特許第5770319号(P5770319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5770319二次回路基板を有する動力式外科手術用器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770319
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】二次回路基板を有する動力式外科手術用器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20150806BHJP
   A61B 18/04 20060101ALI20150806BHJP
   A61B 18/12 20060101ALI20150806BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   A61B17/12 320
   A61B17/38 310
   A61B17/39 310
   A61B17/39 311
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-7458(P2014-7458)
(22)【出願日】2014年1月20日
(62)【分割の表示】特願2010-28134(P2010-28134)の分割
【原出願日】2010年2月10日
(65)【公開番号】特開2014-140740(P2014-140740A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2014年1月20日
(31)【優先権主張番号】61/152,051
(32)【優先日】2009年2月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/689,386
(32)【優先日】2010年1月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507362281
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エー. ゼムロック
(72)【発明者】
【氏名】スタニスラフ マークジック
(72)【発明者】
【氏名】アダム ジェイ. ロス
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル プリバニク
【審査官】 毛利 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−212637(JP,A)
【文献】 特開2008−206967(JP,A)
【文献】 特開2005−27809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
A61B 18/04
A61B 18/12
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を係合するための動力式外科手術用装置であって、
近位部分および遠位部分を有するハンドルアセンブリと、
前記ハンドルアセンブリの前記遠位部分に作動可能に結合された可動部分であって、前記可動部分は、前記動力式外科手術用装置によって規定された長手方向軸の周りで回転するように構成されている、可動部分と、
組織を係合するように適合された道具アセンブリであって、前記道具アセンブリは、前記可動部分に作動可能に結合されている、道具アセンブリと、
前記ハンドルアセンブリと前記可動部分との間で信号または電力のうちの少なくとも一方を伝達するように構成されている伝達システムであって、前記伝達システムは、前記ハンドルアセンブリに配置された第一の電子基板と、前記可動部分に配置された第二の電子基板とを含む、伝達システムと
を含む、動力式外科手術用装置。
【請求項2】
前記可動部分は、前記第一の電子基板を前記第二の電子基板に電気的に結合する伝導性リングを含む、請求項1に記載の動力式外科手術用装置。
【請求項3】
前記伝導性リングは、カンチレバー接点を有する、請求項2に記載の動力式外科手術用装置。
【請求項4】
前記第一の電子基板は、マザーボードを含み、前記第二の電子基板は、ドーターボードを含む、請求項1に記載の動力式外科手術用装置。
【請求項5】
前記第一の電子基板は、一次制御回路を含み、前記第二の電子基板は、二次制御回路を含む、請求項1に記載の動力式外科手術用装置。
【請求項6】
前記第一の電子基板および前記第二の電子基板のうちの少なくとも一方は、プリント回路基板を含む、請求項1に記載の動力式外科手術用装置。
【請求項7】
前記伝達システムは、前記第一の電子基板と前記第二の電子基板との間で制御信号を伝達するように構成されている、請求項1に記載の動力式外科手術用装置。
【請求項8】
前記伝達システムは、前記第一の電子基板と前記第二の電子基板との間でフィードバック信号を伝達するように構成されている、請求項1に記載の動力式外科手術用装置。
【請求項9】
前記伝達システムは、前記ハンドルアセンブリと前記可動部分との間で電力を無線伝達するように構成されている、請求項1に記載の動力式外科手術用装置。
【請求項10】
前記第二の電子基板は、一次制御回路および二次制御回路を含む、請求項1に記載の動力式外科手術用装置。
【請求項11】
前記ハンドルアセンブリは、第一のモータを有し、前記可動部分は、第二のモータを有する、請求項1に記載の動力式外科手術用装置。
【請求項12】
前記第一の電子基板は、前記第二の電子基板から受信された制御信号に応答して、前記第一のモータを制御する、請求項11に記載の動力式外科手術用装置。
【請求項13】
電力を供給するように構成されている電源をさらに含む、請求項1に記載の動力式外科手術用装置。
【請求項14】
組織を係合するための動力式外科手術用装置であって、
ハンドルアセンブリと、
前記ハンドルアセンブリの遠位部分に作動可能に結合された可動部分であって、前記可動部分は、前記動力式外科手術用装置によって規定された長手方向軸の周りで回転するように構成されている、可動部分と、
前記可動部分に作動可能に結合された道具アセンブリと、
前記ハンドルアセンブリに配置された第一の電子基板と、前記可動部分に配置された第二の電子基板とを含む、伝達システムであって、前記第二の電子基板は、一次制御回路および二次制御回路を含み、前記伝達システムは、前記第一の電子基板と前記第二の電子基板との間で制御信号を伝達するように構成されている、伝達システムと
を含む、動力式外科手術用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2009年2月12日に出願された米国仮出願番号61/152,051号の利益および優先権を主張する。この米国仮出願の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に、外科手術用器具に関し、そしてより特定すると、組織を係合するための動力式外科手術用器具に関する。
【背景技術】
【0003】
外科手術用器具は、当該分野において周知である。特定の外科手術用器具は、圧縮した生存組織に通してステープルの平行な列を適用するために使用される。これらの外科手術用器具は、通常、相互作用(transaction)または切除の前に組織または器官を閉じるため、胸部および腹部の手順において器官を閉塞させるため、ならびに吻合において組織を固定するために使用される。
【0004】
代表的に、このような外科手術用器具は、アンビルアセンブリ、外科手術用ステープルのアレイを支持するためのカートリッジアセンブリ、このアンビルアセンブリとカートリッジアセンブリとを接近させるための接近機構、およびこのカートリッジアセンブリから外科手術用ステープルを排出するための発射機構を備える。いくつかの外科手術用器具において、アンビルアセンブリおよびカートリッジアセンブリは、この外科手術用器具の残りの部分に対して、一緒に関節運動または回転し得る。
【0005】
使用において、外科医は最初に、アンビル部材とカートリッジ部材とを互いの方へと接近させることにより、組織をクランプする。次に、外科医は、器具を発射させて、ステープルを、このアンビル部材とカートリッジ部材との間にクランプされた組織に配置する。必要に応じて、外科医は、同じ器具または別の器具を使用して、ステープルの列に隣接するかまたはステープルの列の間にある、ステープル留めされた組織を切断し得る。あるいは、この外科手術用器具は、アンビルがカートリッジに接近している間、連続的にステープルを排出し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
近位部分および遠位部分を有するハンドルアセンブリ;
該ハンドルアセンブリの該遠位部分に作動可能に接続された可動部分であって、該可動部分は、該ハンドルアセンブリに対して移動可能である、可動部分;
組織を係合するように適合された道具アセンブリであって、該道具アセンブリは、該可動部分に作動可能に結合されている、道具アセンブリ;
電力を供給するように構成された電源;ならびに
伝達システムであって、信号および電力のうちの少なくとも1つを、該ハンドルアセンブリと該可動部分との間で移動させるように構成されている、伝達システム、
を備える、組織を係合するための動力式外科手術用装置。
【0007】
(項目2)
上記伝達システムが、上記ハンドルアセンブリと上記可動部分との間で電力を無線伝達するように構成されている、上記項目に記載の動力式外科手術用装置。
【0008】
(項目3)
上記伝達システムが、上記ハンドルアセンブリ内に配置された第一の電子基板、および上記可動部分内に配置された第二の電子基板を備える、上記項目のうちのいずれかに記載の動力式外科手術用装置。
【0009】
(項目4)
上記可動部分が上記長手方向軸の周りで回転するように適合されている、上記項目のうちのいずれかに記載の動力式電気外科装置。
【0010】
(項目5)
上記第一の電子基板がマザーボードを備え、そして上記第二の電子基板がドーターボードを備える、上記項目のうちのいずれかに記載の動力式外科手術用装置。
【0011】
(項目6)
上記第一の電子基板が一次制御回路を備え、そして上記第二の電子基板が二次制御回路を備える、上記項目のうちのいずれかに記載の動力式外科手術用装置。
【0012】
(項目7)
上記第一の電子基板および上記第二の電子基板のうちの少なくとも一方が、プリント回路基板を備える、上記項目のうちのいずれかに記載の動力式外科手術用装置。
【0013】
(項目8)
上記伝達システムが、上記第一の電子基板と上記第二の電子基板との間で制御信号を伝達するように構成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の動力式外科手術用器具。
【0014】
(項目9)
上記伝達システムが、上記第一の電子基板と上記第二の電子基板との間でフィードバックを伝達するように構成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の動力式外科手術用装置。
【0015】
(項目10)
上記伝達システムが、上記第一の電子基板と上記第二の電子基板との間で感知信号を伝達するように構成されている、上記項目のうちのいずれかに記載の動力式外科手術用装置。
【0016】
(項目11)
上記伝達システムが、上記第一の電子基板と上記第二の電子基板との間で電気エネルギーを無線伝達するための誘電回路を備える、上記項目のうちのいずれかに記載の動力式外科手術用装置。
【0017】
(項目12)
上記電気エネルギーがバッテリを充電する、上記項目のうちのいずれかに記載の動力式外科手術用装置。
【0018】
組織を係合するように構成された動力式外科手術用装置は、近位部分および遠位部分を有するハンドルアセンブリ、このハンドルアセンブリの遠位部分に作動可能に接続された可動部分、この可動部分に作動可能に結合された道具アセンブリ、電力を供給するように構成された電源、ならびにこの電源に作動可能に関連する伝達システムを備える。この可動部分は、このハンドルアセンブリに対して可動である。この道具アセンブリは、組織を係合するように適合される。この伝達システムは、電力または信号を、ハンドルアセンブリと可動部分との間で伝達するように構成される。
【0019】
(要旨)
本開示は、組織を係合するための動力式外科手術用装置に関する。この動力式外科手術用装置は、近位部分および遠位部分を有するハンドルアセンブリ、このハンドルアセンブリの遠位部分に作動可能に接続された可動部分、この可動部分に作動可能に結合された道具アセンブリ、電力を供給するように構成された電源、ならびにこの電源に作動可能に関連する伝達システムを備える。この可動部分は、このハンドルアセンブリに対して可動である。この道具アセンブリは、組織を係合するように適合される。この伝達システムは、電力または信号を、ハンドルアセンブリと可動部分との間で伝達するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本開示の外科手術用器具の実施形態の斜視図である。
図2図2は、内部構成要素を示す、図1の外科手術用器具の側面断面図である。
図3図3は、内部構成要素を示す、図1の外科手術用器具の可動部分の側面断面図である。
図4図4は、可動部分の内部構成要素を示す、図1の外科手術用器具の一部分の斜視切り取り図である。
図5図5は、可動部分の内部構成要素を示す、図1の外科手術用器具の可動部分および細長部分の斜視切り取り図である。
図6図6は、可動部分の内部構成要素を示す、図1の外科手術用器具の可動部分の斜視上面切り取り図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の外科手術用器具の種々の実施形態が、図面を参照しながら本明細書中に開示される。
【0022】
(詳細な説明)
本開示の動力式外科手術用器具の実施形態が、図面を参照しながら詳細に記載される。図面において、同じ参照番号は、数枚の図の各々において、類似の要素または同一の要素を表す。図面および以下の説明において、用語「近位」とは、外科手術用器具の操作者に近い方の端部をいい、一方で、用語「遠位」とは、外科手術用器具の操作者から遠い方の端部をいう。当業者により理解されるように、図示される外科手術用器具はステープルを発射するが、外科手術用器具は、他の任意の適切なファスナー(例えば、クリップおよび二部品ファスナー)を発射するように適合され得る。さらに、開示される外科手術用器具は、電気外科用鉗子または把持具を備え得る。共有に係る特許出願番号10/369,894(2003年2月20日出願、発明の名称「VESSEL SEALER AND DIVIDER AND METHOD OF MANUFACTURING THE SAME」、その全内容は、本明細書中に参考として援用される)は、ある種の電気外科用鉗子を詳細に記載する。
【0023】
図1を参照すると、参照番号100は、本開示の外科手術用器具の1つの実施形態を表す。簡潔にするために、本開示は、外科手術用器具100の伝達システムに焦点を当てる。米国特許出願公開第2008/0105730号(2007年11月28日出願);同第2008/0110960号(2008年1月8日出願);同第2008/0142565号(2008年1月24日出願);同第2008/0041916号(2007年10月15日出願);米国仮特許出願番号61/050237(2008年5月5日出願);ならびに米国特許出願番号11/786,198号(2007年4月10日出願);同11/724,733号(2007年3月15日出願);および同11/786,933号(2007年4月13日出願)は、本開示の伝達システムを組み込み得る外科手術用器具の構造および作動を詳細に記載する。これらの以前の出願の全内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0024】
外科手術用器具100は、組織をクランプし、固定し、そして/または切断するように構成される。一般に、外科手術用器具100は、ハンドルアセンブリ110、ハンドルアセンブリ110に対して移動するように適合された可動部分120、可動部分120から遠位に延びて長手方向軸「A−A」を規定する細長部分130、および組織を係合するように適合された装填ユニットまたは道具アセンブリ140を備える。道具アセンブリ140は、様々な種類のエンドエフェクタ144を備え得る。ハンドルアセンブリ110は、近位部分112および遠位部分114を有する。可動部分120は、ハンドルアセンブリ110の遠位部分114から遠位に延び、そして長手方向軸A−Aに対して回転するように構成される。可動部分120は、細長部分130に作動可能に取り付けられているので、可動部分120を回転させることは、細長部分130の対応する回転を引き起こす。細長部分130は、近位端132および遠位端134を有し、そしてハンドルアセンブリ110と道具アセンブリ140とを作動可能に相互接続する。道具アセンブリ140は、接続セクション142およびエンドエフェクタ144を備え、この接続セクションは、細長部分130の遠位端134に取り外し可能に設置される。
【0025】
エンドエフェクタ144は、組織をクランプし、固定し、切断し、切除し、そして/または焼灼するように適合され得る。1つの実施形態において、エンドエフェクタは、再使用可能である。あるいは、エンドエフェクタ144は、使い捨て装填ユニットの一部であり得る。米国特許第5,752,644号(その全体は、本明細書中に参考として援用される)は、外科手術用器具100に組み込まれ得る使い捨て装填ユニットを詳細に記載する。1つの実施形態において、エンドエフェクタ144は、関節運動ノブ122の移動の際、またはハンドルアセンブリ110に配置された関節運動スイッチ116の起動の際に、長手方向軸A−Aに対して関節運動する。
【0026】
図2を参照すると、ハンドルアセンブリ110は、ハンドル111およびハウジング118を備える。ハンドル111は、長手方向軸B−Bを規定し、そしてこのハンドルに配置された切替機構113を備える。長手方向軸B−Bは、長手方向軸A−Aに対して実質的に垂直である。図2に見られるように、切替機構113は、2つのスイッチ113a、113bを有するロッカースイッチであり得る。その構成とは無関係に、切替機構113は、使用者がスイッチ113aまたはスイッチ113bを押すと、第一のモータ115を始動および/または停止させる。1つの実施形態において、切替機構113は、電源119を第一のモータ115に接続する電気回路を開閉させる。別の実施形態において、第一のモータ115は、使用者がスイッチ113aを押すと始動および停止し、そして第二のモータ126(図3を参照のこと)は、使用者がスイッチ113bを押すと始動および停止する。この実施形態において、伝達システム(以下に詳細に開示される)は、信号または電力を、電源119から第二のモータ126へと伝達する。
【0027】
図2を続けて参照して、ハウジング118は、電源119、第一のモータ115、および駆動管117を収容する。電源119は、第一のモータ115に電気的に接続される。使用において、電源119は、使用者がスイッチ113aまたはスイッチ113bを押すと、電力を第一のモータ115に供給する。図2に図示される実施形態において、電源119は、電池(battery cell)を備える。しかし、電源119は、電力を供給し得る任意のデバイス、装置または手段の構築物であり得る。例えば、電源119は、バッテリパック、燃料電池、高エネルギーコンデンサ、またはこれらの任意の組み合わせを備え得る。1つの実施形態において、バッテリパックに電気的に接続されたコンデンサが電源119を形成する。あるいは、外科手術用器具100は、電気エネルギー発生器に接続可能なコードを備える。
【0028】
使用される電源119の種類にかかわらず、第一のモータ115は、電源119から受容された電気エネルギーを機械的運動に変換する。第一のモータ115は、駆動管117に作動可能に関連する。操作中、駆動モータ115は、駆動管117を長手方向軸A−Aの周りで回転させる。駆動管117が回転している間、この駆動管はまた、近位位置と遠位位置との間を並進する。発射棒124の近位端124aが、駆動管117の遠位端117bに取り付けられる。その結果、駆動管117を長手軸方向に動かすことは、発射棒124の長手軸方向での並進を引き起こす。発射棒124の一部分は、ハウジング118の内部に配置される。発射棒124の別の部分は、可動部分120および細長部分130を通って延びる。発射棒124の遠位端124bは、道具アセンブリ140に作動可能に接続されるように構成される。道具アセンブリ140が細長部分130に設置されている場合、発射棒124の長手軸方向での並進は、エンドエフェクタ144の起動を引き起こす。
【0029】
ハウジング118は、第一の基板202をさらに備え、この第一の基板は、伝達システムの一部である。この伝達システムは、電力、制御信号、フィードバック、感知信号、またはこれらの任意の組み合わせを、第一の基板202と第二の基板204との間で伝達するように適合される。この第二の基板は、可動部分120内に配置される。1つの実施形態において、伝達システムにより伝達される電力は、電源119から発生する(図2を参照のこと)。伝達システムにより伝達される制御信号、フィードバック、感知信号は、電気外科器具100の全体に配置された、センサ、制御システム、およびフィードバックシステムから発生し得る。
【0030】
外科手術用器具100は、ハンドルアセンブリ110、可動部分120、細長部分130および/または道具アセンブリ140の内側または外側に位置する、センサ、制御システム、および/またはフィードバックシステムを備える。例えば、特定のセンサは、外科手術用器具100の作動段階を決定する。具体的には、これらのセンサは、他のもののうちでもとりわけ、エンドエフェクタ144または外科手術用器具100の他の任意の構成要素の、関節運動、回転、クランプ、および発射を検出する。様々な型のセンサが、様々な様式で使用されて、外科手術用器具100の作動段階を決定し得る。例えば、リミットスイッチ、近接センサ、電位差計、変位計(LVDT)、および/またはシャフトエンコーダが、発射棒124の位置を制御および/または記録するために使用され得る。これらのセンサのうちの任意のものはまた、適切に装填されたステープルカートリッジを検出するために使用され得る。さらに、電気接点、近接センサ、光学センサ、RFセンサ、磁気センサ、フォトダイオード、および機械的センサまたは金属センサが、エンドエフェクタ144に関する情報を制御および/または記録するために使用され得る。さらに、他のセンサが、過負荷の危険性を最小にするために、外科手術用器具100を監視し得る。例えば、熱センサ、サーミスタ、サーモパイル、熱電対、および熱赤外線画像化システムは、第一のモータ115または外科手術用器具100の他の任意の構成要素の温度を監視し得る。いくつかの実施形態において、外科手術用器具100は、外科手術用器具100に装填される装填ユニットおよび/またはステープルカートリッジの型を識別するための識別センサを備える。これらの識別センサとしては、道具アセンブリ140に配置された、赤外線、セルラーチップ、無線周波数識別チップ、マイクロチップ、エミッタおよびトランスミッタが挙げられ得る。これらの識別センサは、第一の基板202または第二の基板204、あるいはこれらの基板に配置された受信機と通信する。電気信号を伝達するセンサもあれば、一方で、他の手段(例えば、光学、光、RFおよび磁石)を使用するセンサもある。
【0031】
センサに加えて、外科手術用器具100のいくつかの実施形態は、使用者にフィードバックを提供するためのシステム、手段、またはデバイスを備える。例えば、器具100の制御を補助するための表示スクリーンが、外科手術用器具100と一体であっても別体であってもよい。これらの表示スクリーンは、使用者に、外科手術用器具100の作動特徴に関する有用な情報を提供する。表示スクリーンの他に、他のフィードバックシステムが、外科手術用器具100に組み込まれ得る。外科手術用器具100のいくつかの実施形態は、パルス化されたパターンの光、音響フィードバック(例えば、選択された時間間隔で鳴るブザー、ベルまたはビープ音)、言語フィードバック、および/あるいは触覚振動フィードバック(例えば、非同期モータまたはソレノイド)を有する。特定の実施形態において、視覚フィードバック、聴覚フィードバックまたは触覚フィードバックは、特定の事象、存在、または作動特徴に応答して、強度を増加または減少させる。
【0032】
図3図6を参照すると、伝達システム(これは、第一の基板202および第二の基板204を備える)は、上記センサ、制御システム、フィードバックシステム、および/または電源からの、制御信号、フィードバック、感知信号、および/または電力のための導管として働く。1つの実施形態において、ワイヤ、リード線、伝導性ストリップ、誘電フィルム、コンデンサ、ケーブル、フレキシブル導体、伝導性リング121、または他の任意の導電性装置が、第一の基板202と第二の基板204とを電気的に相互接続する。図4に図示される実施形態において、可動部分120は、第一の基板202を第二の基板204に電気的に結合する伝導性リング121を収容する。各伝導性リング121は、電力、感知信号、制御信号、またはフィードバックを、第一の基板202と第二の基板204との間で伝達するように適合された、圧力接点またはカンチレバー接点123を有する。使用において、カンチレバー接点123は、使用者が関節運動ノブ122を動かすか、または関節運動スイッチ116の引き金を引くと、動いて電源119と第二のモータ126との間の回路を電気的に閉じる。
【0033】
第二の基板204以外には、可動部分120は、発射棒124の一部分、第二のモータ126、および関節運動機構128を収容する。この関節運動機構は、エンドエフェクタ144を長手方向軸A−Aに対して関節運動させるためのものである。関節運動機構128は、第二のモータ126に作動可能に結合される。第二のモータ126は、使用者が関節運動スイッチ116を起動させると、始動および/または停止する。関節運動機構128はまた、関節運動ノブ122に作動可能に接続される。操作において、使用者は、関節運動ノブ122を動かすことによってエンドエフェクタ144を手で関節運動させても、関節運動スイッチ116を起動させることによってエンドエフェクタ144を電気機械的に関節運動させてもよい。エンドエフェクタ144は、関節運動スイッチ116の起動または関節運動ノブ122の移動の際に、長手方向軸A−Aに対して関節運動する。エンドエフェクタ144の関節運動は、信号、フィードバック、またはデータを第一の基板202または第二の基板204のいずれかに通して伝達する、センサまたは制御システムを用いて調節または監視され得る。
【0034】
第一の基板202および第二の基板204は、プリント回路基板、制御回路、電気回路、および/または誘導回路を備える。図4に見られるように、第二の基板204は、プリント回路基板であり得る。第二の基板204は、具体的には、一次制御回路、二次制御回路、および/またはドーターボードを備える。第二の基板204が一次制御回路を備える場合、第一の基板202は、二次制御回路を備える。逆に、第一の基板202が一次制御回路を備える場合、第二の基板204が二次制御回路を備える。第二の基板204がドーターボードを備える実施形態において、第一の基板202は、マザーボードを備える。他の実施形態において、第二の基板204は、ドーターボードが設置されたマザーボードを構築する。この実施形態において、第一の基板202は、電力、制御信号、またはフィードバックを第二の基板204に送るように適合されたシステムまたは回路構造であり得る。特定の実施形態において、第一の基板202は、第二の基板204と有線通信する。数種の手段およびシステムが、電力、信号、または情報を1つの基板(202または204)から別の基板へと無線伝達するために使用され得る。
【0035】
上で議論されたように、第二の基板204は、本開示の1つの実施形態において、ドーターボードを備え得るか、またはドーターボードとして働き得る。この実施形態において、このドーターボードは、感知、制御、または使用者へのフィードバックの提供のための、ハードウェアおよび/またはソフトウェアを備える。第二の基板204の、感知、制御、およびフィードバックの機能は、可動部分120が停止したままである間に実行され得るか、または可動部分120の回転もしくは関節運動中に実行され得る。可動部分120は、長手方向軸A−Aの周りで360°回転させられ得、そして第一の基板202は、依然として、感知信号、制御信号、電力、および/またはフィードバックを第二の基板204に通信し得る。1つの実施形態において、第二の基板204は、デジタル制御モジュール(「DCM」)を備えて、第一のモータ115および/または第二のモータ126の作動を制御または監視する。1つの実施形態において、第二の基板204のDCMは、パルス幅変調法を使用して、第一のモータ115および/または第二のモータ126の出力を制御する。この実施形態の第二の基板204は、電圧を調節するか、または電圧をパルス幅変調して、電力および/またはトルク出力を調節し、システム損傷の発生を最小にするか、または電気エネルギー使用を最適にする。さらに、電気制動回路が、第一のモータ115または第二のモータ126を制御するために、第二の基板204のDCMに組み込まれ得る。第二の基板204が第一のモータ115の作動を制御する場合、第二の基板204は、制御信号または感知信号を第一の基板202に中継する。第二の基板204から受信された制御信号および感知信号に応答して、第一の基板202は、第一のモータ115を調節または制御する。第二の基板204のDCMは、外科手術用器具100の他の構成要素を制御または監視し得ることが予測される。さらに、第一の基板202は、電源119から第二の基板204へと電気エネルギーを移動させ得る。あるいは、可動部分120は、電力を第二の基板204に供給するための、別の電源(電源119の補足または代用)を備え得る。外科手術用器具100が、可動部分120内に位置する1つの電源を有するのみである場合、第二の基板204は、電力を第一の基板202に無線で伝達する。外科手術用器具100が、可動ハンドル120内に配置された電源119および第二の電源(図示せず)を有する場合、第二の基板204は、第二の電源により部分的にかまたは全体的に電力を供給され得る。
【0036】
別の実施形態において、第一の基板202は、一次制御回路を備え、そして第二の基板204は、二次制御回路を含む。第一の基板202が一次制御回路を備える場合、第二の基板204は、電力、制御信号、フィードバック、および/または感知信号を、第一の基板202から受信する。次いで、第二の基板204は、第一の基板202から受信された電力、制御信号、フィードバック、および/または感知信号を使用して、第二のモータ126または外科手術用器具100の他の任意の構成要素を制御し、監視し、そして/または駆動する。
【0037】
第二の基板204が一次制御回路を備え、そして第一の基板202が二次制御回路を備える実施形態において、第二の基板204は、電力、制御信号、フィードバック、および/または感知信号を第一の基板202に伝達する。次いで、第一の基板202は、第二の基板204から受信された電力、制御信号、フィードバック、および/または感知信号を利用して、第一のモータ115または外科手術用器具100の他の任意の構成要素を制御し、監視し、そして/または駆動する。
【0038】
上で議論されたように、外科手術用器具100の1つの実施形態は、可動部分120の内側に電源(図示せず)を備える。この電源は、電源119の代用または補足であり得る。この電源が電源119の代用である場合、第二の基板204は、電力を第一の基板202に、無線接続、ワイヤ、容量性導体、リード線、伝導性リング121、または他の任意の形態の電気接続により伝達して、電力を第一のモータ115に供給する。1つの実施形態において、電力、制御信号、感知信号およびフィードバックは、第一の基板202と第二の基板204との間で、誘電結合により伝達される。この実施形態において、第一の基板202および第二の基板204の各々は、誘電インターフェースを一緒に形成する誘電回路を有する。この誘電インターフェースは、電気エネルギーを第一の基板202と第二の基板204との間で無線移動させるように構成される。第一の基板202と第二の基板204との間での無線での電気エネルギーの移動は、制御回路に電力を供給するため、信号を送信または受信するため、および/あるいはモータ115、126、ソレノイド、レーザー、組織切除用RFエネルギー源、または電気焼灼システムを駆動するために使用され得る。さらに、無線での電気エネルギーの移動は、可動部分120内に配置された電源(例えば、バッテリおよびコンデンサ)を充電するために使用され得る。電気エネルギーが第一の基板202と第二の基板204との間で無線で伝達される実施形態において、外科手術用器具100は、必ずしも、第一の基板202と第二の基板204とを電気的に接続するワイヤ、ケーブル、または接点を必要としない。
【0039】
データはまた、他の手段を介して、第一の基板202と第二の基板204との間で伝達され得る。1つの実施形態において、第一の基板202は、通信送信機を備え、そして第二の基板204は、受信機を備える。またはその逆である。この送信機および受信機は、データを無線伝達するために、任意の適切なプロトコル、標準、または技術(BLUETOOTH(登録商標)、ANT3TM、KNXTM、Z WAVETM、X10TM、無線USB、WiFTM、IRDATM、NANONETTM、TINY OSTM、ZIGBEETM、無線、UHF、およびVHFが挙げられるが、これらに限定されない)を利用し得る。第一の基板202と第二の基板204との間での無線エネルギー移動は、光、光学、RF、磁気、または電気信号を使用する他の手段を利用するセンサが、ワイヤまたは接点を必要とせずに、可動ハンドル120内で使用されることを可能にする。第二の基板204(これは、可動部分120の内側に配置される)は、これらのセンサにより提供される信号を解読するための、電気回路、または他の任意の適切なデバイスもしくはシステムを備え得る。
【0040】
種々の改変が、本開示の外科手術用器具の実施形態に対してなされ得ることが理解される。従って、上記説明は、限定と解釈されるべきではなく、単に、実施形態の例示と解釈されるべきである。当業者は、本開示の範囲および趣旨内で、他の改変を予測する。
【符号の説明】
【0041】
100 外科手術用器具
110 ハンドルアセンブリ
112 近位部分
114 遠位部分
116 関節運動スイッチ
120 可動部分
122 関節運動ノブ
130 細長部分
132 近位端
134 遠位端
140 道具アセンブリ
144 エンドエフェクタ
142 接続セクション
図1
図2
図3
図4
図5
図6