特許第5770512号(P5770512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770512
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】肢部圧迫装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20150806BHJP
   A61B 17/132 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   A61B17/00 320
   A61B17/12 330
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-78018(P2011-78018)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-210361(P2012-210361A)
(43)【公開日】2012年11月1日
【審査請求日】2014年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】相馬 孝博
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0287069(US,A1)
【文献】 特表2008−525468(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/070164(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61B 17/132
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肢部に巻かれるカフ部がカフチューブを介して接続されうる複数の圧力制御ユニットを備え、前記圧力制御ユニットによって、それに接続されたカフ部への送気及び当該カフ部からの排気を制御することで、肢部の圧迫と解放予め定められたサイクル数にわたって繰り返す肢部圧迫装置であって、
記肢部の圧迫と解放予め定められたサイクル数にわたって繰り返すように前記複数の圧力制御ユニットのうちカフ部が接続された圧力制御ユニットを制御する制御手段と、
心電誘導法による心電波形を検出するために複数の誘導法により検出された信号を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された信号に基づいて心電波形を生成し、該生成した心電波形について、不整脈に関する波形変化の有無を判断する判断手段と、を備え、
前記制御手段は、前記複数の圧力制御ユニットのうちカフ部が接続された圧力制御ユニットについては、前記肢部の圧迫と解放を繰り返す動作を開始させた後に、前記判断手段において、前記不整脈に関する波形変化があったと判断された場合に前記動作を停止させ、前記複数の圧力制御ユニットのうちカフ部が接続されてない圧力制御ユニットについては動作させない、
ことを特徴とする肢部圧迫装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記複数の圧力制御ユニットのうちカフ部が接続された圧力制御ユニットについて、圧迫状態において、前記判断手段により前記不整脈に関する波形変化があったと判断された場合には前記カフ部の排気を指示した後に、前記制御を停止することを特徴とする請求項1に記載の肢部圧迫装置。
【請求項3】
前記取得手段は、CM5誘導とNASA誘導とを用いて検出された信号を取得することを特徴とする請求項1に記載の肢部圧迫装置。
【請求項4】
前記不整脈に関する波形変化には、心室性不整脈、ST上昇、心室性頻拍、心室性期外収縮のうちのいずれかが含まれることを特徴とする請求項1に記載の肢部圧迫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上肢及び/または下肢に対する圧迫と解放を制御することで、患者の上肢及び/または下肢の虚血状態(圧迫状態)と潅流状態(解放状態)とを交互に遷移させる肢部圧迫装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
虚血性疾患の治療において、心筋虚血による心筋細胞への影響を軽減させることは不可欠な課題である。早期の再潅流は心筋を保護するために重要であり、一般には、血栓溶解剤を用いた処置が行われる。また、最近では、アンギオによる血管造影を行い、虚血部位を観察しながらカテーテルを用いて再潅流を行うPTCAによる処置も行われている。
【0003】
早期の再潅流を実現するためのこれらの処置による効果は絶大であるが、一方で、心筋に対するダメージも大きい。具体的には、再潅流による心筋細胞への障害や炎症が発生することで、虚血障害部位が拡大してしまうといった問題(再潅流シンドローム)が生じる可能性があり、治療上の大きな問題となっている。
【0004】
この原因は、心筋細胞が産生する活性酸素であり、再潅流に際しては、この産生を抑えることが重要となってくる。
【0005】
これに対して、再潅流を行う前に、虚血発生部位から離れた部位、例えば、上腕部や下肢部の圧迫と解放を行い、虚血状態と再潅流状態とを交互に遷移させることで、虚血発生部位である心筋に対して害を与える活性酸素の発生を抑制する遠隔部短時間反復虚血法が提案されている。
【0006】
遠隔部短時間反復虚血法によれば、反復刺激により細胞内媒介物質が細胞内変異、または細胞間変異を起こし、活性酸素の発生に寄与する酵素であるキナーゼの誘導を抑えることができる。また、心筋細胞のATPの代謝を抑え、心筋細胞内のミトコンドリアの機能を調整することで細胞活性が抑えられ、これにより、活性酸素の産生を抑えることができる。
【0007】
そして、このような再潅流シンドロームを抑制するための遠隔部短時間反復虚血法を実現する装置として、従来より、肢部圧迫装置が提案されている。例えば、下記特許文献1には、虚血時間や潅流時間、虚血圧力等を任意に設定可能な構成が開示されており、更には、虚血中の圧力を一定にするための制御が可能である旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−512176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方で、遠隔部短時間反復虚血法は、患者への負担が大きいことから、遠隔部短時間反復虚血法による処置を行うにあたっては、処置中の患者の状態を把握しておく必要がある。そして、患者の安全を確保すべく、患者の状態に変化があった場合には、直ちに処置を中止するなどの対応をとることが不可欠である。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1の場合、処置中の患者の状態とは無関係に虚血状態と潅流状態とが繰り返される構成となっているため、仮に、患者の容態に変化があった場合には、ユーザ自身がこれを検知し、処置を停止させるなどの対応をとらなければ、患者の安全を確保することはできない。
【0011】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、患者に対して遠隔部短時間反復虚血法による処置を施す肢部圧迫装置において、処置中の患者の状態に応じて動作するように構成することで、患者の安全を確実に確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る肢部圧迫装置は、肢部に巻かれるカフ部がカフチューブを介して接続されうる複数の圧力制御ユニットを備え、前記圧力制御ユニットによって、それに接続されたカフ部への送気及び当該カフ部からの排気を制御することで、肢部の圧迫と解放を予め定められたサイクル数にわたって繰り返す肢部圧迫装置であって、前記肢部の圧迫と解放を予め定められたサイクル数にわたって繰り返すように前記複数の圧力制御ユニットのうちカフ部が接続された圧力制御ユニットを制御する制御手段と、心電誘導法による心電波形を検出するために複数の誘導法により検出された信号を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された信号に基づいて心電波形を生成し、該生成した心電波形について、不整脈に関する波形変化の有無を判断する判断手段と、を備え、前記制御手段は、前記複数の圧力制御ユニットのうちカフ部が接続された圧力制御ユニットについては、前記肢部の圧迫と解放を繰り返す動作を開始させた後に、前記判断手段において、前記不整脈に関する波形変化があったと判断された場合に前記動作を停止させ、前記複数の圧力制御ユニットのうちカフ部が接続されてない圧力制御ユニットについては動作させない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、患者に対して遠隔部短時間反復虚血法による処置を施す肢部圧迫装置において、処置中の患者の状態に応じて動作するように構成することで、患者の安全を確実に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る肢部圧迫装置100の外観構成を示す図である。
図2】肢部圧迫装置100の表示部に表示される表示画面の一例を示す図である。
図3】肢部圧迫装置100を用いて、患者に対して、遠隔部短時間反復虚血法による処置を施す様子を示した図である。
図4】肢部圧迫装置100の機能構成を示す図である。
図5】肢部圧迫装置100における遠隔部短時間反復虚血処理の流れを示すフローチャートである。
図6】肢部圧迫装置100における遠隔部短時間反復虚血処理の流れを示すフローチャートである。
図7】肢部圧迫装置100における遠隔部短時間反復虚血処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
1.肢部圧迫装置の外観構成
はじめに、本発明の一実施形態に係る肢部圧迫装置100の外観構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る肢部圧迫装置100の外観構成を示す図である。
【0017】
図1において、101はハウジングであり、上部側面には、右下肢部、左下肢部、右上腕部、左上腕部にそれぞれ巻き回される不図示のカフ部が取り付けられたカフチューブ111〜114が接続されるコネクタ部が配されている。また、右部側面には、心電波形を取得するために、患者(被検者)の胸部に装着される電極と接続された配線116が延設されたコネクタ115が接続されるコネクタ部(不図示)が配されている。
【0018】
102は遠隔部短時間反復虚血処理の開始/停止を指示するためのスイッチであり、1回の押圧により処理が開始され、再度の押圧により処理が停止するよう構成されている。
【0019】
103は表示部であり、遠隔部短時間反復虚血処理を実行するための各種設定値や、実行中の状態等が表示される。なお、表示部103に表示される表示画面の詳細は後述する。
【0020】
108は設定値入力部であり、虚血時間の設定値を増減させるための虚血時間設定スイッチ104、105と、虚血圧力の設定値を増減させるための虚血圧力設定スイッチ106、107とを備える。
【0021】
2.表示画面の構成
次に、表示部103に表示される表示画面について説明する。図2は、表示部103に表示される表示画面の一例を示す図である。図2において、201は設定された虚血時間を表示する表示領域であり、202は設定された虚血圧力を表示する表示領域である。
【0022】
また、203は虚血中であることを示す表示領域であり、虚血中に点灯する。204は潅流中であることを示す表示領域であり、潅流中に点灯する。205は残時間表示領域であり、虚血中であれば、虚血状態が完了するまでの残時間を表示し、潅流中であれば、潅流状態が完了するまでの残時間を表示する。
【0023】
206は残サイクル数を表示する残サイクル数表示領域である。なお、本実施形態に係る肢部圧迫装置は、虚血・潅流を1サイクルとした場合、4サイクル分動作した後に、自動的に停止するよう構成されているものとする。
【0024】
207は現在のカフ圧力値を表示するカフ圧力表示領域である。なお、カフ部は、右下肢部用、左下肢部用、右上腕部用、左上腕部用の4種類が接続されるが、いずれのカフ部のカフ圧力値を表示するかは、任意に設定可能であるとする。
【0025】
208は警報表示領域であり、肢部圧迫装置100が何らかの異常を検出した場合に点滅し、ユーザに異常が発生したことを報知する。
【0026】
3.肢部圧迫装置の使用態様
次に、肢部圧迫装置100の使用態様について説明する。図3は、肢部圧迫装置100を用いて、患者に対して、遠隔部短時間反復虚血法による処置を施す様子を示した図である。
【0027】
図3に示すように、カフチューブ111の先端には左下肢部用のカフ部302が取り付けられており、図3の例では、左足大腿部に巻き回されている。また、カフチューブ112の先端には右下肢部用のカフ部301が取り付けられており、図3の例では、右足大腿部に巻き回されている。
【0028】
同様に、カフチューブ113の先端には、左上腕部用のカフ部303が取り付けられており、患者の左上腕部に巻き回されている。また、カフチューブ114の先端には右上腕部用のカフ部304が取り付けられており、患者の右上腕部に巻き回されている。
【0029】
このように、本実施形態に係る肢部圧迫装置100では、患者の四肢(上肢2箇所、下肢2箇所の4箇所)をカフ部301〜304を用いて空気圧で圧迫できるように構成されている。なお、必ずしも、上肢2箇所、下肢2箇所の4箇所を並行して圧迫できるように構成する必要はなく、任意の箇所を圧迫できるように、カフチューブを着脱可能に構成してもよい。
【0030】
更に、本実施形態に係る肢部圧迫装置100には、コネクタ115及び配線116を介して、心電誘導法による心電波形を検出する手段である5個の電極(311〜315)が接続されており、CM5誘導ための電極である、電極315は肋骨上端に、電極312はV5に近い肋骨上にそれぞれ配される。また、心電誘導法による心電波形を検出する手段であるNASA誘導のための電極である、電極314は肋骨下端に、電極311は肋骨上端に、電極313(アース電極)は右胸部最下肋骨上にそれぞれ配される。なお、心電波形の取得手段として、上述の心電誘導法のほかに、12誘導、単極肢誘導等を適用するようにしてもよい。
【0031】
4.肢部圧迫装置の機能構成
次に、肢部圧迫装置100の機能構成について説明する。図4は、肢部圧迫装置100の機能構成を示す図である。図4に示すように、肢部圧迫装置100は、圧力制御ユニット400〜430と、制御部440と、操作部108と、表示部103と、心電計測ユニット450とを備える。なお、制御部440は、マイクロコンピュータなどのCPUとCPUにより実行される装置全体の制御プログラムや各種データを記憶するROMと、ワークエリアとして測定データや各種データを一時的に記憶するRAMなどを備え、各工程での処理、判断を行うよう構成されているものとする。
【0032】
圧力制御ユニット400〜430は、圧力制御対象であるカフ部(301〜304)の数に対応した数だけ設けられており、制御部440からの指示に基づいて、各カフ部ごとに別々に圧力制御できるよう構成されている。なお、各圧力制御ユニット400〜430は同様の構成を有することから、以下では、カフ部301の圧力制御を行う圧力制御ユニット400について説明する。
【0033】
圧力制御ユニット400において、401はコネクタ部であり、カフ部301が先端に取り付けられたカフチューブ111が着脱可能に接続される。408は接続センサであり、カフチューブ111が取り付けられた場合にこれを検知し、制御部440に送信する。
【0034】
402は圧力変換器であり、空気配管を介してコネクタ部401に接続されている。圧力変換器402では、カフ部301内の空気圧を検出し、電気信号に変換する。403は圧力検出部であり、圧力変換器402より出力された電気信号を増幅し、カフ圧力信号として制御部440に送信する。
【0035】
404は排気弁であり、空気配管を介してコネクタ部401に接続されている。排気弁404は、虚血時に配管系を密閉する場合、ならびに、虚血状態(圧迫状態)から潅流状態(解放状態)へ遷移させるべく、カフ部301内の空気を急速排気する場合に用いられる。
【0036】
405は弁駆動部であり、制御部440からの指示に基づいて、排気弁404の開閉を制御する。
【0037】
406はポンプであり、空気配管を介してコネクタ部401に接続されており、カフ部301内のカフ袋に送気する。407はポンプ駆動部であり、制御部440からの指示に基づいて、ポンプ406の駆動/停止を制御する。
【0038】
制御部440には、後述する遠隔部短時間反復虚血処理を実行するためのプログラムが格納されており、操作部108からの指示や圧力検出部403からの出力に基づいて、弁駆動部405、ポンプ駆動部407、表示部103等を制御する。
【0039】
複数の誘導法により検出された信号を取得する取得手段を含む心電計測ユニット450において、451はコネクタ部であり、電極311〜電極315と接続されたコネクタ115が着脱可能に取り付けられる。電極311〜電極315において検出された信号はコネクタ部451を介して肢部圧迫装置100に取り込まれる。452はチャネル部であり、ch1がCM5誘導用のチャネルとして用いられ、ch2がNASA誘導用のチャネルとして用いられる。453は心電検出・判断部であり、CM5とNASAという複数の誘導法により検出された信号に基づいて心電波形を生成するとともに、当該生成した心電波形に基づいて、心室性不整脈、ST上昇、心室性頻拍、心室性期外収縮等の有無(不整脈に関する波形変化の有無)の判断を行い、患者の容態の変化を検出する。心室性不整脈は、例えば、QRS幅に基づいて判断し、QRS幅が0.12秒以上であった場合に、心室性不整脈と判断する。
【0040】
心電検出・判断部453において、患者の容態の変化が検出された場合には、当該検出結果が制御部440に送信され、制御部440では、遠隔部短時間反復虚血処理を停止させる。
【0041】
5.遠隔部短時間反復虚血処理の流れ
次に、肢部圧迫装置100の制御部440において実行される遠隔部短時間反復虚血処理の流れについて説明する。図5は、肢部圧迫装置100の制御部440において実行される遠隔部短時間反復虚血処理の流れを示すフローチャートである。
【0042】
虚血時間や虚血圧力等の設定がなされた後、スイッチ102が押圧され、遠隔部短時間反復虚血処理の開始が指示されることで、図5に示すフローチャートが実行開始される。
【0043】
ステップS501では初期設定を行う。具体的には、初期圧力としてゼロを設定するとともに、各種タイマ(加圧時間を計測するタイマ、虚血時間または潅流時間を計測するためのタイマ)をリセットする。また、接続センサ408からの信号を検出し、カフが接続されていない圧力制御ユニットを動作させないように制御する。
【0044】
ステップS502では、圧力検出部403より出力されたカフ圧力値の受信を開始し、表示部103のカフ圧力表示領域207に表示する。
【0045】
ステップS503では、心電検出・判断部453における心電波形の生成及び患者の容態の変化を検出するための判断が開始される。
【0046】
ステップS504では、弁駆動部405に対して、排気弁404の全閉を指示する。
【0047】
ステップS505では、ポンプ駆動部407に対してポンプ406の駆動を指示する。ステップS505においてポンプ406の駆動が開始されると、ステップS506では、加圧タイマをスタートさせる。ステップS507では、加圧タイマのタイマ値が規定値(例えば30sec)以上となったか否かを判定する。ステップS507において加圧タイマのタイマ値が規定値以上になっていないと判定された場合には、ステップS508に進み、圧力検出部403より出力されるカフ圧力値が、予め設定されている虚血圧力値以上となっているか否かを判定する。
【0048】
ステップS508において、カフ圧力値が、予め設定されている虚血圧力値以上になっていないと判定された場合には、ステップS507に戻り、加圧タイマのタイマ値が規定値以上になったか否かを判定する。ステップS507において、加圧タイマのタイマ値が規定値以上になったと判定された場合には、ステップS509に進み、ポンプ406の駆動を停止させるよう、ポンプ駆動部407に指示する。また、ステップS510に進み、排気弁404を全開させるよう、弁駆動部405に指示する。更に、ステップS511では、警報表示領域208にて装置異常を報知すべく点滅させる。
【0049】
このように、制御部440では、ポンプ406を駆動させカフ部301の加圧を開始すると、カフ部301内のカフ圧力の監視を行い、規定時間内に設定された虚血圧力値に到達しなかった場合には、何らかの異常があると判断し、ポンプ406の駆動を停止し、ユーザに警報を出力する。これにより、ユーザは、加圧過程における異常を早期に検出することが可能となる。
【0050】
規定時間内に設定された虚血圧力値に到達した場合には、ステップS508から図6のステップS521に進み、ポンプ406の動作を停止させるよう、ポンプ駆動部407に指示する。
【0051】
ステップS522では、虚血時間を計測するためのタイマをスタートさせるとともに、表示部103の表示領域203を点灯させ、虚血中であることをユーザに報知する。ステップS523では、当該タイマのタイマ値に基づいて、表示部103の残時間表示領域205に虚血状態が完了するまでの残時間を表示する。なお、残時間は、予め設定されている虚血時間から、虚血時間を計測するためのタイマのタイマ値を差し引くことで算出する。
【0052】
ステップS524では、心電検出・判断部453において、心室性不整脈、ST上昇、心室性頻拍、心室性期外収縮等の有無を判断し、患者の容態の変化を検出する。ステップS524において、患者の容態の変化が検出された場合には、ステップS525に進み、排気弁404を全開させるよう、弁駆動部405に指示する。更に、ステップS526では、警報表示領域208にて心電異常を報知すべく点滅させた後、遠隔部短時間反復虚血処理を終了する。
【0053】
このように、本実施形態に係る肢部圧迫装置100では、虚血状態において心電波形を解析し、患者の容態に変化が検出された場合には、虚血状態を解放するよう構成されている。これにより、患者の安全が確実に確保されることとなる。
【0054】
一方、ステップS524において、患者の容態の変化が検出されなかった場合には、ステップS527に進み、虚血時間を計測するためのタイマのタイマ値が、予め設定されている虚血時間以上となったか否かを判定する。ステップS527において、虚血時間を計測するためのタイマのタイマ値が、予め設定されている虚血時間以上になっていないと判定された場合には、ステップS523に戻る。
【0055】
一方、ステップS527において、虚血時間を計測するためのタイマのタイマ値が、予め設定されている虚血時間以上になったと判定された場合には、表示領域203を消灯した後、ステップS528に進み、排気弁404が全開となるよう、弁駆動部405に指示し、ステップS529に進む。
【0056】
ステップS529では、圧力検出部403より出力されるカフ圧力値が、15mmHg以下となったか否かを判定する。ステップS529において、カフ圧力値が、15mmHg以下になっていないと判定された場合には、15mmHg以下となるまで待機する。
【0057】
一方、ステップS529において、カフ圧力値が、15mmHg以下になったと判定された場合には、ステップS530に進み、潅流時間を計測するためのタイマをスタートさせるとともに、表示領域204を点灯させ、ユーザに対して潅流中であることを報知する。
【0058】
更に、ステップS530から図7のステップS541に進み、当該タイマのタイマ値に基づいて、表示部103の残時間表示領域205に潅流状態が完了するまでの残時間を表示する。なお、残時間は、予め設定されている潅流時間から、潅流時間を計測するためのタイマのタイマ値を差し引くことで算出する。
【0059】
ステップS542では、心電検出・判断部453において、心室不整脈、ST上昇、心室性頻拍、心室性期外収縮等の有無を判断し、患者の容態の変化を検出する。ステップS542において、患者の容態の変化が検出された場合には、ステップS543に進み、警報表示領域208にて心電異常を報知すべく点滅させた後、遠隔部短時間反復虚血処理を終了する。
【0060】
このように、本実施形態に係る肢部圧迫装置100では、潅流状態においても心電波形を解析し、患者の容態に変化が検出された場合には、遠隔部短時間反復虚血処理を終了するよう構成されている。これにより、患者の安全が確実に確保されることとなる。
【0061】
一方、ステップS542において、患者の容態の変化が検出されなかった場合には、ステップS544に進み、潅流時間を計測するためのタイマのタイマ値が、予め設定されている潅流時間以上となったか否かを判定する。ステップS544において、潅流時間を計測するためのタイマのタイマ値が、予め設定されている潅流時間以上になっていないと判定された場合には、ステップS541に戻る。
【0062】
一方、ステップS544において、潅流時間を計測するためのタイマのタイマ値が、予め設定されている潅流時間以上になったと判定された場合には、表示領域204を消灯した後、ステップS545に進み、サイクル数をインクリメントする(なお、サイクル数のカウント値には、初期値としてゼロが入力されているものとする)。更にステップS546に進み、表示部103の残サイクル数表示領域206に残サイクル数を表示する。なお、残サイクル数は予め定められたサイクル数(4)から、カウントされた現在のサイクル数を差し引くことで算出される。
【0063】
ステップS547では、カウントされたサイクル数が、予め定められたサイクル数(4)より大きいか否かを判定し、4未満であると判定された場合には、ステップS504に戻る。一方、4以上であると判定された場合には、遠隔部短時間反復虚血処理を終了する。
【0064】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る肢部圧迫装置100では、遠隔部短時間反復虚血処理を実行するにあたり、並行して患者の心電波形を取得することで、患者の容態の変化を監視し、患者の容態に変化が検出された場合には、ただちに遠隔部短時間反復虚血処理を終了させる構成とした。これにより、患者の安全を確実に確保することが可能となった。
【0065】
[その他の実施形態]
上記第1の実施形態では、右下肢部用、左下肢部用、右上腕部用、左上腕部用の4つのカフ部を用意し、それぞれ共通の設定値のもと、独立に圧力制御する構成としたが、本発明はこれに限定されない。
【0066】
例えば、カフ部は4つ以上であっても、4つ未満であってもよい。また、それぞれ別々に設定値を設定できるように構成してもよいし、また、いくつかのカフ部をまとめて圧力制御するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0067】
100:肢部圧迫装置、101:ハウジング、102:開始/停止スイッチ、103:表示部、104・105:虚血時間設定スイッチ、106・107:虚血圧力設定スイッチ、108:操作部、111〜114:カフチューブ、115:コネクタ、116:配線、201:虚血時間を表示する表示領域、202:虚血圧力を表示する表示領域、203:虚血中であることを示す表示領域、204:潅流中であることを示す表示領域、205:残時間表示領域、206:サイクル数表示領域、207:カフ圧力表示領域、208:警報表示領域、301:右下肢部用カフ部、302:左下肢部用カフ部、303:右上腕用カフ部、304:左上腕用カフ部、311〜315:電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7