(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭化水素系の燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路と、前記燃料ガス供給流路を通して供給される前記燃料ガスの供給量を制御する燃料ガス流量制御手段と、改質用水を供給する水供給流路と、前記水供給流路を通して供給される前記改質用水の供給量を制御する水流量制御手段と、前記燃料ガス供給流路からの前記燃料ガスを前記水供給流路からの前記改質用水を用いて水蒸気改質するための改質器と、前記改質器にて改質された改質燃料ガスをアノードガスとし、空気をカソードガスとして発電を行う燃料電池と、前記燃料ガス流量制御手段及び前記水流量制御手段を制御するための制御手段とを備えた燃料電池システムであって、
前記燃料ガス供給流路には、前記燃料ガス供給流路を通して供給される前記燃料ガスの流量を検知するための熱式質量流量検知手段、及び供給される前記燃料ガスの熱量を検知するための熱量検知手段が設けられ、前記熱量検知手段による検知熱量が減少したとき、変動後の前記燃料ガスの組成に基づいて前記燃料ガス流量制御手段及び前記水流量制御手段を制御する組成変動後運転の前の過渡的期間において、前記制御手段は前記改質器に供給される前記改質用水の供給量を増大するように前記水流量制御手段を制御し、また前記熱量検知手段による検知熱量が増大したとき、前記過渡的期間において、前記制御手段は前記改質器に供給される前記燃料ガスの供給量を増大するように前記燃料ガス流量制御手段を制御することを特徴とする燃料電池システム。
炭化水素系の燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路と、前記燃料ガス供給流路を通して供給される前記燃料ガスの供給量を制御する燃料ガス流量制御手段と、改質用水を供給する水供給流路と、前記水供給流路を通して供給される前記改質用水の供給量を制御する水流量制御手段と、前記燃料ガス供給流路からの前記燃料ガスを前記水供給流路からの前記改質用水を用いて水蒸気改質するための改質器と、前記改質器にて改質された改質燃料ガスをアノードガスとし、空気をカソードガスとして発電を行う燃料電池と、前記燃料ガス流量制御手段及び前記水流量制御手段を制御するための制御手段とを備えた燃料電池システムであって、
前記燃料ガス供給流路には、前記燃料ガス供給流路を通して供給される前記燃料ガスの流量を検知するための熱式質量流量検知手段、及び供給される前記燃料ガスの組成変化による熱量を検知するための熱量検知手段が設けられ、前記熱量検知手段による検知熱量が増大したとき、変動後の前記燃料ガスの組成変化に基づいて前記燃料ガス流量制御手段及び前記水流量制御手段を制御する組成変更後運転の前の過渡的期間において、前記制御手段は前記改質器に供給される前記燃料ガスの供給量を増大するように前記燃料ガス流量制御手段を制御することを特徴とする燃料電池システム。
【背景技術】
【0002】
炭化水素系の燃料ガス(例えば、都市ガス、LPガスなど)を用いて発電を行う燃料電池システム(例えば、固体酸化物形燃料電池システム)として、燃料ガス供給流路に配設された燃料ガス流量制御手段と、水供給流路に配設された水流量制御手段と、燃料ガスを改質用水を用いて水蒸気改質するための改質器と、改質器からの改質燃料ガスを用いて発電を行う燃料電池(例えば、燃料電池セルスタック)と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。燃料ガス流量制御手段(例えば、燃料ポンプ)は、燃料ガス供給流路を通して改質器に供給される燃料ガスの供給流量を制御し、水流量制御手段(例えば、水ポンプ)は、水供給流路を通して改質器に供給される改質用水の供給流量を制御し、改質器は、燃料ガス供給流路を通して供給された燃料ガスを水供給流路を通して供給された改質用水を用いて水蒸気改質する。改質器にて水蒸気改質された改質燃料ガスは燃料電池に送給され、この燃料電池は、改質燃料ガスをアノードガスとし、空気をカソードガスとして発電を行う。
【0003】
このような燃料電池システムにおいては、システムの耐久性及び発電効率の観点から、改質器での水蒸気改質反応において水蒸気モル数(S)と炭化水素系の燃料ガス中の炭化モル数(C)との比率(S/C)(以下、この比率を「S/C」という)を最適な値に維持することが望まれる。S/Cの値が所定範囲より小さいと、燃料電池(燃料電池セルスタック)において燃料ガス中のカーボンが析出して燃料電池の劣化が速まり、またS/C値が所定範囲よりも大きいと、燃料電池の発電効率が低下する。
【0004】
また、燃料電池システムの燃料利用率についても、システムの耐久性及び発電効率の観点から、最適な値に維持することが望まれる。燃料利用率とは、供給した燃料(燃料ガス)のうち発電に寄与した燃料(燃料ガス)の割合であり、この燃料利用率が所定範囲より小さいと、燃料電池(燃料電池セルスタック)の発電効率が低下し、また燃料利用率が所定範囲より大きいと、燃料電池の耐久性が低下する。
【0005】
一定の出力で発電している燃料電池(燃料電池セルスタック)に供給される燃料ガスの組成が一定である場合、S/C及び燃料利用率は変動せず、一定に維持することができる。しかし、燃料ガスの組成が変動した場合、燃料電池(燃料電池スタック)の発電に必要な燃料ガスの供給流量が変動する。即ち、燃料ガスの組成変化により水蒸気改質反応で生成される水素量(換言すると、発電に寄与する電子数)が変化するためであり、また、燃料ガスの流量を検知するために熱式流量計を用いた場合、熱式流量計が燃料ガスの熱量とその流量との関係を利用して計測するものであるために、燃料ガスの組成変動が生じるとその熱量が変化し、これによって、その流量も変化するためである。このようなことから、燃料ガスの組成が変動すると、S/C及び燃料利用率も変動し、発電効率の低下、燃料電池(燃料電池セルスタック)の耐久性低下が生じるおそれがある。
【0006】
燃料ガスの組成変動によるこのような問題を解消するために、燃料ガス供給流路に熱式流量計を配設してその組成変動を検知して制御するようにしたものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。このシステムにおいては、熱式流量計の検知信号に基づいて燃料ガス中の炭素の質量流量が演算され、この演算結果に基づいて水蒸気の供給流量が制御され、このように制御することによって、S/Cを所定値に維持することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような熱式流量計を上述の燃料電池システムに適用したとしても、燃料ガスの組成変動による燃料利用率の変動を制御することができず、この組成変動による発電効率の低下、燃料電池の耐久性の低下を解消することができない。また、燃料ガスの組成変動に伴う燃料電池システムの稼働制御を行ったとしても、制御切換えの際の過渡的期間において過渡的なS/C及び燃料利用率の変化を制御することができず、このことに起因して、燃料電池の耐久性が低下するおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、燃料ガスの組成変動に伴う稼働制御を行った場合において過渡的期間における燃料電池の耐久性の低下を抑えることができる燃料電池システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に記載の燃料電池システムは、炭化水素系の燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路と、前記燃料ガス供給流路を通して供給される前記燃料ガスの供給量を制御する燃料ガス流量制御手段と、改質用水を供給する水供給流路と、前記水供給流路を通して供給される前記改質用水の供給量を制御する水流量制御手段と、前記燃料ガス供給流路からの前記燃料ガスを前記水供給流路からの前記改質用水を用いて水蒸気改質するための改質器と、前記改質器にて改質された改質燃料ガスをアノードガスとし、空気をカソードガスとして発電を行う燃料電池と、前記燃料ガス流量制御手段及び
前記水流量制御手段を制御するための制御手段とを備えた燃料電池システムであって、
前記燃料ガス供給流路には、前記燃料ガス供給流路を通して供給される前記燃料ガスの流量を検知するための熱式質量流量検知手段、及び供給される
前記燃料ガスの熱量を検知するための熱量検知手段が設けられ、前記熱量検知手段による検知熱量が減少したとき、変動後の前記燃料ガスの組成に基づいて前記燃料ガス流量制御手段及び前記水流量制御手段を制御する組成変動後運転の前の過渡的期間において、前記制御手段
は前記改質器に供給される前記改質用水の供給量を増大するように前記水流量制御手段を
制御し、また前記熱量検知手段による検知熱量が増大したとき、前記過渡的期間において、前記制御手段は前記改質器に供給される前記燃料ガスの供給量を増大するように前記燃料ガス流量制御手段を制御することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の燃料電池システムでは、前記制御手段は、前記過渡的期間において、変動前の前記燃料ガスの組成に基づいて前記燃料ガス流量制御手段及び
前記水流量制御手段を制御する組成変動前運転における前記改質用水の供給量以上となるように前記水流量制御手段を制御することを特徴とする。
請求項1に記載の燃料電池システム。
【0013】
また、本発明の請求項3に記載の燃料電池システムは、炭化水素系の燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路と、前記燃料ガス供給流路を通して供給される前記燃料ガスの供給量を制御する燃料ガス流量制御手段と、改質用水を供給する水供給流路と、前記水供給流路を通して供給される前記改質用水の供給量を制御する水流量制御手段と、前記燃料ガス供給流路からの前記燃料ガスを前記水供給流路からの前記改質用水を用いて水蒸気改質するための改質器と、前記改質器にて改質された改質燃料ガスをアノードガスとし、空気をカソードガスとして発電を行う燃料電池と、前記燃料ガス流量制御手段及び
前記水流量制御手段を制御するための制御手段とを備えた燃料電池システムであって、
前記燃料ガス供給流路には、前記燃料ガス供給流路を通して供給される前記燃料ガスの流量を検知するための熱式質量流量検知手段、及び供給される
前記燃料ガスの組成変化による熱量を検知するための熱量検知手段が設けられ、前記熱量検知手段による検知熱量が増大したとき、変動後の前記燃料ガスの組成変化に基づいて前記燃料ガス流量制御手段及び
前記水流量制御手段を制御する組成変更後運転の前の過渡的期間において、前記制御手段
は前記改質器に供給される前記燃料ガスの供給量を増大するように前記燃料ガス流量制御手段を制御することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項
4に記載の燃料電池システムでは、前記制御手段は、前記過渡的期間において、変動前の前記燃料ガスの組成に基づいて前記燃料ガス流量制御手段及び
前記水流量制御手段を制御する組成変動前運転における前記燃料ガスの供給量以上となるように前記燃料ガス流量制御手段を制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項
5に記載の燃料電池システムでは、前記熱量検知手段は、前記燃料ガスの音速を利用し、前記音速−発熱量関係指標に基づいて前記燃料ガスの熱量を検知することを特徴とする。
【0016】
更に、本発明の
請求項6に記載の燃料電池システムでは、前記熱量検知手段は、
前記燃料ガスの燃焼熱を利用して前記燃料ガスの熱量を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に記載の燃料電池システムによれば、炭化水素系の燃料ガスを供給する燃料ガス供給流路に燃料ガス供給流路を通して供給される燃料ガスの流量を検知するための熱式質量流量検知手段、及び供給される燃料ガスの熱量を検知するための熱量検知手段が設けられ、この熱量検知手段による検知熱量が減少したとき、組成変動後の運転に移行する前の過渡的期間において改質用水の供給量を増大するように水流量制御手段が制御されるので、この過渡的期間において改質用水の供給量が一時的に増大してS/Cが上昇し、その結果、S/Cが低下した状態での稼働運転が回避され、燃料電池(例えば、燃料電池セルスタック)の耐久性低下を抑えることができる。
また、熱量検知手段による検知熱量が増大したときに、過渡的期間において燃料ガスの供給量を増大するように燃料ガス流量制御手段が制御されるので、改質器に供給される燃料ガスが一時的に増大して燃料ガスの利用率が低下し、その結果、燃料利用率が上昇した状態での稼働運転が回避され、燃料電池の耐久性低下を抑えることができる。
【0018】
また、本発明の請求項2に記載の燃料電池システムによれば、過渡的期間においては、燃料ガスの組成変動前の運転における改質用水の供給量以上となるように水流量制御手段が制御されるので、比較的簡単な制御でもって改質用水の供給量を増大させて燃料電池の耐久性低下を抑えることができる。
【0019】
また、本発明の
請求項3に記載の燃料電池システムによれば、熱量検知手段による検知熱量が増大したときに、
変動後の燃料ガスの組成変化に基づいて燃料ガス流量制御手段及び水流量制御手段を制御する組成変更後運転の前の過渡的期間において、燃料ガスの供給量を増大するように燃料ガス流量制御手段が制御されるので、改質器に供給される燃料ガスが一時的に増大して燃料ガスの利用率が低下し、その結果、燃料利用率が上昇した状態での稼働運転が回避され、燃料電池の耐久性低下を抑えることができる。
【0020】
また、本発明の請求項
4に記載の燃料電池システムでは、過渡的期間においては、組成変動前運転における燃料ガスの供給量以上となるように燃料ガス流量制御手段が制御されるので、比較的簡単な制御でもって燃料ガスの供給量を増大させて燃料電池の耐久性低下を抑えることができる。
【0021】
また、本発明の請求項
5に記載の燃料電池システムによれば、熱量検知手段は、燃料ガスの音速を利用し、音速−発熱量関係指標に基づいてその熱量を検知するので、燃料ガスの熱量を精度よく検知することができる。
【0022】
更に、本発明の請求項請求項
6に記載の燃料電池システムによれば、熱量検知手段は、
燃料ガスの燃焼熱を利用してその熱量を検知するので、燃料ガスの熱量を精度よく検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う燃料電池システムの一実施形態について説明する。尚、この実施形態では、燃料電池システムとして固体酸化物形燃料電池システムに適用して説明するが、燃料ガスを水蒸気改質する改質器を備えた他の形態の燃料電池システムにも同様に適用することができる。
【0025】
図1において、燃料電池システム2は、炭化水素系の燃料ガス(例えば、都市ガス、LPガスなど)を消費して発電を行うものであり、改質用水を気化させて水蒸気を生成するための気化器4と、燃料ガスを水蒸気を用いて改質するための改質器6と、改質器6にて改質された改質燃料ガスをアノードガスとし、空気をカソードガスとして発電を行う燃料電池セルスタック8(燃料電池を構成する)と、を備えている。
【0026】
この燃料電池セルスタック8は、例えば、複数の固体酸化物形の燃料電池セルを集電部材を介して積層して構成され、図示していないが、酸素イオンを伝導する固体電解質と、この固体電解質の一方側に設けられた燃料極と、固体電解質の他方側に設けられた空気極とを備え、固体電解質として例えばイットリアをドープしたジルコニアが用いられる。
【0027】
燃料電池セルスタック8の燃料極の導入側は、改質燃料ガス送給流路10を介して改質器6に接続され、この改質器6は、ガス・水蒸気送給流路12を介して気化器4に接続されている。気化器4は、燃料ガス供給流路14を介して燃料ガスを供給するための燃料ガス供給源16(例えば、埋設管や貯蔵タンクなど)に接続され、この燃料ガス供給流路14に熱式質量流量検知手段18(例えば、熱線式流量計)、熱量検知手段19(例えば、熱量計)及び燃料ポンプ20(燃料ガス流量制御手段を構成する)が配設されている。燃料ポンプ20は、燃料ガス供給源16からの燃料ガスを気化器4に送給し、熱式質量流量検知手段18は燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの流量を検知し、熱量検知手段19は燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの熱量を測定する。この熱式質量流量検知手段18及び熱量検知手段19については後述する。尚、燃料ガス供給流路14を気化器4に接続することに代えて、改質器6に直接的に接続するようにしてもよい。
【0028】
この実施形態では、燃料ポンプ20は電圧に比例して回転数が変動する形態のものであり、供給される電圧が上がる(又は下がる)と、その回転数が上昇(又は低下)し、燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスの供給流量が増大(又は減少)する。従って、この燃料ポンプ20は、燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスの供給流量を制御する燃料ガス流量制御手段としても機能する。尚、燃料ガス流量制御手段として専用の流量制御弁などを用いるようにしてもよい。
【0029】
気化器4は、水供給流路22を介して水供給源24(例えば、水タンクなど)に接続され、この水供給流路22に水ポンプ26が配設されている。この水ポンプ26は、水供給源24からの改質用水を気化器4に供給する。
【0030】
この実施形態では、水ポンプ26も、燃料ポンプ20と同様に、電圧に比例して回転数が変動する形態のものであり、供給される電圧が上がる(又は下がる)と、その回転数が上昇(又は低下)し、水供給流路22を通して供給される改質用水の供給流量が増大(又は減少)する。従って、この水ポンプ26は、水供給流路14を通して供給される改質用水の供給流量を制御する水流量制御手段としても機能する。尚、水流量制御手段として専用の流量制御弁などを用いるようにしてもよい。
【0031】
このように構成されているので、燃料ガス供給源16からの炭化水素系の燃料ガスは、燃料ガス供給流路14を通して気化器4に送給され、この気化器4からガス・水蒸気送給流路12を通して改質器6に送給される。また、水供給源24からの改質用水は、水供給流路22を通して気化器4に送給され、この気化器4において気化されて水蒸気となり、この水蒸気がガス・水蒸気送給流路12を通して改質器6に送給される。改質器6では、燃料ガスが水蒸気により水蒸気改質され、水蒸気改質された改質燃料ガスが改質燃料ガス送給流路10を通して燃料電池セルスタック8の燃料極側に送給される。
【0032】
この燃料電池セルスタック8の空気極の導入側は、空気供給流路28を介して大気に開放されており、かかる空気供給流路28に空気ブロア30及び空気流量計32が配設されている。空気ブロア30は、カソードガスとしての空気を燃料電池セルスタック8の空気極側に送給し、空気流量計32は空気供給流路28を流れる空気の供給流量を計測する。
【0033】
この実施形態では、空気ブロア30も、燃料ポンプ20及び水ポンプ26と同様に、電圧に比例して回転数が変動する形態のものであり、供給される電圧が上がる(又は下がる)と、その回転数が上昇(又は低下)し、空気供給流路28を通して供給される空気の供給流量が増大(又は減少)する。従って、この空気ブロア30は、空気供給流路28を通して供給される空気の供給流量を制御する空気流量制御手段としても機能する。
【0034】
燃料電池セルスタック8の燃料極及び空気極の排出側には燃焼室34が設けられ、燃料電池セルスタック8の一端から排出された反応燃料ガス(余剰の燃料ガスを含んでいる)と空気極側から排出された空気(酸素を含んでいる)とが、この燃焼室34に送給されて燃焼される。燃焼室34には排気ガス排出流路36が接続され、その排出側は大気に開放され、燃焼室34からの排気ガスが排気ガス排出流路36を通して大気に排出される。
【0035】
この実施形態では、気化器4、改質器6、燃料電池セルスタック8及び燃焼室34が収容ハウジング38に収容されている。図示の収容ハウジング38は、金属製(例えば、ステンレス鋼製)のハウジング本体40を備え、このハウジング本体40の内面を覆うように断熱部材(図示せず)が配設され、この断熱部材の内側に高温室42が規定され、気化器4、改質器6及び燃料電池セルスタック8が高温室42内で高温状態に保たれ、高温室42内の熱を利用して、気化器4において改質用水の気化が行われ、また改質器6において燃料ガスの水蒸気改質が行われる。
【0036】
このような燃料電池システム2では、燃料電池セルスタック8の耐久性の低下、発電効率の低下を抑えるために、改質器6における水蒸気改質反応ではS/C(炭化水素系燃料ガス中の炭素モル数に対する水蒸気モル数の比率)及び燃料利用率(UF)を一定値に維持する、即ちS/Cを例えば2.0に、燃料利用率を例えば60%に維持するのが望ましく、燃料ガスの組成が変動したときにも、その組成の変動に対応してS/C及び燃料利用率がこれらの値に維持するのが望ましい。尚、S/Cについては、
S/C=〔(水流量)/18〕/〔(燃料流量)×(価数)/22.4〕 ・・・(1)
で表すことができ、また燃料利用率(UF)については、
UF=〔22.4×(電流(A))〕/〔96485(c/mol)×(価数)×(燃料流量(L/sec))〕 ・・・(2)
で表すことができる。
このようなことから、この燃料電池システム2では、上述したように、燃料ガス供給流路14に熱量検知手段19が設けられる。この熱量検知手段19は、燃料ガス供給流路14を通して改質器6に供給される燃料ガスの熱量(即ち、燃料ガスの組成に基づく熱量)を検知する。このような熱量検知手段19は、燃料ガスの音速(この音速とは、燃料ガス中での音波の伝搬速度をいう)を利用し、予め発熱量が判明し組成の異なる複数の標準ガスの各々の音速−温度−圧力の関係指標からこの燃料ガスの温度、圧力における音速と発熱量との関係として求まる音速−発熱量関係指標に基づきこの燃料ガスの熱量を求めるものを用いることができ、例えば、特許第3611416号公報に開示されているものを好都合に用いることができる。
【0037】
熱量検知手段19としては、上述したものに代えて、燃料ガスの燃焼熱を利用したものを用いるようにしてもよく、このような熱量検知手段は、例えば燃料ガスをバーナーで燃焼させ、その燃焼排ガスの温度と燃焼空気の入り口温度の差から熱量を検知するものである。
【0038】
燃料ガスの組成が変動すると、この変動に伴い燃料電池セルスタック8にて発電に寄与する電子数も変化し、S/Cを一定に維持するにはこの電子数の変化に伴い燃料ガスの供給流量も変化させる必要がある。更に説明すると、炭化水素系の燃料ガス中に含まれるメタン、エタンなどは、ガス種によって発電に寄与する電子数が決まっている。例えば、メタンの場合、
CH4+2H2O → CO2+4H2(4H2 → 8H
++8e
−)
となり、メタンの電子数(「価数」ともいう)は「8」となる。同様に、エタンについては、
C2H6+4H20 → 2CO
2+7H2(7H2 → 14H
++14e
−)
となり、エタンの電子数(価数)は「14」となる。同様にして、プロパン(C2O8)の電子数は「20」となり、ブタン(C4O10)の電子数は「26」となる。燃料ガスの組成が表1に示すように各種変化すると、その組成の電子数(価数)は、表1の最下欄に示すようになる。
【0039】
例えば、燃料ガスの熱量が45MJ/m
3 から40MJ/m
3 に変動した場合、電子数(価数)は、8.993から8.014に下がる。この燃料ガスの熱量(HHV)とその電子数(価数)との関係は、
図4に示す通りの一次関数、即ち、
価数(y)=0,2037×〔熱量(x)〕−0.1286 ・・・(3)
と表すことができる。従って、燃料電池セルスタック8にて必要な燃料流量Vは、変動前の燃料ガスの流量をV0とすると、
V=V0×(8.993/8.014) ・・・(4)
となり、燃料ガスの組成変動によりガス熱量が下がるとその価数が下がるために、燃料ガスの供給流量を増やす必要があり、これとは反対に、ガス熱量が上がるとその価数が上がるために、燃料ガスの供給流量を減らす必要がある。
【0040】
また、燃料ガスの熱量(HHV)とその燃料利用率との関係は、
図5に示す通りの一次関数、即ち、
燃料利用率(y)=−0.0112×〔熱量(x)〕+1.184 ・・・(5)
となり、燃料ガスの組成変動によりガス熱量が下がると燃料利用率が下がるために、燃料ガスの供給流量を増やす必要があり、これとは反対に、ガス熱量が上がると燃料利用率が下がるために、燃料ガスの供給流量を減らす必要がある。
【0041】
【表1】
熱式質量流量検知手段18は、燃料ガスの持つ熱拡散作用を用いて質量流量を測定するものであり、この種の熱式質量流量検知手段18(例えば、熱線式流量計)においては、流れるガスの種類によって流量と熱拡散作用との関係は変化する。このガス種の流量とその熱拡散作用との関係を表した値がコンバージョンファクタ(以下、「CF」としても表す)と称され、このCFは、窒素(N2)及び空気を基準値「1」とし、各ガス種のCFは、表2に示す通りである。例えば、窒素で設定された熱式質量流量検知手段18(例えば、熱線式流量計)にヘリウム(He)を流すと、CFが1.40である故に、熱式質量流量検知手段18の計測値の1.4倍の流量が流れる(熱式質量流量検知手段18の計測表示値が例えば100cc/minであると、実際の流量は140cc/minとなる)。
【0042】
【表2】
燃料ガスの組成が変化した際の熱量、価数(電子数)、CF、燃料利用率及びS/Cの関係を表3に示す。表3は、燃料電池セルスタック8の出力電力(発電電力)が500Wの場合のこれらの関係を示し、このような関係の表は、燃料電池セルスタック8の各出力電力(例えば、500W、600W、700Wなど)に対応して設けられる。燃料ガスの熱量と価数(電子数)とは、上述したように上記(3)式(
図4も参照)に示す通りの関係があり、燃料ガスの熱量からその価数を算出することができる。また、燃料ガスの熱量と燃料利用率とは、上述したように上記(4)式(
図5も参照)に示す通りの関係があり、燃料ガスの熱量から燃料利用率を算出することができる。
【0043】
【表3】
燃料ガスの組成が変動したときの燃料ガスの価数変動に伴う燃料ガスの供給流量の補正及び熱式質量流量検知手段18の計測流量の変動に伴う燃料ガス供給流量の補正について説明すると、次の通りである。燃料電池システム2の効率的な運転を行うために、例えば、S/Cが例えば2.0に、また燃料利用率(UF)が例えば60%に設定されている場合を一例として説明すると、例えば、電力負荷に応じて燃料電池セルスタック8の出力電力(即ち、発電電力)が設定され、これによって、燃料電池スタック8から取り出す電流値が設定され、燃料利用率が例えば60%であることから、この電流値を発電するに要する燃料ガスの供給流量(この供給流量に対応する燃料ポンプ20の回転数)が設定される。また、このように設定された燃料ガスの供給流量を基に、S/Cが例えば2.0に設定されることから、燃料ガスを水蒸気改質するための改質用水の供給流量(この供給流量に対応する水ポンプ26の回転数)が設定され、このようにして発電電力に対応する燃料ガス及び改質用水の供給流量が設定される。
【0044】
例えば、熱量45MJ/m
3の燃料ガスを用いて燃料電池セルスタック8が例えば発電電力500Wで運転状態されているときの燃料ガスの供給流量が例えば2.0L/min、また改質用水の供給流量が例えば4.35mL/minとし、このような運転状態において燃料ガスの組成変動によりその熱量が例えば40MJ/m
3に変動したとすると、燃料ガスの価数(電子数)の変化及びCFの変化を考慮すると、表3から明らかなように、燃料利用率(UF)は62.3%に、またS/Cは2.15に変わる。
【0045】
燃料ガスの組成変動により上昇した燃料利用率(UF)を62.3%から60%に下げるためには、燃料ガスの供給流量(W1)を2.05L/min〔2.0(L/min)×102.3=2.05(L/min)〕にすることによって、変動した燃料利用率(UF)を元の設定値の60%に戻すことができる。また、このように燃料ガスの供給流量を2.05L/minに変更することによって、S/Cが2.15から2.10に変わるので、このS/Cを2.10から2.0に下げるためには、水供給流量を4.14mL/min(上記(2)式を用いて演算する)にすることによって、変動したS/Cを元の設定値の2.0に戻すことができる。
【0046】
上述したように水供給流量、燃料ガス供給流量を制御することによって、燃料ガスの組成が変動してもS/C及び燃料利用率を所定値に維持することができ、この燃料電池システム2では、このように制御するとともに、燃料ガスの組成変動の際の過渡的時期における不都合を解消するために、
図2に示す制御系を備えている。
【0047】
この燃料電池システム2の制御系は、例えば、マイクロプロセッサなどから構成されるコントローラ62を備え、このコントローラ62は、出力電流設定手段64、燃料ガス流量演算手段66、水流量演算手段67、ガス組成変動判定手段68、S/C演算手段70及び燃料利用率演算手段72を含んでいる。出力電力設定手段64は、例えば、燃料電池システム2の発電電力を消費する電力負荷(図示せず)に関連して設けられる電力負荷検知手段72の検知負荷状態に応じて出力電力(発電電力)を設定し、例えば電力負荷をまかなうように出力電力を設定する。例えば、電力負荷が500Wであるときには、燃料電池セルスタック8の出力電力が500Wとなるように設定する。燃料ガス流量演算手段66は、燃料利用率が例えば60%に維持されるように燃料ガスの供給流量を演算し、また水流量演算手段67は、燃料ガスを上述した供給流量流したときにS/Cが2.0となるように改質用水の供給流量を演算する。
【0048】
ガス組成変動判定手段68は、熱量検知手段19の検知信号に基づいてガス組成が変動したかを判定し、例えば、上記表3に示したように、燃料ガスの熱量が例えば「1」変化したときに燃料ガスの組成が変動したと判定する。S/C演算手段70は、変動したガス組成によるS/Cを演算し、また燃料利用率演算手段72は、変動したガス組成による燃料利用率を演算する。
【0049】
このコントローラ62は、更に、燃料ガス流量補正演算手段76、水流量補正演算手段78、制御手段80、計時手段82及びメモリ手段84を含んでいる。燃料ガス流量補正演算手段76は、組成変更前の燃料ガスの供給流量以上となるように、例えばこの供給流量よりも例えば5〜10%程度多くなるように供給流量を演算する。また水流量補正演算手段78は、組成変更前の改質用水の供給流量以上となるように、例えば、この供給流量よりも10〜20%程度多くなるように供給流量を演算する。
【0050】
制御手段80は、燃料ポンプ20及び水ポンプ26の回転数を制御して改質器4に送給される燃料ガス及び改質用水の供給流量を制御する。また、計時手段82は計時を行い、この形態では、ガス組成変動判定手段68がガス組成の変動を判定した後に計時を開始し、この計時開始から所定時間(例えば、5〜15秒程度であって、例えば10秒程度に設定される)を計時する。更に、メモリ手段84には各種データ、例えば燃料ガスの組成変化に関するデータ(表3に関するデータ)、S/Cに関するデータ(上記(1)式に関するデータ)及び燃料利用率(UF)に関するデータ(上記(2)式に関するデータ)などが登録されている。
【0051】
次に、上述した制御系による燃料電池システム2の稼働制御について説明する。主として
図2及び
図3を参照して、燃料ガスの組成変動前においては、変化前の燃料ガスの組成により燃料電池システム2が稼働運転される(ステップS1)。例えば、燃料利用率が60%に、またS/Cが2.0に設定された稼働運転状態において、出力電力(発電電力)500W時に熱量45MJ/m
3の組成の燃料ガスが供給されているときには、燃料ガスの供給流量が例えば2.0L/minに、また改質用水の供給流量が例えば4.35mL/minとなるように設定され、制御手段80は、燃料ガス及び改質用水の供給流量が上述した供給流量となるように燃料ポンプ20及び水ポンプ26を作動制御し、このように制御することによって、燃料電池システム2(燃料電池セルスタック8)は、S/Cが2.0で、燃料利用率が60%で稼働運転される。
【0052】
このような稼働運転状態において、燃料ガスの組成が変動して例えば燃料ガス熱量が40MJ/m
3に減少すると、ガス組成変動判定手段68は、熱式流量検知手段18からの検知信号に基づいてガス組成の変動有りと判定し、ステップS2からステップS3及びステップS4を経てステップS5に移る。
【0053】
このようにガス組成の変動があると、計時手段82が計時を開始する(ステップS5)。そして、燃料利用率演算手段72は、変動した組成の燃料ガスの価数及びCFを考慮して、変動した組成の燃料ガスの燃料利用率を演算し(ステップS6)、またS/C演算手段70は、変動した組成の燃料ガスのS/Cを演算し(ステップS7)、燃料利用率を設定の値(例えば60%)に戻すために、燃料ガス流量演算手段66は、上述したようにして燃料ガスの供給流量を演算し(ステップS8)、また水流量演算手段67は、S/Cを設定値(例えば、2.0)に戻すために、上述したようにして改質用水の供給流量を演算し(ステップS9)、演算した燃料ガスの供給流量が例えば2.1L/minに、また演算した改質用水の供給流量が例えば4.13mL/minとなる。
【0054】
熱量検知手段19がガス組成の変動した燃料ガスを検知したときには、この熱量検知手段19の配設部位から燃料電池セルスタック8までの間の領域(気化器4及び改質器6などが存在する領域)に、変動前のガス組成の燃料ガス(即ち、45MJ/m
3の燃料ガス)が存在しており、この燃料ガスが過渡的期間(具体的には、熱量検知手段19にて検知された変動後の組成の燃料ガスが燃料電池スタック8に送給されるまでの期間に相当し、例えば10〜15秒程度に設定される)においては、この変動前のガス組成の燃料ガスが燃料電池セルスタック8に供給される。
【0055】
このとき、燃料ガスの熱量が45MJ/m
3から40MJ/m
3に変化しており、従って、熱量検知手段19により燃料流量をフィードバックした燃料流量値が、例えば2.1L/minとなり、この過渡的期間においては、変更前の組成の燃料ガス、即ち45MJ/m
3の燃料ガスが2.1L/minで供給され、また改質用水が4.13mL/minで供給されるようになり、
図6で示すように、過渡的に燃料利用率(UF)が下がり、S/Cが低下するようになる。
【0056】
このような過渡的期間におけるS/Cの低下は、カーボンの析出の原因となり、燃料電池セルスタック8の劣化が速まり、その耐久性が低下するために、このような運転状態を避ける必要がある。尚、燃料利用率の低下は発電効率の低下となるが、可逆的な事象であるために、過渡的に避ける必要性は低くなる。
【0057】
このようなことから、この燃料電池システム2においては、この過渡的期間においてS/Cの低下を回避するために、改質用水の供給流量を増大させ、ガス組成変動前の改質用水の供給流量以上となるように構成される。即ち、ステップS10において、水流量補正演算手段78は、水供給流量を増大させるように補正演算し、この実施形態では、ガス組成変動前の改質用水の供給流量の10〜20%増大するように演算し(ステップS10)、その演算値が例えば5.1mL/minに設定される。そして、この過渡的期間においては、制御手段80は、燃料ガスの供給流量が例えば2.1L/minになるように燃料ポンプ20を作動制御するとともに、改質用水の供給流量が例えば5.1mL/minとなるように水ポンプ26を作動制御する(ステップS11)。従って、この過渡的期間の稼働運転においては、
図7に示すように、この過渡的期間においてS/Cが2.1と上昇し、これによって、S/Cが低い状態で稼働運転されることが回避され、その結果、カーボンの析出が抑えられ、燃料電池セルスタック8の急激な劣化を抑えることができる。
【0058】
この過渡的期間が終了する、換言すると計時手段82が所定時間を計時すると、ステップS12を経てステップS13に移り、制御手段80は、燃料ガスの流量を本来の供給流量、即ち燃料ガス流量演算手段66により演算した供給流量(例えば、2.1L/min)となるように燃料ポンプ20を作動制御し、また改質用水の流量を本来の供給流量、即ち水流量演算手段67により演算した供給流量(例えば、4.13mL/min)となるように水ポンプ26を作動制御し、このような供給状態でもって燃料電池システム2が稼働運転される(ステップS13)。従って、ガス組成変動後の燃料ガスによる運転においてもS/Cが例えば2,0で、燃料利用率が例えば60%となり、燃料ガスのガス組成の変動によりその熱量が下がったにもかかわらず、ガス組成の変動前のS/C及び燃料利用率でもって燃料電池システム2を稼働運転することができる。
【0059】
一方、燃料ガスの組成が変動してその熱量が例えば40MJ/m
3から45MJ/m
3に増加すると、ガス組成変動判定手段68は、熱量検知手段19からの検知信号に基づいてガス組成の変動有りと判定し、ステップS2からステップS3を経てステップS14に移る。
【0060】
このようにガス組成の変動があると、計時手段82が計時を開始する(ステップS14)。そして、燃料利用率演算手段72は、変動した組成の燃料ガスの価数及びCFを考慮して、変動した組成の燃料ガスの燃料利用率を演算し(ステップS15)、またS/C演算手段70は、変動した燃料ガスのS/Cを演算し(ステップS16)、燃料利用率を設定の値(例えば60%)に戻すために、燃料ガス流量演算手段66は、上述したようにして燃料ガスの供給流量を演算し(ステップS17)、また水流量演算手段67は、S/Cを設定値(例えば、2.0)に戻すために、上述したようにして改質用水の供給流量を演算し(ステップS18)、演算した燃料ガスの供給流量が例えば2.18L/minに、また演算した改質用水が例えば4.09mL/minとなる。
【0061】
熱量検知手段19がガス組成の変動した燃料ガスを検知したときには、この熱量検知手段19の配設部位から燃料電池セルスタック8までの間の領域においては、変動前のガス組成の燃料ガス(即ち、40MJ/m
3の燃料ガス)が存在しており、この燃料ガスが上記過渡的期間において燃料電池セルスタック8に供給される。
【0062】
このとき、燃料ガスの熱量が40MJ/m
3から45MJ/m
3に変化しており、従って、この過渡的期間においては、変更前の組成の燃料ガス、即ち40MJ/m
3の燃料ガスが2.18L/minで供給され、また改質用水が4.09mL/minで供給されるようになり、
図8で示すように、過渡的に燃料利用率(UF)が上がり、S/Cが上昇するようになる。
【0063】
このような過渡的期間における燃料利用率の上昇は、耐久性の低下の原因となり、燃料電池セルスタック8の劣化が速まるために、このような運転状態を避ける必要がある。尚、S/Cの上昇は発電効率の低下となるが、可逆的な事象であるために、過渡的に避ける必要性は低くなる。
【0064】
このようなことから、この燃料電池システム2においては、この過渡的期間において燃料利用率の上昇を回避するために、燃料ガスの供給流量を増大させ、ガス組成変動前の燃料ガスの供給流量以上となるように構成される。即ち、ステップS19において、燃料ガス流量補正演算手段76は、燃料ガス供給流量を増大させるように補正演算し、この実施形態では、ガス組成変動前の燃料ガスの供給流量の5〜10%増大するように演算し、その演算値が例えば2.5L/minに設定される。そして、この過渡的期間においては、制御手段80は、燃料ガスの供給流量が例えば2.5L/minになるように燃料ポンプ20を作動制御するとともに、改質用水の供給流量が例えば4.09mL/minとなるように水ポンプ26を作動制御する(ステップS20)。従って、この過渡的期間の稼働運転においては、
図9に示すように、この過渡的期間において燃料利用率が約58%と低くなり、これによって、燃料利用率が高い状態で稼働運転されることが回避され、その結果、燃料電池セルスタック8の急激な劣化を抑えることができる。
【0065】
この過渡的期間が終了する(換言すると、計時手段82が所定時間を計時する)と、ステップS21を経てステップS22に移り、制御手段80は、燃料ガスの流量を本来の供給流量、即ち燃料ガス流量演算手段66により演算した供給流量(例えば、2.18L/min)となるように燃料ポンプ20を作動制御し、また改質用水の流量を本来の供給流量、即ち水流量演算手段67により演算した供給流量(例えば、4.09mL/min)となるように水ポンプ26を作動制御し、このような供給状態でもって燃料電池システム2が稼働運転される。従って、ガス組成変動後の燃料ガスによる運転においてもS/Cが例えば2,0で、燃料利用率が例えば60%となり、燃料ガスのガス組成の変動によりその熱量が上昇したにもかかわらず、ガス組成の変動前のS/C及び燃料利用率でもって燃料電池システム2を稼働運転することができる。
【0066】
以上、本発明に従う燃料電池システムの一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【0067】
例えば、上述した実施形態では、ガス組成の変動により燃料ガスの熱量が減少したときには、過渡的期間において改質用水の供給流量を増大させているが、これとともに、燃料ガスの供給流量を制御するようにしてもよい。また、燃料ガスの熱量が増大したときには、過渡的期間において燃料ガスの供給流量を増大させているが、これとともに、改質用水の供給流量を制御するようにしてもよい。