特許第5770290号(P5770290)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5770290共振モータユニット及び共振モータユニットを備える電気装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770290
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】共振モータユニット及び共振モータユニットを備える電気装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20060101AFI20150806BHJP
   A46B 13/02 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   H02P7/00 C
   A46B13/02
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-525393(P2013-525393)
(86)(22)【出願日】2011年8月19日
(65)【公表番号】特表2013-536670(P2013-536670A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】IB2011053665
(87)【国際公開番号】WO2012023120
(87)【国際公開日】20120223
【審査請求日】2013年2月15日
(31)【優先権主張番号】11006064.7
(32)【優先日】2011年7月25日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10008644.6
(32)【優先日】2010年8月19日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】10008645.3
(32)【優先日】2010年8月19日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508117514
【氏名又は名称】ブラウン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】トルシュテン、クレム
(72)【発明者】
【氏名】インゴ、フェッター
(72)【発明者】
【氏名】ウーベ、ユングニッケル
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト、ハイル
(72)【発明者】
【氏名】クリス、レッケル
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−300795(JP,A)
【文献】 特開2000−253639(JP,A)
【文献】 特開2003−348888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
A46B 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振モータと、
駆動周波数で前記共振モータを駆動するため、及び連続する駆動サイクルにて第1の短絡段階の間に前記共振モータを短絡するため、並びに少なくとも前記駆動サイクル内の所定の第1の時刻に前記共振モータに流れる電流をオフに切り換えることによって、少なくとも前記第1の短絡段階を終結するための、制御ユニットと、
少なくとも、前記所定の第1の時刻に前記共振モータによって供給される第1の電圧信号を連続的に測定するための測定ユニットと、
前記第1の電圧信号が連続する測定の間で変化したか否かを判断するための評価ユニットと、を備え、
前記測定ユニットは、前記第1の電圧信号の符号のみを判定するように構成され、
前記制御ユニットは、前記第1の電圧信号に基づく変化が測定されると前記共振モータの駆動パラメータの少なくとも1つを変更するように、及び/又は、前記測定した変化をユーザーに示すように構成され、
前記所定の第1の時刻は、前記共振モータに加えられる負荷が所定の第1の負荷値を下回る値から上回る値へ又は上回る値から下回る値へと変化するときに、前記第1の電圧信号がその符号を変化させるように、予め定められ、
前記制御ユニットは更に、連続する駆動サイクルにて第2の短絡段階の間に前記共振モータを短絡するように、また、前記駆動サイクル内の所定の第2の時刻に前記共振モータに流れる前記電流をオフに切り換えることによって、前記第2の短絡段階を終結するように構成されており、
前記測定ユニットは更に、前記所定の第2の時刻に前記共振モータによって供給される第2の電圧信号を測定するように構成されており、
前記評価ユニットは更に、前記第2の電圧信号が連続する測定の間で変化したか否かを判断するように構成され、
前記測定ユニットは、
前記連続する駆動サイクルのうちの少なくとも1つの駆動サイクルの第1の半サイクルにて前記第1の電圧信号を、そして同じ駆動サイクルの第2の半サイクルにて前記第2の電圧信号を測定するように、又は、
前記連続する駆動サイクルのうちの少なくとも1つの駆動サイクルの第1の半サイクルにて前記第1の電圧信号を、そして同様に同じ駆動サイクルの前記第1の半サイクルにて前記第2の電圧信号を測定するように、又は、
前記連続する駆動サイクルのうちの少なくとも1つの駆動サイクル内で前記第1の電圧信号を、及び前記連続する駆動サイクルのうちの少なくとも1つの他の駆動サイクルにて前記第2の電圧信号を測定するように構成され、
前記制御ユニットは、連続する測定の間で前記駆動周波数を変更するように構成され、
前記所定の第1の時刻は、前記駆動周波数が前記共振モータの前記共振周波数と又は前記共振周波数に対して所定の距離を有する標的周波数と一致するとき、前記第1の電圧信号がその符号を変化させるように、予め定められ、
前記制御ユニットは、前記短絡段階に先立って駆動段階の間に前記共振モータに供給電圧を供給するように構成される、
共振モータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広義には、共振モータユニット及び共振モータユニットを備える電気装置、並びに共振モータを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
共振モータは、共振モータの負荷に基づいて制御され得る。そのような制御を達成するために、モータ電流又は共振モータの回転モータ電機子のピーク振幅が測定され得る。これにより、一定のピーク振幅がモータの負荷とは独立に常に達成されるように、共振モータを制御できるようになる。そのような制御は比較的複雑であり、ピーク振幅を測定する位置検出など、制御ループ内に更なる要素を必要とする。簡潔な制御のみが必要とされる状況において、これらの解決策は比較的、費用を要するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、比較的、簡潔な方式で、共振モータユニット及び共振モータを制御する方法を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
少なくともいくつかの実施形態によれば、共振モータユニットが提供され、その共振モータユニットは、共振モータと、駆動周波数で共振モータを駆動するためのものであり、連続する駆動サイクルにて少なくとも第1の短絡段階の間に共振モータを短絡するためのものであり、また、少なくとも駆動サイクル内の所定の第1の時刻に共振モータに流れる電流をオフに切り換えることによって、第1の短絡段階を終結するためのものである制御ユニットと、少なくとも、所定の第1の時刻に共振モータによって供給される第1の電圧信号を連続的に測定するための測定ユニットと、第1の電圧信号が連続する測定の間で変化したか否かを判断するための評価ユニットと、を備える。
【0005】
少なくともいくつかの実施形態において、共振モータを制御する方法が提供され、その方法は、ある駆動周波数で共振モータを駆動することと、第1の短絡段階の間に共振モータを短絡することと、少なくとも所定の第1の時刻に共振モータに流れる電流をオフに切り換えることと、少なくとも、所定の第1の時刻に共振モータによって供給される第1の電圧信号を連続的に測定することと、第1の電圧信号が連続的な測定の間で変化したか否かを評価することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示は、共振モータユニット及び共振モータユニットの制御方法の一般的な実施形態を詳細に説明すること、並びに例示的な実施形態を詳細に説明することによって更に明らかとなる。実施形態の詳細な説明において、図を参照する。
図1】共振モータと制御回路とを有する共振モータユニットの図。
図2A】種々の加荷重に関連する3つの運動誘導電圧曲線、及びモータコイルに流れる電流の各曲線の概略図。
図2B図2Aの最も極端な2つの例に対する、共振モータにかかる電流及び総電圧の概略図。
図3】共振モータに加えられる負荷レベルに応じた共振モータの制御方式の概略図。
図4】共振モータのコイルに流れる電流の2つの例の概略図であり、3つの所定の測定時刻が予見されている。
図5】共振モータのコイルに流れる電流の概略図であり、所定の測定時刻が駆動段階の間に予見されている。
図6】提案する共振モータユニットを備え得る電気装置の図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
共振モータ(揺動モータ又は振動モータとも呼ばれ得る)などの共振バネ質量系は、関連する質量mと関連するバネ定数kとに依存する共振周波数f(m;k)を有する。共振バネ質量系は、駆動周波数fdを有する周期的な駆動力F(t)によって励振され得るものであり、この駆動力F(t)は結果として、周期的な(通常は正弦波状の)質量の運動をもたらす。
【0008】
いくつかの実施形態において、共振モータは、モータコイル(共振モータが配設される電気装置のハウジングに固定され得る)を備えるステータと、移動可能に装着されたモータ電機子とを有し、モータ電機子は1個又は複数個の永久磁石を備える。無給電状態において、移動可能に装着されたモータ電機子は、ある実施形態ではバネ又はバネ装置から供給され得る復元力によって休止位置に保持される。交流供給電圧がモータコイルにて供給される(すなわち、エネルギーが共振モータの中へと誘導される)場合、モータコイルの発生電磁場が、移動可能に装着された電機子を周期運動へと追いやる。モータ電機子の運動の少なくとも一部は、復元力要素によって供給される復元力に対抗する。共振モータで消費されるエネルギーを補うようにエネルギーが絶えず供給される限り、共振モータは、共振モータの負荷が一定に保たれるならば回転モータ電機子のピーク振幅が一定に保たれる平衡状態を達成し、次いでその平衡状態を維持し得る。
【0009】
モータ電機子の被駆動周期運動の周波数fは、駆動周波数fで決定され、すなわち、f=fである。周期的駆動力及び被駆動周期運動は、規定の移相ずれφを有し、この移相ずれφは、とりわけ、駆動周波数fと実効共振周波数fとの差に依存する。共振モータ(又は一般には、共振バネ質量系)が実効共振周波数にて駆動される、すなわちf=fである場合、被駆動周期運動は、周期的駆動力に対してφ=−π/2、すなわちφ=−90度の移相ずれを有する。このバネ質量系は、駆動周波数と共振周波数とが一致するときに、最大効率で駆動される。
【0010】
図1は、共振モータLと、その共振モータLを制御するための制御回路とを備えた共振モータユニット800の例示的な実施形態を示している。図示の例示的な実施形態において、共振モータLは、4つのスイッチS1、S2、S3、S4(Hブリッジのレッグの各々に1つのスイッチが装置されている)を有するHブリッジ(フルブリッジとも呼ばれる)のブリッジ区間に装置されている。スイッチS1、S2、S3、S4は、ある実施形態においてはMOSFETとして、他の実施形態においてはトランジスタなどの他のスイッチング素子として実現され得る。スイッチS1、S2、S3、S4の各々は、例えば、共振モータLの誘導子(すなわち共振モータLのコイル)を通る電流がオフにされているとき、スイッチを過電圧から保護するために、また保護ダイオードに流れる電流の整流を可能にするために、スイッチに対して平行に装置された保護ダイオードなどの保護要素を有してもよい。いくつかの実施形態において、共振モータユニット800は、動作中の被駆動運動のためにモータ電機子に結合された機能的要素を備える。共振モータユニット800は、図6に示すような電動歯ブラシなどの電気装置で、あるいは電気カミソリ、工具、家庭電化製品などで使用され得る。
【0011】
上述したように、共振モータLの電機子は、周期的な駆動力を加えることによって、周期運動へと駆動され得る。この周期的な駆動力は、供給電圧源500からの供給電圧が正の半サイクル及び負の半サイクルで共振モータLに加えられ得るように、制御ユニット400が駆動サイクル内でスイッチS1、S2、S3、S4をオン及びオフに切り換えることによって生成される。駆動サイクルの正の半サイクルにおいて、供給電圧は正の方向に加えられることができ、例えば、S2とS3が開放されている間にS1とS4が閉鎖され、駆動サイクルの負の半サイクルにおいて、電圧は負の方向に加えられることができ、例えば、S1とS4が開放されている間にS2とS3が閉鎖される。共振モータLが連続的に駆動されない(すなわち、エネルギーを連続的に供給されない)場合、通常は実システムに固有に存在する減衰性により、モータ振幅が徐々に縮小し、やがて回転モータ電機子は停止する。
【0012】
一定の駆動周波数f及び一定の共振周波数(例えば、無負荷状態fにおいて、また負荷状態fにおいて)にて、回転モータ電機子の振幅は、駆動力を増加又は減少させることによって(すなわち、共振モータに周期的に入力されるエネルギーを増加又は減少させることによって)変化され得る。駆動力の増加又は減少は、駆動段階の時間長さ(すなわち、供給電圧が共振モータLに加えられる時間長さ)を増加又は減少させることによって達成され得る。
【0013】
更に、制御ユニット400は、少なくとも駆動段階に続く第1の短絡段階の間に、スイッチS1、S2、S3、S4を制御して共振モータLを短絡してもよい。例えば、制御ユニット400は、短絡段階の間に(他の2つの各スイッチ、S3とS4又はS1とS2がそれぞれ開放されている間に)スイッチS1とS2又はS3とS4を閉鎖してもよい。制御ユニット400は更に、少なくとも所定の最初の瞬間に第1の短絡段階が終結され、共振モータに流れる(すなわちモータコイルに流れる)電流がオフに切り換えられる、すなわちすべてのスイッチが開放されるように、スイッチS1、S2、S3、S4を制御してもよい。そのような共振モータを駆動する段階が、考えられる更なる段階と共にドイツ特許出願第102 46 520 A1号に大まかに記載されている。
【0014】
モータにかかる電圧U(大地電位600に対して測定される)が測定ユニット401の入力700にて供給され得る。測定ユニット401は、図示の実施形態においては制御ユニット400の一部として実現されている。電圧Uの測定は、共振モータLに流れる電流のスイッチオフと一時的に同期させて実施され得る。次いで、電流がオフに切り換えられるときに共振モータLによって供給される電圧信号が、図示の実施形態では同様に制御ユニット400の一部として実現されている評価ユニット402によって評価され得る。電圧Uについては後に更に議論する。
【0015】
一般に、測定ユニット401と評価ユニット402の一方又は両方が、制御ユニット400から分離しているものとして実現され得る。それに代わって、制御ユニット400、測定ユニット401、及び評価ユニット402からなる群のうちの少なくとも2つのユニットが、組み合わされたユニットの機能が実現されるマイクロプロセッサなど、一体のユニットとして実現され得る。
【0016】
共振モータLが、一定に駆動される状態にあるとき、モータ電機子は、モータにかかる(機械的)負荷が変化しない限り、一定の振幅で揺動する。供給電圧が駆動段階の間に共振モータLに加えられると、共振モータLに流れる電流が増大する。電流の増大は、とりわけ、駆動周波数fと共振周波数(無負荷共振周波数f又は実効共振周波数fのいずれか)との差に依存するものであり、すなわち、電流の上昇は、とりわけ、周期的駆動力と被駆動周期運動との位相ずれに依存する。次いでモータが、駆動段階のすぐ後に続く第1の短絡段階の間に短絡されると、すなわち、供給電圧がモータコイルに加えられなくなると、電流は、回転モータ電機子を介してモータコイル内に誘導される電圧によって駆動される。第1の短絡段階の最後に、残留電流は、スイッチオフ段階の間にHブリッジのすべてのスイッチを開放することによって、オフに切り換えられてもよい。これについては、以下で更に詳細に説明することにする。
【0017】
共振モータにかかる総電圧Uは、自己誘導電圧、U=L・dI(t)/dtで供給され、Lはコイルのインダクタンスであり、dI(t)/dtはモータ電流の時間変化(すなわち、時間tに対するモータ電流I(t)の一次導関数)であり、運動誘導電圧Uindが、コイルに対する永久磁石の運動によってモータコイル内に発生され、モータコイルのオーム抵抗で生じる電圧はU=I・Rであり、ここで、Iはモータ電流であり、Rはモータコイルの抵抗であり、その結果、次式が得られる。
=U+Uind+U=L・dI(t)/dt+Uind+I・R。
【0018】
この式に現れるすべての電圧が時間依存性であり、すなわちU≡U(T)などであるが、それを示すことは省略されている。通常は正弦波状である、固定子に対する被駆動電機子の運動に依存するため、運動誘導電圧Uindは通常は正弦波状である。前述したように、被駆動周期運動は、周期的駆動力に対して位相ずれを有し、その位相ずれは、共振モータの(実効)共振周波数と駆動周波数との差に依存する。
【0019】
以下において、無負荷状態にある共振モータなどの共振バネ質量系の共振周波数はfと示され、共振モータが負荷を受けているとき、すなわち共振周波数を規定する関連パラメータのうちの1つが変更されたときに発生する実効共振周波数はfと示される。
【0020】
共振モータは、機能要素を運動へと、特に揺動運動へと駆動するために、電気装置(例えば、電気口腔衛生装置又は脱毛装置など)にて利用され得る。電気装置が電動歯ブラシなどの口腔衛生装置である実施形態において、機能要素は、ブラシヘッドの表面から延出する複数の洗浄要素を備えたブラシヘッドであってもよい。ブラシヘッドが表面、例えば歯の表面に押し付けられると、共振モータの実効質量と共振モータの実効バネ定数の少なくとも一方が影響を受ける。このように圧力に依存して実効質量又は実効バネ定数の少なくとも一方が影響を受けることは、これらのパラメータに共振周波数が依存しているがために、実効共振周波数fが変動することにつながる(すなわち、電気装置の実効共振周波数は、共振モータにかかる負荷が変化する場合、動作の間に時間と共に変化する)。ある実施形態において、駆動周波数fは一定に保たれるが、一方で、実効共振周波数fは、例えば被駆動機能要素に加えられる圧力が原因で変動する。機械的負荷が共振モータに加えられる場合、被駆動周期運動のピーク振幅も変動する。留意されたいこととして、いくつかの実施形態において、加えられた機械的負荷の下での実効共振周波数fは、無負荷状態にある共振モータの共振周波数fとは相当に異なり得る。それにもかかわらず、共振モータに(すなわち、共振モータによって駆動される機能的要素に)加えられる機械的負荷もまた、被駆動周期運動のピーク振幅に影響を及ぼす。したがって、共振モータに機械的負荷を加えることにより、位相ずれ及びピーク振幅の高さに関して、運動誘導電圧Uindが変動する。同様に、駆動周波数fが変化するとき、このことは、周期的駆動力と被駆動周期運動との位相ずれに影響を及ぼすので、運動誘導電圧Uindは周期的駆動力に関して変化する。
【0021】
以下において、図2A及び2Bを参照する。図2Aは、異なる3つの例に対して、運動誘導電圧Uind(t)と、モータコイルに流れる電流I(t)を示している。図示の例の場合、共振モータに加えられる負荷は変動するが、駆動周波数は固定されている。図示の曲線は、共振モータが平衡状態にある間の1つの駆動サイクルに関するものである。3つの例の曲線は、運動誘導電圧に関してはUind1、Uind2、及びUind3、モータコイルに流れる電流に関してはI1、I2、及びI3として示されている。これら3つの例示的な曲線において、第1の駆動段階Sの時間長さTと、駆動段階Sに続き、固定された所定の第1の時刻t1での電流のスイッチオフがその後に続く、第1の短絡段階Sの時間長さTが、第1の(ここでは正の)半サイクル内で固定されている。
【0022】
運動誘導電圧Uind(t)は、被駆動回転モータ電機子の位置関数に対して−90度、位相ずれしている。中心位置において、給電状態にある回転モータ電機子の速度は最高となり、したがって運動誘導電圧も最大となるので、太い曲線Uind1は、(実効)共振周波数が駆動周波数から比較的、離れている例を示し、細い線Uind2は、共振周波数が駆動周波数に比較的、近い例を示している。中間の線Uind3は、電流がオフに切り換えられる所定の第1の時刻tにて電流がおよそゼロになる例を示している。
【0023】
更に分かることとして、運動誘導電圧のピーク振幅は、異なる3つの曲線Uind1、Uind2、及びUind3ごとに異なる。いくつかの実施形態において、機械的負荷が加えられたことに対する実効共振周波数の変化は、比較的小さくてもよく、運動誘導電圧の機能的挙動の主な変化は、ピーク振幅の変化で供給される。いくつかの他の実施形態において、実効共振周波数の変化は、したがって位相ずれの変化は、優勢であると見なされてもよい。この挙動は、使用されるモータの種類に、また共振モータによって駆動される機能要素の種類に依存する。
【0024】
図2Bは、共振モータにかかる(総)電圧U(t)(Uind(t)はその成分である)を示し、ここでもまた、図2Aに示す2つの極端な事例(Uind1及びUind2)に対する、モータコイルに流れる電流I(t)を示している。モータにかかる電圧U(t)は、U1(太い線)及びU2(細い線)で示され、これらの曲線は、線I1(太い線)及びI2(細い線)で示される電流にそれぞれ対応している。
【0025】
図2A及び2Bを参照すると、共振モータは、一定の駆動周波数fで駆動されている。本開示の制御方式の実施形態によれば、各駆動サイクルにおいて、所定の時間長さTを有する第1の駆動段階Sが設けられ、この第1の駆動段階に、所定の時間長さTを有する第1の短絡段階Sが続く。駆動段階Sと短絡段階Ssは、駆動サイクルの第1の半サイクルのみで(例えば、正の半サイクルであるいは負の半サイクルのみで)加えられてもよい。図示の実施形態において、第1の半サイクルは正の半サイクルである。
【0026】
図示の実施形態において、第2の駆動段階S’と第2の短絡段階S’がまた、駆動サイクルの第2の半サイクル(ここでは負の半サイクル)の間に施用されてもよい。別の実施形態において、駆動段階も短絡段階も、第2の半サイクルの間に施用されない。いくつかの実施形態において、第2の半サイクルにおいて施用される第2の駆動段階S’と第2の短絡段階S’の少なくとも一方が、第1の半サイクルにおける、それらに対応する各段階とは異なる時間長さを有してもよい。ある実施形態において、2つ以上の駆動段階が第1及び/又は第2の半サイクルにて施用されてもよく、各々に、それぞれの短絡段階が続いてもよい。
【0027】
第1の駆動段階Sの間(すなわち、供給電圧が共振モータに加えられる期間に)、電流I(t)がモータコイル内で増大する。電流の上昇は、とりわけ、周期的駆動力と被駆動周期運動との間の位相ずれφに、更にまた運動誘導電圧Uindのピーク振幅Upeakに依存する。ピーク振幅Upeakと位相ずれφは、駆動サイクル内の特定の時刻tにおける運動誘導電圧の実際の高さを決定し、すなわち、Uind(t)=Uind(t;φ、Upeak)であり、運動誘導電圧の実際の高さは、共振モータに流れる電流の増大に影響を与える。これら2つの要素は、共振モータに加えられる機械的負荷を変更することによって変化するので、共振モータに流れる電流の増大は、加えられる負荷に依存する。同様に、駆動周波数fが変更されるとき、少なくとも、周期的駆動力に対する運動誘導電圧Uindの位相ずれが変化し、したがって、駆動段階の間における電流の増大が影響を受ける。
【0028】
前述のように、運動誘導電圧Uindのこれらの差は、とりわけ、第1(又は第2)の駆動段階S(又はS’)の間における電流の増加に影響を及ぼす。電流の増大はまた、駆動段階が開始される駆動段階開始時間tにも依存する。いくつかの実施形態において、駆動段階開始時間tは一度、選定されると、固定されてもよい。したがって、tとTが固定されると、駆動段階Sの間にモータコイルに流れる電流I(t)は、位相ずれに(すなわち、駆動周波数fと実効共振周波数fとの差に)、そして運動誘導電圧Uindのピーク振幅に依存し、運動誘導電圧Uindのピーク振幅は、共振モータに加えられる機械的負荷によって、あるいは駆動周波数を変化させることによって影響を受ける。
【0029】
所定の時間長さTを有する第1の短絡段階Sが、第1の駆動段階Sに続き得る。モータコイルに流れる電流は、次いで運動誘導電圧Uindによって駆動され、概して第1の短絡段階Sの間に減少する。第1の短絡段階Sの最後に、共振モータに流れる電流は、所定の第1の時刻t1にオフに切り換えられ得る。説明した様々な要素により、所定の第1の時刻t1に共振モータのコイルに流れる電流I(t)の高さは、例示的な3つの曲線I1、I2、及びI3によって示すように、正にも負にもなり得る(あるいは厳密にゼロとなり得る)。したがって、所定の第1の時刻tにおける電流値I(t)は、駆動周波数fと実効共振周波数fとの差(すなわち位相ずれ)に、そして運動誘導電圧のピーク振幅に依存する。
【0030】
共振モータに流れる電流がその符号を変化させると、共振モータの総電圧Uもその符号を変化させる。時間tにおけるUのゼロ交差(図2Bで波形Uが時間軸を交差するところ)では、電流はゼロであり、共振モータのオーム抵抗にかかる電圧Uはしたがってゼロであり、つまり、U=0である。次いで、自己誘導電圧Uと運動誘導電圧Uindは、電圧の高さにおいては同一であるが、異なる符号を有しており、すなわち、U=−Uindである。モータにかかる総電圧はしたがってゼロであるが、加算してゼロとなる2つの成分は、必ずしも小さいものである必要はない。運動誘導電圧の絶対高さは、スイッチオフにおける共振モータ内の残留エネルギーに関連する。通常、所定の第1の時刻tにおける電流はゼロではなく(ただし通常は小さい)、オーム抵抗にかかる電圧もまた、電流に比例するので小さいものとなる。運動誘導電圧Uindの絶対高さによって、スイッチオフ時におけるモータ内の残留エネルギーが決まる。
【0031】
モータコイルに流れる電流が、第1の短絡段階の最後にオフに切り換えられると、共振モータは第1の電圧信号Pで応答して、Hブリッジ回路のスイッチの保護ダイオードを越えて残留電流が往復することが可能となる(いわゆる逆起電力、BEMF)。この電圧信号Pの高さは、保護要素、例えば保護ダイオードがスイッチの各々に対して平行に配列されることによって制限され得る。更に、スイッチング速度によって電流dI(t)/dtの変化が決定するので、第1の電圧信号Pの高さは、関連するスイッチ(例えば、S3とS4が閉鎖され、S1とS2が開放された短絡段階の後の、図1に示すS4)が開放されるスイッチング速度に依存する。
【0032】
この第1の電圧信号Pの符号は、共振モータ内の残留エネルギーが正であるかあるいは負であるかに依存する。図2Bにおいて、太い線I1は、所定の第1の時刻t1における残留電流が正であり、共振モータU(t)の電圧が、スイッチオフ段階の前に負である例を示している。この例において、第1の電圧信号Pの符号は正である。細い線I2は、共振モータに流れる残留電流が所定の第1の時刻tにおいて負であり、線U2で示される共振モータにかかる電圧U(t)がスイッチオフ段階の前に正である例を示している。この例において、第1の電圧信号Pの符号は負である。
【0033】
上記を鑑みると、いくつかの実施形態において、システムは、加えられる負荷が、第1の所定の負荷値を上回る(又は下回る)値から、その値を下回る(又は上回る)値へと変化する条件下で、第1の電圧信号Pがその符号を変化させるように、予め較正され得る。このようにして、共振モータが、第1の所定の負荷値D1(図3に示す)未満の加負荷から、第1の所定の負荷値D1を超える加負荷への遷移(例えば、電動歯ブラシのブラシヘッドが、非係合状態から、ユーザーの歯の表面にブラシヘッドが当て付けられる係合状態へ進むこと)を経たか否かが判断され得る。駆動段階Sの時間長さTは、一定量のエネルギーを共振モータに周期的に入力するために、固定されることが必要となり得るので、短絡段階Sの時間長さTは、所与の加負荷の元で第1の所定の時刻に電圧信号の符号の変化が生じるように変更され得る。したがって、これにより、共振モータによって駆動される機能的要素に一定の負荷がいつ加えられるかを測定することが可能となる。
【0034】
同様に、駆動周波数fは、連続する測定の間で変化してもよく、また、所定の第1の時刻tは、駆動周波数fが共振周波数fと一致するときに、あるいは、駆動周波数fが標的周波数fと一致し、この標的周波数が、共振周波数に対して所定の距離を有する、つまり、f=f+Δfであるときに、第1の電圧信号Pの符号反転が生じるように選定され得る。いくつかの実施形態において、制御ユニットは、共振モータを開始駆動周波数で駆動するように構成されてよく、またその場合、電圧信号の符号の反転により、現在の駆動周波数が共振周波数に対して所定の距離を有することが示唆されるまで、連続的に、準連続的に、あるいは段階的に、駆動周波数を引き続き変化させてもよい。したがって、制御ユニットは、最適な駆動周波数を自動的に決定するように構成され得る。そのような設計により、同じ種類の他の共振モータと比較して、共振モータの共振周波数の差を生じるモータ部品の許容差、及び/又は、時間の経過と共に共振モータの共振周波数の差を生じるモータ部品の経時変化が、自動的に対処され得る。いくつかの実施形態において、制御ユニットは、許容差及び/又は経時変化が原因で生じ得る共振周波数を上回る(又は下回る)べきである開始駆動周波数を用いることになり、またその場合、駆動周波数は、所定の標的周波数が達せられるまで、継続的に低下(又は増加)されることになる。
【0035】
電圧信号Pの符号反転のみが判断されるいくつかの実施形態において、測定ユニットが電圧信号Pの符号のみを判定すれば十分となり得る。これは、例えば、特定の閾値を超える電圧信号が、明確なHIGH信号として検出され、この閾値を下回る電圧信号がLOW信号として検出されるマイクロコントローラの標準的なデジタル入力に、第1の電圧信号Pを加えることによって実現され得る。正の電圧信号が非常に小さくなり、そのため、明確なHIGH信号として確実に検出されない可能性のある例において(例えば、残留電流が低く、運動誘導電圧も所定の第1の時刻において低い場合)、各スイッチのスイッチング速度は、明確なHIGH信号として検出可能となるように十分に高い(少なくとも短期間にわたって)電圧信号を発生させるように増加されてもよい。第1の電圧信号の測定はその場合、2進数の1桁の出力を評価ユニットに送出するだけでよい。
【0036】
いくつかの実施形態において、第1の電圧信号Pは、第1の電圧信号の高さ並びに電圧信号の幅を検出し得る高速アナログ回路として実現された測定ユニットに送出されてもよい。いくつかの実施形態において、電圧信号の幅と高さを検出するのに十分に良好な時間及び空間分解能を有するデジタル回路が使用されてもよい。評価ユニットはその場合、所定のテーブルを有する記憶ユニットを有してもよく、実際の加負荷の値、又は実際の駆動周波数と共振周波数との差が、そのテーブル、及び判断された高さ及び/又は幅の値から算出され得るように、このテーブルにおいて負荷の値又は周波数の値を電圧信号の高さの値及び/又は幅の値に割り当てることができる。
【0037】
第1の電圧信号における符号の変化が検出されると、制御ユニットは、駆動パラメータが変化するような方式で共振モータを制御してもよい。図2A及び図3を参照すると、第1の駆動段階Sは、例えば、回転モータ電機子がより高い所望のピーク振幅Aで運動するように時間長さTを増加させることによって延長されてもよい。時間長さTを増加させる代わりに、加えられる供給電圧を増加することによって(例えば、供給電圧源から供給される電圧を上昇させるためにステップアップコンバータを個々に使用することによって)、ピーク振幅の増大が達成されてもよい。いくつかの実施形態において、振幅を増大させるために、供給電圧と時間長さTの両方が増加されてもよい。
【0038】
駆動段階の時間長さTと短絡段階の時間長さT(合わせて総駆動時間長さTds)は、達成するピーク振幅に従って選定され得る。小さなピーク振幅に対しては、総駆動時間長さTdsは、半サイクルの時間長さの約1%となるように選定されてよく、一方で高いピーク振幅に対しては、総駆動時間長さTdsは、最大で半サイクルの時間長さの99%となるように選定されてよい。駆動周波数fは一般に、感知可能なすべての値を有し得るが、駆動周波数fは、いくつかの実施形態において約1Hz〜約10,000Hzの範囲内となり得る。電気装置が電動歯ブラシなどの口腔衛生装置として実現される実施形態において、駆動周波数fは約30Hz〜約500Hzの範囲内となり得る。電気装置が電動歯ブラシであるいくつかの実施形態において、駆動周波数fdは約120Hz超であってもよい。駆動周波数は、約120Hz超、約130Hz超、約140Hz超、約150Hz超、約160Hz超、約170Hz超、約180Hz超、約190Hz超、約200Hz超、若しくは、約200Hz未満、約190Hz未満、約180Hz未満、約170Hz未満、約160Hz未満、約150Hz未満、約140Hz未満、約130Hz未満、及び/又は任意の数値、あるいはこれらの値を含むか若しくは含まない範囲内にあり得る。
【0039】
図4を参照すると、留意されたいこととして、説明したような第1の電圧信号を発生させるために、短絡段階が後に続く駆動段階を最初に有することは求められない。いくつかの実施形態において、モータコイルに流れる残留電流が存在しない間に(すなわち、直近の駆動段階を伴わずに)第1の短絡段階が開始される。例えば、保護ダイオードを越えてすべての残留電流が往復することを可能にする比較的長いスイッチオフ段階の後に、第1の短絡段階が続いてもよい(すなわち、モータコイルに流れる残留電流を伴うことなく短絡段階が開始する)。図4の線1001は、スイッチオフ段階が時刻tに開始した後に残留電流がゼロとなる例を示している。モータコイルに流れる電流の増大は、第1の短絡段階の間に運動誘導電圧によって推進され、したがって運動誘導電圧の符号に依存する。電流はしたがって、基本的には、変動する位相ずれによって運動誘導電圧の符号が変化するときにその符号を変化させる(したがって、位相ずれの大きな変化が生じない実施形態では、いかなる符号の変化も測定できないことがある)。このようにして発生した比較的低い電流は、電流をオフに切り換えることによって第1の電圧パルスを発生させるために用いられ得る。換言すれば、これは本質的には、所定の第1の時刻の前に運動誘導電圧の符号を調べるものにすぎない。
【0040】
図3は、所定の第1の負荷値D1が操作の間に達成されたときに、電気装置の被駆動機能要素のあるピーク振幅Aで動作することになる電気装置に対する、ピーク振幅曲線A1(細い線)及びA2(太い線)と、対応する雑音レベル曲線N1(細い破線)及びN2(太い破線)を示す概略図である。所定の第1の負荷値D1は、機能要素に加えられる圧力に関連しており、この圧力は、駆動機能に対する運動誘導電圧の位相ずれ(すなわち、実効共振周波数が変化する)と運動誘導電圧のピーク振幅に影響を及ぼす。一般性を失うことなく、仮定されることとして、機能要素に加えられる負荷と、位相ずれ(すなわち実効共振周波数)及び運動誘導電圧のピーク振幅の変化は、所与の共振モータユニットに対して明確な機能的関係を有する。
【0041】
細い線A1は、議論した制御方法を適用することなく機械的負荷が共振モータに加えられたときの、共振モータによって駆動される機能要素の揺動運動のピーク振幅の挙動を示している。対照的に、太い線A2は、提案する制御方法が用いられているときの、機能要素のピーク振幅の挙動の例示的実施形態を示している。太い線A2で示すように、共振モータユニットの制御ユニットは、所定の駆動周波数fdで共振モータを駆動するように構成されてもよく、そのため、電気装置がD1未満の負荷を受けてオン及び/又はオフに切り換えられるとき、機能要素の低いピーク振幅A’が達成される。図3に示すように、機能要素の開始ピーク振幅Aは、開示する制御方法が用いられたときの開始ピーク振幅A’よりも大きなものとなっている。
【0042】
一般性を失うことなく、曲線A1及びA2はここでは、負荷Dの増加に伴うピーク振幅の減少を示している。本明細書で提案する共振モータ(又は共振モータを制御するための制御方法)を用いると、共振モータは、第1の所定の負荷値D1が達せられたとき、所望のピーク振幅Aにて駆動されることができ、また、電気装置が負荷なしでかつ/又はD1未満の負荷で動作されるとき、小さな振幅A’にて駆動されることができる。
【0043】
開始振幅を小さくすることで、電気装置の動作状態の知覚信号をユーザーに与えることができる。小さな振幅A’はまた、電気装置の機能要素の上に付けられ得る水又は任意の物質(例えば練り歯磨き)が飛び散ることを防止することもできる。加えて、細い破線N1と比較して、太い破線N2で示すように比較的低い雑音レベルが達成され得る。N1は、本明細書で提案する共振モータユニット及び/又は制御方法をそれぞれ用いない電気装置の雑音レベルを示している。
【0044】
以下で更に詳細に説明するように、共振モータユニットはまた、第2の電圧信号を測定及び評価するように構成されてもよく、その第2の電圧信号は、加負荷が、第2の所定の負荷値D2を上回る(又は下回る)値から、第2の所定の負荷値D2を下回る(又は上回る)値へと変化したか否かを示し得るものである。これにより、この所定の第2の負荷値D2に対して共振モータを制御することが可能となり得る。制御ユニットは特に、太い線A2で概略的に示すように第2の所定の負荷値D2が達せられるかあるいは超えられたとき、被駆動機能要素のピーク振幅が低くても、更にはゼロであっても、そのピーク振幅にまで低下するように構成され得る。例えば、共振モータが、電動歯ブラシのブラシヘッドである機能要素を駆動するとき、振幅及び/又は駆動周波数を減少させることによって、歯及び歯茎が過度に高い圧力でブラッシングされていることが、ユーザーに知らされ得る。それに加えてあるいはそれに代わって、第2の制御ユニットは、特定の加負荷をユーザーに示すように構成されてもよい。例えば、図示の例において、加負荷が使用目的に対して効果的でないことを示すために、加負荷が所定の第1の負荷値D1未満であるとき、黄色の光源が照明されてもよい。加負荷が好ましい範囲内にあることを示すために、加負荷が所定の第1の負荷値D1と所定の第2の負荷値D2との間にあるとき、緑色の光源が照明されてもよい。加負荷が所定の第2の負荷値D2に達するかあるいはそれを超えた場合、過度に高い負荷が加えられていることをユーザーに示すために、赤色の光源が照明されてもよい。任意の種類の指示が、例えば視覚的に知覚可能な指示の代わりに利用されてよく、聴覚指示が用いられてもよく、あるいは触覚的に知覚可能な指示が用いられてもよい。
【0045】
加えて、ユーザーに供給される指示の組合せが企図される。例えば、制御ユニットは、振幅及び/又は周波数を減少させてもよく、付加的な信号がユーザーに供給されてもよい。例えば、付加的な信号は、視覚的、聴覚的、触覚的、又はそれらの任意の組合せのものを含んでよい。
【0046】
ある実施形態において、少なくとも2つ以上の連続する短絡段階がそれぞれ、図4に概略的に示すようにスイッチオフ段階で終結され、図4において、モータコイルに流れる電流I(t)が、連続する2つの半サイクルに関して示されており、また、3つの所定の時刻t、t、及びtが、3つの異なる所定の負荷値を識別できるように選択されている。第1の駆動段階Sの後、共振モータは、時間長さTs1を有する第1の短絡段階Ss1の間に短絡され、電流は次いで、上述したように所定の第1の時刻tにてオフに切り換えられるが、ここでそのスイッチオフ段階は、比較的短い第1のスイッチオフ時間長さTO1にわたってのみ続く。モータコイルに流れる残留電流がスイッチオフ時刻に存在する場合、第1の電圧信号が、上述したように共振モータによって供給される。第1のスイッチオフ段階の時間長さTO1は、約5マイクロ秒〜約100マイクロ秒の範囲、所望によって約20マイクロ秒〜約50マイクロ秒の範囲内にあり得る。
【0047】
第1のスイッチオフ段階の後、制御ユニットは、時間長さTs2を有する第2の短絡段階Ss2の間に再び共振モータを短絡させる。時間長さTs2は、残留電流が非常に小さいときにのみ、モータコイルに流れる残留電流のみが保護ダイオードを越えて完全に往復するように、十分に小さく選定される。次いで電流は、所定の第2の時刻tにて再びオフに切り換えられる。モータコイルに流れる残留電流がスイッチオフ時刻に存在する場合、第2の電圧信号が、上述したように共振モータによって供給される。第2のスイッチオフ段階は、図4に示すように、同様に約5マイクロ秒〜約100マイクロ秒の範囲、所望により約20マイクロ秒〜約50マイクロ秒の範囲内にあり得る時間長さTO2を有し得る。
【0048】
それに代わって、第2のスイッチオフ段階は、更なる駆動段階の開始まで継続してもよい。図示の実施形態において、第3の短絡段階Ss3が、第2のスイッチオフ段階の後に時間長さTs3にわたって継続し、所定の第2の時刻t6にてスイッチオフ段階で終了している。モータコイルに流れる残留電流がスイッチオフ時刻に存在する場合、第3の電圧信号が、上述したように共振モータによって供給される。別の実施形態において、4つ又はそれ以上のスイッチオフ段階が、各短絡段階と交互に並ぶ。
【0049】
線1000は、ある例示的な実施形態に関する電流I(t)を概略的に示しており、この実施形態においては、所定の第1の時刻tに、また所定の第2の時刻t5に電流が存在し、その電流は、所定の第3の時刻tにてゼロとなり、すなわち、所定の第3の時刻tにて検出され得る第3の電圧信号の符号の変化は、所定の第3の負荷値に達した負荷が共振モータに加えられたことを示す。
【0050】
線1001(第1の半サイクルについてのみ示す)は、ある例示的な例に対する電流を概略的に示しており、その例において、所定の第2の時刻tにて測定される第3の電圧信号の符号の変化が検出され、所定の第2の負荷値が達せられたことが示され得る。線1001で示す電流は、第2のスイッチオフ段階の後に除かれるので、第3の短絡段階Ss3がここでは、上で議論したように運動誘導電圧によって推進される電流の増大につながり、それに応じて第3の電圧信号を生じ得る。
【0051】
図5に示すような別の実施形態において、時間長さTd1を有する比較的短い第1の駆動段階Sd1に、時間長さTs1を有する短い第1の短絡段階Ss1が続いており、この第1の短絡段階Ss1は、所定の第1の時刻tにて、時間長さTO3を有する比較的短いスイッチオフ段階SO1で終了している。スイッチオフの後に生じる、結果として得られる第1の電圧信号は次いで、測定ユニットに供給される。いくつかの実施形態においてより長い時間長さTd2を有し得る第2の駆動段階Sd2が、スイッチオフ段階SO1の後に開始してもよく、また、発生した第2の電圧信号が測定され得る所定の第2の時刻tに、スイッチオフ段階で終了してもよい。
【0052】
短いスイッチオフ段階SO1は、約5マイクロ秒〜約100マイクロ秒の範囲、所望により約20マイクロ秒〜約50マイクロ秒の範囲内にある時間長さTO3を有し得る。第1の駆動段階Sd1の時間長さTd1と、第1の短絡段階Ss1の時間長さTs1は、ある時間長さの値に設定されるが、その時間長さは、所定の条件下で所定の第1の時刻tに電流をゼロに減少させるが、同時に、回転モータ電機子の高い振幅を達成できる時間長さT2を有し得る第2の駆動段階Sd2を可能にするように非常に短いものである。個々の時間長さは、経験的に決定されてもよい。
【0053】
一般に、共振モータとその挙動を数値的にシミュレートし、そのようなコンピュータシミュレーションに基づいて所定の時刻及び時間長さなどの様々なパラメータを決定することも可能である。
【0054】
図5を参照すると、線1010は、運動誘導電圧により、電流I(t)が比較的大きくなり、所定の第1の時刻tにおける残留電流が正になる例を示している。結果として得られる第1の電圧信号は負である。線1011は、電流I(t)が線1010で示される例よりも低く、所定の第1の時刻tにおける残留電流が負となるように、運動誘導電圧が変化した例を示している。結果として得られる第1の電圧信号は正である。
【0055】
例えば、所定の第2の(又は更なる、すなわち第3、第4などの)負荷値を上回る(又は下回る)値から、この値を下回る(又は上回る)値へと加負荷が変化したか否かを示す第2の(又はより一般的には更なる)電圧信号を測定するために、いくつかの可能性が存在する。ある実施形態において、第2の所定の負荷値は、図3に示すようにD2となるように選定されてもよい。ある実施形態において、所定の第2の時刻t’に(図2A及び2Bに示すように)測定され得る第2の電圧信号Pが、共振モータに加えら得る負荷の、所定の第2の負荷値を上回る(又は下回る)値からこの値を下回る(又は上回る)値への変化を、その符号の変化によって示すように、異なる第2の駆動段階S’及び/又は異なる第2の短絡段階S’が第2の半サイクル内で施用されてもよい。
【0056】
ある実施形態において、各短絡段階がそれぞれに続く2つの駆動段階が、少なくとも第1の半サイクルの間に(所望により両方の半サイクルにて)施用され、その例が図5に関連して図示及び議論されており、したがって、加負荷が2つの所定の負荷値を下回るか、上回るか、あるいはそれらの間にあるかを判断することが可能となる(所望により、更に異なる所定の負荷値が調べられ得る)。
【0057】
ある実施形態において、少なくとも、駆動段階と短絡段階の一方の長さが、連続する駆動サイクルの間で周期的に変更される。例えば、第1の駆動サイクルc1において、所定の第1の負荷値が測定によって試験され、続く第2の駆動サイクルc2において、所定の第2の負荷値が試験され、続く駆動サイクルにおいて、所定の第1の負荷値が再び試験される。これは、c1−c2−c1−c2−c1−c2−...の配列によって示され得る。c1−c2−c3−c1−c2−c3−c1−c2−c3−...又はc1−c2−c1−c3−c1−c2−c1−c3...又はc1−c1−c2−c2−c1−c1−c2−c2−...など、他の配列も企図され得る。
【0058】
メモリ要素の動作を含んだ実施形態が企図される。例えば、ユーザーが通常、第2又は第3の所定の負荷値を超える場合、上に示す測定シーケンスは修正されてもよい。具体的には、第3の所定の値を超える場合、測定の配列は、c1−c3、c2−c3、c1−c3、c2−c3、...となり得る。このシーケンスは、ユーザーが自身の衛生習慣を変更し、適切に加えられた力を利用し始めるまで生じ得る。そのようなとき、測定の配列は、サイクルc3の間により低頻度で測定する先述の配列に修正されてもよい。
【0059】
ある実施形態において、第1の駆動段階の時間長さは、所定の第1の負荷値を上回る(又は下回る)値からこの値を下回る(又は上回る)値へと加負荷が変化したことが第1の電圧信号の評価によって示された後に、変更されてもよい。所定の第1の時刻も変更されてよい。ある実施形態において、加負荷が、所定の第1の負荷値を再び上回る(又は下回る)ように変化したのか、あるいは、所定の第2の負荷値を上回る(又は下回る)値からこの値を下回る(又は上回る)値へと変化したのかを判定できるようにするため、第1の駆動段階の時間長さが上述のように変化した後に所定の第2の時刻が加えられる。
【0060】
複数の所定の負荷値が達せられるか否かを試験するための様々なすべての可能性が、可能な範囲で互いに組み合わされ得る。
【0061】
共振モータが駆動されるピーク振幅は、第1の電圧信号がその符号を変化させるとき、低振幅から高振幅へと変化し得るので、図3に示す負荷値D1は、電気装置が例えば表面を押さえ付けられているときにその電気装置が使用されていることを示す機能要素に加えられる負荷に関連するはずである。所定の第1又は第2の負荷値はそれぞれ、約0.1ニュートン(N)〜約5Nの範囲内となるように設定されてよい。所定の第1の負荷値は特に第1の電圧信号に対して約0.5N〜約1.5N、所定の第2の負荷値は第2の電圧信号に対して約1.5N〜約3.5Nの範囲内となるように選定されてよい。電気装置は、加負荷が所定の第1の負荷値のレベルを下回ること(例えば、黄色光要素によって)、加負荷が所定の第1の負荷値と第2の負荷値との間にあること(例えば、緑色光要素で)、又は、加負荷が所定の第2の負荷値のレベルを上回ること(例えば赤色光要素で)をユーザーに示すために、インジケータを更に装備していてもよい。
【0062】
上述の例示的な実施形態において、所定の第1の(又は第2の、又は第3などの)負荷値を上回る(又は下回る)値からこの値を下回る(又は上回る)値へと加負荷が変化したことを評価ユニットが検知した後に変化した駆動パラメータは、第1の駆動段階の時間長さであった。第1の駆動段階の時間長さを変更する代わりに、別の駆動パラメータ又はいくつかの駆動パラメータが変更されてもよく、例えば、駆動周波数が変更されてもよく、供給電圧の高さが変更されてもよく、半サイクル内での第1の駆動段階の開始時間が変更されてもよく、他も同様である。
【0063】
図6は、本明細書では電動歯ブラシの形態で、口腔衛生装置1として実現された電気装置の図である。口腔衛生装置1は、ハンドル20とアタッチメント10とを備えている。アタッチメント10は機能要素11を備え、機能要素11は、両矢印12で示すように回転軸Rを中心とした被駆動揺動運動をするように装着されている。機能要素11はここではブラシヘッドとして実現され、このブラシヘッドは、ここでは剛毛タフトとして実現されている複数の洗浄要素を備えるが、この機能要素11は、機能ヘッド11が回転軸Rを中心として揺動するように、共振モータによって駆動され得る。動作の間、共振モータは制御ユニットによって制御される。
【0064】
以下で更に詳細に説明するように、電動歯ブラシなどの例示的な口腔衛生装置の状況において、電動歯ブラシがオン状態にあり機能していることをユーザーに示すために、共振モータは、最初は、比較的低い動作振幅で制御され得る。電動歯ブラシのブラシヘッドが、ユーザーの口腔内の表面に押し付けられると、共振モータの機械的加負荷が変化することがあり、また、共振モータは、加負荷値が所定の第1の負荷値に達するかあるいはそれを超えたとき、より高い動作振幅(作用振幅)を有するように制御され得る。低い動作振幅は、作用振幅の約1%〜約75%の範囲内に、所望により約5%〜約30%の範囲内にあるように選定されてよい。
【0065】
様々な例示的な実施形態について議論したが、留意されたいこととして、本説明で開示されたすべての特徴は、分離した特徴としても、あるいは他の特徴の範囲に含まれる特徴としても、可能である限りは、また本開示の趣旨及び範囲と矛盾しない限りは、互いに個々に組合せ可能となることを意図したものである。
【0066】
本明細書で開示した寸法及び値は、列挙した厳密な数値に厳格に限定されるものとして解釈されるべきではない。その代わりに、別段の指定がない限り、そのような各寸法は、列挙した値と、その値を包含する機能的に等価な範囲との双方を意味することを意図したものである。例えば、「40mm」として開示した寸法は、「約40mm」を意味することを意図したものである。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6