(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係る操作検出装置は、操作がなされる操作領域を有する操作部材と、操作領域の裏側に配置され、操作領域に接近及び接触する検出対象と静電結合を行う少なくとも1つの検出電極と、少なくとも1つの検出電極の周囲に配置されると共に、少なくとも1つの検出電極から絶縁され、電磁波が少なくとも1つの検出電極に与える影響を抑制するシールド部と、シールド部に対向するように操作部材に設けられ、操作部材よりも誘電率が低い低誘電率部と、を備えて概略構成されている。
【0011】
この操作検出装置は、低誘電率部を備えない場合と比べて、寄生容量を有する異物が、操作部材を介して検出電極とシールド部とを跨ぐように付着した際に発生する可能性がある、検出対象の誤検出を抑制することができる。
【0012】
[第1の実施の形態]
(タッチセンサ1の全体構成)
図1(a)は、第1の実施の形態に係るタッチセンサの分解斜視図であり、
図1(b)は、タッチセンサの上面図である。
図2(a)は、第1の実施の形態に係るタッチセンサの
図1(b)のII(a)-II(a)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、
図2(b)は、タッチセンサの等価回路図である。なお、以下に記載する実施の形態に係る各図において、図形間の比率は、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
操作検出装置としてのタッチセンサ1は、
図1に示すように、例えば、検出対象としての操作者の体の一部(例えば、指)及び専用のペンで操作領域52に接近及び接触することにより、触れた操作領域52上の位置を検出するタッチセンサである。操作者は、例えば、操作領域52に操作を行うことにより、接続された電子機器の操作を行うことが可能となる。このタッチセンサ1は、静電容量方式のセンサである。なお、以下では、指による操作について説明する。
【0014】
このタッチセンサ1は、操作領域52になされたタッチ操作を検出するセンサ部2を備えている。タッチセンサ1は、例えば、車両に搭載された電子機器の機能のオン、オフを切り替えるスイッチとして構成される。
【0015】
具体的には、タッチセンサ1は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、操作がなされる操作領域52を有する操作部材としてのパネル部5と、操作領域52の裏側に配置され、操作領域52に接近及び接触する操作指と静電結合を行う検出電極3と、検出電極3の周囲に配置されると共に、検出電極3から絶縁され、電磁波が検出電極3に与える影響を抑制するシールド部4と、シールド部4に対向するようにパネル部5に設けられ、パネル部5よりも誘電率が低い低誘電率部55と、を備えて概略構成されている。
【0016】
(センサ部2の構成)
センサ部2は、基板20と、検出電極3と、シールド部4と、を備えて概略構成されている。検出電極3及びシールド部4は、基板20の配置面200に設けられている。
【0017】
基板20は、一例として、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミド等の柔軟性がある樹脂をフィルム状に加工して得られるフレキシブル基板である。この基板20は、基部21と、配線部22と、を備えて概略構成されている。
【0018】
基部21は、パネル部5に応じた長方形状を有している。また配線部22は、基部21の側面から延びて設けられ、基部21よりも細長い長方形状を有している。配線部22は、例えば、タッチセンサ1が電気的に接続される電子機器のコネクタと接続される。この接続により、タッチセンサ1は、そのコネクタを有する電子機器と電気的に接続され、当該電子機器の機能のオン、オフを切り替えるスイッチとして動作する。
【0019】
(検出電極3の構成)
検出電極3は、基板20の基部21より小さい、長方形状を有している。この検出電極3は、配線30が設けられている。この配線30は、基部21から配線部22に向かって延びるように配置されている。
【0020】
この検出電極3及び配線30は、例えば、導電性を有する銀及び銅等の金属を含んで構成されている。操作領域52は、
図2(a)に示すように、検出電極3をパネル部5に投影した領域である。
【0021】
この検出電極3は、
図2(b)に示すように、電子機器と電気的に接続されることにより、コンデンサC
1を介して接地(GND)されている。
【0022】
検出電極3は、
図2(b)に示すように、接続された電子機器に検出信号S
1を出力するように構成されている。電子機器の制御部は、取得した検出信号S
1に基づいた静電容量と、しきい値と、を比較して、操作領域52にタッチ操作がなされたか否かを判定するように構成されている。
【0023】
この検出信号S
1は、操作領域52に接近及び接触した操作指と検出電極3との静電結合に基づく信号である。
【0024】
なお変形例として、検出電極3は、複数の電極で構成されても良い。タッチセンサ1は、一例として、検出電極3が複数の電極から構成されると共に、この複数の電極が交差するように配置され、その周囲にシールド部4が配置されても良い。またタッチセンサ1は、検出電極3が複数の電極から構成され、この複数の電極が、実質的に一次元的及び二次元的に配置され、その周囲にシールド部4が配置されても良い。
【0025】
(シールド部4の構成)
シールド部4は、例えば、検出電極3と同材料を用いて形成されている。このシールド部4は、細長い形状を有し、検出電極3を囲むように配置されている。
【0026】
このシールド部4の一方端部40及び他方端部41は、
図1(b)に示すように、配線部22に配置されている。また一方端部40及び他方端部41は、検出電極3の配線30を挟むように配置されている。
【0027】
このシールド部4は、検出電極3とは電気的に絶縁されている。またシールド部4は、
図2(b)に示すように、接地(GND)されている。
【0028】
シールド部4は、主に、検出電極3に及ぼす、電磁波の影響を抑制する目的で配置されている。この電磁波は、例えば、エンジンの点火装置や搭載された電子機器から不可避的に生じるものである。従ってシールド部4は、この電磁波をGNDに落とすように、検出電極3の周囲に配置されている。
【0029】
(パネル部5の構成)
パネル部5は、例えば、ガラス、及びポリカーボネート等の樹脂、を用いて板形状に形成されている。このパネル部5は、例えば、表面50に印刷等により意匠が形成された保護部材が重ねられても良いし、表面50に意匠が形成されても良い。タッチセンサ1は、このパネル部5とセンサ部2とが重ねられて構成されている。
【0030】
なおセンサ部2は、例えば、接着剤によりパネル部5に貼り付けられても良いし、両面テープで貼り付けられても良い。しかしタッチセンサ1は、操作指と検出電極3との距離が短い方が、検出精度が高いことから、当該距離が大きくなる接着剤等による貼り付けを行わずに重ねられて取り付けられる方が好ましい。
【0031】
パネル部5は、例えば、
図2(a)に示すように、操作領域52の厚みがt
1である。またパネル部5は、例えば、シールド部4に対向する低誘電率部55の厚みが操作領域52の厚みt
1よりも薄い厚みt
2となっている。従ってパネル部5は、厚みが異なる領域を備えている。
【0032】
この低誘電率部55は、
図1(a)及び
図2(a)に示すように、パネル部5の裏面51に形成された凹形状の連続した凹部56として形成されている。この凹部56は、センサ部2とパネル部5とが重ね合された状態において、シールド部4の上方に位置するように形成される。従ってシールド部4の上方には、空気層6が形成されている。なお、凹部56の形状は、空気層6が形成される形状であれば、凹形状に限定されない。
【0033】
ここで変形例として、上述の低誘電率部55は、連続した凹部に限定されず、誤検出を抑制するのに効果的な部分のみに形成されても良い。タッチセンサ1は、一例として、その表面50の一部が隠れるように配置された場合、誤検出が生じないと思われる隠れた場所には、低誘電率部55を形成しなくても良い。従って、低誘電率部55は、以下に記載する他の実施の形態においても同様に、効果的な部分のみに形成されても良い。
【0034】
(低誘電率部55について)
図3(a)は、第1の実施の形態に係る水滴が付着したタッチセンサの上面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のIII(b)-III(b)線で切断した断面を矢印方向から見た断面図であり、
図3(c)は、タッチセンサの比較例を示す要部断面図である。この
図3(b)及び
図3(c)では、図を見やすくするため、パネル部の断面を示す斜線を省略している。まず、以下では、比較例について説明する。
【0035】
この比較例のタッチセンサ7は、例えば、上面から見た形状が本実施の形態と同形状であるものとする。よって
図3(c)に示す断面は、
図3(b)に対応する箇所でタッチセンサ7を切断した断面を示すものとする。
【0036】
この比較例のタッチセンサ7は、
図3(c)に示すように、基板70と、検出電極71と、シールド部72と、パネル部73と、を備えている。この比較例のタッチセンサ7は、低誘電率部を備えない構成となっている。
【0037】
図3(c)に示すように、水滴8が検出電極71とシールド部72を跨ぐように表面730に付着した場合、水滴8の寄生容量C
3を介して検出電極71とシールド部72とが電気的に接続する。この接続は、
図2(b)に示すように、人体の寄生容量C
2を介してGNDと接続することと類似している。従って比較例の検出電極71は、操作指9が表面730に接触した場合と同様の検出信号S
2を出力し、誤検出が生じると考えられる。
【0038】
一方、本実施の形態のタッチセンサ1は、上述のように、パネル部5の厚みが異なっている。つまり、タッチセンサ1は、パネル部5の厚みにより、検出電極3と検出電極3の上方の表面50の間の第1の誘電率と、シールド部4とシールド部4の上方の表面50の間の第2の誘電率と、が異なっている。
【0039】
低誘電率部55の空気層6の誘電率は、パネル部5の誘電率よりも低い。一例として、パネル部5がポリカーボネートを用いて形成されている場合、その誘電率は、およそ3であり、空気の誘電率は、およそ1である。従って上述のように、低誘電率部55の第2の誘電率は、操作領域52の第1の誘電率よりも低くなる。
【0040】
静電容量は、検出電極3と操作指9との間に形成されるコンデンサの容量であり、当該コンデンサは、誘電率に比例するので、誘電率が低いほど静電容量が小さくなる。
【0041】
つまり本実施の形態のタッチセンサ1は、寄生容量C
3を有する水滴8が、
図3(b)に示すように、表面50を介して検出電極3とシールド部4とに跨るように付着した場合、本実施の形態のタッチセンサ1が検出する静電容量が、比較例のタッチセンサ7が検出する静電容量よりも小さくなる。従ってタッチセンサ1は、水滴8等の寄生容量がある異物の付着に基づく誤検出を抑制することが可能となる。
【0042】
以下に、本実施の形態のタッチセンサ1の動作について説明する。この説明は、タッチセンサ1が電子機器と接続されているものとして行うものとする。
【0043】
(動作)
車両の電源が投入されると、電子機器は、タッチセンサ1の検出電極3から検出信号S
1を取得する。
【0044】
電子機器は、取得した検出信号S
1と予め定められたしきい値と、を比較して、検出対象である操作指が操作領域52において検出されたか否かを判定すると共に、判定結果に基づいて、タッチセンサ1が割り当てられた機能のオン、オフを切り替える。
【0045】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態に係るタッチセンサ1は、誤検出を抑制することができる。具体的には、このタッチセンサ1は、低誘電率部を備えない場合と比べて、寄生容量を有する異物が、パネル部5を介して検出電極3とシールド部4とを跨ぐように付着した際に発生する可能性がある、検出対象の誤検出を抑制することができる。
【0046】
またタッチセンサ1は、上述の誤検出を抑制するために静電容量と比較されるしきい値を調整する場合と比べて、パネル部5に低誘電率部55を設けることにより誤検出を抑制することができるので、製造コストが低減される。
【0047】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、低誘電率部が低誘電率部材としての発泡部材を備えている点で他の実施の形態と異なっている。
【0048】
図4(a)は、第2の実施の形態に係るタッチセンサの要部断面図である。なお以下に記載する実施の形態において、第1の実施の形態と同じ機能及び構成を有する部分は、第1の実施の形態と同じ符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0049】
本実施の形態のタッチセンサ1は、
図4(a)に示すように、低誘電率部55が、凹部56内に配置された低誘電率部材としての発泡部材57を備えている。
【0050】
発泡部材57は、例えば、合成樹脂にガスを分散させて形成される多孔質形状(ポーラス形状)を有している。この合成樹脂は、例えば、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン及びポリプロピレン等である。また上記のガスは、例えば、空気であるがこれに限定されない。
【0051】
このタッチセンサ1は、低誘電率部55が多孔質形状を有し、誘電率が同じ厚さのパネル部5よりも低くなる。従ってタッチセンサ1は、検出電極3上の第1の誘電率よりもシールド部4上の第2の誘電率の方が低くなるので、上述のように寄生容量を有する水滴等の異物が付着しても誤検出を抑制することができる。
【0052】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、シールド部に対向するパネル部の領域に多孔質領域が形成されている点で他の実施の形態と異なっている。
【0053】
図4(b)は、第3の実施の形態に係るタッチセンサの要部断面図である。このタッチセンサ1は、
図4(b)に示すように、パネル部5に多孔質領域58が形成されている。
【0054】
この多孔質領域58は、パネル部5の他の領域と異なり、多数の孔が設けられている。従って多孔質領域58は、他の領域と比べて誘電率が低くなっている。よってタッチセンサ1は、検出電極3上の第1の誘電率よりもシールド部4上の第2の誘電率の方が低くなるので、上述のように寄生容量を有する水滴等の異物が付着しても誤検出を抑制することができる。
【0055】
この多孔質領域58は、一例として、パネル部5を形成する際に部分的にガスを分散させて形成されても良いし、二色成形により形成されても良い。また多孔質領域58は、一例として、加速された荷電粒子を注入することにより形成されても良い。
【0056】
以上述べた少なくとも1つの実施の形態のタッチセンサ1によれば、誤検出を抑制することが可能となる。
【0057】
以上、本発明のいくつかの実施の形態及び変形例を説明したが、これらの実施の形態及び変形例は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。また、これら実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態及び変形例は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
(b)に示すように、操作がなされる操作領域52を有するパネル部5と、操作領域52の裏側に配置され、操作領域52に接近及び接触する操作指と静電結合を行う検出電極3と、検出電極3の周囲に配置されると共に、検出電極3から絶縁され、電磁波が検出電極3に与える影響を抑制するシールド部4と、シールド部4に対向するようにパネル部5に設けられ、パネル部5よりも誘電率が低い低誘電率部55と、を備えて概略構成されている。