特許第5770621号(P5770621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許57706212−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体
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  • 特許5770621-2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体 図000038
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5770621
(24)【登録日】2015年7月3日
(45)【発行日】2015年8月26日
(54)【発明の名称】2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07C 59/88 20060101AFI20150806BHJP
   C07C 59/86 20060101ALI20150806BHJP
   C07C 59/56 20060101ALI20150806BHJP
   C07C 229/40 20060101ALI20150806BHJP
   C07C 323/56 20060101ALI20150806BHJP
   C07D 307/54 20060101ALI20150806BHJP
   C07D 333/24 20060101ALI20150806BHJP
   A61K 31/195 20060101ALI20150806BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20150806BHJP
   A61K 31/341 20060101ALI20150806BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20150806BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20150806BHJP
【FI】
   C07C59/88CSP
   C07C59/86
   C07C59/56
   C07C229/40
   C07C323/56
   C07D307/54
   C07D333/24
   A61K31/195
   A61K31/192
   A61K31/341
   A61K31/381
   A61P29/00
【請求項の数】8
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2011-285854(P2011-285854)
(22)【出願日】2011年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-133323(P2013-133323A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】303010452
【氏名又は名称】株式会社LTTバイオファーマ
(74)【代理人】
【識別番号】100083301
【弁理士】
【氏名又は名称】草間 攻
(72)【発明者】
【氏名】水島 徹
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雅巳
(72)【発明者】
【氏名】岡本 良成
(72)【発明者】
【氏名】山川 直樹
【審査官】 吉田 直裕
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第93/02999(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/098251(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/016376(WO,A1)
【文献】 特開昭51−127041(JP,A)
【文献】 Bioorganic & Medicinal Chemistry,2011年 5月 1日,Vol.19, No.11,p.3299-3311,Compound 4a
【文献】 Journal of Medicinal Chemistry,2010年10月18日,Vol.53, No.21,p.7879-7882,Compound 10a, 12a, 15a, 16a, 19a, 20a
【文献】 Journal of Medicinal Chemistry,2012年 3月12日,Vol.55, No.11,p.5143-5150,Figure 2, Scheme 2-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】
[式中、
は、水素原子、ハロゲン原子又は置換若しくは非置換フェニル基を表し、
Xは、−CH−、−NH−、−O−、又は−S−を表し、
Yは、
(1)基:
(基中、Zは、−CO−、−CH(OH)−、又は−CH−を表し、nは1又は2の整数を表す)、
(2)基:
(基中、Zは、酸素原子又は硫黄原子を表す)、又は
(3)基:
(基中、R及びRは、同一又は異なって低級アルキル基を表す)
で示される、2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。ただし、同時に、Rが水素原子であり、Xが−CH−であり、Zが−CO−又は−CH(OH)−であり、nが1である場合を除く。
【請求項2】
式(I)が、次式(I−a):
【化2】
(式中、R、X、Z及びnは、請求項1の定義と同一)
で示される、請求項1に記載の2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項3】
式(I)が、次式(I−b):
【化3】
(式中、R、X及びZは、請求項1の定義と同一)
で示される、請求項1に記載の2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
式(I)が、次式(I−c):
【化4】
(式中、R、X及びZは、請求項1の定義と同一)
で示される、請求項1に記載の2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項5】
式(I)が、次式(I−d):
【化5】
(式中、R、R、R及びXは、請求項1の定義と同一)
で示される、請求項1に記載の2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項6】
式中、Rのハロゲン原子が塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子から選択されるものである、請求項1〜5のいずれかに記載の2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項7】
式中、Rの置換フェニル基における置換基が、ハロゲン原子又は水酸基である請求項1〜5のいずれかに記載の2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた消炎作用を有し、且つ安全性の高い新規な2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体に関する。詳細には、特に胃腸障害などの副作用を示さない、医薬品として有用な2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
非ステロイド系消炎剤(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs:NSAIDs)は、優れた鎮痛、抗炎症、解熱作用を有する医薬品として臨床的に広く使用されており、日本においては、全処方製剤の約5%占めている薬剤である。
NSAIDsは、シクロオキシゲナーゼ(COX)の活性阻害作用によりプロスタグランジン(PGs)、例えば、PGEの生成を抑制し、その結果、優れた消炎作用を発揮する。その一方で、消化管に対する副作用が強いものである。
PGEは、消化管粘膜に対する強い保護作用を有していることから、NSAIDsの消化管に対する副作用は、COXの活性抑制作用に基づいているものといわれている。
【0003】
COXのサブタイプのなかで、特にCOX−1及びCOX−2は、COXの消化管粘膜、或いは組織における炎症発現に対する主要な活性本体であることから、選択的COX−2活性阻害物質は、胃、十二指腸部位における副作用の低減に結びつくものである(非特許文献1)。
しかしながら、最近、この選択的COX−2活性阻害作用物質には、心筋梗塞などの心臓血管系における血栓症発現の潜在的なリスクがあることが報告されている(非特許文献2、3)。
かかる点からみれば、強力な血小板凝集抑制作用並びに血管拡張作用を有するプロスタサイクリンは、選択的COX−2活性阻害作用物質によって主に生成されるものであり、選択的COX−2活性阻害作用物質によらない、消化管に対する副作用のないNSAIDsの開発が望まれているのが現状である。
【0004】
本発明者らは、COXに依存しないNSAIDsに基因する細胞死は、NSAIDsにより誘発される胃組織で生じており、NSAIDsの直接的な細胞毒性は、胃粘膜透過活性によることを明らかにし(非特許文献4、5)、その結果、胃粘膜透過活性の低いNSAIDsは、選択的COX−2阻害活性によることなく、胃組織に対して安全であることを提唱した。
【0005】
ところで、下記に示したロキソプロフェン(1)は、選択的COX−2活性阻害作用によらないNSAIDsとして広く臨床的に使用されてきており、一般的なNSAIDsとして使用されてきたインドメタシンよりも安全であり、日本においてはスタンダード的な消炎剤である。
このロキソプロフェン(1)は、消化管部位で吸収された後、生体内でその活性本体であるtrns−アルコール体に変換されるという、いわゆるプロドラッグであり、他のNSAIDsに比較して、低い粘膜透過性活性を有しており、消化管粘膜における低い潰瘍形成を有する化合物の検索にあたって、リード化合物であるともいえる。
【0006】
かかる考え方に沿って、本発明者らはロキソプロフェン(1)の2−位にフッ素原子を導入した、下記に示した2−フルオロロキソプロフェン(2)を提供してきており、この化合物は低い潰瘍形成作用を有しており、その消炎活性はロキソプロフェンと同等であることを確認し、これら化合物を含めて、既に特許出願を行っている(特許文献1)。
【0007】
【化1】
【0008】
本発明者らは、さらに検討を加え、2−フルオロロキソプロフェン誘導体について検討を行った結果、潰瘍発生による胃腸障害等の副作用を回避し、より優れた抗炎症、鎮痛効果を有する化合物を合成することに成功し、本発明を完成させるに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−195727号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】N. Engl. J. Med., 345, pp433-442 (2001)
【非特許文献2】JAMA, 286, pp954-959 (2001)
【非特許文献3】Biochem. Pharmacol., 63, pp817-821 (2001)
【非特許文献4】Biochem. Pharmacol., 67, pp575-585 (2004)
【非特許文献5】Biochem. Biophys. Res. Commun., 323, pp1032-1039 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって本発明は、胃腸障害等の副作用を回避すると共に、優れた抗炎症・鎮痛作用を有する新規な2−フルオロロキソプロフェン誘導体、すなわち、2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決する本発明は、次式(I):
【0013】
【化2】
【0014】
[式中、
は、水素原子、ハロゲン原子又は置換若しくは非置換フェニル基を表し、
Xは、−CH−、−NH−、−O−、又は−S−を表し、
Yは、
(1)基:
【0015】
【化3】
【0016】
(基中、Zは、−CO−、−CH(OH)−、又は−CH−を表し、nは1又は2の整数を表す)、
(2)基:
【0017】
【化4】
【0018】
(基中、Zは、酸素原子又は硫黄原子を表す)、又は
(3)基:
【0019】
【化5】
【0020】
(基中、R及びRは、同一又は異なって低級アルキル基を表す)
で示される、2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。ただし、同時に、Rが水素原子であり、Xが−CH−であり、Zが−CO−又は−CH(OH)−であり、nが1である場合を除く。
【0021】
したがって、本発明はその一つの具体的な態様として、式(I)が、次式(I−a):
【0022】
【化6】
【0023】
(式中、R、X、Z及びnは、前記定義と同一)
で示される、2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
【0024】
また、本発明は、別の具体的な態様として、式(I)が、次式(I−b):
【0025】
【化7】
【0026】
(式中、R、X及びZは、前記定義と同一)
で示される、2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
【0027】
さらに本発明は、また別の具体的な態様として、式(I)が、次式(I−c):
【0028】
【化8】
【0029】
(式中、R、X及びZは、前記定義と同一)
で示される、2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
【0030】
また本発明は、さらに別の具体的な態様として、式(I)が、次式(I−d):
【0031】
【化9】
【0032】
(式中、R、R、R及びXは、前記定義と同一)
で示される、2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
【0033】
より具体的な本発明は、上記式中、Rのハロゲン原子が塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子から選択されるものであり、また、式中、Rの置換フェニル基における置換基が、ハロゲン原子又は水酸基である、2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
【発明の効果】
【0034】
本発明が提供する2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体は、これまで知られていない新規な化合物であると共に、従来の酸性NSAIDsにみられた胃腸障害等の副作用がなく、その上、臨床的に使用されているロキソプロフェンより抗炎症、鎮痛作用が強いものである。また、選択的COX−2活性阻害作用が弱いので、心筋梗塞などの心臓血管系へのリスクを回避できる。
したがって、その安全域が大きいことから、ヒトに対して安全に使用できる点で、極めて有効なものといえる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、試験例2の「A:胃潰瘍の形成」の結果を示した図である。
図2図2は、試験例2の「B:カラゲニン惹起性浮腫に対する効果」の結果を示した図であり、(A)は投与3時間後の抑制率を、(B)は投与6時間後の抑制率を示した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明は、上記したようにその基本は、下記式(I)、具体的には式(I−a)、(I−b)、(I−c)又は(I−d):
【0037】
【化10】
【0038】
(式中、R、R、R、X、Y、Z、Z、及びnは、前記定義と同一である)
で示される2−フルオロプロピオン酸誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
【0039】
本明細書において、置換基「R」におけるハロゲン原子とは、塩素原子、臭素原子、フッ素原子又はヨウ素原子から選択されるハロゲン原子をいう。
【0040】
また、置換基「R」で示される置換フェニル基における置換基である低級アルキル基とは、炭素原子数1〜6程度の置換若しくは非置換アルキル基をいい、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基等を意味する。
これらの低級アルキル基の置換基としては水酸基、アミノ基、ニトロ基等を意味する。
【0041】
置換フェニル基における置換基の位置、またその数は特に限定されないが、好ましくはモノ置換フェニル基であって、その置換位置がオルト位或いはメタ位であることが好ましい。
【0042】
さらに、「R」及び「R」で示される低級アルキル基としては、炭素原子数1〜6程度の低級アルキル基であり、具体的には、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基等を意味する。
【0043】
したがって、本願発明が提供する新規なロキソプロフェン誘導体としては、具体的には以下のタイプの化合物(Type-A、Type-B、及びType-C)を列記することができ、その具体的化合物は、後記する実施例に記載の化合物である。
【0044】
【化11】
【0045】
なお、上記式(I)、(I−a)、(I−b)、(I−c)及び(I−d)において、フェニルプロピオン酸部分のメチル基は、その立体配置がα−配位、或いはβ−配位を取り得るが、本発明においてはメチル基の配位は、その両者、並びにその混合物であってもよい。
更に、式(I−a)におけるシクロ環の2位に置換基を有する場合には、その1位と2位の配位は、シス−及びトランス−配位を取り得るが、本発明においては、1,2−シス体であっても、または1,2−トランス体であっても、或いはそのジアステレオマーの混合物であってもよい。
【0046】
本発明が提供する新規な2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体は、具体的には以下のようにして製造することができる。
なお、以下に説明する製造方法は、具体的な一製造方法であり、これに限定されるものでなく、一般的な化学教科書を参照し、種々の方法により製造し得ることはいうまでもない。
【0047】
本発明が提供する2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体の製造に当たっては、以下の製造スキームに記載する化合物(7)〜(9)が、基本的な製造中間体であり、これらの反応化合物(7)〜(9)は、例えば、下記化学反応式で示す製造スキーム1に従って合成することができる。
[製造スキーム1]
【0048】
【化12】
【0049】
式中、算用数字は具体的化合物番号を表す(以下の製造スキームにおいて同じ)。
また、反応式中、(a)〜(f)は、上記製造スキーム中の目的とする化合物を調製するための反応試薬/反応条件であり、その好ましい具体的一例を示したものであり、これらに限定されるものではない。
また、その反応操作条件(時間、温度等)、反応処理等は、一般的な化学教科書に記載の方法に従って、実施できることはいうまでもない。
なお、その具体的条件は、後記する実施例を参照されたい。
【0050】
具体的に、まず、市販されている1,2−ジフルオロ−4−ニトロトルエン(3)を適当な溶媒、例えばジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記す)中、アルカリの存在下、ジエチル メチルマロネートと反応させ、式(4)で示される、ジエチル 2−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)−2−メチルマロネートへ変換する。
次いで、得られた式(4)のジエステル体を、酸加水分解と脱炭酸の反応を行い、式(5)で示されるニトロフェニルプロピオン酸へ変換させる。
かかる変換は、例えば、酸として濃硫酸の存在下、酢酸溶液中還流することで実施することができる。
得られた式(5)のニトロフェニルプロピオン酸を、次いで常法によるエステル化反応に付し、式(6)で示されるニトロフェニルプロピオン酸エステル体へ誘導する。かかるエステル化反応は、例えば低級アルコール中酸触媒による還流反応で行うことができ、低級アルコールとしてメタノールを使用した場合には、メチルエステル体が、エタノールを使用した場合にはエチルエステル体として得ることができる。
【0051】
以上により得られたニトロフェニルプロピオン酸のニトロ基を還元し、4−アミノフェニルプロピオン酸(7)へ変換させる。
かかる還元反応は、適当な触媒、例えば、パラジウム−炭素を用い、アルコール系溶媒の存在下での接触還元により、計算量の水素を吸収させることにより、実施することができる。
【0052】
得られた式(7)の4−アミノフェニルプロピオン酸は、本発明の式(I)の2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体において、「X」が窒素原子である化合物を調製する場合の中間体となる。
【0053】
一方、本発明の式(I)の2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体において、「X」が酸素原子である化合物を調製する場合には、式(7)の化合物のアミノ基を、硫酸/亜硝酸ナトリウム/水によるジアゾ化したのち、酸触媒によるアルコール分解により式(8)で示される4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸へ誘導して、得ることができる。
【0054】
また、本発明の式(I)の2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体において、「X」が硫黄原子である化合物を調製する場合には、式(7)の化合物のアミノ基を、硫酸/亜硝酸ナトリウム/水によるジアゾ化したのち、エチル キサントゲン酸カリウム(EtOCSSK)と処理することにより、式(9)で示される4−メルカプトフェニルプロピオン酸へ誘導して、得ることができる。
以上の製造スキームにより、本発明が提供する2−フルオロプロピオン酸誘導体の製造中間体(7)〜(9)が調製され、これらの化合物を出発化合物とした本発明の式(I)である式(I−a)の2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体は、具体的には以下の製造スキームにより実施することができる。
[製造スキーム2]
【0055】
【化13】
【0056】
反応式中、(a)〜(h)は、上記製造スキーム中の目的とする化合物を調製するための反応試薬/反応条件であり、その好ましい具体的一例を示したものであり、これらに限定されるものではない。
なお、反応スキーム中における、例えば「a,b」、「c,b」と記載されている場合には、「a,b」の場合には、(a)の反応、処理に続いて、(b)の反応、処理を行うことを意味し、「c,b」の場合には、(c)の反応、処理に続いて、(b)の反応、処理を行うことを意味する。
この場合において、その反応操作条件(時間、温度等)、反応処理等は、一般的な化学教科書に記載の方法に従って、実施できることはいうまでもない。
【0057】
詳細には、上記した反応試薬、反応条件を用いて、式(7)の4−アミノフェニルプロピオン酸を出発原料として、式(I−a)中「X」が窒素原子である式(10a)、(10b)、(11a)及び(11b)の各化合物を調製することができる。
また、式(8)の4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸を出発原料として、式(I−a)中「X」が酸素原子である式(12)、(13)及び(14)の各化合物を調製することができる。
さらに、式(9)の4−メルカプトフェニルプロピオン酸を出発原料として、式(I−a)中「X」が硫黄原子である式(15)、(16)及び(17)の各化合物を調製することができる。
なお、反応の実際、その処理等は、一般的な化学教科書に記載の方法に基づいて行うことができ、その詳細については後記の実施例を参照されたい。
【0058】
また、本発明の式(I)の他の化合物として式(I−b)或いは(I−c)並びに式(I−d)で示される化合物は、式(8)で示される4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸を出発原料として、下記製造スキームに示した化学反応式を用いて、調製することができる。
[製造スキーム3]
【0059】
【化14】
【0060】
反応式中、(a)〜(g)は、上記製造スキーム中の目的とする化合物を調製するための反応試薬/反応条件であり、その好ましい具体的一例を示したものであり、これらに限定されるものではない。
なお、反応スキーム中における、例えば「d,e」、「f,g」と記載されている場合には、「d,e」の場合には、(d)の反応、処理に続いて、(e)の反応、処理を行うことを意味し、「f,g」の場合には、(f)の反応、処理に続いて、(g)の反応、処理を行うことを意味する。
また、この場合において、その反応操作条件(時間、温度等)、反応処理等は、一般的な化学教科書に記載の方法に従って、実施できることはいうまでもない。
【0061】
すなわち、上記した製造スキーム1に従って製造した式(8)で示される4−ヒドロキシフェニルプロピオン酸誘導体を、例えば、ジクロルメタン溶媒中、塩基としてトリエチルアミンの存在下、無水トリフルオロメタンスルホン酸((CFSO)O)と処理することにより、式(18)の化合物へ誘導し、次いで、1,4−ジオキサン中、Pd(dppe)Cl([1,2−ビス(ジフェニルホスフィン)エタン]ジクロロパラジウム)を触媒としてジメチル亜鉛(Zn(CH))と反応させ、式(19)で示される4−メチルフェニルプロピオン酸誘導体と変換させる。
次いで、式(19)の化合物を、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)の存在下、NBS(N−ブロモコハク酸イミド)、と処理して式(20)で示される中間体の4−ブロモメチルフェニルプロピオン酸とし、それぞれ対応するボロン酸誘導体と、Suzuki-Miyamuraのクロスカップリング反応により、対応する本発明の目的化合物である式(21−a,b)及び(22−a,b)で示される化合物を得る。
また、式(20)の中間体の4−ブロモメチルフェニルプロピオン酸は、対応するアセト酢酸誘導体と反応させ、別の目的化合物である式(23)及び(24)で示される化合物を得ることができる。
【0062】
また、上記したタイプCのグループに属する本発明の2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体は、例えば、以下の製造スキーム4に示した化学反応式に従って、調製することができる。
[反応スキーム4]
【0063】
【化15】
【0064】
上記反応式中、(a)〜(i)は、上記製造スキーム中の目的とする化合物を調製するための反応試薬/反応条件であり、その好ましい具体的一例を示したものであり、これらに限定されるものではない。
なお、その反応操作条件(時間、温度等)、反応処理等は、一般的な化学教科書に記載の方法に従って、実施できることはいうまでもない。
【0065】
すなわち、具体的には、市販の式(25−a,b)の化合物を出発原料とし、それぞれ対応する試薬、反応条件による一般的な化学教科書に記載の反応処理等を行い、目的とする本発明の式(33−a,b)に示す2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体を得ることができる。
【0066】
また、同様のタイプCのグループに属する、本発明の別の2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体は、例えば、以下の製造スキーム5に示した化学反応式に従って、調製することができる。
[製造スキーム5]
【0067】
【化16】
【0068】
上記反応式中、(a)〜(n)は、上記製造スキーム中の目的とする化合物を調製するための反応試薬/反応条件であり、その好ましい具体的一例を示したものであり、これらに限定されるものではない。
また、その反応操作条件(時間、温度等)、反応処理等は、一般的な化学教科書に記載の方法に従って、実施できることはいうまでもない。
【0069】
すなわち、市販されている式(34)で示される化合物を用い、そのアミノ基をジアゾ化した後、ホルミル基に変換し、式(35)で示される化合物を得、次いで、Wittig反応による増炭反応と、ピリジニウムフッ化クロム酸(PFC)による酸化反応に付し、式(36)で示されるフェニル酢酸誘導体へ導く。
得られた式(36)のフェニル酢酸のα位をブロム化し、メチル基に変換させ、式(37)で示される化合物へ誘導した後、製造スキーム3に示した式(19)から式(22)への変換と同様の処理を行い、式(38)で示される化合物へ誘導し、脱炭酸を行い、目的とする本発明の一つに2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体である式(39)の化合物が誘導される。
この式(39)の化合物は、更に、Suzuki-Miyamuraのクロスカップリング反応により、対応する本発明の目的化合物である式(40)で示される化合物に変換される。
【0070】
以上の製造方法により提供される本発明の2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体は、遊離カルボン酸のまま、或いはその薬理学的に許容される塩として使用することができる。
薬理学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩或いはアンモニウム塩を挙げることができる。
【0071】
また、本発明が提供する2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体またはその薬理学的に許容される塩を医薬組成物として投与する場合、例えば、当該誘導体またはその薬学的に許容される塩である有効成分を単独、または慣用の賦形剤と共にカプセル剤、錠剤、注射剤等の適宜な剤形として、経口的または非経口的に投与することができる。具体的には、例えば、カプセル剤は、2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体またはその塩を乳糖、澱粉またはその誘導体、セルロース誘導体等の賦形剤と混合してゼラチンカプセルに充填し調製することができる。
【0072】
また、錠剤は、上記賦形剤の他に、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸、アラビアゴム等の結合剤と水を加えて練合し、必要により顆粒とした後、さらにタルク、ステアリン酸等の滑沢剤を添加して、通常の圧縮打錠機を用いて錠剤に調製することができる。
【0073】
さらに、注射による非経口投与に際しては、2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体またはその塩を溶解補助剤と共に滅菌蒸留水または滅菌生理食塩水に溶解し、アンプルに封入して注射用製剤とする。必要により安定化剤、緩衝物質等を含有させてもよい。これらの非経口投与製剤は、静脈内投与、あるいは点滴静注により投与することができる。
【0074】
本発明が提供する2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体の投与量は、種々の要因、例えば治療すべき患者の症状、重症度、年齢、合併症の有無等によって一概には限定できない。
また、投与経路、剤形、投与回数等によっても異なるものであるが、一般的には、経口投与の場合は、有効成分として、通常、0.1〜1000mg/日/ヒト、好ましくは1〜500mg/日/ヒトの範囲内、また、非経口投与の場合は、経口投与の場合における投与量の約1/100〜1/2量程度の範囲内で適宜選別し、投与することができる。なお、これらの投与量は、患者の年齢、症状等により適宜増減することが可能であることは勿論である。
【実施例】
【0075】
以下、製造例、実施例、並びに試験例に基づいて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲をこれらの例に限定するものではないことはいうまでもない。
【0076】
製造例1:出発化合物(7)、(8)及び(9)の製造/中間体化合物[反応スキーム1の中間体]の製造
(a)ジエチル 2−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)−2−メチルマロネート(4)の製造
【0077】
3.0mL(27mmol)の市販の化合物(3)をDMF(3mL)に溶解し、そこにメチルマロン酸ジエチルエステル(3.9mL、22mmol)及び水酸化ナトリウム(0.98g、24,5mmol)を加え、室温にて6時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を乾固し、ジクロルメタンで抽出し、乾燥(硫酸ナトリウム)後、溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル混液で溶出し、目的とする化合物(4)を、単褐色油状物として7.12g(84%)得た。
【0078】
(b)2−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)プロピオン酸(5)の製造
上記で得た化合物(4)(7.09g、22.6mmol)の酢酸(26mL)及び水(18mL)に濃硫酸(7.5mL)を加え、12時間加熱還流した。反応終了後、冷却し、減圧下に濃縮し、残渣をジクロルメタンで抽出した。抽出液を飽和食塩水並びに水で洗浄し、乾燥(硫酸ナトリウム)後、減圧留去し、目的とする化合物(5)を、透明な赤褐色油状物として3.72g(77%)得た。
【0079】
(c)メチル 2−(2−フルオロ−4−ニトロフェニル)プロピオン酸(6)の製造
上記で得た化合物(5)を、メタノール中触媒量の濃塩酸を加え、エステル化を行い、93%の収率で、透明な黄色油状物として目的化合物(6)を得た。
【0080】
(d)メチル 2−(4−アミノ−2−フルオロフェニル)プロピオン酸エステル(7)の製造
上記で得た化合物(6)を、エタノール中触媒として10%パラジウム−炭素を存在させ、接触還元により計算量の水素ガスを吸収させた。反応終了後、触媒を除去し、濾液を濃縮、乾固し、目的とする化合物(7)を93%の収率で、透明なオレンジ色油状物として得た。
【0081】
(e)メチル 2−(2−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル(8)の製造
上記で得た化合物(7)をジアゾ化し、次いで塩酸触媒による加水分解に付し、目的とする化合物(8)を54%の収率で、透明なオレンジ色油状物として得た。
【0082】
(f)メチル 2−(2−フルオロ−4−メルカプトフェニル)プロピオン酸エステル(9)の製造
上記で得た化合物(7)をジアゾ化し、次いでエチル キサントゲン酸カリウムと処理し、目的とする化合物(9)を92%の収率で、無色油状物として得た。
【0083】
実施例1:2−[2−フルオロ−4−((1S,2S)−2−ヒドロキシシクロペンチルアミノ)フェニル]プロピオン酸(10a)の製造
上記で得た化合物(7)(0.7g、3.6mmol)のジクロルメタン(3mL)溶液にシクロペンテンオキサイド(1.1mL、12.4mmol)及び臭化リチウム(0.47g、5.4mmol)を加え、室温にて12時間攪拌した。反応終了後、ジクロルメタンを加え、有機溶媒を乾燥(硫酸ナトリウム)後、減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(3:1)溶液にて溶出して、次いで常法加水分解を行い、目的化合物(10a)を、淡黄色油状物として0.64g(64%)得た。
【0084】
実施例2:2−[2−フルオロ−4−((1S,2S)−2−ヒドロキシシクロヘキシルアミノ)フェニル]プロピオン酸(10b)の製造
上記で得た化合物(7)(0.8g、4.0mmol)、シクロヘキセンオキサイド(1.3mL、13.1mmol)及び臭化リチウム(0.37g、4.3mmol)のジクロルメタン(3mL)溶液を、実施例1と同様に反応、処理し、得た組成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(3:1)溶液にて溶出して、次いで常法加水分解を行い、目的化合物(10b)を、褐色固形物として0.97g(81%)得た。
【0085】
実施例3:2−〔4−(シクロペンチルアミノ)−2−フルオロフェニル〕プロピオン酸(11a)の製造
メタノール10mLと酢酸0.2mLの混合溶媒に化合物(7)1.50g(7.6mmol)を溶解した溶液に、シクロペンタノン1.4mL(15.2mmol)とシアノボロハイドライドナトリウム(NaBHCN)0.96g(15.2mmol)を加え、その溶液を室温で12時間攪拌した。次いで、反応液を真空下で乾燥し、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後濾過した。濾液を真空下で乾燥し、残渣をシリカゲルクロマトグラフ(n-ヘキサン:酢酸エチル=3:2)で精製し化合物(11a)のメチルエステル体を得た。この化合物を水酸化ナトリウムで加水分解して、目的化合物(11a)を褐色粉末として1.09g(収率54%)得た。
【0086】
実施例4:2−[4−(シクロヘキシルアミノ)−2−フルオロフェニル]プロピオン酸(11b)の製造
化合物(7)(1.50g、7.6mmol)、シクロヘキサノン(1.57mL、15.2mmol)及びNaBHCN(0.96g、15.2mmol)のメタノール(10mL)及び酢酸(0.2mL)溶液を常法反応させ、実施例3と同様に反応、処理し、得た組成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(4:1)溶液にて溶出して、次いで常法加水分解を行い、目的化合物(11b)を、褐色粉末状物として1.37g(65%)得た。
【0087】
実施例5:2−[2−フルオロ−4−(2−オキソシシクロペンチルオキシ)フェニル]プロピオン酸(12)の製造
上記で得た化合物(8)(0.87g、4.4mmol)の乾燥DMF(8.7mL)溶液に、炭酸カリウム及びクロロシクロペンタノン(0.53mL、5.3mmol)を加え、3時間加熱還流した。反応後、濾過して得た濾液を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(7:1)溶液にて溶出して、次いで常法加水分解を行い、目的化合物(12)を、黄色油状物として0.28g(32%)得た。
【0088】
実施例6:2−[2−フルオロ−4−((1S,2S)−2−ヒドロキシシクロペンチルオキシ)フェニル]プロピオン酸(13)の製造
化合物(8)(3.50g、17.7mmol)の乾燥DMF(35mL)溶液中にシクロペンテンオキサイド(2.3mL、26.6mmol)及び水素化ナトリウム(0.64g、26.6mmol)を加え、70℃にて14時間攪拌した。反応終了後、室温まで冷却し、減圧下に濃縮し、残渣を酢酸エチル(300mL)で抽出し、水洗、乾燥(硫酸ナトリウム)した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(8:1)溶液にて溶出して、次いで常法加水分解を行い、目的化合物(13)を、黄色油状物として2.60g(52%)得た。
【0089】
実施例7:2−[4−(シクロペンチルオキシ)−2−フルオロフェニル]プロピオン酸(14)の製造
化合物(8)(0.50g、2.5mmol)の乾燥DMF(5mL)溶液に炭酸カリウム(1.2g、8.8mmol)及びブロモシクロペンタン(0.32g、3.0mmol)を加え、60℃にて5時間攪拌した。反応混合物を濾過し、濾液を減圧下に濃縮し、残渣を酢酸エチル(300mL)で抽出し、水洗、乾燥(硫酸ナトリウム)した。溶媒を留去し、残渣をジクロルメタンに溶解させ、1M−水酸化ナトリウム水溶液(30mL)で洗浄した。有機層を乾燥(硫酸ナトリウム)し、減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(4:1)溶液にて溶出して、次いで常法加水分解を行い、目的化合物(14)を、白色固形物として0.56g(84%)得た。
【0090】
実施例8:2−[2−フルオロ−4−(2−オキソシシクロペンチルチオ)フェニル]プロピオン酸(15)の製造
上記で得た化合物(9)(0.54g、2.5mmol)のジクロルメタン(25mL)溶液に、シクロペンタノン(0.19mL、2.1mmol)およびN−ブロモコハク酸イミド(0.31g、2.3mmol)を0℃にて加え、次いで室温下に4時間攪拌した。ジクロルメタンを加え、有機層を食塩水にて洗浄し、乾燥(硫酸ナトリウム)後、減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(8:1)溶液にて溶出して、次いで常法加水分解を行い、目的化合物(15)を、黄色油状物として0.27g(36%)得た。
【0091】
実施例9:2−[2−フルオロ−4−((1S,2S)−2−ヒドロキシシクロペンチルチオ)フェニル]プロピオン酸(16)の製造
1,2−エポキシシクロペンテン(0.8mL、9.3mmol)及び化合物(9)(1.60g、7.5mmol)を、ホウ砂(0.1g、0.26mmol)の水(19mL)溶液に順次加えた。混合物を室温にて39時間攪拌し、ジクロルメタン(50mL)を加え、有機層を水洗、乾燥(硫酸ナトリウム)した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(8:1)溶液にて溶出して、次いで常法加水分解を行い、目的化合物(16)を、黄色油状物として1.79g(84%)得た。
【0092】
実施例10:2−[4−(シクロペンチルチオ)−2−フルオロフェニル]プロピオン酸(17)の製造
化合物(9)(0.53g,2.5mmol)、ブロモシクロペンタン(0.32mL、3.0mmol)及び炭酸カリウム(1.2g.8.8mmol)の乾燥DMF(5mL)溶液を実施例7と同様に処理し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(4:1)溶液にて溶出して、次いで常法加水分解を行い、目的化合物(17)を、白色固形物として0.64g(90%)得た。
【0093】
製造例2:中間体(18)〜(20)の製造
(a)メチル 2−[フルオロ−4−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フェニル]プロピオン酸エステル(18)の製造
化合物(8)(3.69g,14.9mmol)及びトリエチルアミン(4.13mL、29.7mmol)の乾燥ジクロルメタン溶液中に、(CFSOO(2.93mL、17.8mmol)を0℃にて滴下し、終了後混合物を室温にて12時間攪拌した。有機層を1M塩酸水溶液(90mL)、1M水酸化ナトリウム水溶液(90mL)及び食塩水(90mL)で順次洗浄し、乾燥(硫酸ナトリウム)し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(10:1)溶液にて溶出して、目的化合物(18)を、透明黄色液状物として5.44g(96%)得た。
【0094】
(b)メチル(2−フルオロ−4−メチルフェニル)プロピオン酸エステル(19)の製造
[1,2−ビス(ジフェニルフォスフィノ)エタン]ジクロロパラジウム(II)[Pd(dppe)Cl](14.1mg、1.3mol%)の乾燥1,4−ジオキサン(3mL)懸濁溶液に、化合物(18)(0.62g、1.9mmol)の乾燥1,4−ジオキサン(3mL)溶液をアルゴンガス気流下に滴下した。この懸濁溶液に、ジメチル亜鉛(2M−トルエン溶液、9.0mL、2.0mmol)をゆっくりと滴下し、終了後4時間加熱還流した。冷却後、メタノール(0.4mL)を加え、エーテルで処理した。有機層を1M塩酸水溶液(18mL)で洗浄し、乾燥(硫酸ナトリウム)し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(10:1)溶液にて溶出して、目的化合物(19)を、無色液状物として0.26g(70%)得た。
本化合物の器機分析データは、標品と同定した。
【0095】
(c)メチル 2−[4−(ブロモメチル)−2−フルオロフェニル]プロピオン酸エステル(20)の製造
J. Med. Chem., 53, 7879 (2010) に記載の方法に準じて製造した。得られた目的物(20)は、標品の器機分析データで同定した。
【0096】
実施例11:2−[2−フルオロ−4−(フラン−2−イルメチル)フェニル]プロピオン酸(21a)の製造
化合物20(0.88g,3.2mmol)及び2−フランボロン酸(0.54g、4.8mmol)を、テトラヒドロフラン(12mL)及び2M−炭酸ナトリウム−水溶液(4.0mL)中に溶解し、この溶液にtrans-ブロモ(N−コハク酸イミジル)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)[trans-PdBr(N-Succ)(PPh)](25.9mg、1.0mol%)を加え、3時間加熱還流した。室温に冷却し、エーテル(50mL)を加え、有機層を水洗(30mL)し、乾燥(硫酸マグネシウム)し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(20:1)溶液にて溶出し、次いで常法水酸化カリウムによる加水分解を行い、目的化合物(21a)を、白色固形物として0.36g(43%)得た。
【0097】
実施例12:2−[2−フルオロ−4−(チオフェン−2−イルメチル)フェニル]プロピオン酸(21b)の製造
化合物20(0.98g,3.8mmol)及び2−チオフェンボロン酸(0.73g、5.7mmol)を、テトラヒドロフラン(12mL)及び2M−炭酸ナトリウム−水溶液(4.8mL)中に溶解し、この溶液にtrans-ブロモ(N−コハク酸イミジル)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)[trans-PdBr(N-Succ)(PPh)](30.8mg、1.0mol%)を加え、実施例11と同様処理し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(20:1)溶液にて溶出し、次いで常法水酸化カリウムによる加水分解を行い、目的化合物(21b)を、白色固形物として0.75g(76%)得た。
【0098】
実施例13:2−[2−フルオロ−4−(フラン−3−イルメチル)フェニル]プロピオン酸(22a)の製造
化合物20(0.88g,3.2mmol)及び3−フランボロン酸(0.54g、4.8mmol)を、テトラヒドロフラン(12mL)及び2M−炭酸ナトリウム−水溶液(4.0mL)中に溶解し、この溶液にtrans-ブロモ(N−コハク酸イミジル)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)[trans-PdBr(N-Succ)(PPh)](25.9mg、1.0mol%)を加え、実施例11と同様処理し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(20:1)溶液にて溶出し、次いで常法水酸化カリウムによる加水分解を行い、目的化合物(22a)を、白色固形物として0.46g(55%)得た。
【0099】
実施例14:2−[2−フルオロ−4−(チオフェン−3−イルメチル)フェニル]プロピオン酸(22b)の製造
化合物20(0.88g,3.2mmol)及び3−チオフェンボロン酸(0.87g、3.4mmol)を、テトラヒドロフラン(12mL)及び2M−炭酸ナトリウム−水溶液(4.2mL)中に溶解し、この溶液にtrans-ブロモ(N−コハク酸イミジル)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)[trans-PdBr(N-Succ)(PPh)](27.5mg、1.0mol%)を加え、実施例11と同様処理し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(20:1)溶液にて溶出し、次いで常法水酸化カリウムによる加水分解を行い、目的化合物(22b)を、白色固形物として0.75g(85%)得た。
【0100】
実施例15:2−[4−(エチル−3−オキソブチル)−2−フルオロフェニル]プロピオン酸(23)の製造
無水炭酸カリウム(0.86g、6.2mmol)のアセトン(40mL)懸濁液中に、攪拌下にエチル 2−エチルアセト酢酸エステル(0.56mL、3.45mmol))を加えた。室温にて15分間攪拌後、化合物(20)(0.95g、3.45mmol)を加え、反応混合物を12時間還流した。冷却後、反応混合物を減圧濃縮し、残渣をジクロルメタン(50mL)と処理し、有機層を重曹溶液及び食塩水で洗浄し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(7:2)溶液にて溶出し、次いで常法脱炭酸及び加水分解を行い、目的化合物(23)を、透明無色油状物として0.55g(45%)得た。
【0101】
実施例16:2−[2−フルオロ−4−(2−メチル−3−オキソぺンチル)フェニル]プロピオン酸(24)の製造
化合物(20)(0.78g、2.82mmol)、エチル 2−メチル−3−オキソペンタン酸エステル(0.46mL、2.82mmol)及び無水炭酸カリウム(0.70g、5.1mmol)のアセトン(40mL)懸濁液中で実施例15と同様に反応させ、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(7:2)溶液にて溶出し、次いで常法脱炭酸及び加水分解を行い、目的化合物(24)を、透明無色油状物として0.53g(53%)得た。
【0102】
製造例3:中間体化合物[反応スキーム4の中間体]の製造
(a)ジエチル 2−(2,5−ジフルオロ−4−ニトロフェニル)−2−メチルマロン酸エステル(26a)の製造
市販の2,4,5−トリフルオロニトロベンゼン(25a)(5.0mL、43.5mmol)、ジエチル メチルマロン酸エステル(6.2mL、36.1mmol)及び水酸化ナトリウム(1.57g、39.1mmol)のDMF(55mL)溶液を、製造例1の(a)と同様に反応させ、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(10:1)溶液にて溶出し、目的化合物(26a)を、透明褐色油状物として11.0g(76%)得た。
【0103】
(b)ジエチル 2−(2,6−ジフルオロ−4−ニトロフェニル)−2−メチルマロン酸エステル(26b)の製造
市販の3,4,5−トリフルオロニトロベンゼン(25b)(5.0mL、42.8mmol)、ジエチル メチルマロン酸エステル(6.1mL、35.7mmol)及び水酸化ナトリウム(1.54g、38.5mmol)のDMF(55mL)溶液を、製造例1の(a)と同様に反応させ、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(10:1)溶液にて溶出し、目的化合物(26b)を、透明褐色油状物として9.1g(63%)得た。
【0104】
(c)2−(2,5−ジフルオロ−4−ニトロフェニル)プロピオン酸(27a)の製造
化合物(26a)(10.8g、32.6mmol)の酢酸(36mL)溶液を、濃硫酸(10mL)及び水(26mL)を製造例1の(b)と同様に処理し、黄色固形物として6.2g(82%)得た。
本品は精製することなく、次の反応に付した。
【0105】
(d)2−(2,6−ジフルオロ−4−ニトロフェニル)プロピオン酸(27b)の製造
化合物(26b)(7.8g、24.9mmol)の酢酸(28mL)溶液を、濃硫酸(8.0mL)及び水(20mL)を製造例1の(b)と同様に処理し、黄色固形物として4.9g(85%)得た。
本品は精製することなく、次の反応に付した。
【0106】
(e)メチル 2−(2,5−ジフルオロ−4−ニトロフェニル)プロピオン酸エステル(28a)の製造
化合物(27a)(6.2g、26.8mmol)を、触媒量の濃塩酸(0.24mL)を含むメタノール(123mL)溶液に溶解し、製造例1の(c)と同様に処理し、淡黄色油状物として5.9g(90%)得た。
本品は精製することなく、次の反応に付した。
【0107】
(f)メチル 2−(2,6−ジフルオロ−4−ニトロフェニル)プロピオン酸エステル(28b)の製造
化合物(27b)(3.6g、15.6mmol)を、触媒量の濃塩酸(0.14mL)を含むメタノール(72mL)溶液に溶解し、製造例1の(c)と同様に処理し、淡黄色油状物として3.4g(89%)得た。
本品は精製することなく、次の反応に付した。
【0108】
(g)メチル 2−(4−アミノ−2,5−ジフルオロフェニル)プロピオン酸エステル(29a)の製造
化合物(28a)(5.2g、21.2mmol)のエタノール(96mL)溶液に10%パラジウム−炭素(0.52g、10%w/w)を加え、水素ガス気流下に、製造例1の(d)と同様に処理し、赤色油状物として3.5g(83%)得た。
本品は精製することなく、次の反応に付した。
【0109】
(h)メチル 2−(4−アミノ−2,6−ジフルオロフェニル)プロピオン酸エステル(29b)の製造
化合物(28a)(3.4g、13.9mmol)のエタノール(80mL)溶液に10%パラジウム−炭素(0.34g、10%w/w)を加え、水素ガス気流下に、製造例1の(d)と同様に処理し、赤色油状物として2.3g(84%)得た。
本品は精製することなく、次の反応に付した。
【0110】
(i)メチル 2−(4−ブロモ−2,5−ジフルオロフェニル)プロピオン酸エステル(30a)の製造
化合物(29a)(3.0g,13.9mmol)の40%臭化水素酸(8.0mL、54.4mmol)溶液に、亜硝酸ナトリウム(1.1g、15.7mmol)の水(17mL)溶液を0−5℃にて攪拌下に滴下した。室温に戻し、CuBr(1.1g、11.2mmol)及び96%硫酸(0.1mL)を加え、混合物を1時間攪拌還流した。冷却後、酢酸エチルで抽出し、得られた残留物をメタノール(50mL)に溶解し、触媒量の濃塩酸(0.1mL)を加え、3時間還流した。冷却後、溶媒を留去し、エーテル(50mL)で処理し、有機層を乾燥(硫酸ナトリウム)し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(4:1)溶液にて溶出し、淡黄色液状物として3.01g(73%)得た。
【0111】
(j)メチル 2−(4−ブロモ−2,6−ジフルオロフェニル)プロピオン酸エステル(30b)の製造
化合物(29b)(6.7g,31.3mmol)の40%臭化水素酸(18.4mL、125mmol)溶液に、亜硝酸ナトリウム(2.4g、33.8mmol)の水(38mL)溶液、CuBr(2.5g、17.5mmol)及び96%硫酸(0.1mL)を上記(i)と同様処理し、更に、メタノール(100mL)に溶解し、触媒量の濃塩酸(0.2mL)を加え、同様処理し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(4:1)溶液にて溶出し、淡黄色液状物として6.1g(70%)得た。
【0112】
(k)メチル 2−(2,5−ジフルオロ−4−メチルフェニル)プロピオン酸エステル(31a)の製造
trans-ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)[trans-Pd(PPh)Br](0.048g、5.6mol%)の1,4−ジオキサン(30mL)溶液に、化合物(30a)(3.0g、10.7mmol)の乾燥1,4−ジオキサン(4mL)溶液をアルゴン気流下に加えた。この混合物中に、ジメチル亜鉛(2M−トルエン溶液、11.0mL,22.0mmol)をゆっくりと滴下し、反応混合物を4時間加熱還流した。反応混合物を室温に冷却後、反応混合物にメタノール(4.0mL)を加え、ジエチルエーテルで希釈し、有機層を1M塩酸水溶液(34mL)で洗浄し、乾燥(硫酸マグネシウム)した。溶媒を留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(4:1)溶液にて溶出し、無色液状物として3.3g(83%)得た。
【0113】
(l)メチル 2−(2,6−ジフルオロ−4−メチルフェニル)プロピオン酸エステル(31b)の製造
化合物(30b)(5.4g、19.3mmol)、ジメチル亜鉛(2M−トルエン溶液、38.7mL,77.4mmol)及びtrans-ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)[trans-Pd(PPh)Br](0.085g、5.6mol%)の1,4−ジオキサン(40mL)溶液を上記(k)と同様に処理し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(4:1)溶液にて溶出し、無色油状物として3.2g(77%)得た。
【0114】
(m)メチル 2−[4−(ブロモメチル)−2,5−ジフルオロフェニル]プロピオン酸エステル(32a)の製造
化合物(31a)(3.3g,15.4mmol)の四塩化炭素(100mL)溶液を、触媒量のアゾ(ビス)イソブチロニトリル(AIBN)(0.05g、0.02mmol)の存在下N−ブロモコハク酸イミド(NBS)(3.3g、18.5mmol)と処理をした。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(4:1)溶液にて溶出し、透明赤色油状物として4.8g(90%)得た。
【0115】
(n)メチル 2−[4−(ブロモメチル)−2,6−ジフルオロフェニル]プロピオン酸エステル(32b)の製造
化合物(31b)(2.3g,10.7mmol)の四塩化炭素(70mL)溶液を、触媒量のAIBN(0.04g、0.02mmol)の存在下NBS(2.3g、12.9mmol)と処理をした。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(4:1)溶液にて溶出し、透明赤色油状物として2.7g(86%)得た。
【0116】
実施例17:2−[2,5−ジフルオロ−4−(2−オキソシクロペンチルメチル)フェニル]プロピオン酸(33a)の製造
化合物(32a)(4.8g、16.4mmol)、メチル 2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステル(2.5mL、21.9mmol)及び無水炭酸カリウム(4.0g、28.9mmol)をアセトン(200mL)中、実施例15と同様に反応させた。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(4:1)溶液にて溶出し、次いで常法脱炭酸及び加水分解を行い、目的化合物(33a)を、透明黄色油状物として3.5g(60%)得た。
【0117】
実施例18:2−[2,6−ジフルオロ−4−(2−オキソシクロペンチルメチル)フェニル]プロピオン酸(33b)の製造
化合物(32b)(2.2g、7.5mmol)、メチル 2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステル(1.3mL、11.3mmol)及び無水炭酸カリウム(1.9g、13.6mmol)をアセトン(100mL)中、実施例15と同様に反応させた。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、n−ヘキサン/酢酸エチル(4:1)溶液にて溶出し、次いで常法脱炭酸及び加水分解を行い、目的化合物(33b)を、透明黄色油状物として1.7g(64%)得た。
【0118】
製造例4:中間体化合物[反応スキーム5の中間体]の製造
(a)2−ブロモ−6−フルオロ−4−メチルベンズアルデヒド(35)の製造
化合物(34)より、J. Med. Chem., 53, 7879 (2010) に記載の方法に準じたホルミル化を行い、褐色油状物として得た(38%)。
【0119】
(b)2−ブロモ−6−フルオロ−4−メチルフェニル酢酸(36)の製造
上記で得た化合物(35)を、J. Med. Chem., 53, 7879 (2010) に記載の方法に準じたWittig反応、ピリジニウム フッ化クロム酸(PFC)による酸化反応を行い、白色固形物として得た(2段階で60%)。
【0120】
(c)メチル 2−(2−ブロモ−6−フルオロ−4−メチルフェニル)プロピオン酸エステル(37)の製造
上記で得た化合物(36)を、J. Med. Chem., 53, 7879 (2010) に記載の方法に準じたエステル化反応、α−メチル化反応を行い、透明黄色液状物として得た(2段階で66%)。
【0121】
(d)メチル 1−[3−ブロモ−5−フルオロ−4−(1−メトキシ−1−オキソプロパン−2−イル)ベンジル]−2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステル(38)の製造
上記で得た化合物(37)を、製造例2の(c)と同様に、α−ブロム化反応、及びアセト酢酸エステル化反応を行い、透明無色液状物として得た(2段階で54%)。
【0122】
実施例19:2−[2−ブロモ−6−フルオロ−4−{(2−オキソシクロペンチル)メチル}フェニル]プロパン酸(39)の製造
上記で得た化合物(38)を用い、J. Med. Chem., 53, 7879 (2010) に記載の方法に準じた脱炭酸、及び加水分解反応を行い、透明黄色液状物として得た(86%)。
【0123】
実施例20:2−{3−フルオロ−4’−ヒドロキシ−5−[(2−オキソシクロペンチル)メチル]ビフェニル−2−イル}ブロモ−6−フルオロ−4−{(2−オキソシクロペンチル)メチル}フェニル]プロピオン酸(40)の製造
上記で得た化合物(39)を用い、Bioorg. Med. Chem., 19, 3299 (2011) に記載の方法に準じ、4−ヒドロキシフェニルボロン酸とSuzuki-miyauraクロスカップリング反応を行い、白色固形物として得た(3段階で47%)。
【0124】
上記の各製造例1〜4で得られた各中間体化合物の化学構造式と、その物理的データを下記表1〜表5にまとめて示した。
また、上記した各実施例により得た目的とする本発明の2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体について、その化学構造式、性状、物理的データを下記表6〜表11中にまとめて示した。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
【表5】
【0130】
【表6】
【0131】
【表7】
【0132】
【表8】
【0133】
【表9】
【0134】
【表10】
【0135】
【表11】
【0136】
試験例1:ヒト全血アッセイ(インビトロ)
試験は、Inflamm. Res., 45: 68-74 (1996) に記載される方法に準じて行った。
A:インビトロにおけるCOX−1アッセイ
採血対象者は、少なくとも1週間以上にNSAIDsを服用しておらず、採取日に健康である人を選択した。
血液は、血液凝固抑制剤無添加で採取し、直後にアッセイに用いた。採取した血液を500μLずつチューブ(Protein Lobingdin tube, Eppendorf Co. LTD., Tokyo, Janan)に分注し、適切な溶媒(DMSO又はMilliQ water)に溶解させた試験化合物2μL(最終濃度:0.1μM−1000μM)を添加し、37℃/24時間血液凝固が認められるまでインキュベーションした。
インキュベーション後、サンプルを12,000×g/5分間の遠心分離を行い、血清を分離した。血中タンパクを除外するため、得られた血清100μLをエタノール400μLに添加し、再び12,000×g/5分間の遠心分離を行った。上清中のTXBを酵素免疫測定法(EIA)kit[Cayman (Ann, Arbor, MI,USA)#519031]を用いて定量した。プロトコルは、付属のプロトコルに従った。
【0137】
B:インビトロにおけるCOX−2アッセイ
採血対象者は、少なくとも1週間以上にNSAIDsを服用しておらず、採取日に健康である人を選択した。
血液は、ヘパリン処理が施された試験管(Venojectll blood collection tubes、テルモ社製)に採取し、炎症性刺激物質であるリポポリサッカロイド(LPS)[Sigma-Aldrich Japan Inc,#L2880 from E. coli055:B5、最終濃度が100μg/mLとなるようにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈した]を添加した。500μLずつチューブに分注し、適切な溶媒(DMSO又はMilliQ water)に溶解させた試験化合物2μL(最終濃度:0.1μM−1000μM)を添加し、COX−2を誘導するために37℃/24時間インキュベーションした。
インキュベーション後、サンプルを12,000×g/5分間の遠心分離を行い、血清を分離した。血中タンパクを除外するため、得られた血清100μLをエタノール400μLに添加し、再び12,000×g/5分間の遠心分離を行った。上清中のPGE2を酵素免疫測定法(EIA)kit[Cayman (Ann, Arbor, MI,USA)#514040]を用いて定量した。プロトコルは、付属のプロトコルに従った。
【0138】
統計解析法
測定の値は、平均値±S.E.M.で表示した。
テューキー検定(Tukey test)に続いて、一元或いは二元の分散分析(ANOVA)により2グループ以上の間で評価を行った。
2グループ間での評価は、Student's t-testに従い、有意差はp<0.05である。
【0139】
結果を、表12に示した。
【0140】
【表12】
【0141】
試験例2:胃潰瘍の形成及びカラゲニン惹起性浮腫に対する効果
A:胃潰瘍の形成
試験は、Biochem. Pharmacol., 67; 575-85 (2004) に記載の方法に従った。
Wister系雄性ラット(体重:180-200g)を18時間絶食させ、試験化合物を経口投与した。8時間後、胃を摘出し、胃内部に生じた潰瘍の面積を測定した。全ての潰瘍の面積を合計し、潰瘍係数とした。結果を図1に示した。
【0142】
B:カラゲニン惹起性浮腫に対する効果
試験は、Br. J. Pharmacol., 151; 285-91 (2007) に記載の方法に従った。
Wister系雄性ラット(体重:180-200g)を18時間絶食させ、試験化合物を経口投与した。1時間後、左足蹠皮下に1%カラゲニン(生理食塩水に溶解)100μLを注射し、浮腫を惹起させた。
カラゲニン投与前、投与後3時間及び6時間後の足容積を、Plethysmometerを用いて測定した。
なお、浮腫抑制率は、以下の計算による。
抑制率(%)=100−(化合物投与時の浮腫容積/Vehicle投与時の浮腫容積)×100
結果を図2に示した。なお、図2においてAは投与後3時間後の抑制率、Bは6時間後の抑制率を表す。
【0143】
表12、図1及び図2から以下のことが判明する。
本発明化合物(11a)、(14)はロキソプロフェン(1)よりも選択的COX−2活性阻害作用が弱いにもかかわらず抗炎症作用に優れ、胃潰瘍形成が著しく軽減された。これは心筋梗塞などの心臓血管系へのリスクを回避するとともに胃傷害を軽減し、抗炎症作用に優れていることを示す。また、本発明化合物(21a)、(22a)は胃傷害を顕著に軽減しながら抗炎症作用がロキソプロフェン(1)と同程度であった。
【0144】
これらの結果からも判明するように、本発明が提供する2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体は、良好な消炎作用を示すものであると共に、副作用である潰瘍形成を生じないものであり、薬理作用と副作用の分離が良好に行われた化合物であることが判明する。
【0145】
製剤例1:錠剤
化合物11a 50mg
乳糖 100mg
ヒドロキシプロピルセルロース 150mg
ステアリン酸マグネシウム 50mg
上記処方を基本とし、顆粒を調製後、打錠し重量350mgの錠剤を、常法により調製した。
【0146】
製剤例2:顆粒剤
化合物11a 50mg
乳糖 100mg
トウモロコシデンプンルロース 150mg
上記処方を基本とし、200mg顆粒中有効成分50mg含有の顆粒を常法により調製した。
【産業上の利用可能性】
【0147】
以上記載のように、本発明が提供する2−フルオロフェニルプロピオン酸誘導体は、これまで知られていない新規な化合物であると共に、従来のNSAIDsにみられた胃腸障害等の副作用がなく、その上、臨床的に使用されているロキソプロフェンより抗炎症、鎮痛作用が強いものである。また、選択的COX-2活性阻害作用が低減されているので心筋梗塞などの心臓血管系へのリスクを回避することができる。
したがって、その安全域が大きいことから、ヒトに対して安全に使用できる点で、極めて有効なものであり、産業上の貢献度は多大なものである。
図1
図2