特許第5770227号(P5770227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770227
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】間接活線工事用先端工具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   H02G1/02
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-134697(P2013-134697)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-12647(P2015-12647A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2014年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】森山 裕之
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−074923(JP,U)
【文献】 特開平08−163728(JP,A)
【文献】 特開2013−055812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用途の異なる先端工具を共用可能な絶縁操作棒を用いて、電線を切断可能な間接活線工事用先端工具であって、
前記絶縁操作棒の先端部が連結可能な円筒状の接続金具を下端部に有し、送り雌ねじ部を内壁に形成した回転円筒体と、
前記送り雌ねじ部に螺合する送り雄ねじ部を外周に形成し、前記回転円筒体に対して軸方向に移動する移動円筒体と、
前記移動円筒体の上部に基端部が回動可能に連結し、互いに対向する切断刃部が交差又は離間するように開閉する一対の湾曲刃と、
一対の前記湾曲刃が開く方向に力を付勢する付勢部材と、
前記回転円筒体の外周を囲い、前記回転円筒体がその軸回りに回動自在になるように連結すると共に、前記回転円筒体に対して軸方向の移動を規制する包囲円筒体と、を備え、
前記包囲円筒体は、
電線をその外周方向から導入可能に上端縁から切り欠いた一対の第1溝と、
一対の前記切断刃部が前記電線の延びる方向と略直交する方向に移動できるように、一対の前記第1溝と略直交するように上端縁から切り欠かれ、一対の前記湾曲刃の位置を規制する一対の第2溝と、を有し、
前記絶縁操作棒を軸回りに一方の方向に回転して、前記移動円筒体を上昇させることで、一対の前記湾曲刃を開くと共に、一対の前記湾曲刃の間に前記電線を外周方向から導入し、前記絶縁操作棒を軸回りに他方の方向に回転して、前記移動円筒体を下降させ、一対の前記湾曲刃の外周が前記回転円筒体の内壁に当接して閉じることが可能な、間接活線工事用先端工具。
【請求項2】
前記移動円筒体は、絶縁性を有する合成樹脂からなる請求項1記載の間接活線工事用先端工具。
【請求項3】
前記包囲円筒体は、その外周から把持片を突出し、開閉する一対の把持腕を先端部に設けた絶縁操作棒を用いて、前記把持片を把持可能な一つ以上の把持部材を有する請求項1又は2記載の間接活線工事用先端工具。
【請求項4】
前記回転円筒体は、輪帯溝を外周に有し、
前記包囲円筒体は、内壁から前記回転円筒体の中心に向かって突出し、先端縁が前記輪帯溝に嵌合する円弧爪を有し、前記回転円筒体を回転自在に支持する二つ以上の支持部材を備える請求項1から3のいずれかに記載の間接活線工事用先端工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接活線工事用先端工具に関する。特に、絶縁操作棒などの間接活線工具の先端部に設けた先端工具であって、電柱に架設された高圧配電線などを切断する間接活線工事用先端工具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧配電線を無停電で配電工事を行う活線作業には、直接活線工法と間接活線工法の二通りがある。直接活線工法は、作業者が高圧ゴム手袋などの保護具を着用して、通電中の高圧配電線に直接触れて配電工事を行う。一方、間接活線工法は、作業者が絶縁操作棒(ホットスティック)などを用いて、通電中の高圧配電線に直接触れることなく配電工事を行うことができる。
【0003】
一般に、絶縁操作棒は、長尺の操作棒とこの操作棒の先端部に取り付けた配電作業用工具(以下、先端工具という)で構成している。そして、絶縁操作棒は、高圧配電線を把持、又は切断するなど、作業目的に対応して、先端工具を交換できるように構成している。
【0004】
高圧配電線などを切断する間接活線工事用先端工具(いわゆる、ケーブルカッタ)としては、端部に第1刃部を形成した固定刃と、第1刃部に対して第2刃部が近接又は離間するように、第2刃部を端部に形成し、固定刃と回動自在に連結する可動刃と、を備え、可動刃の外周縁に扇形歯車を形成し、扇形歯車に噛み合う駆動歯車を絶縁操作棒に設けた動力伝達機構により回転することで、第1刃部と第2刃部とで高圧配電線を挟んで切断するケーブルカッタが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−160119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6は、従来技術によるケーブルカッタの構成を示す図であり、図6(A)は、ケーブルカッタの正面図、図6(B)は、図6(A)の左側面図である。図7は、従来技術によるケーブルカッタの使用例を示す概略図である。なお、本願の図6は、特許文献1の図1に相当し、本願の図7は、特許文献1の図3に相当している。
【0007】
図6を参照すると、従来技術によるケーブルカッタ9は、円筒状の継手金具91とギアボックス92を備えている。又、ケーブルカッタ9は、帯板状の固定刃93と半円板状の可動刃94を備えている。ギアボックス92は、継手金具91の上部に固定されている。固定刃93は、ギアボックス92の一方の側面に固定されている。可動刃94は、固定刃93に設けた回転軸93sに回動自在に連結している。
【0008】
図6を参照すると、継手金具91は、その中心部に駆動軸95を回転自在に保持している。駆動軸95は、絶縁操作棒80(図7参照)に設けた動力伝達機構(図示せず)に連結可能な接続金具95aを下端部に固定している。又、駆動軸95は、歯数の少ない曲り歯傘歯車96aを上端部に固定している。曲り歯傘歯車96aは、ギアボックス92の内部に突出するように配置されている。
【0009】
図6を参照すると、ケーブルカッタ9は、ギアボックス92の一方の側壁と固定刃93で両端支持される回転軸97を備えている。回転軸97は、曲り歯傘歯車96aと噛み合う歯数の多い曲り歯傘歯車96bが固定されている。曲り歯傘歯車96bは、ギアボックス92の内部に配置されている。又、回転軸97は、平歯車98を端部に固定している。平歯車98は、固定刃93側に突出すように配置されている。
【0010】
図6を参照すると、固定刃93は、第1刃部93aを端部に形成している。一方、可動刃94は、第1刃部93aに対向する第2刃部94aを端部に形成している。又、可動刃94は、その外周縁に扇形歯車94bを形成している。扇形歯車94bは、平歯車98に噛み合っている。
【0011】
図6を参照すると、平歯車98を一方の方向に回転すると、第1刃部93aに対して第2刃部94aが近接するように、可動刃94を一方の方向に回動できる。そして、第1刃部93aと第2刃部94aとで電線Wを挟んで切断できる(図7参照)。一方、平歯車98を他方の方向に回転すると、第1刃部93aに対して第2刃部94aが離間するように、可動刃94を他方の方向に回動できる。
【0012】
図7を参照して、電柱Pに架設された高所の電線Wを切断する場合には、作業者Mは、高所作業車Cに設けた作業台Bに搭乗し、先端部にケーブルカッタ9を連結した絶縁操作棒80を操作することで実施する。
【0013】
図7を参照すると、絶縁操作棒80の内部には、動力伝達機構(図示せず)が配置されている。絶縁操作棒80の手許部に設けたハンドル81を一方の方向に回転すると、この動きが動力伝達機構を介して、継手金具91に伝動され、第1刃部93aと第2刃部94aとで電線Wを挟んで切断できる(図6参照)。
【0014】
しかしながら、従来技術によるケーブルカッタは、複雑な動力伝達機構を備えた絶縁操作棒のみに連結して動作するように構成されている、という問題がある。用途の異なる先端工具を先端部に連結可能なシンプルな共用操作棒を用いて、電線を切断する接活線工事用先端工具が実現できれば、既存の共用操作棒を使用でき、用途に対応して先端工具を交換できるので便利である。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0015】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、用途の異なる先端工具を先端部に連結可能な共用操作棒を用いて、電線を切断する接活線工事用先端工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、共用操作棒の先端部が連結可能な円筒状の接続金具を下端部に有し、設け、内壁に送り雌ねじ部を形成した回転円筒体と、送り雌ねじ部に螺合する送り雄ねじ部を外周に形成し、回転円筒体に対して軸方向に移動する移動円筒体と、移動円筒体の上部に基端部が回動可能に連結し、互いに対向する切断刃部が交差又は離間するように開閉する一対の湾曲刃と、一対の湾曲刃が開く方向に力を付勢する付勢部材と、回転円筒体の外周を囲い、回転円筒体の軸回りに回動自在に連結すると共に、回転円筒体に対して軸方向の移動が規制される包囲円筒体とで、接活線工事用先端工具を構成し、共用操作棒を一方の方向に回転して、移動円筒体を上昇させることで、一対の湾曲刃を開くと共に、包囲円筒体の上端縁に切り欠いた一対の第1溝、及び一対の湾曲刃の間に電線を外周方向から導入し、共用操作棒を他方の方向に回転して、移動円筒体を下降させ、一対の湾曲刃の外周が回転円筒体の内壁に当接して閉じることで、電線を切断できることを見出し、これに基づいて、以下のような新たな間接活線工事用先端工具を発明するに至った。
【0017】
(1)本発明による間接活線工事用先端工具は、用途の異なる先端工具を共用可能な絶縁操作棒を用いて、電線を切断可能な間接活線工事用先端工具であって、前記絶縁操作棒の先端部が連結可能な円筒状の接続金具を下端部に有し、送り雌ねじ部を内壁に形成した回転円筒体と、前記送り雌ねじ部に螺合する送り雄ねじ部を外周に形成し、前記回転円筒体に対して軸方向に移動する移動円筒体と、前記移動円筒体の上部に基端部が回動可能に連結し、互いに対向する切断刃部が交差又は離間するように開閉する一対の湾曲刃と、一対の前記湾曲刃が開く方向に力を付勢する付勢部材と、前記回転円筒体の外周を囲い、前記回転円筒体がその軸回りに回動自在になるように連結すると共に、前記回転円筒体に対して軸方向の移動を規制する包囲円筒体と、を備え、前記包囲円筒体は、電線をその外周方向から導入可能に上端縁から切り欠いた一対の第1溝と、一対の前記切断刃部が前記電線の延びる方向と略直交する方向に移動できるように、一対の前記第1溝と略直交するように上端縁から切り欠かれ、一対の前記湾曲刃の位置を規制する一対の第2溝と、を有し、前記絶縁操作棒を軸回りに一方の方向に回転して、前記移動円筒体を上昇させることで、一対の前記湾曲刃を開くと共に、一対の前記湾曲刃の間に前記電線を外周方向から導入し、前記絶縁操作棒を軸回りに他方の方向に回転して、前記移動円筒体を下降させ、一対の前記湾曲刃の外周が前記回転円筒体の内壁に当接して閉じることが可能である。
【0018】
(2)前記移動円筒体は、絶縁性を有する合成樹脂からなってもよい。
【0019】
(3)前記包囲円筒体は、その外周から把持片を突出し、開閉する一対の把持腕を先端部に設けた絶縁操作棒を用いて、前記把持片を把持可能な一つ以上の把持部材を有してもよい。
【0020】
(4)前記回転円筒体は、輪帯溝を外周に有し、前記包囲円筒体は、内壁から前記回転円筒体の中心に向かって突出し、先端縁が前記輪帯溝に嵌合する円弧爪を有し、前記回転円筒体を回転自在に支持する二つ以上の支持部材を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明による間接活線工事用先端工具は、共用操作棒を軸回りに一方の方向に回転して、移動円筒体を上昇させることで、一対の湾曲刃を開くと共に、一対の湾曲刃の間に電線を外周方向から導入でき、共用操作棒を軸回りに他方の方向に回転して、移動円筒体を下降させ、一対の湾曲刃の外周が回転円筒体の内壁に当接して閉じることで、電線を切断できるので、既存の共用操作棒を使用でき、用途に対応して先端工具を交換できるので便利である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態による間接活線工事用先端工具の構成を示す図であり、図1(A)は、間接活線工事用先端工具の平面図、図1(B)は、要部を縦断面で示した間接活線工事用先端工具の正面図、図1(C)は、間接活線工事用先端工具の左側面図である。
図2】前記実施形態による間接活線工事用先端工具の構成を示す斜視分解組立図である。
図3】前記実施形態による間接活線工事用先端工具を先端部に連結する絶縁操作棒の構成を示す正面図である。
図4】前記実施形態による間接活線工事用先端工具の構成を示す縦断面図であり、一対の湾曲刃が開いた状態図である。
図5】前記実施形態による間接活線工事用先端工具の構成を示す縦断面図であり、一対の湾曲刃が閉じた状態図である。
図6】従来技術によるケーブルカッタの構成を示す図であり、図6(A)は、ケーブルカッタの正面図、図6(B)は、図6(A)の左側面図である。
図7】従来技術によるケーブルカッタの使用例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[間接活線工事用先端工具の構成]
最初に、本発明の一実施形態による間接活線工事用先端工具の構成を説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態による間接活線工事用先端工具の構成を示す図であり、図1(A)は、間接活線工事用先端工具の平面図、図1(B)は、要部を縦断面で示した間接活線工事用先端工具の正面図、図1(C)は、間接活線工事用先端工具の左側面図である。
【0025】
図2は、前記実施形態による間接活線工事用先端工具の構成を示す斜視分解組立図である。図3は、前記実施形態による間接活線工事用先端工具を先端部に連結する絶縁操作棒の構成を示す正面図である。
【0026】
図4は、前記実施形態による間接活線工事用先端工具の構成を示す縦断面図であり、一対の湾曲刃が開いた状態図である。図5は、前記実施形態による間接活線工事用先端工具の構成を示す縦断面図であり、一対の湾曲刃が閉じた状態図である。
【0027】
(全体構成)
図1又は図2及び図4又は図5を参照すると、本発明の一実施形態による間接活線工事用先端工具(以下、ケーブルカッタという)10は、回転円筒体1、移動円筒体2、及び一対の湾曲刃3a・3bを備えている。又、ケーブルカッタ10は、付勢部材となるねじりコイルばね3s、包囲円筒体4、及び一対の支持部材5・5を備えている。
【0028】
図1又は図2及び図4又は図5を参照すると、回転円筒体1は、その本体部11の下端部に円筒状の接続金具12を同軸上に結合している。接続金具12は、絶縁操作棒7の先端部と着脱自在に連結できる(図3参照)。又、回転円筒体1は、送り雌ねじ部11sを本体部11の内壁に形成している(図2又は図4参照)。
【0029】
図1又は図2及び図4又は図5を参照すると、移動円筒体2は、送り雌ねじ部11sに螺合する送り雄ねじ部21sを外周に形成している(図2参照)。移動円筒体2は、絶縁性を有する合成樹脂を成形してもよい。移動円筒体2は、送り雄ねじ部21sが送り雌ねじ部11sに螺合した状態で、回転円筒体1に内装されている。
【0030】
図1又は図2及び図4又は図5を参照して、移動円筒体2の回転が規制された状態で、回転円筒体1を回転すると、移動円筒体2を軸方向に移動できる。回転円筒体1と移動円筒体2とは、一方の機械要素の回転運動が他方の機械要素の直線運動に変換される「単一ねじ機構」を構成している。
【0031】
図1又は図2及び図4又は図5を参照すると、一対の湾曲刃3a・3bは、それらの基端部が移動円筒体2の上部に回動可能に連結している。又、一対の湾曲刃3a・3bは、互いに対向する切断刃部31a・31bをそれらの内周に形成している。一対の湾曲刃3a・3bは、先端部側が交差するように閉じることができ(図5参照)、先端部側が離間するように開くことができる(図4参照)。
【0032】
図1又は図2及び図4又は図5を参照すると、ねじりコイルばね3sは、一対の湾曲刃3a・3bに連結している。ねじりコイルばね3sは、一対の湾曲刃3a・3bが開く方向に力を付勢している。
【0033】
図1又は図2及び図4又は図5を参照すると、包囲円筒体4は、回転円筒体1の外周を囲っている。包囲円筒体4は、回転円筒体1がその軸回りに回動自在になるように連結している。又、包囲円筒体4は、回転円筒体1に対して軸方向の移動を規制している。
【0034】
図1又は図2及び図4又は図5を参照すると、回転円筒体1は、輪帯溝11mを本体部11の外周に形成している(図2参照)。一対の支持部材5・5は、対向するように、包囲円筒体4の内壁に固定されている。支持部材5は、円弧爪51を端部に形成している。一対の円弧爪51・51は、包囲円筒体4の内壁から回転円筒体1の中心に向かって突出している。そして、一対の円弧爪51・51は、それらの先端縁が輪帯溝11mに嵌合している。
【0035】
(絶縁操作棒の構成)
図3を参照すると、絶縁操作棒7は、工具部71、柄部72、及び把持部73を備えている。工具部71は、ケーブルカッタ10の一方の端部に突出した接続金具12(図1又は図2参照)に着脱可能となっている。把持部73は、作業員が把持し易いように滑り止めが施されている。柄部72は、工具部71と把持部73とを連結し、長尺の管体からなっている。
【0036】
図3を参照すると、柄部72の中間部には、円錐体状の水切り鍔7aを取り付けている。水切り鍔7aは、工具部71から進出する雨水を堰き止めることができる。又、柄部72と把持部73との接続部には、円錐体状の限界鍔7bを取り付けている。限界鍔7bの取付け位置は、絶縁性を考慮して安全に作業できる限界を示している。
【0037】
図2又は図3を参照すると、工具部71は、軸部71a、一対のピン71b・71b、及び突起71cを有している。軸部71aは、柄部72の軸方向に突出している。一対のピン71b・71bは、相反する向きに軸部71aの外周から進出している。突起71cは、軸部71aの先端面から突出するように、工具部71に内蔵された圧縮コイルばねによって、力を付勢されている。
【0038】
(接続金具の構成)
図1又は図2を参照すると、接続金具12は、底面が開口された円筒状に形成している。接続金具12には、工具部71の軸部71aが嵌合する軸穴12hを開口している。又、接続金具12には、一対のピン71b・71bを回動することにより係合する一対のT字状の溝12t・12tを有している。
【0039】
図1を参照して、工具部71の軸部71aを接続金具12の軸穴12hに挿入して、所定角度、回動すると、突起71cに付勢されて、一対のピン71b・71bをT字状の溝12tに嵌合できる。図3に示した絶縁操作棒7は、共用操作棒と呼ばれ、用途の異なる先端工具を接続できる。又、図1に示したロック構造は、ツイストロックと呼ばれている。
【0040】
(移動円筒体の構成)
図1又は図2を参照すると、移動円筒体2は、二山クレビス形の軸受部21を先端部に備えている。軸受部21は、移動円筒体2の軸中心と直交する方向に貫通した軸穴21hを開口している。一方、一対の湾曲刃3a・3bは、その基端部に軸穴3hを開口している(図2参照)。図2を参照して、軸穴21hの中心と軸穴3hの中心を一致させて、軸ピン3pを圧入することで、一対の湾曲刃3a・3bの基端部を回動自在に軸受部21に保持できる。
【0041】
(一対の湾曲刃及び付勢部材の構成)
図2を参照して、前述したように、一対の湾曲刃3a・3bは、それらの基端部が回動自在に軸受部21に保持されている。軸受部21の間には、更に、ねじりコイルばね3sとカラー3cが配置され(図1(A)参照)、軸ピン3pが挿通されることで、一対の湾曲刃3a・3bの軸方向の移動が規制されている。
【0042】
又、図2を参照すると、ねじりコイルばね3sは、巻回部31sと両端末となる一組のアーム32s・33sを有して構成している。巻回部31sには、軸ピン3pが挿通されている。一方のアーム32sは、湾曲刃3aの中間部に係止している。他方のアーム33sは、湾曲刃3bの中間部に係止している。ねじりコイルばね3sは、一対の湾曲刃3a・3bが開く方向に力を付勢している(図4参照)。
【0043】
(包囲円筒体の構成)
図1又は図2及び図4又は図5を参照すると、包囲円筒体4は、一対の第1溝41d・41dと一対の第2溝42d・42dを有している。一対の第1溝41d・41dは、電線Wをその外周方向から導入できるように、包囲円筒体4の上端縁から切り欠かれている。一方、一対の第2溝42d・42dは、一対の第1溝41d・41dと略直交するように、包囲円筒体4の上端縁から切り欠かれている。一対の第2溝42d・42dには、一対の切断刃部31a・31bを電線Wの延びる方向と略直交する方向に移動でき、一対の湾曲刃3a・3bの位置を規制できる。
【0044】
図1又は図2及び図4又は図5を参照すると、包囲円筒体4は、一対の把持部材42・42を更に備えている。把持部材42は、包囲円筒体4の外周から把持片42tを突出している。開閉する一対の把持腕を先端部に設けた絶縁操作棒(図示せず)を用いて、把持片42tを把持でき、包囲円筒体4に対する一対の湾曲刃3a・3bの水平面上の回動角度を補正できる。
【0045】
[間接活線工事用先端工具の作用]
次に、実施形態によるケーブルカッタ10の操作方法を説明しながら、ケーブルカッタ10の作用及び効果を説明する。
【0046】
図1図2及び図3を参照して、最初に、絶縁操作棒7の先端部に接続金具12を連結し、絶縁操作棒7を操作してケーブルカッタ10を持ち上げる。次に、図3を参照して、把持部73を軸回りに一方の方向に回転することで、回転円筒体1に対して移動円筒体2がねじ送りされ、移動円筒体2を上昇できる。そして、一対の湾曲刃3a・3bが回転円筒体1の上端縁から突出することで、ねじりコイルばね3sに付勢されて、一対の湾曲刃3a・3bを開くことができる(図4参照)。
【0047】
次に、図4に示した状態を維持して、ケーブルカッタ10を持ち上げ、一対の第1溝41d・41d及び一対の湾曲刃3a・3bの間に電線Wをその外周方向から導入する(図2参照)。これにより、移動円筒体2に対する、包囲円筒体4の回転が規制される。又、一対の湾曲刃3a・3bは、一対の第2溝42d・42dに入り、回転が規制される。次に、図3を参照して、把持部73を軸回りに他方の方向に回転することで、回転円筒体1に対して移動円筒体2がねじ送りされ、移動円筒体2を下降できる(図5参照)。そして、一対の湾曲刃3a・3bの外周が前記回転円筒体の内壁に当接ことで、ねじりコイルばね3sに抗して、一対の湾曲刃3a・3bを交差するように閉じることができ(図5参照)、電線Wを切断できる。
【0048】
図1から図5を参照すると、実施形態によるケーブルカッタ10は、絶縁操作棒7を軸回りに一方の方向に回転して、移動円筒体2を上昇させることで、一対の湾曲刃3a・3bを開くと共に、一対の湾曲刃3a・3bの間に電線Wを外周方向から導入でき、絶縁操作棒7を軸回りに他方の方向に回転して、移動円筒体2を下降させ、一対の湾曲刃3a・3bの外周が回転円筒体1の内壁に当接して閉じることで、電線Wを切断できるので、既存の共用操作棒を使用でき、用途に対応して先端工具を交換できるので便利である。
【0049】
又、実施形態によるケーブルカッタ10は、絶縁性を有する合成樹脂で移動円筒体2を構成することで、一対の湾曲刃3a・3bの充電部への接触に起因する地絡を防止できる。
【0050】
本発明による間接活線工事用先端工具は、次のような効果が奏される。
(1)専用の絶縁操作を用いることなく、共用操作棒を使用できるので、効率の良い作業を実施できる。
(2)絶縁性を有する合成樹脂で移動円筒体を構成することで、一対の湾曲刃の充電部への接触に起因する地絡を防止できる。
(3)電線を切断時に電線を把持するための絶縁操作棒を用意する必要がなくなり、一般的に使用される共用の絶縁操作棒を利用できる。
【0051】
本発明は、絶縁操作棒などを用いて、無停電状態の高圧配電線を間接的に活線工事できる間接活線工事用先端工具を開示したが、本発明の先端工具は、間接活線工事用に限定されることなく、他の分野でも応用されることが期待される。
【符号の説明】
【0052】
1 回転円筒体
2 移動円筒体
3a・3b 一対の湾曲刃
3s ねじりコイルばね(付勢部材)
4 包囲円筒体
7 絶縁操作棒
10 ケーブルカッタ(間接活線工事用先端工具)
11s 送り雌ねじ部
12 接続金具
21s 送り雄ねじ部
31a 切断刃部
31b 切断刃部
41d・41d 一対の第1溝
42d・42d 一対の第2溝
W 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7