(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光源用基板の表面が凹部または凸部を有し、前記複数の格子投影用発光ダイオードの各々は、前記凹部または前記凸部に配置されている、請求項1に記載の形状計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、位相シフトを行うために格子基板を移動機構上に設けて格子基板を機械的に移動させるが、この移動機構は、例えばピエゾステージ等の非常に高価なものである。
また、格子の位相シフトを高速に行うことは困難であり、例えば高速で移動する物体の形状を計測することができない点に課題を残していた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、計測対象物体の形状を高速かつ高精度に計測する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、上記課題を解決する方途について鋭意検討した。その結果、
図1に示すように、基板2の表面2a上に、複数の発光ダイオード(Light Emitting Diode,LED)3を一列に並べて配置した発光装置(光源)1を用意し、LED3を順次点灯させることにより、計測対象物体上に投影される格子の位相を高速にシフトできることを見出した(以下、上記方法を「光ステッピング法」と称する)。
【0008】
図2に、上記光源1を備える形状計測装置の一例を示す。この形状計測装置100は、光源用基板2と、該光源用基板2の表面上に配置された複数の格子投影用LED3とからなる格子投影用光源1と、1次元格子が描かれた格子面を含む、光源用基板2に平行に配置された格子プレート4とを有する格子投影部10と、1次元格子が投影された計測対象物体21を撮像する撮像部11と、撮影された画像に対して位相解析処理を施して、計測対象物体21の形状を求める解析制御装置12とを備える。この形状計測装置100を用いて、格子投影部10により格子プレート4の格子面に描かれた1次元格子が計測対象物体21に投影され、光源1におけるLED3を順次点灯させることにより、投影された1次元格子の位相を高速にシフトさせることができる。
【0009】
しかしながら、格子投影用光源1にLEDを用いる場合には、以下のような問題が生じる。すなわち、
図3に概略的に示すように、形状計測装置100により形状計測を行う際には、三角測量法の原理に基づいて、計測対象物体21、格子投影部10および撮像部11が、それぞれ三角形の頂点を為すように配置される。その際、計測対象物体21の表面における所望の形状計測領域を撮影できるように、計測対象物体21を撮影部11の正面に配置し、従って、格子投影部10は、計測対象物体21から見て斜め方向に配置されるのが一般的である。
【0010】
ここで、格子投影用LED3の発光強度分布は、
図4に示すように、格子投影用LED3の光軸近傍の領域に分布しており、計測対象物体21の撮影に有効な光が到達する領域(以下、「有効光到達領域」と称する)は、撮像部11の性能に依存するものの、格子投影用LED3から有効な光が到達する限界の位置を規定する線(以下、「有効光限界線」と称する)で挟まれた狭い領域となる。そのため、格子投影部10から見て、計測対象物体21が斜め方向に配置されると、格子投影用LED3から照射された光が計測対象物体21に十分に届かず、その結果、照射された光の使用効率が著しく低下する。その結果、計測対象物体21に投影される1次元格子、ひいては撮影された画像も暗くなり、計測誤差が増大してしまう。
【0011】
上記問題を回避するために、格子投影部10全体を計測対象物体21に向けると、格子投影部10の座標軸と撮像部11の座標軸とが異なってしまうため、撮影された画像に対して位相解析処理を施して計測対象物体21の形状を求める際に、座標変換を行う必要が生じる。その結果、解析処理が複雑になるとともに多くの時間を要することになり、高速な形状計測が妨げられてしまう。
【0012】
そこで、格子投影部10と撮像部11の位置関係(両者の座標系が同一の状態)を固定した状態で、計測対象物体21を格子投影部10の正面に配置すると、撮像部11から見て、計測対象物体21は斜め前方に存在することになるため、今度は得られた画像データに対して回転処理を施す等の画像データの変換処理を行う必要が生じ、高速な形状計測を行うことができなくなる。
また、撮像部11は、計測対象物体21を斜め方向から撮影することになるため、形状を計測しようとする計測対象物体21上の領域を適切に撮影できない虞もある。
【0013】
このように、計測対象物体21の形状計測を行う際には、格子投影部10、撮像部11、および計測対象物体21の位置関係について制限があり、格子投影用光源1から照射された光を計測対象物体21上に有効に照射し、照射された光の使用効率を向上させる方途が希求されている。
【0014】
そこで、発明者らは、上記制限の下で、LED3から照射光の使用効率を向上させる方途について鋭意検討した結果、光源用基板2上に複数の格子投影用LED3を配置し、該LED3の各々の光軸が、光源用基板2の法線に対して、計測対象物体21側に傾斜させて配置することが有効であることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0015】
ところで、計測対象物体21の3次元の画像データを取得する際、計測対象物体21の表面の3次元座標とともに、計測対象物体21の輝度および色相のデータを取得することが必要になる。そのため、計測対象物体21に所定の色の光を照射するための撮像用光源を設ける必要があるが、格子投影用光源11とは別に撮像用光源を設けると、装置の小型化が困難になる問題がある。そこで、発明者らは、鋭意検討した結果、格子投影部10が撮像用LEDを更に備えるように構成することが有効であることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0016】
すなわち、本発明の形状計測装置は、計測対象物体の形状を計測する装置であって、光源用基板と
、該光源用基板上に配置され
、前記計測対象物体に1次元格子を投影するための複数の格子投影用発光ダイオードとからなる格子投影用光源と、
前記1次元格子が描かれた格子面を含む、前記光源用基板に平行に配置された格子プレートとを有する格子投影部と、前記1次元格子が投影された前記計測対象物体を撮像する撮像部と、前記撮影された画像に対して位相解析処理を施して前記計測対象物体の形状を求める解析装置とを備え、前記複数の格子投影用発光ダイオードの各々の光軸が、前記光源用基板の法線に対して、前記計測対象物体側に傾斜していることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の形状計測装置において、前記光源用基板の表面が凹部または凸部を有し、前記複数の格子投影用発光ダイオードの各々は、前記凹部または前記凸部に配置されていることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の形状計測装置において、前記格子投影用光源が、前記計測対象物体を照明するための複数の撮像用発光ダイオードを更に備えることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の形状計測装置において、前記撮像用発光ダイオードの各々の光軸が前記格子プレートを通過
し、前記複数の撮像用発光ダイオードは、該複数の撮像用発光ダイオードの全てを同時に点灯させた際に前記計測対象物体に前記1次元格子が投影されない間隔で配置されていることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の形状計測装置において、前記複数の撮像用発光ダイオードと前記格子プレートとの間に光拡散板を更に備えることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の形状計測装置において、前記複数の撮像用発光ダイオード間の間隔は、前記格子投影用発光ダイオードの間隔よりも小さいことが好ましい。
【0022】
本発明の
格子投影装置は、
計測対象物体に1次元格子を投影するための形状計測装置用の格子投影装置であって、光源用基板と、該
光源用基板上に配置され
、前記計測対象物体に前記1次元格子を投影するための複数の
格子投影用発光ダイオードと
からなる格子投影用光源と
、前記1次元格子が描かれた格子面を含む、前記光源用基板に平行に配置された格子プレートとを有し、
前記複数の
格子投影用発光ダイオードの各々の光軸は、前記
光源用基板の法線に対して傾斜していることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の
格子投影装置において、前記
光源用基板の表面が凹部または凸部を有し、前記複数の
格子投影用発光ダイオードの各々は、前記凹部または前記凸部に配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、4つ以上の光源を順次点灯させることにより位相シフトを高速に行うことができるため、計測対象物体の形状を高速かつ高精度に計測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図5は、本発明による計測対象物体の形状計測装置を示す図である。この形状計測装置200は、光源用基板32と該光源用基板32上に配置された複数の格子投影用LED33とからなる格子投影用光源31と、1次元格子が描かれた格子面を含む、前記光源用基板32に平行に配置された格子プレート34とを有する格子投影部30と、1次元格子が投影された計測対象物体21を撮影する撮影部11と、撮影された画像に対して位相解析処理を施して、計測対象物体21の形状を求める解析装置12とを備える。ここで、複数の格子投影用LED33の各々の光軸が、光源用基板32の法線に対して、計測対象物体21側に傾斜していることが肝要である。以下、形状計測装置200の各構成について説明する。
【0027】
格子投影部30は、計測対象物体21の形状を計測する際に、計測対象物体21に1次元格子を投影する。この格子投影用光源31に複数のLEDを用い、該LEDを順次点灯することにより、計測対象物体21上に投影された1次元格子の位相を高速にシフトさせることが可能になり、計測対象物体21の形状計測を高速に行うことができる。
上述のように、格子投影用LED33の光軸を、光源用基板32の法線に対して平行に向けて配置すると、格子投影用光源31から照射された光が、計測対象物体21に有効に届かない。そこで、本発明においては、複数の格子投影用LED33の各々の光軸を、計測対象物体21側に傾斜させるように構成する。これにより、格子投影用LED33から照射された光の使用効率を格段に向上させることができ、その結果、形状計測の精度も向上させることができる。
【0028】
光源用基板32上における複数の格子投影用LED33を、該LED33の光軸が光源用基板32の法線に対して、傾斜するように配置する方法は何ら限定されない。例えば、光源用基板32の表面に凹部または凸部を設け、該凹部または凸部に各LED33を配置することにより、各LED33を傾斜させて配置することができる。具体的には、
図6に示すように、光源用基板32の表面にv字型の凹部32bを設けることにより、各LED33を傾斜させて配置することができる。また、
図7に示すように、光源用基板32の表面にv字型の凸部32cを設けて格子投影用LED33を配置することができる。
【0029】
光源用基板32の法線方向に対するLED33の光軸の傾斜角度は、LED33の有効光到達領域がLEDによって異なり、また、計測対象物体21との位置関係により異なるため、具体的な角度範囲は規定できないが、少なくともLED33全ての有効光到達領域を重ね合わせた領域中に、計測対象物体21が配置されるように設定する。
【0030】
また、
図6および7に例示した格子投影用LED33は、その全ての光軸が、光源用基板32の表面32aの法線に対して同じ角度で傾斜しているが、各LED33の光軸は、それぞれ異なる角度で傾斜させて配置しても良い。例えば、計測対象物体21から離れたLEDについては傾斜角度を大きくし、計測対象物体21に近いLEDについては傾斜角度を小さくすることができる。
【0031】
格子投影用LED33の数は、計測対象物体21に照射される光の使用効率を向上させる点からは何ら限定されないが、形状計測の際に使用する位相解析手法に依存する。例えば、位相解析手法として後述する光ステッピング法を用いる場合には4個以上、また、全空間テーブル化手法に基づく位相解析手法の場合には3個以上あればよい。
【0032】
また、格子投影用LED33の形状については、点光源ばかりでなく、線状光源とすることもできる。また、一般にLEDの出力は小さいため、複数の点光源を並べて線状の光源にし、出力を増やすようにすることもできる。
【0033】
複数の格子投影用LED33の間隔については、計測対象物体21に照射される光の使用効率を向上させる点からは何ら限定されないが、形状計測の際に使用する位相解析手法により限定される場合がある。例えば、位相解析手法として後述する光ステッピング法を用いる場合には、X軸方向に等間隔に配置とする必要がある。一方、全空間テーブル化手法に基づく位相解析手法の場合には、必ずしも等間隔に配置する必要はない。
【0034】
格子プレート34の格子面34aに描かれた1次元格子は、等間隔かつY軸方向に平行に並んだ直線からなる。格子投影用LED33から照射された光が格子プレート34を通過することにより、格子面34a上に描かれた1次元格子が計測対象物体21上に投影されるように構成されている。
【0035】
撮像部11は、計測対象物体21、および格子投影部10により1次元格子が投影された計測対象物体21を撮像する。撮像部11としては、例えばCMOSカメラやCCDカメラを使用することができる。
【0036】
解析制御装置12は、撮像部11により撮影された計測対象物体21の画像に対して位相解析処理を施すことにより、計測対象物体21の形状を求めるとともに、格子投影部10におけるLED3の点灯の切り換え制御や、撮像部11の撮影の制御を行う。この解析制御装置12としては、例えばパーソナルコンピュータ(PC)を用いることができる。
【0037】
このような本発明による形状計測装置により、計測対象物体の形状を高速に計測することができる。
また、格子投影用LEDの光軸を、光源用基板の法線に対して計測対象物体側に傾斜させて配置したため、格子投影用LEDから照射された光を計測対象物体に有効に照射して、照射光の使用効率、ひいては形状計測の精度を向上させることができる。
【0038】
以上の本発明の形状計測装置200に、撮像用LEDを更に設けることにより、計測対象物体21の形状計測とともに、計測対象物体21の3次元の画像データを取得するために必要となる、計測対象物体21の輝度および色相のデータを取得することが可能になる。
【0039】
図8は、格子投影部40における格子投影用光源41に、複数の撮像用LED45を備える形状計測装置300を示している。この撮像用LED45は、計測対象物体21の3次元の画像データを取得するために必要となる、計測対象物体21の輝度および色相のデータを取得するために、計測対象物体21に所定の波長(色)の光を照射する。
【0040】
ここで、撮像用LED45は、格子投影用LED43とともに、光源用基板42上の計測対象物体21側に配置されている。これにより、格子投影用光源41がコンパクトになるとともに、撮像用LED45を格子投影用LED43の制御が容易になり、計測対象物体21の形状計測とともに3次元の画像データを取得するために必要となる、計測対象物体21の輝度および色相のデータを瞬時に取得することができるようになる。
【0041】
また、計測対象物体21に1次元格子を投影するための格子プレート44は、撮像用LED45の有効光到達領域に入らないように構成されている。
【0042】
計測対象物体21の形状計測を行う際には、撮像用LED45は全て消灯させた状態で、格子投影用LED43を順次点灯させるようにする。一方、計測対象物体21を撮像する際には、格子投影用LED43を消灯させた状態で、撮像用LED45の全てを同時に点灯させるようにする。
【0043】
撮像用LED45としては、格子投影用LED43と同様に、点光源だけでなく、線状光源とすることもできる。また、撮像用LED45の出力は小さいため、複数の点光源を並べて線状の光源にし、出力を増やすようにすることもできる。また、撮像用LED45が照射する光の波長は、用途に応じて適切に選択するようにする。
【0044】
撮像用LED45の数は、計測対象物体21に照射される光の使用効率を向上させる点からは何ら限定されず、計測対象物体21を明瞭に撮影できればよい。
更に、複数の撮像用LED45の間隔についても特に限定されず、必要に応じて適切に設定すればよい。
【0045】
なお、撮像用LED45の光軸は、格子投影用LED43の場合とは異なり、光源用基板42の法線に対して必ずしも傾斜させる必要はないが、計測対象物体21側に傾斜させて配置することにより、計測対象物体21をより明るく照明させて、より明瞭な画像を撮影することができる。
【0046】
図9は、
図8とは異なる構成を有する、撮像用LED45を備える形状計測装置を示している。この形状計測装置400と、
図8に示した形状計測装置300との相違は、形状計測装置400における格子プレート44が、撮像用LED45の有効光到達領域に含まれることである。そのため、撮像用LED45から照射された光は、格子プレート44を通過し、従って、1次元格子が計測対象物体21に投影されることになる。しかし、後述する形状計測原理から明らかなように、撮像用LED45間の間隔を狭くして配置し、全ての撮像用LED45を同時に点灯させることにより、各LED45から投影された格子模様が重ね合わされるため、結果として計測対象物体21に投影された1次元格子を消すことができる。こうして、計測対象物体21には1次元格子が消された所定の色の光が照明されるため、計測対象物体21の3次元の画像データを取得するために必要となる、計測対象物体21の輝度および色相のデータを取得することができる。
【0047】
また、形状計測装置400において、複数の撮像用LED45と格子プレート44との間に、すりガラス等の光拡散板を更に配置することにより、撮像用LED45を点灯させた際に計測対象物体21上に投影される1次元格子を更に目立たせないようにして、計測物体21を撮像することができる。この光拡散板は、格子プレート44を介した計測対象物体21上への1次元格子の投影に悪影響を与えないような適切な位置に配置する。
【0048】
上記の形状計測装置400において、複数の撮像用LED45間の間隔は、小さければ小さいほど好ましい。この複数の撮像用LED45間の間隔は、単にLED45の間隔を狭めるだけでなく、LED面内において、複数の撮像用LED45の並ぶ向きをX軸に対して傾斜させることにより調整することもできる。
【0049】
なお、
図9において、撮像用LED45は、格子投影用LED43よりも小さく描かれているが、これは、撮像用LED45の間隔が細かく設定されていることを意味するものであり、格子投影用LEDよりも寸法が小さいことを意味していないことに注意する。
【0050】
こうして、撮像用LED45を設けることにより、所定の波長(色)の光を計測対象物体21に照射して、計測対象物体21の3次元の画像データを取得するために必要となる、計測対象物体21の輝度および色相のデータを瞬時に取得することができる。
【0051】
図10は、本発明による計測対象物体の形状計測装置を示す図である。この形状計測装置500は、光源用基板52と該光源用基板52上に配置された複数の格子投影用LED53とからなる格子投影用光源51と、1次元格子が描かれた格子面を含む、前記光源用基板52に平行に配置された格子プレート54と、前記光源用基板52上に配置された複数の撮像用LED55とを有する格子投影部50と、1次元格子が投影された計測対象物体21を撮影する撮影部11と、撮影された画像に対して位相解析処理を施して、計測対象物体21の形状を求める解析制御装置12とを備える。ここで、格子プレート54は、撮像用LED55の光軸が格子プレート54を通過しないように構成されている。以下、形状計測装置500の各構成について説明する。
【0052】
格子投影部50は、計測対象物体21の形状を計測する際に、計測対象物体21に1次元格子を投影する。ここで、格子投影用LED53は、その光軸が光源用基板52の法線方向に対して平行となるように配置される。格子投影用光源51に複数のLEDを用い、該LEDを順次点灯することにより、計測対象物体21上に投影された1次元格子の位相を高速にシフトさせることが可能になり、計測対象物体21の形状計測を高速に行うことができる。
【0053】
格子投影用LED53の数は、計測対象物体21に照射される光の使用効率を向上させる点からは何ら限定されないが、形状計測の際に使用する位相解析手法に依存する。例えば、位相解析手法として後述する光ステッピング法を用いる場合には4個以上、また、全空間テーブル化手法に基づく位相解析手法の場合には3個以上あればよい。
【0054】
また、格子投影用LED53の形状については、点光源だけでなく、線状光源とすることもできる。また、LEDの出力は小さいため、複数の点光源を並べて線状の光源にし、出力を増やすようにすることもできる。
【0055】
複数の格子投影用LED53の間隔については、計測対象物体21に照射される光の使用効率を向上させる点からは何ら限定されないが、形状計測の際に使用する位相解析手法により限定される場合がある。例えば、位相解析手法として後述する光ステッピング法を用いる場合には、Y軸方向に等間隔に配置とする必要がある。一方、全空間テーブル化手法に基づく位相解析手法の場合には、必ずしも等間隔に配置する必要はない。
【0056】
撮像用LED55は、計測対象物体21の3次元の画像データを取得するために必要となる、計測対象物体21の輝度および色相のデータを取得するために、計測対象物体21に所定の波長(色)の光を照射する。
【0057】
ここで、撮像用LED55は、格子投影用LED53とともに、光源用基板52上の計測対象物体21側に配置されている。これにより、格子投影用光源51がコンパクトになるとともに、撮像用LED55および格子投影用LED53の制御が容易になり、計測対象物体21の形状計測とともに3次元の画像データを取得するために必要となる、計測対象物体21の輝度および色相のデータを瞬時に取得することができるようになる。
【0058】
計測対象物体21の形状計測を行う際には、撮像用LED55は全て消灯させた状態で、格子投影用LED53を順次点灯させるようにする。一方、計測対象物体21を撮像する際には、格子投影用LED53を消灯させた状態で、撮像用LED55の全てを同時に点灯させるようにする。
【0059】
格子プレート54の格子面54aに描かれた1次元格子は、等間隔かつY軸方向に平行に並んだ直線からなる。格子投影用LED53から照射された光が格子プレート54を通過することにより、格子面54a上に描かれた1次元格子が計測対象物体21上に投影されるように構成されている。
【0060】
撮像部11は、計測対象物体21、および格子投影部10により1次元格子が投影された計測対象物体21を撮像する。撮像部11としては、例えばCMOSカメラやCCDカメラを使用することができる。
【0061】
解析制御装置12は、撮像部11により撮影された計測対象物体21の画像に対して位相解析処理を施すことにより、計測対象物体21の形状を求めるとともに、格子投影部50における格子投影用LED53の点灯の切り換え制御や、撮像部11の撮影の制御を行う。解析制御装置12としては、例えばパーソナルコンピュータ(PC)を用いることができる。
【0062】
図11は、
図10とは異なる構成を有する、撮像用LED55を備える形状計測装置を示している。この形状計測装置600と、
図10に示した形状計測装置500との相違は、形状計測装置500における格子プレート54が、撮像用LED55の有効光到達領域に含まれることである。そのため、撮像用LED55から照射された光は、格子プレート54を通過し、従って、1次元格子が計測対象物体21に投影されることになる。
【0063】
しかし、撮像用LED55間の間隔を狭めて配置し、全ての撮像用LED55を同時に点灯させることにより、各LED55から投影された格子模様が重ね合わされるため、結果として計測対象物体21に投影された1次元格子を消すことができる。こうして、計測対象物体21には1次元格子が消された所定の色の光が照明されるため、計測対象物体21の3次元の画像データを取得するために必要となる、計測対象物体21の輝度および色相のデータを取得することができる。
【0064】
また、形状計測装置600において、複数の撮像用LED55と格子プレート54との間に、すりガラス等の光拡散板を更に配置することにより、撮像用LED55を点灯させた際に計測対象物体21上に投影される1次元格子を更に目立たせないようにして、計測物体21を撮像することができる。この光拡散板は、格子プレート54を介した計測対象物体21上への1次元格子の投影に悪影響を与えないような適切な位置に配置する。
【0065】
上記の形状計測装置600において、複数の撮像用LED55間の間隔は、小さければ小さいほど好ましい。この複数の撮像用LED55間の間隔は、単にLED55の間隔を狭めるだけでなく、LED面内において、複数の撮像用LED55の並ぶ向きをX軸に対して傾斜させることにより調整することもできる。
【0066】
なお、
図11において、撮像用LED55は、格子投影用LED53よりも小さく描かれているが、これは、撮像用LED55の間隔が細かく設定されていることを意味するものであり、格子投影用LEDよりも寸法が小さいことを意味していないことに注意する。
【0067】
こうして、撮像用LED55を設けることにより、計測対象物体21の形状計測とともに、所定の波長(色)の光を計測対象物体21に照射して、計測対象物体21の3次元の画像データを取得するために必要となる、計測対象物体21の輝度および色相のデータを瞬時に取得することができる。
【0068】
以上の本発明の形状計測装置を用いて、撮像部12により、1次元格子模様が投影された計測対象物体21を撮像し、撮影された画像に対して位相解析処理を施すことにより計測対象物体の形状を求めることができるが、位相解析処理の方法は限定されず、様々な方法を採用することができる。ここで、位相解析方法の例として、光ステッピング法、および全空間テーブル化手法について説明する。そのために、5つの格子投影用LED33を有する形状計測装置200を用いて形状計測を行う場合について説明するが、LED33の数が5以外の場合にも同様に計測することができる。
【0069】
[形状計測原理]
(基準面を用いない場合)
図12は、本発明による形状計測装置200を用いて、光ステッピング法により計測対象物体21の形状計測を行う原理を示す図である。この形状計測装置200は、光源用基板32と該光源用基板32上に等間隔かつ一列に並べられた5つの格子投影用LED33であるL
-2、L
-1、L
0、L
1およびL
2からなる格子投影用光源31と、1次元格子が描かれた格子面34aを有する格子プレート34とを有する格子投影部30と、撮影部11とを備える。なお、
図12において、解析制御装置12は省略されている。
ここで、5つの格子投影用LED33であるL
-2、L
-1、L
0、L
1およびL
2における両端のLED間の中央位置(すなわち、L
0の位置)を原点Oとし、5つのLEDを通る方向にX軸を、該X軸に直交する方向に、互いに直交するY軸およびZ軸をとる(以下、LED面からZ軸方向の位置を「高さ」と称する)。計測対象物体21は、Z軸方向に配置される。
なお、原点Oの位置は、LEDの数が5以外の場合にも上記と同様の方法、すなわち、4つ以上の光源における両端の光源間の中央位置として規定される。
【0070】
LED間の間隔はlである。以下、5つのLEDであるL
-2、L
-1、L
0、L
1およびL
2を含み、Z=0の面を「LED面」と呼ぶ。
【0071】
格子プレート34の格子面34aに描かれた1次元格子は、等間隔かつY軸方向に平行に並んだ直線からなる。格子投影用光源31から照射された光が格子プレート34を通過することにより、格子面34a上に描かれた1次元格子が計測対象物体21上に投影されるように構成されている。1次元格子を構成する直線の間隔はpであり、LED面と格子面34aとの間隔はdである。また、1次元格子を構成する直線間の中央位置のうち、Z軸からの距離が最短なものを原点Eとし、また、格子面34aとZ軸との交点をCとする。
【0072】
以下の説明において、5つのLEDであるL
-2、L
-1、L
0、L
1およびL
2の明るさ分布は、観測範囲内において、Z=一定のXおよびY軸方向に対して均一で等しいと仮定する。なお、均一でない場合は、その分布を係数として、考慮すればよいが、ここでは取り扱いを簡単にするため、均一と仮定する。
【0073】
今、LEDであるL
nのみを順次点灯し、1次元格子が計測対称物体21上に投影することを考える。このとき、Z=dにある1次元格子の透過率分布は余弦波状になっており、LEDであるL
nにより照射された1次元格子の影の輝度分布は、以下の式で表される。
【0074】
【数4】
ここで、Φは位相、a
gは振幅、b
gは背景輝度、x
gは格子面34aでのx座標、eは格子面34aの原点E(Φ=0)と点Cとの間の距離である。
まず、5つのLEDのうち、中央のL
0の点灯により1次元格子が投影された計測対象物体21上の位置S(x,y,z)における輝度I
0は、近似的に次式で表される。
【0075】
【数5】
ここで、任意の点の輝度は、光源からの距離の自乗に反比例することを考慮している。また、
図12に示すように、計測対象物体21上の1点Sには、
図12における格子面34a上の1次元格子のG点の影が投影されている。
【0078】
次に、LEDをL
0からL
1に切り換えると、G点の影は、Z=zの(x,y)面では、A点に投影される。このとき、点Sには1次元格子のF点の影が投影されている。
LEDであるL
1による位置S(x,y,z)における輝度I
1は,次のようにして求められる。
すなわち、LEDをL
0からL
1に切り替えたことにより、計測対象物体21に投影される1次元格子の位相(アンラッピングされた位相)は、以下の式(4)で与えられる量だけシフトする。
【0079】
【数7】
この位相シフト量Ψは、以下のようにして求められる。すなわち、
図12におけるΔL
0L
1Gと△SAGとが相似であるため、
【0080】
【数8】
となる。また、△SAL
1と△FGL
1とが相似であるため、
【0081】
【数9】
となる。式(5)および(6)から、
【0082】
【数10】
となる。また、式(4)および(7)から、
【0083】
【数11】
となる。こうして、LEDをL
0からL
1に切り替えたときに、計測対象物体21に投影された1次元格子の位相シフト量Ψの値が求められた。この位相シフト量Ψは、zに依存することが分かる。
【0084】
同様に、LEDであるL
0からLEDであるL
nに切り替えることにより、式(2)に比べて位相がnΨだけシフトするため、位置S(x,y,z)における輝度I
nは、次式となる。
【0090】
【数17】
となる。
こうして、L
nを点灯したときの、位置S(x,y,z)における輝度I
nを求めることができた。
なお、計測対象物体21の反射率rを考慮する場合は、aおよびbに反射率rを掛ければよいが、ここでは説明を簡単化するために省略する。
【0091】
(位相シフト量Ψと高さzとの関係)
次に、高さzを求めるために、高さzと位相シフト量Ψまたは位相Φとの関係を求める。位相シフト量Ψが求められると、式(8)から、
【0092】
【数18】
が得られ、高さzを求めることができる。この場合、等位相線は等高線となっている。
【0093】
(位相Φと高さzとの関係)
また、式(12)から、
【0094】
【数19】
となり、位相Φが求められると、高さzが求められる。この場合、等位相線はxの関数となっており、等高線とはならない。
【0095】
このように、位相シフト量Ψまたは位相Φを求めることができれば、式(14)または式(15)から、撮影部11の位置に関係なしに高さzを求めることができる。この位相シフト量Ψおよび位相Φを求める方法については後述する。
【0096】
また、xおよびy座標については、様々な方法、例えばフーリエ変換格子法により、X軸方向およびY軸方向の位相をそれぞれ求め、更に位相接続を行うことにより、各点におけるx座標およびy座標をそれぞれ得ることができる(例えば、特許第3281918号公報参照)。
【0097】
なお、
図12において、5つのLED以外の構成(X、YおよびZ軸も含む)の配置を全て固定した状態で、5つのLEDをZ=0の面内において原点Oを中心にしてX軸に対して傾けて配置することができる。つまり、5つのLEDは、X軸に対して平行である必要はない。この場合、上記の説明における5つのLED間の間隔lとしては、X軸方向(すなわち、1次元格子を構成する直線に垂直な方向)のLED間の間隔(すなわち、5つのLED間の間隔のX軸方向の成分)を用いる。LED間の間隔を物理的に狭めることは困難であるが、上記のように5つのLEDをX軸に対して傾けることにより、X軸方向のLED間の間隔を容易に狭めることができるようになる。
【0098】
また、
図12において、5つのLED以外の構成(X、YおよびZ軸も含む)の配置を全て固定した状態で、Z=0の面内において、5つのLEDであるL―
2,L―
1,L
0,L
1,L
2の各々を、Y軸方向の任意の位置に配置することもできる。つまり、5つのLEDであるL―
2,L―
1,L
0,L
1,L
2は、X軸方向に等間隔に並んでいればよい。
【0099】
こうして、計測対象物体21上の点Sの座標x、yおよびzを求めることができ、計測対象物体21の形状を求めることができる。
【0100】
(基準面を用いる場合)
次いで、基準面を用いる場合の形状計測の原理について説明する。この形状計測方法は、4つ以上の光源からなる格子投影用光源と、1次元格子を有する格子面を含む、格子投影用光源に平行に配置された格子プレートと、撮影部であって、該撮影部のレンズの中心が格子投影用光源を含み格子プレートに平行な光源面上に配置された撮影部とを備える形状計測装置と、格子面に平行に配置された、基準面を含む基準平板とを用いて計測対象物体の形状を計測する方法であって、4つ以上の光源を順次点灯させて基準面に投影される1次元格子の位相をシフトさせながら、撮影部により基準面を撮影するステップと、計測対象物体を格子プレートと基準平板との間に配置し、4つ以上の光源を順次点灯させて計測対象物体に投影される1次元格子の位相をシフトさせながら、撮影部により計測対象物体を撮影するステップと、撮影された基準面の画像および計測対象物体の画像に対して位相解析処理を施して、計測対象物体の形状を求めるステップとを含む。ここで、4つ以上の光源は1次元格子を構成する直線に垂直な方向に等間隔に配置されており、光源面からの距離は、投影された1次元格子の、所定の位置での位相と、レンズ中心と所定の位置とを通る直線と基準面との交点における位相とに依存することを特徴とするものである。
以下、格子投影用光源を構成する光源の数が5つの場合を例に、本発明による別の形状計測方法の原理について説明するが、この場合についても5つの光源の場合に限定されないことに注意する。
【0101】
図13は、
図12に示した形状計測装置1に、LED面から距離z
Rだけ離れた位置に格子面34a(すなわちLED面)と平行な基準面13aを有する基準平板13を更に備える形状計測装置200である。ここで、撮影部11のレンズの中心Vは、X=vの位置に配置されている。すなわち、原点Oからレンズの中心VまでのX軸方向の距離はvである。計測対象物体21は、格子プレート34と基準平板13との間に配置される。
この形状計測装置200を用いて、まず、この基準面13aに1次元格子を投影し、その位相Φ
R分布を記録し、次いで、基準面13aの前に計測対象物体21を配置し、該計測対象物体21上の点Sにおける、投影された1次元格子の位相Φ
Sを求める。これにより、撮影部11の各画素において、基準面13aと計測対象物体21上の点Sとの位相差(Φ
S−Φ
R)から、zまたは基準面13aからの高さh
s=z
R−zを求めることができる。以下に、その原理について説明する。
【0102】
今、撮影部11のある1画素Uが、計測対象物体21が格子プレート34と基準平板13との間に配置されていない場合には基準面13a上の点Rを、計測対象物体21が配置されている場合には該計測対象物体21上の点Sを見ているとする。計測対象物体21上に投影された1次元格子の、点Sでの位相をΦ
S、点Rでの位相をΦ
Rとする。点Rと原点Oを結ぶ直線の格子面34aとの交点をQとする。このとき、位相Φ
SとΦ
Rは、それぞれ点Gと点Qにおける1次元格子の位相と同じであり、それらの位相差から次式の関係が得られる。
【0103】
【数20】
また、△SPOと△GQOとが相似であるため、
【0104】
【数21】
となる。式(16)および(17)から、
【0105】
【数22】
となる。また、△SPRと△VORとが相似であるため、
【0106】
【数23】
となる。式(18)および(19)から、
【0107】
【数24】
となる。この式(20)から、高さzは、
【0108】
【数25】
となる。
こうして、式(21)から、カメラの画素の基準面13aにおける位相Φ
Rおよび計測対象物体21上の点Sの位相Φ
Sから、点Sのz座標を求めることができる。また、等位相差(Φ
S−Φ
R)線は等高線となる。
【0109】
また、xおよびy座標については、基準面13a(すなわち、基準平板13)を用いない場合と同様に、例えばフーリエ変換格子法により、X軸方向およびY軸方向の位相をそれぞれ求め、更に位相接続を行うことにより、各点におけるx座標およびy座標をそれぞれ得ることができる。
なお、
図12の場合と同様に、
図13において、5つのLED以外の構成(X、YおよびZ軸も含む)の配置を全て固定した状態で、5つのLEDをZ=0の面内において原点Oを中心にしてX軸に対して傾けて配置することができる。つまり、5つのLEDは、X軸に対して平行である必要はない。この場合、上記の説明における5つのLED間の間隔lとしては、X軸方向(すなわち、1次元格子を構成する直線に垂直な方向)のLED間の間隔(すなわち、5つのLED間の間隔のX軸方向の成分)を用いる。LED間の間隔を物理的に狭めることは困難であるが、上記のように5つのLEDをX軸に対して傾けることにより、X軸方向のLED間の間隔を容易に狭めることができるようになる。
【0110】
また、
図13において、5つのLED以外の構成(X、YおよびZ軸も含む)の配置を全て固定した状態で、Z=0の面内において、5つのLEDであるL―
2,L―
1,L
0,L
1,L
2の各々を、Y軸方向の任意の位置に配置することもできる。つまり、5つのLEDであるL―
2,L―
1,L
0,L
1,L
2は、X軸方向に等間隔に並んでいればよい。
【0111】
こうして、計測対象物体21上の点Sの座標x、yおよびzを求めることができ、計測対象物体21の形状を求めることができる。
【0112】
こうして、計測対象物体21上の点Sの座標x、yおよびzを求めることができ、計測対象物体21の形状を求めることができる。
【0113】
(光ステッピング法による位相解析)
続いて、高さzを求めるために必要な、位相Φおよび位相シフト量Ψを求める方法について説明する。
上述のように、従来の位相シフト法が、
図12または
図13の格子を直接動かすことにより、位相2πを整数Nで割って、全ての位置にて位相を2π/Nずつシフトさせるのに対し、本発明の位相シフト法においては、5つのLEDを順次点灯および消灯させることにより、計測対象物体21に投影される1次元格子の位相を、式(14)で示される位相シフト量Ψにて等間隔に5回シフトさせる(初期位置を含めて)位相シフトを行う。この位相シフト量Ψは、通常、2πを5等分したものでない。また、式(14)から明らかなように、zの値によって位相シフト量Ψは異なる。
【0114】
図14は、余弦波状に輝度が変化する1次元格子の位相を、位相シフト量Ψにて等間隔に位相シフトさせたときの、標本点の輝度および位相のシフト量の関係を示す。光ステッピング法においては、I
0における位相Φが求めるべき位相であり、L
nを切り替えて順次点灯させる毎に、Ψずつ位相シフトする。このとき、輝度は上述の式(13)で表され、全てのnについて書くと、
【0119】
【数30】
となる。ここで、未知数はΦ、Ψ、aおよびbの4つであり、これらの式から位相Φのラッピングされた値φおよびΨのラッピングされた値ψは、それぞれ以下の式(27)および(28)のようになる。
【0121】
【数32】
これらの式(27)および(28)から、ラッピングされた位相φおよび位相シフト量ψを求めることができる。
なお、式(13)を解くのに、式(22)〜(26)の5つの式を用いたが、未知数の数が4つであるため、この5つの式のうちの4つを用いれば、4つの未知数を求めることができるのは言うまでもない。
【0122】
こうして、光ステッピング法により、計測対象物体21の形状を求めることができる。
【0123】
(全空間テーブル化手法の適用)
上記の本発明の形状計測方法に、全空間テーブル化手法を適用することにより、計測対象物体21の形状計測を更に高速に行うことができる(例えば、特開2008−281491参照)。すなわち、
図13に示すように、格子面34aに平行に配置された2次元格子が描かれた(または投影された)基準面13aを有する基準平板13を用意し、該基準平板13をZ軸方向に所定の微少量だけ移動させながら基準面13aを撮影し、撮影された画像に対して位相解析処理を施すことにより、撮影部11の各画素に対して、Ψ、Φおよび(Φ
S−Φ
R)とzとの関係をテーブルとして予め求めておく。こうして予め用意しておいた各画素に対するテーブルを参照することにより、各画素に対して得られた位相から高さzの値を求めることができる。
【0124】
この全空間テーブル化手法においては、予め用意した画素毎のテーブルを参照するだけであり、三角測量などで用いる幾何学的計算をする必要がほとんどないため、計測対象物体21の形状を更に高速に求めることができる。
また、本発明による形状計測方法では、光源や格子面の配置等に、種々の拘束条件を設けたが、このような基準面13aを用いた位相解析により、5個のLEDの明るさ分布に多少のムラがある場合、点光源が完全な点ではなくて多少の面積がある場合、1次元格子やLEDの間隔が一定ではなく少々異なる場合、撮影部11のレンズの位置がLED面から少々外れる場合、平行に配置された各構成が平行から多少ずれる場合、および1次元格子の輝度分布が余弦波から多少ずれる場合のように、計測された位相と高さzとの関係が単調に変化して1対1の対応関係がありさえすれば、これらの誤差を打ち消し、計測対象物体21の形状を精度良く求めることができる。
【0125】
こうして、本発明による形状計測を用い、例えば上述の光ステッピング法や全空間テーブル化手法を用いて、計測対象物体の形状を高速かつ高精度に計測することができる。