特許第5770612号(P5770612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5770612-車両用アンテナアッセンブリ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770612
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】車両用アンテナアッセンブリ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20150806BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   H01Q1/32 Z
   H01Q1/22 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-267722(P2011-267722)
(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公開番号】特開2013-121049(P2013-121049A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中根 俊介
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−103587(JP,A)
【文献】 特開2010−041625(JP,A)
【文献】 特開2008−092463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
H01Q 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナベースの一端に樹脂モールドにより覆われて固定されたアンプ基板と、
アンテナベースの他端に延びるように配置された板状のアンテナエレメントであって、一端がアンプ基板に電気的に接続され、アンテナベースに嵌り合う嵌合部が他端に形成されたアンテナエレメントと、
を有し、
嵌合部はアンテナベースの他端と嵌り合いながら変位してアンテナエレメントの長手方向の変形を許容することを特徴とする車両用アンテナアッセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用アンテナアッセンブリにおいて、
アンテナエレメントの嵌合部は、アンテナベースの他端近傍に形成された長穴に入り込むように形成されたクランク状の板であり、アンテナベースの表面及び裏面の両面に面接触することでアンテナエレメントを保持することを特徴とする車両用アンテナアッセンブリ。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用アンテナアッセンブリにおいて、
アンテナエレメントの嵌合部は、アンテナベースの他端を挟むように形成されたフック状の板であり、アンテナベースの表面及び裏面の両面に点接触又は線接触することでアンテナエレメントを保持することを特徴とする車両用アンテナアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両外装品の内部に取り付ける車両用アンテナアッセンブリの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、ラジオ、デジタルテレビ及びGPS等のさまざまな無線受信装置が搭載されており、それぞれの周波数に応じたアンテナが装備されている。一般の乗用車では、これらのアンテナを車室外に設置することは美観や配置するスペースの点で好ましくないことから、乗用車のエアスポイラ、バンパ及びトランクリッドなどの樹脂製の車両外装品の内部空間にアンテナを設置することによりスペースの共用化並びに乗用車外観の向上を図っている。さらに、デジタルテレビ放送等の電波は方向性があることから、複数のアンテナエレメントによってダイバーシティ受信を行うことが多く、アンテナエレメントの数が増大する傾向にある。
【0003】
このような車両外装品にアンテナを配置する場合には、雨、埃などの侵入を防止するために防水性が求められる。そこで、特許文献1には、金属薄板のアンテナエレメントと、アンテナエレメントが受信した信号を増幅するアンプ基板と、をまとめて袋状フィルムの保護被膜で取り囲み、袋状フィルム内の空気を脱気、被覆、密着させてアンテナエレメントとアンプ基板を防水構造にする技術が開示されている。この技術によりアンテナエレメントとアンプ基板を防水構造にすることが可能となるが、金属薄板のエレメントが袋状フィルムに覆われているため接着剤を用いて袋ごとエアスポイラ、バンパ及びトランクリッドなどの車両外装品の平坦な内部空間に固定する必要がある。平坦な部分が無い場合、アンテナエレメントが湾曲することで性能劣化となる可能性がある。そこで、アンプ基板だけ樹脂カバーにより覆うことで防水する一例を図5に示す。
【0004】
図5の車両用アンテナアッセンブリは、アンテナエレメント111,112、アンプ基板120、アンプ基板120を防水する防水カバー117、アンプ基板120とコネクタ115とを接続するワイヤーハーネス114、及びこれらを支持するアンテナベース116を有している。2枚のアンテナエレメント111,112はそれぞれアンテナベース116に4本のビス113により固定され、固定されたアンテナエレメント111,112にアンプ基板120がハンダ付けされ、アンプ基板120から延びたワイヤーハーネス114がコネクタ115に接続されている。防水カバー117はアンテナベース116に3本のビス119により固定されると共に複数の接続部はシール118によって防水されている。このような構造を有するアンテナアッセンブリにより、アンテナエレメント111,112を確実に支持することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−35540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図5に示した従来例の構成では、ハンダ付け及び防錆の機能のために黄銅スズメッキ鋼板を使用し、ビス締めがアンテナエレメント111,112で4箇所、防水カバー117で3箇所となっており、特許文献1のアンテナと比べて組付け工数が多くコストも高い。そこで、防水カバー117の代わりに樹脂モールドにてアンプ基板120全体を覆い、アンテナベース116に固定する構造に変更すると、樹脂製のアンテナベース116と金属製のアンテナエレメント111,112の間で熱収縮量が相違するため、ハンダ付け箇所に応力が集中してハンダ割れを起こすことがある。また、ハンダ割れを防止するためには黄銅スズメッキ鋼板よりハンダの濡れ性が良い材料を使用しなければならずコスト低減が難しい。
【0007】
そこで、本発明では、防水構造を有し、組付け工数を低減可能であり、アンテナエレメントとアンプ基板との接続部のハンダ割れが発生しない車両用アンテナアッセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような目的を達成するために、本発明に係る車両用アンテナアッセンブリは、アンテナベースの一端に樹脂モールドにより覆われて固定されたアンプ基板と、アンテナベースの他端に延びるように配置された板状のアンテナエレメントであって、一端がアンプ基板に電気的に接続され、アンテナベースに嵌り合う嵌合部が他端に形成されたアンテナエレメントと、を有し、嵌合部はアンテナベースの他端と嵌り合いながら変位してアンテナエレメントの長手方向の変形を許容することを特徴とする。このような構成にすることで、アンテナエレメントをアンテナベースに組付けるビスを削減している。
【0009】
また、本発明に係る車両用アンテナアッセンブリにおいて、アンテナエレメントの嵌合部は、アンテナベースの他端近傍に形成された長穴に入り込むように形成されたクランク状の板であり、アンテナベースの表面及び裏面の両面に面接触することでアンテナエレメントを保持することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る車両用アンテナアッセンブリにおいて、アンテナエレメントの嵌合部は、アンテナベースの他端を挟むように形成されたフック状の板であり、アンテナベースの表面及び裏面の両面に点接触又は線接触することでアンテナエレメントを保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車両用アンテナアッセンブリを使用することにより、防水構造を有し、組付けのためのビスを削減することにより組付け工数を低減可能であり、アンテナエレメントアンプ基板との接続部のハンダ割れが発生しないという効果がある。また、ハンダ割れを防止するために黄銅スズメッキ鋼板よりハンダの濡れ性が良い材料を使用する必要は無くなり、安価でハンダ付け可能なアルミニウム材が使用できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る車両用アンテナユニットがエアスポイラの下半ケーシングに取り付けられた状態を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る車両用アンテナアッセンブリの平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両用アンテナアッセンブリの組み立て方法の一例を説明する説明図である。
図4図3に示した車両用アンテナアッセンブリの爪干渉部の断面を説明する説明図である。
図5】従来例における車両用アンテナアッセンブリの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0014】
図1は、車両1の後部を示し、車両用アンテナユニット20がエアスポイラ2の下半ケーシング9に取り付けられた状態を示している。エアスポイラ2は、テールライト7の上側であってテールゲート8の上部に配置され、樹脂成形により内部に空間を有している。エアスポイラ2は図示しない上半ケーシングと図1の下半ケーシング9を接着して形成されており、エアスポイラ2の製造工程において車両用アンテナユニット20を構成するラジオ用アンテナアッセンブリ4と地上波デジタル放送を受信する2つのテレビ用アンテナアッセンブリ5,6が取り付けられている。
【0015】
ラジオ用アンテナアッセンブリ4は、下半ケーシング9の中央部後部寄り、かつ、車両1の幅方向に向かって延びるように配置され、ラジオ用アンテナアッセンブリ4の出力は分岐基板31によりテレビ用アンテナアッセンブリ6のコネクタに接続されている。また、テレビ用アンテナアッセンブリ5は下半ケーシング9の車両前方方向左側(車両左側)に配置され、テレビ用アンテナアッセンブリ6は車両右側に配置されることで2つのアンテナアッセンブリによりダイバーシティ受信を可能にしている。
【0016】
これらの車両用アンテナユニット20で受信した電波は各アンテナアッセンブリ内のアンプ基板により増幅され、ワイヤーハーネスを経てオーディオ装置へ入力される。次に、アンテナアッセンブリについて説明する。
【0017】
図2は車両用アンテナアッセンブリであってアンプ基板を樹脂モールド22により防水処理及びアンテナベース21に固定したアンテナアッセンブリ10を示している。また、図3は車両用アンテナアッセンブリの組み立て方法を示している。本実施形態で特徴的な事項の一つは、図5に示したアンテナエレメント111,112と防水カバー117の固定に使用したビス113,119を無くしたことである。また、その他の特徴的な事項の一つは、図5に示したアンテナエレメント111,112の材質を黄銅スズメッキ鋼板からハンダ付け可能なアルミニウム材の薄板に変更したことである。まず、図2を用いてアンテナアッセンブリ10の構造を説明する。
【0018】
図2のアンテナアッセンブリ10は、ハンダ付け可能なアルミニウム材の薄板で形成されたアンテナエレメント11,12と、樹脂モールド22によって防水処理されると共にアンテナベース21に固定されたアンプ基板23と、このアンプ基板23とコネクタ18とを接続するワイヤーハーネス17と、これらを支持するアンテナベース21とを有している。アンプ基板23はアンテナエレメント11,12にハンダ付けされ、アンプ基板23から延びたワイヤーハーネス17がコネクタ18に接続されている。一方、2枚のアンテナエレメント11,12は先端に爪干渉部14〜16を有し、各爪干渉部14〜16がアンテナベース21に設けられた長穴形状の貫通穴25〜28に嵌り合っている。このため、アンテナエレメント11,12は、図5のビス113,119を使用することなく爪干渉部14〜16と樹脂モールド22によってアンテナベース21に固定されている。
【0019】
次に、図3を用いてアンテナアッセンブリ10の組み立て方法の一例を説明する。組み立ては、アンプ基板23にアンテナエレメント11,12とワイヤーハーネス17をハンダ付けした後、アンテナエレメントの爪干渉部14〜16をアンテナベース21の貫通穴28に挿し込み、アンテナエレメント11,12の表面と裏面の両面がアンテナベース21に接触するように組付ける。ここで、例えば爪干渉部14は貫通穴28に嵌り合うことで互いに接触することで干渉し、干渉により干渉力(摩擦力)が互いに発生する。次に、アンプ基板23を覆う成形型を被せて樹脂を注入するいわゆるダイレクト成形にてアンプ基板23をアンテナベース21に固定する。樹脂の注入が終了すると成形型を取り外す。この作業により、アンテナエレメント11,12はハンダ付けによりアンプ基板23と接続され、かつ、アンプ基板23が樹脂モールド22によりアンテナベース21に固定される。他方、爪干渉部14〜16は、アンテナベース21との表面摩擦による干渉を受けることにより変位自在に干渉固定されている。このため、アンテナエレメント11,12とアンテナベース21との間で発生する熱収縮差を爪干渉部14〜16の変位にて吸収することができ、ハンダ部24への応力集中が防止できる。なお、干渉固定とは、互いに干渉し合うことで干渉力が発生し、干渉力によって固定されている状態を示し、従来必要であった組付け用のビスが不要となるという効果を奏する。
【0020】
変位自在に干渉固定されている爪干渉部14〜16は、アンテナエレメント11,12やアンテナベース21の強度よりも干渉固定が弱く設定されている必要があるため、従来の黄銅スズメッキ鋼板をアンテナエレメント11,12に使用すると干渉力が高すぎて良好な変位が損なわれていた。また、黄銅スズメッキ鋼板は塑性変形しにくいためアンテナエレメント11,12とアンテナベース21との間に隙間が発生する。そこで、アンテナエレメントをアルミニウム材にして爪干渉部14〜16の一部が塑性変形しながら干渉固定が保持する構造により接触部の隙間低減と弱い干渉力を実現した。言い換えると、爪干渉部14〜16に隙間が発生すると打音や引きずり音などの異音が発生するため、隙間無く接触していることが必要であり、従来の黄銅スズメッキ鋼板では干渉力が高すぎて良好な干渉固定が困難であった。これに対し、ハンダ付け可能なアルミニウム材は、母材自身が塑性変形しやすく、表面にニッケルやスズメッキを施した酸化防止層とハンダ性付与層を有し、この酸化防止層により弱い干渉力を実現している。さらに、ハンダ性付与層により従来の黄銅スズメッキ鋼板と同等なハンダ濡れ性を有している。
【0021】
図4図3に示した車両用アンテナアッセンブリの爪干渉部13(嵌合部)の断面を示している。図4(A)は図3のA−A断面を示し、図4(B)は他の実施形態における断面を示している。図4(A)において、クランク状に折り曲げられたアンテナエレメント11の爪干渉部13は、アンテナベース21の表面と裏面の両面に面接触している。また、爪干渉部13の反対側には、アンテナエレメント11とアンプ基板23とがハンダ部24によって接続され、樹脂モールド22によってアンテナベース21に固定されたアンプ基板23が配置されている。
【0022】
図4の破線で示したアンテナエレメント11の爪干渉部13は、先端のクランク部が持ち上がるように成形され、直角に対してα°さらに折り込まれている。この折り込みによりアンテナベース21の裏面との干渉力を高めると共に、干渉力が高すぎる場合には、実線で示したアンテナエレメント11のように、爪干渉部13の塑性変形により干渉力を低減させている。
【0023】
図4(B)は、他の実施形態における断面を示しており、アンテナエレメントの熱収縮差が大きい場合には、アンテナベースの端部を干渉部でフック状の板で挟み込むことで固定する一例を示している。フック状の板には、面接触に比べて干渉力が安定して変化しにくい点接触又は線接触の爪干渉部を形成して熱収縮差を吸収させることが可能となる。
【0024】
以上、上述したように、本実施形態に係る車両用アンテナアッセンブリを用いることにより防水構造を有し、組付けのためのビスを削減して組付け工数を低減可能であり、アンテナエレメントアンプ基板との接続部のハンダ割れを防止できる。また、ハンダ割れを防止するために黄銅スズメッキ鋼板よりハンダの濡れ性が良い材料を使用する必要は無くなり、安価でハンダ付け可能なアルミニウム材が使用可能となる。なお、本実施形態では、はんだ付け可能なアルミニウム材は、東洋鋼鈑製の「SAPlate:サップレート」(登録商標)を使用したが、これに限定するものではなく、同等の機能を有する軽量で安価な材料を使用してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 車両、2 エアスポイラ、4 ラジオ用アンテナアッセンブリ、5,6 テレビ用アンテナアッセンブリ、7 テールライト、8 テールゲート、9 下半ケーシング、10 アンテナアッセンブリ、11,12,111,112 アンテナエレメント、13,14,15,16 爪干渉部、17,114 ワイヤーハーネス、18,115 コネクタ、20 車両用アンテナユニット、21,116 アンテナベース、22 樹脂モールド、23,120 アンプ基板、24 ハンダ部、25,26,27,28 貫通穴、31 分岐基板、113,119 ビス、117 防水カバー、118 シール。
図1
図2
図3
図4
図5