特許第5770228号(P5770228)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770228
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/195 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
   C04B35/16 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-134762(P2013-134762)
(22)【出願日】2013年6月27日
(62)【分割の表示】特願2009-73041(P2009-73041)の分割
【原出願日】2009年3月25日
(65)【公開番号】特開2013-216575(P2013-216575A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2013年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】菊池 芳郎
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−524452(JP,A)
【文献】 特開平01−131018(JP,A)
【文献】 特開2005−097034(JP,A)
【文献】 特開2008−207978(JP,A)
【文献】 特開平10−244527(JP,A)
【文献】 特開平08−244088(JP,A)
【文献】 特開2000−226252(JP,A)
【文献】 特開平07−138077(JP,A)
【文献】 堤和男,熱量測定による固体表面の研究,生産研究,1971年 9月,Vol.23 No.9,P.368-374
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/195,35/622
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コージェライト形成材料からなる成形用調合物と有機バインダとを含有する坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を作製し、前記ハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を得るハニカム構造体の製造方法であって、前記成形用調合物が、水に対する浸漬熱が、0.31J/m以上である親水性タルクを少なくとも含有するとともにタルク以外のマグネシウム含有物質を含有せず、前記親水性タルクの含有率が前記成形用調合物全体のタルク含有量に対して50質量%以上であるハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記親水性タルクの有機バインダ吸着量が、3.6mg/m以下である請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記有機バインダが水溶性セルロース誘導体である請求項1または2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記有機バインダの含有割合は、前記成形用調合物全体に対して、5質量%以下である請求項1〜のいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記成形用調合物中に、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム及びシリカが含有される請求項1〜のいずれか1項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法に関する。更に詳しくは、坏土中の水分の含有量が少なくても、良好に成形されたハニカム構造体を得ることが可能なハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排ガスや廃棄物の焼却時に発生する焼却排ガス等に含有される、塵やその他の粒子状物質を捕集するため、更には上記排ガス中のNOx、CO及びHC等を、担持した触媒により吸着・吸収するために、セラミックスからなるハニカム構造体が使用されている。このようなハニカム構造体の中でも、耐熱衝撃性に優れたものとして、コージェライト質ハニカム構造体が使用されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
このようなコージェライト質ハニカム構造体の製造方法としては、例えば、セラミックス原料(成形用調合物)、水、有機バインダ等を混練し、可塑性(=流動性)を向上させた坏土を押出成形し、乾燥し、焼成するセラミックス構造体の製造方法が開示されている(特許文献3参照)。このように、坏土中に有機バインダを含有させるのは、セラミックス原料粉末と水のみでは、これらの成形に必要な可塑性(=流動性)・保形性等が十分得られないためであり、有機バインダ等を添加して押出成形性(=流動性と保形性のバランス)を向上させている。他にも、押出成形性を向上させる製造方法としては、例えば、分散剤として、特定の炭素数を有する脂肪酸塩を特定の割合で配合したものを使用する方法がある。これにより、押出成形性に優れるハニカム構造体を、高い生産性で製造することが可能であり、成形装置への負荷を低減することができるハニカム構造体の製造方法である(特許文献4参照)。
【0004】
更に他にも、押出成形性を向上させる製造方法としては、例えば、成形用調合物が、少なくともタルク(第1のマグネシウム含有物質)を含む2種以上のマグネシウム含有物質を含有し、マグネシウム含有物質の中で、タルク以外のマグネシウム含有物質(第2のマグネシウム含有物質)の平均粒子径が4μm以下であるハニカム構造体の製造方法が開示されている(特許文献5参照)。これにより坏土中の有機物の含有量が少なくても、良好に成形されたハニカム構造体を得ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−92214号公報
【特許文献2】特開平11−100259号公報
【特許文献3】特許第3227039号明細書
【特許文献4】特許第3799241号明細書
【特許文献5】国際公開第2006/046542号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
押出成形性を向上させるため、有機バインダを添加すると、配合する水の割合が多くなり、その成形体を乾燥させるとき、膨大なエネルギーが必要であり、また、乾燥時間が長くなるため、変形しやすい問題があった。また、有機バインダに更に有機成形助剤(例えば脂肪酸塩)を添加すると、焼成時に発生するCOの量が多くなり、環境負荷となる問題があった。さらに、マグネシウム含有物質としてタルク以外のマグネシウム含有物質をマグネシウム含有物質の合計量に対して40質量%以上使用すると、熱膨張係数が大きくなり、耐熱衝撃性が低下する問題があった。
【0007】
本発明の課題は、生産性を上げるために、装置負荷を上げなくても、速い速度で押出成形することが可能なハニカム構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、発明者は、親水性タルクを使用することで、坏土中の水分が少なくても、流動性を向上させ、速い速度で押出成形することが可能であることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下のハニカム構造体の製造方法が得られる。
【0009】
[1] コージェライト形成材料からなる成形用調合物と有機バインダとを含有する坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を作製し、前記ハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を得るハニカム構造体の製造方法であって、前記成形用調合物が、水に対する浸漬熱が、0.31J/m以上である親水性タルクを少なくとも含有するとともにタルク以外のマグネシウム含有物質を含有せず、前記親水性タルクの含有率が前記成形用調合物全体のタルク含有量に対して50質量%以上であるハニカム構造体の製造方法。
【0010】
[2] 前記親水性タルクの有機バインダ吸着量が、3.6mg/m以下である前記[1]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0012】
] 前記有機バインダが水溶性セルロース誘導体である前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0013】
] 前記有機バインダの含有割合は、前記成形用調合物全体に対して、5質量%以下である前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【0014】
] 前記成形用調合物中に、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム及びシリカが含有される前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、装置負荷を上げなくても、速い速度で押出成形することが可能であり、生産性(単位時間当たりの製造個数)を向上することができる。有機分散剤や、タルク以外のマグネシウム含有物質を使用せずに、親水性タルクを使用することで、流動性を向上させ、更に水分量も減らすことができる。水分量を減らすことができるため、乾燥負荷を減らし乾燥中の変形を抑制することができる。つまり、押出す際は流動性があり、押出した後は保形性があるハニカム構造体を製造することができる。また、有機成分が少ないため、CO発生を抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】坏土を評価するために押出し圧力と押出し速度との関係を測定するための治具を示す断面図である。
図2】浸漬熱の測定方法を説明する説明図である。
図3】保形性と流動性との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0018】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、コージェライト形成材料からなる成形用調合物と有機バインダとを含有する坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を作製し、ハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を得るハニカム構造体の製造方法であって、成形用調合物として親水性タルクを少なくとも含有するとともにタルク以外のマグネシウム含有物質は含有しないものを使用する製造方法である。親水性タルクを含有するため、成形の際の流動性を向上させることができる。また、成形後の保形性も良好である。
【0019】
本発明において、上記コージェライト形成材料からなる成形用調合物は、焼成したときにコージェライトを形成するように、所定のセラミック原料を調合してコージェライトと同じ組成(コージェライト組成)になるようにしたものである。コージェライトの好適な組成としては、例えば、2MgO・2Al・5SiOを挙げることができる。そして、親水性タルクは、上記コージェライトのマグネシウム源となる。
【0020】
成形用調合物の中で、マグネシウム源としては、通常、タルク(3MgO・4SiO・HO)が好適に使用される。これは、得られるコージェライトの熱膨張係数を小さくすることができるためである。しかし、タルクは、その表面が疎水性で水に濡れない性質がある。成形用調合物を水で混練して坏土を作製し、その坏土を使用して押出成形する場合には、このように水に濡れない性質の原料が多く含まれると、成形性が悪くなり、得られるハニカム構造体が変形したりクラックが入ったりササクレが生じたりすることがある。そのために、タルクの調合割合に対応した量の有機バインダを使用することにより成形性の向上が図られているが、有機バインダは、ハニカム構造体の強度低下や環境汚染等の原因となるため、その使用量はできるだけ削減されることが好ましい。
【0021】
そこで、本発明の製造法では、親水性タルクを用いる。親水性タルクとは、タルクの水に対する浸漬熱が、0.31J/m以上であるものである。浸漬熱は、水への親和性を表す指標であり、この値が高いほど水への親和性が高いことを表す。親水性タルクは、タルク原鉱石を粉砕する際に、粉砕で与えられるエネルギーによって、タルク粉末が高温とならないように注意しながら湿潤下で処理されたものである。つまり、親水性タルクとするには、製造時に高温にさらさないことが重要であり、そのために、温度に十分注意しながら湿式粉砕したり、乾燥温度を過剰に高くしないことによって得られるものである。使用する親水性タルクの浸漬熱は高いほうが望ましいが、少なくとも0.31J/m以上であることが好ましく、0.35J/m以上であることがより好ましく、0.38J/m以上であることが特に好ましい。浸漬熱が高い方が水になじみやすいため、水分量を減らすことができる。
【0022】
親水性タルクの含有率が成形用調合物全体のタルク含有量に対して50質量%以上であ、90質量%以上であることがさらに好ましい。50質量%未満の場合、流動性を向上させ、水分量も減らすという効果を十分に得ることができない。
【0023】
親水性タルクの有機バインダ吸着量が、3.6mg/m以下であることが好ましく、3.0mg/m以下であることがさらに好ましい。有機バインダ吸着量が多いと、タルク表面に吸着した有機バインダによって、タルク粒子が流動しにくくなり、流動性が低下する。3.6mg/mを超えると、流動性を向上させる効果を十分に得ることができない。
【0024】
本実施の形態のハニカム構造体の製造方法において、成形用調合物に含有される物質としては、上述した親水性タルクの他には、成形用調合物全体としてコージェライト組成(2MgO・2Al・5SiO)となるような物質を適宜選択して使用することができる。例えば、カオリン(Al・2SiO・2HO)、アルミナ(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))及びシリカ(SiO)を含有することが好ましい。これらの物質以外にはムライト(3Al・2SiO)、ベーマイト(AlOOH)、仮焼カオリン等を使用することができる。
【0025】
本実施の形態のハニカム構造体の製造方法においては、上述した親水性タルク等の原料を混合してコージェライト形成材料からなる成形用調合物とする。混合装置としては、粉体を混合するために通常使用する装置を使用することができる。
【0026】
本実施の形態のハニカム構造体の製造方法においては、成形用調合物に有機バインダを加えて混練し、坏土とするが、有機バインダ以外にも、造孔剤、界面活性剤等の有機物と水とを加えて混練し、坏土を作製することが好ましい。
【0027】
有機バインダは、坏土の可塑性、成形性を向上させると共に、ハニカム成形体の形状を保持する保形剤としての機能を果たすものである。一方、有機バインダは、成形時に有機バインダが占有していた空間が欠陥となる、あるいは、ハニカム構造体にクラック等の欠陥を発生させ、ハニカム構造体の強度を低下させるという問題があり、その坏土中の含有量は必要最小限に抑えることが好ましい。また、環境問題という観点からも、有機バインダの含有量は最小限に抑えることが好ましい。このことから、本発明においては、有機バインダの含有割合は、成形用調合物全体に対して、8質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、2質量%以下であることが特に好ましい。また、0質量%でもよい。本発明の製造方法は、有機バインダの使用量を低減することができ、このことは、CO発生量を低減できることを意味する。
【0028】
有機バインダとしては、水溶性セルロース誘導体を用いることが好ましい。具体的には、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース等を挙げることができる。有機バインダは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
本実施の形態のハニカム構造体の製造方法において、高気孔率のハニカム構造体を製造する場合には、坏土中に造孔剤を含有させることが好ましい。このような造孔剤は、所望の形状、大きさ、分布の気孔を、ハニカム構造体に形成し、気孔率を増大させ、高気孔率のハニカム構造体を得ることができる。このような造孔剤としては、例えば、グラファイト、小麦粉、澱粉、フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、吸水性樹脂、又は発泡樹脂(アクリロニトリル系プラスチックバルーン等)等を挙げることができる。これらは気孔を形成する代わりに自身は焼失する。中でも、COや有害ガスの発生及びクラックの発生を抑制する観点から、発泡樹脂が好ましい。また、無機造孔剤としてシリカゲル、フライアッシュバルーン等を使用することもできる。なお、造孔剤を用いる場合、造孔剤の含有割合については特に制限はないが、坏土全体に対して、15質量%以下とすることが好ましく、13質量%以下とすることが更に好ましい。15質量%より多いと、得られたハニカム構造体の強度が低下することがある。
【0030】
本実施の形態のハニカム構造体の製造方法においては、坏土中に界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤は、原料粒子の分散性を向上させるとともに、押出成形時には原料粒子を配向しやすくさせる働きがある。もちろん、タルク粒子の疎水性表面に作用して水に対する濡れ性を向上させる働きもある。界面活性剤としては、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性、両イオン性のいずれであってもよいが、陰イオン性界面活性剤の、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリカルボン酸塩、ポリアクリル酸塩や、非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン(又はソルビトール)脂肪酸エステル等を挙げることができる。特にラウリン酸カリウムが粒子の配向性の観点から好ましい。
【0031】
また、坏土中に分散媒として水を含有させることが好ましい。分散媒を含有させる割合は、成形時における坏土が適当な硬さを有するものとなるようにその量を調整することができるが、好ましくは、成形用調合物全体に対して、10〜50質量%である。本実施の形態のハニカム構造体の製造方法は、成形用調合物等に水を含有させて混練して坏土を作製する場合に特に優れた効果を発揮する。分散媒として水を使用し、親水性のタルクを使用することにより、成形用調合物等が水とより良好に馴染み、それにより成形性が向上する。
【0032】
本実施の形態のハニカム構造体の製造方法においては、連続押出成形装置を用いることができる。この連続押出成形装置を用いる方法は、成形用調合物及び有機バインダと、少なくとも水とを、連続押出成形装置に投入しそれらを混練する混練工程と、その混練工程により得られる坏土を押出成形する押出成形工程とを連続して行うものであり、極めて高い生産性を期待できるものである。本発明は、親水性タルクを使用することにより、保形性は維持しながら、流動性を向上させることができる。流動性が向上すると、速い速度で押出すことができるようになるので、生産性を高くすることができる。また同時に水分量が減らせるので、乾燥時間が短くなり、それによる生産性を向上することもできる。
【0033】
一方、混練する工程と、押出成形する工程とを分けて行うこともできる。この場合は、混練はニーダーで行い、押出成形はラム成形機で行うことができる。ラム成形機を用いる場合、本発明では、流動性が向上することにより、押出す際の負荷を小さくすることができる。つまり省エネルギーで生産することができる。また水分量が減らせるので、乾燥負荷も低減する効果もある。
【0034】
本実施の形態のハニカム構造体の製造方法においては、得られた坏土をハニカム形状に成形し、それを乾燥してハニカム成形体とすることが好ましい。作製するハニカム成形体の形状としては特に制限はなく、例えば、ハニカム形状の隔壁によって二つの端面間を貫通して複数のセルが形成されたものを挙げることができる。DPF等のフィルタ用途に用いる場合は、セルの端部が二つの端面部分で互い違いに目封止されていることが好ましい。ハニカム成形体の全体形状としては特に制限はなく、例えば、円筒状、四角柱状、三角柱状等を挙げることができる。また、ハニカム成形体のセル形状(セルの形成方向に対して垂直な断面におけるセル形状)についても特に制限はなく、例えば、四角形、六角形、三角形等を挙げることができる。
【0035】
乾燥の方法も特に制限はなく、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の従来公知の乾燥法を用いることができる。中でも、成形体全体を迅速かつ均一に乾燥することができる点で、熱風乾燥と、マイクロ波乾燥又は誘電乾燥とを組み合わせた乾燥方法が好ましい。
【0036】
本実施の形態のハニカム構造体の製造方法においては、ハニカム成形体を焼成(本焼成)する前に仮焼してもよい。「仮焼」とは、ハニカム成形体中の有機物(バインダ、造孔剤、界面活性剤等)を燃焼させて除去する操作を意味し、脱脂、脱バインダ等ともいう。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔剤の燃焼温度は200〜800℃程度、界面活性剤の燃焼温度は100〜400℃程度であるので、仮焼温度は100〜800℃程度とすればよい。仮焼時間としては特に制限はなく、通常は、1〜20時間程度であるが、本発明においては、有機バインダの使用量を少なくすることができるため、仮焼時間は短くすることができる。具体的には0.5〜10時間程度である。これにより、製造時間を短くすることができ、生産効率が向上する。
【0037】
最後に、上述のようにして得られた仮焼体を焼成(本焼成)することによってハニカム構造体を得る。「本焼成」とは、仮焼体中の成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するための操作を意味する。焼成条件(温度・時間)としては、セラミックス成形体を、1300〜1500℃で焼成することが好ましく、1350〜1450℃で焼成することがさらに好ましい。1300℃未満であると、目的のコージェライト単相が得られ難いことがあり、1500℃を超えると、融解してしまうことがある。また、焼成の雰囲気は、大気雰囲気、任意の割合で酸素と窒素を混合した雰囲気等を挙げることができる。また、1〜12時間程度焼成することが好ましい。
【0038】
本発明のハニカム構造体は、上述のハニカム構造体の製造方法によって得られるものであり、高品質(欠陥やクラックが少なく、熱膨張係数が小さい)なハニカム構造体である。
【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
まず、親水性タルク(山口雲母工業所製、製品名CT−35)と非親水性タルクを用意し、その物性を調べた。親水性タルクは湿式粉砕、非親水性タルクは乾式粉砕にて製造されたものである。親水性タルクと非親水性タルクの水に対する浸漬熱と、有機バインダ吸着量、平均粒子径、BET比表面積、見かけ密度を測定した。
【0041】
平均粒子径は、レーザー回折散乱法(JIS R1629に準拠)にて測定し、見かけ密度は、乾式自動密度計(Micromeritics Gas Pycnometer Accupyc)を用いて定容積膨張法にて測定した。
【0042】
浸漬熱の測定は、図2に示すように、ガラスアンプル11中に真空状態でタルク粉末12(約0.5g)を封入し、そのガラスアンプル11を精製水13の入った試料容器14中に沈め、熱量計が熱平衡に達した時点でガラスアンプル11をハンマー15にて破壊し精製水13中に試料(タルク粉末12)を分散させ、その時発生した熱量を感熱体16で測定することによって行った。具体的には、東京理工製のマルチマイクロカロリーメーター(MMC−5111)を使用し、測定温度25℃、Ampレンジ250μV、撹拌60rpmで行い、溶媒は精製水とした。試料前処理は、加熱温度200℃で真空引き(8.3×10E−5mmHg、4h)を行った。これにより得られる値は(J/g)であるため、BET比表面積(m/g)で除した値(J/m)を算出した。BET比表面積は、micromeritics製の流動式比表面積測定装置(FlowSorb−2300)を使用し、試料前処理は200℃×10分とした。
【0043】
有機バインダ吸着量は、次のようにして測定した。まず、親水性タルクまたは非親水性タルクを30gと、有機バインダ(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を1.5g混合し、さらに水を8g加えて混練した。混練物を1.3g取り分け、水60gの中に加えた。そして、水中の有機バインダの濃度をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)にて測定した。GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)は、東ソー製HLC−8220GPCを使用した。混練物中の有機バインダ量をW1、水中の有機バインダ量をW2、タルクの表面積をSとしたとき、吸着量=(W1−W2)÷Sで吸着量を算出した。なお、タルクの表面積S(m)は、BET比表面積(m/g)×混練物中のタルク含有量(g)で計算した。また混練物中のタルク含有量は、混練物重量(1.3g)×タルク30g÷(タルク30g+有機バインダ1.5g+水8g)により計算した。有機バインダ吸着量と、水に対する浸漬熱を表1に示す。なお、表の親水性タルク1は、山口雲母工業所製のCT−35、親水性タルク2は、親水性タルク1を熱風乾燥機にて130℃、6時間の処理を施したものである。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、親水性タルクは、非親水性タルクに比べ、有機バインダ吸着量が多いことが示され、浸漬熱が大きいことから親水性があることが示された。
【0046】
次に、親水性タルクと非親水性タルクの割合を変えた試料を作製し、その流動性及び保形性を調べた。まず、タルク、カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウムをコージェライト組成になるように調合し、有機バインダ(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を外配で5質量%添加した。さらに、水と、有機成形助剤としてラウリン酸カリウム(外配で0.3質量%)、グリセリン誘導体(外配で1質量%)を加えて、オープンニーダー(入江製作所)、及び自転公転攪拌機(シンキー)で、混練物を作製した。混練物を図1に示す治具1を用いて混練物を一定速度で押したときの圧力を測定した。図1は、坏土を評価するために押出し圧力と押出し速度との関係を測定するための治具1を示す断面図である。治具1は、混練物2を充填するシリンダー径3が25mm、混練物が押し出されるスリットの断面の長さ4が5mm×70μmの長方形、押出し方向のスリットの長さ5が2、4、6mmの三種類のものを用意した。
【0047】
スリット長の異なる3つのスリットを用いて押出速度と圧力の関係を測定した。また、スリット長に対する押出圧力のグラフを作成し、一次関数で近似し、傾きと切片を算出した。これを下記式(1)のBenbow−Bridgwaterモデルで解析した(なお、解析方法については、例えば、Rheological studies on cordierite honeycomb extrusion, Journal of the European Ceramic Society 22(2002) 2893−2900を参照)。
【0048】
P=(σ+αV)ln(A/A)+(τ+βV)(S/A) (1)
P;押出圧力、V;スリット通過速度(=押出速度)、A;シリンダー断面積、A;スリット断面積、S;スリット表面積、σ、α、m、τ、β、n;未知数(=フィッティングパラメータ)
【0049】
式(1)の第一項はシリンダーからスリットへ縮流する際の縮流6の抵抗を意味し、第二項はスリットを通過する際のスリット通過流7の抵抗を意味している。上記に示したように押出成形する際はスリット通過時に最も抵抗が大きくなるため、速い速度で押出すためには、第二項を小さくする必要がある。S及びAは形状因子なので、τ+βVnを小さくすることが、流動性を向上させることに対応する。一方、保形性は、成形後に形状を維持する程度であり、これは変形速度が極めて遅いときの原料粒子同士の相互作用の程度に関係する。また、シリンダーからスリットへの縮流する際の抵抗も、原料粒子同士の相互作用の程度に関係している。よって、保形性を高くするということは、第一項の速度ゼロのときの値を大きくするということであり、A、Aは形状因子であるので、結果、σを大きくすることに対応する。
【0050】
スリット長に対する押出圧力のグラフの傾きからτ、β、nを、また切片からσ、α、mを算出した。σを保形性の指標と、また、τ+βV(スリット通過速度Vに100mm/secを代入した)を流動性の指標として評価した。なお、Vとして100mm/secを代入したのは、通常のスリット通過速度(押出速度)が10〜50mm/secであるため、100mm/secを目標値としたからである。結果を表2、及び図3に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
保形性の観点から、σ(MPa)は、高い方が好ましく、流動性の観点からτ+βVn(MPa)は低い方が好ましい。また、乾燥変形及び負荷の観点から、水比は少ない方が好ましい。σが高く、τ+βVnが低いほうが好ましいということは、図3において右下の領域になることが好ましいということである。また、同じ成形用調合と有機バインダであれば、水比を変えることにより、右肩上がりの直線となる。つまり、非親水性タルクを使用し、水比を変えた比較例1、2からなる直線よりも右下となる領域になることが好ましいといえる。
【0053】
親水性タルク1を100%とし、水比を変えた実施例1、2からなる直線は、比較例1、2からなる直線よりも右下の領域となった。親水性タルク1を50%とした、実施例3、4からなる直線は、比較例1、2からなる直線よりも右下の領域となった。親水性タルク1を40%とした参考例5、6からなる直線は、実施例1、2または3、4からなる直線よりは左上の領域となったが、比較例1、2からなる直線よりは右下の領域となった。水比については、実施例1は比較例1と同等以上のσで、水比が3%低下した。実施例3は比較例1と同等以上のσで、水比が2%低下した。参考例5は比較例1と同等以上のσで、水比が1%低下した。親水性タルク2を100%とし、水比を変えた実施例7、8からなる直線は、比較例1、2からなる直線よりも右下の領域となった。水比については、実施例7は比較例1と同等以上のσで、水比は2%低下した。
【0054】
以上のように、同等以上保形性でも、親水性タルクを使用すると流動性が向上した。またそのときの水分量を2〜3%減らすことができた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、化学、電力、鉄鋼、産業廃棄物処理等の種々の分野において、環境汚染、地球温暖化を防止する対策として有効な、各種分離・浄化装置に好適に用いられるハニカム構造体を製造するために利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1:治具、2:混練物、3:シリンダー径、4:スリットの断面の長さ、5:押出し方向のスリットの長さ、6:縮流、7:スリット通過流、11:ガラスアンプル、12:タルク粉末、13:精製水、14:試料容器、15:ハンマー、16:感熱体。
図1
図2
図3