特許第5770518号(P5770518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770518
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】ナノ粒子群の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/57 20060101AFI20150806BHJP
   C09K 11/88 20060101ALI20150806BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   C09K11/57CPA
   C09K11/88CPA
   C09K11/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-86603(P2011-86603)
(22)【出願日】2011年4月8日
(65)【公開番号】特開2012-219194(P2012-219194A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2013年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】506122327
【氏名又は名称】公立大学法人大阪市立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高木 知己
(72)【発明者】
【氏名】川井 正一
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 進
(72)【発明者】
【氏名】金 大貴
【審査官】 馬籠 朋広
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第1721585(CN,A)
【文献】 特開2010−058984(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101139524(CN,A)
【文献】 特開2005−272795(JP,A)
【文献】 Journal of China Pharmaceutical University,2010年,41(5), pp.456-461
【文献】 Journal of Physical Chemistry C,2009年,Vol.113(2009), pp.1293-1300
【文献】 Nanotechnology,2007年,Vol.18(2007), 485611, pp.1-7
【文献】 NANO LETTERS,2007年,Vol.7(2007), No.2, pp.312-317
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00−11/89
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mnを提供するイオン源と、無機ナノ粒子を構成する原子を提供するイオン源と、親水性の配位子と、を水系溶媒中で混合し、得られた溶液のpH調整を行う混合工程と、
前記pH調整後の前記溶液を加熱して粒子経が10nm以下の波長変換ナノ粒子を生成する加熱工程と、
前記生成された波長変換ナノ粒子を含む溶液を放置することによって、その波長変換ナノ粒子を直径20〜100nmの大きさに凝集させた後、基材に塗布する凝集工程と、
を備えたナノ粒子群の製造方法であって、
前記無機ナノ粒子を構成する原子としてZnを含み、
前記配位子がN−アセチル−L−システインであり、
前記混合工程では、N−アセチル−L−システインと前記イオン源中のMn原子とを1:1のモル比で含む溶液と、N−アセチル−L−システインと前記イオン源中のZn原子とを1:4.8のモル比で含む溶液とを、混合することを特徴とするナノ粒子群の製造方法。
【請求項2】
前記無機ナノ粒子を構成する原子としてSeを含むことを特徴とする請求項に記載のナノ粒子群の製造方法。
【請求項3】
前記加熱工程における加熱温度が150℃〜250℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載のナノ粒子群の製造方法。
【請求項4】
前記無機ナノ粒子を構成する原子として、SとSeとを含み、
前記混合工程は、
前記無機ナノ粒子を構成するSe以外の各原子を各々提供する前記各イオン源と、前記配位子と、を水系溶媒中で混合し、得られた溶液のpH調整を行う第1混合工程と、
前記無機ナノ粒子を構成するS以外の各原子を各々提供する前記各イオン源と、前記配位子と、を水系溶媒中で混合し、得られた溶液のpH調整を行う第2混合工程と、
前記第1混合工程で得られた前記pH調整後の溶液と、前記第2混合工程で得られた前記pH調整後の溶液とを混合する第3混合工程と、
からなり、
前記Mnを提供するイオン源は、前記第1混合工程または前記第2混合工程で前記溶液に混合されることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載のナノ粒子群の製造方法。
【請求項5】
前記混合工程終了後の前記溶液はpH9〜11に調整されていることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載のナノ粒子群の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収した光とは異なる波長の光を発生する波長変換ナノ粒子が凝集してなるナノ粒子群の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収した光とは異なる波長の光を発生する波長変換ナノ粒子は、LEDの表面に配設されて当該LEDの発光色を変更したり、太陽電池の表面に設けられて入射光の波長を変換することにより当該太陽電池の効率を向上させたりと、種々の用途に応用されている。
【0003】
従来、このような波長変換ナノ粒子としては、CdSを含むものが提案されているが、波長変換ナノ粒子の廃棄処理を容易にするために、ZnSe等を使用して波長変換ナノ粒子を製造することが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
非特許文献1に記載の製造方法では、有機溶媒中で波長変換ナノ粒子を製造しているが、溶媒の廃棄処理を容易にするために、水系溶媒中で波長変換ナノ粒子を製造することも提案されている(例えば、非特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Narayan Pradhan and Xiaogang Peng,J.AM.CHEM.SOC.VOL.129,NO.11,2007,3339-3347
【非特許文献2】Narayan Pradhan,David M. Battaglia,Yongcheng Liu, and Xiaogang Peng,Nano Lett., Vol.7,No.2,2007,312-317
【非特許文献3】Abdelhay Aboulaich,Malgorzata Geszke,Lavinia Balan,Jaafar Ghanbaja,Ghouti Medjahdi,and Raphael Schneider,Inorg.Chem.,VOL.49,2010,10940-10948
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記各非特許文献では、波長変換ナノ粒子の製造後の特性変化については何ら検証されていない。また、従来は、製造された波長変換ナノ粒子ができるだけ安定して溶液中に分散するように研究がなされたり、製造後の波長変換ナノ粒子が凝集等によって特性変化する前にできるだけ早く使用することに努力が払われたりしていた。
【0007】
これに対して、本願出願人は、波長変換ナノ粒子がある程度凝集した方が、却って発光強度が向上することを発見した。そこで、本発明は、波長変換ナノ粒子が適度に凝集して良好な発光強度を有するナノ粒子群の製造方法を提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
記目的を達するためになされた本発明は、Mnを提供するイオン源と、無機ナノ粒子を構成する原子を提供するイオン源と、親水性の配位子と、を水系溶媒中で混合し、得られた溶液のpH調整を行う混合工程と、前記pH調整後の前記溶液を加熱して粒子経が10nm以下の波長変換ナノ粒子を生成する加熱工程と、前記生成された波長変換ナノ粒子を含む溶液を放置することによって、その波長変換ナノ粒子を直径20〜100nmの大きさに凝集させた後、基材に塗布する凝集工程と、を備えたナノ粒子群の製造方法であって、前記無機ナノ粒子を構成する原子としてZnを含み、前記配位子がN−アセチル−L−システインであり、前記混合工程では、N−アセチル−L−システインと前記イオン源中のMn原子とを1:1のモル比で含む溶液と、N−アセチル−L−システインと前記イオン源中のZn原子とを1:4.8のモル比で含む溶液とを、混合することを特徴とするナノ粒子群の製造方法を要旨としている。
【0016】
本発明の方法では、先ず、混合工程にて、Mnを提供するイオン源と、無機ナノ粒子を構成する原子を提供するイオン源と、親水性の配位子と、を水系溶媒中で混合し、得られた溶液のpH調整する。続いて、加熱工程にて、前記pH調整後の前記溶液を加熱して粒子経が10nm以下の波長変換ナノ粒子を生成する。更に、凝集工程にて、前記生成された波長変換ナノ粒子を含む溶液を放置することによって、その波長変換ナノ粒子を直径20〜100nmの大きさに凝集させた後、基材に塗布する。
【0017】
このため、混合工程及び加熱工程により、粒子経が10nm以下でMnによるドープがなされた波長変換ナノ粒子を、水系溶媒中で良好に製造することができる。更に、凝集工程において、凝集によって得られたナノ粒子群を基材に塗布することにより、そのナノ粒子群は直径20〜100nmの大きさを維持することができる。従って、本発明の方法では、Mnによるドープがなされた波長変換ナノ粒子からなるナノ粒子群を、容易に製造することができる。
【0018】
なお、本発明の方法では、前記無機ナノ粒子を構成する原子としてZnを含。そのため、本発明の方法よって製造されたナノ粒子群の発光強度を、一層良好に向上させることができる。
【0019】
そして、前記配位子がN−アセチル−L−システインであり、前記混合工程では、Mnを提供する前記イオン源とN−アセチル−L−システインとを含む溶液と、Znを提供する前記イオン源とN−アセチル−L−システインとを含む溶液とを、混合する。そのため、前記ナノ粒子群を水系溶媒中で一層良好に製造することができる。
【0020】
また、本発明の方法において、前記無機ナノ粒子を構成する原子としてSeを含んでもよい。その場合、本発明の方法よって製造されたナノ粒子群の発光強度を、一層良好に向上させることができる。
【0021】
また、本発明の方法において、前記加熱工程における加熱温度が150℃〜250℃であってもよい。本願出願人は、水系溶媒中で波長変換ナノ粒子を製造する場合、150℃〜250℃に加熱して製造すると、良好な発光強度を有する波長変換ナノ粒子が得られることを発見した。これは、高温でナノ粒子を生成することにより、きれいな結晶ができるためと考えられる。
【0022】
但し、250℃より高温に加熱すると、自己清浄化効果によってドープの効果が低減される傾向が生じる。すなわち、波長変換ナノ粒子では、無機ナノ粒子が吸収した例えば紫外領域の光のエネルギを、Mnが可視領域の光に変換する。しかしながら、250℃より高温で結晶を製造した場合、無機ナノ粒子の結晶からMnが排除される傾向が生じるのである。また、逆に、150℃未満の温度で波長変換ナノ粒子した場合は、加熱の効果が十分に得られず、従来の方法で水系溶媒中で生成された波長変換ナノ粒子と余り発光強度の差が出ない。なお、このような、高温下での波長変換ナノ粒子の生成は、必要に応じて適宜の高圧下にて行われることはいうまでもない。
【0023】
従って、この場合、前述のように良好な発光強度を有する波長変換ナノ粒子によって前記ナノ粒子群を製造することができるので、得られるナノ粒子群の発光強度を一層良好に向上させることができる。
【0024】
また、本発明の方法において、前記無機ナノ粒子を構成する原子として、SとSeとを含み、前記混合工程は、前記無機ナノ粒子を構成するSe以外の各原子を各々提供する前記各イオン源と、前記配位子と、を水系溶媒中で混合し、得られた溶液のpH調整を行う第1混合工程と、前記無機ナノ粒子を構成するS以外の各原子を各々提供する前記各イオン源と、前記配位子と、を水系溶媒中で混合し、得られた溶液のpH調整を行う第2混合工程と、前記第1混合工程で得られた前記pH調整後の溶液と、前記第2混合工程で得られた前記pH調整後の溶液とを混合する第3混合工程と、からなり、前記Mnを提供するイオン源は、前記第1混合工程または前記第2混合工程で前記溶液に混合されてもよい。
【0025】
無機ナノ粒子を構成する原子としてSとSeとを含む場合、混晶からなる無機ナノ粒子が生成され、SとSeとの比率を適切に調整することで前記発光強度を極めて良好に向上させることができる。ところが、SとSeとでは、そのイオン源を反応系に追加する際に適切なpHが大きく異なる。
【0026】
そこで、前述のように、第1混合工程にて、無機ナノ粒子を構成するSe以外の各原子(Sも含む)を各々提供する前記各イオン源と前記配位子とを水系溶媒中で混合して得られた溶液のpHを調整し、第2混合工程にて、無機ナノ粒子を構成するS以外の各原子(Seも含む)を各々提供する前記各イオン源と前記配位子とを水系溶媒中で混合して得られた溶液のpHを調整し、それらのpH調整後の溶液を第3混合工程で混合すればよい。なお、Mnを提供するイオン源は、前記第1混合工程または前記第2混合工程で前記溶液に混合される。こうすることによって、前述のような混晶からなる波長変換ナノ粒子を良好に製造することができ、ひいては、その波長変換ナノ粒子を凝集させて得られるナノ粒子群の発光強度も一層良好に向上させることができる。
【0027】
また、本発明の方法において、前記混合工程終了後の前記溶液はpH9〜11に調整されていてもよく、その場合、その溶液を加熱することによって、極めて良好な発光強度を有する波長変換ナノ粒子を製造することができる。従って、その波長変換ナノ粒子を凝集させて得られるナノ粒子群の発光強度も一層良好に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明が適用されたナノ粒子群の製造方法を表す説明図である。
図2】その方法で得られた中間生成物としての波長変換ナノ粒子の、放置による輝度変化を表すグラフである。
図3】その方法で得られたナノ粒子群を表すTEM像である。
図4】そのナノ粒子群の発光スペクトルを表すグラフである。
図5】その方法の原理を模式的に表す説明図である。
図6】前記ナノ粒子群の使用例及びその効果を表す説明図である。
図7】そのナノ粒子群の各波長に対する透過率を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施の形態を、図面と共に説明する。図1は、本発明が適用されたナノ粒子群の製造方法を表す説明図である。図1(A)に示すように、本実施の形態では、先ず、Znイオン源(例えば、過塩素酸亜鉛)とN−アセチル−L−システイン(以下、NACという)とを1:4.8のモル比で含む水溶液と、Mnイオン源(例えば、過塩素酸マンガン)とNACとを1:1のモル比で含む水溶液とを混合した。なお、前者の水溶液と後者の水溶液とは10:1の割合で混合し、混合後の水溶液全体に対するMnの濃度が2mol%となるようにした。
【0030】
続いて、その水溶液にNaOHを添加することによってpH8.5に調整し、更に、図1(B)に示すように、Seイオン源(例えばNaHSe)を1.2mmol添加した。なお、このときのZn:Seのモル比は(1:0.6)である。また、この水溶液(ZnMnSeのPrecursor)では、金属原子にNACのSH基が配位し、NACのカルボキシル基が水系溶媒への溶解を促進しているものと推察される。その水溶液に更にNaOHを添加することによって、図1(C)に示すようにpH10.5に調整した後、高圧下(例えば6気圧)で200℃に加熱することによって、波長変換ナノ粒子(ZnSe:Mn)を製造した。なお、加熱時間は20分とした。
【0031】
次に、図2は、前述のように製造された波長変換ナノ粒子を、前記溶液中で放置した場合の輝度変化を表すグラフである。また、図2には、20℃,25℃,70℃の各種温度で保管した場合について、輝度変化を示した。なお、輝度の測定は、波長変換ナノ粒子が凝集して出来たナノ粒子群が沈殿した時点で終了した。
【0032】
図2に示すように、いずれの温度でも、放置によって発光強度は大幅に向上した。また、20℃または25℃で保管した例では、太い矢印で示す時点で白濁化した後、輝度は低下した。また、発光強度は、温度が高いほど短い期間で向上した。
【0033】
また、図3は、前述のように製造された波長変換ナノ粒子が分散した溶液にバインダとしてのプルランを添加し、室温でSi基板上に2日放置し、固化させた後の状態を透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope)で観察したTEM像である。なお、図3(B)は図3(A)の丸で囲んだ部分を拡大したTEM像であり、図3(C)は図3(B)の丸で囲んだ部分を拡大したTEM像である。前述のように製造された波長変換ナノ粒子は、製造直後は3〜5nmの粒子経を有しているが、図3のTEM像から、前記放置によって波長変換ナノ粒子が凝集し、直径20〜60nmのナノ粒子群を形成していることが分かる。
【0034】
更に、図4に示す前記ナノ粒子群の発光スペクトルから、そのナノ粒子群は、580nmに発光強度のピークを有することが分かった。Zn及びSeから構成された無機ナノ粒子にMnをドープして得られる波長変換ナノ粒子(ZnSe:Mn)も、同様の位置に発光強度のピークを有することが知られている。従って、前記ナノ粒子群は、製造直後の粒子経を維持したまま、一体化することなく前記大きさに凝集したものと推察される。
【0035】
これは、図5(A)に模式的に示すように、波長変換ナノ粒子10の周囲にNACからなる配位子11が配位しており、これによって、波長変換ナノ粒子10が凝集してナノ粒子群20を形成した後も、各波長変換ナノ粒子10は一体化せずに個々に光を吸収して異なる波長(580nm前後)の光を発生しているものと推察される。すなわち、図5(B)に模式的に示すように、波長変換ナノ粒子10が凝集して一体化し、粒子経の大きい波長変換ナノ粒子10を形成したと仮定すると、下記の式から導けるように吸収する光の波長が長波長化するが、図4のグラフからそのような仮定は否定される。また、図5(C)に模式的に示すように、波長変換ナノ粒子10が製造直後と同様の分散状態を維持しているのであれば、発光強度は変化しないはずである。
【0036】
【数1】
従って、本実施の形態では、図5(A)に模式的に示すように、波長変換ナノ粒子10が一体化せずに凝集し、それによって効率が向上して、波長特性を変化させることなく発光強度を向上させることができたものと推察することができる。なお、図5(D)に模式的に示すように、プルラン等のバインダ30を用いて凝集を促進した場合、適切な温度,放置時間等の各種パラメータは変化する可能性がある。
【0037】
そこで、本実施の形態の製造方法では、白濁する直前のナノ粒子群20を溶媒40と共に採取し、図6(A)に示すように基材の一例としてのガラス板50に塗布し、更にその表面にもう1枚のガラス板51を積層してナノ粒子群20の大きさを前記白濁する直前の状態に維持した。このように、ナノ粒子群20を溶媒40と共にガラス板50,51で挟んでなるフィルタは、紫外線を吸収して可視光に変換する特性を有する。このため、このようなフィルタを太陽電池の表面に配設すれば、その太陽電池の効率を向上させることができる。
【0038】
また、このようにガラス板50,51に挟む実験では、波長変換ナノ粒子10が凝集して得られたナノ粒子群20は、ガラス板50の表面に均一に塗布するのが容易で、しかも、挟んだ後から偏析が起こりにくいことも分かった。すなわち、製造直後の波長変換ナノ粒子10を、図6(B)に示すように溶媒40と共にガラス板50,51で挟むと、時間の経過に伴って、図6(C)に示すように波長変換ナノ粒子10がガラス板50,51の周囲に偏析するが、ナノ粒子群20ではそのような現象は確認されなかった。なお、実験では、ガラス板50,51の間に、プルランとナノ粒子溶液を1:1で混合した溶液1.5mlを挟んで固化させた。溶液の固形物量はおよそ0.02重量%であるが、プルランが水分を含み固化し、ガラス板50,51の面積が100cm2 であるため、貼り付け直後のガラス板50,51の対向面の間隔は0.15mmと推定される。
【0039】
図7は、そのようなフィルタの各波長に対する透過率を、ナノ粒子群20の濃度を種々に変えて測定した実験結果を表すグラフである。図7に示すように、濃度倍率(1倍が0.02重量%に相当)を高くするほど、紫外線は良好に吸収されるが、可視光線はいずれの濃度倍率でも良好に透過されることが分かった。なお、白濁した後に採取されたナノ粒子群20では、可視光線の透過率も低下した。このように、前記フィルタは、紫外線を可視光線に変換するフィルタとして良好に使用できることが分かった。
【0040】
なお、本発明は前記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、Znイオン源としては、前述の過塩素酸亜鉛の他、塩化亜鉛,酢酸亜鉛,硝酸亜鉛等が使用できる。また、Mnイオン源としては、前述の過塩素酸マンガンの他、塩化マンガン,酢酸マンガン,臭化マンガン等が使用できる。また、Seイオン源としては、前述のNaHSeの他、セレノウレア,セレン化水素ガス等が使用できる。更に、配位子としては、前述のNACの他、メルカプト酢酸,メルカプトプロピオン酸,メルカプトこはく酸等が使用できる。
【0041】
また更に、Seの代わりにSを使用してもよい。その場合も、図1(A)の工程の後にはpHを10.5に調整するのが望ましい。また、その場合、図1(B)の工程で用いるSイオン源としては、硫化ナトリウム,チオ尿素,硫化水素ガス等が使用でき、Zn:Sのモル比が1:0.6となるようにするのが望ましい。
【0042】
また、無機ナノ粒子を構成するアニオンとしてSeを用いる場合とSを用いる場合とでは、図1(A)の工程の後において調整すべきpHの値が異なる。そこで、次のような方法により、アニオンとしてSeとSとの両方を用いたいわゆる混晶半導体としての無機ナノ粒子をMnでドープした波長変換ナノ粒子を、製造することができる。
【0043】
すなわち、前述の図1(A),(B)の工程によって製造されたZnMnSeの前駆体(Precursor)溶液と、その図1(A),(B)の工程において前述のようにSeの代わりにSを使用して製造されたZnS:Mnの前駆体溶液とを、別々に製造する。そして、pH10.5に調整の後、両者を混合して200℃で20分加熱することによってSeとSとの両方を含む波長変換ナノ粒子を得ることができる。この波長変換ナノ粒子では、SeとSとの比は自由に調整でき、ZnSeX1-X:Mn(0<X<1)なる一般式で表すことができる。この波長変換ナノ粒子を、前述のように放置してガラス板50等の基材に塗布することで、本発明の実施の形態としてのナノ粒子群を得ることができる。
【0044】
また、前記実施の形態では、カチオンとしてZn,Mnを使用しているが、Mnの代わりにCdを用いるなど、カチオンの種類も種々に変更することができる。更に、SまたはSeと、Mnと、Znとは、どういう順番で混ぜてもよい。また更に、波長変換ナノ粒子が分散された溶液には塩などを添加してもよく、その場合、ナノ粒子群の形成速度等を調整することができる。
【0045】
また、本発明のナノ粒子群を構成する波長変換ナノ粒子は、前記方法で製造されたものに限定されるものではなく、例えば、有機溶媒中で製造された波長変換ナノ粒子など、種々の波長変換ナノ粒子を利用することができる。更に、ナノ粒子群が塗布される基材としてもガラスの他、プラスチック,大理石等、種々の基材を利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
10…波長変換ナノ粒子 11…配位子 20…ナノ粒子群
30…バインダ 40…溶媒 50,51…ガラス板
図2
図4
図6
図7
図1
図3
図5