(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、動作制御をきめ細かく行うとともに電力の利用効率を改善するために、インバータに代表される電力変換器が、各種の家庭用電気機器や産業用電気機器に広く使用されている。これに伴って、これら電力変換器のスイッチング動作時に発生する高調波成分が他の機器に影響を与え、不要な動作を引き起こしたり、損傷させたりすることがある。
【0003】
そこで、これらの不具合発生を防止するために、交流電力測定にあたっては、電圧実効値、電流実効値、有効電力の他に、電圧高調波成分、電流高調波成分、有効電力高調波成分なども測定解析できることが求められている。
【0004】
図8は特許文献1に開示された高調波成分測定装置の構成を説明するブロック図である。電圧入力回路1は、入力された電圧を後段回路の処理に適したレベルに正規化する。A/D変換器2は電圧入力回路1により入力された電圧をデジタル信号に変換する。ゼロクロス検出器3は電圧入力回路1から入力された電圧がゼロレベルを横切ることを検出するものであり、入力電圧がLOWからHIGHまたはHIGHからLOWへ変化することを検出することにより検出出力が反転する。このゼロクロス検出器3の検出出力周波数は入力電圧信号の基本周波数となる。
【0005】
電流入力回路4は、入力された電流を後段回路の処理に適したレベルに正規化する。A/D変換器5は電流入力回路4から入力された電流をデジタル信号に変換する。ゼロクロス検出器6は電流入力回路4から入力された電流がゼロレベルを横切ることを検出するものであり、入力電流がLOWからHIGHまたはHIGHからLOWへ変化することを検出することにより検出出力が反転する。このゼロクロス検出器6の検出出力周波数は入力電流信号の基本周波数となる。
【0006】
A/D変換器2から出力される電圧瞬時値の変換データおよびA/D変換器5から出力される電流瞬時値の変換データは、DSP7およびDSP17に入力される。ゼロクロス検出器3、6の出力信号は、切替器9に入力されている。
【0007】
切替器9は、ゼロクロス検出器3、6の出力のどちらか一方をCPU10の設定により選択してPLLサンプリングクロック発生器13に入力する。なお、ゼロクロス検出器3、6のいずれの出力を用いるかは、測定対象によって使い分ける。例えば電流波形に歪みが生じる機器の場合は電圧のゼロクロス検出器3の出力を使用し、インバータ制御された機器のように電圧波形に歪みが生じる場合は電流のゼロクロス検出器6の出力を使用する。
【0008】
固定サンプリングクロック発生器12は、任意に設定された固定サンプリングクロックを発生する。固定サンプリングクロックはA/D変換器2、5に入力され、A/D変換器2、5はこれに基づいてA/D変換を行う。また固定サンプリングクロックは、フラグ回路23にも入力する。
【0009】
PLLサンプリングクロック発生器13は、切替器9を介して選択的に入力されるゼロクロス検出器3またはゼロクロス検出器6の出力信号の整数倍のPLLサンプリングクロックを発生し、フラグ回路23に出力する。
【0010】
カウンタ用クロック発生器22は、カウンタA19とカウンタB21のカウント値を1カウントずつアップするためのカウンタ用クロックを発生する。このカウンタ用クロックの周波数は、固定サンプリングクロックの周波数より十分高いものとする。
【0011】
カウンタA19は、ある固定サンプリングクロックから次の固定サンプリングクロックまでの間だけ、カウンタ用クロックごとにカウントアップする。次の固定サンプリングクロックが来ると、カウンタA19のカウント値はラッチA18に読み込んで保持され、カウンタA19はカウント値を0に初期化する。
【0012】
カウンタB21は、ある固定サンプリングクロックから次に来るPLLサンプリングクロックまでの期間、カウンタ用クロックごとにカウントアップする。PLLサンプリングクロックが来ると、カウンタB21はカウント値を0に初期化する。ただし、ある固定サンプリングクロックから次の固定サンプリングクロックまでの間にPLLサンプリングクロックがなかった場合は、次の固定サンプリングクロックがあったタイミングでカウント値を0に初期化する。カウンタB21のカウント値は、固定サンプリングクロックが来たタイミングでラッチB20に読み込み保持される。
【0013】
フラグ回路23は、固定サンプリングクロックと次の固定サンプリングクロックの間にPLLサンプリングクロックがあった場合、次の固定サンプリングクロックのタイミングで出力を1に保持する。また、その間にPLLサンプリングクロックがなかった場合は、出力を0に保持する。
【0014】
DSP7(Digital Signal Processor)は、A/D変換器2によりデジタル値に変換された電圧瞬時値v(n)と、A/D変換器5によりデジタル値に変換された電流瞬時値a(n)に基づき、電圧実効値、電流実効値、有効電力を演算する。
【0015】
DSP17は、固定サンプリングクロックのタイミングでA/D変換されたA/D変換器2およびA/D変換器5の出力値を読み込む。このとき、1回のA/D値を読み込むとともに、その1回前のA/D値もDSP17内部に保存しておく。また、固定サンプリングクロックのタイミングで、ラッチA18、ラッチB20およびフラグ回路23の出力を読み込む。
【0016】
そしてDSP17は、フラグ回路23の出力が1の場合に、固定サンプリングクロックの間にある[ラッチB20の値/ラッチA18の値のタイミング]の値を、前後の固定サンプリングクロックのタイミングのデータから直線補間によって求める。そしてDSP17は、補間した値を対象データとしてFFT演算を行う。DSP17は、このようなFFT演算を電圧瞬時値に対して行うことにより電圧の基本波成分と高調波成分を計算し、電流瞬時値に対して行うことにより電流の基本波成分と高調波成分を計算し、これら電圧のFFT結果と電流のFFT結果に基づき有効電力の基本波成分と高調波成分をそれぞれ計算する。
【0017】
これらDSP7で計算された電圧実効値V、電流実効値A、有効電力Pと、DSP17で計算された電圧と電流と有効電力の基本波成分と高調波成分は、CPU10を介して表示器11に表示される。なお、CPU10は、DSP7、17で計算された各測定値を表示器11に表示するとともに、操作部14からの操作入力により切替器9を切替制御する。
【0018】
このようにゼロクロスの整数倍のポイント数のFFT演算を行うと、FFT演算結果の各周波数成分は電圧/電流の基本波成分および高調波成分の周波数と一致することになり、入力信号を取りこぼすことなくリアルタイムにFFT演算を行うことができ、基本波成分と高調波成分を高精度に演算できる。特に、直線補間することにより、FFT演算したとき入力波形に本来含まれない成分を低減でき、本来含まれる成分の振幅をより精度よく求めることできる。
【0019】
なお、上記のPLLサンプリングクロック発生器13の代わりに、特許文献2にて提案したサンプリングクロック発生器を用いることにより、精度よく基本周波数のN倍のサンプリングクロックを発生させることもできる。特許文献2では、ゼロクロスを基準とする基本周波数を高速な基準クロックでカウントし、これを定数Nで除算することによってFFT演算を行うクロックパルスの間隔(クロック数)を求めている。なお定数Nで除算したときの整数部でそのクロック数をダウンカウントし、補間タイミングを信号パルスとして出力している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
電圧や電流の測定装置において、多チャンネルにして複数の信号の測定を可能とすることは従来から行われている。例えばオシロスコープなどでは、2チャンネル、4チャンネルなどの構成のものが一般に提供されている。
【0022】
高調波成分測定装置においても、複数の信号を同時に測定する要望がある。
図9は測定対象の例としてのマトリックスコンバータの一種を説明する図である。マトリックスコンバータ80は、三相電源82から供給される入力R、S、TをPWM制御して任意の電圧や周波数の出力U、V、Wに変換し、三相モータ84などの機器に供給する装置である。このような装置に対して入力と出力を1台の装置で同時に測定することができれば、その挙動を測る上で非常に便宜がよい。
【0023】
そこで簡単に考えれば、測定したい信号の数だけの複数組のA/D変換器(電圧用と電流用で1組)を備えることが想起される。
図9の例であれば、6組のA/D変換器(合計12個のA/D変換器)を備えればよいということになる。
【0024】
しかしながら、高調波成分測定装置はオシロスコープのように単に測定すればよいだけではなく、その後のFFT演算を主要な処理としている。そしてFFT演算は、ゼロクロスを基準とするタイミングで行う必要がある。仮にアナログ入力信号の基本周波数の周波数が異なっていると、正しいFFT演算の結果を得ることができない。したがって、複数組のA/D変換器を備えていたとしても、複数の信号のうち同時に正しくFFT演算できるのは基本周波数が同じものだけであり、マトリックスコンバータ80やインバータのように周波数が異なる場合には、依然として複数台の高調波成分測定装置が必要になってしまうという問題がある。
【0025】
そこで本発明は、基本周波数が異なる複数系統の信号の高調波成分を1台の装置で同時に測定することが可能な高調波成分測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するために、本発明にかかる高調波成分測定装置の代表的な構成は、サンプリングクロックに基づいて複数のアナログ入力信号をデジタルデータに変換する複数のA/D変換器と、複数のアナログ入力信号のゼロクロスを検出する複数のゼロクロス検出器と、複数のゼロクロス検出器が接続され、基本周波数が異なる系統の数に応じて設けられ、その系統ごとにゼロクロス信号を出力する複数の切替器と、複数の切替器のいずれかの出力信号に基づきその系統のアナログ入力信号の基本周波数を求め、その整数倍の周波数の補間タイミングを発生する複数の補間タイミング発生器と、各系統においてデジタルデータからその系統の補間タイミングにおける値を
、サンプリングクロックの1周期以内に時分割で系統の数に応じた補間
処理を行うことによって求める
1つの補間処理器と、デジタルデータの補間された値をFFT演算して複数系統のアナログ入力信号の基本波成分と高調波成分とを演算するFFT演算器と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、基本周波数が異なる複数系統の信号の高調波成分を1台の装置で同時に測定することができる。また、1つの系統について複数の入力信号の高調波成分を測定することができる。これにより、周波数を変換する装置の入力信号と出力信号や、信号の周波数が異なる複数箇所の高調波を同時に測定することができ、使用者の便宜に供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、基本周波数が異なる複数系統の信号の高調波成分を1台の装置で同時に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0031】
図1は本実施形態にかかる高調波成分測定装置の一例を示すブロック図であって、
図8と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図1の電圧入力回路1、A/D変換器2、ゼロクロス検出器3、電流入力回路4、A/D変換器5、ゼロクロス検出器6、CPU10、表示器11、固定サンプリングクロック発生器12、操作部14の機能および動作は
図8に示したものと同じである。また第1FPGA8は、
図8のDSP7と同様に瞬時値の総和平均から電圧実効値、電流実効値、有効電力を演算する。
【0032】
ここで、本実施形態では、電圧入力回路1、A/D変換器2、ゼロクロス検出器3、電流入力回路4、A/D変換器5、ゼロクロス検出器6をまとめてブロックとして、同様の構成の6つのブロック30を備えている。
図1では1、2、6番目のブロック30a、30b、30fの3つだけを代表して図示している。以下、ブロック30a、30b、30fを含む6つのブロックのうち任意のブロックを指す場合に、ブロック30と表記する。すなわち、入力可能とするアナログ信号の数に応じた複数のA/D変換器と、複数のゼロクロス検出器を備えている。これにより、6つのアナログ入力信号の電圧および電流をサンプリングできると共に、各信号のゼロクロス信号を得ることができる。
【0033】
ただし本実施形態では、アナログ信号の数は6つであるが、それらの基本周波数は2つ(2種類)である場合を例に用いて説明する。具体例としては、
図9に示したマトリックスコンバータ80の入力R、S、Tと出力U、V、Wが挙げられる(入力側と出力側で基本周波数が異なる)。以下、このように基本周波数が異なる信号の群を「系統」と称する。
【0034】
第2FPGA15は、後述するように補間タイミング(FFT演算の入力データのタイミング)を発生させると共に、補間データを演算して、FFT演算による電圧、電流および有効電力の基本波成分と高調波成分を計算する。したがって
図1の構成では、
図8に示したDSP17、PLLサンプリングクロック発生器13、ラッチA18、カウンタA19、ラッチB20、カウンタB21、カウンタ用クロック発生器22、フラグ回路23がなくなっている。
【0035】
各ブロック30のゼロクロス検出器3、6は、複数の切替器(第1切替器50、第2切替器51)に接続されている。切替器の数は処理しようとする系統の数に応じて設けられる。本実施形態では2系統の基本周波数を処理する構成であるから2つの切替器を設けている。第1切替器50は、各ブロック30のゼロクロス検出器3、6のいずれか1つの出力をCPU10の設定により選択して、ゼロクロス信号1として第2FPGA15に出力する。第2切替器51は、同様に、ゼロクロス信号2を第2FPGA15に出力する。ゼロクロス検出器3、6のいずれの出力を用いるかは、測定対象によって使い分ける。例えば電流波形に歪みが生じる機器の場合は電圧のゼロクロス検出器3の出力を使用し、インバータ制御された機器のように電圧波形に歪みが生じる場合は電流のゼロクロス検出器6の出力を使用する。
【0036】
ここで、第1切替器50と第2切替器51は、基本周波数が異なる系統ごとにゼロクロス信号を出力する。すなわち、第1切替器50は1つめの系統のゼロクロス信号を出力し、第2切替器51は2つめの系統のゼロクロス信号を出力する。その切り替え(選択)はCPU10から設定され、CPU10は操作部14からの操作入力により動作する。換言すれば、使用者は各ブロック30に入力されるアナログ入力信号の種類を認識し、操作部14を操作して、第1切替器50および第2切替器51がそれぞれどのブロック30のゼロクロス検出器3または6の信号を出力するかの設定値を入力する。
【0037】
図2は第2FPGA15の内部構成を示すブロック図である。第2FPGA15は、複数の補間タイミング発生器(第1補間タイミング発生器53、第2補間タイミング発生器54)と、補間処理器41、メモリ42、FFT演算器43を有している。
【0038】
第1補間タイミング発生器53は第1切替器50からゼロクロス信号1を入力され、固定サンプリングクロック発生器12から固定サンプリングクロックを入力される。そして第1補間タイミング発生器53は、ある固定サンプリングクロックと次の固定サンプリングクロックとの間に補間タイミングを含むか否かを示す補間タイミングフラグ1と、その固定サンプリングクロックから補間タイミングまでの差分である補間係数α1を補間処理器41に出力する。
【0039】
第2補間タイミング発生器54は第2切替器51からゼロクロス信号2を入力され、固定サンプリングクロック発生器12から固定サンプリングクロックを入力される。そして第2補間タイミング発生器54は、ある固定サンプリングクロックと次の固定サンプリングクロックとの間に補間タイミングを含むか否かを示す補間タイミングフラグ2と、その固定サンプリングクロックから補間タイミングまでの差分である補間係数α2を補間処理器41に出力する。
【0040】
図3は第1補間タイミング発生器53または第2補間タイミング発生器54の内部構成を説明するブロック図である。これらの内部構成は同一であるため区別せずに説明する。
【0041】
立ち上がりエッジ検出器24は、第1切替器50または第2切替器51から入力されるゼロクロス信号の立ち上がりエッジを検出することによりパルスを1つ生成し、パルスカウンタ25に出力する。
【0042】
パルスカウンタ25には、入力されるゼロクロス信号の他、図示しない基準クロック発生源から一定間隔のパルス列よりなる基準クロックも入力されている。基準クロックの周波数は固定サンプリングクロックの周波数より十分高いものとする。そしてパルスカウンタ25は、ゼロクロス信号パルスから次のゼロクロス信号パルスまでの時間、基準クロックのパルス数をカウントする。カウント終了後、そのカウント値をメモリ26に出力する。
【0043】
メモリ26は、パルスカウンタ25の出力をM個保存できる領域を持っている。立ち上がりエッジ検出器24の出力パルスがあるごとに、パルスカウンタ25のカウント値出力はメモリ26に保存される。1回目の立ち上がりエッジ検出器24の出力パルスによりメモリ26のメモリ領域1にパルスカウンタ25のカウント値出力が保存され、2回目の立ち上がりエッジ検出器24の出力パルスによりメモリ26のメモリ領域2にパルスカウンタ25のカウント値出力が保存され、M回目の立ち上がりエッジ検出器24の出力パルスによりメモリ26のメモリ領域Mにパルスカウンタ25のカウント値出力が保存される。
【0044】
そして、(M+1)回目の立ち上がりエッジ検出器24の出力パルスではメモリ26の先頭に戻ってメモリ領域1にパルスカウンタ25のカウント値出力が保存され、(M+2)回目の立ち上がりエッジ検出器24の出力パルスではメモリ26のメモリ領域2にパルスカウンタ25のカウント値出力が保存される。
【0045】
第1加算器27は、メモリ26のメモリ領域1〜Mまでに保存されているパルスカウンタ25のカウント値をすべて加算し、加算結果を2進数で第1演算器28に出力する。
【0046】
第1演算器28は、除算器、乗算器、シフタなどで構成される。除算器の場合、定数1として数値Nが入力され、第1加算器27の加算出力をNで除算した数値が出力される。乗算器の場合、定数1として(1/N)を計算した数値が入力され、第1加算器27の加算出力に(1/N)を乗算した数値が出力される。Nが2のべき数の場合、シフタを用いることもできる。シフタの場合、定数1として(log
2N)を計算した数値が入力され、第1加算器27の加算出力を右へ(log
2N)ビット分シフトした数値が出力される。
【0047】
第2演算器29も、除算器、乗算器、シフタなどで構成される。除算器の場合、定数2として数値Mが入力され、第1演算器28の出力をMで除算した数値が出力される。乗算器の場合は、定数2として(1/M)を計算した数値が入力され、第1演算器28の出力に(1/M)を乗算した数値が出力される。Mが2のべき数の場合、シフタを用いることもできる。シフタの場合、定数2として(log
2M)を計算した数値が入力され、第1演算器28の出力を右へ(log
2M)ビット分シフトした数値が出力される。
【0048】
第2加算器34には、第2演算器29の出力値と、第1減算器36の出力値が入力される。第2加算器34はこれらを加算して出力する。
【0049】
セレクタ35は、第2加算器34の出力と第1減算器36の出力が入力されており、補間タイミング判定器37の出力が0か1かによっていずれか一方を出力する。補間タイミング判定器37の出力が0のときは第1減算器36の出力を出力し、1のときは第2加算器34の出力を出力する。
【0050】
第1減算器36は、セレクタ35の出力と、固定サンプリングクロック、および係数導出部38が出力する係数hが入力されている。第1減算器36は、固定サンプリングのタイミングで、セレクタ35の出力から係数hを引いた出力値βを出力する。出力値βは小数を含む数値である。
【0051】
補間タイミング判定器37は、第1減算器36の出力値βが係数h以下のとき(β≦h)は1を出力し、出力値βがhより大きいとき(β>h)は0を出力する。第1補間タイミング発生器53の補間タイミング判定器37の出力を補間タイミングフラグ1、第2補間タイミング発生器54の補間タイミング判定器37の出力を補間タイミングフラグ2とする。
【0052】
係数導出部38は、基準クロックの周波数を固定サンプリングクロックの周波数で除した係数hを出力する。係数hは、固定サンプリングクロックの間隔が基準クロックの何クロック分であるかを意味しており、小数を含む数値である。
【0053】
第2減算器39は、補間タイミング判定器37から補間タイミングフラグ1または2(値は1)が出力されたタイミングで、係数hから第1減算器36の出力値βを引いた値を出力する。第1補間タイミング発生器53の第2減算器39の出力を補間係数α1、第2補間タイミング発生器54の第2減算器39の出力を補間係数α2とする。出力値βが小数を含む数値であるから、補間係数αも同様に小数を含む数値である。
【0054】
上記構成によれば、パルスカウンタ25はゼロクロス信号の間隔が基準クロックの何クロック分であるかを数え、メモリ26にM個分のゼロクロス信号のクロック数を記憶させる。これを第1加算器27で加算して第2演算器29においてMで割ることにより、クロック数の平均を取ることができる。また第1演算器28でNで割っていることにより、第2演算器29からはゼロクロス信号のカウント数の1/Nの数値が出力される。
【0055】
そして第1減算器36においてゼロクロス信号のクロック数から係数h(固定サンプリングクロックのクロック数)を引くのであるが、その出力値βが係数hより大きい限り(補間タイミング判定器37においてβ>h)、セレクタ35では出力値βが選択されるため、繰り返し減算が行われる。固定サンプリングクロックのタイミングで出力値βが係数hずつ減り、ついにβ≦hとなると、第2減算器39から係数h−出力値β=補間係数αが出力されることになる。したがって補間係数αは係数h以下の数値であって、直近の固定サンプリングクロックから補間タイミングまでの差分を意味する。残ったβは第2加算器34において第2演算器29の出力値と加算され、ふたたび繰り返し減算が行われる。
【0056】
図4は第1補間タイミング発生器53の内部の各出力例を示すタイミングチャートである。例として、基準クロック周波数=132MHz、固定サンプリングクロック周波数=2MHz、ゼロクロス信号の周波数=1.02kHz、M=2、N=512としている。
【0057】
図5は補間処理器41の内部構成を説明するブロック図、
図6は補間処理器41の動作を説明するタイミングチャートである。補間処理器41は、各系統においてデジタルデータからその系統の補間タイミングにおける値を補間によって求める。本実施形態では、補間タイミングを中心とする6点(前3点、後3点)のサンプリングクロックのデジタルデータを用いてスプライン補間を行う。
【0058】
補間処理器41は、6つのブロック30に対して、電圧のAD値を記憶する6つのメモリ44と、電流のAD値を記憶する6つのメモリ45とを備えている。
図5では1番目の44a、45a、6番目の44f、45fの4つだけを代表して図示している。一対のメモリ44a、45aはブロック30aに対応していて、他の一対のメモリ44f、45fは、ブロック30fに対応している。
【0059】
メモリ44aは、固定サンプリングクロックごとのADU1データ(ブロック30aの電圧のAD値)を最新のものから過去6回分保持し、古い時刻のADU1データから順番に、y0u1、y1u1、y2u1、y3u1、y4u1、y5u1として出力する。メモリ44fはブロック30fのADU6データを受けて、y0u6、y1u6、y2u6、y3u6、y4u6、y5u6を出力する。他のメモリ44(2番目〜5番目)も同様にブロック30(2番目〜5番目)の電圧のAD値を6回分ずつ保持して出力する。
【0060】
メモリ45aは、固定サンプリングクロックごとのADI1データ(ブロック30aの電流のAD値)を最新のものから過去6回分保持し、古い時刻のADI1データから順番に、y0i1、y1i1、y2i1、y3i1、y4i1、y5i1として出力する。メモリ45fはブロック30fのADI6データを受けて、y0i6、y1i6、y2i6、y3i6、y4i6、y5i6を出力する。以下メモリ45(2番目〜5番目)も同様に、ブロック30(2番目〜5番目)の電流のAD値を6回分ずつ保持して出力する。
【0061】
第3切替器55は、補間演算器59に電圧側のデータを入力するとき、6つのメモリ44のいずれかの出力をy0、y1、y3、y4、y5として出力する。補間演算器59に電流側のデータを入力するとき、6つのメモリ45のいずれかの出力をy0、y1、y3、y4、y5として出力する。
図6に示すように、第3切替器55は、固定サンプリングクロックを時分割して、6つのブロック30の電圧および電流の値を順番に切り替えて出力する。
【0062】
シフタ46は、3段のシフタで構成され、固定サンプリングクロックごとに補間タイミングフラグ1を1段目にラッチし、それを固定サンプリングクロックごとに、2段目、3段目にシフトし、3段目のデータを出力する。これにより補間タイミング発生器40から補間タイミングフラグ1が出力された後に3回目の固定サンプリングクロックが到達したときに、シフタ46から補間タイミングフラグ1が出力される。シフタ47も同様に、補間タイミングフラグ2が出力された後に3回目の固定サンプリングクロックが到達したときに補間タイミングフラグ2を出力する。
【0063】
第4切替器56は、シフタ46およびシフタ47から補間タイミングフラグ1および2を入力される。
図6に示すように、第4切替器56は、補間タイミングフラグ1または補間タイミングフラグのいずれか一方が1のとき1を出力し、両方が0のときは0を出力する。
【0064】
シフタ48も3段のシフタで構成され、固定サンフリングクロックごとに補間タイミング発生器40からの補間係数α1を1段目にラッチし、それを固定サンプリングクロックごとに、2段目、3段目にシフトし、3段目のデータを補間係数α1として出力する。シフタ49も同様に、補間係数α2をラッチし、3回目の固定サンプリングクロックが到達したときに補間係数α2を出力する。
【0065】
第5切替器57は、シフタ46、47、48、49に接続されている。そして
図6に示すように、補間タイミングフラグ1が1のとき補間係数α1を出力し、補間タイミングフラグ2が1のとき補間係数α2を出力する。補間タイミングフラグ1と2の両方が1のとき、第3切替器55から1つめの系統のデータが出力されるタイミングでは補間係数α1を出力し、第3切替器55から2つめの系統のデータが出力されるタイミングでは補間係数α2を出力する。補間タイミングフラグ1と2の両方が0のとき、第5切替器57はなにも出力しない(0を出力してもよい)。
【0066】
なお補間演算器59は、補間タイミングフラグ1のみが1のときは1つめの系統のデータのみを出力し、補間タイミングフラグ2のみが1のときは2つめの系統のデータのみを出力する。補間タイミングフラグ1と2の両方が1のとき、1つめの系統のデータに引き続いて順番に2つめの系統のデータを出力する。
【0067】
補間演算器59は、第4切替器56の出力が1であって、かつ第3切替器55にデータがあるときに、補間演算を実行する。
【0068】
図7は補間方法を説明する図である。
図7に示すように、1つの補間データを求めるのに、それより前の固定サンプリングのAD値で近い時刻から3点、それより後の固定サンプリングのAD値で近い時刻から3点の計6点のみを使用して補間データを演算する。そして、別の補間データを求めるときは、その時刻の前後の6点の固定サンプリングのAD値(x0,y0)〜(x5,y5)を使用して補間データを演算する。
【0069】
補間演算器59は、第3切替器55の出力が電圧側のデータのとき、補間演算器59で補間したAD値をyuとして出力する。第3切替器55の出力が電流側のデータのとき、補間演算器59で補間したAD値をyiとして出力する。このようにして、各系統のデジタルデータを、その系統の補間タイミングで補間した値が、補間演算器59から(補間処理器41から)出力される。
【0070】
図2に示したメモリ42は、補間処理器41の出力yu、yiをそれぞれFFTポイント数分保存する。FFT演算器43は、メモリ42にyuまたはyiがFFTポイント数分が貯まったら、FFT演算を行う。そして電圧のAD値を補間したデータから電圧の基本波成分と高調波成分を、電流のAD値を補間したデータから電流の基本波成分と高調波成分を、電圧のFFT結果と電流のFFT結果から有効電力の基本波成分と高調波成分を計算し、CPU10へ転送する。
【0071】
上記説明したように、本実施形態にかかる高調波成分測定装置の構成によれば、基本周波数が異なる複数系統の信号の高調波成分を1台の装置で同時に測定することができる。また、1つの系統について複数の入力信号の高調波成分を測定することができる。これにより、周波数を変換する装置の入力信号と出力信号や、信号の周波数が異なる複数箇所の高調波を同時に測定することができ、使用者の便宜に供することができる。
【0072】
また、補間の際には補間係数αの分解能も重要であるが、従来技術のように補間タイミングを基準クロックと一致した信号パルスとするのではなく、小数を含む数値で表現した補間係数αを用いている。したがって、
図3の第1補間タイミング発生器53では、基準クロックの(N×M)倍の分解能で補間係数αを数値として求められるので、補間タイミングの分解能を飛躍的に高めることができ、補間精度の向上を図ることができる。なお、従来技術の直線補間で、本発明と同等の精度を達成するには5倍以上高速で高価なAD変換器が必要であるが、本発明によればそのようなコストアップを回避することができる。
【0073】
なお、上記実施形態においては2系統の場合を例に用いて説明したが、本発明はこれに限定するものではない。切替器50、51などを増やすことにより、さらに多くの系統に対応させることができる。
【0074】
また、上記実施形態では、全ての入力信号は、その入力信号の基本周波数に基づいた系統の補間タイミングでFFT演算をすると説明した。しかし本発明はこれに限定するものではなく、1つの入力信号を異なる系統の補間タイミングでFFT演算したり、複数の系統の補間タイミングで複数回FFT演算したりして、得られた解析結果を個別または同時に表示してもよい。例えば、入力信号が60Hz、出力信号が1kHzといったように周波数変換を行う装置において、入力信号の補間タイミングで入力信号を解析するのと同時に、出力信号の系統の補間タイミングで入力信号を解析する。これにより、出力側から入力側に影響するノイズがFFT演算によって1kHzの基本波成分・高調波成分として算出されることから、これらの成分に着目した解析を同時に行うことができる。
【0075】
このような動作は、補間処理器41における動作をわずかに変更することで実現が可能である。例えば
図6にあるように、ADU1データに対して補間タイミングフラグ1が1のとき、第3切替器55の出力をy0u1、y1u1、y2u1、y3u1、y4u1、y5u1とすると、補間演算器の出力yu1は1つめの系統の補間タイミングでの補間データとなる。ここでさらに、補間タイミングフラグ2が1のときにも第3切替器55の出力をy0u1、y1u1、y2u1、y3u1、y4u1、y5u1とすることにより、補間演算器59の出力yu1が2つめの系統の補間タイミングでの補間データとなり、1つの入力信号に対して同時に異なる系統の補間データを生成することができる。
【0076】
上記動作は、従来のようにFFT演算の入力データのタイミングが1種類の装置では実現不可能であり、また仮に複数の入力信号をそれぞれ異なる固定サンプリングクロックで取得する装置があったとしても実現不可能である。すなわち、本実施形態の構成のように、複数の系統で補間により入力データを生成してFFT演算を行う構成によって初めて実現可能となる。
【0077】
また本実施形態では補間点の前後6点を使用したが、前後8点にして補間精度をさらに上げてもよい。また逆に前後4点にして、演算器の個数を減らしたり、演算時間を短くしたりすることも可能である。なお前後4点にすると補間精度は下がるが、直線補間する場合よりは精度を高めることができる。また、8点より多くしてもそれ以上の精度の向上はほとんど見られず、演算負荷が急激に増大するため、利益が少ない。そのため、補間点は4点以上8点以下とすることが好ましい。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。