(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに平行に配置された少なくとも一対の賦形ロール(3・4)を備え、その賦形ロール(3・4)は対面位置で互いに噛み合う凹凸形状(6)をロール周面にそれぞれ備え、両賦形ロール(3・4)間を通過させることでシート材(12)に所定の立体形状を形成する賦形装置であって、
前記凹凸形状(6)は、凹形状及び/又は凸形状が前記賦形ロール(3・4)の軸方向と周方向とに所定の間隔を空けて複数配列され、
上記一対の賦形ロール(3・4)は、各々の回転軸(24)が、それぞれ軸心違い継手(25)を介して回転駆動手段(10)に連動連結してあり、
上記軸心違い継手(25)がシュミット継手(25a)であり、
上記一対の賦形ロール(3・4)は、各々の両端部をそれぞれ軸受部(7)で支持してあり、上記一対の賦形ロール(3・4)の各両軸受部(7a)は、エアシリンダ(26)によりロール軸心(27)と直交する方向へ進退可能に位置決めしてあることを特徴とする、シート材賦形装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−174234号公報
【0005】
上記の一対の賦形ロールは、上記の凹凸形状が互いに噛み合うように回転を同期させる必要がある。このため、この賦形ロールに連動連結された回転駆動手段は、各賦形ロールへの出力軸が同期回転するように、例えばタイミングプーリとこれに循環させたタイミングベルトとからなる等の、伝動装置を備えることが考えられる。
【0006】
しかしながら、上記の一対の賦形ロールは、上記の凹凸形状やシート材の厚さ等に応じて、ロール間隔や噛み合い深さ、押圧力等を調整するため、ロール軸心と直交する方向へ変位させる必要がある。このため、この賦形ロールの回転軸に上記の伝動装置の出力部が直結されていると、賦形ロールの変位とともに、回転駆動手段の出力軸も変位させる必要があり、それらの位置調整が容易でない。
しかも、上記の一対の賦形ロールは、ロール軸心が互いに平行な姿勢から僅かでも斜めに偏倚すると、賦形ロールの一端側と他端側とでロール間の隙間や凹凸形状の噛み合い深さ、押圧力等が異なることとなり、シート材に形成される立体形状が不均一となる問題がある。このため、上記のロール間隔等は精緻に調整しなければならず、その操作が極めて煩雑であった。
【0007】
また、上記の賦形ロールの周面には、上記のシート材が例えば表面シートである場合、例えば直径数ミリの凹形状や凸形状を1mm程度の間隔をあけて形成するなど、細かな凹凸形状が密集状態に形成してある。しかもこの賦形ロールは、製造されるシート材の種類や厚さ等によっても異なるが、例えば600〜800rpmの速度で回転され、ロール本体の表面速度は300〜400m/分にも達する。
【0008】
このため、上記の一対の賦形ロール間を通過したシート材は、下流側賦形ロールの周面で次工程へ搬送される際、遠心力でロール表面の凹凸形状から浮き上がって、所定の立体形状を維持できなくなる虞があるうえ、下流側の押圧ロールで押圧する際にこの立体形状と賦形ロール表面の凹凸形状とがズレると、立体形状が変形する虞がある。
さらに、シート材に形成された立体形状が上記の下流側賦形ロールに形成された凹凸形状に確りと嵌まり込んでいると、次工程へシート材を送り出す位置で下流側賦形ロールのロール表面からシート材を分離させることが容易でなく、次工程への送り出しに支障をきたす虞や、シート材がこの下流側賦形ロールに巻きついてしまう虞がある。
このため従来の賦形装置では、立体形状の賦形速度を充分に高めることが容易でない問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、賦形ロールの位置調整が容易であり、しかも、シート材に多数の細かな立体形状を高速で且つ精緻に形成できる、シート材賦形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば本発明の実施の形態を示す
図1から
図7に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち本発明1はシート材賦形装置に関し、互いに平行に配置された少なくとも一対の賦形ロール(3・4)を備え、その賦形ロール(3・4)は対面位置で互いに噛み合う凹凸形状(6)をロール周面にそれぞれ備え、両賦形ロール(3・4)間を通過させることでシート材(12)に所定の立体形状を形成する賦形装置であって、
前記凹凸形状(6)は、凹部及び/又は凸部が前記賦形ロール(3・4)の軸方向と周方向とに所定の間隔を空けて複数配列され、上記
一対の賦形ロール(3・4)は、
各々の回転軸(24)が、軸心違い継手(25)を介して回転駆動手段(10)に連動連結してあ
り、上記軸心違い継手(25)がシュミット継手(25a)であり、上記一対の賦形ロール(3・4)は、各々の両端部をそれぞれ軸受部(7)で支持してあり、上記一対の賦形ロール(3・4)の各両軸受部(7a)は、エアシリンダ(26)によりロール軸心(27)と直交する方向へ進退可能に位置決めしてあることを特徴とする。
【0011】
また本発明
の参考例はシート材賦形装置に関し、互いに平行に配置された少なくとも一対の賦形ロール(3・4)を備え、その賦形ロール(3・4)は対面位置で互いに噛み合う凹凸形状(6)をロール周面にそれぞれ備え、両賦形ロール(3・4)間を通過させることでシート材(12)に所定の立体形状を形成する賦形装置であって、上記の賦形ロール(3・4)のうち、シート材(12)を下流側へ搬送する下流側賦形ロール(4)は、ロール本体(4a)内に、ロール軸心(27)方向に長い通気路(28)と、その通気路(28)をロール周面に連通する通気孔(29)とを備え、このロール本体(4a)の少なくとも一方の端部に隣接させて連通部材(30)を配置し、上記の連通部材(30)は、周方向の第1の設定範囲(A)に上記の通気路(28)と連通可能な吸気口(31)を備えるとともに、上記の第1設定範囲(A)とは異なる第2の設定範囲(B)に上記の通気路(28)と連通可能な送気口(32)を備え、上記の吸気口(31)は吸気手段に連通連結してあり、上記の送気口(32)は送気手段に連通連結してあることを特徴とする。
【0012】
上記の本発明1では、賦形ロールの回転軸が軸心違い継手を介して回転駆動手段に連動連結してあるので、回転駆動手段は賦形ロールへの出力軸が所定位置に位置決めされていても、賦形ロールを変位させた場合にその変位が軸心違い継手で吸収され、ロール間隔が容易に調整される。
【0013】
上記の軸心違い継手は、賦形ロールの回転軸心であるロール軸心と、このロールに連動連結するプーリ等の軸心とが、同軸でなくとも円滑に回転を伝える継手であればよく、特定の構造に限定されず、例えば自在継手などを使用することも可能である。しかし、賦形ロールを容易に平行移動できる継手が好ましく、例えば、いわゆるシュミット継手を用いると、継手の軸方向長さが短く済むうえ、ロール姿勢の傾きを防止しながら平行移動が許容されるので、ロール間隔を一端から他端まで均一にできて、より好ましい。
【0014】
即ち、シート材には、厚さや目付けに許容誤差を生じる場合があるので、これらの変動に応じて賦形ロールの位置が僅かに変位すると、上記の押圧力を一定に保持できて好ましいが、上記の軸心違い継手がシュミットロールである場合は、上記の賦形ロールが僅かに変位する場合に平行姿勢が維持されるので、シート材の厚さが変動しても細かな凹凸形状の噛み合いを均等に保持でき、所定の立体形状を均一に形成できて好ましい。
【0015】
上記の賦形ロールは、通常、両端部がそれぞれ軸受部で支持してあるが、少なくとも一方の賦形ロールは、その両軸受部をエアシリンダによりロール軸心と直交する方向へ進退可能に位置決めしてあると、所定の押圧力を保持しながら、賦形ロールの上記の僅かな変位を許容できるので好ましい。
【0016】
上記の本発明
の参考例にあっては、上記の第1設定範囲ではロール周面が通気孔と通気路と吸気口とを順に介して吸気手段に連通連結されることから、このロール周面に沿って搬送されるシート材は、吸気手段の吸引力によりロール周面から浮き上がることが防止される。
また上記の第2設定範囲では、ロール周面が通気孔と通気路と送気口とを順に介して送気手段に連通連結されることから、このロール周面に沿って搬送されるシート材は、送気手段からの送気によりロール周面から離れるように押圧される。
【0017】
上記の下流側賦形ロールは、第1設定範囲でシート材を下流側に搬送し、第2設定範囲でシート材をロール周面から分離できればよく、その第1設定範囲と第2設定範囲は任意の範囲に設定される。ただし、上記の賦形ロールのシート材搬送方向下流側に押圧ロールが備えてあり、上記の両賦形ロールが第1対面部で互いに対面するとともに、下流側賦形ロールと上記の押圧ロールとが第2対面部で対面している場合には、この第1対面部と第2対面部との間に対応させて上記の第1設定範囲が設けられ、上記の第2対面部からシート材進行方向下流側の範囲に対応させて上記の第2設定範囲が設けてあると、この両対面部間ではシート材をロール周面に確りと保持しながら、第2対面部を過ぎると直ちにシート材をロール周面から分離でき、シート材を確実に次工程へ送り出すことができるので好ましい。
【0018】
上記のシート材は、上記の立体形状がロール周面の凹凸形状に嵌まり込んだ状態で加熱されると、上記の立体形状が熱セットされて良好に維持されるうえ、例えば平滑なシート材と容易に接合して複合シートにできるので好ましい。このとき、上記の下流側賦形ロールに上記の通気路が形成されていると、上記の加熱手段から供給される熱がこの通気路を流通する空気により奪われて、ロール周面に対する加熱効率が低下する虞がある。しかし上記の下流側賦形ロールが、上記の通気路よりもロール軸心から離間した位置に上記の加熱手段を備えると、この加熱手段がロール周面に近接した位置に配置されるうえ、加熱手段からロール周面へ供給される熱が通気路内を流通する空気に奪われることを抑制できるので、この加熱手段によりロール周面を効率よく加熱でき、好ましい。
【0019】
なお上記の押圧ロールは、本発明1のシート材賦形装置においても、上記の賦形ロールのシート材搬送方向下流側に備えてあると、この押圧ロールと賦形ロールとの間に平滑なシート材を供給して、賦形ロールにより立体形状を形成したシート材と接合することにより、複合シートを容易に製造できるので好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
(1)本発明1では、賦形ロールを変位させた場合にその変位を軸心違い継手で吸収することができ、回転駆動手段の賦形ロールへの出力軸を所定位置に位置決めすることができる。この結果、賦形ロールの位置調整が容易であり、ロール間の寸法や噛み合い深さ、押圧力などを容易に調整できるので、シート材に形成する多数の細かな立体形状を、容易にムラなく形成することができる。
【0021】
(2)本発明
の参考例では、上記の第1設定範囲において、下流側賦形ロールのロール周面からシート材が浮き上がることを防止できるので、このシート材に形成された立体形状を、ロール周面の凹凸形状内に保持でき、その形状を良好に維持することができる。しかも、上記の第2設定範囲では、送気手段からの送気により上記のシート材をロール周面から離れるように押圧できるので、このシート材に形成された立体形状をロール周面の凹凸形状から確実に外すことができ、シート材をロール表面から容易に分離させることができる。この結果、シート材に多数の細かな立体形状を高速で且つ精緻に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明を具体的に説明する。
図1は本発明の実施形態の賦形装置(2)を用いた、複合シート製造装置(1)の概略構成を示しており、第1供給部(11)から供給された第1シート材(12)と、第2供給部(13)から供給された第2シート材(14)とが、この賦形装置(2)で接合されて複合シート(15)にされる。
【0024】
上記の賦形装置(2)は、上下一対の賦形ロール(3・4)と、その下方に配置された1つの押圧ロール(5)とを備えており、各ロール(3・4・5)は、
図4に示すように、それぞれのロール軸心(27)が互いに平行となる状態に配置されている。
上記の賦形ロール(3・4)は第1対面部(C1)で互いに対面し、下側の賦形ロール(4)と上記の押圧ロール(5)とは第2対面部(C2)で対面している。上記の第1シート材(12)は、この第1対面部(C1)に供給されて、下側、即ち搬送方向下流側の賦形ロール(4)により、ロール周面の略半周に沿って上記の第2対面部(C2)へ搬送される。一方、上記の第2シート材(14)はこの第2対面部(C2)に供給されて、下流側賦形ロール(4)と上記の押圧ロール(5)とで上記の第1シート材(12)とともに挟圧され、これにより所定部位が接合されて複合シート(15)にされる。そしてこの複合シート(15)は下流側賦形ロール(4)や押圧ロール(5)から分離され、この賦形装置(2)から次工程へ送り出される。
【0025】
図2に示すように、上記の賦形ロール(3・4)には、上記の第1対面部(C1)で互いに噛み合う凹凸形状(6)がそれぞれのロール周面に形成してある。即ちこの第1対面部(C1)では、上側の賦形ロール(3)のロール周面に形成された凸形状(6a)が下側の下流側賦形ロール(4)のロール周面に形成された凹形状(6d)に嵌合し、下流側賦形ロール(4)のロール周面に形成された凸形状(6c)が上側の賦形ロール(3)のロール周面に形成された凹形状(6b)に嵌合する。
【0026】
上記の第1シート材(12)はこの両賦形ロール(3・4)間を通過することで、
図3に示すように、上記の凹凸形状(6)に対応した、凹部(16)と凸部(17)とからなる立体形状(18)が賦形される。一方、上記の第2シート材(14)は平滑な面状であり、上記の第2対面部(C2)で上記の第1シート材(12)の凹部(16)の底の下面に接合される。
【0027】
図4に示すように、上記の各ロール(3・4・5)は、両端の回転軸(24)がそれぞれ軸受部(7)で躯体(8)に支持してある。
上下方向中央の、下流側賦形ロール(4)を支持する軸受部(7b)は、所定位置に調整されて固定してある。これに対し上側の賦形ロール(3)と押圧ロール(5)の各軸受部(7a・7c)は、躯体(8)の上部と下部に配置したエアシリンダ(26)により、それぞれ上下方向へ、即ちロール軸心(27)と直交する方向へ進退可能に位置決めして支持してある。
【0028】
この実施形態の賦形装置(2)は、回転駆動手段(10)として、上記の躯体(8)の側方に配置した上記の伝動装置(9)と、図外のモータ等の駆動源とを有する。
図4と
図5に示すように、上記の伝動装置(9)は各ロール(3・4・5)への出力軸(19)を備えている。この出力軸(19)のうち上記の押圧ロール(5)への出力軸(19c)には入力プーリ(20)が付設してあり、この入力プーリ(20)に図外の駆動源がタイミングベルト(21)を介して連動連結してある。一方、上記の各出力軸(19)の一端部にはタイミングプーリ(22)が付設してある。そしてこれらのタイミングプーリ(22)に第2のタイミングベルト(23)が循環させてあり、これにより各出力軸(19)は同期回転するように、互いに連動連結されている。
【0029】
図5に示すように、上記のタイミングプーリ(22)は伝動装置(9)の所定位置に配置されており、上下方向へ直列状には配置されていない。このため、上下方向に配置された上記の各ロール(3・4・5)の回転軸(24)は、伝動装置(9)の出力軸(19)とは軸心がずれている。そこで、各ロール(3・4・5)の回転軸(24)は、それぞれ軸心違い継手(25)を介して伝動装置(9)の各出力軸(19)に連動連結してある。より具体的には、
図4に示すように、上記の賦形ロール(3・4)の回転軸(24a・24b)は、それぞれシュミット継手(25a)を介して出力軸(19a・19b)に連動連結してあり、押圧ロール(5)の回転軸(24c)は、自在継手(25b)を介して出力軸(19c)に連動連結してある。このため、上記の伝動装置(9)の出力軸(19)を所定位置に固定配置した状態で、各賦形ロール(3・4)や押圧ロール(5)の位置を任意の位置に調整して配置することができる。
【0030】
上記のシュミット継手(25a)は、3枚のディスクと各ディスクを連結するリンクとから構成されており、リンクの姿勢が変化することで外側のディスクは相対位置を変更でき、しかも外側のディスクに固定された出力軸(19)と回転軸(24)は、互いに平行な姿勢を保持しながら、出力軸(19)の回転が回転軸(24)へ、円滑に伝えられる。
上記の上側賦形ロール(3)は、第1シート材(12)の厚さが変動すると上記のエアシリンダ(26)の押圧力に抗して上下方向へ僅かに変位するが、この上側賦形ロール(3)の回転軸(24a)と伝動装置(9)の出力軸(19a)とが、上記のシュミット継手(25a)を介して連動連結してあるので、上側賦形ロール(3)は、姿勢を傾けることなく水平姿勢に保持されて平行に変位する。この結果、両賦形ロール(3・4)間は、一端から他端まで均等な間隙に保持され、上記の凹凸形状(6)の噛み合いにより均一な立体形状(18)が形成される。
【0031】
図4に示すように、上記の下流側賦形ロール(4)は、ロール軸心(27)と平行に、この軸心(27)方向に長い複数の通気路(28)をロール本体(4a)内に備える。この通気路(28)は、
図6に示すようにロール周面に沿って配置してあり、それぞれ通気孔(29)を介して、ロール周面に形成された凹凸形状(6)の各凹形状に連通させてある。
【0032】
上記のロール本体(4a)の両端部には、連通部材(30)が隣接させて配設してあり、この連通部材(30)は回転不能に、前記の躯体(8)に固定してある。
図7に示すように、この連通部材(30)は、周方向のうち、前記の第1対面部(C1)と第2対面部(C2)との間に対応する第1設定範囲(A)に、上記の通気路(28)と連通可能な吸気口(31)を備えており、第2対面部(C2)よりもシート材進行方向下流側の範囲に対応する第2設定範囲(B)に、上記の通気路(28)と連通可能な送気口(32)を備えている。上記の吸気口(31)は、吸気路(33)を介して図外の吸気手段に連通連結してあり、上記の送気口(32)は、送気路(34)を介して図外の送気手段に連通連結してある。
【0033】
上記の第1対面部(C1)で賦形ロール(3・4)間を通過した第1シート材(12)は、下流側賦形ロール(4)の周面に沿って第2対面部(C2)へ搬送される。このとき、このロール周面は、通気孔(29)と通気路(28)と、上記の第1設定範囲(A)に形成された吸気口(31)と、上記の吸気路(33)とを順に介して、吸気手段に連通連結されている。この結果、上記の第1シート材(12)は、上記の吸気手段の吸引力によりロール周面に吸着され、ロール周面から浮き上がることが防止される。
【0034】
上記の第2対面部(C2)に達した上記の第1シート材(12)は、前述のように上記の第2シート材(14)と重ねられた状態で上記の下流側賦形ロール(4)と押圧ロール(5)とで挟圧されて複合シート(15)にされる。上記の第2対面部(C2)の下流側では、上記の下流側賦形ロール(4)の周面は、通気孔(29)と通気路(28)と、上記の第2設定範囲(B)に形成された送気口(32)と、上記の送気路(34)とを順に介して、送気手段に連通連結されている。この結果、上記の第2対面部(C2)を通過した複合シート(15)は、送気手段からの送気によりロール周面から離れるように押圧され、下流側賦形ロール(4)から円滑に分離して次工程へ送り出される。
【0035】
図4に示すように、上記の各ロール(3・4・5)は、いずれも加熱手段(35)を備えている。即ち、上記の上側賦形ロール(3)と押圧ロール(5)は、それぞれロール中心部に、ロール軸心(27)に沿って加熱手段(35a)が配置してある。これにより、この上側賦形ロール(3)と押圧ロール(5)は、ロール周面が所定温度に均一に加熱される。
【0036】
一方、上記の下流側賦形ロール(4)は、
図4と
図6に示すように、上記の通気路(28)よりもロール軸心(27)から離間した位置に、即ち、ロール周面に対し通気路(28)よりも近接した位置に、複数の加熱手段(35b)が配置してある。
【0037】
上記の下流側賦形ロール(4)は、上記の加熱手段(35b)がロール周面に近接配置されていることから、このロール周面が効率よく加熱される。しかも上記の通気路(28)は、上記の加熱手段(35b)とロール周面との間ではなく、加熱手段(35b)を挟んでロール周面とは反対側に配置されているので、この加熱手段(35b)からロール周面へ供給される熱は、この通気路(28)内を流通する空気に奪われることが抑制され、この点からもロール周面が効率よく加熱される。
【0038】
これにより、賦形ロール(3・4)間に供給され下流側賦形ロール(4)で搬送される第1シート材(12)が、上記の加熱手段(35b)で効率よく加熱されて良好に賦形され、また、下流側賦形ロール(4)と押圧ロール(5)の間に供給される第2シート材(14)が、上記の加熱手段(35a)で加熱されて第1シート材(12)と良好に接合される。なお、この第2シート材(14)は、
図1に示すように上記の第2対面部(C2)へ直接供給してもよいが、上記の押圧ロール(5)のロール周面へ供給し、このロール周面で案内したのち上記の第2対面部(C2)へ案内してもよく、この場合は第2シート材(14)を上記の加熱手段(35a)で予熱しておくことができる。
【0039】
上記の実施形態で説明したシート材賦形装置は、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部材の形状や構造、配置、寸法などをこの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0040】
例えば上記の実施形態では、上記の回転駆動手段が備える伝動装置として、タイミングプーリとこれに循環させたタイミングベルトを用いたので、そのタイミングプーリを付設した出力軸をより自由に配設できて好ましい。しかし本発明の伝動装置は、賦形ロールへの出力軸を変位させる必要がなければよく、例えばギヤを組み合わせたもの等を用いたものであってもよい。
【0041】
また上記の実施形態では、上記一対の賦形ロールにおいて、それぞれのロール周面に凹形状と凸形状とからなる凹凸形状を形成した。しかし本発明では、一方の賦形ロールのロール周面に凸形状のみを形成するとともに、他方の賦形ロールのロール周面に凹形状のみを形成したものであってもよい。
【0042】
また上記の実施形態では、両賦形ロールの回転軸を、それぞれシュミット継手を介して回転駆動手段に連動連結した。しかし本発明では、少なくとも一方の賦形ロールの回転軸が軸心違い継手を介して回転駆動手段に連動連結してあればよく、この軸心違い継手は、自在継手など他の形式のものであってもよい。さらに他方の賦形ロールは、回転駆動手段の出力軸に直結することも可能である。
【0043】
また上記の実施形態では、一方の賦形ロールと押圧ロールの各軸受部をエアシリンダにより、ロール軸心と直交する方向へ進退可能に位置決めした。しかし本発明では、例えばばね力を利用するなど、他の手段により軸受部を支持してもよい。
【0044】
また上記の実施形態では、賦形ロールと押圧ロールを上下方向へ一列に配置した。しかし本発明では、これらのロールを、例えば側面から見てL字状に配置するなど、他の位置に配置してもよく、従って、第1対面部に対する第2対面部の位置は、上記の実施形態のものに限定されない。
【0045】
また上記の実施形態では、一対の賦形ロールと押圧ロールとをそれぞれほぼ同じ直径のロールで形成したので、各ロールの周速が一致するように同期させ易く、好ましい。しかし本発明では、互いに異なる直径のロールを用いて構成することも可能である。例えば、下流側賦形ロールを大径にすることで、この下流側賦形ロールにより搬送されるシート材を充分に加熱して、所定の立体形状を確実に賦形するとともに、第2のシート材と確実に接合できるように構成してもよい。一方、上流側賦形ロールや押圧ロールは小径に形成して設置スペースを縮小し、設備コスト等を低減してもよい。
【0046】
また上記の実施形態では1つの押圧ロールを設ける場合について説明した。しかし本発明では、複数の押圧ロールを、それぞれ上記の下流側賦形ロールと順次対面するように設けてもよく、この場合は、上記の第1シート材と第2シート材とを一層しっかりと接合できて好ましい。
【0047】
上記の賦形ロールや押圧ロールの直径やロール長さなどの寸法、通気路や加熱手段の配置個数、凹凸形状の形状や大きさ、個数、配置間隔等は、上記の実施形態のものに限定されないことは、言うまでもない。