【実施例】
【0018】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0019】
<乾燥原末と乾熱処理粉末の成分分析及び色調測定>
スピルリナの乾燥原末100gをステンレス製の丸型バット(φ140mm)に均一に広げて、該バットを熱風乾燥機(東京理化器械株式会社(EYELA)製、形式WFO−600ND)に設置し、表1に示した温度及び時間で乾熱処理した。なお、表1において“Control”は乾熱処理をしないスピルリナの乾燥原末を示す。
【0020】
【表1】
【0021】
乾燥原末及び乾熱処理粉末の色素成分含有量は、財団法人日本健康・栄養食品協会「スピルリナ食品品質規格基準」(平成21年3月6日改定)に記載の「総カロテノイドの定量」、「クロロフィルa分析法」、及び「フィコシアニン分析法」に従って分析した。
また、乾燥原末及び乾熱処理粉末の表面色は、JIS Z 8729に準拠して、L
*a
*b
*表色系(CIE 1976)による明度L
*及び色座標a
*,b
*により評価した。L
*,a
*及びb
*の値は、試料2gをφ30mmの測定用丸セルに入れ、ムラがないようにタッピングを数回行って、分光式色彩計(日本電色工業株式会社製、形式SE−2000)を用いて測定した。
なお、L
*a
*b
*表色系において、概略として、L
*は数値が大きいほど明度が高い(明るい)ことを示し、a
*は、正の側では数値が大きいほど赤の度合いが高く、負の側では数値が大きいほど緑の度合いが高いことを示し、また、b
*の値は、正の側では数値が大きいほど黄の度合いが高く、負の側では数値が大きいほど青の度合いが高いことを示す。
表1に示すように、乾熱処理の進行と光合成色素(フィコシアニン、クロロフィル、カロテノイド)が減少に伴い、乾燥原末に比べてL
*の値が増加し、a
*の値が減少し、b
*の値が減少する傾向を示すことがわかる。
【0022】
<乾燥原末と乾熱処理粉末の官能検査>
上記の乾燥原末(Control)と乾熱処理粉末(実施例2:115℃,16時間乾熱処理品)の風味を表2に示す方法に従って7段階で評価した。官能検査は、15人のパネルが各サンプルを基準となるスピルリナ粉末と比較し、基準を0点とした場合の評価項目を−3点〜+3点で評価し、各パネルの評点を平均した。その結果を表3に示す。乾熱処理により、乾燥原末に比べて臭いが大幅に弱まるとともに味質も改善されることが判明した。
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
<乾熱処理による耐光性比較>
スピルリナの乾燥原末と乾熱処理粉末(115℃,16時間乾熱処理品)を蛍光灯の光に暴露したときの色調変化を下記のように比較した。
試験条件は各試料5gをφ9cmのガラスシャーレに入れ、白色蛍光灯下で25℃、3000lxで暴露し、光暴露試料から2gをφ30mmの測定用丸セルに入れ、ムラがないようにタッピングを数回行って、分光式色彩計(日本電色工業株式会社製、形式SE−2000)を用いてL
*,a
*及びb
*の値を測定した。また、色差ΔEは、光暴露前後のL
*,a
*及びb
*の値の差(ΔL
*、Δa
*及びΔb
*)から下記の数式により算出した。結果を表4及び表5に示す。
【0026】
【数1】
【0027】
【表4】
【0028】
【表5】
【0029】
色差ΔEは、表6に示す判定基準によって評価した。スピルリナ乾燥原末は、光暴露4週目から変色が認められたのに対し、スピルリナ乾熱処理品は光暴露8週でも目視では容易に識別できない程度のわずかな色差を示しただけであった。
【0030】
【表6】
【0031】
<乾熱処理による耐熱性比較>
スピルリナの乾燥原末と乾熱処理粉末(115℃,16時間乾熱処理品)を加熱処理したときの色調変化を下記のように比較した。
試験条件は各試料2gをφ5cmのアルミカップに入れ、熱風乾燥機で105℃、8hr加熱し、加熱処理前後のL
*,a
*及びb
*の値を上記<乾熱処理による耐光性比較>と同様に測定し、色差ΔEを算出した。結果を表7及び表8に示す。
【0032】
【表7】
【0033】
【表8】
【0034】
色差ΔEは、上記の表6に示す判定基準によって評価した。乾燥原末の色差も小さかったが、乾熱処理粉末はわずかな変色も観察されなかった。
【0035】
<スピルリナ乾熱処理粉末を配合した抹茶組成物>
上記スピルリナ乾熱処理品(115℃、16hr)を抹茶に配合したとき、食品加工用抹茶N−2(株式会社葵製茶製)及びクロレラ入り抹茶N(同社)と外観が類似した緑色になる配合割合を求めた。
上記スピルリナ乾熱処理品を5%間隔で0〜50%の割合で抹茶と配合し、15人のパネルの内、8人以上が同等とした配合割合を表9に示す。本結果から、該抹茶組成物中のスピルリナ乾熱処理品の割合は、10〜30%が適当と考えられる。
【0036】
【表9】
【0037】
<抹茶組成物の耐光性比較>
上記の食品加工用抹茶N−2、クロレラ入り抹茶N、及びスピルリナ乾熱処理品(115℃、16hr)20部を抹茶80部と配合した抹茶組成物を蛍光灯の光に暴露したときの色調変化を下記のように比較した。
試験条件は各試料10gをφ9cmのガラスシャーレに入れ、白色蛍光灯下で25℃、3000lxで暴露し、光暴露試料から2gをφ30mmの測定用丸セルに入れ、ムラがないようにタッピングを数回行って、分光式色彩計(日本電色工業株式会社製、形式SE−2000)を用いてL
*,a
*及びb
*の値を測定するとともに、色差ΔEを上記数式により算出した。結果を表10、表11及び表12に示す。
【0038】
【表10】
【0039】
【表11】
【0040】
【表12】
【0041】
光暴露3日の時点で、食品加工用抹茶やクロレラ入り抹茶は色差が感じられたが、スピルリナ乾熱処理品(20%)入り抹茶組成物では、ほとんど変色が認められなかった。
【0042】
<3%添加生クリームでの耐光性比較>
上記の食品加工用抹茶N−2、クロレラ入り抹茶N、及びスピルリナ乾熱処理品(115℃、16hr)20部を抹茶80部と配合した抹茶組成物をそれぞれ生クリームに添加し、蛍光灯の光に暴露したときの色調変化を下記のように比較した。
試験サンプルは、氷水で冷やしたボールに市販の生クリーム100mL、砂糖25g及び上記の各種粉末3gを加え、泡立て器で泡立てて調製した各ホイップクリームを、透明なプラスチック容器(PP)に絞り出し成形することにより作製した。
試験条件は、各クリーム成形体の入った容器を白色蛍光灯下で10℃、3000lxで、光に0〜20時間暴露した。遮光保存品との色調を比較した。
比較方法は、パネル15名により表13に示す5段階評点方法にて実施した。
【0043】
【表13】
【0044】
【表14】
【0045】
表14に示すように、スピルリナ乾熱処理品(20%)入り抹茶組成物は、食品加工用抹茶N−2及びクロレラ入り抹茶Nに比べて退色しにくいことを確認した。
【0046】
<耐水性の比較>
スピルリナ乾燥原末と乾熱処理粉末(115℃,16時間乾熱処理品)のフィコシアニンをリン酸緩衝液で抽出したときの粉末の状態変化を下記のように比較した。
スピルリナ乾燥原末及び乾熱処理品をそれぞれ30℃の10mMリン酸緩衝液中で16時間かけて抽出処理をした。
本発明の実施例である乾熱処理粉末は、
図1の顕微鏡写真において矢印Aで示すように、水抽出処理後も色素が濃く、各粒子(細胞)の形状を維持している。なお、
図1はカラー写真をグレースケールに変換したものであるため、色調は不明となっているが、カラー写真によれば、青緑色が保たれていることも確認することができている。
これに対して、乾熱処理をしない乾燥原末は、
図2の顕微鏡写真において矢印Bで示すように、水抽出処理後はフィコシアニンがほとんど失われる結果、色落ちが顕著である。
これは、乾熱処理品では、スピルリナの細胞壁にあるタンパク質(フィコシアニンタンパク質も含む)が乾熱処理によって変性しているが、青色の基であるフィコシアノビリンが乾熱処理粉末中に残存していることを示している。
従って、乾熱処理で得られる粉末は、フィコシアニン含量が少なくなる他の方法、例えば特許文献2に記載された変性スピルリナ等とは異なり、天然由来の着色用粉末として耐水性にも優れるという特徴がある。