【実施例】
【0057】
次に、本発明を実施例および比較例を挙げて、具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
本発明における、評価液の作製、作製した評価液中のラマン分光法におけるペルオキソ二硫酸イオン、ペルオキソ一硫酸イオンおよび過酸化水素の濃度測定、並びに、吸光度法ないし定電位法による熱処理後の評価液中の酸化性物質の濃度測定は、以下に従い行った。また、下記の表1,3,5,7に、各実施例および比較例における電解、熱処理および過酸化水素検出の条件をまとめて示す。
【0059】
<評価液の作製(硫酸溶液)>
1lの評価液を作製するために必要な98%硫酸の重量を、下記式(4)に基づき算出し、1lメスフラスコに、98%硫酸(H
2SO
4:関東化学(株)製)を採取して、超純水を加えて全1lの評価液とした。
(式中、A(g)は1lの評価液の作製に必要な98%硫酸の重量を示す)
【0060】
<評価液の作製(電解硫酸溶液)>
電解面積1.000dm
2の導電性ダイヤモンド電極を陽極および陰極に用いた隔膜付き電解セルを用いて、陽極液および陰極液をそれぞれ循環しながら硫酸を電解し、以下の条件に従い、電解硫酸溶液の製造を行った。評価液は、上記式(4)に基づき1l調製し、そのうち300mlを陽極液、残りの300mlを陰極液として使用した。電解時間は、酸化性物質の総濃度に合わせて調整した。
・セル電流:100A
・電流密度:100A/dm
2
・陽極液量:300ml
・液温度:28℃
・陽極液流量:1l/min
・陰極液流量:1l/min
・陽極液:硫酸溶液
・陰極液:硫酸溶液
・隔膜:(住友電工ファインポリマー(株)製のポアフロン(登録商標))
【0061】
<評価液の作製(ペルオキソ二硫酸アンモニウム硫酸溶液)>
1lの評価液を作製するために必要な98%硫酸の重量を上記式(4)に基づき算出し、ペルオキソ二硫酸アンモニウムの重量を下記式(5)に基づき算出して、1lメスフラスコに、98%硫酸(関東化学(株)製)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム((NH
4)
2S
2O
4:和光純薬工業(株)製)および超純水を加えて、全1lの評価液とした。なお、評価液の作製は、評価液の温度が上昇しないように、メスフラスコの底を冷却水で冷やしながら行った。
(式中、B(g)は1lの評価液を調整するために必要なペルオキソ二硫酸アンモニウムの重量を示す)
【0062】
<評価液の作製(ペルオキソ一硫酸塩硫酸溶液)>
1lの評価液を作製するために必要な98%硫酸の重量を上記式(4)に基づき算出し、オキソン(登録商標)一過硫酸塩化合物の重量を下記式(6)に基づき算出して、1lメスフラスコに、98%硫酸(関東化学(株)製)、オキソン(登録商標)一過硫酸塩化合物(2KHSO
5・KHSO
4・K
2SO
4:和光純薬工業(株)製)および超純水を加えて、全1lの評価液とした。電解液の作製は、電解液の温度が上昇しないように、メスフラスコを冷却水で冷やしながら行った。
(式中、C(g)は1lの電解液を作製するために必要なオキソン(登録商標)一過硫酸塩の重量を示す)
【0063】
<評価液の作製(過酸化水素硫酸溶液)>
1lの評価液を作製するために必要な98%硫酸の重量を上記式(4)に基づき算出し、35%過酸化水素の重量を下記式(7)に基づき算出して、1lメスフラスコに、98%硫酸(関東化学(株)製)、35%過酸化水素(H
2O
2:和光純薬工業(株)製)および超純水を加えて、全1lの電解液とした。電解液の作製は、電解液の温度が上昇しないように、メスフラスコを冷却水で冷やしながら行った。
(式中、D(g)は1lの電解液を作製するために必要な過酸化水素の重量を示す)
【0064】
<評価液中の酸濃度評価>
100mlメスフラスコ内に評価液を0.4ml加え、100mlとなるよう超純水で調整した。ビーカーに、調整した液5mlおよびフェノールフタレイン1滴を加え、和光純薬工業(株)製の0.1M NaOHにて、着色するまで滴定を行った。酸濃度は、下記式(8)に基づき算出した。
【0065】
<ラマン分光法における評価液中のペルオキソ二硫酸イオン、ペルオキソ一硫酸イオンおよび過酸化水素の濃度測定>
作製した評価液中のペルオキソ二硫酸イオン、ペルオキソ一硫酸イオン、過酸化水素の濃度測定を、ラマン分光法を用いて行った。測定条件および測定方法は以下に示すとおりである。濃度が既知のペルオキソ二硫酸アンモニウム溶液、ペルオキソ一硫酸溶液および過酸化水素溶液を、上記(5),(6),(7)式に基づき作製・測定し、仕込みの酸化性物質総濃度とラマン分光結果から検量線を作成して、濃度換算に利用した。
・測定装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製ラマン分光光度計
・型式:AlMEGA XR
・レーザー光:532nm
・露光時間:2.00秒
・露光回数:20
・バックグラウンド露光回数:20
・グレーティング:672lines/mm
・測定幅:700〜1500cm
−1
・分光器アパーチャ:25μmスリット
・マクロ試験室にて低分解能測定
・スペクトル補正:全範囲の強度から、710cm
−1と1140cm
−1の強度を直線で結んだベースライン値を差し引いた。
・ペルオキソ二硫酸濃度測定には832cm
−1のときの強度を利用した。
・ペルオキソ一硫酸濃度測定には770cm
−1のときの強度を利用した。
・過酸化水素濃度測定には872cm
−1のときの強度を利用した。
【0066】
<吸光度法による熱処理後の評価液中の酸化性物質の総濃度測定>
吸光度法による熱処理後の評価液中の酸化性物質の総濃度測定は、以下に示す条件および方法に従い行った。評価液(ペルオキソ二硫酸アンモニウム硫酸溶液)の作製方法に基づき、酸化性物質の総濃度の異なる、酸濃度14.24質量%のペルオキソ二硫酸アンモニウム硫酸溶液を作製し、105℃、20分の熱処理を施した後、測定波長毎に測定を行い、仕込みの酸化性物質総濃度と吸光度測定結果から検量線を作成して、濃度換算に利用した。なお、ブランク測定には超純水を利用した。
・測定装置:日本分光(株)製 紫外可視分光光度計
・型式:V−650
・測定波長:190.0,253.7,300.0nm
・測光モード :Abs
・レスポンス :Medium
・繰り返し回数:3回
・セル長:0.05mm(波長190.0nm),0.2mm(波長253.7、300.0nm)
【0067】
<定電位法による熱処理後の評価液中の酸化性物質の総濃度測定>
定電位法による熱処理後の評価液中の酸化性物質の総濃度測定は、100mlガラスビーカーセルに50ml評価液を採取して、以下の条件にて行った。評価液は、アズワン(株)製のパソリナミニスターラーCT−1Aを用いて、500rpmで攪拌した。なお、評価液(ペルオキソ二硫酸アンモニウム硫酸溶液)の作製方法に基づき、酸化性物質の総濃度の異なる、酸濃度14.24質量%のペルオキソ二硫酸アンモニウム硫酸溶液を作製して、105℃、20分の熱処理を施した後、電位毎に電流値を測定し、仕込みの酸化性物質総濃度と電流値から検量線を作成して、濃度換算に利用した。
・作用極:各作用極材料
・作用極面積:0.03mm
2
・対極:白金メッシュ
・参照極:Ag/AgCl(飽和KCl内部液)
・測定装置:北斗電工(株)製 HABF−5001
・サンプリング周期:50ms
【0068】
<再現性評価>
上記吸光度法および定電位法における熱処理後の評価液中の酸化性物質の総濃度測定を3回繰り返して、再現性を確認した。その結果につき、以下の式に基づく指標を示す。
(吸光度もしくは電流値の最小値−最大値)/(吸光度もしくは電流値の平均値)×100(%)
・3%以内・・・◎
・3%を超え5%以内・・・○
・5%を超え10%以内・・・△
・10%を超える・・・×
【0069】
<実施例1>
1lメスフラスコに、98%硫酸(関東化学(株)製)を上記式(4)に基づき712g採取し、超純水を加えて全1lに希釈し、硫酸濃度7.12mol/lを含む電解液を作製した。この電解液のうち300mlを陽極液、残り300mlを陰極液として使用し、評価液(電解硫酸溶液)の作製方法に基づき、評価液を作製した。
【0070】
作製した評価液を、ラマン分光法による評価液中のペルオキソ二硫酸イオン、ペルオキソ一硫酸イオンおよび過酸化水素の濃度測定方法に基づき評価したところ、ペルオキソ二硫酸濃度は0.23mol/l、ペルオキソ一硫酸濃度は0.67mol/l、過酸化水素濃度は0.10mol/lであり、評価液中の酸濃度評価方法に基づき測定したところ、酸濃度は14.24mol/lであった。
【0071】
この評価液を、作製から10分後に、周囲を熱処理手段としてのラバーヒーターで覆った収納部としての容量20mlのバイアル瓶に10ml採取して、105℃で20分間熱処理した。その後、ラマン分光法による評価液中の過酸化水素濃度および酸化性物質総濃度の測定方法、および、0.2mm長の測定セルを用いた吸光度法による酸化性物質総濃度の評価方法に基づき、評価を行った。その結果を、下記の表2中に示す。
【0072】
ここで、熱処理前後の酸化性物質濃度変化は、10%以内であれば、測定精度の観点から、良好といえる。また、熱処理後の過酸化水素の割合は、測定精度の観点から、60%以上であれば良好といえ、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上である。さらに、(総濃度−熱処理前の濃度)/熱処理前の総濃度変化は、測定精度の観点から、10%以内であれば良好といえ、より好ましくは5%以内である。さらにまた、再現性については、測定精度の観点から、×の場合は不良と判定する。
【0073】
<実施例2,3>
実施例2,3として、電解硫酸溶液中の酸化性物質総濃度、および、評価液作製から測定開始までの時間を変えることにより、評価液中の酸化性物質総濃度および酸化性物質成分の割合を変えた液を評価液として用いた以外は実施例1と同様にして、評価液中の酸化性物質の総濃度を測定した。その結果を、下記の表2中に示す。
【0074】
<実施例4>
評価液として、1lメスフラスコに、98%硫酸(関東化学(株)製)を上記式(4)に基づき712g採取し、上記式(5)に基づきペルオキソ二硫酸アンモニウム((NH
4)
2S
2O
4:和光純薬工業(株)製)を採取して、超純水を加えて全1lに希釈し、硫酸濃度7.12mol/lおよびペルオキソ二硫酸濃度0.3mol/lを含む液を使用した以外は実施例1と同様にして、評価液中の酸化性物質の総濃度を測定した。その結果を、下記の表2中に示す。
【0075】
<実施例5>
上記式(4)に基づき硫酸濃度3.00mol/lを含む電解液を作製し、評価液中の酸濃度・熱処理温度を表中に示すように変えた以外は実施例1と同様にして、評価液中の酸化性物質の総濃度を測定した。その結果を、下記の表2中に示す。
【0076】
<実施例6〜8>
上記式(4)に基づき硫酸濃度3.50,8.11,9.17mol/lを含む電解液を作製し、評価液中の酸濃度を表中に示すように変えた以外は実施例1と同様にして、評価液中の酸化性物質の総濃度を測定した。その結果を、下記の表2中に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
実施例1において、熱処理後の評価液中の酸化性物質総濃度に占める過酸化水素の割合は、90%と非常に高いものであった。また、熱処理前後の評価液中の酸化性物質総濃度変化は1%と低く、熱処理による自己分解で酸化性物質総濃度が減少していないことが確認できた。さらに、吸光度法で求めた吸光度は0.350、それから算出した濃度は1.01mol/lであった。酸化性物質総濃度は、吸光度法で得られた結果と熱処理前に行ったラマン分光法で得られた結果との差が小さく、測定精度が高いことがわかった。再現性評価については、測定2回目が0.351、測定3回目が0.350と、再現性の高いものであった。
【0080】
また、実施例1〜4より、酸化性物質の成分・各成分濃度が異なる評価であっても、本発明の酸化性物質の総濃度測定方法を用いることで、酸化性物質の総濃度を精度良く測定でき、その再現性も良好であることがわかった。
【0081】
実施例5より、評価液中の酸濃度が6.00mol/lでは、熱処理前後の酸化性物質総の濃度変化および再現性は良好であるものの、熱処理後の過酸化水素割合が36%、酸化性物質総濃度は、吸光度法で得られた結果と熱処理前に行ったラマン分光法で得られた結果との差が−13%で、測定精度が低めであった。これは、熱処理が不十分で、上記式(1),(2)の反応が十分進行しなかったためであると考えられる。
【0082】
実施例7,8より、評価液中の酸濃度が16.22,18.34mol/lと高くなると、再現性が良好で、酸化性物質総濃度についても吸光度法で得られた結果と熱処理前に行ったラマン分光法で得られた結果との差が小さく、測定精度が高いものの、実施例1と比べて熱処理前後の酸化性物質濃度変化が大きくなることがわかった。これは、酸濃度が高いほど、上記式(2)により生成した過酸化水素が、上記式(3)に基づく自己分解反応によって即座に消滅してしまうためであると考えられる。
以上から、測定精度を高めるためには、評価液中の酸濃度に最適値が存在することがわかった。
【0083】
<実施例9,10>
上記式(4)に基づき硫酸濃度9.17mol/lを含む電解液を作製して、評価液中の酸濃度および熱処理温度を表中に示すように変えた以外は実施例1と同様にして、評価液中の酸化性物質の総濃度を測定した。その結果を、下記の表4中に示す。
【0084】
<実施例11,12>
評価液中の熱処理温度を表中に示すように変えた以外は実施例1と同様にして、評価液中の酸化性物質総濃度を測定した。その結果を、下記の表4中に示す。
【0085】
<実施例13〜15>
上記式(4)に基づき硫酸濃度9.17mol/lを含む電解液を作製し、評価液中の酸濃度および熱処理時間を表中に示すように変えた以外は実施例1と同様にして、評価液中の酸化性物質総濃度を測定した。その結果を、下記の表4中に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
【表4】
【0088】
実施例9,10より、酸濃度が18.34mol/lの評価液の場合、熱処理温度が高くなると、熱処理前後の酸化性物質濃度変化が大きいものとなった。また、これにより、熱処理温度124℃において、酸化性物質の総濃度は、吸光度法で得られた結果と熱処理前に行ったラマン分光法で得られた結果との差が大きいものとなった。
【0089】
実施例11,12より、酸濃度が14.24mol/lの評価液の場合、熱処理温度が81℃では、熱処理後の過酸化水素割合が40%と低くなることがわかった。これは、熱処理が不十分で(1)、(2)式の反応が十分進行しなかったためであると考えられる。これによって酸化性物質総濃度は吸光度法で得られた結果と熱処理前に行ったラマン分光法で得られた結果の差が大きいものとなった。
【0090】
また、実施例9〜12の評価の再現性はいずれも高いものとなった。
以上から、熱処理温度は酸濃度と密接な関係があり、最適値が存在することが明らかになった。
【0091】
実施例13より、熱処理時間が1分では、熱処理後の過酸化水素割合が60%と低くなることがわかった。これは、熱処理が不十分で、上記式(1),(2)の反応が十分進行しなかったためであると考えられる。これにより、酸化性物質総濃度については、吸光度法で得られた結果と熱処理前に行ったラマン分光法で得られた結果との差が大きいものとなった。
【0092】
実施例14,15より、熱処理時間が長くなると、再現性は高いものの、熱処理前後の酸化性物質濃度変化が大きくなることがわかった。これは、熱処理によって上記式(3)の反応が進行したためと考えられる。これにより、熱処理時間75分において、酸化性物質総濃度は、吸光度法で得られた結果と熱処理前に行ったラマン分光法で得られた結果との差が大きいものとなった。
【0093】
<実施例16>
上記式(4)に基づき硫酸濃度3.50mol/l含む電解液を作製して、評価液として使用し、吸光度法で用いる測定波長を表中に示すように変え、測定セル長を0.05mmに変えた以外は実施例1と同様にして、評価液中の酸化性物質総濃度を測定した。その結果を、下記の表6中に示す。
【0094】
<実施例17>
吸光度法で用いる測定波長を表2のように変え、測定セル長を0.05mmに変えた以外は実施例1と同様にして、評価液中の酸化性物質総濃度を測定した。その結果を、下記の表6中に示す。
【0095】
<実施例18>
吸光度法で用いる測定波長を表中に示すように変えた以外は実施例1と同様にして、評価液中の酸化性物質総濃度を測定した。その結果を、下記の表6中に示す。
【0096】
【表5】
【0097】
【表6】
【0098】
実施例16,17より、測定波長を190nmとすると、ラマン分光法から算出した酸化性物質総濃度が同じ液であっても、硫酸濃度によって吸光度法の酸化性物質総濃度は異なることがわかった。これは、硫酸が190nmの光を吸光するため、硫酸濃度の異なる評価液では、硫酸の吸光度が異なり、測定結果が異なるものとなったものと考えられる。また、再現性は低めであった。これは、測定波長が190nmでは過酸化水素の吸光度が高くなることから、セル長が0.05mmと非常に短いものを利用したため、セル精度が低くなったものと考えられる。
【0099】
実施例18より、測定波長を300nmとすると、吸光度が低いものとなった。これにより、再現性は低い結果となった。
【0100】
<実施例19>
過酸化水素検出方法として定電位法を用いて、評価を行った。評価液については、実施例1と同様のものを使用した。作用極材料には導電性ダイヤモンドを用い、作用極の保持電位は2.4Vとし、測定開始から30秒後の電流値を記録した。その結果を、下記の表8中に示す。
【0101】
<実施例20>
定電位法で用いる作用極の保持電位を3.2Vに変えた以外は実施例19と同様にして、評価液中の酸化性物質総濃度を測定した。その結果を、下記の表8中に示す。
【0102】
<実施例21>
定電位法で用いる作用極材料をグラッシーカーボン(GC)とし、作用極の保持電位を1.5Vに変えた以外は実施例19と同様にして、評価液中の酸化性物質総濃度を測定した。その結果を、下記の表8中に示す。
【0103】
<実施例22>
定電位法で用いる作用極材料を白金とし、作用極の保持電位を0.4Vに変えた以外は実施例19と同様にして、評価液中の酸化性物質総濃度を測定した。その結果を、下記の表8中に示す。
【0104】
【表7】
【0105】
【表8】
【0106】
実施例19については、電流値は27μA、電流値から算出した濃度は0.93mol/lであり、ラマン分光法と吸光度法各々から算出した総酸化性物質濃度との差は小さく、すなわち精度の高いものとなった。また、再現性評価結果は、測定2回目が28μA、測定3回目が27μAと再現性の高いものであり、精度および再現性ともに良好な結果が得られた。
【0107】
実施例20については、電流値は150μA、電流値から算出した濃度は2.46mol/lであり、ラマン分光法と定電位法で算出した総酸化性物質濃度との差は大きく、すなわち精度の低いものとなった。これは、過酸化水素の酸化と同時に水の酸化反応も進行したためであると考えられる。
【0108】
実施例21については、電流値は35μA、電流値から算出した濃度は1.06mol/lであり、ラマン分光法と定電位法から算出した総酸化性物質濃度との差は小さく、すなわち精度の高いものとなった。
【0109】
実施例22については、電流値は400μA、電流値から算出した濃度は1.04mol/lであり、ラマン分光法と電気化学的方法各々から算出した総酸化性物質濃度との差は小さく、すなわち精度の高いものとなった。
【0110】
<比較例1〜3>
比較例1〜3として、上記式(4)に基づき硫酸濃度3.5,9.17mol/lを含む電解液を作製し、評価液中の酸濃度、熱処理温度および熱処理時間を表中に示すように変えた以外は実施例1と同様にして、評価液中の酸化性物質総濃度を測定した。その結果を、下記の表10中に示す。
【0111】
【表9】
【0112】
【表10】
【0113】
比較例1,2から、熱処理温度が40℃の場合、熱処理後の過酸化水素割合が低い結果となった。これは、熱処理が不十分で、上記式(1),(2)の反応が十分進行しなかったことによるものと考えられる。これにより、酸化性物質総濃度は、吸光度法で得られた結果と熱処理前に行ったラマン分光法で得られた結果との差が大きいものとなった。
【0114】
比較例3から、熱処理温度が140℃の場合、熱処理前後の酸化性物質濃度変化が大きいものとなった。これは、上記式(3)の反応が進行したためと考えられる。これにより、酸化性物質総濃度は、吸光度法で得られた結果と熱処理前に行ったラマン分光法で得られた結果との差が大きいものとなった。
【0115】
比較例1〜3より、熱処理温度が40℃または140℃の場合、酸化性物質の総濃度測定方法として利用できなくなることがわかった。