(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記フライホイールの駆動により前記駆動軸が回転して前記スライドが下降する間、該駆動軸の回転により前記発電機で発電して、前記蓄電手段に蓄電するように制御する
ことを特徴とする請求項1記載の鍛造プレス装置。
前記制御手段は、前記フライホイールの駆動により前記駆動軸が回転して前記スライドが上昇する間、または慣性力により前記駆動軸が回転して前記スライドが上昇する間、該駆動軸の回転により前記発電機で発電して、前記蓄電手段に蓄電するように制御する
ことを特徴とする請求項1または2記載の鍛造プレス装置。
前記制御手段は、前記フライホイールの駆動により前記駆動軸を回転させて加圧成形する間、該駆動軸の回転により前記発電機で発電して、前記蓄電手段に蓄電するように制御する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の鍛造プレス装置。
前記フライホイールの駆動により前記駆動軸が回転して前記スライドが上昇する間、または慣性力により前記駆動軸が回転して前記スライドが上昇する間、該駆動軸の回転により前記発電機で発電して、前記蓄電手段に蓄電するように制御する
ことを特徴とする請求項6または7記載の鍛造プレス装置の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本願発明者は、ハイブリッドプレス装置において加圧成形をサーボモータで行うことにより、加圧速度を高速にし、スライドモーションを任意に設定することを検討した。
加圧成形をサーボモータで行うにあたり、加圧速度を高速にするためにはサーボモータを駆動するための電源の容量を大きくする必要があるという問題がある。特に、加圧成形に高エネルギーを必要とする場合には、相当大きな電源容量が必要であり現実的でないという知見を得た。逆に言えば、電源容量を抑えることができれば、現実的な設計が可能になる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、サーボモータを駆動するための電源の容量を抑えることができる鍛造プレス装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の鍛造プレス装置は、金型が取り付けられるスライドと、回転することにより前記スライドを昇降させる駆動軸と、該駆動軸にクラッチを介して連結されたフライホイールと、前記駆動軸に連結されたサーボモータと、前記駆動軸に連結された発電機と、該発電機が発電した電気を蓄電し、前記サーボモータに電力を供給する蓄電手段と、前記クラッチ、前記サーボモータおよび前記発電機の動作を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、
上昇工程および/または下降工程において、前記フライホイールの駆動により前記駆動軸を回転させて前記スライドを上昇および/または下降させるように制御し、加圧成形工程において、前記蓄電手段から前記サーボモータに電力を供給し、該サーボモータの駆動により前記駆動軸を回転させて加圧成形するように制御し、前記フライホイールの駆動により前記駆動軸が回転している間、および/または慣性力により前記駆動軸が回転している間、該駆動軸の回転により前記発電機で発電して、前記蓄電手段に蓄電するように制御することを特徴とする。
第2発明の鍛造プレス装置は、第1発明において、前記制御手段は、前記フライホイールの駆動により前記駆動軸が回転して前記スライドが下降する間、該駆動軸の回転により前記発電機で発電して、前記蓄電手段に蓄電するように制御することを特徴とする。
第3発明の鍛造プレス装置は、第1または第2発明において、前記制御手段は、前記フライホイールの駆動により前記駆動軸が回転して前記スライドが上昇する間、または慣性力により前記駆動軸が回転して前記スライドが上昇する間、該駆動軸の回転により前記発電機で発電して、前記蓄電手段に蓄電するように制御することを特徴とする。
第4発明の鍛造プレス装置は、第1、第2または第3発明において、前記制御手段は、前記フライホイールの駆動により前記駆動軸を回転させて加圧成形する間、該駆動軸の回転により前記発電機で発電して、前記蓄電手段に蓄電するように制御することを特徴とする
。
第5発明の鍛造プレス装置は、第1、第2、第
3または
第4発明において、前記発電機は前記サーボモータであることを特徴とする。
第6発明の鍛造プレス装置の制御方法は、金型が取り付けられるスライドと、回転することにより前記スライドを昇降させる駆動軸と、該駆動軸にクラッチを介して連結されたフライホイールと、前記駆動軸に連結されたサーボモータと、前記駆動軸に連結された発電機と、該発電機が発電した電気を蓄電し、前記サーボモータに電力を供給する蓄電手段と、を備える鍛造プレス装置の制御方法であって、
上昇工程および/または下降工程において、前記フライホイールの駆動により前記駆動軸を回転させて前記スライドを上昇および/または下降させるように制御し、加圧成形工程において、前記蓄電手段から前記サーボモータに電力を供給し、該サーボモータの駆動により前記駆動軸を回転させて加圧成形するように制御し、前記フライホイールの駆動により前記駆動軸が回転している間、および/または慣性力により前記駆動軸が回転している間、該駆動軸の回転により前記発電機で発電して、前記蓄電手段に蓄電するように制御することを特徴とする。
第7発明の鍛造プレス装置の制御方法は、
第6発明において、前記フライホイールの駆動により前記駆動軸が回転して前記スライドが下降する間、該駆動軸の回転により前記発電機で発電して、前記蓄電手段に蓄電するように制御することを特徴とする。
第8発明の鍛造プレス装置の制御方法は、
第6または
第7発明において、前記フライホイールの駆動により前記駆動軸が回転して前記スライドが上昇する間、または慣性力により前記駆動軸が回転して前記スライドが上昇する間、該駆動軸の回転により前記発電機で発電して、前記蓄電手段に蓄電するように制御することを特徴とする。
第9発明の鍛造プレス装置の制御方法は、
第6、第7または
第8発明において、前記フライホイールの駆動により前記駆動軸を回転させて加圧成形する間、該駆動軸の回転により前記発電機で発電して、前記蓄電手段に蓄電するように制御することを特徴とする
。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、蓄電手段に蓄電した電気を利用してサーボモータを駆動できるので、その分サーボモータを駆動するための電源の容量を抑えることができ、現実的な設計が可能となる。また、発電機は、フライホイールの回転エネルギーの余剰分や、従動系の慣性エネルギーを電気に変換するので、鍛造プレス装置全体としてエネルギーを効率的に使用できる。
さらに、サーボモータの駆動により加圧成形するので、加圧速度を高速にでき、また、成形中のスライドモーションを任意に設定することができる。
第2発明によれば、スライドを下降させる際のフライホイールの回転エネルギーの余剰分を、電気に変換して蓄電できる。そのため、鍛造プレス装置全体としてエネルギーを効率的に使用できる。
第3発明によれば、スライドを上昇させる際のフライホイールの回転エネルギーの余剰分を、電気に変換して蓄電できる。また、従動系の慣性エネルギーを電気に変換することにより、スライドにブレーキをかけつつ蓄電することができる。そのため、鍛造プレス装置全体としてエネルギーを効率的に使用できる。
第4発明によれば、加圧成形する際のフライホイールの回転エネルギーの余剰分を、電気に変換して蓄電できる。また、発電機の発電時間を長時間確保できるので、蓄電手段の蓄電量を早期に回復させることができる
。
第5発明によれば、サーボモータとは別に発電機を設ける必要がないため、鍛造プレス装置全体をコンパクトにできる。
第6発明によれば、蓄電手段に蓄電した電気を利用してサーボモータを駆動できるので、その分サーボモータを駆動するため
の電源
の容量を抑えることができ、現実的な設計が可能となる。また、発電機は、フライホイールの回転エネルギーの余剰分や、従動系の慣性エネルギーを電気に変換するので、鍛造プレス装置全体としてエネルギーを効率的に使用できる。
さらに、サーボモータの駆動により加圧成形するので、加圧速度を高速にでき、また、成形中のスライドモーションを任意に設定することがでる。
第7発明によれば、スライドを下降させる際のフライホイールの回転エネルギーの余剰分を、電気に変換して蓄電できる。そのため、鍛造プレス装置全体としてエネルギーを効率的に使用できる。
第8発明によれば、スライドを上昇させる際のフライホイールの回転エネルギーの余剰分を、電気に変換して蓄電できる。また、従動系の慣性エネルギーを電気に変換することにより、スライドにブレーキをかけつつ蓄電することができる。そのため、鍛造プレス装置全体としてエネルギーを効率的に使用できる。
第9発明によれば、加圧成形する際のフライホイールの回転エネルギーの余剰分を、電気に変換して蓄電できる。また、発電機の発電時間を長時間確保できるので、蓄電手段の蓄電量を早期に回復させることができる
。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(第1実施形態)
まず、
図1に基づき本発明の第1実施形態に係る鍛造プレス装置Pの全体構造を説明する。
図1において、符号Bは鍛造プレス装置Pのベッドを示しており、このベッドBの上面に設けられた下ダイホルダーDHの上面に金型Cの下型が取り付けられている。金型Cの上型は、スライドSの下面に設けられた上ダイホルダーDHの下面に取り付けられている。
【0011】
スライドSは、コンロッドCRを介してエキセンシャフトESの偏心部Hに連結されている。このエキセンシャフトESは、そのジャーナル部JがクラウンCWに回転可能に支持されている。このエキセンシャフトESは、いわゆるフルエキセン形のクランク軸であり、偏心部Hを挟むように、同軸かつ同軸径の一対のジャーナル部Jを有している。そして、エキセンシャフトESは、その一対のジャーナル部J,Jが、ブシュなどからなるクラウンCWのサポート部SPによって回転可能に支持されており、後述する駆動機構に連結されている。
このため、駆動機構によってエキセンシャフトESが回転されることにより、スライドSが上下に昇降し、このスライドSが下方に移動したときに、金型Cの上型下型に素材(被成形品)が挟まれて鍛造されるのである。
なお、エキセンシャフトESは、特許請求の範囲に記載の駆動軸に相当する。
【0012】
つぎに、鍛造プレス装置Pの駆動機構を説明する。
図1に示すように、エキセンシャフトESには、その軸端間を貫通する貫通孔である軸配置孔hが形成されている。この軸配置孔hは、一対のジャーナル部J,J、偏心部Hを貫通しており、その中心軸がエキセンシャフトESの一対のジャーナル部J,Jと同軸となるように形成されている。
そして、この軸配置孔h内には、伝動軸11が配設されている。この伝動軸11は、その軸径が軸配置孔hの内径よりも若干細く形成されたものである。そして、この伝動軸11は、後述する伝達手段20のケース20cおよびクラッチブレーキ31の本体部分によって、その中心軸が軸配置孔hの中心軸と同軸、言い換えれば、エキセンシャフトESの一対のジャーナル部J,Jの中心軸と同軸となり、しかも、エキセンシャフトESに対して回転自在となるように保持されている。
【0013】
また、伝動軸11は、エキセンシャフトESの軸配置孔h内に配置された状態において、その両端がエキセンシャフトESの両端から突出する長さに形成されている。そして、伝動軸11の一端(
図1では右端)は公知の遊星歯車減速機である伝達手段20に連結されている。
【0014】
伝動軸11の右端におけるエキセンシャフトESの端部から突出した部分には、伝達手段20の太陽歯車21が固定されている。この太陽歯車21には複数の遊星歯車22が噛み合っており、この複数の遊星歯車22は伝達手段20のケース20cの内面に設けられた歯と噛み合っている。複数の遊星歯車22は、各歯車の中心軸が伝動軸11の中心軸から全て同じ距離となるように回転部材23に取付られている。この回転部材23は、伝動軸11に軸受等を介して回転自在に支持されている。また、回転部材23は、エキセンシャフトESの右端に固定された従動部材24とギアカップリングで結合されている。
【0015】
このため、伝動軸11が回転すると、複数の遊星歯車22が自転しながら太陽歯車21のまわりを公転するので、回転部材23が伝動軸11の中心軸まわりに回転する。そして、回転部材23と従動部材24とがギアカップリングで結合された状態で回転するから、従動部材24とともにエキセンシャフトESがその中心軸まわりに回転するのである。
そして、太陽歯車21と遊星歯車22の歯数を調整すれば、エキセンシャフトESの回転数を伝動軸11の回転数に対して所定の割合に減速することができるので、エキセンシャフトESに対し大きなトルクを発生させることができる。
【0016】
伝動軸11の左端において、エキセンシャフトESから突出している部分には、クラッチブレーキ31を備えたフライホイール30が取り付けられている。このクラッチブレーキ31は、その本体部分がクラウンCWに固定されており、クラッチを接続すると、フライホイール30と伝動軸11とが連結されるように構成されている。そして、フライホイール30は、Vベルト32を介して動力源となるFW用モータ33の主軸に連結されている。このため、FW用モータ33を作動させた状態においてクラッチを接続すれば、フライホイール30の駆動を伝動軸11に伝達することができる。また、クラッチを切断すると、フライホイール30と伝動軸11との連結が解除され、フライホイール30の駆動が伝動軸11に伝達されないようになる。
【0017】
クラッチブレーキ31のブレーキを動作させると、クラッチブレーキ31の本体部分を介してクラウンCWと伝動軸11とが連結され、伝動軸11の回転速度を低下させ、また、回転を停止させることができる。
【0018】
伝動軸11の右端におけるエキセンシャフトESの端部から突出した部分には、伝達手段20の他に、サーボモータ40が連結されている。伝動軸11とサーボモータ40とは、サーボモータ40の主軸が伝動軸11に直結することで連結されている。
なお、サーボモータ40は、特許請求の範囲に記載のサーボモータおよび発電機に相当する。
【0019】
つぎに、サーボモータ40の電源系について説明する。
サーボモータ40の電源系は、交流電力を発生させる電源51と、電源51に接続されたコンバータ52と、サーボモータ40に接続されたコンバータ55と、コンバータ52とコンバータ55とを接続するバス53と、コンバータ52と並列にバス53に接続されたコンデンサ54とから構成される。コンバータ52は、電源51から送られてくる交流電力を直流電力に変換する。コンバータ55は、コンバータ52またはコンデンサ54から送られてくる直流電力を交流電力に変換する。また、コンバータ55は、サーボモータ40から送られてくる交流電力を直流電力に変換する。
そのため、サーボモータ40は、電源51およびコンデンサ54の両方または一方から供給される電力により駆動できるようになっている。また、後述のごとくサーボモータ40を発電機として動作させる場合には、サーボモータ40で発電した電気をコンデンサ54に蓄電できるようになっている。
なお、コンデンサ54は、特許請求の範囲に記載の蓄電手段に相当する。蓄電手段としては、コンデンサ54の他に蓄電池も用いることができる。
【0020】
一方、FW用モータ33は、サーボモータ40に接続された電源51と共通あるいは別系統の電源(図示せず)から電力が供給され、その電力により駆動できるように構成されている。
【0021】
また、鍛造プレス装置Pには、クラッチブレーキ31のクラッチの接続/切断およびブレーキの動作を制御し、FW用モータ33、サーボモータ40およびサーボモータ40の電源系の動作を制御する制御手段60が備えられている。この制御手段により、後述のフライホイール30およびサーボモータ40の動作の切り換えが行われる。
以上のように、エキセンシャフトESを回転させる駆動源としてフライホイール30とサーボモータ40の両方を備えるので、鍛造プレス装置Pはいわゆるハイブリッドプレス装置である。
【0022】
つぎに、
図2に基づき鍛造プレス装置Pの制御方法について説明する。
図2に、プレス装置の基本的なスライドモーションを示す。スライドモーションの1サイクルは、下降、加圧成形、上昇の3つの工程に大きく分けられる。下降工程とは、スライドSが下降する工程であり、スライドSがストロークの最上点(例えば、上死点)から下降して上型Cが素材と接触するまでの工程である。また、加圧成形工程とは、上型Cと下型Cとで素材を加圧成形する工程であり、上型Cが素材と接触してからスライドSがストロークの最下点(例えば、下死点)に達して再び上型Cが素材と離間するまでの工程である。また、上昇工程とは、スライドSが上昇する工程であり、上型Cが素材から離間してからスライドSがストロークの最上点まで上昇するまでの工程である。
【0023】
本発明は、各工程において、フライホイール30およびサーボモータ40の動作を切り換えるところに特徴がある。
図2においてパターン1〜5は、フライホイール30およびサーボモータ40の動作パターンを例示したものである。
図中、FWはフライホイール30を意味し、SMはサーボモータ40を意味する。そして、フライホイール30がoffの工程は、クラッチブレーキ31のクラッチが切断され、フライホイール30の駆動が伝動軸11に伝達されていない工程を意味する。また、フライホイール30がonの工程は、クラッチブレーキ31のクラッチが接続され、フライホイール30の駆動が伝動軸11に伝達されている工程を意味する。また、サーボモータ40がoffの工程は、サーボモータ40に電源51からもコンデンサ54からも電力が供給されておらず、サーボモータ40が伝動軸11によって回転させられているか、伝動軸11とともに停止している工程である。また、サーボモータ40がonの工程は、サーボモータ40に電源51およびコンデンサ54の両方または一方から電力が供給されており、サーボモータ40の駆動が伝動軸11に伝達されている工程を意味する。また、サーボモータ40の発電工程は、サーボモータ40を発電機として動作させる工程であり、伝動軸11の回転によりサーボモータ40を回転させて発電し、サーボモータ40で発電した電気をコンデンサ54に蓄電する工程を意味する。
【0024】
以下、パターン1〜5について説明する。
(パターン1)
まず、下降工程においては、クラッチブレーキ31のクラッチが接続され、フライホイール30の駆動により伝動軸11およびエキセンシャフトESが回転してスライドSが下降する。その間、サーボモータ40は発電機として動作し、伝動軸11の回転によりサーボモータ40を回転させて発電し、サーボモータ40で発電した電気をコンデンサ54に蓄電する。
【0025】
一般に、フライホイール30の回転エネルギーは、停止しているスライドSを起動させるのに要する起動エネルギーに比べ非常に大きい。したがって、スライドSをフライホイール30の駆動で下降させつつ、サーボモータ40を発電し、発電した電気をコンデンサ54に蓄電することができる。
【0026】
つぎに、加圧成形工程においては、クラッチブレーキ31のクラッチを切断する。そして、サーボモータ40の駆動により伝動軸11およびエキセンシャフトESを回転させて加圧成形を行う。このとき、サーボモータ40には、コンデンサ54から電力が供給される。また、コンデンサ54の電力が足りない場合には、電源51からも電力が供給される。
【0027】
このように、サーボモータ40の駆動による加圧成形を直前の下降工程において蓄電したエネルギーを利用して行うことができるため、加圧速度を高速にしても電源51の電源容量の増大を抑制することができる。また、回転速度を自由に調整できるサーボモータ40を用いて加圧成形を行うため、成形中のスライドモーションを任意に設定することができる。そのため、加圧速度を高速にする必要のある熱間鍛造や、複雑形状の成形にも適している。
【0028】
つぎに、上昇工程においては、クラッチブレーキ31のクラッチが接続され、フライホイール30の駆動により伝動軸11およびエキセンシャフトESが回転してスライドSが上昇する。その間、サーボモータ40は発電機として動作し、伝動軸11の回転によりサーボモータ40を回転させて発電し、サーボモータ40で発電した電気をコンデンサ54に蓄電する。
【0029】
一般に、フライホイール30の回転エネルギーは、スライドSを上昇させるのに必要なエネルギーに比べて非常に大きい。したがって、スライドSをフライホイール30の駆動で上昇させつつ、サーボモータ40を発電し、発電した電気をコンデンサ54に蓄電することができる。
【0030】
(パターン2)
パターン2の下降工程と加圧成形工程はパターン1と同様である。
パターン2の上昇工程においては、クラッチブレーキ31のクラッチを切断する。クラッチを切断しても、従動系の慣性力により伝動軸11およびエキセンシャフトESが回転してスライドSが上昇する。ここで、従動系とは、伝動軸11、エキセンシャフトES、コンロッドCR、スライドS、上ダイホルダーDH、および上型C等の、フライホイール30やサーボモータ40の駆動系によって動作する部分を意味する。一方、サーボモータ40は発電機として動作し、伝動軸11の回転によりサーボモータ40を回転させて発電し、サーボモータ40で発電した電気をコンデンサ54に蓄電する。
【0031】
一般に、スライドSが最上点まで近づくと、クラッチブレーキ31のブレーキを動作させてスライドSの上昇速度を低下させ、場合によっては最上点においてスライドSを停止させることが行われる。
一方、上記のように慣性力によりスライドSが上昇している間に、サーボモータ40で発電することにより、従動系の慣性エネルギーを電気に変換して蓄電しつつ、スライドSにブレーキをかけることができる。すなわち、サーボモータ40を回生ブレーキとして用いることができる。
【0032】
(パターン3)
パターン3は、パターン1の成形工程において、フライホイール30の駆動により伝動軸11およびエキセンシャフトESを回転させて、サーボモータ40で発電してコンデンサ54に蓄電するパターンである。すなわち、スライドモーションの1サイクルすべてにおいて、フライホイール30の駆動により伝動軸11およびエキセンシャフトESを回転させて、サーボモータ40で発電してコンデンサ54に蓄電する。
【0033】
一般に、フライホイール30の回転エネルギーは、スライドSの下降、加圧成形、スライドSの上昇を行うのに必要なエネルギーに比べて非常に大きい。したがって、スライドSをフライホイール30で駆動させつつ、サーボモータ40を発電し、発電した電気をコンデンサ54に蓄電することができる。
また、コンデンサ54の蓄電量が少ない場合には、サーボモータ40による発電時間を長時間確保できるので、蓄電量を早期に回復させることができる。
【0034】
(パターン4)
パターン4は、パターン1の成形工程において、フライホイール30とサーボモータ40の両方の駆動により伝動軸11およびエキセンシャフトESを回転させて加圧成形するパターンである。
加工する素材や、成形形状によっては、サーボモータ40のみでは加圧成形に必要なトルクやエネルギーが足りない場合がある。このような場合に、フライホイール30とサーボモータ40の両方で駆動することにより、加圧成形に必要なトルクやエネルギーを供給することができる。
【0035】
(パターン5)
パターン5は、パターン1の下降工程および上昇工程において、サーボモータ40に電力を供給せず、発電もしないように制御したパターンである。
例えば、大型のプレス装置では従動系の慣性質量が大きいため、スライドSを停止状態から起動させるためには、非常に大きなトルクやエネルギーを必要とする場合がある。このような場合には、サーボモータ40による発電を停止してクラッチトルクを下げることにより、スライドSを起動させることができる。
【0036】
以上のように、本発明に係る鍛造プレス装置Pの制御方法によれば、フライホイール30の駆動または慣性力により回転する伝動軸11によりサーボモータ40を回転させて発電し、コンデンサ54に蓄電できる。そして、コンデンサ54に蓄電した電気を利用してサーボモータ40を駆動できるので、その分サーボモータ40を駆動するための電源51の電源容量を抑えることができる。そのため、鍛造プレス装置Pの現実的な設計が可能となる。また、サーボモータ40は、フライホイール30の回転エネルギーの余剰分や、従動系の慣性エネルギーを電気に変換するので、鍛造プレス装置P全体としてエネルギーを効率的に使用できる。
【0037】
なお、上記パターン1〜5においては、下降、加圧成形、上昇の各工程の境目において、クラッチブレーキ31のクラッチの接続/切断を切り換え、サーボモータ40の動作を切り換えるように説明したが、クラッチの接続/切断の切り換え、およびサーボモータ40の動作の切り換えは、各工程の境目より時間的に前後してもよい。
クラッチの接続時には、サーボモータ40による伝動軸11の回転速度とフライホイール30の回転速度を一致させることにより、クラッチの衝撃を低減することができる。そのため、クラッチの接続/切断の切り換え、および/またはサーボモータ40の動作の切り換えを、各工程の境目より時間的に前後させることにより、伝動軸11の回転速度とフライホイール30の回転速度を一致させてクラッチの衝撃を低減することができる。
【0038】
また、安全上の要求から、上記パターン1〜5の上昇工程において、スライドSが最上点にて停止するよりも前にクラッチブレーキ31のクラッチを切断してもよい。
【0039】
また、上記パターン1〜5のいずれか1つのパターンを繰り返して、連続的にプレス加工を行ってもよいし、1サイクルごとに異なったパターンで、プレス加工を行っても良い。例えば、複数の金型を備え、トランスファ送り装置で素材を順次次工程の金型に送るトランスファプレスにおいては、1サイクルごとに、成形方法に合わせた最適なパターンで制御することが好ましい。この場合に、あるパターンでコンデンサ54に蓄電した電気を、他のパターンでサーボモータ40の駆動に用いるようにしてもよい。
【0040】
(第2実施形態)
つぎに、
図3に基づき本発明の第2実施形態に係る鍛造プレス装置P’について説明する。
本実施形態に係る鍛造プレス装置P’においては、伝動軸11の右端にメインギア61が固定され、このメインギア61と噛み合う複数の駆動ギア62が設けられている。各駆動ギア62には、フレームなどよってクラウンCWに固定された複数のサーボモータ41、42の主軸がそれぞれ連結されている。このように、複数のサーボモータ41、42から伝動軸11に駆動力を供給できるので、1つのサーボモータ41、42が発生する駆動力が小さくても、伝動軸11に大きな駆動力を供給させることが可能である。
その余の構成は、第1実施形態に係る鍛造プレス装置Pと同様であるので、同一部材に同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
なお、サーボモータ41、42の電源系は、第1実施形態の電源系において、バス53にサーボモータ41と42が並列に接続されたものである。
そのため、サーボモータ41、42は、電源51およびコンデンサ54の両方または一方から供給される電力により駆動できるようになっている。また、サーボモータ41、42を発電機として動作させる場合には、サーボモータ41、42で発電した電気をコンデンサ54に蓄電できるようになっている。
【0042】
本実施形態においても、実施形態1に係る鍛造プレス装置Pと同様の制御を行うことができる。
そのため、コンデンサ54に蓄電した電気を利用してサーボモータ41、42を駆動できるので、その分サーボモータ41、42を駆動するための電源51の電源容量を抑えることができる。そのため、鍛造プレス装置P’の現実的な設計が可能となる。また、サーボモータ41、42は、フライホイール30の回転エネルギーや、従動系の慣性エネルギーを電気に変換するので、鍛造プレス装置P’全体としてエネルギーを効率的に使用できる。
【0043】
また、サーボモータ41、42の一方を発電機としてのみ使用する場合、または、サーボモータ41、42の一方を発電機に代えた場合には、上記のパターン1〜5に加えて、
図4に示すパターン6の制御をすることができる。以下では符号41をサーボモータ、符号42を発電機として説明する。
【0044】
(パターン6)
まず、下降工程においては、クラッチブレーキ31のクラッチが接続され、フライホイール30の駆動により伝動軸11およびエキセンシャフトESが回転してスライドSが下降する。その間、サーボモータ41には電力が供給されず、伝動軸11の回転により回転させられている。一方、伝動軸11の回転により発電機42を回転させて発電し、発電機42で発電した電気をコンデンサ54に蓄電する。
【0045】
つぎに、加圧成形工程においては、クラッチブレーキ31のクラッチを切断する。そして、サーボモータ41の駆動により伝動軸11およびエキセンシャフトESを回転させて加圧成形を行う。このとき、サーボモータ41には、コンデンサ54から電力が供給される。また、コンデンサ54の電力が足りない場合には、電源51からも電力が供給される。また、発電機42は発電しないように制御される。
【0046】
つぎに、上昇工程においては、クラッチブレーキ31のクラッチが接続され、フライホイール30の駆動により伝動軸11およびエキセンシャフトESが回転してスライドSが上昇する。その間、サーボモータ41には電力が供給されず、伝動軸11の回転により回転させられている。一方、伝動軸11の回転により発電機42を回転させて発電し、発電機42で発電した電気をコンデンサ54に蓄電する。
【0047】
以上のように、サーボモータ41と発電機42を別々に設けることで、サーボモータ41の動作に関係せず、任意のタイミングで発電機42により発電することができる。
一方、第1実施形態のようにサーボモータ40を発電機として動作させれば、サーボモータ40とは別に発電機を設ける必要がないため、鍛造プレス装置P全体をコンパクトにできる。
【0048】
(その他の実施形態)
本発明に係る鍛造プレス装置は、スライドを昇降させる駆動軸にフライホイールとサーボモータが連結された構成であれば、どのような構成のものでもよい。例えば、上記実施形態において、伝動軸11および伝達手段20が設けられておらず、フライホイールとサーボモータがエキセンシャフトに連結された形態のものでもよい。また、サーボモータと駆動軸とをクラッチを介して連結した形態としてもよい。