(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記TLR-4リガンドが、リピドAの非毒性誘導体、リピドAの合成誘導体、MDP及びRSV Fプロテインから成るリストより選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
前記流行性インフルエンザウイルス株が、H5N1、H9N2、H7N7、H2N2及びH1N1から成るリストより選択される、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
少なくとも2種のインフルエンザウイルス株が、H5N1、H9N2、H7N7、H2N2及びH1N1から成るリストより選択される、請求項21に記載の免疫原性組成物。
ヒト高齢者に使用するための、大流行状況のためのインフルエンザ免疫原性組成物の製造方法であって、少なくとも2種のインフルエンザウイルス株由来のインフルエンザウイルス抗原又はその抗原性調製物を水中油型エマルジョンアジュバントと混合することを含み、ここで前記少なくとも2種のインフルエンザウイルス株のうちの少なくとも1種は大流行に関与しているか又は大流行に関与する潜在力を有し、前記水中油型エマルジョンアジュバントがスクアレン、α-トコフェロール及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンを含んでなる、前記方法。
請求項1〜27のいずれか1項に記載の免疫原性組成物により以前にワクチン接種されたヒト高齢者の再ワクチン接種用の免疫原性組成物の製造における、インフルエンザウイルス抗原又はその抗原性調製物及び水中油型エマルジョンアジュバントの使用であって、前記水中油型エマルジョンアジュバントがスクアレン、α-トコフェロール及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンを含んでなる、前記使用。
前記水中油型エマルジョンアジュバントが請求項1〜13のいずれか1項に記載のものであり、前記TLR-4リガンドが請求項14〜19のいずれか1項に記載のものである、請求項42に記載の使用。
前記再ワクチン接種用の免疫原性組成物が、第1ワクチン接種に使用されたスプリットインフルエンザウイルス又はそのスプリットウイルス抗原性調製物と共通CD4 T細胞エピトープを共有するインフルエンザウイルス抗原又はその抗原性調製物を含有する、請求項40〜43のいずれか1項に記載の使用。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明者らは、インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物と、代謝可能なオイル、α-トコフェロールのようなステロール、および乳化剤を含んでなる水中油型エマルジョンアジュバントとを共に含むインフルエンザ製剤が、アジュバント無添加のウイルスまたはその抗原性調製物を用いて得られた応答と比較して、ヒトにおける前記抗原または抗原性組成物に対するCD4 T細胞免疫応答および/またはB細胞記憶応答を改善することができることを見出した。本明細書に定義する水中油型エマルジョンアジュバントを用いてアジュバント添加された上記製剤は、MHCクラスII分子によって提示されたインフルエンザエピトープを検出できる抗インフルエンザCD4-T細胞応答を誘発するために都合よく使用される。本出願人は今回、相同およびドリフトインフルエンザ株に対する応答性を(ワクチン接種および感染により)増大させるためには、細胞仲介性免疫系を標的にすることが有効であることを見出した。
【0035】
本発明による、アジュバントが添加されたインフルエンザ組成物は、いくつかの利点を有する。すなわち、
1)改善された免疫原性:この組成物は、高齢者(50歳超、通常65歳超)における弱い免疫応答を若年成人において認められるレベル(抗体および/またはT細胞応答)にまで修復するのを可能にする、
2)改善された交差保護プロファイル:変異(ドリフト)インフルエンザ株に対する交差保護の増大、
3)この組成物は、類似の応答に使用される抗原用量の低減を可能にし、したがって緊急の場合に(例えば世界的流行)生産力の増大を保証する。
【0036】
本発明に用いる組成物は、再ワクチン接種後にインフルエンザに対してよりよい血清保護を提供することができ、これは保護のインフルエンザ関連基準(influenza correlates)を満たすヒト被験体の数により評価されたとおりである。さらに、本発明に使用する組成物はまた、アジュバント無添加組成物と比較して、ヒト被験体の第1ワクチン接種後のより高い記憶B細胞応答、および再ワクチン接種後のより高い体液性応答という傾向を誘導をすることができた。
【0037】
本発明者らは、特許請求の範囲に記載のアジュバント添加組成物が、アジュバント無添加組成物で得られた場合よりも多くの個体において、ワクチン内に存在する3種の株すべてに対する抗体を保護レベルで誘発するだけではなく、維持することができることも実証した(例えば表43参照)。
【0038】
したがって、さらに別の実施形態において、請求される組成物は、インフルエンザ関連疾患に対する持続免疫応答を確実にすることが可能である。詳細には、持続とは、ワクチン接種から少なくとも3ヶ月後、好ましくは少なくとも6ヶ月後に規定された基準を満たすことが可能な、HI抗体免疫応答を意味する。特に、請求される組成物は、少なくとも3ヶ月月後に、少なくとも1種のインフルエンザ株に関して、好ましくはワクチン内に存在するすべての株に関して、個体の>70%、好適には個体の>80%、または好適には個体の>90%という保護レベルの抗体を誘導できる。具体的な態様において、ワクチン組成物中に存在する少なくとも1種、好適には2種、またはすべての株に対して、>90%という保護レベルの抗体が、ワクチン接種後少なくとも6ヶ月で得られる。
【0039】
インフルエンザウイルス株および抗原
本発明に従って使用するためのインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物は、スプリットインフルエンザウイルスまたはそのスプリットウイルス抗原性調製物であってよい。代替の実施形態において、インフルエンザ調製物は、別の種類の不活化インフルエンザ抗原、例えば、不活化全ウイルスもしくは精製されたHAおよびNA(サブユニットワクチン)、またはインフルエンザビロソームを含有してもよい。さらに別の実施形態において、インフルエンザウイルスは、弱毒生インフルエンザ調製物であってよい。
【0040】
本発明に従って使用するためのスプリットインフルエンザウイルスまたはそのスプリットウイルス抗原性調製物は、好適には、ウイルス粒子が、脂質エンベロープを溶解するための界面活性剤または他の試薬を用いて破壊されている不活化ウイルス調製物である。スプリットウイルスまたはそのスプリットウイルス抗原性調製物は、好適には、可溶化濃度の有機溶剤または界面活性剤を用いて感染性のまたは不活化された全インフルエンザウイルスを断片化し、続いて可溶化剤のすべてまたは大部分およびウイルス性脂質材料の一部または大部分を除去することによって調製される。そのスプリットウイルス抗原性調製物とは、スプリットウイルス成分の抗原特性の大部分を保持しながらスプリットウイルスと比較してある程度精製されていてよいスプリットウイルス調製物を意味する。例えば、卵において製造する場合、スプリットウイルスは卵夾雑タンパク質から除去することができ、または細胞培養において製造する場合、スプリットウイルスは宿主細胞夾雑物から除去することができる。スプリットウイルス抗原性調製物は、2種以上のウイルス株のスプリットウイルス抗原成分を含むことができる。スプリットウイルスを含有するワクチン(「インフルエンザスプリットワクチン」と呼ばれる)またはスプリットウイルス抗原性調製物は通常、残余のマトリックスタンパク質および核タンパク質、および時には脂質、ならびに膜エンベロープタンパク質を含有する。このようなスプリットウイルスワクチンは通常、ウイルス構造タンパク質の大部分または全種類を含有するが、それらは全ウイルスに存在するのと同じ割合であるとは限らない。
【0041】
あるいはまた、インフルエンザウイルスは全ウイルスワクチンという形態であってもよい。これは大流行という状況においてはスプリットウイルスワクチンよりも有利でありうる。なぜならば、全ウイルスワクチンであれば、新しいインフルエンザウイルス株に対するスプリットウイルスワクチンの製造が成功するか否かという不確実性が回避されるからである。一部の株については、スプリットウイルスを製造するために使用される慣用の界面活性剤がウイルスに損傷を与え、それを使用不能にしてしまう可能性がある。スプリットワクチンを製造するために種々の界面活性剤を使用するおよび/または様々な方法を開発する可能性は常に残されているが、これには時間がかかるであろうし、大流行という状況においてはそのような時間はない可能性がある。全ウイルスアプローチは、その確実性の程度が高いだけでなく、スプリットウイルスよりもワクチン製造の生産力が高い。なぜならば適当なスプリットワクチンの調製のために必要な追加の精製工程中に少なからぬ量の抗原が失われるからである。
【0042】
別の実施形態において、インフルエンザウイルス調製物は、精製されたサブユニットインフルエンザワクチンの形態である。サブユニットインフルエンザワクチンは通常、2種の主要なエンベロープタンパク質、HAおよびNAを含有しており、サブユニットインフルエンザワクチンは特に若年のワクチン受容者において通常反応原性が少ないので、全ビリオンワクチンに勝る追加の利点を有し得る。サブユニットワクチンは、組換えにより、または破壊されたウイルス粒子からの精製により作製することができる。
【0043】
別の実施形態において、インフルエンザウイルス調製物は、ビロソームの形態である。ビロソームは、ビロソームのリン脂質二分子膜中に挿入された、標準的な高次構造(authentic conformation)の機能的ウイルスエンベロープ糖タンパク質HAおよびNAを保持する球状の単層小胞である。
【0044】
前記インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物は、卵由来または組織培養由来であってよい。
【0045】
例えば、本発明によるインフルエンザウイルス抗原またはその抗原性調製物は、卵でインフルエンザウイルスを増殖し、収集された尿膜腔液を精製することによる従来の発育鶏卵法に由来するものであってよい。卵は、突然の通知に対しても数多く蓄積することができる。あるいは、上記ウイルス抗原またはその抗原性調製物は、組織培養を使用して、ウイルスを増殖させるか、または組換えインフルエンザウイルス表面抗原を発現させる任意の新たな作製方法に由来するものであってよい。ウイルスを増殖させるための適切な細胞基質には、例えば、MDCK、MDCKのクローン由来の細胞、またはMDCK様細胞などのイヌ腎細胞、ベロ細胞を含めたAGMK細胞などのサル腎細胞、適切なブタ細胞系、またはワクチン用にインフルエンザウイルスを作製するのに適したあらゆる他の種類の哺乳動物細胞が含まれる。適切な細胞基質には、ヒト細胞、例えば、MRC-5細胞も含まれる。適切な細胞基質は細胞系に限られることなく、例えば、ニワトリ胚線維芽細胞などの一次細胞およびトリの細胞系も含まれる。
【0046】
インフルエンザウイルス抗原またはその抗原性調製物は、いくつかの商用の方法の任意のもの、例えば、参照により本明細書に組み込まれる特許第DD 300833号および第DD 211444号に記載されたスプリットインフルエンザ方法によって作製することもできる。従来より、スプリットインフルエンザは、リン酸トリ-n-ブチルまたはTween(商標)と組み合わせたジエチルエーテル(「Tween-エーテル」スプリット剤として知られている)などの溶剤/界面活性剤処理を使用して作製され、この方法は一部の製造施設でいまだ使用されている。現在使用されている他のスプリット剤には、界面活性剤、タンパク質分解酵素、または胆汁酸塩、例えば、参照により本明細書に組み込まれる特許第DD 155875号に記載のデオキシコール酸ナトリウムが含まれる。スプリット剤として使用することができる界面活性剤には、カチオン性界面活性剤、例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、他のイオン性界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸塩、タウロデオキシコール酸塩、または非イオン界面活性剤、例えば、Triton X-100(例えば、Linaら, 2000, Biologicals 28, 95-103に記載の方法におけるもの)およびTriton N-101を含めた上記界面活性剤、または任意の2以上の界面活性剤の組合せが含まれる。
【0047】
スプリットワクチンの調製方法には、様々に組み合わされた、超遠心分離、限外濾過、ゾーン遠心分離、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換)ステップなど、いくつかの様々な濾過および/または他の分離ステップ、および場合によっては、例えば、加熱、ホルムアルデヒドもしくはβ-プロピオラクトン、またはUVによる、スプリット前または後に実施してもよい不活化ステップが含まれ得る。スプリット方法は、バッチ法、連続法、または半連続法として実施することができる。スプリット免疫原性組成物の好ましいスプリットおよび精製方法は、WO02/097072に記載されている。
【0048】
本発明による好ましいスプリットインフルエンザワクチン抗原調製物は、製造課程で残存したある剰余量のTween80および/またはTriton X-100を含むが、これらは、スプリット抗原の調製後に添加してもよいし、またはその濃度を調節してもよい。好ましくはTween80およびTriton X-100が両方とも存在する。ワクチン用量中のこのような非イオン性界面活性剤の終濃度の好ましい範囲は、
Tween80が0.01〜1%、より好ましくは約0.1%(v/v)であり、
Triton X-100が0.001〜0.1%(w/v)、より好ましくは0.005〜0.02%(w/v)である。
【0049】
特定の実施形態において、Tween80の終濃度は、0.045%〜0.09%w/vの範囲にある。別の具体的な実施形態において、抗原は、2倍濃縮混合物として提供され、この混合物は、0.045%〜0.2%(w/v)の範囲にあるTween80濃度を有し、アジュバント添加物(または対照製剤中の緩衝液)との最後の配合時に2倍に希釈しなければならない。
【0050】
別の具体的な実施形態において、Triton X-100の終濃度は、0.005%〜0.017%w/vの範囲にある。別の具体的な実施形態において、抗原は、2倍濃縮混合物として提供され、この混合物は、0.005%〜0.034%(w/v)の範囲にあるTriton X-100濃度を有し、アジュバント添加物(または対照製剤中の緩衝液)との最後の配合時に2倍に希釈しなければならない。
【0051】
インフルエンザ調製物は、低レベルのチオメルサールの存在下で、または好ましくはチオメルサールの不在下で調製されることが好ましい。好ましくは、得られたインフルエンザ調製物は、有機水銀保存剤の不在下で安定であり、特に、この調製物は、剰余のチオメルサールを含有していない。特に、インフルエンザウイルス調製物は、チオメルサールの不在下で、または低レベルのチオメルサールで(通常5μg/ml以下)安定化する赤血球凝集素抗原を含む。具体的には、B型インフルエンザ株の安定化は、コハク酸α-トコフェロール(コハク酸ビタミンE、すなわちVESとも言う)などのα-トコフェロールの誘導体によって実施される。このような調製物およびこれを調製するための方法はWO02/097072で開示されている。
【0052】
好ましい組成物は、適切なインフルエンザシーズンのWHO推奨株から調製された3種の不活化スプリットビリオン抗原を含有する。
【0053】
好ましくは、インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物および水中油型エマルジョンアジュバントは、同一の容器内に含まれる。これは「1バイアルアプローチ」と称される。このバイアルは、事前に充填されるシリンジであることが好ましい。代替の実施形態において、インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物および水中油型エマルジョンアジュバントは、別々の容器またはバイアル内に含まれ、対象への投与直前にまたは投与時に混合される。これは「2バイアルアプローチ」と称される。例として、ワクチンが0.7mlの合計用量の2成分ワクチンである場合、濃縮された抗原(例えば、濃縮された3価不活化スプリットビリオン抗原)は、1つのバイアル(335μl)(抗原容器)内に提供され、事前に充填されたシリンジは、アジュバント(360μl)を含有する(アジュバント容器)。注射時に、濃縮された3価不活化スプリットビリオン抗原を含有するバイアルの内容物は、アジュバントを含有するシリンジを使用してバイアルから吸い出され、続いてシリンジを穏やかに混合する。注射前に、使用済みの針は筋肉注射針と交換され、容量は530μlに調整される。用時調製されるアジュバント添加インフルエンザワクチン候補の1回用量は、530μlに相当する。
【0054】
本発明によると、本明細書に定義した多価免疫原性組成物中の少なくとも1種のインフルエンザ株は、大流行に関与しているまたは大流行に関与する潜在力を有する。かかる株のことを以下の記載において「流行株(pandemic strain)」とも言う。特に、ワクチンが、二価、三価、または四価ワクチンのような多価ワクチンである場合、少なくとも1種の株は大流行に関与しているまたは大流行に関与する潜在力を有する。適当な株はH5N1、H9N2、H7N7、H2N2およびH1N1であるが、これに限らない。
【0055】
前記インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物は、適当に、二価、三価または四価のように多価である。好ましくはインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物は、三価または四価であり、3種の異なるインフルエンザ株由来の抗原を有し、少なくとも1種の株は大流行に関与しているまたは大流行に関与する潜在力を有する。
【0056】
大流行の発生を引き起こす能力をそれに与えるインフルエンザウイルス株の特長は、以下のとおりである。すなわち、その株はそのとき循環している株の赤血球凝集素と比較して新しい赤血球凝集素を含む;ヒト集団で水平伝染することができる;および、ヒトに病原性である。新しい赤血球凝集素とは、H2のように、長期間、おそらく数十年間ヒト集団に顕れなかったものである可能性がある。または、それは以前にヒト集団で循環していなかった赤血球凝集素、例えばトリに存在するH5、H9、H7またはH6である可能性がある。いずれにせよ集団の大多数、または少なくともその大部分、またはそのすべてでさえ、以前にその抗原に遭遇したことがなく、それに対して免疫学的にナイーブである。
【0057】
特定の集団は、一般に、大流行の状況下でインフルエンザに感染するリスクが高い。高齢者、慢性病患者および小児は特に感受性であるが、多くの若く見かけ上健康な人々も危険にさらされる。H2インフルエンザについては、1968年以降生まれの部分集団のリスクが高い。これらの群をできるだけ早く、かつ簡単な方法で効果的に保護することが重要である。
【0058】
リスクの高い別の集団は旅行者である。今日、以前にもましてより多くの人々が旅行をし、新しいウイルスのほとんどが出現する地域である中国および東南アジアは、近年人気がある旅行目的地となっている。旅行パターンのこの変化は、新しいウイルスが数ヶ月または数年ではなく、数週足らずで世界中に到達することを可能にする。
【0059】
したがってこれらの人々の集団のために、大流行の状況または潜在的大流行の状況でインフルエンザからの保護のためのワクチン接種の必要が特にある。適当な株はH5N1、H9N2、H7N7、H2N2およびH1N1であるが、これらに限定されない。
【0060】
場合によって、組成物は3つ以上の結合価、例えば2つの非流行株、さらに1つの流行株を含むことができる。あるいは、組成物は3つの世界的流行株を含むことができる。好ましくは組成物は3種の流行株を含有する。
【0061】
水中油型エマルジョンアジュバント
本発明のアジュバント組成物は、水中油型エマルジョンアジュバントを含有し、好ましくは、前記エマルジョンは、代謝可能なオイルを全体積の0.5%〜20%の量で含み、油滴を有し、その油滴の少なくとも70強度%は直径1μm未満である。
【0062】
任意の水中油型組成物がヒトへの投与に適するには、エマルジョン系の油相が、代謝可能なオイルを含む必要がある。代謝可能なオイルという用語の意味は、当技術分野で周知である。代謝可能とは、「代謝によって変換されうる」と定義することができる(Dorland's Illustrated Medical Dictionary, W.B. Sanders Company, 第25版(1974))。オイルは、受容者にとって毒性がなく、代謝によって変換されうる任意の植物油、魚油、動物油、または合成油であってよい。堅果、種子、および穀粒は、植物油の一般的供給源である。合成油は、本発明の一部分でもあり、これには市販のオイル、例えば、NEOBEE(登録商標)などが含まれる。特に適切な代謝可能なオイルはスクアレンである。スクアレン(2,6,10,15,19,23-ヘキサメチル-2,6,10,14,18,22-テトラコサヘキサエン)は、サメの肝油に大量、またオリーブ油、コムギ胚芽油、コメ糠油、および酵母に少量存在する不飽和油であり、本発明において使用するのが特に好ましいオイルである。スクアレンは、コレステロールの生合成における中間体であるという事実に基づき、代謝可能なオイルである(Merck index, 第10版, entry no.8619)。
【0063】
水中油型エマルジョンそれ自体は、当技術分野で周知であり、アジュバント組成物として有用であることが示唆されている(EP 399843、WO 95/17210)。
【0064】
好適には、代謝可能なオイルは、免疫原性組成物の全体積の0.5%〜20%の量(終濃度)、好ましくは全体積の1.0%〜10%の量、好ましくは全体積の2.0%〜6.0%の量で存在する。
【0065】
特定の実施形態において、代謝可能なオイルは、免疫原性組成物の全体積の約 0.5%、1%、3.5%、または5%の最終量で存在する。別の具体的な実施形態において、代謝可能なオイルは、免疫原性組成物の全体積の0.5%、1%、3.57%、または5%の最終量で存在する。
【0066】
好ましくは、本発明の水中油型エマルジョン系は、サブミクロン範囲の小さな油滴サイズを有する。好適には、この液滴サイズは、直径120〜750nm、より好ましくは120〜600nmのサイズの範囲にある。最も好ましくは、水中油型エマルジョンは、少なくとも70強度%が直径500nm未満であり、より好ましくは少なくとも80強度%が直径300nm未満であり、より好ましくは少なくとも90強度%が直径120〜200nmの範囲にある油滴を含有する。
【0067】
本発明による油滴サイズ、すなわち直径は、強度によって表される。油滴の直径を強度によって測定する方法はいくつかある。強度は、定寸装置の使用によって、好適にはMalvern Zetasizer 4000または好ましくはMalvern Zetasizer 3000HSなどの動的光散乱装置によって測定される。詳細な手順は実施例II.2で示す。第1の可能性は、動的光散乱(PCS-Photon correlation spectroscopy)によりz平均直径ZADを測定することである。この方法でさらに多分散インデックス(PDI)が得られ、ZADおよびPDIはどちらもキュムラントアルゴリズムで計算される。このような値には、粒子屈折率の知見を必要としない。第2の手法は、全粒径分布を他のアルゴリズム(ContinもしくはNNLS、または自動「Malvern」アルゴリズム(定寸装置に備わっているデフォルトアルゴリズム)のいずれか)で測定することにより油滴の直径を計算する手法である。ほとんどの場合、複合組成物の粒子屈折率は不明であるため、強度分布のみが、また必要に応じてこの分布から導き出される強度平均が、考慮される。
【0068】
本発明の水中油型エマルジョンはステロールを含む。ステロールは、当技術分野で周知であり、例えば、コレステロールが周知であり、例えば、Merck Index, 第11版, page 341で動物脂肪に存在する天然のステロールとして開示されている。他の適切なステロールには、β-シトステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、α-トコフェロール、およびエルゴカルシフェロールが含まれる。前記ステロールは、好適には、免疫原性組成物の全体積の0.01%〜20%(w/v)の量、好ましくは0.1%〜5%(w/v)の量で存在する。好ましくは、ステロールがコレステロールである場合、これは、免疫原性組成物の全体積の0.02%から0.2%(w/v)の間の量、より好ましくはワクチン用量0.5ml中0.02%(w/v)もしくはワクチン用量0.5ml中0.07%(w/v)、またはワクチン用量0.7ml中0.1%(w/v)の量で存在する。
【0069】
好適には、ステロールは、α-トコフェロール、またはコハク酸α-トコフェロールのようなその誘導体である。好ましくは、α-トコフェロールは、免疫原性組成物の全体積の0.2%から5.0%(v/v)の間の量、より好ましくはワクチン用量0.5ml中2.5%(v/v)もしくはワクチン用量0.5ml中0.5%(v/v)、またはワクチン用量0.7ml中1.7〜1.9%(v/v)、好ましくは1.8%の量で存在する。明確にするために、v/vで示された濃度は、以下のコンバーション係数を適用することによりw/v濃度に変換することができる:5%(v/v)のα-トコフェロール濃度は、4.8%(w/v)のα-トコフェロール濃度に相当する。
【0070】
水中油型エマルジョンは乳化剤をさらに含みうる。乳化剤は、免疫原性組成物の0.01〜5.0重量%(w/w)の量、好ましくは0.1〜2.0重量%(w/w)の量で存在してよい。好ましい濃度は、全組成物の0.5〜1.5重量%(w/w)である。
【0071】
乳化剤は、好適には、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween80)であってよい。特定の実施形態において、ワクチン用量0.5mlは1%(w/w)のTween80を含有し、ワクチン用量0.7mlは0.7%(w/w)のTween80含有する。別の具体的な実施形態において、Tween80の濃度は0.2%(w/w)である。
【0072】
水中油型エマルジョンアジュバントは、他のアジュバントまたは免疫賦活剤と共に利用してもよく、したがって、本発明の重要な実施形態は、スクアレンまたは他の代謝可能なオイル、α-トコフェロール、およびTween80を含む水中油型製剤である。水中油型エマルジョンは、span85および/またはレシチンを含有することもできる。通常、水中油は、免疫原性組成物の全体積の2〜10%のスクアレン、2〜10%のα-トコフェロール、および0.3〜3%のTween80を含み、WO95/17210に記載の手順によって作製することができる。好ましくは、スクアレン:α-トコフェロール比は、1に等しいかまたは1未満であり、それは、これがより安定なエマルジョンを提供するからである。Span85(トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)もまた、例えば、1%のレベルで、存在してよい。
【0073】
本発明の第1ワクチン接種に使用される免疫原性組成物の免疫原性特性
本発明において、多価インフルエンザ組成物は、アジュバント無添加の相当する組成物、すなわちいかなる外来アジュバントも含有していない組成物(本明細書では「単味組成物(plain composition)」とも称される)で得られたCD4 T細胞免疫応答に比べ、少なくとも1種の成分抗原または抗原性組成物に対して、改善されたCD4 T細胞免疫応答を引き起こす能力を有する。特定の実施形態において、前記改善されたCD4 T細胞免疫応答は流行インフルエンザ株に対するものである。
【0074】
「改善されたCD4 T細胞免疫応答」とは、アジュバント添加免疫原性組成物を投与した後に、アジュバント不含の同じ組成物の投与後に得られる応答よりも、高いCD4応答がヒト患者で得られることを意味する。例えば、インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物と、代謝可能なオイル、α-トコフェロール、および乳化剤を含んでなる水中油型エマルジョンアジュバントとを共に含む免疫原性組成物を投与することにより、アジュバント無添加のインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物を含む免疫原性組成物の投与後に誘導される応答に比べ、より高いCD4 T細胞応答がヒト患者で得られる。そのような製剤は、MHCクラスII分子により提示されるインフルエンザエピトープの検出が可能な、抗インフルエンザCD4-T細胞応答が引き起こされるように、有利に使用される。
【0075】
本発明に用いるアジュバント添加スプリットインフルエンザ組成物によって引き起こされた前記免疫学的応答は、サブユニットインフルエンザワクチンや全インフルエンザウイルスワクチンなど、任意のその他の従来のアジュバント無添加インフルエンザワクチンによって引き起こされた免疫学的応答よりも高いことが好ましい。
【0076】
特に、限定するものではないが、前記「改善されたCD4 T細胞免疫応答」は、免疫学的にプライミング(初回免疫)されていない患者において、すなわち前記インフルエンザウイルスもしくは抗原に対して血清陰性の患者においてもたらされる。この血清陰性は、前記患者が、そのようなウイルスまたは抗原にこれまで遭遇しておらず(いわゆる「ナイーブ」患者)、あるいは前記抗原に遭遇したときに応答できなかった結果でありうる。好ましくは、前記改善されたCD4 T細胞免疫応答は、免疫低下した患者、例えば高齢者(一般的には少なくとも50歳、典型的には65歳以上)もしくは高リスクの医学的症状を有する65歳未満の成人(「高リスク」成人)、または2歳未満の小児においてもたらされる。
【0077】
上記改善されたCD4 T細胞免疫応答は、下記のサイトカインのいずれかを産生する細胞の数を測定することによって、評価することができる。
【0078】
・少なくとも2種の異なるサイトカイン(CD40L、IL-2、IFNγ、TNFα)を産生する細胞
・少なくともCD40Lおよび別のサイトカイン(IL-2、TNFα、IFNγ)を産生する細胞
・少なくともIL-2および別のサイトカイン(CD40L、TNFα、IFNγ)を産生する細胞
・少なくともIFNγおよび別のサイトカイン(IL-2、TNFα、CD40L)を産生する細胞
・少なくともTNFαおよび別のサイトカイン(IL-2、CD40L、IFNγ)を産生する細胞
【0079】
上記サイトカインのいずれかを産生する細胞が、アジュバント添加組成物の投与後にアジュバント無添加組成物の投与と比べてより多い量になる場合、改善されたCD4 T細胞免疫応答があることになる。典型的な場合、上に挙げた5つの条件のうち、少なくとも1つ、好ましくは2つが満たされる。具体的な実施形態において、4種のサイトカインすべてを産生する細胞は、アジュバント無添加群と比べた場合にアジュバント添加群における方が、より多い量で存在する。
【0080】
本発明のアジュバント添加インフルエンザ組成物によって付与される、上記改善されたCD4 T細胞免疫応答は、理想的には1回の投与の後に、得ることができる。単一用量のアプローチは、急速に発展する発生状況において、極めて適切である。特定の状況では、特に高齢者集団について、またはインフルエンザに対して初めてワクチン接種された若年の小児(9歳未満)の場合については、あるいは大流行の場合には、その季節に関して同じ組成物の2つの用量を投与することが有益と考えられる。前記同じ組成物の2つ目の用量(依然として「第1ワクチン接種用組成物」と見なす)は、持続中の1次免疫応答中に投与することができ、適切に間隔があけられる。典型的な場合、組成物の第2の用量は、非応答性のまたは応答性が不十分な個体の免疫系をプライミングするのを助けるため、第1の用量の2〜3週間後または約1ヶ月後に、例えば2週間、3週間、4週間、5週間、または6週間後に与えられる。
【0081】
具体的な実施形態において、前記免疫原性組成物の投与により、アジュバント添加免疫原性組成物が投与された患者において、アジュバント無添加組成物で免疫された個体で引き起こされる記憶B細胞応答の代わりに、またはそれに加えて、改善された記憶B細胞応答が引き起こされる。改善された記憶B細胞応答とは、in vitro分化の刺激によって測定される、抗原との遭遇によって抗体分泌形質細胞に分化することが可能な末梢血Bリンパ球の、増大した頻度を意味するものとする(実施例のセクション、例えばエリスポットB細胞記憶の方法を参照)。
【0082】
さらに別の具体的な実施形態において、アジュバント添加された、第1のワクチン接種用の組成物によるワクチン接種は、CD8応答に対して測定可能な影響を及ぼさない。
【0083】
本出願人は、驚くべきことに、水中油型エマルジョンアジュバント(特に、代謝可能なオイル、α-トコフェロールのようなステロール、および乳化剤を含む水中油型エマルジョンアジュバント)を配合されたインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物を含んでなる組成物が、免疫低下したヒト集団において、T細胞応答を促進させるのに有効であることを見出した。本出願人が実証したように、本発明で記述された第1ワクチン接種のための免疫原性組成物の1回分用量の投与は、ヒト高齢者集団でのインフルエンザに対するワクチン再接種の後に、インフルエンザワクチンの保護の相関によって評価されるように、アジュバント無添加インフルエンザワクチンでワクチン接種を行った場合よりも、良好な血清保護を提供することが可能である。特許請求の範囲に記載されるアジュバント添加製剤は、アジュバント無添加製剤によって得られたものに比べ、インフルエンザウイルスに対する改善されたCD4 T細胞免疫応答を誘発することもできた。この知見は、インフルエンザ抗原曝露に対するワクチン接種または感染後の、増大する応答性に関連付けることができる。さらにこの知見は、交差応答性、すなわち変異体インフルエンザ株に対するより高い応答能力に関連付けることもできる。この改善された応答は、特に、高齢者集団(65歳以上)、特に高リスク高齢者集団など、免疫低下状態のヒト集団に有益でありうる。これは、全体的な罹患率および死亡率を低下させることができ、肺炎およびその他のインフルエンザ様の病気の場合の緊急入院を防止することができる。これは、乳幼児集団(5歳未満、好ましくは2歳未満)にも有益でありうる。さらに、アジュバント無添加製剤で引き起こされた応答に比べ、時間的により持続する(例えば第1ワクチン接種の1年後に依然として存在する)CD4 T細胞応答を誘発することが可能になる。
【0084】
好ましくは、プライミングしていない対象で得られた改善されたCD4 T細胞免疫応答などのCD4 T細胞免疫応答は、交差反応性CD4 Tヘルパー応答の誘導を伴う。特に、交差反応性CD4 T細胞の量が増加する。「交差反応性」CD4応答とは、CD4 T細胞ターゲッティングがインフルエンザ株間でエピトープを共有することを意味する。
【0085】
通常、利用可能なインフルエンザワクチンは、類似した抗原性特性の赤血球凝集素を有するインフルエンザウイルスの感染株に対してのみ有効である。表面糖タンパク質、特に赤血球凝集素で(抗原性ドリフト変異体ウイルス株)、感染(循環)インフルエンザウイルスが小さな変化を経た場合(点変異や点変異の蓄積などであって、例えばアミノ酸の変化をもたらすもの)、ワクチンは依然としていくらかの保護をもたらすことができるが、新たに生成された変異体は、従来のインフルエンザ感染またはワクチン接種により引き起こされた免疫性を逃れる可能性があるので、限定された保護をもたらすことができるだけである。抗原性ドリフトは、大流行の挟間に生ずる例年の伝染病の原因となる(Wiley & Skehel, 1987,Ann. Rev. Biochem. 56, 365-394)。交差反応性CD4 T細胞の誘発によって、本発明の組成物に追加の利点がもたらされ、すなわち交差保護、言い換えれば異種感染に対する保護、すなわち免疫原性組成物中に含有されるインフルエンザ株の変異体(例えばドリフト)である循環インフルエンザ株によって引き起こされる、感染に対する保護をもたらすことができる。これは、循環株を卵の中で増殖させるのが難しい場合、または組織培養物中で生成するのが難しい場合、ドリフト株の使用が、実用的な代替案となることから、有利でありうる。これは、対象が第1および第2のワクチン接種を数ヶ月または1年おいて受けており、なおかつ、第2の免疫で使用される免疫原性組成物中のインフルエンザ株が、第1ワクチン接種で使用された組成物中に使用されている株のドリフト変異体株である場合にも有利である。
【0086】
したがって、本明細書に定義したアジュバント添加インフルエンザ免疫原性組成物は、ワクチン接種した高齢被験者において血清保護および交差反応性CD4 T細胞を誘導するより高い能力を有する。この特徴は、上記免疫原性組成物中に存在する株の変種株に対して応答する能力がより高いことに結びつけられうる。このことは、大流行の状況において重要な利点となる可能性がある。例えば、H5、H2、H9、H7またはH6株のいずれか1種または複数種を含む、多価インフルエンザ免疫原性組成物は、大流行する変種株、すなわち前記流行株(複数種もありうる)のドリフト株に対するより高い応答能力を、前記ドリフト株を用いたその後のワクチン接種または前記ドリフト株による感染に際して、提供しうる。
【0087】
インフルエンザワクチンを用いたワクチン接種後の交差反応性CD4 T細胞の検出
古典的な3価インフルエンザワクチン投与の後(3週間)、ワクチン内に存在する抗原性株(H3N2:A/Panama/2007/99、H1N1:A/New Caledonia/20/99、B:B/Shangdong/7/97)と同種の抗原性株の調製物(全ウイルスまたはスプリット抗原)に応答する末梢血CD4 T細胞の頻度は、かなりの増加する(実施例III参照)。ドリフト株として分類されたインフルエンザ株(H3N2:A/Sydney/5/97、H1N1:A/Beijing/262/95、B:B/Yamanashi/166/98)を用いて末梢血CD4 T細胞を再刺激した場合には、同程度の頻度の増加が認められる。
【0088】
対照的に、末梢血CD4 T細胞が、この分野の専門家によってシフト株として分類されるインフルエンザ株(H2N2:A/Singapore/1/57、H9N2:A/Hongkong/1073/99)により再刺激を受けた場合、ワクチン接種後に観察可能な増加はない。
【0089】
同種(homologous)およびドリフトインフルエンザ株の両方を認識することができるCD4 T細胞を、本発明の文書では「交差反応性」と呼ぶ。本明細書に記載のアジュバント添加インフルエンザ組成物は、ドリフトインフルエンザ株に対する観察可能な交差反応性が存在することから、異種亜型の(heterosubtypic)交差反応性を示す能力を有する。上に記載のとおり、流行株ワクチン製剤がドリフト流行株に対して有効であるという能力は、大流行の状況において重要な特性となりうる。
【0090】
上記観察と合致して、異なるインフルエンザ株により共有されるCD4 T細胞エピトープが、ヒトで確認された(Gelder Cら. 1998, Int Immunol. 10(2):211-22; Gelderら. 1996 J Virol. 70(7):4787-90; Gelder CMら. 1995 J Virol. 1995 69(12):7497-506)。
【0091】
具体的な実施形態において、アジュバント添加組成物は、現在利用可能なワクチンが何の効き目も持たない、赤血球凝集素における大きな変化(例えば、2つの異なる種の間での、遺伝子組換えなど)を経た(抗原シフト)循環株に対して、より良好な保護を提供するという追加の利益をもたらすことができる。
【0092】
その他のアジュバント
上記組成物は、追加のアジュバント、特にTRL-4リガンドアジュバント、適当に、リピドAの非毒性誘導体を含みうる。適当なTRL-4リガンドは3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA (3D-MPL)である。他の適当なTLR-4リガンドはリポポリ多糖(LPS)およびその誘導体、MDP (ムラミルジペプチド) およびRSV のFプロテインである。
【0093】
あるい実施形態において、上記組成物は、Toll様受容体(TLR) 4リガンド、例えばリピドAの非毒性誘導体、特にモノホスホリルリピドAまたはより詳細には3-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)をさらに含みうる。
【0094】
3D-MPLは、Corixa corporationにより商標MPL(登録商標)の下で販売されており(本明細書中ではMPLと呼ぶ)、IFN-γ(Th1)表現型を伴うCD4+T細胞応答を主に促進する。3D-MPLは、GB 2220211Aで開示されている方法によって作製することができる。化学的には、これは、3、4、5、または6個のアシル化鎖を有する3-脱アシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。本発明の組成物において、微粒子3D-MPLを使用することが好ましい。微粒子3D-MPLは、0.22μmフィルターを通して滅菌濾過できるような粒径を有する。このような調製物は、WO 94/21292および実施例IIに記載されている。
【0095】
3D-MPLは、例えば、組成物1用量当たり1〜100μg(w/v)の量、好ましくは組成物1用量当たり10〜50μg(w/v)の量で使用することができる。3D-MPLの適切な量は、例えば、組成物1用量当たり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50μg(w/v)のいずれかである。より好ましくは3D-MPLの量は、組成物1用量当たり25〜75μg(w/v)の範囲にある。通常、組成物1用量は、約0.5ml〜約1mlの範囲にある。典型的なワクチン1用量は、0.5ml、0.6ml、0.7ml、0.8ml、0.9ml、または1mlである。好ましい実施形態においては、ワクチン組成物1ml当たり50μg、またはワクチン用量0.5ml当たり25μgの終濃度の3D-MPLが含まれる。他の好ましい実施形態において、ワクチン組成物1ml当たり35.7μgまたは71.4μgの終濃度の3D-MPLが含まれる。具体的には、ワクチン用量体積0.5mlは、1用量当たり25μgまたは50μgの3D-MPLを含有する。
【0096】
MPLの用量は、適切には、ヒトにおいて抗原に対する免疫応答を増強しうる用量である。特に、適当な量のMPLとは、アジュバント無添加組成物と比較して、または別の量のMPLを用いてアジュバント添加された組成物と比較して、その組成物の免疫学的潜在力を改善し、なおかつ反応原性(reactogenicity)プロファイルの観点からも許容可能な量である。
【0097】
リピドAの合成誘導体は知られており、いくつかはTLR-4アゴニストと記述され、限定するものではないが下記の誘導体が含まれる。
【0098】
OM174
(2-デオキシ-6-o-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシルジハイドロジェンホスフェート)、(WO 95/14026)
OM 294
DP (3S,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1,10-ビス(ジハイドロジェンホスフェート)(WO 99/64301およびWO 00/0462)
OM 197
MP-Ac DP (3S,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール,1-ジハイドロジェンホスフェート10-(6-アミノヘキサノエート)(WO 01/46127)
【0099】
その他の適切なTLR-4リガンドは、例えば、リポ多糖およびその誘導体、ムラミルジペプチド(MDP)、または呼吸器合胞体ウイルスのFプロテインである。
【0100】
本発明で使用される、別の適切な免疫刺激物質は、Quil Aおよびその誘導体である。Quil Aは、南アフリカの木であるキラジャサポナリアモリナ(Quilaja Saponaria Molina)から分離されたサポニン調製物であり、最初にDalsgaardらによって、1974年に("Saponin adjuvants", Archiv. fur die gesamte Virusforschung, Vol.44, Springer Verlag, Berlin, p243-254)、アジュバント活性を有することが記述された。Quil Aの精製断片がHPLCにより分離されているが、これはQuil Aに関連した毒性を有することなくアジュバント活性を保持しており(EP 0362278)、例えばQS7およびQS21である(QA7およびQA21としても知られる)。QS-21は、キラジャサポナリアモリナの樹皮に由来する天然のサポニンであり、CD8+細胞傷害性T細胞(CTL)、Th1細胞、および支配的なIgG2a抗体応答を誘発するものであり、本発明の文脈においては好ましいサポニンである。
【0101】
特に好ましいQS21の特定の製剤が記述されており、これらの製剤はさらに、ステロールを含む(WO 96/33739)。本発明の一部を形成するサポニンは、水中油型エマルジョンの形態をとることができる(WO 95/17210)。
【0102】
再ワクチン接種および再ワクチン接種に使用する組成物 (追加免疫組成物)
本発明の一の態様は、以前に、本明細書に請求する多価インフルエンザ組成物、または本明細書に定義された水中油型エマルジョンアジュバントと共に製剤化された変種インフルエンザ株を含んでなる前記多価インフルエンザ組成物を用いてワクチン接種されたヒトの再ワクチン接種用のインフルエンザ免疫原性組成物の製造における、インフルエンザ抗原の使用を提供する。
【0103】
典型的には再ワクチン接種は第1ワクチン接種から少なくとも6ヶ月後、好ましくは8〜14ヶ月後、より好ましくは約10〜12ヶ月後に行われる。
【0104】
再ワクチン接種用の免疫原性組成物(追加免疫組成物)は、不活化であれ弱毒生ワクチンであれ、どのような種類の抗原調製物を含むこともできる。該組成物は、第1ワクチン接種に使用される免疫原性組成物と同じ種類の抗原調製物、すなわちスプリットインフルエンザウイルスまたはそのスプリットインフルエンザウイルス抗原性調製物、全ビリオン、精製HAおよびNA (サブユニット)ワクチンまたはビロソーム、を含有することができる。あるいはまた、追加免疫組成物は、第1ワクチン接種に使用されるものとは別の種類のインフルエンザ抗原、すなわちスプリットインフルエンザウイルスまたはそのスプリットインフルエンザウイルス抗原性調製物、全ビリオン、精製HAおよびNA(サブユニット)ワクチンまたはビロソームを含有することができる。好ましくは、スプリットウイルスまたは全ビリオンワクチンが使用される。追加免疫組成物は、アジュバント添加でもよく、またはアジュバント無添加でもよい。アジュバント無添加の追加免疫組成物はFluarix
TM/α-Rix(登録商標)/Influsplit(登録商標)であってもよく、筋肉内注射される。該配合物は、適当なインフルエンザシーズンのWHO推奨株から調製される3種の不活化スプリットビリオン抗原を含有する。
【0105】
したがって、好ましい実施形態において、本発明は、以前に、本明細書に請求される免疫原性組成物を用いてワクチン接種されたヒトの再ワクチン接種用の免疫原性組成物の製造におけるインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物の使用を提供する。
【0106】
追加免疫組成物は、アジュバント添加またはアジュバント無添加でありうる。好ましい実施形態において、上記追加免疫組成物は、水中油型エマルジョンアジュバント、特に代謝可能なオイル、α-トコフェロールのようなステロールおよび乳化剤を含んでなる水中油型エマルジョンアジュバントを含む。好ましくは、前記水中油型エマルジョンアジュバントは、全体積の0.5%〜20%の量にて少なくとも1種の代謝可能なオイルを好適に含み、かつ油滴を有し、その油滴の少なくとも70強度%は直径が1μm未満である。
【0107】
好ましい実施形態において、第1ワクチン接種は、大流行を引き起こす可能性のある少なくとも1種のインフルエンザ株を含有するインフルエンザ組成物、好ましくはスプリットインフルエンザ組成物を用いて行われ、再ワクチン接種は、循環している流行株である株を少なくとも1種含有するインフルエンザ組成物を用いて行われる。
【0108】
具体的な実施形態において、ワクチン再接種のための免疫原性組成物(以下、本明細書では「追加免疫組成物」とも称される)は、第1ワクチン接種で使用されたインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物と共通CD4 T細胞エピトープを共有する、インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物を含有する。共通CD4 T細胞エピトープとは、同じCD4細胞により認識されうる異なる抗原からのペプチド/配列/エピトープを意味するものとする(Gelder Cら. 1998, Int Immunol. 10(2):211-22; Gelder CMら. 1996 J Virol. 70(7):4787-90; Gelder CMら. 1995 J Virol. 1995 69(12):7497-506に記載されているエピトープの例を参照されたい)。
【0109】
本発明の一の実施形態において、追加免疫組成物は、大流行に関与しているまたは大流行に関与する潜在力を有するインフルエンザ株を含む一価インフルエンザ組成物である。
【0110】
適当な株は、限定するものではないが、H5N1、H9N2、H7N7、H2N2およびH1N1である。前記株は、第1ワクチン接種に使用された組成物中に存在する株と同じ、またはそのうちの1種と同じでありうる。代替的実施形態においては、前記株は、変種株、すなわち第1ワクチン接種に使用された組成物中に存在する株のドリフト株でありうる。
【0111】
別の特定の実施形態においては、追加免疫組成物は多価インフルエンザワクチンである。特に、追加免疫組成物が、二価、三価または四価ワクチンのような多価ワクチンであるときには、少なくとも1種の株は大流行に関与しているまたは大流行に関与する潜在力を有する。ある具体的な実施形態においては、追加免疫組成物中の2種以上の株が流行株である。別の具体的な実施形態においては、追加免疫組成物中の前記少なくとも1種の流行株は、第1ワクチン接種に使用された組成物中に存在する株と同種またはそれらのうちの1種と同種である。別の実施形態においては、前記少なくとも1種の株は、第1ワクチン接種に使用された組成物中に存在する少なくとも1種の流行株の変種株、すなわちドリフト株でありうる。
【0112】
したがって、本発明の別の態様においては、第1種のインフルエンザ株の変種インフルエンザ株により引き起こされるインフルエンザ感染症に対する保護のための免疫原性組成物の製造における、前記第1種の流行インフルエンザ株由来のインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物の使用を提供する。
【0113】
したがって、本発明の別の態様において、第1種のインフルエンザ株の変種インフルエンザ株により引き起こされるインフルエンザ感染症に対する保護のための免疫原性組成物の製造における、
(a) 前記第1種のインフルエンザ株由来のインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物、および
(b) 本明細書に定義される水中油型エマルジョンアジュバント、の使用を提供する。
【0114】
追加免疫組成物はアジュバント添加またはアジュバント無添加でありうる。
【0115】
典型的には追加免疫組成物を使用するときはそれを次のインフルエンザシーズン、例えば第1免疫原性組成物の約1年後に与える。追加免疫組成物はまた、その後、毎年与えることもできる(第3ワクチン接種、第4ワクチン接種、第5ワクチン接種など)。追加免疫組成物は、第1ワクチン接種に使用された組成物と同じでありうる。追加免疫組成物は、第1ワクチン接種に使用されたインフルエンザウイルスの変種株であるインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物を含有する。特に、インフルエンザウイルス株またはその抗原性調製物は、それらが再ワクチン接種の年に循環しているインフルエンザ株に適合するように、世界保健機関により配布される参考資料に従って選択される。
【0116】
ワクチン再接種で使用されるインフルエンザ抗原または抗原性組成物は、好ましくは、適切な場合には上述のように、アジュバントまたは水中油型エマルジョンを含む。アジュバントは、好ましくは、本明細書で既に述べたような水中油型エマルジョンアジュバントであってもよく、場合により3D-MPLのようなTRL-4リガンドやサポニンなどの追加のアジュバントを含有することができ、または、例えばミョウバンもしくはポリホスファゼンのようなミョウバン誘導体などの別の適切なアジュバントでもよい。
【0117】
好ましくはワクチン再接種は、アジュバント無添加インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物を用いて第1ワクチン接種した後に引き起こされる相当する応答に比べて、下記の事項、すなわち(i)インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物に対する改善されたCD4応答、あるいは(ii)改善されたB細胞記憶応答、あるいは(iii)改善された液性応答のいずれか1つ、好ましくは2つ、またはすべてを引き起こす。好ましくは、本明細書で定義されるような、アジュバント添加インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物によるワクチン再接種後に引き起こされた免疫応答は、アジュバント無添加組成物によるワクチン再接種後に引き起こされた相当する応答よりも高い。アジュバント無添加の、好ましくはスプリットの、インフルエンザウイルスによるワクチン再接種後に引き起こされた免疫学的応答は、アジュバント無添加の好ましくはスプリットのインフルエンザ組成物で第1ワクチン接種された集団での相当する応答よりも、アジュバント添加された好ましくはスプリットのインフルエンザ組成物で第1ワクチン接種された集団において高いことが好ましい。
【0118】
出願人らが実証したとおり、上記に定義したとおりの、インフルエンザウイルス、ならびに代謝可能なオイル、α-トコフェロールのようなステロールおよび乳化剤を含む水中油型エマルジョンアジュバントを含む追加免疫組成物を用いた被験体の再ワクチン接種は、アジュバント無添加組成物を用いて第1ワクチン接種され、かつアジュバント無添加組成物を用いて追加免疫された人の集団における対応する値よりも高い抗体力価を示す。再ワクチン接種における抗体応答を増強するというアジュバントの作用は、インフルエンザウイルスによるワクチン接種または感染に対する応答が低いことが知られている高齢者集団において、特に重要である。アジュバント添加組成物に伴う利点はまた、再ワクチン接種後のCD4 T細胞応答の改善という点においても際立っていた。
【0119】
本発明のアジュバント添加組成物は、対照ワクチンにより付与される保護と比較して、ドリフト株(drifted strain)(次のインフルエンザシーズンからのインフルエンザ株)に対してよりよい交差応答性を誘発する能力を有する。前記交差応答性は、アジュバント無添加配合物により得られる応答性と比較して高い持続性を示した。アジュバントによるドリフト株に対する交差応答性の増強作用は、大流行状況において重要である。
【0120】
例えば実施例3に示した前臨床データは、本発明の組成物の、ヘテロタイプ型(heterotypic)インフルエンザ感染症および疾患に対する保護の能力を示す(体温読取り値から評価した)。同じ結論は、再ワクチン接種調査から得られた臨床試験データについても言える。
【0121】
さらなる実施形態において、本発明は、第1ワクチン接種を、潜在的に大流行を引き起こしうる少なくとも1種のインフルエンザ株を含有するインフルエンザ組成物、好ましくはスプリットインフルエンザ組成物を用いて行い、かつ再ワクチン接種を、循環株(流行株または従来株のいずれか)を用いて行う、ワクチン接種レジメンに関する。
【0122】
HAのCD4エピトープ
この抗原ドリフトは、主にウイルス表面タンパク質赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)のエピトープ領域に存在する。宿主免疫系の適応反応を避けるためにウイルスが用いる、異なるインフルエンザ株の間でのCD4およびB細胞エピトープの何らかの差が、インフルエンザワクチン接種で現在および将来、主要な役割を果たすことが知られている。
【0123】
異なるインフルエンザ株によって共有されるCD4 T細胞エピトープが、ヒトで同定された(例えば、Gelder Cら, 1998, Int Immunol. 10(2):211-22、Gelder CMら, 1996 J Virol. 70(7):4787-90およびGelder CMら, 1995 J Virol. 1995 69(12):7497-506)。
【0124】
具体的な実施形態において、ワクチン再接種は、第1ワクチン接種のために使われたインフルエンザウイルス抗原、またはその抗原性調製物と共通のCD4 T細胞エピトープを共有するインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物を含む追加免疫組成物を用いて行われる。したがって、本発明は、複数用量ワクチンの第1ワクチン接種成分の製造における、流行インフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物ならびに水中油型エマルジョンアジュバント(特に代謝可能なオイル、α-トコフェロールのようなステロールおよび乳化剤を含む水中油型エマルジョンアジュバント)を含んでなる免疫原性組成物の使用に関し、このとき前記複数用量ワクチンはさらに、追加免疫用量として、第1ワクチン接種時に与えられた投薬中の流行インフルエンザウイルス抗原またはそのウイルス抗原性調製物と共通CD4 T細胞エピトープを共有するインフルエンザウイルスまたはその抗原性調製物を含む。
【0125】
ワクチン接種方法
本発明の組成物は、皮内、粘膜、例えば鼻腔内、経口、筋肉内または皮下など、いかなる適当な送達経路でも投与することができる。他の送達経路は当技術分野において公知である。
【0126】
アジュバント添加インフルエンザ組成物のためには、筋肉内の送達経路が好ましい。
【0127】
皮内送達は、他の適当な経路である。皮内送達のためにいかなる適当なデバイスでも使用することができ、その例としては、短い針デバイス、例えばUS 4,886,499、US 5,190,521、US 5,328,483、US 5,527,288、US 4,270,537、US 5,015,235、US 5,141,496、US 5,417,662に記載されているものがある。皮内ワクチンは、皮膚への針の有効貫入長を制限するデバイス、例えば参照により本明細書に組み込まれているWO 99/34850およびEP 1092444に記載されているもの、およびその機能等価物によって投与することもできる。角質層を貫通して真皮に到達する噴流を起こさせる針を通してまたは液体ジェット式注射器を通して液体ワクチンを真皮に送達するジェット式注射デバイスも適当である。ジェット式注射デバイスは、例えばUS 5,480,381、US 5,599,302、US 5,334,144、US 5,993,412、US 5,649,912、US 5,569,189、US 5,704,911、US 5,383,851、US 5,893,397、US 5,466,220、US 5,339,163、US 5,312,335、US 5,503,627、US 5,064,413、US 5,520,639、US 4,596,556、US 4,790,824、US 4,941,880、US 4,940,460、WO 97/37705およびWO 97/13537に記載されている。粉状のワクチンを加速させて皮膚外層を通し真皮へ到達させるために圧縮ガスを使う、バリスティック粉体/粒子送達デバイスも適当である。さらに、従来の注射器を、皮内投与の古典的マントゥー方法で使うことができる。
【0128】
他の適当な投与経路は、皮下経路である。皮下送達のためにいかなる適当なデバイスでも、例えば古典的な針でも使うことができる。好ましくは、無針ジェット式注射器一式が使われ、その例は、WO 01/05453、WO 01/05452、WO 01/05451、WO 01/32243、WO 01/41840、WO 01/41839、WO 01/47585、WO 01/56637、WO 01/58512、WO 01/64269、WO 01/78810、WO 01/91835、WO 01/97884、WO 02/09796、WO 02/34317で公開されている。より好ましくは、前記デバイスは、液体ワクチン製剤が事前に充填される。
【0129】
あるいは、ワクチンは鼻腔内に投与される。一般的に、ワクチンは好ましくは肺に吸入されることなく、鼻咽頭の領域に局所投与される。それが全くまたは実質的に肺に入らないように、鼻咽頭の領域にワクチン製剤を送達する、鼻腔内送達デバイスを使うことが望ましい。
【0130】
本発明によるワクチンの鼻腔内投与のための好ましいデバイスは、噴霧デバイスである。市販の適当な鼻内噴霧デバイスとしては、Accuspray(商標)(Becton Dickinson)がある。ネブライザーは、肺に容易に吸入されて鼻粘膜に有効に到達しない、非常に微細な噴霧を生成する。したがって、ネブライザーは好ましくない。
【0131】
鼻腔内の使用のための好ましい噴霧デバイスは、そのデバイスの性能が使用者によって加えられる圧力に依存しないデバイスである。これらのデバイスは、圧力閾デバイスとして知られている。閾値圧が加えられるときだけ、液体はノズルから放出される。これらのデバイスは、一定の液滴サイズを有する噴霧の達成をより簡単にする。本発明での使用に適当な圧力閾デバイスは当技術分野で公知であり、例えば、本明細書で参照により組み込まれているWO 91/13281およびEP 311 863 BおよびEP 516 636に記載されている。そのようなデバイスはPfeiffer GmbHから市販され、Bommer, R. Pharmaceutical Technology Europe, Sept 1999に記載されてもいる。
【0132】
好ましい鼻腔内デバイスは、1〜200μm、好ましくは10〜120μmの範囲の液滴(液体として水を使って測定)を生成する。10μm以下では吸入のリスクがあるので、10μm以下の液滴は多くても約5%であることが望ましい。120μmより大きい液滴はそれより小さな液滴のようには都合よく拡散しないので、120μmを上回る液滴は多くても約5%であることが望ましい。
【0133】
二用量送達は、本発明によるワクチンで使用するための鼻腔内送達系の他の好ましい機構である。二用量デバイスは、単一のワクチンの用量の2つの下位用量(sub-dose)を含み、1下位用量が各鼻孔へ投与される。一般に、2つの下位用量は単一のチャンバーに存在し、デバイスの構造により一度に単一の下位用量の効率的送達が可能になる。代わりに、本発明によるワクチンを投与するために、一用量デバイスを使うことができる。
【0134】
代わりに、本発明では表皮または経皮のワクチン接種経路も企図される。
【0135】
本発明の具体的な態様において、第1の投与のためのアジュバント添加免疫原性組成物は筋肉内投与することができ、追加免疫組成物はアジュバント添加の有無にかかわらず異なる経路により、例えば皮内、皮下または鼻腔内に投与することができる。他の具体的な実施形態において、第1の投与のための組成物は1インフルエンザ株につき15μgの標準HA含量を含むことができ、追加免疫組成物は低用量、すなわち15μg以下のHAを含むことができ、また、投与経路によってはより少ない量で与えることができる。
【0136】
ワクチン接種をする集団
ワクチン接種をする標的集団は、免疫低下したヒトであってもよい。免疫低下したヒトは、一般に健康な成人と比較して、抗原に、特にインフルエンザ抗原に上手く反応することができない。
【0137】
好ましくは、標的集団はインフルエンザからプライミングされていない集団であり、ナイーブである(例えば世界的流行株に対して)か、以前にインフルエンザ感染またはワクチン接種に応答することができなかった集団である。好ましくは、標的集団は、好適には少なくとも50歳、典型的には少なくとも55歳、もしくは少なくとも60歳、または65歳以上の高齢者、保健機関労働者などのより若い高リスクの成人(すなわち18歳〜64歳)、または心血管および肺の疾患もしくは糖尿病などの危険因子を有する若年成人である。他の標的集団は、年齢が6ヶ月以上のすべての子供、特に6〜23ヶ月齢のインフルエンザ関連の入院率が比較的高い子供たちである。好ましくは、標的集団は、65歳超の高齢者である。
【0138】
ワクチン接種レジメン、投薬およびさらなる効力基準
好適には本発明による免疫原性組成物は、ほとんどの場合、標準的な0.5mlの注射可能な用量であり、一元放射免疫拡散法(SRD)によって測定されるように、その、または各インフルエンザ株由来の15μgの赤血球凝集素抗原成分を含む(J.M. Woodら.:J. Biol. Stand. 5 (1977) 237-247、J. M. Woodら., J. Biol. Stand. 9 (1981) 317-330)。好適には、ワクチン用量は0.5mlから1mlの間であり、特に0.5mlまたは0.7mlの標準的なワクチン用量である。元のバルク試料中のHA濃度に応じて、通常、用量はわずかに調節される。
【0139】
好適には、前記免疫原性組成物は、低用量のHA抗原を、例えば各インフルエンザ株につき1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14μgのいずれかのHAを含む。HAの適当な低用量は、インフルエンザ株につき1〜7.5μgのHA、好適にはインフルエンザ株につき3.5〜5μg、例えば3.75μgのHAであり、一般的にはインフルエンザ株につき約5μgのHAである。
【0140】
有利には、本発明によるワクチンの用量、特に低用量ワクチンは、一般に1用量につき約0.5、0.7または1mlである従来の注射式スプリットインフルエンザワクチンよりも、少ない体積で提供することができる。本発明による低体積用量は、1用量につき好ましくは500μl未満、より好ましくは300μl未満、最も好ましくは約200μl以下である。
【0141】
したがって、本発明の一態様による好ましい低体積ワクチン用量は、低体積の低抗原用量、例えば約200μlの体積のうち約15μgもしくは約7.5μgのHAまたは約3.0μgのHA(株につき)を有する用量である。
【0142】
本発明のインフルエンザ医薬は、好ましくはワクチンの一定の国際基準を満たす。
【0143】
インフルエンザワクチンの有効性を測るために、基準は国際的に適用される。インフルエンザに対して有効なワクチンの欧州連合公式基準を、下の表1で提示する。理論的には、欧州連合要件を満たすために、ワクチンに含まれるすべてのインフルエンザ株について、インフルエンザワクチンは表の基準の1つだけを満たせばよい。本発明の組成物は、そのような基準の少なくとも1つを適切に満たす。
【0144】
しかし実際には、すべての株について、特に新しいワクチン、例えば異なる経路からの送達のための新しいワクチンについては、基準の少なくとも2つまたは3つすべてを満たす必要がある。ある条件下では、2つの基準で十分である。例えば、3つの基準のうちの2つがすべての株によって満たされ、第3の基準はすべてではないが一部の株(例えば3株中2株)によって満たされることが許容されることがある。要件は、成人の集団(18〜60歳)および高齢者集団(>60歳)で異なる。
【表1】
【0145】
他の態様において、本発明は、CD4+T細胞活性化を通して治癒または治療されることが知られている疾患のワクチンを設計する方法を提供し、この方法は
1)CD4+エピトープを含む抗原を選択すること、および
2)前記抗原を本明細書の上で定義された水中油型エマルジョンアジュバントと組み合わせることを含み、前記ワクチンは、前記哺乳動物へ投与すると前記哺乳動物の増強されたCD4 T細胞応答を誘発することができる。
【0146】
特許出願および許可された特許を含む、本明細書中すべての参考文献の教示は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0147】
疑問の回避のため、本明細書の用語「含んでいる(comprising)」、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」は、各事例において、場合により用語「からなっている(consisting of)」、「からなる(consist of)」および「からなる(consists of)」でそれぞれ代替可能であるものとする。
【実施例】
【0148】
以下の非限定的な実施例を参照することにより、本発明をさらに説明する。
【0149】
実施例Iは、マウス、フェレット、およびヒトの研究で使用される、免疫学的読出し方法について記述する。
【0150】
実施例IIは、例示された研究で使用される、水中油型エマルジョンおよびアジュバント製剤の調製および特徴付けについて記述する。
【0151】
実施例IIIは、スプリットインフルエンザ抗原調製物およびAS03アジュバントを含有するワクチンによる、年齢が65歳超の高齢者集団での臨床試験について記述する。
【0152】
実施例IVは、スプリットインフルエンザ抗原調製物およびAS03アジュバントを含有するワクチンによる、年齢が65歳超の高齢者集団での第2の臨床試験、すなわちワクチン再接種試験について記述する。
【0153】
実施例Vは、フェレットにおける、アジュバント添加およびアジュバント無添加のインフルエンザワクチンの前臨床評価を示す(研究Iおよび研究II)。体温モニタリング、ウイルス排泄、およびCD4T細胞応答を測定した。
【0154】
実施例VIは、ナイーブC57BI/6マウスおよびプライミングされたC57BI/6マウスにおける、アジュバント添加およびアジュバント無添加のインフルエンザワクチンの前臨床評価を示す。
【0155】
実施例VIIは、異種株でプライミングされたC57BI/6マウスにおける、アジュバント添加およびアジュバント無添加のスプリットおよびサブユニットインフルエンザワクチンの前臨床評価を示す。
【0156】
実施例VIIIは、AS03アジュバントもしくはASO3+MPLアジュバントを含有しているか、いかなる外因性アジュバントも含有していないスプリットインフルエンザ抗原調製物含有ワクチンを用いた、65歳超の高齢者集団での臨床試験について記載する。
【0157】
実施例IXは、フェレットにおける、アジュバント添加およびアジュバント無添加のインフルエンザワクチンの前臨床評価を示す(研究III)。温度モニタリング、ウイルス排泄、およびHI力価を測定した。
【0158】
実施例Xは、MPLを含む、もしくは含まないASO3アジュバントを含有するスプリットインフルエンザ抗原調製物含有ワクチンを用いた、65歳超の高齢者集団での臨床試験、すなわち90日目および180日目における免疫原性持続性データを示す。
【0159】
実施例XIは、MPLを含むAS03アジュバントを含有するスプリットインフルエンザ抗原調製物含有ワクチンを用いた、65歳超の高齢者集団での臨床試験を示す。
【0160】
実施例XIIは、2つの濃度のMPLをそれぞれ含むAS03アジュバントを含有するスプリットインフルエンザ抗原調製物含有ワクチンを用いた、65歳超の高齢者集団での臨床試験を示す。
【0161】
実施例I
免疫学的読出し方法
I.1. マウス方法
I.1.1. 赤血球凝集抑制試験
試験手順
3種のインフルエンザウイルス株に対する抗赤血球凝集素抗体力価を、赤血球凝集抑制試験(HI)を使用して測定した。HI試験の原理は、特定の抗インフルエンザ抗体が、インフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)によってニワトリ赤血球(RBC)の赤血球凝集を抑制することのできる能力に基づいている。熱不活化血清を、事前にカオリンおよびニワトリRBCにより処理して、非特異的抑制剤を除去した。前処理の後、2倍希釈した血清を、各インフルエンザ株を4つの赤血球凝集素単位と共にインキュベートした。次いでニワトリ赤血球を添加し、凝集の抑制を記録した。力価は、赤血球凝集が完全に抑制された血清の、最も高い希釈率の逆数で表した。血清の第1の希釈率が1:20であるとき、検出できないレベルを、10に等しい力価として記録した。
【0162】
統計的分析
統計的分析は、UNISTATを使用して、ワクチン接種後のHI力価に関して行った。分散分析のために適用されたプロトコルは、下記の通り簡単に記述することができる。
【0163】
・データのログ変換
・群分布の正規性を確認するための、各集団(群)に対するシャピロ-ウィルク(Shapiro-Wilk)試験
・種々の集団(群)同士の分散の不均質性を確認するための、コクラン(Cochran)試験
・群に対して行われた2元配置分散分析
・多数の比較のためのチューキー(Tukey)HSD
【0164】
I.1.2. 細胞内サイトカイン染色
この技法によって、サイトカイン産生に基づく抗原特異的Tリンパ球の定量が可能になり、エフェクターT細胞および/またはエフェクター-記憶T細胞がIFN-γを産生し、かつ/または中央記憶T細胞がIL-2を産生する。PBMCを、免疫後7日で収集する。
【0165】
リンパ球を、分泌阻害剤(ブレフェルジン(Brefeldine))の存在下、in vitroで再刺激する。次いでこれらの細胞を、蛍光抗体(CD4、CD8、IFN-γ、およびIL-2)を使用して、従来の免疫蛍光手順により処理する。結果を、CD4/CD8 T細胞内でのサイトカイン陽性細胞の頻度として表す。T細胞のサイトカインの細胞内染色は、2回目の免疫から7日後、PBMCに対して行った。血液をマウスから採取し、ヘパリン化培地RPMI+Addに溜めた。血液では、推奨されるプロトコル(遠心分離20分、2500rpmおよびR.T.で)に従って、RPMI+Addで希釈されたPBL懸濁液が、リンパ球-哺乳類勾配上に層状に形成された。界面にある単核細胞を除去し、RPMI+Add中で2回洗浄し、PBMC懸濁液を、RPMI 5%ウシ胎児血清中で2×10
6細胞/mlに調節した。
【0166】
PBMCのin vitro抗原刺激を、全FI(1μgHA/株)を用いて終濃度1×10
7細胞/ml(チューブFACS)で実施し、次いで抗CD28および抗CD49d(共に1μg/ml)を添加して2時間、37℃でインキュベートした。
【0167】
抗原再刺激ステップの後、PBMCを、ブレフェルジン(1μg/ml)の存在下、37℃で一晩インキュベートして、サイトカインの分泌を阻害する。
【0168】
IFN-γ/IL-2/CD4/CD8染色を、下記の通り行った。すなわち、懸濁液を洗浄し、2%Fc遮断試薬(1/50:2.4G2)を含有する50μlのPBS 1% FCS中に再懸濁した。4℃で10分間インキュベートした後、抗CD4-PE(2/50)および抗CD8 perCp(3/50)の混合物50μlを添加し、4℃で30分間インキュベートした。PBS 1% FCS中で洗浄した後、細胞を、サイトフィックス-サイトパーム(Cytofix-Cytoperm)(Kit BD)200μl中に再懸濁し、4℃で20分間インキュベートすることによって透過化処理した。次いで細胞を、パームウォッシュ(Perm Wash)(Kit BD)で洗浄し、パームウォッシュ中で希釈された抗IFN-γ APC(1/50)+抗IL-2 FITC(1/50)の混合物50μlと共に再懸濁した。インキュベーションを最短で2時間、最長で一晩4℃で行った後、細胞をパームウォッシュで洗浄し、PBS 1% FCS+1%パラホルムアルデヒド中に再懸濁した。サンプルの分析は、FACSにより行った。生細胞をゲーティングし(FCS/SSC)、獲得を、約20,000事象(リンパ球)または35,000事象、CD4+T細胞上で行った。IFN-γ+またはIL2+のパーセンテージを、CD4+およびCD8+のゲート集団に関して計算した。
【0169】
I.2. フェレット方法
I.2.1. 赤血球凝集素阻害試験(HI)
試験手順
3種のインフルエンザウイルス株に対する抗赤血球凝集素抗体力価を、赤血球凝集抑制試験(HI)を使用して測定した。HI試験の原理は、特定の抗インフルエンザ抗体が、インフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)によるニワトリ赤血球(RBC)の赤血球凝集を抑制することのできる能力に基づいている。まず、血清を25%ノイラミニダーゼ溶液(RDE)で処理し、熱不活化して、非特異的阻害剤を除去した。前処理の後、2倍希釈した血清を、各インフルエンザ株の4つの赤血球凝集単位と共にインキュベートした。次いでニワトリ赤血球を添加し、凝集の抑制を記録した。力価は、赤血球凝集を完全に阻害した血清の最も高い希釈率の逆数として表した。血清の第1の希釈が1:10であるとき、検出できないレベルを、5に等しい力価として記録した。
【0170】
統計的分析
統計的分析は、UNISTATを使用して、HI力価(41日目、チャレンジ前)に関して行った。分散分析に適用されたプロトコルは、下記の通り簡単に記述することができる。
【0171】
・データのログ変換
・群分布の正規性を確認するための、各集団(群)に関するシャピロ-ウィルク試験
・種々の集団(群)同士の分散の不均質性を確認するための、コクラン試験
・1元配置ANOVAの相互作用に関する試験
・多数の比較のためのチューキー試験
【0172】
I.2.2. 体温のモニタリング
個々の温度を、チャレンジ期間中に、トランスミッタを用いかつテレメトリー記録によってモニターした。すべての移植片について調べ、一新し、新たな較正をDSI(Data Sciences International, Centaurusweg 123, 5015 Tc Tilburg, The Netherlands)によって行い、その後、腹腔内に配置した。これらの測定中、すべての動物を個々に単一のケージに収容した。
【0173】
チャレンジの4日前からチャレンジ後の7日目まで、15分毎に温度を記録した。
【0174】
I.2.3. 鼻洗浄
覚醒している動物の両方の鼻孔にPBSを5ml投与することによって、鼻洗浄を行った。接種材料をペトリ(Petri)皿に収集し、ドライアイス上のサンプル容器内に配置した。
【0175】
鼻洗浄におけるウイルス滴定
すべての鼻サンプルを、まずSpin Xフィルター(Costar)に通して滅菌濾過することにより、あらゆる細菌汚染を除去した。鼻洗浄物質の連続10倍希釈物50μlを、培地(10ウェル/希釈)50μlが入っているマイクロタイタープレートに移した。次いでMDCK細胞100μl(2.4×10
5細胞/ml)を各ウェルに添加し、35℃で5〜7日間インキュベートした。
【0176】
インキュベーションから5〜7日後、培地を穏やかに取り出し、1/20 WST-1含有培地を100μl添加し、さらに18時間インキュベートした。
【0177】
生細胞によってWST-1が減少することにより生成された、黄色のホルマザン染料の強度は、ウイルス滴定アッセイの終わりにウェル内に存在する生細胞数に比例しており、適切波長(450nm)で各ウェルの吸光度を測定することによって定量される。カットオフは、非感染対照細胞のOD平均と定義される-0.3 OD(0.3 ODは、感染対照細胞のODの+/-3標準偏差に対応する)。正のスコアは、ODがカットオフ未満である場合と定義され、これとは対照的に負のスコアは、ODがカットオフよりも大きい場合と定義される。ウイルス排出力価は、「Reed and Muench」によって測定し、Log TCID50/mlとして表した。
【0178】
I.3. ヒトにおける免疫応答を評価するためのアッセイ
I.3.1. 赤血球凝集抑制アッセイ
免疫応答を、WHO Collaborating Centre for influenza, Centres for Disease Control, Atlanta, USA(1991)に記載されている方法を使用してHI抗体を測定することにより決定した。
【0179】
抗体力価測定は、適切な抗原の4つの赤血球凝集抑制単位(4HIU)および0.5%トリ赤血球懸濁液を使用した、標準化されかつ全体が有効とされたマイクロメソッドにより、解凍した凍結血清サンプルに関して実施した。非特異的血清抑制剤は、熱処理および受容体破壊酵素によって除去した。
【0180】
得られた血清のHI抗体レベルを評価した。初期希釈1:10から開始して、最終希釈が1:20480になるまで、一連の希釈物(2倍)を調製した。滴定終点は、赤血球凝集の完全な抑制(100%)を示す最高希釈ステップと解釈した。すべてのアッセイは、2連で行った。
【0181】
I.3.2. ノイラミニダーゼ阻害アッセイ
このアッセイは、フェチュインでコーティングされたマイクロタイタープレートで行った。抗血清の連続2倍希釈物を調製し、標準量のインフルエンザA H3N2、H1N1、またはインフルエンザBウイルスと混合した。試験は、酵素作用によってフェチュインからノイラミン酸を放出するノイラミニダーゼの生物活性を基にした。末端ノイラミン酸の切断後、β-D-ガラクトース-N-アセチル-ガラクトサミンをアンマスキングした。ピーナツから得られた、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)で標識されたピーナツアグルチニンは、ガラクトース構造に特異的に結合するものであるが、このピーナルアグルニチンをウェルに添加した。結合したアグルチニンの量を、テトラメチルベンジジン(TMB)との基質反応で検出し、定量することができる。ウイルスノイラミニダーゼ活性を、依然として少なくとも50%阻害する最高抗体希釈率を、NI力価として示した。
【0182】
I.3.3. 中和抗体アッセイ
中和抗体測定を、解凍した凍結血清サンプルに関して実施した。血清に含有される抗体によるウイルス中和は、マイクロ中和アッセイで測定した。各血清について、3重に試験をした。標準量のウイルスを、血清の連続希釈物と混合し、抗体とウイルスとが結合するようにインキュベートした。次いで定義された量のMDCK細胞を含有する細胞懸濁液を、ウイルスと抗血清との混合物に添加し、33℃でインキュベートした。インキュベーション期間の後、ニワトリ赤血球の赤血球凝集によって、ウイルス複製を視覚化した。血清の50%中和力価を、Reed and Muenchの方法によって計算した。
【0183】
I.3.4. サイトカインフローサイトメトリー(CFC)によって細胞媒介性免疫を評価した
末梢血抗原特異的CD4およびCD8 T細胞は、これらに対応する抗原と共にインキュベートする場合にはIL-2、CD40L、TNF-α、およびIFNが生成されるように、in vitroで再刺激することができる。その結果、細胞内サイトカイン産生と同様に、細胞表現型の従来の免疫蛍光標識の後、フローサイトメトリーによって、抗原特異的CD4およびCD8 T細胞を数え上げることができる。本発明の研究では、インフルエンザワクチン抗原ならびに特定のインフルエンザタンパク質由来のペプチドを、インフルエンザ特異的T細胞を再刺激する抗原として使用した。結果は、CD4またはCD8 T細胞部分集団内のサイトカイン陽性CD4またはCD8の頻度として表した。
【0184】
I.3.5. 統計的方法
I.3.5.1. 主要エンドポイント
・ワクチン接種後7日間のフォローアップ期間(すなわち、ワクチン接種の日およびそれに続く6日間)中および全体の、求められた局所および全身の徴候および症状の、パーセンテージ、強度、およびワクチン接種との関係。
・ワクチン接種後21日間のフォローアップ期間(すなわち、ワクチン接種の日およびそれに続く20日間)中および全体の、求められていない局所および全身の徴候および症状の、パーセンテージ、強度、およびワクチン接種との関係。
・全体的な研究の最中の、重篤な有害事象の発生。
【0185】
I.3.5.2. 副次的エンドポイント
液性免疫応答:
観察された変数:
・0日目および21日目:ワクチン中に提示される3種のインフルエンザウイルス株(抗H1N1、抗H3N2、および抗B抗体)のそれぞれに対して別々に試験がなされた、血清赤血球凝集抑制(HI)およびNI抗体力価。
・0日目および21日目:ワクチン中に提示される3種のインフルエンザウイルス株に対して別々に試験がなされた、中和抗体力価。
【0186】
得られた変数(95%信頼区間):
・ワクチン接種前後の95%信頼区間での、血清HI抗体の幾何平均力価(GMT)。
・21日目、95%CIでのセロコンバーション率
*
・21日目、95%CIでのコンバーション係数
**
・21日目、95%CIでの血清保護率
***
・すべての時点での血清NI抗体GMT(95%信頼区間)。
*セロコンバーション率は、各ワクチン株に関し、0日目に比べて21日目に血清HI力価が少なくとも4倍増加している被ワクチン接種体のパーセンテージと定義される。
**コンバーション係数は、各ワクチン株に関する、0日目と比べた21日目の血清HI GMTの倍数増加と定義される。
***保護率は、通常は指示される保護として許容される、ワクチン接種後(各ワクチン株毎)の、血清HI力価=40での被ワクチン接種体のパーセンテージと定義される。
【0187】
細胞媒介性免疫(CMI)応答の場合
観察された変数
0日目および21日目:種々の試験における、10
6当たりのサイトカイン陽性CD4/CD8 T細胞の頻度。
【0188】
各試験は、下記の事項に対するCD4/CD8 T細胞の応答を定量する:
・ペプチドインフルエンザ(pf)抗原(これら抗原の厳密な性質および起源を得ること/説明することが必要である)
・スプリットインフルエンザ(sf)抗原
・全インフルエンザ(wf)抗原。
【0189】
得られた変数:
・少なくとも2種のサイトカイン(CD40L、IL-2、IFNγ、TNFα)を産生する細胞
・少なくともCD40Lおよび別のサイトカイン(IL-2、TNFα、IFNγ)を産生する細胞
・少なくともIL-2および別のサイトカイン(CD40L、TNFα、IFNγ)を産生する細胞
・少なくともIFNγおよび別のサイトカイン(IL-2、TNFα、CD40L)を産生する細胞
・少なくともTNFαおよび別のサイトカイン(IL-2、CD40L、IFNγ)を産生する細胞
【0190】
I.3.5.3. 免疫原性の分析
免疫原性の分析は、ワクチン接種したコホートすべてを基にした。各治療群毎に、下記のパラメータ(95%信頼区間で)を計算した:
・0日目および21日目のHIおよびNI抗体力価の幾何平均力価(GMT)
・0日目および21日目の中和抗体力価の幾何平均力価(GMT)。
・21日目のコンバーション係数。
・21日目のセロコンバーション率(SC)は、0日目に比べて21日目の血清HI力価が少なくとも4倍増加しいる被ワクチン接種体のパーセンテージと定義される。
・21日目の保護率は、血清HI力価=1:40である被ワクチン接種体のパーセンテージと定義される。
・応答中に分泌されるCD4/CD8 Tリンパ球の頻度を、各ワクチン接種群毎に、各時点毎に(0日、21日目)、各抗原毎に(ペプチドインフルエンザ(pf)、スプリットインフルエンザ(sf)、および全インフルエンザ(wf))、まとめた(記述統計)。
・5つの異なる試験毎の、各ワクチン接種群および各抗原(pf、sf、およびwf)毎の、時点(後-前)応答間の個々の相違の記述的統計。
・ノンパラメトリック検定(クルスカル-ワリス検定)を使用して、3つの群の間での位置の相違を比較し、統計的p値を、5つの異なる試験毎に、各抗原に関して計算した。すべての有意検定は、両側検定であった。0.05以下のP値を、統計的に有意と見なした。
【0191】
実施例II
水中油型エマルジョンおよびアジュバント製剤の調製および特徴付け
他に特に指示しない限り、後続の実施例で使用される油/水エマルジョンは、2種の油(α-トコフェロールおよびスクアレン)から作製された有機層と、乳化剤としてTween80を含有するPBSの水相とからなる。他に特に指示しない限り、後続の実施例で使用される水中油型エマルジョンアジュバント製剤は、下記の水中油型エマルジョン成分(所与の終濃度)、すなわちスクアレン2.5%(v/v)、α-トコフェロール2.5%(v/v)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン0.9%(v/v)(Tween80)を含むものが作製され、WO95/17210を参照されたい。後続の実施例ではAS03と呼ばれるこのエマルジョンは、2倍濃縮物として下記の通り調製した。
【0192】
II.1. エマルジョンSB62の調製
II.1.1. 実験室規模の調製
Tween80を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解して、2%PBS溶液を得た。100mlの2倍濃縮物エマルジョンを得るために、DLα-トコフェロール5gおよびスクアレン5mlを撹拌して完全に混合した。PBS/Tween溶液90mlを添加し、完全に混合した。次いで得られたエマルジョンをシリンジに通し、最終的に、M110Sミクロ流体マシンを使用してミクロ流動化する。得られた油滴は、約120〜180nmのサイズ(PCSによって測定されたZ平均として表す)を有している。その他のアジュバント/抗原成分をエマルジョンに添加して、簡単に混合する。
【0193】
II.1.2. スケールアップした調製
SB62エマルジョンの調製は、疎水性成分(α-トコフェロールおよびスクアレン)からなる油相と、水溶性成分(Tween80およびPBS(変性)、pH6.8)を含有する水相とを強く撹拌しながら混合することによって行う。撹拌しながら、油相(1/10全体積)を水相(9/10全体積)に移し、混合物を室温で15分間撹拌する。次いで得られた混合物を、ミクロ流動化器(15000 PSI-8サイクル)の相互作用チャンバ内で剪断力、衝撃力、および空洞力にかけることにより、サブミクロンの液滴(100から200nmの間の分布)が生成される。得られたpHは、6.8±0.1の間である。次いでSB62エマルジョンを、0.22μm膜に通す濾過によって滅菌し、滅菌バルクエマルジョンを、2〜8℃のCupac容器に冷蔵保存する。滅菌不活性ガス(窒素またはアルゴン)を、少なくとも15秒間、SB62エマルジョンの最終バルク容器の死空間に一気に流す。
【0194】
SB62エマルジョンの最終的な組成は、下記の通りである:
Tween80:1.8%(v/v) 19.4mg/ml; スクアレン:5%(v/v) 42.8mg/ml; α-トコフェロール:5%(v/v) 47.5mg/ml; PBS-mod:NaCl 121mM、KCl 2.38mM、Na
2HPO
4 7.14mM、KH
2PO
4 1.3mM; pH6.8±0.1。
【0195】
II.2. 油滴サイズ動的光散乱の測定
II.2.1. 概要
油滴の直径のサイズを、下記の手順に従って、かつ下記の実験条件下で決定する。液滴サイズの測定は、強度測定として行われ、PCSにより測定されるZ平均として表される。
【0196】
II.2.2. サンプルの調製
サイズの測定を、水中油型エマルジョンアジュバントで行い:SB62はスケールアップ方法に従って調製し、AS03およびAS03+MPL(50μg/ml)、最後の2つは使用直線に調製した。サンプルの組成物を、以下に示す(セクション2.2.4.参照)。サンプルを、PBS 7.4中で4000×〜8000×に希釈した。
【0197】
対照として、PL-Nanocal粒度標準100nm(カタログ番号6011-1015)を10mM NaCl中に希釈した。
【0198】
II.2.3. Malvern Zetasizer 3000HSサイズ測定
すべてのサイズ測定は、共にMalvern Zerasizer 3000HSで行った。サンプルを、適切な希釈率(通常は、サンプル濃度に応じて4000×から20000×)で、かつ2つの光学モデルを用いて、すなわち
-実際の粒子屈折率が0であり、想像上の屈折率も0であるモデル、
-あるいは、実際の粒子屈折率が1.5であり、想像上の屈折率が0.01であるモデル(文献中に見出された値に従って適合された光学モデル)
を用いて、Malvern分析用のプラスチックのキュベットで測定した。
【0199】
技術的条件は、
-レーザ波長:532nm(Zeta3000HS)、
-レーザ出力:50mW(Zeta3000HS)、
-90℃で検出された散乱光(Zeta3000HS)、
-温度:25℃、
-所要時間:ソフトによる自動測定、
-数:3つの連続した測定値、
-z平均直径:キュムラント解析による、
-サイズ分布:Continまたは自動方法による
という条件であった。
【0200】
自動Malvernアルゴリズムは、キュムラント、Contin、および非負最小2乗(NNLS)アルゴリズムの組合せを使用する。
【0201】
強度分布は、Mie理論のおかげで体積分布に変換することができる。
【0202】
II.2.4. 結果(表2参照)
キュムラント解析(Z平均直径):
【表2】
【0203】
Z平均直径(ZAD)サイズは、サンプル中の各サイズの粒子によって散乱した光の量によって計った。この値は、サンプルの単峰性分析に関連しており、主に再現を目的に使用される。
【0204】
計数率(CR)は、散乱光の尺度であり、秒当たり何千個の光子に相当する。
【0205】
多分散性(Poly)インデックスは、分布の幅である。これは、分布の広さの無次元測定値である。
【0206】
Cotinおよび自動分析:
2種のその他のSB62の調製(2倍濃縮したAS03)を行い、下記のわずかな変更を行いつつ、上記にて説明した手順に従って評価した。
【0207】
最適な計数率の値が得られると決定された2つの希釈率で、サンプルを、Malvern分析用のプラスチックのキュベットで測定した:Zetasizer3000HSの場合に10000×および20000×、上記実施例で使用したものと同じ光学モデル。
【0208】
結果を表3に示す。
【表3】
【0209】
これらの結果の概略的な表示を、製剤1023に関する
図1に示す。図示されるように、大部分の粒子(例えば少なくとも80%)は、強度毎に300nm未満の直径を有する。
【0210】
II.2.5. 全体的な結論
SB62製剤は、Malvern Zetasizer 3000HSおよび2つの光学モデルを用いて、種々の希釈率で測定した。上記にて評価された製剤の粒度ZAD(すなわち、キュムラント解析による強度の平均)は、150〜155nm程度であった。
【0211】
キュムラント解析を使用したとき、本発明者らは、希釈率がZADおよび多分散性に何の影響も及ぼさないことを見出した。
【0212】
II.3. MPLを含むAS03の調製
II.3.1. MPL懸濁液の調製
MPL(文書の最初から終わりまで通して使用されるように、3D-MPL、すなわち3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドAの略語である)液体バルクを、MPL(登録商標)凍結乾燥粉末から調製する。MPL液体バルクは、ワクチンまたはアジュバント製剤としてすぐに使用できる、原材料の安定な濃縮(1mg/ml程度)水性分散液である。調製プロセスの概略的な説明を、
図2に示す。
【0213】
最大バッチサイズが12gの場合、MPL液体バルクの調製は、滅菌ガラス容器上で行う。MPLの分散液は、下記のステップからなる。
-MPL粉末を、注射用蒸留水に懸濁させる。
-加熱することによって(熱処理)、あらゆる大きな凝集体の、凝塊を行う。
-ミクロ流動化によって、粒度を100nmから200nmの間に縮小させる。
-調製物を、Sartocleanプレフィルターユニット、0.8/0.65μmで事前に濾過する。
-調製物を室温で滅菌濾過する(Sartobran Pユニット、0.22m)。
【0214】
MPL粉末を、ミクロ流動化によって凍結乾燥し、その結果、安定なコロイド状水性分散液にする(MPL粒度は200nmより小さい)。MPL凍結乾燥粉末を、粗製の10mg/ml懸濁液を得るために、注射用蒸留水に分散させる。次いで懸濁液を、撹拌しながら熱処理にかける。室温に冷却後、粒度を低下させるために、ミクロ流動化を開始する。ミクロ流動化は、最小限の通過量(サイクル数:n
min)に関して定められた圧力で、ミクロ流動化相互作用チャンバ内全体に分散液を連続的に循環させることにより、Microfluidics装置M110EHを使用して実施する。サイクル数を表すミクロ流動化の所要時間は、測定された流量および分散体積に基づいて計算する。所与の圧力の所与の装置では、得られた流量は、1つの相互作用チャンバから別のチャンバに至るまで、また特定の相互作用チャンバのライフサイクルの最初から終わりに至るまで、様々に変わる可能性がある。本実施例では、使用される相互作用チャンバは、タイプF20Y Microfluidicsのものである。ミクロ流動化効率は、圧力-流量の組合せに関連しているので、処理時間は、1つのバッチと別のバッチとの間で異なる可能性がある。1サイクルに必要とされる時間は、流量を基に計算される。考えられる流量は、装置にMPLを導入する直前の、注射用蒸留水で測定された流量である。1サイクルを、MPLの全体積が装置内を1回通過するのに必要とされる時間(単位:分)と定義する。Nサイクルを得るのに必要な時間は、下記の通り計算する。
n×処理されるMPLの量(ml)/流量(ml/分)
【0215】
したがってサイクル数は、相応に適合される。実施されるサイクルの分数(n
min)を、使用される好ましい装置および相互作用チャンバに関して記述する。実行されるサイクルの量全体は、n
minサイクル後に行われる粒度測定の結果によって決定される。粒度限界(d
lim)は、履歴データを基に定義される。測定は、光子相関分光法(PCS)技法によって実現され、d
limは、単一モード結果(Z
平均)として表す。この限界より下では、ミクロ流動化をn
minサイクル後に停止することができる。この限界より上では、さらに最大50サイクルの間で、満足のいくサイズ縮小が得られるまでミクロ流動化を継続させる。
【0216】
ミクロ流動化の直後に濾過を行わない場合、濾過領域に移されるのを待ちながら、分散させたMPLを+2から+8℃で保存する。
【0217】
ミクロ流動化後、分散液を注射用蒸留水で希釈し、層流中で0.22μmフィルターに通して滅菌濾過する。最終的なMPL濃度は1mg/ml(0.80〜1.20mg/ml)である。
【0218】
II.3.2. AS03+MPLアジュバントワクチンの調製:1バイアルアプローチ
AS03アジュバント製剤にMPLを添加し、終濃度を、ワクチン用量当たり10から50μgにした。
【0219】
PBS 10倍濃縮物(1倍濃縮の場合、pH7.4)、ならびにTween、Triton X-100、およびVES(コハク酸ビタミンE)を含有するSB62混合物を、注射用蒸留水に添加する。これらの量は、目標とする終濃度がTween80では750μg/ml、Triton X-100では110μg/ml、VESでは100μg/mlに到達するような、インフルエンザ株に存在する界面活性剤を考慮に入れている。5分間の撹拌後、問題となっている各インフルエンザ株(例えば、古典的3価ワクチン中の株H1N1、H3N2、およびB)を15μg添加する。15分の撹拌後、SB62エマルジョン250μlを添加し、次いでMPLを25μgまたは50μg添加する。
【0220】
調製プロセスの概略図を、
図3に示す。ヒト用量当たりの、MPLを含むAS03の最終粗製を表4に示す。
【表4】
【0221】
II.3.3. AS03+MPLアジュバントワクチンの調製:2バイアルアプローチ
同じ製剤は、2倍に濃縮した抗原または抗原性調製物を、AS03(SB62 250μl)またはAS03+MPL(SB62 250μl+MPL 25μgまたは50μg)アジュバントと混合することによって、2バイアルアプローチから調製することができる。この場合、調製は下記の通り進行する。AS25アジュバント添加インフルエンザワクチンの製造は、3つの主なステップからなる:
1)アジュバントを含まない3価の最終バルク(2×濃縮)の配合および抗原容器内への充填
2)AS03+MPLアジュバントの調製
3)AS03+MPLアジュバントスプリットウイルスワクチンの即時溶解。
【0222】
1)アジュバントを含まない3価の最終バルクの配合および抗原容器内への充填
3つの1価のバルクの体積は、配合前に1価のバルクそれぞれで測定されたHA含量と、目標体積1100mlとを基にしている。濃縮したリン酸緩衝生理食塩水と、Tween80、Triton X-100、およびコハク酸水素α-トコフェリル(α-tocopheryl hydrogen succinate)のプレミックスとを、注射用蒸留水で希釈する。次いで3つの濃縮モノバルク(A/New Caledonia、A/ニューヨーク、B/Jiangsu)を、得られたリン酸緩衝生理食塩水/Tween80-Triton X-100-コハク酸水素α-トコフェリル溶液(pH7.4、NaCl 137mM、KCl 2.7mM、Na
2HPO
4 8.1mM、KH
2PO
4 1.47mM、Tween80 990μg/ml、Triton X-100 150μg/ml、およびコハク酸水素α-トコフェリル130μg/ml)中に連続的に希釈して、最終的に、3価の最終バルク1ml当たりA株(H1N1、H3N2)のHAが39.47μg(15μg HA/A株/380μl 3価の最終バルク)、およびB株のHAが46μg(17.5μg HA/B株/380μl 3価の最終バルク)の濃度になるようにする。1価のバルクのそれぞれを添加する合間に、混合物を室温で10〜30分間撹拌する。最後の1価のバルクを添加して15〜30分間撹拌した後、pHを検査し、HClまたはNaOHで7.2±0.2に調節する。
【0223】
抗原の3価の最終バルクを、無菌状態で3mlの滅菌I型(Ph. Eur.)ガラスバイアルに満たす。各バイアルは、470μlの容積を有する(380μl+90μl 一杯にする)。
【0224】
2)AS03/MPLアジュバントバルクの調製およびアジュバント容器への充填
アジュバントAS03/MPLは、2成分、すなわちSB62エマルジョン(セクション2.1.2.の方法)およびMPL(セクション2.3.1.の方法)を混合することによって調製する。SB62バルクおよびMPL液体バルクを1mg/mlで含む、1倍濃縮PBS mod(10×濃縮PBS modを注射用蒸留水で希釈することによって調製された)。MPLの濃縮は、最終含量が、最終的なヒトワクチン用量当たり10から50μgの間になるように、好適には25μg程度になるように決定されることになる。混合物を、室温で5〜30間撹拌し、pHを、NAOH(0.05または0.5M)/HCl(0.03Mまたは0.3M)で6.8±0.1に調節する。室温でさらに5〜30分間撹拌した後、混合物を、0.22μmの膜に通して濾過することにより滅菌する。滅菌不活性ガス(窒素)のフラッシングを行って、最短で1分の間に充填容器内に不活性死空間を生成する。滅菌AS03+MPLアジュバントを、1.25ml滅菌I型(Ph.Eur.)ガラスシリンジに無菌状態で充填するまで、+2〜8℃で保存する。各シリンジは、80μlを超える容積を有する(320μl+80μl 一杯にして)。
【0225】
注射の時、アジュバントが入っている事前充填済みのシリンジの内容物は、濃縮された3価の不活化スプリットビリオン抗原が入っているバイアルに注入される。混合した後、その内容物をシリンジ内に引き出し、針を、筋肉内針と交換する。溶かして元に戻したAS25アジュバント添加インフルエンザ候補ワクチンの1回の用量は、0.7mLに相当する。
【0226】
II.4. 水中油型エマルジョン製剤中にインフルエンザ抗原および場合によってMPLを含む免疫原性組成物の調製
II.1のSB62エマルジョンに、等体積の2倍濃縮スプリットインフルエンザ抗原(Fluarix(商標))(株当たりHA 15μg)を添加し、混合した。これを、適切な場合には50μg/mlのMPLと一緒にして、最終的な製剤を得た。
【0227】
実施例III
スプリットインフルエンザ抗原調製物およびAS03アジュバントを含有するワクチンを用いた65歳以上の高齢者集団における臨床試験(Explo-Flu-001)
アジュバントAS03を含有するGlaxoSmithKline Biologicalsインフルエンザ候補ワクチンの反応原性および免疫原性を評価するために、第1相オープン無作為試験を、2003年に65歳以上の高齢者集団で実施した。液性免疫応答(すなわち、抗赤血球凝集素、中和、および抗ノイラミニダーゼ抗体力価)および細胞媒介性免疫応答(CD4および/またはCD8T細胞応答)を、AS03アジュバントワクチンまたはWVワクチンの1回分用量を筋肉内投与してから21日後に測定した。Fluarix(商標)を参照として使用した。
【0228】
III.1. 試験の設計
3群の対象に、並行して下記のワクチンを筋肉内投与した。
・50名の対象の1群には、1回分用量の、溶解して元に戻したアジュバントSVインフルエンザワクチン(FluAS03)を投与した。
・50名の対象の1群には、1回分用量の、全ウイルスインフルエンザワクチン(FluWVV)を投与した。
・50名の対象の1群には、1回分用量のFluarix(商標)を下記の対照ワクチン接種スケジュールで投与した:0日目にインフルエンザワクチンを1回注射、血液サンプル採取、21日目に読取り分析(HI抗体測定、NI抗体測定、中和抗体の測定、およびCMI分析)、試験終了。
【0229】
この試験で使用した標準的な3価のスプリットインフルエンザワクチン-Fluarix(商標)は、GlaxoSmithKline Biologistsによって2003年から開発され製造された市販のワクチンである。
【0230】
III.2. ワクチンの組成物および投与(表5)
III.2.1 ワクチンの調製
AS03アジュバント添加インフルエンザワクチン
AS03アジュバント添加インフルエンザワクチン候補は、I型ガラスバイアル(335μl)(抗原容器)内にある濃縮3価不活化スプリットビリオン抗原と、SB62エマルジョンが入っている事前充填式シリンジ(335μl)(アジュバント容器)からなる2成分ワクチンである。注射の時、抗原容器の内容物を、SN62エマルジョン事前充填式シリンジの助けを借りて除去し、その後、シリンジを穏やかに混合する。SB62エマルジョンとワクチン抗原との混合によって、AS03アジュバントが再構成される。注射の前に、使用済みの針を筋肉内針に代え、体積を500μlに補正する。
【0231】
再構成されたAS03アジュバント添加インフルエンザワクチンの1回分用量は、0.5mlに相当し、登録されたFluarix(商標)/α-Rix(登録商標)ワクチンの場合と同様に各インフルエンザウイルス株のHAを15μg含有し、スクアレンを10.68mg、DL-α-トコフェロールを11.86mg、およびポリソルベート80(Tween80)を4.85mg含有する。
【0232】
調製
AS03アジュバント添加インフルエンザワクチンの製造は、3つの主なステップからなる。
【0233】
1)アジュバントを含まない3価の最終バルクの配合および抗原容器内への充填
3つの1価のバルクの体積は、配合前に1価のバルクそれぞれで測定されたHA含量と、目標体積800mlとを基にしている。濃縮したリン酸緩衝生理食塩水と、Tween80、Triton X-100、およびコハク酸水素α-トコフェリルのプレミックスとを、注射用蒸留水で希釈する。次いで3つの濃縮モノバルク(株A/New Caledonia、株A/Panama、および株B/Shangdong)を、得られたリン酸緩衝生理食塩水/Tween80-Triton X-100-コハク酸水素α-トコフェリル溶液(pH7.4、NaCl 137mM、KCl 2.7mM、Na
2HPO
4 8.1mM、KH
2PO
4 1.47mM、Tween80 1500μg/ml、Triton X-100 220μg/ml、およびコハク酸水素α-トコフェリル200μg/ml)中に連続的に希釈して、最終的に、3価の最終バルク1ml当たりA株のHAが60μg(15μg HA/A株/250μl 3価の最終バルク)、およびB株のHAが70μg(17.5μg HA/B株/250μl 3価の最終バルク)の濃度になるようにする。1価のバルクのそれぞれを添加する合間に、混合物を室温で10分間撹拌する。最後の1価のバルクを添加して150分間撹拌した後、pHを検査し、HClまたはNaOHで7.2±0.2に調節する。
【0234】
抗原の3価の最終バルクを、無菌状態で3mlの滅菌I型ガラスバイアルに満たす。各バイアルは、34%の体積超過を含む(全容積は335μl)。
【0235】
2)SB62エマルジョン滅菌バルクの調製、およびアジュバント容器への充填
・水相:撹拌しながら、Tween80 902mlをPBS-mod緩衝液(HClで調節した後のpH=6.8)44105mlと混合する。
・油相:撹拌しながら、スクアレン2550mlをα-トコフェロール2550mlに添加する。
・水相と油相の混合:撹拌しながら、油相5000ml(全体積の1/10)を水相45007ml(全体積の9/10)に移す。この混合物を、室温で15分間撹拌する。
・乳化:得られた混合物を、ミクロ流動器の相互作用チャンバ内で剪断力、衝撃力、および空洞力にかけて(15000PSI-8サイクル)、サブミクロンの液滴(100から200nmの間の分布)を生成する。得られたpHは、6.8±0.1の間である。
・滅菌濾過:SB62エマルジョンを、0.22μm膜に通す濾過によって滅菌し、滅菌バルクエマルジョンを、Cupac容器内で2から8℃に冷蔵保存する。滅菌不活性ガス(窒素またはアルゴン)を、少なくとも15秒間、SB62エマルジョンの最終バルク容器の死空間に一気に流す。
【0236】
与えられた成分の量のすべては、エマルジョンを50L調製するためのものであり、体積を単位として示される。実際に、量は、成分の密度を考慮して計量される。PBSの密度は、1に等しいと考えられる。
【0237】
SB62エマルジョンの最終組成は下記の通りである。
【表5】
【0238】
次いで滅菌SB62バルクエマルジョンを、1.25mlの滅菌I型ガラスシリンジに無菌状態で充填する。各シリンジは、34%の体積超過を含む(全容積は335μl)。
【0239】
3)AS03アジュバントスプリットウイルスワクチンの即時溶解
注射の時、濃縮した3価の不活化スプリットビリオン抗原が入っているバイアルの内容物を、SB62エマルジョンが入っているシリンジの助けを借りてバイアルから除去し、その後、シリンジを穏やかに混合する。SB62エマルジョンとワクチン抗原との混合によって、AS03アジュバントが再構成される。
【0240】
III.2.2. ワクチンの組成(表6)および投与
【表6】
【0241】
ワクチンを、利き腕ではない方の腕の三角筋部に、筋肉内投与した。ワクチン接種後に稀なアナフィラキシー反応が出た場合に適切な医療が容易に受けられる状態で、被ワクチン接種者を少なくとも30分間綿密に観察した。
【0242】
III.3. 試験集団の結果
この試験では、合計148名の対象を登録し、49名の対象をFluAS03群に、49名の対象をFluarix群に、50名の対象をFluWVV群に登録した。ワクチン接種時の、ワクチン接種した全コホートの平均年齢は、71.8歳であり、標準偏差は6.0歳であった。3種のワクチン群全体にわたる対象の平均年齢および性別の分布は、類似していた。
【0243】
III.4. 安全性の結論
AS03でアジュバント添加されたインフルエンザワクチンの投与は、安全であり、試験集団において、すなわち65歳以上の高齢者において臨床上十分に耐えられるものである。
【0244】
III.5. 免疫原性の結果
免疫原性の分析を、ワクチン接種した全コホートについて行った。
【0245】
III.5.1. 液性免疫応答
AS03アジュバントワクチンにより誘発された液性免疫応答を評価するために、下記のパラメータ(95%信頼区間で)を各治療群毎に計算した。
・0日目および21日目のHIおよびNI抗体力価の幾何平均力価(GMT)
・0日目および21日目の中和抗体力価の幾何平均力価(GMT)。
・21日目のセロコンバーション率(SC)は、0日目に比べて21日目の血清HI力価が少なくとも4倍増加しいる被ワクチン接種者のパーセンテージと定義される。
・21日目の変換計数は、各ワクチン株毎に、0日目と比べた21日目の血清HI GMTでの倍数増加と定義される。
・21日目の保護率は、血清HI力価=1:40である被ワクチン接種者のパーセンテージと定義される。
【0246】
III.5.1.1. 抗赤血球凝集素抗体応答
a)HI幾何平均力価(GMT)
95%CIでのHI抗体に関するGMTを、表7に示す(抗HI抗体に関するGMT)。すべてのワクチン株に関する抗体の、ワクチン接種前のGMTは、3つの群で同じ範囲内にあった。ワクチン接種後、抗赤血球凝集素抗体レベルが著しく増加した。ワクチン接種後は、FluAS03群およびFluarix群において、3種のワクチン株すべてに関するHI抗体のGMTが、より高くなる傾向があったが、Fluarix群とFluWVV群との間には、95%CIでいくらか重複があった。
【表7】
【0247】
b)抗HI抗体力価のコンバーション係数、血清保護率、およびセロコンバーション率(ヒトにおける保護では相関する)
結果を表8に示す。
【0248】
コンバーション係数は、0日目と比べた21日目の各ワクチン株毎の、血清HI GMTの倍数増加を表す。コンバーション係数は、ウイルス株およびワクチンに応じて6.1から13.6まで変化する。このコンバーション係数は、欧州当局(European Authorities)により要求されるGMTの2.0倍増加よりも大きく上回っている。
【0249】
血清保護率は、21日目に血清HI力価が40以上である対象の割合を表す。試験の冒頭で、すべての群の対象の半分(34.0%〜69.4%の範囲)は、21日目にすべての株に対する抗体を保護レベルで有しており、3つの群の血清保護率は、種々のウイルス株に関して88.0%から100%に及んでいた。保護の観点から、これは、ワクチン接種後に88%を超える対象が40以上の血清HI力価を有しており、3種の株に対して保護されることが考えられることを意味している。この率は、欧州当局によって60歳以上の高齢者集団で必要とされる60%という血清保護率を、大きく上回っている。
【0250】
セロコンバーション率は、0日目に比べて21日目に、血清HI力価が少なくとも4倍の増加を示す、対象の割合を表す。3種の株に関する全体的な応答速度は、3つの群において本質的に等しかった。有効であると考えるために、かつ欧州連合によれば、ワクチンは、60歳の集団において30%よりも高いセロコンバーション率をもたらすべきである。この試験では、セロコンバーション率が、3つの群において50%よりも高かった。
【表8】
【0251】
終わりに:
・ワクチン接種後は、FluAS03群およびFluarix群において、3種のワクチン株すべてに関するHI抗体のGMTがより高くなる傾向があったが、Fluarix群とFluWVV群との間には、95%CIでいくらか重複があった。
【0252】
・コンバーション係数は、ウイルス株およびワクチンに応じて6.1から13.6まで変化する。このコンバーション係数は、欧州当局により要求されるGMTの2.0倍増加よりも大きく上回っている。
【0253】
・21日目に、3つの群の血清保護率は、種々のウイルス株に関して88.0%から100%に及んだ。この率は、欧州当局によって60歳以上の高齢者集団で必要とされる60%という血清保護率を、大きく上回っている。
【0254】
・この試験では、セロコンバーション率が、3つの群に関して50%よりも大きかった。3種の株の全体的な応答速度は、3つの群において本質的に等しかった。
【0255】
III.5.1.2. 中和抗体力価
高齢者におけるインフルエンザワクチン接種に対する免疫応答をより良く特徴付けるため、中和抗原に対する血清抗体応答について評価した。結果を表9(抗中和抗体力価に対する血清保護率および幾何平均力価(GMT))および表10(ワクチン接種後、21日目の、抗中和に対するセロコンバーション率(倍数増加=4))に示す。
【0256】
3種のインフルエンザ株に対する中和抗体の力価を、免疫前後の血清に関して測定した。下記のパラメータを測定した。
・ワクチン接種前後の、95%信頼区間(95%CI)での血清中和抗体の幾何平均力価(GMT)
・各ワクチン株毎に、0日目と比べて21日目に、HI力価の少なくとも4倍増加を示す被ワクチン接種者のパーセンテージと定義された、21日目の95%CIでのセロコンバーション率
【0257】
【表9】
【0258】
【表10】
【0259】
主な知見は、下記の通りである。
【0260】
・21日目の3種のワクチンに関し、両方のA株で血清保護率100%が得られる。B株の場合、3つの群における血清保護率は、92%から100%に及んだ。
【0261】
・ワクチン接種後に、3つの群ではすべての株に関してGMTの著しい増加があった。しかしFluAS03群およびFluarix群では、FluWVVよりも、3種のワクチン株すべてに関するHI抗体のGMTがより高くなる傾向があったが、Fluarix群とFluWVV群との間には、95%CIでいくらか重複があった。
【0262】
・セロコンバーション率の場合、3種の株に関する全体的な応答速度は、3つの群で本質的に等しかった。
【0263】
すべての群において、その結果は、抗赤血球凝集素抗体に関して実施された分析から得られた結果と一致していた。
【0264】
III.5.1.3 ノイラミニダーゼ(NA)抗体力価
高齢者集団におけるインフルエンザワクチン接種に対する免疫応答を、より良く特徴付けるため、ノイラミニダーゼ抗原に対する血清抗体応答について評価した。HI抗体力価と同様に、下記のエンドポイントを測定した。
・GMT(log力価変換の平均の逆logを得る)
・各ワクチン株毎に、0日目に比べて21日目にHI力価が少なくとも4倍増加していることを示す、被ワクチン接種者のパーセンテージと定義されたセロコンバーション率
【0265】
95%CIでのNI抗体に関するGMTおよびセロコンバーション率を、表11(抗NA抗体GMT)および表12(ワクチン接種後のNAのセロコンバーション率(21日目)(4倍増加))に示す。
【表11】
【0266】
【表12】
【0267】
主な知見は、下記の通りである。
【0268】
・より高い値のGMTおよびセロコンバーション率が、ノイラミニダーゼの場合よりも赤血球凝集素の場合に観察された。
【0269】
・すべてのワクチン株に関する抗体の、ワクチン接種前のGMTは、3つの群において同じ範囲内にあった。ワクチン接種後、抗ノイラミニダーゼ抗体レベルが著しく増加した。ワクチン接種後のHI抗体力価については、FluAS03群およびFluarix群における3種のワクチン株すべてに関してHI抗体のGMTがより高くなる傾向があったが、Fluarix群とFluWVV群との間には、95%CIにいくらか重複があった。
【0270】
・セロコンバーション率に関し、3種の株に関する全体的な応答速度は、3つの群において、かつ3種の株に関して本質的に等しかった。
【0271】
本発明者らの結果は、インフルエンザに対してこの試験でワクチン接種を受けた健康な高齢者が、どのようなインフルエンザワクチンであっても、ノイラミニダーゼ抗原に対して良好な抗体応答を誘発することを示している。しかし、ノイラミニダーゼ抗原に対する応答は、赤血球凝集素抗原に対する応答よりも弱い。
【0272】
III.5.2. 細胞免疫応答
末梢血抗原特異的CD4およびCD8 T細胞は、これらに対応する抗原と共にインキュベートする場合、IL-2、CD40L、TNF-α、およびIFNγを生成するために、in vitroで再刺激を受けることができる。その結果、細胞内サイトカイン産生と同様に、細胞表現型の従来の免疫蛍光標識の後、フローサイトメトリーによって抗原特異的CD4およびCD8 T細胞を数え上げることができる。本発明の試験では、インフルエンザワクチン抗原ならびに特定のインフルエンザタンパク質由来のペプチドを、インフルエンザ特異的T細胞を再刺激する抗原として使用した。表13から18に、CD4およびCD8 T細胞の応答に関する結果を示す。
【表13】
【0273】
【表14】
【0274】
【表15】
【0275】
【表16】
【0276】
【表17】
【0277】
【表18】
【0278】
結果を、CD4またはCD8 T細胞部分集団内でのサイトカイン陽性CD4またはCD8 T細胞の頻度としても表し、
図4および
図5に示した。
【0279】
同様の分析では、交差反応性CD4 T細胞応答を、ドリフト株 (A/H1N1/Beijing/262/95 (H1N1d)、A/H3N2/Sydney/5/97 (H3N2d)、B/Yamanashi/166/98 (Bd))またはシフト株(A/Singapore/1/57 (H2N2)、A/Hongkong/1073/99 (H9N2))から得たインフルエンザ抗原を使用して評価した。サイトカイン陽性CD4 T細胞の頻度として表された結果を、
図6に示す。
【0280】
主な知見は、下記の通りである。
【0281】
・Fluarixまたは全ウイルスによるワクチン接種は、CD4 T細胞応答をわずかに高める。Flu AS03によるワクチン接種は強力なCD4 T細胞応答を引き起こし(
図4)、これは統計的に有意なものである。スプリット抗原または全ウイルスによるin vitro刺激の後に、同じ結論が下され、これはすべてのサイトカインについて調査されている(IL-2、IFNγ、TNFα、およびCD40L)。
【0282】
・ほとんどの個体は全インフルエンザ(flu)に対してCD8 T細胞応答を示すが、ワクチン接種は、試験がなされた群がどれであっても、CD8 T細胞応答に対して測定可能な影響を及ぼさない(すなわち、Pre=post)(
図5)。
【0283】
Fluarixのみによるワクチン接種は、低レベルの交差反応性CD4 T細胞応答を誘発する(
図6)。FluAS03によるワクチン接種は、ドリフトインフルエンザ株に対して強力なCD4 T細胞応答を引き起こし、これは統計的に有意なものである(
図6)。シフト株に対しては、わずかな応答が検出された。
【0284】
III.5.3. B細胞エリスポット記憶
III.5.3.1 目的
AS03アジュバント添加インフルエンザワクチンによって誘発されたCMI応答を、より良く特徴付けるために、インフルエンザワクチン株または抗ヒト免疫グロブリンを使用してin vitroで形質細胞へと分化するよう誘発されたB細胞エリスポット記憶応答を、抗インフルエンザまたはIgG分泌血漿を数え上げるために評価した。結果を、表19および表20に示し、かつ
図7に示す。
【0285】
B細胞記憶エリスポット技法を使用して、インフルエンザ特異的記憶B細胞に対するワクチン接種の影響を評価するために、1回分用量のFluAS03ワクチンが接種された22名の最初の対象の部分集合と、1回分用量のFluarixワクチンが接種された21名の最初対象の部分集合を選択した。下記のエンドポイントを測定した。
・0日目および21日目:インフルエンザ特異的記憶B細胞を、すべての対象においてB細胞エリスポットにより測定した。結果は、抗体形成細胞100万個(10
6)当たりのインフルエンザ特異的抗体形成細胞の頻度として表した。
・ワクチン接種の後(21日目)と前(0日)の差も、抗体形成細胞100万個(10
6)当たりのインフルエンザ特異的抗体形成細胞の頻度として表した。
【0286】
III.5.3.2. 統計的方法
0日目および21日目の各ワクチン接種群毎の記述統計を、抗体形成細胞100万個(10
6)当たりのインフルエンザ特異的抗体形成細胞の頻度として表した。抗体形成細胞100万個(10
6)当たりのインフルエンザ特異的抗体形成細胞の頻度としての、21日目と0日目の間(Post-Pre)の個々の差の記述統計。
【0287】
ウィルコクソン検定を使用して、2つの群の間での差の位置を比較し、統計的p値を3種の株(A/New Caledonia、A/Panama、およびB/Shangdong)のそれぞれに関して計算した。
【0288】
III.5.3.3. 結果
Fluarix群に比べ、インフルエンザアジュバントAS03ワクチンが有利になる傾向がある。A/New Caledonia株では、Fluarixに比べてFluAS03が有利である統計的有意差(p値=0.021)がある。A/Panama株とB/Shangdong株では、2つの群の間に統計的な差が観察されなかった。
【表19】
【0289】
【表20】
【0290】
III.6. 全体的な結論
III.6.1. 反応原性および安全性の結果
インフルエンザ免疫は、肺炎およびこれに関連する死の危険性を著しく低下させるが、高齢者のワクチン接種は、インフルエンザ疾患に対して23〜72%しか予防しない。強力なアジュバントを有するワクチン抗原の製剤が、サブユニット抗原に対する免疫応答を高めるのに魅力あるアプローチである。この研究は、(1)水中油型エマルジョン、すなわちAS03でアジュバント添加されたインフルエンザワクチンの、健康な高齢者における安全性および反応原性と、(2)抗体および細胞媒介性免疫応答を評価するように設計された。反応原性のデータは、AS03がアジュバント添加されたインフルエンザワクチンが、他の2種のワクチンよりも多くの局所および全身症状を誘発することを示している。しかし、求められない有害事象に関しては、これら3種のワクチンの間で差が観察されなかった。これらの結果から、候補ワクチンの反応原性および安全性のプロファイルが満足のいくものであり、臨床上許容されると結論付けることができる。
【0291】
III.6.2. 免疫原性の結果
免疫応答に関し、3種のワクチンは、スプリットビリオンインフルエンザワクチンの毎年の登録に関する欧州当局の要件("Note for Guidance on Harmonisation of Requirements for influenza Vaccines" for the immunological assessment of the annual strain changes-CPMP/BWP/214/96)を上回っていた。この研究で試験がなされた3種のインフルエンザワクチンは、健康な高齢者において免疫原性であり、インフルエンザ赤血球凝集素および中和抗原に対して良好な抗体応答を示した(表21)。
【表21】
【0292】
細胞媒介性免疫(CMI)応答に関し、AS03でアジュバント添加されたインフルエンザワクチンは、他の2種のワクチン(Fluarixおよび全インフルエンザウイルスワクチン)よりも著しく強力なCD4応答を引き起こした(ドリフト株を含む)。しかしワクチン接種は、CD8応答に対して測定可能な影響を及ぼさない。
【0293】
B細胞記憶応答に関しては、アジュバント無添加ワクチンに比べてインフルエンザアジュバントワクチンが有利である傾向がある。
【0294】
実施例IV
スプリットインフルエンザ抗原調製物およびAS03アジュバントを含有するワクチンを用いた、65歳以上の高齢者集団での臨床試験-Explo-Flu-002
65歳以上でありかつExplo-Flu-001臨床試験の候補ワクチンが2003年に事前にワクチン接種された高齢者集団において、アジュバントAS03を含有するGlaxoSmithKline Biologicalsインフルエンザ候補ワクチンの反応原性および免疫原性を評価するために、第I/II相オープン対照試験を実施した。免疫原性および安全性の評価では、Fluarix(商標)(ベルギーではα-rix(商標)としても知られている)を参照として使用した。
【0295】
IV.1. 目的
液性免疫応答(すなわち、抗赤血球凝集素抗体力価)、および細胞媒介性免疫応答(CD4および/またはCD8 T細胞)、およびB記憶細胞応答を、1回分量のAS03アジュバントワクチンを筋肉内投与してから21日目に測定した。Fluarix(商標)を参照として使用した。
【0296】
目的は、下記の通りであった。
1)Fruarix(18名の対象)に対してAS03アジュバントFlu(40名の対象)では、インフルエンザ抗原をワクチン接種した個人のCD4および/またはCD8媒介性免疫に関して、その最強の免疫刺激活性が確認されるか否かを決定すること。
2)2004年に事前にワクチン接種されたときの免疫応答(したがって、2003年の最初のワクチン接種から1年後の応答)に対するAS03アジュバントの影響を、長期的分析を使用して調査すること。
【0297】
IV.2. 研究設計、ワクチン組成、およびエンドポイント
・2003年のExplo-Flu-001臨床試験中に、1回分用量のAS03アジュバント添加インフルエンザワクチンが事前に投与された、65歳を超える40名の対象(FluAS03)。
・2003年のExplo-Flu-001臨床試験中に、1回分用量のFluarix(商標)が事前に投与された、65歳を超える約20名の対象の1つの対照群
【0298】
IV.2.1. ワクチン組成
ワクチン組成は、ワクチンに含まれるインフルエンザ株以外(2004年のワクチン)、Explo-Flu-001の研究で使用されたものと類似している。株は、下記の通りである。
・A/New Caledonia/20/99(IVR-116)(H1N1)=A/New Caledonia/(H1N1)-様の株
・A/Wyoming/3/2003(X-147)(H3N2)=A/Fujian(H3N2)-様の株
・B/Jiangsu/10/2003=B/Shanghai-様の株
【0299】
IV.2.2. 免疫原性(HI)エンドポイント
・GMT(log力価変換の平均のlogをとる)
・コンバーション係数(0日目と比べた21日目の、HI GMTにおける倍数増加)
・セロコンバーション率(各ワクチン株毎に、0日目と比べた21日目の、HI力価の少なくとも4倍増加を示す被ワクチン接種者のパーセンテージ)
・保護率(21日目で、血清HIが1:40以上である、被ワクチン接種者のパーセンテージ)
【0300】
IV.2.3. CMI-エンドポイント
観察した変数:
0日目および21日目:4種の異なるサイトカインへの、10
6個当たりのサイトカイン陽性CD4/CD8細胞の頻度。各試験は、
・3種の下記の抗原のプール
・New Caledonia抗原
・Wyoming抗原
・Jiangsu抗原
に対するCD4/CD8 T細胞の応答を定量する。
【0301】
導き出された変数:
抗原特異的CD4およびCD8 T細胞応答は、下記の5つの異なる試験(サイトカイン)で生じた。
1.少なくとも2種の異なるサイトカイン(CD40L、IL-2、IFNγ、TNFα)を産生する細胞
2.少なくともCD40Lおよび別のサイトカイン(IL-2、TNFα、IFNγ)を産生する細胞
3.少なくともIL-2および別のサイトカイン(CD40L、TNFα、IFNγ)を産生する細胞
4.少なくともIFNγおよび別のサイトカイン(IL-2、TNFα、CD40L)を産生する細胞
5.少なくともTNFαおよび別のサイトカイン(IL-2、CD40L、INFγ)を産生する細胞
【0302】
IV.2.4. CMI分析
最初のCMI分析は、全ワクチンコホート(FluAS03群についてはN=40の対象、Fluarix群についてはN=18の対象)を基にした。
【0303】
長期分析は、Explo-Flu-001(スプリットタンパク質)およびExplo-Flu-002(プールFlu抗原)の動的コホートの研究を基にした。
・Pre:FluAS03群についてはN=36名の対象、Fluarix群についてはN=15の対象
・Post-Pre:FluAS03群についてはN=34名の対象、Fluarix群についてはN=15の対象
【0304】
(a)応答して分泌されるCD4/CD8 Tリンパ球の頻度は、各抗原毎、各サイトカイン毎、各ワクチン群毎、および各時点毎に(ワクチン接種の前後)、記述統計によってまとめた。
【0305】
(b)時点(Post-Pre)間の応答の個々の相違における記述統計は、各抗原毎、各サイトカイン毎、および各ワクチン群毎に表にした。
【0306】
(c)ワクチン接種の後および(post-pre)での時点では、ノンパラメトリックウィルコクソン検定を使用して、2つのワクチン群の間での位置の差を比較し、下記の事項について、4種の異なるサイトカインに関する統計的p値を計算した。
-New Caledonia、Wyoming、Jiangsu、およびこれら3種の株のプールに対するCD4 T細胞応答。
-New Caledonia、Wyoming、Jiangsu、およびこれら3種の株のプールに対するCD8 T細胞応答。
【0307】
(d)ノンパラメトリック検定(ウィルコクソン検定)も、下記の目的で使用した。
【0308】
-各ワクチン群において、Explo-Flu-001とExplo-Flu-002との間での特定のCD4の頻度に関し、Pre(0日)での免疫応答の動態を調査するため。
-Explo-Flu-001とExplo-Flu-002の研究のそれぞれにおいて、2つのワクチン群の間の特定のCD4の頻度に関し、Pre(0日)での免疫応答の動態を調査するため。
-各ワクチン群において、Explo-Flu-001とExplo-Flu-002との間での特定のCD4の頻度の差(Post-Pre)に関し、免疫応答の動態を調査するため。
-Explo-Flu-001とExplo-Flu-002の研究のそれぞれにおいて、2つのワクチン群の間の特定のCD4の頻度の差(Post-Pre)に関し、免疫応答の動態を調査するため。
【0309】
すべての有意検定を、2回追跡した。0.05以下のP値は、統計的に有意と見なした。
【0310】
IV.3. 結果
結果は、CD4またはCD8 T細胞部分集団内の、サイトカイン陽性CD4またはCD8 T細胞の頻度として表した。
【0311】
IV.3.1. 抗原特異的CD4 Tリンパ球
応答して分泌される抗原特異的CD4 Tリンパ球の頻度を、各抗原毎に、各サイトカイン毎に、各ワクチン群毎に、各時点毎に(ワクチン接種の前後)、記述統計によってまとめた。
【0312】
5種の異なるサイトカインそれぞれでの各抗原毎、および各ワクチン群毎との、CD4 Tリンパ球応答における時点間(Post-Pre)での個人差の記述統計を、表22に示す。
【表22】
【0313】
ワクチン誘発性CD4 T細胞は、前年にFluarix/AS03がワクチン接種された個体に比べてFluarixがワクチン接種された個体の間で、CD4 T細胞応答のワクチン接種前レベルに観察可能な差があることから、少なくとも1年間生存できることが示されている。結果を
図8にも示すが、ワクチン再接種前後のスプリットFlu抗原に対するCD4 T細胞応答が示されている。D0は、最初の年のワクチン接種から12カ月後に相当し、したがって生存することが示されている。
【0314】
ワクチン接種後のウィルコクソン検定により、2つの群の間の抗原特異的CD4 Tリンパ球の頻度の差を比較すると、ほぼすべてのp値が0.05未満であり、FluAS03群の方が統計的に有意であると見なされた(表23参照)。
【表23】
【0315】
ウィルコクソン検定により、2つの群の間の抗原特異的CD4 Tリンパ球応答の頻度の個体差(Post-Pre)の違いを比較すると、0.05未満でありかつ統計的に有意と見なされるp値が、下記の抗原-サイトカインの組み合わせて生じた:プールflu-オールダブル、プールflu-IFNγ、およびJiangsu-IFNγ、FluAS03群が有利である(表24)。
【表24】
【0316】
IV.3.2. 抗原特異的CD8 Tリンパ球
CD4 T細胞応答に関して述べた手順と同様に、応答して分泌される抗原特異的CD8 Tリンパ球の頻度を、各抗原毎に、各サイトカイン毎に、各ワクチン群毎に、各時点毎に(ワクチン接種前後)、記述統計によってまとめた。
【0317】
ワクチン接種後に、ウィルコクソン検定によって、2つの群の間での抗原特異的CD8 Tリンパ球の頻度の差を比較すると、すべてのp値は0.05よりも高く、統計的に有意とは見なされなかった。ウィルコクソン検定によって、2つの群の間での抗原特異的CD8 Tリンパ球応答の頻度の個体差(Post-Pre)の違いを比較すると、すべてのp値は0.05よりも高く、統計的に有意とは見なされなかった。
【0318】
IV.3.3. 動的分析:ワクチン接種前の免疫応答(2003年の最初のワクチン接種から1年後)
ワクチン接種後に応答して分泌される抗原特異的CD4 Tリンパ球の頻度を、各サイトカイン毎、および各ワクチン群毎に、これら2つの調査のそれぞれに関して表25に、またこれら2つの調査のそれぞれと各ワクチン群毎に表27に、記述統計によってまとめた。推測統計を、表26および表28に示す。
【表25】
【0319】
各ワクチン群毎のウィルコクソン検定によって、2つの調査の間での抗原特異的CD4 Tリンパ球の頻度の差を比較すると、0.05未満でありかつ統計的に有意と見なされるp値が(Explo-Flu-002が好ましい)、FluAS03群のみで、TNFαサイトカインに関して生じた(表26参照)。
【表26】
【0320】
【表27】
【0321】
各調査毎のウィルコクソン検定によって、2つのワクチン群の間での抗原特異的CD4 Tリンパ球の頻度の差を比較すると、Explo-Flu-002に関するすべてのp値は0.05未満であり、統計的に有意と見なされた(FluAS03が好ましい)(表28参照)。
【表28】
【0322】
IV.3.4. 動的分析:ワクチン接種後からワクチン接種前を差し引いたときの免疫応答
(post-pre)時点で応答して分泌される抗原特異的CD4 Tリンパ球の頻度を、各サイトカイン毎、および各ワクチン群毎に、それぞれの調査に関しては表29に、また各調査毎および各ワクチン群毎に表31に、記述統計によってまとめた。推測統計を、表30および表32に示す。
【表29】
【0323】
各ワクチン群毎のウィルコクソン検定によって、2つの調査の間での抗原特異的CD4 Tリンパ球の頻度の差を比較すると、FluAS03群に関するすべてのp値が0.05未満であり、統計的に有意であると見なされた(Explo-Flu-001が好ましい)(表30参照)。
【表30】
【0324】
【表31】
【0325】
各調査毎のウィルコクソン検定によって、2つのワクチン群の間での抗原特異的CD4 Tリンパ球の頻度の差を比較すると、p値は、Explo-Flu-001でのみ0.05未満であり、統計的に有意であると見なされた(FluAS03が好ましい)(表32参照)。
【表32】
【0326】
IV.4. HI力価
結果を、
図9と表33から36に示す。
【表33】
【0327】
【表34】
【0328】
【表35】
【0329】
【表36】
【0330】
IV.5. 全体的な結論
この臨床研究から、アジュバントワクチンFlu-AS03は、インフルエンザ特異的CD4 T細胞の頻度に関して、また最初のFlu-AS03ワクチン接種(Explo Flu 001での最初のワクチン接種)により誘発される免疫応答が、ワクチン再接種調査のD0(Explo Flu 002、すなわち±1年後)まで持続することに関しても、相当するアジュバント無添加ワクチンFluarixより優れていることが確認される。さらに、この応答は、新しいワクチン中に存在するドリフトインフルエンザ株を認識すること、および2004年インフルエンザワクチンの株を認識することが可能である。
【0331】
最初の年のワクチン接種とは対照的に、ワクチン再接種を行うことにより、アジュバントFluarix(商標)が事前にワクチン接種された個人は、アジュバント無添加Fluarix(商標)でワクチン接種された個人に比べて高いHI力価応答性を示した。H1N1およびH3N2株に対するHI力価が1.5〜2倍増加し、B株に対するHI力価には実証された統計的増加があるという、観察可能な傾向が存在する。
【0332】
実施例V
フェレットにおけるアジュバント添加およびアジュバント無添加のインフルエンザワクチンの前臨床評価
第1の研究-新規製剤AS03およびAS03+MPLの有効性
V.1. 原理および目的
フェレットモデルのインフルエンザ感染症は、感染に対する感受性および臨床反応の両方に関して、ヒトインフルエンザを緻密に模倣している。
【0333】
フェレットは、事前にウイルス株を適応させないでも、インフルエンザA型ウイルスおよびB型ウイルスの両方への感染に対して強い感受性を有する。したがって、フェレットは、投与されたインフルエンザワクチンによって与えられる保護の研究のための優れたモデル系を提供する。
【0334】
この研究は、同種株でチャレンジされたフェレットの病徴(体温)および鼻汁中のウイルス排泄を低減する、アジュバント添加または無添加の様々な3価スプリットワクチンの効力を調査した。
【0335】
この実験の目的は、単味(アジュバント無添加)ワクチンと比較した、アジュバント添加インフルエンザワクチンの効力を明らかにすることであった。
【0336】
エンドポイントは以下の通りであった。
1)第1エンドポイント:同種チャレンジ後における鼻洗浄液中のウイルス排泄の低減。
2)第2エンドポイント:プライミングおよびチャレンジ周辺におけるIHAによる体液性応答の分析および体温のモニタリング。
【0337】
V.2. 実験計画
V.2.1. 治療/群(表37)
週齢14〜20週間の雌フェレット(Mustela putorius furo)(6フェレット/群)をMISAY Consultancy(Hampshire, UK)から入手した。0日目に、フェレットを異なる亜型株であるH1N1A/Stockholm/24/90でプライミングした(4 Log TCID
50/ml)。21日目に、H1N1A/New Caledonia/20/99、H3N2A/Panama/2007/99、およびB/Shangdong/7/97の組合せの完全なヒト用量(500μgワクチン用量、15μgHA/株)をフェレットに筋肉内注射した。次に、41日目に、鼻腔内経路によって同型株であるH3N2/Panama/2007/99をフェレットにチャレンジした(4.51 Log TCID
50/ml)。
【表37】
【0338】
V.2.2. ワクチン製剤の調製
製剤1:3価単味(アジュバント無添加)製剤(500μl)
10倍濃縮されたPBS(1倍濃縮のときにpH7.4)ならびにTween80、Triton X100、およびVESを含有する混合物(量には株に存在する界面活性剤を考慮に入れる)を注射用水に添加する。得られる界面活性剤の量は以下の通り、すなわち、1ml当たり750μgのTween80、110μgのTriton X100、および100μgのVESである。5分間の撹拌の後に、H1N1およびH3N2各株15μg、ならびにB株17.5μgを順番に添加し、その際各添加の間に10分間撹拌する。上記製剤を15分間室温で撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0339】
製剤2:AS03でアジュバント添加した3価スプリットインフルエンザ(500μl)
10倍濃縮されたPBS(1倍濃縮のときにpH7.4)ならびにTween80、Triton X100、およびVESを含有する混合物(量には株に存在する界面活性剤を考慮に入れる)を注射用水に添加する。得られる界面活性剤の量は以下の通り、すなわち、1ml当たり750μgのTween80、110μgのTriton X100、および100μgのVESである。5分間の撹拌の後に、H1N1およびH3N2各株15μg、ならびにB株17.5μgを添加し、その際各添加の間に10分間撹拌する。15分間の撹拌の後に、250μlのSB62エマルジョン(実施例II.1で教示されている通りに調製する)を添加する。上記製剤を15分間室温で撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0340】
製剤3:AS03+MPLでアジュバント添加した3価スプリットインフルエンザ
10倍濃縮されたPBS(1倍濃縮のときにpH7.4)、ならびにTween80、Triton X100、およびVESを含有する混合物(量には株に存在する界面活性剤を考慮に入れる)を注射用水に添加する。得られる界面活性剤の量は以下の通り、すなわち、1ml当たり750μgのTween80、110μgのTriton X100、および100μgのVESである。5分間の撹拌の後に、H1N1およびH3N2各株15μg、ならびにB株17.5μgを添加し、その際各添加の間に10分間撹拌する。15分間の撹拌の後に、250μlのSB62エマルジョン(実施例II.1で教示されている通りに調製する)を添加する。この混合物を再度15分間撹拌し、その直後に、実施例II.3.1で詳述した通りに調製した懸濁液から得られた25μgのMPLを添加する。上記製剤を15分間室温で撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0341】
注意:各製剤において、等張となるように10倍濃縮PBSを添加し、これは最終容積では、1倍濃縮となる。H
2O容積は、目的の容積に達するように計算する。
【0342】
V.2.3. 読み取り(表38)
【表38】
【0343】
V.3. 結果
結果の模式図を
図10および
図11に示す。
【0344】
V.3.1. 体温モニタリング
個体の体温を、送信機を用い、遠隔測定記録によってモニターした(1.2.2で詳述した手順に従った)。腹腔内腔に設置する前に、すべてのインプラントを検査して、新装し、DSIによって新たな較正を行った。これらの測定中、すべての動物を単一ケージに個別に収容した。
【0345】
体温は、チャレンジの3日前からチャレンジの5日後まで、15分間毎にモニターし、正午までの平均を計算した。ベースラインからベースラインまでの体温の結果を
図10A(-1から+3日までの結果を示す)および10B(-2から+3日までの結果を示す)に示す。
【0346】
チャレンジ後、3価スプリット単味もしくはPBSで免疫処置された後でのみ、体温のピークが観測された。AS03またはAS03+MPLでアジュバント添加された3価スプリットで免疫処置された後にはピークが観測されなかった。
【0347】
V.3.2. ウイルス排泄(図11)
1群当たり6匹の動物について、鼻洗浄液のウイルス力価測定を行った。
【0348】
鼻洗浄は、覚醒している動物の両方の鼻孔に5mlのPBSを投与することによって行った。接種物をペトリ皿に収集し、-80℃(ドライアイス)の試料容器中に置いた。
【0349】
すべての鼻腔試料は、いかなる細菌汚染も除去するために、最初に、Spin Xフィルター(Costar)に通して無菌濾過した。鼻洗浄液の連続10倍の希釈物50μlを、50μlの培地を含有するマイクロタイタープレート中に移した(10ウェル/希釈)。その後、100μlのMDCK細胞(2.4×10
5細胞/ml)を各ウェルに添加し、対照細胞が細胞集密に達するまで、例えば5〜7日間、35℃でインキュベートした。6〜7日間のインキュベーションの後、培養培地を穏やかに除去し、培地を含有する100μlの1/20 WST-1を添加して、さらに18時間インキュベートする。
【0350】
生存細胞によるWST-1の還元の際に産生される黄色のホルマザン色素の強度は、ウイルス力価測定アッセイの終わりに、ウェル中に存在する生存細胞数に比例しており、適切な波長(450ナノメートル)で各ウェルの吸収を測定することによって定量化される。カットオフは、未感染の対照細胞の平均ODと定義され、0.3 OD(0.3 ODは未感染の対照細胞のODの+/- 3 StDevに対応している)である。正のスコアはODが<カットオフであるときと定義され、その反対に、負のスコアは、ODが>カットオフであるときと定義される。ウイルス排泄力価は、「ReedおよびMuench」によって測定し、Log TCID
50/mlで表した。
【0351】
AS03またはAS03+MPLでアジュバント添加された3価スプリットでチャレンジされた後には、3価スプリット単味またはPBSと比較して、より少ないウイルス排泄が観測された。保護効果は、AS03を用いた場合に、AS03+MPLと比較してわずかに良かった(チャレンジ後の2日目を参照)。1群当たりの動物数が少なかったため、統計的有意性を決定することはできなかった。
【0352】
V.3.3. 実験の結論
3株すべてに関して、3価スプリット単味と比較して、より高い体液性応答(HI力価)がAS03またはAS03+MPLでアジュバント添加した3価スプリットで観測された(3株のうちの2株、すなわちH3N2およびB株では少なくとも2倍)。
【0353】
AS03製剤およびAS03+MPL製剤は、フェレットにおける保護効果に関して利益の追加(低減したしたウイルス排泄および体温)を示した(
図10および11)。
【0354】
AS03またはAS03+MPLでアジュバント添加された3価スプリットで免疫処置された後には、チャレンジ後、体液性応答のブーストが観測されなかった。
【0355】
第2の研究-フェレットにおける異型チャレンジ研究:試験された新規製剤の効力の実証
V.4. 原理および目的
この研究は、アジュバント添加または無添加の様々な3価スプリットワクチンの効力を、それらが病徴(体温)を低減させる能力、および異種チャレンジ後における免疫処置されたフェレットの鼻汁中のウイルス排泄へのそれらの影響によって調査した。
【0356】
V.5. 実験計画
週齢14〜20週間の雌フェレット(Mustela putorius furo)(6フェレット/群)をMISAY Consultancy(Hampshire、UK)から入手した。以下の4つの群を試験した。
*Fluarix
*3価スプリットAS03
*3価スプリットAS03+MPL
*PBS
【0357】
0日目に、フェレットを異なる亜型株であるH1N1A/Stockholm/24/90でプライミングした(4 Log TCID
50/ml)。21日目に、H1N1A/New Caledonia/20/99、H3N2A/Panama/2007/99、およびB/Shangdong/7/97の組合せの完全なヒト用量(500μgワクチン用量、15μgHA/株)をフェレットに筋肉内に注射した(17.5μg HA)。次に、43日目に、鼻腔内経路によって異なる亜型株であるH3N2 A/Wyoming/3/2003をフェレットにチャレンジした(4.51 Log TCID
50/ml)。
【0358】
V.6. 結果
結果の模式図を
図12および
図13に示す。
【0359】
V.6.1. 体温モニタリング
個体の体温を、送信機を用い、遠隔測定記録によってモニターした。腹腔内腔に設置する前に、すべてのインプラントを検査して、新装し、DSIによって新たな較正を行った。これらの測定中、すべての動物を単一ケージに個別に収容した。
【0360】
結果(
図12)は以下のことを示している。
-プライミングの周辺において、群相互の大きな変動が観測された。ベースラインは、プライミングの後より、プライミングの前の方が高いようであった。
-体温の変動が大きかったのにもかかわらず、チャレンジ後におけるピークは、PBS(6/6匹のフェレット)、3価スプリット単味(5/6匹のフェレット)、およびAS03でアジュバント添加された3価スプリット(2/6匹のフェレット)で免疫処置されたフェレットにおいてのみ観測された。AS03+MPLでアジュバント添加された3価スプリットでは、免疫処置後にピークは観察されなかった(0/6匹のフェレット)。
-発熱予防に関しては、AS03は、異種株に対してAS03+MPLより効力が弱いようであった。発明者らは、アジュバント相互の相違が、チャレンジ前の抗体レベルにおける、レベルの相違によるものであるという可能性について結論付けることができない。
【0361】
V.6.2. ウイルス排泄(図13)
鼻洗浄は、覚醒している動物の両方の鼻孔に5mlのPBSを投与することによって行った。接種物をペトリ皿に収集し、-80℃(ドライアイス)の試料容器中に置いた。
【0362】
すべての鼻腔試料は、いかなる細菌汚染も除去するために、最初に、Spin Xフィルター(Costar)に通して無菌濾過した。鼻洗浄液の連続10倍の希釈物50μlを、50μlの培地を含有するマイクロタイタープレート中に移した(10ウェル/希釈)。その後、100μlのMDCK細胞(2.4×10
5細胞/ml)を各ウェルに添加し、対照細胞が細胞集密に達するまで、例えば5〜7日間、35℃でインキュベートした。6〜7日間のインキュベーションの後、培養培地を穏やかに除去し、培地を含有する100μlの1/20 WST-1を添加して、さらに18時間インキュベートする。
【0363】
生存細胞によるWST-1の還元の際に産生される黄色のホルマザン色素の強度は、ウイルス力価測定アッセイの終わりに、ウェル中に存在する生存細胞数に比例しており、適切な波長(450ナノメートル)で各ウェルの吸収を測定することによって定量化される。カットオフは、未感染の対照細胞の平均ODと定義され、0.3 OD(0.3 ODは未感染の対照細胞のODの+/-3StDevに対応している)である。正のスコアはODが<カットオフであるときと定義され、その反対に、負のスコアは、ODが>カットオフであるときと定義される。ウイルス排泄力価は、「ReedおよびMuench」によって測定し、Log TCID
50/mlで表した。
【0364】
プライミング後のウイルス排泄
12匹のフェレットで、プライミング前の1日目からプライミング後の7日目までウイルス排泄を測定した。結果はプールで表した。
【0365】
すべてのフェレットで、プライミング後の7日目にウイルスのクリアランスが観測された。
【0366】
チャレンジ後のウイルス排泄
6フェレット/群で、チャレンジ前の1日目からチャレンジ後の7日目までウイルス排泄を測定した。
【0367】
チャレンジの2日後に、AS03およびAS03+MPLでアジュバント添加された3価スプリットで免疫処置されたフェレットで、3価スプリット単味およびPBSで免疫処置されたフェレットと比較して、統計的に有意に低いウイルス力価が観測された(単味ワクチンと比較した相違は、アジュバント添加群AS03/AS03+MPLでそれぞれ1.25/1.22 logおよび1.67/1.64 log)。
【0368】
50日目には、鼻腔洗浄液中にウイルスは検出されなかった。
【0369】
V.6.3. 血球凝集抑制試験(HI力価)(図14AおよびB)
プライミングの1日前、プライミングの21日後、免疫処置の22日後、およびチャレンジの14日後に血清試料を収集した。
【0370】
H3N2インフルエンザウイルス(ワクチン株およびチャレンジ株)に対する抗赤血球凝集素抗体力価を、血球凝集抑制試験(HI)を用いて測定した。HI試験の原理は、インフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)によるニワトリ赤血球(RBC)の赤血球凝集反応を抑制する、特異的抗インフルエンザ抗体の能力に基づいている。血清は、最初に、25%のノイラミニダーゼ溶液(RDE)で処理し、非特異的な抑制因子を除去するために熱不活化させた。前処置の後、血清の2倍希釈物を4赤血球凝集反応単位の各インフルエンザ株と共にインキュベートした。その後、ニワトリ赤血球を添加し、凝集の抑制をスコアリングした。力価は、赤血球凝集反応を完全に抑制した最も高い血清希釈率の逆数として表した。最初の血清希釈率は1:10であったので、検出不可能なレベルは、5に等しい力価としてスコアリングした。
【0371】
結果
結果を
図14Aおよび14Bに示す。H3N2 A/Panamaで免疫処置した後では、フェレットをアジュバント無添加(単味)の3価スプリットワクチン(Fluarix(商標))で免疫処置した後で観測される体液性応答と比較して、より高い体液性応答(HI力価)が、AS03またはAS03+MPLでアジュバント添加した3価スプリットワクチンで免疫処置されたフェレットで観測された。
【0372】
AS03またはAS03+MPLでアジュバント添加されたH3N2 A/Panamaで免疫処置されたフェレットで、同様なHI力価が観測された。
【0373】
異種株であるA/Wyoming H3N2に対する交差反応性HI力価は、AS03またはAS03+MPLでアジュバント添加されたワクチンを含有するA/Panama H3N2株で免疫処置した後で観測されたのみであった(3価スプリット単味で免疫処置された後では観測されなかった)。
【0374】
異種株A/Panama H3N2で免疫処置され、かつA/Wyoming H3N2でチャレンジされたフェレットでは、A/Wyoming特異的なHI力価のブーストが観測された。予測通り、そして同種チャレンジとは反対に、AS03およびAS03+MPLでアジュバント添加されたA/Panama H3N2で免疫処置されたフェレットにおいて、異種チャレンジはA/Panama特異的なHI力価の増大をもたらした。
【0375】
V.6.4. この実験の結論
予測通り、同種チャレンジの後の状況(ブーストなし)と比較して、異種チャレンジの後では、抗H3N2 HI力価のブーストが観測された。
【0376】
しかし、同様な保護(ウイルス排泄)が、異種チャレンジおよび同種チャレンジの後で観測された。
【0377】
実施例VI
プライミングされたC57BI/6マウスにおけるアジュバント添加およびアジュバント無添加のインフルエンザワクチンの前臨床評価
VI.1. 実験計画および目的
Explo-Flu-001臨床実験(実施例III参照)では、Fluarix単味(アジュバント無添加)と比較して、3価FluスプリットAS03に対する、有意な、より高いCD4T細胞応答が観測された。これらの2つの群の間では、CD8T細胞応答の相違も体液性応答の相違も両方とも観測されなかった。
【0378】
目的は、ヒトで観測されるものに類似したCMI応答をマウスで誘導する読み取りを選択することであった。詳細には、目的は、スプリットAS03またはスプリットAS03+MPLを用いることによって、スプリット単味と比較して、より高いCMI応答をマウスで示すことであった。
【0379】
VI.1.1. 治療/群
週齢6〜8週間の雌C57BI/6マウス(15マウス/群)をオランダ国、Harlan Horstから入手した。試験された群は以下の通りであった。
-3価スプリット単味
-3価スプリットAS03
-3価スプリットAS03+MPL
-PBS
【0380】
0日目に異なる亜型株(5μgのHA不活化全H1N1A/Johnannesburg/82/96、H3N2 A/Sydney/5/97、B/Harbin/7/94)でマウスをプライミングした。28日目に、単味またはアジュバント添加のHA3価スプリット(A/New Caledonia/20/99、A/Panama/2007/99、B/Shangdong/7/97) 1.5μgをマウスに筋肉内注射した(下記の群を参照)。
【0381】
VI.1.2. ワクチン製剤の調製
各製剤において、等張となるように10倍濃縮PBSを添加し、これは最終容積では、1倍濃縮となる。H
2O容積は、目的の容積に達するように計算する。
【0382】
3価スプリット単味(アジュバント無添加)
製剤1(500μl当たり) :10倍濃縮されたPBS(1倍濃縮のときにpH7.4)ならびにTween80、Triton X100、およびVESを含有する混合物(量には株に存在する界面活性剤を考慮に入れる)を注射用水に添加する。得られる界面活性剤の量は以下の通り、すなわち、 1ml当たり750μgのTween80、110μgのTriton X100、および100μgのVESである。5分間の撹拌の後に、H1N1、H3N2、およびBの各株15μgを添加し、その際各添加の間に10分間撹拌する。上記製剤を15分間室温で撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0383】
水中油型エマルジョンアジュバントAS03でアジュバント添加された3価スプリット
10倍濃縮されたPBS(1倍濃縮のときにpH7.4)ならびにTween80、Triton X100、およびVESを含有する混合物(量には株に存在する界面活性剤を考慮に入れる)を注射用水に添加する。得られる界面活性剤の量は以下の通り、すなわち、1ml当たり750μgのTween80、110μgのTriton X100、および100μgのVESである。5分間の撹拌の後に、H1N1、H3N2、およびBの各株15μgを添加し、その際各添加の間に10分間撹拌する。15分間の撹拌の後に、250μlのSB62エマルジョン(実施例II.1で教示されている通りに調製する)を添加する。上記製剤を15分間室温で撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0384】
AS03+MPLでアジュバント添加された3価スプリット
10倍濃縮されたPBS(1倍濃縮のときにpH7.4)ならびにTween80、Triton X100、およびVESを含有する混合物(量には株に存在する界面活性剤を考慮に入れる)を注射用水に添加する。得られる界面活性剤の量は以下の通り、すなわち、1ml当たり750μgのTween80、110μgのTriton X100、および100μgのVESである。5分間の撹拌の後に、H1N1、H3N2、およびBの各株15μgを添加し、その際各添加の間に10分間撹拌する。15分間の撹拌の後に、250μlのSB62エマルジョン(実施例II.1で教示されている通りに調製する)を添加する。この混合物を、再度15分間撹拌し、その直後に25μgのMPLを添加する。上記製剤を15分間室温で撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0385】
VI.1.3. 読み取り
CMI分析(ICS:CD4/CD8、IL-2/IFNg染色)
プライミングされたマウスから、免疫処置7日後にPBMCを採取した。それらはプール/群において試験した。
【0386】
VI.2. 結果
プライミングされたC57BI/6マウスと、再刺激抗原として不活化全ウイルス1μg/mlとを用いることによって、より高い頻度のCD4およびCD8+ T細胞、ならびにより低いバックグランドを示した条件を決定した。結果を
図15(CD4T細胞応答)および
図16(CD8T細胞応答)に示す。
【0387】
これらの条件を用いて、以下の応答を誘導することが可能であった。
・ヒトで観測した際に、スプリット単味と比較して、より強い、スプリットAS03に対するCD4T細胞応答。
・スプリット単味と比較して、より強い、スプリットAS03+MPLに対するCD4T細胞応答。
・ヒトで観測した際に、スプリット単味とスプリットAS03との間で類似したCD8T細胞応答。
・スプリットAS03またはスプリット単味と比較して、より強い傾向にある、AS03+MPLに対するCD8T細胞応答。
【0388】
実施例VII
異種株でプライミングされたC57BI/6マウスにおける、アジュバント添加およびアジュバント無添加のスプリットおよびサブユニットインフルエンザワクチンの前臨床評価
VII.1. 実験計画および目的
Explo-Flu-001臨床実験(実施例III参照)では、Fluarix単味(アジュバント無添加)と比較して、3価FluスプリットAS03に対する、有意な、より高いCD4T細胞応答が観測された。これらの2つの群の間では、CD8T細胞応答の相違も体液性応答の相違も両方とも観測されなかった。
【0389】
ヒトで観測されるものと類似した免疫プロファイルを再現する動物モデルを、異種株でプライミングされたC57BI/6マウスを用いることによって開発した。ICS(細胞内サイトカイン染色)には、不活化全ウイルスを用いて再刺激を行う。
【0390】
目的は、GlaxoSmithKlineの市販スプリットワクチン(Fluarix(商標))によって誘導されるCMI応答を、サブユニットワクチン(Chiron製ワクチン(Fluad)(商標))と比較すること、およびAS03もしくはAS03+MPLまたは別の水中油型エマルジョンアジュバント(OW)でアジュバント添加されたこれらのワクチンによって得られるCMI応答と比較することであった。
【0391】
VII.1.1. 治療/群
週齢6〜8週間の雌C57BI/6マウス(24マウス/群)をオランダ国、Harlan Horstから入手した。0日目に、異型株(5μgのホルムアルデヒド不活化全H1N1A/Johnannesburg/82/96、H3N2 A/Sydney/5/97、B/Harbin/7/94)を用いて、鼻腔内でマウスをプライミングした。29日目に、単味またはアジュバント添加の3価スプリット(A/New Caledonia/20/99、A/Wyoming/3/2003、B/Jiangsu/10/2003)1,5μgHAをマウスに筋肉内注射した(下記表39中の群を参照)。
【表39】
【0392】
VII.1.2. ワクチン製剤の調製
OWの調製
OWと呼ばれる水中油型エマルジョンは、Chiron BehringのFluad(FluAd)ワクチンに含有されている説明書に公開されているレシピに従って調製する。
【0393】
注射用水、36.67mgのクエン酸、および627.4mgのクエン酸ナトリウム・2H
2Oを混合し、容積を200mlに調整する。この緩衝剤94.47mlに、470mgのTween80を混合する。この混合物を「溶液A」と呼ぶ。油性混合物は、磁気撹拌しながら、3.9gのスクワレンを470mgのSpan 85と混合することによって調製する。その後、溶液Aを上記油性混合物に添加し、それによって得られる最終容積は100mlである。この混合物を、その後まず最初に18Gx1 1/2の注射針に通し、次に、油滴のサイズを低減させるために2つの試料にして、M110Sマイクロフリューダイザー(Microfluidics製)に入れる。それぞれについて、約150nmの粒径が得られたときに、2つの試料をプールし、0.2μmフィルターで濾過する。T0におけるプール試料では、z平均143nm、多分散度0.10が得られ、4℃で4カ月間貯蔵した後には、145nm、多分散度0.06が得られた。このサイズは、以下の技術的条件下でZetasizer 3000HS(Malvern製)を用いることによって得られる。
-レーザ波長:532nm (Zeta3000HS)、
-レーザパワー:50 mW(Zeta3000HS)、
-散乱光は90°で検出(Zeta3000HS)、
-温度:25℃、
-時間:ソフトによる自動測定、
-数:3回の連続測定、
-z-平均直径:キュムラント分析による。
【0394】
第1群用の製剤(1ml当たり)
終濃度375μg/ml Tween80、55μg/ml Triton X100、および50μg/ml VESとなるように、10倍濃縮されたPBS(1倍濃縮のときにpH7.4)、ならびにTween80、Triton X100、およびVESを含有する混合物(量には株に存在する界面活性剤を考慮に入れる)を注射用水に添加する。5分間の撹拌の後に、H1N1、H3N2、およびBの各株15μgを添加し、その際各添加の間に10分間撹拌する。上記製剤を15分間撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0395】
第2群用の製剤(1ml当たり)
終濃度375μg/ml Tween80、55μg/ml Triton X100、および50μg/ml VESとなるように、10倍濃縮されたPBS(1倍濃縮のときにpH7.4)、ならびにTween80、Triton X100、およびVESを含有する混合物(量には株に存在する界面活性剤を考慮に入れる)を注射用水に添加する。5分間の撹拌の後に、H1N1、H3N2、およびBの各株15μgを添加し、その際各添加の間に10分間撹拌する。15分間の撹拌の後に、250μlのOWエマルジョンを添加する。上記製剤を15分間撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0396】
第3群用の製剤:1ml当たり
終濃度375μg/ml Tween80、55μg/ml Triton X100、および50μg/ml VESとなるように、10倍濃縮されたPBS(1倍濃縮のときにpH7.4)、ならびにTween80、Triton X100、およびVESを含有する混合物(量には株に存在する界面活性剤を考慮に入れる)を注射用水に添加する。5分間の撹拌の後に、H1N1、H3N2、およびBの各株15μgを添加し、その際各添加の間に10分間撹拌する。15分間の撹拌の後に、250μlのSB62エマルジョンを添加する。上記製剤を15分間撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0397】
第4群用の製剤:1ml当たり
終濃度375μg/ml Tween80、55μg/ml Triton X100、および50μg/ml VESとなるように、10倍濃縮されたPBS(1倍濃縮のときにpH7.4)、ならびにTween80、Triton X100、およびVESを含有する混合物(量には株に存在する界面活性剤を考慮に入れる)を注射用水に添加する。5分間の撹拌の後に、H1N1、H3N2、およびBの各株15μgを添加し、その際各添加の間に10分間撹拌する。15分間の撹拌の後に、250μlのSB62エマルジョンを添加する。この混合物を、再度15分間撹拌し、その直後に25μgのMPLを添加する。上記製剤を15分間撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0398】
第5群用の製剤:1ml当たり
等容積のPBSとFluad(商標)/グリップガード(商標)(市販ワクチン)ワクチンとを混合する。上記製剤を15分間撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0399】
第6群用の製剤:1ml当たり
pH7.4に調整した250μlのPBSを、500μl用量のAgrippal(商標)(市販ワクチン)に添加する。15分間の撹拌の後に、250μlのSB62を添加する(大規模生産用に詳述された方法に従って調製する)。上記製剤を15分間撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0400】
第7群用の製剤:1ml当たり
pH7.4に調整したPBS(最終容積1mlとなるように)を、500μl用量のAgrippal(商標)(市販ワクチン)に添加する。15分間の撹拌の後に、250μlのSB62を添加する(大規模生産用に詳述された方法に従って調製する)。その後、25μgのMPLを添加する。上記製剤を15分間撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0401】
第8群用の製剤:1ml当たり
pH7.4に調整した250μlのPBSを、500μl用量のAgrippalに添加する。15分間の撹拌の後に、第2群用に調製された250μlのOWを添加し、上記製剤を15分間撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0402】
第9群用の製剤:1ml当たり
pH7.4に調整したPBSとAgrippalとを等容積混合する。上記製剤を15分間撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0403】
VII.1.3. 読み出し(表40)
CMI(ICS):免疫処置の7日後。
IHA/中和アッセイ:免疫処置の21日後。
【表40】
【0404】
CMI分析(ICS:CD4/CD8; IL-2/IFN-γ染色
免疫処置の7日後に、24マウス/群からPBMCを採取し、プール/群において試験した。
【0405】
VII.2. 結果
VII.2.1. 体液性免疫
1群当たり24匹の動物から得た血清において、上記3株のワクチン株に対する赤血球凝集抑制活性が、鼻腔内異種プライミング後の14日目、および免疫処置後の16日目に検出された。
【0406】
上記3株およびすべての群について、免疫処置後にHI力価のブーストが観測された。
【0407】
・同一アジュバントおよび上記3株について、サブユニットワクチンおよびスプリットワクチンによって、類似したHI力価が誘導された。
【0408】
・上記3株では、Agrippal OWとの比較において、類似したHI力価がFluad対して観測された。
【0409】
・H1N1株およびB株では、FluarixとAgrippalとの間に相違は観測されなかった。
【0410】
・上記3株では、Fluワクチン(スプリットまたはサブユニット)がMPLを含むか、もしくは含まないAS03でアジュバント添加された際に、単味のFluワクチンと比較して、統計的に有意な、より高いHI力価が観測された。
【0411】
・OWでアジュバント添加されたFluワクチン(スプリットもしくはサブユニット)に対するHI力価は、Fluワクチン単味と比較して、A/Wyoming株のみで、統計的に有意であり、より高かった。
【0412】
VII.2.2. 細胞性免疫応答(免疫処置後の7日目におけるICS)
CD4T細胞応答-図17上部
1群当たり24匹のマウスから得られたPBMCを、免疫処置の7日後に採取して、1プール/群で試験した。再刺激抗原として、不活化3価全ウイルス(1μg/ml)を用いた。結果を
図17上部に示す。
【0413】
IL-2、IFN-γまたは両サイトカインを発現するFlu全ウイルス特異CD4+T細胞(
図17上部)に関して(
図17上部)、
1.GSKアジュバントは、以前に観測されたのと同じ傾向を示した(実施例VI)。すなわち、AS03+MPLは、AS03より優れており、そして後者は、単味ワクチンで得られた結果より優れていた。この傾向は、スプリットワクチンまたはサブユニットワクチンの両方で観察された。
【0414】
2.いかなる処方であっても(単味、AS03、またはAS03+MPL)、スプリットワクチンはサブユニットワクチンより高いCD4+T細胞応答を誘導した。
【0415】
3.Fluad(サブユニット+水中油型エマルジョンOW-調製セクションを参照のこと) は、Fluarix単味に類似した頻度を誘導する。
【0416】
4.3価スプリット/AS03製剤または3価スプリット/AS03+MPL製剤は、サブユニット/水中油型エマルジョンOW製剤より強いCD4+T細胞応答を誘導した。
【0417】
CD8T細胞応答-図17下部
免疫処置の7日後に、1群当たり24匹のマウスから得たPBMCを採取し、1プール/群で試験した。再刺激抗原として、不活化3価全ウイルス(1μg/ml)を用いた。
【0418】
IL-2もしくはIFN-γ、またはこれらのサイトカインの両方を発現するFlu全ウイルス特異的CD8+ T細胞に関して(
図17下部)、
・PBS陰性対照群で観測された高バックグランドにより、この実験のカットオフは比較的高かった。
・しかし、3価スプリット/AS03+MPLで免疫処置されたマウスでは、他のワクチン製剤と比較して、より強い特異的CD8T細胞応答が観測された。
【0419】
VII.3. 結果および結論の概要
以下の結果を得た。
【0420】
1)免疫処置の7日後にICSによって得られたFlu特異的CD4+T細胞は、以下のことを示した。
【0421】
1.Fluadでは、Fluarixと比較して、類似した応答が得られた。
【0422】
2.スプリットインフルエンザワクチン(ヒトで観測)およびサブユニット(Agrippal)ワクチン(ヒトでは評価されていない)の両方に関して、アジュバント添加製剤は、アジュバント無添加ワクチンと比較してより高い免疫応答を誘導した。MPL(群4および9)を補足された水中油型エマルジョンアジュバントAS03は、水中油型エマルジョンアジュバントAS03(群3および8)より強い応答を与えた。
【0423】
3.スプリット/AS03+MPLに対するCD4応答は、スプリット/AS03と比較して、より高い傾向にある(
図17)。
【0424】
4.スプリットワクチンによって誘導された応答は、サブユニットワクチンで得られた応答より優れていた(群1〜4と群5〜9とを比較)。
【0425】
5.実施したスプリットワクチンは、MPLを含むAS03でアジュバント添加されたものも、MPLを含まないAS03でアジュバント添加されたものも(群3および4)、Fluad(群5)またはAgrippal+OW(群7)いずれかのサブユニットワクチンでより強いCD4+T細胞応答を示した。
【0426】
2)免疫処置の7日後にICSによって得られたFlu特異的CD8+T細胞は、スプリット/AS3とスプリット単味との間で相違が観測されない(ヒトで観測)ことを示した。スプリット/AS03+MPLの使用によるCD8+ T細胞応答は、スプリット/AS03またはスプリット単味と比較して、より高い傾向にあった。
【0427】
3)同一アジュバントおよび上記3株では、サブユニットワクチンおよびスプリットワクチンによって、類似したHI力価が誘導された。上記3株では、Fluワクチン(サブユニットまたはスプリット)がAS03もしくはAS03+MPLでアジュバント添加された際に、Fluワクチン単味と比較して、統計的に有意な、より高い力価が観測された( A/Wyoming株では、FluワクチンOW>Fluワクチン単味)。
【0428】
実施例VIII
スプリットインフルエンザ抗原調製物、およびMPLを含むAS03アジュバントまたはMPLを含まないAS03アジュバントを含有するワクチンを用いた、65歳超の高齢者集団での臨床試験
VIII.1. 研究計画
筋肉内投与されたAS03アジュバントまたはAS03+MPLアジュバントを含有のGlaxoSmithKline Biologicals製インフルエンザ候補ワクチンの反応原性および免疫原性をFluarix(商標)ワクチン(ベルギーではα-Rix(商標)として知られている)と比較して評価するための、65歳超(≧65歳)の高齢者集団における、第1相オープン無作為対照試験。
【0429】
以下の3つの平行群を評価した。
・再構成、かつAS03アジュバント添加のSVインフルエンザワクチン1用量の投与を受ける50名の対象からなる1群(Flu AS03)
・再構成、かつFlu AS03+MPLアジュバント添加のSVインフルエンザワクチン1用量の投与を受ける50名の対象からなる1群(Flu AS03+MPL)
・Fluarix(商標)1用量の投与を受ける50名の対象からなる1対照群(Fluarix)
【0430】
VIII.2. ワクチン組成物および投与
上記3種のワクチンに使用された株は、2004-2005北半球四半期用にWHOによって推奨されたもの、すなわち、A/New Caledonia/20/99(H1N1)、A/New California/3/2003(H3N2)、およびB/Jiangsu/10/2003であった。比較器として用いられた市販ワクチンであるFluarix(商標)/α-Rix(商標)と同様に、アジュバント添加ワクチン(AS03またはAS03+MPL)は、1用量当たりそれぞれ15μg赤血球凝集素(HA)のインフルエンザウイルス株を含有している。
【0431】
上記アジュバント添加のインフルエンザ候補ワクチンは、I型ガラスバイアル中に用意した濃縮3価不活化スプリットビリオン抗原と、アジュバント(AS03またはAS03+MPL)を含有する前充填のI型ガラス注射器とからなる2成分ワクチンである。それらは実施例IIで詳述されている通りに調製した。上記アジュバント添加のインフルエンザ候補ワクチンの製剤に使用される3種の不活化スプリットビリオン抗原(1価原体)は、市販のFluarix(商標)/α-Rixの製剤に使用される活性成分と正確に同じものである。
【0432】
AS03アジュバント添加ワクチン
AS03アジュバント添加のインフルエンザ候補ワクチンは、I型ガラスバイアル(抗原容器)中に用意された濃縮3価不活化スプリットビリオン抗原(335μl)と、SB62エマルジョン(335μl)を含有する前充填のI型ガラス注射器(アジュバント容器)とからなる2成分ワクチンである。AS03候補ワクチンの記述および組成物は、実施例IIIに説明されている。
【0433】
AS03+MPLアジュバント添加ワクチン
簡潔には、AS03+MPLアジュバント添加のインフルエンザ候補ワクチンは、I型ガラスバイアル(抗原容器)中に用意された濃縮3価不活化スプリットビリオン抗原(335μl)と、AS03+MPLアジュバント(360μl)を含有する前充填のI型ガラス注射器(アジュバント容器)とからなる2成分ワクチンである。注射時に、AS03+MPLアジュバントを含有する注射器を用いることによって、バイアルから抗原容器の中身を取り出し、その後その注射器を穏やかに混合させる。注射の前に、使用済みの注射針を筋肉内用の注射針によって置換し、容積を530μlに修正する。1用量の再構成、かつAS03+MPLアジュバント添加のインフルエンザ候補ワクチンは、530μlに相当する。AS03+MPLアジュバント添加ワクチンの再構成の際に各インフルエンザ株について15μg HAを得るために、不活化スプリットビリオン抗原は、Fluarix(商標)(すなわち30μg HA/ml)と比較して、抗原容器内で2倍濃縮されている(すなわち60μg HA/ml)。
【0434】
再構成、かつアジュバント添加のインフルエンザワクチン1用量の組成は、インフルエンザ株を除いて、表45(実施例XIを参照)に報告されているものと同一である。両ワクチンとも筋肉内投与した。
【0435】
VIII.3. CMIの目的、エンドポイント、および結果
CMIの目的は、AS03またはAS03+MPLでアジュバント添加された製剤と、いかなるアジュバントも添加されていない組成物との間で、いずれの免疫原性組成物が、インフルエンザ抗原をワクチン接種された個体のCD4介在性およびCD8介在性免疫について、最も強い免疫賦活性を有するかを決定することであった。
【0436】
VIII.3.1. CMIのエンドポイントおよび結果
観測された変数
0および21日目における、5種の異なったサイトカインへの、10
6当たりのサイトカイン陽性CD4/CD8細胞の頻度。各試験は、以下の抗原に対するCD4/CD8 T細胞の応答を定量化する。
-下記3種の抗原のプール
-New Caledonia抗原
-Wyoming抗原
-Jiangsu抗原。
【0437】
派生変数
以下の5つの異なった試験で発現された抗原特異的なCD4およびCD8-T細胞応答。
【0438】
(a)少なくとも2種の異なったサイトカイン(CD40L、IL-2、IFNγ、TNFα)を産生する細胞
(b)少なくともCD40Lおよびもう1種のサイトカイン(IL-2、TNFα、IFNγ)を産生する細胞
(c)少なくともIL-2およびもう1種のサイトカイン(CD40L、TNFα、IFNγ)を産生する細胞
(d)少なくともIFNγおよびもう1種のサイトカイン(IL-2、TNFα、CD40L)を産生する細胞
(e)少なくともTNFαおよびもう1種のサイトカイン(IL-2、CD40L、IFNγ)を産生する細胞
【0439】
CMI応答の分析
CMI分析は、総ワクチン接種コホートに基づいて行った。
【0440】
(a)各治療群において、応答して分泌しているCD4/CD8 Tリンパ球の頻度を、各ワクチン接種群、各時点(0日目、21日目)、ならびに各抗原、すなわちNew Caledonia、Wyoming、Jiangsu、および上記異なった3株のプールについて測定した。
【0441】
(b)5種の異なったサイトカインそれぞれにおける各ワクチン接種群および各抗原の時点(POST-PRE)応答の間にある個人差の記述統計。
【0442】
(c)5種の異なったサイトカインに関する、
-New Caledonia、Wyoming、Jiangsu、および上記3株のプールに対するCD4 T細胞応答
-New Caledonia、Wyoming、Jiangsu、および上記3株のプールに対するCD8 T細胞応答
の上記3群の比較。
【0443】
(d)ノンパラメトリック検定(クラスカル-ワオリス検定)を用いて、上記3群の間にある部位の相違を比較し、5種の異なったサイトカインそれぞれにおける各抗原について統計的なp値を計算した。
【0444】
(e)ウィルコクソン検定を用いて、Flu AS03+MPL対Fluarix、Flu AS03+MPL対Flu AS03、およびFlu AS03対Fluarixの間で、それぞれ2群における一対一比較を検定した。
【0445】
(f)すべての有意性検定は、両側検定であった。0.05以下のP値を、統計的に有意であるとした。
【0446】
VIII.3.2. CMIの結果
結果は、CD4 T細胞またはCD8 T細胞亜集団内におけるサイトカイン陽性のCD4 T細胞またはCD8 T細胞の頻度として表した。
【0447】
抗原特異的なCD4 Tリンパ球の頻度
(a)実施例IIIで行った測定と同様に、各時点(0日目、21日目)、各抗原、および各ワクチン接種群(プール、New Caledonia、Wyoming、およびJiangsu)について、応答して分泌している抗原特異的なCD4 Tリンパ球の頻度を測定した。
【0448】
(b)クラスカル-ワオリス検定によって、上記3群の間にある抗原特異的なCD4 Tリンパ球の頻度の相違を比較したところ、すべてのp値が0.05未満であり、統計的に有意であるとされた。
【0449】
(c)ウィルコクソン検定によって、Flu AS03+MPL群とFluarix群との間の抗原特異的なCD4 Tリンパ球の頻度の相違を比較したところすべてのp値が0.05未満であり、統計的に有意であるとされた。
【0450】
(d)ウィルコクソン検定によって、Flu AS03群とFluarix群との間の抗原特異的なCD4 Tリンパ球の頻度の相違を比較したところ、すべてのp値が0.05未満であり、統計的に有意であるとされた。
【0451】
(e)ウィルコクソン検定によって、Flu AS03群とFlu AS03+MPL群との間の抗原特異的なCD4 Tリンパ球の頻度の相違を比較したところ、すべてのp値が0.05超であり、統計的に有意でないとされた。
【0452】
CD4 Tリンパ球における時点(POST-PRE)間の個人差
(a)実施例IIIで行ったのと同様に、CD4 Tリンパ球応答における時点(POST-PRE)間の個人差を、各ワクチン接種群、各抗原、および5種の異なったサイトカインについて計算した。
【0453】
(b)クラスカル-ワオリス検定によって、上記3群の間にある、抗原特異的なCD4-Tリンパ球応答におけるPOST-PREの個人差を比較したところ、すべてのp値が0.001未満であり、統計的に高度に有意であるとされた。
【0454】
(c)ウィルコクソン検定を用いて、Flu AS03+MPLとFluarixとの間にある、抗原特異的なCD4-Tリンパ球応答におけるPOST-PREの個人差を比較したところ、すべてのp値が0.05未満であり、統計的に有意であるとされた。
【0455】
(d)ウィルコクソン検定を用いて、Flu AS03とFluarixとの間にある、抗原特異的なCD4-Tリンパ球応答におけるPOST-PREの個人差を比較したところ、すべてのp値が0.001未満であり、統計的に高度に有意であるとされた。
【0456】
(e)ウィルコクソン検定を用いて、Flu AS03+MPLとFlu AS03との間にある、抗原特異的なCD4-Tリンパ球応答におけるPOST-PREの個人差を比較したところ、すべてのp値が0.05超であり、統計的に有意でないとされた。
【0457】
VIII.4. B細胞記憶応答の目的、エンドポイント、および結果
この研究の目的は、AS03+MPLアジュバントまたはAS03アジュバントを含有するFlu候補ワクチンを用いた1回の筋肉内ワクチン接種の際に、高齢者集団における、Flu抗原に特異的な記憶B細胞の頻度が、Fluarixと比較として、有意に誘導されるかどうか調査することであった。記憶B細胞の頻度は、B細胞エリスポットアッセイによって評価した。
【0458】
VIII.4.1. B細胞記憶応答のエンドポイント
エンドポイントは以下の通りである。
(a)0、21日目における、すべての対象のB細胞エリスポットによって、100万(10
6)のIgG産生プラズマ細胞のうちの特異的抗原プラズマ細胞の頻度として測定される、in vitro培養記憶B細胞内で生成された細胞。
(b)ワクチン接種後(21日目)と、ワクチン接種前(0日目)との間にある相違も、100万(10
6)の抗体産生細胞当たりのインフルエンザ特異的抗体産生細胞の頻度として表す。
【0459】
VIII.4.2. B細胞記憶応答の結果
100万(10
6)の抗体産生細胞当たりのインフルエンザ特異的抗体産生細胞の頻度を測定した。結果は、ウィルコクソン検定による、Flu AS03+MPL群とFluarix群との間のFlu抗原特異的な記憶B細胞の頻度が、B/Jiangsu株では有意に(p<0.05)高かったが、他の2株では有意でなかった(New Caledonia株およびWyoming株)ことを示した。
【0460】
Flu抗原特異的な記憶B細胞における、時点(post-pre)間の個人差も測定した。結果は、クラスカル-ワオリス検定による、Flu AS03+MPL群とFluarix群との間にある、Flu抗原特異的な記憶B細胞の頻度における時点(post-pre)間の個人差が、B/Jiangsu株では有意に(p<0.05)高かったが、他の2株では有意でなかった(New Caledonia株およびWyoming株)ことを示した。
【0461】
結果を
図18に示す。
【0462】
実施例IX
フェレットにおける、アジュバント添加およびアジュバント無添加のインフルエンザワクチンの前臨床評価(研究III)
IX.1. 原理および目的
この研究では、アジュバント無添加(Fluarix(商標))またはAS03+MPLでアジュバント添加された市販のGSKインフルエンザ3価スプリットワクチンを、以下に示す他の2種の市販サブユニットワクチンと比較した。
-Fluad(商標)、Chiron製のアジュバント添加サブユニットワクチン(アジュバントはChiron製MF59アジュバントである)。
-Agrippal(商標)、アジュバント無添加のChiron製市販のサブユニットワクチン。これは、本研究ではAS03アジュバントでアジュバント添加した。
【0463】
この実験の目的は、異種株でチャレンジされたフェレットの鼻汁における病徴(体温およびウイルス排泄)を低減させるこれらのワクチンの能力を評価することであった。
【0464】
エンドポイントは以下の通りであった。
1)第1エンドポイント:異種チャレンジ後における鼻洗浄物中のウイルス排泄の低減。
2)第2エンドポイント:プライミングおよび異種チャレンジ周辺における、IHAによる体液性応答の分析および体温のモニタリング。
【0465】
IX.2. 実験計画
IX.2.1. 治療/群
週齢14〜20週間の雌フェレット(Mustela putorius furo)をMISAY Consultancy(英国ハンプシャー(Hampshire))から入手した。0日目に、フェレットを異なる亜型株であるH1N1A/Stockholm/24/90で鼻腔内にプライミングした(4 Log TCID
50/ml)。21日目に、H1N1 A/New Caledonia/20/99、H3N2 A/Wyoming/3/2003、およびB/Jiangsu/10/2003の組合せを完全なヒト用量(1mlワクチン用量、15μg HA/株)でフェレットに筋肉内注射した。次に、42日目に、鼻腔内経路によって異型株であるH3N2A/Panama/2007/99をフェレットにチャレンジした(4.51 Log TCID
50/ml)。群(6匹のフェレット/群)を表41に示す。行われた読み取りを表42に詳述する。
【表41】
【0466】
IX.2.2. ワクチン製剤の調製
スプリット3価単味(アジュバント無添加):1mlの製剤
10倍濃縮されたPBS(1倍濃縮のときにpH7.4)ならびにTween80、Triton X100、およびVESを含有する混合物(量には株に存在する界面活性剤を考慮に入れる)を注射用蒸留水に添加する。得られる界面活性剤の量は以下の通り、すなわち、1ml当たり375μgのTween80、55μgのTriton X100、および50μgのVESである。5分間の撹拌の後に、H1N1およびH3N2各株15μg、ならびにB株17.5μgを添加し、その際、各添加の間に10分間撹拌する。上記製剤を15分間室温で撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0467】
AS03+MPLでアジュバント添加されたスプリット3価:1mlの製剤
10倍濃縮されたPBS(1倍濃縮のときにpH7.4)ならびにTween80、Triton X100、およびVESを含有する混合物(量には株に存在する界面活性剤を考慮に入れる)を注射用蒸留水に添加する。得られる界面活性剤の量は以下の通り、すなわち:1ml当たり375μgのTween80、55μgのTriton X100、および50μgのVESである。5分間の撹拌の後に、H1N1、H3N2、およびBの各株15μgを添加し、その際各添加の間に10分間撹拌する。15分間の撹拌の後に、250μlのSB62エマルジョン(実施例II.1で教示されている通りに調製する)を添加する。この混合物を、再度15分間撹拌し、その直後に25μgのMPLを添加する。上記製剤を15分間室温で撹拌し、直接投与しない場合には4℃で保存する。
【0468】
Fluad(商標)製剤:1mlの製剤
PBS緩衝剤pH7.4中にFluad(商標)ワクチンの2倍希釈を調製する。
【0469】
Agrippal(商標)AS03製剤:1mlの製剤
1用量のAgrippal(商標)に、250μlのPBS緩衝液pH7.4を添加する。撹拌の後、250μlのSB62エマルジョン(実施例II.1で教示されている通りに調製する)を添加する。この混合物を室温で撹拌する。
【0470】
IX.2.2. 読み取り
【表42】
【0471】
IX.3. 結果(図19から22)
IX.3.1. 体温モニタリング
個体の体温を、送信機を用い、遠隔測定記録によってモニターした。腹腔内腔に設置する前に、すべてのインプラントを検査して、新装し、DSIによって新たな較正を行った。これらの測定中、すべての動物を単一ケージに個別に収容した。体温は、チャレンジの2日前からチャレンジの4日後まで、15分間毎にモニターし、正午までの平均体温を計算した。結果を
図19に示す。
【0472】
結果
アジュバント無添加(単味)の3価スプリット(Fluarix(商標))またはサブユニットワクチンFluad(商標)(これはMF59水中油型エマルジョンを含有する)を用いてフェレットの免疫処置を行った後では、チャレンジ後に体温のピークが観察された。フェレットを、AS03+MPLでアジュバント添加された3価スプリットワクチンで免疫処置した後でも、あるいはAS03でアジュバント添加されたサブユニットAgrippal(商標)で免疫処置した後でも、ピークは観察されなかった。結論として、チャレンジ後における体温上昇の予防における、AS03含有ワクチンの付加価値が、試験されたスプリットワクチンおよびサブユニットワクチンの両方で示された。これは、MF59含有ワクチンが、フェレットにおけるチャレンジ後の体温上昇を予防できなかったことと対照的である。
【0473】
IX.3.2. ウイルス排泄
1群当たり6匹の動物について、鼻洗浄液のウイルス力価測定を行った。鼻洗浄は、覚醒している動物の両方の鼻孔に5mlのPBSを投与することによって行った。接種物をペトリ皿に収集し、ドライアイス(-80℃)上の試料容器中に置いた。
【0474】
すべての鼻腔試料は、いかなる細菌汚染も除去するために、最初に、Spin Xフィルター(Costar)に通して無菌濾過した。鼻洗浄液の連続10倍の希釈物50μlを、50μlの培地を含有するマイクロタイタープレート中に移した(10ウェル/希釈)。その後、100μlのMDCK細胞(2.4×10
5細胞/ml)を各ウェルに添加し、35℃で5〜7日間インキュベートした。5〜7日間のインキュベーションの後、培養培地を穏やかに除去し、培地を含有する100μlの1/20 WST-1を添加して、さらに18時間インキュベートする。
【0475】
生存細胞によるWST-1の還元の際に産生される黄色のホルマザン色素の強度は、ウイルス力価測定アッセイの終わりに、ウェル中に存在する生存細胞数に比例しており、適切な波長(450ナノメートル)で各ウェルの吸収を測定することによって定量化される。カットオフは、未感染の対照細胞の平均ODと定義され、0.3 OD(0.3 ODは未感染の対照細胞のOD +/-3 StDevに対応している)である。正のスコアはODが<カットオフであるときと定義され、その反対に、負のスコアは、ODが>カットオフであるときと定義される。ウイルス排泄力価は、「ReedおよびMuench」によって測定し、Log TCID
50/mlで表した。
【0476】
結果
結果を
図20に示す。アジュバント無添加(単味)の3価スプリットワクチン(Fluarix(商標))、またはFluad(商標)サブユニットワクチンで、フェレットを免疫処置した後における、減少が極めて少なかったウイルス排泄と比較して、AS03+MPLでアジュバント添加された3価スプリットワクチン、またはAS03でアジュバント添加されたAgrippal(商標)サブユニットワクチンでチャレンジされた後には、より少ないウイルス排泄が観測された。
【0477】
体温上昇に関して論じたことと同様に、MF59含有ワクチンとの比較における、AS03含有ワクチンの付加価値が観測された。
【0478】
IX.3.3. HI力価
H3N2インフルエンザウイルス株に対する抗赤血球凝集素抗体力価を、血球凝集抑制試験(HI)を用いて測定した。HI試験の原理は、インフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)によるニワトリ赤血球(RBC)の赤血球凝集反応を抑制する特異的抗インフルエンザ抗体の能力に基づいている。血清は、最初に、25%のノイラミニダーゼ溶液(RDE)で処理し、非特異的な抑制因子を除去するために熱不活化させた。前処置の後、血清の2倍希釈物を4赤血球凝集反応単位の各インフルエンザ株と共にインキュベートした。その後、ニワトリ赤血球を添加し、凝集の抑制をスコアリングした。力価は、赤血球凝集反応を完全に抑制した最も高い血清希釈率の逆数として表した。最初の血清希釈率は1:10であったので、検出不可能なレベルは、5に等しい力価としてスコアリングした。
【0479】
結果
H3N2 A/Wyomingで免疫処置した後では、フェレットをアジュバント無添加(単味)の3価スプリットワクチン(Fluarix(商標))またはFluad(商標)サブユニットワクチンで免疫処置した後で観測される体液性応答と比較して、より高い体液性応答(HI力価)が、AS03+MPLでアジュバント添加した3価スプリットワクチンまたはAS03でアジュバント添加されたAgrippal(商標)サブユニットワクチンで免疫処置されたフェレットで観測された(
図21)。
【0480】
H3N2 A/Wyomingで免疫処置した後では、3価スプリット単味またはFluadで免疫処置されたフェレットと比較して、より高い体液性応答(HI力価)が、AS03+MPLでアジュバント添加された3価スプリットまたはAS03でアジュバント添加されたAgrippal(商標)で免疫処置されたフェレットで、チャレンジ株として使用されたドリフト株H3N2 A/Panamaに対して観測された(
図22)。
【0481】
本発明者らのアジュバント(AS03またはAS03+MPL)で観測された、異種株に対するこの交差反応は、AS03+MPLでアジュバント添加された3価スプリットワクチンまたはAS03でアジュバント添加されたAgrippal(商標)サブユニットワクチンで免疫処置され、その後この異種株でチャレンジされたフェレットで観測された保護と相関している。AS03含有ワクチンによって誘導された、異種株に対するこの交差反応は、MF59アジュバント添加ワクチン(Fluad(商標))では誘導されなかった。
【0482】
実施例X
スプリットインフルエンザ抗原調製物、およびMPLを含むAS03アジュバントまたはMPLを含まないAS03アジュバントを含有するワクチンを用いた、65歳超の高齢者集団での臨床試験:90および180日目の免疫原性持続データ
X.1. 研究計画
筋肉内投与されたAS03アジュバントまたはAS03+MPLアジュバント含有のGlaxoSmithKline Biologicals製インフルエンザ候補ワクチンの反応原性および免疫原性をFluarix(商標)ワクチン(ベルギーではα-Rix(商標)として知られている)と比較して評価するための、65歳超(≧65歳)の高齢者集団における、第1相オープン無作為対照試験。この研究は、実施例VIIIで報告されたことに従う。
【0483】
以下の3つの平行群の評価を行った。
・再構成、かつAS03アジュバント添加のSVインフルエンザワクチン1用量の投与を受ける50名の対象からなる1群(Flu AS03)
・再構成、かつAS03+MPLアジュバント添加のSVインフルエンザワクチン1用量の投与を受ける50名の対象からなる1群(Flu AS03+MPL)
・Fluarix(商標)1用量の投与を受ける50名の対象からなる1対照群(Fluarix)
【0484】
X.2.免疫原性の結果
X.2.1. 体液性免疫応答のエンドポイントおよび結果
AS03およびAS03+MPLアジュバント添加ワクチンによって誘導された体液性免疫応答およびその持続性を評価するために、各治療群について、以下のパラメータを計算した。
【0485】
0、21、90、および180日目における、ワクチン中に提示された3株のインフルエンザウイルス株それぞれに対して別々に試験された血清赤血球凝集抑制(HI)抗体力価(抗H1N1、抗H3N2、および抗B抗体)。
【0486】
・0、21、90、および180日目における、95%CIを有する血清HI抗体GMT
・21、90、および180日目における95%CIを有するセロコンバージョン率
・21日目における95%CIを有するコンバージョン係数
・0、21、90、および180日目における95%CIを有する血清保護率。
【0487】
結果
95%CIを有するHI抗体GMTを
図23に示す。3株のワクチン株すべての抗体のワクチン接種前GMTは、それら3群の中では同じ範囲内にあった。ワクチン接種後の抗赤血球凝集抗体レベルは有意に増大した。しかし、上記3株のワクチン株の抗体のワクチン接種後GMTはすべてのワクチンで同じ範囲内のままであった。21日目に、A/New CaledoniaおよびB/Jiangsuでは、Fluarixと比較して、2種のアジュバント添加ワクチンの方が好ましいというかすかな傾向が見出され、これら2種のアジュバント添加ワクチンの間では、A/Wyoming株およびB/Jiangsu株に関しては、FLU AS03で、より高いGMTが観測された。
【0488】
同じ傾向が90日目に観察された。180日目には、上記3株のワクチン株の抗体のGMTが、上記3種のワクチンで同じ範囲内にあった。
【0489】
すべてのインフルエンザワクチンが、60歳以上の対象におけるインフルエンザ不活化ワクチン年間登録のための欧州当局の規定[「Note for Guidance on Harmonisation of Requirements for Influenza Vaccines for the immunological assessment of the annual strain changes」(CPMP/BWP/214/96)]を満たしていた。
【0490】
ワクチン接種の3カ月(90日間)後および6カ月(180日間)後には、血清保護率は、どの検査群を考慮しても、依然として、欧州当局によって規定されている最低率である60%より高かった。90日目には、セロコンバージョン率は、依然として、A/New Caledonia用のFluarixを除いて、上記3つのワクチン群のすべてのワクチン株で、欧州当局によって規定されている最低率である30%を達成していた。180日目には、A/Wyoming株およびB/Jiangsu株に関しては上記3種のワクチンで、依然としてそれが達成されていたが、A/New Caledonia株に関しては達成されていなかった(表43および表44)。
【表43】
【0491】
【表44】
【0492】
X.2.2. CMI応答のエンドポイントおよび結果
アジュバント添加ワクチンによって誘導された細胞性免疫応答およびその持続性を評価するために、各治療群について、以下のパラメータを計算した。
【0493】
各時点(0、21、90、および180日目)における、異なった試験での10
6当たりのサイトカイン陽性CD4/CD8細胞の頻度(0および21日目には、New Caledonia、Wyoming、およびJiangsu抗原、ならびにプールを別々に考慮し、90および180日目には、New Caledonia、Wyoming、Jiangsu、およびNew York抗原、ならびにプールを別々に考慮した)。
【0494】
・オールダブル:少なくとも2つの異なったサイトカインを産生する細胞(CD40L、IFN-γ、IL-2、TNF-α)。
・CD40L:少なくともCD40Lおよびもう1種のサイトカイン(IFN-γ、IL-2、TNF-α)を産生する細胞。
・IFN-γ:少なくともIFN-γおよびもう1種のサイトカイン(CD40L、IL-2、TNF-α)を産生する細胞。
・IL-2:少なくともIL-2およびもう1種のサイトカイン(CD40L、IFN-γ、TNF-α)を産生する細胞。
・TNF-α:少なくともTNF-αおよびもう1種のサイトカイン(CD40L、IFN-γ、IL-2)を産生する細胞。
【0495】
結果
主要な知見は以下の通りであった(
図24)。
【0496】
(a)ワクチン接種の21日後に、サイトカイン陽性CD4 T細胞(IL-2、CD40L、TNF-α、およびIFN-γ)の頻度は、2つのアジュバント添加ワクチン群で、Fluarix群と比較して有意に高かった。しかし、それら2つのアジュバント間には有意な相違が検出されなかった。
【0497】
(b)アジュバント添加ワクチンとFluarixとの間におけるすべての統計的相違は、180日目における以下の例外を除いて、最大90日目および180日目まで維持されていた。
・オールダブル、CD40L、IFN-γ、およびIL2(Wyoming株のみ)に関して、ならびにオールダブル、CD40L、およびTNF-α(New York株のみ)に関しては、FluAS03/MPLとFluarixとの間に統計的に有意な相違が見出されなかった。
・IL2(Jiangsu株のみ)に関しては、FluAS03とFluarixとの間で統計的に有意な相違が見出されなかった。
【0498】
(c)上記2種のアジュバント添加ワクチン間における統計的に有意な相違の欠如は、最大90日目および180日目まで確認された。
【0499】
(d)調査したすべてのサイトカイン(IL-2、CD40L、TNF-α、およびIFN-γ)に関して、CD4 Tリンパ球応答における、ワクチン接種前とワクチン接種後(21日目)との間の相違は、上記2種のアジュバント添加ワクチンで、Fluarix(商標)と比較して有意に大きかった。しかし、両アジュバント間では有意な相違が検出されなかった。
【0500】
(e)ワクチン接種は、いかなる治療群でも、測定可能な変化をCD8応答に与えなかった。
【0501】
実施例XI
スプリットインフルエンザ抗原調製物、およびMPLを含むAS03アジュバントを含有するワクチンを用いた、65歳超の高齢者集団での臨床試験
XI.1. 研究計画および目的
AS03+MPLアジュバントを含有するGlaxoSmithKline Biologicals製インフルエンザ候補ワクチンの反応原性および免疫原性を評価するために、2004年に同じ候補ワクチンで事前にワクチン接種されている65歳超(>65歳)の高齢者集団における第I/II相オープン対照試験を行った。免疫原性および安全評価には、参照としてFluarix(商標)(ベルギーではα-Rix(商標)として知られている)ワクチンを用いた。
【0502】
以下の2つの平行群を評価した。
・以前の臨床試験中に再構成されたアジュバント添加のインフルエンザワクチン1用量の投与を事前に受けた約50名の対象からなる1群
・以前の臨床試験中にFluarix(商標)1用量の投与を事前に受けた約50名の対象からなる1対照群(Fluarix)
【0503】
この研究の目的の1つは、初回投与の約1年後に投与されたアジュバント添加インフルエンザワクチンFlu AS03+MPLでのワクチン再接種の体液性免疫応答(抗赤血球凝集素および抗MPL力価)を評価することであった。比較を目的として、以前の試験で既にFluarix(商標)の投与を受けた対象は、1用量の市販ワクチンの投与を受け、この試験の対照群を形成した。
【0504】
XI.2. ワクチン組成物および投与
上記3種のワクチンに使用された株は、2005-2006北半球四半期用にWHOによって推奨されたもの、すなわち、A/New Caledonia/20/99(H1N1)、A/New California/7/2004(H3N2)、およびB/Jiangsu/10/2003であった。比較器として用いられた市販ワクチンであるFluarix(商標)/α-Rix(商標)と同様に、AS03+MPLアジュバント添加ワクチン(本明細書では以下「アジュバント添加ワクチン」と短縮)は、1用量当たりそれぞれ15μg赤血球凝集素(HA)のインフルエンザウイルス株を含有している。
【0505】
上記アジュバント添加のインフルエンザ候補ワクチンは、I型ガラスバイアル中に用意した濃縮3価不活化スプリットビリオン抗原と、AS03+MPLアジュバントを含有する前充填のI型ガラス注射器とからなる2成分ワクチンである。それは、実施例IIに詳述されている方法に従って調製した。
【0506】
注射時に、濃縮3価不活化スプリットビリオン抗原を含有しているバイアル中に、アジュバントを含有する前充填された注射器の内容物を注入する。混合の後、内容物を注射器中に戻し、注射針を筋肉内用の注射針によって置換する。再構成アジュバント添加インフルエンザ候補ワクチンの1用量は、0.7mlに相当する。アジュバント添加インフルエンザ候補ワクチンは無保存剤ワクチンである。
【0507】
1用量の再構成アジュバント添加インフルエンザワクチンの組成を表45に示す。両ワクチンとも筋肉内投与した。
【表45】
【0508】
XI.3. 免疫原性結果
XI.3.1. 抗HA体液性免疫応答のエンドポイントおよび結果
観測された変数
0および21日目における、ワクチン中に提示された3株のインフルエンザウイルス株それぞれに対して別々に試験された血清赤血球凝集抑制(HI)抗体力価(抗H1N1、抗H3N2、および抗B抗体)。
【0509】
派生変数(95%の信頼区間を有する)
(f)ワクチン接種前およびワクチン接種後における、95%の信頼区間(95%CI)を有する、血清HI抗体の幾何平均力価(GMT)
(g)21日目における、95%CIを有するセロコンバージョン率
*
(h)21日目における95%CIを有するセロコンバージョン係数
**
(i)21日目における95%CIを有する血清保護率
***
【0510】
*セロコンバージョン率は、各ワクチン株について、<1:10のワクチン接種前HI力価および≧1:40のワクチン接種後力価、あるいは≧1:10のワクチン接種前力価およびワクチン接種後力価における最小4倍の増大を有する被ワクチン接種者のパーセントと定義される。
【0511】
**セロコンバージョン係数は、各ワクチン株について、21日目の血清HI GMTにおける、0日目と比較した増大の倍率と定義される。
【0512】
***保護率は、保護を示すと通常認められている≧40の血清HI力価をワクチン接種後に有する被ワクチン接種者のパーセント(各ワクチン株について)と定義される。
【0513】
結果
予測通り、両群中の大多数の対象は、上記3株に関してワクチン接種前に既に血清陽性であった。3株のワクチン株すべてのワクチン接種前GMTは、上記2群中で同じ範囲内にあった。Flu AS03+MPL群では、95%CIは重なっていたが、3株のワクチン株すべてに関して、ワクチン接種後に、Fluarix群と比較して、より高いGMTを有する傾向があった(
図25)。
【0514】
上記2種のインフルエンザワクチンは、60歳以上の対象におけるインフルエンザ不活化ワクチン年間登録のための欧州当局の規定[「Note for Guidance on Harmonisation of Requirements for Influenza Vaccines for the immunological assessment of the annual strain changes」(CPMP/BWP/214/96)]を満たしていた(表46)。
【表46】
【0515】
実施例XII
2つの異なった濃度のAS03およびMPLでアジュバント添加されたスプリットインフルエンザ抗原調製物含有ワクチンを用いた、65歳超の高齢者集団での臨床試験
XII.1. 研究計画および目的
高齢者集団(65歳以上)に投与された、様々なアジュバントを含有しているGlaxoSmithKline Biologicals製インフルエンザ候補ワクチンが、成人(18〜40歳)に投与されたFluarix(商標)(ベルギーではα-Rix(商標)として知られている)と比較して、細胞性免疫応答に関して劣っていないことを実証するためのオープン無作為第I/II相試験。
【0516】
以下の4つの平行群を割り当てた。
(a)Fluarix(商標)1用量の投与を受ける75名の成人(18〜40歳)からなる1対照群(Fluarix群)
(b)3:3:2で3群にランダム化された200名の高齢対象(65歳以上)
-AS03+MPLでアジュバント添加されたインフルエンザワクチンの投与を受ける75名の対象からなる1群(濃度1〜25μg)
-AS03+MPLでアジュバント添加されたインフルエンザワクチンの投与を受ける75名の対象からなる1群(濃度2〜50μg)
-Fluarix(商標)の1用量の投与を受ける50名の対象からなる参照Flu群
【0517】
一次目的
一次目的は、成人(18〜40歳)に投与されたFluarix(商標)と比較して、高齢対象(65歳以上)に投与されたインフルエンザアジュバント添加ワクチンが、ワクチン接種後21日間に、少なくとも2つの異なったサイトカイン(CD40L、IL-2、TNF-α、IFN-γ)を産生するインフルエンザ特異的CD4 Tリンパ球の頻度に関して劣っていないことを実証することである。
【0518】
二次目的
二次目的は以下の通りである。
(a)高齢対象(65歳以上)における上記ワクチンの筋内投与後21日間における、アジュバント添加の候補インフルエンザワクチンを用いたワクチン接種の安全性および反応原性を評価すること。Fluarix(商標)を参照として用いる。
(b)アジュバント添加のインフルエンザ候補ワクチンでワクチン接種した21、90、および180日後における、体液性免疫応答(抗赤血球凝集素力価)を評価することFluarix(商標)を参照として用いる。
【0519】
三次目的
三次目的は、アジュバント添加インフルエンザワクチンでワクチン接種した21、90、および180日後における、細胞性免疫応答(IFN-γ、IL-2、CD40L、およびTNF-αの産生、ならびに記憶B細胞応答)を評価することである。Fluarix(商標)を参照として用いる。
【0520】
XII.2. ワクチンの組成および投与
AS03+MPL(1用量当たり25μg)システムでアジュバント添加されたインフルエンザワクチンは、実施例VIに例示した研究でも使用されている。AS03+MPL(1用量当たり50μg)システムでアジュバント添加されたインフルエンザワクチンは、MPLの濃度が倍にされていることを除けば、同一組成のものである。工程は、AS03+MPLでアジュバント添加されたインフルエンザワクチンに関して実施例VIIIで記載したものと同じであり、MPLの濃度が倍であるということのみが相違している。
【0521】
対照:IM投与による完全用量のFluarix(商標)。
計画における1対象当たり4回の来院:0、21、90、および180日目。各来院時に、免疫原性を評価するためにの血液試料を収集する。
ワクチン接種計画:0日目にインフルエンザワクチンを単回注射
【0522】
XII.3. 免疫原性の結果
XII.3.1. CMIのエンドポイントおよび結果
一次エンドポイントの評価
21日目おける、試験された10
6当たりの、少なくとも2種の異なったサイトカイン(IL-2、IFN-γ、TNF-α、およびCD40L)を産生するインフルエンザ特異的CD4 Tリンパ球の頻度に関する、全対象のCMI応答。
【0523】
CMI応答の評価には、以下の通りにインフルエンザ特異的CD4の頻度を分析する。
アジュバント添加ワクチンでワクチン接種された群とFlu(若年)でワクチン接種された群との間における、インフルエンザ特異的CD4の頻度に関するGM比を、対数変換された力価に関する共分散分析モデルを用いて得る。この共分散分析モデルは、固定効果としてワクチン群、そしてリグレッサーとしてワクチン接種前の対数変換力価を含んでいる。GM比およびそれらの98.75%CIは、モデルで対比される対応群の指数関数変換として得られる。調整GMの98.75%CIは、上記共分散分析モデルの群最小2乗平均の98.75%CIの指数関数変換によって得られる。
【0524】
結果-推測分析(表47)
「プール抗原II」でin vitro再刺激した後、21日目における、少なくとも2種のサイトカイン(IL-2、IFN-γ、TNF-α、およびCD40L)を産生するインフルエンザ特異的CD4 Tリンパ球の調整GM比およびGM比(それらの98.75%CIを有する)を表47に示す。各アジュバント添加インフルエンザワクチンについて、GM比の両側98.75%CIの上限は、臨床上の限界である2.0よりはるかに小さい。これは、高齢対象に投与されたアジュバント添加のインフルエンザワクチンは両方とも、インフルエンザ特異的CD4のワクチン接種後頻度に関して、18〜40歳の成人に投与されたFluarix(商標)ワクチンと比較して劣っていないことを示す。
【表47】
【0525】
結果-記述分析(図26)
主要な知見は以下の通りであった。
【0526】
・ワクチン接種前、CMI応答は高齢者のものより若年成人のものの方が強い。
【0527】
・ワクチン接種後、
-若年成人(18〜40歳)のCMI応答にはインフルエンザワクチンの追加免疫効果があった。
-アジュバント添加のインフルエンザワクチンの投与を受けた高齢者のCMI応答は、若年成人のCMI応答に匹敵する。
【0528】
・本発明者らがFluarix(18〜40歳)とFlu/AS03+MPL(濃度1)とを比較した際には、調査したすべてのサイトカイン(IL-2、CD40L、TNF-α、およびIFN-γ)のCD4 Tリンパ球応答における、ワクチン接種前とワクチン接種後との間の相違は、IFNγを除いてすべての試験で、アジュバント添加ワクチンを用いた場合、Fluarix(商標)(18〜40歳)と比較して、有意に高かった。
【0529】
in vitro刺激は、ワクチンに含まれているA/H1N1/New-Caledoniaではなく、(i) B/Jiangsu、(ii) A/H3N2/New-York、および(iii) A/H3N2/WyomingのFlu株を用いて行われたことに留意するべきである。しかし、対象の部分集合から得られた、A/H1N1/New Caledoniaワクチン株を含む予備データは、それらの結果が類似したものであろうことを示している。
【0530】
結果-三次エンドポイントの評価(表48)
三次エンドポイントを評価するために、0、21、90、および180日目に、インフルエンザ特異的なCD4/CD8 Tリンパ球および記憶B細胞の頻度を測定した。
【0531】
0および21日目における各ワクチン接種群、各抗原に関して、インフルエンザ特異的なサイトカイン陽性CD4/CD8 Tリンパ球の頻度の概略を示した(記述統計)。
【0532】
ノンパラメトリック検定(ウィルコクソン検定)を用いて、上記2群(インフルエンザアジュバント添加ワクチン対Fluarix(商標))の間にある部位の相違を比較し、異なった試験それぞれにおける各抗原の統計的p値を計算した。
【0533】
21日目/0日目(ワクチン接種後/前)の応答の間にある個人差の記述統計を、各ワクチン接種群および異なった試験それぞれにおける各抗原に関して計算する。
【0534】
ノンパラメトリック検定(ウィルコクソン検定)を用いて、ワクチン接種後/前の個人差を比較し、異なった試験それぞれにおける各抗原の統計的p値を計算するであろう。
【0535】
インフルエンザ特異的CD4 Tリンパ球の頻度の相違を比較するのに用いられたウィルコクソン検定から得られたp値を表48に示す。
【表48】
【0536】
主要な結論は以下の通りである。
【0537】
(a)インフルエンザ特異的CD4のワクチン接種前GM頻度は、高齢対象のすべての群で類似していたが、18から40歳の間の成人の方が優れていた。
【0538】
(b)インフルエンザ特異的CD4 Tリンパ球のワクチン接種後(21日目)の頻度は、アジュバント添加ワクチンでワクチン接種された高齢対象、およびFluarix(商標)でワクチン接種された18から40歳の間の成人で類似していた。
【0539】
(c)高齢対象では、インフルエンザ特異的CD4 Tリンパ球のワクチン接種後(21日目)頻度は、Fluarix(商標)でワクチン接種したものより、アジュバント添加ワクチンでワクチン接種した後の方が有意に高かった。
【0540】
(d)インフルエンザ特異的CD8 T細胞のワクチン接種前およびワクチン接種後のGM頻度は、本質的にはすべての群で類似していた。
【0541】
結果-体液性免疫応答のエンドポイントの評価
観測された変数
0、21、90、および180日目における、ワクチン中に提示された3株のインフルエンザウイルス株それぞれに対して別々に試験された血清赤血球凝集抑制(HI)抗体力価(抗H1N1、抗H3N2、および抗B抗体)。
【0542】
全ワクチン抗原に対するHI抗体のカットオフ値は、分析前に検査室によって定義された(そして、1:10に等しい)。血清陰性対象は、抗体力価がカットオフ値未満の対象である。血清陽性の対象は、抗体力価がカットオフ値以上である対象である。アッセイのカットオフ未満である抗体力価には、カットオフの半分の任意値を与える。
【0543】
HI抗体力価に基づいて、以下のパラメータを計算する。
【0544】
(j)対数変換力価の平均真数をとることによって計算される、0および21日目におけるHI抗体の幾何平均力価(GMT)。
【0545】
(k)0日目と比較した、21日目の血清HI GMTの増大の倍率と定義される、21日目のセロコンバージョン係数(SF)。
【0546】
(l)<1:10のワクチン接種前HI力価および≧1:40のワクチン接種後力価、あるいは≧1:10のワクチン接種前力価およびワクチン接種後力価における最小4倍の増大を有する被ワクチン接種者のパーセントと定義される、21日目のセロコンバージョン率(SC)。
【0547】
(m)血清HI力価が≧1:40である被ワクチン接種者のパーセントとして定義される、21日目の血清保護率(SPR)。
【0548】
GMの95%CIは、各群の中で別々に得る。最初に、対数変換力価は通常、未知の分散で分配されると仮定して、対数変換力価の平均の95%CIを得る。次に、対数変換力価平均の95%CIの指数関数変換によりGMの95%CIを得る。
【0549】
特定の抗体測定の欠失している血清学結果は、置換しない。したがって、所与の時点における血清学結果のない対象は、その時点のアッセイの分析には寄与しない。
【0550】
体液性免疫応答の結果(図27および表49)
3株のワクチン株すべてに対するHI抗体のワクチン接種GMTは、4つの治療群で同じ範囲内にあった。上記2種のアジュバントは、同じ集団における標準的Fluarixと比較して、ワクチン接種後に、高齢における体液性応答を増強する明確な影響を有した。
【0551】
GMTは、
・H1N1については、AS03+MPL(濃度2)で有意に高い。
・H3N2およびBについては、両方のアジュバントで有意に高い。
【0552】
ワクチン接種の21日後に、Fluarix(18〜40歳)の対象は、New Caledonia株およびB/Jangsu株で、より高いHI応答を有した。
【0553】
表49に示す通り、上記アジュバント添加インフルエンザワクチンは、60歳以上の対象におけるスプリットビリオンインフルエンザワクチン年間登録のための欧州当局の規定[「Note for Guidance on Harmonization of Requirements for Influenza Vaccines for the immunological assessment of the annual strain changes」(CPMP/BWP/214/96)]を上回るものであった。
【0554】
ワクチン接種後に、HI抗体の血清保護率に関して、Fluarix(≧65歳)群と以下のものとの間に統計的な相違があった。
・A/New Caledonia株でのFlu AS03+MPL(濃度2)
【0555】
各ワクチン株について、上記2種のインフルエンザアジュバント添加ワクチン群の血清保護率は、Fluarix(18〜40歳)群と比較して、同じ範囲内にある。
【0556】
HI抗体のセロコンバージョン率に関して、Fluarix(≧65歳)群と以下のものとの間に統計的な相違があった。
・A/New Caledonia株でのFlu AS03+MPL(濃度2)
・B/Jiangsu株でのFlu AS03+MPL(濃度1)
【0557】
各ワクチン株について、上記2種のインフルエンザアジュバント添加ワクチン群のセロコンバージョン率は、New Caledonia株のものを除いて、Fluarix(18〜40歳)群と比較して、同じ範囲内にある。
【表49】
【0558】
XII.3.2. 免疫原性の結論
(a)インフルエンザ特異的CD4のワクチン接種前の頻度は、高齢成人では、18から40歳の間の成人と比較して、有意に劣っていた。Fluarix(商標)でワクチン接種した後、ワクチン接種後(21日目)の頻度は、高齢成人では、より若いものと比較して劣ったままであった。反対に、高齢対象にアジュバント添加ワクチンを接種した後では、18から40歳の間の成人におけるFluarix(商標)でのワクチン接種と比較して、インフルエンザ特異的CD4のワクチン接種後の頻度に関して劣っていないことが実証された。
【0559】
(b)HI抗体応答に関する体液性免疫応答に関しては、すべてのインフルエンザワクチンが、インフルエンザ不活化ワクチン年間登録のための欧州当局の規定[「Note for Guidance on Harmonisation of Requirements for Influenza Vaccines for the immunological assessment of the annual strain changes」(CPMP/BWP/214/96)]を満たしていた。高齢成人では、アジュバント添加ワクチンは、インフルエンザ赤血球凝集素に対して、少なくとも、Fluarix(商標)より強い傾向のある体液性免疫応答を媒介した。高齢対象においてアジュバント添加ワクチンによって媒介された各ワクチン株に対する体液性免疫応答における、Fluarix(商標)と比較して有意な相違の概略を表50に示す。アジュバント添加ワクチンを接種された高齢対象は、A/New York株に対して、21日目に、Fluarix(商標)をワクチン接種された18から40歳の間の成人と比較して、より高いワクチン接種後GMTおよびセロコンバージョン係数を有する傾向を示した。
【表50】
【0560】
XII.4. 反応原性の結果
XII.4.1. 有害事象(AE)に関する記録
7日間の追跡期間中(ワクチン接種日およびそれに続く6日間)に生じた検査症候(solicited symptom)(表51を参照)を記録した。21日間の追跡期間中(ワクチン接種の日およびそれに続く20+3日間)に生じた非検査症候(unsolicited symptom)も記録した。以下のAEの強度は、表52の記載に従って評価した。
【表51】
【0561】
【表52】
【0562】
局所的注射部位の発赤/膨潤の最大強度は以下の通りにスコアリングする。
0は0mm、1は0〜20mm、2は20〜50mm、3は>50mmである。
【0563】
発熱の最大の強度は以下の通りにスコアリングする。
1は>37.5〜≦38.0℃、2は>38.0〜≦39.0℃、3は>39.0である。
【0564】
治験責任医師は、試験中に報告されたSAEを含めた他のすべてのAE、すなわち非検査症候に関する強度の診断を行う。診断は、治験責任医師の臨床上の判断に基づく。記録された各AEの強度は、以下の範疇の1つに割り当てられる。
1(軽度)=対象によって容易に許容されるAE、最小限の不快感を引き起こし、日々の活動を妨害しない。
2(中程度)=日々の正常な活動を妨害するのに十分に不快なAE。
3(重度)=日々の正常な活動を阻止するAE(成人/青年においては、そのようなAEは、例えば仕事/学校への出席を阻止するであろうし、また、矯正療法の投与を必要とするであろう)。
【0565】
XII.4.2. 有害事象(AE)の記録
高齢対象でアジュバント添加ワクチンに伴って観察された、局所性および全身性両方の症候に関する反応原性は、同じ集団ではFluarix(商標)に伴うものより高いことが見出された。しかし、それは、成人集団で見られるレベルと同程度であることが示された。発生率および症候の強度は、アジュバント添加ワクチンを接種された後では、高齢対象でFluarix(商標)に伴って見られた反応原性と比較して増大していた(
図28)。すべての症例において、症候は速やかに解消された。
【0566】
最も高濃度のMPLでアジュバント添加されたワクチンの投与を受けた群では、グレード3の症候が、MPLが低濃度であるアジュバント添加ワクチンの投与を受けた群と比較して、より高い傾向を示した。しかし、すべての症例において、症候は速やかに解消された。