特許第5770368号(P5770368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5770368無線通信システム、無線基地局および通信制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770368
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線基地局および通信制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 8/22 20090101AFI20150806BHJP
   H04W 16/02 20090101ALI20150806BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20150806BHJP
   H04W 72/04 20090101ALI20150806BHJP
【FI】
   H04W8/22
   H04W16/02
   H04W16/28 130
   H04W72/04 131
【請求項の数】16
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2014-511144(P2014-511144)
(86)(22)【出願日】2013年3月12日
(86)【国際出願番号】JP2013056854
(87)【国際公開番号】WO2013157331
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2014年7月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-94909(P2012-94909)
(32)【優先日】2012年4月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(72)【発明者】
【氏名】大渡 裕介
(72)【発明者】
【氏名】三木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】森本 彰人
(72)【発明者】
【氏名】奥村 幸彦
【審査官】 三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/129447(WO,A1)
【文献】 特開2012−029181(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/033474(WO,A2)
【文献】 Nokia Siemens Networks, Nokia,On TDM eICIC Performance with Different Receiver Models,3GPP TSG-RAN WG1 Meeting #66 R1-112382,2011年 8月16日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セルを形成する第1無線基地局と、
前記第1無線基地局と接続し、接続先の第1無線基地局が形成する前記第1セル内に前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを形成する第2無線基地局と、
前記第1無線基地局および前記第2無線基地局のうち少なくともいずれか1つと各々が無線接続を確立して無線通信を実行する複数の移動端末と
を備える無線通信システムであって、
前記複数の移動端末の各々は、前記移動端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であるか否かを示す能力情報を前記第1無線基地局または前記第2無線基地局に通知する端末能力情報通知部を備え、
前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局とセル間干渉制御のために協調するように構成され、
前記第1無線基地局は、
前記第1セルに在圏する移動端末と無線通信を実行する無線通信部と、
当該第1無線基地局および前記第2無線基地局のいずれかに接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または当該第1無線基地局および前記第2無線基地局のいずれかに接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定するリソース設定部と、
前記リソース設定部が設定した前記比率に応じて、前記第1リソースにおいて無線通信を実行し、前記第2リソースにおいて無線通信を停止するように前記無線通信部を制御する通信制御部とを備える
無線通信システム。
【請求項2】
前記第1無線基地局の前記リソース設定部は、
前記第2無線基地局に接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または前記第2無線基地局に接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記第1無線基地局の前記リソース設定部は、
前記第1無線基地局に接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または前記第1無線基地局に接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
干渉抑圧合成を実行可能である複数の移動端末の各々の前記端末能力情報通知部は、その移動端末自身の干渉抑圧合成能力に対応する能力情報を前記第1無線基地局または前記第2無線基地局に通知し、
前記第1無線基地局の前記リソース設定部は、当該第1無線基地局および前記第2無線基地局のいずれかに接続する干渉抑圧合成を実行可能である複数の移動端末のそれぞれの干渉抑圧合成能力を考慮して、前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記第1無線基地局の前記リソース設定部は、
前記第2無線基地局に接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または前記第2無線基地局に接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、かつ、前記第2無線基地局に接続する干渉抑圧合成を実行可能である複数の移動端末のそれぞれの干渉抑圧合成能力を考慮して、前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定することを特徴とする請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記第1無線基地局の前記リソース設定部は、
前記第1無線基地局に接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または前記第1無線基地局に接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、かつ、前記第1無線基地局に接続する干渉抑圧合成を実行可能である複数の移動端末のそれぞれの干渉抑圧合成能力を考慮して、前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定することを特徴とする請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記第2無線基地局は、
前記第2セルに在圏する移動端末に報知情報及び制御信号を無線送信する情報無線送信部と、
前記第2セルに在圏する移動端末に無線送信されるすべての種類の報知情報及び制御信号を前記第1無線基地局に送信する情報予備送信部と
を備え、
前記第1無線基地局は、
前記報知情報及び制御信号を前記第2無線基地局の前記情報予備送信部から受信する情報予備受信部と、
前記情報予備受信部で受信される前記報知情報及び制御信号を、前記第1無線基地局から前記第2無線基地局へハンドオーバされようとする移動端末に転送する情報予備転送部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記第1無線基地局の前記情報予備転送部は、
前記第2セルに在圏する移動端末に無線送信されるすべての種類の報知情報及び制御信号を、前記第1無線基地局から前記第2無線基地局へハンドオーバされようとする干渉抑圧合成を実行可能である移動端末に転送する
ことを特徴とする請求項7に記載の無線通信システム。
【請求項9】
移動端末と通信する無線基地局であって、
当該無線基地局自身が形成する第1セル内に前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを形成する第2無線基地局とセル間干渉制御のために協調するように構成され、
前記第1セルに在圏する移動端末と無線通信を実行する無線通信部と、
当該無線基地局および前記第2無線基地局のいずれかに接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または当該無線基地局および前記第2無線基地局のいずれかに接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定するリソース設定部と、
前記リソース設定部が設定した前記比率に応じて、前記第1リソースにおいて無線通信を実行し、前記第2リソースにおいて無線通信を停止するように前記無線通信部を制御する通信制御部とを備える
無線基地局。
【請求項10】
前記リソース設定部は、
前記第2無線基地局に接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または前記第2無線基地局に接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定する
ことを特徴とする請求項9に記載の無線基地局。
【請求項11】
前記リソース設定部は、
当該無線基地局に接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または当該無線基地局に接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定する
ことを特徴とする請求項9に記載の無線基地局。
【請求項12】
前記リソース設定部は、
当該無線基地局および前記第2無線基地局のいずれかに接続する干渉抑圧合成を実行可能である複数の移動端末のそれぞれの干渉抑圧合成能力を考慮して、前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定することを特徴とする請求項9に記載の無線基地局。
【請求項13】
前記リソース設定部は、
前記第2無線基地局に接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または前記第2無線基地局に接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、かつ、前記第2無線基地局に接続する干渉抑圧合成を実行可能である複数の移動端末のそれぞれの干渉抑圧合成能力を考慮して、前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定することを特徴とする請求項12に記載の無線基地局。
【請求項14】
前記リソース設定部は、
当該無線基地局に接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または当該無線基地局に接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、かつ、当該無線基地局に接続する干渉抑圧合成を実行可能である複数の移動端末のそれぞれの干渉抑圧合成能力を考慮して、前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定することを特徴とする請求項12に記載の無線基地局。
【請求項15】
前記第2セルに在圏する移動端末に前記第2無線基地局から無線送信されるすべての種類の報知情報及び制御信号を前記第2無線基地局から受信する情報予備受信部と、
前記情報予備受信部で受信される前記報知情報及び制御信号を、当該無線基地局から前記第2無線基地局へハンドオーバされようとする移動端末に転送する情報予備転送部を備える
ことを特徴とする請求項9に記載の無線基地局。
【請求項16】
移動端末と通信するとともに、当該無線基地局自身が形成する第1セル内に前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを形成する第2無線基地局とセル間干渉制御のために協調するように構成された無線基地局のための通信制御方法であって、
当該無線基地局および前記第2無線基地局のいずれかに接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または当該無線基地局および前記第2無線基地局のいずれかに接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、当該無線基地局が無線通信を実行すべき第1リソースおよび当該無線基地局が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定することと、
前記比率に応じて、前記第1リソースにおいて無線通信を実行し、前記第2リソースにおいて無線通信を停止するように当該無線基地局を制御することとを備える
通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、無線基地局および通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(Third Generation Partnership Project)におけるLTE(Long Term Evolution)Advancedでは、MU-MIMO(multi-user multiple-input multiple-output)を用いたOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access)が提案されている。MU-MIMOの下りリンク送信においては、1つの基地局が複数の移動端末(UE、user equipment)と通信するだけでなく、1つの移動端末に異なるデータストリーム(レイヤ)を同時に送信することが可能である。
【0003】
また、LTE Advancedでは、干渉抑圧合成(Interference Rejection Combining)と呼ばれる移動端末の受信技術が検討されている。干渉抑圧合成(IRC)は、下りリンク通信に関して、在圏基地局(所望基地局)からの所望電波ビームに対する干渉基地局からの干渉電波ビームの干渉を、移動端末において抑圧するように、移動端末において各受信アンテナで得られる信号に重み付けを与える技術である。IRCは、特に、図1に示すように、移動端末4が在圏セル(所望基地局1のセル)1aの境界付近に所在して、所望基地局1の隣の他の基地局2(干渉基地局)から干渉電波ビームを強く受ける場合に、所望電波ビームに載せられた所望信号の受信品質を向上させる。図1において、符号2aは干渉基地局2のセルを示す。また、図1においては、所望基地局1で生成されたビーム1bの概略形状と、干渉基地局2で生成されたビーム2bの概略形状が示されている。干渉基地局2で生成されたビーム2bすなわち他の移動端末(例えば移動端末5)への下りチャネルのためのビームの一部が移動端末4にとって干渉信号2cの原因になる。
【0004】
IRCについては、例えば特許文献1、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3に記載されている。IRCにおいては、移動端末は、所望電波ビームに対する干渉電波ビームの干渉を抑圧するように複数の受信アンテナで得られる複数の信号にそれぞれ重み付けを与え、受信ウェイトを用いて、複数の受信アンテナで受信される電波に由来する複数の信号のうち当該移動端末宛ての信号を他の移動端末宛ての信号から分離する。また、IRCの一種として、逐次干渉キャンセル(Successive Interference Cancellation、SIC)と呼ばれる技術が提案されている(例えば非特許文献4)。SICでは、移動端末は、干渉信号を復調し(場合によってはさらに復号し)、受信信号から干渉信号を逐次的に減算することにより、当該移動端末宛ての所望信号を得る。
【0005】
他方、近年、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の無線基地局(マクロ基地局、ピコ基地局、フェムト基地局、リモートラジオヘッド(Remote Radio Head)等)を重層的に設置したヘテロジーニアスネットワーク(Heterogeneous Network,HetNet)が提案されている(例えば、非特許文献5)。
【0006】
ヘテロジーニアスネットワークにおいては、送信電力(送信能力)の大きい基地局(例えばマクロ基地局)の方が、送信電力(送信能力)の小さい基地局(例えばピコ基地局)と比較して、セルサーチまたはハンドオーバの段階でユーザ端末の無線接続先として選択されやすいと想定される。したがって、送信電力の大きい基地局にユーザ端末からの接続が集中し、ひいては通信負荷が過大となる傾向があると想定される。
【0007】
そこで、セルレンジエクスパンション(cell range expansion)と呼ばれる技術が提案されている。セルレンジエクスパンションは、移動端末によるセル選択のための指標である小電力基地局からの受信品質または受信電力にオフセット値(バイアス値)を付与する技術である。オフセット値が加算(またはデシベルで加算)された小電力基地局からの受信品質または受信電力は、マクロ基地局からの受信品質または受信電力と比較される。これにより、小電力基地局からの受信品質または受信電力の方がマクロ基地局からの受信品質または受信電力よりも良好になりやすくなる。結果的に、移動端末はマクロ基地局よりも小電力基地局に接続することを選択するので、小電力基地局のセル範囲が拡大され、マクロ基地局の通信負荷が軽減されると考えられる。
【0008】
しかし、セルレンジエクスパンション(CRE)で小電力基地局のセル範囲が拡大された場合、その小電力基地局のセルの端部にある移動端末は、周囲のマクロ基地局からの電波による大きな干渉を受ける可能性がある。このため、セル間干渉制御(inter-cell interference coordinationまたはinter-cell interference control)の拡張であるenhanced inter-cell interference coordinationまたはenhanced inter-cell interference controlと呼ばれる技術が提案されている。この技術はeICICと略称される。eICICは例えば非特許文献6に記載されている。
【0009】
eICICは、周波数領域ベースのeICICと、時間領域ベースのeICICに大別される。いずれにせよ、eICICは、小電力基地局に接続される移動端末への干渉を予防または抑制するために、マクロ基地局で利用可能なリソースを制限する技術である。
【0010】
周波数領域ベースのeICICでは、複数の周波数帯が準備される。第1の周波数帯はマクロ基地局からマクロ基地局に接続される移動端末への下りリンク送信と、小電力基地局から小電力基地局のセルの中央にある移動端末(例えばCREがなくても小電力基地局に接続される移動端末)への下りリンク送信に使用される。第2の周波数帯は、小電力基地局から小電力基地局のセルの端部にある移動端末(例えばCREのために小電力基地局に接続される移動端末)への下りリンク送信に使用され、マクロ基地局からの下りリンク送信には使用されない。したがって、小電力基地局のセルの端部にある移動端末へのマクロ基地局からの電波による干渉が予防されると想定される。
【0011】
時間領域ベースのeICICでは、マクロ基地局と小電力基地局は同じ周波数帯を使用するが、異なる単位時間(例えばサブフレーム)が異なる用途で使用される。小電力基地局は継続的に下りリンク送信が可能である。しかし、マクロ基地局は間欠的にしか下りリンク送信ができない。この結果、小電力基地局だけが下りリンク送信する期間(プロテクテッドサブフレーム)と、マクロ基地局と小電力基地局の両方が下りリンク送信する期間(ノンプロテクテッドサブフレーム)が繰り返される。ノンプロテクテッドサブフレームは、マクロ基地局からマクロ基地局に接続される移動端末への下りリンク送信と、小電力基地局から小電力基地局のセルの中央にある移動端末(例えばCREがなくても小電力基地局に接続される移動端末)への下りリンク送信に使用される。プロテクテッドサブフレームは、小電力基地局から小電力基地局のセルの端部にある移動端末(例えばCREのために小電力基地局に接続される移動端末)への下りリンク送信に使用される。したがって、小電力基地局のセルの端部にある移動端末へのマクロ基地局からの電波による干渉が予防されると想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2000-511370号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】 R1-111031, 3GPP TSG RAN WG1 Meeting #64, Taipei, Taiwan, 21st - 25th February 2011, Agenda item: 6.3.1.3, Source: Nokia, Nokia Siemens Networks, Title: "On advanced UE MMSE receiver modelling in system simulations", Document for: Discussion and Decision
【非特許文献2】 Lars Thiele et al, "On the Value of Synchronous Downlink MIMO-OFDMA Systems with Linear Equalizers", Fraunhofer Institute for Telecommunications, Heinrich-Hertz-Institut Einsteinufer 37, 10587 Berlin, Germany
【非特許文献3】 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Enhanced performance requirement for LTE User Equipment (UE) (Release 11); 3GPP TR 36.829 V11.1.0 (2012-12)
【非特許文献4】 Raphael Visoz et al, "Binary Versus Symbolic Performance Prediction Methods For Iterative MMSE-IC Multiuser MIMO Joint Decoding", in Proc. IEEE SPAWC, June 2009
【非特許文献5】 3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Further advancements for E-UTRA physical layer aspects (Release 9); 3GPP TR 36.814 V9.0.0 (2010-03); Section 9A, Heterogeneous Deployments
【非特許文献6】 R1-103264, 3GPP TSG RAN WG1 Meeting #61, Montreal, Canada, May 10 - 14, 2010, Source: NTT DOCOMO, Title: "Performance of eICIC with Control Channel Coverage Limitation", Agenda Item: 6.8, Document for: Discussion and Decision
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のeICICを適用する無線通信システムにおいて、上記のIRCを実施する移動端末を使用することを想定する。この場合、eICICによる干渉予防と移動端末の干渉抑圧効果により、移動端末の受信品質がますます向上すると通常は予想される。
【0015】
しかし、元々IRCによる干渉抑圧能力が高く良好な受信品質を確保しうる移動端末に対してまで、無線基地局が協調して干渉対策を施す必要性は必ずしもない。eICICは、マクロ基地局で利用可能なリソースの量を制限する技術にほかならず、制限されるリソース量が多いほど、マクロ基地局による通信の効率は低下する。他方、IRCを実施せず干渉抑圧ができない移動端末のためには、eICICを実行することが望ましい。
【0016】
そこで、本発明は、干渉抑圧能力を有する移動端末とこれを有しない移動端末が混在し、大電力基地局と小電力基地局とがセル間干渉制御のために協調する無線通信システムにおいて、大電力基地局で利用可能なリソースの量を適切に制御する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る無線通信システムは、第1セルを形成する第1無線基地局と、前記第1無線基地局と接続し、接続先の第1無線基地局が形成する前記第1セル内に前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを形成する第2無線基地局と、前記第1無線基地局および前記第2無線基地局のうち少なくともいずれか1つと各々が無線接続を確立して無線通信を実行する複数の移動端末とを備える無線通信システムであって、前記複数の移動端末の各々は、前記移動端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であるか否かを示す能力情報を前記第1無線基地局または前記第2無線基地局に通知する端末能力情報通知部を備え、前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局とセル間干渉制御のために協調するように構成され、前記第1無線基地局は、前記第1セルに在圏する移動端末と無線通信を実行する無線通信部と、当該第1無線基地局および前記第2無線基地局のいずれかに接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または当該第1無線基地局および前記第2無線基地局のいずれかに接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定するリソース設定部と、前記リソース設定部が設定した前記比率に応じて、前記第1リソースにおいて無線通信を実行し、前記第2リソースにおいて無線通信を停止するように前記無線通信部を制御する通信制御部とを備える。
【0018】
本発明においては、複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、大電力基地局(第1無線基地局、例えばマクロ基地局)で利用可能なリソース(第1リソース)の比率を適切に制御することが可能である。干渉抑圧合成を実行可能である移動端末が多い場合、またはそのような移動端末のトラヒック量が多い場合には、大電力基地局が多くのリソースを利用しても、小電力基地局のセルにある多くの移動端末は、大電力基地局による干渉を抑圧可能である。この場合には、大電力基地局で利用可能な第1リソース(大電力基地局が無線通信を実行する第1リソース)の比率を大きくすることが適切である。他方、干渉抑圧合成を実行可能である移動端末が少ない場合、またはそのような移動端末のトラヒック量が少ない場合には、大電力基地局が多くのリソースを利用すると、小電力基地局のセルにある多くの移動端末では、大電力基地局による干渉のために受信品質が低下しやすい。この場合には、大電力基地局で利用可能な第1リソースの比率を小さくすることが適切である。このように、大電力基地局(第1無線基地局)と小電力基地局(第2無線基地局)とがセル間干渉制御のために協調する無線通信システムにおいて、大電力基地局で利用可能なリソースの量を適切に制御することができる。
【0019】
前記第1無線基地局の前記リソース設定部は、前記第2無線基地局に接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または前記第2無線基地局に接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定してよい。
【0020】
eICICは、小電力基地局に接続される移動端末への干渉を予防または抑制する技術であるから、小電力基地局(第2無線基地局)に接続される複数の移動端末に関する統計量に基づいて、大電力基地局(第1無線基地局)の無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定してよい。
【0021】
あるいは、前記第1無線基地局の前記リソース設定部は、前記第1無線基地局に接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または前記第1無線基地局に接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定してよい。
【0022】
小電力基地局(第2無線基地局)に接続される複数の移動端末に関する統計量を大電力基地局(第1無線基地局)で認識するには、小電力基地局から大電力基地局への情報の送信(例えば統計量の報告)が必要である。ところが、第2無線基地局に接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合は、第1無線基地局に接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合とほぼ同じであると考えられる。第2無線基地局に接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合も、第1無線基地局に接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合とほぼ同じであると考えられる。非常に離れた複数の無線基地局については、ある無線基地局での干渉抑圧合成を実行可能である移動局に関する統計値が、他の無線基地局での干渉抑圧合成を実行可能である移動局に関する統計値とほぼ等しいとはいえないが、近接している複数の無線基地局については、ある無線基地局での干渉抑圧合成を実行可能である移動局に関する統計値が、他の無線基地局での干渉抑圧合成を実行可能である移動局に関する統計値とほぼ等しいと考えられる。そこで、上記のように大電力基地局(第1無線基地局)に接続される複数の移動端末に関する統計量に基づいて、大電力基地局(第1無線基地局)の無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび第1無線基地局の前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定してもよい。
【0023】
前記第2無線基地局は、前記第2セルに在圏する移動端末に報知情報及び制御信号を無線送信する情報無線送信部と、前記第2セルに在圏する移動端末に無線送信されるすべての種類の報知情報及び制御信号を前記第1無線基地局に送信する情報予備送信部とを備えてよく、前記第1無線基地局は、前記報知情報及び制御信号を前記第2無線基地局の前記情報予備送信部から受信する情報予備受信部と、前記情報予備受信部で受信される前記報知情報及び制御信号を、前記第1無線基地局から前記第2無線基地局へハンドオーバされようとする移動端末に転送する情報予備転送部を備えてよい。
【0024】
CREで小電力基地局のセル範囲が拡大された場合、移動端末は小電力基地局(第2無線基地局)に接続しやすくなる。しかし、小電力基地局のセルの端部にある移動端末が小電力基地局から受信する電波の品質が実際に向上するわけではない。上記のIRCは、移動端末にとっての干渉信号を弱め所望信号の受信品質を向上させることができるが、所望信号はその移動端末宛のデータ信号や参照信号であって、小電力基地局が不特定の移動端末に送信する報知情報やその移動端末宛の制御信号の受信品質をIRCが向上させることはできない。よって、ヘテロジーニアスネットワークにおいては、CREが適用されると、IRCを実施する移動端末において、所望信号と報知信号及び制御信号の品質差が極めて大きくなる弊害が予測される。特に、本発明において、干渉抑圧合成を実行可能である移動端末が多い場合、またはそのような移動端末のトラヒック量が多い場合には、大電力基地局(第1無線基地局)で利用可能な第1リソース(大電力基地局が無線通信を実行する第1リソース)の比率が大きくされ、大電力基地局から受ける干渉が大きくなり、報知信号及び制御信号の品質のさらなる低下の懸念がある。そこで、上記のように、第2無線基地局で使用されるすべての種類の報知情報及び制御信号を第2無線基地局が第1無線基地局に送信し、第1無線基地局から第2無線基地局へハンドオーバされようとする移動端末に第1無線基地局がそのような報知情報及び制御信号を転送するのが好ましい。これにより第2無線基地局で使用される報知情報及び制御信号を移動端末が受信する確実性を改善することができる。
【0025】
前記第1無線基地局の前記情報予備転送部は、前記第2セルに在圏する移動端末に無線送信されるすべての種類の報知情報及び制御信号を、前記第1無線基地局から前記第2無線基地局へハンドオーバされようとする干渉抑圧合成を実行可能である移動端末に転送してもよい。
【0026】
ヘテロジーニアスネットワークにおいては、CREが適用されると、IRCを実施する移動端末において、所望信号と報知信号及び制御信号の品質差が極めて大きくなる弊害が予測される。特に、IRCを実施する移動端末に対してIRCを実施しない移動端末よりも大きなバイアス値を用いるCREを適用した場合、その弊害は顕著に現れるものと予測される。一方、IRCを実施しない移動端末については、所望信号と報知信号及び制御信号の品質差は同じである。そこで、第2セルで使用されるすべての種類の報知情報及び制御信号を、IRCを実施する移動端末にのみあらかじめ転送しておいてもよい。
【0027】
本発明にかかる無線基地局は、移動端末と通信する無線基地局であって、当該無線基地局自身が形成する第1セル内に前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを形成する第2無線基地局とセル間干渉制御のために協調するように構成され、前記第1セルに在圏する移動端末と無線通信を実行する無線通信部と、当該無線基地局および前記第2無線基地局のいずれかに接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または当該無線基地局および前記第2無線基地局のいずれかに接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定するリソース設定部と、前記リソース設定部が設定した前記比率に応じて、前記第1リソースにおいて無線通信を実行し、前記第2リソースにおいて無線通信を停止するように前記無線通信部を制御する通信制御部とを備える。
【0028】
前記リソース設定部は、前記第2無線基地局に接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または前記第2無線基地局に接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定してよい。
【0029】
前記リソース設定部は、当該無線基地局に接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または当該無線基地局に接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、前記無線通信部が無線通信を実行すべき第1リソースおよび前記無線通信部が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定してよい。
【0030】
無線基地局は、前記第2セルに在圏する移動端末に前記第2無線基地局から無線送信されるすべての種類の報知情報及び制御信号を前記第2無線基地局から受信する情報予備受信部と、前記情報予備受信部で受信される前記報知情報及び制御信号を、当該無線基地局から前記第2無線基地局へハンドオーバされようとする移動端末に転送する情報予備転送部を備えてよい。
【0031】
本発明に係る通信制御方法は、移動端末と通信するとともに、当該無線基地局自身が形成する第1セル内に前記第1セルよりも面積が小さい第2セルを形成する第2無線基地局とセル間干渉制御のために協調するように構成された無線基地局のための通信制御方法であって、当該無線基地局および前記第2無線基地局のいずれかに接続する複数の移動端末の総数のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末の数の割合、または当該無線基地局および前記第2無線基地局のいずれかに接続する複数の移動端末の総トラヒック量のうち干渉抑圧合成を実行可能である移動端末のトラヒック量の割合に応じて、当該無線基地局が無線通信を実行すべき第1リソースおよび当該無線基地局が無線通信を停止すべき第2リソースの比率を設定することと、前記比率に応じて、前記第1リソースにおいて無線通信を実行し、前記第2リソースにおいて無線通信を停止するように当該無線基地局を制御することとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】干渉基地局から干渉ビームを受信する移動通信端末を示す図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムを示すブロック図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係るIRC端末の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る非IRC端末の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係るマクロ基地局の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第1の実施の形態に係るピコ基地局の構成を示すブロック図である。
図7】無線通信システムの各通信要素間で送受信される無線フレームのフォーマットを示す図である。
図8】時間領域ベースのセル間干渉制御の概略を示す図である。
図9】ピコセル内の干渉抑圧合成を実行可能である移動端末が多い無線通信システムを示す図である。
図10図9の場合の時間領域ベースのセル間干渉制御の例を示す図である。
図11】ピコセル内の干渉抑圧合成を実行可能である移動端末が少ない無線通信システムを示す図である。
図12図11の場合の時間領域ベースのセル間干渉制御の例を示す図である。
図13】本発明の第3の実施の形態に係るマクロ基地局の構成を示すブロック図である。
図14】本発明の第3の実施の形態に係るピコ基地局の構成を示すブロック図である。
図15】本発明の第9の実施の形態に係る無線通信システムの情報の流れを示すブロック図である。
図16】無線通信システムの各通信要素間で送受信される無線フレームのフォーマットを示す図である。
図17】周波数領域ベースのセル間干渉制御の概略を示す図である。
図18】無線通信システムの各通信要素間で送受信される無線フレームのフォーマットを示す図である。
図19】リソースブロックベースのセル間干渉制御の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。
第1の実施の形態
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システムのブロック図である。この無線通信システムは、マクロ基地局(マクロeNodeB(evolved Node B))100と、ピコ基地局200と、干渉抑圧合成(IRC)を実行可能である移動端末(UE、User Equipment)であるIRC端末300と、干渉抑圧合成を実行不可能である移動端末である非IRC端末400とを備える。この実施の形態において、ピコ基地局200はリモートラジオヘッド(RRH)である。以下において、IRC端末300と非IRC端末400とを区別せずに「ユーザ端末」と称する場合がある。
【0034】
無線通信システム内の各通信要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、IRC端末300、非IRC端末400等)は所定の無線アクセス技術(Radio Access Technology)、例えばLTEに従って無線通信を行う。本実施の形態では、無線通信システムがLTEに従って動作する形態を例示して説明するが、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。本発明は、必要な設計上の変更を施した上で、他の無線アクセス技術にも適用可能である。
【0035】
マクロ基地局(第1無線基地局、大電力基地局)100とピコ基地局(第2無線基地局、小電力基地局)200とは有線または無線にて相互に接続される。マクロ基地局100はマクロセル(第1セル)Cmを形成し、各ピコ基地局200はピコセル(第2セル)Cpを形成する。ピコセルCpは、そのピコセルCpを形成するピコ基地局200に接続されたマクロ基地局100が形成するマクロセルCm内に形成されるセルである。1つのマクロセルCm内には、複数のピコセルCpが形成され得る。
【0036】
各無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)は、その基地局自身のセルに在圏するユーザ端末と無線通信が可能である。逆に言うと、ユーザ端末は、ユーザ端末自身が在圏するセル(マクロセルCm,ピコセルCp)に対応する基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信が可能である。
【0037】
マクロ基地局100はピコ基地局200と比較して無線送信能力(最大送信電力,平均送信電力等)が高いので、より遠くに位置するユーザ端末と無線通信可能である。したがって、マクロセルCmはピコセルCpよりも面積が大きい。例えば、マクロセルCmは半径数百メートルから数十キロメートル程度の大きさであり、ピコセルCpは半径数メートルから数十メートル程度の大きさである。
【0038】
以上の説明から理解されるように、無線通信システム内のマクロ基地局100およびピコ基地局200は、送信電力(送信能力)が相異なる複数種の無線基地局が重層的に設置されたヘテロジーニアスネットワーク(Heterogeneous Network,HetNet)を構成する。
【0039】
ピコセルCpがマクロセルCmの内部に重層的に形成される(オーバレイされる)ことを考慮すると、ユーザ端末がピコセルCp内に在圏する場合、そのユーザ端末は、そのピコセルCpを形成するピコ基地局200と、そのピコセルCpを包含するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100との少なくともいずれか一方と無線通信が可能であると理解できる。
【0040】
各基地局とユーザ端末との間の無線通信の方式は任意である。例えば、下りリンクではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)が採用され、上りリンクではSC−FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)が採用されてもよい。
【0041】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るIRC端末300の構成を示すブロック図である。IRC端末300は無線通信部310と制御部330とを備える。図において、音声・映像等を出力する出力装置およびユーザからの指示を受け付ける入力装置等の図示は、便宜的に省略されている。
【0042】
無線通信部310は、無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信を実行するための要素であり、複数の送受信アンテナ312と、無線基地局から電波を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路とを含む。無線通信部310は、IRC端末300が在圏するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100またはピコセルCpを形成するピコ基地局200から、接続先セル情報Tを受信する。接続先セル情報Tは、ユーザ端末が接続すべき無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)を指定する情報である。
【0043】
また、無線通信部310は、接続されている無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に端末能力情報(UE Capability)UCおよび受信電力測定結果を報告する(詳細は後述される)。端末能力情報UCは、ユーザ端末自身が干渉抑圧合成を実行可能であるか否かを示す情報(つまりユーザ端末がIRC端末300か非IRC端末400かを示す情報)を含む。IRC端末300については、端末能力情報UCは送信元のユーザ端末がIRC端末であることを示す。
【0044】
制御部330は、端末能力情報通知部332、受信品質測定部334、受信品質補正部336、受信品質報告部338、接続部340、およびIRC実行部342を要素として内包する。接続部340およびIRC実行部342は、下りリンク通信において、無線通信部310と協調して前述の干渉抑圧合成を実行し、干渉電力を抑圧することが可能である。制御部330の他の動作の詳細は後述される。
【0045】
制御部330ならびに制御部330が内包する端末能力情報通知部332、受信品質測定部334、受信品質補正部336、受信品質報告部338、接続部340、およびIRC実行部342は、IRC端末300内の図示しないCPU(Central Processing Unit)が、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。
【0046】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る非IRC端末400の構成を示すブロック図である。IRC端末300と同様に、非IRC端末400は無線通信部410と制御部430とを備える。図において、音声・映像等を出力する出力装置およびユーザからの指示を受け付ける入力装置等の図示は、便宜的に省略されている。概略的には、IRC端末300と非IRC端末400とはIRC実行部342を有するか否か(すなわち、干渉抑圧合成を実行可能であるか否か)において異なっており、その他の構成については同様である。
【0047】
無線通信部410は、無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と無線通信を実行するための要素であり、少なくとも1つの送受信アンテナ412と、無線基地局から電波を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路とを含む。無線通信部410は、非IRC端末400が在圏するマクロセルCmを形成するマクロ基地局100またはピコセルCpを形成するピコ基地局200から、接続先セル情報Tを受信する。また、無線通信部410は、接続されている無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に端末能力情報(UE Capability)UCおよび受信電力測定結果を報告する。非IRC端末400については、端末能力情報UCは送信元のユーザ端末が非IRC端末であることを示す。制御部430は、端末能力情報通知部432、受信品質測定部434、受信品質補正部436、受信品質報告部438、および接続部440を要素として内包し、IRC実行部を備えない。無線通信部410および制御部430の動作の詳細は後述される。
【0048】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係るマクロ基地局100の構成を示すブロック図である。マクロ基地局100は、無線通信部110と基地局間通信部120と制御部130とを備える。
【0049】
無線通信部110は、ユーザ端末と無線通信を実行するための要素であり、少なくとも1つの送受信アンテナ112と、ユーザ端末から電波を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路とを含む。無線通信部110は、マクロ基地局100に在圏する各ユーザ端末に接続先セル情報Tを示す無線信号を送信する。また、無線通信部110は、マクロ基地局100に在圏する各ユーザ端末から端末能力情報UCおよび受信電力測定結果の報告を受信する(詳細は後述される)。
【0050】
基地局間通信部120は、他の無線基地局(マクロ基地局100,ピコ基地局200)と通信を実行するための要素であり、他の無線基地局と電気信号を送受信する。マクロ基地局100が他の無線基地局と無線にて通信を行う場合は、無線通信部110が基地局間通信部120を兼ねることも可能である。
【0051】
制御部130は、端末能力判定部132、リソース設定部134、通信制御部136、および接続先選択部138を要素として内包する。制御部130ならびに制御部130が内包する端末能力判定部132、リソース設定部134、通信制御部136、および接続先選択部138は、マクロ基地局100内の図示しないCPUが、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。制御部130の動作の詳細は後述される。
【0052】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係るピコ基地局200の構成を示すブロック図である。ピコ基地局200は、無線通信部210と基地局間通信部220と制御部230とを備える。
【0053】
無線通信部210は、ユーザ端末と無線通信を実行するための要素であり、少なくとも1つの送受信アンテナ212と、ユーザ端末から電波を受信して電気信号に変換する受信回路と、音声信号等の電気信号を電波に変換して送信する送信回路とを含む。
【0054】
基地局間通信部220は、ピコ基地局200自身が接続されるマクロ基地局100と通信を実行するための要素であり、マクロ基地局100と電気信号を送受信する。ピコ基地局200がマクロ基地局100と無線にて通信する場合には、無線通信部210が基地局間通信部220を兼ねてもよい。
【0055】
ピコ基地局200は、マクロ基地局100が送信した情報(接続先セル情報T等)を受信して、ピコ基地局200に在圏するユーザ端末にこれを転送できる。具体的には、ピコ基地局200の基地局間通信部220がマクロ基地局100から受信した情報(例えば接続先セル情報T等)を示す電気信号を、制御部230が無線通信部210に供給する。無線通信部210は、供給された電気信号を電波に変換してユーザ端末に対して送信する。
【0056】
また、ピコ基地局200は、ピコ基地局200に在圏する各ユーザ端末から端末能力情報UCおよび受信電力測定結果の報告を受信する。ピコ基地局200は、受信電力測定結果の報告をマクロ基地局100に転送することができる。具体的には、ピコ基地局200の無線通信部210が受信・変換して得た受信電力測定結果の報告を示す電気信号を、制御部230が基地局間通信部220に供給する。基地局間通信部220は、供給された電気信号をマクロ基地局100に対して送信する。以上の構成により、ユーザ端末がピコ基地局200に近接しているためマクロ基地局100との無線通信が困難である場合でも、ユーザ端末とマクロ基地局100との間で必要な情報を送受信することが可能となる。
【0057】
ピコ基地局200の制御部230は、端末能力判定部232を要素として内包する。ピコ基地局200の制御部230ならびに制御部230が内包する端末能力判定部232は、ピコ基地局200内の図示しないCPUが、図示しない記憶部に記憶されたコンピュータプログラムを実行し、そのコンピュータプログラムに従って機能することにより実現される機能ブロックである。制御部230の動作の詳細は後述される。
【0058】
この無線通信システムで使用されるセルレンジエクスパンション(CRE)を説明する。IRC端末300の受信品質測定部334および非IRC端末400の受信品質測定部434の各々は、電波の受信品質として、そのユーザ端末が接続されている所望無線基地局から受信する電波の受信電力(例えば、参照信号受信電力。Reference Signal Received Power,RSRP)と、そのユーザ端末が接続されていない無線基地局から受信する電波の受信電力(例えば、参照信号受信電力)を測定する。ヘテロジーニアスネットワークにおいては、受信品質測定部334,434の各々は、マクロ基地局100から受信した電波の受信電力とピコ基地局200から受信した電波の受信電力を測定する。マクロ基地局100が所望無線基地局か否かを問わず、マクロ基地局100からの電波の受信電力値を第1受信電力値R1とし、ピコ基地局200が所望無線基地局か否かを問わず、ピコ基地局200からの電波の受信電力値を第2受信電力値R2とする。
【0059】
IRC端末300の受信品質補正部336および非IRC端末400の受信品質補正部436の各々は、ピコ基地局200からの電波の第2受信電力値R2を所定のオフセット値(バイアス値)αを用いて増加させる。例えば、R2にαを単純に加算してもよいし、R2にαをデシベルで加算してもよい。いずれにせよ、この処理により、ピコ基地局200からの電波の受信品質が見かけの上で向上させられる。このように補正された第2受信電力値R2を補正された第2受信電力値(R2+α)と呼ぶ。オフセット値αは例えばユーザ端末の図示しない記憶部に記憶されている。
【0060】
IRC端末300の受信品質報告部338は、第1受信電力値R1と、補正された第2受信電力値(R2+α)とを含む受信電力結果報告を示す信号を、無線通信部310を介して所望無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に送信する。同様にして、非IRC端末400の受信品質報告部438は、第1受信電力値R1と、補正された第2受信電力値(R2+α)とを含む受信電力結果報告を示す信号を、無線通信部410を介して所望無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に送信する。ユーザ端末の所望無線基地局がピコ基地局200である場合、受信電力結果報告を示す信号は、ピコ基地局200の無線通信部210で受信され、制御部230は受信電力結果報告を示す信号を基地局間通信部220によってマクロ基地局100に転送する。マクロ基地局100は、基地局間通信部120で受信電力結果報告を示す信号を受信する。
【0061】
ユーザ末の所望無線基地局がマクロ基地局100である場合、受信電力結果報告を示す信号は、マクロ基地局100の無線通信部110で受信される。こうして、マクロ基地局100のセル内に存在するすべてのユーザ端末の受信電力結果報告はマクロ基地局100に送信される。マクロ基地局100の接続先選択部138は、各ユーザ端末の受信電力結果報告に基づいて、そのユーザ端末が接続すべき無線基地局を選択する。この時、接続先選択部138は、最も高い受信電力を示す受信電力値(すなわち、最も良好な受信品質を示す受信品質値)に対応する無線基地局をそのユーザ端末が接続すべき無線基地局として選択する。具体的には、あるユーザ端末について、第1受信電力値R1が補正された第2受信電力値(R2+α)より大きい場合には、接続先選択部138は、マクロ基地局100をユーザ端末の接続先として選択する。あるユーザ端末について、第1受信電力値R1よりも補正された第2受信電力値(R2+α)が大きい場合には、接続先選択部138は、ピコ基地局200をユーザ端末の接続先として選択する。
【0062】
接続先選択部138は、選択した無線接続先を示す接続先セル情報Tをユーザ端末に通知する。具体的には、ユーザ端末がマクロ基地局100に接続されている場合には、接続先選択部138は、無線通信部110を介して接続先セル情報Tをユーザ端末に通知する。ユーザ端末がピコ基地局200に接続されている場合には、接続先選択部138は、基地局間通信部120を介して接続先セル情報Tをピコ基地局200に送信し、ピコ基地局200の制御部230は接続先セル情報Tを無線通信部210を介してユーザ端末に通知する。また、接続先選択部138は、ユーザ端末の接続先が変更される場合には、基地局間通信部120を介して、関連する無線基地局(例えばピコ基地局200または周辺にある他のマクロ基地局100)にユーザ端末の接続先が変更されることを通知する。
【0063】
ユーザ端末の無線通信部310または410は接続先セル情報Tを受信する。接続先セル情報Tが既にユーザ端末が接続されている無線基地局を示す場合には、ユーザ端末の接続部340または440はその接続を維持する。他方、接続先セル情報Tが他の無線基地局を示す場合には、ユーザ端末の接続部340または440はその無線基地局への接続動作を実行する。例えば、ユーザ端末がマクロ基地局100に接続している場合において、ピコ基地局200を接続先として指定する接続先セル情報Tをユーザ端末が受信すると、接続部340または440は、指定されたピコ基地局200へとユーザ端末自身を接続(オフロード)させる。
【0064】
上記のように、ピコ基地局200からの電波の受信電力値R2がオフセット値αで補正される結果、ピコ基地局200からの電波の受信品質が見かけの上で向上させられる。このため、ピコセルCpの半径ひいては範囲が拡張させられ、その分、マクロ基地局100の処理負担が軽減される。
【0065】
この無線通信システムで使用されるユーザ端末の能力に基づくeICICを説明する。マクロ基地局100は、そのマクロセルCm内にあるピコ基地局200とeICIC(拡張されたセル間干渉制御)のために協調するように構成されている。
【0066】
上記の通り、IRC端末300は、送信元のユーザ端末がIRC端末であることを示す端末能力情報UCを、所望無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に送信し、非IRC端末400は、送信元のユーザ端末が非IRC端末であることを示す端末能力情報UCを所望無線基地局に送信する。より具体的には、IRC端末300の端末能力情報通知部332は、送信元のユーザ端末の干渉抑圧合成可否を示すビットに、干渉抑圧合成が実行可能であることを意味する「1」を設定し、これを含む端末能力情報UCを無線通信部310により送信する。非IRC端末400の端末能力情報通知部432は、送信元のユーザ端末の干渉抑圧合成可否を示すビットに、干渉抑圧合成が実行不可能であることを意味する「0」を設定し、これを含む端末能力情報UCを無線通信部310により送信する。
【0067】
他の通信規格で、IRC端末のみが送信元のユーザ端末がIRC端末であることを示す情報を端末能力情報UCに含めるように規定することが考えられる。この場合には、非IRC端末は、送信元のユーザ端末の干渉抑圧合成可否を示す情報を端末能力情報UCに含めないが、そのような情報を含まない端末能力情報UCは送信元のユーザ端末が干渉抑圧合成が実行不可能であることを示す情報と考えることができる。
【0068】
ユーザ端末の所望無線基地局がマクロ基地局100である場合、端末能力情報UCを示す信号は、マクロ基地局100の無線通信部110で受信される。マクロ基地局100の制御部130の端末能力判定部132は、ユーザ端末から報告された端末能力情報UCに基づいて、そのユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定する。当然ながら、端末能力情報UCが干渉抑圧合成を実行可能であることを示す場合には、端末能力判定部132は、そのユーザ端末がIRC端末300であると判定し、端末能力情報UCが干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない場合には、端末能力判定部132は、そのユーザ端末が非IRC端末400であると判定する。
【0069】
ユーザ端末の所望無線基地局がピコ基地局200である場合、端末能力情報UCを示す信号は、ピコ基地局200の無線通信部210で受信される。ピコ基地局200の制御部230の端末能力判定部232は、ユーザ端末から報告された端末能力情報UCに基づいて、そのユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定する。端末能力判定部232は、判定結果を示す信号を基地局間通信部220によってマクロ基地局100に転送する。この判定結果を示す信号は、マクロ基地局100の基地局間通信部120に受信されて、リソース設定部134に伝達される。
【0070】
こうして、マクロ基地局100のセル内に存在するピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末の干渉抑圧合成の可否はマクロ基地局100のリソース設定部134で認識される。リソース設定部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算する。具体的には、ピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末の総数と、ピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300の数をカウントし、ピコ基地局200(そのマクロ基地局100のマクロセルCmに複数のピコ基地局200があれば、それらの複数のピコ基地局200)に接続するすべてのユーザ端末の総数に対するピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300の数の割合を計算する。そして、この統計量に基づいて、リソース設定部134は、eICICのためのパラメータを設定する。
【0071】
この実施の形態においては、マクロ基地局100のリソース設定部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算しない。したがって、マクロ基地局100の端末能力判定部132は設けなくてもよい。但し、他の目的、例えば適切なMIMO(multiple-input and multiple-output)を実行するために、端末能力判定部132を設けることが好ましい。このことは、下記の第2の実施の形態、第5の実施の形態、第6の実施の形態についても同じである。
【0072】
図7は、無線通信システムの各通信要素間で送受信される無線フレームFのフォーマットを示す図である。無線フレームFは、各通信要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、ユーザ端末)が送信する無線信号の送信単位であり、所定の時間長(例えば、10ミリ秒)および所定の帯域幅を占める。無線フレームFが連続的に送信されることにより一連の無線信号が構成される。
【0073】
無線フレームFは複数のサブフレームSFを含む。サブフレームSFは、無線フレームFよりも短い時間長(例えば、1ミリ秒)を占める送信単位であり、1つの無線フレームF内において0番(#0)から昇順にナンバリングされ得る。
【0074】
図8は、時間領域ベースのeICICの概略を示す図である。eICICの説明のため、マクロ基地局100およびそのマクロ基地局100が形成するマクロセルCm内にピコセルCpを形成するピコ基地局200が、同一の無線フレームタイミングおよび同一の周波数帯域を使用して無線信号(無線フレームF)を送信することを想定する。ここで、「同一の無線フレームタイミングで無線信号が送信される」とは、マクロ基地局100が送信する無線フレームFの送信開始時刻とピコ基地局200が送信する無線フレームFの送信開始時刻とが同時であることを意味する。すなわち、マクロ基地局100の無線通信部110とピコ基地局200の無線通信部210は、同期して無線通信を実行し得る。
【0075】
マクロ基地局100からの無線信号およびピコ基地局200からの無線信号は同一の周波数帯域にて送信されるから、相互に干渉し合う。特に、マクロ基地局100の送信電力はピコ基地局200の送信電力よりも大きいので、ピコ基地局200からの無線信号に対するマクロ基地局100からの無線信号の干渉は顕著に大きい。したがって、双方の無線信号が常に送信され続けると、ピコ基地局200からの無線信号をピコ基地局200を所望基地局とするユーザ端末が受信することが困難である。
【0076】
そこで、時間領域ベースのeICICでは、図8に示すように、ピコ基地局200が継続的に下りリンク送信を実行する一方、マクロ基地局100は間欠的に下りリンク送信を実行する。例えば、図8に示すように、マクロ基地局100は、1サブフレームSFごとに無線信号の送信実行と送信停止とを切り替える。マクロ基地局100による干渉からピコ基地局200の無線信号が守られる(プロテクトされる)ことから、マクロ基地局100が無線信号の送信を停止するサブフレームSFをプロテクテッドサブフレーム(Protected Subframe)PSFと称し、逆に、マクロ基地局100が無線信号の送信を実行するサブフレームSFを非プロテクテッドサブフレーム(Non-Protected Subframe)NSFと称する。
【0077】
マクロ基地局100の無線通信部110が無線信号を送信しないプロテクテッドサブフレームPSFでは、ピコ基地局200の無線通信部210のみが無線信号を送信する。したがって、プロテクテッドサブフレームPSFにおいては、ピコ基地局200からの無線信号がマクロ基地局100からの無線信号による干渉を受けないから、ピコ基地局200が形成するピコセルCpに在圏するユーザ端末が、ピコ基地局200からの無線信号をより品質良く受信することが可能となる。
【0078】
この実施の形態は時間領域ベースのeICICに基づいており、マクロ基地局100のリソース設定部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の統計的割合に応じて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。つまり、リソース設定部134は、所定の時間長および所定の周波数帯域幅を占める単位リソース(無線フレームF)に含まれる、マクロ基地局100の無線通信部110が無線通信を実行すべき第1リソース(非プロテクテッドサブフレームNSF)およびマクロ基地局100の無線通信部110が無線通信を停止すべき第2リソース(プロテクテッドサブフレームPSF)の比率を設定する。具体的な比率の設定の例を図9から図12を参照して説明する。
【0079】
図9に示すように、ピコセルCp内のユーザ端末のうちIRC端末300が多い場合には、マクロ基地局100が多くの非プロテクテッドサブフレームNSFを利用しても、ピコセルCpにある多くのIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。この場合には、図10に示すように、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドサブフレームNSF(マクロ基地局100が無線通信を実行する第1リソース)の比率を大きくすることが適切である。
【0080】
他方、図11に示すように、ピコセルCp内のユーザ端末のうちIRC端末300が少ない場合には、マクロ基地局100が多くのリソースを利用すると、ピコセルCpにある多くの非IRC端末400では、マクロ基地局100による干渉のために受信品質が低下しやすい。この場合には、図12に示すように、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドサブフレームNSFの比率を小さくすることが適切である。このように、マクロ基地局100(第1無線基地局)とピコ基地局200(第2無線基地局)とがeICICのために協調する無線通信システムにおいて、非プロテクテッドサブフレームNSFの量を適切に制御することができる。
【0081】
eICICは、小電力基地局に接続されるユーザ端末への干渉を予防または抑制する技術であるから、ピコ基地局200(第2無線基地局)に接続される複数のユーザ端末に関する統計量に基づいて、非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率を設定することで、非プロテクテッドサブフレームNSFの量を適切に制御することができる。
【0082】
リソース設定部134は、上記の比率を設定すると、この比率に基づいてリソース配分情報ALを生成する。リソース配分情報ALは、各無線フレームFにおける非プロテクテッドサブフレームNSFおよびプロテクテッドサブフレームPSFの個数および配置を示す情報である。リソース設定部134は、リソース配分情報ALを通信制御部136に供給する。通信制御部136は、リソース配分情報ALに基づいて無線通信部110を制御する。すなわち、通信制御部136は、リソース設定部134が設定した非プロテクテッドサブフレームNSFにおいて無線通信を実行し、リソース設定部134が設定したプロテクテッドサブフレームPSFにおいて無線通信を停止するように無線通信部110を制御する。
【0083】
リソース設定部134は、リソース配分情報ALを基地局間通信部120によってピコ基地局200に送信する。ピコ基地局200の基地局間通信部220はリソース配分情報ALを受信し、ピコ基地局200の制御部230は、リソース配分情報ALに基づいて、ユーザ端末へのリソース配分を行う。例えば、ピコセルCpの中央にあるユーザ端末(CREによるピコセルCpの拡大がなくてもピコ基地局200に接続するユーザ端末)への無線通信には、主に非プロテクテッドサブフレームNSFを使用するように、制御部230は無線通信部210を制御する。ピコセルCpの端部にあるユーザ端末(CREによるピコセルCpの拡大によりピコ基地局200に接続するユーザ端末)への無線通信には、プロテクテッドサブフレームPSFを使用するように、制御部230は無線通信部210を制御する。
【0084】
上記の統計的割合に基づく非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率の設定ひいてはリソース配分情報ALの生成のため、表1に例示するテーブルをリソース設定部134は使用することができる。このテーブルは、マクロ基地局100内の図示しない記憶部に記憶することができる。
【表1】
【0085】
このテーブルでは、統計的割合Xに応じて、プロテクテッドサブフレームPSFの個数Yが定められている。リソース設定部134は、統計的割合Xに相当する個数Yをこのテーブルから選択することができる。このようなテーブルの代わりに、式によって、統計的割合Xに応じて、プロテクテッドサブフレームPSFの個数Yを算出してもよい。
【0086】
第2の実施の形態
第1の実施の形態では、マクロ基地局100のリソース設定部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合に基づいて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。しかし、第2の実施の形態として、リソース設定部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量に基づいて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定してもよい。
【0087】
第2の実施の形態において、マクロ基地局100、ピコ基地局200、およびユーザ端末(IRC端末300および非IRC端末400)の構成は、第1の実施の形態のそれらと同じでよい。第1の実施の形態と共通する特徴については詳細には説明しない。但し、以下の特徴が異なる。
【0088】
ピコ基地局200の制御部230の端末能力判定部232(図6)は、ピコ基地局200と接続するユーザ端末から報告された端末能力情報UCに基づいて、そのユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定する。また、ピコ基地局200の制御部230は、ピコ基地局200と接続する各ユーザ端末が関与するトラヒック量を監視する。そして、制御部230は、ピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末の総トラヒック量を計算するとともに、ピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300のトラヒック量を計算する。
【0089】
制御部230は、これらの計算結果を示す信号を基地局間通信部220によってマクロ基地局100に転送する。計算結果を示す信号は、マクロ基地局100の基地局間通信部120に受信されて、リソース設定部134に伝達される。
【0090】
こうして、マクロ基地局100のセル内に存在するピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末の総トラヒック量と、ピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300の総トラヒック量がマクロ基地局100のリソース設定部134で認識される。リソース設定部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算する。具体的には、ピコ基地局200(そのマクロ基地局100のマクロセルCmに複数のピコ基地局200があれば、それらの複数のピコ基地局200)に接続するすべてのユーザ端末の総トラヒック量に対するピコ基地局200に接続するすべてのIRC端末300のトラヒック量の統計的割合を計算する。そして、この統計量に基づいて、リソース設定部134は、eICICのためのパラメータを設定する。つまり、マクロ基地局100のリソース設定部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合に基づいて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。換言すれば、リソース設定部134は、所定の時間長および所定の周波数帯域幅を占める単位リソース(無線フレームF)に含まれる、マクロ基地局100の無線通信部110が無線通信を実行すべき第1リソース(非プロテクテッドサブフレームNSF)およびマクロ基地局100の無線通信部110が無線通信を停止すべき第2リソース(プロテクテッドサブフレームPSF)の比率を設定する。
【0091】
ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合が多い場合には、マクロ基地局100が多くの非プロテクテッドサブフレームNSFを利用しても、ピコセルCpにあって多くのトラヒックを使用するIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。この場合には、図10に示すように、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドサブフレームNSF(マクロ基地局100が無線通信を実行する第1リソース)の比率を大きくすることが適切である。
【0092】
他方、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合が少ない場合には、マクロ基地局100が多くのリソースを利用すると、ピコセルCpにあって多くのトラヒックを使用する非IRC端末400では、マクロ基地局100による干渉のために受信品質が低下しやすい。この場合には、図12に示すように、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドサブフレームNSFの比率を小さくすることが適切である。このように、マクロ基地局100(第1無線基地局)とピコ基地局200(第2無線基地局)とがeICICのために協調する無線通信システムにおいて、非プロテクテッドサブフレームNSFの量を適切に制御することができる。
【0093】
eICICは、小電力基地局に接続されるユーザ端末への干渉を予防または抑制する技術であるから、ピコ基地局200(第2無線基地局)に接続される複数のユーザ端末に関する統計量に基づいて、非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率を設定することで、非プロテクテッドサブフレームNSFの量を適切に制御することができる。
【0094】
第1の実施の形態と同様に、上記の統計的割合に基づく非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率の設定ひいてはリソース配分情報ALの生成のため、表1に例示するテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
【0095】
第3の実施の形態
上記の第1の実施の形態では、マクロ基地局100のリソース設定部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合に基づいて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。しかし、第3の実施の形態として、リソース設定部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合に基づいて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定してもよい。
【0096】
第3の実施の形態において、ユーザ端末(IRC端末300および非IRC端末400)の構成は、第1の実施の形態のそれらと同じでよい。第1の実施の形態と共通する特徴については詳細には説明しない。但し、図13に示すように、マクロ基地局100においては、マクロ基地局100の端末能力判定部132で判定されたユーザ端末の種別に基づいて、リソース設定部134が無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。
【0097】
また、図14に示すように、ピコ基地局200は、制御部230内に端末能力判定部232を備えていない。この実施の形態においては、マクロ基地局100のリソース設定部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算しないからである。但し、他の目的、例えば適切なMIMOを実行するために、端末能力判定部232を設けることが好ましい。いずれにせよ、第1の実施の形態とは異なり、ピコ基地局200に接続するユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを示す判定結果を示す信号はマクロ基地局100に転送されない。このことは、下記の第4の実施の形態、第7の実施の形態、第8の実施の形態についても同じである。
【0098】
ユーザ端末の所望無線基地局がマクロ基地局100である場合、端末能力情報UCを示す信号は、マクロ基地局100の無線通信部110で受信される。マクロ基地局100の制御部130の端末能力判定部132は、ユーザ端末から報告された端末能力情報UCに基づいて、そのユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定する。当然ながら、端末能力情報UCが干渉抑圧合成を実行可能であることを示す場合には、端末能力判定部132は、そのユーザ端末がIRC端末300であると判定し、端末能力情報UCが干渉抑圧合成を実行可能であることを示す情報を含まない場合には、端末能力判定部132は、そのユーザ端末が非IRC端末400であると判定する。この判定結果は、リソース設定部134に伝達される。
【0099】
こうして、マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末の干渉抑圧合成の可否はマクロ基地局100のリソース設定部134で認識される。リソース設定部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算する。具体的には、マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末の総数と、マクロ基地局100に接続するすべてのIRC端末300の数をカウントし、マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末の総数に対するマクロ基地局100に接続するすべてのIRC端末300の数の割合を計算する。そして、この統計量に基づいて、リソース設定部134は、eICICのためのパラメータを設定する。つまり、マクロ基地局100のリソース設定部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の統計的割合に応じて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。換言すれば、リソース設定部134は、所定の時間長および所定の周波数帯域幅を占める単位リソース(無線フレームF)に含まれる、マクロ基地局100の無線通信部110が無線通信を実行すべき第1リソース(非プロテクテッドサブフレームNSF)およびマクロ基地局100の無線通信部110が無線通信を停止すべき第2リソース(プロテクテッドサブフレームPSF)の比率を設定する。
【0100】
eICICは、ピコ基地局200に接続される移動端末への干渉を予防または抑制する技術であるから、第1の実施の形態のように、ピコ基地局200(第2無線基地局)に接続される複数のユーザ端末に関する統計量に基づいて、マクロ基地局100(第1無線基地局)の無線通信部110が無線通信を実行すべき非プロテクテッドサブフレームNSFおよび無線通信部110が無線通信を停止すべきプロテクテッドサブフレームPSFの比率を設定してもよい。
【0101】
しかし、ピコ基地局200(第2無線基地局)に接続される複数のユーザ端末に関する統計量をマクロ基地局100(第1無線基地局)で認識するには、第1の実施の形態のようにピコ基地局200からマクロ基地局100への情報の送信(例えば統計量の報告)が必要である。ところが、図9および図11に示すように、ピコ基地局200に接続する複数のユーザ端末の総数のうちIRC端末300の数の割合は、マクロ基地局100に接続する複数のユーザ端末の総数のうちIRC端末300の数の割合とほぼ同じであると考えられる。非常に離れた複数の無線基地局については、ある無線基地局でのIRC端末300に関する統計値が、他の無線基地局でのIRC端末300に関する統計値とほぼ等しいとはいえないが、近接している複数の無線基地局については、ある無線基地局でのIRC端末300に関する統計値が、他の無線基地局でのIRC端末300に関する統計値とほぼ等しいと考えられる。
【0102】
そこで、第3の実施の形態では、マクロ基地局100(第1無線基地局)に接続する複数のユーザ端末に関する統計量に基づいて、マクロ基地局100(第1無線基地局)の無線通信部110が無線通信を実行すべき非プロテクテッドサブフレームNSFおよび無線通信部110が無線通信を停止すべきプロテクテッドサブフレームPSFの比率を設定する。
【0103】
図9に示すように、マクロ基地局100に接続するユーザ端末のうちIRC端末300が多い場合には、ピコセルCp内のユーザ端末のうちIRC端末300も多い。ピコセルCp内のユーザ端末のうちIRC端末300が多い場合には、マクロ基地局100が多くの非プロテクテッドサブフレームNSFを利用しても、ピコセルCpにある多くのIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。この場合には、図10に示すように、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドサブフレームNSF(マクロ基地局100が無線通信を実行する第1リソース)の比率を大きくすることが適切である。
【0104】
他方、図11に示すように、マクロ基地局100に接続するユーザ端末のうちIRC端末300が少ない場合には、ピコセルCp内のユーザ端末のうちIRC端末300も少ない。ピコセルCp内のユーザ端末のうちIRC端末300が少ない場合には、マクロ基地局100が多くのリソースを利用すると、ピコセルCpにある多くの非IRC端末400では、マクロ基地局100による干渉のために受信品質が低下しやすい。この場合には、図12に示すように、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドサブフレームNSFの比率を小さくすることが適切である。このように、マクロ基地局100(第1無線基地局)とピコ基地局200(第2無線基地局)とがeICICのために協調する無線通信システムにおいて、非プロテクテッドサブフレームNSFの量を適切に制御することができる。この実施の形態では、ピコ基地局200からマクロ基地局100への統計量などの報告が不要であり、ピコ基地局200からマクロ基地局100へのトラヒックおよびこれらの無線基地局での処理負担が軽減される。
【0105】
第1の実施の形態と同様に、上記の統計的割合に基づく非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率の設定ひいてはリソース配分情報ALの生成のため、表1に例示するテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
【0106】
第4の実施の形態
第3の実施の形態では、マクロ基地局100のリソース設定部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合に基づいて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。しかし、第4の実施の形態として、リソース設定部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量に基づいて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定してもよい。
【0107】
第4の実施の形態において、マクロ基地局100、ピコ基地局200、およびユーザ端末(IRC端末300および非IRC端末400)の構成は、第3の実施の形態のそれらと同じでよい。第3の実施の形態と共通する特徴については詳細には説明しない。但し、以下の特徴が異なる。
【0108】
マクロ基地局100の制御部130の端末能力判定部132(図13)は、マクロ基地局100と接続するユーザ端末から報告された端末能力情報UCに基づいて、そのユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定する。また、マクロ基地局100の制御部130は、マクロ基地局100と接続する各ユーザ端末が関与するトラヒック量を監視する。そして、制御部130は、マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末の総トラヒック量を計算するとともに、マクロ基地局100に接続するすべてのIRC端末300のトラヒック量を計算する。これらの計算結果はリソース設定部134に伝達される。
【0109】
こうして、マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末の総トラヒック量と、マクロ基地局100に接続するすべてのIRC端末300の総トラヒック量がマクロ基地局100のリソース設定部134で認識される。リソース設定部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の干渉抑圧合成能力に関する統計量を計算する。具体的には、マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末の総トラヒック量に対するマクロ基地局100に接続するすべてのIRC端末300のトラヒック量の統計的割合を計算する。そして、この統計量に基づいて、リソース設定部134は、eICICのためのパラメータを設定する。つまり、マクロ基地局100のリソース設定部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合に基づいて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。換言すれば、リソース設定部134は、所定の時間長および所定の周波数帯域幅を占める単位リソース(無線フレームF)に含まれる、マクロ基地局100の無線通信部110が無線通信を実行すべき第1リソース(非プロテクテッドサブフレームNSF)およびマクロ基地局100の無線通信部110が無線通信を停止すべき第2リソース(プロテクテッドサブフレームPSF)の比率を設定する。
【0110】
ピコ基地局200に接続する複数のユーザ端末の総トラヒック量のうちIRC端末300のトラヒック量の割合は、マクロ基地局100に接続する複数のユーザ端末の総トラヒック量のうちIRC端末300のトラヒック量の割合とほぼ同じであると考えられる。非常に離れた複数の無線基地局については、ある無線基地局でのIRC端末300に関する統計値が、他の無線基地局でのIRC端末300に関する統計値とほぼ等しいとはいえないが、近接している複数の無線基地局については、ある無線基地局でのIRC端末300に関する統計値が、他の無線基地局でのIRC端末300に関する統計値とほぼ等しいと考えられる。
【0111】
マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合が多い場合には、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合も多い。ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合が多い場合には、マクロ基地局100が多くの非プロテクテッドサブフレームNSFを利用しても、ピコセルCpにあって多くのトラヒックを使用するIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。この場合には、図10に示すように、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドサブフレームNSF(マクロ基地局100が無線通信を実行する第1リソース)の比率を大きくすることが適切である。
【0112】
他方、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合が少ない場合には、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合も少ない。ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合が少ない場合には、マクロ基地局100が多くのリソースを利用すると、ピコセルCpにあって多くのトラヒックを使用する非IRC端末400では、マクロ基地局100による干渉のために受信品質が低下しやすい。この場合には、図12に示すように、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドサブフレームNSFの比率を小さくすることが適切である。このように、マクロ基地局100(第1無線基地局)とピコ基地局200(第2無線基地局)とがeICICのために協調する無線通信システムにおいて、非プロテクテッドサブフレームNSFの量を適切に制御することができる。この実施の形態では、ピコ基地局200からマクロ基地局100への統計量などの報告が不要であり、ピコ基地局200からマクロ基地局100へのトラヒックおよびこれらの無線基地局での処理負担が軽減される。
【0113】
第1の実施の形態と同様に、上記の統計的割合に基づく非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率の設定ひいてはリソース配分情報ALの生成のため、表1に例示するテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
【0114】
第5の実施の形態
次に本発明の第5の実施の形態を説明する。第5の実施の形態は第1の実施の形態の修正である。第1の実施の形態では、マクロ基地局100のリソース設定部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合に基づいて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。さらに、第5の実施の形態として、マクロ基地局100のリソース設定部134は、ピコ基地局200に接続するIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)を考慮して、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。
【0115】
IRC端末300は、例えば下記の3タイプに分類することができる。
1)接続する基地局からの所望信号のチャネル推定結果のみを用いて干渉信号成分をブラインド推定し、推定された干渉信号成分に基づいて、干渉電力を抑圧する移動端末。非特許文献3に記載されたIRC受信器はこのタイプに該当し、干渉信号のチャネル推定が不可能な場合でも、IRCを実行する。
2)干渉基地局からの干渉信号のチャネル推定結果を利用して干渉電力を抑圧する移動端末。この移動端末は、干渉信号のチャネル推定が可能である。
3)逐次干渉キャンセル(SIC)を実行する端末。非特許文献4に記載された受信器はこのタイプに該当する。SICを実行する移動端末は、干渉信号を復調し(場合によってはさらに復号し)、受信信号から干渉信号を逐次的に減算することにより、当該移動端末宛ての所望信号を得る。
タイプ3は最も高い干渉抑圧合成能力を有し、タイプ1は最も低い干渉抑圧合成能力を有する。
【0116】
各非IRC端末400において、端末能力情報通知部432は、そのユーザ端末が非IRC端末であることを示す端末能力情報を、そのユーザ端末が接続されている無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に報告する。各IRC端末300において、端末能力情報通知部332は、そのIRC端末自身の干渉抑圧合成能力に対応する端末能力情報を、IRC端末が接続されている無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に報告する。
【0117】
例えば、端末能力情報は、表2に例示する2ビットの情報であってよい。なお、非IRC端末の能力情報については通知しなくても良く、通知されていない端末がすなわち非IRC端末と認識できる。
【表2】
【0118】
マクロ基地局100のセル内に存在するピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末の端末能力情報はマクロ基地局100のリソース設定部134で認識される。リソース設定部134は、ピコ基地局200に接続するIRC端末300の各々に、そのIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与え、さらにピコ基地局200に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合Xを計算する。具体的には、下記の式に従って割合Xを計算する。
【数1】
ここで、Np0はピコ基地局200に接続する非IRC端末400の数、Np1はピコ基地局200に接続するタイプ1のIRC端末300の数、Np2はピコ基地局200に接続するタイプ2のIRC端末300の数、Np3はピコ基地局200に接続するタイプ3のIRC端末300の数である。a,b,cは重み付け係数であり、1≦a<b<cである。
【0119】
そして、リソース設定部134は、割合Xが大きいほど、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドサブフレームNSF(マクロ基地局100が無線通信を実行する第1リソース)の比率が大きくなるように、非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率を設定し、この比率に基づいてリソース配分情報ALを生成する。非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率の設定ひいてはリソース配分情報ALの生成のため、表1に例示するテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
【0120】
この実施の形態では、ピコ基地局200に接続するIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)を考慮して、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。ピコセルCp内に干渉抑圧合成能力が高いIRC端末300が多い場合には、マクロ基地局100が多くの非プロテクテッドサブフレームNSFを利用しても、ピコセルCpにある多くのIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。したがって、上記のように、ピコ基地局200に接続するIRC端末300の各々に、そのIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与えることにより、非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率を適切に設定することができる。
【0121】
第6の実施の形態
次に本発明の第6の実施の形態を説明する。第6の実施の形態は第2の実施の形態の修正である。第2の実施の形態では、マクロ基地局100のリソース設定部134は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量に基づいて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。さらに、第5の実施の形態として、マクロ基地局100のリソース設定部134は、ピコ基地局200に接続するIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)を考慮して、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。
【0122】
第5の実施の形態と同様に、各ユーザ端末は、そのユーザ端末が接続されている無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に端末能力情報を報告する。マクロ基地局100のセル内に存在するピコ基地局200に接続するすべてのユーザ端末の端末能力情報はマクロ基地局100のリソース設定部134で認識される。リソース設定部134は、ピコ基地局200に接続するIRC端末300の各々に、そのIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与え、さらにピコ基地局200に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合Xを計算する。具体的には、下記の式に従って割合Xを計算する。
【数2】
ここで、Tp0はピコ基地局200に接続する非IRC端末400のトラヒック量、Tp1はピコ基地局200に接続するタイプ1のIRC端末300のトラヒック量、Tp2はピコ基地局200に接続するタイプ2のIRC端末300のトラヒック量、Tp3はピコ基地局200に接続するタイプ3のIRC端末300のトラヒック量である。a,b,cは重み付け係数であり、1≦a<b<cである。
【0123】
そして、リソース設定部134は、割合Xが大きいほど、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドサブフレームNSF(マクロ基地局100が無線通信を実行する第1リソース)の比率が大きくなるように、非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率を設定し、この比率に基づいてリソース配分情報ALを生成する。非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率の設定ひいてはリソース配分情報ALの生成のため、表1に例示するテーブルと類似のテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
【0124】
この実施の形態では、ピコ基地局200に接続するIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)を考慮して、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。ピコセルCp内で干渉抑圧合成能力が高い多くのIRC端末300が通信を行っている場合には、マクロ基地局100が多くの非プロテクテッドサブフレームNSFを利用しても、ピコセルCpで実際に通信している多くのIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。したがって、上記のように、ピコ基地局200に接続するIRC端末300の各々に、そのIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与えることにより、非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率を適切に設定することができる。
【0125】
第7の実施の形態
次に本発明の第7の実施の形態を説明する。第7の実施の形態は第3の実施の形態の修正である。第3の実施の形態では、マクロ基地局100のリソース設定部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合に基づいて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。さらに、第7の実施の形態として、マクロ基地局100のリソース設定部134は、マクロ基地局100に接続するIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)を考慮して、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。
【0126】
第5の実施の形態と同様に、各ユーザ端末は、そのユーザ端末が接続されている無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に端末能力情報を報告する。マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末の端末能力情報はマクロ基地局100のリソース設定部134で認識される。リソース設定部134は、マクロ基地局100に接続するIRC端末300の各々に、そのIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与え、さらにマクロ基地局100に接続するユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合Xmを計算する。具体的には、下記の式に従って割合Xmを計算する。
【数3】
ここで、Nm0はマクロ基地局100に接続する非IRC端末400の数、Nm1はマクロ基地局100に接続するタイプ1のIRC端末300の数、Nm2はマクロ基地局100に接続するタイプ2のIRC端末300の数、Nm3はマクロ基地局100に接続するタイプ3のIRC端末300の数である。a,b,cは重み付け係数であり、1≦a<b<cである。
【0127】
そして、リソース設定部134は、割合Xmが大きいほど、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドサブフレームNSF(マクロ基地局100が無線通信を実行する第1リソース)の比率が大きくなるように、非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率を設定し、この比率に基づいてリソース配分情報ALを生成する。非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率の設定ひいてはリソース配分情報ALの生成のため、表1に例示するテーブルと類似のテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
【0128】
この実施の形態では、マクロ基地局100に接続するIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)を考慮して、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。マクロセルCm内に干渉抑圧合成能力が高いIRC端末300が多い場合には、ピコセルCp内でも干渉抑圧合成能力が高いIRC端末300が多いと考えられる。ピコセルCp内に干渉抑圧合成能力が高いIRC端末300が多い場合には、マクロ基地局100が多くの非プロテクテッドサブフレームNSFを利用しても、ピコセルCpにある多くのIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。したがって、上記のように、マクロ基地局100に接続するIRC端末300の各々に、そのIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与えることにより、非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率を適切に設定することができる。
【0129】
第8の実施の形態
次に本発明の第8の実施の形態を説明する。第8の実施の形態は第4の実施の形態の修正である。第4の実施の形態では、マクロ基地局100のリソース設定部134は、マクロ基地局100に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量に基づいて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。さらに、第8の実施の形態として、マクロ基地局100のリソース設定部134は、マクロ基地局100に接続するIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)を考慮して、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。
【0130】
第5の実施の形態と同様に、各ユーザ端末は、そのユーザ端末が接続されている無線基地局(マクロ基地局100またはピコ基地局200)に端末能力情報を報告する。マクロ基地局100に接続するすべてのユーザ端末の端末能力情報はマクロ基地局100のリソース設定部134で認識される。リソース設定部134は、マクロ基地局100に接続するIRC端末300の各々に、そのIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与え、さらにマクロ基地局100に接続するユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合XmTを計算する。具体的には、下記の式に従って割合XmTを計算する。
【数4】
ここで、Tm0はマクロ基地局100に接続する非IRC端末400のトラヒック量、Tm1はマクロ基地局100に接続するタイプ1のIRC端末300のトラヒック量、Tm2はマクロ基地局100に接続するタイプ2のIRC端末300のトラヒック量、Tm3はマクロ基地局100に接続するタイプ3のIRC端末300のトラヒック量である。a,b,cは重み付け係数であり、1≦a<b<cである。
【0131】
そして、リソース設定部134は、割合XmTが大きいほど、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドサブフレームNSF(マクロ基地局100が無線通信を実行する第1リソース)の比率が大きくなるように、非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率を設定し、この比率に基づいてリソース配分情報ALを生成する。非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率の設定ひいてはリソース配分情報ALの生成のため、表1に例示するテーブルと類似のテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。
【0132】
この実施の形態では、マクロ基地局100に接続するIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)を考慮して、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。マクロセルCm内で干渉抑圧合成能力が高い多くのIRC端末300が通信を行っている場合には、ピコセルCp内でも干渉抑圧合成能力が高い多くのIRC端末300が通信を行っていると考えられる。ピコセルCp内で干渉抑圧合成能力が高い多くのIRC端末300が通信を行っている場合には、マクロ基地局100が多くの非プロテクテッドサブフレームNSFを利用しても、ピコセルCpで実際に通信している多くのIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。したがって、上記のように、ピコ基地局200に接続するIRC端末300の各々に、そのIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与えることにより、非プロテクテッドサブフレームNSFとプロテクテッドサブフレームPSFの比率を適切に設定することができる。
【0133】
第9の実施の形態
次に本発明の第9の実施の形態を説明する。第9の実施の形態は、第1〜第8の実施の形態の修正である。マクロ基地局100、ピコ基地局200、およびユーザ端末(IRC端末300および非IRC端末400)の構成は、第1〜第8の実施の形態のいずれかのそれらと同じでよい。
【0134】
図15は、第9の実施の形態に係る無線通信システムの情報の流れを示すブロック図である。図15において、Cp1はCREが適用されない場合のピコ基地局200のピコセルを示し、Cp2はCREが適用されて拡大された場合のピコ基地局200のピコセルを示す。UEは、IRC端末300か非IRC端末400かを問わずユーザ端末を示す。
【0135】
矢印Aにて示すように、ユーザ端末UEは、マクロ基地局100から離れてピコ基地局200に近づくよう移動しており、CREが適用されて拡大されたピコ基地局200のピコセルCp2に入ったところである。すなわち、図示のユーザ端末UEは、マクロ基地局100からピコ基地局200にハンドオーバされようとするところである。
【0136】
CREでピコ基地局200のセル範囲が拡大された場合、ユーザ端末UEはピコ基地局200に接続しやすくなる。しかし、ピコ基地局200のセルの端部にあるユーザ端末UEがピコ基地局200から受信する電波の品質が実際に向上するわけではない。IRCは、IRCを実施するユーザ端末UE(IRC端末300)にとっての干渉信号を弱め所望信号の受信品質を向上させることができるが、所望信号はそのユーザ端末宛のデータ信号や参照信号であって、ピコ基地局200が不特定のユーザ端末UEに送信する報知情報やその移動端末宛の制御信号の受信品質をIRCが向上させることはできない。よって、ヘテロジーニアスネットワークにおいては、CREが適用されると、IRCを実施するユーザ端末UE(IRC端末300)において、所望信号と報知信号及び制御信号の受信品質差が極めて大きくなる弊害が予測される。特に、第1〜第4の実施の形態において、IRC端末300が多い場合、またはそのようなIRC端末300のトラヒック量が多い場合には、マクロ基地局100(第1無線基地局)で利用可能な第1リソース(非プロテクテッドサブフレームNSF)の比率が大きくされ、マクロ基地局100から受ける干渉が大きくなり、報知信号及び制御信号の品質のさらなる低下の懸念がある。
【0137】
そこで、第9の実施の形態では、ピコ基地局200は、ピコ基地局200から無線送信されるすべての種類の報知情報及び制御信号をマクロ基地局100に送信し、マクロ基地局100は、ピコ基地局200から受信した報知情報及び制御信号を、マクロ基地局100からピコ基地局200へハンドオーバされようとする移動端末にそのような報知情報及び制御信号を転送する。これによりピコ基地局200で使用される報知情報及び制御信号をユーザ端末UEが受信する確実性を改善することができ、円滑なハンドオーバ処理を遂行することができる。
【0138】
ピコ基地局200において、無線通信部210は、ピコセルCp2に在圏するすべてのユーザ端末に報知情報及び制御信号を無線送信する情報無線送信部として機能する。基地局間通信部220は、ピコ基地局200で使用されるこのような報知情報及び制御信号のすべての種類をマクロ基地局100に送信する情報予備送信部として機能する。
【0139】
マクロ基地局100において、基地局間通信部120は、ピコ基地局200で使用されるすべての種類の報知情報及び制御信号をピコ基地局200の基地局間通信部220から受信する情報予備受信部として機能する。無線通信部110は、情報予備受信部で受信される報知情報及び制御信号を、マクロ基地局100からピコ基地局200へハンドオーバされようとするユーザ端末UEに転送する情報予備転送部として機能する。
【0140】
ヘテロジーニアスネットワークにおいては、CREが適用されると、IRC端末300において、IRCのために所望信号と報知信号及び制御信号の品質差が極めて大きくなる弊害が予測される。特に、IRCを実施する移動端末に対してIRCを実施しない移動端末よりも大きなバイアス値を用いるCREを適用した場合、その弊害は顕著に現れるものと予測される。一方、IRCを実施しない非IRC端末400については、所望信号と報知信号及び制御信号の品質差は同じである。そこで、ピコセルCp2で使用されるすべての種類の報知情報及び制御信号を、IRC端末300にのみあらかじめ転送しておいてもよい。つまり、マクロ基地局100の無線通信部(情報予備転送部)110は、ピコセルCp2に在圏するユーザ端末に無線送信されるすべての種類の報知情報及び制御信号を、マクロ基地局100からピコ基地局200へハンドオーバされようとするIRC端末300にのみ転送してもよい。
【0141】
報知情報及び制御信号に物理レイヤに関する情報と、上位レイヤに関する情報の2種類がある。物理レイヤに関する情報は、ユーザ端末で制御情報を復調するために使用されるリソースに関する情報(例えば制御情報が送信されるサブキャリアおよびシンボルの番号など)、および上りリンクの同期を行うためのランダムアクセスチャネルに関する情報を含む。上位レイヤに関する情報は、ユーザ端末で所望データ信号を復調するために使用されるリソースに関する情報(例えばデータ信号が送信されるサブキャリア、変調方式など)、および再送情報などを含む。
【0142】
この実施の形態では、IRC端末300がマクロ基地局100からピコ基地局200にハンドオーバされようとする時、そのIRC端末300に、物理レイヤに関する情報と上位レイヤに関する情報のすべてを含む報知情報及び制御信号(ピコ基地局200で使用されるすべての報知情報及び制御信号)が転送される。非IRC端末400がマクロ基地局100からピコ基地局200にハンドオーバされようとする時、その非IRC端末400には、ピコ基地局200で使用される報知情報及び制御信号を転送しなくてもよいし、物理レイヤに関する情報だけを転送してもよい。
【0143】
他の変形
変形1
以上の実施の形態は時間領域ベースのeICICに基づいており、マクロ基地局100のリソース設定部134は、統計的割合に応じて、無線フレームF内のプロテクテッドサブフレームPSFの個数を設定する。しかし、時間領域ベースのeICICの代わりに、周波数領域ベースのeICICを利用してもよい。すなわち、リソース設定部134は、統計的割合に応じて、周波数帯域(プロテクテッドサブキャリア)の個数を設定してもよい。この変形は、上記のいずれの実施の形態にも適用可能である。
【0144】
図16は、無線通信システムの各通信要素間で送受信される無線フレームFのフォーマットを、図7とは別の観点から示す図である。前述の通り、無線フレームFは所定の時間長および所定の帯域幅を占める。無線フレームFは、周波数方向に複数のサブキャリアSCを含む。サブキャリアSCは、無線フレームFよりも狭い周波数帯域(例えば、15 kHz)を占める送信単位である。6つのサブキャリアSCのみが図示されているが、無線フレームFに含まれるサブキャリアSCの数が任意であることは当然に理解される。複数のサブキャリアSCが周波数領域において相互に直交することを示すため、図16ではサブキャリアSC同士が相互に重複しないように図示されている。実際には、サブキャリアSC同士(特に、中心周波数が隣接するサブキャリアSC同士)は、少なくとも一部の帯域において相互に重複し得る。
【0145】
図16では、図7に示したようなサブフレームSFを明示しないが、無線フレームFがサブフレームSFを有さないことを意図するものではない。図16は、周波数領域の送信単位であるサブキャリアSCに注目した図であるから、サブフレームSFの図示が省略されている。
【0146】
図17は、周波数領域ベースのeICICの概略を示す図である。マクロ基地局100の無線通信部110の通信制御部136は、各サブキャリアSCについて無線信号の送信実行と送信停止とを切り替えるように無線通信部110を制御する。マクロ基地局100による干渉からピコ基地局200の無線信号が守られる(プロテクトされる)ことから、マクロ基地局100が無線信号の送信を停止するサブキャリアSCをプロテクテッドサブキャリア(Protected Subcarrier)PSCと称し、逆に、マクロ基地局100が無線信号の送信を実行するサブキャリアSCを非プロテクテッドサブキャリア(Non-Protected Subcarrier)NSCと称する。他方、ピコ基地局200の無線通信部210は、無線信号を無線フレームF内の全ての帯域において、すなわち非プロテクテッドサブキャリアNSCとプロテクテッドサブキャリアPSCとの双方において無線信号をユーザ端末へ送信し得る。
【0147】
マクロ基地局100の無線通信部110が無線信号を送信しないプロテクテッドサブキャリアPSCでは、ピコ基地局200の無線通信部210のみが無線信号を送信する。したがって、プロテクテッドサブキャリアPSCにおいては、ピコ基地局200からの無線信号がマクロ基地局100からの無線信号による干渉を受けないから、ピコ基地局200が形成するピコセルCpに在圏するユーザ端末が、ピコ基地局200からの無線信号をより品質良く受信することが可能となる。
【0148】
このような周波数領域ベースのeICICに基づく変形の無線通信システムにおいて、マクロ基地局100のリソース設定部134は、上記の統計的割合に応じて、無線フレームF内のプロテクテッドサブキャリアPSCの個数を設定してよい。つまり、リソース設定部134は、所定の時間長および所定の周波数帯域幅を占める単位リソース(無線フレームF)に含まれる、マクロ基地局100の無線通信部110が無線通信を実行すべき第1リソース(非プロテクテッドサブキャリアNSC)およびマクロ基地局100の無線通信部110が無線通信を停止すべき第2リソース(プロテクテッドサブキャリアPSC)の比率を設定してよい。
【0149】
ユーザ端末の総数のうちIRC端末300の数が多い場合またはユーザ端末の総トラヒック量のうちIRC端末300のトラヒック量が多い場合には、マクロ基地局100が多くの非プロテクテッドサブキャリアNSCを利用しても、ピコセルCpにある多くのIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。この場合には、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドサブキャリアNSC(マクロ基地局100が無線通信を実行する第1リソース)の比率を大きくすることが適切である。
【0150】
他方、ユーザ端末の総数のうちIRC端末300の数が少ない場合またはユーザ端末の総トラヒック量のうちIRC端末300のトラヒック量が少ない場合には、マクロ基地局100が多くの非プロテクテッドサブキャリアNSCを利用すると、ピコセルCpにある多くの非IRC端末400は、マクロ基地局100による干渉のために受信品質が低下しやすい。この場合には、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドサブキャリアNSCの比率を小さくすることが適切である。統計的割合に基づく非プロテクテッドサブキャリアNSCとプロテクテッドサブキャリアPSCの比率の設定ひいてはリソース配分情報ALの生成のため、表1に例示するテーブルと類似のテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。第5〜第8の実施の形態と同様に、IRC端末300の各々に、そのIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与えてもよい。
【0151】
リソース設定部134は、上記の比率を設定すると、この比率に基づいてリソース配分情報ALを生成する。リソース配分情報ALは、各無線フレームFにおける非プロテクテッドサブキャリアNSCおよびプロテクテッドサブキャリアPSCの個数および配置を示す情報である。リソース設定部134は、リソース配分情報ALを通信制御部136に供給する。通信制御部136は、リソース配分情報ALに基づいて無線通信部110を制御する。すなわち、通信制御部136は、リソース設定部134が設定した非プロテクテッドサブキャリアNSCにおいて無線通信を実行し、リソース設定部134が設定したプロテクテッドサブキャリアPSCにおいて無線通信を停止するように無線通信部110を制御する。
【0152】
リソース設定部134は、リソース配分情報ALを基地局間通信部120によってピコ基地局200に送信する。ピコ基地局200の基地局間通信部220はリソース配分情報ALを受信し、ピコ基地局200の制御部230は、リソース配分情報ALに基づいて、ユーザ端末へのリソース配分を行う。例えば、ピコセルCpの中央にあるユーザ端末(CREによるピコセルCpの拡大がなくてもピコ基地局200に接続するユーザ端末)への無線通信には、主に非プロテクテッドサブキャリアNSCを使用するように、制御部230は無線通信部210を制御する。ピコセルCpの端部にあるユーザ端末(CREによるピコセルCpの拡大によりピコ基地局200に接続するユーザ端末)への無線通信には、プロテクテッドサブキャリアPSCを使用するように、制御部230は無線通信部210を制御する。
【0153】
以上では、周波数帯域としてサブキャリアを用いた変形例を述べたが、他の周波数帯域の概念として、搬送波周波数(キャリア)を用いてもよい。すなわち、マクロ基地局ではいずれかの搬送波周波数(第1リソース)で無線通信を実行し、他の搬送波周波数(第2リソース)で無線通信を停止し、ピコ基地局では両方の搬送波周波数を用いて無線通信を実行するようにしてもよい。
【0154】
変形2
リソースブロックベースのeICICを利用してもよい。すなわち、リソース設定部134は、統計的割合に応じて、リソースブロックの個数を設定してもよい。この変形は、上記のいずれの実施の形態にも適用可能である。
【0155】
図18は、無線通信システムの各通信要素間で送受信される無線フレームFのフォーマットを、図7および図16とは別の観点から示す図である。前述の通り、無線フレームFは所定の時間長および所定の帯域幅を占める。無線フレームFは複数のリソースブロックRBを含む。リソースブロックRBは、無線フレームFよりも短い時間長(例えば、1ミリ秒)および無線フレームFよりも狭い周波数帯域(例えば、180 kHz)を占める送信単位である。1無線フレームFあたり96個のリソースブロックRBが図示されているが、無線フレームFに含まれるリソースブロックRBの数が任意であることは当然に理解される。図示しないが、各リソースブロックRBは、さらに小さい送信単位である複数のリソースエレメントを含む。
【0156】
図18では、図7に示したようなサブフレームSFおよび図16に示したようなサブキャリアSCを明示しないが、無線フレームFがサブフレームSFおよびサブキャリアSCを有さないことを意図するものではない。図18は、所定の時間長および所定の周波数帯域を有する送信単位であるリソースブロックRBに注目した図であるから、サブフレームSFおよびサブキャリアSCの図示が省略されている。
【0157】
図19は、リソースブロックベースのセル間干渉制御の概説図である。無線通信部110の通信制御部136は、各リソースブロックRBごとに無線信号の送信実行と送信停止とを切り替えるように無線通信部110を制御する。マクロ基地局100による干渉からピコ基地局200の無線信号が守られる(プロテクトされる)ことから、マクロ基地局100が無線信号の送信を停止するリソースブロックRBをプロテクテッドリソースブロック(Protected Resource Block)PRBと称し、逆に、マクロ基地局100が無線信号の送信を実行するリソースブロックRBを非プロテクテッドリソースブロック(Non-Protected Resource Block)NRBと称する。他方、ピコ基地局200の無線通信部210は、無線信号を無線フレームF内の全てのリソースブロックRBにおいて、すなわち非プロテクテッドリソースブロックNRBとプロテクテッドリソースブロックPRBとの双方において無線信号をユーザ端末へ送信し得る。
【0158】
マクロ基地局100の無線通信部110が無線信号を送信しないプロテクテッドリソースブロックPRBでは、ピコ基地局200の無線通信部210のみが無線信号を送信する。したがって、プロテクテッドリソースブロックPRBにおいては、ピコ基地局200からの無線信号がマクロ基地局100からの無線信号による干渉を受けないから、ピコ基地局200が形成するピコセルCpに在圏するユーザ端末が、ピコ基地局200からの無線信号をより品質良く受信することが可能となる。
【0159】
このようなリソースブロックベースのeICICに基づく変形の無線通信システムにおいて、マクロ基地局100のリソース設定部134は、上記の統計的割合に応じて、無線フレームF内のプロテクテッドリソースブロックPRBの個数を設定してよい。つまり、リソース設定部134は、所定の時間長および所定の周波数帯域幅を占める単位リソース(無線フレームF)に含まれる、マクロ基地局100の無線通信部110が無線通信を実行すべき第1リソース(非プロテクテッドリソースブロックNRB)およびマクロ基地局100の無線通信部110が無線通信を停止すべき第2リソース(プロテクテッドリソースブロックPRB)の比率を設定してよい。
【0160】
ユーザ端末の総数のうちIRC端末300の数が多い場合またはユーザ端末の総トラヒック量のうちIRC端末300のトラヒック量が多い場合には、マクロ基地局100が多くの非プロテクテッドリソースブロックNRBを利用しても、ピコセルCpにある多くのIRC端末300は、マクロ基地局100による干渉を抑圧可能である。この場合には、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドリソースブロックNRB(マクロ基地局100が無線通信を実行する第1リソース)の比率を大きくすることが適切である。
【0161】
他方、ユーザ端末の総数のうちIRC端末300の数が少ない場合またはユーザ端末の総トラヒック量のうちIRC端末300のトラヒック量が少ない場合には、マクロ基地局100が多くの非プロテクテッドリソースブロックNRBを利用すると、ピコセルCpにある多くの非IRC端末400は、マクロ基地局100による干渉のために受信品質が低下しやすい。この場合には、マクロ基地局100で利用可能な非プロテクテッドリソースブロックNRBの比率を小さくすることが適切である。統計的割合に基づく非プロテクテッドリソースブロックNRBとプロテクテッドリソースブロックPRBの比率の設定ひいてはリソース配分情報ALの生成のため、表1に例示するテーブルと類似のテーブルを使用してもよいし、式を使用してもよい。第5〜第8の実施の形態と同様に、IRC端末300の各々に、そのIRC端末300の干渉抑圧合成能力(干渉抑圧合成タイプ)に応じた重み付けを与えてもよい。
【0162】
リソース設定部134は、上記の比率を設定すると、この比率に基づいてリソース配分情報ALを生成する。リソース配分情報ALは、各無線フレームFにおける非プロテクテッドリソースブロックNRBおよびプロテクテッドリソースブロックPRBの個数および配置を示す情報である。リソース設定部134は、リソース配分情報ALを通信制御部136に供給する。通信制御部136は、リソース配分情報ALに基づいて無線通信部110を制御する。すなわち、通信制御部136は、リソース設定部134が設定した非プロテクテッドリソースブロックNRBにおいて無線通信を実行し、リソース設定部134が設定したプロテクテッドリソースブロックPRBにおいて無線通信を停止するように無線通信部110を制御する。
【0163】
リソース設定部134は、リソース配分情報ALを基地局間通信部120によってピコ基地局200に送信する。ピコ基地局200の基地局間通信部220はリソース配分情報ALを受信し、ピコ基地局200の制御部230は、リソース配分情報ALに基づいて、ユーザ端末へのリソース配分を行う。例えば、ピコセルCpの中央にあるユーザ端末(CREによるピコセルCpの拡大がなくてもピコ基地局200に接続するユーザ端末)への無線通信には、主に非プロテクテッドリソースブロックNRBを使用するように、制御部230は無線通信部210を制御する。ピコセルCpの端部にあるユーザ端末(CREによるピコセルCpの拡大によりピコ基地局200に接続するユーザ端末)への無線通信には、プロテクテッドリソースブロックPRBを使用するように、制御部230は無線通信部210を制御する。
【0164】
変形3
以上の実施の形態では、ユーザ端末の総数に対するIRC端末300の数の割合、またはユーザ端末の総トラヒック量に対するIRC端末300のトラヒック量の割合に応じて、リソース設定部134はリソースの比率を設定する。さらに加えて各種のパラメータを考慮して、リソース設定部134はリソースの比率を設定してもよい。各種のパラメータは、例えば、ピコ基地局200もしくはマクロ基地局100に無線接続されたユーザ端末の総数、ピコ基地局200もしくはマクロ基地局100に無線接続されたユーザ端末の総トラヒック量、ピコ基地局200もしくはマクロ基地局100に無線接続されたIRC端末300の総数、ピコ基地局200もしくはマクロ基地局100に無線接続されたIRC端末300の総トラヒック量、ピコ基地局200もしくはマクロ基地局100に無線接続された非IRC端末400の総数、ピコ基地局200もしくはマクロ基地局100に無線接続された非IRC端末400の総トラヒック量、ピコ基地局200もしくはマクロ基地局100の送信電力またはこれらのいずれかの組合せを含む。
【0165】
変形4
以上の実施の形態では、受信品質測定部334,434が測定する電波の受信特性は参照信号受信電力(RSRP)であるが、信号対干渉雑音比(Signal-to-Interference and Noise Ratio,SINR)、参照信号受信品質(Reference Signal Received Quality,RSRQ)等が受信特性として採用されても良い。信号対干渉雑音比など、受信特性が比で表される場合には、受信特性の特性値Rにオフセット値(バイアス値)αが乗算されて補正後の特性値R'が算出される形態(すなわち、R'=R×α)が採用されてもよい。また、受信特性がdB(比の対数)で表される場合には、dBで表された特性値Rに対しdBで表されたオフセット値を加算して特性値R'を算出してもよい。この形態は、特性値Rにオフセット値αを乗算する形態の一種であることが当然に理解される。
【0166】
変形5
以上の実施の形態では、CREのためにピコ基地局200からの電波の受信特性がオフセット値(バイアス値)αで補正される。さらに、マクロ基地局100またはピコ基地局200からの電波の受信特性は、他の目的のオフセット値(バイアス値)で補正してもよい。例えば、一旦ハンドオーバされたユーザ端末が元の無線基地局にすぐにハンドオーバされることを防止するためのヒステリシスを使用してもよい。
【0167】
変形6
以上の実施の形態では、ユーザ端末の受信品質報告部338,438が複数の無線基地局からの受信品質および補正された受信品質を所望無線基地局に報告し、マクロ基地局100の接続先選択部138は、各ユーザ端末の受信電力結果報告に基づいて、そのユーザ端末が接続すべき無線基地局を選択する。しかし、ユーザ端末は、複数の無線基地局からの受信品質および補正された受信品質を比較し、最良の受信品質またはその最良の受信品質に相当する無線基地局を示す信号を所望無線基地局に報告してもよい。マクロ基地局100の接続先選択部138は、各ユーザ端末のその報告に基づいて、最良の受信品質に相当する無線基地局をそのユーザ端末が接続すべき無線基地局として選択してよい。
【0168】
変形7
第1および第2の実施の形態では、ピコ基地局200の端末能力判定部232がピコ基地局200と接続するユーザ端末から報告された端末能力情報UCに基づいて、そのユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定する。しかし、ピコ基地局200は、これらの端末能力情報UCをマクロ基地局100に転送し、転送された端末能力情報UCに基づいて、マクロ基地局100の端末能力判定部132がそのユーザ端末がIRC端末300であるか非IRC端末400であるかを判定してもよい。
【0169】
変形8
以上の実施の形態では、マクロ基地局100よりも送信能力の低い基地局(第2無線基地局)としてピコ基地局200が例示されるが、マイクロ基地局、ナノ基地局、フェムト基地局等が送信能力の低い基地局として採用されてもよい。相異なる送信能力を有する3種類以上の無線基地局の組合せ(例えば、マクロ基地局、ピコ基地局、およびフェムト基地局の組合せ)により無線ネットワークが構成されてもよい。また、以上の実施の形態では、ピコ基地局200としてリモートラジオヘッドが例示され、このピコ基地局200は、ユーザ端末から受信した受信品質情報をマクロ基地局に転送し、マクロ基地局がピコ基地局200に接続するユーザ端末の接続先の無線基地局を選択する。しかし、ピコ基地局200は、ピコ基地局200に接続するユーザ端末から受信した受信品質情報に基づいて当該ユーザ端末の接続先の無線基地局を選択する、ピコeNodeBであってもよい。
【0170】
変形9
ユーザ端末(IRC端末300および非IRC端末400)は、各無線基地局と無線通信が可能な任意の装置でよい。ユーザ端末は、例えばフィーチャーフォンまたはスマートフォン等の携帯電話端末でもよく、デスクトップ型パーソナルコンピュータでもよく、ノート型パーソナルコンピュータでもよく、UMPC(Ultra-Mobile Personal Computer)でもよく、携帯用ゲーム機でもよく、その他の無線端末でもよい。
【0171】
変形10
無線通信システム内の各要素(マクロ基地局100、ピコ基地局200、ユーザ端末)においてCPUが実行する各機能は、CPUの代わりに、ハードウェアで実行してもよいし、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)等のプログラマブルロジックデバイスで実行してもよい。
【0172】
前記の実施の形態および変形は、矛盾しない限り、組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0173】
Cm マクロセル(第1セル)、Cp ピコセル(第2セル)、100 マクロ基地局(第1無線基地局、大電力基地局)、110 無線通信部(情報予備転送部)、112 送受信アンテナ、120 基地局間通信部(情報予備受信部)、130 制御部、132 端末能力判定部、134 リソース設定部、136 通信制御部、138 接続先選択部、200 ピコ基地局(第2無線基地局、小電力基地局)、210 無線通信部(情報無線送信部)、212 送受信アンテナ、220 基地局間通信部(情報予備送信部)、230 制御部、232 端末能力判定部、300 IRC端末(移動端末)、310 無線通信部、312 送受信アンテナ、330 制御部、332 端末能力情報通知部、334 受信品質測定部、336 受信品質補正部、338 受信品質報告部、340 接続部、342 IRC実行部、400 非IRC端末(移動端末)、410 無線通信部、412 送受信アンテナ、430 制御部、432 端末能力情報通知部、434 受信品質測定部、436 受信品質補正部、438 受信品質報告部、440 接続部、UE ユーザ端末(移動端末)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図19