【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの目標は、所定波長λ
detによって支援されるナノインプリントリソグラフィー用のモールドによって達成され、このモールドは第1材料製の層を備え、この第1材料製の層は、その第1面上に第2材料製の層を含み、第1面と反対側の面上に第3材料製の層を含み、第2材料製の層は剛体であり、この層内にマイクロメートルオーダー又はナノメートルオーダーのパターンを有するn個の構造ゾーンが形成され、nは1以上の整数であり、上記第3材料製の層は剛体であり、この層内に、上記n個の構造ゾーンに対向するn個のくぼみが形成され、これらのn個のくぼみは第4材料を充填され、これによりn個の部分領域が形成され、
第3材料製の層は、所定波長λ
detの光に対するこの層の透過率が、上記n個の部分領域のいずれの、所定波長λ
detの光に対する透過率よりも低いような厚さ及び組成を有し、
第1、第2、及び第3材料製の層の所定波長λ
detにおける透過率は、第1材料の層、第2材料の層、及び第3材料の層を通る所定波長λ
detの光の透過率が、上記n個の部分領域の任意の1つ、第1材料製の層、及び第2材料製の層を通るその所定波長λ
detの光の透過率よりも小さいような透過率である。
【0016】
第2材料製の層が剛体であることにより、ナノインプリントモールドの使用中にパターンの幾何学的形状を維持することができる。
【0017】
以上と以下において、面又は層に適用する「マイクロメートルオーダー又はナノメートルオーダーのパターンで構造化された」という表現は、当該面又は層がパターンを備え、このパターンの長さ、幅、及び直径から選択した少なくとも1つの寸法が、マイクロメートルオーダーのパターンの場合は1000マイクロメートル未満かつ1マイクロメートルより大きく、ナノメートルオーダーのパターンの場合は1ナノメートル以上かつ1000ナノメートル未満であることを意味する。
【0018】
本発明では、パターンをレリーフにすることができるし、又はくぼみにする(空洞にする)こともできる。パターンは、上記n個のゾーン内に一様に分散させることができる。パターン間の距離は、同じゾーン内では、等間隔であることが好ましい。パターンは同一であることが有利である(パターンは同じ寸法と同じ形状を有する)。n個の構造ゾーンは同一であることが有利である。
【0019】
以上と以下において、層に適用する「剛体」という用語は、その層が、所定圧力がその層の面上にかかるときに決定される境界値未満の曲げ変形(たわみ)を有することを意味する。
【0020】
同様に、以上と以下において、層に適用する「フレキシブル」という用語は、その層が、所定圧力がその層の面上にかかるときに決定される境界値以上の曲げ変形を有することを意味する。
【0021】
境界値を決定するためには、いくつかの単純な計算を行う必要がある。例えば、以下の特性を有するシリコン及び石英のモールドの場合を考える:
E
Si=130GPa E
SiO2=71.7GPa
νSi=0.28
νSiO2=0.16
h
Si=750μm h
SiO2=6mm
ここで、Eはヤング係数、
νはポアソン係数、そしてhは対象とする層の高さである。
【0022】
試片の曲げに対する剛性は、以下の公式により与えられる:
【数1】
【0023】
厚さhを有する辺長aの正方形板においては、(曲げにより)発生する最大のたわみwは、およそ以下の値である:
【数2】
【0024】
したがって、上の例でモールドに均一にかかる圧力が2・10
5Paに等しく、かつ板の辺長aが20・10
−3mの値を有する場合は、以下のようになる:
w
Si≒500μm
w
SiO2≒25μm
【0025】
これらの計算を通して、個別に考慮した各層のたわみが得られる。
【0026】
層がフレキシブルまたは剛体であると見なすことを可能にする境界値を得るためには、モールドを用いてインプリントしたい基板のたわみ計算値と表面粗さ値(又はトポグラフィー)とを比較することが必要である。実際に、インプリントを行う際は、モールドとインプリントされる基板とが密接に接触(「均等な接触」とも称する)していることが必要である。よって、モールドの面全体がインプリントされる基板の面全体と直接接触していることが必要である。
【0027】
例えば、直径200mmのシリコン板により形成された基板は、50μmの粗さを有する(シリコン板の供給業者により与えられたデータである)。よって、モールドの層が、製造者によって与えられたインプリントされる基板の粗さ値、すなわち50μm以上のたわみを有する場合、この層は、インプリントしたい基板と比較してフレキシブルな材料製であると見なされる。一方、モールドの層のたわみ値がインプリントされる基板の粗さ値より小さい場合、その層は剛体材料製であると見なされる。
【0028】
よって、この例では、シリコン層(w
Si≒500μm)はフレキシブルであると見なされ、石英層(w
SiO2≒25μm)は剛体であると見なされる。
【0029】
さらに、材料の透過率は、その材料が受ける入射エネルギーに対するその材料を透過するエネルギーの比である。所定物質については、厚さと波長が決まれば、透過率は定数である。
【0030】
第3材料の層の透過率は0.2以下であり、上記n個の部分領域の各々の透過率は0.65以上であることが有利である。第3材料の層の透過率は0.1未満であり、上記n個の部分領域の各々の透過率は0.85より大きいことが好ましい。
【0031】
第1、第2、及び第3材料の層を通る所定波長λ
detの光の透過率は、20%以下であることが有利であり、10%未満であることが好ましい。上記n個の部分領域の任意の1つと第1及び第2の材料の層とを通る所定波長λ
detの光の透過率は、65%以上であることが有利であり、85%より大きいことが好ましい。
【0032】
第3材料製の層の透過率は、上記n個の部分領域の材料の透過率の値の2/3倍以下の値を有することが好ましい。光リソグラフィーでは、コントラストCが20%以上である場合、現代の樹脂によれば、露光されるゾーンを露光されないゾーンから区別することができると考えられる。コントラストは次の公式で表される:
【数3】
ここで、I
maxは、所定波長における透過率が最大(T
max)であるゾーン内で受ける光強度であり、I
minは、所定波長における透過率が最小(T
min)であるゾーン内で受ける光強度である。
【0033】
透過率は、入射強度(初期強度I
0)に対する材料を透過する光の強度の比であることから、以下の式が得られる:
I
max=T
max×I
o
I
min=T
min×I
o
及び
【数4】
【0034】
最終的に、20%のコントラストに対して、T
min≒0.66T
max、すなわち約2/3が得られる。
【0035】
上記n個のくぼみは、第3材料製の層の厚さに等しい深さを有することが有利である。
【0036】
第1の代案によれば、第1材料は剛体材料であり、第2材料の層は上記n個の構造ゾーンがあるところのみに存在する。この場合、第1材料、第2材料、及び場合によっては第3材料が同一である。
【0037】
上記n個の構造ゾーンは、第2材料の層の厚さ全体に渡って形成されていることが有利である。
【0038】
第1及び第2材料の層は、150nm以下の厚さを有することが有利である。
【0039】
第2の代案によれば、第1材料はフレキシブル材料であり、第2材料の層はn個の構造ゾーンの外側においてゼロではない厚さを有する。
【0040】
上記n個の部分領域の第4材料は、フレキシブル材料であることが有利である。
【0041】
所定波長λ
detは、UV波長範囲内にあることが有利であり、193nm〜400nmであることが好ましい。例えば、モールドを、193nm〜400nmの波長におけるUV支援ナノインプリンティングを実行するために用いようとする場合、第2材料の層はシリコンの層とすることができる。これにより、シリコンのリソグラフィー/ナノメートルオーダーのエッチングに習熟していれば、このような層内でナノメートルオーダーのパターンに従った構造化を行うことは容易である。
【0042】
第1材料製の層は、シリカ又は窒化シリコン製であることが有利である。第2材料製の層はシリカ又は窒化シリコン製であることが有利である。第3材料の層はシリコン製であることが有利である。上記第4材料のn個の部分領域はポリジメチルシロキサン(PDMS)製であることが有利である。
【0043】
本発明は、また、所定波長λ
detによって支援されるナノインプリントリソグラフィー用の、上記に定義したモールドを製造する第1の方法に関する。この第1の方法は以下のステップを備える:
a)初期基板を用意するステップ;
b)その初期基板の1面(前面と称する)を、モールドの第2材料の層内に得ようとする上記n個の構造ゾーンのネガティブインプリントを表すパターンに従って構造化するステップ;
c)初期基板の前面上に3層から成る積層を堆積させるステップであって、第1層は、構造化するステップb)にて形成したレリーフを覆うとともにモールドの第2材料の層を形成し、この第1層と初期基板は互いに異なる材料製であり、第2層は第1層を覆うとともにモールドの第1材料の層を形成し、第3層は第2層を覆うとともにモールドの第3材料の層を形成するステップ;
d)第3層を構造化してn個のくぼみを得るステップであって、これらn個のくぼみは上記n個の構造ゾーンに対向するステップ;
e)第4材料の層を第3層の上に堆積させて上記n個のくぼみを覆うことによって、モールドのn個の部分領域を形成するステップ;
f)初期基板(13)を除去するステップ。
第3層は、所定波長λ
detの光に対する透過率が、上記n個の部分領域のいずれの、所定波長λ
detの光に対する透過率よりも小さいような厚さと組成を有し、
所定波長λ
detにおける第1、第2、及び第3層の透過率は、第1層、第2層、及び第3層を通る所定波長λ
detの光の透過率が、上記n個の部分領域の任意の1つ、第1層、及び第2層を通るその所定波長λ
detの光の透過率より小さいような透過率である。
【0044】
第3層の透過率は、0.2以下であることが有利であり、0.1未満であることが好ましい。そして、上記n個の部分領域の各々の透過率は、0.65以上であることが有利であり、0.85より大きいことが好ましい。
【0045】
第1、第2、及び第3層を通る所定波長λ
detの光の透過率は、20%以下であることが有利である。そして、上記n個の部分領域の任意の1つ、第1層、及び第2層を通るその所定波長λ
detの光の透過率は65%以上であることが有利である。
【0046】
ステップb)は以下のステップを備えることが有利である:
初期基板の1面上に感光性樹脂の層を堆積させるステップ;
第1層内に得ようとするn個の構造ゾーンのネガティブインプリントを表す絶縁パターンに従って、感光樹脂の層を絶縁するステップ;
絶縁した樹脂の層をエッチングするステップ;
上記初期基板の1面における、樹脂の層で覆われていない部分領域をエッチングするステップ。
【0047】
ステップd)は以下のステップを備えることが有利である:
第3層の面上に感光樹脂の層を堆積させるステップ;
第3層内に得ようとするn個のくぼみのポジティブインプリントを表す絶縁パターンに従って、感光樹脂の層を絶縁するステップ;
絶縁した樹脂の層をエッチングするステップ;
上記第3層の面における、樹脂の層で覆われていない部分領域をエッチングするステップ。
【0048】
ステップe)は、初期基板の選択的エッチングを行うことにより、又は初期基板の背面を機械加工し、その後初期基板の選択的エッチングを行うことにより、実行できる。
【0049】
本発明は、また、所定波長λ
detによって支援されるナノインプリントリソグラフィー用の上述したモールドを製造する第2の方法に関連する。この第2の方法は、以下のステップを備える:
a)3層から成る積層を用意するステップであって、第1層はモールドの第2材料の層を形成し、第2層は第1層を覆うとともにモールドの第1材料の層を形成し、第3層は第2層を覆うとともにモールドの第3材料の層を形成するステップ;
b)積層の第1層を構造化して上記n個の構造ゾーンを得るステップ;
c)積層の第3層内にn個のくぼみを形成するステップであって、これらn個のくぼみはn個の構造ゾーンに対向するステップ;
d)第3層上に第4材料の層を堆積させて上記n個のくぼみを覆うことによって、モールドの上記n個の部分領域を形成するステップ。
第3の層は、所定波長λ
detの光に対するこの層の透過率が、上記n個の部分領域のいずれの、所定波長λ
detの光に対する透過率よりも小さいような厚さと組成を有し、
所定波長λ
detにおける第1、第2、及び第3層の透過率は、第1層、第2層、及び第3の層を通る所定波長λ
detの光の透過率が、n個の部分領域(4)の任意の1つ、第1層、及び第2層を通るその所定波長λ
detの光の透過率より小さいような透過率である。
【0050】
第3層の透過率は、0.2以下であることが有利であり、0.1より小さいことが好ましい。上記n個の部分領域の各々の透過率は、0.65以上であることが有利であり、0.85より大きいことが好ましい。
【0051】
第1、第2、及び第3層を通る所定波長λ
detの光の透過率は、20%以下であることが有利である。上記n個の部分領域の任意の1つ、第1層、及び第2層を通るその所定波長λ
detの光の透過率は65%以上であることが有利である。
【0052】
ステップb)は以下のステップを備えることが有利である:
積層スタックの第1層上に感光樹脂の層を堆積させるステップ;
得ようとする上記n個の構造ゾーンに従って構成されたマイクロメートルオーダー又はナノメートルオーダーのパターンを表す絶縁パターンに従って、感光樹脂の層を絶縁するステップ;
絶縁した樹脂の層をエッチングするステップ;
上記第1層の面における、樹脂の層により覆われていない部分領域をエッチングするステップ。
【0053】
ステップc)は以下のステップを備えることが有利である:
積層の第3層上に感光樹脂の層を堆積させるステップ;
得ようとするn個のくぼみを表す絶縁パターンを用いて感光樹脂の層を絶縁するステップ;
絶縁した樹脂の層をエッチングするステップ;
第3層の面における、樹脂の層により覆われていない部分領域をエッチングするステップ。
【0054】
上記の第1及び第2の方法において、所定波長はUV波長の範囲内の波長であることが有利であり、193nm〜400nmの波長であることが好ましい。
【0055】
同様に、第1及び第2の方法における上記n個のくぼみは、第3層の厚さに等しい深さを有することが有利である。
【0056】
本発明は、以下の説明を読むことにより、さらに良く理解され、他の有利な点や特徴が明らかになる。以下の説明は、非限定的な例として提供し、次の図面を伴う。