【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によると、第1の冷却段と、冷却すべき対象装置と熱結合されるように構成される第2の冷却段とを有する機械式冷凍機と、機械式冷凍機の第1段に熱結合する第1の部分と、冷却部材に熱結合する第2の部分とを有し、使用時に凝縮可能な気体冷却剤を収容するように構成されるヒートパイプとを備え、使用時に、冷却部材の温度が、ヒートパイプの第2の部分の冷却剤を気体にさせ、第1段の温度が、第1の部分内の冷却剤を凝縮させ、それによって冷却部材が、ヒートパイプの第1の部分から第2の部分への凝縮液の移動によって冷却される第1の冷却モードで動作されるようになっている冷却装置が提供される。
【0006】
本発明者らは、機械式冷凍機の高温の段の冷却力を冷却部材に伝達するためのヒートパイプの新規な使用によって前記の問題に対処できることに気付いた。冷却部材は、同じ機械式冷凍機の第2段とすることができる。冷却部材は、冷却装置の別の部分等の他の装置の形態をとることもできる。従って、冷却部材は、対象装置自体又はその一部を含むことができ、その各々は機械式冷凍機の段によって直接冷却することもできる。この場合、冷却部材は、一般的に低い最終温度の対象物である。
【0007】
第1段と冷却部材との間の熱的な意味におけるこの「短絡」は直感に反するが、本発明者らは、この短絡が著しい実用的な利点につながることに気付いた。機械式冷凍機の冷却力は、通常は、その定常状態において許容範囲内にある、すなわち、最も低い温度の段が公称基準温度にあり、冷却される対象装置もほぼその温度にある。この場合、機械式冷凍機の冷却力は、対象装置の動作又は外部環境のどちらかによって引き起こされる熱負荷に対処するだけでよい。
【0008】
従って、機械式冷凍機の制約は一時的なものであり、対象装置がまだその公称基準温度になく、機械式冷凍機がまだ定常状態で動作していない場合の冷却期間中に最も明確に出現する。本発明では、この冷却期間に最大の利点及び用途を見出した。特に、本発明者らは、結合することや連結すること等の何らかの物理的な動きを必要とすることなく、冷却力を第1段(第2段のものよりもかなり高い)から第2段に、従って対象装置に供給するために、及び/又は冷却部材として機能を果たす同じ装置又は他の装置に直接供給するためにヒートパイプを使用できることに気付いた。これにより、装置は、冷却部材を効率的かつ効果的に冷却し、一方で振動を最小限に抑え、更なる可動部及び望ましくない追加的な熱負荷を確実に避けることができる。
【0009】
一般的に100ケルビン以上の高温では、機械式冷凍機の第1段は、冷却力に関して第2段よりも著しく強力である。しかしながら、実験ペイロードのほとんどは、第2段にしか熱結合されないことから、公知のシステムでは第1段の冷却力は大部分が浪費され、第2段(及び対象装置)が、第1段よりも非常にゆっくりと冷却されることにつながる。
【0010】
従って、本発明は、第1段の冷却力が第2段(又は他の冷却部材)の冷却を助けることを可能にする。一般的にヒートパイプは、本明細書に解説するように重力駆動式、又は任意の他の形式である。従って、ヒートパイプは、使用時に装置内で冷却剤液へと凝縮させることができる気体冷却剤を収容する。液体凝縮物の生成は、第1段の冷却力を機械式冷凍機の第2段へ伝達するための手段をもたらす。これは、ほとんどの場合重力駆動プロセスとすること、又は流体流を駆動する蒸発冷却剤の膨張等の別のプロセスを用いることができる。
【0011】
装置は、本発明が特別の利点を見出す第1の冷却モードで動作するようになっているが、好ましくは更に装置は、使用時に、機械式冷凍機内の第1段の温度が冷却剤の凝結を引き起こし、第2段の温度を第1段の温度よりも低くする第2の冷却モードで動作するようになっている。従って、例えば大気温度からの冷却時に、装置は第1の冷却モードに入り、その後、第2の冷却モードに入ることになる。従って、機械式冷凍機のそれぞれの段によって取得可能な温度において気体状態、液体状態、及び固体状態をとることができる冷却剤を用いるのが好ましい。
【0012】
冷却剤の種類、及び冷却剤がヒートパイプに供給される圧力の選択は、用途に特有のものであることを理解されたい。機械式冷凍機を使用することで遭遇する1つの難題は、定常状態にない場合に機械式冷凍機の様々な段が到達する実際の温度を制御するのが困難であることである。ヒートパイプは、第1の部分が気体冷却剤の凝縮を引き起こす温度まで冷却することができるが第2の部分の温度が蒸発を引き起こす場合にのみ有効に機能することになるので、前記の制御困難性は問題を引き起こす。機械式冷凍機を動作させる際に、第1段の温度は、冷却剤が液体に留まることができる温度以下に短時間に降下する場合があるので、冷却剤は凝固する可能性があり、それによってその後ヒートパイプの動作が阻止される。この期間を延長して、装置を必要なだけ長く第1の冷却モードの範囲内に維持するために、装置は、第1の冷却モードにある時に、気体冷却剤が凝縮することができるが、凝結することができないことを確実にするように、ヒートパイプの第1の部分内の環境を制御するようになっている制御システムを更に備える。
【0013】
従って、ヒートパイプ内の環境を、ガスの圧力及び/又は温度に関して制御することができる。温度は容易に制御できる変数であり、一般的に制御システムは、ヒートパイプの第1の部分と熱伝達状態にあるヒータを備える。このヒータの作動は、ヒートパイプの第1の部分の局所温度が、冷却剤ガスの凝縮を可能にする範囲内に維持されることを確実にする。制御システムは、第1のモードにおけるシステムの動作を確実にするために、熱電対等の適切なセンサを含み得ることを理解されたい。
【0014】
例示的な冷却剤はクリプトンであり、クリプトンは、液体クリプトンが存在することができる比較的狭い温度範囲を有する(このことは、大気圧において約120ケルビンの沸点及び116ケルビンの融点に起因する)。制御システム(ヒータを含む)の使用の別形態として、又はそれに加えて、液相が存在することができる、相互にオーバーラップする温度範囲を有する冷却剤の混合物をヒートパイプ内に含むことができる。ヒートパイプ内に1つ又はそれ以上の冷却剤種類を含む代わりに、別の形態として、各々が、異なる動作温度範囲を有する異なる冷却剤種類を収容する複数のヒートパイプを用いることができる。
【0015】
更に装置は、ヒートパイプの内部と流体連通する外部容積部を備えることもできる。この容積部は、リザーバ又は貯溜タンクの形態とすることができ、最初に冷却剤をヒートパイプに供給するだけでなく、装置の動作の様々な段階の間にヒートパイプ内の冷却剤の圧力を制御するために使用することができる。従って、この外部容積部は、制御システムが、圧力制御機能の一部として利用することができる。
【0016】
一般的にヒートパイプの内部は、冷却剤を収容するための内部容積部を備え、ヒートパイプは、相互に流体連通する第1の部分と第2の部分とを含むことを理解されたい。この場合、容積部の幾何形状は非常に単純なものとすることができ、実際に単純な円筒形容積部の形態をとることができる。一般的に第1及び第2の部分は、特に略円筒形の容積部の場合に、対応する第1及び第2のヒートパイプ端部領域である。厳密な幾何形状に関わらず、第1の部分と第2の部分とは、一般的に互いから熱的に分離される。
【0017】
前記では、第1段及び第2段を有する機械式冷凍機の例を説明した。しかしながら、幾つかの機械式冷凍機は3段及びそれ以上の段数を含むことも可能であることは公知である。本発明は、3つ又はそれ以上の段を有する機械式冷凍機を使用することができ、原理的に、本発明は、この各段の任意の選択されたペア段の間で冷却をもたらすために使用できることを理解されたい。実際には、本発明の2つの例は、第1段と中間段との間を冷却するために用いることができ(第1の例を用いて)、中間段と第2段との間を冷却するために用いることができる(第2の例を用いて)。これらの例は、例えば、他の装置(放射線シールド等の)を冷却するために中間段が用いられる場合である。第1段と第3段との間に冷却力を与えるために第1のヒートパイプを用い、第2段と第3段との間で第2のヒートパイプを用いることが想定される。
【0018】
本発明は、何らかの特定の形式の対象装置の使用に限定されないが、対象装置の熱質量が高い場合に大きい利点がもたらされる。対象装置は、実験装置を含むこと、又は、例えば、非常に低い温度の実験のための希釈冷凍機の分留器又は混合チャンバとすることができる。ヒートパイプと対象装置との間の熱結合は、物理的クランプ等による堅固なもの、又は振動防止結合等の可撓性結合とすることができる。この振動防止結合の例は、高熱伝導性の銅の編組とすることができ、これらの編組は、冷却作用を最大にすると同時に対象装置と最も低い温度の段との間の振動の伝達を最小に保つために使用される(特に冷却部材が機械式冷凍機の第2段の場合)。
【0019】
機械式冷凍機を用いて冷却される装置では振動が特別な問題であることが知られていつので、ヒートパイプは、振動減衰作用を有するベローズが内部に配置される壁を備える場合に更なる利点がもたらされる。
【0020】
本発明の利点は、装置の冷却中に得られることを思い出されたい。特に影響を受けやすい対象装置の場合には、ヒートパイプを設けることによって、機械式冷凍機の定常状態動作中に、対象装置の動作の有効性が潜在的に低減する可能性がある。この低減は、ヒートパイプが、機械式冷凍機の各段の間で熱が移動するための経路を与えることに起因して発生する可能性がある。従って、ヒートパイプが、ヒートパイプの第1の部分と第2の部分との間の電磁放射線の通過を低減するように動作可能な放射線防止部材を備えることができることが好ましい。放射線防止部材は、やはりヒートパイプが動作することを可能にし、従って部材の一方側から反対側への液体の通過を可能にするように配置される。従って、冷却剤は、部材の縁部の周り、又は部材内の1つ又はそれ以上の小さな開口を通過することができる。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、第1の冷却段と、冷却すべき対象装置と熱結合されるように構成される第2の冷却段とを有する機械式冷凍機と、機械式冷凍機の第1段に熱結合する第1の部分と、冷却部材に熱結合する第2の部分とを有し、使用時に凝縮可能な気体冷却剤を収容するように構成されるヒートパイプとを備える、冷却装置を作動させる方法であって、
i)所定量の冷却剤をヒートパイプの内部に供給する段階と、
ii)冷却部材を、ヒートパイプの第2の部分内の冷却剤が確実に気相になるのに十分な温度とする段階と、
iii)機械式冷凍機を作動させて、機械式冷凍機の第1段が、ヒートパイプの第1の部分の冷却剤を凝縮させる温度となるようにする段階と、
iv)ヒートパイプの第1の部分から第2の部分への凝縮冷却剤の移動を引き起こすことによって、冷却部材を冷却する段階と、
を含む方法が提供される。
【0022】
第2の態様による方法は、好ましくは、本発明の第1の態様による装置に関連して用いられることを理解されたい。同様に、冷却部材は、機械式冷凍機の第2段を備えることが想定される。従って、本方法は、主に、第1のモードで動作する装置と考えることができる装置の冷却期間に関する。その後、第2の態様による本方法は、段階(iv)の後に、機械式冷凍機を作動させて、機械式冷凍機の第1段が、ヒートパイプの第1の部分内の冷却剤を凝結させる温度となるようにする段階と、第2段が、対象装置を冷却するために用いる第1段の動作温度よりも低い動作温度まで冷却されるように、機械式冷凍機を更に作動させる段階とを更に含むことができる。従って、これにより第2の動作モードを与えることができる。更に、第1段及び第2段が実験的に安定した温度に到達してこの温度を維持し、対象装置が目標温度に到達してこの温度を維持している状態を意味する、装置の定常状態動作は、その後、段階(iv)の動作に続き、第3段であると考えることができる。
【0023】
従って、本発明は、機械式冷凍機の或る高温の段(又は上記の高温の段)の冷却力を或る低温の段(又は上記の低温の段)に供給し(又は、さもなければ他の形態で冷却部材を冷却することによって)、それによって冷却時間を短縮し、これまで機械式冷凍機の使用が望ましくなかった用途及び対象装置に機械式冷凍機の使用を可能にすることで、装置の性能を著しく改善するための装置及び方法を提供する。
【0024】
以下に、本発明による装置及び方法の幾つかの実施例を、添付図面を参照して説明する。