(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770388
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】ディスク型微細流体システムおよび血液の状態確認方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20150806BHJP
A61M 1/02 20060101ALI20150806BHJP
G01N 33/49 20060101ALI20150806BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20150806BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20150806BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
G01N33/48 C
A61M1/02 575
G01N33/49 B
G01N33/483 C
G01N37/00 101
G01N35/00 D
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-542258(P2014-542258)
(86)(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公表番号】特表2015-501925(P2015-501925A)
(43)【公表日】2015年1月19日
(86)【国際出願番号】KR2012010797
(87)【国際公開番号】WO2013089433
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年5月19日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0133258
(32)【優先日】2011年12月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506376458
【氏名又は名称】ポステック アカデミー−インダストリー ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン−ソン
(72)【発明者】
【氏名】ラ,ムンウ
(72)【発明者】
【氏名】パク,サンミン
【審査官】
黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第2028496(EP,A2)
【文献】
韓国登録特許第10−0915195(KR,B1)
【文献】
国際公開第2010/137470(WO,A1)
【文献】
特許第3701031(JP,B2)
【文献】
特表2002−503331(JP,A)
【文献】
特開昭64−072064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N33/48−33/98
G01N35/00
G01N37/00
G01N11/04
G01N15/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液をディスクの遠心分離容器に供給する段階と、
前記ディスクを回転させて、前記遠心分離容器の内部で前記血液を血球および血漿に遠心分離し、時間あたりの前記遠心分離容器の内部における前記血球の実際の移動距離を検出する段階と、
前記時間あたりの前記血球の実際の移動距離を示す第1グラフ、および前記時間あたりの前記血球の理論的移動距離を示す第2グラフを算出し、前記第1グラフと前記第2グラフとを比較して前記血液のヘマトクリットおよび前記血漿の粘度を算出する段階とを含むことを特徴とする、血液の状態確認方法。
【請求項2】
前記血球の実際の移動距離を検出する段階は、前記時間あたりの前記遠心分離容器の内部を撮影したイメージを用いることを特徴とする、請求項1に記載の血液の状態確認方法。
【請求項3】
前記血球の実際の移動距離を検出する段階は、前記イメージから明暗を分析して暗領域に対して重心(center of mass)を計算し、前記重心を基準として前記暗領域の最短距離を測定して行うことを特徴とする、請求項2に記載の血液の状態確認方法。
【請求項4】
前記血液のヘマトクリットを算出する段階は、下記の数式を用いて前記第2グラフを算出し、下記のr
pを前記時間あたりの前記血球の実際の移動距離に適用した後、下記のθを算出して行うことを特徴とする、請求項1に記載の血液の状態確認方法。
【数1】
前記数式において、πは円周率であり、p
pは前記血球の密度であり、d
pは前記血球の直径であり、r’’
pは前記血球の移動加速度であり、p
fは前記血漿の密度であり、wは前記ディスクの回転角速度であり、r
pは前記血球の移動距離であり、r’
pは前記血球の移動速度であり、u
fは前記血漿の粘度であり、θは前記血液の全体体積に対して前記血球の占める体積比である。
【請求項5】
前記血漿の粘度を算出する段階は、下記の数式を用いて前記第2グラフを算出し、下記のr
pを前記時間あたりの前記血球の実際の移動距離に適用した後、下記のu
fを算出して行うことを特徴とする、請求項1に記載の血液の状態確認方法。
【数2】
前記数式において、πは円周率であり、p
pは前記血球の密度であり、d
pは前記血球の直径であり、r’’
pは前記血球の移動加速度であり、p
fは前記血漿の密度であり、wは前記ディスクの回転角速度であり、r
pは前記血球の移動距離であり、r’
pは前記血球の移動速度であり、u
fは前記血漿の粘度であり、θは前記血液の全体体積に対して前記血球の占める体積比である。
【請求項6】
血液が供給される遠心分離容器を含み、回転して、前記遠心分離容器の内部で前記血液を血球および血漿に遠心分離するディスクと、
前記ディスクの上側に位置し、時間あたりの前記遠心分離容器の内部を撮影する撮影部と、
前記撮影部に連結されており、前記撮影部が撮影したイメージを用いて前記時間あたりの前記遠心分離容器の内部における前記血球の実際の移動距離を検出し、前記時間あたりの前記血球の実際の移動距離を示す第1グラフ、および前記時間あたりの前記血球の理論的移動距離を示す第2グラフを算出し、前記第1グラフと前記第2グラフとを比較して前記血液のヘマトクリットおよび前記血漿の粘度を算出する制御部とを含むことを特徴とする、ディスク型微細流体システム。
【請求項7】
前記制御部は、
下記の数式を用いて前記第2グラフを算出し、下記のr
pを前記時間あたりの前記血球の実際の移動距離に適用した後、下記のθを算出して前記血液のヘマトクリットを算出することを特徴とする、請求項6に記載のディスク型微細流体システム。
【数3】
前記数式において、πは円周率であり、p
pは前記血球の密度であり、d
pは前記血球の直径であり、r’’
pは前記血球の移動加速度であり、p
fは前記血漿の密度であり、wは前記ディスクの回転角速度であり、r
pは前記血球の移動距離であり、r’
pは前記血球の移動速度であり、u
fは前記血漿の粘度であり、θは前記血液の全体体積に対して前記血球の占める体積比である。
【請求項8】
前記制御部は、
下記の数式を用いて前記第2グラフを算出し、下記のr
pを前記時間あたりの前記血球の実際の移動距離に適用した後、下記のu
fを算出して前記血漿の粘度を算出することを特徴とする、請求項6に記載のディスク型微細流体システム。
【数4】
前記数式において、πは円周率であり、p
pは前記血球の密度であり、d
pは前記血球の直径であり、r’’
pは前記血球の移動加速度であり、p
fは前記血漿の密度であり、wは前記ディスクの回転角速度であり、r
pは前記血球の移動距離であり、r’
pは前記血球の移動速度であり、u
fは前記血漿の粘度であり、θは前記血液の全体体積に対して前記血球の占める体積比である。
【請求項9】
前記ディスクは、
前記遠心分離容器に連結された血漿容器と、
前記遠心分離容器と前記血漿容器との間を連結する微細バルブとをさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載のディスク型微細流体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク型微細流体システムおよび血液の状態確認方法に関するものであって、より詳細には、血液を遠心分離して血漿を抽出するディスク型微細流体システムおよび血液の状態確認方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、血液分離、血漿抽出、血液の物性分析などは、それぞれの目的に合わせた装備あるいは装置によって行われる。血液は、遠心分離機のような装置によって血漿および血球に分離され、分離された血漿は、ピペッティング(pipetting)などで抽出される。また、血液の粘度(viscosity)およびヘマトクリット(hematocrit)などの血液の物性は、各物性を測定する専用装備によって分析が行われる。
このような専用装備による一連の過程は、各過程をより正確に行うことができるという利点があるが、血液の状態を確認するために多量の血液が使用される上に、非連続的な過程によって全体的な血液の状態を確認するための検査時間が長くかかるという欠点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一実施形態は、血液を遠心分離して血漿を抽出すると同時に、血液の状態を確認するディスク型微細流体システムおよび血液の状態確認方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の技術的課題を達成するための本発明の第1側面は、血液をディスクの遠心分離容器に供給する段階と、前記ディスクを回転させて、前記遠心分離容器の内部で前記血液を血球および血漿に遠心分離し、時間あたりの前記遠心分離容器の内部における前記血球の実際の移動距離を検出する段階と、前記時間あたりの前記血球の実際の移動距離を示す第1グラフ、および前記時間あたりの前記血球の理論的移動距離を示す第2グラフを算出し、前記第1グラフと前記第2グラフとを比較して前記血液のヘマトクリットおよび前記血漿の粘度を算出する段階とを含む、血液の状態確認方法を提供する。
【0005】
前記血球の実際の移動距離を検出する段階は、前記時間あたりの前記遠心分離容器の内部を撮影したイメージを用いることができる。
【0006】
前記血球の実際の移動距離を検出する段階は、前記イメージから明暗を分析して暗領域に対して重心(center of mass)を計算し、前記重心を基準として前記暗領域の最短距離を測定して行うことができる。
【0007】
前記血液のヘマトクリットを算出する段階は、下記の数式を用いて前記第2グラフを算出し、下記のr
pを前記時間あたりの前記血球の実際の移動距離に適用した後、下記のθを算出して行うことができる。
【0008】
【数1】
【0009】
前記数式において、πは円周率であり、p
pは前記血球の密度であり、d
pは前記血球の直径であり、r’’
pは前記血球の移動加速度であり、p
fは前記血漿の密度であり、wは前記ディスクの回転角速度であり、r
pは前記血球の移動距離であり、r’
pは前記血球の移動速度であり、u
fは前記血漿の粘度であり、θは前記血液の全体体積に対して前記血球の占める体積比である。
【0010】
前記血漿の粘度を算出する段階は、下記の数式を用いて前記第2グラフを算出し、下記のr
pを前記時間あたりの前記血球の実際の移動距離に適用した後、下記のu
fを算出して行うことができる。
【0011】
【数2】
【0012】
前記数式において、πは円周率であり、p
pは前記血球の密度であり、d
pは前記血球の直径であり、r’’
pは前記血球の移動加速度であり、p
fは前記血漿の密度であり、wは前記ディスクの回転角速度であり、r
pは前記血球の移動距離であり、r’
pは前記血球の移動速度であり、u
fは前記血漿の粘度であり、θは前記血液の全体体積に対して前記血球の占める体積比である。
【0013】
また、本発明の第2側面は、血液が供給される遠心分離容器を含み、回転して、前記遠心分離容器の内部で前記血液を血球および血漿に遠心分離するディスクと、前記ディスクの上側に位置し、時間あたりの前記遠心分離容器の内部を撮影する撮影部と、前記撮影部に連結されており、前記撮影部が撮影したイメージを用いて前記時間あたりの前記遠心分離容器の内部における前記血球の実際の移動距離を検出し、前記時間あたりの前記血球の実際の移動距離を示す第1グラフ、および前記時間あたりの前記血球の理論的移動距離を示す第2グラフを算出し、前記第1グラフと前記第2グラフとを比較して前記血液のヘマトクリットおよび前記血漿の粘度を算出する制御部とを含む、ディスク型微細流体システムを提供する。
【0014】
前記制御部は、下記の数式を用いて前記第2グラフを算出し、下記のr
pを前記時間あたりの前記血球の実際の移動距離に適用した後、下記のθを算出して前記血液のヘマトクリットを算出することができる。
【0015】
【数3】
【0016】
前記数式において、πは円周率であり、p
pは前記血球の密度であり、d
pは前記血球の直径であり、r’’
pは前記血球の移動加速度であり、p
fは前記血漿の密度であり、wは前記ディスクの回転角速度であり、r
pは前記血球の移動距離であり、r’
pは前記血球の移動速度であり、u
fは前記血漿の粘度であり、θは前記血液の全体体積に対して前記血球の占める体積比である。
【0017】
前記制御部は、下記の数式を用いて前記第2グラフを算出し、下記のr
pを前記時間あたりの前記血球の実際の移動距離に適用した後、下記のu
fを算出して前記血漿の粘度を算出することができる。
【0018】
【数4】
【0019】
前記数式において、πは円周率であり、p
pは前記血球の密度であり、d
pは前記血球の直径であり、r’’
pは前記血球の移動加速度であり、p
fは前記血漿の密度であり、wは前記ディスクの回転角速度であり、r
pは前記血球の移動距離であり、r’
pは前記血球の移動速度であり、u
fは前記血漿の粘度であり、θは前記血液の全体体積に対して前記血球の占める体積比である。
【0020】
前記ディスクは、前記遠心分離容器に連結された血漿容器と、前記遠心分離容器と前記血漿容器との間を連結する微細バルブとをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
このような本発明の課題を解決するための手段の一部の実施形態の1つによれば、血液を遠心分離して血漿を抽出すると同時に、血液の状態を確認するディスク型微細流体システムおよび血液の状態確認方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかるディスク型微細流体システムを示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態にかかるディスク型微細流体システムを用いて血漿を抽出することを示す写真である。
【
図4】本発明の第2実施形態にかかる血液の状態確認方法を説明するための図である。
【
図5】本発明の第2実施形態にかかる血液の状態確認方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付した図面を参照して、本発明の様々な実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されない。
本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の参照符号を付す。
また、図面に示された各構成の大きさおよび厚さは、説明の便宜のために任意に示したので、本発明が必ずしも図示したものに限定されない。
【0024】
図面において、説明の便宜のために、一部の層および領域の厚さを誇張して示した。一部分が他の部分の「上側に」あるとする時、これは、一部分が他の部分の「直上側に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。
また、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。さらに、明細書全体において、「〜上側に」とは、対象部分の上または下に位置することを意味するものであり、必ずしも重力方向を基準として上側に位置することを意味するものではない。
【0025】
以下、
図1および
図2を参照して、本発明の第1実施形態にかかるディスク型微細流体システムを説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかるディスク型微細流体システムを示す図である。
図1に示されているように、本発明の第1実施形態にかかるディスク型微細流体システムは、血液を遠心分離すると同時に、血液の状態を確認し、ディスク100と、駆動部200と、センサ300と、調節部400と、照明部500と、鏡600と、撮影部700と、制御部800とを含む。
【0026】
図2は、
図1に示されたディスクを示す図である。
図2に示されているように、ディスク100は、円形のディスク形態を有し、中心軸Cを基準として自体回転して、外部から供給された血液を血球および血漿に遠心分離する。ディスク100には、注入口110、遠心分離容器120、廃物移動チャネル130、廃物収容容器140、微細バルブ150、血漿容器160、および空気噴出口170が、フォトリソグラフィ(photolithography)などのMEMS技術、または反対形状を有する金型インサートを用いた射出成形、ホットエンボシング、UV−モールディング、鋳造などの大量生産方法により負角形成されてよい。ディスク100は、金属材料、セラミック材料、またはCOC(cyclic olefin copolymer)、PMMA(polymethylmethacrylate)、PS(polystyrene)、PC(polycarbonate)、PDMS(polydimethylsiloxane)、Teflon(Polytetrafluoroethylene)、PVC(polyvinylchloride)などの高分子材料で形成されてよい。
【0027】
注入口110は、中心軸Cに隣接してディスク100の内部に配置され、血液が供給される通路である。
遠心分離容器120は、注入口110に連結されており、注入口110から供給される血液が位置する容器である。ディスク100が回転すると、遠心分離容器120の内部で血液が血球および血漿に遠心分離される。
廃物移動チャネル130は、遠心分離容器120と注入口110との間に位置し、ディスク100の回転時、遠心分離容器120から溢れた血液が廃物収容容器140に移動する通路である。
廃物収容容器140は、廃物移動チャネル130によって遠心分離容器120に連結されており、ディスク100の回転時、遠心分離容器120から溢れた血液を収容する容器である。
【0028】
微細バルブ150は、遠心分離容器120と血漿容器160との間を連結し、血液のヘマトクリットを考慮してその位置が決定されることにより、遠心分離容器120の内部で遠心分離された血漿のみが通過する通路である。より詳細には、微細バルブ150は、一般的なヘマトクリットの範囲である30%〜60%を考慮して、遠心分離容器120の全幅WDの30%〜60%である一幅Dに対応するように配置されてよい。微細バルブ150は、ディスク100の回転角速度に応じて開閉が調節可能である。詳細には、ディスク100の回転に応じた遠心力によって微細バルブ150の周囲に形成される第1圧力と、微細バルブ150内部の表面張力によって形成される第2圧力との間の差によって、微細バルブ150の開閉が調節される。一例として、第1圧力が第2圧力より大きい場合、微細バルブ150は開放され、微細バルブ150を介して遠心分離容器120から血漿容器160に血漿が移動し、第2圧力が第1圧力より大きい場合、微細バルブ150は閉鎖され、微細バルブ150を介して遠心分離容器120から血漿容器160に血液が移動しない。第1圧力は、ディスク100の回転角速度に比例することから、ディスク100の回転角速度を調節し、血液の遠心分離時、第2圧力が第1圧力より大きくなるように調節し、血漿抽出時、第1圧力が第2圧力より大きくなるように調節することにより、ディスク100の回転角速度を調節し、遠心分離および血漿抽出それぞれに対応して微細バルブ150の開閉それぞれを調節することができる。
【0029】
血漿容器160は、微細バルブ150を介して遠心分離容器120に連結されており、遠心分離容器120で血液から遠心分離された血漿を収容する容器である。血漿容器160に収容された血漿は、血漿容器160に連結された1つのチャネルを介して他の容器に移動して貯蔵できる。
【0030】
空気噴出口170は、遠心分離容器120、廃物収容容器140、および血漿容器160それぞれに連結されており、各容器に血液および血漿などの流体が供給される時、各容器の内部を占めている空気が抜け出る通路である。
【0031】
以下、
図3を参照して、本発明の第1実施形態にかかるディスク型微細流体システムのディスクで血漿を抽出することを説明する。
図3は、本発明の第1実施形態にかかるディスク型微細流体システムのディスクで血漿を抽出することを示す写真である。
図3の(a)〜(h)は、実際に作製されたディスク型微細流体システムのディスク100を用いて行った微量の血液の遠心分離と血漿抽出の実験過程を時間に応じて示す写真である。
図3の(a)〜(e)から明らかなように、ディスク100が回転するに伴って誘発される遠心力によって、遠心分離容器120に注入された血液BLの遠心分離が行われる。この過程で、
図3の(b)のように、血液BLは血球Bおよび血漿Lに明確に区分され、血球Bが回転中心の外郭方向に沈殿する現象を示し、一定時間後には
図3の(e)のようにそれ以上沈殿が進行しない。また、血液BLの遠心分離が行われている間、微細バルブ150によって血液または血漿の移動を防止する。
【0032】
その後、ディスク100の回転角速度を増加させて微細バルブ150を開放し、遠心分離された血漿Lの抽出を誘導する。
図3の(f)〜(h)から明らかなように、遠心分離容器120の上層部に分離された血漿Lは、微細バルブ150を介して血漿容器160に移動する。これにより、本発明の第1実施形態にかかるディスク型微細流体システムのディスク100を用いることで、便利で効率的な方法で微量の血液を遠心分離し、血漿を抽出可能であることを確認することができる。
【0033】
再び
図1を参照すれば、駆動部200は、ディスク100を支持し、モータ(moter)などの駆動手段を含み、ディスク100を回転させる。
センサ300は、ディスク100に隣接して位置し、ディスク100の回転数をセンシングする役割を果たす。
調節部400は、センサ300および駆動部200に連結されており、ディスク100の回転数をセンシングしたセンサ300から信号を受けて、駆動部200によるディスク100の回転を調節する役割を果たす。調節部400によってディスク100の回転角速度が調節できる。
【0034】
照明部500は、調節部400に連結されており、ディスク100の回転数に同期して、閃光形態で照明を鏡600に映す。
鏡600は、ディスク100の下側に位置し、照明部500から照射された照明をディスク100方向に反射する。
撮影部700は、ディスク100の遠心分離容器120および鏡600に対応してディスク100の上側に位置し、ディスク100の回転数に同期して、照明を用いて時間あたりの遠心分離容器120の内部を撮影する。撮影部700は、時間あたりの遠心分離容器120の内部をイメージ(image)化する。
【0035】
制御部800は、撮影部700に連結されており、撮影部700が撮影したイメージを用いて時間あたりの遠心分離容器120の内部における血球の実際の移動距離を検出し、時間あたりの血球の実際の移動距離を示す第1グラフ、および時間あたりの血球の理論的移動距離を示す第2グラフを算出し、第1グラフと第2グラフとを比較して血液のヘマトクリットおよび血漿の粘度を算出する。つまり、制御部800は、ディスク100で遠心分離される血液のヘマトクリットおよび血漿の粘度を算出し、血液の状態を確認する。
制御部800は、下記の数式を用いて第2グラフを算出し、下記のr
pを時間あたりの血球の実際の移動距離に適用した後、下記のθを算出して血液のヘマトクリットを算出する。
【0037】
前記数式において、πは円周率であり、p
pは前記血球の密度であり、d
pは前記血球の直径であり、r’’
pは前記血球の移動加速度であり、p
fは前記血漿の密度であり、wは前記ディスクの回転角速度であり、r
pは前記血球の移動距離であり、r’
pは前記血球の移動速度であり、u
fは前記血漿の粘度であり、θは前記血液の全体体積に対して前記血球の占める体積比である。
また、制御部800は、前記数式を用いて第2グラフを算出し、前記r
pを時間あたりの血球の実際の移動距離に適用した後、前記u
fを算出して血漿の粘度を算出する。
【0038】
以下、
図4および
図5を参照して、上述した本発明の第1実施形態にかかるディスク型微細流体システムを用いた本発明の第2実施形態にかかる血液の状態確認方法を説明する。
図4および
図5は、本発明の第2実施形態にかかる血液の状態確認方法を説明するための図である。
まず、血液をディスク100の遠心分離容器120に供給する。
次に、ディスク100を回転させて、遠心分離容器120の内部で血液を血球および血漿に遠心分離し、時間あたりの遠心分離容器120の内部における血球の実際の移動距離を検出する。
【0039】
図4は、時間あたりの遠心分離容器の内部を撮影したイメージを示す写真である。
詳細には、
図4に示されているように、時間あたりの遠心分離容器120の内部を撮影した原イメージ{
図4の(a)、(b)、(c)それぞれの左側のイメージ}から明暗を分析し、後イメージ{
図4の(a)、(b)、(c)それぞれの右側のイメージ}に補正する。この時、後イメージにおいて、血球の沈殿部分は白色とし、背景は黒色に変更する。その後、後イメージの血球の沈殿部分である暗領域DAに対して重心(center of mass)を計算し、重心を基準として暗領域DAの最短距離SLを測定し、時間あたりの遠心分離容器120の内部における血球の実際の移動距離を検出する。全体イメージフレームに対してこのような処理を施すことにより、結果的に血球の沈殿する高さを時間に応じて示すデータが得られる。このような検出は制御部800が行うことができる。
【0040】
次に、血液のヘマトクリットおよび血漿の粘度それぞれを算出する。
詳細には、時間あたりの前記血球の実際の移動距離を示す第1グラフ、および時間あたりの血球の理論的移動距離を示す第2グラフを算出し、第1グラフと第2グラフとを比較して血液のヘマトクリットおよび血漿の粘度を算出する。
以下、血液のヘマトクリットおよび血漿の粘度それぞれを算出する方法をより詳細に説明する。
【0041】
図5は、時間あたりの血球の実際の移動距離を示す第1グラフ、および時間あたりの血球の理論的移動距離を示す第2グラフを示すグラフである。
図5のx軸は時間(second)であり、y軸は血球の移動距離(m)である。
図5に示されているように、時間あたりの血球の実際の移動距離を示す実験的グラフである第1グラフG1は、上述のように、ディスク型微細流体システムの撮影部700を通して得られたイメージを分析して検出する。
時間あたりの血球の理論的移動距離を示す理論的グラフである第2グラフG2は、下記の数式を用いて算出する。
【0043】
前記数式において、πは円周率であり、p
pは前記血球の密度であり、d
pは前記血球の直径であり、r’’
pは前記血球の移動加速度であり、p
fは前記血漿の密度であり、wは前記ディスクの回転角速度であり、r
pは前記血球の移動距離であり、r’
pは前記血球の移動速度であり、u
fは前記血漿の粘度であり、θは前記血液の全体体積に対して前記血球の占める体積比である。
前記数式は、特定の流体に存在する多数の球状粒子が遠心力によって沈殿する時、前記多数の球状粒子が形成する動的力均衡(dynamic force balance)に基づいて行われた。まず、特定の流体で1つの球状粒子が遠心力によって沈殿すると、粒子の運動は、遠心力(centrifugal force)、浮力(buotancy force)、牽引力(drag force)によって動的力均衡をなし、血球を剛体と仮定して変形度のない粒子と仮定した後、多数の粒子が沈殿する状況を考慮して、流体の粘度の代わりに多数の粒子を含む流体の粘度値を適用し、これを数式化して導出した。
【0044】
前記数式に基づいて反復計算(iteration)をして第2グラフG2を算出する。第2グラフG2を算出する時、π、p
p、d
p、p
f、w、u
f、θに予め設定された理論的値を適用してr’’
p、r’
p、r
pを算出する。
第1グラフG1と第2グラフG2とを比較して血液のヘマトクリットおよび血漿の粘度それぞれを算出する。
まず、血液のヘマトクリットは、第2グラフG2を求める時、血液の全体体積に対して血球の占める体積比であるθを変化させて第1グラフG1に最も類似するグラフを探すと、その時の体積比であるθの百分率が、実際にディスク100の遠心分離容器120で遠心分離された血液のヘマトクリット値となる。一例として、r
pを第1グラフG1の時間あたりの血球の実際の移動距離に適用すると、数式を用いてθを算出して血液のヘマトクリット値を算出する。
【0045】
次に、血漿の粘度は、第1グラフG1に示される血球の移動速度が、第2グラフG2の血球の移動速度であるr’
pより速ければ、血漿の粘度が理論値に比べて小さいのであり、遅ければ、血漿の粘度が理論値に比べて高いのである。このような類推方法で実際の血漿の粘度値を予測する。一例として、グラフの0秒〜50秒の区間は、血液の遠心分離において血漿の粘度が最も大きい影響を与える区間であることを考慮して、血漿の粘度を知ることができる。理論的グラフと比較して、実験的グラフに示される粒子の移動速度が速ければ、血漿の粘度が理論値に比べて小さいのであり、遅ければ、血漿の粘度が理論値に比べて高いのである。このような類推方法で実際の血漿の粘度値を予測する。r
pを第1グラフG1の時間あたりの血球の実際の移動距離に適用すると、数式を用いてu
fを算出して血漿の粘度を算出する。
【0046】
このように、血液遠心分離の推移を示す実験的グラフの第1グラフG1と理論的グラフの第2グラフG2とを比較して、血液の主要物性である血液のヘマトクリットおよび血漿の粘度を算出することができ、これを血液の状態を計る尺度として利用することができる。
以上のように、本発明の第1実施形態にかかるディスク型微細流体システムおよびこれを用いた本発明の第2実施形態にかかる血液の状態確認方法は、血液を遠心分離して血漿を抽出すると同時に、血液の状態を確認することにより、追加的な血液の状態を確認するための装備を必要としないと同時に、血液の状態を確認するための追加の時間を必要としない。
【0047】
本発明を上記の好ましい実施形態により説明したが、本発明は、これに限定されず、以下に記載する特許請求の範囲の概念および範囲を逸脱しない限り、多様な修正および変形が可能であることを、本発明の属する技術分野に従事する者は容易に理解することができる。