(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5770398
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定構造及び橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定工法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/02 20060101AFI20150806BHJP
【FI】
E01D19/02
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-39776(P2015-39776)
(22)【出願日】2015年3月2日
【審査請求日】2015年3月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503121088
【氏名又は名称】株式会社ビービーエム
(73)【特許権者】
【識別番号】391051256
【氏名又は名称】株式会社美和テック
(73)【特許権者】
【識別番号】503121077
【氏名又は名称】株式会社カイモン
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(72)【発明者】
【氏名】合田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】榎本 武雄
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−212916(JP,A)
【文献】
特開2014−001495(JP,A)
【文献】
特開2000−297409(JP,A)
【文献】
特開2010−013343(JP,A)
【文献】
特開2004−124617(JP,A)
【文献】
特開2014−091979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/02
E01D 19/04
E01D 22/00
C04B 28/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート製橋脚の側面に内部鉄筋を超える深さの複数のはつり空間を形成する工程と、
前記複数のはつり空間に定着板を取り付けた一端部が内部鉄筋の内側に位置させ他端部に雄ねじ部を形成した固定部材を配置する工程と、
型枠を前記固定部材により支持させ、前記複数のはつり空間に無機系又は有機系の硬化剤を充填し硬化させ硬化後脱型し前記固定部材を固定する工程と、
前記固定部材により複数の橋脚縁端拡幅ブラケット用雌ねじ孔を形成した所定厚みのベースプレートを固定する工程と、
前記ベースプレートに橋脚縁端拡幅ブラケットを固定ボルトにより固定する工程と、
を備えることを特徴とする橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定工法。
【請求項2】
前記複数のはつり空間に充填し硬化される無機系又は有機系の硬化剤の硬化後の強度を周囲のコンクリートの強度と同等以上とすることを特徴とする請求項1に記載の橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁の支承交換時のジャッキアップのための橋梁縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定構造及び橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定工法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の上部構耐震補強工事において、支承交換のためジャッキアップのためのジャッキを設置するために、桁直下の鉄筋コンクリート製橋脚の側面部に鋼製の橋脚縁端拡幅ブラケットを固定する。橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚側面部への固定方法として、従来、アンカーボルトを橋脚の内部鉄筋間に埋め込ませ、樹脂を注入し、橋脚縁端拡幅ブラケットを装着した後、ナットを用いて締め付けている。さらに、アンカーボルトの引き抜き抵抗を大きくするためにアンカーボルトの先端が拡開するものが提案されている。
【0003】
アンカーボルト設置用の孔は、鉄筋コンクリート橋脚の側面に、ダイヤモンドドリルを使用して穿孔している。しかし、橋脚内部の鉄筋は、竣工図面通りに、一定間隔では配筋されていない場合が多いため、必要長を穿孔する際に、鉄筋と干渉してしまうことが避けられず、再度穿孔を行わなければならないため、多大な手間が生じている。
【0004】
穿孔する際の内部鉄筋との干渉を避けるため、橋脚縁端拡幅ブラケットを橋脚へ固定する固定構造において、最上段部のアンカーボルトを内部鉄筋の内側まで打ち込み、2段目以下のボルトの埋め込み長を橋脚中の鉄筋と干渉しない長さに設定した打込み式アンカーボルトとした橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−63882号公報
【特許文献2】特開2002−212916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定構造においては、多数のアンカーボルト用孔を穿孔する必要があり、狭い作業空間での穿孔作業に多くの作業時間を必要とし、結果として高コストな作業になるという問題を有する。
【0007】
本発明は、従来技術の持つ課題を解決する、穿孔作業を無くし、作業時間を著しく短縮し、強固に橋脚縁端拡幅ブラケットを橋脚側面に固定することが可能な橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定構造及び橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定工法は、前記課題を解決するために、鉄筋コンクリート製橋脚の側面に内部鉄筋を超える深さの複数のはつり空間を形成する工程と、前記複数のはつり空間に定着板を取り付けた一端部が内部鉄筋の内側に位置させ他端部に雄ねじ部を形成した固定部材を配置する工程と、
型枠を前記固定部材により支持させ、前記複数のはつり空間に無機系又は有機系の硬化剤を充填し
硬化させ硬化後脱型し前記固定部材を固定する工程と、前記固定部材により複数の橋脚縁端拡幅ブラケット用雌ねじ孔を形成した所定厚みのベースプレートを固定する工程と、前記ベースプレートに橋脚縁端拡幅ブラケットを固定ボルトにより固定する工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定工法は、前記複数のはつり空間に充填し硬化される無機系又は有機系の硬化剤の硬化後の強度を周囲のコンクリートの強度と同等以上とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
鉄筋コンクリート製橋脚の側面に内部鉄筋を超える深さの複数のはつり空間を形成する工程と、前記複数のはつり空間に定着板を取り付けた一端部が内部鉄筋の内側に位置させ他端部に雄ねじ部を形成した固定部材を配置する工程と、
型枠を前記固定部材により支持させ、前記複数のはつり空間に無機系又は有機系の硬化剤を充填し
硬化させ硬化後脱型し前記固定部材を固定する工程と、前記固定部材により複数の橋脚縁端拡幅ブラケット用雌ねじ孔を形成した所定厚みのベースプレートを固定する工程と、前記ベースプレートに橋脚縁端拡幅ブラケットを固定ボルトにより固定する工程と、を備えることで、穿孔作業を無くし、複数個所のはつり作業を実施して橋脚縁端拡幅ブラケットを支持するベースプレートを固定部材により固定することが可能となり作業時間を著しく短縮することが可能となる。
複数のはつり空間に充填し硬化される無機系又は有機系の硬化剤の硬化後の強度を周囲のコンクリートの強度と同等以上することで、固定部材を強固に固定することで、橋脚縁端拡幅ブラケットに付加される大きな荷重に対しても耐えることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を図により説明する。
図1、
図2は、 橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定工法の第一工程及び第二工程を示す図である。
【0015】
鉄筋コンクリート製の橋脚1の上には支承3を介して上部構造である桁2が支持されている。支承3の交換時、桁2をジャッキアップする必要がある。ジャッキアップのためのジャッキの設置及び桁かかり長が不足している個所の縁端拡幅を行うため、桁2直下位置の橋脚1の側面部に橋梁縁端拡幅ブラケット4を固定する。
【0016】
橋脚縁端拡幅ブラケット4の橋脚1への固定工法の第一工程は、橋脚1の側面部に内部鉄筋5を超えてはつり作業を実施し、複数のはつり空間6を形成する。はつり空間6の大きさは、内部鉄筋5の縦筋5a、5a間の間隔、横筋5b、5b間の間隔より大きく内部鉄筋5が露出する深さとする。
【0017】
橋脚縁端拡幅ブラケット4の橋脚1への固定工法の第二工程は、複数のはつり空間6に固定部材7を配置する。固定部材7の外径は、縦筋5a、5a間の間隔、横筋5b、5b間の間隔より小さくする。固定部材7の一端部は内部鉄筋5の内側に位置するようにし、固定部材7の一端部には、固定部材7の外径より大きな定着板8を取り付ける。
【0018】
固定部材7の他端部は、橋脚1の側面から突き出すようにする。固定部材7の他端部には雄ねじ部7aが形成される。固定部材7は、その外径が通常のアンカーボルトと比較して大径で強度の大きな鋼材で形成する。固定部材7を大径とし高強度の材料で形成することにより、ベースプレート10を支持固定する固定部材7の本数を少なくすることが可能となる。
【0019】
図3、
図4は、橋脚縁端拡幅ブラケット4の橋脚1への固定工法の第三工程を示す図である。橋脚縁端拡幅ブラケット4の橋脚1への固定工法の第三工程は、はつり空間6に、未硬化のコンクリート等の無機系硬化剤又はエポキシ樹脂等の有機系硬化剤を充填し硬化させ固定部材7をはつり空間6内に固定する。未硬化の無機系硬化剤又は有機系硬化剤を充填する際、複数の固定部材7により型枠9を支持する。固定部材7で型枠9を支持することにより、固定部材7をはつり空間6内の正確な位置に位置決めすることが可能となる。
【0020】
未硬化の無機系硬化剤又は有機系硬化剤の硬化後、型枠9を脱型する。硬化後の無機系硬化剤又は有機系硬化剤の強度を周囲のコンクリートの強度と同程度以上とする。硬化後の無機系硬化剤又は有機系硬化剤の強度を大きくすることで固定部材7を強固に固定することができ、橋脚縁端拡幅ブラケットに付加される大きな荷重に対しても耐えることが可能となる。
【0021】
図5、
図6は、橋脚縁端拡幅ブラケット4の橋脚1への固定工法の第四工程を示す図である。橋脚縁端拡幅ブラケット4の橋脚への固定工法の第四工程は、はつり空間6に充填された無機系硬化剤又はエポキシ樹脂等の有機系硬化剤が硬化し固定部材7が固定される。固定部材7に固定部材挿入孔が形成された所定厚みのベースプレート10を挿入し、固定部材7の他端部の雄ねじ部7aにナット11を螺着してベースプレート10を橋脚1の側面に固定する。
【0022】
ベースプレート10には、複数の橋梁縁端拡幅ブラケット固定用雌ねじ孔10aが形成される。ベースプレート10の厚みは、橋梁縁端拡幅ブラケット4に付加される荷重に耐えるように設定する。
【0023】
図7、
図8は、橋脚縁端拡幅ブラケット4の橋脚1への固定工法の第五工程を示す図である。橋脚縁端拡幅ブラケット4の橋脚への固定工法の第五工程は、ベースプレート10に形成した橋梁縁端拡幅ブラケット固定用雌ねじ孔10aに固定ボルト11を螺着して橋脚縁端拡幅ブラケット4をベースプレート10に固定する。
【0024】
以上のように、本発明の橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定構造及び橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚1への固定工法によれば、穿孔作業を無くし、複数個所のはつり作業を実施して橋脚縁端拡幅ブラケットを支持するベースプレートを固定部材により固定することが可能となり作業時間を著しく短縮することが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1:橋脚、2:桁、3:支承、4:橋梁縁端拡幅ブラケット、5:内部鉄筋、5a:縦筋、5b:横筋、6:はつり空間、7:固定部材、7a:雄ねじ部、8:定着板、9:型枠、10:ベースプレート、10a:橋梁縁端拡幅ブラケット固定用雌ねじ孔、11:ナット、12:固定ボルト
【要約】 (修正有)
【課題】穿孔作業を無くし、作業時間を著しく短縮し、強固に橋脚縁端拡幅ブラケットを橋脚側面に固定することが可能な橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定構造及び橋脚縁端拡幅ブラケットの橋脚への固定工法を提供する。
【解決手段】鉄筋コンクリート製橋脚1の側面をはつり内部鉄筋を超えるように形成された複数のはつり空間に定着板を取り付けた一端部が内部鉄筋の内側に位置するように配置され他端部に雄ねじ部が形成され前記はつり空間に充填硬化される無機系又は有機系の硬化剤により固定される固定部材7と、前記固定部材により固定され複数の橋脚縁端拡幅ブラケット固定用雌ねじ孔を形成した所定厚みのベースプレート10と、前記ベースプレートにボルト12により固定される橋脚縁端拡幅ブラケット4と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図7