(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
市販の蛍光粒子に適したポリママトリックスとしては、米国特許第2,938,873号、同第2,809,954号、および同第5,728,797号に記載されるように、p−トルエン−スルホンアミドとメラミンホルムアルデヒド樹脂の重縮合により作成されるポリマが挙げられる。
【0003】
ポリアミドマトリックスは、ジアミンと二酸の縮合の結果得られるものが記載されており(米国特許第5,094,777号)、あるいは、ポリカルボン酸とアミノアルコール類(米国特許第4,975,220号)、ポリエステル類(米国特許第5,264,153号)またはエチレン−一酸化炭素の共重合体(米国特許第5,439,971号)の縮合の結果得られるポリアミドマトリックスが記載されている。
【0004】
Huらは、架橋剤の存在下、モノマのミニ乳化重合プロセスにより二次加工されたナノ着色剤(架橋ポリマナノ粒子中に溶解した染料)を記載している(Z.Hu,et.al.,Dyes and Pigments 76(2008)173−178)。
【0005】
200nm未満のサイズの多数の蛍光粒子は、表面の官能基化を回避して熱または化学分解に対して強固な粒子を提供するための、いわゆる染色法により作製される。米国特許第4,714,682号には、蛍光染料と結合した一連の高度に均一なマイクロビーズ(直径5ミクロン未満)に基づくフローサイトメーターまたは蛍光顕微鏡を較正する方法が記載されており、欧州特許第1736514号には、約30nm〜約100nmの間の直径を有する蛍光ナノ粒子が記載されている。
【0006】
米国特許第5,073,498号には、蛍光染料の存在下、ポリスチレンから作製されるポリマ微粒子で膨潤が行われる染色方法が記載されている。この方法により、粒子内部に均一に分布したものではなく、基本的に表面に蛍光染料を含有する粒子が提供される。
【0007】
米国特許第6,268,222号には、染色法により作製される表面蛍光ナノ粒子を有する大きな微粒子(数ミクロン)が記載されている。ナノ粒子成分に関して、表面のみに存在する染料は、熱、光または化学物質に対して安定性をもたらさない。
【0008】
Active Motif Chromeon(Germany)およびSigma−Aldrich(Fluka)は、生物検定に使用可能な水分散性蛍光ナノ粒子(100nm未満)を製造している。
【0009】
米国特許第3,455,856号および同第3,642,650号には、1μm未満の蛍光粒子を有する液体ベースのインクを製造する方法が記載されている。これらの粒子は水に分散性であるが、有機溶媒には分散性でない。粒子の官能基化プロセスは記載されておらず、これらの粒子(メラミンホルムアルデヒドと共重合したアルキド樹脂)は有機溶媒に分散性でない。
【0010】
米国特許第5,294,664号には、蛍光染料を組み込んだポリスチレンの乳化重合により得られる「1ミクロン以下の」水分散性粒子が記載されている。これらの粒子は強固でなく、有機溶媒に分散性でない。
【0011】
染料は、それらが易溶性の着色剤であることと、より重要なことには、インクの信頼性のある噴出を妨げないという理由で、これまで一般にインクジェット印刷用インクに最適な着色剤であった。染料はまた、従来の顔料と比較して、インクに対して拡張的な色域をもつ、高品質かつ鮮明な色品質も提供してきた。しかし、染料はインクビヒクルに分子的に溶解しているので、それらはインク性能の不良を引き起こす望ましくない相互作用、例えば、光による光酸化(耐光性不良を引き起こす)、インクによる紙またはその他の基材への染料の拡散(画質不良および透き通しを引き起こす)、および画像に接触する別の溶媒へ染料が浸出する能力(水/溶媒堅牢度不良を引き起こす)に対して感受性が高い場合が多い。一般に、顔料は不溶性であり、インクマトリックス内部で分子的に溶解することができず、そのため着色剤の拡散が起こらないという理由で、顔料はインクジェット印刷用インクの着色剤としてより良い代替物と考えられる。顔料はまた、染料よりも大幅に安価である場合があり、あらゆる印刷用インクで使用される魅力的な着色剤でもある。
【0012】
蛍光インクおよびトナーは、最も広く用いられているセキュリティ印刷機能(security printing features)である。印刷された文書は通常、ブラックライトに曝された場合に蛍光成分から放出される光を検知することにより認証される。この発光特性は第二世代のコピーでは再現することができない。
【0013】
蛍光インクおよびトナーで用いられる蛍光染料は、インクが通常の動作中に120℃より高い温度まで加熱されて溶融する場合に、プリントヘッドで蛍光を失うことがあり得る。この問題を克服するため、セキュリティ印刷業界では関心対象の染料を含有する硬質で強固な顔料を使用している。顔料は、それらの改良された化学、耐光堅牢度(light fastening)および熱の安定性のために蛍光染料よりも好ましい。また、顔料は、染料化合物の移行またはブリードが制限されているかまたはないという理由で業界に好まれる。
【0014】
大部分の市販の蛍光顔料は、蛍光物質を含有するバルクポリママトリックスを粉砕することにより作製される。このプロセスの結果、1〜2μmより大きなサイズの蛍光粒子が得られ、一般に、これらの粒子のサイズは約4〜5μmである。このプロセスに従って、蛍光染料は硬質の架橋粒子に組み込まれ、それにより蛍光染料の易動度が制限される。ひとたび蛍光染料がインク中に存在するその他の材料との相互作用から分離されると、環境による化学分解は減少する。これらの硬質の粒子は、マーキング材料、一般に液体インク中に分散される。
【0015】
インクジェット用インクに顔料粒子を使用することを妨げる主要な問題は、それらの大きな粒径と広い粒度分布であり、それらの組合せは、インクの信頼性のある噴出に関する重大な問題(すなわち、インクジェットノズルがすぐに詰まる)を提起し得る。顔料は、凝集体サイズの分布の広い、大きな結晶凝集体として得られる。この顔料凝集体の色の特徴は、凝集体のサイズおよび結晶の形態によって広く変動し得る。従って、例えば、インクおよびトナーに広く適用できる理想的な着色剤は、染料と顔料の両方の最良の特性、つまり:1)優れた色特性(広い色域、明度、色相、鮮明な色);2)色の安定度および耐久度(熱、光、化学および空気中安定性着色剤);3)着色剤の移行が最低限であるかまたはないこと;4)加工可能な着色剤(マトリックス中での分散および安定化が容易);および5)安価な材料コスト、を有する着色剤である。従って、本発明の実施形態により対処される、従来の大きなサイズの顔料粒子に関連する問題を最小限にするかまたは回避する、より小さなナノサイズの顔料粒子に対する必要性がある。さらに、このような改良されたナノサイズの蛍光顔料粒子を着色剤材料として作製および使用するためのプロセスに対する必要性が依然としてある。本ナノサイズの蛍光顔料粒子は、例えば、ペイント、塗料およびインク(例えば、インクジェット印刷用インク)、ならびに、例えば、とりわけ、プラスチック、光電子画像形成成分、写真成分、および化粧品などで顔料を使用することのできるその他の組成物において有用である。以下の文献は、さらなる背景情報を提供する。
【0016】
米国特許第6,902,613号には、ナノサイズ顔料を50〜99重量%、低分子量ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒドポリマを1〜50重量%で含む、有機ナノサイズ顔料の混合物、および直接顔料の(direct pigmentary)有機顔料の調製のための、または顔料仕上げにおける粒子成長および結晶相配向物質(crystal phase director)としてのその使用が開示されている。
【0017】
国際公開第2004/048482号には、ナノサイズ顔料を50〜99重量%、低分子量ポリスルホン化炭化水素、特にナフタレンモノスルホン酸またはジスルホン酸ホルムアルデヒドポリマを1〜50重量%で含む有機ナノサイズ顔料の混合物、および直接顔料の(direct pigmentary)有機顔料の調製のための、または顔料仕上げにおける粒子成長および結晶相配向物質(crystal phase director)としてのその使用が開示されている。
【0018】
米国特許出願公開第2006/0063873号には、A.ナノ粒子の表面で水酸基を高密度で形成するための水酸化によってナノ粒子の表面の化学特性を改質するステップ、B.ナノ粒子のクラスターを分解し、かつナノ粒子の表面上に均一に自己集合単層を形成するために、ナノ粒子上の水酸基に対して自己集合単層を置換することによる、ナノ粒子上の低表面エネルギー化合物の自己集合単層を形成するステップ、およびC.その上に形成された自己集合単層を有するナノ粒子をブレンディングまたは混合してナノ水性ペイントを形成するステップを含む、ナノ水性ペイントを調製するためのプロセスが開示されている。
【0019】
米国特許第7,160,380号には、アルカリ性または酸性の水性媒体中に溶解した有機顔料の溶液を、層流をもたらすチャネルを介して流動させるステップ、および、層流の過程で溶液のpHを変更するステップを含む、有機顔料の微粒子を製造する方法が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施形態では、本開示は、少なくとも1つの官能性部分を含む蛍光性化合物と、少なくとも1つの官能基を含む安定剤化合物を含み、該官能性部分が官能基と非共有結合的に結合し、結合した安定剤の存在により粒子成長および凝集の程度が制限されて、ナノスケールのサイズの粒子がもたらされる、ナノスケール蛍光顔料粒子組成物を提供する。
【0028】
もう一つの実施形態では、本開示は、酸中の少なくとも1つの官能性部分を含む蛍光顔料を含む溶液を調製すること、有機媒体、および、顔料の官能性部分と非共有結合的に結合する1つ以上の官能基を有する安定剤化合物を含む第2の溶液を調製すること、安定剤を含有する第2の溶液を第1の溶液で処理すること、および蛍光顔料粒子を第1の溶液から沈殿させることを含み、該官能性部分が該官能基と非共有結合的に結合し、ベンゾチオキサンテン顔料粒子がナノスケールの粒径を有する、ナノスケール蛍光顔料粒子を調製するための方法を提供する。
【0029】
さらにもう一つの実施形態では、本開示は、一般に少なくとも上記のナノスケール蛍光顔料粒子を含むマーキング組成物を提供する。
【0030】
本開示の実施形態は、ナノスケール蛍光顔料粒子、およびこのようなナノスケール蛍光顔料粒子を製造するための方法を提供する。本開示の具体的な実施形態は、ナノスケールのベンゾチオキサンテン顔料粒子、およびこのようなナノスケールのベンゾチオキサンテン顔料粒子を製造するための方法で説明される。
【0031】
用語「平均粒径」とは、本明細書において、透過型電子顕微鏡(TEM)により生成された粒子の画像から導かれる顔料粒子の平均長をさす。
【0032】
用語「平均アスペクト比」とは、本明細書において、TEMにより生成された粒子の画像から導かれる顔料粒子の長さを幅で除算した平均比(長さ:幅)をさす。
【0033】
用語「実質的に無色の」とは、本明細書において、溶媒中に分散したナノスケール蛍光粒子の透明度をさす。具体的には、溶媒中に分散した個々のナノスケール蛍光粒子の実質的な部分が目視検査で検出できない場合に、そのナノスケール蛍光粒子は実質的に無色である。
【0034】
用語「ナノスケール」とは、本明細書において、約1×10
2nm以下の最大幅に加えて約5×10
2nm以下の最大長を有する顔料粒子をさす。
【0035】
少なくとも約100nm〜約1μmの典型的なメジアン粒径を有する市販の顔料は、変動する粒度分布と粒子アスペクト比の両方を有する。粒子のアスペクト比は、その長さ寸法をその幅寸法に関連づける。一般に、粒子のアスペクト比はその長さ寸法とともに増加し、しばしば、楕円、棒、プレートレット(platelet)、針状(needles)などが含まれ得る、針状(acicular)の形態および/または不規則な形態を作り出す。一般に、例えば、ベンゾチオキサンテン顔料などの有機顔料は広い粒度分布および広い粒子アスペクト比分布を有し、潜在的に、広い粒子形態分布を有する。このシナリオは望ましくない。これは、マーキング装置のノズルが詰まることは別として、それが広い粒度分布および/またはアスペクト比を有するこのような顔料から作製された非分散、相分離インクまたは分散体などを引き起こし得るためである。
【0036】
ベンゾチオキサンテン顔料粒子は、例示的な条件および実施形態中に概説される安定剤を用いて適切に合成される場合、ナノスケール粒径および粒子アスペクト比(長さ:幅)のより規則的な分布を有し、後者は約5:1未満〜約1:1で、平均粒子長は、TEM画像で測定した場合に約500nm未満、例えば、約150nm未満、または約100nm未満であり、平均粒子幅は、TEM画像で測定した場合に約100nm未満、例えば、約30nm未満、または約20nm未満である。
【0037】
本開示の方法および組成物の利点は、それらがベンゾチオキサンテン顔料等の蛍光性化合物の意図される最終用途のために粒径および組成物を調整する能力を提供することである。実施形態では、顔料粒子の粒径および粒度分布の両方が低下するにつれて、粒子はより透明になる。好ましくは、このことにより、顔料粒子がコーティング、噴霧、噴出、押出などによって様々な媒体上に分散される場合に、顔料粒子の全体的に高い色純度がもたらされる。
【0038】
立体安定剤は、例えば、ナノ顔料粒子の制御された結晶化が起こるような、水素結合、ファンデルワールス力、および芳香族πスタッキングを介して、それ自体が顔料および/または顔料前駆体の官能性部分と結合する可能性を有し得る。つまり、立体安定剤は、顔料および/または顔料前駆体の官能性部分に相補的な部分である官能基を提供する。語句「安定剤の相補的な官能性部分」で用いられる用語「相補的な」とは、相補的な官能性部分が、有機顔料の官能性部分および/または顔料前駆体の官能性部分と「水素結合」などの非共有化学結合が可能であることを示す。反応中に負荷する立体安定剤は、顔料に対して5〜約300モル%、例えば、約10〜150モル%または約20〜70モル%の間で変動し得る。
【0039】
有機顔料/顔料前駆体の官能性部分は、安定剤の相補的な官能性部分と非共有結合が可能である任意の適した部分であってもよい。顔料に関して、実例となる官能性部分としては、限定されるものではないが、以下のカルボニル基(C=O)、様々な硫黄含有基、例えば、硫化物、スルホン、スルホキシドなど、ならびに置換アミノ基が挙げられる。顔料前駆体に関して、官能性部分としては、限定されるものではないが、カルボン酸基(COOH)、エステル基(COOR、ここでRは任意の炭化水素である)、無水物基、およびアミド基が挙げられる。蛍光性化合物は、少なくとも2つの異なるタイプである少なくとも2つの官能性部分を有していてもよい。
【0040】
代表的な前駆体としては、下のスキーム1に示されるように、置換ナフタレン無水物類およびアニリン類が挙げられる。官能性部分R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8は、ナフタレンおよびアニリン芳香環の任意の位置、例えば、オルト、メタまたはパラに存在してもよい。それらは異なっていても相互に同一であってもよく、限定されるものではないが、次の官能基:H、メチル、メトキシおよびカルボニルの任意の組合せが挙げられる。
【0041】
顔料は、例えばベンゾチオキサンテンであり、例えばスキーム1に従って調製される。
【0042】
【化1】
スキーム1.ベンゾ[k,l]チオキサンテン−3,4−ジカルボン酸無水物の合成
【0043】
このような官能性部分の実例としては、R
1=R
2=R
3=R
4=R
5=R
6=R
7=R
8=H、任意のアルキル、任意のアリール;R
1=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O、R
2=R
3=R
4=R
5=R
6=R
7=R
8=H;R
2=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O、R
1=R
3=R
4=R
5=R
6=R
7=R
8=H;R
3=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O、R
1=R
2=R
4=R
5=R
6=R
7=R
8=H;R
4=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O、R
1=R
2=R
3=R
5=R
6=R
7=R
8=H;R
5=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、R
1=R
2=R
3=R
4=R
6=R
7=R
8=H;R
6=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、R
1=R
2=R
3=R
4=R
5=R
7=R
8=H;R
7=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、R
1=R
2=R
3=R
4=R
5=R
6=R
8=H;R
8=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、R
1=R
2=R
3=R
4=R
5=R
6=R
7=H;R
1=R
2=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O、R
3=R
4=R
5=R
6=R
7=R
8=H;R
1=R
4=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O、R
3=R
2=R
5=R
6=R
7=R
8=H;R
1=R
3=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O、R
4=R
2=R
5=R
6=R
7=R
8=H;R
2=R
3=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O、R
1=R
4=R
5=R
6=R
7=R
8=H;R
3=R
4=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O、R
1=R
2=R
5=R
6=R
7=R
8=H;R
1=R
2=R
3=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O、R
4=R
5=R
6=R
7=R
8=H;R
1=R
3=R
4=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O、R
2=R
5=R
6=R
7=R
8=H;R
1=R
2=R
3=R
4=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O、R
5=R
6=R
7=R
8=H;R
1=R
2=R
3=R
4=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O、R
5=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、R
6=R
7=R
8=H;R
1=R
2=R
3=R
4=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O、R
6=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、R
5=R
7=R
8=H;R
1=R
2=R
3=R
4=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O
、R
7=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、R
5=R
6=R
8=H;およびR
1=R
2=R
3=R
4=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、CH=O、R
8=CH
3、任意のアルキル、任意のアリール、O−アルキル、O−アリール、R
5=R
6=R
7=Hが挙げられる。
【0044】
安定剤の相補的な官能性部分は、安定剤の官能性部分と非共有結合が可能である任意の適した部分であってもよい。実例となる相補的な官能性部分を含有する化合物としては、限定されるものではないが、次のクラス:β−アミノカルボン酸類、ならびに大型の芳香族部分、例えば、フェニル、ベンジル、ナフチルなど、約5〜約20炭素を含有するものなどの長い線状または分枝状脂肪族鎖、例えば、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルなどを含むそれらのエステル;β−ヒドロキシカルボン酸類、ならびに、5〜約20炭素を有するものなどの長い線状、環状または分枝状脂肪族鎖、例えば、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシルなどを含むそれらのエステル;ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの長鎖脂肪族カルボン酸類を含むソルビトールエステル類、高分子化合物、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−ヘキサデセン)、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−トリアコンテン)、およびポリ(1−ビニルピロリドン−コ−アクリル酸)などが挙げられる。
【0045】
安定剤の立体的に嵩高な基は、粒子が自己集合してナノサイズの粒子となる程度を制限する、任意の適した部分であってもよい。「立体的に嵩高な基」は、前駆体/顔料のサイズとの比較を必要とする相対的な用語であることは当然理解される、つまり、特定の基は、特定の基と前駆体/顔料との間の相対的なサイズによって、「立体的に嵩高な」こともそうでないこともあり得る。本明細書において、語句「立体的に嵩高な」とは、分子に結合している大型の基の空間的配置をさす。
【0046】
ナノサイズの粒子を可能にする代表的な安定剤としては、限定されるものではないが、次のものが挙げられる。パルミチン酸(SPAN(登録商標)40)、ステアリン酸(SPAN(登録商標)60)およびオレイン酸(SPAN(登録商標)85)とのソルビトールのモノおよびトリエステル類(SPAN(登録商標)類)、この場合、該酸の脂肪族鎖は立体的に嵩高であると考えられる。シクロヘキサノールおよびIsofol20を含む酒石酸エステル類、この場合、シクロヘキサン部分およびIsofolの分枝鎖が立体的に嵩高であると考えられる。ポリマ類、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−ヘキサデセン)、ポリ(1−ビニルピロリドン)−グラフト−(1−トリアコンテン)、ポリ(1−ビニルピロリドン−コ−アクリル酸)、この場合、ポリマ鎖自体が嵩高であると考えられる。
【0047】
前駆体/顔料の官能性部分と安定剤の相補的な官能性部分との間の非共有化学結合は、例えば、ファンデルワールス力、イオン結合、配位結合、水素結合、および/または芳香族πスタッキング結合によりもたらされる。実施形態では、非共有結合は、芳香族πスタッキング結合を除く、イオン結合および/または水素結合である。実施形態では、非共有結合は主に水素結合であるか、または主に芳香族πスタッキング結合であってもよく、この場合、用語「主に」は、この場合、安定剤と顔料粒子の結合の支配的な性質を示す。
【0048】
実施形態では、顔料の酸溶解に関して、任意の適した物質を用いて、溶液を条件に付し、顔料を完全に可溶化することができ、それにより、可溶化された顔料はナノサイズの粒子に再沈殿される。代表的な例としては、限定されるものではないが、硫酸、硝酸、モノ−、ジ−、およびトリ−ハロ酢酸類、例えば、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸など、ハロゲン酸類、例えば、塩酸、リン酸およびポリリン酸、ホウ酸、ならびにそれらの多様な混合物が挙げられる。
【0049】
任意の適した液体媒質を用いてベンゾチオキサンテン顔料の再沈殿を行って、ナノスケール粒子を得ることができる。適した液体媒質の例としては、限定されるものではないが、数ある中で次の有機液体、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、スルホラン、ヘキサメチルホスホラミドが挙げられる。
【0050】
顔料の溶けない液体はいずれも任意選択の沈殿剤として用いることができる。実例となる沈殿剤としては、限定されるものではないが、アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール;水;テトラヒドロフラン;酢酸エチル;炭化水素溶媒、例えば、ヘキサン、トルエン、キシレン類、およびIsopar溶媒、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0051】
反応中に負荷する立体安定剤は、顔料に対して約5〜約300モル%、例えば、約10〜150モル%または約20〜70モル%の間で変動し得る。所望により、最終沈殿混合物中のナノスケール顔料粒子の固体濃度は、0.5%〜約20重量%、例えば、約0.5%〜約10重量%、または約0.5%〜約5重量%で変動し得るが、実際の値はこれらの範囲外であってもよい。
【0052】
実施形態では、粗ベンゾチオキサンテン顔料は、最初に、濃硫酸などの酸性の液体中で可溶化され、次にそれを活発な撹拌下で、適した溶媒および立体安定剤化合物ならびに所望により少量の表面活性剤またはその他の一般的な添加剤を含む第2の溶液にゆっくりと添加する。添加の間、温度は約0℃〜約40℃の間のどこかで維持されるが、一実施形態ではナノスケール粒子を形成するためのベンゾチオキサンテン顔料の再沈殿は、この温度範囲内またはこの温度範囲外で等温的に保たれてもよく、もう一つの実施形態では、ナノスケール粒子を形成するためのベンゾチオキサンテン顔料の再沈殿は、この温度範囲内またはこの温度範囲外で上下に循環させてもよい。
【0053】
実施形態では、強い酸に溶解または分散した顔料粒子を含む第1の溶液が調製または提供される。強い酸は、例えば、無機酸、有機酸、またはそれらの混合物であってもよい。強い無機酸の例としては、硫酸、硝酸、過塩素酸、様々なハロゲン化水素酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、およびフッ化水素酸)、フルオロスルホン酸、クロロスルホン酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、それらの混合物などが挙げられる。強い有機酸の例としては、有機スルホン酸、例えば、メタンスルホン酸およびトルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸、シアノ酢酸、それらの混合物などが挙げられる。
【0054】
この第1の溶液には、顔料粒子の望ましい溶解または分散を可能にするような、望ましい量または濃度の強い酸を含むことができる。酸溶液は、約0.5%〜約20%、例えば、約1%〜約15%または約2%〜約10重量%の濃度の顔料を含むが、これらの値はこれらの範囲外であってもよい。
【0055】
実施形態では、立体安定剤を含む第2の溶液が調製または提供される。適した立体安定剤には、既に記載されるものが挙げられ、さらに、顔料粒子の官能性部分とも相互作用してさらなる安定性をもたらす官能基を有する、既に記載される表面活性剤などのその他の立体安定剤を挙げることができる。立体安定剤は溶液の形態で導入されてもよく、この場合、立体安定剤は、適した液体媒質、例えば、水または極性有機溶媒類、例えば、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、アルコール類、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、それらの混合物などの中に溶解されるかまたは微細に懸濁される。例えば、一実施形態における適した液体媒質は、 水とN−メチル−2−ピロリジノンとの混合物である。このような混合物は、水およびN−メチル−ピロリジノンを約1:6〜約1:3、例えば、約1:4の比で含み得る。
【0056】
実施形態では、沈殿剤、例えば、上に記載されるものなどは、第2の溶液中に組み込むこともできる。沈殿剤は、顔料を可溶化しない液体であり、それには、限定されるものではないが、水、アルコール類、例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールおよび様々なそれらの混合物が含まれる。沈殿剤は、混合物の全容量の中の約10%〜約100容量%の範囲、例えば、約20%〜約80%の間、または約30%〜約70%の間で添加されてもよい。
【0057】
ナノスケール顔料粒子を形成するための顔料の再沈殿は、第1の(顔料溶解)溶液を第2の(立体安定剤)溶液に添加することにより行ってもよい。この添加は、機械的撹拌または均質化またはその他の手段を用いる撹拌下、第1の(顔料溶解)溶液を第2の(立体安定剤)溶液に添加することによりゆっくり行われる。添加方法には、適した容器からの滴下、または霧化ガスを使用してもしなくてもよい噴霧が含まれ得る。
【0058】
再沈殿プロセスは、ナノスケールのベンゾチオキサンテン顔料粒子の形成を可能にすると同時に第1および第2の溶液の溶解度を維持する、任意の望ましい温度で行われてもよい。例えば、再沈殿は、約0℃〜約90℃の温度、例えば、約0℃〜約60℃、または約0℃〜約30℃で行うことができるが、これらの範囲外の温度を用いてもよい。一実施形態では、再沈殿は、基本的に等温的に行われ、この場合、実質的に一定な温度が維持されるが、一方、もう一つの実施形態では、再沈殿の間の温度は上記範囲内で変動してもよく、この場合、変動は周期的または同様のものであってもよい。
【0059】
第1の溶液(顔料溶解)の第2の溶液への添加後、顔料分子に存在する官能性部分と立体安定剤分子の官能基の間に非共有結合性の相互作用が起こると考えられ、それにより顔料分子のさらなる凝集を制限または回避する立体障害が作り出される。このようにして、顔料の粒子成長を望ましいレベルに制限する立体安定剤組成物およびプロセス条件を提供することにより、顔料の粒径および形態を制御し、さらには調整する(tailored)ことができる。
【0060】
ひとたび再沈殿が完了すれば、顔料ナノスケール粒子は、任意の従来の手段、例えば、真空濾過法または遠心分離法により溶液から分離されてもよい。ナノスケール粒子はまた、公知の方法に従う、その後の使用のために加工されてもよい。
【0061】
実施形態では、酸溶解および再構成は、例えば、濃硫酸中の顔料溶液を利用することにより行ってもよく、溶液は激しく撹拌されながら、最適量の立体安定剤を含有する、適した溶媒の溶液にゆっくり添加される。添加の間、温度は約20℃から約60℃未満に維持されるが、ベンゾチオキサンテンのナノスケール粒子への再沈殿は、一実施形態ではこの温度範囲内または温度範囲外で等温的に維持されてもよく、もう一つの実施形態では、ベンゾチオキサンテンのナノスケール粒子への再沈殿の間の温度はまた、この温度範囲内または温度範囲外で上下に循環させてもよい。
【0062】
形成されたナノスケールのベンゾチオキサンテン顔料粒子は、多様な組成物中の、例えば、液体(水性または非水性)インクビヒクル中の着色剤として使用することができ、それには、従来のペン、マーカなどで用いられるインク、液体インクジェット用インク組成物で用いられるインクが含まれる。
【0063】
本開示に従うインクジェット用インク組成物には、一般に、担体、着色剤、および1つ以上のさらなる添加剤が含まれる。このような添加剤としては、例えば、溶媒、ワックス、酸化防止剤、粘着付与剤、滑り助剤(slip aids)、硬化性成分、例えば、硬化性モノマおよび/またはポリマ、ゲル化剤、開始剤、増感剤、保湿剤、殺生物剤、防腐剤などを挙げることができる。成分の具体的な種類および量は、当然、インク組成物の具体的な種類、例えば、液体などによって決まる。
【0064】
一般に、インク組成物は1つ以上の着色剤を含む。顔料、染料、顔料と染料の混合物、複数の顔料の混合物、複数の染料の混合物などを含む、任意の望ましいまたは効果的な着色剤をインク組成物に用いてもよい。実施形態では、インク組成物中に用いられる着色剤は、完全に形成されたナノスケールのベンゾチオキサンテン顔料粒子を含む。しかし、その他の実施形態では、ナノスケールのベンゾチオキサンテン顔料粒子を1つ以上の従来のまたはその他の着色剤材料と組み合わせて用いてもよく、この場合、ナノスケールのベンゾチオキサンテン顔料粒子は、着色剤材料の実質的に大部分(例えば、約90重量%以上もしくは約95重量%以上)を形成してもよいし、それらは着色剤材料の大部分(例えば、少なくとも50重量%以上)を形成してもよいし、またはそれらは着色剤材料の小数部分(例えば、約50重量%未満)を形成してもよい。従来の顔料に比べてナノスケール顔料を使用することの主な2つの利点は:1)インク配合物の信頼性のある噴出が確保されること(プリントヘッドの信頼性)、および2)ナノスケール顔料の向上した色性能によりインク組成物中の顔料の負荷が減らせるであろうことである。さらにその他の実施形態では、ナノスケールのベンゾチオキサンテン顔料粒子は、いずれの着色剤および/またはその他の特性をインク組成物に提供するために、任意のその他の変動量で、インク組成物中に含めてもよい。例えば、着色剤は、インクの重量に対して約0.1重量%〜約50重量%の量でインク中に含まれる。
【0065】
インク組成物はまた、所望により、酸化防止剤を含んでもよい。インク組成物の任意選択の酸化防止剤は画像を酸化から保護するのに役立ち、さらに、インク調製プロセスの加熱部分の間にインク成分を酸化から保護するのにも役立つ。適した酸化防止剤の具体的な例としては、酸化防止剤のNAUGUARD(登録商標)シリーズ、例えば、NAUGUARD(登録商標)445、NAUGUARD(登録商標)524、NAUGUARD(登録商標)76、およびNAUGUARD(登録商標)512(Uniroyal Chemical Company,Oxford,Conn.より市販されている)など、酸化防止剤のIRGANOX(登録商標)シリーズ、例えば、IRGANOX(登録商標)1010(Ciba Geigyより市販されている)などが挙げられる。存在する場合、任意選択の酸化防止剤は、インク中に任意の望ましいまたは効果的な量で、例えば、インクの少なくとも約0.01〜約20重量%の量で、例えば、インクの約0.1〜約5重量%の量で、またはインクの約1〜約3重量%の量で存在してもよいが、これらの範囲外の量であってもよい。
【0066】
インク組成物はまた、所望により、粘度調整剤を含んでもよい。適した粘度調整剤の例としては、脂肪族ケトン類、例えば、ステアロンなどが挙げられる。存在する場合、任意選択の粘度調整剤は、インク中に任意の望ましいまたは効果的な量で、例えば、インクの約0.1〜約99重量%、例えば、インクの約1〜約30重量%、またはインクの約10〜約15重量%の量で存在してもよいが、これらの範囲外の量であってもよい。
【0067】
インク組成物には、担体材料、または2つ以上の担体材料の混合物も含まれる。担体材料は、例えば、インク組成物の特定の種類によって変動し得る。例えば、水性インクジェット用インク組成物は、水、または水と1つ以上のその他の溶媒の混合物を適した担体材料として使用することができる。その他のインクジェット用インク組成物は、水の有無にかかわらず1つ以上の有機溶媒を担体材料として使用することができる。
【0068】
インク担体は、インク中に任意の望ましいまたは効果的な量で存在してもよい。例えば、担体は、インクの約0.1〜約99重量%の量、またはインクの約50〜約99.9重量%、例えば、インクの約50〜約98重量%、またはインクの約90〜約95重量%の量で存在してもよいが、これらの範囲外の量であってもよい。
【0069】
本開示のインク組成物はまた、所望によりその他の材料を含んでもよく、それはインクが使用されるプリンタの種類によって決まり得る。例えば、担体組成物は、一般に直接印刷モードもしくは間接またはオフセット印刷転写システムのいずれかで用いるために設計される。
【0070】
本開示のインク組成物は、任意の望ましいまたは適した方法により調製してもよい。液体インク組成物の場合、インク成分を単に一緒に撹拌しながら混合して均質な組成物を得ることができるが、組成物の形成を助けるために望ましいかまたは必要であるならば加熱を用いてもよい。
【0071】
インク組成物に加えて、ナノスケール蛍光顔料粒子は多様なその他の用途で用いてもよく、その場合、蛍光色を組成物にもたらすことが望ましい。例えば、ナノスケールのベンゾチオキサンテン顔料粒子は、ペイント、樹脂、レンズ、フィルタ、印刷用インク、およびその用途に従う同類のものの着色剤としての使用において従来の顔料と同じ方法で使用することができる。
【0072】
実施形態では、ナノスケール蛍光顔料粒子は、水性液体ビヒクルを含むインク組成物中で用いてもよい。液体ビヒクルは単に水からなってもよいし、またはそれは水の混合物および水溶性もしくは水混和性有機成分、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール類、グリセリン、ジプロピレングリコール類、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類、アミド類、エーテル類、尿素、置換尿素、エーテル類、カルボン酸類およびそれらの塩類、エステル類、アルコール類、有機スルフィド類、有機スルホキシド類、スルホン類(例えば、スルホラン)、アルコール誘導体類、カルビトール、ブチルカルビトール、セルソルブ、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エーテル誘導体類、アミノアルコール類、ケトン類、N−メチルピロリジノン、2−ピロリジノン、シクロヘキシルピロリドン、ヒドロキシエーテル類、アミド類、スルホキシド類、ラクトン類、ポリ電解質類、メチルスルホニルエタノール、イミダゾール、ベタイン、およびその他の水溶性もしくは水混和性材料、ならびにそれらの混合物を含んでもよい。
【0073】
非水性インクを包含するその他の実施形態では、ナノスケール蛍光顔料粒子は、石油系インクなどの溶剤型インクに適用してもよく、それには、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、およびそれらの混合物、環境に優しいダイズおよび植物油系インク、亜麻仁油系インクおよびその他の天然起源由来のインク系ビヒクルが含まれる。ナノスケール蛍光顔料粒子のためのインクビヒクルのその他の例としては、イソフタル酸アルキド類、高級アルコール類などが挙げられる。
【0074】
さらにその他の実施形態では、ナノスケール蛍光顔料粒子は、レリーフ、グラビア、ステンシル、およびリソグラフ印刷で使用されるインクに適用され得る。
【実施例】
【0075】
以下の実施例において、全てのパーセンテージは、特に指定のない限り重量による。
【0076】
<実施例1−蛍光顔料−ベンゾ[k,l]チオキサンテン−3,4−ジカルボン酸無水物の合成>
顔料を、スキーム2に従って調製する。
【0077】
【化2】
スキーム2.ベンゾ[k,l]チオキサンテン−3,4−ジカルボン酸無水物の合成
【0078】
マグネチックスターラ、還流冷却器および油浴を取り付けた200mLの三口丸底フラスコ中に、4g(0.016モル)4−ニトロナフタレンテトラカルボン酸無水物、3mL(0.03モル)2−アミノ−ベンゼンチオールおよび40mLのN,N−ジメチルホルムアミドを導入した。濃褐色の溶液が生じた。亜硝酸I−アミル3.2mL(0.024モル)を、シリンジを介してフラスコの中にゆっくり添加した。反応混合物の温度は80℃まで上昇し、橙色の沈殿が生じた。添加の終わりに、フラスコ内の温度を60℃まで下降させた。次に、反応混合物をこの温度で3時間撹拌して反応の完了を確実にした。固体をフリットガラスで濾過し、N,N−ジメチルホルムアミドで2回、そして重量比1:1のN,N−ジメチルホルムアミド:蒸留水で1回、洗浄液が透明になるまで洗浄した。橙色の固体を100℃の真空炉で一晩乾燥させた。KBrペレットを用いる赤外分光光度法の結果、次のデータが得られた。1758cm
−1および1721cm
−1での二つの無水物C=Oピーク。透過型電子顕微鏡から得た平均粒度は、長さが2μmより大きく、粒子の多くが500nmより大きい粒子幅を有した。
【0079】
<実施例2−ナノスケール蛍光顔料粒子の合成>
機械的撹拌(mechanical stirring)、滴下漏斗および氷水冷却浴を取り付けた500mL樹脂ケトルに、300mLのN−メチル−2−ピロリジノンおよび2.6g(0.006モル)のSPAN40を導入した。この溶液に、0.5g(0.002モル)ベンゾチオキサンテンおよび0.050g(0.0001モル)ペリレンテトラカルボン酸二無水物を含有する30mL硫酸の溶液を15分間にわたって滴下した。添加の間、樹脂ケトル内の温度は40℃まで上昇した。添加の終わりに、反応混合物を室温にて30分間撹拌させた。濃い混合物を、重量比2:1のイソプロパノール:蒸留水500mLで希釈した。得られた混合物を、フリットガラスを用いて濾過した。顔料をフリット上で20mLのイソプロパノールを用いて2回、さらに20mLのイソプロパノールを用いて1回洗浄した。KBrペレットを用いる赤外分光光度法の結果、次のデータが得られた。1758cm
−1および1721cm
−1での二つの無水物C=Oピーク。透過型電子顕微鏡から得た粒径は(湿ケーキ)、長さ100〜500nmおよび幅100nm未満であった。
【0080】
<実施例3 オレイン酸を含むナノスケール顔料粒子の形成>
機械的撹拌、滴下漏斗および氷/水冷却浴を取り付けた500mL樹脂ケトルに、300mLのN−メチル−2−ピロリジノンおよび4.9g(0.02モル)のオレイン酸を導入した。この溶液に、0.5g(0.002モル)ベンゾチオキサンテンおよび0.050g(0.0001モル)ペリレンテトラカルボン酸二無水物を含有する30mL硫酸の溶液を15分間にわたって滴下した。添加の間、樹脂ケトル内の温度は40℃まで上昇した。添加の終わりに、反応混合物を室温にて30分間撹拌させた。濃い混合物を、重量比2:1のイソプロパノール:蒸留水500mLで希釈した。得られた混合物を遠心機を用いて分離した。顔料粒子を、蒸留水を用いて1回、さらにアセトンを用いて1回、遠心分離によって洗浄した。KBrペレットを用いる赤外分光光度法の結果、次のデータが得られた。1758cm
−1および1721cm
−1での二つの無水物C=Oピーク。透過型電子顕微鏡から得た粒径は(湿ケーキ)、長さ100〜500nmおよび幅100nm未満であった。
【0081】
[有機溶媒中の分散性試験]
実施例2および3はアセトンおよびプロパノール溶媒中に首尾よく分散し、実質的に無色の溶液が得られた。実施例2から調製した粒子を、溶媒としてオクタノール(octonal)中、超音波処理により溶解させた。溶媒を1μmフィルタで濾過して実質的に無色の溶液を得た。残渣または粒子は、1μmフィルタの目視検査では観察できなかった。濾過された溶液は紫外光照明のもとで鮮黄色の光を放った。
【0082】
[印刷試験]
印刷用組成物を調製し、ジアマトリックスカートリッジ(diamatrix cartridge)を実施例2からの上記溶液で満たした。予備試験印刷をジアマトリックス実験用インクジェットプリンタで行った。蛍光印刷は紫外光のもとで照度(illumination)を示した。そのテキストは通常光のもとでは実際には見えなかった。印刷後、実施例2は紫外光に曝されると黄緑色のテキストを放った。
【0083】
比較例として、実施例1からの顔料(合成したままの大型の顔料粒子を含む)を、オクタノールに分散させたものと同じ手順で分散させた。1μmフィルタにより濾過する場合、橙色の残渣がフィルタに保持され、粒子のほんの一部だけがフィルタを通過した(偶然に十分に小さいサイズとなったもの)ことが示されたが、大部分の粒子はフィルタに残った。実施例2とは違って、実施例1は濾過することが非常に困難であって、濾過された合成したままの顔料の溶液を用いて印刷することは可能ではあるものの、濾過により大量の粒子が除外されたという理由で、このプロセスは経済的に効率的ではなかった。