(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770409
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
B01J 29/072 20060101AFI20150806BHJP
B01D 53/34 20060101ALI20150806BHJP
B01J 23/74 20060101ALI20150806BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20150806BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
B01J29/072 AZAB
B01D53/34
B01J23/74 A
F01N3/10 A
F01N3/28 301Q
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2007-284810(P2007-284810)
(22)【出願日】2007年11月1日
(65)【公開番号】特開2009-106913(P2009-106913A)
(43)【公開日】2009年5月21日
【審査請求日】2010年10月25日
【審判番号】不服2014-15390(P2014-15390/J1)
【審判請求日】2014年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 信也
(72)【発明者】
【氏名】川田 吉弘
(72)【発明者】
【氏名】細谷 満
【合議体】
【審判長】
河原 英雄
【審判官】
中澤 登
【審判官】
真々田 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−113401(JP,A)
【文献】
特開2006−57578(JP,A)
【文献】
特開平5−38420(JP,A)
【文献】
特開平5−317649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00-38/74
B01D53/73,53/86-53/90,53/94-53/96
F01N 3/00- 3/02, 3/04- 3/38, 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路(13)に設けられ排ガスが通過可能な多孔質に形成された第1触媒層(11a)と、前記第1触媒層(11a)の排ガス下流側の表面に積層され前記排ガスが通過可能な多孔質に形成された第2触媒層(11b)とを有する選択還元型触媒(11)を備えた排ガス浄化装置であって、
前記第1触媒層(11a)が鉄−ゼオライト触媒からなり150〜400℃の範囲内の排ガス温度で前記排ガスに含まれるNOxの60%以上を低減する触媒活性を示し、
前記第2触媒層(11b)が鉄−アルミナ触媒からなり前記第1触媒層(11a)の触媒活性を示す温度範囲より高い400〜700℃の範囲内の排ガス温度で前記排ガスに含まれるNOxの60%以上を低減する触媒活性を示し、
前記第1及び第2触媒層(11a,11b)の双方により150〜700℃の範囲内の排ガス温度で前記排ガスに含まれるNOxの70%以上を低減する触媒活性を示す
ことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
排気通路(13)に多孔質の隔壁(14b)で仕切られ互いに平行であって前記排気通路(13)の長手方向に延びる複数の貫通孔(14c)を有する担体(14a)が設けられ、第2触媒層(11b)が排ガス上流側の前記隔壁(14b)表面に積層され、第1触媒層(11a)が前記第2触媒層(11b)の表面に積層された請求項1記載の排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれる窒素酸化物を尿素系液体と反応させて低減する選択還元型の触媒を
備えた排ガス浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、NOx及び粒状物を含有する排気流れを処理するのに適した排気処理システムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この排気処理システムでは、酸化用触媒と、酸化用触媒と流体伝達状態でそれの下流に位置しているアンモニア又はアンモニア前駆体を排気流れに定期的に計量して入れる注入器と、注入器と流体伝達状態でそれの下流側に位置する壁流式モノリスとを含む。この壁流式モノリスは多数の縦方向に延びる通路を有し、多数の縦方向に延びる通路は、通路に境界をつけそれを限定している縦方向に延びる壁で形成される。ここで、壁流式モノリスは壁に少なくとも1.3g/立方インチの濃度で染み込んでいるSCR触媒組成物を含み、壁流式モノリスが有する壁間隙率が少なくとも50%で平均孔径が少なくとも5μmである。またSCR触媒組成物は銅及び鉄成分の中の1種以上から選択される卑金属成分及びゼオライトを含み、このゼオライト中のアルミナに対するシリカの比率が少なくとも約10である。このSCR触媒組成物が壁流式モノリスの入口通路及び出口通路にそれぞれ付着された後に乾燥し焼成される。
【0003】
このように構成された排気処理システムでは、SCR触媒組成物がNOx成分の還元に600℃未満の温度で有効に触媒作用を及ぼすことができ、粒状物の煤分が燃焼する温度を低くすることにより濾過器の再生に役立つことができる。また上記SCR触媒組成物はNH
3が大気に放出されないように、O
2といくらか過剰に存在するNH
3とからN
2とH
2Oが生じる反応に触媒作用を及ぼすとともに、650℃を超える温度に耐え得るようになっている。ここで、硫酸塩毒に高い耐性を示しかつSCR過程及び酸素によるアンモニアの酸化の両方に良好な活性を示しかつ高温、水熱条件及び硫酸塩毒に曝されたときでも良好な活性を保持するゼオライトは、少なくとも約7オングストロームの孔径を示しかつ三次元で相互連結している孔を有するゼオライトである。直径が少なくとも7オングストロームである孔が三次元で相互連結していると、硫酸塩分子がゼオライト構造全体にわたって良好に移動し得るので、硫酸塩分子が触媒から放出され、これによって反応体であるNOx及びNH
3分子と反応体であるNH
3及びO
2分子用として利用される吸着部位が多数解放されると考えられる。なお、このような判断基準を満たす特定のゼオライトとしては、USYゼオライト(超安定化Y型ゼオライト)やベータゼオライト(三次元の12員環細孔からなるアルミノシリケート)等が挙げられる。
【特許文献1】特表2007−501353号公報(請求項1、5、6及び12、段落[0035]、[0036]及び[0038])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の特許文献1に示された排気処理システムでは、650℃を超える温度に耐え得るとしているけれども、650℃を超える高温水熱下での耐熱性は未だ不十分であり、また650℃を超える高温雰囲気下ではNOx成分を十分に還元できない問題点があった。本発明の目的は、排ガス温度が低温から高温にかけて広い温度域で高いNOx低減性能を確保できる、
排ガス浄化装置を提供することにある。本発明の別の目的は、担体に堆積したパティキュレートを燃焼させたときに担体内部が高温水熱の雰囲気になっても、高温時におけるNOx低減性能を確保できる、
排ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、
図1に示すように、排気通路13に設けられ排ガスが通過可能な多孔質に形成された第1触媒層11aと、第1触媒層11aの排ガス下流側の表面に積層され排ガスが通過可能な多孔質に形成された第2触媒層11bとを有する選択還元型触媒11を備えた排ガス浄化装置であって、第1触媒層11aが鉄−ゼオライト触媒からなり150〜400℃の範囲内の排ガス温度で排ガスに含まれるNOxの60%以上を低減する触媒活性を示し、第2触媒層11bが鉄−アルミ
ナからなる群より選ばれた1種又は2種以上の単体触媒、混合触媒又は複合酸化物触媒からなり第1触媒層11aの触媒活性を示す温度範囲より高い400〜700℃の範囲内の排ガス温度で排ガスに含まれるNOxの60%以上を低減する触媒活性を示し、第1及び第2触媒層11a,11bの双方により150〜700℃の範囲内の排ガス温度で排ガスに含まれるNOxの70%以上を低減する触媒活性を示すことを特徴とする。
【0006】
この請求項1に記載された
排ガス浄化装置では、排ガス温度が150〜400℃の低温時に、排気通路13に尿素系液体16bを供給すると、この尿素系液体16bが加水分解してアンモニアが生成され、排ガスが第1触媒層11aにアンモニアとともに流入すると、アンモニアが還元剤として機能し、排ガス中のNO、NO
2が第1触媒層11aにより高効率で還元されてN
2やH
2Oに変化し、NOxの大気への排出量を低減できる。このとき余剰のアンモニア(NH
3)がNOxと反応することなく第1触媒層11aにトラップされる。一方、排ガス温度が400℃以上の高温になると、上記第1触媒層11aにトラップされた余剰のアンモニアが第1触媒層11aから離脱して、上記排気通路13に供給された尿素系液体16bの加水分解によるアンモニアとともに第2触媒層11bに流入する。この第2触媒層11bが高温時に高い触媒活性を示すには、比較的多くのアンモニアを必要とするけれども、上記のように比較的多くのアンモニアが第2触媒層11bに流入するため、排ガス中のNO、NO
2は第2触媒層11bにより高効率で還元されてN
2やH
2Oに変化し、NOxの大気への排出量を低減できる。この結果、第1及び第2触媒層11a,11bの双方により150〜700℃と広い温度範囲にわたって排ガスに含まれるNOxを高効率で低減できる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に
図1に示すように、排気通路13に多孔質の隔壁14bで仕切られ互いに平行であって排気通路13の長手方向に延びる複数の貫通孔14cを有する担体14aが設けられ、第2触媒層11bが排ガス上流側の隔壁14b表面に積層され、第1触媒層11aが第2触媒層11bの表面に積層されることを特徴とする。この請求項2に記載された選択還元型触媒では、上記と同様に低温時に鉄−ゼオライト触媒からなる第1触媒層11aにより排ガス中のNOxが高効率で低減され、高温時に鉄−アルミナ触
媒からなる第2触媒層11bにより排ガス中のNOxが高効率で低減される。また担体14aに排ガス中のパティキュレートが所定量堆積したとき、この担体14a上でのパティキュレートの燃焼時に担体14aが高温で水蒸気の多い雰囲気となり、高温水熱下で鉄−ゼオライト触媒が多少劣化するけれども、高温水熱下で劣化し難くかつ高温での性能が高い鉄−アルミナ触
媒からなる第2触媒層11bが介装されているので、高温域での性能は殆ど低下しない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鉄−ゼオライト触媒からなる第1触媒層が低温で排ガスに含まれるNOxの60%以上を低減する触媒活性を示し、第1触媒層の排ガス下流側の表面に積層され鉄−アルミナ触
媒からなる第2触媒層が第1触媒層の触媒活性を示す温度範囲より高い温度で排ガスに含まれるNOxの60%以上を低減する触媒活性を示し、更に第1及び第2触媒層の双方により150〜700℃の範囲内の排ガス温度で排ガスに含まれるNOxの70%以上を低減する触媒活性を示すので、排ガスの低温時に、排ガスが第1触媒層にアンモニアとともに流入すると、アンモニアが還元剤として機能し、排ガス中のNOxが第1触媒層により高効率で還元されてNOxの大気への排出量を低減できるとともに、排ガスが高温になると、第1触媒層にトラップされた余剰のアンモニアが第1触媒層から離脱して、上記排気通路に供給された尿素系液体の加水分解によるアンモニアとともに第2触媒層に流入するので、排ガス中のNOxが第2触媒層により高効率で還元されてNOxの大気への排出量を低減できる。この結果、排ガス温度が150〜700℃と低温から高温にかけて広い温度域で高いNOx低減性能を確保できる。
【0011】
また第2触媒層を排ガス上流側の隔壁表面に積層し、第1触媒層を第2触媒層の表面に積層すれば、上記と同様に排ガス温度が低温から高温にかけて広い温度域で高いNOx低減性能を確保できるとともに、担体に堆積したパティキュレートを燃焼させたときに担体内部が高温水熱の雰囲気になって、鉄−ゼオライト触媒からなる第1触媒層が多少劣化しても、高温水熱下で劣化し難くかつ高温での性能が高い鉄−アルミナ触
媒からなる第2触媒層が介装されているので、高温域での性能は殆ど低下しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、選択還元型触媒11はディーゼルエンジン12の排気管13aの第1触媒コンバータ21に収容されたフィルタ14の担体14aの隔壁14bに積層される。具体的には、選択還元型触媒11は、排ガスが通過可能な多孔質に形成された第1触媒層11aと、第1触媒層11aの排ガス下流側の表面に積層され排ガスが通過可能な多孔質に形成された第2触媒層11bとを備える(
図1)。この実施の形態では、第1触媒層11aは鉄−ゼオライト触媒からなり、第2触媒層11bは鉄−アルミナ触媒からなる。第1触媒層11aを構成する鉄−ゼオライト触媒はNa型のZSM−5ゼオライト或いはベータゼオライトのNaイオンをFeイオンとイオン交換した触媒である。この第1触媒層11aは150〜400℃の範囲内の排ガス温度で排ガスに含まれるNOxの60%以上を低減する触媒活性を示す。一方、第2触媒層11bを構成する鉄−アルミナ触媒は、アルミナ表面の水酸基に鉄が置き換わった触媒か、或いはアルミナ表面の所定のサイトに鉄(鉄の酸化物を含む)が付いた状態で載った触媒である。この第2触媒層11bは、第1触媒層11aの触媒活性を示す温度範囲より高い400〜700℃の範囲内の排ガス温度で排ガスに含まれるNOxの60%以上を低減する触媒活性を示
す。
【0014】
一方、上記排気管13aは、ディーゼルエンジン12の排気ポートに排気マニホルド13bを介して接続され、排気マニホルド13bと排気管13aにより排気通路13が構成される(
図1)。この排気管13aには排気管より大径の上記第1触媒コンバータ21が設けられ、この第1触媒コンバータ21には上記選択還元型触媒11が積層されたフィルタ14が収容される。フィルタ14は、多孔質の隔壁14bで仕切られ互いに平行であって排気管13aの長手方向に延びる複数の貫通孔14cを有する担体14aと、これらの貫通孔14cの相隣接する入口部14dと出口部14eを交互に封止する封止部材14fとを備える。この担体14aはコージェライト、炭化ケイ素のようなセラミックにより排ガスが通過可能な多孔質体からなる。上記第2触媒層11bは排ガス上流側の隔壁14b表面に積層される。この第2触媒層11bは、例えば硝酸鉄の水溶液にアルミナ粉末を分散することによりスラリーを調製し、このスラリーに担体14aの排ガス入口側に面する隔壁14b表面を浸漬し、更に担体14aから余分なスラリーを除去して通気性を確保した後に、乾燥・焼成することにより形成される。また第1触媒層11aは第2触媒層11bの表面に積層される。この第1触媒層11aは、例えばNa型ゼオライト粉末(Na−ZSM5)を硝酸鉄の水溶液に浸漬することによりスラリーを調製し、このスラリーに上記担体14aの排ガス入口側に面する隔壁14b表面を浸漬し、更に担体14aから余分なスラリーを除去して通気性を確保した後に、乾燥・焼成することにより形成される。
【0015】
上記フィルタ14より排ガス上流側の排気管13aには、液体供給手段16の液体噴射ノズル16aが挿入される。液体供給手段16は、選択還元型触媒11に向って尿素系液体16bを噴射する上記液体噴射ノズル16aと、尿素系液体16bを貯留する液体タンク16cと、液体タンク16c及び液体噴射ノズル16aを連通接続する液体供給管16dと、この液体供給管16dに設けられ液体噴射ノズル16aへの尿素系液体16bの流量を調整する液体調整弁16eと、液体調整弁16e及び液体タンク16c間の液体供給管16dに設けられ液体タンク16c内の尿素系液体16bを液体噴射ノズル16aに圧送する液体ポンプ16fとを有する。上記尿素系液体16bとしては、尿素水溶液を用いることが好ましいが、アンモニア水やアンモニア誘導物質等を用いてもよい。また液体調整弁16eは液体供給管16dの開度を変更することにより、液体噴射ノズル16aへの尿素系液体16bの流量を調整可能に構成される。
【0016】
一方、液体噴射ノズル16aより排ガス上流側の排気管13aには、第2触媒コンバータ22が設けられ、この第2触媒コンバータ22には酸化触媒17が収容される。この酸化触媒17は、例えば排気管13aの長手方向に延びる格子状(ハニカム状)の通路が形成されたモノリス担体(材質:コージェライト)の担体表面にコーティングされた白金−ゼオライト触媒、白金−アルミナ触媒等である。また第2触媒コンバータ22のフィルタ14より排ガス下流側にはアンモニア酸化触媒18が収容される。このアンモニア酸化触媒18は、アルミナ、ゼオライト等の担体に、貴金属元素、ベースメタル等を担持した触媒である。
【0017】
フィルタ14より排ガス上流側であって液体噴射ノズル16aより排ガス下流側の排気管13aには排ガスの温度を検出する温度センサ23が挿入され、エンジン12のクランク軸にはこの軸の回転速度を検出する回転センサ24が設けられ、更にアクセルペダル(図示せず)にはこのペダルの踏込み量を検出することによりエンジン12の負荷を検出する負荷センサ26が設けられる。上記温度センサ23、回転センサ24及び負荷センサ26の各検出出力はマイクロコンピュータからなるコントローラ27の制御入力に接続され、コントローラ27の制御出力は液体調整弁16e及び液体ポンプ16fにそれぞれ接続される。上記回転センサ24及び負荷センサ26により運転状況検出手段が構成される。またコントローラ27にはメモリが設けられ、このメモリには、排ガス温度、エンジン回転及びエンジン負荷に応じた液体調整弁16eの開度と、液体ポンプ16fの作動又は不作動とが予めマップとして記憶される。そして、コントローラ27は温度センサ23、回転センサ24及び負荷センサ26の各検出出力に基づいてエンジン12の運転状況を把握し、その運転状況からメモリに記憶された条件に従って液体調整弁16e及び液体ポンプ16fを制御し、その運転状況に応じて、所定の時期に最適な量の尿素系液体16bを液体噴射ノズル16aから噴射するように構成される。
【0018】
このように構成された排ガス浄化装置及び選択還元型触媒11の動作を説明する。エンジン12からの排ガスは排気マニホルド13b及び排気管13aを通って酸化触媒17に流入する。排ガス中の一部の一酸化窒素(NO)は酸化触媒17で二酸化窒素(NO
2)に酸化されるので、NOとNO
2との構成比率が改善されて選択還元型触媒11に流入する。排ガス温度が150〜400℃の低温時であることを温度センサ23が検出すると、コントローラ27は温度センサ23の検出出力、回転センサ24及び負荷センサ26の各検出出力に基づいて液体ポンプ16f及び液体調整弁16eを制御して、最適な量の尿素系液体16bを排気管13aに供給する。この排気管13aに供給された尿素系液体16bは加水分解してアンモニアが生成され、排ガスが第1触媒層11aにアンモニアとともに流入する。このときアンモニアが還元剤として機能し、酸化触媒17により構成比率が改善された排ガス中のNO及びNO
2が第1触媒層11aにより高効率で還元されてN
2やH
2Oに変化する。この結果、NOxの大気への排出量を低減できる。なお、余剰のアンモニア(NH
3)はNOxと反応することなく第1触媒層11aにトラップされる。
【0019】
一方、排ガス温度が400℃以上の高温になると、上記第1触媒層11aにトラップされた余剰のアンモニアが第1触媒層11aから離脱する。また排ガス温度が400℃以上の高温であることを温度センサ23が検出すると、コントローラ27は温度センサ23の検出出力、回転センサ24及び負荷センサ26の各検出出力に基づいて液体ポンプ16f及び液体調整弁16eを制御して、最適な量の尿素系液体16bを排気管13aに供給する。この排気管13aに供給された尿素系液体16bは加水分解してアンモニアが生成され、排ガスがこの加水分解したアンモニアと上記第1触媒層11aから離脱したアンモニアとともに第2触媒層11bに流入する。この第2触媒層11bが高温時に高い触媒活性を示すには、比較的多くのアンモニアを必要とするけれども、上記のように比較的多くのアンモニアが第2触媒層11bに流入するため、酸化触媒17により構成比率が改善された排ガス中のNO及びNO
2は第2触媒層11bにより高効率で還元されてN
2やH
2Oに変化する。この結果、NOxの大気への排出量を低減できる。従って、第1及び第2触媒層11a,11bの双方により150〜700℃の範囲内の排ガス温度で排ガスに含まれるNOxの70%以上を低減する触媒活性を示すので、排ガス温度が150〜700℃と低温から高温にかけて広い温度域で高いNOx低減性能を確保できる。
【0020】
また選択還元型触媒11を通過した余剰のアンモニアはアンモニア酸化触媒18により大気に放出しても無害な窒素に酸化される。更にフィルタ14の担体14aに排ガス中のパティキュレートが所定量堆積したとき、この担体14aにポスト噴射又はアフタ噴射等により燃料を供給してパティキュレートを燃焼させる。この燃焼時に燃料に含まれている水素が水蒸気になって担体14a内部が高温で水蒸気の多い雰囲気となる。しかし、この高温水熱下で鉄−ゼオライト触媒が多少劣化するけれども、高温水熱下で劣化し難くかつ高温で性能が高い鉄−アルミナ触
媒からなる第2触媒層11bが介装されている。従って、高温域での性能は殆ど低下しない。
【実施例】
【0023】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1>
図1及び
図2に示すように、ディーゼルエンジン12の排気管13aに、排ガス上流側から順に酸化触媒17と、選択還元型触媒11を積層したフィルタ14と、アンモニア酸化触媒18とを設けた。また選択還元型触媒11の第2触媒層11bをフィルタ14の排ガス上流側の隔壁14b表面に積層し、第1触媒層11aを第2触媒層11bの表面に積層した。更に酸化触媒17と選択還元型触媒11との間の排気管13aには尿素系液体16bを噴射する液体噴射ノズル16aを設けた。なお、酸化触媒17はアルミナに白金を担持して形成した。また、フィルタ14の担体14aをコージェライトにより多孔質に形成した。また選択還元型触媒11の第1触媒層11aを鉄−ゼオライト触媒により形成し、第2触媒層11bを鉄−アルミナ触媒により形成した。更にアンモニア酸化触媒18はアルミナに白金を担持して形成した。この排ガス浄化装置を実施例1とした。
【0024】
<比較例1>
鉄−アルミナ触媒からなる第2触媒層を用いずに、鉄−ゼオライト触媒からなる第1触媒層のみをフィルタの排ガス上流側の隔壁表面に積層したこと以外は、実施例1と同様に構成した。この排ガス浄化装置を比較例1とした。
<比較例2>
鉄−ゼオライト触媒からなる第1触媒層を用いずに、鉄−アルミナ触媒からなる第2触媒層のみをフィルタの排ガス上流側の隔壁表面に積層したこと以外は、実施例1と同様に構成した。この排ガス浄化装置を比較例1とした。
【0025】
<比較試験及び評価>
実施例1と比較例1及び2の排ガス浄化装置によるNOx低減率を、排ガス温度を変化させてそれぞれ測定した。その結果を
図3に示す。
図3から明らかなように、比較例1では、排ガス温度が200〜350℃でNOx低減率が75%と比較的高い値を示したが、排ガス温度が500℃以上ではNOx低減率が低く、比較例2では、排ガス温度が400℃以上でNOx低減率が65%前後と比較的高い値を示したが、排ガス温度が300℃以下ではNOx低減率が低かった。これらに対し、実施例1では、排ガス温度が150〜700℃にわたってNOx低減率が70%以上と高効率にNOxを低減できることが分った。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明第1実施形態の
排ガス浄化装置の選択還元型触媒を示す断面構成図である。
【
図2】その触媒を含む排ガス浄化装置の構成図である。
【
図3】実施例1と比較例1及び2の触媒入口温度の変化に対するNOx低減率の変化を示す図である。
【0027】
11 選択還元型触媒
11a 第1触媒層
11b 第2触媒層
13 排気通路
14a 担体
14b 隔壁
14c 貫通孔