(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外部マイクにより取得された信号を参照信号として、前記内部マイクにより取得された信号における雑音成分を除去して音声成分を留めた後、前記ヘッドセットの送話側音声信号を得ることは、
低周波数範囲内での前記外部マイクにより取得された信号と前記内部マイクにより取得された信号との統計的エネルギー比によって、制御パラメータαを特定し、フィードバックされた出力信号によって適応フィルタの重みを更新し、前記制御パラメータαによって前記適応フィルタの重み更新速度を制御し、前記外部マイクにより取得された信号に対して適応フィルタリング処理を行い、適応フィルタ出力信号を得ることと、
前記内部マイクにより取得された信号から、前記適応フィルタ出力信号を差し引いて、出力信号を得ることと、
前記出力信号をヘッドセットの送話側信号とすることと、を含む請求項1に記載の方法。
装着者の耳道口と緊密に結合し、耳道に入る中高周波雑音を低減可能な耳栓と、前記耳栓から延出して耳道と並列分岐を構成し、耳道内に入る中低周波雑音を分流する外部接続キャビティと、
前記耳道内における音声信号及び耳道内に漏れた環境雑音信号を取得するための内部マイクと、環境雑音信号及び空気を介して伝播された音声信号を取得するための外部マイクと、前記内部マイクにより取得された信号及び前記外部マイクにより取得された信号を受信し、前記外部マイクにより取得された信号を参照信号として、前記内部マイクにより取得された信号における雑音成分を除去して音声成分を留めた後、ヘッドセットの送話側信号を得るための音声信号処理手段と、
音響動的圧縮技術を用いて、前記外部マイクにより取得された信号に対して音圧レベルの削減及び補償処理を行った後、処理された信号の音圧範囲を人の耳による受取りに適する範囲内に圧縮するための音響動的圧縮手段と、
音響動的圧縮手段処理により処理された信号を、ヘッドセットにより受信された受話側信号とともに再生するための受話器と、
を含むヘッドセット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
強雑音は、一連の深刻な問題を引き起こす。
まず、高強度雑音は、人に疲れを感じさせ、消極的な感情を生じさせ、神経系、血液循環系、内分泌系、消化系、並びに、視覚、聴覚、知力などに重大な損傷を与えてしまうため、強雑音環境においての聴力保護が不可欠な措置である。次に、強雑音環境において、ヘッドセットを用いて音声通信を行うとき、話者の音声信号が環境雑音に完全にかき消され、音声通話が正常に実現されない可能性がある。これにより、生産活動、日常の暮らし、軍事行動などに重大な影響を与え、個人、団体、ひいては国家に巨大な損失をもたらす可能性がある。これで分かるように、強雑音環境において、明瞭で安定した音声通信機能を保持することは、極めて重要な意義を有しており、これも、人々が研究している関心の高い課題である。そして、一部の強雑音環境において、聴力保護を受けながら、周りの環境のリアルタイムな変化を監視して正確に対応するために、周りの環境の音響に十分な敏感度を保持することも求められており、そうでなければ、現れうる危険信号を感知することができなくなってしまう。例えば、戦場環境において、兵士たちは、周りの音響が聞こえないと、明らかに、極めて自主判断できない状況乃至危険な境地に陥ることになる。
【0004】
これに鑑みて、本発明は、上記課題を克服又は少なくとも一部を解決するために、ヘッドセット及びヘッドセットの通話品質を保証できる強雑音環境におけるヘッドセットの通信方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の技術方案は、以下のように実現される。
本発明は、強雑音環境におけるヘッドセットの通信方法を開示しており、当該方法は、
装着者の耳道口と緊密に結合した耳栓によって、耳道に入る中高周波雑音を低減すると共に、耳栓から延出して耳道と並列分岐を構成する外部接続キャビティによって、耳道内に入る中低周波雑音を分流することにより、耳道内に入る音響信号に対して全帯域でのノイズ低減を行うことと、
ヘッドセットの内部マイクによって、耳道内における音声信号及び耳道内に漏れた環境雑音信号を取得すると共に、ヘッドセットの外部マイクによって、環境雑音信号及び空気を介して伝播された音声信号を取得し、外部マイクにより取得された信号を参照信号として、内部マイクにより取得された信号における雑音成分を除去して音声成分を留めた後、ヘッドセットの送話側信号を得ることと、
ヘッドセットの両側にある外部マイクにより取得された信号に対して音圧レベルの削減及び補償処理を行った後、当該処理された信号の音圧範囲を人の耳による受取りに適する範囲内に圧縮してから、当該処理された信号を、ヘッドセットにより受信された受話側信号とともに、ヘッドセットの受話器を通じて再生することと、を含む。
【0006】
前記外部接続キャビティの音響インピーダンスが耳道の音響インピーダンスよりも著しく小さく、前記外部接続キャビティの内壁に吸音材が設けられていてもよい。
【0007】
前記外部マイクにより取得された信号を参照信号として、内部マイクにより取得された信号における雑音成分を除去して音声成分を留めた後、ヘッドセットの音声信号を得ることは、
低周波数範囲内での外部マイクにより取得された信号と内部マイクにより取得された信号との統計的エネルギー比によって、制御パラメータαを特定し、フィードバックされた出力信号によって、適応フィルタの重みを更新し、前記制御パラメータαによって適応フィルタの重み更新速度を制御し、外部マイクにより取得された信号に対して適応フィルタリング処理を行い、適応フィルタ出力信号を得ることと、
内部マイクにより取得された信号から、前記適応フィルタ出力信号を差し引いて、出力信号を得ることと、
前記出力信号をヘッドセットの送話側信号とすることと、を含んでもよい。
【0008】
前記方法は、前記出力信号に対してシングルチャネル音声処理及び周波数スペクトル拡散処理を行うことと、
シングルチャネル音声処理及び周波数スペクトル拡散処理が行われた信号を、ヘッドセットの送話側信号とすることと、を更に含んでもよい。
【0009】
本発明は、ヘッドセットをさらに開示しており、当該ヘッドセットは、
装着者の耳道口と緊密に結合し、耳道に入る中高周波雑音を低減可能な耳栓と、前記耳栓から延出して耳道と並列分岐を構成し、耳道内に入る中低周波雑音を分流する外部接続キャビティと、
耳道内における音声信号及び耳道内に漏れた環境雑音信号を取得するための内部マイクと、環境雑音信号及び空気を介して伝播された音声信号を取得するための外部マイクと、内部マイクにより取得された信号及び外部マイクにより取得された信号を受信し、外部マイクにより取得された信号を参照信号として、内部マイクにより取得された信号における雑音成分を除去して音声成分を留めた後、ヘッドセットの送話側信号を得るための音声信号処理手段と、
音響動的圧縮技術を用いて、前記外部マイクにより取得された信号に対して音圧レベルの削減及び補償処理を行った後、処理された信号の音圧範囲を人の耳による受取りに適する範囲内に圧縮するための音響動的圧縮手段と、
音響動的圧縮手段処理により処理された信号を、ヘッドセットにより受信された受話側信号とともに再生するための受話器と、を含む。
【0010】
前記外部接続キャビティの音響インピーダンスが耳道の音響インピーダンスよりも著しく小さくて、前記外部接続キャビティの内壁に吸音材が設けられていてもよい。
【0011】
前記音声信号処理手段は、
内部マイクにより取得された信号及び外部マイクにより取得された信号を受信し、低周波数範囲内での外部マイクにより取得された信号と内部マイクにより取得された信号との統計的エネルギー比によって、制御パラメータαを特定し、制御パラメータαを出力するための音声検出モジュールと、
フィードバックされた出力信号を重み更新の参照信号とし、前記制御パラメータαを重み更新速度の制御パラメータとして、受信された外部マイク信号に対して適応フィルタリング処理を行い、適応フィルタ出力信号を出力するための適応フィルタと、
受信された内部マイクにより取得された信号から、受信された前記適応フィルタ出力信号を差し引いて、出力信号を得るためのノイズ低減モジュールと、を含んでもよい。
【0012】
前記音声信号処理手段は、
前記出力信号に対してシングルチャネル音声処理及び周波数スペクトル拡散処理を行うための後処理モジュールを更に含んでもよい。
【0013】
前記音声信号処理手段及び前記音響動的圧縮手段が一つのDSPチップに集積されていてもよい。
【0014】
前記内部マイクは、個数が1つであり、前記ヘッドセットの左耳側又は右耳側に位置し、
前記外部マイクは、個数が2つであり、それぞれ前記ヘッドセットの左耳側と右耳側に位置し、
前記音声信号処理手段が、同じ耳側にある内部マイク及び外部マイクにより取得された信号を受信し、
前記音響動的圧縮手段が、2つの外部マイクにより取得された信号に対して音圧レベルの削減及び補償処理を行ってもよい。
【0015】
本発明のような、耳道口と緊密に結合した耳栓によって、耳道に入る中高周波雑音を低減すると共に、耳栓から延出して耳道と並列分岐を構成する外部接続キャビティによって、耳道内に入る中低周波雑音を分流するという方案は、耳道に入る音声信号に対して全帯域でのノイズ低減を行い、更に、聴力を保護することができる。ヘッドセットの内部マイクによって、耳道内における音声信号及び耳道内に漏れた環境雑音信号を取得すると共に、ヘッドセットの外部マイクによって、環境雑音信号及び空気を介して伝播された音声信号を取得し、外部マイクにより取得された信号を参照信号として、内部マイクにより取得された信号における雑音成分を除去して音声成分を留めた後、ヘッドセットの送話側音声信号を得るという技術方案は、まず、音響学レベルでは、耳栓と外部接続キャビティの作用によって、内部マイクにより取得された耳道内における信号が高いSN比を有し、そして、電子レベルでは、内部マイク及び外部マイクによって取得された信号に対して適応フィルタリング処理を行い、送話側信号の明瞭度が大いに向上し、音声が強調される。それとともに、音響動的圧縮技術を用いて、ヘッドセットの外部マイクにより取得された信号に対して音圧レベルの削減及び補償処理を行った後、その音圧範囲を人の耳による受取りに適する範囲内に圧縮してから、当該音圧が圧縮された信号を、ヘッドセットにより受信された音声信号とともに、ヘッドセットの受話器を通じて再生するという技術方案は、強雑音を低減して人の聴力へのダメージを回避し、並びに、音圧レベルの低い音響を適度に増大してその中の装着者に有用な情報を割り出して、環境に対する監視を実現することができる。これで分かるように、本発明の技術方案は、強雑音環境において、聴力保護、音声強調及び立体環境監視を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の目的、技術方案及び利点をより明らかにするために、以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について更に詳しく説明する。
【0018】
本発明の実施例による強雑音環境におけるヘッドセットの通信方法は、以下のいくつかの点を含む。
【0019】
(1)装着者の耳道口と緊密に結合した耳栓によって、耳道に入る中高周波雑音を低減し、耳栓から延出して耳道と並列分岐を構成する外部接続キャビティによって、耳道内に入る中低周波雑音を分流し、これにより、耳道内に入る音響信号に対して全帯域でのノイズ低減を行う。
ここで、受動的なノイズ低減技術と音分流技術とを組み合わせる方式を用いて、全帯域でのノイズ低減を実現するとともに、(2)の処理にSN比が高い音声信号を提供することができる。
【0020】
(2)ヘッドセットの内部マイクによって、耳道内における音声信号及び耳道内に漏れた環境雑音信号を取得すると共に、ヘッドセットの外部マイクによって、環境雑音信号及び空気を介して伝播された音声信号を取得し、外部マイクにより取得された信号を参照信号として、内部マイクにより取得された信号における雑音成分を除去して音声成分を留めた後、ヘッドセットの送話側信号を得る。
ここで、音響学レベル(耳栓、外部接続キャビティ及び内部マイク)と、電子レベル(内部マイク及び外部マイクの信号に対して適応フィルタリングを行うこと)との二つのレベルで音声に対して強調を行って、明瞭度及び自然度の高い送話側信号が得られる。
【0021】
(3)音響動的圧縮技術を用いて、ヘッドセットの外部マイクにより取得された信号に対して音圧レベルの削減及び補償処理を行った後、当該処理された信号(即ち、音圧レベルの削減及び補償処理が行われた信号)の音圧範囲を人の耳による受取りに適する範囲内に圧縮してから、当該処理された信号を、ヘッドセットにより受信された受話側信号とともに、ヘッドセットの受話器を通じて再生する。
ここで、音響学動的圧縮技術を用いて、環境雑音の強度範囲を人の耳の聴力領域に投影し、それにより、瞬時の極限音により人の耳に与えうる損傷が回避されながら、背景雑音も装着者の耳に完全に示される。
【0022】
これで分かるように、上記方法は、雑音分流、インイヤー送話器、音響学信号処理技術及び音響動的圧縮技術を効果的に組み合わせることで、強雑音環境において、聴力保護、音声強調及び立体環境監視を実現することができる。
【0023】
図1は、本発明の実施例による強雑音環境におけるヘッドセットの通信方法を適用したヘッドセットの構造図である。
図1に示すように、前記ヘッドセットは、内部マイク101と、両耳側の二つの外部マイク102と、両耳側受話器103と、両耳側の外部接続キャビティ104と、低消費電力DSPチップ105と、乾電池106と、を含み、
内部マイク101は、耳道内における高いSN比を有する音声信号を取得し、通話の明瞭度を保証するために用いられ、
両耳側の二つの外部マイク102によって、立体環境監視を実現し、三次元のリアルな音場を再現することができ、また、内部マイク101と同じ耳側にある外部マイク102は、更に音声強調に環境雑音を参照として提供し、
両耳側受話器103は、環境雑音参照信号を受話側信号とともに再生し、
両耳側の外部接続キャビティ104は、図において点線で示され、音分流を実現し、全帯域での雑音の隔離を保証し、聴力を保護することができ、
低消費電力DSPチップ105は、電子レベルでの音声強調処理及び音響動的圧縮処理を提供し、
乾電池106は、DSPチップ105に給電する。
【0024】
本発明の技術方案を更に詳しく説明するために、以下、本発明による、強雑音背景において聴力保護機能、音声通信機能及び立体環境監視機能を兼ねる多機能ヘッドセットについて説明を行う。具体的に、下記三つの方面について、それぞれ説明を行う。
【0025】
1、聴力保護
図2は、本発明の実施例によるヘッドセットの音分流構造の模式図である。
図2に、人の耳の構造が模式的に示されており、耳道202と鼓膜201とを含む。
図2に、本発明の実施例によるヘッドセットの分流構造も模式的に示されており、装着者の耳道口と緊密に結合できる穿孔付きの耳栓203と、耳栓203の穿孔から延出し、装着者の耳道と並列分岐を構成できる外部接続キャビティ204とを備える。外部接続キャビティ204は、接続管205を介して耳栓203の穿孔と連通する。外部接続キャビティ204の内壁に吸音材206が設けられている。外部接続キャビティ204の音響インピーダンスは、耳道の音響インピーダンスよりも著しく小さい。環境雑音207は、耳道口で分流され、外部接続キャビティ204の音響インピーダンスが耳道の音響インピーダンスよりも遥かに小さいため、大部分の雑音208が外部接続キャビティ204に分流され、小部分の雑音209が耳道に入る。耳栓203は、耳道内に入る中高周波雑音を低減することができ、外部接続キャビティ204は、大部分の中低周波雑音を分流することができるため、全帯域でのノイズ低減を実現することができる。
【0026】
図3は、本発明の実施例によるヘッドセットの音分流原理の模式図である。
図3を参照して、一本のパイプ又は一つのキャビティが耳道口と緊密に結合されており、耳道口から見ると、耳道に一つの並列分岐が追加されたことに相当し、耳道の入り口に漏れた雑音は、部分的に当該分岐に分流される。当該分岐の音響インピーダンスZ
mが耳道音響インピーダンスZ
eに対して小さいほど、より多くの音響エネルギーが、追加されたパイプ又はキャビティに入ることになり、これにより、耳道に入る雑音が低減される。
図3を参照して、外部雑音P
aは、まず、ヘッドセットの等価音響インピーダンスZ
sを突き通して耳道口に到達し、残留雑音は、耳道口での音圧がP
eである。もし分流分岐が存在しないと、耳道口での音圧がP
eである残留雑音は、全て耳道に入り、耳道の音響インピーダンスZ
eを通過した後、鼓膜に到達し、聴覚を呼び起こすようになる。これは、受動的なノイズ低減過程である。一方、分流分岐が取り入れられると、音圧がP
eである残留雑音は、分流分岐により部分的に分流され、耳道に入る音圧が
になる。ここで、P’
eが、残留雑音の耳道に入る音圧を表し、Z
mがZ
eよりも遥かに小さい場合、
となる。これで分かるように、音分流の効果は、Z
mとZ
eとの比の値によって直接に決定され、比の値が小さいほど、分流効果が大きくなる。分流のパイプ又はキャビティは、主に一つの容量性素子として存在し、そのインピーダンスは、
である。ここで、C
aが追加キャビティの音響キャパシタンスで、V
aがその容積で、c
0が空気中の音速で、ωが角周波数で、ρ
0が空気密度である。これで分かるように、追加キャビティの体積が大きくて、その音響インピーダンスが小さいほど、分流効果がより顕著になる。
【0027】
本発明の実施例において、受動的なノイズ低減技術と音分流技術とを組み合わせる方式を用いて、全帯域で30dB以上のノイズ低減量が実現できる。
図2を参照して、本部分の構造は、耳道口と緊密に結合できる耳栓203と耳栓203から延出した外部接続キャビティ204とを含めて構成される。ゴムまたは他の弾性音響抵抗材によって構成された耳栓203は、中高周波雑音を有効に遮断することができる。残留雑音が耳道202の入り口に到達した時、耳道202と外部接続キャビティ204との二つの並列した通路に直面するようになる。外部接続キャビティ204の音響インピーダンスを耳道202の音響インピーダンスよりも遥かに低く設定すると、大部分の音響エネルギーが外部接続キャビティ204に流入し、その後、複数回の乱反射を経てキャビティ壁上の吸音材に吸収されることになる。このような方式によって、耳道202に入る音響エネルギーが減少されることで、全帯域でのノイズ低減という効果を達成する。なお、特定の周波数で共振を生じさせるように、外部接続キャビティ204のディメンションを定量的に制御してもよい。これにより、当該周波数付近でより強い消音効果が発生する。外部接続キャビティの内部音響構造及び内部キャビティに付着した吸音材の分布を設計し制御することによって、共振消音の強度と帯域範囲を調整し、全帯域で最高のノイズ低減効果を達成することができる。
【0028】
2、音声強調
本発明の実施例に用いられる音声強調方案は、二つの部分を含み、第一の部分は、音響学レベルで音声強調を行うとともに、電子レベルでの音声強調アルゴリズムに、SN比が良好な主信号、及び、主信号と高い相関性を持つ雑音参照信号を提供することであり、第二の部分は、先端の音響学信号処理方法を用いて、信号に対して更に音声強調および後処理を行い、音声のSN比を向上させ、送話側音声の了解度及び快適さを改善することである。以下、音響学レベル及び電子レベルでの音声強調方法について、それぞれ説明を行う。
研究によって明らかになるように、人の耳道が外気から遮断され、一つの密閉したキャビティが形成されると、人が発話している時に、耳道の中の空気に同期振動が発生し、当該振動には、強い音声信号が含まれる。従って、本発明により提供されるヘッドセットにおいて、インイヤーのマイクは、耳内の音声信号及び漏れてきた残留雑音信号を取得し、外部マイクは、環境雑音信号を取得する。内部マイクと外部マイクとの両方の信号を同時に音声信号処理手段に送信し、内部マイク信号を主信号として、外部マイク信号を参照信号として、電子レベルで適応フィルタリング方法を用いて内部マイク信号における雑音信号を適応的に除去して音声成分を留め、最後に、適応フィルタリングされた音声信号に対して周波数スペクトル補償を行い、明瞭度及び自然度の高い送話側音声信号を得る。具体的に、
図4及び
図5を参照する。
【0029】
図4は、本発明の実施例によるヘッドセットのインイヤー部分の構造模式図である。
図4に、人の耳の構造が模式的に示されており、耳道202と鼓膜201とを含む。
図4には、本発明の実施例によるヘッドセットのインイヤー部分の構造も模式的に示されており、耳道202と緊密に結合できる耳栓203と、耳道内における音声信号及び耳道内に漏れた残留雑音信号を取得するための内部マイク404と、環境雑音信号を取得するための外部マイク405とを備える。
図4を参照して、内部マイク404は、ヘッドセットが着用される時に耳栓203の耳道内に入ることができる部分に位置し、外部マイク405は、ヘッドセットが着用される時に耳栓203の耳道外にある部分に位置する。
なお、本発明の実施例によるヘッドセットは、内部マイク404により取得された信号及び外部マイク405により取得された信号を受信し、外部マイク405により取得された信号を参照信号として、内部マイク404により取得された信号における雑音成分を除去して音声成分を留めた後、ヘッドセットの送話側信号を得るための音声信号処理手段を更に備える。
図4には、音声信号処理手段が示されていない。当該音声信号処理手段は、内部マイク404及び外部マイク405にそれぞれ接続され、その位置が、実際の状況に応じてヘッドセットの合理的な部分に配置してもよく、これは、本発明の実施例の実現に影響しない。
【0030】
人が発話している時に、音声信号は、耳管を介して耳道に伝達され、且つ、音を出す時に、耳道内の筋肉が振動すると同時に空気振動を生じさせ、即ち音声を生成する。耳道口が開放した場合、耳道内の気体の振動(源)は、大きな空間(大きな負荷)に向かって放射し、気体の振幅が小さくて、音声エネルギーが弱いのに対して、耳道口が遮られた場合、耳道内の気体の振動(源)は、耳道内のごく小さな空間(小さな負荷)にしか作用しなく、気体の振幅が大きくて、音声エネルギーが強く、そして、外部雑音は、受動的に防音されているため、耳道に伝達されたエネルギーが低減され、SNが大幅に向上する。従って、
図4を参照して、内部マイク404は、耳内の音声信号及び漏れてきた環境雑音信号を取得し、外部マイク405は、環境雑音信号及び空気を介して伝播された音声信号を取得する。環境雑音が、耳栓の遮断及び外部接続キャビティの分流を通して耳道に入る時、既に大幅に減衰されたため、内部マイク404により取得された音声信号は、既に比較的良好なSN比を有する。外部マイク405により取得された比較的純粋な外部雑音信号は、良好な外部雑音参照信号として、次の電子レベルでのノイズ低減に提供することができる。空間的に、内部マイク404と外部マイク405との距離が相対的に近いため、取得された外部雑音信号が良好な相関性を有することが保証され、これによって、電子レベルで雑音信号が更に低減できることが確保される。
【0031】
音響学レベルでの音声強調を経てから、更に、電子レベルで音響学信号処理の技術を用いて音声信号のSN比を更に向上させるとともに、音声信号の自然度及び明瞭度を改善する。具体的には、
図5を参照する。
【0032】
図5は、本発明の実施例によるヘッドセットの音声強調処理部分の構造ブロック図である。
図5に示すように、当該ヘッドセットは、内部マイク404、外部マイク405及び音声信号処理手段506を含む。
【0033】
音声信号処理手段506は、具体的には、
内部マイク404により取得された信号s1及び外部マイク405により取得された信号s2を受信し、低周波数範囲内でのs2とs1との統計的エネルギー比によって、制御パラメータαを特定するとともに、制御パラメータαを出力するための音声検出モジュール5061と、
フィードバックされた出力信号yを重みとして参照信号を更新し、音声検出モジュール5061により出力された制御パラメータαを重み更新速度の制御パラメータとして、受信された外部マイク405の信号s2に対して適応フィルタリング処理を行い、適応フィルタ出力信号s3を出力するための適応フィルタ5062と、
受信された内部マイク404により取得された信号s1から、受信された前記適応フィルタ出力信号s3を差し引いて、出力信号yを得るためのノイズ低減モジュール5063と、
出力信号yに対してシングルチャネル音声処理及び周波数スペクトル拡散処理を行うための後処理モジュール5064と、を含む。
後処理モジュールの出力信号は、ヘッドセットの送話側信号になる。
【0034】
音声検出モジュール5061:
音声信号が存在する場合、内部マイク404により、耳道内で多くの音声信号が取得されるが、ヘッドセットの装着者が大声で話す場合、空気を介して伝播されて外部マイク405により取得された音声信号も無視できない。もし外部マイク405の信号を直接に参照信号として適応フィルタを更新すると、音声に損傷をもたらす可能性がある。そのため、本発明においては、音声検出モジュール5061を追加し、音声検出モジュール5061によって制御パラメータαを出力する。制御パラメータαは、主に適応フィルタの収束ステップサイズを重み付けするために用いられる。制御パラメータαの値は、主に低周波数範囲内での外部マイクと内部マイクとの統計的エネルギー比を計算することによって特定され、αの数値範囲は、0≦α≦1である。
【0035】
適応フィルタ5062及びノイズ低減モジュール5063:
適応フィルタ5062は、次数がP(P≧1)であるFIRフィルタであり、フィルタの重みは、
であり、本発明の一つの実施形態においては、P=64となる。適応フィルタ5062の入力信号は、s2(n)であり、そのうち、nが離散時間番号であり、適応フィルタリングの出力信号は、s3(n)であり、s3(n)とs1(n)との間で減算処理を行って、相殺後の信号y(n)を得て、y(n)が適応フィルタにフィードバックされてフィルタの重みの更新を行い、その更新速度がパラメータαにより制御される。α=1の場合、即ちs1(n)、s2(n)がすべて雑音成分である場合、適応フィルタ5062は、雑音の外部マイク405から内部マイク404までの伝達関数H_noiseに迅速に収束することにより、s3(n)をs1(n)と同じになるようにして、相殺後のy(n)が小さくなり、これにより、雑音が除去される。α=0の場合、即ちs1(n)、s2(n)がすべて目標音声成分である場合、適応フィルタ5062が更新を停止することにより、適応フィルタ5062は、音声の外部マイク405から内部マイク404までの伝達関数H_speechに収束することがなく、s3(n)がs1(n)と異なるため、減算後の音声成分が相殺されることがなく、出力y(n)に音声成分が残る。0<α<1の場合、即ち、マイクにより採集された信号に音声成分と雑音成分との両方が存在する場合、このとき、雑音を除去するとともに音声成分を留めることを保証するために、音声成分と雑音成分の量によって、適応フィルタ5062の更新速度が制御される。雑音の外部マイク405から内部マイク404までの伝達関数H_noiseが、音声の外部マイク405から内部マイク404までの伝達関数H_speechと類似性を持つので、たとえ適応フィルタ5062がH_noiseに収束したとしても、依然として音声にある程度の損傷をもたらすことになるため、αを用いて適応フィルタ5062の重みを制約する。本実施例においてなされた制約は、

であり、α=1の場合、即ち、採集された信号がすべて雑音成分である場合、適応フィルタ5062に制約がされなく、雑音が完全に除去されることになり、α=0の場合、即ち、採集された信号がすべて音声成分である場合、適応フィルタ5062が完全に制約され、音声が完全に留まれることになり、0<α<1の場合、即ち、マイクに採集された信号に音声成分と雑音成分との両方が存在する場合、適応フィルタ5062が部分的に制約され、雑音が一部除去され、音声が完全に留まれることになる。このようにして、ノイズを低減するとともに音声を良好に保護するという効果を達成する。
【0036】
後処理モジュール5064:
後処理モジュール5064は、二つの部分を含み、まずは、ノイズ低減モジュール5063から出力された信号yに対してシングルチャネル音声強調処理を行い、音声信号のSN比を更に向上させ、そして、シングルチャネル処理された信号に対して周波数スペクトル拡散を行い、出力音声信号の明瞭度及び了解度を改善する。シングルチャネル音声強調及び周波数スペクトル拡散は、従来の成熟した方案を用いることができるため、ここで詳述しない。
【0037】
上記から分かるように、本発明の実施例によるヘッドセットは、音声強調の面において、内部マイクを用いて耳内の音声信号を取得し、高いSN比を有する音声信号を獲得し、音響学レベルの音声強調を実現するとともに、外部マイクを用いて環境雑音を取得し、電子レベルの音声強調に好適な要件を提供しており、そして、電子レベルにおいて、内部マイク信号を主とし、外部マイク信号を従として、適応フィルタリング方式によって背景雑音を更に除去している。このような方案は、従来の、接話型マイクを用いて音声強調を行う方法と比べると、極限雑音の場合においても、依然として十分なSN比を有するオリジナル信号を提供して、音声信号の検出及び判断の基礎として用いることができるため、送話側音声の明瞭度及び了解度が保証されている。
【0038】
説明すべきことは、本実施例において、音分流技術を採用して、外部接続キャビティによって耳道口に到達した大部分の雑音を分流したため、耳栓を通過して音分流を経てから耳道に入る環境雑音が、既に大いに減衰され、内部マイク404により取得された音声信号が、既に高いSN比を有している。
【0039】
3.立体環境監視
図6は、
図5に立体環境監視機能をさらに追加したヘッドセットの構造ブロック図である。
図6及び
図4を参照して、本実施例によるヘッドセットは、
図5に示すヘッドセットの構造を含み、それに加えて、本実施例によるヘッドセットは、他方の耳側の外部マイク405’と、音響動的圧縮手段601と、受話器602とを更に含み、
外部マイク405と外部マイク405’とは、それぞれ両耳側に位置し、外部マイク405と内部マイク404とが同じ耳側に位置し、
音響動的圧縮手段601は、外部マイク405により取得された信号s2及び外部マイク405’により取得された信号s3を受信し、音響動的圧縮技術を用いて、二つの外部マイクにより取得された信号s2及びs3の全体的な音圧範囲を人の耳による受取りに適する範囲内に圧縮するために用いられ、
受話器602は、音響動的圧縮手段601により処理された信号s2’及びs3’を、ヘッドセットにより受信された受話側信号Lとともに、装着者の耳の中で再生する。
【0040】
本実施例において、内部マイクの個数は、1つであり、左耳側又は右耳側に位置し、外部マイクの個数は、2つであり、それぞれ左耳側と右耳側に位置する。音声信号処理手段は、同じ耳側にある内部マイクと外部マイクにより取得された信号を受信する。音響動的圧縮手段は、2つの外部マイクにより取得された信号に対して音圧レベルの削減及び補償処理を行う。
【0041】
本発明の実施例において、立体環境監視の面で、外部マイク405と外部マイク405’によって環境雑音を取得して音響動的圧縮手段601に伝達し、音響動的圧縮手段601において、まず時間領域又は周波数領域で信号のエネルギーの大きさに対して推定を行い、その後、エネルギーの大きさに応じて利得を調整する。具体的に、エネルギーの大きな信号に対して小さな(1より小さい)利得を与え、エネルギーの小さな信号に対して大きな(1より大きい)利得を与える。このように変調すると、環境においての人の聴力にダメージがある強雑音を低減し、音圧レベルが低い音響を適度に増大し、これによって、装着者がその有用な情報を割り出すことができるようになる。環境音響情報が損なわれない前提で、全体音圧動的範囲が人の耳に受取り得る範囲内に圧縮される。例えば、環境雑音音圧範囲が20dB〜160dBである場合、処理後、音圧範囲を40dB〜90dBに圧縮することができる。
【0042】
これで分かるように、本実施例において、ヘッドセットの両側にある外部マイクにより取得された信号に対して音圧レベルの削減及び補償処理を行った後、その音圧範囲を人の耳による受取りに適する範囲内に圧縮してから、当該処理された信号を、ヘッドセットにより受信された受話側信号とともに、ヘッドセットの受話器を介して再生する。
【0043】
図7は、本発明の実施例による音響動的圧縮アルゴリズムのフローチャートである。
図8は、本発明の実施例による音響動的圧縮効果のグラフである。
図7及び
図8を参照して、立体環境監視の面において、外部マイク405によって環境音響を取得して音響動的圧縮手段601に伝達する。音響動的圧縮手段601における処理過程は、
図7に示すように、主に、1.フーリエ変換(FFT)、2.特徴点の音圧の算出、3.特徴点の利得値の決定、4.周波数領域全体での利得配列の差分計算、5.補償後の周波数スペクトルの求め、6.逆フーリエ変換(IFFT)等のいくつかの部分を含む。
図8を参照して、処理後の結果としては、雑音領域ASZ(ambient sound zone)を人の耳の聴力領域AZ(audibility zone)に投影することになる。音響動的圧縮手段601により処理された信号は、ヘッドセットにより受信された音声信号とともに、受話器602によって装着者の耳の中で再生される。このように、装着者の聴力にダメージを与えることもないし、装着者に周りの環境の音響を監視させることもできる。
【0044】
本発明の実施例において、音声信号処理手段506と音響動的圧縮手段601とは、一つのDSPチップに集積されている。本発明の実施例によるヘッドセットは、前記DSPチップに給電するための乾電池を更に含む。乾電池によって給電されるDSPチップは、消費電力が低くて、強い耐久性を保証することができる。
【0045】
以上をまとめて、本発明の実施例において、音分流技術、インイヤーマイク技術及び音響動的圧縮技術を十分に組み合わせて、強雑音環境において有効な聴力保護機能、明瞭な音声通話機能及び立体環境監視機能が提供できる多機能ヘッドセットを提供した。本実施例によるヘッドセットは、従来のヘッドセットと比べると、以下の利点を有する。
【0046】
(1)聴力保護の面において、特別な音分流技術によって、全帯域で30dB以上のノイズ低減量を実現し、また、構造が複雑でエネルギー消費が高い能動的なノイズ低減技術を用いず、受動的なノイズ低減技術を用いることにより、ヘッドセットの電力が低減され、ヘッドセットの耐久性が大いに向上する。
(2)音声通話の面において、インイヤーマイクによって耳内の音声信号を取得し、音声信号処理手段によって背景雑音を更に除去しており、本方法は、接話型マイク又は骨伝導マイクを用いて音声強調を行うという一般的な方法と比べると、たとえ極限雑音の場合においても、依然として十分なSN比を有するオリジナル信号を提供して音声信号の検出及び判断に用いることができる。
(3)環境監視の面において、音響学動的圧縮技術を用いて、先端の音響動的圧縮アルゴリズムによって、環境雑音の強度範囲を人の耳の聴力領域に投影することを実現し、瞬時の極限音圧により人の耳に与えうる損傷が回避されながら、背景雑音も装着者の耳に完全に示される。
【0047】
上述したのは、あくまでも本発明の好ましい実施例であり、本発明の保護範囲を限定するためのものではない。本発明の精神及び原則内になされたあらゆる変更、均等置換、改良等は、いれずれも本発明の保護範囲内に含まれるものとする。