害する方法。
37. LOXに対する前記抗体またはその抗原結合フラグメントの結合によりLOXの酵素活性が阻害される、実施形態36に記載の方法。
38. 接触をin vitro、in vivo、またはex vivoで行う、実施形態34から37のいずれか一項に記載の方法。
39. LOXまたはLOXL2の阻害により対象における腫瘍増殖が減少する、実施形態34から37のいずれか一項に記載の方法。
40. LOXまたはLOXL2の阻害により対象における血管新生が軽減される、実施形態34から37のいずれか一項に記載の方法。
41. LOXまたはLOXL2の阻害により対象における線維症が軽減される、実施形態34から37のいずれか一項に記載の方法。
42. 実施形態1から20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを投与するステップを含む、対象における腫瘍増殖を減少させる方法。
43. 前記腫瘍が原発腫瘍または転移性腫瘍である、実施形態42に記載の方法。
44. 前記腫瘍が、肺癌(肺腺癌、扁平上皮細胞癌、大細胞癌、細気管支肺胞上皮癌、非小細胞癌、小細胞癌、中皮腫を含む);乳癌(乳管癌、小葉癌、炎症性乳癌、明細胞癌、粘液癌を含む);結腸直腸癌(結腸癌、直腸癌);肛門癌;膵臓癌(膵臓腺癌、膵島細胞癌、神経内分泌腫瘍を含む);前立腺癌;卵巣癌(漿液性腫瘍、類内膜腫瘍、および粘液性嚢胞腺腫瘍を含む卵巣上皮癌または表層上皮性−間質性腫瘍、性索−間質性腫瘍);肝癌および胆管癌(肝細胞癌、胆管癌、肝血管腫を含む);食道癌(食道腺癌および扁平上皮細胞癌を含む);膀胱癌;子宮癌(子宮内膜腺癌、子宮乳頭状漿液性癌、子宮明細胞癌、子宮肉腫および子宮平滑筋肉腫、ミュラー管混合腫瘍を含む);神経膠腫、神経膠芽腫、髄芽腫、および他の脳腫瘍;腎癌(腎細胞癌、明細胞癌、ウィルムス腫瘍を含む);頭頚部癌(扁平上皮細胞癌を含む);胃癌(胃腺癌、消化管間質腫瘍);多発性骨髄腫;精巣癌;胚細胞腫瘍;神経内分泌腫瘍;子宮頚癌;消化管、乳房、および他の臓器のカルチノイド;印環細胞癌;肉腫、線維肉腫、血管腫、血管腫症、血管外皮腫、偽血管腫様間質過形成、筋線維芽腫、線維腫症、炎症性筋線維芽細胞腫瘍、脂肪腫、血管脂肪腫、顆粒細胞腫、神経線維腫、神経鞘腫、血管肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、および非ホジキンリンパ腫を含む間葉系腫瘍の中から選択される、実施形態42または43に記載の方法。
45. 対象における腫瘍が、治療前の対象における腫瘍と比較して、少なくとも10%、25%、50%、70%、90%、95%、またはそれ以上退縮する、実施形態42から44のいずれか一項に記載の方法。
46. 腫瘍を有する対象の生存が、抗体またはその抗原結合フラグメントを投与されない対象と比較して、少なくとも10日間、1カ月間、3カ月間、6カ月間、1年間、2年間、5年間、10年間、またはそれ以上延長される、実施形態42から45のいずれか一項に記載の方法。
47. 対象の全身転移性腫瘍組織量を安定化させる、実施形態42から46のいずれか一項に記載の方法。
48. 全身転移性腫瘍組織量を、少なくとも10日間、1カ月間、3カ月間、6カ月間、1年間、2年間、5年間、10年間、またはそれ以上にわたり安定化させる、実施形態47に記載の方法。
49. 抗体またはその抗原結合フラグメントが、hLOXの分泌形態または成熟形態には特異的に結合するが、配列番号7のアミノ酸配列を有するhLOXのプレプロタンパク質には特異的に結合しない、実施形態42に記載の方法。
50. hLOXの分泌形態が配列番号8、62、または63のアミノ酸配列を有する、実施形態49に記載の方法。
51. hLOXの成熟形態が配列番号9のアミノ酸配列を有する、実施形態49に記載の方法。
52. 実施形態1から20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントにより対象における血管新生を阻害する方法。
53. 実施形態1から20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを投与することにより対象における線維性疾患を阻害する方法。
54. 前記線維性疾患が、肝線維症、肺線維症、腎線維症、心筋線維症、または強皮症である、実施形態48に記載の方法。
55. 前記腎線維症が、糖尿病性腎症、糸球体硬化症、糖尿病性腎症、膀胱尿管逆流、尿細管間質性腎線維症、または糸球体腎炎である、実施形態54に記載の方法。
56. 試料または細胞組織を、実施形態1から20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと接触させることにより、細胞外マトリックス形成を低下させる方法。
57. 投与または接触が非経口投与により行われる、実施形態34から56のいずれか一項に記載の方法。
58. LOXおよび/またはLOXLのレベルおよび/または活性を検出することにより、実施形態42から56のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの投与に対する対象の応答をモニタリングする方法。
59. 前記抗体またはその抗原結合フラグメントが治療用標識で標識される、実施形態42から57のいずれか一項に記載の方法。
60. 第2の治療作用物質を同時投与するステップをさらに含む、実施形態42から59のいずれか一項に記載の方法。
61. 前記第2の治療作用物質が抗体または化学療法剤である、実施形態60に記載の方法。
62. 対象におけるLOXL2もしくはLOXを阻害するか、腫瘍増殖を減少させるか、血管新生を阻害するか、線維性疾患を阻害するか、または細胞外マトリックス形成を低下させるための製剤の調製における、実施形態1から20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。
63. 前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、治療用標識、および場合によっては診断用標識で標識される、実施形態62に記載の使用。
64. 患者の試料中におけるLOXおよび/またはLOXL2レベルを評価するステップを含む腫瘍または転移の診断のための製剤の調製における、実施形態1から20のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントの使用であって、基準試料と比較した、該試料中におけるLOXおよび/またはLOXL2レベルの変化により、腫瘍もしくは転移の存在または腫瘍もしくは転移性増殖の増大が示される使用。
65. 前記抗体またはその抗原結合フラグメントが診断用標識で標識される、実施形態64に記載の使用。