特許第5770344号(P5770344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧
<>
  • 特許5770344-圧電/電歪膜型素子の製造方法 図000005
  • 特許5770344-圧電/電歪膜型素子の製造方法 図000006
  • 特許5770344-圧電/電歪膜型素子の製造方法 図000007
  • 特許5770344-圧電/電歪膜型素子の製造方法 図000008
  • 特許5770344-圧電/電歪膜型素子の製造方法 図000009
  • 特許5770344-圧電/電歪膜型素子の製造方法 図000010
  • 特許5770344-圧電/電歪膜型素子の製造方法 図000011
  • 特許5770344-圧電/電歪膜型素子の製造方法 図000012
  • 特許5770344-圧電/電歪膜型素子の製造方法 図000013
  • 特許5770344-圧電/電歪膜型素子の製造方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770344
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】圧電/電歪膜型素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/39 20130101AFI20150806BHJP
   H01L 41/187 20060101ALI20150806BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20150806BHJP
   H01L 41/43 20130101ALI20150806BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20150806BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20150806BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   H01L41/39
   H01L41/187
   H01L41/047
   H01L41/43
   B41J2/14 305
   B41J2/16 305
   B41J2/14 613
   B41J2/16 517
   H01L41/09
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-115374(P2014-115374)
(22)【出願日】2014年6月4日
(62)【分割の表示】特願2008-303236(P2008-303236)の分割
【原出願日】2008年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-197695(P2014-197695A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2014年6月4日
(31)【優先権主張番号】特願2008-19717(P2008-19717)
(32)【優先日】2008年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-74427(P2008-74427)
(32)【優先日】2008年3月21日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-152099(P2008-152099)
(32)【優先日】2008年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2008-152100(P2008-152100)
(32)【優先日】2008年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】特許業務法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】由良 幸信
(72)【発明者】
【氏名】横山 昌平
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸行
(72)【発明者】
【氏名】七瀧 努
【審査官】 加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−314679(JP,A)
【文献】 特開2007−335438(JP,A)
【文献】 特開2006−185940(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/105290(WO,A1)
【文献】 特開2008−098627(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0067898(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01972606(EP,A1)
【文献】 特開2001−274473(JP,A)
【文献】 特開2005−159042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/39
B41J 2/14
B41J 2/16
H01L 41/047
H01L 41/09
H01L 41/187
H01L 41/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス焼成基体と電極とを備えた圧電/電歪膜型素子の製造方法であって、
前記電極を介して間接的に又は直接的に前記セラミックス焼成基体上へ、無機粒子を含む厚さ15μm以下のシート形状に成形されたシートを焼成したセラミックスシートを解砕して得られた、アスペクト比が2以上の結晶粒子を含む圧電/電歪体となる原料をガラス成分を含まずに形成する原料形成工程と、前記原料形成工程のあと所定温度で焼成して結晶体を生成する焼成工程とを含む圧電/電歪体形成工程、を含むか、又は、
前記電極を介して間接的に又は直接的に前記セラミックス焼成基体上へ、圧電/電歪体となる原料を5μm以下の厚さでガラス成分を含まずに形成する原料形成工程と前記原料形成工程のあと所定温度で焼成して結晶体を生成する焼成工程とを含む第1結晶体生成工程と、生成した結晶体上に更に圧電/電歪体となる原料をガラス成分を含まずに形成する原料形成工程と所定温度で焼成して結晶体を生成する焼成工程とを含む処理を1回以上実行する圧電/電歪体形成工程と、を含むかのいずれかであ
前記原料形成工程では、等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長する無機粒子、又は、異方的な結晶粒子に成長する無機粒子を含む前記原料を形成する、
圧電/電歪膜型素子の製造方法。
【請求項2】
前記圧電/電歪体形成工程では、前記圧電/電歪体の厚さが1μm以上20μm以下となるよう形成する、請求項1に記載の圧電/電歪膜型素子の製造方法。
【請求項3】
前記原料形成工程では、一般式ABO3で表される酸化物を主成分としAサイトがPbである酸化物となる原料を形成する、請求項1又は2に記載の圧電/電歪膜型素子の製造方法。
【請求項4】
前記原料形成工程では、前記BサイトがZr、Ti、Nb、Mg、Ni及びZnから選ばれる1種以上を含む酸化物となる原料を形成する、請求項3に記載の圧電/電歪膜型素子の製造方法。
【請求項5】
前記原料形成工程では、一般式ABO3で表される酸化物を主成分とし、AサイトがLi,Na,K,Bi及びAgから選ばれる1種以上を含み、BサイトがNb,Ta及びTiから選ばれる1種以上を含む酸化物となる原料を形成する、請求項1又は2に記載の圧電/電歪膜型素子の製造方法。
【請求項6】
前記圧電/電歪体形成工程では、前記圧電/電歪体を電界方向に沿って配向させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧電/電歪膜型素子の製造方法。
【請求項7】
前記圧電/電歪体形成工程では、電界方向に沿って、ペロブスカイト構造を有する前記圧電/電歪体の擬立方(100)軸を配向させる、請求項6に記載の圧電/電歪膜型素子の製造方法。
【請求項8】
前記電極は、無配向多結晶金属により形成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の圧電/電歪膜型素子の製造方法。
【請求項9】
前記セラミックス焼成基体は、無配向多結晶基材により形成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の圧電/電歪膜型素子の製造方法。
【請求項10】
前記セラミックス焼成基体は、ジルコニアを主成分として形成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の圧電/電歪膜型素子の製造方法。
【請求項11】
前記原料形成工程は、前記圧電/電歪体となる原料を塗布する塗布工程である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の圧電/電歪膜型素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電/電歪膜型素子及びその製造方法に関し、より詳しくは、セラミックス焼成基体上に形成された圧電/電歪膜型素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電/電歪膜型素子としては、セラミックス焼成基体としての酸化ジルコニウム上に形成され、例えばPb(Zr,Ti)O3を主成分とし、任意の厚み方向の断面において観察される多数の結晶に占める、厚み方向の粒子径に対して幅方向の粒子径の方が長い結晶の個数割合が70%以上であり、優れた圧電特性や電歪特性を有するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、任意の厚み方向の断面において観察される多数の結晶粒子に占める、厚み方向の少なくともいずれかの外部との界面にその一部が露出している結晶粒子の個数割合が80%以上であり、さらに、厚み方向の外部との両界面にその一部が露出している結晶粒子の個数割合が50%以上であり、優れた圧電特性や電歪特性を有するとともに、屈曲変位が多数回繰り返されるような場合であっても十分な耐久性を発揮するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、圧電磁器材料層の両面側に電極材料層が配設された構造体を一体焼成することにより形成され、圧電磁器材料層の両面側に電極材料層が配設された構造を有する素子本体を備え、圧電磁器層が、主としてペロブスカイト構造を有する圧電磁器から形成されているとともに、圧電磁器の、積層方向から見た平均結晶粒径が、圧電磁器層の一層の厚みよりも大きく、結晶粒の方位が配向した構造とすることで、良好な特性を有する圧電素子が提案されている。(例えば、特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−185940号公報
【特許文献2】特開2006−185950号公報
【特許文献3】特開2005−183701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、この特許文献1に記載された、酸化ジルコニウム上に圧電/電歪体が形成された圧電/電歪膜型素子及び、特許文献2に記載された圧電/電歪膜型素子では、粒子のアスペクト比を所定の方向に揃えることにより圧電特性や電歪特性を高めることができるものであるが、それでもまだ十分でなく、更なる圧電特性や電歪特性を向上することが望まれていた。また、特許文献3に記載された圧電磁器層では、セラミックス焼成基体上に形成しようとすると、高い配向度を得るために実質的に必要となるガラス成分が基板へ拡散してしまうことがあった。また、ガラス成分を含むことで、圧電特性が劣化する問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、セラミックス焼成基体に形成されるものにおいて、圧電/電歪特性をより高めることができる圧電/電歪膜型素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、セラミックス焼成基体に形成されるものにおいて、含まれる複数の結晶が特定の結晶面を揃えた状態でガラス成分を含まずに配向していると、圧電/電歪特性をより高めることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の圧電/電歪膜型素子は、
セラミックス焼成基体と、
電極と、
前記電極を介して間接的に又は直接的に前記セラミックス焼成基体上に形成され、ガラス成分を含まず、特定の方向に配向している圧電/電歪体と、
を備えたものである。
【0008】
また、本発明の圧電/電歪膜型素子の製造方法は、
セラミックス焼成基体と電極とを備えた圧電/電歪膜型素子の製造方法であって、
前記電極を介して間接的に又は直接的に前記セラミックス焼成基体上へ、結晶粒子を含む圧電/電歪体となる原料をガラス成分を含まずに形成する原料形成工程と、前記原料形成工程のあと所定温度で焼成して結晶体を生成する焼成工程とを含む圧電/電歪体形成工程、を含むものである。
【0009】
あるいは、本発明の圧電/電歪膜型素子の製造方法は、
セラミックス焼成基体と電極とを備えた圧電/電歪膜型素子の製造方法であって、
前記電極を介して間接的に又は直接的に前記セラミックス焼成基体上へ、圧電/電歪体となる原料をガラス成分を含まずに形成する原料形成工程と前記原料形成工程のあと所定温度で焼成して結晶体を生成する焼成工程とを含む第1結晶体生成工程と、
生成した結晶体上に更に圧電/電歪体となる原料をガラス成分を含まずに形成する原料形成工程と所定温度で焼成して結晶体を生成する焼成工程とを含む処理を1回以上実行する圧電/電歪体形成工程と、を含むものである。
【0010】
この圧電/電歪膜型素子及びその製造方法では、圧電/電歪特性をより高めることができる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、例えば、結晶体が配向していない場合では、結晶の方向によっては圧電効果や電歪効果を十分に発揮できない結晶が含まれるなどして効率が低い状態であるのに対し、複数の結晶が特定の結晶面を揃えた状態で配向しており、複数の結晶を含む結晶体が効率よく機能を発揮するためであると推測される。また、ガラス成分を含まずに結晶体が配向しているため、ガラス成分がセラミックス焼成基体へ拡散してしまうことなく配向膜が得られ、圧電特性の劣化が抑制されると推察される。ここで、「ガラス成分」とは、例えば、鉛ホウ酸系ガラス、亜鉛ホウ酸系ガラス、ホウ珪酸ガラス、鉛−珪酸ガラス、亜鉛−珪酸ガラス及びビスマス−珪酸ガラスなどをいう。なお、原料を形成する原料形成工程は、原料を塗布する塗布工程としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の圧電/電歪膜型素子20を備えたアクチュエータ10の一例を表す説明図であり、図1(a)が平面図、図1(b)が図1(a)のX−X断面図である。
図2】圧電/電歪素子20の他の製造方法の一例を示す説明図であり、図2(a)が第1層の塗布工程、図2(b)が第1層の焼成工程、図2(c)が第2層の塗布工程、図2(d)が第2層の焼成工程後の第3層の塗布工程、図2(e)が圧電/電歪体30の形成完了、図2(f)が第2電極24の形成の図である。
図3】圧電/電歪素子20の他の製造方法の一例を示す説明図である。
図4】圧電/電歪素子20の製造方法の一例を表す説明図であり、図4(a)が圧電/電歪体30の原料の塗布工程、図4(b)が焼成工程後に得られる配向した圧電/電歪体30、図4(c)が第2電極形成工程の図である。
図5】他の圧電/電歪素子20Bの説明図である。
図6】実験例1及び実験例5のX線回折の測定結果である。
図7】実験例1のSEM写真である。
図8】実験例3及び実験例6のX線回折の測定結果である。
図9】実験例3の1層目のSEM写真である。
図10】実験例3の2層目のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の圧電/電歪膜型素子を図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の圧電/電歪膜型素子20を備えたアクチュエータ10の一例を表す説明図であり、図1(a)が平面図、図1(b)が図1(a)のX−X断面図である。本実施形態のアクチュエータ10は、下方に向かって開口した空間部14が形成されたセラミックス焼成基体12と、空間部14の上方側のセラミックス焼成基体12の上面に形成された第1電極22と、第1電極22上に形成され電力の入出力に伴い体積変化する圧電/電歪体30と、圧電/電歪体30の上方に形成された第2電極24と、を備えている。このアクチュエータ10は、電圧を印加して圧電/電歪体30を駆動し、セラミックス焼成基体12の空間部14に収容された流体(例えば液体など)へ圧力を付与するものである。
【0013】
セラミックス焼成基体12は、配向していない複数の結晶により構成された材料である無配向多結晶基材により形成されていることが好ましい。この無配向多結晶基材は、例えば、安定化された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ムライト、窒化アルミニウム及び窒化珪素からなる群より選択される少なくとも一種を含むセラミックスからなることが好ましく、中でも、機械的強度が大きく、靭性に優れる点から安定化された酸化ジルコニウムからなることがより好ましい。なお、本発明にいう「安定化された酸化ジルコニウム」とは、安定化剤の添加により結晶の相転移を抑制した酸化ジルコニウムをいい、安定化酸化ジルコニウムの他、部分安定化酸化ジルコニウムを包含する。安定化された酸化ジルコニウムとしては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム、酸化セリウム又は希土類金属の酸化物等の安定化剤を、1〜30モル%含有するものを挙げることができる。中でも、振動部の機械的強度が特に高くなる点で、酸化イットリウムを安定化剤として含有させたものが好ましく、この際、酸化イットリウムは、1.5〜6モル%含有させることが好ましく、2〜4モル%含有させることが更に好ましい。また、更に酸化アルミニウムを0.1〜5モル%含有させたものが好ましい。安定化された酸化ジルコニウムの結晶相は、立方晶+単斜晶の混合相、正方晶+単斜晶の混合相、立方晶+正方晶+単斜晶の混合相などであってもよいが、主たる結晶相が正方晶、又は正方晶+立方晶の混合相であるものが、強度、靭性、及び耐久性の観点から好ましい。
【0014】
第1電極22は、矩形状に形成された部材であり、その一端に外部に接続される矩形状のタブ22aが設けられている。第1電極22の材質としては、白金、パラジウム、ルテニウム、金、銀及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも一種の金属を挙げることができる。中でも、焼成に際しての耐熱性が高い点で、白金、又は白金を主成分とする合金が好ましい。また、第1電極22は、電極と圧電/電歪体30との密着性や電極と基体との密着性の観点から無配向多結晶金属により形成されていることが好ましい。なお、第2電極24についても、タブ22aと対向する側にタブ24aが形成される以外は第1電極22と同様に形成されている。
【0015】
この第1電極22は、サンドイッチ構造、櫛形構造、タイガースキン構造などの形状とすることができる。セラミックス焼成基体12と平行な面内に分極軸が含まれる様に圧電/電歪体30を配向させる場合は、タイガースキン(虎柄)や櫛形構造とすることが、電界方向がセラミックス焼成基体12と平行な面内となり、好ましい。こうすれば、配向していない圧電/電歪体と比較して高い圧電/電歪特性を得ることができる。一方、セラミックス焼成基体12に垂直な方向に分極軸を配向させる場合は、図1に示すようなサンドイッチ素子構造とすることで、電界方向と分極軸方向が一致し、より好ましい。ここで、分極軸とは、イオンが変位し自発分極が発生する方向をいい、その方向で高い圧電特性を示す。例えば、分極軸は、ペロブスカイト化合物ではc軸方向にあり、Bi4Ti312などの層状化合物では面内方向にある。なお、第2電極24についても、第1電極22と同様である。
【0016】
圧電/電歪体30は、外形を矩形状とし、第1電極22及び第2電極24に挟持された状態で第1電極22を介して間接的にセラミックス焼成基体12上に配設されている。この圧電/電歪体30は、厚さが1μm以上20μm以下(ここでは5μm)のセラミックス膜として形成されており、特定の方向に結晶体の特定の結晶面が配向した複数の配向結晶32を含んでいる。ここで、「セラミックス膜」とは、熱処理により結晶化させた程度のものではなく、熱処理により結晶化させた結晶粒子を更に粒成長させた膜をいうものとする。この圧電/電歪体30は、1層により形成されていてもよいし、複数の層状に形成されていてもよい。層状であるかについては、圧電/電歪素子20の断面を視認して確認することができる。1層に形成されているときには、圧電/電歪体30は、厚さ方向の配向結晶32が実質的に1個であるものとしてもよい。ここで、「厚さ方向に結晶粒子が実質的に1個」とは、一部で配向結晶32が重なり合う部分があっても、他の大部分では配向結晶32が重なり合わずに、厚さ方向に配向結晶32を1個だけ含むことをいう。また、中心部分などセラミックス膜の大部分が2個以上の配向結晶32が重なり合う状態であり、端部のみ厚さ方向に1個であるようなものは含まない趣旨である。この圧電/電歪体30は、粒成長時に、配向結晶32の粒成長が膜の厚さまで達しないものや、結晶面の向く方向が異なるものが存在することがあるため、配向結晶32が重なり合う部分や配向結晶32の結晶面の向いている方向が異なるものなどが局所的に存在するが、概して厚さ方向に配向結晶32を1個だけ含むのである。この圧電/電歪体30は、配向結晶粒子を1個だけ含む部分が、圧電/電歪体30の面積割合で70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが最も好ましい。
【0017】
圧電/電歪体30は、特定方向として、電界方向に沿って、即ち第1電極22及び第2電極24の電極面に対して直交する方向に特定の結晶軸が配向している、即ち、電極面と平行に特定の結晶面が配向していることが好ましい。圧電/電歪体30において、特定の結晶面の配向度は、ロットゲーリング法で25%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることが一層好ましく、80%以上であることが最も好ましい。配向度が25%以上であると、より高い圧電/電歪特性を得ることができる。この特定の結晶面は、圧電/電歪体の面内にある擬立方(100)面としてもよい。即ち、圧電/電歪体30がペロブスカイト構造を有しているときには、電界方向に沿って擬立方(100)軸が配向していることが好ましい。この擬立方(100)とは、等方性ペロブスカイト型の酸化物は正方晶、斜方晶及び三方晶など、立方晶からわずかに歪んだ構造をとるがその歪みがわずかであるため立方晶とみなしてミラー指数により表示することを意味する。ここで、ロットゲーリング法による配向度は、圧電/電歪体30の配向した面に対しXRD回折パターンを測定し、次式(1)により求めるものとした。この数式(1)において、ΣI(hkl)が圧電/電歪体30で測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI0(hkl)が圧電/電歪体30と同一組成であり無配向のものについて測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、Σ’I(HKL)が圧電/電歪体30で測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(例えば(100)面)のX線回折強度の総和であり、Σ’I0(HKL)が圧電/電歪体30と同一組成であり無配向のものについて測定された特定の結晶面のX線回折強度の総和である。
【0018】
【数1】
【0019】
この圧電/電歪体30において、結晶粒子は、等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長する無機粒子により構成されていてもよいし、異方的な結晶粒子に成長する無機粒子、例えば、層状化合物であるBi4Ti312、SrBi2Ta29、により構成されていてもよいが、このうち等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長する無機粒子により構成されているのが好ましい。等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長するということは、詳しくは後述するが、状況によっては特定の結晶面を成長させることが可能であると考えられる。ここで、「等方的且つ多面体形状」とは、例えば立方体形状などをいう。また、「異方形状」とは、例えば板状、短冊状、柱状、針状及び鱗状など、長軸長さと短軸長さとの比(アスペクト比)が大きいもの(例えばアスペクト比が2以上など)をいう。このような粒子形態は、結晶の成長速度の方位差や、結晶面の表面エネルギーの差が大きい結果として現れる。その観点から、特定の結晶面を成長させるには、粒子形態が多面体形状とまでならなくても、表面エネルギー差が十分に存在すればよい。この圧電/電歪体30は、一般式ABO3で表される酸化物を主成分とするものが好ましく、ペロブスカイト構造を有することが好ましい。このような酸化物には、例えば、一般式ABO3で表される酸化物を主成分としAサイトがPbであり、BサイトがZrとTiとを含む複数の結晶により形成されているチタン酸ジルコン酸鉛を挙げることができ、Bサイトに更にNb,Mg、Ni及びZnから選ばれる1種以上を含んで形成されていることがより好ましい。この具体例としては、例えば、PbMg1/3Nb2/33−PbZrO3−PbTiO3三成分固溶系組成物からなるもの、PbMg1/3Nb2/33−PbZrO3−PbTiO3三成分固溶系組成物を主成分とし、NiOを0.05〜3質量%含有してなるもの、Pb(Mg、Ni)1/3Nb2/33−PbZrO3−PbTiO3三成分固溶系組成物からなるもの、等を挙げることができる。ここで、「PbMg1/3Nb2/33−PbZrO3−PbTiO3三成分固溶系組成物を主成分とし」というときの「主成分」とは、NiOを除いた圧電/電歪組成物の全体に対する、PbMg1/3Nb2/33−PbZrO3−PbTiO3三成分固溶系組成物の含有割合が、80質量%以上であることをいい、好ましくは90質量%以上であることをいう。
【0020】
あるいは、この圧電/電歪体30は、一般式ABO3で表される酸化物を主成分とし、このAサイトがLi,Na,K,Bi及びAgから選ばれる1種以上を含み、BサイトがNb,Ta及びTiから選ばれる1種以上を含む粒子であるものとしてもよく、このうち(LiXNaYZ)NbMTaN3や(BiXNaYZ)TiO3など(X,Y,Z,M,Nは任意の数を表す)がより好ましい。なお、ここに挙げた元素以外を含んでいても構わない。このとき、結晶粒子は、焼成前(後述する焼成工程前をいう)のA/Bが1.0以上であることが好ましい。一般式ABO3で表される酸化物のA/Bが1.0以上の範囲では、アスペクト比や配向度を大きいものとすることができる。ここでは、化学式ABO3で表される酸化物の一例について示したが、本発明はこれ以外にも、例えば、Al23、ZrO2、TiO2、MgO、CaO、Y23、SnO2、ZnO、SiO2などの酸化物およびBaTiO3、BiFeO3、YBa2Cu37などの複合酸化物、(BiXNaYZ)TiO3-BaTiO3、(BiXNaYZ)TiO3-KNbO3などのペロブスカイト化合物の固容体、AlN、Si34、BNなどの窒化物、CaB6、MgB2、LaB6などのほう化物、TiC、SiC、WCなどの炭化物、さらには、Bi2Te3、Bi2Sb8Te15、PbTeなどのテルル系化合物や、CrSi2、MnSi1.73、FeSi2、CoSi2などのシリサイド系材料、その他、金属、合金、金属間化合物等としてもよい。
【0021】
この圧電/電歪体30において、結晶粒子の平均粒径は、0.5μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましい。この平均粒径が0.5μm以上であると、より高い圧電/電歪特性を得ることができる。また、この結晶粒子のアスペクト比は、2以上とすることが好ましく、3以上とすることがより好ましい。アスペクト比が2以上では、結晶粒子を配向させやすい。
【0022】
次に、圧電/電歪素子20の製造方法について説明する。圧電/電歪素子20の製造方法は、図2に示すように、(1)セラミックス焼成基体12上へ第1電極22を形成する第1電極形成工程と、(2)第1電極22上に圧電/電歪体30の第1層31aを形成する第1塗布工程及びそれを焼成して配向結晶化する第1焼成工程を含む第1結晶体生成工程と、(3)第1結晶体生成工程で配向結晶化した層の上に更に圧電/電歪体30の層を望みの厚さとなるまで繰り返し積層させる圧電/電歪体形成工程と、(4)形成した圧電/電歪体30上へ第2電極24を形成する第2電極形成工程と、を含むものとしてもよい。図2は、圧電/電歪素子20の製造方法の一例を示す説明図であり、図2(a)が第1層の塗布工程の図、図2(b)が第1層の焼成工程の図、図2(c)が第2層の塗布工程の図、図2(d)が第2層の焼成工程後の第3層の塗布工程の図、図2(e)が圧電/電歪体30の形成完了の図、図2(f)が第2電極24の形成の図である。
【0023】
(1)第1電極形成工程
第1電極22を配設するセラミックス焼成基体12としては、以下説明する工程での熱処理温度よりも高い温度で焼成され、以下の工程による熱処理で変形及び変質しないセラミックとすることが好ましく、無配向多結晶基材としてもよいし、配向多結晶基材としてもよいが、無配向多結晶基材とすることが好ましい。この圧電/電歪素子20の製造方法では、圧電/電歪素子20を形成する基板の材質や配向性などにかかわらず、圧電/電歪体30の配向度を高めることが可能であり、圧電/電歪素子20の形成時の熱処理に耐えうる材料であれば問題なく用いることができる。このセラミックス焼成基体12としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ムライト、窒化アルミニウム及び窒化珪素からなる群より選択される少なくとも一種を含むセラミックスからなることが好ましく、このうち、酸化ジルコニウムを主成分とするものがより好ましく、安定化された酸化ジルコニウムを主成分とするものが一層好ましい。このセラミックス焼成基体12は、所望の形状に成形して焼成することにより得られる。第1電極22は、例えば、白金、パラジウム、ルテニウム、金、銀及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも一種の金属により形成することが好ましい。第1電極22の形成方法としては、例えば、上記金属の粒子を含むペーストを調製し、このペーストをセラミックス焼成基体12上へドクターブレード法やスクリーン印刷法などにより塗布し、焼成することにより形成することができる。第1電極22の厚さは、圧電/電歪体30の形成厚さにもよるが、圧電/電歪体30の変位の付与・抑制などの観点より、0.1μm以上20μm以下程度に成形することが好ましい。電極は基板および圧電/電歪体との密着性の観点より、無配向多結晶であることが好ましい。また、電極が緻密で穴のない素子を得るために、さらには、圧電/電歪膜の配向度を高めるために、圧電/電歪膜の焼成以前に、その焼成温度よりも高温で電極を焼成することが好ましい。こうすることで、圧電/電歪膜の焼成において結晶粒子が粒成長する際、電極と膜の界面の平坦度が高く保たれるため、膜面内の粒成長が無理なく進み、配向度が向上しやすい。
【0024】
(2)第1結晶体生成工程
この工程は、更に無機粒子の調製工程、第1塗布工程、第1焼成工程を含んでいる。この第1結晶体生成工程では、第1電極22を介してセラミックス焼成基体12上へ無機粒子を15μm以下の膜体に形成して焼成することにより、結晶粒子を膜面に沿って粒成長させる工程である。このように、厚さが15μm以下の膜体に成形して焼成し粒成長させたセラミックス膜とするので、膜の厚さ方向への粒成長は限られており、膜面方向に、より粒成長が促進されるから、例えば所定焼成条件において、等方的に粒成長しながらも、粒成長速度の結晶面間の差が大きいもの、さらには、その差が極めて大きく、等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長するもの、例えば立方体に成長するものでも、特定の結晶面を膜表面に揃えた状態(配向した状態)で、平板状のアスペクト比のより大きな結晶粒子に成長させることができる。ここで、一般式ABO3で表される酸化物のAサイトにPbを含み、BサイトにZr,Ti,Nb,Mg,Ni及びZnより選ばれる2種以上を含むペロブスカイト構造の酸化物では、例えば、その配合比を調整したり、または、この酸化物に結晶粒子の表面拡散を活性化する添加剤(ガラスなど)を加えるものとすると、粒成長が活発化するとともに粒成長速度の結晶面間の差が大きくなる。その差が極めて大きい場合は、多面体形状となり、擬立方晶のサイコロ状(6面体形状)に粒成長することがある。これを極薄の膜形状として粒成長させると、膜面内に(100)面が成長することにより膜面の垂直方向に結晶軸(100)が配向しやすくなることがある。即ち、このような酸化物では、膜面に平行に(100)面を持った粒子は、その2面を除く他の等価な(100)面である4面が成長面として成形体内の全方位に含まれるから膜内で等方的に粒成長し、膜表面に存在する残りの2面が無理なく拡がるため、アスペクト比の大きな粒子が得られやすい。この結晶粒子のアスペクト比は、2以上とすることが好ましく、3以上とすることがより好ましい。アスペクト比が2以上では、結晶粒子を配向させやすい。また、この結晶粒子は、膜面方向の結晶粒子の長さが結晶粒子の厚さ方向の長さ以上であることが好ましい。こうすれば、結晶粒子を配向させやすい。このように、Pb,Zr,Tiを含む酸化物の結晶面を配向させるものとすれば、例えば、シリコン単結晶ウエハ上へ形成した配向性Pt電極上へ化学蒸着などによりエピタキシャル成長させるようなものに比して、処理の簡素化及び材料費の低減を図ることができるし、結晶を配向させるため不要な元素を添加して圧電/電歪体を作製する方法に比して、配向度を高めつつ、その純度の低下を抑制することができる。なお、「不要な元素を添加することなく」とは、圧電/電歪特性に大きく影響しない範囲で、配向度や機械的強度などを高める添加剤を加えることを排除する趣旨ではない。ここで、「所定焼成条件における成長形」とは、与えられた熱処理条件下で無機粒子の結晶が平衡に達したときに見られるモルフォロジーと定義され、例えば、バルクを焼成し結晶化を進めた際に表面の粒子の形状を観察することにより得られるものである。成長形として、異方形状や多面形状となるのは、固体の融点、もしくは分解温度と、粒成長する温度が近い材料の他に、ガラスなどの低融点化合物をフラックスとして添加し、フラックスを介した粒成長を行わせるようにした系が好ましく選ばれる。フラックスを介することで、粒子表面での固体構成元素の動きが活発となるためである。また、結晶粒子のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡を用いてSEM観察を行い膜の厚さを求め、膜面を観察し、結晶粒子が20〜40個程度含まれる視野において、{(視野の面積)/(粒子の個数)}から粒子1個あたりの面積Sを算出し、更に粒子形態を円と仮定し、次式(2)によって粒径を算出し、この粒径を膜の厚さで除算した値をアスペクト比とするものとする。
【0025】
【数2】
【0026】
無機粒子の調製工程では、無機粒子の原料を粉砕混合し、混合した粉体を仮焼し、得られた無機粒子を更に粉砕することが好ましい。この無機粒子としては、ペロブスカイト構造を有する酸化物となるものが好ましく、一般式ABO3で表される酸化物のAサイトとしてPbを含むものとすることが好ましい。このとき、Bサイトとして、Zr、Ti、Nb、Mg、Ni及びZnから選ばれる1種以上を含むものとするのが好ましい。さらにフラックスとして、鉛ホウ酸系ガラス、亜鉛ホウ酸系ガラス、ホウ珪酸ガラス、鉛−珪酸ガラス、亜鉛−珪酸ガラス及びビスマス−珪酸ガラスなど、融点が1000℃以下のガラスを、0.1wt%以上添加したものとすると、900℃〜1300℃での成長形がより立方体形状となりやすい。この場合、フラックスの分散性の観点から、フラックス粉末をそのまま膜状にするのではなく、一度無機粒子と混合して仮焼しフラックス成分を十分拡散したあとこの仮焼した材料を粉砕し、この粉砕した粉末を次の工程で用いるものとするのが好ましい。ここで、フラックスのうちガラス成分は結晶配向を高める点では好ましいが、耐久性の観点ではガラス部分での剥離などが考えられるため、好ましくない。ここでは、ガラス成分は添加しないものとした。あるいは、一般式ABO3で表される酸化物を主成分とし、このAサイトがLi,Na,K,Bi及びAgから選ばれる1種以上を含み、BサイトがNb,Ta及びTiから選ばれる1種以上を含む粒子であるものとしてもよく、このうち(LiXNaYZ)NbMTaNO3や(BiXNaYZ)TiO3など(X,Y,Z,M,Nは任意の数を表す)を主成分とするものを用いるものとしてもよい。ABO3で表される酸化物となるものを用いるとき、AサイトとBサイトの比であるA/Bが1.0以上1.3以下となるよう原料を調製することが好ましい。A/Bが1.0以上1.3以下の範囲では、焼成後の結晶粒子のアスペクト比や配向度を大きいものとすることができる。また、A/Bが1.0以上1.3以下の範囲では、焼成時に揮発する鉛やアルカリ成分などを補償する点で好ましい。無機粒子の原料としては、目的の成分の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩及び酒石酸塩などを用いることができるが、主として酸化物、炭酸塩を用いることが好ましい。また、無機粒子の粉砕では、膜体の厚さに応じた粒径とすることが好ましく、無機粒子のメディアン径(D50)を膜体の厚さの2%以上60%以下とすることが好ましい。メディアン径が膜体の厚さの2%以上であれば粉砕処理が容易であり、60%以下であれば膜体の厚さを調整しやすい。この粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて分散媒(有機溶剤や水など)に分散させて測定した値を用いるものとする。無機粒子の粉砕は、湿式粉砕することが好ましく、例えばボールミルやビーズミル、トロンメル、アトライターなどを用いてもよい。
【0027】
第1塗布工程では、図2(a)に示すように、無機粒子を厚さが15μm以下の膜体となるよう、第1電極22上に塗布する。ここでは、例えば、無機粒子を含むペーストなどを用いたドクターブレード法やスクリーン印刷法などを用いてこの無機粒子を第1電極22上へ形成することができる。塗布前にペーストなどを調製するときには、無機粒子を適当な分散媒に分散させ、バインダーや可塑剤などを適宜加えてもよい。また、ペーストは、粘度が50000〜500000cPとなるように調製するのが好ましく、減圧下で脱泡するのが好ましい。膜体の厚さとしては、15μm以下とすることが好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が一層好ましく、2μm以下とすることが更に一層好ましい。10μm以下ではより高い配向度を得ることができ、5μm以下であればより一層高い配向度を得ることができる。また、膜体の厚さは、0.1μm以上とするのが好ましい。膜体の厚さが0.1μm以上であれば、塗布しやすい。
【0028】
第1焼成工程では、第1塗布工程で無機粒子を塗布したものを所定の焼成温度で焼成することにより、特定の方向に特定の結晶面が配向した配向結晶32を粒成長させると共に、第1電極22上に配向結晶32を固着させることができる。ここで、「固着」とは、有機系、無機系の接着剤を用いることなく、セラミックス焼成基体12との反応又は第1電極22との固相反応により、圧電/電歪体30を直接又は第1電極22を介して一体化することをいう。この特定の面としては例えば、圧電/電歪体の面内にある擬立方(100)面とすることができ、特定の方向としては、例えば、電界方向に沿って、即ち第1電極22及び第2電極24の電極面に対して直交する方向とすることが好ましい。この第1焼成工程の焼成条件について、焼成により平衡形の結晶が得られる焼成温度、例えばバルクを焼成することにより緻密化、粒成長する焼成温度に比べて1割以上高い温度で、この膜を形成したものを焼成することが好ましい。1割以上高い温度では、極薄の膜体に含まれる結晶の粒成長を十分進めることができる。具体的には、50℃〜200℃程度高い温度である。なお、成形体の材料が分解しない程度に高い温度で焼成することが好ましい。特に、膜体の厚さがより薄くなると、粒成長がしにくくなるため、焼成温度をより高くする傾向とすることが好ましい。例えば、無機粒子として、主成分がPb(Zr1-xTix)O3のBサイトにMg,Nbなどを置換したものの焼成工程では、成形体の焼成温度を900℃以上1400℃以下とすることが好ましく、1000℃以上1350℃以下とすることがより好ましい。焼成温度が900℃以上では、粒子の結晶の成長が促されるため好ましく、1400℃以下では、含まれる成分などの揮発を少なく抑えることができ、材料が分解してしまうのを抑制することができる。また、無機粒子として、NaNbO3のAサイトにLi,Kなどを置換し、BサイトにTaを置換したもの((LiXNaYZ)NbMTaN3)の焼成工程では、成形体の焼成温度を900℃以上1250℃以下とすることが好ましい。焼成温度が900℃以上では、粒子の結晶の成長が促されるため好ましく、1250℃以下では、アルカリ成分などの揮発を少なく抑えることができ、材料が分解してしまうのを抑制することができる。こうして、図1(b)に示すように、含まれる無機粒子が、特定の結晶面の配向した結晶粒子32に粒成長したものを得ることができる。なお、バインダーなどを含む成形体の場合は、焼成を行う前に脱脂を主目的とする熱処理を行ってもよい。このとき、脱脂の温度は、少なくともバインダーなどの有機物を熱分解させるに十分な温度(例えば400〜600℃)とする。また、脱脂を行ったあと、焼成を行う前に静水圧処理(CIP)を行うのが好ましい。脱脂後の膜体に対して更に静水圧処理を行うと、脱脂に伴う配向度の低下、あるいは、膜体の体積膨張に起因する焼結体密度の低下などを抑制することができる。また、この第1焼成工程では、成形体に含まれる特定成分(例えば鉛やアルカリなど)の揮発を抑制する揮発抑制状態で成形体を焼成することが好ましい。こうすれば、成形体からの特定の元素が揮発してしまうのを抑制することにより、焼成後の組成がずれてしまうのを抑制することができる。例えば、揮発抑制状態としては、成形体とは別の無機粒子を共存させた状態や、蓋付きの鞘などに入れた密閉状態などが挙げられる。このとき、共存させる無機粒子の量や鞘内部の容積など、焼成時の条件を適切な状態に経験的に設定することが重要である。なお、面内の粒成長を促進する観点から、ホットプレスなど加重焼成してもよい。このようにして、第1電極22上に所定方向へ配向した配向結晶32を含む圧電/電歪体30の一部となる膜体を形成するのである(図2(b))。
【0029】
(3)圧電/電歪体形成工程
続いて、第1結晶体生成工程で配向結晶化した層の上に更に圧電/電歪体30の層を望みの厚さとなるまで積層させる工程を行う。この工程は、生成した結晶体上に更に圧電/電歪体30となる無機粒子を塗布する塗布工程と、所定温度で焼成して結晶体を生成する焼成工程とを1回含むものとすればよいが、更に、生成した結晶体上に圧電/電歪体30となる無機粒子を塗布する塗布工程と、所定温度で焼成して結晶体を生成する焼成工程とを複数回、繰り返し含むものとしてもよい。この膜体を積層させる回数は、所望の圧電/電歪体30の厚さとなるように、例えば圧電/電歪体30が1μm以上20μm以下の厚さとなるように、1回以上の回数で適宜設定すればよい。ここでの、膜体の厚さや焼成温度などは、上述した第1結晶体生成工程と同じ条件に設定してもよいし、第1結晶体生成工程と異なる条件に設定してもよい。また、第1結晶体生成工程と同様に、脱脂を行ってもよいし、静水圧処理を行ってもよいし、揮発抑制状態で焼成してもよいし、これらの処理のいずれか1以上を適宜省略してもよい。この圧電/電歪体形成工程では、図2に示すように、配向結晶32を含む第1層31aの上に、更に無機粒子を含む第2層31bを形成し(図2(c))、これを焼成して配向結晶32を含む第2層31bとし、この第2層31bの上に更に無機粒子を含む第3層31cを形成する(図2(d))。これらの工程を所望の厚さとなるまで繰り返すことにより、圧電/電歪体30を第1電極22上に形成する(図2(e))。この圧電/電歪体30では、各層が確実に膜面に結晶が成長するため、より確実に所定方向に配向した配向結晶32を含むものを生成することができる。ここで、この工程において、第1結晶体生成工程で配向結晶化した層(1層目)の原料と、この上に形成する層(2層目以上の層)の原料とは、同じものとしてもよいし、異なるものとしてもよい。例えば、原料の無機粒子としてPbを含むものを用いる場合は、1層目を等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長する組成(例えばガラスを添加したものなど)とし、平板状に粒成長させれば、2層目についても1層目に沿って粒成長することができる。このため、1層目と2層目との組成を異なるものとすることができる。なお、図3に示すように、第1層31aの上に、更に無機粒子を含む第2層31bを形成し、この第1層31aの配向性に倣うことで第2層以降の結晶配向を行う、即ち第1層31aの配向結晶32が第2層目以降を取り込んで膜厚方向に結晶成長させるものとしてもよい。
【0030】
(4)第2電極形成工程
次に、形成した圧電/電歪体30上に第2電極24を形成する処理を行う。ここでは、圧電/電歪体30の一方の面に第1電極22を形成し、第1電極22を形成した面の裏側の他方の面に第2電極24を形成するものとした。この第2電極24の形成は、上述した第1電極形成工程と同様の条件で行う工程とすることもできるし、第1電極形成工程と異なる条件で行う工程とすることもできる。このように、第1電極22と第2電極24とに挟み込まれた圧電/電歪体30を備えた圧電/電歪素子20が第1電極22側でセラミックス焼成基体12上に配設されたアクチュエータ10を作製することができる(図2(f))。
【0031】
以上詳述した本実施形態の圧電/電歪素子20によれば、圧電/電歪体30の配向度を高めることにより、圧電/電歪特性をより高めることができる。また、圧電/電歪体30は、特定の結晶軸が電界方向に沿って配向しているため、より一層圧電/電歪特性をより高めることができる。更に、無機粒子を膜体に形成して焼成するため、比較的簡便な方法で配向度を高めることができるし、セラミックス焼成基体12の配向性にかかわらず配向度の高い圧電/電歪体30を作製することができる。更にまた、セラミックス膜に形成することにより、等方的且つ多面体形状に成長する結晶粒子、例えば、主成分をPb(Zr1-xTix)O3とする材料であっても、異方形状に粒成長させ、結晶の配向性を高めることができる。そして、15μm程度のセラミックス膜を順次積層可能であるため、比較的容易に1μm以上(例えば20μmなど)の膜厚の圧電/電歪体30を作製することができる。そしてまた、1層ごとに結晶の配向性を高めるため、より確実に配向度を高めて圧電/電歪特性を高めることができる。
【0032】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0033】
例えば、上述した実施形態では、無機粒子の1層を塗布し焼成して結晶面を所定方向に配向させる処理を繰り返して実行することにより圧電/電歪体30を作製するものとしたが、図5に示すように、無機粒子を結晶化したテンプレートとしての結晶粒子と配向していない無機粒子とを含むスラリーやペーストなどを作製し、これを結晶粒子が所定方向に揃うよう且つ圧電/電歪体30の厚さとなるように1回塗布して焼成することにより結晶粒子の配向した圧電/電歪素子20を作製するものとしてもよい。例えば、この製造方法は、(1)第1電極形成工程、(2)電極を介して間接的に又は直接的にセラミックス焼成基体上へ圧電/電歪体となる結晶粒子を含む圧電/電歪体となる原料を塗布する塗布工程と、塗布工程のあと所定温度で焼成して結晶体を生成する焼成工程とを含む、圧電/電歪体形成工程、(3)第2電極形成工程とを含むものとしてもよい。図4は、圧電/電歪素子20の他の製造方法の一例を表す説明図であり、図4(a)が圧電/電歪体30の原料の塗布工程、図4(b)が焼成工程後に得られる配向した圧電/電歪体30の図、図4(c)が第2電極形成工程の図である。この製造方法において、第1及び第2電極形成工程は、上述した実施形態と同様の工程を行うものとしてもよい。説明の便宜より、(2)圧電/電歪体形成工程について具体的に説明する。この圧電/電歪体形成工程の塗布工程では、予め特定の結晶面が所定方向に配向した結晶粒子を作製しておき、この結晶粒子と配向していない無機粒子とを混合したペースト状の塗布原料を調製する。ここで、結晶粒子は、例えば、厚さを15μm以下とし、無機粒子を含む自立したシート形状に成形されたシートを焼成したセラミックスシートを、アスペクト比が2以下、より好ましくは3以下にならない程度に解砕して得ることができる。この場合、結晶面が配向するメカニズムは、上述した基体上に形成された膜体と同様である。ここで、「自立したシート」とは、シート厚さを15μm以下に成形したシート状の成形体を焼成して得たものをいい、他のシートに積層して焼成された状態であるものや、なんらかの基板に貼り付けて焼成された状態であるもの、スパッタ、ゾルゲル、エアロゾルデポジション法、印刷法などによりなんらかの基板に成膜され支持された状態のものを含まない趣旨である。なお、「自立したシート」は、なんらかの基板に貼り付けたり成膜したりして、焼成前、又は焼成後に、この基板から剥離したものをも含む。図4(a)に示すように、こうして得た結晶粒子33を、その他の原料粉体(例えば配向していない無機粒子など)と適宜バインダーや可塑剤などと混合して塗布原料とし、第1電極22上へこの結晶粒子33が一定方向を向いた成形膜31を形成するような塗布処理を行う。この塗布処理は、スクリーン印刷法やドクターブレード法などにより行うことができる。また、塗布処理での成形膜31の厚さは、圧電/電歪体30として必要とする所望の厚さに塗布原料を塗布すればよい。続いて、成形膜31を形成したセラミックス焼成基体12を所定温度で焼成し、結晶粒子33が配向している方向に他の無機粒子を配向させる焼成工程を行い圧電/電歪体30を得る(図4(b))。この焼成工程は、上述した実施形態と同様の条件や処理を行うものとしてもよい。そして、第2電極形成工程により、第2電極24を圧電/電歪体30上に形成し、圧電/電歪素子20を得ることができる。こうしても、圧電/電歪体30の配向度を高めることにより、圧電/電歪特性をより高めることができる。また、塗布工程及び焼成工程の繰り返し数を低減可能であり、より簡潔な処理とすることができる。更に、焼成工程の繰り返しを抑制することにより、結晶を配向させるのに必要なエネルギ量を低減することができる。
【0034】
このとき、テンプレートとしての結晶粒子33を含む成形膜31を1層形成して焼成することにより圧電/電歪体30を配向させるものとしたが、結晶粒子33を含む層を多層に亘って形成してもよい。こうしても、圧電/電歪体30を配向させることにより、圧電/電歪特性をより高めることができる。また、自立したセラミックスシートを作製することにより結晶粒子を得るものとしたが、これに限定されず、例えば、異方形状(板状など)になりやすい層状ペロブスカイト構造を有する組成において板状結晶を得たあと、溶融塩中などでこの組成の一部を置換させることにより所望の組成とした結晶粒子を作製し、これを用いて圧電/電歪素子20の製造を行うものとしてもよい。また、上述した実施形態では、セラミックスシートを解砕して結晶粒子を得るものとしたが、セラミックスシートを解砕しないでそのまま用いるものとしてもよい。具体的には、配向していない無機粒子の層とセラミックスシートの層とを交互に形成し、これを焼成することにより配向していない無機粒子をセラミックスシートに含まれる配向した結晶粒子に沿って粒成長させるのである。こうしても、より一層圧電/電歪特性を高めることができる。
【0035】
上述した実施形態では、第1結晶体生成工程での第1塗布工程や圧電/電歪体形成工程での塗布工程などにおいて、塗布することにより、第1電極22上や第1層31aなどの各層上へ圧電/電歪体30となる原料を形成するものとしたが、特に塗布するものに限られず、例えば、ゾルゲル法や化学気相成長法、スパッタリング方などを用いてセラミックス焼成基体12上や第1電極22上や各層上のいずれかへ圧電/電歪体30となる原料を形成する原料形成工程としてもよい。こうすれば、粒径が小さく、表面粗さの小さな緻密な膜体を形成することができる。また、これらの方法のいずれかを用いれば、均質性の優れたものが作製できるため、薄くても耐電圧が高いものを作製でき、高電界を印加した際に絶縁破壊してしまうのを抑制し、高い変位を得ることができる。
【0036】
上述した実施形態では、液体を吐出させるアクチュエータ10として説明したが、圧電/電歪特性を用いるものであれば特にこれに限られず用いることができる。例えば、この圧電/電歪素子20は、誘電体材料、焦電体材料、強誘電体材料、磁性材料、イオン伝導材料、電子伝導性材料、熱伝導材料、熱電材料、超伝導材料、耐摩耗性材料等の機能や特性が結晶方位依存性を有する物質よりなる多結晶材料へ用いることができる。具体的には、加速度センサ、焦電センサ、超音波センサ、電界センサ、温度センサ、ガスセンサ、ノッキングセンサ、ヨーレートセンサ、エアバックセンサ、圧電ジャイロセンサ等の各種センサ、圧電トランス等のエネルギー変換素子、超音波モータ、レゾネータ等の低損失アクチュエータ又は低損失レゾネータ、キャパシタ、バイモルフ圧電素子、振動ピックアップ、圧電マイクロホン、圧電点火素子、ソナー、圧電ブザー、圧電スピーカ、発振子、フィルタ、誘電素子、マイクロ波誘電素子、熱電変換素子、焦電素子、磁気抵抗素子、磁性素子、超伝導素子、抵抗素子、電子伝導素子、イオン伝導素子、PTC素子、NTC素子等に応用すれば、高い性能を有する各種素子を得ることができる。このとき、圧電/電歪体30の厚さや配向度は、用途に合わせた値を適宜設定するものとする。
【0037】
上述した実施形態では、セラミックス焼成基体12に空間部14を1つ備えたものとしたが、空間部14と圧電/電歪体30とを複数配列したものとしてもよい。あるいは、空間部14の形成されていないセラミックス焼成基体を用いてもよい。
【0038】
上述した実施形態では、圧電/電歪体30を矩形板状の形状としたが、特にこれに限定されず、任意の形状としてもよい。また、第1電極22や第2電極24、セラミックス焼成基体12についても同様である。例えば、図5に示すように、複数の電極22,24,26を備え、ドーム形状に形成された圧電/電歪体30Bと、圧電/電歪体30Bの下面側に配置された第1電極22と、圧電/電歪体30B内部に配置された第2電極24と、圧電/電歪体30Bの上部に設けられた第3電極26とを備えた圧電/電歪素子20Bとしてもよい。
【0039】
上述した実施形態では、第1電極22を介して圧電/電歪体30をセラミックス焼成基体12上に形成するものとしたが、圧電/電歪体をセラミックス焼成基体に直接形成するものとしてもよい。こうしても、圧電/電歪体の配向度を高めることにより、圧電/電歪特性をより高めることができる。
【実施例】
【0040】
以下には、圧電/電歪膜型素子を具体的に製造した例を実験例として説明する。
【0041】
[実験例1]
(原料調製工程)
0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3に1.5重量%のNiOを添加した組成比となる合成粉末へ、ZnO−B23−SiO2系ガラス粉末(旭硝子(AGG)製ASF1891)を0.5重量%添加し、ポリポットにこの秤量物とジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とを入れ、ボールミルで16h、湿式混合を行った。得られたスラリーを乾燥機で乾燥したあと、800℃、2hの条件下で仮焼した。この仮焼粉末と、ジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とを入れ、ボールミルで5h湿式粉砕し、乾燥機によって乾燥し、第1無機粒子の粉体を得た。また、0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3に1.5重量%のNiOを添加した組成比となる合成粉末をポリポットへこの秤量物とジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とを入れ、ボールミルで16h、湿式混合を行った。得られたスラリーを乾燥機で乾燥したあと、800℃、2hの条件下で仮焼した。この仮焼粉末と、ジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とを入れ、ボールミルで5h湿式粉砕し、乾燥機によって乾燥し、第2無機粒子の粉体を得た。
(第1電極形成工程)
23で安定化された、薄肉部が平坦なZrO2基体(薄肉部の寸法:1.6×1.1mm、厚さ7μm)上に、Ptからなる第1電極(寸法:1.2×0.8mm、厚さ3μm)をスクリーン印刷法により形成し、1300℃、2時間の熱処理により基体と一体化させた。
(第1結晶体生成工程・圧電/電歪体形成工程)
形成した第1電極の上に、0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3に1.5重量%のNiOとZnO−B23−SiO2系ガラス粉末(旭硝子(AGC)製ASF1891)を0.5重量%添加した組成物(第1無機粒子からなる組成物)を分散媒や可塑剤、分散剤を加えてペースト状とし、このペーストをスクリーン印刷法により、乾燥後のサイズが1.3mm×0.9mm、厚さ2μmで形成した膜体を得た。得られたものを1200℃、5時間、成形体と同じ成形原料を共存させた状態で熱処理(焼成)した。熱処理後のセラミックス膜(圧電/電歪体)の厚さは、1.3μm、ロットゲーリング法による配向度は80%であった。得られたセラミックス膜の上に、0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3に1.5重量%のNiOを添加した組成物(第2無機粒子からなる組成物) を分散媒や可塑剤、分散剤を加えてペースト状とし、乾燥後のサイズが1.3mm×0.9mm、厚さ8μmで形成した膜体を得た。得られたものを1200℃、5時間熱処理(焼成)した。熱処理後のセラミックス膜(圧電/電歪体)は、厚さが5.1μm、ロットゲーリング法による配向度が75%であった。
(第2電極形成工程)
次に、圧電/電歪体の上面にAuからなる第2電極(寸法:1.2mm×0.8mm、厚さ0.5μm)をスクリーン印刷法により形成したあと、熱処理して膜状の圧電駆動部を有する、実験例1の圧電膜型アクチュエータを作製した。
【0042】
[実験例2]
(原料調製工程)
上述した実験例1と同様に、第1無機粒子と第2無機粒子とを作製した。この第1無機粒子と、分散媒と、バインダーと、可塑剤と、分散剤とを混合し、スラリー状の成形原料を作製した。次に、得られたスラリーを、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度500〜700cPとなるように調製し、ドクターブレード法によってPETフィルムの上にシート状に成形した。乾燥後の厚さを1μmとした。この成形体を、この成形体と同じ成形原料を共存させた状態で600℃、2h脱脂後、1100℃で5h焼成を行った。焼成後、セッターに溶着していない部分を取り出し、圧電/電歪素子に用いるセラミックスシートを得た。得られたセラミックスシートをアスペクト比が3以下にならない程度に解砕・分級し、組成が0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3に1.5重量%のNiOを添加した板状多結晶粒子とした。
(第1電極形成工程)
上述した実験例1と同様に、Y23で安定化された、薄肉部が平坦なZrO2基体上に、Ptからなる第1電極を形成した。
(圧電/電歪体形成工程)
0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3に1.5重量%のNiOを添加した組成物(第2無機粒子)と上記第1無機粒子からなる板状多結晶粒子とを重量比で80:20となるように配合した圧電材料を分散媒や可塑剤、分散剤を加えてペースト状とした。このペーストをスクリーン印刷法により、結晶粒子が一方向に配向し且つ乾燥後のサイズが1.3mm×0.9mm、厚さ8μmとなるよう第1電極の上に塗布し、膜体を得た。得られたものを1150℃、5時間、成形体と同じ成形原料を共存させた状態で焼成し、上記無機粒子の粒成長を行い、セラミックス膜を得た。熱処理後のセラミックス膜(圧電/電歪体)は、厚さが5.1μm、ロットゲーリング法による配向度が50%であった。
(第2電極形成工程)
次に、実験例1と同様に、圧電/電歪体の上面にAuからなる第2電極を形成し膜状の圧電駆動部を有する、実験例2の圧電膜型アクチュエータを作製した。
【0043】
[実験例3]
(原料調製工程)
[Li0.07(Na0.630.370.93]1.01Nb0.92Ta0.083の組成比となるように、各粉末(Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Nb25、Ta25)を秤量した。ポリポットに、秤量物と、ジルコニアボールと、分散媒としてエタノールを入れ、ボールミルで16h湿式混合、粉砕を行った。得られたスラリーを乾燥した後、850℃,5hの条件化で仮焼成した。この仮焼粉末と、ジルコニアボールと、分散媒としてエタノールを入れ、ボールミルで5h湿式粉砕し、乾燥して、[Li0.07(Na0.630.370.93]1.01Nb0.92Ta0.083の第3無機粒子の粉体を得た。
(第1電極形成工程)
上述した実験例1と同様に、Y23で安定化された、薄肉部が平坦なZrO2基体上に、Ptからなる第1電極を形成した。
(第1結晶体生成工程・圧電/電歪体形成工程)
[Li0.07(Na0.630.370.93]1.01Nb0.92Ta0.083となるようにした組成物(第3無機粒子)を分散媒や可塑剤、分散剤を加えてペースト状とした。このペーストをスクリーン印刷法により、乾燥後のサイズが1.3mm×0.9mm、厚さ2μmとなるよう第1電極の上に塗布し、膜体を得た。得られたものを1100℃、5時間、成形体と同じ成形原料を共存させた状態で熱処理(焼成)した。熱処理後のセラミックス膜(圧電/電歪体)は、厚さが1.3μm、配向度は90%であった。得られたセラミックス膜の上に、同様に第3無機粒子を含む上記ペーストをスクリーン印刷し、乾燥後のサイズが1.3mm×0.9mm、厚さ8μmで形成した膜体を得た。得られたものを1100℃、5時間熱処理(焼成)した。熱処理後のセラミックス膜(圧電/電歪体)は、厚さが5.0μm、ロットゲーリング法による配向度が85%であった。
(第2電極形成工程)
次に、実験例1と同様に、圧電/電歪体の上面にAuからなる第2電極を形成し膜状の圧電駆動部を有する、実験例3の圧電膜型アクチュエータを作製した。
【0044】
[実験例4]
(原料調製工程)
上述した実験例3と同様に、第3無機粒子の粉体を作製した。この第3無機粒子と、分散媒、バインダー、可塑剤と、分散剤とを混合し、スラリー状の成形原料を作製した。次に、得られたスラリーを、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度500〜700cPとなるように調製しドクターブレード法によってPETフィルムの上にシート状に成形した。乾燥後の厚さを1μmとした。この成形体を、この成形体と同じ成形原料を共存させた状態で600℃、2h脱脂後、1100℃で5h焼成を行った。焼成後、セッターに溶着していない部分を取り出し、圧電/電歪素子に用いるセラミックスシートを得た。得られたセラミックスシートをアスペクト比が3以下にならない程度に解砕・分級し、組成が[Li0.07(Na0.630.370.93]1.01Nb0.92Ta0.083の板状多結晶粒子とした。
(第1電極形成工程)
上述した実験例1と同様に、Y23で安定化された、薄肉部が平坦なZrO2基体上に、Ptからなる第1電極を形成した。
(圧電/電歪体形成工程)
焼成後の組成が[Li0.07(Na0.630.370.93]1.01Nb0.92Ta0.083となる無機粒子粉体(配向していない原料粉体)と第3無機粒子からなる板状多結晶粒子とを無機材料100重量部に対して板状多結晶粒子30重量部となるよう混合し、分散媒や可塑剤、分散剤を加えてペースト状とした。このペーストをスクリーン印刷法により、乾燥後のサイズが1.3mm×0.9mm、厚さ8μmとなるよう第1電極の上に塗布し、膜体を得た。この膜体を室温で乾燥したのち、600℃、2h脱脂後、1100℃で5h成形体と同じ成形原料を共存させた状態で焼成し、上記無機粒子の粒成長を行い、セラミックス膜を得た。熱処理後のセラミックス膜(圧電/電歪体)は、厚さが5.1μm、ロットゲーリング法による配向度は70%であった。
(第2電極形成工程)
次に、実験例1と同様に、圧電/電歪体の上面にAuからなる第2電極を形成し膜状の圧電駆動部を有する、実験例4の圧電膜型アクチュエータを作製した。
【0045】
[実験例5]
焼成後の圧電/電歪体の組成が0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3に1.5重量%のNiOを添加した組成比となる無機粒子(配向していない第2無機粒子)のみを原料粉体として板状多結晶粒子を加えずに、圧電/電歪生成工程を行った以外は上述した実験例2と同様の工程を行い、実験例5の圧電膜型アクチュエータを得た。
【0046】
[実験例6]
焼成後の圧電/電歪体の組成が[Li0.07(Na0.630.370.93]1.01Nb0.92Ta0.083の組成比となる無機粒子(配向していない第3無機粒子)のみを原料粉体とし、板状多結晶粒子を加えずに、圧電/電歪生成工程を行った以外は上述した実験例4と同様の工程を行い、実験例6の圧電膜型アクチュエータを得た。
【0047】
[実験例7]
(原料調製工程)
0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3に0.5重量%のNiOと1.0重量%のMgOを添加した組成比となる合成粉末を、ポリポットにこの秤量物とジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とを入れ、ボールミルで16h、湿式混合を行った。得られたスラリーを乾燥機で乾燥したあと、800℃、2hの条件下で仮焼した。この仮焼粉末と、ジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とを入れ、ボールミルで5h湿式粉砕し、乾燥機によって乾燥し、第1無機粒子の粉体を得た。また、0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3に0.5重量%のNiOを添加した組成比となる合成粉末をポリポットへこの秤量物とジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とを入れ、ボールミルで16h、湿式混合を行った。得られたスラリーを乾燥機で乾燥したあと、800℃、2hの条件下で仮焼した。この仮焼粉末と、ジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とを入れ、ボールミルで5h湿式粉砕し、乾燥機によって乾燥し、第2無機粒子の粉体を得た。この粉体をHORIBA製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−750を用い、水を分散媒として平均粒径を測定したところ、メディアン径(D50)は、0.4μmであった。
(第1電極形成工程)
23で安定化された、薄肉部が平坦なZrO2基体(薄肉部の寸法:1.6×1.1mm、厚さ7μm)上に、Ptからなる第1電極(寸法:1.2×0.8mm、厚さ3μm)をスクリーン印刷法により形成し、1300℃、2時間の熱処理により基体と一体化させた。
(第1結晶体生成工程・圧電/電歪体形成工程)
形成した第1電極の上に、0.20Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3に0.5重量%のNiOと1.0重量%のMgOを添加した組成物(第1無機粒子からなる組成物)を分散媒や可塑剤、分散剤を加えてペースト状とし、このペーストをスクリーン印刷法により、乾燥後のサイズが1.3mm×0.9mm、厚さ2μmで形成した膜体を得た。この膜体をマグネシアからなる鞘(寸法90mm角、高さ50mm)に0.12Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.38PbTiO3−0.50PbZrO3に0.5重量%のNiOを添加した組成粉末を20g共存させた状態で1280℃、3時間、熱処理(焼成)した。熱処理後のセラミックス膜(圧電/電歪体)の厚さは、1.3μm、ロットゲーリング法による配向度は80%であった。得られたセラミックス膜の上に、0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3に0.5重量%のNiOを添加した組成物(第2無機粒子からなる組成物) を分散媒や可塑剤、分散剤を加えてペースト状とし、乾燥後のサイズが1.3mm×0.9mm、厚さ8μmで形成した膜体を得た。得られた膜体を鞘に、0.12Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.38PbTiO3−0.50PbZrO3に0.5重量%のNiOを添加した組成粉末を20g共存させた状態で1280℃、3時間熱処理(焼成)した。熱処理後のセラミックス膜(圧電/電歪体)は、厚さが5.1μm、ロットゲーリング法による配向度が73%であった。
【0048】
[実験例8]
(原料調製工程)
0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.43PbTiO3−0.37PbZrO3に0.5重量%のNiOと1.0重量%のMgOを添加した組成比となる合成粉末を、ポリポットにこの秤量物とジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とを入れ、ボールミルで16h、湿式混合を行った。得られたスラリーを乾燥機で乾燥したあと、800℃、2hの条件下で仮焼した。この仮焼粉末と、ジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とを入れ、ボールミルで5h湿式粉砕し、乾燥機によって乾燥し、第1無機粒子の粉体を得た。また、0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.43PbTiO3−0.37PbZrO3に0.5重量%のNiOを添加した組成比となる合成粉末をポリポットへこの秤量物とジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とを入れ、ボールミルで16h、湿式混合を行った。得られたスラリーを乾燥機で乾燥したあと、800℃、2hの条件下で仮焼した。この仮焼粉末と、ジルコニアボールと分散媒としてイオン交換水とを入れ、ボールミルで5h湿式粉砕し、乾燥機によって乾燥し、第2無機粒子の粉体を得た。この粉体をHORIBA製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−750を用い、水を分散媒として平均粒径を測定したところ、メディアン径(D50)は、0.4μmであった。
(第1電極形成工程)
23で安定化された、薄肉部が平坦なZrO2基体(薄肉部の寸法:1.6×1.1mm、厚さ7μm)上に、Ptからなる第1電極(寸法:1.2×0.8mm、厚さ3μm)をスクリーン印刷法により形成し、1300℃、2時間の熱処理により基体と一体化させた。
(第1結晶体生成工程・圧電/電歪体形成工程)
形成した第1電極の上に、0.20Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.43PbTiO3−0.37PbZrO3に0.5重量%のNiOと1.0重量%のMgOを添加した組成物(第1無機粒子からなる組成物)を分散媒や可塑剤、分散剤を加えてペースト状とし、このペーストをスクリーン印刷法により、乾燥後のサイズが1.3mm×0.9mm、厚さ2μmで形成した膜体を得た。この膜体をマグネシアからなる鞘(寸法90mm角、高さ50mm)に0.12Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.43PbTiO3−0.45PbZrO3に0.5重量%のNiOを添加した組成粉末を20g共存させた状態で1280℃、3時間、熱処理(焼成)した。熱処理後のセラミックス膜(圧電/電歪体)の厚さは、1.3μm、ロットゲーリング法による配向度は83%であった。得られたセラミックス膜の上に、0.2Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.35PbTiO3−0.45PbZrO3に0.5重量%のNiOを添加した組成物(第2無機粒子からなる組成物) を分散媒や可塑剤、分散剤を加えてペースト状とし、乾燥後のサイズが1.3mm×0.9mm、厚さ8μmで形成した膜体を得た。得られた膜体を鞘に、0.12Pb(Mg0.33Nb0.67)O3−0.43PbTiO3−0.45PbZrO3に0.5重量%のNiOを添加した組成粉末を20g共存させた状態で1280℃、3時間熱処理(焼成)した。熱処理後のセラミックス膜(圧電/電歪体)は、厚さが5.1μm、ロットゲーリング法による配向度が77%であった。
【0049】
[実験例9]
(原料調製工程)
(Bi0.5Na0.450.051.2TiO3.2の組成比となるように、各粉末(Bi23、Na2CO3、K2CO3、TiO2)を秤量した。ポリポットに、秤量物と、ジルコニアボールと、分散媒としてエタノールを入れ、ボールミルで16h湿式混合、粉砕を行った。得られたスラリーを乾燥した後、800℃,2hの条件化で仮焼成した。この仮焼粉末と、ジルコニアボールと、分散媒としてエタノールを入れ、ボールミルで5h湿式粉砕し、乾燥して、(Bi0.5Na0.450.051.2TiO3.2の第4無機粒子の粉体を得た。この粉体をHORIBA製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−750を用い、水を分散媒として平均粒径を測定したところ、メディアン径(D50)は、0.4μmであった。
(第1電極形成工程)
上述した実験例1と同様に、Y23で安定化された、薄肉部が平坦なZrO2基体上に、Ptからなる第1電極を形成した。
(第1結晶体生成工程・圧電/電歪体形成工程)
(Bi0.5Na0.450.051.2TiO3.2となるようにした組成物(第4無機粒子)を分散媒や可塑剤、分散剤を加えてペースト状とした。このペーストをスクリーン印刷法により、乾燥後のサイズが1.3mm×0.9mm、厚さ2μmとなるよう第1電極の上に塗布し、膜体を得た。得られたものを1200℃、5時間、成形体と同じ成形原料を共存させた状態で熱処理(焼成)した。熱処理後のセラミックス膜(圧電/電歪体)は、厚さが1.3μm、配向度は70%であった。 得られたセラミックス膜の上に、同様に第4無機粒子を含む上記ペーストをスクリーン印刷し、乾燥後のサイズが1.3mm×0.9mm、厚さ8μmで形成した膜体を得た。得られたものを1100℃、5時間熱処理(焼成)した。熱処理後のセラミックス膜(圧電/電歪体)は、厚さが5.0μm、ロットゲーリング法による配向度が60%であった。
(第2電極形成工程)
次に、実験例1と同様に、圧電/電歪体の上面にAuからなる第2電極を形成し膜状の圧電駆動部を有する、実験例9の圧電膜型アクチュエータを作製した。
【0050】
[実験例10]
圧電/電歪体の組成が(Bi0.5Na0.450.05)TiO3の組成比となる無機粒子のみを原料粉体とし、板状多結晶粒子を加えずに、圧電/電歪生成工程を行い、焼成を1200℃×5hとした以外は上述した実験例9と同様の工程を行い、実験例10の圧電膜型アクチュエータを得た。
【0051】
[X線回折測定、配向度の算出]
実験例1〜10について、XRD回折装置(リガク社製RINT TTRIII)を用い、セラミックス膜(圧電/電歪体)の結晶面に対してX線を照射したときのXRD回折パターンを測定した。この測定結果を用い、ロットゲーリング法によって擬立方(100)面の配向度を、擬立方(100),(110),(111)のピークを使用して上述の式(1)を用いて計算した。実験例1及び3については、第1結晶体生成工程を行い第1電極上に膜状の第1層目を形成して粒成長させた状態のものについてもXRD回折パターンを測定した(図6,8参照)。
【0052】
[電子顕微鏡写真撮影]
実験例1,3について、第1結晶体生成工程を行い第1電極上に膜状の第1層目を形成して粒成長させた状態のものを、走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM−6390)を用いてSEM写真を撮影した(図7,9参照)。また、実験例3について、第2層目を形成させたもののSEM写真を図10に示す。
【0053】
[屈曲変位]
作製した実験例1〜10の圧電/電歪膜型アクチュエータ10の電極間に、電界が3kV/mmとなるように電圧を印加し、生じた屈曲変位(μm)をレーザドップラー振動計(グラフテック製センサAT0022、復調器AT3500)により測定した。
【0054】
[測定結果]
測定結果を表1に示す。図6に示すように、PbとZrとTiとを含む組成において、実験例1は、実験例5に比して高い配向性を有していた。また、図7に示すように、実験例1は、第1電極上において、第1層目の圧電/電歪体がアスペクト比の高い平板状に粒成長していた。また、NaとNbとを含む組成において、図8に示すように、実験例3は、実験例6に比してより1つの相により構成されていた。また、図9に示すように、実験例3は、第1電極上において、第1層目の圧電/電歪体がアスペクト比の高い平板状に粒成長していた。実験例1〜4では、ロットゲーリング法による配向度が50%以上と、結晶の配向性が高く、また、屈曲変位も実験例5,6に対して大きな値を示し、圧電/電歪特性が高いことが明らかとなった。また、実験例7,8では、ガラス成分を添加することなく、より高い配向性と屈曲変位が得られることがわかった。ガラス成分が添加されていると、内部に存在するガラス部分の剥離などにより圧電特性が劣化することがあるが、この実験例7,8では、ガラス成分が添加されていないため、圧電特性の劣化が抑制されているものと推察された。BiとTiとを含む組成において、表1に示すように、実験例9では、ロットゲーリング法による配向度が50%以上と、結晶の配向性が高く、また、屈曲変位も実験例10に対して大きな値を示し、圧電/電歪特性が高いことが明らかとなった。また、実験例1〜4及び実験例7〜9では、セラミックス焼成基体の配向性などにかかわらず、圧電/電歪体の配向度を高めることができることがわかった。
【0055】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、圧電体・電歪体の技術分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 アクチュエータ、12 セラミックス焼成基体、14 空間部、20,20B 圧電/電歪素子、22 第1電極、22a,24a タブ、24 第2電極、26 第3電極、30,30B 圧電/電歪体、31 成形膜、31a 第1層、31b 第2層、31c 第3層、32 配向結晶、33 結晶粒子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10