(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770477
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】地下貯留施設の連絡通路
(51)【国際特許分類】
B09B 1/00 20060101AFI20150806BHJP
B66C 5/06 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
B09B1/00 AZAB
B66C5/06
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-6731(P2011-6731)
(22)【出願日】2011年1月17日
(65)【公開番号】特開2012-148212(P2012-148212A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2013年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078695
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 司
(72)【発明者】
【氏名】檜山 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 恒男
(72)【発明者】
【氏名】山下 均
【審査官】
宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−514170(JP,A)
【文献】
特開2009−254922(JP,A)
【文献】
特開2006−159326(JP,A)
【文献】
特開2009−248240(JP,A)
【文献】
特開2005−305225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00−5/00
B09C 1/00−1/10
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物処分場である地下貯留構造物内への地表部からの連絡通路として、地下貯留構造物の躯体を構築後に設ける車輌の昇降設備であって、
躯体外方である地表部にクレーンを備えた車輌出入り用枠部を設け、この車輌出入り用枠部から躯体内方にかけてクレーンレールを張出架設し、クレーンに車輌運搬ケージを吊り下げてクレーンレールを移動可能とし、地下貯留構造物の躯体壁の内側に、車輌運搬ケージの昇降用ガイドレールとなるリフト固定ガイドを取り付けたことを特徴とする地下貯留施設の連絡通路。
【請求項2】
車輌運搬ケージ側部には、リフト固定ガイドに係合する係合部材を設けた請求項1記載の地下貯留施設の連絡通路。
【請求項3】
リフト固定ガイドは、地下貯留構造物内の廃棄物埋立レベルに応じて下から順次撤去可能な組立構造である請求項1または請求項2記載の地下貯留施設の連絡通路。
【請求項4】
車輌運搬ケージは、下部に昇降架台を形成し、これに連続するものとして、車輌乗り入れ用のスロープを着脱可能に設けた請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の地下貯留施設の連絡通路。
【請求項5】
地下貯留構造物は掘り込み式・鉄筋コンクリート造りの開放型ないしは閉鎖型の処分場であり、貯留物が廃棄物であり、底面からのレベルが廃棄物の埋立レベルである請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の地下貯留施設の連絡通路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘り込み式・鉄筋コンクリート造の廃棄物処分場
である地下貯留施設において、車輌運搬リフトを設置し、これを車輌・作業機械の昇降設備とする連絡通路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
掘り込み式・鉄筋コンクリート造の廃棄物処分場は、
図7に示すように、鉄筋コンクリート壁による外周側壁1を構築し、その内側を廃棄処分される廃棄物で埋め立てる。
【0003】
そして、外周側壁1の内側には廃棄物の運搬車輌・埋立作業関連の重機・人などの通路として使用する連絡通路2が構築されるが、この連絡通路2はコンクリート製通路として、前記外周則壁1の内側に通路を保持するためのコンクリート壁3を構築し、両壁1,3間を中詰土砂または砕石4で埋め立てることで形成される。
【0004】
前記連絡通路2は斜路として形成されるもので、内側のコンクリート壁3の高さを徐々に変化させることにより、連絡通路2(斜路)面の高さを場外に地盤面高さ(GL±0m)から、処分場底面5(図示の場合は(GL−15.00m)まで遷移させて、地上と底面5との連絡通路を形成する。
【0005】
このようにして外周側壁1の凹所内に廃棄処分される廃棄物は、地面上から前記凹所内に対し前記連絡通路2の走行面を通って出入りする車輌により、上記凹所内に搬送される。
【0006】
この凹所内に搬送された廃棄物やその上を被覆する土砂は、地面上から前記凹所内に対し出入りするブルドーザやローラなど重機により敷き均され、かつ、押し固められる。このようにして、廃棄物による凹所の埋立作業が進められる。
【0007】
また、下記特許文献には、地面に形成された凹所内に廃棄物が廃棄されて、上記凹所内が廃棄物で埋め立てられるようにした廃棄物埋立設備、およびこの設備を用いた廃棄物埋立方法に関するものとして、傾斜道路が、凹所の内底面上に除去可能に積み上げられた複数の軽量ブロックにより形成されたものが示されている。
【特許文献1】特開2009−279504号公報
【0008】
特許文献1の傾斜道路は凹所の内側面のうち、一部内側面とほぼ平行に延びるよう前記凹所の内底面から上方に向かって突出する仕切壁が設けられ、前記一部内側面と仕切壁との間に形成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記
図7に示す地下貯留構造物の外周に二重の鉄筋コンクリート壁を構築し、両壁間にコンクリート斜路(坂路)を構築する、斜路(坂路)による地下貯留施設における地上と内部との連絡通路は、通路(斜路)面より下に埋立できない部分が発生し、これが容量のロスとなってしまう。
【0010】
また、前記特許文献1についても同様であり、傾斜道路が容量のロスとして存在する。
【0011】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、処分場を建設する場合に、処分場内空寸法を従来の形式に比して縮減でき、同一容量の処分場を建設する場合に、掘削や埋め戻しの土砂扱い量・コンクリート・鉄筋などの建設資材の量を、従来形式に比して縮減でき、また、地下貯留施設の使用対象となる用地面積も縮減される地下貯留施設の連絡通路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、廃棄物処分場
である地下貯留構造物内への地表部からの連絡通路として、地下貯留構造物の躯体を構築後に設ける車輌の昇降設備であって、躯体外方である地表部にクレーンを備えた車輌出入り用枠部を設け、この車輌出入り用枠部から躯体内方にかけてクレーンレールを張出架設し、クレーンに車輌運搬ケージを吊り下げてクレーンレールを移動可能とし、地下貯留構造物の躯体壁の内側に、車輌運搬ケージの昇降用ガイドレールとなるリフト固定ガイドを取り付けたことを要旨とするものである。
【0013】
請求項1記載の本発明によれば、廃棄物運搬車輌は、地表部に設けたクレーンを備えた車輌出入り用枠部で、クレーンに吊り下げた車輌運搬ケージに入り、クレーンレールを移動して、地下貯留構造物躯体の内方に移動し、地下貯留構造物の躯体壁の内側に取り付けたリフト固定ガイドのガイドレールを昇降用ガイドとして該車輌運搬ケージにより安全に降下することができる。
【0014】
そして廃棄物を降ろした運搬車輌は、同様に車輌運搬ケージに入り、クレーンに吊り下げられ、地表部に戻る。
【0015】
このように、車輌昇降リフト導入により、長大な斜路スペースが省かれ、貯留容量が増すので、同一容量の地下貯留施設を建設する場合、従来方式に比べ、次ぎの各項目について、縮減や改良が可能となる。
(1) 掘削・埋戻しの土砂扱い量が縮減
(2) コンクリート・鉄筋などの建設資材が縮減
(3) 用地面積が縮減
(4) 車輌の斜路走行に伴う危険性回避
(5) 廃棄物(貯留物)を地表より投入(投下)する方法に比すと、廃棄物を作業機械により転圧・締固めることができ、結果、より多くの廃棄物貯留が可能となる。
(6) 貯留(埋立)終了後、跡地利用する場合、転圧・締固め効果により、跡地利用の障害となる地表面の沈下および不同沈下が抑制される。
【0016】
請求項2記載の本発明は、車輌運搬ケージ側部には、リフト固定ガイドに係合する係合部材を設けたことを要旨とするものである。
【0017】
請求項2記載の本発明によれば、車輌運搬ケージとリフト固定ガイドとは、車輌運搬ケージ側部に設けた係合部材を介して連結し、安定して昇降されるものとなる。
【0018】
請求項3記載の本発明は、リフト固定ガイドは、地下貯留構造物内の廃棄物埋立レベルに応じて下から順次撤去可能な組立構造であることを要旨とするものである。
【0019】
請求項3記載の本発明によれば、廃棄処分作業の進捗(埋立地盤面の上昇)に応じて、埋め立ての支障となったリフト固定ガイドは順次撤去し、このリフト固定ガイドあった空間にも廃棄物を置くことができる。
【0020】
請求項4記載の本発明は、車輌運搬ケージは、下部に昇降架台を形成し、これに連続するものとして、車輌乗り入れ用のスロープを着脱可能に設けたことを要旨とするものである。
【0021】
請求項4記載の本発明によれば、内側底面に昇降架台が着いたならば、貯留物の不陸、傾斜に応じて昇降架台およびスロープで段差を解消してダンプトラックの出し入れを行うことができる。また、昇降架台に対してスロープを着脱可能としたので、スロープ部分の盛替え手順は、埋立地盤の上昇に伴い、スロープを脇に移動させておき、埋立地盤を整地してから連結することができる。これにより、廃棄物の埋立レベルとスロープ連絡部の埋立レベルとは異なって上昇させていくことが可能である。
【0022】
請求項5記載の本発明は、地下貯留構造物は掘り込み式・鉄筋コンクリート造りの開放型ないしは閉鎖型の処分場であり、貯留物が廃棄物であり、底面からのレベルが廃棄物の埋立レベルであることを要旨とするものである。
【0023】
請求項5記載の本発明によれば、底面からのレベルが廃棄物の埋立レベルであるので、特に、本発明を有効に活用できる。
【発明の効果】
【0024】
以上述べたように本発明の地下貯留施設の連絡通路は、掘り込み式・鉄筋コンクリート造の廃棄物処分場
である地下貯留施設において、処分場を建設する場合に、処分場内空寸法を従来の形式に比して縮減でき、同一容量の処分場を建設する場合に、掘削や埋め戻しの土砂扱い量・コンクリート・鉄筋などの建設資材の量を、従来形式に比して縮減でき、また、地下貯留施設の使用対象となる用地面積も縮減されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の地下貯留施設の連絡通路の1実施形態を示す側面図、
図2は同上正面図、
図3は同上平面図である。
【0026】
本実施形態は、地下貯留構造物は掘り込み式・鉄筋コンクリート造りの開放型ないしは閉鎖型の処分場であり、貯留物が廃棄物であり、底面からのレベルが廃棄物の埋立レベルである場合で、図中1は、鉄筋コンクリート壁による外周側壁1を構築し、その内側を廃棄処分される廃棄物で埋め立てる。
【0027】
本発明は、廃棄物処分場
である地下貯留構造物内への地表部からの連絡通路として、地下貯留構造物の躯体である外周側壁1を構築後に設ける車輌の昇降設備であって、躯体である外周側壁1の外方である地表部6にクレーン7を備えた車輌出入り用枠部8を設けた。該車輌出入り用枠部8は鉄骨による柱支柱や梁材で枠組む。
【0028】
この車輌出入り用枠部8から躯体である外周側壁1の内方の上方にかけてクレーンレール9を張出架設し、前記クレーン7は該クレーンレール9に走行自在に載置される。
【0029】
クレーン7はクラブトローリー形式のもので、モータ7aとワイヤ巻取ドラム7bを台車に載置してなる。
【0030】
図中10はクレーンレール9から吊下されるクレーンワイヤーであるが、これで車輌運搬ケージ11を吊り下げてクレーンレール9を移動可能とした。これにより車輌運搬ケージ11はクレーン7でクレーンレール9を移動し、地表部6から外周側壁1の内方へと移動する。
【0031】
外周側壁1の内側に、前記車輌運搬ケージ11の昇降用ガイドレール12aとなるリフト固定ガイド12を平行に2条間隔を存して取り付けた。(
図4、
図5参照)このリフト固定ガイド12は、横支持材12bを上下に間隔を存して段状に配設し、これで垂直部材である昇降用ガイドレール12aを支承するものであり、下から適宜、分解除去、もしくは切断により撤去できるものにする。地下貯留構造物内の廃棄物埋立レベルに応じて下から順次撤去可能な組立構造である。
【0032】
車輌運搬ケージ11の側部には、リフト固定ガイド12に係合する係合部材13を設ける。この係合部材13は例えば前記昇降用ガイドレール12aに係合するガイドローラであり、昇降用ガイドレール12aの上端から脱着できる。
【0033】
車輌運搬ケージ11は、下部に昇降架台14を形成し、前後に左右に観音開きに開く電動式のゲート15を有する。
【0034】
また、このゲート15の外側で、車輌運搬ケージ11の下部昇降架台14に連続するものとして、車輌乗り入れ用のスロープ19を着脱可能に設けた。
【0035】
スロープ19は例えば鋼製のトラス構造であるとし、適宜分割して再度連結できるようにするか、一体化したまま跳ね橋のように吊り上げられるようにして、昇降架台14とは5cm程度の遊びを持たせて接続する。
【0036】
なお、スロープ19はそれ自体を分割できるようにしておくこともできるが、クレーン機能付きバックホウを導入しておいて、一括で吊れる重量であるとすれば、特に分割する必要はない。
【0037】
次に使用法について説明する。前記のように、地下貯留構造物の躯体である外周側壁1を構築後に、リフトを組立・架設するものであり、廃棄物を搭載したダンプトラック16は、地表部6で車輌出入り用枠部8内に位置する車輌運搬ケージ11に乗り込む。なお、この乗り込み位置では、昇降架台14が収まる凹所(ピット)17が形成されているので、車輌運搬ケージ11には地表部6から同レベルですむ。
【0038】
車輌運搬ケージ11の電動式のゲート15を閉じ、クレーン7で車輌運搬ケージ11を外周側壁1の内方へと移動する。
【0039】
そして、外周側壁1の内側に電動式のゲート15をリフト固定ガイド12にガイドさせて降下させ、内側底面18に昇降架台14が着いたなら、貯留物の不陸、傾斜に応じて昇降架台14およびスロープ19で段差を解消しておき、電動式のゲート15を開いて、ダンプトラック16を降ろす。
【0040】
廃棄物を降ろしたダンプトラック16は再び、車輌運搬ケージ11で地表部6に戻る。
【0041】
廃棄物の積層による貯留・埋立作業の進捗(埋立面の上昇)に応じて、埋立の支障となるリフト固定ガイド12は下から順次撤去し、この空間にも埋立が可能である。リフト固定ガイド12の解体したガイド鋼材は有価物として処分でき、再生・再利用が可能である。
【0042】
スロープ19の(設置替え)の頻度は、1回/1ヶ月以上、というような頻度になるが、スロープ19の部分の盛替え手順は、埋立地盤の上昇に伴い、スロープ19を脇に移動させておき、埋立地盤を整地してから連結する。
【0043】
スロープ19は昇降架台14の左右に、2基準備するが、1基あれば稼動可能である。ただし、片側ずつの盛替えを行うことを予定しているので、1基の場合は盛替え頻度は低下する。
【0044】
作業の慣れまたは作業の都合によっては、このスロープ19のほかに廃棄物を利用して斜路を設ければ、頻度はさらに低下する。(盛替えが面倒な作業であった場合。)
【0045】
スロープ19を設置する下地は、ブルドーザ・バックホウを使用して、整地する。前記のごとく、スロープ19と昇降架台14の間は5cm程度の遊びが必要で、スロープ19は、鋼製にて、ガタツキが生じれば、その都度補正する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の地下貯留施設の連絡通路の1実施形態を示す側面図である。
【
図2】本発明の地下貯留施設の連絡通路の1実施形態を示す正面図である。
【
図3】本発明の地下貯留施設の連絡通路の1実施形態を示す平面図である。
【
図4】本発明の地下貯留施設の連絡通路の1実施形態を示す車輌運搬ケージ吊り降ろし前の平面図である。
【
図5】本発明の地下貯留施設の連絡通路の1実施形態を示す車輌運搬ケージ吊り降ろし中の平面図である。
【
図6】本発明の地下貯留施設の連絡通路の1実施形態を示す車輌運搬ケージ着地後の側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1…外周側壁 2…連絡通路
3…コンクリート壁 4…砕石
5…底面 6…地表部
7…クレーン 7a…モータ
7b…ワイヤ巻取ドラム 8…車輌出入り用枠部
9…クレーンレール 10…クレーンワイヤー
11…車輌運搬ケージ 12…リフト固定ガイド
12a…昇降用ガイドレール 12b…横支持材
13…係合部材 14…昇降架台
15…電動式のゲート 16…ダンプトラック
17…凹所(ピット) 18…内側底面
19…スロープ