特許第5770515号(P5770515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770515
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】ステアリングロック装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/02 20130101AFI20150806BHJP
【FI】
   B60R25/02
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-82641(P2011-82641)
(22)【出願日】2011年4月4日
(65)【公開番号】特開2012-218460(P2012-218460A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岡田 高裕
(72)【発明者】
【氏名】林 賢二郎
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−105603(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01410963(EP,A1)
【文献】 特開2009−046096(JP,A)
【文献】 特開2002−120695(JP,A)
【文献】 特開2007−230334(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/099761(WO,A1)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーで覆われたフレームに設けられたロッドガイド孔内に、ステアリングロック位置とステアリングロック解除位置との間をスライド自在に配置されたロック部材を備えるとともに、
該ロック部材に設けられた補助係止部と、
該フレーム側に補助ロック位置と補助ロック解除位置との間をスライド自在に配置され、付勢手段によって該補助係止部に係止するロック位置側に付勢された補助ロック部材と、
一端が該カバー内に固定された保持手段と、からなる補助ロック手段を備え、
該補助ロック手段が、
該カバーを該フレームに組付けた状態で、該保持手段の先端が、補助ロック解除位置に位置する該補助ロック部材の保持受部に係合して、該補助ロック部材を補助ロック解除位置に保持し、
該カバーが該フレームから相対移動した際に、該保持手段が変位して、該保持手段と該保持受部との係合が外れ、該付勢手段の付勢力によって該補助ロック部材が補助ロック解除位置から補助ロック位置へ移動し、ステアリングロック位置に位置する該ロック部材の該補助係止部に該補助ロック部材が係合し、前記ロック部材をステアリングロック位置にロックする補助ロック手段を備えたステアリングロック装置であって、
該フレームの開口縁外側、および該カバーの開口縁内側の少なくともどちらか一方に、近接する外側面に対して斜めに交差するように設定された傾斜部を備え、
該フレームの開口縁外側、および該カバーの開口縁内側の他側に傾斜受部を設定し、
該傾斜部に向かって外側から外力が加わった際に、該傾斜受部が該傾斜部上をスライドし、該カバーが変位、または脱落することを特徴とするステアリングロック装置。
【請求項2】
請求項1記載のステアリングロック装置であって、
前記カバーは、合成樹脂材によって成形されていることを特徴とするステアリングロック装置。
【請求項3】
請求項1、または請求項2記載のステアリングロック装置であって、
前記傾斜部は、前記カバーを前記フレームに組付ける方向に対して斜めに交差するように設定されたことを特徴とするステアリングロック装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のステアリングロック装置であって、
前記カバーを前記フレームに組付けた状態で、該フレームの外側面に配設されたフレーム側係止部に該カバー内側面に配設されたカバー側係合部が係止されて、該カバーが該フレームに固定されるカバー固定手段を備え、
該カバーが該フレームに組付けられた状態で、該フレーム側係止部と該カバー側係合部の対向する面の少なくともどちらか一方が、該カバーを該フレームに組付ける方向に対して斜めに交差するように設定されたことを特徴とするステアリングロック装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のステアリングロック装置であって、
車両に取付けられた状態で、周辺の車両装備品に囲まれずに露出する前記カバーの部位、または前記フレームの部位に、前記傾斜部が配置されることを特徴とするステアリングロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリングシャフトの回転をロックするステアリングロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のステアリングロック装置としては、特許文献1に開示されたものがある。このステアリングロック装置100は、図12に示すように、巻バネ101により自動車の図示しないステアリングシャフトの方向(図12の上方向)に付勢され、ステアリングシャフトに対して嵌合可能なロック部材102と、このロック部材102を駆動する駆動体103と、ロック部材102の近傍に配置され、ロック部材102をステアリングロック位置にてロック可能な補助ロック手段120とを備えている。また、駆動体103は、モータ105により図示しないウォームを介して駆動される回転部材106と、この回転部材106の回転によりロック部材102の移動方向に往復移動するカム部材107とを備え、このカム部材107は、連結ピン108を介してロック部材102に連結されている。補助ロック手段120は、スライドプレート104、保持軸113、バネ部材111a,111b、保持手段115によって構成されている。
【0003】
スライドプレート104は、ロック部材102側部の係合溝109に係合可能な係合突起110を有し、バネ部材111aによりロック部材102の方向に付勢されている。また、フレームカバー112の裏面からロック部材102の移動方向に沿ってスライドプレート104へ向かって保持軸113が延設され、この保持軸113の先端部113aがスライドプレート104の係合溝部114に係合することにより、スライドプレート104がロック部材102から離隔する状態に保たれている。
【0004】
保持軸113は、バネ部材111bによりスライドプレート104から離間する方向に付勢されている。また、フレームカバー112の裏面に着脱可能に嵌め込まれた保持手段115から係止ピン116が延設され、この係止ピン116の先端が保持軸113の後端部113bに係合することにより、保持軸113がスライドプレート104に係合した状態が保たれている。
【0005】
上記構成において、駐車時にモータ105をロック方向に回転させると、モータ105の駆動力によって、回転部材106が回転してカム部材107がロック部材102のロック方向(図12の上方向)へ移動するので、巻バネ101の付勢力によってロック部材102がステアリングロック位置へ変位する。その結果、ロック部材102の先端がステアリングシャフトに嵌合し、ステアリングシャフトの回転が阻止されるので、自動車は操縦不能な状態となる。
【0006】
その後、モータ105をロック解除方向に回転させると、回転部材106が逆方向へ回転して、カム部材107とともにロック部材102がロック解除位置に変位する。その結果、ステアリングシャフトとの嵌合が解除されるので、ステアリングシャフトの回転が自由となり、自動車は操縦可能な状態となる。
【0007】
また、ステアリングロック状態にて、フレームカバー112の裏面から保持軸113がスライドプレート104へ向かって突出して、先端がスライドプレート104の係合溝部114に係合している。これにより、スライドプレート104がロック部材102から離隔する状態に保たれている。
【0008】
次いで、車両駐車時にフレームカバー112側からステアリングロック装置100に外力が加えられた場合、保持手段115がフレームカバー112裏面から脱落して、テーパー部112aを移動することによって、係止ピン116と保持軸113との係合が外れて、保持軸113がフレームカバー112側へ移動し、保持軸113がスライドプレート104の係合溝部114から離脱するので、スライドプレート104がバネ部材111aによりロック部材102の方向に付勢され、係合突起110がロック部材102側部の係合溝109に係合する。これにより、ロック部材102がステアリングロック位置で制止されているので、ステアリングシャフトの回転が阻止され、不正なロック解除操作で車両が操縦可能になるという不具合を防止でき、車両駐車時に車両の防盗性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−248843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のステアリングロック装置100では、フレームカバー112側に加えられた外力によって保持手段115を脱落させる構成のため、組上げられたステアリングロック装置100を車体に組付けるまでの間の取扱いに注意が必要となる上に、外部からは保持手段115が正規の位置にあるのか、脱落しているのか確認する術が無く、信頼性に欠けるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、補助ロック手段の構成を複雑にすることなく、確実に作動する高い信頼性を備えた補助ロック手段を有するステアリングロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する請求項1の発明は、カバーで覆われたフレームに設けられたロッドガイド孔内に、ステアリングロック位置とステアリングロック解除位置との間をスライド自在に配置されたロック部材を備えるとともに、該ロック部材に設けられた補助係止部と、該フレーム側に補助ロック位置と補助ロック解除位置との間をスライド自在に配置され、付勢手段によって該補助係止部に係止するロック位置側に付勢された補助ロック部材と、一端が該カバー内に固定された保持手段と、からなる補助ロック手段を備え、該補助ロック手段が、該カバーを該フレームに組付けた状態で、該保持手段の先端が、補助ロック解除位置に位置する該補助ロック部材の保持受部に係合して、該補助ロック部材を補助ロック解除位置に保持し、該カバーが該フレームから相対移動した際に、該保持手段が変位して、該保持手段と該保持受部との係合が外れ、該付勢手段の付勢力によって該補助ロック部材が補助ロック解除位置から補助ロック位置へ移動し、ステアリングロック位置に位置する該ロック部材の該補助係止部に該補助ロック部材が係合し、前記ロック部材をステアリングロック位置にロックする補助ロック手段を備えたステアリングロック装置であって、該フレームの開口縁外側、および該カバーの開口縁内側の少なくともどちらか一方に、近接する外側面に対して斜めに交差するように設定された傾斜部を備え、該フレームの開口縁外側、および該カバーの開口縁内側の他側に傾斜受部を設定し、該傾斜部に向かって外側から外力が加わった際に、該傾斜受部が該傾斜部上をスライドし、該カバーが変位、または脱落することを特徴としている。


【0013】
請求項2の発明は、請求項1記載のステアリングロック装置であって、前記カバーは、合成樹脂材によって成形されていることを特徴としている。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1、または請求項2記載のステアリングロック装置であって、前記傾斜部は、前記カバーを前記フレームに組付ける方向に対して斜めに交差するように設定されたことを特徴としている。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のステアリングロック装置であって、前記カバーを前記フレームに組付けた状態で、該フレームの外側面に配設されたフレーム側係止部に該カバー内側面に配設されたカバー側係合部が係止されて、該カバーが該フレームに固定されるカバー固定手段を備え、該カバーが該フレームに組付けられた状態で、該フレーム側係止部と該カバー側係合部の対向する面の少なくともどちらか一方が、該カバーを該フレームに組付ける方向に対して斜めに交差するように設定されたことを特徴としている。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のステアリングロック装置であって、車両に取付けられた状態で、周辺の車両装備品に囲まれずに露出する前記カバーの部位、または前記フレームの部位に、前記傾斜部が配置されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、カバーに保持手段が固定されていることにより、カバーが正規の組付位置に組付けられていることで、補助ロック部材はトリガーによって補助ロック解除位置に保持されていることが明確になるため、外部からは保持手段が正規の位置にあるのか、脱落しているのか確認する必要が無くなり、高い信頼性を備えるとともに、必要以上に丁寧に取扱う必要がなくなり、取扱いが容易になる。
【0018】
また、傾斜部と傾斜受部とを設けたことにより、フレームの側面に加わった外力がカバーを変位する力に変換されるため、加えられた外力によって、保持手段が変位し、保持手段の先端が保持受部から外れ、補助ロック手段を確実に作動させることができる。以上のことから、補助ロック手段が、構成を複雑にすることなく、誤作動を防止し、確実に作動する高い信頼性を備えることができる。
【0019】
以上のことから、構成を複雑にすることなく、誤作動を防止し、補助ロック手段が、必要なときに確実に作動する高い信頼性を備えることができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、カバーが、硬質でありつつ、適度な変形能(柔軟性、弾力性)を備えた合成樹脂材で成形されていることによって、不正解錠を行なおうとした際に、カバーが破壊されたり、孔を開けられたりする前に変形し、カバーがフレーム上を相対移動するため、補助ロック手段をより確実に作動させることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、請求項1、および請求項2の発明の効果に加え、傾斜部は、カバーをフレームに組付ける方向に対して斜めに交差するように設定されたことにより、加えられた外力によって、カバーが外れる方向にカバーが変位し、フレームから脱落することで、保持手段の先端が保持受部から確実に外れ、補助ロック手段をより確実に作動させることができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、請求項1〜請求項3の発明の効果に加え、カバーがフレームに組付けられた状態で、フレーム側係止部とカバー側係合部の対向する面の少なくともどちらか一方が、カバーをフレームに組付ける方向に対して斜めに交差するように設定されたことにより、カバーをフレーム上に固定配置しつつ、外力が加えられた際には、フレーム側係止部をカバー側係合部が乗越えて、カバーがフレームから脱落する。これによって、補助ロック手段をより確実に作動させることができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、請求項1〜請求項4の発明の効果に加え、周辺の車両装備品に囲まれずに露出するカバーの部位、またはフレームの部位に、傾斜部が配置されることにより、意図的に外部から外力を加えようと狙われる部位に傾斜部が配置されていることになるため、意図的に外部から外力が加えられた際に、補助ロック手段をより確実に作動させることができる。また、周辺の車両装備品に囲まれ、外部から狙われにくい部位には、傾斜部を設けないことで、カバーの脱落し易い箇所が減り、不用意に力が加わった場合等に、補助ロック手段が誤作動することを防止することができる。
【0024】
以上のことから、補助ロック手段の作動信頼性をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態を示し、ステアリングロック装置の正面図である。
図2】本発明の第1実施形態を示し、ステアリングロック装置のステアリングロック状態を示す図1のII-II線に沿った断面図である。
図3】本発明の第1実施形態を示し、ステアリングロック装置のステアリングロック状態を示す図1のIII-III線に沿った断面図である。
図4】本発明の第1実施形態を示し、ステアリングロック状態のステアリングロック装置に側面から外力が加わった状態を示す図1のII-II線に沿った断面図である。
図5】本発明の第1実施形態を示し、ステアリングロック状態のステアリングロック装置に側面から外力が加わった状態を示す図1のIII-III線に沿った断面図である。
図6】本発明の第1実施形態を示し、ステアリングロック装置のステアリングロック状態を示す断面図である。
図7】本発明の第1実施形態を示し、図6の要部拡大図である。
図8】本発明の第1実施形態の別態様を示し、ステアリングロック装置のステアリングロック状態を示す図1のIII-III線に対応する断面図である。
図9】本発明の第2実施形態を示し、ステアリングロック装置の正面図である。
図10】本発明の第2実施形態を示し、ステアリングロック装置のステアリングロック状態を示す図9のX-X線に沿った断面図である。
図11】本発明の第2実施形態を示し、ステアリングロック装置のステアリングロック状態を示す図9のXI-XI線に沿った断面図である。
図12】従来技術のステアリングロック装置のステアリングロック状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
<第1実施形態>
第1実施形態のステアリングロック装置1は、図1図7に示すように、互いに組み付けされるカバー2およびフレーム3を有し、自動車のステアリングシャフト(図示せず)を収容するステアリングコラム装置(図示せず)に取付けられる。
【0028】
フレーム3は、一方の側(図2および図3などの上側)に向かって開口する部品収容室3aと、この部品収容室3aの底部からステアリングコラム装置A側に貫通し、ステアリングシャフトの軸方向に対して垂直な方向へ延びるロック収容孔3bと、このロック収容孔3bと直交する方向に延びる補助ロック収容孔3cとが内部に形成されると共に、ステアリングコラム装置Aに跨るように配置される一対の脚部3d,3dを有している。ロック収容孔3bには、ステアリングシャフトのロック状態を保持するロック部材6が収容されている。また、部品収容室3aには、駆動源であるモータ(図示せず)と、このモータ回転軸のウォームギヤ(図示せず)の駆動によってロック解除方向およびロック方向に回転するウォームホイール等で構成され、ロック部材6をステアリングロック位置とステアリングロック解除位置との間を移動する駆動手段が収容されている。そして、補助ロック収容孔3cには、後述する補助ロック手段9を構成し、フレーム3からカバー2が相対移動した場合にロック部材6をステアリングロック位置に保持するスライドプレート(補助ロック部材)91が収容されている。フレーム3とカバー2との間には、カバー固定手段4が設けられ、カバー固定手段4によって、カバー2がフレーム3に固定されている。なお、カバー2は、合成樹脂材であるナイロン材で成形されている。ナイロン材は、硬質でありつつ、適度な変形能(柔軟性、弾力性)を備えているので、不正解錠を行なおうとした際に、カバー2が破壊されたり、孔を開けられたりする前に変形し、カバー2がフレーム3上を相対移動する。
【0029】
ロック部材6は、図6に示すように、ロック部材6の基端側を構成し、スライド部材5と係合するハンガー7と、ロック部材6の先端側を構成し、ハンガー7に連結され、先端がフレーム3の底面から出入りしてステアリングシャフトに対して嵌合可能なロック本体8と、これらのハンガー7およびロック本体8間に介設され、ロック本体8をステアリングロック解除位置側からステアリングロック位置側へ向かって付勢する付勢手段としての巻バネ62と、ハンガー7およびロック本体8を連結する連結ピン61とから構成されている。また、ロック部材6は、ステアリングシャフトの軸方向と平行な幅広の面B、および幅広の面Bに対して垂直な厚さの面Cを有しており、厚さの面Cに連結ピン61の端部からなる突起(補助係止部)97が設けられている。
【0030】
補助ロック手段9は、ロック部材6の幅広の面Bからロック部材6の板厚方向に延設されるスライドプレート91と、このスライドプレート91をロック部材6の突起97の方向へ、補助ロック位置に向かって付勢する巻バネ(付勢手段)92と、カバー2の内面に突設される保持軸(保持手段)21と、フレーム3の開口縁外側に設定された傾斜部95と、カバー2の開口縁内側に設定された傾斜受部96とで構成されている。
【0031】
スライドプレート91および巻バネ92は、ステアリングロック位置に位置するロック部材の突起と係合する補助ロック位置と、突起から離間し、ロック部材のスライドを許容する補助ロック解除位置との間をスライド可能に、ロック部材6の幅広の面Bより外側に配置されている。また、スライドプレート91の一端側には、図2に示すように、カバー2の裏面から内側に突出する保持軸21の先端が係合する係合凹部(保持受部)93が形成される。スライドプレート91の他端には、突起97を上下から挟むように受け入れる二股形状の係合端部94が形成されている。
【0032】
保持軸21は、軸形状を備え、1面が開口する箱形状を備えたカバー2の内面に、カバー2と一体に形成されている。そして、カバー2をフレーム3に組付けた状態で、保持軸21は、補助ロック解除位置に位置するスライドプレート91の係合凹部93に、保持軸21の先端が係合し、スライドプレート91が補助ロック解除位置に保持される。また、カバー2がフレーム3から脱落すると、保持軸21と係合凹部93との係合が外れ、巻バネ92の付勢力によって、スライドプレート91が補助ロック位置へ移動する。
【0033】
傾斜部95は、ステアリングロック装置1を車両に取付けた状態で、周辺の車両装備品に囲まれずに露出するフレーム3の部位の開口縁外側に設けられている。また、傾斜部95は、近接する外側面3eに対して斜めに交差するように、つまり、カバー2に面しつつ、カバー2をフレーム3に組付ける方向に対して斜めに交差するように設定されたテーパー状の斜面で構成されている。また、カバー2をフレーム3に組付けた状態で、傾斜部95と対向するカバー2の開口縁内側の部位が、傾斜受部96に設定されている。そして、フレーム3の側方から傾斜部95に向かって過大な力が加わった際には、カバー2の側面が変形しつつ、傾斜受部96が傾斜部95上をスライドして、カバー2がフレーム3から脱落する方向へ加わった外力を変換する構成となっている。
【0034】
カバー固定手段4は、カバー2をフレーム3に組付けた状態で、カバー2とフレーム3とが対向当接する部位に設けられている。また、カバー固定手段4は、フレーム3の外側面に配設されたフレーム側係止部43と、カバー内側面に配設されたカバー側係合部42とから構成されている。また、フレーム側係止部43は、カバー2がフレーム3に組付けられた状態で、カバー側係合部42と対向し、係合する係合面43aが、カバー2をフレーム3に組付ける方向に対して斜めに交差するように設定されている。そして、カバー2をフレーム3に組付けた際には、カバー側係合部42とフレーム側係止部43とが係合し、カバー2がフレーム3に固定され、過大な力がカバー2に加わった際には、カバー側係合部42が係合面43aを乗越えて、カバー側係合部42とフレーム側係止部43の係合が外れて、カバー2がフレーム3から脱落する構成となっている。
【0035】
次に、上記ステアリングロック装置1の動作を説明する。図2に示すロック本体8のステアリングロック時には、ハンガー7と連結されるロック本体8が、駆動手段(図示せず)によって、ステアリングロック位置に位置し、ロック本体8がフレーム3の底面から突出してステアリングシャフトに嵌合する。その結果、ステアリングシャフトの回転が阻止されるので、自動車が操縦不能な状態に保たれる。また、上記ロック状態からロック解除する場合には、駆動手段によって、ロック本体8が連動してステアリングシャフトから離れ、ロック本体8がフレーム3内に後退して、ステアリングロック解除位置に変位し、ステアリングシャフトの回転が許容されるので、自動車が操縦可能な状態になる。
【0036】
そして、上記ステアリングロック状態では、図4に示すように、巻バネ92の付勢力によってスライドプレート91が補助ロック位置側に付勢保持されているので、不正行為によってフレーム3からカバー2を取外した際に、カバー2の保持軸21がスライドプレート91の係合凹部93から離脱し、スライドプレート91が補助ロック解除位置から補助ロック位置へ移動し、スライドプレート91の係合端部94がロック本体8の突起97を上下から挟むように係合する。これによって、ロック部材6(ハンガー7およびロック本体8)の移動が阻止され、ロック本体8によるステアリングロック状態が保持される。
【0037】
また、不正解錠を行なおうとして、周辺の車両装備品に囲まれずに露出するカバーの部位に、フレーム3の側方から過大な外力を加えられた際には、カバー2の開口縁がフレーム側面に当接した状態から、カバー側面が変形しつつ、傾斜受部96が傾斜部95上をスライドして、カバー2がフレーム3から脱落する方向の力に、外力が変換され、カバー2がフレーム3から脱落する。これにより、カバー2の保持軸21がスライドプレート91の係合凹部93から離脱し、スライドプレート91が補助ロック解除位置から補助ロック位置へ移動し、スライドプレート91の係合端部94がロック本体8の突起97を上下から挟むように係合するため、ロック部材6(ハンガー7およびロック本体8)の移動が阻止され、ロック本体8によるステアリングロック状態が保持される。
【0038】
以上、本実施形態では、カバー2に保持軸21が固定されていることにより、カバー2が正規の組付位置に組付けられていることで、スライドプレート91は保持軸21によって補助ロック解除位置に保持されていることが明確になるため、外部からは保持軸21が正規の位置にあるのか、脱落しているのか確認する必要が無くなり、高い信頼性を備えるとともに、必要以上に丁寧に取扱う必要がなくなり、取扱いが容易になる。
【0039】
また、傾斜部95と傾斜受部96とを設けたことにより、フレーム3の側面に加わった外力が、カバー2が外れる方向にカバー2を変位する力に変換されるため、加えられた外力が弱くても、カバー2がフレーム3から相対移動するとともに、保持軸21の先端が係合凹部93から外れ、補助ロック手段9を確実に作動させることができる。
【0040】
カバー2が、硬質でありつつ、適度な変形能(柔軟性、弾力性)を備えたナイロン材で成形されていることによって、不正解錠を行なおうとして、意図的に外部から外力を加えようとする際に、カバー2が破壊されたり、孔を開けられたりする前に変形し、カバー2がフレーム3上を相対移動するとともに、保持軸21の先端が係合凹部93から外れる。これにより、補助ロック手段9をより確実に作動させることができる。
【0041】
カバー固定手段4を構成するフレーム側係止部43の係合面43aが、カバー2をフレーム3に組付ける方向に対して斜めに交差するように設定されたことにより、カバー2をフレーム3上に固定配置しつつ、外力が加えられた際には、フレーム側係止部43をカバー側係合部42が乗越えて、カバー2がフレーム3から脱落する。したがって、補助ロック手段9をより確実に作動させることができる。
【0042】
周辺の車両装備品に囲まれずに露出するカバー2の部位、またはフレーム3の部位に、傾斜部95が配置されることにより、不正解錠を行なおうとして、意図的に外部から外力を加えようとする際に、狙われ易い部位に傾斜部95が配置されていることになるため、外部から外力が加えられた際に、補助ロック手段9をより確実に作動させることができる。
【0043】
また、周辺の車両装備品に囲まれ、外部から狙われにくい部位には、傾斜部95を設けないことで、カバー2の脱落し易い箇所が減り、不用意に力が加わった場合等に、補助ロック手段が誤作動することを防止することができる。
【0044】
以上のことから、構成を複雑にすることなく、誤作動を防止し、補助ロック手段が、必要な時に確実に作動する高い信頼性を備えることができる。
【0045】
なお、本実施形態では、傾斜部95と傾斜受部96とが、周辺の車両装備品に囲まれずに露出する部位にのみ配置、設定されているが、ステアリングロック装置1全体が、車両装備品に囲まれずに露出するような場合には、側面全体に傾斜部95と傾斜受部96とを配置、設定する構成としても良い。
【0046】
<第1実施形態の別態様>
図8は本発明の第1実施形態の別態様を示し、ステアリングロック装置を示す断面図である。上記第1実施形態と本別態様とで、構成が大きく異なる点は、傾斜部95aと傾斜受部96aであり、上記第1実施形態と同様の構成については同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0047】
傾斜部95aは、ステアリングロック装置1aを車両に取付けた状態で、周辺の車両装備品に囲まれずに露出するカバー2の部位の開口縁内側に設けられている。また、傾斜部95aは、近接する外側面3eに対して斜めに交差するように、つまり、フレーム3に面しつつ、カバー2をフレーム3に組付ける方向に対して斜めに交差するように設定されたテーパー状の斜面で構成されている。また、カバー2をフレーム3に組付けた状態で、傾斜部95aと対向するフレーム3の開口縁外側の部位が、傾斜受部96aに設定されている。そして、フレーム3の側方から傾斜部95aに向かって過大な力が加わった際には、傾斜受部96aが傾斜部95a上をスライドして、カバー2がフレーム3から脱落する方向へ加わった外力を変換する構成となっている。つまり、上記第1実施形態の傾斜部95aと傾斜受部96aとを置換えた構成となっている。
【0048】
以上、本態様では、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、カバー2に傾斜部95aを設けることで、カバー2に外力が加わる部位の剛性が高まるため、カバー2に外力が加わった際のカバー2の破損が防止され、より確実に傾斜部95aが傾斜受部96aをスライドすることができる。これにより、フレーム3の側面に加わった外力を、より確実にカバー2が外れる方向にカバー2を変位する力に変換することができる。
【0049】
なお、上記第1実施形態と本別態様では、傾斜部にのみ傾斜面を設ける構成としているが、傾斜受部にも傾斜部と同様の傾斜面を設ける構成としても良い。
【0050】
<第2実施形態>
図9は本発明の第2実施形態を示し、ステアリングロック装置を示す断面図である。上記第1実施形態と本第2実施形態とで、大きく異なる点は、傾斜部95Bと傾斜受部96Bの構成と作動方向であり、上記第1実施形態と同様の構成については同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0051】
傾斜部95Bは、ステアリングロック装置1Bを車両に取付けた状態で、周辺の車両装備品に囲まれずに露出するフレーム3の部位の開口縁外側に設けられている。また、傾斜部95Bは、近接する外側面3eに対して斜めに交差するように、つまり、カバー2に面しつつ、カバー2とフレーム3との合わせ面に沿ってカバー2がフレーム3上を回転する方向に対して斜めに交差するように設定されたテーパー状の斜面で構成されている。また、カバー2をフレーム3に組付けた状態で、傾斜部95Bと対向するカバー2角部の開口縁内側の部位に、傾斜受部96Bが設定されている。なお、保持軸21は、カバー2が回転した際の回転中心以外の部位に配置されている。
【0052】
このような構成で、不正解錠を行なおうとして、周辺の車両装備品に囲まれずに露出するカバーの部位に、フレーム3の側方から過大な外力を加えられた際には、カバー2の側面が変形しつつ、傾斜受部96Bが傾斜部95B上をスライドして、カバー2がフレーム3上を回転する方向の力に、外力が変換され、カバー2の開口部が変形しながら、カバー2がフレーム3上を回転する。これにより、カバー2の保持軸21がスライドプレート91の係合凹部93から離脱し、スライドプレート91が補助ロック解除位置から補助ロック位置へ移動し、スライドプレート91の係合端部94がロック本体8の突起97を上下から挟むように係合するため、ロック部材6(ハンガー7およびロック本体8)の移動が阻止され、ロック本体8によるステアリングロック状態が保持される。
【0053】
以上、本実施形態では、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、外力をカバー2がフレーム3から脱落する方向だけでなく、カバー2がフレーム3上を回転する方向の力に変換することができる。
【0054】
したがって、補助ロック手段9をより確実に作動させることができるため、構成を複雑にすることなく、誤作動を防止し、補助ロック手段が、必要な時に確実に作動する高い信頼性を備えることができる。
【0055】
なお、本実施形態では、傾斜部にのみ傾斜面を設ける構成としているが、傾斜受部に上記別態様の傾斜受部と同様の傾斜面を設け、傾斜部と傾斜受部の斜面の向きが異なるように設定する構成としても良い。
【符号の説明】
【0056】
1,1a,1B…ステアリングロック装置
2…カバー
3…フレーム
4…カバー固定手段
6…ロック部材
9…補助ロック手段
21…保持軸(保持手段)
42…カバー側係合部
43…フレーム側係止部
43a…係合面(フレーム側係止部とカバー側係合部との対向する面)
91…スライドプレート(補助ロック部材)
92…巻バネ(付勢手段)
93…係合凹部(保持受部)
95…傾斜部
96…傾斜受部
97…突起(補助係止部)
図1
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