特許第5770444号(P5770444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770444
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/04 20060101AFI20150806BHJP
   H01G 9/012 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   H01G9/05 L
   H01G9/05 E
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-212982(P2010-212982)
(22)【出願日】2010年9月24日
(65)【公開番号】特開2012-69714(P2012-69714A)
(43)【公開日】2012年4月5日
【審査請求日】2013年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】NECトーキン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 篤
【審査官】 多田 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−010350(JP,A)
【文献】 特開2010−050218(JP,A)
【文献】 特開2007−116064(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/150491(WO,A1)
【文献】 特開2006−140179(JP,A)
【文献】 特開2004−281716(JP,A)
【文献】 特開2006−093337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/004
H01G 9/012
H01G 9/04
H01G 9/052
H01G 9/06
H01G 9/08
H01G 9/10−9/15
H01G 9/16−9/20
H01G 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状または箔状の拡面化した弁作用金属を陽極体とし、前記陽極体の少なくとも中央領域の表面に酸化皮膜からなる誘電体層が形成され、前記誘電体層の表面に固体電解質層、グラファイト層、銀ペースト層が順次形成された陰極層を有した少なくとも1個のコンデンサ素子と、板状の陽極外部端子および陰極外部端子を備え、前記陽極外部端子及び前記陰極外部端子の直上に導電性接着剤を介して接続されるコンデンサ素子における、前記陰極層が形成されていない前記陽極体の端部の前記陽極外部端子のある側の面に陽極金属片が接続され、前記陽極金属片が接続された前記陽極体の端部が前記陽極外部端子の方向に曲げられ、前記陽極体の端部及び前記陽極金属片の両方が前記陽極外部端子、前記陰極層が前記陰極外部端子にそれぞれ接続されていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記陽極体の端部が前記陽極外部端子の方向に曲げられる角度が15°〜30°であることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高周波化に伴って、電子部品の一つであるコンデンサに対しても、従来技術より高周波領域での等価直列抵抗(ESR)特性に優れたコンデンサが求められており、このような要求に応えるために電気伝導度が高い導電性高分子を固体電解質に用いた固体電解コンデンサが種々検討されている。
【0003】
このような状況で低ESRを実現するために、特許文献1で3端子型の固体電解コンデンサが提案されている。
【0004】
以下、特許文献1に示す従来の技術について、図面を参照して説明する。図2は従来の3端子型の固体電解コンデンサの一例を示す図であり、図2(a)はコンデンサ素子を説明する断面図であり、図2(b)は固体電解コンデンサを説明する断面図である。
【0005】
図2(a)に示すように、従来のコンデンサ素子200は、表面がエッチング処理等で拡面化された弁作用金属箔からなる陽極体1の表面に誘電体層を形成し、その誘電体層が形成された陽極体1の中央領域1aに導電性ポリマー層からなる固体電解質層を形成し、更に固体電解質層の表面にグラファイト層、銀ペースト層を順次形成して陰極層2を形成する。
【0006】
また、エポキシ樹脂等からなるレジスト層3が形成されたレジスト形成部1bより更に外側へ伸びた陽極体1の両端部に形成した誘電体層を、レーザ等で除去して陽極体端部1cを形成しコンデンサ素子200を作製する。続いて、このコンデンサ素子200の陽極体端部1cに平板状の陽極金属片4を溶接等で接続する。
【0007】
次に図2(b)に示すように、外装樹脂ケース8は、陽極外部端子6と陰極外部端子7が平板状であり、基板実装面となる同一平面上に形成され、陽極外部端子6と陰極外部端子7の隙間を埋めるとともに機械的に連結する底面樹脂部を有し、平面に対して直交する側壁を有した構成で形成されている。
【0008】
この外装樹脂ケース8の内側に露出した陽極外部端子6の表面及び陰極外部端子7の表面に、前述のコンデンサ素子200の陽極体端部1cに接続した陽極金属片4及び陰極層2を導電性接着剤5によりそれぞれ接続する。その後、外装樹脂ケース8の上側周囲を蓋9で覆い、接着剤10で接着することで固体電解コンデンサ210としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−128247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の状況にあって、陽極部と、接続する導電性接着剤との接続抵抗が大きいと、ESRが増加するという問題や、接続抵抗の増加によって、電流が流れた際に発熱が生じ、固体電解質層を形成する電解質である導電性高分子が酸化劣化(導電率が低くなる)を起こし、さらにESR増加を起こしてしまう懸念があった。従って、本発明の課題は、コンデンサ素子の陽極体端部における接続の構造を見直し、構成部材の追加や製造工程を複雑化させることなくESRを低減した固体電解コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
板状または箔状の拡面化した弁作用金属を陽極体とし、陽極部を構成する陽極金属片を前記陽極体の端部である陽極体端部に接続し、陽極体の少なくとも中央領域の表面に酸化皮膜からなる誘電体層が形成され、誘電体層上に固体電解質層、グラファイト層、銀ペースト層が順次形成されるコンデンサ素子と、板状の陽極外部端子を有し、陽極金属片が導電性接着剤を介して陽極外部端子と接続する固体電解コンデンサであって、陽極金属片が接続された陽極体端部が陽極外部端子の方向に曲げられていることで導電性接着剤との接着面積が増加し、ESRが低減されることを見出したものである。
【0012】
すなわち、本発明の固体電解コンデンサは、板状または箔状の拡面化した弁作用金属を陽極体とし、前記陽極体の少なくとも中央領域の表面に酸化皮膜からなる誘電体層が形成され、前記誘電体層の表面に固体電解質層、グラファイト層、銀ペースト層が順次形成された陰極層を有した少なくとも1個のコンデンサ素子と、板状の陽極外部端子および陰極外部端子を備え、前記陽極外部端子及び前記陰極外部端子の直上に導電性接着剤を介して接続されるコンデンサ素子における、前記陰極層が形成されていない前記陽極体の端部の前記陽極外部端子のある側の面に陽極金属片が接続され、前記陽極金属片が接続された前記陽極体の端部が前記陽極外部端子の方向に曲げられ、前記陽極体の端部及び前記陽極金属片の両方が前記陽極外部端子、前記陰極層が前記陰極外部端子にそれぞれ接続されていることを特徴とする。
【0013】
また、前記陽極体端部が前記陽極外部端子の方向に曲げられる角度が15°〜30°であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンデンサ素子の陽極体端部を陽極外部端子の方向に曲げることにより、陽極部金属片と外部陽極端子の表面に塗布された導電性接着剤との接着面積が大きくなり陽極部の抵抗が減少するという効果を奏する。また、電流が流れた際に発熱が抑制され、固体電解質層を形成する電解質である導電性高分子が酸化劣化(導電率が低くなる)することを防止し、それにより、低ESR化を可能とした固体電解コンデンサを提供することができる。
【0015】
また、陽極部金属片と外部陽極端子の表面に塗布された導電性接着剤との接着面積を大きくすることから陽極体端部が陽極外部端子側に曲げられる角度は15°〜30°がのぞましい。
【0016】
さらに、本発明によればコンデンサ素子の陽極体端部における接続の構造を見直したことにより、構成部材の追加や製造工程を複雑化させることなくESRを低減した固体電解コンデンサを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の固体電解コンデンサを説明する図であり、図1(a)はコンデンサ素子の断面図、図1(b)は固体電解コンデンサの断面図。
図2】従来例の固体電解コンデンサを説明する図であり、図2(a)はコンデンサ素子の断面図、図2(b)は固体電解コンデンサの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について3端子型の固体電解コンデンサを例として図面を参照して説明をする。
【0019】
図1(a)は実施の形態のコンデンサ素子を説明する断面図であり、図1(b)は固体電解コンデンサを説明する断面図である。
【0020】
まず、図1(a)に示すように、表面がエッチング処理等で200倍程度に拡面化された弁作用金属の箔または板からなる陽極体1の表面に誘電体層を形成し、陽極体1の中央領域1aに導電性ポリマー層からなる固体電解質層、グラファイト層、銀ペースト層を順次形成して陰極層2を形成し、エポキシ樹脂等からなるレジスト層3が形成されたレジスト形成部1bを介して更に外側へ伸びた陽極体の両端をレーザ等で誘電体層を除去して陽極体端部1cを形成しコンデンサ素子100を作製する。
【0021】
コンデンサ素子100の大きさは、例えば、長さ15.0mm、幅10.0mm、厚さ0.25mmで、銅系合金やニッケル系合金からなる例えば、長さ8.0mm、幅1.0mm、厚さ0.15mmの陽極金属片4が陽極体端部1cに溶接等で接続されている。図1(b)に示したように、陽極体端部1cを陽極外部端子6の方向へ曲げる角度は、陽極体1の中央領域1aの陰極外部端子7に対向する面を基準として15°〜30°が望ましく、角度が小さすぎる場合には充分なESR低減効果が得られず、角度が大きすぎる場合には陽極体1の切れが生じやすくなる。
【0022】
なお、陽極外部端子6の方向へ曲げる陽極体端部1cは、陽極体端部1cの両側ではなく片側のみを曲げても良く、固体電解コンデンサの構成や製造条件を考慮して決定して構わない。
【0023】
陽極体端部1cを曲げる工程は、コンデンサ素子を実装する工程で実施可能である。曲げる作業は陽極体端部を曲げるように段差を設けた冶具を用いる。
【0024】
次に、本発明の実施の形態における固体電解コンデンサの構成について説明する。
【0025】
図1(b)は固体電解コンデンサを示す図であり、コンデンサ素子100の陽極金属片4と陽極外部端子6が導電性接着剤5により電気的に接続され、コンデンサ素子100の陰極層2と陰極外部端子7が導電性接着剤5により電気的に接続される。使用する導電性接着剤5は一般的に使用される銅、銀等の導電性フィラーを含んだエポキシ系等のものを用いてよい。なお、陽極体1が部分的に導電性接着剤5と接着されても構わない。
【0026】
この時、陽極体端部1cが陽極外部端子6の方向へ曲げてあることにより、陽極外部端子の表面に塗布された導電性接着剤5との接着面積が増加し、ESRの低減が可能となる。コンデンサ素子100は複数個の積層が可能であり、狙いの容量やESRによって積層する数を増加させて構わない。なお、コンデンサ素子を積層する場合での陽極体端部1cを曲げる作業は積層する工程でも実施可能である。
【0027】
最後に、コンデンサ素子100を接続した外装樹脂ケース8に、封止を目的として樹脂製の蓋9を被せて接着剤10で接着し、本発明の固体電解コンデンサ110を得る。
【実施例】
【0028】
本発明の実施例について実施の形態で用いた図面を参照して説明をする。
【0029】
図1(a)は固体電解コンデンサに用いられるコンデンサ素子を説明する断面図であり、図1(b)は固体電解コンデンサを説明する断面図である。
【0030】
まず、図1(a)に示すように、表面がエッチング処理で200倍に拡面化されたAlからなる弁作用金属箔からなる陽極体1の表面に誘電体層を形成し、陽極体1の中央領域1aに導電性ポリマー層からなる固体電解質層、グラファイト層、銀ペースト層を順次形成して陰極層2を形成した。そして、エポキシ樹脂からなるレジスト層3が形成されたレジスト形成部1bを介して更に外側へ伸びた陽極体の両端をレーザで誘電体層を除去して陽極体端部1cを形成しコンデンサ素子100を作製した。
【0031】
コンデンサ素子100の大きさは、長さ14.8mm、幅10.0mm、厚さ0.25mmで、銅系合金からなる長さ8.0mm、幅1.0mm、厚さ0.15mmの陽極金属片4が陽極体端部1cに接続されている。
【0032】
陽極体端部1cを陽極外部端子6の方向へ曲げる角度は、陽極体1の中央領域1aの陰極外部端子7に対向する面を基準として15°とした。陽極体端部1cを曲げる作業はコンデンサ素子の実装工程で冶具によって行った。
【0033】
次に固体電解コンデンサの構成を説明する。図1(b)は固体電解コンデンサを示す図であり、コンデンサ素子100の陽極金属片4と陽極外部端子6を導電性接着剤5により電気的に接続し、コンデンサ素子100の陰極層2と陰極外部端子7を導電性接着剤5により電気的に接続した。この時、陽極体端部1cが陽極外部端子6の方向へ曲げてあることにより、陽極外部端子6上の導電性接着剤5との接着面積が増加し、ESRを低減させることができる。
【0034】
次に、コンデンサ素子100を接続した外装樹脂ケース8に、樹脂製の蓋9を被せて接着剤10で接着し、封止して固体電解コンデンサ110を得た。サンプル数は50個作製した。
【比較例】
【0035】
陽極体の陽極体端部を陽極外部端子の方向へ曲げない構造とした以外は実施例1と同様の製造条件とし、固体電解コンデンサを作製した。サンプルは50個作製した。
【0036】
本発明による実施例と比較例との通過抵抗値測定結果を表1に示す。なお、通過抵抗とは、3端子型固体電解コンデンサの2つの外部陽極端子に一定電流を流し、その時の電圧値から算出した抵抗値である。コンデンサ素子と外部陽極端子との接続抵抗の指標となり、陽極接続抵抗の低下により、ESR低減となる。印加電流値は10A、測定数は各50個とした。
【0037】
【表1】
【0038】
表1から明らかなように、実施例は比較例より通過抵抗値の平均値が15%減少しており、本発明の効果がみとめられる。
【0039】
以上、実施例を用いて、この発明の実施の形態を説明したが、この発明は、これらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当業者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 陽極体
1a 中央領域
1b レジスト形成部
1c 陽極体端部
2 陰極層
3 レジスト層
4 陽極金属片
5 導電性接着剤
6 陽極外部端子
7 陰極外部端子
8 外装樹脂ケース
9 蓋
10 接着剤
100、200 コンデンサ素子
110、210 固体電解コンデンサ
図1
図2