(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770379
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】超深部高圧高温油およびガス井制御機器の設計検証および妥当性確認のための工学的方法
(51)【国際特許分類】
G06F 17/50 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
G06F17/50 612H
G06F17/50 680Z
【請求項の数】29
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-528446(P2014-528446)
(86)(22)【出願日】2012年8月21日
(65)【公表番号】特表2014-525630(P2014-525630A)
(43)【公表日】2014年9月29日
(86)【国際出願番号】US2012051666
(87)【国際公開番号】WO2013032773
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2014年3月25日
(31)【優先権主張番号】13/223,485
(32)【優先日】2011年9月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514051279
【氏名又は名称】マクモラン オイル アンド ガス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スカップ, リチャード アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】シムス, ジェイ. ロバート
(72)【発明者】
【氏名】クリシャナマーシー, ラビ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ルーイス, デイッビッド ビー.
【審査官】
松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−346678(JP,A)
【文献】
特開2005−196748(JP,A)
【文献】
特表2009−544877(JP,A)
【文献】
特表2010−502862(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0091053(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0252304(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0319720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
E21B 43/00−44/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面および表面下油およびガス機器構成要素の設計検証および妥当性確認のための方法であって、前記方法は、
(a)弾塑性有限要素モデルを用いて全体静的強度および局所塑性について前記構成要素を分析するステップであって、前記分析は、初期メッシュ密度に基づいて、プリセット負荷条件、および各構成要素に対する寸法公差の最も不利な組み合わせを使用し、前記分析は、
(i)全てのプリセット負荷条件を使用して、前記構成要素の設計が安定したモデル収束をもたらすことを確認するステップと、
(ii)前記構成要素の応力を受けた部分にメッシュ改良検討を行うステップであって、メッシュ密度のさらなる改良は、塑性ひずみの事前選択されたメッシュ改良変化率よりも小さい変化をもたらす、ステップと、
(iii)前記モデルによって識別された前記構成要素の応力を受けた部分が、設定されたひずみ限界損傷量よりも小さいひずみ限界損傷を有することを確認するステップと
を含む、ステップと、
(b)プリセット負荷条件の最大の組み合わせにおいて局所塑性を示す全ての機器構成要素上で、前記モデルを用いて弾完全塑性分析を実行することによって、ラチェッティング評価を行い、最大プリセット負荷条件をそのような構成要素に適用することにより、少なくとも1つのラチェッティング基準を実証することによって、ラチェッティングに対する耐性を決定するステップと、
(c)(a)の分析結果に基づいて疲労敏感位置を決定するように全ての構成要素を調べ、疲労敏感位置を示す構成要素に疲労分析を受けさせるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
試験される高圧高温表面および表面下油およびガス機器構成要素は、表面下安全弁、坑口ツリー、噴出防止装置、またはワイヤライン圧力制御機器の群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ラチェッティング基準は、前記構成要素に塑性作用がない状態、弾性コアが前記構成要素の主要負荷支持境界に存在する状態、または前記構成要素の寸法に永続的変化がない状態を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記事前選択されたメッシュ改良変化率は、5%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記事前選択されたメッシュ改良変化率は、2%未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記メッシュ改良工程は、初期メッシュ密度を2倍に改良する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記設定されたひずみ限界損傷量は、1である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ラチェッティング評価では、前記プリセット負荷条件のシーケンスが、好ましくは、少なくとも5回、前記モデルにおける前記構成要素に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記弾塑性要素有限要素モデルは、そのような機器構成要素を覆っている全ての被覆オーバーレイを含む前記機器構成要素に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記プリセット負荷条件は、高温高圧環境に基づいた一組の負荷の組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記疲労分析は、前記機器構成要素が特定の破壊基準を満たすかどうかを決定するように、前記機器構成要素に対して破壊分析を行うステップをさらに含み、そのような破壊基準は、最小欠陥サイズ基準および確立された靱性データに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記疲労分析は、前記機器構成要素が疲労基準を満たすかどうかを決定するステップをさらに含み、そのような疲労基準は、最小欠陥サイズ基準、確立された靱性データまたは不活性環境靱性データ、および同時応力腐食亀裂成長データに基づいている、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記疲労分析はさらに、前記分析において識別された前記機器構成要素における既存の欠陥が、そのような機器構成要素を覆う任意の被覆オーバーレイを通して成長するかどうかを決定して、前記欠陥が前記被覆オーバーレイを貫通しないことを保証する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記機器構成要素の前記設計に使用される材料が高圧高温環境に好適であるかどうかを決定するための材料適格性認定工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記材料適格性認定工程は、そのような材料に対する真応力−ひずみ曲線入力を実験的に確立する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
表面および表面下油およびガス機器構成要素の設計検証および妥当性確認のためのコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは、プロセッサと、メモリと、入出力デバイスと、プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体とを含み、前記プログラムは、前記コンピュータシステムに、
(a)弾塑性有限要素モデルを用いて全体静的強度および局所塑性について前記構成要素を分析する手順であって、前記分析は、初期メッシュ密度に基づいて、プリセット負荷条件、および各構成要素に対する寸法公差の最も不利な組み合わせを使用し、前記分析は、
(i)全てのプリセット負荷条件を使用して、前記構成要素の設計が安定したモデル収束をもたらすことを確認するステップと、
(ii)前記構成要素の応力を受けた部分にメッシュ改良検討を行うステップであって、メッシュ密度のさらなる改良は、塑性ひずみの事前選択されたメッシュ改良変化率よりも小さい変化をもたらす、ステップと、
(iii)前記モデルによって識別された前記構成要素の応力を受けた部分が、設定されたひずみ限界損傷量よりも小さいひずみ限界損傷を有することを確認するステップと
を含む、手順と、
(b)プリセット負荷条件の最大の組み合わせにおいて局所塑性を示す全ての機器構成要素上で、前記モデルを用いて弾完全塑性分析を実行することによって、ラチェッティング評価を行い、最大プリセット負荷条件をそのような構成要素に適用することにより、少なくとも1つのラチェッティング基準を実証することによって、ラチェッティングに対する耐性を決定する手順と、
(c)(a)の分析結果に基づいて疲労敏感位置を決定するように全ての構成要素を調べ、疲労敏感位置を示す構成要素に疲労分析を受けさせる手順と
を実行させる、コンピュータシステム。
【請求項17】
試験される高圧高温表面および表面下油およびガス機器構成要素は、表面下安全弁、坑口ツリー、噴出防止装置、またはワイヤライン圧力制御機器の群から選択される、請求項16に記載のコンピュータシステム。
【請求項18】
前記ラチェッティング基準は、前記構成要素に塑性作用がない状態、弾性コアが前記構成要素の主要負荷支持境界に存在する状態、または前記構成要素の寸法に永続的変化がない状態を含む群から選択される、請求項16に記載のコンピュータシステム。
【請求項19】
前記事前選択されたメッシュ改良変化率は、5%未満である、請求項16に記載のコンピュータシステム。
【請求項20】
前記事前選択されたメッシュ改良変化率は、2%未満である、請求項16に記載のコンピュータシステム。
【請求項21】
前記メッシュ改良工程は、初期メッシュ密度を2倍に改良する、請求項16に記載のコンピュータシステム。
【請求項22】
前記設定されたひずみ限界損傷量は、1である、請求項16に記載のコンピュータシステム。
【請求項23】
前記プログラムは、前記機器構成要素の前記設計に使用される材料が高圧高温環境に好適であるかどうかを決定するために、材料適格性認定工程を行う手順を前記コンピュータシステムにさらに実行させる、請求項16に記載のコンピュータシステム。
【請求項24】
前記材料適格性認定工程は、そのような材料に対する真応力−ひずみ曲線入力を実験的に確立する、請求項23に記載のコンピュータシステム。
【請求項25】
第1および第2のステップとして、
(aa)少なくとも1つの構成要素を提供するステップと、
(bb)前記構成要素からデータを取得することにより、前記構成要素のコンピュータ読み取り可能な表現を生成するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記構成要素から取得された前記データは、物理的試験技法から導出される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
第1および第2のステップとして、
(aa)前記構成要素の構築のために使用される種類の材料を提供するステップと、
(bb)物理的試験技法を使用して、前記材料からデータを取得することにより、前記構成要素のモデリングにおける使用のためのコンピュータ読み取り可能なデータ入力を生成するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
第1の手順として、前記プログラムは、前記コンピュータシステムに、前記構成要素のコンピュータ読み取り可能な表現を生成することを実行させ、前記表現は、前記構成要素に対する物理的試験技法の実行から作成されたデータから取得される、請求項16に記載のコンピュータシステム。
【請求項29】
第1の手順として、前記プログラムは、前記コンピュータシステムに、コンピュータ読み取り可能なデータ入力を生成することを実行させ、前記データ入力は、前記構成要素を構築するために使用される種類の材料に対する物理的試験技法の実行から作成されたデータから取得される、請求項16に記載のコンピュータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、油およびガス機器が、特定の高圧および高温環境(一般的に、油およびガス業界では「超深部高圧高温」環境(「HPHT」)と呼ばれる)に耐えることが可能であるかどうかを決定するために、油およびガス機器の設計の検証および妥当性確認を行う工程に関し、その特定の高圧および高温環境は、HPHT油およびガス井の探査、掘削、仕上げ、および生産において経験されることが予期される。典型的には、そのようなHPHT環境にさらされ、かつ流体圧力を含むか、またはそのような環境に対するそのような機器の保守性および適性を保証するために重要であるかのいずれかである、機器の全ての構成要素は、井戸の成功を保証するように井戸の実装前に分析されるべきである。そのような探査、掘削、仕上げ、および生産作業で典型的に使用され、そのような分析に好適である機器の種類としての機能を果たし得る、油およびガス機器の種類は、表面下安全弁(「SCSSV」)、坑口ツリー、噴出防止装置(「BOP」)、およびワイヤライン圧力制御(「WPC」)機器を含むが、他の種類の井戸制御機器も含み得る。
【背景技術】
【0002】
(2.関連技術の説明)
油およびガス業界の油およびガス機器の設計は、典型的には、以下のこと類似する工程に従うことを伴う。(i)必要性または問題を識別すること、(ii)必要性または問題を研究すること、(iii)可能な解決策を設計および開発すること、(iv)プロトタイプを構築すること、(v)解決策を試験および評価すること、ならびに(vi)試験および提示中に収集される情報に基づいて解決策を見直すこと。HPHT環境では、ステップ(iii)および(v)は、HPHT環境によって提示される独特な環境課題により、非常に重要であることが証明されている。本発明の設計検証および妥当性確認工程は、ステップ(iii)および(v)に関してHPHT環境のための油およびガス機器の設計者およびユーザを支援するので、当技術分野で有用である。
【0003】
また、設計検証および妥当性確認工程は、油およびガス業界外で周知であり、種々の業界のための圧力容器設計を分析するために使用されることも認識されている。そのような圧力容器設計工程は、非特許文献1でさらに説明されている。本発明の工程で説明されるステップの多くが、非特許文献1で開示されているが、本発明は、好ましい実施形態では、油およびガス業界で現在実施されていない方式で、HPHT環境のための油およびガス機器の設計を妥当性確認し、検証するために、そのような工程を使用する。以下で説明される設計検証および妥当性確認工程のステップは、HPHT環境で使用される、特定の種類の油およびガス機器への本工程の適用に関する。そのような工程を通じた分析に好適な機器の種類は、好ましい実施形態では、SCSSV、坑口ツリー、BOP、WPC、および他の井戸制御機器である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ASME Section VIII, Division 3, 2010 Edition(2011 Addendaを含む)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下で説明される設計検証および妥当性確認工程は、HPHT環境で使用するための油およびガス機器構成要素を分析する。本工程の目的は、そのような油およびガス機器構成要素が、HPHT環境に耐え、井戸の使用可能寿命の間に誤動作または故障しないことを保証することである。HPHT環境の条件は、機器構成要素に、極端な応力および負荷条件を受けさせる。実施例として、そのような環境条件は、圧力については20,000psiを上回り、および/または坑底静温度については400°Fを上回ると仮定される。
【0006】
本発明の設計検証および妥当性確認工程のさらなる目的は、状況に応じて、周囲温度から高温での構成要素の機械的性質を確認すること、構成要素の耐腐食性を決定すること、構成要素の耐亀裂性を決定すること、さらに、高温での累積塑性による、およびHPHT坑内環境の条件による、潜在的な亀裂または他の増進した材料破損の程度を決定することである。
【0007】
本発明のこれらおよび他の目的および特徴は、以下の詳細な説明および以下の図面から明白となる。
【0008】
本発明の特徴および利点をさらに理解するために、添付図面と併せて解釈される、以下の詳細な説明を参照されたい。
本発明はさらに、たとえば、以下を提供する。
(項目1)
表面および表面下油およびガス機器構成要素の設計検証および妥当性確認のための方法であって、前記方法は、
(a)弾塑性有限要素モデルを用いて全体静的強度および局所塑性について前記構成要素を分析するステップであって、前記分析は、初期メッシュ密度に基づいて、プリセット負荷条件、および各構成要素に対する寸法公差の最も不利な組み合わせを使用し、前記分析は、
(i)全てのプリセット負荷条件を使用して、前記構成要素の設計が安定したモデル収束をもたらすことを確認するステップと、
(ii)前記構成要素の応力を受けた部分にメッシュ改良検討を行うステップであって、メッシュ密度のさらなる改良は、塑性ひずみの事前選択されたメッシュ改良変化率よりも小さな変化をもたらす、ステップと、
(iii)前記モデルによって識別された前記構成要素の高い応力を受けた部分が、設定されたひずみ限界損傷量よりも小さいひずみ限界損傷量を有することを確認するステップと
を含む、ステップと、
(b)プリセット負荷条件の最大の組み合わせにおいて局所塑性を示す全ての機器構成要素上で、前記モデルを用いて弾完全塑性分析を実行することによって、ラチェッティング評価を行い、最大プリセット負荷条件をそのような構成要素に適用することにより、少なくとも1つのラチェッティング基準を実証することによって、ラチェッティングに対する耐性を決定するステップと、
(c)疲労敏感位置を決定するように全ての構成要素を調べ、疲労敏感位置を示す構成要素に疲労分析を受けさせるステップと
を含む、方法。
(項目2)
試験される高圧高温表面および表面下油およびガス機器構成要素は、表面下安全弁、坑口ツリー、噴出防止装置、またはワイヤライン圧力制御機器の群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記ラチェッティング基準は、前記構成要素に塑性作用がない状態、弾性コアが前記構成要素の主要負荷支持境界に存在する状態、または前記構成要素の寸法に永続的変化がない状態を含む群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記事前選択されたメッシュ改良変化率は、5%未満である、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記事前選択されたメッシュ改良変化率は、2%未満である、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記メッシュ改良工程は、前記初期メッシュ密度を2倍に改良する、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記設定されたひずみ限界損傷量は、1である、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記ラチェッティング評価は、少なくとも5サイクルを通じて前記構成要素に前記プリセット負荷条件を適用することを含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記弾塑性要素有限要素モデルは、そのような機器構成要素を覆い得る全ての被覆オーバーレイを含む前記機器構成要素に適用される、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記プリセット負荷条件は、高温高圧環境に基づいた一組の負荷の組み合わせを含む、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記疲労分析は、前記機器構成要素が特定の破壊基準を満たすかどうかを決定するように、前記機器構成要素に対して破壊分析を行うステップをさらに含み、そのような破壊基準は、最小欠陥サイズ基準および確立された靱性データに基づいている、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記疲労分析は、前記機器構成要素が疲労基準を満たすかどうかを決定するステップをさらに含み、そのような疲労基準は、最小欠陥サイズ基準、確立された靱性データまたは不活性環境靱性データ、および同時応力腐食亀裂成長データに基づいている、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記疲労分析および破壊分析はさらに、前記分析において識別された前記機器構成要素における既存の欠陥が、そのような機器構成要素を覆う任意の被覆オーバーレイを通して成長するかどうかを決定して、前記欠陥が前記被覆オーバーレイを貫通しないことを保証する、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記機器構成要素の前記設計に使用される材料が高圧高温環境に好適であるかどうかを決定するための材料適格性認定工程をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記材料適格性認定工程は、そのような材料に対する真応力−ひずみ曲線入力を実験的に確立する、項目14に記載の方法。
(項目16)
掘削用、仕上げ用、および生産作業用を含む、高圧高温環境における油およびガス井で使用するために設計された装置であって、前記装置は、特性を有する構成要素を含み、前記特性は、
(a)初期メッシュ密度に基づいて、特定のプリセット負荷条件に対する弾塑性有限要素モデルを使用し、かつ各構成要素に対する寸法公差の最も不利な組み合わせを使用して、全体静的強度および局所塑性について分析されると、前記構成要素は、
(i)全てのプリセット負荷条件を使用して、安定したモデル収束を達成し、
(ii)前記構成要素の応力を受けた部分のメッシュ密度のさらなる改良が、塑性ひずみの事前選択されたメッシュ改良変化率よりも小さな変化をもたらす、メッシュ密度を示し、
(iii)設定されたひずみ限界損傷量よりも小さい、前記モデルによって識別された前記構成要素の高い応力を受けた部分のひずみ限界損傷を達成する、
ことと、
(b)弾完全塑性分析によるラチェッティング評価を受けると、プリセット負荷条件の最大の組み合わせにおいて局所塑性を示す構成要素は、少なくとも1つのラチェッティング基準を実証することによって、前記プリセット負荷条件を使用するラチェッティングに対する耐性を示す、ことと、
(c)前記構成要素の疲労敏感位置が疲労分析を受けると、容認基準を達成する、ことと
を含む、装置。
(項目17)
実際の井戸環境内で井戸生産流体に暴露されない、分析される構成要素をさらに備える、項目16に記載の構成要素。
(項目18)
実際の井戸環境内で井戸キル流体に暴露されない、分析される構成要素をさらに備える、項目16に記載の構成要素。
(項目19)
実際の井戸環境内で掘削および仕上げ流体に暴露されない、分析される構成要素をさらに備える、項目16に記載の構成要素。
(項目20)
前記構成要素は、表面下安全弁、坑口ツリー、噴出防止装置、またはワイヤライン圧力制御機器の群から選択される、項目16に記載の構成要素。
(項目21)
前記構成要素は、前記機器構成要素の前記設計に使用される材料が高圧高温環境に好適であるかどうかを決定するために、材料適格性認定工程をさらに受ける、項目16に記載の構成要素。
(項目22)
前記材料適格性認定工程は、そのような材料に対する真応力−ひずみ曲線入力を実験的に確立する、項目21に記載の構成要素。
(項目23)
前記ラチェッティング基準は、前記構成要素に塑性作用がない状態、弾性コアが前記構成要素の主要負荷支持境界に存在する状態、または前記構成要素の寸法に永続的変化がない状態を含む群から選択される、項目16に記載の構成要素。
(項目24)
前記事前選択されたメッシュ改良変化率は、5%未満である、項目16に記載の構成要素。
(項目25)
前記事前選択されたメッシュ改良変化率は、2%未満である、項目16に記載の構成要素。
(項目26)
前記メッシュ改良工程は、前記初期メッシュ密度を2倍に改良する、項目16に記載の構成要素。
(項目27)
前記設定されたひずみ限界損傷量は、1である、項目16に記載の構成要素。
(項目28)
表面および表面下油およびガス機器構成要素の設計検証および妥当性確認のためのコンピュータシステムであって、前記コンピュータシステムは、プロセッサと、メモリと、入出力デバイスと、ソフトウェアとを含み、前記ソフトウェアは、前記コンピュータシステムの実行のための命令を含み、前記命令は、
(a)弾塑性有限要素モデルを用いて全体静的強度および局所塑性について前記構成要素を分析するステップであって、前記分析は、初期メッシュ密度に基づいて、プリセット負荷条件、および各構成要素の寸法公差の最も不利な組み合わせを使用し、前記分析は、
(i)全てのプリセット負荷条件を使用して、前記構成要素の設計が安定したモデル収束をもたらすことを確認するステップと、
(ii)前記構成要素の応力を受けた部分にメッシュ改良検討を行うステップであって、メッシュ密度のさらなる改良は、塑性ひずみの事前選択されたメッシュ改良変化率よりも小さい変化をもたらす、ステップと、
(iii)前記モデルによって識別された前記構成要素の高い応力を受けた部分が、設定されたひずみ限界損傷量よりも小さいひずみ限界損傷を有することを確認するステップと
を含む、ステップと、
(b)プリセット負荷条件の最大の組み合わせにおいて局所塑性を示す全ての機器構成要素上で、前記モデルを用いて弾完全塑性分析を実行することによって、ラチェッティング評価を行い、最大プリセット負荷条件をそのような構成要素に適用することにより、少なくとも1つのラチェッティング基準を実証することによって、ラチェッティングに対する耐性を決定するステップと、
(c)疲労敏感位置を決定するように全ての構成要素を調べ、疲労敏感位置を示す構成要素に疲労分析を受けさせるステップと
を含む、コンピュータシステム。
(項目29)
試験される高圧高温表面および表面下油およびガス機器構成要素は、表面下安全弁、坑口ツリー、噴出防止装置、またはワイヤライン圧力制御機器の群から選択される、項目28に記載のコンピュータシステム。
(項目30)
前記ラチェッティング基準は、前記構成要素に塑性作用がない状態、弾性コアが前記構成要素の主要負荷支持境界に存在する状態、または前記構成要素の寸法に永続的変化がない状態を含む群から選択される、項目28に記載のコンピュータシステム。
(項目31)
前記事前選択されたメッシュ改良変化率は、5%未満である、項目28に記載のコンピュータシステム。
(項目32)
前記事前選択されたメッシュ改良変化率は、2%未満である、項目28に記載のコンピュータシステム。
(項目33)
前記メッシュ改良工程は、前記初期メッシュ密度を2倍に改良する、項目28に記載のコンピュータシステム。
(項目34)
前記設定されたひずみ限界損傷量は、1である、項目28に記載のコンピュータシステム。
(項目35)
前記命令は、前記機器構成要素の前記設計に使用される材料が、高圧高温環境に好適であるかどうかを決定するために、材料適格性認定工程を行うステップをさらに含む、項目28に記載のコンピュータシステム。
(項目36)
前記材料適格性認定工程は、そのような材料に対する真応力−ひずみ曲線入力を実験的に確立する、項目35に記載のコンピュータシステム。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、油およびガス機器構成要素と関連する材料適格性認定および機器設計工程に関する特定の予備考慮事項を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、油およびガス機器構成要素の製造で使用するための本発明の設計検証および妥当性確認工程と関連して使用される材料適格性認定工程を含むステップを示すブロック図である。
【
図3】
図3は、油およびガス機器構成要素のための本発明の設計検証および妥当性確認工程の弾塑性有限要素モデリングおよびラチェッティング評価を含むステップを示すブロック図である。
【
図4】
図4は、油およびガス機器構成要素のための本発明の設計検証および妥当性確認工程のための疲労評価を含むステップを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
HPHT環境内の油およびガス機器の構築および実装における以下で説明される工程の使用に関する特定の予備考慮事項を示す
図1を参照する。ステップ10に示されるように、設計検証および妥当性確認工程が使用される油およびガス機器は、その好ましい実施形態では、SCSSV、坑口ツリー、BOP、WPC、および他の井戸制御機器である。ステップ12に示されるように、HPHT井戸の所有者または経営者は、供給業者が、HPHT環境に好適である、油およびガス機器の設計および製造で使用される材料を提供しているかどうかを決定することと、そのような供給業者が、そのような材料の適正な選択を行うことを要求することとを所望し得る。そのような油およびガス機器の供給業者はまた、そのような目的で材料適格性認定工程を使用することを自主的に所望し得る。ステップ14では、場合によっては、材料は、機器の製造と関連して使用するために、井戸の所有者または経営者によって選択されてもよく、したがって、所有者または経営者は、不適切な材料を使用して製造される機器構成要素を回避するために、材料適格性認定工程を使用することを所望し得る。ステップ16では、適正な材料が選択されたと仮定して、供給業者はまた、HPHT環境に対するそのような油およびガス機器の適合性を保証するように、そのような機器に設計検証および妥当性確認工程を受けさせることを所望し得る。井戸の所有者または経営者はまた、ステップ18で示されるように、HPHT環境で使用するためのそのような機器の適合性をさらに確認するために、設計検証および妥当性確認工程を使用することを所望し得る。
【0011】
材料適格性認定
図2は、設計検証および妥当性確認工程と関連して使用され得る、概してステップ20と呼ばれる、材料適格性認定工程をさらに詳細に説明する。設計検証および妥当性確認工程は、機器のために選択される材料に関して材料適格性認定工程で作成されたデータを利用してもよい。そのような工程で使用される材料適格性認定試験は、HPHT用途に対する材料の適合性を保証するように、設計検証および妥当性確認工程において入力として使用するために、そのようなデータを作成することを目的としている。そのようなデータは、(i)周囲温度から高温での機器の機械的性質(応力−ひずみJ−R曲線(J−積分−亀裂進展))、(ii)腐食(一般的または流動誘発性の孔食)に対する材料の耐性、(iii)亀裂(より高い温度でのSSC(硫化物応力亀裂)、SCC(応力腐食亀裂)、疲労)に対する材料の耐性、および(iv)高温での累積塑性(機器が塑性負荷に暴露される場合、用途に依存する)による、亀裂または他の増進した材料破損に対する材料の耐性を含んでもよい。
【0012】
ステップ22に示されるように、選択された材料の材料機械的性質に関するデータが、設計検証および妥当性確認工程に適用するために、材料適格性認定工程において取得される。そのような材料機械的性質データは、コンピュータモデリングおよび他の物理的試験技法を使用して作成される。そのような試験から作成される材料機械的性質データは、概して業界で公知である、工学応力−ひずみ曲線または真応力−ひずみ曲線およびJ−R曲線を含む。そのような材料機械的性質データは、用途に応じて、75°Fから500°Fに及び得る温度について取得される。
【0013】
付加的な課題として、HPHT生産環境は、水を用いた酸性ガス(二酸化炭素および硫化水素)の生産を含んでもよい。この要素もまた、そのような条件の結果として、材料の機械的性質の低減がないことを示すために、材料適格性認定工程の一部と見なされる。
【0014】
図2に示されるように、ステップ22の真応力−ひずみ曲線およびJ−R曲線(当技術分野では他にJ−積分−亀裂進展曲線と呼ばれる)が完成すると、選択された材料は、ステップ24に示されるように、SSC(当技術分野では他に硫化物応力亀裂と呼ばれる)試験を受ける。炭素鋼に関して、そのような試験は、当業者に公知であるような適切な環境における方法A(NACE MR0175)および/または方法D(NACE MR0175)を含んでもよい。同様に、CRA(当技術分野では他に耐食合金と呼ばれる)材料について、そのような材料は、流電結合(galvanically coupled)試験(方法A(NACE MR0175))を受ける。ステップ24でのそのような試験に続いて、そのような材料は、ステップ26に示されるように、SCC試験をさらに受ける。CRA材料は、当技術分野で公知であるような種々の温度でオートクレーブ試験を使用して耐腐食性についてさらに評価される。耐亀裂性に関して構成要素の妥当性を確認するために、構成要素は、ステップ26でさらに参照されるように、Cリング試験、DCB試験、またはHPHT環境に適用可能であるプロトコルを適用する方法A型(NACE MR0175)引張試験を使用して、さらに評価されるべきである。そのような試験では、材料は、耐腐食性および耐亀裂性を示さなければならない。そのような材料がそのような試験に不合格となる場合、材料は、HPHT環境で使用するために好適ではない。これらの試験の成功した完了に続いて、以下に記載される付加的なステップが、材料適格性認定工程のさらなる一部として着手される。
【0015】
材料の耐亀裂性は、適切なSCC試験および/またはSSC試験を使用して、ステップ24またはステップ26のいずれか一方で決定される。そのような亀裂試験では、材料サンプルに印加される応力およびひずみは、機器構成要素への予測負荷を反映するべきである。試験環境はさらに、予測HPHT坑内環境を反映するように確立されるべきである。試験期間は、試験および材料の種類に応じて、30日から90日まで変動する。
【0016】
ステップ28では、材料がそのような試験に合格しない場合、そのような材料は、HPHT環境で使用するために好適ではないと見なされ、ステップ30に示されるように、新しい材料が、そのような構成要素において使用するために識別されなければならない。次いで、材料適格性認定工程が、選択された任意の新しい材料について繰り返されるべきである。材料がそのような試験を満たすと決定された場合には、以下でさらに説明されるように、付加的なモデリング試験が、そのような材料に対して行われる。
【0017】
図2のステップ32に示されるように、材料適格性認定工程で行われる付加的な試験は、SSRT試験(当技術分野では他に低ひずみ速度試験と呼ばれる)の適用を含む。SSRTは、当業者によって公知であるやり方に従って適用される。ステップ34では、そのような材料がSSRT試験に合格したか否かが決定される。しかしながら、ステップ36に示されるように、累積局所可塑化が存在する特定の構成要素については、付加的な試験が保証されてもよい。材料が、二次亀裂または0.9未満である比率のいずれか一方を示す場合には、ステップ38およびステップ40に示されるように、HPHT坑内環境での付加的な疲労試験、またはリップルSSRTまたはLCF(他に低サイクル疲労としても知られている)が必要である。
【0018】
そのような試験が、材料適格性認定工程を完結する。材料適格性認定工程は、機器構成要素で使用される材料が、HPHT環境のための設計仮定を反映する強度を有することを保証する。
【0019】
設計妥当性確認および検証
本発明の設計妥当性確認および検証工程はさらに、
図3および
図4に示される。本発明の設計妥当性確認および検証工程は、好ましい実施形態では、HPHT環境のためのSCSSV、坑口ツリー、BOP、WPC、および他の井戸制御機器に適用される。そのような機器は、負荷支持機器または圧力保持機器のいずれか一方としての動作について、および実際の井戸環境内の井戸生産流体、井戸キル流体、または掘削仕上げ流体への起こり得る暴露について、設計妥当性確認および検証工程に準じて検証され、妥当性を確認される。
【0020】
好ましい実施形態では、設計妥当性確認および検証工程は、以下で説明される他のステップに加えて、(i)弾塑性有限要素コンピュータモデルの実行、(ii)ラチェッティング評価分析、および(iii)疲労分析といった、主に3つのステップを含む。そのような分析は、当技術分野で公知であるようなコンピュータモデリングアプリケーションを使用して行われる。多くの実施形態では、そのような分析はまた、機器構成要素に対する全体基準に基づいて、ならびにメッシュ定義を使用して定義される表面区域を使用する、機器構成要素の特定の表面および輪郭に関する局所基準に基づいて、特定のプリセット負荷の組み合わせを参照して行われる。メッシュ定義は、以下でさらに説明されるような工程の一部としてさらに改良されてもよい。
【0021】
そのような分析のためのプリセット負荷条件を作成する際に、HPHT環境で機器が受け得る全ての負荷の組み合わせ(例えば、静的、過渡的、または周期的)が考慮される。したがって、プリセット負荷条件は、HPHT環境をモデル化するために、設計検証および妥当性確認工程を受ける全ての機器構成要素の設計検証および妥当性確認に使用される一組の所定の負荷である。起こり得る負荷が、モデリングの目的で考慮および定義され、井戸の寿命中の計画的活動および計画外活動に関する負荷、製造後負荷、および定期試験負荷を含む。そのような試験負荷は、製造試験および毎月のSSV(表面下弁)試験を含んでもよい。計画外活動は、井戸貯留層管理、表面修復、表面下修復、生産の中断をもたらす生産または機器の問題、天気誘発事象、刺激活動、および定期試験シナリオを含む。サイクルの総数および負荷振幅は、温度および圧力の変化をもたらす、坑井上の全ての予測される活動を使用して定義される。そのような負荷の定義に続いて、ASME Section VIII, Division 3からの表(KD 230.4 およびKD−230.2)が、乗数を確立するために利用され、そのような表は、参照することにより本願に組み込まれる。
【0022】
プリセット負荷条件を作成するために使用される負荷ケースの組み合わせおよび負荷係数が、以下に記載される表1でさらに説明される。
【0023】
【表1】
さらに、そのようなプリセット負荷条件を作成する際に、表2でさらに説明される負荷の説明が、HPHT環境に適用可能であると予測される負荷と見なされ、主に、温度、圧力、および重量負荷条件に関する。以下でさらに説明されるように、そのような負荷の組み合わせは、HPHT環境で起こり得る種々の状況をシミュレートすることを目的としている。
【0024】
【表2】
プリセット負荷条件が事前に定義されると、設計検証および妥当性確認工程は、
図3に示されるステップを伴う。
図3のステップ50に示されるように、機器構成要素は、弾塑性有限要素モデルを使用して、静的強度について分析される。弾塑性有限要素モデルはしばしば、「FEA」と呼ばれる。弾塑性有限要素モデルは、プリセット負荷条件に従って、全体静的強度について、および局所塑性について、機器構成要素を分析する。
【0025】
弾塑性有限要素モデルは、概して、ASME Section VIII, Division 3, 2010 Edition(2011 Addendaまで)、段落KD−231において説明され、かつ、当業者によって公知である、方法に基づいて構築され、それは、参照することにより本願に組み込まれる。また、機器構成要素の中の内角、切り込み、または任意の他の応力集中源の塑性に関する任意の問題を決定するためのモデルの実行において、弾塑性有限要素モデルは、ASME Section VIII, Division 3, 2010 Edition(2011 Addendaまで)、段落KD−232において説明される方法に基づき、そのような説明は、参照することにより本願に組み込まれる。また、非線形幾何学形状が、そのようなモデリングにおいて使用され、全ての構成要素が、任意の予測される被覆、溶接オーバーレイ、および一体裏地を含むそれらの構成に基づいてモデル化される。各構成要素の寸法公差の最も不利な組み合わせを仮定する際に、そのような組み合わせは、設計で指定される範囲から選択され、例えば、円筒部品については、最大外径、および最小壁厚が使用される。
【0026】
工程の目的で構成要素の初期メッシュ密度を設定するステップも、ステップ50に含まれる。ステップ52では、初期メッシュ密度が、分析を継続する目的で適切であるか否かが決定される。初期メッシュ密度が適切ではない場合、新しいメッシュ改良が選択され、ステップ50が再び行われる。初期メッシュ密度が適切である場合、モデルが、適切な負荷係数を有するプリセット負荷条件の全てに基づいて、安定したモデル収束をもたらすかどうかを決定するように、弾塑性有限要素モデルが、ステップ54に示されるように実行される。モデルが安定していない場合、機器構成要素の設計または幾何学形状が、ステップ55に示されるように改良されなければならず、ステップ50および52が、新しい設計および幾何学形状に対して繰り返される。
【0027】
モデルが全てのプリセット負荷条件に対して安定している場合には、ステップ58が行われる。ステップ58に示されるように、局所塑性を示す機器構成要素の部分におけるメッシュ密度が、さらに検討および改良される。他の改良パラメータが選択されてもよいが、好ましい実施形態では、メッシュ改良工程は、初期メッシュ密度の2倍の改良を含む。メッシュ改良工程はまた、改良メッシュから機器構成要素の一部によって経験される塑性ひずみの変化が、特定の事前選択されたメッシュ改良変化率よりも小さくなることも要求する。状況に応じて、種々の実施形態では、容認可能な塑性ひずみの事前選択されたメッシュ改良変化率は、5%未満〜2%未満に及ぶ。事前選択されたメッシュ改良変化率は、容認基準が、分析されている機器構成要素に対する全体強度評価に関するか、または局所強度評価に関するかに基づいて、5%未満〜2%未満から選択される。ステップ60では、そのようなメッシュ改良工程の結果として、メッシュ密度が適切であるかどうかが決定される。メッシュ密度が適切ではない場合、メッシュ密度は、ステップ58を繰り返すことによってさらに改良される。メッシュ密度が適切であると決定された場合には、ステップ62が行われる。
【0028】
ステップ62では、モデルによって識別された機器構成要素の全ての高い応力を受けた位置の弾塑性有限要素モデル分析が、ひずみ限界損傷を決定するように行われる。そのような分析への入力として使用される曲線は、当業者によって公知であり、かつASME Section VIII, Division 3, 2010 Edition(2011 Addendaまで)、段落KD−231.4において説明される方法を使用して生成されてもよく、そのような方法の説明は、参照することにより本願に組み込まれる。あらゆる場合において、曲線は、規定最小降伏強度に適応される。前記位置に対するそのような分析に起因するひずみ限界損傷が、容認可能な設定されたひずみ限界損傷量よりも小さい場合には、工程が継続され、ステップ64が行われる。本発明の工程の好ましい実施形態の目的で、設定されるひずみ限界損傷量は、1に設定されるが、他の実施形態では、他の量が、容認可能なひずみ限界損傷量に選択されてもよい。ひずみ限界損傷が1以上である場合、容認基準が満たされず、ステップ65に示されるように、機器構成要素の局所幾何学形状がさらに修正される。
【0029】
ステップ67では、設定されたひずみ限界損傷量よりも小さいひずみ限界損傷を達成するために、機器構成要素の幾何学形状への修正が行われなければならないかどうかがさらに決定される。機器構成要素の局所幾何学形状への修正のみが必要とされる場合、ステップ58および62が繰り返される。ステップ67で決定されるように、機器構成要素の全体幾何学形状が修正されなければならない場合には、ステップ50が再び行われ、機器構成要素の適合性を保証するように、50から62の工程ステップが、修正された全体幾何学形状に対して再び行われなければならない。
【0030】
ステップ64では、機器構成要素が、弾完全塑性材料を使用してモデル化される。ラチェッティング評価が、ステップ66で示されるように、本発明の工程におけるステップとして行われる。ラチェッティング評価は、プリセット負荷条件の最大(最悪の場合)の組み合わせにおいて局所塑性を示す全ての機器構成要素に適用される。そのようなラチェッティング評価の目的は、そのようなラチェッティングに対する機器構成要素の耐性を決定することである。ラチェッティング評価は、ASME Section VIII, Division 3, 2010 Edition(2011 Addendaまで)、段落KD−234における方法に従って行われ、そのような方法の説明は、参照することにより本願に組み込まれる。ラチェッティング評価では、プリセット負荷条件シーケンスが、好ましい実施形態では、少なくとも5回、モデルにおける機器構成要素に適用される。他の実施形態では、そのような負荷条件が、より少ない量またはより多い量のサイクルで適用され得ることが認識される。本発明は、そのようなラチェッティング評価が、最低3サイクルにわたって、そのようなプリセット負荷条件を適用することを伴うことのみを指定する、ASME Section VIII, Division 3, 2010 Edition(2011 Addendaまで)の規定と異なる。
【0031】
ステップ68では、ラチェッティング評価の結果として、ラチェッティング基準が満たされているかどうかが決定される。これらの基準は、ASME Section VIII, Division 3, 2010 Edition(2011 Addendaまで)、段落KD−234に記載され、そのような基準は、参照することにより本願に組み込まれる。機器構成要素がラチェッティング評価を満足に完了するために、モデルは、構成要素が、(i)構成要素に塑性作用がない状態、または(ii)弾性コアが構成要素の主要負荷支持境界に存在する状態、または(iii)構成要素の寸法に永続的変化がない状態といったラチェッティング基準のうちの少なくとも1つを満たしていることを証明しなければならない。ラチェッティング評価を完了するために、(i)、(ii)、または(iii)で説明されたこれらの基準のうちの1つが満たされることのみが必要である。これらの基準のそれぞれのさらなる論議が、以下で説明される。
【0032】
第1のラチェッティング基準は、構成要素に塑性作用がない(すなわち、ゼロ塑性ひずみを被った)か否かを決定することを伴う。この状況が負荷の第1の印加に対して存在する場合、構成要素はプリセット負荷条件の最大(最悪の場合)の組み合わせにおいて局所塑性を示さないので、ラチェッティング評価は必要とされず、ステップ66のラチェッティング評価からラチェッティング評価を免除する。しかしながら、構成要素が負荷の第1の印加で塑性を示すが、後続の負荷が付加的な塑性ひずみをもたらさないように、負荷の1回の印加後に「慣れる」ことは一般的である。この状況は、厚壁円筒における自緊工程によって例証することができ、厚壁円筒における自緊工程において、円筒のボア表面における降伏が、自緊圧力で生じる。圧力が周囲圧力まで低減させられたとき、円筒の外側部分の弾性収縮によって、ボアが圧縮状態に置かれる。圧力が除去されたときにボアが圧縮状態で「逆降伏」しない場合、自緊圧力またはそれを下回る圧力までの後続の圧力サイクルが、付加的な塑性作用を伴わずに、ボアにおける応力の単調な線形増加をもたらす。
【0033】
第2のラチェッティング基準は、構成要素の主要負荷支持境界に弾性コアがあるか否かを決定することを伴う。上記の実施例を続けて、円筒構成要素が非常に厚い壁を有し、非常に高い自緊圧力を受けた場合、ボアは、圧力が周囲圧力まで低減させられたときに圧縮状態において降伏し得る。その場合、ボアは、構成要素が自緊圧力まで再び加圧されたときに、張力を受けて再び降伏する。この周期的塑性が、各後続の圧力サイクルに継続する。これは設計疲労寿命に関する懸念事項であるが、円筒の外側部分が常に弾性のままであるため、ラチェッティング条件ではない。弾性部分は、ボアにおける材料の漸進的な塑性変形(ラチェッティング)を防止する。
【0034】
第3のラチェッティング基準は、構成要素の全体寸法に永続的変化がないことを決定することを伴う。これは、最後のサイクルと最後から2番目のサイクルとの間の時間に対する関連構成要素寸法のプロットを作成することによって、示すことができる。「全体寸法」という用語は、直径、全長、平坦なヘッドおよび他の平坦な構成要素の平坦性等の任意の寸法を意味すると解釈されるべきである。ソルバにおける負荷増分および数値分解能の差異により、塑性が関与するときに、FEAプログラムは、1つのサイクルから次のサイクルまでに寸法のわずかな変化を生じさせることに留意されたい。これは、全体寸法に永続的変化があるかどうかを決定するときに考慮されるべきである。最低限として、プリセット負荷条件の5サイクルの適用中の寸法変化は、製造図面上の寸法公差を上回らない。
【0035】
ラチェッティング基準が達成された場合、ステップ76として示され、
図4でさらに説明される疲労分析が行われる。
【0036】
ステップ70に示されるように、ラチェッティング基準のうちの少なくとも1つが満たされない場合、構築に使用された材料の周期的真応力−ひずみ曲線を使用して、分析が繰り返されてもよい。これらの曲線は、ASME Section VIII, Division 3, 2010 Edition(2011 Addendaまで)、段落KD−360における方法を使用して生成されてもよく、そのような方法は、参照することにより本願に組み込まれる。構築に使用された材料の種類が、これらの段落と関連付けられる表で参照される材料のうちのいずれにも合致しない場合、周囲的曲線が、材料について生成される。
【0037】
そのような曲線の適用後、ステップ72に示されるように、ラチェッティング評価が再適用され、ステップ74において、ラチェッティング基準のうちの少なくとも1つが満たされるかどうかに関して決定が行われる。ラチェッティング基準のうちの少なくとも1つが満たされない場合、ステップ55に示されるように、構成要素の設計または幾何学形状が修正されなければならない。ラチェッティング基準のうちの少なくとも1つが満たされる場合には、ステップ76として示され、
図4でさらに説明されるような疲労分析が行われる。
【0038】
ここで
図4を参照して、本発明の疲労分析(破壊分析を含む)を説明する。
図4の疲労分析は、以下で説明される他のステップに加えて、概して、ASME Section VIII, Division 3, Article KD−4およびAPI 579−1/ASME FFS−1において説明される破壊力学アルゴリズムに基づいており、そのような破壊力学アルゴリズムは、参照することにより本願に組み込まれる。
【0039】
ステップ78では、QA工程中に行われるNDE方法により、疲労敏感点における最小検出可能欠陥サイズを確立することによって、工程が開始される。疲労分析に対するそのような仮定欠陥は、NDE方法によって検出可能であると示され得る最小欠陥と同じくらい小さい。NDE方法は、ASME Section VIII, Division 3, Article KE−3で描写されるもの、または当技術分野で公知であるような、構成要素に適切であるような他の高度な方法のいずれか一方である。そのようなNDE方法は、最小欠陥が構成要素において検出されることを保証するように適用され、そのようなNDE方法の説明は、参照することにより本願に組み込まれる。
【0040】
ステップ78に続いて、(参照することにより本明細書に組み込まれる、API 579/ASME FFS−1定義通りの)レベルII分析と呼ばれる破壊分析が、ステップ80で示されるように行われる。そのような破壊分析は、機器構成要素が特定の破壊基準を満たすかどうかを決定するように、機器構成要素に対して行われる。そのような破壊基準は、最小欠陥サイズ基準および確立された靱性データに基づいている。機器構成要素が、水圧試験負荷82において、そのような分析に不合格となる場合、ステップ83で示されるように、設計変更が機器構成要素に対して行われる。そのような設計変更が軽微である場合、ステップ76の破壊/疲労分析のみが行われる。そのような設計変更が重大である場合には、ステップ50の弾塑性有限要素モデルが再び行われ、ステップ50からステップ76の工程全体が繰り返される。また、機器構成要素が、ステップ82において破壊分析に不合格とならない場合、機器構成要素は、ステップ84において、疲労敏感位置における疲労についてさらに分析される。そのような疲労敏感位置は、「最悪の場合」のプリセット負荷条件シーケンスを考慮して、材料の規定最小降伏強度の2/3を上回る局所ひずみ限界損傷(微細メッシュモデル)を決定するように行われた分析に由来する節点における全ピークミーゼス応力範囲を有する位置である。FEAメッシュは、局所応力集中の効果を捕捉するほど十分に細かい。代替として、応力拡大係数が適用される。
【0041】
ステップ84の疲労評価は、適切な疲労亀裂成長速度を利用する。上記で論議される材料適格性認定工程の実施は、坑内環境が疲労亀裂成長速度に何らかの影響を及ぼすかどうかを識別しているはずである。何らかの影響がある場合には、空気疲労亀裂成長速度をステップ86で説明されるように利用することができない。しかしながら、疲労成長速度への環境の影響がない場合には、空気疲労亀裂成長速度が利用される。これらの速度は、研究所で生成され、または適切な文献から得られてもよく、あるいはASMEまたはAPI文献が利用されてもよい。そのようなステップでは、機器構成要素が疲労基準を満たすかどうかが決定され、そのような疲労基準は、最小欠陥サイズ基準、確立された靱性データまたは不活性環境靱性データ、および同時応力腐食亀裂成長データに基づく。
【0042】
機器構成要素によって経験される亀裂深度が、設計疲労寿命評価における使用のためにステップ88で決定される。そのようなステップでは、欠陥が被覆オーバーレイを貫通しないことを保証するために、分析で識別される機器構成要素における既存の欠陥が、そのような機器構成要素を覆う任意の被覆オーバーレイを通して、疲労により成長するかどうかが決定される。
【0043】
疲労分析は、以下で説明される修正を伴って、ASME Section VIII, Division 3, Article KD−4に従って行われる。そのような分析のそのような説明は、参照することにより本願に組み込まれる。第1に、亀裂成長への各負荷の寄与が考慮される。プリセット負荷条件は、シーケンスが分からない場合に、最大の全亀裂成長(最短設計疲労寿命)を引き起こすシーケンスにおいて適用されることを除いて、予期されるシーケンスで適用される。ステップ80から88までに対する亀裂先端応力強度計算および参照応力計算は、概して、2010年9月までの正誤表および編集上の変更を有するAPI 579−1/ASME FFS−1, 2007 Editionにおいて検討および説明される。そのような計算は、参照することにより本願に組み込まれる。さらに、重み関数法が好ましいが、FEAから応力分布に好適である単一の方程式を導出することができる場合、2010年9月までの正誤表および編集上の変更を有するAPI 579−1/ASME FFS−1, 2007 Editionにおける三次または四次曲線適合法が使用されてもよい。そのような方法は、参照することにより本願に組み込まれる。機器構成要素が、被覆または溶接オーバーレイ構造を含む場合、亀裂の最大深度(すなわち、臨界亀裂サイズ)は、亀裂が基礎材料に到達する深度である。全ての被覆および溶接オーバーレイはまた、ASME Section VIII, Division 3, Article KF−3の要件を満たし、そのような要件は、参照することにより本願に組み込まれる。最後に、設計疲労寿命は、ASME Section VIII, Division 3, Article KD−4(臨界亀裂深度の1/4までのサイクル数という係数が、2インチ未満の壁厚または亀裂成長経路を伴う構成要素に適用されないことを除く)、またはAPI 579−1/ASME FFS−1における係数を使用して、決定され、そのような係数は、参照することにより本願に組み込まれる。
【0044】
構成要素は、HPHT環境内で耐腐食性を保証するために、耐食合金材料で被覆されてもよい。そのような構成要素について、疲労基準は、構成要素の予測寿命中に、仮定される既存の欠陥が、疲労により、被覆オーバーレイを貫通しないという条件である。そのような成長が予測される場合、疲労サイクルが耐腐食性を損なわないことを保証するために、被覆オーバーレイの厚さが増加させられなければない。既存の欠陥は、適切なNDE(他に非破壊評価として知られている)方法を使用して確立される。
【0045】
好ましい実施形態では、疲労の容認基準には3つの異なる選択肢がある。1つのそのような基準は、予測疲労サイクルの後で、亀裂サイズが臨界亀裂サイズの25%よりも小さいことである。第2の基準は、予測疲労サイクルの数が、臨界亀裂サイズを得るために必要とされる数の50%未満であることである。最後に、第3の基準は、疲労サイクルの後で、臨界亀裂サイズ限度を確立するために利用することができる、API 579−1/ASME FFS−1からの安全係数である。そのようなAPI 579安全係数は、参照することにより本願に組み込まれる。これらの容認基準のうちのいずれか1つが満たされた場合には、ステップ94において、機器構成要素がHPHT環境における使用のために確認される。容認基準が疲労について満たされない場合には、機器構成要素の予測HPHT環境を考慮して、そのような負荷が現実的であるかどうかを決定するように、機器構成要素に適用される負荷サイクルの再評価が行われる。亀裂成長速度da/dNは、環境が亀裂成長に影響を及ぼさないと決定されることができる場合を除いて、構成要素が暴露される環境における構築材料について決定される。この再評価は、ステップ90として示される。再評価が、ステップ92で決定されるように合格を確認しない場合、機器構成要素は、ステップ83でさらに示されるように、設計変更を要求する。これらの設計変更は、軽微であり、ステップ76の再実施を必要とし得るか、重大であり、ステップ50の再実施を必要とし得るかのいずれかである。そのような再評価に従って、以前に説明された疲労容認基準が、典型的な環境条件に対して満たされると決定された場合には、機器構成要素は、ステップ94で、HPHT環境における使用のために確認される。ステップ94における確認ステップの実施が、設計検証および妥当性確認工程を完結する。
【0046】
上記で説明された材料適格性認定工程ならびに設計検証および妥当性確認工程は、プロセッサ、メモリ、入出力デバイス、およびソフトウェアを含む、当技術分野で公知であるようなコンピュータシステム上で部分的に実装され、ソフトウェアは、工程の特定のステップの実行のための命令を含む。
【0047】
本発明の好ましい実施形態が、先述の詳細な説明において説明され、添付図で図示されているものの、本発明が、開示される実施形態に限定されないが、請求される本発明の範囲から逸脱することなく、多数の修正が可能であることが理解される。また、本明細書で開示される方法は、特定の順序で行われる特定のステップを参照して説明され、示されているが、これらのステップは、本発明の教示から逸脱することなく、同等の方法を形成するように組み合わせられ、細分され、または順序を変えられてもよいことが理解される。したがって、本明細書で特に指示されない限り、ステップの順序およびグループ化は、本発明の制限ではない。