(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0020】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を主要な構成要素のひとつとするものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
【0021】
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0022】
本実施の形態では配線基板上に半導体チップをフリップチップ実装する半導体装置の例として、一枚の配線基板上に種類の異なる複数の半導体チップ(例えばメモリ系チップと、このメモリ系チップを制御するコントローラ系チップ)を実装して、1つの半導体パッケージ内にシステムを構成するシステム・イン・パッケージ(System In Package:SIP)型半導体装置(以下、単にSIPと記載する)を取り上げて説明する。
【0023】
<半導体装置の構造概要>
図1は本実施の形態の半導体装置の全体構造を示す断面図である。本実施の形態では、本願発明者が具体的に検討した半導体装置の例として、小型情報通信端末機器である携帯電話に搭載されるSIPについて説明する。
【0024】
図1において、SIP(半導体装置)1は上面(表面、主面、チップ搭載面)2a、上面2aの反対側に位置する下面(裏面)2b、上面2aに形成された複数の端子(ボンディングリード)11、12、および下面2bに形成された複数のランド(外部端子)13を有する配線基板2を有している。配線基板2の上面2aには、四角形の外形形状を成す主面3a、主面3aの反対側に位置する裏面3b、および主面3aの各辺に沿って形成された複数のパッド(電極パッド)21を有するマイコンチップ(半導体チップ)3が、主面3aを配線基板2の上面2aと対向させた状態で配線基板2上に搭載されている。また、マイコンチップ3の裏面3b側には、主面4a、主面4aの反対側に位置する裏面4b、および主面4aの周縁部の少なくとも一辺に沿って形成された複数のパッド(電極パッド)4dを有するメモリチップ(半導体チップ)4が、裏面4bを裏面3bと対向させた状態でマイコンチップ3上に搭載されている。
【0025】
また、マイコンチップ3の主面3aには、回路素子が形成され、各回路素子は、配線基板2に形成された配線(端子11、12を含む)を介してメモリチップ4、あるいはランド13に電気的に接続されている。つまり、SIP1は、配線基板2に形成された配線を介して、コントローラ系の半導体チップであるマイコンチップ3とメモリチップ4を電気的に接続し、システムを構成している。
【0026】
図2は、
図1に示す配線基板の上面の全体構造を示す平面図、
図3は
図1に示す配線基板の下面の全体構造を示す平面図である。配線基板2は、例えばビルドアップ工法によって製造された4層の配線層(表面配線層、裏面配線層および2層の内層配線)を有する多層配線基板である。また、各配線層同士を電気的に絶縁する絶縁層は、例えば、ガラス繊維または炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグによって構成されている。また、4層の配線は、例えば銅(Cu)を主体とする導電膜によって構成されている。
図1では、これらの配線の図示が省略されており、配線基板2の上面2aに形成された端子11、12と、配線基板2の下面(裏面)2bに形成された外部入出力用のランド13のみが示されている。
【0027】
図2に示すように、配線基板2の上面2aは、平面形状が四角形からなり、本実施の形態では、例えば、正方形である。また、配線基板2の上面2aには、複数の端子11、12が形成されている。本実施の形態では、上面2aにおいて、配線基板2のチップ搭載領域2cに配置される端子11と、端子11よりも上面2aの周縁部側、すなわち、チップ搭載領域2cよりも外側に配置される端子12とからなり、それぞれ複数配置されている。複数の端子11は、
図1に示すように、複数のバンプ(導電性部材、突起状電極)22を介してそれぞれマイコンチップ3のパッド21と電気的に接続され、複数の端子12は、複数のワイヤ(導電性部材)5を介してそれぞれメモリチップ4のパッド4dと電気的に接続されている。また、
図2に示す上面2aに配置される複数の端子11、12のうち、マイコンチップ3(
図1参照)と接続する端子11は、チップ搭載領域2c内よりも内側に配置している。一方、メモリチップ4(
図1参照)と接続される端子12は、チップ搭載領域2cよりも外側、すなわち、端子11よりも外周側に配置されている。
【0028】
一方、
図1に示す配線基板2の下面(裏面)2bは、平面形状が四角形からなり、本実施の形態では、例えば、上面2aと等しい大きさの正方形である。下面2bには、配線基板2の図示しない配線層を介して、上面2aに形成された複数の端子11、12とそれぞれ電気的に接続される複数のランド13が形成されている。ランド13は、下面2bにおいて、行列状に複数列で配置されている(
図3に示す半田ボール14の配列を参照)。本実施の形態のSIP1は、配線基板2の下面2bに配置される複数のランド13のそれぞれに、図示しない実装基板の端子と接合するための半田ボール(導電性部材、外部端子)14を配置(接合)する、所謂BGA(Ball Grid Allay)型の半導体装置としている。ただし、SIP1の外部端子の構造は、このBGA型に限定されず、例えば、複数のランド13がそれぞれ下面2b側に露出する、あるいはBGA型の半導体装置で使用する半田ボールよりも少ない量の半田材が複数のランド13のそれぞれの表面に形成される、所謂、LGA(Land Grid Allay)型の半導体装置とすることもできる。BGAやLGAは、配線基板2の下面2bに複数のランド13を行列状に複数列で配置するので、高機能化に伴って外部端子数が増加した半導体装置の実装面積を低減することができる。
【0029】
なお、半田ボール14は、Pb(鉛)を実質的に含まない、所謂、鉛フリー半田であり、例えばSn(錫)のみ、Sn(錫)−Bi(ビスマス)、またはSn(錫)−Ag(銀)−Cu(Cu)などである。ここで、鉛フリー半田とは、鉛(Pb)の含有量が0.1wt%以下のものを意味し、この含有量は、RoHs(Restriction of Hazardous Substances)指令の基準として定められている。以下、本実施の形態において、半田、あるいは半田ボールについて説明する場合には、特にそうでない旨明示した場合を除き、鉛フリー半田を指す。
【0030】
図4は
図1に示すマイコンチップの主面に形成された回路およびパッドのレイアウト例を模式的に示す平面図である。
図1に示す配線基板2の上面2aには、マイコンチップ3が搭載されている。マイコンチップ3は、
図1に示すように主面3a、主面3aと反対側に位置する裏面3b、および主面3aと裏面3bの間に位置する側面3cを有している。主面3aおよび裏面3bは、平面形状が四角形からなり、本実施の形態では、例えば、正方形である。
【0031】
また、
図4に示すように、マイコンチップ3の主面3aは、主面3aの内側に配置されるコア回路形成領域(主回路形成領域、制御論理領域)3eと、コア回路形成領域3eの外側の周囲に隣接配置され、主面3aの周縁の各辺に沿って枠状に配置される入出力端子形成領域(入出力回路、I/O領域、I/Oセル)3fを有している。
【0032】
コア回路形成領域3eには、CPU(中央処理装置)などの演算回路やクロックパルスジェネレータモジュール(CPGM)などの制御回路部23a、キャッシュメモリなどのメモリ回路部23b、およびDC−ACコンバータなどの電源回路を含むアナログ回路部(AFE:Analog Front End)23c、などからなる各種の回路23が形成されている。なお、コア回路とは、制御回路を含むシステムの主要回路である。
【0033】
各回路23は、主面3aに形成された図示しない配線を介して、入出力端子形成領域3fに形成された複数のパッド21にそれぞれ電気的に接続される。なお、
図4では、1個のCPUを例示的に示しているが、半導体装置に対する高機能化、および小型化の要求により、独立して駆動する複数のシステム(制御回路)を1個のマイコンチップ3に内蔵する場合もある。例えば、携帯電話機に搭載するSIP1では、携帯電話機のベースバンド転送機能を制御するシステム(制御回路)と、アプリケーション機能を制御するシステム(制御回路)を1個のマイコンチップ3に形成している。
【0034】
したがって、マイコンチップ3は、各システムを制御するためのコア回路(制御回路を含む主要回路)を複数有している。言い換えれば、マイコンチップ3は、複数種の制御回路(例えば、ベースバンド用制御回路とアプリケーション用制御回路)を有している。このように複数種の制御回路を1つのマイコンチップ3に含めることにより、各制御回路を別々の半導体チップに形成する場合と比較してSIP1のパッケージサイズを小さくすることができる。なお、各コア回路は、システムを制御するための各種回路をそれぞれ有し、制御システムを構成している。この観点から、マイコンチップ3は、1個の半導体チップ内に形成された複数の集積回路によりシステムを構成するSOC(System on Chip)である。
【0035】
このように、マイコンチップ3は、制御回路を形成する半導体チップであり、近年の半導体装置に対する高機能化、小型化の要求に伴って、主面3aの平面積の増大を抑制しつつ、かつ、多くの入出力端子(パッド21)を配置することが必要となる。このため、パッド21は、主面3aの外縁を構成する各辺に沿って、それぞれ複数列(
図4では2列)で配置されている。換言すれば、入出力端子形成領域3fにはマイコンチップ3の主面3aの各辺に沿って形成された1列目のパッド21aと、パッド21aよりも主面3aの内側に形成された2列目のパッド21bが形成されている。
【0036】
図26および
図27は、入出力回路(I/Oセル)とパッドとの接続状態の参考例を示す要部拡大平面図である。ここで、
図26に示すように、本実施の形態では、入出力回路(I/Oセル)3gの幅は、パッド21の幅よりも小さい(本実施の形態では、パッド幅のほぼ半分)。そのため、入出力端子形成領域3fに配置する入出力回路(I/Oセル)3gとパッド21とを効率良く接続するためには、入出力回路(I/Oセル)3gのピッチがパッド21のピッチの等倍になるように、パッド21を配置することが好ましい。そして、パッド21を複数列で配置する場合は、
図27に示すように、パッド21を千鳥状に配置することが好ましい。つまり、1列目に配置されるパッド21aの中心が、2列目において隣り合って配置される2つのパッド21bの間の延長線上に位置するように配置することが好ましい。これにより、1列目に配置するパッド21aに接続される配線の間に2列目のパッド21bに接続される配線を形成することができるので、各配線の短絡を防止することができる。
【0037】
また、主面3aにおける配線経路距離を短縮する観点から、各パッド21は、接続される回路23が形成された領域の近くに配置することが好ましい。したがってパッド21は、主面3aにおいて電気的に接続される回路23と、主面3aの外縁を構成する辺の間に配置することが好ましい。
【0038】
また、
図1に示すようにマイコンチップ3は、主面3aが配線基板2の上面2aと対向するように、配線基板2上に搭載されている。また、マイコンチップ3の主面3aに形成された複数のパッド21は、配線基板2の上面2aに形成された複数の端子11と、例えば、金(Au)からなる複数のバンプ(導電性部材、突起状電極)22を介してそれぞれ電気的に接続される、所謂、フリップチップ実装(フェイスダウン実装)である。フリップチップ実装は、パッド21に形成されたバンプ22を介して端子11と電気的に接続するので、ワイヤを介して接続するフェイスアップ実装と比較して配線基板2の上面2aにおける実装面積を小さくすることができる。また、バンプを介して配線基板2と電気的に接続する場合、マイコンチップ3のパッド21と配線基板2のボンディングリードとの間の距離を、ワイヤを介して電気的に接続する場合に比べて短くできるため、半導体装置の高速化を実現できる。また、フリップチップ実装されたマイコンチップ3の裏面3bには、端子が形成されていないので、例えば、メモリチップ4のようにマイコンチップ3よりも平面積が大きい半導体チップを裏面3b側に積層することもできる。したがって本実施の形態のように複数の半導体チップを積層するSIP1には特に好適である。
【0039】
マイコンチップ3の主面3aにおける各配線およびパッド21の配列に係る構造については、後で詳細に説明する。
【0040】
マイコンチップ3の主面3aと配線基板2の上面2aの間には、アンダフィル樹脂(封止樹脂、封止体)15が配置され、マイコンチップ3の主面3a側を封止することにより、バンプ22と端子11との接合信頼性を向上している。フリップチップ実装では、パッド21が形成される主面3aを配線基板2の上面2aと対向させて搭載するので、主面3aと上面2aの間をアンダフィル樹脂15で封止すれば、マイコンチップ3と配線基板2の接合部を保護することができる。
【0041】
マイコンチップ3の裏面3b上には、メモリチップ4が搭載される。本実施の形態のSIP1は、携帯電話機に搭載される半導体装置であり、互いに独立して駆動する複数種のシステムを有している。例えば、携帯電話機のベースバンド転送機能を制御するシステムと、アプリケーション機能を制御するシステムを有している。各システムには、それぞれ別個のメモリチップ4が接続されている。したがって、SIP1には複数のメモリチップ4が搭載されている。例えば、
図1に示すようにベースバンド用制御回路と電気的に接続されるベースバンド用のメモリチップ4A、およびアプリケーション用制御回路と電気的に接続されるアプリケーション用のメモリチップ4Bを有している。
【0042】
また、これらメモリチップ4は、SIP1が有する各システムにおいて、主記憶装置として機能するが、システム毎に必要な記憶容量が異なる。例えば、本実施の形態では、ベースバンド用のメモリチップ4Aとして、512メガビットの記憶容量を有するDRAM(Dynamic Random Access Memory)回路が形成されたメモリチップ4Aを1個有している。また、アプリケーション用のメモリチップ4Bとしては、ベースバンド用よりも記憶容量の大きい、例えば1ギガビットの記憶容量を有するDRAM回路が形成されたメモリチップ4Bを2個有している。より詳しく説明すると、メモリチップ4には、各メモリチップ4が有するメモリセルアレイの読み出し/書き込み時に、2ビットや4ビット、あるいは8ビット分に相当するセルを一度にアクセスする、所謂DDR−SDRAM(Double Data Rate - Synchronous Dynamic Random Access Memory)回路が、それぞれ形成されている。SIP1は、配線基板2上に3枚のメモリチップ4を積層して2.5ギガビットの記憶容量を実現しているが、配線基板2に実装するメモリチップ4の記憶容量や枚数は、適宜変更することができる。
【0043】
図5は、
図1に示す半導体装置の上面側の内部構造を、封止体を透過して示す透視平面図である。各メモリチップ4は、
図1に示すように、それぞれ、主面4a、主面4aと反対側に位置する裏面4b、および主面4aと裏面4bの間に位置する側面を有している。主面4aおよび裏面4bは、平面形状が四角形からなる。メモリチップ4の記憶容量はメモリセルアレイの面積と相関があり、一般に、主面4aの面積が大きい程、記憶容量が大きくなる。したがって、本実施の形態では、メモリチップ4Bの面積はメモリチップ4Aの面積よりも大きい。このため、面積の大きいメモリチップ4Bを下層に、面積の小さいメモリチップ4Aを上層に積層し、チップ積層時、あるいはワイヤボンディング時の安定化を図っている。
【0044】
各メモリチップ4は、裏面4bが最下層に配置されるマイコンチップ3の裏面3bと対向するように搭載されている。すなわち、フェイスアップ実装である。
【0045】
なお、メモリチップ4Bの裏面4bの面積は、マイコンチップ3の裏面3bの面積よりも大きいが、マイコンチップ3はフリップチップ実装され、裏面3bにはパッドなどが形成されていないため、メモリチップ4Bのパッド4dがマイコンチップ3の裏面3bと厚さ方向に重なるように配置することにより、ワイヤボンディング時の安定化を図ることができる。
【0046】
図5に示すように各メモリチップ4の主面4aには、それぞれ、主面4aの外縁を構成する4辺のうち、1辺に沿って配置される複数のパッド(電極パッド)4dが形成されている。パッド4dは、それぞれ、金(Au)など、からなるワイヤ(導電性部材)5を介して、配線基板2の上面2aに形成された端子(ボンディングリード)12に電気的に接続されている。
【0047】
なお、
図5では、配線基板2の上面2aにおいて、上面2aの外縁を構成する4辺のうち、1辺に沿って端子12を1列で、その対向する1辺に沿って端子12を2列で配置する例を示している。しかし、端子12を配列する列数は、
図5に示す例に限定されず、メモリチップ4の端子数、あるいは積層数に応じて適宜変更することができる。
【0048】
メモリチップ4は前記の通りフェイスアップ実装され、パッド4dがワイヤ5を介して端子12に接続(接合)される。このため、接合部の導通不良や、各ワイヤ5の短絡を防止する観点からワイヤ5およびその接合部を保護する必要がある。このため、配線基板2の上面2aには、封止体(封止樹脂)6が形成され、各メモリチップ4およびワイヤ5は、封止体6に封止されている。
【0049】
<フリップチップ実装における接合不良の基本原理の検討>
前記したように、SIP1では、マイコンチップ3のパッド21を配線基板2の端子11と、メモリチップ4のパッド4dを配線基板2の端子12と接続し、これらを配線基板2に形成された配線を介して接続することによりシステムを構成している。また、マイコンチップ3と外部機器との入出力は、端子11を配線基板2に形成された配線を介して下面2b側の外部端子であるランド13あるいは半田ボール14と接続することにより行う。
【0050】
ところが、本願発明者が検討したところ、マイコンチップ3のパッド21と配線基板2の端子11の接合部の一部に、接合不良が発生することが判った。詳しく説明すると、例えば、並べて配置される複数のパッド21の配列において、配列の端部に位置するパッド21において、特に接合不良が発生し易いことが判った。例えば、
図4に示す主面3aの各角部に最も近い位置に配置されるパッド21で接合不良が発生し易い。また、例えば、並べて配置される複数のパッド21において、配置ピッチが他よりも広くなり、隣り合うパッド21間に広い隙間が生じた場合、該隙間に最も近い位置に配置されるパッド21で接合不良が発生し易い。
【0051】
以下、この現象について本願発明者が検討した結果、見出した発生原因について説明する。
図6は、
図1に示すマイコンチップのパッドと配線基板の端子の接合部の詳細構造を示す拡大断面図である。また、
図7は、
図1に示す半導体装置において、マイコンチップのパッドの配列方向に沿った断面の一部を拡大して示す要部拡大断面図である。なお、
図7では、見やすさのため、説明に必要な要部のみを示しており、例えば、
図1に示すアンダフィル樹脂15は図示を省略している。
【0052】
図6において、パッド21−端子11間の電気的接続は、パッド21の表面に接合するバンプ22と、端子11の表面に配置(接合)された半田16の接合、所謂、金−半田接合により接続している。
【0053】
バンプ22は、金からなるワイヤの一端部を放電溶融させてボール部22aを形成し、このボール部22aをパッド21の表面に例えば超音波により接合してワイヤの他端部を切断する、所謂、スタッドバンプである。したがって、バンプ22の先端には、ボール部22aよりも細いワイヤ部22bが形成される。
【0054】
金−半田接合では、このバンプ22および半田16の接合部を加熱して半田16を溶融させ、溶融した半田16がバンプ22のワイヤ部22bからボール部22aまで濡れ上がることにより、強固な接合が得られる。したがって、半田16の濡れ上がりが悪く、例えば、ボール部22aと接触するまで濡れ上がらない場合には、金−半田接合の接合強度が低下する。このため、例えば、製造工程中に印加された衝撃などの外力により、接合部が破断し易くなり、接合信頼性が低下する。
【0055】
ここで、半田16の濡れ上がり特性(濡れ性)は、接合時の温度に依存する。つまり、接合時の温度が半田16の融点(例えば、約220℃)と比較して十分に高くない場合には、濡れ性が低下するので、接合信頼性が低下し易い。一方、接合時の温度を半田16の融点と比較して極端に高くした場合、別の理由により接合不良が発生する。本願発明者の検討によれば、例えば、接合部周辺の温度を320℃とした場合には、接合部周辺の絶縁膜にクラックが発生する。あるいは、接合時の高温により、配線基板2(
図1参照)の反り量が増大する結果、一部の接合部に応力が集中して破断する。このように、金−半田接合の接合信頼性の低下を抑制するためには、接合部の周辺を適正な温度範囲内に制御する必要がある。したがって、
図4に示すように、複数のパッド21が主面3aに配置され、各パッド21に接合されたバンプ22を一括して配線基板2(
図1参照)の端子11(
図1参照)と接合するためには、各接合部の周辺温度を全て所定の温度範囲内とする必要がある。
【0056】
つまり、前記したように、配列の端部に位置するパッド21において、特に接合不良が発生し易いという現象は、配列の端部に位置するバンプ22の周辺温度が他のバンプ22の接合部周辺と比較して低いため、
図6に示す半田16の濡れ性が低下したことが原因であると考えられる。
【0057】
以上の知見に基づき、本願発明者は複数のバンプ22の各接合部周辺における温度分布のばらつきを抑制する技術について検討を行った。まず、配列の端部では接合不良が発生し易いという事実に着目し、複数のパッド21を並べて配置した場合における隣に配置されるパッド21あるいはバンプ22による保温効果について検討した。以下
図7を用いて説明する。本願発明者は、配列の端部に位置するパッド21A、バンプ22A、端子11Aの隣に、[1]パッド(保温パッド、ダミーパッド)21Bのみをさらに配置した場合、[2]パッド21Bにバンプ(保温バンプ、ダミーバンプ)22B、またはバンプ22と端子11Bを形成した場合、および[3]パッド21Bにバンプ22Bを形成し、これと対向する位置に表面に半田(保温半田、ダミー半田、導電性部材)16Bを塗布した端子(保温端子、ダミー端子)11Bを配置した場合について検討した。
【0058】
検討の結果、[1]パッド21Bのみを配置した場合、および[2]これにバンプ22B、またはバンプ22と端子11Bを形成するのみでは、パッド21Bを配置しない場合と比較して有意な保温効果は得られなかった。しかし、[3]パッド21Bにバンプ22Bを形成し、これと対向する位置に表面に半田16Bを塗布した端子11Bを配置した場合には、配列の端部に位置するバンプ22Aの接合部周辺の温度低下を抑制することができた。これは、以下の理由によると考えられる。
【0059】
すなわち、配列の端部に位置するバンプ22Aは、周囲に配置される熱源の数が他のバンプ22と比較して少ないため、バンプ22の周囲との温度差が大きくなり、温度が低下し易い。バンプ22Aと接合する半田(導電性部材)16Aの濡れ性を向上させるためには、半田16Aの周囲の温度が重要となるが、[1]パッド21Bのみを配置した場合には、保温壁となるバンプ22が形成されていないため、配列の端部に位置するバンプ22Aの温度はほとんど保たれない。また、[2]パッド21Bにバンプ22Bのみを配置した場合には、このバンプ22Bが配線基板と熱的に接続されないため、このバンプ22Bの温度が低い状態となり、配列の端部に位置するバンプ22Aの温度が低下してしまう。また、バンプ22Bと接触する端子11Bを形成した場合には、このバンプ22Bも熱源となる。しかしながら、熱源として機能する部分は、ボール部22aよりも細いワイヤ部22bのみである。このため、ワイヤ部22bの熱容量はボール部22aと比較して小さいので、周囲の温度を十分に保温することができない。
【0060】
一方、バンプ22Bと対向する位置に、バンプ22Aと接合する半田16Aと同じ材料から成る半田16Bおよび端子11Bを配置した場合には、パッド21Bから端子11Bまでが、一体の保温壁として機能し、隣に配置されたバンプ22Aの温度低下を抑制することができる。
【0061】
また、フリップチップ実装では、
図1に示す配線基板2の下面2b側およびマイコンチップ3の裏面3b側の双方に、ヒータなどの加熱源を配置して加温する。したがって、パッド21Bおよびこれに接合するバンプ22Bのみを配置した場合には、バンプ22Bの先端が配線基板2側の部材と熱的に接続されていないので、配線基板2の下面2b側に配置したヒータを熱源として有効に活用することができない。一方、バンプ22Bと対向する位置に半田16Bおよび端子11Bを配置した場合には、半田16Bとバンプ22Bが接合することにより、熱的に接続し、この結果、配線基板2の下面2b側に配置したヒータも熱源として有効に活用することができる。
【0062】
なお、熱的に接続するとは、例えばバンプ22Bと半田16Bのように異なる部材を接合することにより、両部材の温度が同等になる程度まで、熱交換を行うことができる状態を指す。したがって、熱的に接続する観点から要求されるバンプ22Bと半田16Bの接合強度は、電気的接続信頼性の観点から要求される接合強度よりは低い。例えば、SIP1において信号電流が流れるバンプ22と半田16の接合強度が低い場合、インピーダンス成分の増加によるノイズの発生、あるいは断線の原因となるため、半田16は確実にバンプ22のボール部22aを覆う程度にまで濡れ上がっている必要がある(
図7の半田(第1導電性部材)16Aを参照)。一方、
図7に示すバンプ22Bおよび半田16Bを、保温を目的として配置する場合にも、半田16Bが、バンプ22Bのボール部22aを覆う程度まで濡れ上がっている方が好ましい。しかし、バンプ22Bと半田16Bの間の熱交換は、例えば、半田16Bがボール部22aの一部に接触している程度であっても行うことができる。そのため、
図7において最も左端に位置するバンプ22Bと端子11Bとの間に形成された半田(第2導電性部材)16Bのように、バンプ22Aのボール部22aまで濡れ上がった半田(第1導電性部材)16Aの形状とは異なっていてもよい。
【0063】
以上の検討結果から、配列の端部に位置するバンプ22Aの隣に、保温壁として機能するパッド21B、バンプ22B、半田16B、および端子11Bをさらに配置し、バンプ22と端子11を接合することにより、隣に配置されるバンプ22の温度低下を抑制することができることが判った。
【0064】
また、バンプ22Aの隣に、パッド21B、バンプ22B、半田16B、および端子11Bが少なくとも1個配置されていれば保温効果は得られる。しかし、
図7に示すように複数のパッド21B、バンプ22B、半田16B、および端子11Bを配置することによりさらに保温効果が増大する。バンプ22Aの隣に配置されるバンプ22Bおよび半田16Bの温度が保温されることにより、半田16Bの濡れ性が向上するからである。したがって、マイコンチップ3に要求されるパッド数あるいは配線基板2の上面2aの配線レイアウト関係から、複数のパッド21B、バンプ22B、半田16B、および端子11Bが配置可能であれば、複数配置することが特に好ましい。
【0065】
また、端子11Bは、前記した保温効果を主目的として配置する場合、
図1に示す配線基板2の下面2bに形成されたランド13に配線を介して接続されているかどうかは問わない。しかし、前記したようにフリップチップ実装を行う際に、配線基板2の下面2b側に、ヒータなどの加熱源を配置して加温する場合には、ランド13と端子11Bの間を、配線を介して接続した方が端子11Bの温度が上がりやすい。配線材料には、例えば銅など、配線基板の絶縁層を構成する材料と比較して熱伝導率が高い材料を用いるからである。したがって、この観点からは、端子11Bは配線を介してランド13と接続していることが好ましい。
【0066】
また、ランド13と端子11Bの間を、配線を介して電気的に接続する場合には、パッド21Bを、例えば、電源電位や基準電位を供給する端子として用いることもできる。電源電位や基準電位は、配線抵抗などのインピーダンス成分を低減する観点から、複数のパッド21に共通する電流を流す場合があるが、パッド21Bに電源電位電流や基準電位電流を流すことにより、このインピーダンス成分をさらに低減することができる。なお、信号電流に関しても、複数のパッド21に共通する信号電流を流す場合には、パッド21Bに他のパッド21と共通する信号電流を流すこともできる。しかし、パッド21Bに配置されるバンプ22B−半田16B間の接合強度が他のバンプ22−半田16間の接合強度よりも低くなり易いので、ノイズ防止の観点から信号電流はパッド21Bには流さないことが好ましい。つまり、パッド21Bに他のパッド21と共通する電流を流す場合には、該共通する電流は、電源電位電流、あるいは基準電位電流であることが好ましい。なお、パッド21Bに他のパッド21を流れる電流と異なる、固有(ユニーク)の電流(固有電流)を流すことはできない。前記したように、接合部の接合強度が弱いため、接合不良が発生すると、半導体装置の信頼性が低下するからである。
【0067】
また、ランド13と端子11Bの間を、配線を介して電気的に接続するためには、配線経路を配置するスペースが必要となる。したがって、配線基板2のサイズ(上面2aの平面積)を小型化する観点からは、端子11Bはランド13と接続しない、すなわちパッド21Bに電流を流さないことが好ましい。
【0068】
<主面にパッドが複数列で配置される半導体チップへの適用−1>
本実施の形態では、
図4に示すようにマイコンチップ3の主面3aにおいてパッド21が複数列で配置されている。前記したフリップチップ実装を行う際のバンプ22の周辺温度の低下を防止するという観点からは、
図4に示すように複数列で配置する方が、1列で配置するよりも好ましい。四角形の外形形状をなすパッド21を複数列で配置する場合、例えば、
図4においては主面3aの外周側に配置される1列目のパッド21aの内側の辺と、パッド21aの内側に配置される2列目のパッド21bの外側の辺が対向して配置されることなる。また、各パッド21には、
図6に示すように、バンプ22が配置され、パッド21と対向する位置に、表面に半田16が形成された端子11が配置される。このようにパッド21、バンプ22、半田16、および端子11を対向配置することにより、各パッド21に対応する接合部からの放熱経路を少なくすることができるので、温度低下を防止することができる。つまり、パッド21aとパッド21bにそれぞれ接続されるバンプ22および半田16、すなわち接合部の一方が他方の保温壁として機能する。
【0069】
したがって、複数のパッド21にそれぞれ接続される各接合部の温度分布を一定の範囲で揃える観点からは、外周側に配置される複数のパッド21aと、パッド21aの内側に配置される複数のパッド21bをそれぞれ対向配置することが好ましい。各パッド21に接続される接合部の保温効果の程度を揃えるためである。
【0070】
しかしながら、本願発明者が検討したところ、配線基板2の上面2aにおける配線のレイアウト、あるいはコア回路形成領域3e内の例えばアナログ回路部23cとパッド21a(又は、パッド21b)との接続配線の容易さに起因して、パッドを規則的に千鳥状に配置することが困難となることが判明した。以下具体的に説明する。
【0071】
図8は、
図1に示す半導体装置において、マイコンチップのアナログ回路部に接続される配線経路の例を示す要部拡大透視平面図、
図9は
図8に示す配線経路の要部拡大断面図である。また、
図10は、
図4に示すマイコンチップの主面におけるアナログ回路部周辺の配線レイアウトの例を示す要部拡大平面図である。また、
図28、29および
図30は本実施の形態に対する比較例である半導体チップの主面におけるアナログ回路部周辺の配線レイアウトを示す要部拡大平面図である。なお、
図8では、配線基板2の上面2aから下面2bに至る配線経路の平面的レイアウトを示すため、下面2bに形成されたランド13の一部を透過して示している。
【0072】
図1に示すSIP1は、例えば携帯電話機のマザーボードなどの実装基板に搭載され、外部機器と電気的に接続される。実装基板では、例えば、各電子機器を並べて搭載するため、SIP1と電気的に接続される外部機器は、SIP1を搭載する領域よりも外側に搭載される。
【0073】
ここで、マイコンチップ3の各回路に接続される配線経路のインピーダンス成分が増加すると、ノイズの発生や消費電力効率低下の原因となる。特に、デジタル回路と比較してアナログ回路は、インピーダンス成分増加の影響を受けやすい。したがって、アナログ回路に接続される配線経路は、インピーダンス成分を低減する観点から、配線経路距離を短く、配線幅を太くすることが好ましい。また、マイコンチップ3、あるいはSIP1の外形寸法を小型化する観点から、アナログ回路に電源電位、あるいは基準電位を供給するパッドの数は、できる限り最小限に留めることが好ましく、この観点からも、アナログ回路に接続される配線経路の抵抗値を下げる必要がある。
【0074】
例えば、
図8に示すアナログ回路部23cに電源電位、あるいは基準電位を供給するランド13は、実装基板において、SIP1を搭載する領域の外側に配置される外部機器と接続されるため、SIP1から外部機器に至る配線経路距離を短縮する観点から、配線基板2の下面2b(
図9参照)において、外周側の列に配置される。また、配線基板2に形成する配線経路においても、配線経路距離を短くするため、アナログ回路部23cに接続される端子11は、外周側に配置される。つまり、フリップチップ接続用の端子11のうち、外周側に配置される端子11から配線基板2の外周辺に向かって配線を引き回す。このため、アナログ回路部23cに接続される配線経路については、
図9に示す配線基板2に形成された各配線17aはチップ搭載領域2cから外側に向かって延在し、層間導電路であるビア17bは、チップ搭載領域2cよりも外側に配置される。これにより、アナログ回路部23cに接続される配線経路のインピーダンス成分を低減することができる。また、マイコンチップ3の主面3aにおいても、
図28に示すように、アナログ回路部23cとランド13を電気的に接続するパッド21は、主面3aの外周側の配列に配置する。さらに、アナログ回路部23cと主面3aの外周側に配列したパッド21との接続は、インピーダンス成分低減の観点より、
図28に示す配線24a(例えば、
図28に示す「Analog GND1」)のように、太い配線で結線することが好ましい。
【0075】
ここで、前記したように、複数のパッド21にそれぞれ接続される各接合部の温度分布を一定の範囲で揃える観点からは、
図10に示すように、外周側に配置される複数のパッド21aと、パッド21aの内側に配置される複数のパッド21bをそれぞれ対向配置することが好ましい。
【0076】
ところが、
図29に示すように、外周側のパッド21aと内周側のパッド21bの対向する辺の中心位置をずらして千鳥状に配置した場合、パッド21bが、マイコンチップ3の複数の配線24と重なってしまう。つまり、パッド21bをパッド21aと千鳥状となるように配置することにより、マイコンチップ3の複数の配線が、パッド21bを介して短絡してしまう。また、前記したようにマイコンチップ3あるいはSIP1の外形寸法の小型化の観点から、アナログ回路部23cに接続されるパッド21の数はできる限り少なくすることが好ましい。したがって、隣り合う配線24は、例えば、一方が電源電位を供給する配線24で、他方が基準電位を供給する配線24のように異なる種類の電流を流すこととなる。このため、隣り合う配線24が短絡すると、マイコンチップ3およびSIP1の回路に不具合が生じる。
【0077】
また、
図30に示すように、アナログ回路部23cに電気的に接続される配線24の隣には、他の配線24が配置されていない場合、パッド21bをパッド21aと千鳥状に配置しても、複数の配線24がパッド21bを介して短絡はしない。しかし、パッド21bと配線24が重なる領域では、配線24の線幅W1が、他の領域と比較して太くなる(外側のパッド21aが形成された領域のパッドの配列方向における配線24の線幅W2よりも太くなる)。したがって、パッド21bに接続される配線24の配線幅の上限を規定するデザインルールによっては、配線幅の上限を超えてしまう場合(配線幅エラー)がある。
【0078】
ところで、マイコンチップ3の主面において、パッド21と例えば、トランジスタやダイオードなどの各半導体素子は、複数の配線層に形成された配線24を介して電気的に接続される。したがって、前記した、複数の配線24の短絡、あるいは配線幅エラーを回避する観点のみを考えれば、最表面の配線層にパッド21を配置し、これに接続される配線24は、パッド21が配置される配線層よりも下層の配線層で形成し、ダミーパッドを千鳥状に配置する構成を考えることもできる。しかし、以下の理由から、パッド21に接続する配線24は、パッド21が配置される配線層と同じ最表面の配線層に形成する必要がある。
【0079】
図11は、
図10に示すアナログ回路部に接続される配線の配線経路の断面を拡大して示す要部拡大断面図である。なお、
図11では、マイコンチップ3の主面の詳細構造を示しているが、本実施の形態において、主面3aとは、半導体素子25の形成面からマイコンチップ3の最表面に形成されパッド21を露出するように半導体素子25の形成面を覆う絶縁層までを指す。したがって、半導体素子25の形成面上に配置される各配線層が形成される面は、主面3aに含まれる。
【0080】
図11において、マイコンチップ3の主面3aには、複数の半導体素子25が形成され、各半導体素子25とパッド21は、絶縁層を介して積層される複数の配線層(
図11では8層)に形成された配線24を介して接続されている。
図11では半導体素子の例として、トランジスタであるアナログ回路素子25aおよび静電気からコア回路を保護する保護ダイオード25bを示している。
【0081】
パッド21と、アナログ回路素子25aに接続される配線経路のインピーダンス成分を低減する観点からは、配線経路長を短くする配線の厚さを厚くする、あるいは配線の幅を太くし、シート抵抗の最も低い配線を介して接続することが好ましい。そこで、パッド21と厚さ方向に重なる位置にアナログ回路素子25aを形成し、配線経路長を短縮化することも考えられる。しかし、本実施の形態では、パッド21と厚さ方向に重なる位置には、
図11に示すように、保護ダイオード25bなどの半導体素子25が形成され、コア回路であるアナログ回路素子25aはパッド21から離れた領域(
図4に示すコア回路形成領域3e)に形成されている。
【0082】
ここで、
図11に示す各配線層に形成された配線24の線幅および厚さ(線厚)は、下層になる程線幅が細く、線厚が薄くなる。すなわち、最表面に配置される8層目の配線層に形成される配線24aは、下層(1層目〜7層目)の配線層に形成される配線24bと比較して、断面積が大きいので配線抵抗が低い。したがって、アナログ回路素子25aに接続される配線経路の抵抗成分を低減するには、可能な限りアナログ回路素子25aの近くまで、低抵抗の配線24aで引き出し、配線24aよりも抵抗が高い配線24bの配線経路長を短くする必要がある。
【0083】
図31および
図32は
図10に対する比較例であり、アナログ回路部に接続される配線の配線経路を拡大して示す要部拡大平面図、および要部拡大断面図である。このとき、
図31に示すように、外周側のパッド21aと内周側のパッド21bが千鳥状に配置されている場合には、
図32に示すように、外周側のパッド21aから第2配線層と第3配線層の下層配線層(下層配線)まで配線経路を一旦下げ、I/O領域(図示しない)を横断し、第4、第5、第6配線層の配線24bで構成された周回電源配線26を迂回させなければならない。また、アナログ回路部内のアナログ用電源の配線層は、最上層側に位置する配線層(本実施の形態では、第8配線層)の次にシート抵抗が低く、この配線層よりも下側に位置する配線層(本実施の形態では、第7配線層)で構成されており、この配線層(第7配線層)へ接続するために、更に下側の配線層(本実施の形態では、第3配線層)からこの配線層(第7配線層)へ引き上げなければならない。そして、この配線層(第7配線層)のアナログ用電源からアナログ回路素子へ電源を供給するために、この配線層(第7配線層)から再び下層に引き下げられ、AFE内部のトランジスタにおける拡散層へ接続されるため、インピーダンス成分が増大してしまう。また、最上層の配線層(第8配線層)の一部から成るパッド21aと接続した配線層(第7配線層)を、パッド(ダミーパッド)21bの直下を配線しない理由は、パッド21bの直下に配線層(第7配線層)が存在すると、バンプ接続後の応力により、パッド21bと配線層(第7配線層)との間の層間膜が剥がれる虞があり、信頼性が低下するためである。
【0084】
このため、本実施の形態では特に、配線経路の抵抗成分(インピーダンス成分)を低減する必要のあるアナログ回路素子25aに接続される配線24は、最表面に配置される配線24aの配線経路距離が他の配線24bの配線経路距離よりも長い。つまり、パッド21を形成する配線層である最表面の配線層の配線長を最も長く、かつ線幅を太くしている。この結果、前記した
図29、
図30に示すようにパッド21bとパッド21aの配置を、対向する辺の中心の位置をずらす、千鳥状の配置とした場合、配線24の短絡あるいは配線幅エラーが発生する。
【0085】
なお、
図10では配線24aが1本の配線から構成される例を示しているが、デザインルールの制約により、配線幅がパッド21の幅よりも極端に狭い場合には、1つのパッド21に複数の配線24aを接続する構成としても良い。これにより、各配線の配線幅をデザインルールの許容値内に収めつつ、かつ、配線24aの抵抗値を低減することができる。
【0086】
以上の検討結果から、本願発明者は、パッド21のレイアウト検討し、隣り合う配線24aの短絡を防止しつつ、かつ、フリップチップ実装を行う際の各接合部の温度のばらつきを低減する技術を見出した。すなわち、
図10に示すようにアナログ回路部23cに接続される配線経路においては、パッド21bとパッド21aの対向する辺の中心を揃えて配置する。換言すれば、アナログ回路部23cに電気的接続される配線経路には、隣の配線経路と絶縁された複数の専用パッド21をそれぞれ配置している。さらに換言すれば、アナログ回路素子25aは、それぞれ複数のパッド21に電気的に接続されている。
【0087】
ここで、パッド21bとパッド21aの対向する辺の中心を揃えるとは、対向する辺の中心を結ぶ線の延長線が、パッド21bとパッド21aのそれぞれ中心を通過することを意味する。ただし、中心を揃える程度は、隣り合う配線24がパッド21bを介して短絡しない程度であれば良い。したがって、例えば、加工精度等に起因して対向する辺の中心を結ぶ線の延長線が、パッド21bとパッド21aのそれぞれ中心からわずかにずれる場合であっても、パッド21bが複数の配線24に跨って配置されず、配線幅エラーを起さない太さであれば良い。
【0088】
一方、本実施の形態では、アナログ回路部23cに接続されるパッド21と比較して、インピーダンス成分の増加に伴う影響が比較的小さいパッド21については、外周側に配置されるパッド21aの中心が、内周側において隣り合って配置される2つのパッド21bの間の延長線上に位置するように千鳥状に配置する。アナログ回路部23cに接続されるパッド21と比較して、インピーダンス成分の増加に伴う影響が比較的小さいパッド21は、例えば、
図4に示す制御回路部23aに接続され、デジタル信号電流を入出力するパッド21がこれに該当する。
【0089】
このように、パッド21を複数列で配置する場合に、千鳥状に配置する領域とパッド21a、21bの対向する辺の中心を揃えて配置する領域を混在させると、パッド21間の距離(配置ピッチ)が、領域毎に僅かに異なることとなるため、前記した保温効果についても僅かに違いが生じる。しかし、配線24の短絡を防止するために、パッド21aの内周側にパッド21を全く配置しない場合と比較すると、各パッド21の接合部間の温度のばらつきを大幅に改善することができる。したがって、接合部間の温度のばらつきに起因する接合不良を防止ないしは抑制することができる。
【0090】
また、千鳥状に配置する領域とパッド21a、21bの対向する辺の中心を揃えて配置する領域を混在させることにより、千鳥状に配置した領域においては、端子数を増加させることができる。したがって、半導体装置の接合不良を抑制しつつ、かつ、外形寸法が大型化することを抑制することができる。
【0091】
なお、本実施の形態では、パッド21a、21bを千鳥状に配置すると、隣り合う複数の配線24が短絡する虞のある配線経路として、アナログ回路部23cに接続される配線経路を例として説明した。しかし、他にパッド21a、21bを千鳥状に配置すると、隣り合う複数の配線24が短絡する虞のある配線経路があれば、当該配線経路にも適用することができる。
【0092】
<主面にパッドが複数列で配置される半導体チップへの適用−2>
次に、単にパッド21aとパッド21bを規則的に2列で配置すると、配線基板2の上面2aにおける配線レイアウトに起因して隣り合う配線が短絡してしまう例について説明する。
【0093】
図12は、
図2に示す配線基板のチップ搭載領域の角部周辺を拡大して示す要部拡大断面図、
図13は
図12に示すA−A線に沿った要部拡大断面図、
図14は
図12に示すB−B線に沿った要部拡大断面図である。
【0094】
図12〜
図14において、配線基板2の上面2aに形成される端子11は、マイコンチップ3のパッド21と対向する位置に配置されるボンディング部11cと、ボンディング部11cから複数の端子11の配列方向と交差(略直交)する方向に向かって延在する引き出し配線11dと、からなる。詳しく説明すると、内側の列に配列される端子11bの引き出し配線11dはチップ搭載領域2cの内側に向かって、外側の列に配置される端子11aの引き出し配線11dは、チップ搭載領域2cの外側に向かってそれぞれボンディング部11cから延在している。
【0095】
また、配線基板2の上面2aは、例えばソルダレジストと呼ばれる樹脂からなる絶縁膜18に被覆されているが、ボンディング部11cの周辺には絶縁膜18の開口部が形成され、ボンディング部11cおよび引き出し配線11dの一部が絶縁膜18から露出している。なお、
図12では、外側の端子11aと内側の端子11bの間の領域、あるいは、隣り合う端子11の間の領域に、絶縁膜18は形成されず、露出している。これは、本実施の形態の配線基板2のように端子11の配置ピッチを狭くして多ピン化を図る場合、絶縁膜18を形成する際の位置精度との関係で、ボンディング部11cが絶縁膜18に覆われてしまう不具合を防止するためである。したがって、端子11の配置ピッチが十分に広く、各端子11の間に確実に絶縁膜18を形成することができる場合には、端子11の外形に沿って絶縁膜18の開口部を形成し、これを露出させる構造とすることもできる。なお、
図12〜
図14に示すボンディング部11cおよび引き出し配線11dは、それぞれ
図9に示す配線基板2の上面2aに形成された配線17aの一部を構成するが、本実施の形態では、配線17aのうち、絶縁膜18から露出した部分を引き出し配線11d、あるいはボンディング部11cとして説明する。
【0096】
ここで、本実施の形態において、ボンディング部11cから複数の端子11の配列方向と交差(略直交)する方向に向かって延在する引き出し配線11dを形成し、この引き出し配線11dを絶縁膜18から露出させるのは、以下の理由による。
【0097】
本実施の形態では、マイコンチップ3を配線基板2に搭載する工程(フリップチップ実装工程、ダイボンディング工程)において、マイコンチップ3を搭載する前に、予め半田材をボンディング部11cおよび引き出し配線11dに配置(塗布)しておき、この状態で配線基板2を加熱する。溶融した半田材の一部に、例えば、バンプ22の一部が接触すると、半田材がバンプ22に向かって集まり易くなる。したがって、フリップチップ実装工程では、引き出し配線11dに配置された半田材もバンプ22の方向に集まることとなる。
【0098】
また、
図12に示すように、ボンディング部11cの幅を引き出し配線11dの幅よりも広く形成すると、溶融した半田材は表面張力により、幅の広い領域に集まる性質を有している。このため、引き出し配線11dよりも広い幅で形成されたボンディング部11cにボンディング部11cおよび引き出し配線11dに配置された半田材が集まり、半田16が形成される。
【0099】
このように、端子11を、ボンディング部11cと引き出し配線11dとで構成し、半田材をボンディング部11cおよび引き出し配線11dの双方に配置することにより、隣り合う端子11同士の短絡を防止しつつ、かつ、バンプ22と半田16を確実に接合することができる。つまり、半田材をボンディング部11cおよび引き出し配線11dの双方に配置することにより、半田材を細長く配置することができるので、隣り合う端子11の短絡を防止することができる。また、引き出し配線11dに配置された半田材が溶融してボンディング部11cに集まることにより、引き出し配線11dに配置された半田材も半田16となるので、ボンディング部11cのみに半田材を配置する場合よりも半田16の量が増加し、この結果、バンプ22と半田16の接合性を向上させることができる。したがって、引き出し配線11dにも半田材を配置するため、引き出し配線11dの一部を絶縁膜18から露出させている。この引き出し配線11dは、半田材をボンディング部11cに集まりやすくする観点からは、端子11の配列方向と直交する方向に向かって延在させることが好ましい。また、半田材の量を増加させる観点からは、延在距離も長くすることが好ましい。
【0100】
ところが、
図4に示すように、マイコンチップ3の主面3aの外縁を構成する各辺に沿ってパッド21を配列する場合、主面3aの角部付近では、パッド21の配列が交差する。この結果、
図12に示すようにパッド21(
図13参照)と対向する位置に配置される端子11の配列もチップ搭載領域の角部周辺で交差する。この場合、チップ搭載領域の内側に向かって延在する引き出し配線11dのうち、角部周辺に配置された引き出し配線11dは、交差する方向に延在する引き出し配線11d同士が短絡してしまう懸念がある。
【0101】
このように引き出し配線11dの短絡、特に内側に配置される引き出し配線11dの短絡を防止するため、チップ搭載領域の角部周辺には、一般に内側に配置される端子11bを形成しない。しかし、端子11のレイアウトにおいて、端子11を1列で配置する領域と2列で配置する領域が混在する場合、前記したように、フリップチップ実装する工程において、バンプ22と半田16の接合部周辺の温度にばらつきが生じるため、接合不良が発生する原因となる。一方、温度のばらつきを抑制するため、外側の列に配置する端子11bの配置数を少なくすれば、配置可能な端子数が減少することとなるため、必要な端子数が確保できなくなる場合がある。
【0102】
そこで、本実施の形態では、
図12に示すように、複数の列で配置される端子11の各配列の端部にダミーの端子11Bを配置した。つまり、外側の列に配列される端子11aの配列の端部、および内側の列に配列される端子11bの配列の端部に、それぞれダミーの端子11Bを配置した。この端子11Bは、前記したように、それぞれ対向する位置にマイコンチップ3のパッド21Bが配置され、バンプ22Bおよび半田16Bを介してパッド21Bと熱的に接続されている。これにより、各端子11の配列において、固有の電流が流れる端子11Aの隣には端子11Aまたは端子11Bが配置され、各端子11A、端子11Bには、パッド21がバンプ22、半田16を介して接合されるので、該接合部周辺が保温壁として機能し、温度のばらつきを抑制することができる。
【0103】
また、端子11Bをマイコンチップ3の各種コア回路、あるいは外部機器と電気的に接続されないダミーの端子とすれば(この場合、パッド21B、バンプ22B、半田16Bも、それぞれ外部機器と電気的に接続されないダミーとなる)、例えば
図12に示すように各端子11Bの引き出し配線11dが、他の端子11Bの引き出し配線11dと接触する場合であっても、信頼性低下の原因とはならない。したがって、内側の列に配置される端子11bをチップ搭載領域の角部まで配置することができる。このため、配線基板2の上面2aにおいて、四角形の外形をなすチップ搭載領域の各辺に沿って、端子11を配置する場合であっても、外周側に配置される1列目の端子11aの内側の辺と、端子11aの内側に配置される2列目の端子11bの外側の辺を、平面的に対向配置することができる。
【0104】
なお、
図12では、外側に配置される端子11aの配列の端部はダミーの端子11Bが配置されているため、端子11aの配列の端部に位置する端子11Bの内側で平面的に対向する位置には端子11bが配置されていない。つまり、配列の端部に位置する端子11Bは1列で配置されている。端子11Bをダミーの端子とした場合、パッド21Bとの電気的接続信頼性までは要求されず、熱的に接続されていれば良い。したがって、内側に配置される端子11bの端子数を低減することにより、使用する材料の量を低減するためである。ただし、端子11aの配列の端部に位置する端子11Bの内側で平面的に対向する位置に端子11Bを配置しても良い。この場合、配列の端部に位置するダミーの端子11Bの接合部周辺の温度の低下を抑制することができるので、この端子11Bに接合される半田16Bの濡れ性が向上し、保温効果がさらに向上する。
【0105】
また、
図12では、端子11Bを外部機器に電気的に接続されないダミーの端子として説明したが、端子11Bは、ダミーの端子には限定されず、例えば、他の端子11と共通する電流を流すものであれば、例えば、電源電位や基準電位を供給する端子として用いることもできる。特に外周側に配置される端子11aは、引き出し配線11dが外側に向かって延在するので、角部に配置した場合でも、引き出し配線11d同士が短絡する懸念が少ない。したがって、外周側に配置される端子11aにおいては、配列の端部に配置される端子11Bを
図1に示すランド13と電気的に接続し、他の端子11と共通する電流を流す端子とすることにより、端子数を増加させることができる。
【0106】
また、端子11aよりも内側に配置される端子11bにおいては、
図12に示すように、端子11Bの引き出し配線11dが接触する場合には、接触する引き出し配線11dにそれぞれ共通する電流を流すことにより、短絡による信頼性低下を防止することができる。ただし、この場合、前記したように端子11やこれに接続される配線のレイアウト上の制約が生じるので、設計の自由度を向上させる観点からは、内側の列においては、端子11Bを外部機器と電気的に接続されないダミーの端子とすることが好ましい。一方、外側の列においては、内側の列と比較して端子11や配線のレイアウト上の制約が生じ難いので、外側の列については、端子11Bを他の端子と共通する電流が流れる端子とすることで、当該電流の通電経路の抵抗を低減することができる。
【0107】
また、端子11Bをダミーの端子とした場合には、
図12に示すように、端子11Bの引き出し配線11d同士を接続する他、端子11Bに接続される引き出し配線11dの長さを、ランド13(
図1参照)を介して外部機器と電気的に接続される端子11(例えば端子11A)の引き出し配線11dよりも短くしても良い。この場合、引き出し配線11dに配置する半田材の量は、端子11Aの引き出し配線11dに配置する半田材よりも少なくなるため、
図7に示す半田16Bを構成する半田材の量が少なくなる。しかし、端子11Bを保温用の端子として用いる観点からは端子11Bとこれに対向配置されるパッド21が熱的に接続する程度の半田量を配置することができれば良い。したがって、
図7に示すように半田16Bの量が端子11Aに配置される半田16Aと比較して少ない場合であっても、半田16Bとバンプ22Bのボール部22aの一部が接触していれば、保温効果を得ることができる。また、前記したように引き出し配線11dに配置した半田材が、ボンディング部11cに集まることにより半田16が形成される。したがって、引き出し配線11dの長さを短くすることにより、引き出し配線11d同士の接触を防止することができれば、溶融した半田材の移動方向を一方向に規定することができるので、各ボンディング部11cに形成される半田16Bを確実にバンプ22Bに接触させることができる。
【0108】
<半導体装置の製造方法>
次に
図1に示すSIP1の製造方法について説明する。本実施の形態のSIP1の製造方法では、まず、配線基板を準備する。
図15は、本実施の形態の配線基板準備工程において準備する配線基板の一部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【0109】
本工程では、
図15に示すマトリクス基板(多数個取り配線基板)35を準備する。マトリクス基板35は、複数の製品形成領域35aが、例えば、行列状に配置された配線基板であって、各製品形成領域35aが、
図1に示す配線基板2に相当する。また、各製品形成領域には、
図1に示す端子11、12、ランド13、あるいは各端子間を電気的に接続する配線等が、予め形成されている。
【0110】
次に、マトリクス基板35の上面2aにマイコンチップ3(
図1参照)を搭載する(フリップチップ実装工程、ダイボンディング工程)。
図16は、
図15に示す配線基板の上面にマイコンチップを搭載する工程を示す要部拡大断面図である。
【0111】
本工程では、マイコンチップ3の主面3aがマトリクス基板35の上面2aと対向した状態で、マイコンチップ3の主面3aに形成されたパッド21と、マトリクス基板35の上面2aに形成された端子11を、バンプ22を介して接合する、フェイスダウン実装によりパッド21と端子11をそれぞれ電気的に接続する。バンプ22による接合方法を詳しく説明すると例えば以下である。
【0112】
マトリクス基板35の各端子11の表面(ボンディング部11cおよび引き出し配線11d)に半田材を配置(塗布)する。この工程は、マイコンチップ3を搭載する工程の直前に行うこともできるが、予め端子11に半田材が塗布された配線基板2を準備しても良い。
【0113】
次に、主面3aの各パッド21上にそれぞれバンプ22が形成されたマイコンチップ3を準備して、主面3aとマトリクス基板35の上面2aが対向するように、各バンプ22と端子11の位置を合わせてマイコンチップ3を載置する。マイコンチップ3の裏面3b側、およびマトリクス基板35の下面2b側には、それぞれヒータなどの熱源36が配置され、マイコンチップ3およびマトリクス基板35はこの熱源36により加熱される。この熱により、端子11に配置された半田材が溶融し、バンプ22に濡れ上がって、金−半田接合を形成する。
【0114】
本工程では、複数のバンプ22と端子11を同時に接合するので、接合不良の発生を抑制するためには、各バンプ22の接合部周辺の温度のばらつきを低減する必要がある。本実施の形態によれば、前記したように固有の電流が流れるバンプ22Aの隣に、他のバンプ22と共通する電流が流れる、あるいは外部機器と電気的に接続されないダミーのバンプ22Bを配置し、これらをマトリクス基板35の端子11と接合することにより、各バンプ22の接合部周辺の温度のばらつきを低減することができる。
【0115】
次に、マイコンチップ3の主面3aとマトリクス基板35の上面2aの間に、アンダフィル樹脂15を配置し、マイコンチップ3の主面3aを樹脂封止する。
図17は、
図15に示すマイコンチップとマトリクス基板の間にアンダフィル樹脂を配置した状態を示す要部拡大断面図である。本工程では、前記した金-半田接合を行う工程における熱を加え続けながら、マイコンチップ3の主面3aとマトリクス基板35の上面2aの間に、アンダフィル樹脂15を供給(充填)する。その後、アンダフィル樹脂を加熱硬化させてバンプ22と端子11の接合部を保護する。
【0116】
次に、メモリチップ4を搭載する。
図18は、
図17に示すマイコンチップ3の裏面側にメモリチップを搭載した状態を示す要部拡大断面図である。本工程では、メモリチップ4の裏面4bをマイコンチップ3の裏面3bと対向させた状態で固着する、所謂フェイスアップ実装で搭載する。メモリチップ4の端子数(パッド数)は、マイコンチップ3の端子数と比較して少ないため、フェイスアップ実装とすることで製造コストを低減することができる。
【0117】
本実施の形態では、複数のメモリチップ4を搭載するので、各メモリチップ4を順次積層して固着する。上層に積層されるメモリチップ4は裏面4bを、下層に配置されたメモリチップ4の主面4aと対向させた状態で、下層のメモリチップ4上に固着される。積層時には、下層に配置されたメモリチップ4のパッド4dが露出するように配置する。
【0118】
メモリチップ4は、接着材によりマイコンチップ3の裏面3b、あるいは下層に配置されたメモリチップ4の主面4a上に固着するが、接着材としては、ペースト樹脂、あるいはDAF(Die Attach Film)と呼ばれる接着テープを用いることができる。
【0119】
次に、ワイヤボンディング工程として、メモリチップ4の各パッド4dと端子12を、それぞれワイヤ5を介して電気的に接続する。
図19は
図18に示すメモリチップのパッドと配線基板の端子を電気的に接続した状態を示す要部拡大断面図である。本工程では、ワイヤ5同士が短絡することを防止するため、下層のメモリチップ4のパッド4dから順に接続していく。
【0120】
次に、樹脂封止工程として、メモリチップ4およびワイヤ5を封止体6により封止(樹脂封止)する。
図20は、
図19に示すメモリチップおよびワイヤを封止体により封止した状態を示す要部拡大断面図である。本工程では、例えば、複数の製品形成領域をまとめて(成型金型が有する1個のキャビティで複数の製品形成領域を覆った状態で)封止する、所謂、一括モールド方式(一括トランスファモールド方式)により、封止体6を形成している。
【0121】
次に、マトリクス基板35の下面2bに半田ボール14を搭載する。
図21は、
図20に示す配線基板の下面側に半田ボールを搭載する工程を示す要部拡大断面図である。
【0122】
本工程では、
図21に示すように、封止体6の上面を下側に向けた状態で、マトリクス基板35の下面2bに形成されたランド13の表面に半田ボール14を接合する。
【0123】
次に、封止体6が形成されたマトリクス基板35を製品形成領域毎に切断(個片化)し、
図1に示すSIP1が得られる。次に、必要に応じて、SIP1の電気的検査や外観検査を行い、良否判定しSIP1が完成する。
【0124】
以上、本願発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0125】
例えば、前記実施の形態では、半導体装置のパッケージタイプとして本願発明者が具体的に検討したSIPについて説明したが、半導体チップを配線基板にフリップチップ実装する半導体装置に広く適用することができる。例えば、
図22に示すように、1個のマイコンチップ3が配線基板2の上面にフリップチップ実装された半導体装置40に適用することができる。
図22は、
図1〜
図22を用いて説明した半導体装置の変形例である半導体装置の概要構造を示す断面図である。
図22に示す半導体装置40は、マイコンチップ3の裏面3bにメモリチップ4(
図1参照)が搭載されていない点、これに接続されるワイヤ5(
図1参照)、端子12(
図1参照)を有していない点、および封止体6が形成されていない点を除き、
図1に示すSIP1と同様である。
【0126】
SIP1と重複する説明は省略するが、半導体装置40においても、複数のパッド21が形成されたマイコンチップ3の主面3aが配線基板2の上面2aと対向するように搭載されている。したがって、パッド21と配線基板2の端子11を電気的に接続する際には、各接合部における温度のばらつきを低減することが、接合不良を防止する観点から重要である。したがって、前記実施の形態で説明した技術を適用することにより、各接合部の接合不良を防止することができる。なお、
図22では、簡単に説明するため、半導体装置40が有する半導体チップをマイコンチップ3として示しているが、半導体チップの種類はマイコンチップに限定されるものではない。
【0127】
また、前記実施の形態では、フリップチップ実装されるマイコンチップの主面に形成された複数のパッドが、主面の各辺に沿って、かつ複数列に亘って形成されているものについて説明したが、半導体装置の高機能化、または小型化を考慮しなければ、本願発明は、複数のパッドが、主面の各辺に沿って、1列で形成されている半導体チップに適用しても有効である。しかしながら、複数のパッドを1列で形成した場合、パッドの配列方向(辺に沿った方向)にしかパッドが存在しないため、保温効果を考慮すると、前記実施の形態のように、複数列に亘って複数のパッドを形成することがより好ましい。
【0128】
また、前記実施の形態では、SIPについて説明したが、他の半導体パッケージの例として、第1半導体装置(第1半導体パッケージ)上に第2半導体装置(第2半導体パッケージ)を積層してシステムを構成したパッケージオンパッケージ(Package on Package:POP)型半導体装置(POP)を挙げることもできる。
【0129】
POPは、例えば、コントローラ系チップが搭載された第1半導体パッケージと、DRAMやフラッシュメモリのようなメモリ系チップが搭載された第2半導体パッケージとで構成され、第1半導体パッケージの上に第2半導体パッケージが積層される。そして、下段の第1半導体パッケージの下面に設けられた外部端子を介して、例えば小型情報通信端末機器である携帯電話など、外部電子機器のマザーボード(実装基板)などに実装される。
【0130】
POPは、複数枚の配線基板を備えているので、システムの多機能化に伴ってコントローラ系チップの入出力端子数が増加した場合でも、同一実装面積のSIPに比べて信号配線の量を増やすことができる利点がある。また、POPは、各配線基板にチップを実装した後にチップ同士を接続するので、チップ同士を接続する工程に先立って、チップと配線基板の接続状態を判定することが可能となり、パッケージの組み立て歩留まりの低減に有効である。また、SIPと比較してシステムの少量・多品種化にも柔軟に対応できる。
【0131】
このようなPOPにおいては、下段側に配置される第1半導体パッケージにおいては、POP全体の厚さを薄型化する観点から、コントローラ系の半導体チップは、フリップチップ実装される。したがって、この第1半導体パッケージにおいて、前記実施の形態で説明した技術を適用することにより、接合不良を防止することができる。
【0132】
また、前記実施の形態では、
図12に示すように、端子11がボンディング部11cとこれに接続される引き出し配線11dとで構成され、ボンディング部11cおよび引き出し配線11dが絶縁膜18から露出している構造について説明したが、
図23および
図24に示すように、ボンディング部11cのみを絶縁膜18から露出させた配線基板41を有する半導体装置に適用することもできる。
図23は
図12に示す配線基板の変形例を示す要部拡大平面図、
図24は
図23に示すA−A線に沿った要部拡大断面図、
図25は
図23に示すB−B線に沿った要部拡大断面図である。
【0133】
図23〜
図25に示す配線基板41のように、絶縁膜18から露出する引き出し配線を形成しない場合には、例えば、端子11Bを外部機器と電気的に接続されないダミーの端子とすれば、端子11Bの全てを絶縁膜18から露出させることができる。この場合、
図12〜
図14に示す配線基板2のように、引き出し配線11dの配置レイアウトを考慮しなくて良いので、端子11Bの配置に係る設計上の自由度をさらに向上させることができる。
【0134】
また、前記実施の形態では、パッドに形成されたバンプと、このバンプに対応する端子(ボンディングリード)とを、半田を介して接続することで、一体の保温壁(熱源)として機能させることについて説明したが、保温壁として機能するためには、半導体チップのパッドと配線基板のボンディングリードとが熱的に接続されていればよく、パッドとボンディングリードとを半田を介して接続するような構成に適用してもよい。しかしながら、半田は接合する際、一度、熱により溶融するため、パッドとボンディングリードとの間で良好な接続を行うためには、前記実施の形態のように、パッド(突起電極)にバンプを形成しておき、このバンプに溶融した半田の濡れ上がらせることが好ましい。
【0135】
また、前記実施の形態では、バンプ22を介して半導体チップのパッド21と配線基板2の端子11とを電気的に接続する場合において、バンプ22の温度が十分に上がらないことによりバンプ22と端子11と間で生じる接合不良対策について説明したが、バンプ22の代わりにワイヤを用いれば、この接合不良対策が可能であることは言うまでもない。
【0136】
このとき、前記実施の形態では、
図10に示すように、半導体チップの主面において外周側に配置されたパッド21aを構成する配線の一部が、このパッド21aよりも内側に配置されたパッド21bも構成している。そのため、例えば隣接する他のパッド21に接続されるワイヤとの干渉を避けるために、外周側のパッド21a、あるいは内周側のパッド21bの何れか一方に、ワイヤを振り分けることができる。また、
図33に示すように、配線基板2における半導体チップの周囲には、電源電位(又は、基準電位)を強化するために、半導体チップの各辺に沿って電源電位用配線(又は、基準電位用配線)が連続して形成されている。そして、
図34のそれぞれに示すように、この電源電位用配線と、半導体チップの複数のパッド21のうちの外周側のパッド(電源電位用パッド)21aとをワイヤを介して電気的に接続することで、ワイヤの長さを短くすることができる。これにより、ワイヤに生じるインダクタンス成分を低減することができるので、半導体装置の信頼性を向上することができる。