(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770248
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】蒸着用マスクの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20150806BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20150806BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20150806BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
C23C14/24 G
H05B33/10
H05B33/14 A
B23K26/073
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-229759(P2013-229759)
(22)【出願日】2013年11月5日
(62)【分割の表示】特願2010-174407(P2010-174407)の分割
【原出願日】2010年8月3日
(65)【公開番号】特開2014-62327(P2014-62327A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2013年12月5日
(31)【優先権主張番号】10-2009-0124209
(32)【優先日】2009年12月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000981
【氏名又は名称】アイ・ピー・ディー国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金 俊亨
(72)【発明者】
【氏名】▲チョ▼ 永根
(72)【発明者】
【氏名】申 義信
(72)【発明者】
【氏名】金 鐘憲
(72)【発明者】
【氏名】崔 丞鎬
(72)【発明者】
【氏名】盧 ▲チョル▼來
(72)【発明者】
【氏名】▲チョ▼ 昌睦
(72)【発明者】
【氏名】朴 宰▲ソク▼
【審査官】
浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−091830(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2009−0034567(KR,A)
【文献】
特開昭61−088989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00〜14/58
B23K 26/073
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業ステージ上部に第1分割マスク及び第2分割マスクをアラインメントする段階と、
クランプを移動させて前記第1分割マスク及び前記第2分割マスクを固定する段階と、
溶接部位の押圧板を移動させて前記第1分割マスク及び前記第2分割マスクの溶接予定領域周辺を密着する段階と、
レーザ溶接部を駆動させて前記溶接予定領域を溶接する段階と、
を含み、
前記レーザ溶接部の前後にある第1ローラ部及び第2ローラ部のいずれか又は両方を用いて、溶接作業を行いながら分割マスクと作業ステージとを密着させることを特徴とする蒸着用マスクの製造方法。
【請求項2】
作業ステージ上部に第1分割マスク及び第2分割マスクをアラインメントする段階と、
クランプを移動させて前記第1分割マスク及び前記第2分割マスクを固定する段階と、
溶接部位の押圧板を移動させて前記第1分割マスク及び前記第2分割マスクの溶接予定領域周辺を密着する段階と、
レーザ溶接部を駆動させて前記溶接予定領域を溶接する段階と、
を含み、
前記レーザ溶接部の前後にある第1ローラ部及び第2ローラ部のいずれか又は両方を用いて、溶接によってそれぞれの分割マスクの上面に発生したバリを平坦化することを特徴とする蒸着用マスクの製造方法。
【請求項3】
前記作業ステージ上にはマスター基板が位置し、前記第1分割マスク及び前記第2分割マスクは、前記マスター基板上にアラインメントされることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸着用マスクの製造方法。
【請求項4】
前記第1分割マスクと前記第2分割マスクとの間隔は、前記各分割マスクの厚さtの10%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸着用マスクの製造方法。
【請求項5】
前記レーザ溶接部によって発生するレーザビームプロファイルには、レーザビーム強度の最高ピークである位置が複数個存在することを特徴とする請求項1または2に記載の蒸着用マスクの製造方法。
【請求項6】
作業ステージと、
前記作業ステージ上部に位置する第1分割マスク及び第2分割マスクと、
前記作業ステージ上に位置し、前記第1分割マスク及び前記第2分割マスクを固定するためのクランプと、
前記作業ステージ上に位置し、前記第1分割マスク及び前記第2分割マスクを溶接予定領域に密着するための溶接部位の押圧板と、
前記作業ステージ上部に位置するレーザ溶接部と、
を含み、
前記レーザ溶接部の前後にそれぞれ第1ローラ部及び第2ローラ部をさらに含むことを特徴とする蒸着用マスクの製造装置。
【請求項7】
前記作業ステージ上に位置するマスター基板をさらに含み、前記第1分割マスク及び前記第2分割マスクは、前記マスター基板上に位置することを特徴とする請求項6に記載の蒸着用マスクの製造装置。
【請求項8】
前記レーザ溶接部によって発生したレーザビームプロファイルには、レーザビーム強度の最高ピークである位置が複数個存在することを特徴とする請求項6に記載の蒸着用マスクの製造装置。
【請求項9】
前記レーザ溶接部を含む支持部をさらに含み、前記第1ローラ部及び前記第2ローラ部は、前記支持部に位置することを特徴とする請求項6に記載の蒸着用マスクの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1分割マスク及び第2分割マスクを含む蒸着用マスク、その製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に有機電界発光素子は、ITOのような透明電極の第1電極(anode)と仕事関数の小さい金属(Ca、Li、Alなど)を用いる第2電極(cathode)との間に有機膜層を有する構造で構成される。このような有機電界発光素子に順方向の電圧が印加されると、陽極と陰極においてそれぞれの正孔(hole)と電子(electron)とは結合してエキシトン(exciton)を形成し、エキシトンが発光再結合して電気発光現象を起こす。
【0003】
上記第1電極は反射型、すなわち光が反射するように形成し、上記第2電極は透過型、すなわち光が透過するように形成することにより、上記有機膜層から放出される光を上記第2電極方向に放出する有機電界発光素子を製造することができる。
【0004】
この場合、上記有機膜層は多様な方法で形成することができるが、そのうち一つの方法が蒸着である。上記蒸着の方法を用いて有機電界発光表示装置を製造するためには、薄膜などのパターンと同一パターンを有するマスクを密着させて薄膜材料を蒸着し、所定パターンの薄膜を形成する。
【0005】
図6は、蒸着用マスクを備えた蒸着装置を概略的に示す断面図である。
【0006】
図6に示すように、マスク1を用いて有機電界発光表示装置の薄膜、すなわち発光層を含む有機膜層を蒸着するためには、真空チャンバ2に設けられた薄膜蒸着容器(crucible)3に対応する側にマスクと結合したフレーム4を設けてその上部に薄膜などが形成された対象物5を装着する。そして、その上部にはフレーム4に支持されたマスク1を、薄膜などが形成されることになる対象物5に密着させるためにマグネットユニット6を駆動させて上記マスク1が上記対象物5に密着されるようにする。この状態において上記薄膜蒸着容器3の作動により蒸着物質が上記対象物5に蒸着される。
【0007】
一方、平板表示装置が大型化されるにつれて、上記のようなマスクも大型化されなければならない。しかし、現在のマスク製造業者の水準としては、例えば、5.5G級の基板サイズ(1320mm×1500mm)に対応するマスクを製造することができず、したがって、分割マスクで対応するのが実情である。
【0008】
このような分割マスクは、特許文献1に記載のように、一般にマスクフレームを格子型補助フレームにより均等に4分割し、各分割された開口部に対応するマスクを溶接する方式を用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】大韓民国特許公開第2008−0058602号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述のように、マスクフレームを補助フレームで均等に分割し、各分割された開口部にマスクを溶接する方式は、上記補助フレームによるシャドー現象が生じ、均一な蒸着を行うことが困難であるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、マスクを大型化する場合に、補助フレームによるシャドー現象の生じない、新規かつ改良された蒸着用マスク
の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、
作業ステージ上部に第1分割マスク及び第2分割マスクをアラインメントする段階と、クランプを移動させて前記第1分割マスク及び前記第2分割マスクを固定する段階と、溶接部位の押圧板を移動させて前記第1分割マスク及び前記第2分割マスクの溶接予定領域周辺を密着する段階と、レーザ溶接部を駆動させて前記溶接予定領域を溶接する段階と、を含み、前記レーザ溶接部の前後にある第1ローラ部及び第2ローラ部のいずれか又は両方を用いて、溶接作業を行いながら分割マスクと作業ステージとを密着させることを特徴とする蒸着用マスクの製造方法が提供される。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、作業ステージ上部に第1分割マスク及び第2分割マスクをアラインメントする段階と、クランプを移動させて前記第1分割マスク及び前記第2分割マスクを固定する段階と、溶接部位の押圧板を移動させて前記第1分割マスク及び前記第2分割マスクの溶接予定領域周辺を密着する段階と、
レーザ溶接部を駆動させて前記溶接予定領域を溶接する段階と、を含み、前記レーザ溶接部の前後にある第1ローラ部及び第2ローラ部のいずれか又は両方を用いて、溶接によってそれぞれの分割マスクの上面に発生したバリを平坦化することを特徴とする蒸着用マスクの製造方法が提供される。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明のさらに別の観点によれば、作業ステージと、前記作業ステージ上部に位置する第1分割マスク及び第2分割マスクと、前記作業ステージ上に位置し、前記第1分割マスク及び前記第2分割マスクを固定するためのクランプと、前記作業ステージ上に位置し、前記第1分割マスク及び前記第2分割マスクを溶接予定領域に密着するための溶接部位の押圧板と、前記作業ステージ上部に位置するレーザ溶接部と、を含み、前記レーザ溶接部の前後にそれぞれ第1ローラ部及び第2ローラ部をさらに含むことを特徴とする蒸着用マスクの製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、蒸着用マスクは補助フレームを用いず、分割マスクを直接溶接するために、従来のようなシャドー現象が発生せず、また、破断強度においても好適な溶接品質を確保することができる蒸着用マスク
の製造方法及び製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本発明の実施形態に係る蒸着用マスク製造装置を示す概略的な斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る蒸着用マスク製造装置のうちレーザ溶接部を含む支持部を示す概略的な斜視図である。
【
図3A】一般的な形態のレーザビームプロファイルを示す図である。
【
図4A】本発明の実施形態に係るレーザビームプロファイルを示す図面である。
【
図5A】本発明の実施形態に係る蒸着用マスクを説明するための概略的な平面図である。
【
図6】蒸着用マスクを備えた蒸着装置を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。しかしながら、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるわけではなく、他の形態で具体化することができる。したがって、ここに以下に開示される実施形態は発明の開示を完全なものとすると共に、当業者に本発明の思想を十分に伝えるために提供されるものである。なお、説明の都合上、図面において、層及び領域の厚みは誇張されており、図示する形態が実際とは異なる場合がある。明細書の全体において同一の参照番号は、同一の構成要素を示す。
【0024】
図1Aは本発明の実施形態に係る蒸着用マスク製造装置を示す概略的な斜視図であり、
図1Bは
図1Aの切断線A−Aによる断面図である。
【0025】
図1A及び
図1Bに示すように、本発明の実施形態に係る蒸着用マスク製造装置は、作業ステージ110上に位置するマスター基板120を含み、また、レーザ溶接部160及びCCDカメラ150を含む。
【0026】
このとき、上記マスター基板120上に本発明の実施形態に係る蒸着用マスクを製造するための第1分割マスク170a及び第2分割マスク170bが位置する。このとき、図に示すように、上記分割マスクの個数を2個に示したが、求められるマスクの大きさによって多様な個数とすることができ、本発明における上記分割マスクの個数を限定するものではない。
【0027】
一方、作業ステージ110上に、上記第1分割マスク及び上記第2分割マスクを固定するためのクランプ130が位置する。すなわち、上記クランプは作業進行中に上記分割マスクが動かないように固定する手段であり、図に示すように、1対のクランプだけを示しているが、必要に応じて複数のクランプを備えることができ、よって、本発明における上記クランプの個数を限定するものではなく、また、クランプが備えられた位置を限定するものではない。
【0028】
また、本発明の実施形態に係る蒸着用マスク製造装置は、作業ステージ110上に位置し、上記第1分割マスク及び第2分割マスクが溶接される領域の周辺に位置する溶接部位の押圧板140を含むことを特徴とする。
【0029】
すなわち、上記溶接部位の押圧板は、それぞれの分割マスクの溶接予定領域を密着させて精密に溶接をするためのものであって、第1分割マスク領域及び第2分割マスク領域にそれぞれ位置する。一方、上述のように、分割マスクの個数が複数である場合、それぞれの分割マスクの溶接予定領域の周辺にそれぞれの溶接部位の押圧板を含むことができる。
【0030】
図2は、本発明の実施形態に係る蒸着用マスク製造装置のうちレーザ溶接部を含む支持部を示す概略的な斜視図である。
【0031】
本発明の実施形態に係るレーザ溶接部を含む支持部191は、上述のようなレーザ溶接部160及びCCDカメラ150を含み、また、上記レーザ溶接部160の前後に第1ローラ部180a及び第2ローラ部180bを含む。ここで、「レーザ溶接部の前後にある」とは、上記支持部がガイドバー190に沿って移動する方向を基準とする。
【0032】
すなわち、
図2に示すように、支持部191がガイドバー190に沿ってX方向に移動する場合は、第1ローラ部180aがレーザ溶接部の前に位置し、第2ローラ部180bがレーザ溶接部の後に位置しており、また、支持部191がガイドバー190に沿ってY方向に移動する場合は、第2ローラ部180bがレーザ溶接部の前に位置し、第1ローラ部180aがレーザ溶接部の後に位置する。上記第1ローラ部180a及び第2ローラ部180bの役割については後述する。
【0033】
一方、図示していないが、本発明の実施形態に係る蒸着用マスク製造装置は、作業ステージ110を上下方向に駆動するステージ上下駆動手段をさらに備えることができる。上記ステージの上下駆動手段は作業部材、すなわち、分割マスクのローディング及びアンローディングなどの作業を容易にするために作業ステージを上昇または下降させることができる。また、上記レーザ溶接部160には、上記分割マスクの溶接地点に窒素ガスなどを供給するガス供給装置をさらに備えることができる。このような駆動手段またはガス供給装置などの構成は、当業者には自明な事項であるため具体的な説明は省略する。
【0034】
続いて、本発明の実施形態に係る蒸着用マスク製造装置を用いて蒸着用マスクを製造する方法を説明する。
【0035】
まず、作業ステージ110上部に溶接しようとする分割マスク、すなわち、第1分割マスク170a及び第2分割マスク170bをアラインメントさせる。これで、上記CCDカメラ150を介して精密にアラインメントを行うことができる。また、上記第1分割マスク170a及び第2分割マスク170bをアラインメントするために上述のステージ駆動手段を用いて作業ステージを駆動させて、第1分割マスク170a及び第2分割マスク170bをローディングすることができる。
【0036】
この場合、上記第1分割マスク170a及び第2分割マスク170bをアラインメントすることは、作業ステージ110の上部のマスター基板120上に位置させることである。このとき、上記マスター基板120は、上記分割マスクを作業ステージの上部に位置させることで、精密にアラインメントするための参照点または基準点を提示する。上記マスター基板120は、必ずしも具備されなくてもよい。また、上記マスター基板は、作業ステージ110上に位置せず、作業ステージ内部に挿入した構造であってもよい。
【0037】
この場合、上記第1分割マスク及び第2分割マスクをアラインメントするときに、後述のように、分割マスク厚さの10%以下の間隔を保持しながらアラインメントさせることが好ましい。
【0038】
すなわち、第1分割マスク及び第2分割マスクのそれぞれの側面が互いに当接しながらアラインメントされることが最も好ましいが、製造装備及びアラインメント技術の限界により、ある程度の間隔が発生することになる。よって、本発明では、上記第1分割マスクと上記第2分割マスクとの間の間隔を分割マスク厚さの10%以下にすることで、好適な溶接品質を確保することができる。
【0039】
次に、作業ステージ110上に位置するクランプ130を移動させて、上記第1分割マスク及び第2分割マスクを固定させる。
【0040】
次に、溶接部位の押圧板140を移動させて、それぞれの分割マスクの溶接予定領域周辺を密着させることで、それぞれの分割マスクの溶接予定領域をより精密に溶接することができる。
【0041】
このとき、上記クランプ及び溶接部位の押圧板を移動させるのに、モーターなどのような駆動手段を介して移動させることができ、これらの手段に制限はない。
【0042】
次に、レーザ溶接部160を駆動させて溶接作業を行う。
【0043】
このとき、
図2に示すように、溶接作業は、X方向またはY方向に行うことができる。
【0044】
また、上述のように、上記レーザ溶接部160の前後に第1ローラ部180a及び第2ローラ部180bが含まれて、溶接作業を行いながら分割マスクと作業ステージとの間の密着性を向上させ、溶接でそれぞれの分割マスクの上面に発生したバリ(burr)を平坦化して溶接部の平坦度をさらに精密にすることができる。
【0045】
すなわち、
図2に示すように、支持部191がガイドバー190に沿ってX方向に移動する場合には、レーザ溶接部の前に位置する第1ローラ部180aによって分割マスクと作業ステージとの間の密着性を向上させることができ、レーザ溶接部の後に位置する第2ローラ部180bによって溶接でそれぞれの分割マスクの上面に発生したバリを平坦化して溶接部の平坦度をさらに精密にすることができる。
【0046】
また、支持部191がガイドバー190に沿ってY方向に移動する場合には、レーザ溶接部の前に位置する第2ローラ部180bによって分割マスクと作業ステージとの間の密着性を向上させることができ、レーザ溶接部の後に位置する第1ローラ部180aによって溶接でそれぞれの分割マスクの上面に発生したバリを平坦化して溶接部の平坦度をさらに精密にすることができる。
【0047】
このとき、上記第1ローラ部180a及び第2ローラ部180bは、レーザ溶接部160が位置する支持部191に一緒に形成され、レーザ溶接部とともにガイドバー190に沿って移動する。
【0048】
以上のように、レーザ溶接部160を駆動させて溶接作業が終了すると、クランプ及び溶接部位の押圧板を解除し、第1分割マスクと第2分割マスクが溶接された蒸着用マスクを作業ステージからアンローディングすることで、本発明の実施形態に係る蒸着用マスクが製造される。
【0049】
以下では、上記レーザ溶接部から発生するレーザのビームプロファイルとバリの関係を説明する。
【0050】
図3Aは一般的な形態のレーザビームプロファイルを示す図であり、
図3Bは
図3Aのレーザビームによる溶接写真であり、
図3Cは
図3Bの切断線B−Bによる断面図である。
【0051】
一方、
図4Aは本発明の実施形態に係るレーザビームプロファイルを示す図であり、
図4Bは
図4Aのレーザビームによる溶接写真であり、
図4Cは
図4Bの切断線C−Cによる断面図である。
【0052】
まず、
図3Aに示すように、一般的な形態のレーザビームプロファイルは、レーザビーム強度が最高ピークI
1である位置P
1がレーザビームの中心R
1と一致している。
【0053】
この場合、
図3B及び
図3Cに示すように、レーザビーム強度が最高ピークI
1である位置P
1に対応するように溶接深さD
1が形成され、この溶接深さD
1により所定高さH
1を有するバリが形成される。すなわち、レーザビーム強度が大きいほど溶接深さD
1は深く形成され、溶接深さD
1が深いほどバリの高さH
1も高くなる。
【0054】
次に、
図4Aに示すように、本発明の実施形態に係るレーザビームプロファイルは、レーザビーム強度が最高ピークI
2である位置P
2がレーザビームの中心R
2と一致せず、また、レーザビーム強度が最高ピークI
2である位置P
2が複数個存在する。
【0055】
ここで、同一の出力のレーザを照射した場合、本発明の実施形態に係るレーザビームは、最高ピークI
2のレーザビーム強度が、一般的な形態のレーザビームプロファイルの最高ピークI
1のレーザビーム強度よりも弱くなる。すなわち、本発明では、レーザビーム強度が最高ピークI
2である位置P
2が複数個存在するようにして最高ピークのレーザビーム強度を弱くすることで、一般的な場合よりも溶接深さを低く形成する。
【0056】
したがって、
図4B及び
図4Cに示すように、本発明では、溶接深さD
2が一般的な場合よりも低く形成され、よって、バリの高さH
2も低く形成される。
【0057】
このとき、本発明では、上記バリの高さが10μm以下であることが好ましい。上記バリの高さが10μmを超える場合、シャドー現象が発生して蒸着工程の際に均一な蒸着ができないという問題点がある。また、バリの高さが高いほど溶接深さが深くなって、結局、溶接深さが深いということは、第1分割マスクと第2分割マスクとの溶接部分が浅く溶接されたという意味であるので、それ分溶接強度も低下されることになる。
【0058】
なお、本発明は、レーザの出力を限定するものではない。上記レーザの出力は、溶接しようとする分割マスクの厚さなどによって任意に調節することができる部分である。本発明では、分割マスクの上面に形成されるバリの高さを10μm以下に形成することが重要であって、そのためにレーザビーム強度が最高ピークI
2である位置P
2が複数個存在するようにして、分割マスクに照射されるレーザビームの強度を調節する。
【0059】
図5Aは本発明の実施形態に係る蒸着用マスクを説明するための概略的な平面図であり、
図5Bは
図5Aの切断線D−Dによる断面図であり、
図5Cは
図5AのE領域を拡大した実際写真である。
【0060】
まず、
図5Aないし
図5Cに示すように、本発明の実施形態に係る蒸着用マスクは2個の分割マスクが直接溶接されて、1つの単一マスクを形成している。なお、図では2個の分割マスクを示しているが、上記分割マスクは2個以上の複数個が直接溶接されていて、本発明における上記分割マスクの個数を限定するものではない。
【0061】
ここで、「分割マスクが直接溶接された」とは、各分割マスクの対向する側面に溶接面が形成されていることを意味する。
【0062】
すなわち、特許文献1に記載のように、マスクフレームを格子型補助フレームで均等に4分割し、各分割された開口部に対応するように分割マスクを位置させて上記分割マスクを上記補助フレームに溶接する方式においては、補助フレームの上面と分割マスクの上面とが対向して、補助フレームの上面と分割マスクの上面に溶接面が形成される。
【0063】
しかし、本発明では、上記のような補助フレームを介して複数の分割マスクを溶接する方式ではなく、複数の分割マスクの側面を直接対向させてこれらを直接溶接するので、各分割マスクの対向する側面に溶接面が形成される。
【0064】
したがって、特許文献1に記載された技術では、複数の分割マスクを溶接して大型サイズの蒸着用マスクを製造すると上記補助フレームが厚さを有するため蒸着マスクの平坦性がなくなり、上記補助フレームによるシャドー現象が生じ均一な蒸着が困難となるのに対し、本発明の実施形態では、上記のような補助フレームを用いずに分割マスクを直接溶接するので、従来のようなシャドー現象が発生しない。なお、本発明の実施形態では、溶接工程において分割マスクの上面にバリが形成されるが、上記バリの高さを10μm以下に調節することで、バリによるシャドー現象を防止することができる。
【0065】
一方、上述のように、ローラ部によって溶接で発生したバリを平坦化し、また、レーザビームプロファイルをレーザビーム強度の最高ピークI
2である位置P
2に複数個存在するように調節することで、バリの高さを調節することができる。このとき、本発明の実施形態に係る第1分割マスク及び第2分割マスクは、上記分割マスク厚さtの10%以下の間隔を保持しながら溶接されている。
【0066】
上述のように、第1分割マスク及び第2分割マスクの側面が互いに当接しながらアラインメントされることが最も好ましいが、製造装備及びアラインメント技術の限界によって、ある程度の部分で間隔が生じることは避けられない。また、分割マスク間の間隔が大きければ大きいほど、各分割マスクを直接溶接することは困難であって、溶接強度も低下される。
【0067】
そこで、本発明では、上記第1分割マスクと第2分割マスクとの間の間隔を分割マスク厚さの10%以下にすることで、好適な溶接品質を確保する。
【0068】
続いて、
図5Bの拡大図に示すように、本発明の実施形態に係る蒸着用マスクは、各分割マスクの対向する側面に溶接面Fが形成されていて、溶接深さD
2及び該溶接深さD
2によるバリの高さH
2が形成されている。
【0069】
また、
図5Cに示すように(
図5Cは
図5AのE領域を拡大した実際写真)、上記蒸着用マスクの破断強度を測定した結果は39.6kgf/cm
2であり、許容強度である6.34kgf/cm
2よりもさらに大きい破断強度を保持することがわかる。
【0070】
したがって、本発明の実施形態に係る蒸着用マスクは、補助フレームを用いず、分割マスクを直接溶接するので、従来のようなシャドー現象が発生せず、また、破断強度においても非常に好適な溶接品質を確保することができる。
【0071】
上述では、本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、この技術分野の熟練した当業者は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲で、本発明を多様に修正及び変更することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 マスク
2 真空チャンバ
3 薄膜蒸着容器
4 フレーム
5 対象物
6 マグネットユニット
110 作業ステージ
120 マスター基板
130 クランプ
140 押圧板
150 CCDカメラ
160 レーザ溶接部
170a、170b 第1及び第2分割マスク
180a、180b 第1及び第2ローラ部
190 ガイドバー
191 支持部