【0019】
なお、上記一般式(2)のポリカーボネートジオールに関しては、市販のものを使用することができる。市販のポリカーボネートジオールとしては、例えば、旭化成ケミカルズ社製の商品名デュラノール T−4671(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
4−及び、−(CH
2)
6−、n=約7、数平均分子量1000)、T−4672(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
4−及び、−(CH
2)
6−、n=約14、数平均分子量1000)、T−4691(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
4−及び、−(CH
2)
6−、n=約7、数平均分子量1000)、T−4692(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
4−及び、−(CH
2)
6−、n=約14、数平均分子量2000)、T−5650J(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
5−及び、−(CH
2)
6−、n=約5、数平均分子量800)、T−5651(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
5−及び、−(CH
2)
6−、n=約7、数平均分子量1000)、T−5652(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
5−及び、−(CH
2)
6−、n=約14、数平均分子量2000)、T−6001(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
6−、n=約6、数平均分子量1000)、T−6002(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
6−、n=約13、数平均分子量2000)、ダイセル化学工業社製の商品名プラクセルCD CD−205(数平均分子量500)、CD−205PL(数平均分子量500)、CD−205HL(数平均分子量500)、CD−210(数平均分子量1000)、CD−210PL(数平均分子量1000)、CD−210HL(数平均分子量1000)、CD−220(数平均分子量2000)、CD−220PL(数平均分子量2000)、CD−220HL(数平均分子量2000)、クラレ社製の商品名クラレポリオールC−590(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
6−及び、−(CH
2)
2C(CH
3)(CH
2)
2−、n=約3、数平均分子量500)、C−1050(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
6−及び、−(CH
2)
2C(CH
3)(CH
2)
2−、n=約6、数平均分子量1000)、C−1090(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
6−及び、−(CH
2)
2C(CH
3)(CH
2)
2−、n=約6、数平均分子量1000)、C−2050(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
6−及び、−(CH
2)
2C(CH
3)(CH
2)
2−、n=約13、数平均分子量2000)、C−2090(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
6−及び、−(CH
2)
2C(CH
3)(CH
2)
2−、n=約13、数平均分子量2000)、C−3090(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
6−及び、−(CH
2)
2C(CH
3)(CH
2)
2−、n=約20、数平均分子量3000)などが挙げられる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0026】
<試薬>
実施例及び比較例において、用いた試薬は以下のとおりである。
【0027】
ポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製、デュラノールT5650J(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
5−及び−(CH
2)
6−、n=約5、数平均分子量800)、T5650E(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
5−及び−(CH
2)
6−、n=約3、数平均分子量500)T5651(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
5−及び−(CH
2)
6−、n=約7、数平均分子量1000)、T5652(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
5−及び−(CH
2)
6−、n=約14、数平均分子量2000)、クラレ社製ポリオール(クラレポリオール、C−2090(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
6−及び−(CH
2)
2C(CH
3)(CH
2)
2−、n=約13、数平均分子量2000、C−3090(一般式(2)中のR
1=−(CH
2)
6−及び−(CH
2)
2C(CH
3)(CH
2)
2−、n=約20、数平均分子量3000)、無水トリメリット酸クロリド(アルドリッチ社製)、ODPA(商標名:ODPA−M(マナック社製))、10BTA(黒金化成社製)、APB(商標名:APB−N(三菱化学社製))、ピリジン(和光純薬工業社製)、テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製)、γ―ブチロラクトン(和光純薬工業社製)、炭酸ナトリウム(和光純薬工業社製)。なお、以上の試薬は全て特別な精製を実施せずに用いた。
【0028】
<ポリイミド前駆体の合成>
窒素雰囲気下、セパラブルフラスコにポリカーボネート骨格を有する酸二無水物とODPA−Mを入れ、γ−ブチロラクトンを加えて攪拌した。窒素気流下、室温で攪拌しながらAPB−Nを加え、40℃のオイルバスで5時間加熱攪拌し、ポリイミド前駆体溶液を得た。
【0029】
<重量平均分子量測定>
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、下記の条件により測定した。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を用い、測定前に24.8mmol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mmol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたものを使用した。
カラム:Shodex KD−806M(昭和電工社製)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080Plus(JASCO社製)
検出器:RI−2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)
UV―2075Plus(UV−VIS:紫外可視吸光計、JASCO社製)
また、重量平均分子量を算出するための検量線は、スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作成した。
【0030】
<ポリイミド前駆体塗膜品の製造方法>
ポリイミド前駆体のコートは、FILMCOATER(TESTER SANGYO社製、PI1210)を用いるドクターブレード法により実施した。銅張積層板、ポリイミドフィルム(商品名:カプトン(登録商標))又はPETフィルムにポリイミド前駆体溶液を滴下し、クリアランス150μmでコートを行った。ポリイミド前駆体溶液をコートした上記銅張積層板を、乾燥器(ESPEC社製、SPHH−10l)を用いて95℃で12分間乾燥することにより、ポリイミド前駆体塗膜品を得た。
【0031】
<アルカリ溶解性評価>
現像性評価は、以下のようにして実施した。上記ポリイミド前駆体塗膜品に30℃の1質量%炭酸ナトリウムのアルカリ水溶液で180秒間のスプレー処理を行い、イオン交換水によるリンス及び乾燥後にスプレー処理前後の膜厚差を測定した。スプレー処理前後の膜厚差が20μm以上のものを◎とし、10〜20μmのものを○とし、2〜10μmのものを△とし、2μm以下のものを×とした。
【0032】
<柔軟性評価(焼成後の反り測定)>
ポリイミドフィルム(商品名:カプトン(登録商標))にポリイミド前駆体溶液を上記塗膜条件にて塗布したフィルムを、180℃で2時間の焼成処理を実施した。該フィルムを5cm角に切り出し、端部の浮き高さが10mm以内のものを◎とし、15mm以内のものを○とし、それ以上に浮き高さがあるものを×とした。
【0033】
<絶縁信頼性評価(HAST試験)>
絶縁信頼性評価は、以下のように実施した。ラインアンドスペースが20μm/20μmのくし型基板上に、ポリイミド前駆体溶液を上記塗膜条件で塗布した後、180℃で2時間焼成を行った。この塗膜品にマイグレーションテスタのケーブルを半田付けし、下記条件にて絶縁信頼性試験を行った。
絶縁劣化評価システム:SIR−12(楠本化成社製)
HASTチャンバー:EHS−211M(エスペック社製)
温度:110℃
湿度:85%
印加電圧:20V
印加時間:500時間
【0034】
絶縁抵抗値:1.0×10
6Ω未満を×とし、1.0×10
6Ω以上〜1.0×10
7Ω未満を△とし、1.0×10
7Ω以上〜1.0×10
8Ω未満を○とし、1.0×10
8Ω以上を◎とした。
【0035】
<耐熱性評価>
ポリイミド前駆体溶液を表面処理したPETフィルム(帝人デュポンフィルム社製、N152Q)に上記条件で塗布した後、180℃で2時間焼成を行った。焼成によって得られた膜を剥離し、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、TG/DTA6200)を用いて、260℃で10分間保持したときの熱重量減少を測定した。重量減少が5%未満の場合を○とし、5%以上の場合を×とした。
【0036】
<テトラカルボン酸二無水物の合成>
[実施例1]
反応容器を窒素ガスで置換、通気しながら、無水トリメリット酸クロリド53.0g(0.25mol)及びテトラヒドロフラン150.0gを仕込み、攪拌溶解後に氷水浴にて10℃まで冷却した。温度を維持したまま、ポリカーボネートジオール(デュラノール:T5650J)80.0g(0.1mol)及びピリジン15.8g(0.2mol)をテトラヒドロフラン200gに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。この温度を保ってさらに5時間反応を継続した。反応中に析出したピリジン塩酸塩は、反応終了後に濾過し、得られた濾液をロータリーエバポレーターにより濃縮した後、トルエン(和光純薬工業社製)で希釈した。0.3%水酸化ナトリウム水溶液で水洗後、静置分液した。分液後のトルエン層をロータリーエバポレーターにより濃縮し、106.0gの酸二無水物(1)を得た。酸二無水物(1)を以下TCA−D800と略称する。
【0037】
得られたTCA−D800の1H−NMRデータを以下に示す。また、
図1にTCA−D800の1H−NMRスペクトルを示し、
図2にIRスペクトルを示す。
1H−NMR測定条件
測定装置(日本電子社製、JEOL RESONANCE ECS400)
溶媒(重水素化DMSO:0.03%TMS含有)
試料濃度(5wt/vol%)
測定温度:室温
1H−NMR(DMSO−d6);1.311(brs,16H),1.447(brs,4H),1.601(brs,16H),1.766(brs,4H),4.042(brs,22H),4.363(brs,4H),8.211(d,2H),8.408(s,2H),8.480(d,2H)
【0038】
[実施例2]
デュラノール:T5650Jの代わりにデュラノール:T5651 100.0g(0.1mol)を用い、実施例1に準じて酸二無水物(2)を得た。酸二無水物(2)を以下TCA−D1000と略称する。
【0039】
[実施例3]
デュラノール:T5650Jの代わりにデュラノール:T5652 200.0g(0.1mol)を用い、実施例1に準じて酸二無水物(3)を得た。酸二無水物(3)を以下TCA−D2000と略称する。
【0040】
[実施例4]
デュラノール:T5650Jの代わりにデュラノール:T5650E 50.0g(0.1mol)を用い、実施例1に準じて酸二無水物(4)を得た。酸二無水物(4)を以下TCA−D500と略称する。
【0041】
[実施例5]
デュラノール:T5650Jの代わりにクラレポリオール:C−2090 200.0g(0.1mol)を用い、実施例1に準じて酸二無水物(5)を得た。酸二無水物(5)を以下TCA−C2000と略称する。
【0042】
[実施例6]
デュラノール:T5650Jの代わりにクラレポリオール:C−3090 300.0g(0.1mol)を用い、実施例1に準じて酸二無水物(6)を得た。酸二無水物(6)を以下TCA−C3000と略称する。実施例1から実施例6で使用したポリカーボネートジオールを下記表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
<ポリイミド前駆体の合成>
[実施例7]
TCA−D800、ODPA−M、APB−Nを用いて上述した公知のポリイミド前駆体の製造方法に従ってポリイミド前駆体(1)を合成した。得られたポリイミド前駆体(1)の重量平均分子量を下記表2に示す。更にポリイミド前駆体(1)の溶液を上述の塗布条件にて、銅張積層板上、くし型基板上、及びポリイミドフィルム上に塗布し、得られた塗膜品のアルカリ溶解性、焼成後の反り及び絶縁信頼性について評価した。評価結果を下記表2に示す。実施例7において、アルカリ溶解性は◎であり、柔軟性は◎であり、絶縁信頼性は◎であり、耐熱性は○であった。
【0045】
[実施例8]
TCA−D1000、ODPA−M、APB−Nを用いて上述した公知のポリイミド前駆体の製造方法に従ってポリイミド前駆体(2)を合成した。得られたポリイミド前駆体(2)の重量平均分子量を下記表2に示す。更にポリイミド前駆体(2)の溶液を上述の塗布条件にて、銅張積層板上、くし型基板上、及びポリイミドフィルム上に塗布し、得られた塗膜品のアルカリ溶解性、焼成後の反り及び絶縁信頼性について評価した。評価結果を下記表2に示す。実施例8において、アルカリ溶解性は◎であり、柔軟性は◎であり、絶縁信頼性は◎であり、耐熱性は○であった。
【0046】
[実施例9]
TCA−D2000、ODPA−M、APB−Nを用いて上述した公知のポリイミド前駆体の製造方法に従ってポリイミド前駆体(3)を合成した。得られたポリイミド前駆体(3)の重量平均分子量を下記表2に示す。ポリイミド前駆体(3)の溶液を上述の塗布条件にて、銅張積層板上、くし型基板上、及びポリイミドフィルム上に塗布し、得られた塗膜品のアルカリ溶解性、焼成後の反り及び絶縁信頼性について評価した。評価結果を下記表2に示す。実施例9において、アルカリ溶解性は◎であり、柔軟性は◎であり、絶縁信頼性は◎であり、耐熱性は○であった。
【0047】
[実施例10]
TCA−D500、ODPA−M、APB−Nを用いて上述した公知のポリイミド前駆体の製造方法に従ってポリイミド前駆体(4)を合成した。得られたポリイミド前駆体(4)の重量平均分子量を下記表2に示す。ポリイミド前駆体(4)の溶液を上述の塗布条件にて、銅張積層板上、くし型基板上、及びポリイミドフィルム上に塗布し、得られた塗膜品のアルカリ溶解性、焼成後の反り及び絶縁信頼性について評価した。評価結果を下記表2に示す。実施例10において、アルカリ溶解性は◎でり、柔軟性は○であり、絶縁信頼性は◎であり、耐熱性は○であった。
【0048】
[比較例1]
比較の為、ポリカーボネートジオール骨格の代わりに、柔軟性を有するメチレン鎖を含む10BTAを用いて、上述した公知のポリイミド前駆体の製造方法に従ってポリイミド前駆体(5)を合成した。得られたポリイミド前駆体(5)の重量平均分子量を下記表2に示す。ポリイミド前駆体(5)の溶液を上述の塗布条件にて、銅張積層板上、くし型基板上、及びポリイミドフィルム上に塗布した。得られた塗膜品のアルカリ溶解性、焼成後の反り及び絶縁信頼性について評価した。評価結果を下記表2に示す。比較例1において、アルカリ溶解性は×であり、柔軟性は×であり、絶縁信頼性は×であり、耐熱性は○であった。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示す結果から、本発明に係るテトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミド前駆体(1)〜(4)においては、アルカリ溶解性が良好で、フィルムの焼成後の反りが少なく柔軟性が良好であり、しかも、優れた絶縁信頼性及び耐熱性を有することが分かる。(実施例7〜実施例10参照)。
【0051】
これに対して、ポリカーボネート骨格を含まずにメチレン鎖を含むポリイミド前駆体(5)を用いた比較例1においては、アルカリ溶解性、柔軟性及び絶縁信頼性が×であった。この結果は、ポリカーボネート骨格を有していないポリイミド前駆体(5)を用いたことから、分子鎖に柔軟性が付与されず、また、疎水性が非常に高いメチレン基を有することから、アルカリ溶解性が低下したためと考えられる